(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】接近検知システム
(51)【国際特許分類】
G01V 15/00 20060101AFI20220614BHJP
G01V 13/00 20060101ALI20220614BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20220614BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G01V15/00
G01V13/00
G08B21/02
G08B21/00 U
(21)【出願番号】P 2018119020
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000159618
【氏名又は名称】吉川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原野 信也
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-142675(JP,A)
【文献】特開2014-177790(JP,A)
【文献】特開平7-168985(JP,A)
【文献】特開2014-059468(JP,A)
【文献】特開2014-222406(JP,A)
【文献】特開2012-053515(JP,A)
【文献】特開2005-346228(JP,A)
【文献】特開2016-057934(JP,A)
【文献】特開2005-164552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0077710(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G08B19/00-21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の機器に距離検知制御装置及び磁界検知機能付きRFIDタグが取り付けられており、前記第1の機器に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグと第2の機器に取り付けられた距離検知制御装置との接近、又は前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置と前記第2の機器若しくは作業者に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグとの接近を検知して接近警報を出力する接近検知システムであって、
前記各距離検知制御装置はそれぞれ、当該距離検知制御装置のID情報を含む誘導磁界を送信する磁界送信部と、電波受信部と、前記接近警報を出力する警報部と、これらを制御する装置制御部とを備え、
前記各磁界検知機能付きRFIDタグはそれぞれ、前記磁界送信部から送信される誘導磁界を検知する磁界センサ部と、当該磁界センサ部が前記誘導磁界を検知したときに前記ID情報を含む磁界検知電波を送信する電波送信部と、これらを制御するタグ制御部とを備え、
前記第1の機器に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグのタグ制御部は、前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置からの誘導磁界を前記磁界センサ部が検知したときは、前記ID情報と共に付加情報を含む磁界検知電波を前記電波送信部から送信させ、
前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置の装置制御部は、当該距離検知制御装置のID情報を含む磁界検知電波を前記電波受信部が受信しても、当該磁界検知電波に前記付加情報が含まれる場合は、前記警報部から接近警報を出力させず、かつ、前記ID情報と共に前記付加情報を含む磁界検知電波を前記電波受信部が所定時間L以上受信しないときは、当該接近検知システムに異常があることを警告する、接近検知システム。
【請求項2】
前記第1の機器に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグのタグ制御部は、前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置からの誘導磁界を前記磁界センサ部が検知したとしても、前回、前記電波送信部が前記磁界検知電波を送信してから所定時間M(ただし、M<Lである。)を経過していないときは前記磁界検知電波を前記電波送信部から送信させない、請求項1に記載の接近検知システム。
【請求項3】
前記第1の機器に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグのタグ制御部は、前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置からの誘導磁界を前記磁界センサ部が検知したときは、前記ID情報及び前記付加情報と共に前記誘導磁界の磁界強度情報を含む磁界検知電波を前記電波送信部から送信させ、
前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置の装置制御部は、前記磁界強度情報の基準値を設定すると共に、この基準値と前記磁界検知電波に含まれる磁界強度情報とを比較し、前記磁界検知電波に含まれる磁界強度情報が前記基準値となるように、前記磁界送信部から送信される誘導磁界の強度を調整する、請求項1又は2に記載の接近検知システム。
【請求項4】
前記第1の機器に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグのタグ制御部は、前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置からの誘導磁界を前記磁界センサ部が検知したときは、前記ID情報及び前記付加情報と共に前記誘導磁界の磁界強度情報を含む磁界検知電波を前記電波送信部から送信させ、
前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置の装置制御部は、前記磁界強度情報の基準値を設定すると共に、この基準値と前記磁界検知電波に含まれる磁界強度情報とを比較し、前記磁界検知電波に含まれる磁界強度情報が前記基準値より小さいときは、前記接近警報を出力させる判断基準となる磁界強度の閾値を低くし、前記磁界検知電波に含まれる磁界強度情報が前記基準値より大きいときは、前記接近警報を出力させる判断基準となる磁界強度の閾値を高くする、請求項1又は2に記載の接近検知システム。
【請求項5】
前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置の装置制御部は、前記ID情報と共に前記閾値の情報を含む誘導磁界を前記磁界送信部から送信させる、請求項4に記載の接近検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトやブルドーザなどの作業車両が作業する現場において、作業者が作業車両に接近したこと、クレーンなどの作業機械において作業者が所定距離内に入ったことなどを検知し、警告灯、警告音で知らせたり、ブレーキの制動などを行う作業者接近検知システム、あるいは、作業車両同士が一定距離以内に近づいたことを検知し、警告、ブレーキの制動などを行う作業車両(機器)接近検知システムに関するものである。
なお、本発明において「機器」とは、作業車両やクレーンのように移動する機器のほか、移動しない機器を総称するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる接近検知システムとして、特許文献1に開示されているように、誘導磁界(電磁誘導波)と電波を用いたものが知られている。この特許文献1の接近検知システムは、第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置と、第2の機器又は作業者に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグとの接近を検知するもので、具体的には、距離検知制御装置からの誘導磁界を磁界検知機能付きRFIDタグが検知すると、その磁界検知機能付きRFIDタグが電波を送信し、その電波を距離検知制御装置が受信すると接近警報を出力するというものである。
【0003】
ところが、この接近検知システムは、距離検知制御装置や磁界検知機能付きRFIDタグなどに異常があると正常に動作せず、この場合、距離検知制御装置と磁界検知機能付きRFIDタグとが接近しても接近警報が出力されなかったり、距離検知制御装置と磁界検知機能付きRFIDタグとが接近していなくても誤って接近警報が出力されたりするという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、距離検知制御装置と磁界検知機能付きRFIDタグとの接近を検知して接近警報を出力する接近検知システムにおいて、当該接近検知システムに異常があることを検知できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、次の(1)から(5)の接近検知システムが提供される。
(1)
第1の機器に距離検知制御装置及び磁界検知機能付きRFIDタグが取り付けられており、前記第1の機器に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグと第2の機器に取り付けられた距離検知制御装置との接近、又は前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置と前記第2の機器若しくは作業者に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグとの接近を検知して接近警報を出力する接近検知システムであって、
前記各距離検知制御装置はそれぞれ、当該距離検知制御装置のID情報を含む誘導磁界を送信する磁界送信部と、電波受信部と、前記接近警報を出力する警報部と、これらを制御する装置制御部とを備え、
前記各磁界検知機能付きRFIDタグはそれぞれ、前記磁界送信部から送信される誘導磁界を検知する磁界センサ部と、当該磁界センサ部が前記誘導磁界を検知したときに前記ID情報を含む磁界検知電波を送信する電波送信部と、これらを制御するタグ制御部とを備え、
前記第1の機器に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグのタグ制御部は、前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置からの誘導磁界を前記磁界センサ部が検知したときは、前記ID情報と共に付加情報を含む磁界検知電波を前記電波送信部から送信させ、
前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置の装置制御部は、当該距離検知制御装置のID情報を含む磁界検知電波を前記電波受信部が受信しても、当該磁界検知電波に前記付加情報が含まれる場合は、前記警報部から接近警報を出力させず、かつ、前記ID情報と共に前記付加情報を含む磁界検知電波を前記電波受信部が所定時間L以上受信しないときは、当該接近検知システムに異常があることを警告する、接近検知システム。
(2)
前記第1の機器に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグのタグ制御部は、前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置からの誘導磁界を前記磁界センサ部が検知したとしても、前回、前記電波送信部が前記磁界検知電波を送信してから所定時間M(ただし、M<Lである。)を経過していないときは前記磁界検知電波を前記電波送信部から送信させない、前記(1)に記載の接近検知システム。
(3)
前記第1の機器に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグのタグ制御部は、前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置からの誘導磁界を前記磁界センサ部が検知したときは、前記ID情報及び前記付加情報と共に前記誘導磁界の磁界強度情報を含む磁界検知電波を前記電波送信部から送信させ、
前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置の装置制御部は、前記磁界強度情報の基準値を設定すると共に、この基準値と前記磁界検知電波に含まれる磁界強度情報とを比較し、前記磁界検知電波に含まれる磁界強度情報が前記基準値となるように、前記磁界送信部から送信される誘導磁界の強度を調整する、前記(1)又は前記(2)に記載の接近検知システム。
(4)
前記第1の機器に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグのタグ制御部は、前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置からの誘導磁界を前記磁界センサ部が検知したときは、前記ID情報及び前記付加情報と共に前記誘導磁界の磁界強度情報を含む磁界検知電波を前記電波送信部から送信させ、
前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置の装置制御部は、前記磁界強度情報の基準値を設定すると共に、この基準値と前記磁界検知電波に含まれる磁界強度情報とを比較し、前記磁界検知電波に含まれる磁界強度情報が前記基準値より小さいときは、前記接近警報を出力させる判断基準となる磁界強度の閾値を低くし、前記磁界検知電波に含まれる磁界強度情報が前記基準値より大きいときは、前記接近警報を出力させる判断基準となる磁界強度の閾値を高くする、前記(1)又は前記(2)に記載の接近検知システム。
(5)
前記第1の機器に取り付けられた距離検知制御装置の装置制御部は、前記ID情報と共に前記閾値の情報を含む誘導磁界を前記磁界送信部から送信させる、前記(4)に記載の接近検知システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明(前記(1)に記載の発明)によれば、距離検知制御装置の装置制御部が、接近検知システムに異常があることを警告することで、接近検知システムに異常があることを検知できる。これにより、接近検知システムの信頼性が向上する。
【0008】
前記(2)に記載の発明によれば、第1の機器に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグからの磁界検知電波の送信回数を減らすことができる。これにより磁界検知機能付きRFIDタグの電力消費を抑えると共に、他の磁界検知機能付きRFIDタグからの磁界検知電波の送信との混信を少なくすることができる。
【0009】
前記(3)に記載の発明によれば、距離検知制御装置の磁界送信部から送信される誘導磁界の強度が適切に調整されるので、接近検知システムの信頼性が更に向上する。
【0010】
前記(4)に記載の発明によれば、接近警報を出力させる判断基準となる磁界強度の閾値が適切に調整されるので、接近検知システムの信頼性が更に向上する。
【0011】
前記(5)に記載の発明によれば、調整された閾値の情報が他の磁界検知機能付きRFIDタグへ伝達され、その磁界検知機能付きRFIDタグが接近警報を出力する機能を有する場合、その磁界検知機能付きRFIDタグは、調整された閾値の情報に基づいて適切な接近警報を出力することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態である接近検知システムのシステム構成図。
【
図2】
図1の接近検知システムにおける距離検知制御装置及び磁界検知機能付きRFIDタグの構成を示すブロック図。
【
図3】
図1の接近検知システムの動作の一例を示すタイムチャート。
【
図4A】
図1の接近検知システムの動作の一例を示すフローチャート。
【
図5】本発明の他の実施形態である接近検知システムのシステム構成図。
【
図6A】
図5の接近検知システムの動作の一例を示すフローチャート。
【
図7A】
図5の接近検知システムの動作の他の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明の一実施形態である接近検知システムのシステム構成を示し、
図2に、この接近検知システムにおける距離検知制御装置及び磁界検知機能付きRFIDタグの構成を示している。なお、以下の説明では、「距離検知制御装置」を単に「検知機」といい、「磁界検知機能付きRFIDタグ」を単に「タグ」という。
【0014】
図1に概念的に示しているように、この接近検知システムでは、第1の機器1に検知機A及びタグaが取り付けられており、第2の機器2に検知機B、第3の機器3に検知機Cがそれぞれ取り付けられている。なお、図示の都合上、
図1においてタグaは第1の機器1から離して表しているが、このタグaは検知機Aと共に第1の機器1に取り付けられている。
【0015】
検知機A,B,Cの構成は共通であり、当該検知機のID情報を含む誘導磁界を送信する磁界送信部と、電波受信部と、接近警報を出力する装置警報部と、これらを制御する装置制御部とを備えると共に、外部電源を検知機A,B,Cの稼動に適した直流電圧(12V)に変換する電圧変換部を備える。
【0016】
一方、タグaは、検知機A,B,Cの磁界送信部から送信される誘導磁界を検知する磁界センサ部と、当該磁界センサ部が誘導磁界を検知したときに前記ID情報を含む磁界検知電波を送信する電波送信部と、接近警報を出力するタグ警報部と、これらを制御するタグ制御部とを備えると共に、電源としてバッテリを備える。
【0017】
まず、この接近検知システムの基本動作(基本機能)を説明すると、検知機A,B,Cはそれぞれ磁界送信部から長波帯周波数(例えば125kHz)の誘導磁界を送信する。この誘導磁界には、検知機A,B,CのID情報A,B,Cが付加される。
そして、タグaの磁界センサ部が誘導磁界を検知すると、電波送信部が磁界検知電波(UHF帯電波)を送信する。この磁界検知電波には、検知した誘導磁界に含まれる検知機A,B,CのID情報A,B,Cが付加される。また、タグaの磁界センサ部が検知機Aからの誘導磁界(ID情報A)を検知したときは、タグaの電波送信部が送信する磁界検知電波には、ID情報Aと共に付加情報αが付加される。
そして、検知機A,B,Cの電波受信部が、自己のID情報を含む磁界検知電波を受信すると、装置警報部が接近警報を出力する。ただし、検知機Aの電波受信部が受信した磁界検知電波に自己のID情報Aと共に付加情報αが含まれる場合は、装置警報部は接近警報を出力しない。すなわち、付加情報αは、検知機Aの電波受信部がID情報Aを含む磁界検知電波を受信したとしても、装置警報部が接近警報を出力しないようにするために付加される情報である。この付加情報αを付加する理由は、検知機A及びタグaは同じ第1の機器1に取り付けられており、両者は最初から接近していることから、両者の接近を検知して接近警報を出力する必要がないからである。
これらの検知機A,B,Cの各部の動作は全て装置制御部が制御し、タグaの各部の動作は全てタグ制御部が制御する。なお、誘導磁界の到達範囲は5~15m程度であり、磁界検知電波の到達範囲は20~100m程度である。
【0018】
この実施形態の接近検知システムは前述の基本機能に加え、第1の機器1に取り付けられた検知機Aとタグaとの間における誘導磁界及び磁界検知電波の送受信の状況により、接近検知システムに異常があることを検知できる機能(以下「異常検知機能」という。)を有する。以下、この異常検知機能について、前述の基本機能と併せて説明する。
【0019】
図3に、この実施形態の接近検知システムの動作のタイムチャート、
図4A,Bに、その動作のフローチャートを示している。
【0020】
図3に示しているように、検知機Aは所定の送信間隔で、ID情報Aを含む誘導磁界(A)を送信する。その送信間隔は例えば100ミリ秒から1秒である。
タグaがその誘導磁界(A)を検知すると、ID情報Aと共に付加情報αを含む磁界検知電波(A+α)を送信する。この磁界検知電波(A+α)は検知機Aで受信されるが、検知機Aは、受信した磁界検知電波にID情報Aと共に付加情報αが含まれているため接近警報を出力しない。
【0021】
一方で、検知機Aが磁界検知電波(A+α)を受信したということは、接近検知システムが正常に動作しているということであり、この実施形態では、検知機Aが磁界検知電波(A+α)を受信したか否かで接近検知システムが正常に動作しているか否かを検知するようにしている。
具体的には、
図4Aに示しているように、前回、検知機Aが磁界検知電波(A+α)を受信してから所定時間Lを経過した場合、当該接近検知システムに異常があることを警告する。すなわち、検知機Aが磁界検知電波(A+α)を所定時間L以上受信しないときは、当該接近検知システムに異常があることを警告する。
【0022】
なお、
図4Aに示しているように、前回、検知機Aが磁界検知電波(A+α)を受信してから所定時間Lを経過しない間も、検知機AはID情報Aを含む誘導磁界(A)を送信し、タグaや図示しない他のタグからの磁界検知電波を受信する場合があるが、この場合、検知機Aは、受信した磁界検知電波が(A+α)であるか否かを判定し、(A+α)であるときは当該接近検知システムが正常に動作していると判断し、その旨を表示するか、又は何もしない。受信した磁界検知電波が(A+α)でないときは、図示しない他のタグが検知機Aに接近していると判断し、接近警報を出力する。
【0023】
一方、検知機Bは、
図1に示しているように、タグaが誘導磁界を検知できる範囲外にあるが、タグaからの磁界検知電波(A+α)を受信する場合がある。しかし、検知機Bが受信する磁界検知電波は(A+α)であり、自己のID情報を含んでいないので接近警報を出力しない(
図2参照)。すなわち、検知機A,B,Cは、自己のID情報を含み、かつ付加情報αを含まない磁界検知電波を受信したときにのみ、接近警報を出力する。
【0024】
他方、検知機Cは、
図1に示しているように、タグaが誘導磁界を検知できる範囲内にある。したがって、タグaは検知機Cから送信される誘導磁界(C)を検知し、検知機CのID情報Cを含む磁界検知電波(C)を送信する。そして、この磁界検知電波(C)を検知機Cが受信すると、検知機Cは接近警報を出力する(
図2参照)。
【0025】
続いて、この実施形態におけるタグaの動作の詳細について、
図3及び
図4Bを参照しつつ説明する。
タグaは、誘導磁界を検知するとその誘導磁界に含まれるID情報から、検知した誘導磁界が検知機Aからのものであるか否かを判定する。検知した誘導磁界が検知機Aからのものでない場合、タグaは、ID情報B又はCを含む磁界検知電波を送信する。
一方、検知した誘導磁界が検知機Aからのものである場合、タグaは前述のとおりID情報Aと共に付加情報αを含む磁界検知電波(A+α)を送信するが、この実施形態では、前回、タグaが磁界検知電波(A+α)を送信してから所定時間Mを経過していないときは磁界検知電波(A+α)を送信せず、所定時間Mを経過後に検知機Aからの誘導磁界を検知したときに、磁界検知電波(A+α)を送信するようにしている。ここで、所定時間Mと前述の所定時間Lとの関係はM<Lである。
【0026】
このように、タグaが検知機Aからの誘導磁界を検知したとしても、所定時間Mを経過していない場合は磁界検知電波(A+α)を送信しないようにすることで、タグaからの磁界検知電波(A+α)の送信回数を減らすことができ、これによりタグaの電力消費を抑えると共に、他のタグからの磁界検知電波の送信との混信を少なくすることができる。
【0027】
以上のとおり、この実施形態の接近検知システムは異常検知機能を備えるが、これに加えて、検知機Aから送信される誘導磁界の強度を適切に調整する機能(以下「磁界強度調整機能」という。)や、接近警報を出力させる判断基準となる磁界強度の閾値を適切に調整する機能(以下「閾値調整機能」という。)を備えることもできる。
【0028】
図5に、磁界強度調整機能や閾値調整機能を備える実施形態である接近検知システムのシステム構成を示している。
この接近検知システムでは、第1の機器1に検知機A及びタグaが取り付けられており、図示しない作業者にタグbが取り付けられている。検知機A及びタグaの構成は
図2に示したとおりであり、タグbの構成は
図2に示したタグaの構成と同じである。
なお、図示の都合上、
図5においてタグaは第1の機器1から離して表しているが、このタグaは検知機Aと共に第1の機器1に取り付けられている。
また、この実施形態においてタグa,bの磁界センサ部は、検知(受信)した誘導磁界の強度を計測する機能を有し、タグa,bは、磁界センサ部で計測した誘導磁界の強度を磁界強度情報として磁界検知電波に含ませて送信する。
【0029】
まず、磁界強度調整機能について説明する。
図6に、磁界強度調整機能を実行するための接近検知システムの動作のフローチャートを示している。
【0030】
図6Aに示しているように検知機Aは、タグaが受信する基準となる誘導磁界の強度を基準値(磁界強度情報の基準値)に設定する。この基準値は、検知機Aから送信される誘導磁界の強度の初期設定値や検知機Aとタグaとの間の距離などに基づき決定される。
検知機Aは所定の送信間隔で、ID情報Aを含む誘導磁界(A)を送信する。
【0031】
一方、タグaは
図6Bに示しているように、タグaがその誘導磁界を検知すると、その誘導磁界に含まれるID情報から、検知した誘導磁界が検知機Aからのものであるか否かを判定する。検知した誘導磁界が検知機Aからのものでない場合、タグaは、他の検知機(例えば
図1に示している検知機B,C)のID情報(B又はC)を含む磁界検知電波を送信する。検知した誘導磁界が検知機Aからのものである場合、タグaはID情報A及び付加情報αと共に前述の磁界強度情報iを含む磁界検知電波(A+α+i)を送信する。
【0032】
なお、タグb(タグa以外のタグ)の動作は
図6Cのとおりである。すなわち、タグbは検知機Aからの誘導磁界(A)を検知すると、ID情報A及び磁界強度情報iを含む磁界検知電波(A+i)を送信する。この磁界検知電波(A+i)を検知機Aが受信すると、検知機Aは接近警報を出力する。また、この実施形態では、タグ側にもタグ警報部を有するので(
図2参照)、タグbは、検知機Aからの誘導磁界(A)を検知すると、磁界検知電波(A+i)を送信すると共に接近警報を出力する。
【0033】
図6Aに戻って、検知機Aは受信した磁界検知電波が(A+α+i)であるか否かを判定し、(A+α+i)でない場合は接近警報を出力する。
一方、受信した磁界検知電波が(A+α+i)である場合、検知機Aは接近警報を出力することなく、前述の基準値と磁界検知電波(A+α+i)に含まれる磁界強度情報iとを比較する。そして検知機Aは、磁界強度情報iが前述の基準値となるように、磁界送信部から送信される誘導磁界の強度を調整する。具体的にこの実施形態では、基準値>iの場合は、比較した差分だけ磁界送信部から送信される誘導磁界の強度を高くし、基準値<iの場合は、比較した差分だけ磁界送信部から送信される誘導磁界の強度を低くすることにより、基準値=iとなるように磁界送信部から送信される誘導磁界の強度を調整する。
【0034】
次に、閾値調整機能について説明する。
図7A~Cに、閾値調整機能を実行するための接近検知システムの動作のフローチャートを示している。
【0035】
図7Aに示しているように検知機Aは、タグaが受信する基準となる誘導磁界の強度を基準値(磁界強度情報の基準値)に設定すると共に接近警報を出力するか否かの判断基準となる磁界強度の閾値Sを設定する。ここで、基準値は前述のとおり、検知機Aから送信される誘導磁界の強度の初期設定値や検知機Aとタグaとの間の距離などに基づき決定され、閾値Sはこの基準値等を考慮して決定される。
検知機Aは所定の送信間隔で、ID情報A及び閾値情報Sを含む誘導磁界(A+S)を送信する。
【0036】
一方、タグaは
図7Bに示しているように、タグaがその誘導磁界を検知すると、その誘導磁界に含まれるID情報から、検知した誘導磁界が検知機Aからのものであるか否かを判定する。検知した誘導磁界が検知機Aからのものでない場合、タグaは、他の検知機(例えば
図1に示している検知機B,C)のID情報(B又はC)を含む磁界検知電波を送信する。検知した誘導磁界が検知機Aからのものである場合、タグaはID情報A及び付加情報αと共に前述の磁界強度情報iを含む磁界検知電波(A+α+i)を送信する。
【0037】
図7Aに戻って、検知機Aは受信した磁界検知電波が(A+α+i)であるか否かを判定し、(A+α+i)でない場合は、磁界検知電波に含まれる磁界強度情報iと閾値Sとを比較し、i≧Sの場合は接近警報を出力し、i<Sの場合は接近警報を出力しない。なお、閾値Sとしては下記により調整(更新)された最新のものを使用する。
【0038】
受信した磁界検知電波が(A+α+i)である場合、検知機Aは接近警報を出力することなく、前述の基準値と磁界検知電波(A+α+i)に含まれる磁界強度情報iとを比較する。そして検知機Aは、磁界強度情報iが基準値より小さいときは、閾値Sを例えば比較した差分だけ低くし、磁界強度情報が基準値より大きいときは閾値Sを例えば比較した差分だけ高くする。すなわち、検知機Aは、タグaからの磁界強度情報iが基準値より小さいときは、自己の磁界送信部から送信される誘導磁界の強度が初期設定値より低くなっていると判断し、この誘導磁界に対して接近警報を出力するか否かの判断基準となる閾値Sを低くする。また、タグaからの磁界強度情報iが基準値より大きいときは、自己の磁界送信部から送信される誘導磁界の強度が初期設定値より高くなっていると判断し、この誘導磁界に対して接近警報を出力するか否かの判断基準となる閾値Sを高くする。
このように、この実施形態によれば、接近警報を出力するか否かの判断基準となる磁界強度の閾値が適切に調整されるので、接近検知システムの信頼性が更に向上する。
【0039】
他方、タグb(タグa以外のタグ)の動作は
図7Cのとおりである。すなわち、タグbは検知機Aからの誘導磁界(A+S)を検知すると、ID情報A及び磁界強度情報iを含む磁界検知電波(A+i)を送信する。この磁界検知電波(A+i)を検知機Aが受信すると、検知機Aは磁界強度情報iと閾値Sとを比較し、i≧Sの場合は接近警報を出力し、i<Sの場合は接近警報を出力しない。また、この実施形態では、タグ側にもタグ警報部を有するので(
図2参照)、タグbは、検知機Aからの誘導磁界(A+S)を検知すると、磁界検知電波(A+i)を送信すると共に磁界強度情報iと閾値Sとを比較し、i≧Sの場合は接近警報を出力し、i<Sの場合は接近警報を出力しない。
このように、この実施形態によれば、調整(更新)された閾値の情報がタグb(タグa以外のタグ)へも伝達されるので、そのタグは、調整(更新)された閾値の情報に基づいて適切な接近警報を出力することができるようになる。
【符号の説明】
【0040】
1 第1の機器
2 第2の機器
3 第3の機器