(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20220614BHJP
H02K 33/12 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B06B1/04 S
H02K33/12
(21)【出願番号】P 2020015485
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2020-07-31
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019107369
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】関口 力
(72)【発明者】
【氏名】下村 重幸
(72)【発明者】
【氏名】熊埜御堂 好広
(72)【発明者】
【氏名】児玉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】良井 優太
(72)【発明者】
【氏名】稲本 繁典
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】柿崎 拓
【審判官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-13554(JP,A)
【文献】特開2003-62525(JP,A)
【文献】特開2013-126299(JP,A)
【文献】特開平9-117721(JP,A)
【文献】特開平9-172750(JP,A)
【文献】特表2016-538821(JP,A)
【文献】特開2013-106411(JP,A)
【文献】特開2003-300013(JP,A)
【文献】特開2014-193112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットと、前記マグネットを挟持する一対の磁性体とを含む円柱状の可動体と、
有底筒状の本体部と蓋部とを含み前記可動体を収容する筒状の固定体であって、弾性支持部により前記可動体を軸方向に往復振動可能に支持し、且つ、前記可動体の径方向外側に配置された一対の環状のコイルを有する前記固定体と、を有し、
前記蓋部は、複数の蓋部側通気孔を有し、
前記本体部の底部は、複数の底部側通気孔を有し、
前記蓋部側通気孔または前記底部側通気孔は、衝撃による可動体移動時に、前記可動体が衝突しない領域に設けられ、
前記蓋部は、通常の往復振動時の可動範囲を超える力が前記可動体に加わった場合に、前記弾性支持部の可動範囲を制限して塑性変形を防止する位置に配置され、且つ、前記蓋部における天面部の表面積に対する前記蓋側通気孔の合計開口面積の比率が2%以上20%以下であり
、
前記底部の表面積に対する前記底部側通気孔の合計開口面積の比率が、前記蓋部における前記比率と同率である、
振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記蓋部は、前記蓋部側通気孔の間に配置されたリブ、又は、前記蓋部側通気孔を覆う緩衝部材を有する、
請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記蓋部側通気孔または前記底部側通気孔は、厚み内で折れ曲がる形状である、
請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の振動アクチュエータを実装した、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ及びこれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動機能を有する電子機器には、振動発生源として振動アクチュエータが実装されている。電子機器は、振動アクチュエータを駆動してユーザに振動を伝達して体感させることにより、着信を通知したり、操作感や臨場感を向上したりすることができる。ここで、電子機器は、携帯型ゲーム端末、据置型ゲーム機のコントローラー(ゲームパッド)、携帯電話やスマートフォンなどの携帯通信端末、タブレットPCなどの携帯情報端末、服や腕などに装着されるウェアラブル端末の携帯できる携帯機器を含む。
【0003】
携帯機器に実装される小型化可能な構造の振動アクチュエータとしては、例えば、特許文献1に示すように、ページャー等に用いられる振動アクチュエータが知られている。
【0004】
この振動アクチュエータは、一対の板状弾性体を相対向するようにして円筒状の枠体の開口縁部でそれぞれ支持させている。加えて、このアクチュエータは、一対の板状弾性体のうちの一方の渦巻型形状の板状弾性体における盛り上がった中央部分に、磁石を取り付けたヨークを固定して、ヨークを枠体内で支持している。
【0005】
ヨークは磁石とともに磁界発生体を構成し、この磁界発生体の磁界内に、コイルが他方の板状弾性体に取り付けた状態で配置されている。このコイルに発振回路を通じて周波数の異なる電流が切替えて付与されることにより一対の板状弾性体は選択的に共振されて振動を発生し、ヨークは枠体内で枠体の中心線方向で振動する。また、特許文献1では、第2の実施の形態として、可動体が振動方向に摺動して移動するシャフトを固定体に設けて、外部から衝撃を受けても、可動体であるヨークが、シャフトにより枠体の内周面への衝突を防止した構成も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の振動アクチュエータでは、可動体が振動する範囲内へのゴミなどの異物の侵入を防ぐため、筐体等で囲むことにより極力閉塞された空間で可動体を振動させることが一般的である。
【0008】
しかしながら、密閉された空間で可動体を振動させる場合、可動体の振動の大きさによっては、振動により筐体内で圧縮される空気により、筐体内部の圧力が高くなり、可動体の振動が減衰し、振動アクチュエータ自体の振動表現力が低下する、という問題がある。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ゴミ等の異物の侵入を防止しつつ、減衰することなく、高い出力で好適な体感振動を発生する振動アクチュエータ及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の振動アクチュエータの一つの態様は、
マグネットと、前記マグネットを挟持する一対の磁性体とを含む円柱状の可動体と、
有底筒状の本体部と蓋部とを含み前記可動体を収容する筒状の固定体であって、弾性支持部により前記可動体を軸方向に往復振動可能に支持し、且つ、前記可動体の径方向外側に配置された一対の環状のコイルを有する前記固定体と、を有し、
前記蓋部は、複数の蓋部側通気孔を有し、
前記本体部の底部は、複数の底部側通気孔を有し、
前記蓋部側通気孔または前記底部側通気孔は、衝撃による可動体移動時に、前記可動体が衝突しない領域に設けられ、
前記蓋部は、通常の往復振動時の可動範囲を超える力が前記可動体に加わった場合に、前記弾性支持部の可動範囲を制限して塑性変形を防止する位置に配置され、且つ、前記蓋部における天面部の表面積に対する前記蓋側通気孔の合計開口面積の比率が2%以上20%以下であり、
前記底部の表面積に対する前記底部側通気孔の合計開口面積の比率が、前記蓋部における前記比率と同率である構成を採る。
【0012】
本発明の電子機器の一つの態様は、
上記構成の振動アクチュエータを実装した構成を採る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゴミ等の異物の侵入を防止しつつ、減衰することなく、高い出力で好適な体感振動を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る振動アクチュエータを示す外観斜視図である。
【
図3】同振動アクチュエータにおいてケースを外した状態を示す斜視図である。
【
図4】弾性支持部が固定された可動体を示す斜視図である。
【
図6】電磁シールド部を外したコイル組立体を示す図である。
【
図11】蓋部の通気孔の変形例を示す断面図である。
【
図12】同振動アクチュエータの磁気回路構成を示す模式的に示す図である。
【
図13】コイルとマグネットとの相対的な移動状態を示す図である。
【
図14】コイルとマグネットとの相対的な移動状態を示す図である。
【
図15】振動量に対応した蓋部の表面積と通気孔の開口面積との比率を示す図である。
【
図16】同振動アクチュエータを実装した電子機器の一例を示す図である。
【
図17】同振動アクチュエータを実装した電子機器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[振動アクチュエータの全体構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る振動アクチュエータを示す外観斜視図であり、
図2は、同振動アクチュエータの縦断面図であり、
図3は、同振動アクチュエータにおいてケースを外した状態を示す斜視図である。また、
図4は、弾性支持部が固定された可動体を示す斜視図であり、
図5は、可動体及び弾性支持部の分解斜視図である。また、
図6は、電磁シールド部を外したコイル組立体を示す図であり、
図7は、同コイル組立体の分解図である。なお、本実施の形態における「上」側、「下」側は、理解しやすくするために便宜上付与したものであり、振動アクチュエータにおける可動体の振動方向の一方、他方を意味する。すなわち、振動アクチュエータが電子機器(
図16及び
図17参照)に搭載される際には上下が逆になっても左右になっても構わない。
【0017】
本実施の形態1に係る振動アクチュエータ1は、携帯型ゲーム端末機器(例えば、
図16に示すゲームコントローラGC)等の電子機器に振動発生源として実装され、電子機器の振動機能を実現する。この電子機器としては、スマートフォン等の携帯機器(例えば、
図17に示す携帯端末M)も含む。振動アクチュエータ1は、携帯型ゲーム端末機器或いは、携帯機器等の各機器に実装され、駆動することにより振動して、ユーザに対して着信を通知したり、操作感や臨場感を与えたりする。
【0018】
本実施の形態の振動アクチュエータ1は、
図1及び
図2に示すように、中空のケース10内に、可動体20を、ケース10の軸方向(上下方向)を振動方向として、上下端面間で振動可能に収容している。ケース10内部の可動体20が可動することにより、振動アクチュエータ1自体が振動体として機能する。
【0019】
振動アクチュエータ1は、マグネット30及び可動体コア41、42を有する可動体20と、コイル61、62を有する固定体50と、可動体20を固定体50に対して往復動自在に支持させる板状の弾性支持部81、82と、を有する。
【0020】
振動アクチュエータ1においてコイル61、62、マグネット30及び可動体コア41、42は、可動体20を振動させる磁気回路を構成する。振動アクチュエータ1は、電源供給部(例えば、
図16及び
図17に示す駆動制御部203)からコイル61、62が通電されることで、コイル61、62とマグネット30とが協働して、ケース10内で、可動体20が振動方向に往復移動する。
【0021】
本実施の形態の振動アクチュエータ1では、可動体20は、コイルボビン部(コイル保持部)52に保持されたコイル61、62の内側で、可動体20との間に配置されるボビン本体部(コイル保護壁部)522により、コイル61、62の軸方向、つまり、振動方向で往復移動する。コイル61、62の軸方向は、可動体20の振動方向であり、マグネット30の着磁方向であり、コイルボビン部52の軸方向でもある。
【0022】
可動体20は、可動していない非振動時において、弾性支持部81、82を介して、振動方向の長さの中心が、コイルボビン部52の振動方向の長さの中心と、可動体20の軸方向と直交する方向で、所定間隔をあけて対向するように配置される。このとき、可動体20は、コイルボビン部52のボビン本体部522に接触しないように、コイル61、62との間で釣り合う位置に位置することが望ましい。本実施の形態では、マグネット30および可動体コア41、42における振動方向の長さの中心が、上下で離間するコイル61、62間の振動方向の長さの中心と、振動方向と直交する方向で対向する位置に配置されることが好ましい。なお、ボビン本体部522と可動体20の間に、磁性流体が介在するようにしてもよい。
【0023】
振動アクチュエータ1は、本実施の形態では、
図3に示すように、ケース本体11及び蓋部12を有するケース10内に、コイル61、62、コイルボビン部52、可動体20及び弾性支持部81、82を有する駆動ユニット13を設けることで構成される。
【0024】
<可動体20>
可動体20は、固定体50の筒状のコイルボビン部52の内側で、上下端部で接続された弾性支持部81、82により、ボビン本体部522の内周面522aに沿って、往復移動可能に支持される。言い換えれば、可動体20は、振動アクチュエータ1内において、蓋部12と底部114が対向する方向に往復移動可能に支持されている。可動体20は、
図3に示す駆動ユニット13に設けられる。
【0025】
可動体20は、
図2、
図4及び
図5に示すように、マグネット30、可動体コア41、42、及びばね止め部22、24、固定ピン26、28を有する。本実施の形態では、マグネット30を中心に振動方向の両側(図では上下方向)に向かってそれぞれ可動体コア41、42、ばね止め部22、24が連設されている。可動体20では、マグネット30及び可動体コア41、42の外周面20aがボビン本体部522の内周面522aの内側で所定間隔を空けて対向されている。
【0026】
可動体20が振動方向に移動する際には、外周面20aが内周面522aに沿って接触することなく往復移動する。
【0027】
マグネット30は、振動方向に着磁される。マグネット30は、本実施の形態では円盤状に形成され、振動方向で離間する表裏面30a、30bがそれぞれ異なる極性を有している。マグネット30の表裏面30a、30bは、コイル61、62の軸の延在方向で離間する2つの着磁面である。
【0028】
マグネット30は、コイル61、62(詳細は後述する)に対して、コイル61、62の径方向内側で間隔を空けて位置するように配置される。ここで、「径方向」とは、コイル61、62の軸に直交する方向であり、振動方向と直交する方向でもある。この径方向における「間隔」は、ボビン本体部522を含むコイル61,62と、マグネット30との間の間隔であり、可動体20の振動方向に互いに接触することなく移動可能な間隔とする。すなわち、本実施の形態では、「間隔」とは、ボビン本体部522とマグネット30との間の所定間隔を意味している。
【0029】
マグネット30は、本実施の形態では、径方向外側で、ボビン本体部522の中心と、対向するように配置されている。なお、マグネット30は、コイル61、62の内側で、コイル61、62の軸の延在方向に2つの着磁面をそれぞれ向けて配置されるものであれば、筒状、板形状等のように円盤状以外の形状であってもよい。また、マグネット30の軸方向の中心が、可動体20の軸方向の中心と一致することが望ましい。
【0030】
マグネット30の表裏面30a、30bには、それぞれ可動体コア41、42が設けられている。
【0031】
可動体コア41、42は、磁性体であり、ヨークとして機能し、マグネット30、コイル61、62ともに磁気回路を構成する。可動体コア41、42は、マグネット30の磁束を集中させて、漏らすことなく効率良く流し、マグネット30とコイル61、62間に流れる磁束を効果的に分布させる。
【0032】
また、可動体コア41、42は、磁気回路の一部としての機能の他、可動体20において、可動体20の本体部分としての機能、ばね止め部22、24を固定する機能、及び、ウェイトとしての機能を有する。
【0033】
可動体コア41、42は、本実施の形態では、マグネット30と同表面形状を有する円環平板状に形成されている。可動体コア41、42は、外周面がマグネットの外周面と面一となるようにマグネット30に固定され、マグネットの外周面とともに可動体20の外周面20aを構成する。
【0034】
可動体コア41、42は、本実施の形態では同様に形成された同じ部材であり、本実施の形態では、マグネット30を中心に、マグネット30を挟むようにマグネットの上下に対称に設けられている。なお、可動体コア41、42は、マグネット30に吸引されるとともに、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化型接着剤もしくは嫌気性接着剤によりマグネット30に固定される。
【0035】
可動体コア41、42のそれぞれの中央部には、嵌合口411、421が設けられている。嵌合口411、421には、上下のばね止め部22、24が、それぞれの軸(弾性支持部81、82の中心軸に相当)が可動体20の中心軸上に位置するように、設けられている。嵌合口411、421は、挿入されるばね止め部22、24を、その軸上で正確に固定するため三点或いは四点で接触して上下のばね止め部22、24を可動体20の軸上に位置するように支持している。嵌合口411、421は、可動体コア41、42における開口度合いを調整して、可動体20の重さを調整し、好適な振動出力を設定できる。
【0036】
本実施の形態では、可動体コア41、42は、可動体20の非振動時において、コイル61、62の内側(径方向内側)で、コイル61、62の軸方向と直交する方向で、コイル61、62のそれぞれに対向するように位置する。
【0037】
可動体コア41、42は、マグネット30とともに可動体側磁気回路を構成する。本実施の形態では、マグネット30の上側の可動体コア41の上面の高さ位置が、上側のコイル61の高さ方向(上下方向)の中心の位置と対向することが好ましい。加えて、マグネット30の下側の可動体コア42の下面の高さ位置が、下側のコイル62の高さ方向(上下方向)の中心の位置と対向することが好ましい。
【0038】
ばね止め部22、24は、可動体側磁気回路を弾性支持部81、82に固定する機能を有するとともに、可動体20のウェイトとしての機能を有する。ばね止め部22、24は、マグネット30及び可動体コア41、42を挟むように対象に設けられ、可動体20の振動出力を増加させている。
【0039】
ばね止め部22、24は、本実施の形態では、可動体20の中心軸に沿って配置される軸状体であり、可動体コア41、42と、弾性支持部81、82との間に介設される。
【0040】
ばね止め部22、24は、本実施の形態では、同形状に形成され、接合部222、242と、ばね固定部224、244とを有する。これら接合部222、242とばね固定部224、244とが、それぞれ振動方向(具体的には上下方向)に連設されている。
【0041】
ばね止め部22、24は、貫通する貫通孔を有している。なお、ばね止め部22、24は、貫通孔内に錘を追加して重量調整部として機能させてもよい。貫通孔内に錘を追加することにより可動体20を重くして、可動体20の振動出力を大きくすることができる。
【0042】
接合部222、242は、それぞれ可動体コア41、42に接合する。具体的には、接合部222、242は、一端部側を可動体コア41、42の嵌合口411、421にそれぞれ挿入して内嵌されている。本実施の形態では、ばね止め部22、24は、可動体コア41、42に圧入により固定されているが、これに限らず、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化型接着剤や嫌気性接着剤を用いた接着により固定されてもよい。
【0043】
上側のばね固定部224は、可動体20の振動方向の一方の端部、つまり、可動体20の上側の端部を構成し、弾性支持部81である上側板ばねの内径側の端部である内周部802に接合されている。一方、下側のばね固定部244は、可動体20の振動方向の他方の端部、つまり、可動体20の下側の端部を構成し、弾性支持部82である下側板ばねの内径側の端部である内周部802に接合されている。
【0044】
ばね固定部224、244は、それぞれ接合部222、242から上下に突出するように設けられ、その先端で、固定ピン26、28を介して弾性支持部81、82の内周部802、802にそれぞれ接合されている。
【0045】
固定ピン26、28は、弾性支持部81、82と可動体20とを、可動体20の振動により外れないように強固に固定する。
【0046】
固定ピン26、28は、本実施の形態では同形状に形成されており、それぞれ、ばね固定部224、244に圧入可能な軸状のピン本体262、282と、ピン本体262、282の一端側の縁部に設けられたフランジ264、284とを有する。
【0047】
具体的には、固定ピン26、28のそれぞれのピン本体262、282は、弾性支持部81、82のそれぞれの内周部802を、ばね固定部224、244に重ねた状態で、内周部802の開口を介して、ばね固定部224、244の貫通孔に圧入して固定される。これにより、フランジ264、284は、ばね固定部224、244とで弾性支持部81、82の内周部802を挟持して、強固に接合する。なお、弾性支持部81、82の内周部802と、ばね固定部224、244とは、溶接、接着、または、カシメ等により、更には溶接、接着、または、カシメを組み合わせて接合されてもよい。
【0048】
ばね止め部22、24が、可動体20において、可動体側磁気回路に対して振動方向で離間する両端部(上下端部)に配置されていることにより、可動体20における錘は、可動体磁気回路の外周側に配置されていない。これにより、可動体側磁気回路の外周側、つまり、可動体20の外周側で対向して位置するコイル61、62の配置スペースを制限することがない。よって、可動体磁気回路とコイル61、62との距離を離間させることがなく、電磁変換の効率は低下しない。よって、好適に可動体20の重量を増加でき、高振動出力を実現できる。
【0049】
また、ばね止め部22、24は、錘機能とばね固定機能を有するため、それぞれの機能を有する部材を個々に組み立てる必要が無い。ばね止め部22、24を可動体側磁気回路に設けるだけで、錘とともに、弾性支持部81、82である上側板ばね、下側板ばねを可動体20に対して容易に組み付けることができ、組立性を高めることができる。
【0050】
なお、ばね止め部22、24は、磁性材料により構成されてもよいが、非磁性材料により構成されることが望ましい。ばね止め部22、24が非磁性材料であれば、可動体コア41からの磁束が上方に流れることがないとともに、可動体コア42からの磁束が下方に流れることがなく、効率良く可動体コア41、42の外周側に位置するコイル61、62側に流すことができる。
【0051】
また、ばね止め部22、24は、ケイ素鋼板(鋼板の比重は7.70~7.98)等の材料よりも比重の高い材料(例えば、比重が16~19程度)により形成されるのが好ましい。ばね止め部22、24の材料には、例えば、タングステンを適用できる。これにより、設計等において可動体20の外形寸法が設定された場合でも、可動体20の質量を比較的容易に増加させることができ、ユーザに対する十分な体感振動となる所望の振動出力を実現することができる。
【0052】
<固定体50>
固定体50は、コイル61、62を保持するとともに、コイル61、62の径方向内側で、可動体20を、弾性支持部81、82を介して振動方向(コイル軸方向、可動体20の軸方向)に移動自在に支持する。
【0053】
固定体50は、ケース10、コイル61、62、コイルボビン部52、及び電磁シールド部58を有する。
【0054】
コイルボビン部52は、外周面に巻回されるコイル61、62を保持し、内周面522aでマグネット30を囲み、マグネット30を有する可動体20の移動を案内する。
【0055】
コイルボビン部52は、フェノール樹脂、ポリブチレンテレフタレート(poly butylene terephtalate;PBT)等の樹脂により形成された筒状体である。コイルボビン部52は、本実施の形態では、難燃性の高いベークライト等のフェノール樹脂を含む素材で構成される。
【0056】
コイルボビン部52が、フェノール樹脂を含む素材で構成されることにより、難燃性が高まり、保持するコイル61、62に電流が流れた際にジュール熱により発熱しても、駆動の際の安全性の向上を図ることができる。また、寸法精度が高まり、コイル61、62の位置精度が高まるため、振動特性のばらつきを低減出来る。
【0057】
コイルボビン部52は、筒状のボビン本体部522と、ボビン本体部522の外周から放射方向に突出するフランジ部526~528と、端子絡げ部(コイル結線部)53と、可動範囲形成部54を有する。
【0058】
ボビン本体部522の内周面522aは、可動体20の外周面と所定間隔を空けて対向して配置されている。この所定間隔は、可動体20が、振動方向に移動する際に、内周面522aと接触することなく振動方向である軸方向に移動可能な間隔である。ボビン本体部522は、マグネット30とコイル61、62との接触を阻害するように構成され、可動体20は、内周面522aに沿って接触することなく往復移動可能である。
【0059】
ボビン本体部522は、内側に配置される可動体20の駆動時におけるコイル61、62への衝突を保護する保護壁部として機能している。ボビン本体部522の厚みは、移動する可動体20が接触しても,外周側のコイル61、62に何ら影響を与えない強度をする厚みである。
【0060】
ボビン本体部522の外周側には、可動体20の可動体コア41、42の外周面(マグネット30及び可動体コア41、42の外周面)を囲むようにコイル61、62が、コイル軸方向に並んで配置されている。
【0061】
具体的には、ボビン本体部522の外周面には、フランジ部526~528とともに、外周側に径方向外側に開口する凹状のコイル取付部52b、52cが設けられている。
【0062】
端子絡げ部53は、
図6及び
図7に示すように、コイル61、62のコイル巻線を絡げて、外部機器と接続するコネクタ結線部として機能する。端子絡げ部53を介してコイル61、62と外部機器とが接続され、コイル61、62とコイル61、62に電力が供給される。
【0063】
端子絡げ部53は、ボビン本体部522の外周部分に突設された導電性を有する部材である。端子絡げ部53は、本実施の形態ではボビン本体部522の外周において振動方向の中心に配置されるフランジ部526の外周面に圧入される。これにより、端子絡げ部53は、フランジ部526の外周面から突出するように設けられている。
【0064】
フランジ部527、528は、ボビン本体部522の軸方向(本実施の形態では振動方向であり、上下方向でもある)で離間する両端部に設けられ、コイルボビン部52の上下端部を構成する。
【0065】
フランジ部527、528は、フランジ部526から離間する方向側の端部(本実施の形態では上下端部)で、弾性支持部81、82が固定される。
【0066】
可動範囲形成部54は、コイルボビン部52の上下端部に設けられ、ケース10内にコイルボビン部52を収容した際に、ケース10の蓋部12及び底部114と、可動体20との間の振動範囲を形成する。
【0067】
可動範囲形成部54は、フランジ部527、528のそれぞれから振動方向(上下方向)に突設された突状辺部であり、フランジ部527、528の円環状の上下端面527a、528aにおいて、所定間隔を空けて設けられている。
【0068】
コイルボビン部52は、ケース10に、上下端部の可動範囲形成部54を、蓋部12の縁部と、底部114の縁部とに当接させた状態で収容され、底部114の縁部に固定される。
【0069】
<コイル>
コイル61、62は、振動アクチュエータ1において、コイル61,62の軸方向(マグネット30の着磁方向)を振動方向として、マグネット30及び可動体コア41、42とともに、振動アクチュエータ1の駆動源の発生に用いられる。コイル61、62は、駆動時(振動時)に通電されて、マグネット30とともにボイスコイルモータを構成する。
【0070】
コイル取付部52b、52cには、コイル61、62が配置され、コイル61、62は、本実施の形態では、可動体コア41、42に対して振動方向と直交する方向で対向する位置に配置されている。
【0071】
コイル61、62は、コイルボビン部52に、コイル軸方向(振動方向)の長さの中心位置が、可動体20の振動方向の長さの中心位置(マグネット30の振動方向の中心位置)と、振動方向で略同じ位置(同じ位置も含む)となるように、保持されている。なお、本実施の形態のコイル61、62は、互いに逆方向に巻回されて構成され、通電時に逆方向に電流が流れるように構成されている。
【0072】
コイル61、62のそれぞれの端部は、フランジ部526の端子絡げ部53に絡げて接続されている。コイル61、62は、端子絡げ部53を介して、電源供給部(例えば、
図16及び
図17に示す駆動制御部203)に接続される。例えば、コイル61、62のそれぞれの端部は、交流供給部に接続され、交流供給部からコイル61、62に交流電源(交流電圧)が供給される。これにより、コイル61、62はマグネットとの間に、互いの軸方向で互いに接離方向に移動可能な推力を発生できる。
【0073】
コイル61、62のコイル軸は、コイルボビン部52の軸、或いは、マグネット30の軸と同軸上に配置されることが好ましい。
コイル61、62は、コイルボビン部52の外側から、コイル取付部52b、52cに、コイル巻線を巻き付けることにより円筒状に形成されている。この構成により、コイル61、62を有するコイルボビン部52は、コイル61、62の円筒状体をそれぞれ維持するために、コイルを自己融着線を用いずに組み立てることができる。つまり、コイルとして空芯コイルを用いる必要がないので、コイル61、62自体の低コスト化、ひいては、振動アクチュエータ自体を低コスト化できる。
【0074】
また、コイル61、62は、ケース10の内側で、外周面を電磁シールド部58により囲まれ、コイル取付部52b、52c内で封止され、コイル取付部52b、52c内で接着等により固定される。本実施の形態では、コイル61、62は、コイル取付部52b、52cを構成するボビン本体部522、フランジ部526~528の全てに接着により固定される。よって、コイル61、62はコイルボビン部52との接合強度を大きくすることができ、大きな衝撃が加わる場合でも、可動体がコイルと直接接触する構成と比較して、コイル61、62が破損することがない。
【0075】
電磁シールド部58は、コイルボビン部52の外周面を囲み、コイル61、62を径方向外側で覆う位置に配置される筒状の磁性体である。電磁シールド部58は、コイル61、62とともに固定体側磁気回路を構成し、可動体側磁気回路、つまり、マグネット30及び可動体コア41、42とともに構成する磁気回路において、振動アクチュエータ1の外部への漏れ磁束を防止する。
【0076】
電磁シールド部58は、電磁シールド部58の振動方向の長さの中心を、内側に配置されるマグネット30の振動方向の中心と同じ高さとなる位置となるように配置されている。この電磁シールド部58のシールド効果により、振動アクチュエータの外側への漏えい磁束の低減を図ることができる。
【0077】
また、電磁シールド部58は、磁気回路において、推力定数を大きくして電磁変換効率を高めることができる。電磁シールド部58は、マグネット30の磁気吸引力を利用して、マグネット30とともに磁気ばねとしての機能を有する。弾性支持部81、82を機械バネにした際の弾性支持部81、82の応力を低下させることができ、弾性支持部81、82の耐久性を向上させることができる。
【0078】
<弾性支持部81、82>
弾性支持部81、82は、可動体20を固定体50に対して振動方向に往復移動自在に支持する。
【0079】
弾性支持部81、82は、可動体20の振動方向で、可動体20を挟み、且つ、可動体20と固定体50との双方に振動方向と交差するように架設されている。弾性支持部81、82は、本実施の形態では、
図2~
図4に示すように、可動体20において振動方向で離間する両端部(上下端部)で互いに離間して配置され、固定体50と接続する。本実施の形態では、弾性支持部81、82は、それぞれ振動方向と直交する方向で互いに対向して配置されている。
【0080】
弾性支持部81、82は、可動体20の軸方向(振動方向)で離れる両端部(ばね固定部224、244)にそれぞれの内周部802が嵌合され、可動体20に、外周固定部806側が径方向外側(放射方向)に張り出すように取り付けられる。
【0081】
弾性支持部81、82は、可動体20を、可動体20の可動体の非振動時及び振動時において、固定体50に接触しないように支持する。なお、弾性支持部81、82は、可動体20の駆動(振動)時において、可動体20のボビン本体部522の内周面522aに接触しても、磁気回路、具体的には、コイル61、62が損傷することはない。弾性支持部81、82は、可動体20を可動自在に弾性支持するものであれば、どのようなもので構成されてもよい。弾性支持部81、82は、本実施の形態では同様の構成を有する同部材である。
【0082】
弾性支持部81、82は、それぞれ平板状の複数の板ばねである。可動体20は、複数の弾性支持部81、82を3つ以上の板ばねとしてもよい。これら複数の板ばねは、振動方向と直交する方向に沿って取り付けられる。
【0083】
板ばねである弾性支持部81、82は、内側のばね端部である環状の内周部802と、外側のばね端部である外周固定部806と、が弾性変形する平面視円弧状の変形アーム804により接合された形状を有する。変形アーム804と外周固定部806とで弾性支持部81、82のそれぞれの外周部807を構成する。弾性支持部81、82のそれぞれにおいて、変形アーム804の変形により、内周部802が、外周固定部806に対し、軸方向で変位する。
【0084】
弾性支持部81、82は、外周固定部806が固定体50に接合され、内周部802が可動体20に接合される。
【0085】
弾性支持部81、82としての板ばねは、本実施の形態では、ステンレス鋼板を用いて板金加工により形成されており、より具体的には、薄い平板円盤状の渦巻型ばねとしている。弾性支持部81、82は、平板状であるので、円錐状のばねと比較して、位置精度の向上、つまり加工精度の向上を図ることできる。
【0086】
複数の弾性支持部81、82は、本実施の形態では、渦巻きの向きが同一となる向きで、それぞれ外周側の一端である外周固定部806が固定体50に固定されるとともに、内周側の他端である内周部802が可動体20に固定されている。
【0087】
このように、本実施の形態では、複数の弾性支持部81、82として、渦巻き形状の板ばねを複数用いて、可動体20において振動方向で離間する両端部にそれぞれ取り付けて、固定体50に対して可動体20を弾性支持している。これにより、可動体20の移動量が大きくなると、可動体は、僅かではあるが回転しながら並進方向(ここでは、振動方向に対して垂直な面上の方向)に移動する。複数の板ばねの渦の方向が反対向きであれば、複数の板ばねは、互いに座屈方向ないし引っ張り方向に動くことになり、円滑な動きが妨げられることになる。
【0088】
本実施の形態の弾性支持部81、82は、渦巻きの向きが同一となるように可動体20に固定されているので、可動体20の移動量が大きくなったとしても、円滑に動く、つまり、変形することができ、より大きな振幅となり、振動出力を高めることが可能である。
但し、所望の可動体20の振動範囲によっては、複数の弾性支持部81、82の渦巻き方向を互いに反対方向とする設計であってもよい。
【0089】
板状の弾性支持部81、82は、可動体20に対して、弾性支持部81、82のそれぞれの内周部802を、可動体20の振動方向の端部を構成するばね固定部224、244に重ねて配置されている。弾性支持部81、82の内周部802が、上述したように、固定ピン26、28のフランジ264、284とばね固定部224、244とで挟持されることにより固定されている。
【0090】
一方、上側の弾性支持部81の外周固定部806は、径方向外側で、コイルボビン部52の上端部に固定されている。具体的には、弾性支持部81の外周固定部806は、コイルボビン部52の上端部を形成する上側のフランジ部527の環状の上端面527aにおいて、可動範囲形成部54を避けた部位に固定される。
【0091】
弾性支持部81の外周固定部806は、ケース10内において、フランジ部527の環状の上端面527aと蓋部12の押圧部128とに挟持されて固定される。なお、押圧部128は、蓋部12の天面部122の裏面の外縁部から突出するように設けられ、底面視円弧状に形成されている。
【0092】
また、下側の弾性支持部82の外周固定部806は、径方向外側で、コイルボビン部52の下端部に固定されている。具体的には、弾性支持部82の外周固定部806は、コイルボビン部52の下端部を形成する下側のフランジ部528の環状の下端面528aにおいて、可動範囲形成部54を避けた部位に固定される。
【0093】
弾性支持部82の外周固定部806は、ケース10内において、フランジ部528の環状の下端面528aと、底部114の周縁部に設けられた段差部118とに挟持されて固定される。
【0094】
このように弾性支持部81、82は、コイルボビン部52の上下の開口縁部の端面527a、528aと、ケース10の蓋部12及び底部114とにより、振動方向と直交する方向に配置された状態で挟持されている。また、コイル61、62が巻回されたコイルボビン部52内に、可動体20を収容して、可動体20の上下端部に弾性支持部81、82の内周部802を固定するとともに、コイルボビン部52の上端部に弾性支持部81、82の外周固定部806を固定する。弾性支持部81、82は、コイルボビン部52の上下の開口を、閉塞するようにコイルボビン部52に取り付けられる。
これにより、コイル61、62と可動体20との位置関係が規定された駆動ユニット13として構成され、ケース10内に配置し易くなる。
【0095】
弾性支持部81、82は、本実施の形態では、変形アーム804或いは変形アーム804と外周固定部806に、弾性支持部81において発生する振動を減衰させる減衰手段としての減衰部(ダンパー)72が取り付けられている。減衰手段は、弾性支持部81において、共振峰を抑え、且つ、広範囲にわたる安定した振動を発生させる。
【0096】
本実施の形態の減衰部72は、一部を弾性支持部81(82)の一方の面側からばね部分間、具体的には外周固定部806と変形アーム804との間に挿入して、減衰部本体をばね部分間に架け渡して位置させている。減衰部は、熱硬化樹脂或いは弾性支持部81に固着しない接着剤等で弾性支持部81(82)に、変形アーム804におけるばね部分間から外れないように固定されている。この構成により、減衰部72は、弾性支持部81(82)における鋭いばね共振を減衰して、共振周波数付近での振動が著しく大きくなることで周波数による振動の差が大きくことを防止できる。
【0097】
<ケース10>
図8は、ケース本体11の底面側斜視図であり、
図9は、蓋部12を裏面側からみた図であり、
図10は、天面部122の通気孔126を示す蓋部12の断面図である。
ケース10は、
図1、
図3、
図9及び
図10に示すように、周壁部112及び底部114を有する有底筒状のケース本体11と、ケース本体11の開口部115を閉塞する蓋部12とを有する。
ケース10は、可動体20の往復振動により形成される圧縮空気を外部に放出する少なくとも1つの通気孔を有する。本実施の形態では、ケース10は、蓋部12と底部114のそれぞれに、それぞれを貫通して設けられる複数の通気孔126、116を備える。
【0098】
蓋部12及び底部114は、本実施の形態における振動アクチュエータ1のケース10における両端面部としての天面部122及び下面部(底部114)を構成する。底部114は、ケース本体11として周壁部112と一体であるのに対し、蓋部12は、天面部122の外周の一部から垂下して設けられた垂下部124を、ケース本体11の上端側に設けられた切り欠きに係合して位置決めされる。蓋部12は、溶接によりケース本体11の筒状部としての周壁部112の開口部を閉塞するように固定される。
天面部122、底部114は、駆動ユニット13の可動体20に可動体20の振動方向で所定間隔を空けて対向して配置され、それぞれ可動体20の移動範囲を規制する、つまり、ハードストップ(可動範囲限定)する可動範囲抑制部として機能する。
【0099】
具体的には、天面部122及び底部114は、可動範囲形成部54により形成される可動範囲、つまり、天面部122及び底部114からコイルボビン部52の上下端部の縁部(上下のフランジ部527、528の端面527a、528a)までの長さを規制する。ケース10は、可動体20の移動を抑制した空間である可動体空間を形成している。天面部122及び底部114は、可動体空間を、弾性支持部81、82が塑性変形しない範囲の長さに規定している。よって、可動体20に、可動範囲を超える力が加わる場合でも、弾性支持部81、82は、塑性変形することなく、固定体50(蓋部12及び底部114の少なくとも一方)に接触するので、弾性支持部81、82が破損することなく、信頼性が高めることができる。
【0100】
<通気孔116、126>
通気孔116、126は、少なくともケース10の両端面部(蓋部12及び底部114)のうちの一方の端面部に設けられていればよい。
通気孔116、126は、ケース10の両端面部(蓋部12及び底部114)のうちの少なくとも一方の端面部(本実施の形態では蓋部12及び底部114の双方)で、可動体20が干渉しない箇所(外周部と重なる領域OR)に設けられている。
【0101】
ここで可動体20が干渉しない箇所(外周部と重なる領域OR)とは、アクチュエータ自体の落下等のように、ケース10に外部からの大きな荷重が付与されても、ケース10において、往復直線駆動する可動体20が、当たらない箇所である。本実施の形態では、ケース10内において、可動体20は、弾性支持部81、82により、ケース10内の中央部分で上下に移動可能に吊られた状態で支持されている。よって、ケース10に振動方向に移動自在に支持される外部からの大きな荷重が付与される場合、振動方向に大きく移動して、可動範囲抑制部としての底部114或いは天面部122に衝突する。このとき、可動体20は、弾性支持部81、82の弾性変形領域である底部114或いは天面部122の外周部(外周部と重なる領域OR)には、当たらない、つまり干渉せずに、底部114或いは天面部122の中央部分(干渉領域CR)に衝突する。このように可動体20が干渉しない箇所とは、外部からの衝撃により可動体20が移動しても、移動する可動体20が衝突しない(しにくい)箇所である。
【0102】
通気孔116、126は、それぞれケース10内において、可動体20の往復振動により形成される圧縮空気を外部に放出する。
【0103】
通気孔116は、底部114で、可動体20(具体的には、主にマグネット30と可動体コア41、42)の移動方向の平面視で弾性支持部82の外周部807と重なる箇所に設けられている。言い換えれば、通気孔116は、両端面部(蓋部12及び底部114)のうちの底部114において、弾性支持部82の外周部807と、振動方向で重なる箇所に設けられている。
【0104】
通気孔126は、蓋部12の天面部122で、可動体20(具体的には、主にマグネット30と可動体コア41、42)の移動方向の平面視で弾性支持部81の外周部807と重なる箇所に設けられている。言い換えれば、通気孔126は、両端面部(蓋部12及び底部114)のうちの蓋部12の天面部122において、弾性支持部81の外周部807と、振動方向で重なる箇所(外周部と重なる領域OR)に設けられている。
【0105】
通気孔116、126は、ケース10において振動方向で対向する底部114及び天面部122で、可動体20が干渉しない箇所、つまり、端面部である底部114及び天面部122の平面視中央近傍(可動体20の干渉領域CR)以外に設けられている。
底部114及び天面部122に通気孔116、126を設けると、その通気孔116、126を設けた箇所の機械剛性は低下する。しかしながら、本実施の形態の通気孔116、126は、振動アクチュエータが外部から衝撃を受けて、可動体20が通常の振動範囲を超えて移動して端面部である底部114及び天面部122に衝突しても、可動体20が干渉することがない。よって、その衝撃により端面部である底部114及び天面部122が損傷(ひび割れ等)することがない。
【0106】
通気孔116、126は、ケース10に設けられる通気孔(126、116)の合計開口面積(開口面積の合計)が、少なくとも天面部122及び底部114のうちの一方の表面積の2%以上20%以下である。更に好ましくは、少なくとも天面部122及び底部114のうちの一方の表面積の4%以上20%以下である。なお、本実施の形態の通気孔116、126は、円盤状の天面部122及び底部114において、それぞれの中心(振動アクチュエータ1の可動中心軸上に略位置する)を中心とした円周に沿って形成された円弧状の孔であり、径方向に複数形成されているが、形状はどのような形状であってもよい。
【0107】
通気孔116、126の合計開口面積が、天面部122及び底部114のうちの一方の表面積の2%未満である場合、可動体20の駆動時のケース10内の空気が外部に排出されにくくなり、内部の圧縮空気は減少しにくく、可動体20の移動は減衰する。
【0108】
また、通気孔116、126の合計開口面積が、天面部122及び底部114のうちの一方の表面積の20%より大きい場合、通気孔を介して外部からケース10内にゴミが侵入し易くなる。これにより、可動体20の可動を阻害する恐れがあり、通気孔116、126の合計開口面積は、天面部122及び底部114のうちの一方の表面積の最大で20%にすることが好ましい。
【0109】
なお、ボビン本体部522の内周面522aとマグネット30との「間隔」に磁性流体が設けられる等、可動体20の振動時に「間隔」に空気が流れにくい構成とする場合がある。この場合、天面部122における通気孔126の合計開口面積は、天面部122の表面積の2%以上20%以下にすることがより効果的であり、更に好ましくは、4%以上20%以下とする。このとき底部114における通気孔116の合計開口面積は、底部114の表面積の2%以上20%以下であり、好ましくは、4%以上20%以下とする。
【0110】
図15は、振動量に対応した蓋部の表面積と通気孔の開口面積との比率を示す図である。
図15では、蓋部12、詳細には、天面部122の表面積と、天面部122及び底部114に設けられた複数の通気孔116、126の合計開口面積と比率を、測定結果に基づいた「通気孔開口比率(%)」で示す。
図15から明らかなように、「通気孔開口比率(%)」が3%以下では、振動量比率が100%から99.5%程度の振動比率に減衰している。これに対し、「通気孔開口比率(%)」が4%以上であれば、「通気孔開口比率(%)」は略100%であり、可動体20の振動力は減衰していないことは明らかである。
【0111】
天面部122には、通気孔126を囲むようにリブ129が設けられており、通気孔126を形成することにより天面部122の強度の低下を防止している。なお、底部114は、天面部122と対向する面に、天面部122と同様に、放射状の複数のリブ129を有し、これら複数のリブ129間に複数の通気孔116が配設された構成としているが、複数のリブは無くてもよい。
【0112】
通気孔116、126が設けられる底部114及び天面部122のうち、少なくとも天面部122は、放射状に設けられた複数のリブを有している。通気孔126は、天面部122において、複数のリブ間に、複数設けられている。この構成によれば、天面部122に通気孔126を設けても放射状に配置されたリブにより、天面部122の外周部に均一に強度を高めることができ、天面部122の強度が低下することがない。
【0113】
また、通気孔116、126は、天面部122及び底部114の少なくとも片側の面で通気性を有するメッシュ状の緩衝部材を設けてもよい。本実施の形態では、
図9及び
図10に示すように、蓋部12の天面部122における通気孔126は、天面部122の裏面側に設けた通気性を有する緩衝部材14により覆われている。
【0114】
図9及び
図10に示す緩衝部材14は、例えば、スポンジ素材であることが好ましく、本実施の形態では、可動体20の衝突による衝撃力を吸収可能なダンパーとしての機能を有する。本実施の形態では、蓋部12の天面部122において、緩衝部材14は、円環状に形成されて、通気孔126を覆うように設けているが、これに限らず、天面部122の中央部分、つまり、可動体20の干渉領域CRに緩衝部材14を設けてもよい。この場合、中央部分に配置された緩衝部材は、落下等により可動体20が衝突する際のダンパーとして機能する。
【0115】
なお、通気孔126は、
図11に示す通気孔126Aのように、蓋部12Aの天面部122Aにおいて、断面ラビリンス形状に設けられてもよい。このように、天面部122Aにおいて、通気孔126Aは、上下方向(振動方向)で直線状に形成されず、天面部122Aの厚み内で折れ曲がる形状であれば、天面部122Aを介してごみ等の異物が外部から内部へ一層侵入しにくくすることができる。このときの通気孔126Aは、円盤状の天面部122Aにおいて、外周部と重なる領域ORに天面部122Aの中心を中心として、放射状に配置された複数のスリット状に設けられている。このように、通気孔126Aの平面形状は、放射方向に直線状に形成されているが、本実施の形態の通気孔126のように、周方向に沿った円弧状に形成されてもよい。また、
図11に示す通気孔126Aの構成を、ケース10の底部114の通気孔116に適用して、底部114における通気孔を断面ラビリンス形状に形成し、通気孔126Aと同様の効果を奏するようにしてもよい。また、ケース本体11の周壁部112に通気孔を設ける場合も、通気性のある緩衝部材で覆ったり、断面ラビリンス形状に形成してもよい。
【0116】
<振動アクチュエータ1の動作>
振動アクチュエータ1の動作について、マグネット30において着磁方向の一方側(本実施の形態では上側)の表面30a側がN極、着磁方向の他方側(本実施の形態では下側)の裏面30b側がS極となるように着磁されている場合を一例に説明する。
【0117】
振動アクチュエータ1では、可動体20は、ばね-マス系の振動モデルにおけるマス部に相当すると考えられるので、共振が鋭い(急峻なピークを有する)場合、振動を減衰することにより、急峻なピークを抑制する。振動を減衰することにより共振が急峻では無くなり、共振時の可動体20の最大振幅値、最大移動量がばらつくことがなく、好適な安定した最大移動量による振動が出力される。
【0118】
振動アクチュエータ1では、
図14に示す磁気回路が形成される。また、振動アクチュエータ1において、コイル61、62はコイル軸がマグネット30を振動方向で挟む可動体コア41、42らの磁束に直交するように、配置されている。
【0119】
具体的には、マグネット30の表面30a側から出射し、可動体コア41からコイル61側に放射され、電磁シールド部58を通り、コイル62を介してマグネット30の下側の可動体コア42からマグネット30へ入射する磁束の流れmfが形成される。
【0120】
したがって、
図12に示すように通電が行われると、マグネット30の磁界とコイル61、62に流れる電流との相互作用により、フレミング左手の法則に従ってコイル61、62に-f方向のローレンツ力が生じる。
【0121】
-f方向のローレンツ力は、磁界の方向とコイル61、62に流れる電流の方向に直交する方向である。コイル61、62は固定体50(コイルボビン部52)に固定されているので、作用反作用の法則に則り、この-f方向のローレンツ力と反対の力が、マグネット30を有する可動体20にF方向の推力として発生する。これにより、マグネット30を有する可動体20側がF方向、つまり蓋部12(蓋部12の天面部122)側に移動する(
図13参照)。
【0122】
また、コイル61、62の通電方向が逆方向に切り替わり、コイル61、62に通電が行われると、逆向きのF方向のローレンツ力が生じる。このF方向のローレンツ力の発生により、作用反作用の法則に則り、このF方向のローレンツ力と反対の力が、可動体20に推力(-F方向の推力)として発生し、可動体20は、-F方向、つまり、固定体50の底部114側に移動する(
図14参照)。
【0123】
振動アクチュエータ1では、通電していない場合の非駆動時においては、マグネット30と電磁シールド部58との間に磁気吸引力がそれぞれ働き磁気バネとして機能する。このマグネット30と電磁シールド部58との間に発生する磁気吸引力と、弾性支持部81、82の元に戻ろうとする復元力により、可動体20は、元の位置に戻る。
【0124】
振動アクチュエータ1は、コイル61、62を有する固定体50と、コイル61、62の径方向内側に配置され、且つ、コイル61、62の軸方向に磁化されたマグネット30を有する可動体20とを有する。更に加えて、振動アクチュエータ1は、可動体20をコイル軸方向である振動方向に、移動自在に弾性保持する平板状の弾性支持部81、82を備える。
【0125】
また、コイル61、62は、コイルボビン部52のボビン本体部522の外周に配置され、ボビン本体部522の内周側に、間隔を空けて、可動体20の外周面20aが配置され、コイル61、62は、外周面を電磁シールド部58により囲まれている。
【0126】
弾性支持部81、82は、可動体20を、可動体20の非振動時及び振動時に接触しないようにボビン本体部522の内周面522aから所定の間隔を空けて支持する。
【0127】
また、中空のケース10は、可動体20の振動方向で離間して対向配置された両端面部(天面部122及び底部114)で、それぞれケース10内での可動体20の移動範囲を規制し、ケース10は、1つ以上の通気孔126(116)を有する。通気孔126の合計開口面積は、少なくとも天面部122及び底部114のうちの一方の表面積の2%以上20%以下である。
【0128】
これにより、ケース10内において可動体20の振動中の行き場の失った空気が圧縮して、可動体20の振動自体を減衰させることを防止できる。すなわち、ケース10内において可動体20の振動により、可動体20と天面部122との間、可動体20と底部114との間で押圧される空気は、通気孔126、116を介して外部に排出される。これにより、可動体20の駆動が減衰することがなく、ごみの侵入も防いでいるので、高い出力で好適な体感振動を発生することができる。
【0129】
また、振動アクチュエータ1は、ケース10内に駆動ユニット13を配置することにより構成されているので、高い寸法精度が必要な弾性支持部81、82の固定は、コイルボビン部52に組み付けることにより行うことができる。これにより、弾性支持部81、82の固定を含む可動体20の配置は、コイルボビン部52を基準として決定させることができ、製品としての振動発生方向の精度を高めることができる。
【0130】
また、ケース10内に配置されるコイルボビン部52に、電磁シールド部58が、コイル61、62を囲むように取り付けられることにより、ケース10の外周側に電磁シールドを設ける必要がない。これにより、ケース10における周壁部112の外周面は面精度の良い樹脂となり滑らかな面となり、緩衝材を取り付ける部材、例えば、両面テープの接合状態が良好となり、接合強度を高めることができる。
【0131】
また、ケース10は、有底筒状、つまり、カップ状のケース本体11と蓋部12とで形成されているので、周壁部112と底部114とを別体にした構成よりも、部品点数が減少し、組立性の向上が図ることができ、更に、耐衝撃性の向上が図られている。
【0132】
また、蓋部12は、カップ状のケース本体11の開口部115に溶着することで固定されている。これにより、蓋部12の天面部122に複数の通気孔126を設けていても、耐久性が減少することがない。また、接着固定と比較して、固定強度が向上し、外部からの衝撃を受けても蓋部12はケース本体11から外れにくく、耐衝撃性を高めることができる。このように振動アクチュエータ1によれば、ゴミ等の異物の侵入を防止しつつ、減衰することなく、好適な体感振動を出力でき、ユーザに振動を付与することができる。
【0133】
振動アクチュエータ1は、電源供給部(例えば、
図16及び
図17に示す駆動制御部203)からコイル61、62へ入力される交流波によって駆動される。つまり、コイル61、62の通電方向は周期的に切り替わり、可動体20には、蓋部12の天面部122側のF方向の推力と底部114側の-F方向の推力が交互に作用する。これにより、可動体20は、振動方向(コイル61、62の径方向と直交するコイル61、62の巻回軸方向、或いは、マグネット30の着磁方向)に振動する。
【0134】
以下に、振動アクチュエータ1の駆動原理について簡単に説明する。本実施の形態の振動アクチュエータ1では、可動体20の質量をm[kg]、ばね(ばねである弾性支持部81、82)のばね定数をKspとした場合、可動体20は、固定体50に対して、下式(1)によって算出される共振周波数Fr[Hz]で振動する。
【0135】
【0136】
可動体20は、ばね-マス系の振動モデルにおけるマス部を構成すると考えられるので、コイル61、62に可動体20の共振周波数Frに等しい周波数の交流波が入力されると、可動体20は共振状態となる。すなわち、電源供給部からコイル61、62に対して、可動体20の共振周波数Frと略等しい周波数の交流波を入力することにより、可動体20を効率良く振動させることができる。
【0137】
振動アクチュエータ1の駆動原理を示す運動方程式及び回路方程式を以下に示す。振動アクチュエータ1は、下式(2)で示す運動方程式及び下式(3)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0138】
【0139】
【0140】
すなわち、振動アクチュエータ1における質量m[kg]、変位x(t)[m]、推力定数Kf[N/A]、電流i(t)[A]、ばね定数Ksp[N/m]、減衰係数D[N/(m/s)]等は、式(2)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数Ke[V/(rad/s)]は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0141】
このように、振動アクチュエータ1では、可動体20の質量mと板ばねである弾性支持部81、82のばね定数Kspにより決まる共振周波数Frに対応する交流波によりコイル61、62への通電を行った場合に、効率的に大きな振動出力を得ることができる。
【0142】
また、振動アクチュエータ1は、式(2)、(3)を満たし、式(1)で示す共振周波数を用いた共振現象により駆動する。これにより、振動アクチュエータ1では、定常状態において消費される電力は減衰部72による損失だけとなり、低消費電力で駆動、つまり、可動体20を低消費電力で直線往復振動させることができる。また、減衰係数Dを大きくすることにより、高帯域に渡り振動を発生させることができる。
【0143】
本実施の形態によれば、可動体20の上下(振動方向)に板状の弾性支持部81、82を配置しているので、可動体20を上下方向に安定して駆動すると同時に、マグネット30の上下の弾性支持部81、82から効率的にコイル61、62の磁束を分布できる。これにより、振動アクチュエータ1として、高出力の振動を実現することができる。
【0144】
また、固定体50は、コイル61、62の保持機能、可動体20に対するコイル61、62の保護機能を兼ねたコイルボビン部52を有する。これにより、固定体50が、衝撃を受けた場合でも、その衝撃に耐えるとともに、弾性支持部81、82に変形などのダメージを与えない。また、固定体50は、コイル61、62に対しても、樹脂製のボビン本体部522を介して衝撃が伝わるため、ダメージを抑制することができ、信頼性の高い振動アクチュエータ1となっている。
【0145】
(電子機器)
図16及び
図17は、振動アクチュエータ1の実装形態の一例を示す図である。
図16は、振動アクチュエータ1をゲームコントローラGCに実装した例を示し、
図17は、振動アクチュエータ1を携帯端末Mに実装した例を示す。
【0146】
ゲームコントローラGCは、例えば、無線通信によりゲーム機本体に接続され、ユーザが握ったり把持したりすることにより使用される。ゲームコントローラGCは、ここでは矩形板状を有し、ユーザが両手でゲームコントローラGCの左右側を掴み操作するものとしている。
【0147】
ゲームコントローラGCは、振動により、ゲーム機本体からの指令をユーザに通知する。なお、ゲームコントローラGCは、図示しないが、指令通知以外の機能、例えば、ゲーム機本体に対する入力操作部を備える。
【0148】
携帯端末Mは、例えば、携帯電話やスマートフォン等の携帯通信端末である。携帯端末Mは、振動により、外部の通信装置からの着信をユーザに通知するとともに、携帯端末Mの各機能(例えば、操作感や臨場感を与える機能)を実現する。
【0149】
図16及び
図17に示すように、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mは、それぞれ、通信部201、処理部202、駆動制御部203、及び駆動部としての振動アクチュエータ1である振動アクチュエータ204、205、206を有する。なお、ゲームコントローラGCでは、複数の振動アクチュエータ204、205が実装される。
【0150】
ゲームコントローラGC及び携帯端末Mにおいて、振動アクチュエータ204、205、206は、端末の主面と振動アクチュエータ204、205、206の振動方向と直交する面、ここでは底部114の底面とが平行となるように実装されることが好ましい。端末の主面とは、ユーザの体表面に接触する面であり、本実施の形態では、ユーザの体表面に接触して振動を伝達する振動伝達面を意味する。なお、端末の主面と、振動アクチュエータ204、205、206の底部114の底面とが直交するように配置されてもよい。
【0151】
具体的には、ゲームコントローラGCでは、操作するユーザの指先、指の腹、手の平等が接触する面、或いは、操作部が設けられた面と、振動方向が直交するように振動アクチュエータ204、205が実装される。また、携帯端末Mの場合は、表示画面(タッチパネル面)と振動方向が直交するように振動アクチュエータ206が実装される。これにより、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mの主面に対して垂直な方向の振動が、ユーザに伝達される。
【0152】
通信部201は、外部の通信装置と無線通信により接続され、通信装置からの信号を受信して処理部202に出力する。ゲームコントローラGCの場合、外部の通信装置は、情報通信端末としてのゲーム機本体であり、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信規格に従って通信が行われる。携帯端末Mの場合、外部の通信装置は、例えば基地局であり、移動体通信規格に従って通信が行われる。
【0153】
処理部202は、入力された信号を、変換回路部(図示省略)により振動アクチュエータ204、205、206を駆動するための駆動信号に変換して駆動制御部203に出力する。なお、携帯端末Mにおいては、処理部202は、通信部201から入力される信号の他、各種機能部(図示省略、例えばタッチパネル等の操作部)から入力される信号に基づいて、駆動信号を生成する。
【0154】
駆動制御部203は、振動アクチュエータ204、205、206に接続されており、振動アクチュエータ204、205、206を駆動するための回路が実装されている。駆動制御部203は、振動アクチュエータ204、205、206に対して駆動信号を供給する。
【0155】
振動アクチュエータ204、205、206は、駆動制御部203からの駆動信号に従って駆動する。具体的には、振動アクチュエータ204、205、206において、可動体20は、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mの主面に直交する方向に振動する。
【0156】
可動体20は、振動する度に、蓋部12の天面部122又は底部114にダンパーを介して接触するようにしてもよい。この場合、可動体20の振動に伴う蓋部12の天面部122又は底部114への衝撃、つまり、筐体への衝撃が、ダイレクトにユーザに振動として伝達される。特に、ゲームコントローラGCでは、複数の振動アクチュエータ204、205が実装されているため、入力される駆動信号に応じて、複数の振動アクチュエータ204、205のうちの一方、または双方を同時に駆動させることができる。
【0157】
ゲームコントローラGC又は携帯端末Mに接触するユーザの体表面には、体表面に垂直な方向の振動が伝達されるので、ユーザに対して十分な体感振動を与えることができる。ゲームコントローラGCでは、ユーザに対する体感振動を、振動アクチュエータ204、205のうちの一方、または双方で付与でき、少なくとも強弱の振動を選択的に付与するといった表現力の高い振動を付与できる。
【0158】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0159】
また、例えば、本発明に係る振動アクチュエータは、実施の形態で示したゲームコントローラGC及び携帯端末M以外の携帯機器に適用する場合に好適である。ゲームコントローラGC及び携帯端末M以外の携帯機器とは、例えば、タブレットPCなどの携帯情報端末、携帯型ゲーム端末、ユーザが身につけて使用するウェアラブル端末である。また、本実施の形態の振動アクチュエータ1は、上述した携帯機器の他、振動を必要とする美顔マッサージ器等の電動理美容器具にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明に係る振動アクチュエータは、ゴミ等の異物の侵入を防止しつつ、減衰することなく、好適な体感振動を出力でき、ユーザに振動を付与するゲーム機端末或いは携帯端末等の電子機器に搭載されるものとして有用である。
【符号の説明】
【0161】
1 振動アクチュエータ
10 ケース
11 ケース本体(本体部)
12、12A 蓋部
13 駆動ユニット
14 緩衝部材
20 可動体
20a 外周面
30 マグネット
30a 表面
30b 裏面
41、42 可動体コア
50 固定体
52 コイルボビン部(コイル保持部)
52b、52c コイル取付部
53 端子絡げ部(コイル結線部)
54 可動範囲形成部
58 電磁シールド部
61、62 コイル
72 減衰部
81、82 弾性支持部
112 周壁部(筒状部)
114 底部
115 開口部
116、126、126A 通気孔
118 段差部
122、122A 天面部
128 押圧部
129 リブ
201 通信部
202 処理部
203 駆動制御部
204、205、206 振動アクチュエータ
222、242 接合部
224、244 ばね固定部
522 ボビン本体部(コイル保護壁部)
522a 内周面
526、527、528 フランジ部
527a 上端面
528a 下端面
802 内周部
804 変形アーム
806 外周固定部
807 外周部