(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】発泡シール材、および発泡シール材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20220614BHJP
F16J 15/14 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C09K3/10 R
C09K3/10 D
C09K3/10 Z
C09K3/10 E
F16J15/14 B
F16J15/14 C
(21)【出願番号】P 2019064008
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】P 2018227666
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518318244
【氏名又は名称】ニッパツフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】北澤 明彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】世良 範幸
(72)【発明者】
【氏名】草川 公一
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-505894(JP,A)
【文献】特開昭60-137627(JP,A)
【文献】特開昭55-71777(JP,A)
【文献】実開平05-56939(JP,U)
【文献】実開昭54-150059(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10-3/12
F16J15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の可撓性連続気泡構造発泡体と、
前記可撓性連続気泡構造発泡体の側面の少なくとも一部に、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆した押出被覆層と、
前記可撓性連続気泡構造発泡体の内部及び側面の少なくとも一方に、前記可撓性連続気泡構造発泡体の長手方向の一端から他端に向けて延在して設けられ、前記可撓性連続気泡構造発泡体の長手方向の伸びを防止する伸び防止部材であって、線材、又はシート材である伸び防止部材と、
を有する発泡シール材。
【請求項2】
前記押出被覆層は、前記可撓性連続気泡構造発泡体における被シール材との非接触面である、液体・気体接触面の少なくとも1面の全範囲に押出被覆されている請求項1に記載の発泡シール材。
【請求項3】
前記可撓性連続気泡構造発泡体が、撥水性の発泡体である請求項1
又は請求項2に記載の発泡シール材。
【請求項4】
前記可撓性連続気泡構造発泡体が、ポリウレタン発泡体である請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の発泡シール材。
【請求項5】
前記軟質熱可塑性樹脂がA硬度0~85の熱可塑性エラストマーであり、前記熱硬化性エラストマーがA硬度0~85の熱硬化性エラストマーである請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の発泡シール材。
【請求項6】
前記熱可塑性エラストマーが、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、及びアクリル系熱可塑系エラストマーから選択される少なくとも一種である請求項
5に記載の発泡シール材。
【請求項7】
前記熱硬化性エラストマーが、室温硬化型の熱硬化性エラストマーである請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の発泡シール材。
【請求項8】
可撓性連続気泡構造発泡体の側面の少なくとも一部に、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆して押出被覆層を形成する押出被覆工程を有する請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の発泡シール材の製造方法。
【請求項9】
前記押出被覆工程において、前記可撓性連続気泡構造発泡体における被シール材との非接触面である、液体・気体接触面体接触面の少なくとも1面の全範囲に、前記押出被覆層を押出被覆する請求項
8項に記載の発泡シール材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡シール材、および発泡シール材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン、ゴム、ポリオレフィン等で構成された、長尺状の可撓性連続気泡構造発泡体(以下、可撓性連泡体とも略す)は、低い応力で圧縮でき復元性も良いので発泡シール材等に用いられている。しかし、これら可撓性連泡体は非発泡体と比較すると引張強さが弱く、表面強度も弱いため、加工時や施工時にキズがついて破損する場合がある。また、繰返し圧締する用途では、裂けたり摩耗したり破損するなどの欠点がある。更に、屋外で施工する場合、太陽光、雨、雪等との接触は避けたい項目である。
【0003】
特に、可撓性連泡体を発泡シール材として2面間に挟み防水や密封の目的で使われる場合、連続気泡構造であるため、低応力で圧縮しやすい利点はあるが、独立気泡構造の発泡シール材に比べると水を含みやすく、従って止水性が上がらず、また密封性(気密性や耐透湿性など)は劣る傾向にある。
更に、外壁目地、冷蔵庫の蓋に設ける発泡シール材として、可撓性連泡体を使用するには、素材自体の外観が劣るため、意匠性が劣り、しかも耐候性・耐久性も劣る欠点もある。
【0004】
そして、これら欠点を改良するため、以下のような技術が開示されている。
例えば、特許文献1には、塩ビプラスチゾルを連泡体の表面に含浸塗布後、加熱して成膜するスキン付きプラスチック発泡体の製造方法が開示されている。しかし、この製法では、塩ビプラスチゾルが高粘度で作業性が悪く、高温で長時間加熱する必要があり、生産性が悪化する。しかも膜厚が0.4mm程度と厚めになる。
【0005】
また、特許文献2には、加熱された口金に長尺の発泡体を接触させつつ通過させ、発泡体の表面を溶融させ被膜を形成したシール材が開示されている。しかし、このシール材は、エステル系ポリウレタン発泡体など、組成が限定される。また、溶融被膜は樹脂が酸化劣化しているため止水性が低下する。
【0006】
また、特許文献3~4には、非発泡のポリウレタン原液を離型紙上に塗布し、硬化途中に発泡体基材を載置して製造した積層体の製造方法が開示されている。しかし、この製法では、多面に被膜を付けるのは困難なので、耐候性、意匠性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭53-16081号公報
【文献】特開2006-97790号公報
【文献】特開2003-225913号公報
【文献】特開2008-138110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来、可撓性連泡体の柔らかさと復元性の良さを活かしつつ、止水性、気密性、耐候性、機械的強度などの特性を十分に有する発泡シール材が得られていないのが現状である。
なお、可撓性連泡体の表面をコーティングする方法についても本発明者等は検討したが、コーティング剤には有機溶剤が含まれているため、コーティング剤を可撓性連泡体にスプレーすると瞬時に膨潤し、可撓性連泡体が液体を吸収し被膜にならず、乾燥してもなかなか乾燥せず、形状も収縮して製品になりえないことが判明した。
一方、水系コーティング剤なら可撓性連泡体に吸収しにくいことで被膜はできそうであるが、乾燥時に収縮して平滑な被膜ができず、しかも水系コーティング剤はそもそも親水性である為、被膜ができたとしても止水性は全く発揮できないことが分かった。
【0009】
そこで、本発明の課題は、可撓性連泡体の柔らかさと復元性の良さを活かしつつ、止水性、気密性、耐候性、機械的強度などの特性を十分に有する発泡シール材、および、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の手段により解決される。
【0011】
<1>
長尺状の可撓性連続気泡構造発泡体と、
前記可撓性連続気泡構造発泡体の側面の少なくとも一部に、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆した押出被覆層と、
を有する発泡シール材。
<2>
前記押出被覆層は、前記可撓性連続気泡構造発泡体における被シール材との非接触面である、液体・気体接触面の少なくとも1面の全範囲に押出被覆されている<1>に記載の発泡シール材。
<3>
前記可撓性連続気泡構造発泡体の内部及び側面の少なくとも一方に、前記可撓性連続気泡構造発泡体の長手方向の一端から他端に向けて延在して設けられ、前記可撓性連続気泡構造発泡体の長手方向の伸びを防止する伸び防止部材を有する<1>又は<2>に記載の発泡シール材。
<4>
前記伸び防止部材が、線材、シート材、又は前記可撓性連続気泡構造発泡体の自己スキン層である<3>に記載の発泡シール材。
<5>
前記可撓性連続気泡構造発泡体が、撥水性の発泡体である<1>~<4>のいずれか1項に記載の発泡シール材。
<6>
前記可撓性連続気泡構造発泡体が、ポリウレタン発泡体である<1>~<5>のいずれか1項に記載の発泡シール材。
<7>
前記軟質熱可塑性樹脂がA硬度0~85の熱可塑性エラストマーであり、前記熱硬化性エラストマーがA硬度0~85の熱硬化性エラストマーである、<1>~<6>のいずれか1項に記載の発泡シール材。
<8>
前記熱可塑性エラストマーが、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、及びアクリル系熱可塑系エラストマーから選択される少なくとも一種である<7>に記載の発泡シール材。
<9>
前記熱硬化性エラストマーが、室温硬化型の熱硬化性エラストマーである<1>~<8>のいずれか1項に記載の発泡シール材。
<10>
可撓性連続気泡構造発泡体の側面の少なくとも一部に、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆して押出被覆層を形成する押出被覆工程を有する<1>~<9>のいずれか1項に記載の発泡シール材の製造方法。
<11>
前記押出被覆工程において、前記可撓性連続気泡構造発泡体における被シール材との非接触面である、液体・気体接触面体接触面の少なくとも1面の全範囲に、前記押出被覆層を押出被覆する<10>項に記載の発泡シール材の製造方法。
<12>
前記押出被覆工程において、前記伸び防止部材を有する状態の前記可撓性連続気泡構造発泡体の側面の少なくとも一部に、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆して押出被覆層を形成する<10>又は<11>に記載の発泡シール材の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可撓性連泡体の柔らかさと復元性の良さを活かしつつ、止水性、気密性、耐候性、機械的強度などの特性を十分に有する発泡シール材、および、その製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る発泡シール材の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る発泡シール材の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本実施形態に係る発泡シール材の他の一例を示す概略断面図である。
【
図4】本実施形態に係る発泡シール材を一対の被シール材の間隙をシールした状態を示す概略断面図である。
【
図5】本実施形態に係る発泡シール材の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【
図6】
図5の矢視A方向から見た概略断面図である。
【
図7】本実施形態に係る発泡シール材の製造装置におけるクロスヘッドの概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
なお、本明細書において、実質的に同じ機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある
また、「連続気泡構造発泡体」は、「連泡体」と略して記載する場合がある。
また、「独立気泡構造発泡体」は、「独泡体」と略して記載する場合がある。
【0015】
(発泡シール材)
本実施形態に係る発泡シール材10は、例えば、
図1~
図2に示すように、可撓性連泡体12(長尺状の可撓性連続気泡構造発泡体12)と、可撓性連泡体12の側面の少なくとも一部に、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆した押出被覆層14と、を有する。
【0016】
本実施形態に係る発泡シール材10では、柔らかさと復元性の良い可撓性連泡体12の側面の少なくとも一部に、押出被覆層14が被覆されていることで、可撓性連泡体12が保護される。それにより、可撓性連泡体12の内部に液体及び気体が浸透し難くなる。
また、押出被覆層14は熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーの押出により形成されるため、可撓性連泡体12の長手方向全表面を高速度で押出被覆できる。また、必要なら長手方向の一部分を無被覆にすることや、被覆部の一部に異形部を設けることなども可能である。さらに、熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを着色することで被覆後の発泡シール材の意匠性を高めることができる。
【0017】
そのため、本実施形態に係る発泡シール材10は、可撓性連泡体12の柔らかさと復元性の良さを活かしつつ、樹脂を被覆することで、大幅な止水性の向上があり、しかも気密性、耐候性、機械的強度などの特性を十分に有する発泡シール材となる。
【0018】
そして、例えば、本実施形態に係る発泡シール材10は、例えば、次の利点を有する。
・発泡シール材10を止水材として適用しても、十分な止水性が発揮できる。
・発泡シール材10を開閉シール材(配電盤用、冷蔵庫用、クーラボックス用等のシール材)として適用しても摩耗し難い。
・発泡シール材10を引っ張っても切れ難く、作業性が高まる。
・発泡シール材10を土木・建築用のシール材(外壁目地用等のシール材)として適用しても、耐候性が高いため、劣化し難く、長期にわたり、各種特性を維持できる。
・可撓性連泡体12が非撥水性でも、止水性が発揮できる。
【0019】
なお、本実施形態に係る発泡シール材10は、止水性、耐透湿性、遮音性、繰返し耐久性、摺動性、意匠性等の各種特性も十分有する。
【0020】
本実施形態に係る発泡シール材10は、例えば、
図1~
図2に示すように、可撓性連泡体12の長手方向の伸びを防止する伸び防止部材16を有してもよい。
伸び防止部材16を有すると、発泡シール材10の寸法安定性が高まる。また、自己支持性が向上し、作業性が高まる。
【0021】
以下、本実施形態に係る発泡シール材10の詳細について説明する。
【0022】
-可撓性連泡体12-
可撓性連泡体12(長尺状の可撓性連続気泡構造発泡体12)は、常温で柔らかく、圧縮すると撓んだのち、圧縮を開放すると復元する連続気泡構造型の発泡体である。
可撓性連泡体12は、熱硬化型の発泡体であることがよい。熱硬化型とは樹脂が架橋しているため、加熱しても溶融しない性質を示す。可撓性連泡体12が熱可塑性であると熱時圧縮復元性が悪い一方で、可撓性連泡体12が熱硬化型なら熱軟化又は熱収縮し難いので、押出被覆時の温度設定の幅が広くなる。
【0023】
可撓性連泡体12としては、例えば、ポリウレタン発泡体、アクリル発泡体、ゴム発泡体、シリコーン発泡体、オレフィン発泡体、メラミン発泡体などの連続気泡構造の発泡体が押出被覆用に例示できる。
しかし、被覆後に高温硬化の必要な熱硬化性エラストマーの押出被覆用に用いる可撓性連泡体12には、ゴム発泡体やオレフィン発泡体では、熱硬化性エラストマーの高温硬化で収縮しやすいので、この場合は、ポリウレタン発泡体、アクリル発泡体、シリコーン発泡体、メラミン発泡体が好ましい。
これらの中でも、ポリウレタン発泡体は、軟質熱可塑性樹脂にも熱硬化性エラストマーにも好適に適用でき、連泡度と可撓性の程度を容易に可変でき、しかも復元性が極めて良好なため好適な発泡体である。
【0024】
可撓性連泡体12は、撥水性であることがよい。可撓性連泡体12が撥水性であると、押出被覆層が被覆されていない発泡シール材の長手方向末端部が水に接触したとしても、水が侵入し難くなる。また、施工時、使用時などに、押出被覆層14にキズが出来た際においても、キズから水に接触しても水が浸入し難くなる。そのため、発泡シール材10の施工の自由度が高くなる。
可撓性連泡体12のうち、シリコーン発泡体、ゴム発泡体、オレフィン発泡体はそれ自体が撥水性であり、ポリウレタン発泡体は組成を調整することで撥水性にすることが可能である。
【0025】
ここで、可撓性連泡体12が撥水性であることは、水に対する接触角を測定することで判断できる。
具体的には、例えば、可撓性連泡体12の表面における「水に対する接触角」が90°以上のとき、可撓性連泡体12が撥水性であると判断する。
そして、水に対する接触角は、10mm厚みの可撓性連泡体12を180℃で熱プレスしたシート状品の表面を、接触角測定器(協和界面科学株式会社製 全自動接触角計DMo-701)を用いて、静的接触角を液滴法にて測定する。
なお、測定条件は、常温常湿環境、水の滴下量=1.0ml、水滴滴下後の測定開始時間=1秒、繰返し回数=10回で実施する。
【0026】
可撓性連泡体12は、連続気泡型の発泡体であり、独立気泡率が5%以下である可塑性連泡体であることがよい。
独立気泡率は、レミングトン法(ASTM D 1940-62T準拠)によって測定される。具体的には、水銀マノメーターを使い、サンプル室容積R1を測定する。次に、容積Vと重量Wを測定したサンプルをサンプル室に投入し密閉する。この状態で水銀マノメーターを使い、サンプル室容量R2を測定する。独立気泡率(%)は、下記の式で計算して求める。
(R1-R2-W/d)/(V-W/d)×100
R1;サンプル室容量(ブランク)(ml)
R2;サンプル室容量(サンプル入り)(ml)
W;サンプル重量(g)
d;真比重(g/cm3)
V;サンプル容量(見かけ体積)(cm3)
【0027】
可撓性連泡体12の引張モジュラスは、80℃での値で2.5kPa以上が好ましく、5kPa以上がより好ましく、10kPa以上が最も好ましい。
押出被覆層14を可撓性連泡体12に押出被覆するとき、可撓性連泡体12は、押出機に導入され、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆した後に引き出される。そして、押出被覆された発泡シール材10は、必要であれば加熱し、冷却後、巻き取るか、又は定尺裁断される。この間、可撓性連泡体12は、一定応力で引っ張られる。そのため、シワのない均一な押出被覆層14を形成するには、可撓性連泡体12は、上記範囲の適度な引張モジュラスを有することがよい。
【0028】
ただし、発泡シール材10が伸び防止部材16を有する場合、押出被覆層14を可撓性連泡体12に押出被覆するとき、可撓性連泡体12が引っ張られても、伸び防止部材16により可撓性連泡体12の伸びが防止される。そのため、この場合、可撓性連泡体12の引張モジュラスは、80℃での値で2.5kPa未満であってもよい。
【0029】
引張モジュラスの測定方法は、次の通りである。JIS K6400-5(2012年) に準拠して、80℃における10%伸長時の応力を測定した。具体的には、サンプルをダンベル2号形に打ち抜き、80℃の恒温槽で2時間以上保管する。その後、80℃条件にて万能試験機でサンプルを速度200mm/minで引っ張る。この時、サンプルが10%伸長した時の応力を引張モジュラスとして求める。
【0030】
可撓性連泡体12の断面形状(可撓性連泡体12の長手方向と直交する方向に沿って切断した断面形状)は、特に制限はなく、多角形状(三角形状、四角形状、六角形状、星形状等)、円形状、かまぼこ形状、半円形状、凹み部を有する形状等が例示できる。なお、
図1~
図2には、断面形状が四角形の可撓性連泡体12を有する発泡シール材10を示している。更に、圧縮する際、被シール材接触面と安定な界面を形成する為に、シール材の角部がR形状であることが望ましい。軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーの硬度が高く且つR形状が無い場合、反力の高いシール材の角部のみ強く圧縮され、被シール材接触面全体が圧縮されない危険性が生じる。また、R形状が存在すると、圧縮作業の際、シール中央部から圧縮されるので、界面部に空気泡が残り難く、安定した接触面が出来やすく、止水や気密の確度が向上する。
【0031】
(押出被覆層)
押出被覆層14は、押出機により、可撓性連泡体12の側面の少なくとも一部に、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆した樹脂層である。
【0032】
押出被覆層14は、可撓性連泡体12の全側面に被覆されていてもよい。
図1~
図2は、押出被覆層14が可撓性連泡体12の全側面に被覆されている発泡シール材10を示している。
なお、伸び防止部材16が可撓性連泡体12の側面に設けられている場合、押出被覆層14は、伸び防止部材16を介して、可撓性連泡体12の側面を被覆する。
【0033】
押出被覆層14は、例えば、可撓性連泡体12の断面形状が、複数の角部を有する形状(多角形状、かまぼこ形状、半円形状等)の場合、角部で区画される複数の側面の少なくとも一つに形成されていてもよい。例えば、可撓性連泡体12の四角形が多角形の場合、4つの角部で区画される4つの面のうち、3つの面に押出被覆層14が形成されていてもよい(
図3(A)参照)。
【0034】
押出被覆層14は、可撓性連泡体12における被シール材との非接触面である、液体・気体接触面の少なくとも1面の全範囲に押出被覆されていてもよい。
具体的には、例えば、
図4に示すように、発泡シール材(
図4(A)参照)で、一対の被シール材の間隙をシールしたとき(
図4(B)参照)、可撓性連泡体12には被シール材との非接触面として液体・気体接触面が2面できる。そして、押出被覆層14は、2面の液体・気体接触面のうち、少なくとも一方の面の全範囲に押出被覆されていてもよい。ただし、押出被覆層14は、2面の液体(気体)接触面うち、双方の面の全範囲に押出被覆されていてもよい。
なお、
図4中、11は被シール材、12Aは可撓性連泡体12における被シール材との非接触面である液体・気体接触面、12Bは可撓性連泡体12における被シール材との接触面を示す。
押出被覆層14が、可撓性連泡体12における被シール材との非接触面である、液体・気体接触面の少なくとも1面の全範囲に存在する場合(例えば1面被覆品の場合)、発泡シール材10を通る水や気体の浸入が完全に抑えられる。また、風呂等の掃除のときに使う塩素系酸化剤、洗車時に使う界面活性剤を含む洗剤、灯油などの強力な有機溶剤に発泡シール材10が接触しても全く侵されないメリットがある。
しかしながら、1面被覆品の場合、可撓性連泡体12が撥水性の場合、水などの浸入を抑える効果は出るが、可撓性連泡体12が非撥水性の場合、止水性は発揮されないので好ましくない。
なお、押出被覆層14が、可撓性連泡体12における被シール材との接触面および非接触面である液体・気体接触面のすべてに存在する場合(例えば、可撓性連泡体12の断面形状が4角形状の場合では4面全周被覆品)は水や気体の浸入はどこからもなく最も耐性の強い発泡シール材10となる。
また、押出被覆層14が、可撓性連泡体12における被シール材との接触面の全て、および非接触面である液体・気体接触面の片側(例えば、可撓性連泡体12の断面形状が4角形状の場合では3面被覆品)にある場合、押出被覆層14が、可撓性連泡体12における接触面の片側、および非接触面である液体・気体接触面の両側(例えば、可撓性連泡体12の断面形状が4角形状の場合では3面被覆品)に有する場合も、水などの浸入が抑えられるので耐性の強い発泡シール材10となる。
【0035】
押出被覆層14を形成するための軟質熱可塑性樹脂は、止水性、気密性、耐透湿性、遮音性、耐候性、機械的強度、繰返し耐久性、摺動性等の各種特性向上の観点から、ショアーD硬度が50以下の軟質熱可塑性樹脂であることがよい。好適な樹脂としては、ポリエチレン、ポリエチレン系共重合体、軟質ポリ塩化ビニル、各種の熱可塑性エラストマー、軟質エステル系樹脂、軟質ポリアミド系樹脂、軟質ポリプロピレン系樹脂が例示できる。特に好ましい樹脂は、ポリエチレン、ポリエチレン系共重合体(ポリエチレン酢酸ビニル、ポリエチレンアクリル共重合体等)、軟質ポリ塩化ビニル、熱可塑性エラストマーである。
また、軟質熱可塑性樹脂として、更に、オレフィン系、ナイロン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、スチレン-ブタジエンゴム系、スチレン-イソプレン系などのホットメルト型樹脂も挙げられる。
なお、これらのホットメルト型樹脂の中には、ポリウレタン系等、イソシアナート基が空気中の水分と反応架橋した、後述する熱硬化性エラストマーに該当する樹脂も例示される。
熱可塑性エラストマーは、ショアーA硬度が0~85のものが柔らかく、被シール材との接触面(例えば被止水面)に対する密着性が良く、しかも、コーナー部での曲げに対し発泡シール材10にシワが入りにくいため、各種特性(止水性、気密性、耐透湿性、遮音性等)が維持しやすくなる。熱可塑性エラストマーのショアーA硬度は、0~50であると止水性が向上し特に好ましい。
押出被覆層14が熱可塑性樹脂で構成されている場合、その端面同士を熱融着して、Oリング状の発泡シール材10としたり、自動車部品の樹脂部品などに超音波融着により発泡シール材10を組み付けることができる。
【0036】
ショアーD硬度の測定方法は、JIS 6253-3(2012年)に準拠する。具体的には、デュロメーター タイプD で、サンプル押針し15秒後の数値をショアーD硬度として測定する。
ショアーA硬度の測定方法は、JIS 6253-3(2012年)に準拠する。具体的には、デュロメーター タイプAで、サンプル押針し15秒後の数値をショアーA硬度として測定する。
【0037】
熱可塑性エラストマーとしては、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーが例示できる。
これらの中でも、熱可塑性エラストマーとしては、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、及びアクリル系熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0038】
塩化ビニル系熱可塑性エラストマーは、少なくとも塩化ビニルを重合した重合体を有するエラストマーである。塩化ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリ塩化ビニルとニトリルゴム(NBR)とを混合したブレンド型エラストマー、ポリ塩化ビニル又はニトリルゴムを部分架橋したブレンド型エラストマー等が挙げられる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、少なくともオレフィンを重合した重合体を有するエラストマーである。オレフィン系ゴムとポリオレフィン樹脂とのブレンド型エラストマー、オレフィン系ゴムとポリオレフィン樹脂とを部分架橋させた部分架橋ブレンド型エラストマー、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)とポリプロピレンとの完全架橋ブレンド型エラストマー等が挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、少なくともスチレンを重合した重合体を有するエラストマーである。ポリスチレン-イソプレン-ポリスチレン(SIS)ブロック構造のエラストマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)ブロック構造のエラストマー、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SBS)ブロック構造のエラストマー、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン(SEPS)ブロック構造のエラストマー等が挙げられる。
ウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、少なくともウレタン構造を持つ重合体を有するエラストマーである。ポリエステルとポリウレタンとのブロック構造のエラストナー、ポリエーテルとポリウレタンとのブロック構造のエラストマー等が挙げられる。
アクリル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリメタクリル酸メチルとアクリル酸エステルのブロック共重合体が例示できる。
【0039】
押出被覆層14を形成するための熱硬化性エラストマーとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、EPDMゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。
特に、室温硬化型の熱硬化性エラストマーは、低温で硬化できるため生産性が高く、連泡体の高温暴露による変質を抑えられ、連泡体の選択の自由度が高まるため好ましい。
室温硬化型の熱硬化性エラストマーとしては、湿気硬化型のゴム(例えば、シリコーンゴム、変性シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ポリサルファイドゴム等)が例示できる。さらに、室温硬化型の熱硬化性エラストマーとしては、2液硬化型のゴム(例えば、シリコーンゴム、変性シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、アクリルウレタンゴム、ポリサルファイドゴム、フッ素ゴム等)も例示できる。
特に、熱硬化性エラストマーとしては、シリコーンゴム、変性シリコーンゴム、フッ素ゴムが好適である。これらエラストマーは、は非常に柔かい被膜でありながら、耐熱性や耐候性、電気特性、難燃性が優れる。そのたため、押出被覆層として、これらエラストマーを含む押出被覆層を有する発泡シール材は、屋外用途又は電気機器用のシール材として特に好適である。
ここで、室温硬化型の熱硬化性エラストマーは、硬化前の原料粘度が低いので、一般的には押出成形すると原料がドローダウンしやすいので形状を保てないが、本発明の方法では、押出機から吐出された未硬化の熱硬化性エラストマーが、可撓性連泡体12に薄く被覆されるので、ドローダウンもせず、長尺連泡体に付着されたまま硬化することができる。
【0040】
熱硬化性エラストマーのショアーA硬度(硬化後のショアーA硬度)も、0~85が好ましく、0~50がより好ましい。硬度を上記範囲とすると、押出被覆層14が柔らかく、被シール材との接触面(例えば被止水面)に対する密着性が良く、しかも、コーナー部での曲げに対し発泡シール材10にシワが入りにくいため、各種特性(止水性、気密性、耐透湿性、遮音性等)が維持しやすくなる。
【0041】
軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマー(つまり押出被覆層14)には、各種添加剤を含んでもよい。例えば、添加剤として難燃剤を適用した場合、発泡シール材に難燃性を付与できる。また、添加剤として着色剤を適用した場合、目的とする色に着色した押出被覆層14を有する発泡シール材となり、意匠性が向上する。
【0042】
押出被覆層14の厚さは、止水性、気密性、耐透湿性、遮音性、耐候性、機械的強度、繰返し耐久性、摺動性等の各種特性向上の観点から、10~1000μmが好ましく、50~500μmがより好ましく、50~200μmがさらに好ましい。
【0043】
(伸び防止部材)
伸び防止部材16は、可撓性連泡体12の長手方向の伸びを防止する部材である。伸び防止部材16は、必要に応じて、発泡シール材10に設けられる部材である。
【0044】
伸び防止部材16は、可撓性連泡体12の長手方向の伸びを防止できれば、態様に制限はない。
ただし、可撓性連泡体12の長手方向の伸び防止を十分に発揮する観点から、伸び防止部材16は、例えば、可撓性連泡体12の内部及び側面の少なくとも一方に、可撓性連泡体12の長手方向の一端から他端に向けて延在していることがよい。
【0045】
なお、
図1~
図2は、伸び防止部材16が可撓性連泡体12の側面に設けた発泡シール材10を示している。
伸び防止部材16は、例えば、可撓性連泡体12の断面形状が、複数の角部を有する形状(多角形状、かまぼこ形状、半円形状等)の場合、角部で区画される複数の側面の少なくとも一つに形成されていればよい。
【0046】
一方、伸び防止部材16を可撓性連泡体12の内部に設ける態様としては、例えば、可撓性連泡体12を長手方向に貫通させて伸び防止部材16を設ける態様(
図3(B)参照)、分割された可撓性連泡体12により挟まれた状態で伸び防止部材16を設ける態様(
図3(C)参照)が例示できる。
【0047】
伸び防止部材16としては、線材、シート材、又は可撓性連泡体12の自己スキン層が例示できる。
線材としては、樹脂線材(ポリエステル、ポリオレフィン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリウレタン等の線材、これらの繊維を撚った線材(糸))、金属線材(ステンレス、銅、タングステン、ニッケル、その他各種合金等の線材)、これらの集合体(線材を撚った集合体、線材を束ねた集合体、線材を並列した集合体等)が例示できる。
シート材としては、樹脂シート材(ポリエステル、ポリオレフィン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリウレタン等のシート材)、金属シート材(ステンレス、銅、タングステン、ニッケル、その他各種合金等のシート材)、織物、編物、不織布、寒冷紗等が例示できる。
他のシート材としては、粘着テープ(両面テープ等)も例示できる。粘着テープの剥離紙が伸び防止機能を発揮できるためである。なお、シート材には、幅が狭い、いわゆるリボン状の材料も含む。
自己スキン層とは、例えば、可撓性連泡体12として発泡ポリウレタンをモールド内で発泡させたときに発泡製品の表面に生成する被膜(スキン)の事で、可撓性連泡体12として発泡ポリウレタンを離型紙又は離型フィルムに挟んで生産しても、被膜(スキン)が生成する。この自己スキン層は、可撓性連泡体12として発泡ゴムや発泡シリコーンでも同様に生成させることができる。自己スキン層を有する可撓性連泡体12は自己スキン層のない可撓性連泡体12に比べ、引張モジュラスが高くハリがあるため、押出被覆層14の押出被覆時、可撓性連泡体12の伸長を低くする。しかも、自己スキン層があるため押出樹脂の被覆面が平滑になるため、発泡シール材10のシール性が高まるとともに外観も向上する。
【0048】
伸び防止部材16は、可撓性を有することがよい。伸び防止部材16が可撓性を有すると、発泡シール材10を変形(曲げ、折る等の変形)させた後、変形後の形状が維持され易くなる。それにより、作業性が向上する。
【0049】
伸び防止部材16の大きさは、例えば、線材の場合、直径10~500μm、シート材の場合、厚さ5~500μm、自己スキン層の場合、厚さ0.1~500μmで、軟らかさの為には0.1~100μmが望ましい。
【0050】
(発泡シール材の製造方法)
本実施形態に係る発泡シール材10は、例えば、可撓性連泡体12(可撓性長尺連泡体12)の側面の少なくとも一部に、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆して押出被覆層14を形成する押出被覆工程を有する。
【0051】
そして、押出被覆工程において、伸び防止部材16を有する状態の可撓性連泡体12の側面の少なくとも一部に、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆して押出被覆層14を形成することがよい。
【0052】
以下、本実施形態に係る発泡シール材の製造方法の詳細について、発泡シール材の製造装置の一例と共に説明する。
【0053】
発泡シール材の製造装置100は、例えば、
図4~
図6に示すように、押出機101で構成されている。なお、
図4~
図6中、TRは、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを示す。
【0054】
押出機101は、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを供給する押出機本体110と、押出機本体110から供給された軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを筒状に押出すクロスヘッド120とを備えている。
【0055】
押出機本体110は、
図4~
図5に示すように、円筒状のシリンダー111と、シリンダー111の内部に挿入されたスクリュー112と、スクリュー112を回転駆動する駆動モータ113と、を有している。
シリンダー111の一端側(スクリュー112の後端側)の外周面には、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを投入するホッパー114が設けられている。シリンダー111の他端側の端面(スクリュー112の先端側)には、ブレーカープレート115が設けられている。シリンダー111には、軟質熱可塑性樹脂を加熱するためのヒーター116が設けられている。ただし、熱硬化性エラストマーを適用する場合、ヒータ116を設けない場合がある。
【0056】
そして、押出機本体110は、スクリュー112の回転により、シリンダー111の一端から他端(スクリュー112の後端から先端)に向けて、溶融された軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを流動させて、クロスヘッド120へ軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを供給する。
【0057】
具体的には、押出機本体110では、ホッパー114から投入された軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーは、シリンダー111の内部において、ヒーター116によって加熱されつつ、スクリュー112によって、練られながら、スクリュー112の後端から先端に向けて流動し、ブレーカープレート115を通過してクロスヘッド120に向けて送り出される。ただし、熱硬化性エラストマーを適用した場合、ヒーター116によって加熱しない場合がある。
【0058】
クロスヘッド120は、例えば、
図5~
図6に示すように、押出機本体110に接続される円筒状のケース121と、ケース121の内部中心に配置される円柱状のノズル122と、ノズル122の樹脂押出方向の下流側に配置される押出ダイス123とを備えている。
【0059】
ノズル122の中心部には、可撓性連泡体12(
図5~
図6中では、伸び防止部材16付きの可撓性連泡体12)が挿通される挿通孔122Aが形成されている。ノズル122の樹脂押出方向下流側の先端は先細った形状を呈している。そして、ノズル122の樹脂押出方向下流側の先端側の領域は、挿通孔122Aから供給される可撓性連泡体12と環状流路124Aから供給される軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーとが合流する合流域124Bとされている。
つまり、この合流域124Bに向けて軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーが筒状に押出され、筒状に押出される軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーの中心部に可撓性連泡体12が送り込まれるようになっている。
【0060】
このように、押出機101で構成された発泡シール材の製造装置100では、合流域124Bにおいて軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを筒状に押出し、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーの筒状物の中心部に、ノズル122の挿通孔122Aを通じて可撓性連泡体12が送り込まれる。それにより、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーで可撓性連泡体12の側面(本実施形態では全側面)が押出被覆された発泡シール材10が押出ダイス123から押出される。なお、熱硬化性エラストマーを適用した場合、熱硬化性エラストマーを熱硬化又は加湿する処理を実施する場合がある。
【0061】
その後、図示しない裁断機により、押出ダイス123から連続して押出された発泡シール材10で定尺裁断する。なお、押出された発泡シール材10、又は裁断された発泡シール材10を、巻き取ってもよい。
【0062】
以上説明した本実施形態に係る発泡シール材10の製造方法では、発泡シール材の製造装置100として押出機101を利用して、可撓性連泡体12の側面の少なくとも一部に軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆する。そのため、生産性が高く発泡シール材10を製造できる。また、様々な断面形状の可撓性連泡体12の側面にも、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆可能である。
【0063】
ここで、本実施形態に係る発泡シール材10の製造方法において、伸び防止部材16を有する状態の可撓性連泡体12の側面の少なくとも一部に、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆して押出被覆層14を形成すると、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆時の可撓性連泡体12の伸びが防止できる。そのため、シワがない均一な押出被覆層14が形成できる。
ただし、可撓性連泡体12が所定の引張モジュラスを有する場合、伸び防止部材16を有していない状態の可撓性連泡体12に軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーを押出被覆しても、シワがない均一な押出被覆層14が形成できる。
【0064】
なお、本実施形態に係る発泡シール材10の製造方法では、上記製造方法に限定されない。
例えば、本実施形態に係る発泡シール材10の製造方法では、予め、伸び防止部材16を有する状態の可撓性連泡体12をノズル122の挿通孔122Aに供給する態様を説明したが、これに限定されない。例えば、ノズル122の挿通孔122Aに供給する直前に、可撓性連泡体12の側面に伸び防止部材16を接触させ、その状態でノズル122の挿通孔122Aに供給する態様であってもよい。
【0065】
また、本実施形態に係る発泡シール材10の製造方法では、スクリュー型の押出機本体110を適用した態様を説明したが、これに限定されない。例えば、ダイナミックミキサー、スタティックミキサー等を適用した態様であってもよい。この態様は、2液型の熱硬化性エラストマーを適用する場合に有効である。
【0066】
また、本実施形態に係る発泡シール材10の製造方法では、ホッパーの代わりに、熱硬化性エラストマーを導入する装置(例えば、未加硫ゴムのリボン状物を連続的にスクリューに導入するローラ、2液の半固型原料を導入するための、タンク又はポンプなどの装置の)を備える態様であってもよい。
【0067】
本実施形態に係る発泡シール材10の製造方法は、上記態様に限定されない。発泡シール材10は、周知の押出機を利用して製造できる。また、軟質熱可塑性樹脂又は熱硬化性エラストマーの押出形状を変えることで、可撓性連泡体12の側面の任意の一部に押出被覆層14が形成された発泡シール材10を製造できる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下において「部」は特に断りのない限り質量基準である。
【0069】
<実施例1>(4面(全周)被覆の例)
押出機として30mmスクリュー径、長/径比(L/D)=30のクロスヘッドタイプの単軸押出機(日本製鋼所)に、軟質熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル(ビニカCE65DF A硬度65 三菱ケミカル社製)を供給した。スクリュー温度160℃で押出しつつ、ダイス後方より、長尺状の可撓性連泡体(日本発条社製スーパーシートHP、断面正方形(10mm×10mm)の自己スキン層付き発泡ポリウレタン、密度0.045g/cm3、熱硬化性撥水性ポリウレタンフォーム、ポリウレタンフォームの4つ側面のうち、一面に伸び防止部材として塩ビ系粘着テープを貼り付けた塩ビ系粘着テープ付き品;塩ビ系粘着テープはエスロンテープ#370 積水化学工業社製を使用)を導入した。そして、可撓性連泡体の4つ側面の全面に、厚み250μmで軟質熱可塑性樹脂を押出被覆し、冷却した。その後、0.5m長さで切断し、断面正方形(10.4mm×10.4mm、角部R=1.5)で、可撓性連泡体の4側面に押出被覆層が形成された発泡シール材を得た。
【0070】
<実施例2>(2面被覆品の例)
可撓性連泡体におけるエスロンテープ(伸び防止部材)の面及びその隣面のうち1面にのみ押出被覆をした以外、実施例1と同様にして発泡シール材を得た。
【0071】
<実施例3>(3面被覆品の例)
可撓性連泡体におけるエスロンテープ(伸び防止部材)の面及びその両隣面の2面に押出被覆をした以外、実施例1と同様にして発泡シール材を得た
【0072】
<実施例4>(非撥水性フォームの例)
可撓性連泡体として、モルトプレンSM-55(イノアック社製 密度0.055g/cm3、熱硬化性非撥水性ポリウレタンフォーム、非自己スキン、ポリウレタンフォームの4つ側面のうち、一面に伸び防止部材として塩ビ系粘着テープを貼り付けた塩ビ系粘着テープ付き品;塩ビ系粘着テープはエスロンテープ#370 積水化学工業社製を使用)を用いた以外は、実施例1と同様にして発泡シール材を得た。
【0073】
<実施例5>(EPDMフォームの例)
可撓性連泡体として、エプトシーラー685(日東電工社製 密度0.155g/cm3 熱硬化性撥水EPDM系フォーム、半独泡タイプ、非自己スキン、EPDM系フォームの4つ側面のうち、一面に伸び防止部材として塩ビ系粘着テープを貼り付けた塩ビ系粘着テープ付き品;塩ビ系粘着テープはエスロンテープ#370 積水化学工業社製を使用)を用いた以外は、実施例1と同様にして発泡シール材を得た
【0074】
<実施例6>(金属ワイヤー伸び防止部材)
可撓性連泡体(ウレタンフォーム)の4つ側面のうち一面に、伸び防止部材として、直径0.2mmの金属高硬線を可撓性連泡体の長手方向に沿うように配置し、塩ビ系粘着テープを用いない以外は、実施例1と同様にして発泡シール材を得た。
【0075】
<実施例7>(伸び防止部材なし)
可撓性連泡体として、スーパーシールWB(日本発條社製 密度0.055g/cm3 熱硬化性撥水性発泡ポリウレタン、非自己スキン)を用い、塩ビ系粘着テープを用いない以外は、実施例1と同様にして発泡シール材を得た。
【0076】
<実施例8~10>(樹脂A硬度変化)
軟質熱可塑性樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマー(アロン化成社製低硬度品 AR-SC-45 A硬度41、 AR-SC-15 A硬度13、 AR-SC-0 A硬度0)を用いた以外は、実施例1と同様にして発泡シール材を得た。
【0077】
<実施例11>(樹脂A硬度変化)
軟質熱可塑性樹脂として、TPO系熱可塑性エラストマー(三菱ケミカル社製低硬度品 サーモランTT829B A硬度88)を用いた以外は、実施例1と同様にして発泡シール材を得た。
【0078】
<実施例12>(樹脂A硬度変化)
軟質熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル(ビニカCE85QB A硬度85 三菱ケミカル社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして発泡シール材を得た。
【0079】
<実施例13>(自己スキン層の例)
可撓性連泡体として、上下両面が自己スキン層(伸び防止部材に該当)を有するニッパレイC(日本発条社製 自己スキン層付き発泡ウレタン5mm×5mm、密度0.07g/cm3、熱硬化性非撥水性ウレタンフォーム)を用い、塩ビ系粘着テープを用いない以外は、実施例1と同様にして発泡シール材を得た。
【0080】
<実施例14>(自己スキン層の例)
上下両面が自己スキン層(伸び防止部材に該当)を有するニッパレイEM30(日本発条社製 自己スキン付き発泡ウレタン3mm×5mm、密度0.30g/cm3、熱硬化性非撥水性ウレタンフォーム)を用い、塩ビ系粘着テープを用いない以外は、実施例1と同様にして発泡シール材を得た。
【0081】
<実施例15>(被覆樹脂厚さ違いの例)
厚み500μmで軟質熱可塑性樹脂を押出被覆した以外は、実施例1と同様にして発泡シール材を得た。
【0082】
<比較例1>(独立気泡構造発泡体で押出被覆層無しの例)
ゴム系独泡体のN-148(イノアック社製 非自己スキン 密度0.14g/cm3)を発泡シール材とした。
【0083】
<比較例2>(連泡体で押出被覆層無しの例)
スーパーシートHP(実施例1で使用のもの)を発泡シール材とした。
【0084】
<比較例3>
溶剤系コーティング剤(バーノックBN18-472 DIC社製ウレタン系コーティング剤)をスプレーで、実施例1の可撓性連泡体であるスーパーシートHP(10mm×10mm)の表面に被覆したが、スプレーすると同時に可撓性連泡体が膨潤し、コーティング剤を吸収してしまった。80℃で乾燥するも十分乾燥せず評価試験できなかった。
【0085】
<比較例4>
水系コーティング剤としてパーマリンUA-300(三洋化成工業社製 ウレタン系水エマルジョン)を、実施例1の可撓性連泡体であるスーパーシートHP(10mm×10mm)にスプレーし被膜を作製し80℃で30分乾燥した。水系コーティング剤は発泡体に含侵するも被膜は収縮するものが形成できたが、エマルジョン自体が親水性のためか止水性は全くなかった。
【0086】
<実施例20>
定量吐出ポンプと30mmスクリュー径を備えたクロスヘッドタイプの押出機に、熱硬化性エラストマーとして付加重合型の液状シリコーンゴム(KEG-2003H-40-A/B 2液型シリコーンゴム、A硬度41 信越化学工業社製)を供給した。スクリュー温度45℃で押出しつつ、ダイス後方より、長尺状の可撓性連泡体(日本発条社製スーパーシートHP、断面正方形(10mm×10mm)の自己スキン層付き発泡ポリウレタン、密度0.045g/cm3、熱硬化性撥水性ポリウレタンフォーム、ポリウレタンフォームの4つ側面のうち、一面に伸び防止部材として塩ビ系粘着テープを貼り付けた塩ビ系粘着テープ付き品;塩ビ系粘着テープはエスロンテープ#370 積水化学工業社製を使用)を導入した。そして、可撓性連泡体の4つ側面の全面に、厚み250μmで熱硬化性エラストマーを押出被覆し、90℃で10分硬化した。その後、0.5m長さで切断し、断面正方形(10.4mm×10.4mm、角部R=1.5)で、可撓性連泡体の4側面に押出被覆層が形成された発泡シール材を得た。
【0087】
<実施例21>
熱硬化性エラストマーとして、液状シリコーンゴムのかわりに、付加重合型の液状フッ素ゴム(SIFEL3405A/B 2液型フッ素ゴム A硬度40 信越化学工業社製)を用い、硬化温度150℃で8分硬化した以外、実施例20と同様な方法で4側面に押出被覆層が形成された発泡シール材を得た。
【0088】
<実施例22>
熱硬化性エラストマーとして、液状シリコーンゴムのかわりに、湿分硬化型の1成分系シリコーンゴム(シーラント72 1成分シリコーンシーラント A硬度30 信越化学社製)を用い、実施例20と同様な方法で4側面に押出被覆層が形成された発泡シール材を得た。
【0089】
<実施例23>
熱硬化性エラストマーとして、液状シリコーンゴムのかわりに、湿分硬化型の1成分系アクリルウレタンゴム(ボンドAUクイック、A硬度40、引張応力0.2N/mm2/@23℃、コニシボンド社製)を用い、実施例20と同様な方法で4側面に押出被覆層が形成された発泡シール材を得た。
【0090】
<実施例24>
伸び防止部材を設けない以外は、実施例20と同様な方法で4側面に押出被覆層が形成された発泡シール材を得た。
【0091】
(50%圧縮止水性)
止水性は、圧縮型止水試験器を使用して評価した。具体的には、次の通りである。
長さ10cmの各例の発泡シール材又は可撓性発泡体(以下、試験体と略す)の1面に固定用の両面テープ(積水化学製#5782)を貼る。この時、伸び防止材のある試験体では、伸び防止材と同じ面に両面テープを貼付する。次に、その両面テープでアクリル板に試験体を固定する。次に、試験体の両末端を、可撓性の反応型接着剤(スーパーXクリア強力型;セメダイン(株)製)を用いて10mm厚さのスーパーシートH3(日本発条製;両面スキンタイプ、止水性30cm合格)を接着し、コの字型を作製する。これを試験体厚さの50%のスペーサを介して、もう1枚のアクリル板で挟む。そして、上方開口部から水を注入し、所定の水圧になるようにした。止水性の高さ(cm)は24時間漏水しない水圧高さを表した。
なお、止水性は止水保持時間24時間で止水圧3cm以上を、良好と判定する。
【0092】
(70%圧縮止水性)
試験体の厚さの70%のスペーサを介して挿むこと以外は、上記方法と同じ操作で、70%圧縮止水性を測定した。
【0093】
(吸水率)
各例の発泡シール材又は可撓性発泡体を10cmの長さに切断し、体積(cm3)と重量W0(g)を測定する。この発泡体を50%圧縮状態に固定し、室温条件で10cm水深にて24時間保持した後の重量W1(g)を測定した。なお、吸水率(vol%)は、(W1-W0)/体積×100で求めた。
【0094】
(50%圧縮応力)
各例の発泡シール材又は可撓性発泡体の50%圧縮応力を評価した。50%圧縮応力は、JIS K6400-2(2012)に準じた測定法によって測定した。但し、サンプル長は、5cmとした。
【0095】
(圧縮ひずみ)
各例の発泡シール材又は可撓性発泡体の圧縮ひずみを評価した。圧縮ひずみは、10cmの長さの発泡体の厚みT0を測定し、それを50%圧縮状態で、70℃のオーブンに22時間入れた後、圧縮解放後室温条件で30分後に厚みT1を測定することによって求めた。圧縮ひずみ(%)は、(T0-T1)/T0X100で計算する。
【0096】
(その他)
各例の可撓性発泡体の引張モジュラス、独泡率は、既述の方法に従って測定した。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
上記結果から、実施例の発泡シール材は被覆前の発泡体に比べ大幅な止水性や吸水率の向上が見られ、更に比較例の独泡ゴムに比べても、同等以上の止水性を発揮し、しかも、圧縮応力や圧縮ひずみの悪化が殆ど無い発泡シール材であることが明らかである。更に、樹脂が被覆されることで、機械的強度や耐候性も十分に有することは明らかであり、柔らかでありながら耐久性に優れた理想的なシール材であると言える。
【符号の説明】
【0102】
10 発泡シール材
11 被シール材
12 熱硬化型の可撓性長尺連泡体(可撓性連泡体)
12A 被シール材との非接触面(液体・気体接触面)
12B 被シール材との接触面
14 押出被覆層
16 伸び防止部材
100 発泡シール材の製造装置
101 押出機
110 押出機本体
111 シリンダー
112 スクリュー
113 駆動モータ
114 ホッパー
115 ブレーカープレート
116 ヒーター
120 クロスヘッド
121 ケース
122 ノズル
122A 挿通孔
123 押出ダイス