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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】誘導加熱システムおよび加熱器
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/465 20200101AFI20220614BHJP
   A24F 40/10 20200101ALI20220614BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F40/10
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020567187
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2019065253
(87)【国際公開番号】W WO2019238710
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】1809786.5
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アウン, ワリド アビ
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169561(JP,A)
【文献】特表2005-516357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0128078(US,A1)
【文献】特表2017-506915(JP,A)
【文献】国際公開第2017/001818(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/068093(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/465
A24F 40/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置用の誘導加熱器であって、
エアロゾル発生材料を加熱するための加熱要素を備え、前記加熱要素は、セラミック部材と、前記セラミック部材と一体に形成されたサセプタ材料とを備え、
前記サセプタ材料は、使用時に、電磁誘導によって加熱されるように配置され
前記加熱要素の第1の領域におけるセラミック部材に対するサセプタ材料の濃度比が、前記加熱要素の第2の領域におけるセラミック部材に対するサセプタ材料の濃度比と異なる、誘導加熱器。
【請求項2】
前記加熱要素は、サセプタ材料よりも高い濃度のセラミック部材を有する、請求項1に記載の誘導加熱器。
【請求項3】
前記加熱要素は、セラミック部材よりも高い濃度のサセプタ材料を有する、請求項1に記載の誘導加熱器。
【請求項4】
前記加熱要素は細長く、セラミック部材に対するサセプタ材料の濃度比が、前記加熱要素の長さに沿って変化する、請求項1~3のいずれか一項に記載の誘導加熱器。
【請求項5】
前記サセプタ材料が、ビーズ、薄片、粒子、破片、ロッドおよび管の少なくとも1つの形態である、請求項1~のいずれか一項に記載の誘導加熱器。
【請求項6】
前記サセプタ材料が金属である、請求項1~のいずれか一項に記載の誘導加熱器。
【請求項7】
前記サセプタ材料が鉄金属である、請求項1~のいずれか一項に記載の誘導加熱器。
【請求項8】
前記サセプタ材料が、少なくとも2種類のサセプタ材料を含み、セラミック部材に対する前記少なくとも2種類のサセプタ材料の濃度比が、前記加熱要素のなかで互いに異なっている、請求項1~のいずれか一項に記載の誘導加熱器。
【請求項9】
前記セラミック部材が、エアロゾル化可能材料を受けるための中空管の形態である、請求項1~のいずれか一項に記載の誘導加熱器。
【請求項10】
前記セラミック部材が、エアロゾル発生材料を前記セラミック部材に吸い上げるための吸い上げ機能を提供するように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の誘導加熱器。
【請求項11】
前記セラミック部材は、焼結セラミック材料から形成されている、請求項10に記載の誘導加熱器。
【請求項12】
前記加熱要素に、液体形態のエアロゾル化可能材料が浸み込んでいる、請求項1~11のいずれか一項に記載の誘導加熱器。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の誘導加熱器と、前記誘導加熱器を加熱するための電磁場発生器とを備える、エアロゾル加熱装置用の誘導加熱システム。
【請求項14】
エアロゾル発生装置用の誘導加熱器であって、
変動磁場が侵入したときに発熱するように構成された埋め込みサセプタ材料を含む加熱要素であって、液体形態のエアロゾル化可能材料を吸い上げるようにさらに構成された加熱要素と、
液体形態のエアロゾル化可能材料と、
を備え、
前記加熱要素に、液体形態のエアロゾル化可能材料が浸み込んでおり、
前記加熱要素がセラミック部材をさらに備え、前記埋め込みサセプタ材料が前記セラミック部材に埋め込まれ、
前記加熱要素の第1の領域におけるセラミック部材に対するサセプタ材料の濃度比が、前記加熱要素の第2の領域におけるセラミック部材に対するサセプタ材料の濃度比と異なる、誘導加熱器。
【請求項15】
エアロゾル発生装置の誘導加熱システムのための誘導加熱器用の加熱要素を製造する方法であって、
セラミック材料を提供するステップと、
前記加熱要素の第1の領域におけるセラミック材料に対するサセプタ材料の濃度比が、前記加熱要素の第2の領域におけるセラミック材料に対するサセプタ材料の濃度比と異なるように、前記セラミック材料にサセプタ材料を所定の濃度で混入するステップと、
混入を受けた前記セラミック材料を、前記加熱要素の所望の形状にするステップと、
を備える、誘導加熱器用の加熱要素の製造方法。
【請求項16】
前記セラミック材料がスラリー形態で提供され、前記混入を受けたセラミック材料が、前記加熱要素の所望の形状に成形される、請求項15に記載の誘導加熱器用の加熱要素の製造方法。
【請求項17】
前記セラミック材料が粉末形態で提供され、前記混入を受けたセラミック材料が、前記加熱要素の所望の形状にされた後、前記加熱要素の該形状を固定するために焼結される、請求項15に記載の誘導加熱器用の加熱要素の製造方法。
【請求項18】
前記混入を受けたセラミック材料で中空管が形成される、請求項1517のいずれか一項に記載の誘導加熱器用の加熱要素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生装置用の誘導加熱システムおよび加熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻きタバコ、葉巻などの喫煙物品は、使用中にタバコを燃やしてタバコ煙を生成する。燃焼なく化合物を放出する製品を作り出すことによってこれらの物品の代替物を提供する試みがなされてきた。このような製品の例は、いわゆる「非燃焼加熱(heat not burn)」製品またはタバコ加熱装置もしくはタバコ加熱製品であり、これらは、材料を加熱するが燃焼させないことによって化合物を放出する。材料は、例えば、タバコまたは他の非タバコ製品であってもよく、ニコチンを含有しても含有しなくてもよい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一態様によれば、エアロゾル発生装置用の誘導加熱器が提供される。この誘導加熱器は、エアロゾル発生材料を加熱するための加熱要素を備える。この加熱要素は、セラミック部材と、セラミック部材と一体に形成されたサセプタ材料とを備える。サセプタ材料は、使用時に、電磁誘導によって加熱されるように配置される。
【0004】
本発明の別の態様によれば、エアロゾル発生装置用の誘導加熱器が提供される。この誘導加熱器は、変動磁場が侵入したときに発熱するように構成された埋め込みサセプタ材料を含む加熱要素を備える。この加熱要素は、液体形態のエアロゾル化可能材料を吸い上げるようにさらに構成される。この誘導加熱器は、液体形態のエアロゾル化可能材料を備える。加熱要素には、この液体形態のエアロゾル化可能材料が浸み込んでいる。
【0005】
加熱要素は、サセプタ材料よりも高い濃度のセラミック部材を有していてもよい。
【0006】
加熱要素は、セラミック部材よりも高い濃度のサセプタ材料を有していてもよい。
【0007】
加熱要素の第1の領域におけるセラミック部材に対するサセプタ材料の濃度比は、加熱要素の第2の領域におけるセラミック部材に対するサセプタ材料の濃度比と異なっていてもよい。
【0008】
加熱要素は細長くてもよく、セラミック部材に対するサセプタ材料の濃度比は、加熱要素の長さに沿って変化する。
【0009】
サセプタ材料は、ビーズ、薄片、粒子、破片、ロッドおよび管の少なくとも1つの形態であってもよい。サセプタ材料は金属であってもよい。サセプタ材料は鉄金属であってもよい。
【0010】
サセプタ材料は、少なくとも2種類のサセプタ材料を含んでいてもよく、ここで、セラミック部材に対する少なくとも2種類のサセプタ材料の濃度比は、加熱要素のなかで互いに異なっている。
【0011】
セラミック部材は、エアロゾル化可能材料を受けるための中空管の形態であってもよい。セラミック部材は、エアロゾル発生材料をセラミック部材に吸い上げるための吸い上げ機能を提供するように構成されていてもよい。セラミック部材は、焼結セラミック材料から形成されていてもよい。
【0012】
加熱器には、液体形態のエアロゾル化可能材料が浸み込んでいてもよい。
【0013】
エアロゾル加熱装置用の誘導加熱システムを提供してもよい。この誘導加熱システムは、本書に開示される誘導加熱器と、この誘導加熱器を加熱するための電磁場発生器とを備えてもよい。
【0014】
本発明の別の態様によれば、エアロゾル発生装置の誘導加熱システムのための誘導加熱器を製造する方法が提供される。この方法は、セラミック材料を提供するステップと、セラミック材料にサセプタ材料を所定の濃度で混入するステップと、混入を受けたセラミック材料を、誘導加熱器の所望の形状にするステップとを備える。
【0015】
セラミック材料はスラリー形態で提供されてもよく、混入を受けたセラミック材料は、誘導加熱器の所望の形状に成形されてもよい。
【0016】
セラミック材料は粉末形態で提供されてもよく、混入を受けたセラミック材料は、誘導加熱器の所望の形状にされた後、誘導加熱器のその形状を固定するために焼結されてもよい。
【0017】
混入を受けたセラミック材料で中空管が形成されてもよい。
【0018】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明の好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。ここで、これらの実施形態は、添付の図面を参照した例示のためにのみ提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施例に係る加熱要素の概略斜視断面図を示す。
図2】一実施例に係る加熱要素の概略斜視断面図を示す。
図3】一実施例に係る加熱要素の概略斜視断面図を示す。
図4】一実施例に係る加熱要素の概略斜視断面図を示す。
図5】一実施例に係る加熱要素の概略斜視図を示す。
図6】一実施例に係るエアロゾル発生装置の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
誘導加熱は、導電性の物体を電磁誘導によって加熱するプロセスである。この導電性物体は、サセプタとして知られているであろう。誘導加熱器は、電磁石と、交流電流などの変動する電流を電磁石に流すための装置とを備えていてもよい。電磁石中の変動する電流は、変動する磁場を生成する。この変動磁場は、電磁石に対して適切に配置されたサセプタに侵入し、サセプタの内部に渦電流を発生させる。サセプタは、この渦電流に対して電気抵抗を有しており、この抵抗に抗して渦電流が流れることにより、ジュール加熱によってサセプタが加熱される。サセプタが鉄、ニッケルまたはコバルトなどの強磁性材料を含む場合は、サセプタ内の磁気ヒステリシス損によって、すなわち、磁性材料内の磁気双極子が変動磁場と整列する結果、それらの磁気双極子の配向が変動することによっても、熱が発生する可能性がある。
【0021】
伝導などによる加熱と比較して、誘導加熱では、サセプタ内で熱が発生するので、急速加熱が可能である。さらに、誘導加熱器とサセプタとの間に物理的な接触は必要ないので、構成および適用の自由度を高めることが可能である。
【0022】
図1を参照すると、セラミック部材110と、セラミック部材110内に配置されたサセプタ材料120とを有する加熱要素100の一例の概略斜視断面図が示されている。加熱要素100は、動作中の電磁誘導システム内に加熱要素100が配置されるとサセプタ材料120が熱エネルギーを生成するように構成されている。換言すれば、加熱要素100は、誘導加熱器として使用される。サセプタ材料120によって生成された熱をセラミック部材110が保持するので、加熱要素100は、熱エネルギーを提供するように効率的に機能する。セラミック部材110は、サセプタ材料120が埋め込まれる任意の形状とすることができる。
【0023】
図2を参照すると、加熱要素100の別の例の概略斜視断面図が示されている。図2の加熱要素100は、2つの領域、すなわち領域Aおよび領域Bを有する。サセプタ材料120は、領域Aが領域Bと比較してより多くの量のサセプタ材料120を有するように、2つの領域の間で不均一に分布している。言い換えれば、領域Aは、領域Bと比較してより少ない量のセラミックを有する。サセプタ材料120のこの不均一な分布の効果は、図2の加熱要素100が電磁場に曝露されるとき、領域Aは、領域Bよりもセラミック材料110に対するサセプタ材料120の濃度が高いので、領域Bよりも速く加熱されることである。加えて、領域Aではセラミック材料がより少ないので、領域Aにおける全体的な絶縁レベルを、領域Bと比較して相対的に低くすることができ、したがって、加熱要素100の領域Aから熱がより容易に逃げることができる。このように、加熱要素100内のサセプタ材料120の配置によって、特定の加熱プロファイルを有する加熱要素100を作り出すことができる。この点は、加熱要素100と接触するまたはその付近に位置する任意のエアロゾル化可能材料の異なる領域に対して異なる加熱を行うために有用となりうる。これは、加熱されるエアロゾル化可能材料の種類、加熱要素100がエアロゾル供給装置で使用されるときの加熱要素100上または加熱要素100中の空気流特性、および/または加熱領域からマウスピースまでの距離によって影響を受ける可能性がある。
【0024】
図2に示す例では、領域Aは、加熱器100の一端に寄せて配置され、領域Bは、加熱器100の他端に寄せて配置される。換言すれば、セラミック部材110内に配置されるサセプタ材料120の量は、加熱要素100の長さに沿って長手方向に変化する。当業者には理解されるように、他の配置も考えられる。すなわち、サセプタ材料の濃度は、加熱器に対する任意の方向に沿って変化することができる。例えば、追加的に、または代替的に、セラミック部材110内に配置されるサセプタ材料120の量は、加熱器100の幅に沿って変化してもよい。サセプタ材料120の量が2次元(例えば幅および長さ方向)で変化する場合は、2次元加熱プロファイルが、使用時の加熱要素100によって形成され得る。一例では、加熱要素100は、複数の領域の配列を有していてもよく、その各領域は、セラミック部材110と共に配置された所望の量のサセプタ材料120を有する。したがって、この各領域は、その領域に配置されたサセプタ材料120の量に基づいた、各自の特定の加熱速度を有する「加熱スポット」と考えることができる。
【0025】
図3を参照すると、加熱要素100の別の例の概略斜視断面図が示されている。図3の加熱要素100は、領域A、領域B、および領域Cという3つの領域を有する。サセプタ材料120は、領域Aが領域Bと比較してより多くの量のサセプタ材料120を有し、領域Cが領域Aと比較してより多くの量のサセプタ材料120を有するように、3つの領域間で不均一に分布している。図2の加熱要素100の例と同様に、サセプタ材料120の不均一な分布は、図3の加熱器100に特定の加熱プロファイルをもたらす。領域Cが最も急速に加熱され、続いて領域A、次いで領域Bが加熱される。図示の例では、領域Cは加熱要素100の一端に寄っており、領域Aは加熱要素100の他端に寄っており、領域Bは領域Aと領域Cとの間に位置している。ここでも、図2と同様に、セラミック部材110内に配置されたサセプタ材料120の量は、図3に示す加熱要素100の長さに沿って長手方向に変化する。図2および図3に示す加熱要素100によって提供される特定の加熱プロファイルは、自らの長さに沿って変化し得る特殊なエアロゾル化可能材料との組み合わせにおいて最も好適に使用することができる。任意で、この特殊なエアロゾル化可能材料は、それが望ましい場合には、その幅に沿って変化してもよい。このように、この加熱器は、喫煙セッション中の特定の時間に、領域AおよびB(および図3の領域C)と実質的に位置合わせされたエアロゾル化可能材料の特定の部位または部分からエアロゾルを発生させることができる。一例では、エアロゾル化可能材料は、喫煙セッションがタバコエアロゾルで開始してメントールエアロゾルで終了するように、急速加熱領域Aと実質的に位置合わせされたタバコ部分と、緩慢加熱領域Bと実質的に位置合わせされたメントール部分とを有することができる。
【0026】
各領域(例えば、A、B、またはC)においてセラミック部材110内に配置されるサセプタ材料120の量は、各領域のピーク温度が、使用時に昇温されるときに、実質的に同じ温度に安定するが、各領域がそのピーク温度に達するのに要する時間は、特定の加熱要素100の所望の加熱プロファイルに応じて相互に異なるように設計してもよい。言い換えれば、各領域の加熱速度が、使用時に相互に異なることになる。
【0027】
あるいは、各領域(例えば、A、B、またはC)中のセラミック部材110内に配置されるサセプタ材料120の量は、各領域のピーク温度が、使用時に昇温されるときに、その温度値と、そのピーク温度に達するのに要する時間の双方において相互に異なるように設計されてもよい。各領域においてセラミック部材110内に配置されるサセプタ材料120の量は、特定の加熱要素100の所望の加熱プロファイルに応じて設計される。言い換えれば、各領域の加熱速度および最終ピーク温度の双方が、使用時に相互に異なることになる。また、サセプタ材料の種類が、それらの領域ごとに(濃度に加えて、または濃度に代えて)異なってもよく、このサセプタ材料の種類は、異なる加熱特性(例えば、昇温速度、動作温度など)を有し、したがって、各領域の温度の違いが、各領域におけるサセプタ材料の選択によっても影響され得ることを理解されたい。
【0028】
一例では、セラミックスラリーを適切な量のサセプタ材料120と混合することによって加熱要素100を製造してもよい。セラミックスラリーは、型に入れてもよい。次いで、セラミックスラリーを放置して固化および乾燥させてもよい。次いで、セラミックスラリーを焼結し、セラミックを硬質かつ剛性にして、加熱要素100のセラミック部材110を形成してもよい。一例では、加熱要素100の一領域を最終的に形成するセラミックスラリーの部分に、適切な量のサセプタ材料120を混合してもよい。すなわち、セラミックスラリーにサセプタ材料120が混入される。サセプタ材料120は、セラミックスラリーのその部分に、所望の加熱プロファイルによって定められるように均一または不均一に混合してもよい。次いで、セラミックスラリーのこの部分を、それに対応する位置で型に加えてもよい。この後、異なる量(または、後述するように、異なる種類)のサセプタ材料120を有する他の領域に対応するセラミックスラリーの他の部分を、加熱要素100にとって望ましい加熱プロファイルに応じて、型に加えてもよい。
【0029】
別の例では、加熱要素100のある領域に対して適切な量のサセプタ材料120を、既に型内にあるセラミックスラリーに添加してもよい。適切な量のサセプタ材料120を、型内の適切な位置に加え、スラリーを固化させて焼結する前に、その場で混合してもよい。サセプタ材料120は、セラミックスラリーの一部分に、所望の加熱プロファイルによって定められるように均一または不均一に混合してもよい。この後、セラミックスラリーを含有する型の他の位置に、他の量のサセプタ材料120を添加してもよく、ここで、これら他の位置は、加熱要素100にとって望ましい加熱プロファイルに応じた異なる加熱領域に対応する。
【0030】
別の例では、セラミック粉末を焼結してセラミック部材110を形成することにより、セラミック部材110を作製してもよい。セラミック粉末は、この粉末が焼結される前に、セラミック部材110の最終的な形状にプレスまたは成形されてもよい。一例では、適切な量のサセプタ材料120をセラミック粉末の一部に添加して混合することができる。次いで、加熱要素100のそれぞれの領域に対応する粉末の部分を、異なる量のサセプタ材料120を有する加熱要素の他の領域に対応するセラミック粉末の他の部分に対して配置することができる。こうして、完全な配列を形成し、焼結することができる。後述するように、焼結プロセスにより、セラミック部材110が多孔質である加熱要素100を形成することができる。多孔質セラミック部材110は、エアロゾル化可能な液体が加熱要素100上の加熱位置に吸い上げられることを可能にする吸い上げ特性を有していてもよい。
【0031】
当業者には明らかなように、セラミック部材110内に配置されたサセプタ材料120の量は、セラミック部材110内のサセプタ材料120の濃度として説明することもできる。加熱要素100を製造するために、サセプタ材料120の量は、セラミック部材110との濃度比で測ることができる。セラミック部材110に対するサセプタ材料120の量という濃度比は、加熱要素100の領域ごとに異なってもよい。例えば、領域(例えば、A、B、またはC)の1つは、これらの領域の別の1つとは異なる、セラミック部材110に対するサセプタ材料120の濃度比を有していてもよい。当業者には理解されるように、最終的な加熱要素100内の濃度比は、製造プロセスに起因して、セラミック原材料に対するサセプタ原材料の濃度比とは異なる可能性がある。例えば、製造プロセス中の水分損失を考慮する必要があるかもしれない。
【0032】
図4を参照すると、加熱要素100の別の例の概略斜視断面図が示されている。加熱要素100は、様々な形態のセラミック部材110およびサセプタ材料120を有する。サセプタ材料120は、ロッド120a、ビーズ120b、管120c、破片120d、薄片120e、または粒子120fのいずれの形態であってもよい。サセプタ材料120は、1種類のサセプタ材料から形成されてもよいし、2種類以上のサセプタ材料から形成されてもよい。異なる種類のサセプタを用いることで、異なるピーク温度に達することが可能になる。サセプタ材料120の種類と、セラミック部材110の特定の領域におけるその種類のサセプタ材料120の量の双方を変化させることで、非常に正確な加熱プロファイルを生成することが可能になる。図4に示す加熱要素100は、図1~3に関して上述したものと同じ方法で形成することができる。
【0033】
次に図5を参照すると、加熱要素100の概略斜視図が示されている。加熱要素100は、前の例と同様に、セラミック部材110およびサセプタ材料120を有するが、この加熱要素100は、中空管の形状に形成されており、したがって、加熱要素100の一端から他端まで延びる貫通孔140へ通じる開口部130を有する。図5の加熱要素100が電磁場中に置かれると、サセプタ材料120が熱を発し、その熱をセラミック部材110が保持して周囲環境に放射する。貫通孔140は、それを取り囲む加熱要素100によって加熱され、貫通孔140内の熱は効率的に保持される。したがって、加熱要素100はオーブンとして作用し、エアロゾル化可能材料を配置することの可能な貫通孔140内に高温を生成する。図2図3および図4の例と同様に、図5の加熱要素100は、加熱要素100内のサセプタ材料120の量および種類の双方に変化を有していてもよい。例えば、加熱要素100は、加熱要素100の1つの領域に位置するサセプタ材料120の量が加熱要素100の別の領域よりも多くてもよい。一例において。サセプタ材料120は、加熱要素100の一方の端部でより濃縮されてもよく、その結果、オーブンはその端部で最も熱くなり、その結果、エアロゾル生成がより迅速に行われる。換言すれば、セラミック部材110内に配置されるサセプタ材料120の量は、中空管加熱要素100の長さに沿って長手方向に変化する。
【0034】
図5に示す加熱要素100は、図1~4に関して上述したものと同じ方法で形成することができる。
【0035】
次に図6を参照すると、電力ユニット210と、加熱ユニット220と、マウスピース230とを有するエアロゾル発生装置200が示されている。マウスピース230は、装置200の基端寄りに配置され、一方で、図示の例では、電力ユニット210が装置200の先端寄りに配置される。加熱ユニット220は、図示の例では、電力ユニット210とマウスピース230との間に位置する。
【0036】
加熱ユニット220は、加熱器300を収容している。加熱器300は、サセプタ材料320が埋め込まれたセラミック部材310を有する。加熱器300はまた、電流を運ぶ1つのコイル330または直列の複数のコイル330を有する。コイル330は、セラミック部材310内のサセプタ材料320の加熱を生じさせるように電磁場を提供する。コイル330は、装置200の電力ユニット210内に設けられた電源に接続されている。
【0037】
セラミック部材310は、図1~5で言及した加熱要素100と同様の方法で形成することができる。したがって、セラミック部材310は、注型または成形されるセラミックスラリーから形成してもよい。別の例では、セラミックスラリーは、管の形状に押出成形してもよい。スラリーには、サセプタ粒子を混入してもよい。この後、スラリーを中空形状に仕上げてもよい。
【0038】
これも図1~5に関して上述したことだが、セラミック部材310は、代わりに、焼結、圧力の付与、または多孔質セラミックを形成するための任意の他の技術によって作製してもよい。例えば、セラミック部材310は、等圧圧縮、プラスチック成形(例えば、ジガリング、押出成形、または射出成形)、または注型によって製造してもよい。この方法では、生成されたセラミック部材310は多孔質となり、したがって、装置200内のエアロゾル発生材料の貯蔵部からエアロゾル発生材料を(例えば、毛管力によって)引き出すためのウィックとして作用することができる。したがって、セラミック部材310は、装置200のためのウィックおよび加熱器の双方として作用する。一例では、セラミック部材310の一端は、喫煙セッション中のエアロゾル化のためにエアロゾル発生材料を加熱器300に引き込むように、エアロゾル発生材料の貯蔵部内に突出していてもよい。
【0039】
セラミック部材310は、消耗品として使用することもできる。一例では、サセプタ材料320が埋め込まれたセラミック部材310は、エアロゾル発生装置200で使用するための使い捨て消耗品を形成するために、例えばeリキッドまたは濃縮タバコ抽出物などのエアロゾル発生材料、および例えばグリセロールなどのエアロゾル発生剤が浸み込ませてあってもよい。代替の材料としては、濃縮タバコ抽出物と結合剤、例えばアルギン酸ナトリウムが挙げられる。この材料はまた、追加的または代替的に、香料または香味料を含んでもよい。本書で使用するとき、用語「香料」および「香味料」は、地域の規制が許す場合、成人消費者のために製品に所望の味または香りを作り出すために使用され得る材料を指す。使用されるサセプタ材料320の種類および量は、予め浸み込ませるエアロゾル発生材料と共に好適に機能するように具体的に選択してもよい。例えば、セラミック部材310のうちの1つが、喫煙セッションにおいて最初にエアロゾル化される1つの種類のエアロゾル発生材料を一方の端部に有し、喫煙セッションにおいて2番目にエアロゾル化される第2の種類のエアロゾルを第2の端部に有する場合、サセプタ材料320を第1の端部に向かうにつれて増やしてもよいし、あるいは第1の端部におけるサセプタ材料の種類を、第2の端部における種類よりも高い温度に達するように選択してもよい。
【0040】
一連の複数の加熱器300に、同様の又は異なる装填量のサセプタ材料320を設け、各加熱器300が、使用時に同様の又は異なる加熱プロファイルを提供するように構成してもよい。このようにして、1つの加熱器300をエアロゾル発生装置200から取り外し、喫煙セッションにとって好ましい加熱プロファイルを提供する加熱器300と交換することができる。これは、特定の加熱プロファイルによって特別に加熱される特選のエアロゾル化可能材料に適用されるかもしれない。
【0041】
セラミック部材110、310は、任意の適切なセラミック材料から形成することができる。例えば、セラミック部材110、310は、硬質ケーキまたはタブレットにすることができる任意の適切なセラミック材料から形成することができる。例えば、セラミック部材110、310は、多孔質ケーキまたは多孔質タブレットにすることができる任意の適切なセラミック材料から形成することができる。例えば、セラミック材料は、アルミナ、ジルコニア、イットリア、炭酸カルシウム、および硫酸カルシウムのうちの少なくとも1つから形成することができる(ただし、これに限定されるものではない)。
【0042】
サセプタ材料120、320は、任意の適切なサセプタ材料、例えば、鉄、ステンレス鋼などの鉄合金、軟鋼、モリブデン、炭化ケイ素、アルミニウム、金および銅のうちの少なくとも1つ、またはそれらの任意の組合せから形成することができる。
【0043】
上記の実施形態は、本発明の例示として理解されるべきである。本発明のさらなる実施形態が想定される。任意の1つの実施形態に関連して説明される任意の特徴は、単独で、または説明される他の特徴と組み合わせて使用されてもよく、また、任意の他の実施形態、または任意の他の実施形態の任意の組み合わせの1つ以上の特徴と組み合わせて使用されてもよいことを理解されたい。さらに、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上記で説明されていない均等物および変更形態も使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6