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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】レベル検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/284 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
G01F23/284
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018030442
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2018146574
(43)【公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2017042583
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391004090
【氏名又は名称】関西オートメイション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 一行
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩二
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 嘉二郎
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-345145(JP,A)
【文献】国際公開第2012/008021(WO,A1)
【文献】特開平4-106427(JP,A)
【文献】実開昭63-148835(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0128395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F23/14-23/296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納物を収納するタンクの外壁に、前記収納物のレベルをマイクロ波の発振および受信により検出するレベルセンサが設けられ、
前記レベルセンサは、タンクの外壁の外方に露出して取り付けられており、
タンク内の収納物から反射して前記レベルセンサが受信するマイクロ波の第1信号レベルと、タンクの内面またはタンクに設けた反射板から反射して前記レベルセンサが受信するマイクロ波の第2信号レベルとの差に基づき、
測定位置における前記収納物の有無を検知するように構成されたレベル検出装置において、
前記レベルセンサはマイクロ波を発振する発振器と、前記マイクロ波を本体外に発信する第一のアンテナと、反射されたマイクロ波を受信する第二のアンテナを備え、前記第1および第2のアンテナの前面を含むアンテナ面と、タンクの外面との間にギャップが設けられており、前記信号レベル差が最大となるように前記ギャップの大きさが設定されているレベル検出装置
【請求項2】
請求項1に記載のレベル検出装置において、前記タンクの内部に、前記レベルセンサに対向して配置されて、前記マイクロ波を反射する反射板を備えた、レベル検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレベル検出装置において、前記タンクの外壁面上に、前記レベルセンサに対向して配置されて、前記マイクロ波を反射する反射板を備えた、レベル検出装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のレベル検出装置において、前記レベルセンサはマイクロ波ドップラーセンサであるレベル検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベル検出装置に関し、特にマイクロ波を利用したレベル検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業生産、農業生産、廃水処理や水資源の管理等の各種の分野において、液体や粉体の表面レベルの検出が必要とされている。特に、液体や粉体をタンク内に収納する場合において、タンク内の液体、粉体の表面レベルを検知するため、各種のレベル検出装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、収納容器内に取り付けられて、収納容器内に突出した電極で静電容量を検知して、静電容量に逆比例した周波数で発振させ、その発振周期に基づいて収納物のレベル位置の検知信号を出力する静電容量式レベル検出装置が記載されている。
【0004】
また特許文献2には、揺動中心の回りに揺動する羽根を駆動機で揺動させ、羽根の揺動角度が所定値以下になったことを検知して、羽根に接触した被測定物のレベルを検出するレベル検出回路を備えた振子式レベル検出装置が記載されている。
【0005】
特許文献3には、容器の外壁に固定された探触子から容器の内側面に超音波を発射し、発射波および反射波の減衰時間の差異により、液体の有無を検出する超音波レベルセンサ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-322770号公報
【文献】特開2006-145265号公報
【文献】特開2004-28765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から使用されているレベル検出装置では、多くの場合、計測器の一部がタンク内に設置されている。例えば、特許文献1では電極をタンク内に配置しており、特許文献2でも、タンク内に羽根が設置されている。しかし、タンクの強度、密閉性を維持し、装置の取り付けやメンテナンスを簡便化するためには、タンク外からの計測が可能であることが好ましい。特に硫酸、塩酸、弗酸等の酸やアルカリ溶液等の腐食性物質を収納するタンク、毒性物質を収納するタンク、食品工業や製薬等の分野でコンタミネーションの回避が厳密に要求される用途に用いられるタンクなどでは、計測装置の保護、内容物の漏洩回避、タンク内への異物(外気、埃、雑菌など)の混入防止などの観点から、タンク外から計測可能なレベル検出装置が望まれている。特許文献3の超音波レベルセンサ装置は、タンク外部から液体の有無を判別し得るものであるが、超音波が伝播しにくい外壁(セラミック等)や空気が介在する場合には、超音波による計測は適用し難いという問題がある。
【0008】
本発明は、タンクの密閉性を保持したまま、外部からタンク内部の液体やスラリーなどの流体や粉体の表面レベルを計測可能なレベル計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレベル検出装置は、収納物を収納するタンクの外壁に、前記収納物のレベルをマイクロ波を用いて検出するレベルセンサを設けたレベル検出装置である。このレベル検出装置において、レベルセンサはタンクの外方に露出して取り付けられたものとすることができる。このレベル検出装置によれば、マイクロ波を用いることによって、タンクの密閉性を保持したままタンク内部の流体(液体、スラリー)や粉体のレベルを検出することができる。またレベルセンサはタンクの外方に露出しているので、レベルセンサの保守点検が容易である。
【0010】
前記レベル検出装置は、タンク内の収納物から反射して前記レベルセンサが受信するマイクロ波の第1信号レベルと、タンクの内面またはタンクに設けた反射板から反射して前記レベルセンサが受信するマイクロ波の第2信号レベルとの差に基づき、測定位置における前記収納物の有無を検知するように構成されたレベル検出装置であってもよい。例えば、前記レベル検出装置は、前記レベルセンサが受信するマイクロ波の出力直流電圧を、タンクが空の場合や検出位置に収納物がない場合にタンクの内面または反射板から反射されて検知される値と、測定時に検知される値で対比することにより、測定位置における収納物の有無を検知するものであってもよい。
【0011】
前記レベル検出装置は、前記レベルセンサがマイクロ波を発振する発振器と、前記マイクロ波を本体外に発信する第一のアンテナと、反射されたマイクロ波を受信する第二のアンテナを備え、前記第1および第2のアンテナの前面を含むアンテナ面と、タンクの外面との間にギャップが設けられており、前記信号レベル差が最大となるように前記ギャップの大きさが設定されているレベル検出装置であってもよい。例えば、前記レベルセンサは、タンクの外壁に設置されたセンサ位置決め部材と、前記位置決め部材に設置されたセンサ本体とを備え、前記センサ本体のアンテナ面と前記タンク外壁との距離を前記位置決め部材によって調整可能とされたものであってもよい。このような構成のレベル検出装置によれば、収納物の種類に応じてレベル検出の感度を最適化することができる。所定レベルでの収納物の有無を一個のセンサで検知できるため、検出にかかる構成を簡略化することができる。
【0012】
前記レベル検出装置は、前記タンクの内部に、前記レベルセンサに対向して配置されて、前記マイクロ波を反射する反射板を備えた、レベル検出装置であってもよい。これにより反射板がタンクの外方に存在しないのでタンクがコンパクトになる。ただし、前記タンクの外壁面上に、前記レベルセンサに対向して配置されて、前記マイクロ波を反射する反射板を備えた、レベル検出装置であってもよい。
【0013】
前記レベル検出装置において、前記レベルセンサとしてはマイクロ波ドップラーセンサを使用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレベル検出装置によれば、液体、スラリー、粉体などのレベルをタンクの密閉性を保持したまま検出することができる。本発明のレベル検出装置は、検知にマイクロ波を用いるので、センサと収納物の間に空気が介在するような場合でも、収納物の有無を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかる、レベル検出装置の構成を示す、概略図である。
図2】表1に示された条件で計算した場合において、タンクが空の場合(実線)と、測定位置に収納物がある場合(破線)の出力直流電圧およびその差(点線)の、センサ変位に対応する変動を示す図である。
図3】実施例2において、アクリルタンク内の水を厚さ20mmのアクリル板を介して計測した場合の実測値において、タンクが空の場合(実線)と、測定位置に収納物がある場合(破線)の出力直流電圧およびその差(点線)の、センサ変位に対応する変動を示す図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる、レベル検出装置のセンサの配置状態を示す断面図(センサ本体については側面図)である。
図5図4と同様の構成において、タンク内に反射板を設置した場合の断面図である。
図6】電磁波を透過しないタンクの壁に電磁波を透過する物質からなる窓を設け、図4と同様のセンサを設置して粉体状の収納物を測定する場合を示す断面図である。
図7】本発明のレベル検出装置を液体タンクのレベルスイッチに用いた場合の一構成例を示す概略図である。
図8】実施例4において、収納物(灰)のレベルを変化させた場合の、センサ出力の経時的変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のレベル検出装置は、収納物を収納するタンクの外壁に、前記収納物のレベルをマイクロ波を用いて検出するレベルセンサを設けたレベル検出装置である。以下、図面を参照して、本発明の実施形態にかかるレベル検出装置を説明する。なお各図面において、対応する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態にかかるレベル検出装置の構成を示す概念図である。本実施形態のレベル検出装置1は、タンク2の壁20の外壁面20a上に設置されて、タンク壁20の外方に露出するレベルセンサ10と、タンクの収納部をはさんで、前記レベルセンサ10に対向する位置で、タンクの外壁面上に設置された反射器(反射板)13とを備えている。
【0018】
レベルセンサ10は、タンク外壁3に設置されたセンサ位置決め部材(センサガイド)12と、前記センサ位置決め部材12により保持されたセンサ本体11とからなる。センサ本体11前面のアンテナ面11cつまり出射面と、タンクの外壁面20aの間には、所定のギャップ(空気層)Gが設けられており、センサ位置決め部材12は、前記ギャップGの間隔zを調整可能となるように構成されている。センサ本体11は、高周波を発生する発振器11dと、発信用のアンテナ11aと、受信用のアンテナ11bと、混合器11fとを備えている。発振器11dに交流入力Aが供給され、混合器11fからセンサ出力信号Sが出力される。
【0019】
図1に示す構成において、発信アンテナ11aから発信されたマイクロ波は、図に実線、破線、一点鎖線で示すように、タンク外壁面20a(または後述するセンサカバーのセンサ側壁面)、タンク壁20と収納物3(または空気)との界面(タンク壁内面20b)、収納部21をはさんで対向するタンク内壁面20c、その外側のタンク外壁面にとりつけられた反射器(反射板)13でそれぞれ反射して受信アンテナ11bで受信される。センサからの出力Sは、送信電圧E(t)と受信電圧E(t)の積の直流成分であり、この積で表れる周波数2fの成分は、フィルター(図示せず)で除去される。タンクに収納物がある場合の出力直流電圧E、およびタンクが空の場合の出力直流電圧Eは、それぞれ次式(1)、(2)で表される。
【0020】
【数1】
【0021】
【数2】
【0022】
上の式において、fはキャリア周波数、Eは伝送電圧、Eroはタンク壁(またはセンサカバー)からの受信電圧、Erc、E rcは収納物からの受信電圧、E rmは、反射器からの受信電圧、2Dはアンテナの間隔、cは光速、cはタンク壁をマイクロ波が透過する速度、cmは収納物中のマイクロ波速度、lcはタンク壁の厚み、lは収納物の厚み(タンクの内径)である。
【0023】
一例として、各パラメータを下記の表1のように設定した場合の、E(破線)およびE(実線)の値、及び両者の差ΔE(点線)=E-Eを、変位zを横軸にとってプロットしたものを図2に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
図2に見られるように、ギャップGの間隔zを調整することにより、ΔEの大きさを調整することができ、センサからの出力信号S(直流電圧)により、収納物の有無を検知することができる。
【0026】
上記の式は、タンクの外壁面に反射器を設置した場合について記載しているが、反射板を用いない場合には、E rmを0とすればよい。なお実際の装置の使用にあたっては、収納物に応じてΔEが最大となるようにギャップを調整し、レベル検出装置として使用すればよい。一例として図3に、後述する実施例2で実際に測定されたE(実線)、Em(破線)、ΔE(点線)の例を示す。
【0027】
図4に、本発明にかかるレベルセンサ10をタンクに設置する部分の断面図を示す(センサ本体については側面図)。本実施形態では、タンク壁20はアクリルのような樹脂製である。センサ位置決め部材12は、タンクの外壁面20aに固定されている。固定には、ボルトのような締結手段12aを用いてもよい。例えば、センサ本体11の外面の一部に雄ねじ11eを形成し、位置決め部材12に形成された雌ねじ12eにねじ込んでもよい。その際、ねじ込む深さにより、アンテナ面11cと外壁面20aとのギャップGの間隔zを調整し、被検体である収納物の信号強度を検知する際の信号強度を最大化するように調整する。
【0028】
なお、タンクが樹脂、セラミック等の電磁波(本発明ではマイクロ波)を通す素材で構成されている場合は、上述の実施形態のようにタンク外部にセンサを設置すればよいが、タンクが電磁波を通さない素材で構成されている場合、タンクの壁に開口を設け、電磁波を通す素材からなる窓で開口を塞いでもよく、あるいは、電磁波を通す素材からなるカバーをつけたセンサをタンク内に突出させてもよい。つまり、レベルセンサ10はタンク壁20から外部に露出するようにタンク壁に取り付ければよい。レベルセンサ10がタンクの外方に露出していることにより、レベルセンサの保守点検が容易となり、またタンクの収納物に応じてギャップGを調整することができる。但し必要に応じ、センサのアンテナ面をタンク内部に配置してもよい。また図4では、レベルセンサと反射板をタンク外壁面に設置する場合について示したが、必要に応じ、反射板をタンク内部に配置してもよい。
【0029】
図5は、タンク内に反射板13を設置した状態を示している。また前述のとおり、反射板は必須の構成ではなく、場合によっては、反射板を用いなくてもよい。タンク内の収納物の比誘電率が比較的高い場合、反射板なしに収納物を検出することができる。またタンク壁が電磁波を通さない素材からなる場合、レベルセンサからのマイクロ波がセンサと反対側のタンク壁で反射される際の反射強度が高いで、反射板は不要である。
【0030】
図6は、電磁波を通さない素材で構成されたタンク壁20の開口部に電磁波を通す素材(例えば樹脂)の窓21を設けてレベルセンサ10を装着した状態を示す。ここでレベルセンサ10は、図4で示したレベルセンサと同様の構成をとる。窓21を透過した電磁波(破線)は、収納物3(粉体)で反射してレベルセンサ10の受信アンテナで受信される。収納物3がない場合、レベルセンサ10の反対側の内壁面20cから反射したマイクロ波がレベルセンサ10の受信アンテナによって受信される。
【0031】
図4から図6に示すそれぞれの構成において、収納物がある場合と収納物がない場合とでは、レベルセンサ10からの出力信号Sは(特定のz値以外では)異なり、その差異により、測定部位における収納物の有無を判定することができる。すなわち、それぞれの実施形態において、収納物がある場合と、ない場合のレベルセンサ10からの出力電圧を測定し、位置決め部材12で電圧差が最大となるように、センサ本体11の位置を調整し、レベル検出装置として使用すればよい。
【0032】
本発明のレベル検出装置1に使用されるレベルセンサ10としては、マイクロ波ドップラーセンサを用いることができる。マイクロ波の発信アンテナと、受信アンテナを備えたセンサとしては、自動車や人などの動作検知用に、ドップラーセンサが開発されている。
使用されるマイクロ波の周波数は、例えば、10.5GHz~10.55GHzであってもよく、24.05GHz~24.25GHzであってもよい。発明の構成上は限定されないが、実用的には、法令により使用が許可されている周波数を用いる必要があり、日本では、上記の周波数がセンサ用途として許可されている。他の周波数帯が許可されている国では、別の周波数を用いてもよい。
【0033】
上記レベル検出装置は、タンク内の収納物が所定のレベルになった場合に収納物の投入を停止または開始するレベルスイッチとしても利用できる。
図7は、本発明のレベル検出装置を液体タンク2に設置した場合の例を示す概略断面図である。タンク2の上方は、第1の弁4Aを介して流入路5Aに接続されており、下方は第2の弁4Bを介して放出路5Bに接続されている。本発明のレベル検出装置1A、1B(この場合はセンサ10A、10B)がタンク壁20の所定位置に二個設置されており、検出装置と弁は、コントローラ6に接続されている。検出装置1A、1Bにおいて、レベルセンサ10A、10Bは感度が最大となるように設置間隔2Dが調整されている。例えば、第2の弁4Bを開放してタンク内の液体3を放出する場合に、液面が第2の検出装置1Bの測定レベルより低下すると、コントローラ6は出力電圧の変化を検知し、第2の弁4Bを閉じる指令を発する。次いで、第1の弁4Aが開放され、タンク2内に液体3が補充される。液面が第1の検出装置4Aの測定レベルを超えると、コントローラ6は出力電圧の変化を検知し、第1の弁4Aを閉鎖する。このようにして、タンク2内の収納物3のレベルを両センサ10A、10Bの間となるように保持することができる。
【実施例
【0034】
[実施例1]
被検体1として、発泡率99%、比誘電率1.006の発泡スチロール(厚み150mm)、被検体2として、容積144mm×144mm×144mm(幅150mm)のアクリルタンクに水(比誘電率80)を溜めたものを用意した。また反射板として面積365mm×365mm、厚み0.3mmの銅板をセンサ側の発泡スチロールの外面またはアクリルタンクの外壁面から0.15m、0.30m、0.60m、3.00mの位置に設置した。またセンサを発泡スチロールの外面または、アクリルタンクの外壁面に直接設置した場合、厚み1mmのポリテトラフルオロエチレンカバーを設けた場合、厚み3mmのアクリルカバーを設けた場合の3条件で実験を行った。センサとしては、周波数24.15GHzのマイクロ波ドップラーセンサ(関西オートメイション製)を用い、アンテナ面をセンサ先端面より0.5mm毎に15mmの位置まで移動した場合の出力電圧、収納物の有無による電圧差を求めた。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2において、T1は、センサカバーとして1mm厚のポリテトラフルオロエチレン、A3は3mm厚のアクリルをそれぞれ使用し、T1A3は、3mm厚のアクリルセンサカバーの前に、さらに1mm厚のポリテトラフルオロエチレンを設置した場合、A3a1A3は、3mmアクリル(タンク壁)と1mmの間隔(空気層)をあけて、厚さ3mmのアクリルを設置した場合を示す。
【0037】
比較的高い誘電率を有する水の場合、カバー、タンク壁面の素材、反射板の位置によって、電圧差の極大値の平均値と極小値の平均値はあまり変化しない。また、表には示さないが、反射板を用いない場合でも、物質の存在が確認できた。これは、電磁波の大部分が被検体である水によって反射されることによると考えられる。他方、誘電率の低い発泡スチロールの場合、センサの近傍の0.15m位置に反射板を設置することにより、感度の向上が明瞭に認められる。電圧差の極大値と極小値が現れる空間周期は6.5~7mmであり、24.15(GHz)の半波長6.2mmに近い。この例では、ギャップG(図1)の位置調整による最大感度の探索は7mm程度までの調整範囲で行えばよいことがわかる。なお、発泡スチロールによる実験は、比誘電率の低い粉体を測定する場合の模擬実験と見ることができるので、本発明のレベル検出装置は、粉体の測定にも有用であることがわかる。
【0038】
[実施例2]
厚み3mmのアクリルタンク(A3)に水を収納し、これにさらに厚み20mmのアクリルおよび/または厚み20mmの天然ゴム(R20)を積層したものを用い、これに実施例1と同じセンサを設置してタンク外からの検出実験を行った。反射板は使用しなかった。その結果を表3に示す。また一例として、厚さ20mmのアクリル板とタンク壁を介して計測を行った場合(A23)のグラフを図3に示す。図3は、実線はタンクが空の場合、破線がレベル検出位置に水がある場合の出力直流電圧を示し、点線は両者の差ΔE(スケールは異なる)を示す。
【0039】
【表3】
表3に見るように、タンク壁面の厚さと素材により、出力最大値は変化する。他方、z=5~100mmの範囲で、出力が最大値となるときに、空タンクとの出力差も最大になっていた。したがって、レベル計としての使用にあたっては、タンクに水があるときに出力最大となる条件に変位(z値)を設定すればよい。
【0040】
[実施例3]
JISZ1710に規定されるポリエチレン樹脂タンクを用意し、タンク壁に直接マイクロ波ドップラーセンサを設置した場合、20mmのアクリル樹脂を介して測定した場合(A20)、厚さ20mmの天然ゴムを介して測定した場合(R20)、厚さ3mmのアクリル樹脂、厚さ20mmの天然ゴム、厚さ20mmのアクリル樹脂の3層(A3R20A20)をタンク壁に積層し、それぞれ最外層上にマイクロ波ドップラーセンサを設置し、タンク内の灯油を検出する実験を行った。反射板は使用しなかった。その結果を表4に示す。表4に示すように、タンク壁の条件によって異なるが、変位zの調整により、電圧差が検出された。
【0041】
【表4】
【0042】
[実施例4]
レベルセンサの用例として、陶器製の火鉢の中の灰の検知を火鉢の外から検出する実験を行った。反射板は使用しなかった。センサによる出力測定開始後、10秒~17秒で、火鉢内の灰をセンサレベルより上まで積み重ね、34~44秒の間に、灰をかき出してセンサレベルより低くした。この間のドップラーセンサの出力レベルを図8に示す。この実験では、計測は肉厚のセラミック(火鉢の壁)を介して行われており、灰のレベルもセンサ前方で均一ではないので、空気も介在するが、図8に見られるように、壁面近傍の灰のレベルの変化が、センサ出力の変化として検出された。
【0043】
[実施例5]
低誘電率の被検体をセンサで検知する際の反射板の効果を検討するため、発泡率99%、比誘電率1.007のサンプル1と、発泡率97%、比誘電率1.015の発泡スチロールをはさんで、30mm×27mm、30mm×11mm、30mm×6mmの三種類の銅製の反射板をドップラーセンサのアンテナ面に対し25mm離間して設置し、さらにアンテナ面と反射板の間が空気の時に出力が0Vとなるようにセンサの変位zを調整し、アンテナ面と反射板の間にサンプルをはさんだ場合の0Vからの出力電力の変化を読みとった。その結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
表5に示すように、反射板を用いることにより、比誘電率の低いサンプルについても、レベル検出装置としての利用が可能であることがわかる。この結果から、粉体などの比誘電率の低い試料についても、例えば図1図6に示す反射板13を用いることにより、レベル計測が容易になると期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のレベル検出装置によれば、密閉タンク内の流体や粉体のレベルの計測をタンク外から好適に行うことができる。レベル検出装置のセンサとしては、普及率の高い、ドップラーセンサを用いることができ、簡便かつ安価な構成とすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 レベル検出装置
10 センサ
11 センサ本体
12 位置決め部材
13 反射器(反射板)
11a 出力アンテナ
11b 受信アンテナ
11c アンテナ面
11d 高周波発振器
11e ネジ山
2 タンク
20 タンク壁
20a タンク壁外面
20b、20c タンク壁内面
21 窓(カバー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8