(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ミリ波導波プローブを用いた、留め具周辺の疲労亀裂の自動検出
(51)【国際特許分類】
G01N 22/02 20060101AFI20220614BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G01N22/02 A
G01N22/00 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016112373
(22)【出願日】2016-06-06
【審査請求日】2019-05-13
(32)【優先日】2015-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー イー.ジョージソン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ケー.ブレイディ
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド ディー.パーマー ジュニア.
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第7301335(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0097561(US,A1)
【文献】米国特許第8701276(US,B2)
【文献】特開2014-228349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00-22/04
G01N 27/72-27/9093
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
留め具周辺の金属構造体を非破壊検査する装置であって、
ブロックアセンブリと、第1軸に沿って前記ブロックアセンブリに対して並進可能な第1ステージと、前記第1軸に直交する第2軸に沿って前記ブロックアセンブリに対して並進可能な第2ステージと、を備える多段プローブ配置ヘッド、
前記第1軸周りに回転するよう、前記多段プローブ配置ヘッドの前記第2ステージに回転可能に接続されたマンドレル、及び、
前記マンドレルに取り付けられた導波プローブ、を含む装置であって、
前記導波プローブは、
第1導波部材
と、前記第1導波部材に平行に延びる第2導波部材と、検波器とを含んでおり、
前記
第1導波部材
および前記第2導波部材の各々は、前記金属構造体に向けて第1信号波を出射するように構成されているとともに、前記第1信号波が前記金属構造体に反射されて生じた第2信号波と前記第1信号波との重ね合わせにより
各導波部材内部において定在波が発生する構成とされてお
り、
前記検波器は、前記定在波を検出する構成とされて
おり、
前記第1導波部材および前記第2導波部材は、前記金属構造体に対向する第1端部および第2端部をそれぞれ有し、前記第1端部および前記第2端部には、第1開口および第2開口がそれぞれ形成されており、
前記第1開口および前記第2開口は、前記第1軸に平行な方向に沿って視た場合、所定の直線を基準として互いに偏移している、装置。
【請求項2】
前記多段プローブ配置ヘッドは、前記第1及び第2軸に直交する第3軸に沿って前記ブロックアセンブリに対して並進可能な第3ステージをさらに含み、前記第3ステージは、並進可能に前記第1ステージに接続されており、前記第2ステージは、並進可能に前記第3ステージに接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
プラットフォームと、前記プラットフォームに搭載されたカメラと、をさらに含み、前記多段プローブ配置ヘッドの前記ブロックアセンブリは、前記プラットフォームに取り付けられており、前記プラットフォームは、クローラー走行体、走査ブリッジ、又はロボットアームである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記カメラは、前記多段プローブ配置ヘッドの下の空間に向けられている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1から第3ステージにそれぞれ機械的に接続された第1から第3モーターと、前記マンドレルに機械的に接続された第4モーターと、をさらに含み、前記第1ステージは、前記第1モーターが駆動されると、前記ブロックアセンブリに対して並進移動し、前記第3ステージは、前記第3モーターが駆動されると、前記第1ステージに対して並進移動し、前記第2ステージは、前記第2モーターが駆動されると、前記第3ステージに対して並進移動し、前記マンドレルは、前記第4モーターが駆動されると、前記第2ステージに対して回転する、請求項2~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
留め具周辺の金属を非破壊検査する方法であって、
(a)プラットフォームに移動可能に接続された導波プローブが留め具に近接する位置に、当該プラットフォームを移動させることと、
(b)前記プラットフォーム及び前記導波プローブが静止状態にある間に、前記留め具を視野に含むカメラを用いて撮像データを取得することと、
(c)前記撮像データを処理して、前記留め具の位置を前記プラットフォームの基準系で特定することと、
(d)前記導波プローブの現在位置と開始位置との差分を前記プラットフォームの基準系で特定することと、
(e)前記プラットフォームが静止状態にある間に、前記導波プローブを、前記導波プローブの前記現在位置から前記開始位置へ移動させることと、
(f)前記プラットフォームが静止状態にある間に、前記導波プローブを用いて前記留め具の周辺領域の少なくとも一部を走査することと、を含み、当該走査は、前記導波プローブが前記開始位置にある状態で開始される、方法であって、
前記工程(f)は、前記留め具の前記周辺領域に向けて前記導波プローブから第1信号波を出射すること、前記第1信号波が前記周辺領域に発射されて生じた第2信号波と前記第1信号波との重ね合わせにより前記導波プローブ内に定在波を発生させること、および、前記定在波を検出すること、を含む、方法。
【請求項7】
前記導波プローブが前記開始位置にある時は、前記導波プローブの2つの開口の間を通る垂直軸は、前記留め具の中心を通る垂直軸とほぼ同軸になる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(f)は、前記導波プローブを回転させることと、前記導波プローブの前記垂直軸が、前記留め具に交差する垂直面内を移動するように、前記導波プローブを水平方向に並進移動させることと、を含み、前記垂直面は、前記留め具の直径方向と交差する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記導波プローブが前記開始位置にある時は、前記導波プローブの2つの開口の間を通る垂直軸は、前記留め具の中心を通る垂直軸から離間している、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(f)は、前記留め具を含む領域において前記導波プローブの前記垂直軸が蛇行経路を辿るように、前記導波プローブを水平に並進移動させることを含む、請求項7~9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、構造部品の非破壊検査(NDI:non-destructive inspection)の装置及び方法に関し、より具体的には、留め具周辺の疲労亀裂を検出するNDI技術に関する。
【背景技術】
【0002】
応力に起因する金属の疲労亀裂の非破壊検出及び評価は、陸上輸送、航空輸送、及び発電所をはじめとする多くの異なる環境で実施されている。例えば、渦電流探傷試験を利用すれば、視認できない亀裂でも特定可能である。検査に際し、塗装を除去する場合もある。塗料や塗装には導電材料を含有するものがあり、渦電流探傷試験を用いた亀裂の特定がより困難になる場合がある。渦電流探傷試験は、電磁誘導を利用して金属製の外皮パネルなどの導電性材料における亀裂を特定するものである。具体的には、留め具などの特異部の近傍で渦電流探傷試験を行うと、構造体と留め具との導電性の差による影響を受ける。この差により、この種の試験での欠陥検出の感度が制限されうる。この種の試験では、必要以上に時間と費用を要する場合がある。
【0003】
金属における亀裂を検出する技術としては、ほかにも、ミリ波(即ち、1~10mmの波長域)近接場導波プローブを用いるものが知られている。ミリ波信号は金属を透過しないが、亀裂などの金属表面における不連続部分を感知する。ミリ波信号には、塗料などの誘電材料中を伝播するという利点がある。よって、導波プローブは、塗装が施された金属表面を検査することができる。検査対象空間に亀裂が存在する場合、導波プローブ内に誘導された表面電流密度に、亀裂による乱れが生じる。
【0004】
留め具周辺の金属における亀裂検出に、手持ち式の導波プローブを用いる方法が知られている。ミリ波による亀裂検出を自動で行える装置を提供して、手持ち式の導波プローブを用いる場合に比べて、より迅速に、より少ない手間で、より高い再現性で、より人間工学的に安全に亀裂検出を行えるようにすることが望まれる。
【発明の概要】
【0005】
以下に詳細を示す本開示の要旨は、留め具周辺の金属の検査を自動で高速に行う方法と、その検査方法を実行するコンピュータ制御の装置と、に関する。種々の実施形態によれば、前記装置は、走査ブリッジ、ロボットアームの端部、又はクローラー走行体ロボットに搭載されたマルチモーション検査ヘッドを含む。前記マルチモーション検査ヘッドは、ミリ波導波プローブと、導波プローブをX、Y、及びZ軸に沿って動かして一連の移動を実現する、モーター駆動多段プローブ配置ヘッドと、を備える。前記導波プローブは、Z軸周りに回転するように、X軸(又は、Y軸)ステージに回転可能に接続されたマンドレルに取り付けられている。フィードバック制御されるスマートサーボ(smart servo)又はステッピングモーターを用いて、前記導波プローブを適切な位置に移動させ、留め具頂部を横断的、又は、周回的に走査して、塗装に覆われた状態のままの場合もある前記留め具から外側に延びる亀裂の有無を確認する。
【0006】
一実施形態では、前記装置は、様々な方向にモーター駆動ステージを備え、これらは、航空機外皮の留め具の列を検査するのに必要な特定の移動を行うように順序付けられ、制御される。別の実施形態では、前記モーター駆動ステージは、原子力発電所、石油掘削、造船、及び輸送産業で扱われる構造体の留め具を検査するように順序付けられ、制御されうる。
【0007】
一検査方法では、前記走査ブリッジ、ロボットアーム、又はクローラー走行体を操作して、導波プローブを第1留め具の近傍の位置、又は、第1留め具と第2留め具の間の位置に移動させることができる。前記走査ブリッジ、ロボットアーム、又は、クローラーの停止中に、前記モーター駆動多段プローブ配置ヘッドを操作して、前記導波プローブを第1留め具の上方の正確な位置に移動させ、前記導波プローブを検査高さまで降下させ、その後、前記導波プローブを回転あるいは並進させながら、第1留め具の周辺領域の走査を行う。第1留め具の走査完了後、前記モーター駆動多段プローブ配置ヘッドを操作して、前記導波プローブを第2留め具の上方の正確な位置に移動させ、上記の処理を繰り返す。第2留め具の走査完了後、前記走査ブリッジ、ロボットアーム、又はクローラーを操作して、第3留め具の近傍の位置、又は、第3留め具と第4留め具の間の位置に前記導波プローブを移動させる。その後、前記モーター駆動多段プローブ配置ヘッドを操作して、第3留め具及び第4留め具の周辺領域の走査を実行させる。これらの移動は、すべて制御コンピュータにより制御される。
【0008】
一実施形態によれば、前記制御コンピュータは、航空機機体のアルミニウム製外皮における留め具亀裂の検査を、Z軸を留め具の軸と平行にして、完全に自動で行うようにプログラムされている。しかしながら、本開示の自動化された装置及び方法は、航空機の金属機体以外の金属構造体の検査にも適していることは、認識されよう。
【0009】
以下に詳細を示す本開示の要旨の一側面によれば、留め具周辺の金属を非破壊検査する装置は、プラットフォーム;前記プラットフォームに取り付けられたブロックアセンブリと、第1ステージから第3ステージと、を備える多段プローブ配置ヘッドであって、前記第1ステージは、第1軸に沿って並進可能に前記ブロックアセンブリに接続されており、前記第3ステージは、前記第1軸に直交する第2軸に沿って並進可能に前記第1ステージに接続されており、前記第2ステージは、前記第1軸及び第2軸に直交する第3軸に沿って並進可能に前記第3ステージに接続されている、多段プローブ配置ヘッド;前記第1軸周に回転するように、前記多段プローブ配置ヘッドの第2ステージに回転可能に接続されたマンドレル;及び、前記マンドレルに取り付けられた導波プローブを含む。前記プラットフォームは、クローラー走行体、走査ブリッジ、又はロボットアームであってもよい。前記装置は、前記プラットフォームに搭載されたカメラをさらに含みうる。前記カメラは、多段プローブ配置ヘッドの下の空間に向けられている。開示の実施形態では、前記装置は、前記第1から第3ステージにそれぞれ機械的に接続された第1から第3モーターと、前記マンドレルに機械的に接続された第4モーターと、をさらに含み、前記第1ステージは、前記第1モーターが駆動されると、前記ブロックアセンブリに対して並進移動し、前記第3ステージは、前記第3モーターが駆動されると、前記第1ステージに対して並進移動し、前記第2ステージは、前記第2モーターが駆動されると、前記第3ステージに対して並進移動し、前記マンドレルは、前記第4モーターが駆動されると、前記第2ステージに対して回転する。
【0010】
本開示の要旨の別の側面では、留め具周辺の金属構造体を非破壊検査する装置は、プラットフォーム;前記プラットフォームに取り付けられたブロックアセンブリと、第1軸に沿って前記ブロックアセンブリに対して並進可能な第1ステージと、前記第1軸に直交する第2軸に沿って前記ブロックアセンブリに対して並進可能な第2ステージと、を備える多段プローブ配置ヘッド;前記第1軸周りに回転するように、前記多段プローブ配置ヘッドの前記第2ステージに回転可能に接続されたマンドレル;及び、前記マンドレルに取り付けられた導波プローブ、を含んでいる。
【0011】
本開示の要旨のさらに別の側面では、留め具周辺の金属を非破壊検査する方法は、(a)移動可能にプラットフォームに接続された導波プローブが留め具に近接する位置に、当該プラットフォームを移動させることと、(b)前記プラットフォーム及び前記導波プローブが静止状態にある間に、前記留め具を視野に含むカメラを用いて撮像データを取得することと、(c)前記撮像データを処理して、前記留め具の位置を前記プラットフォームの基準系で特定することと、(d)前記導波プローブの現在位置と開始位置との差分を前記プラットフォームの基準系で特定することと、(e)前記プラットフォームが静止状態にある間に、前記導波プローブを、前記導波プローブの前記現在位置から前記開始位置へ移動させることと、(f)前記プラットフォームが静止状態にある間に、前記導波プローブを用いて前記留め具の周辺領域の少なくとも一部を走査することと、を含み、当該走査は、前記導波プローブが前記開始位置にある状態で開始される。
【0012】
前の段落で説明した方法のいくつかの実施形態によれば、前記導波プローブが前記開始位置にある時は、前記導波プローブの2つの開口の間を通る垂直軸は、前記留め具の中心を通る垂直軸とほぼ同軸になる。これらの実施形態では、前記工程(f)は、前記導波プローブを回転させることを含む。
【0013】
別の実施形態によれば、前記導波プローブが前記開始位置にある時は、前記導波プローブの2つの開口の間を通る垂直軸は、前記留め具の中心を通る垂直軸から離間している。別の実施形態によれば、前記工程(f)は、前記導波プローブの前記垂直軸が、前記留め具に交差する垂直面内を移動するように、前記導波プローブを水平方向に並進移動させることと含む。別の実施形態によれば、前記工程(f)は、前記留め具を含む領域において前記導波プローブの前記垂直軸が蛇行経路を辿るように、前記導波プローブを水平に並進移動させることを含む。
【0014】
以下に開示する要旨の別の側面では、留め具周辺の金属を非破壊検査する方法であって、(a)プラットフォームに移動可能に接続された導波プローブが留め具に近接する位置に、当該プラットフォームを移動させることと、(b)前記プラットフォームが静止状態にある間に、前記留め具を通る蛇行経路に沿って前記導波プローブを移動させることと、(c)前記導波プローブが前記蛇行経路に沿って移動する間に、前記留め具周辺を走査することと、(d)前記導波プローブからの信号波を収集することと、(e)前記収集した信号波を処理して、これら信号波が、前記留め具周辺の亀裂の存在を示唆しているかどうかを判定することと、を含む。
【0015】
下記に詳細を示す要旨のさらに別の側面では、留め具周辺の金属を非破壊検査するシステムは、複数の可動部と、前記可動部にそれぞれ機械的に接続された第1群のモーターと、を備えるプラットフォーム;前記プラットフォームに取り付けられるとともに、X軸ステージ、Y軸ステージ、及びZ軸ステージを備え、前記X軸、Y軸、及びZ軸ステージが、それぞれX、Y、及びZ方向に並進可能である多段プローブ配置ヘッド;前記X軸、Y軸、及びZ軸ステージの並進を駆動するように機械的に接続された第2群のモーター;前記多段プローブ配置ヘッドの前記X軸及びY軸ステージの一方に回転可能に接続されるとともに、前記Z軸周りに回転可能な導波プローブ;前記導波プローブの前記Z軸周りの回転を駆動するように機械的に接続されたモーター;前記プラットフォームに搭載されるとともに、前記多段プローブ配置ヘッドの下の空間に向けられたカメラ;及び、前記カメラが取得した撮像データを処理する操作と、前記モーターを制御する操作と、前記導波プローブを制御して、信号波を送出させる操作と、を実行するようにプログラムされたコンピュータシステム、を含んでいる。前記プラットフォームは、クローラー走行体、走査ブリッジ、又はロボットアームであってもよい。前記カメラが取得した撮像データを処理する操作は、留め具の画像を表す撮像データを認識することと、さらに、前記留め具の位置を前記プラットフォームの基準系で特定することと、を含む。
【0016】
先の段落に記載したシステムのいくつかの実施形態によれば、前記モーターを制御する操作は、前記第2群のモーターのうちの少なくとも1つを駆動し、その後、駆動を停止して、前記導波プローブの中心軸が前記留め具に交差する開始位置に、前記導波プローブを移動させることと、前記導波プローブが前記開始位置にある状態で、前記導波プローブの前記Z軸周りの回転を駆動するように機械的に接続されたモーターを駆動することと、を含み、前記導波プローブを制御して信号波を送出させる操作は、前記導波プローブの回転中に、前記導波プローブを駆動して信号波を送出させることを含む。
【0017】
前記システムのいくつかの実施形態によれば、前記モーターを制御する操作は、前記第2群のモーターのうちの少なくとも1つを駆動し、その後、駆動を停止して、前記導波プローブの中心軸が前記留め具と同軸ではない第1開始位置に、前記導波プローブを移動させることと、次に、前記第2群のモーターのうち、前記Y軸ステージの並進を駆動するように機械的に接続されたモーターを駆動し、その後、駆動を停止して、前記導波プローブを前記第1開始位置から第1終了位置まで第1Y軸方向に移動させることと、をさらに含み、前記導波プローブを制御して信号波を送出させる操作は、前記導波プローブが前記第1開始位置から前記第1終了位置まで移動する間に、前記導波プローブを駆動して信号波を送出させることを含む。
【0018】
先の段落に記載したシステムのいくつかの実施形態の変形例によれば、前記モーターを制御する操作は、前記第2群のモーターのうち、前記X軸ステージの並進を駆動するように機械的に接続されたモーターを駆動し、その後、駆動を停止して、前記導波プローブを、前記第1終了位置から第2開始位置までX軸方向に移動させることと、次に、前記第2群のモーターのうち、前記Y軸ステージの並進を駆動するように機械的に接続されたモーターを駆動し、その後、駆動を停止して、前記導波プローブを前記第2開始位置から第2終了位置まで、前記第1Y軸方向とは逆の第2Y軸方向に移動させることと、をさらに含み、前記導波プローブを制御して信号波を送出させる操作は、前記導波プローブが前記第2開始位置から前記第2終了位置まで移動する間に、前記導波プローブを駆動して信号波を送出させることを含む。
【0019】
ミリ波を用いた亀裂の自動化検索の装置及び方法の他の側面は、以下に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態による、留め具周辺の亀裂を検出する導波プローブを搭載したクローラー走行体の側面図である。
【
図2A】2列に配した留め具と、一実施例における導波プローブの移動を表す矢印と、を示す図であり、導波プローブのこれらの移動は、亀裂のおよその方向が不明な場合に用いられる。
【
図2B】2列に配した留め具と、別の実施例における導波プローブの移動を表す矢印と、を示す図であり、導波プローブのこれらの移動は、亀裂のおよその方向が不明な場合に用いられる。
【
図3】2列に配した留め具と、第3の実施例における導波プローブの移動を表す矢印と、を示す図であり、導波プローブのこれらの移動は、亀裂の方向が航空機の機体に沿っている場合に用いられる。
【
図4】2列に配した留め具と、第4の実施例における導波プローブの移動を表す矢印と、を示す図であり、導波プローブのこれらの移動はラスタースキャン動作を含み、亀裂の方向が航空機の機体に沿っている場合に用いられる。
【
図5】ミリ波による亀裂検出システムの部品を示すブロック図である。
【
図6】クローラー走行体に搭載するのに適した導波プローブの立面図である。
【
図7】金属外皮の重ね継ぎ部分の留め具を起点とする亀裂の平面図である。
【
図8】金属外皮の重ね継ぎ部分の留め具を起点とする亀裂の断面図である。
【
図9】一実施形態による、端部解放型の導波プローブが留め具の上方を移動する様子を示す図である。
【
図10】導波プローブによる留め具の走査中に生成される典型的な信号を示す図である。
【
図11】留め具を起点とする亀裂を2つ有する構造体に対する走査を示す図である。
【
図12】一実施形態による、構造体検査の処理工程を示すフローチャートである。
【
図13】マルチモーション検査ヘッドを搭載可能な、ホロノミック移動型クローラー走行体の部品を示す等角図であり、電力やクローラー走行体の移動を制御する信号の供給に用いられる接続については図示していない。
【
図14】2つの吸引領域を有する、メカナムホイール式クローラー走行体の底面図である。
【
図15】一実施形態による、留め具周辺の金属の非破壊検査システムの部品を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の記載において参照する図面では、類似の要素には異なる図面においても同一の参照符号が付されている。
【0022】
航空機の金属機体における留め具周辺の亀裂をミリ波用いて検出する様々な実施形態及び態様を説明する。ただし、以下に詳細に開示する装置及び方法は、他の種類の不具合(incongruities)を留め具の周辺で検出するのにも利用可能であることは認識されよう。さらに、以下に詳細に開示する装置及び方法は、例えば、原子力発電所、船舶、鉄道、石油掘削プローブ配置ヘッドの部品など、他の種類の金属構造体において、不具合(例えば亀裂)を検出するのに利用可能であることも認識されよう。
【0023】
図1は、一実施形態によるクローラー走行体(crawler vehicle)120の側面図であり、多段プローブ配置ヘッド100がその前端に搭載されている。多段プローブ配置ヘッド100は、留め具周辺の金属構造体における亀裂検出に利用可能な導波プローブ504を支持する。
図1に示した例では、検査対象は、重ね合された金属層104及び106が多数の留め具で固定されてなる機体外皮506である。留め具は、通常、列状に配置されている。
図1は、1つの留め具702のみを示している。留め具702は、層104及び106に整列状態に設けられた穴に、カラーを用いて固定されている。導波プローブ504は、留め具702の周辺領域を検査するのに適切な位置、即ち、導波プローブ504の中心軸が留め具702の中心軸と同軸になる位置に示されている。検査中、導波プローブ504は、留め具702を囲む金属を検査するミリ波信号を送出する。ミリ波信号は、塗装などの誘電材料を通過するので、塗装が施された金属表面の検査が可能である。導波プローブは、必ずしも検査する表面に接触していなくてもよい。
【0024】
クローラー走行体120は、吸引装置(例えば、クローラー走行体120のフレームに搭載されたモーターにより駆動されるファン)を用いて、水平でない表面に沿って移動可能な、真空を利用する遠隔操作ロボットの形態を取ってもよい。
図1に示した実施形態では、4つの車輪のうちの2つの車輪122a及び122bのみが見えている。クローラー走行体120のフレームに搭載されたモーターによりメカナム式ホイール(Mecanum type wheel)がそれぞれ駆動されて回転することにより、ホロノミックな移動(holonomic motion)が可能になる。ホロノミックな移動では、回転と並進とが切り離して行われ、これによりX-Y平面のどの方向にも走査が行える。クローラー走行体120は、検査対象である留め具の列に平行な方向をX軸とするX-Y平面内で移動するように操舵されうる。検査対象である留め具の列に沿ったクローラー走行体120の移動は、
図1では「X並進」と標記した長い両頭矢印で表されている。
【0025】
クローラー走行体120には、ビデオカメラ190が搭載されている。カメラは、多段プローブ配置ヘッド100の下に位置する空間をその視野に含むように配向されている。ビデオカメラ190は、撮像データを取得し、この撮像データをコンピュータ(
図1には、示されていない)に送出する。ビデオカメラ190とコンピュータとの間の通信チャネルは、電気ケーブルを経由するものであってもよいし、無線であってもよい。コンピュータは、ビデオカメラ190からの映像フィードバックを用いて導波プローブ504を制御して、検査対象である留め具702に対する精密な位置合わせを行う。
【0026】
引き続き
図1を参照し、多段プローブ配置ヘッド100は、クローラー走行体120に取り付けられたブロックアセンブリ130と、ブロックアセンブリ130に並進可能に接続されたZ軸ステージ140と、Z軸ステージ140に並進可能に取り付けられたX軸ステージ150と、X軸ステージ150に並進可能に取り付けられたY軸ステージ160と、を有する。マンドレル170は、Y軸ステージ160に回転可能に接続されている。導波プローブ504は、マンドレル170に取り付けられており、よって、マンドレル170と導波プローブ504とは一体的に回転する。プローブ配置ヘッド100の3つのステージはそれぞれモーターにより駆動されて、導波プローブ504をX方向、Y方向、あるいはZ方向に移動させる。Z軸ステージ140は、導波プローブ504を昇降させるのに用いられる。X軸ステージ150及びY軸ステージ160は、導波プローブ504を留め具702の中心に位置合わせするための精密な移動を可能にする。X軸、Y軸、及びZ軸は、クローラー走行体120の基準座標系において互いに直交する軸である。理想的な検出過程では、クローラー走行体120のZ軸を、検査対象である留め具の中心線と平行にする。(ビデオカメラ190が取得した撮像データに基づく)フィードバック制御により、スマートサーボやステッピングモーター(
図1には示していない)を用いた複数の移動を行って、導波プローブ504を留め具702に対して高精度に位置決めする。適切な位置に配置できたら、導波プローブ504を並進あるいは回転させて、留め具702の頂部を横断的又は周回的に走査して、機体外皮506における亀裂の有無を検査する。導波プローブ504の回転は、ステッピングモーター(
図1には示していない)でマンドレル170を回転駆動することにより実現される。
【0027】
図6を参照して詳細を後述するが、導波プローブ504は、マンドレル170に取り付けられたハウジング600を備えている。一対の導波部材602及び604は、それぞれの近位端においてハウジング600に接続されている。導波部材602及び604は、ハウジング600から検査対象の金属構造体の表面に、互いに平行に延出している。導波部材602及び604は、バー612によって接続されている。導波部材602及び604の遠位端には導波部材開口(apertures)が設けられており、ここからミリ波信号が導波プローブ504の回転中あるいは並進中に出射される。
【0028】
図1に示した構成では、ミリ波信号は、機体外皮506の最表面に施されたどのような誘電被覆でも通過して、留め具702周辺の金属を検査する。亀裂の検出は、導波プローブ504が出射するミリ波信号により金属外皮に誘導誘導される表面電流密度に対して亀裂が乱れを引き起こすことに基づいて行われる。金属表面に表面電流が誘導されると、反射波が生じ、続いて、導波プローブ内部に定在波が生じる。詳細を後述するように、導波部材の開口内に亀裂があると、表面電流密度に乱れが生じ、反射波や定在波の性質が変化する。導波部材内の定在波パターンの性質の変化は、亀裂の存在を示唆する。
【0029】
図1に示すシステムは、例えば、航空機の機体に列状に配置された留め具周辺の金属を検査するに際し、導波プローブ504を留め具から留め具に移動させて検査を行うことができる。
図1では、導波プローブ504が留め具702に整列しているが、一般的にクローラー走行体120は、1回の走査が完了する都度、1つの留め具から次の留め具へ移動する。導波プローブ504が次の留め具702に近接する位置にくれば、ビデオカメラ190が撮像データを取得して、これを用いて留め具702に対する導波プローブ504の相対位置を特定する。次に、多段プローブ配置ヘッド100のX軸ステージモーター及びY軸ステージモーター(図示せず)を駆動して、導波プローブ504をX軸方向及び/又はY軸方向に移動させて、導波プローブ504を留め具702と整列させる。次に、導波プローブを開始位置まで降下させ、留め具702周辺の金属の走査が行えるようになる。一連の移動は、
図2A、
図2B、
図3、
図4を参照して詳述する特定の態様毎に異なる。
【0030】
図1に示した状況では、導波プローブ504は、導波プローブ504の中心線が留め具702の中心線とほぼ同軸となる開始位置にある。
図1の両頭矢印は、
図1に示した状況に至る様々な移動を表している。先ず、クローラー走行体を、導波プローブ504が留め具702に近接しない位置から、導波プローブ504が留め具702に近接はするが、整列はしていない位置まで移動させる(この位置は、
図1には示していない)。図示した例では、クローラー走行体120は、留め具702を含む留め具列に平行であるX軸に沿って並進移動される。留め具702がビデオカメラ190の視野に入っている状態で、クローラー走行体120は停止を命じられる。クローラー走行体120及び導波プローブ504が静止状態にある間に、ビデオカメラ190が起動されて、留め具702の頂部を含むカメラ視野を表す撮像データが取得される。その撮像データを、パターン認識ソフトウェアを用いてコンピュータ(
図1には示していない)により処理して、留め具702の中心線の位置を、クローラー走行体120の基準系で特定する。コンピュータは次に、留め具中心線の位置を用いて、導波プローブ504の現在位置と開始位置との差分を、クローラー走行体120の基準系で特定する。その後、クローラー走行体120が静止状態にある間に、導波プローブ504を現在位置からX方向及び/又はY軸方向に移動させて、開始位置の直上に位置させる(
図1では、X方向の移動は、「X並進」と標記した短い両頭矢印で表されている)。次に、Z軸ステージ140に機械的に接続されたモーター(図示せず)を駆動することにより、導波プローブ504を開始位置まで降下させる(Z方向の移動は、「Z並進」と標記した短い両頭矢印で表されている)。
【0031】
図1に示す開始位置では、導波プローブ504の中心線は、留め具中心線と同軸になっている。(別の態様では、導波プローブ504の中心線が留め具から短い距離だけ離れるような開始位置が選択される。)次に、クローラー走行体120が静止状態にある間に、導波プローブ504を駆動して、留め具702の周辺領域の少なくとも一部を走査させる。開始位置を起点として、導波プローブ504は所定の角度だけ回転される(「回転」と標記した、曲線の両頭矢印で表されている)、あるいは、X方向に所定の距離だけ並進移動される(
図1には、示されていない)。導波プローブ504の導波部材602及び604の双方は、走査移動を行いながら、留め具702近傍のそれぞれの領域に対してミリ波信号を出射する。その結果として導波部材602及び604の内部に生じる定在波が検出・分析されて、留め具702周辺の金属における亀裂の有無が判定される。
【0032】
導波プローブ504が留め具列の各留め具の上方でこれに整列した状態にある時に、導波プローブを回転させて行う留め具列の走査は、留め具を起点として延びる表面破損の亀裂のおよその方向が不明な場合に有効である。クローラー走行体(又は、走査ブリッジ(scanning bridge)やロボットアームなどの他のプラットフォーム)は、列の最初の留め具の位置に、留め具の列に沿って移動可能な配向で設置してもよい。プラットフォームに搭載されたカメラを用いて、留め具の頂部の画像を撮像する。パターン認識ソフトウェアを用いて、留め具頂部の円形形状を認識し、その中心(即ち、留め具の中心線)を特定する。X軸ステージ及び/又はY軸ステージを駆動して、導波プローブの中心線が留め具の中心線とほぼ同軸となるように、導波プローブの精密な位置を調節する。必要であれば、Z軸ステージを調節して導波部材の開口を留め具頂部の周辺領域表面のすぐ上に位置させる。次に、導波プローブを留め具の周りを少なくとも180度回転させ、この間にシステムは測定を行う。信号はすべて留め具周辺で収集される。留め具の周辺領域で所定の閾値を超える信号が生成されれば、その留め具に、データ上で修理のタグ付けをし、また、任意ではあるが、ペンで、あるいはその留め具の近傍に塗料マーカーを滴下して印をつけてもよい(閾値は、標準的範囲内にある亀裂を参照として用いて決定される)。データ(例えば、信号、留め具の位置番号、亀裂の兆候がある留め具を示すデータタグ)は収集・蓄積されて、検索、分析、又は亀裂の大きさを測る目的で行う、最大信号のゲーティングなどのデータ処理に用いられる。次に、クローラー走行体(あるいは、他のプラットフォーム)は、留め具列に沿って次の留め具に移動する。検査は、一度に一列ずつ行われ、2回の通過で両方の列が検査される。この代わりに、クローラー走行体(あるいは他のプラットフォーム)のY軸移動によれば、1つの重ね継ぎ部分における2つの列を1度の通過で走査することも可能である。
【0033】
図2Aは、2列の留め具200a~200fを示す図である。説明の便宜上、留め具列は互いに平行であるとする。直線矢印210a~210gは、一実施態様による位置粗調整(支持プラットフォームの移動により行う;導波プローブはプラットフォームに対して相対移動しない)における導波プローブの(X軸に沿った)個々の移動を表している。曲線矢印220a~220fは、留め具200a~200fそれぞれの上方でこれに整列した位置で順次行われる導波プローブの回転を表している。導波プローブの位置微調整のための移動は、多段プローブ配置ヘッドの1つ又は複数のステージの移動により行われるが、
図2Aに示す矢印では表されていない。導波プローブのこのような移動は、亀裂のおよその方向が不明な場合に利用できる。
【0034】
より具体的には、ミリ波導波プローブを用いて2列の留め具を走査する方法の工程は、
図2Aにその一部を示すように、以下の工程が含みうる。
【0035】
(1)プラットフォームを、矢印210aで表すように、留め具の上側列に平行なX軸に沿った第1方向に並進移動させて、導波プローブを留め具200aの近傍に配置する。
【0036】
(2)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調節して、導波プローブを走査開始位置(即ち、留め具200aの直上で、これに整列する位置)に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図2Aに示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0037】
(3)導波プローブを回転させて、留め具200aを囲む領域の走査を行わせる。
図2Aでは、この回転を矢印220aで表している。
【0038】
(4)プラットフォームを、矢印210bで表すように第1方向に並進移動させて、導波プローブを上側列の留め具200bの近傍に配置する。
【0039】
(5)導波プローブのプラットフォームに対する位置を調整して、導波プローブを走査開始位置(即ち、留め具200bの直上で、これに整列する位置)に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図2Aに示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0040】
(6)導波プローブを回転させて、留め具200bを囲む領域の走査を行わせる。
図2Aでは、この回転を矢印220bで表している。
【0041】
(7)プラットフォームを、矢印210cで表すように第1方向に並進移動させて、導波プローブを上側列の留め具200cの近傍に配置する。
【0042】
(8)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調整して、導波プローブを走査開始位置(即ち、留め具200cの直上で、これに整列する位置)に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図2Aに示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0043】
(9)導波プローブを回転させて、留め具200cを囲む領域の走査を行わせる。
図2Aでは、この回転を矢印220cで表している。
【0044】
(10)プラットフォームを、矢印210dで表すように、Y軸に沿っていると共に第1方向に対して垂直な第2方向に並進移動させて、導波プローブを下側列の留め具200dの近傍に配置する。
【0045】
(11)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調整して、導波プローブを走査開始位置(即ち、留め具200dの直上で、これに整列する位置)に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図2Aに示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0046】
(12)導波プローブを回転させて、留め具200dを囲む領域の走査を行わせる。
図2Aでは、この回転を矢印220dで表している。
【0047】
(13)プラットフォームを、矢印210eで表すように、第1方向とは逆の第3方向に並進移動させて、導波プローブを下側列の留め具200eの近傍に配置する。
【0048】
(14)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調整して、導波プローブを走査開始位置(即ち、留め具200eの直上で、これに整列する位置)に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図2Aに示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0049】
(15)導波プローブを回転させて、留め具200eを囲む領域の走査を行わせる。
図2Aでは、この回転を矢印220eで表している。
【0050】
(16)プラットフォームを、矢印210fで表すように第3方向に並進移動させ、導波プローブを下側列の留め具200fの近傍に配置する。
【0051】
(17)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調整して、導波プローブを走査開始位置(即ち、留め具200fの直上で、これに整列する位置)に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図2Aに示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0052】
(18)導波プローブを回転させて、留め具200fを囲む領域の走査を行わせる。
図2Aでは、この回転を矢印220fで表している。
【0053】
(19)プラットフォームを、矢印210gで表すように第3方向に並進移動させ、導波プローブを下側列の次の留め具(
図2Aには示していない)の近傍に配置する。
【0054】
図2Bは、2列の留め具200a~200fを示す図である。直線矢印230a~230fは、別の実施態様による位置粗調整(支持プラットフォームの移動により行う;導波プローブはプラットフォームに対して相対移動しない)における導波プローブの(X軸に沿った)個々の移動を表している。曲線矢印220a~220fは、留め具200a~200fそれぞれの上方でこれに整列した位置で順次行われる導波プローブの回転を表している。導波プローブの位置微調整のための移動は、多段プローブ配置ヘッドの1つ又は複数のステージの移動により行われるが、
図2Bに示す矢印では表されていない。
図2Bに示す方法は、2列の留め具の検査順序が
図2Aに示す方法と異なる。導波プローブのこのような移動は、亀裂のおよその方向が不明な場合に利用できる。
【0055】
より具体的には、ミリ波導波プローブを用いて2列の留め具を走査する方法の工程には、
図2Bにその一部を示すように、以下の工程が含まれうる。
【0056】
(1)プラットフォームを、矢印230aで表すように、留め具の上側列に平行なX軸に沿った第1方向に並進移動させて、導波プローブを留め具200aの近傍に配置する。
【0057】
(2)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調節して、導波プローブを走査開始位置(即ち、留め具200aの直上で、これに整列する位置)に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図2Bに示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0058】
(3)導波プローブを回転させて、留め具200aを囲む領域の走査を行わせる。
図2Bでは、この回転を矢印220aで表している。
【0059】
(4)プラットフォームを、矢印230bで表すように、Y軸に沿っていると共に第1方向に対して垂直な第2方向に並進移動させて、導波プローブを下側列の留め具200fの近傍に配置する。
【0060】
(5)導波プローブのプラットフォームに対する位置を調整して、導波プローブを走査開始位置(即ち、留め具200fの直上で、これに整列する位置)に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図2Bに示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0061】
(6)導波プローブを回転させて、留め具200fを囲む領域の走査を行わせる。
図2Bでは、この回転を矢印220fで表している。
【0062】
(7)プラットフォームを、矢印230cで表すように第1方向に並進移動させて、導波プローブを留め具200eの近傍に配置する。
【0063】
(8)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調整して、導波プローブを走査開始位置(即ち、留め具200eの直上で、これに整列する位置)に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図2Bに示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0064】
(9)導波プローブを回転させて、留め具200eを囲む領域の走査を行わせる。
図2Bでは、この回転を矢印220eで表している。
【0065】
(10)プラットフォームを、矢印230dで表すように、第2方向とは逆の第3方向に並進移動させて、導波プローブを留め具200bの近傍に配置する。
【0066】
(11)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調整して、導波プローブを走査開始位置(即ち、留め具200bの直上で、これに整列する位置)に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図2Bに示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0067】
(12)導波プローブを回転させて、留め具200bを囲む領域の走査を行わせる。
図2Bでは、この回転を矢印220bで表している。
【0068】
(13)プラットフォームを、矢印230eで表すように第1方向に並進移動させて、導波プローブを留め具200cの近傍に配置する。
【0069】
(14)導波プローブのプラットフォームに対する位置を調整して、導波プローブを走査開始位置(即ち、留め具200cの直上で、これに整列する位置)に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図2Bに示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0070】
(15)導波プローブを回転させて、留め具200cを囲む領域の走査を行わせる。
図2Bでは、この回転を矢印220cで表している。
【0071】
(16)プラットフォームを、矢印230fで表すように第2方向に並進移動させて、導波プローブを留め具200dの近傍に配置する。
【0072】
(17)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調節して、導波プローブを走査開始位置(即ち、留め具200dの直上で、これに整列する位置)に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図2Bに示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0073】
(18)導波プローブを回転させて、留め具200dを囲む領域の走査を行わせる。
図2Bでは、この回転を矢印220dで表している。
【0074】
図2Aに戻り、導波プローブ504が留め具列の各留め具に近接した状態にあるときに、導波プローブを並進移動させて行う留め具列の走査は、留め具を起点として延びる表面破損の亀裂の方向が、航空機の機体の留め具の水平列に平行な場合に有効である。クローラー走行体(又は、走査ブリッジやロボットアームなどの他のプラットフォーム)は、列の最初の留め具の位置に、留め具の列に沿って移動可能な配向で設置してもよい。プラットフォームに搭載されたカメラを用いて、留め具の頂部の画像を撮像する。パターン認識ソフトウェアを用いて、留め具頂部の円形形状を認識し、その中心(即ち、留め具の中心線)を特定する。X軸ステージ及び/又はY軸ステージを駆動して、導波プローブの中心線が留め具の中心線とほぼ同軸となるように、導波プローブの位置を調節する。必要であれば、Z軸ステージを調節して導波部材の開口を留め具頂部の周辺領域表面のすぐ上に位置させる。次に、導波プローブを留め具の片側から他方側に横切るように並進移動させ、この際、導波プローブの最下部が留め具の近くを通るようにする。この間にシステムは測定を行う。信号はすべて留め具の両側で収集される。留め具の周辺領域で所定の閾値を超える信号が生成されれば、その留め具に、データ上で修理のタグ付けをし、また、任意ではあるが、ペンで、あるいはその留め具の近傍に塗料マーカーを滴下して印をつけてもよい(閾値は、標準的範囲内にある亀裂を参照して決定される)。データ(例えば、信号、留め具の位置番号、亀裂の兆候がある留め具を示すデータタグ)は収集・蓄積されて、検索、分析、又は、亀裂の大きさを測る目的で行う、最大信号のゲーティングなどのデータ処理に用いられる。次に、クローラー走行体(あるいは、他のプラットフォーム)は、留め具列に沿って次の留め具に移動する。検査は、一度に一列ずつ行われ、2回の通過で両方の列が検査される。この代わりに、クローラー走行体(あるいは他のプラットフォーム)のY軸移動によれば、1つの重ね継ぎ部分における2つの列を1度の通過で走査することも可能である。
【0075】
図3は、2列の留め具200a~200fを示す図である。直線矢印310a~310gは、別の実施態様による位置粗調整(支持プラットフォームの移動により行う;導波プローブはプラットフォームに対して相対移動しない)における導波プローブの個々の移動を表している。短い矢印320a~320fは、留め具200a~200fそれぞれの上方でこれに整列した位置で順次行われる導波プローブの垂直方向の並進移動を表している。導波プローブの位置微調整のための移動は、多段プローブ配置ヘッドの1つ又は複数のステージの移動により行われるが、
図3に示す矢印では表されていない。導波プローブのこのような移動は、亀裂の方向が航空機の機体の水平線に沿っている場合に利用できる。
【0076】
より具体的には、ミリ波導波プローブを用いて2列の留め具を走査する方法の工程には、
図3にその一部を示すように、以下に記載する工程が含まれうる。本態様に限定の説明の便宜上、「走査開始位置」との用語は、プローブの中心線が、留め具頂部を横切る直径線に交差し、又はほとんど交差し、且つ、機体の水平線に対して垂直になる状態を意味する。
【0077】
(1)プラットフォームを、矢印310aで表すように、留め具の上側列に平行なX軸に沿った第1方向に並進移動させて、導波プローブを上側列の留め具200aの近傍に配置する。
【0078】
(2)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調節して、導波プローブを留め具200aに対する走査開始位置に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図3に示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0079】
(3)導波プローブを、Y軸に沿っていると共に第1方向に対して垂直な第2方向に並進移動させて、留め具200aを囲む領域の少なくとも一部を走査させる。
図3では、この並進移動を矢印320aで表している。
【0080】
(4)プラットフォームを、矢印310bで表すように第1方向に並進移動させて、導波プローブを上側列の留め具200bの近傍に配置する。
【0081】
(5)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調節して、導波プローブを留め具200bに対する走査開始位置に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図3に示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0082】
(6)導波プローブを、第2方向とは逆の第3方向に並進移動させて、留め具200bを囲む領域の少なくとも一部を走査させる。
図3では、この並進移動を矢印320bで表している。
【0083】
(7)プラットフォームを、矢印310cで表すように第1方向に並進移動させて、導波プローブを上側列の留め具200cの近傍に配置する。
【0084】
(8)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調節して、導波プローブを留め具200cに対する走査開始位置に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図3に示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0085】
(9)導波プローブを第2方向に並進移動させて、留め具200cを囲む領域の少なくとも一部を走査させる。
図3では、この並進移動を矢印320cで表している。
【0086】
(10)プラットフォームを、矢印310dで表すように第2方向に並進移動させ、導波プローブを下側列の留め具200dの近傍に配置する。
【0087】
(11)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調節して、導波プローブを留め具200dに対する走査開始位置に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図3に示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0088】
(12)導波プローブを第3方向に並進移動させて、留め具200dを囲む領域の少なくとも一部を走査させる。
図3では、この並進移動を矢印320dで表している。
【0089】
(13)プラットフォームを、矢印310eで表すように、第1方向とは逆の第4方向に並進移動させて、導波プローブを下側列の留め具200eの近傍に配置する。
【0090】
(14)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調節して、導波プローブを留め具200eに対する走査開始位置に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図3に示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0091】
(15)導波プローブを第2方向に並進移動させて、留め具200eを囲む領域の少なくとも一部を走査させる。
図3では、この並進移動を矢印320eで表している。
【0092】
(16)プラットフォームを、矢印310fで表すように第4方向に並進移動させ、導波プローブを下側列の留め具200fの近傍に配置する。
【0093】
(17)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調節して、導波プローブを留め具200fに対する走査開始位置に配置する。位置調整には、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ又は複数に沿った並進移動(
図3に示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0094】
(18)導波プローブを第3方向に並進移動させて、留め具200fを囲む領域の少なくとも一部を走査させる。
図3では、この並進移動を矢印320fで表している。
【0095】
(19)プラットフォームを、矢印310gで表すように第4方向に並進移動させ、導波プローブを下側列の次の留め具(
図3には示していない)の近傍に配置する。
【0096】
水平方向の列に配置された留め具それぞれの周辺領域をラスタースキャンすることは、留め具を起点として延びる表面破損の亀裂の方向が留め具列に平行な場合に有効である。クローラー走行体(又は、走査ブリッジやロボットアームなどの他のプラットフォーム)は、列の最初の留め具の位置に、留め具の列に沿って移動可能な配向で設置してもよい。必要であれば、Z軸ステージを調節して、検査対象領域の表面のすぐ上に導波部材の開口を位置させる。次に、多段プローブ配置ヘッドのX軸ステージ及びY軸ステージを順次駆動して、導波プローブを蛇行経路に沿って移動させて、留め具の周辺領域のラスタースキャンを行う。信号はすべて、予め選択された間隔でX位置及びY位置を取るグリッドで収集される。留め具を囲む領域で所定の閾値を超える信号が生成されれば、その留め具には、データ上で修理のタグ付けをし、また、任意ではあるが、ペンで、あるいはその留め具の近傍に塗料マーカーを滴下して印をつけてもよい(閾値は、標準的範囲内にある亀裂を参照して決定される)。データ(例えば、全波形、最大差分信号、留め具の位置番号、亀裂の兆候がある留め具を示すデータタグ)は収集・蓄積されて、検索、分析、又は、亀裂の大きさを測る目的で行う、最大信号のゲーティングなどのデータ処理に用いられる。最大差分信号の画像が生成され、コンピュータモニタに表示され、後の検索用に保存される。次に、プラットフォームは、留め具列に沿って次の留め具に移動する。この処理は、その列の全ての留め具についての検査及び画像化が行われるまで繰り返される。
【0097】
図4は、2列の留め具200a~200fを示す図である。直線矢印410a~410gは、導波プローブを搭載したプラットフォームの移動に伴う導波プローブの個々の移動を表している。互い違いの向きの短い矢印の組420a~420fは、導波プローブが留め具200a~200fのそれぞれの開始位置で順次行う一連のラスタースキャンを表す。導波プローブのこのような移動は、亀裂の方向が航空機の機体の水平線に沿っている場合であって、留め具頂部の完全なCスキャン画像が望ましい場合に利用できる。
【0098】
より具体的には、ミリ波導波プローブを用いて2列の留め具を走査する方法の工程には、
図4にその一部を示すように、以下に記載する工程が含まれうる。本態様例に限定の説明の便宜上、「走査開始位置」との用語は、プローブの中心線が留め具の頂部を通る直径線から離間し、且つ、機体の水平線に対して垂直になる状態を意味する。
【0099】
(1)プラットフォームを、矢印410aで表すように、留め具の上側列に平行なX軸に沿った第1方向に並進移動させて、導波プローブを上側列の留め具200aの近傍に配置する。
【0100】
(2)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調節して、導波プローブを留め具200aに対する走査開始位置に配置する。位置調整には、Z軸に沿った並進移動(
図4に示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0101】
(3)導波プローブを、X軸沿いとY軸沿いと交互に並進移動させて、導波プローブを蛇行経路に沿って移動させて、留め具200aを囲む領域のラスタースキャンを行う。
図4では、Y軸沿いに往復させる並進移動のみが矢印420aで表されている(間に行われる、X軸に沿った短い並進移動は表されていない)。
【0102】
(4)プラットフォームを、矢印410bで表すように第1方向に並進移動させて、導波プローブを上側列の留め具200bの近傍に配置する。
【0103】
(5)導波プローブのプラットフォームに対する相対位置を調節して、導波プローブを留め具200bに対する走査開始位置に配置する。位置調整には、Z軸に沿った並進移動(
図4に示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0104】
(6)導波プローブを、X軸沿いとY軸沿いと交互に並進移動させて、導波プローブを蛇行経路に沿って移動させて、留め具200bを囲む領域のラスタースキャンを行う。
図4には、Y軸沿いに往復させる並進移動のみが矢印420bで表されている。
【0105】
(7)プラットフォームを、矢印410cで表すように第1方向に並進移動させて、導波プローブを上側列の留め具200cの近傍に配置する。
【0106】
(8)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調節して、導波プローブを留め具200cに対する走査開始位置に配置する。位置調整には、Z軸に沿った並進移動(
図4に示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0107】
(9)導波プローブを、X軸沿いとY軸沿いと交互に並進移動させて、導波プローブを蛇行経路に沿って移動させて、留め具200cを囲む領域のラスタースキャンを行う。Y軸沿いに往復させる並進移動のみが、
図4に示す矢印420cで表されている。
【0108】
(10)プラットフォームを、矢印410dで表すようにY軸沿いに並進移動させ、導波プローブを下側列の留め具200dの近傍に配置する。
【0109】
(11)導波プローブのプラットフォームに対する相対位置を調節して、導波プローブを留め具200dに対する走査開始位置に配置する。位置調整には、Z軸に沿った並進移動(
図4に示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0110】
(12)導波プローブを、X軸沿いとY軸沿いと交互に並進移動させて、導波プローブを蛇行経路に沿って移動させて、留め具200dを囲む領域のラスタースキャンを行う。Y軸沿いに往復させる並進移動のみが、
図4に示す矢印420dで表されている。
【0111】
(13)プラットフォームを、矢印410eで表すように、X軸に沿っていると共に第1方向とは逆の方向に並進移動させて、導波プローブを下側列の留め具200eの近傍に配置する。
【0112】
(14)導波プローブのプラットフォームに対する相対位置を調節して、導波プローブを留め具200eに対する走査開始位置に配置する。位置調整には、Z軸に沿った並進移動(
図4に示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0113】
(15)導波プローブを、X軸沿いとY軸沿いと交互に並進移動させて、導波プローブを蛇行経路に沿って移動させて、留め具200eを囲む領域のラスタースキャンを行う。Y軸沿いに往復させる並進移動のみが、
図4に示す矢印420eで表されている。
【0114】
(16)プラットフォームを、矢印410fで表すように、X軸に沿っていると共に第1方向とは逆の方向に並進移動させて、導波プローブを下側列の留め具200fの近傍に配置する。
【0115】
(17)プラットフォームに対する導波プローブの相対位置を調節して、導波プローブを留め具200fに対する走査開始位置に配置する。位置調整には、Z軸に沿った並進移動(
図4に示す矢印では表されていない)が含まれうる。
【0116】
(18)導波プローブを、X軸沿いとY軸沿いと交互に並進移動させて、導波プローブを蛇行経路に沿って移動させて、留め具200fを囲む領域のラスタースキャンを行う。Y軸沿いに往復させる並進移動のみが、
図4に示す矢印420fで表されている。
【0117】
(19)プラットフォームを、矢印410gで表すように、第1方向とは逆の方向に並進移動させて、導波プローブを下側列の次の留め具(
図4には示していない)の近傍に配置する。
【0118】
図5は、一実施形態による、ミリ波を用いた亀裂検出システムの部品を示すブロック図である。本システムは、信号生成部512、アイソレータ514、信号分割部516、第1導波部材602、及び第2導波部材604を含む。信号生成部512は、互いに異なる周波数を有しうる第1及び第2のミリ波信号を生成するように構成されている。ミリ波は約30GHz~約300GHzの周波数及び約1mm~約10mmの波長を有しうる。信号分割部516は第1及び第2のミリ波信号を受信して、第1信号を第1導波部材602に、第2信号を第2導波部材604に渡す。アイソレータ514は、信号分割部516から信号生成部512への不要な反射を少なくするように構成されている。
【0119】
導波部材602、604により出射された信号波は、金属構造体により反射されて、導波部材の内部に定在波を発生させる。引き続き
図5を参照し、導波部材602、604の内部の定在波の性質(例えば、電圧)は、それぞれダイオード検波器522、524により検出される。検波器の出力は、データ取得部526により収集され、信号分析部528に送られる。信号分析部528は、検波器の出力の差分を特定し、その差分に基づいて留め具周辺の領域における欠陥(例えば、亀裂)の有無を判定するようにプログラムされたプロセッサであってもよい。
【0120】
図1に示した導波プローブ504の拡大図を
図6に示す。本実施形態では、導波プローブ504はハウジング600を備え、これに第1導波部材602と第2導波部材604とが調節可能に接続されている。導波プローブ504は、
図5に示した信号生成部512との接続用に構成された第1コネクタ606を有する。導波プローブ504は、第2コネクタ608及び第3コネクタ610も有する。これら2つのコネクタは、
図5に示したデータ取得部526との接続用に構成されている。
【0121】
バー612が第1導波部材602及び第2導波部材604に接続されている。第1導波部材602及び第2導波部材604の間の距離616が既に決まっていれば、調節ねじ614を用いて、第1導波部材602をバー612に固定する。距離616は、第1導波部材602の端部618と第2導波部材604の端部620とにある開口(図示せず)が、留め具の上方でそれぞれ反対側に位置するように選択されうる。この具体例では、第1導波部材602及び第2導波部材604は、長さ622を有する。一実施態様では、長さ622は、約2インチである。別の実施態様では、長さ622は、約1インチから約4インチの範囲であってもよい。
【0122】
図7は、金属の機体外皮506の重ね継ぎ部分の留め具702を起点とする欠陥704の平面図である。この例では、欠陥704は、留め具702を含む留め具列に平行な両頭矢印706で表す方向に延びる亀裂である。典型的な亀裂は、航空機機体の応力や構造のためこの方向に延びる。
図7に示した状況では、留め具702の頂部は直径708を有し、欠陥704は、機体外皮506の表面で測定される長さ710を有する。
【0123】
図8は、留め具702を基点とする欠陥704の断面図である。機体外皮506は、重ね合された金属層104及び106が多数の留め具で固定されて成る。留め具702は、層104及び106に整列状態に設けられた穴に、ナット110で固定されている。
【0124】
図9は、一実施形態による、端部解放型の導波プローブ504が留め具702の上方を移動する様子を示す図である。
図9は、
図6に示す線9-9に沿った導波プローブ504の断面図である。
図9に示す実施形態において、第1導波部材602の開口部(opening)900は、第2導波部材604の開口部902から偏移している。この偏移は、線905を基準とするものである。留め具702の両側に欠陥が存在するような場合に生じる、信号及び/又は応答が互いに干渉し合って欠陥が存在しないような挙動を示す可能性を、この偏移により小さくしうる。
【0125】
この具体例では、開口部900は、長さ904及び幅906を有し、開口部902は長さ908及び幅910を有する。一実施態様では、長さ908及び908は、約0.1インチであり、幅906、910は、約0.05インチである。導波部材602、604は、それぞれ開口部900、902から上方に延びる矩形の空洞部を有する。ただし、他の形状の導波部材も使用可能である。
【0126】
図9に示すように、導波プローブ504は留め具702に対して、矢印912の方向に移動される。位置914、916、918における第1導波部材602及び第2導波部材604が、ぞれぞれが開口部900と開口部902と共に仮想線で示されている。この具体例では、欠陥704は、留め具702から外側に延びている。
【0127】
図10は、導波プローブ504による留め具702の走査中に生成される典型的な信号を示す図である。
図10に示す応答1000は、第1導波部材602及び第2導波部材604が、
図9に示す位置914、916、918において検出する応答の例である。この具体例では、位置914で、第1導波部材602により応答1002が検出され、第2導波部材604により応答1004が検出される。位置916で、第1導波部材602により応答1006が検出され、第2導波部材604により応答1008が検出される。位置918で、第1導波部材602により応答1010が検出され、第2導波部材604により応答1012が検出される。
【0128】
図10に示す差分信号1001は、第1導波部材及び第2導波部材により検出される応答の差分を表す。差分信号1014は、応答1002と応答1004との間の差分が実質的にゼロであることを表す。よって、差分信号1014は、位置914に欠陥が存在しないことを示唆する。差分信号1016は、応答1006と応答1008との間の差分がゼロでないことを表す。差分信号1016は、導波プローブ504が位置916にある状態で欠陥704が検出されたことを示唆する。差分信号1018は、応答1010と応答1012との間の差分が実質的にゼロであることを表す。よって、差分信号1018は、位置918に欠陥が存在しないことを示唆する。
【0129】
よって、導波プローブ504が留め具702に対して移動されるので、留め具のいずれかの側に欠陥が存在する場合に、第1導波部材及び第2導波部材により検出される応答に検出可能な差異が表れる。このような差分は、振幅、位相、あるいは両者の組み合わせで測定されうる。開口部が偏移しているので、同じような大きさ及び配向の欠陥が留め具の両側に存在する場合に差分がゼロとなってしまう可能性が小さくなりうる。
【0130】
図11は、金属機体外皮506において、留め具1100の両側1106及び1108から延びる欠陥1102、1104が存在する部分の走査を示す図である。説明の便宜上、欠陥1102と欠陥1104とは、同じような寸法及び配向であるとする。この具体例において、導波部材の開口部が偏移していることにより、欠陥1102と欠陥1104とのそれぞれからの応答信号が特定の閾値より小さい差分信号を生成して、欠陥が存在しないような応答として現れることを防ぎうる。
図11からわかるように、導波プローブが位置1110にあるときに、欠陥1104を検出可能である。その後、導波プローブが位置1112に移動すると、欠陥1102が特定可能になる。
【0131】
図5~
図11に示す導波プローブ504及び金属外皮の欠陥は、導波プローブ504を実施しうる態様に物理的あるいは構造的な限定を加えるものではない。加えて、を金属外皮506に対する導波プローブ504の相対的な移動は、図示した以外の態様も可能である。例えば、導波プローブ504を矢印706の方向に移動させるのではなく、各留め具の周りを回転させてもよい。
【0132】
図12は、一実施形態による、構造体検査の処理工程を示すフローチャートである。この処理は、
図1に示した機器を用いて検査環境において実施可能である。処理では、先ず、第1信号を金属構造体の第1位置に、第2信号を金属構造体の第2位置に、実質的に同時に送出する(工程1200)。処理では、第1信号に対する第1応答と、第2信号に対する第2応答と、を受信する(工程1202)。第1応答を第2応答に比較して、第1応答と第2応答との間の差分を算出する(工程1204)。その差分が、欠陥の存在を示唆するものとして予め選択された閾値より大きいか否かを判定する(工程1206)。差分が、予め選択された閾値以下であれば(即ち、欠陥が存在しなければ)、処理は終了する。そうでなければ、欠陥についての作業を行う(工程1208)。作業は、例えば、再加工作業である。再加工作業には、欠陥を小さくしたり、除去したりするための金属構造体の再処理作業、あるいは、金属構造体の交換作業を含みうる。その後、処理は終了する。
【0133】
図13は、マルチモーション検査ヘッドを搭載可能な、ホロノミック移動型クローラー走行体の部品を示す等角図である。より具体的には、
図1に示すクローラー走行体120はホロノミック移動型の走行体であってもよい。ホロノミック移動系とは、動作の拘束を受けない系のことである。この種の系では、回転しながら任意の方向に並進することや、並進を伴わないで回転することが可能である。
【0134】
図13は、4つのメカナムホイールと2つ吸引領域を有する、一実施形態によるホロノミック移動系のクローラー走行体の部品を示す図である。図示した部品の作動制御のための信号を供給する電気接続ついては、
図13には示していない。本ホロノミック移動型のクローラー走行体は、フレーム2と、フレーム2にそれぞれ車軸6を介して取り付けられたメカナムホイール4(2つはA型で、2つはB型)とを備え、さらに、個別に制御される4つのステッピングモーター8を(1つのホイールに対して1つ)備える。メカナムホイール4は、一方の対角に「A」型の対が、他方の対角に「B」型の対が配置されており、各車軸6が、走行体の中心を通る線に対して垂直になっている。各ステッピングモーター8は、対応するホイール4の回転を制御する。
【0135】
図13に示す実施形態は、フレーム2の中央、つまり、前輪と後輪との間に横並びに配置された2つの吸引装置10も有する。本実施形態では、各吸引装置は、フレーム2に形成された開口部(
図13には示ししていない)に搭載されたダクト付き電気ファン(EDF:electric ducted fan)10である。各ダクト付き電気ファン10は、軸周りに回転可能なファンと、ファンを取り囲むダクトと、電気モーターと、を備える。モーターは、フレームの下方にある各通路、即ち空間(以降、「吸引領域」とする)から空気がファンのダクトを通って上方に送出される方向にファンを回転駆動して、これにより、対応する吸引領域に吸引力を発生させる。2つの吸引領域は、長手フレーム2に取り付けられた長手方向の低摩擦性フレキシブルスカート14a~14cによって両側が境界づけられている。これらスカートのうちの中央のスカート14cは、2つの吸引領域を隔てる共通の境界壁を形成する。スカート14a~14cは下向きに延出しており、その底縁が、走行体が移動する表面に接触する。
【0136】
図13には示していないが、クローラー走行体は、当該走行体のステッピングモーター8とダクト付き電気ファン10とに電力を供給するケーブルでサポートシステムに接続されていてもよい。ケーブルは、コントローラー(例えば、コンピュータ)から送られる制御信号も供給し、この制御信号は、ステッピングモーター8とダクト付き電気ファン10の動作を制御するものである。クローラー走行体は、さらに、フレーム2に搭載されたコンバータボックス(図示せず)を備える。コンバータボックスは、コントローラー(図示せず)からのUSB信号を、ダクト付き電気ファンのモーターを制御するパルス幅変調信号に変換する。
【0137】
別の実施形態によれば、クローラー走行体は、つなぎケーブルを介して電力を受ける構成とする代わりに、電池式とすることも可能である。また、モーターのコントローラーは、地上に設置したコンピュータからつなぎケーブルを介して制御信号を供給してクローラー走行体を制御する代わりに、クローラー走行体に搭載したマイクロプロセッサあるいはマイクロコンピュータであってもよい。あるいは、クローラー走行体に搭載したモーターを、クローラー走行体に非搭載のコントローラーから無線接続を介して制御してもよい。
【0138】
図13に示したクローラー走行体は、4つのメカナムホイールを用いている。各メカナムホイール4の外周には、多数のテーパーローラー(tapered roller)16が搭載されており、各ローラーはそれぞれの軸周りに回転自在である。これらのローラーは、通常、ホイール面に対して45度の角度を成す回転軸を有する。A型のメカナムホイールは、左向きのローラーを備え、B型のメカナムホイールは、右向きのローラーを備える。走行体は、各ホイールの回転速度と回転方向とを変えることにより、どの方向にも移動及び回転可能である。
【0139】
図14は、メカナムホイール式クローラー走行体の底面図であり、フレーム底面を長手軸方向に沿って二分する共通スカート14cにより、2つの吸引領域12が隔てられている。この具体的な構成では、底面において、最上部スカート14aと共通スカート14cの間に相当する上側半分の底面は、開口部を有する中央平坦面36を含み、当該開口部には、ダクト付き電気ファンが設置されている。この中央平坦面36は、前側及び後側突出面38及び40により両側を挟まれている。各突出面38、40は、空気力学的な流線型の面であってもよく、突出面と、クローラー走行体の走行面における対向部分と、により狭窄部(throat)が形成される。よって、曲面を呈するフレーム底面と、スカートと、クローラー走行体の走行面と、により通路が形成され、これにより、所望の吸引力を生成するのに十分な空気を、ダクト付き電気ファンにより吸引することが可能になる。突出面38、40における最も低い箇所の間にある通路部分が、各吸引領域12を構成する。
図14に示した具体的な実施形態では、吸引領域は共通スカート14cにより隔てられていると共に、ダクト付きファンが設置されている開口部とそれぞれ流体連通している。これらの開口部は、その最下部に向かって実質的に円錐形状であってもよく、これにより吸引領域からの空気の排出が促進される。
【0140】
図14に示す底面形状が、例示的な態様であることは理解されよう。底面は、クローラー走行体の下方の空間でクローラー走行体の前部から後部への空気の流れを、次に、ダクト付き電気ファン10のダクトを通じて上方への流れを導く様々な形状を取りうる。
【0141】
本明細書に開示のシステムは、メカナムホイール式のクローラー走行体の方向制御性の利点と、傾斜面、垂直面、あるいは反転面上で動作する能力とを併せ持つ。検査面に取り付ける検査システムや大型のロボットアームを用いたシステムと比較して、クローラー走行体は検査可能な領域の種類についてのフレキシビリティがより高く、オペレータや検査対象物の安全性がより高い。本明細書に開示のシステムの主な利点は、他のシステムに比べ、どのような表面においても、滑ることなくクローラー走行体の位置を保持する能力(制御された吸引システムによる)と、どの方向にでも移動できる能力(ホロノミック移動型のプラットフォームによる)を併せ持つことである。水平面、傾斜面、垂直面(そして場合によっては反転面)上での移動が可能なホロノミック移動系により、ミリ波を用いた亀裂検出について汎用的な運動制御が可能になる。
【0142】
図15は、一実施形態による、留め具周辺の金属の非破壊検査システムの部品を示すブロック図であり、この実施形態ではプラットフォームは、ホロノミック移動型クローラー走行体であり、回転可能なミリ波導波プローブを支持する多段プローブ配置ヘッドを備えるものである。プローブ配置ヘッドは複数のモーター60を支持しており、このうちの3つのモーターはそれぞれX軸、Y軸、Z軸に沿った導波プローブ504の並進を駆動し、1つのモーターは、導波プローブ504のZ軸周りの回転を駆動する。
図13及び
図14に示すホロノミック移動型クローラー走行体は、4つのメカナムホイールをそれぞれ回転駆動する4つのホイールモーター70と、2つのダクト付き電気ファンをそれぞれ回転駆動する2つのEDFモーター80とを搭載している。モーター60、70、80はすべて、中継基板54に配されたスイッチを介して電源56から電力を受け取る。これらスイッチの状態は、コンピュータ50により制御される。より具体的には、中継基板54のスイッチの閉状態は、コンピュータ50からシリアル(例えば、RS-232)ポートインターフェース52を介して受信する信号により起動される。コンピュータ50は、汎用コンピュータに、各種ステッピングモーターを制御するソフトウェアモジュールから成るモーション制御アプリケーションソフトウエアを組み込んだものであってもよい。コンピュータ50は、同じシリアルポートインターフェース52を介して、プローブ配置ヘッドモーター60とホイールモーター70とに制御信号を出力して、各モーターを選択的に駆動/停止させる。ステッピングモーターは、駆動されると、システムオペレータがインタラクティブ制御インタフェース(図示せず)を用いて行った選択に従ってモーション制御機能を実行するようにプログラムされている。
【0143】
ホロノミック移動型クローラー走行体は、プローブ配置ヘッド下方の空間のライブ画像を撮像するビデオカメラ190を備えていてもよい。ビデオカメラ190は、中継基板54の一部を成すスイッチが駆動されると電力を受け、シリアルポートインターフェース52を介してコンピュータ50により駆動される。ビデオカメラ190からの撮像データは、カメラスイッチ62を介して表示モニター64が受信する。撮像データは、コンピュータ50にも送信され、例えば、パターン認識ソフトウェア利用して画像処理される。コンピュータ50は、表示装置66に接続されていてもよい。
【0144】
コンピュータ50は、信号生成部512を制御して導波プローブ504内部でミリ波信号を生成するようにもプログラムされている。導波プローブ504からの検出結果の出力は、データ取得部526により収集され、コンピュータ50に送られる。当該コンピュータには、信号分析部ソフトウェアも組み込まれている。信号分析ソフトウェアは、検出結果の出力間の差異を特定して、検査対象領域に欠陥(例えば、亀裂)が存在するかを判定する。
【0145】
図1に示す一実施形態によるシステムでは、プローブ配置ヘッド100は、Z軸方向に沿ってブロックアセンブリ130に対して偏移可能なZ軸ステージ140と、X軸方向に沿ってZ軸ステージ140に対して偏移可能なX軸ステージ150と、Y軸に沿ってX軸ステージ150に対して偏移可能なY軸ステージ160と、を備える。X軸ステージ、Y軸ステージ、及びZ軸ステージは、それぞれの直線運動軸受に並進可能に接続されていてもよい。これらの並進可能ステージは、当該技術分野で既知である任意の適当な駆動機構を用いて、それぞれのステッピングモーターに機械的に接続されていてもよい(
図15に示すプローブ配置ヘッドモーター60を参照)。例えば、各ステージは、ステッピングモーターにより回転駆動される親ねじに螺合するように取り付けられたナットを有していてもよく、これによりモーター出力シャフトの回転がステージの並進移動に変換される。
【0146】
いくつかの別の実施形態では、装置は、ブロックアセンブリと、並進可能にブロックアセンブリに接続された第1ステージと、並進可能に第1ステージに接続された第2ステージと、を備える多段プローブ配置ヘッド;多段プローブ配置ヘッドの第2ステージに回転可能に接続されたマンドレル;及び、マンドレルに取り付けられたミリ波導波プローブを備えてもよい。例えば、多段プローブ配置ヘッドを搭載するクローラー走行体、ロボットアーム、又は走査ブリッジが、留め具列に平行なX軸に沿った位置決めを十分な精度で行えるものであれば、Y方向とZ方向の精密な位置決め制御が可能なY軸ステージとZ軸ステージとを有する2段プローブ配置ヘッドを用いることができる。したがって、本教示の範囲に含まれる配置ヘッドは、用途によっては並進移動ステージを2つのみを備えるものであってもよい。
【0147】
別の実施形態では、留め具の位置を特定するのに、(カメラの画像に頼る代わりに)導波プローブの前方に搭載した渦電流探傷プローブを用いてもよい。渦電流探傷プローブは電気的にその中心を留め具上に位置させることができる。プラットフォームの基準系における渦電流探傷プローブの位置は既知であるので、同じ基準系における留め具位置も渦電流探傷プローブの出力に基づいて特定可能である。よって、その留め具に整列した位置に導波プローブを配置することができる。
【0148】
留め具周辺の金属を検査する装置及び方法を、各種実施形態を参照して説明したが、種々の変更が可能であり、本開示の範囲から逸脱することなく要素をその均等物で置き換えることが可能なことは、当業者には理解されよう。加えて、本開示の概念や実施化を特定の状況に適合させる多くの変形が可能である。したがって、請求の範囲に包含される要旨は、開示の実施形態によって限定されるべきではない。
【0149】
請求の範囲に用いられる「コンピュータシステム」との用語は、少なくともコンピュータあるいはプロセッサを含むシステムを包含するように広く解釈されるべきであり、また、ネットワークやバスを介して通信する多数のコンピュータやプロセッサを含みうる。先の文に用いられる「コンピュータ」及び「プロセッサ」との用語は、いずれも、命令を実行可能な処理ユニット(例えば、中央処理装置、集積回路、算術論理演算ユニット)を備える装置を指す。
【0150】
本開示の1つ又は複数のアプリケーションにおいて、第1プログラムは、パターン認識を用いて撮像データを処理するための命令を備え、第2プログラムは、モーター駆動多段プローブ配置ヘッドを制御するための命令を備え、第3プログラムは、ミリ波導波プローブを制御するための命令を備え、第4プログラムは、ミリ波導波プローブから受信する信号を分析するための命令を備える。
【0151】
さらに、本開示は、以下の付記による実施形態を備える。
【0152】
付記1 留め具周辺の金属構造体を非破壊検査する装置であって、
ブロックアセンブリ、第1軸に沿って前記ブロックアセンブリに対して並進可能な第1ステージ、及び、前記第1軸に直交する第2軸に沿って前記ブロックアセンブリに対して並進可能な第2ステージ、を備える多段プローブ配置ヘッドと、
前記第1軸周りに回転するよう、前前記多段プローブ配置ヘッドの前記第2ステージに回転可能に接続されたマンドレルと、
前記マンドレルに取り付けられた導波プローブと、を含む装置。
【0153】
付記2 前記多段プローブ配置ヘッドは、前記第1及び第2軸に直交する第3軸に沿って前記ブロックアセンブリに対して並進可能な第3ステージをさらに含み、前記第3ステージは、並進可能に前記第1ステージに接続されており、前記第2ステージは、並進可能に前記第3ステージに接続されている、付記1に記載の装置。
【0154】
付記3 プラットフォームをさらに含み、前記多段プローブ配置ヘッドの前記ブロックアセンブリは、前記プラットフォームに取り付けられている、付記2に記載の装置。
【0155】
付記4 前記プラットフォームは、クローラー走行体、走査ブリッジ、又はロボットアームである、付記3に記載の装置。
【0156】
付記5 前記プラットフォームに搭載されたカメラをさらに含み、前記カメラは、前記多段プローブ配置ヘッドの下の空間に向けられている、付記3に記載の装置。
【0157】
付記6 前記第1から第3ステージにそれぞれ機械的に接続された第1から第3モーターと、前記マンドレルに機械的に接続された第4モーターと、をさらに含み、前記第1ステージは、前記第1モーターが駆動されると、前記ブロックアセンブリに対して並進移動し、前記第3ステージは、前記第3モーターが駆動されると、前記第1ステージに対して並進移動し、前記第2ステージは、前記第2モーターが駆動されると、前記第3ステージに対して並進移動し、前記マンドレルは、前記第4モーターが駆動されると、前記第2ステージに対して回転する、付記2に記載の装置。
【0158】
付記7 留め具周辺の金属を非破壊検査する方法であって、
(a)プラットフォームを、当該プラットフォームに移動可能に接続された導波プローブが留め具に近接する位置に移動させることと、
(b)前記プラットフォーム及び前記導波プローブが静止状態にある間に、前記留め具を視野に含むカメラを用いて撮像データを取得することと、
(c)前記撮像データを処理して、前記留め具の位置を前記プラットフォームの基準系で特定することと、
(d)前記導波プローブの現在位置と開始位置との差分を前記プラットフォームの基準系で特定することと、
(e)前記プラットフォームが静止状態にある間に、前記導波プローブを、前記導波プローブの前記現在位置から前記開始位置へ移動させることと、
(f)前記プラットフォームが静止状態にある間に、前記導波プローブを用いて前記留め具の周辺領域の少なくとも一部を走査することと、を含み、当該走査は、前記導波プローブが前記開始位置にある状態で開始される、方法。
【0159】
付記8 前記導波プローブが前記開始位置にある時は、前記導波プローブの2つの開口の間を通る垂直軸は、前記留め具の中心を通る垂直軸とほぼ同軸になる、付記7に記載の方法。
【0160】
付記9 前記工程(f)は、前記導波プローブを回転させることを含む、付記8に記載の方法。
【0161】
付記10 前記導波プローブが前記開始位置にある時は、前記導波プローブの2つの開口の間を通る垂直軸は、前記留め具の中心を通る垂直軸から離間している、付記7に記載の方法。
【0162】
付記11 前記工程(f)は、前記導波プローブの前記垂直軸が、前記留め具と交差する垂直面内を移動するように、前記導波プローブを水平方向に並進移動させることを含む、付記10に記載の方法。
【0163】
付記12 前記垂直面は、前記留め具の直径方向と交差する、付記11に記載の方法。
【0164】
付記13 前記工程(f)は、前記留め具を含む領域において前記導波プローブの前記垂直軸が蛇行経路を辿るように、前記導波プローブを水平に並進移動させることを含む、付記10に記載の方法。
【0165】
付記14 留め具周辺の金属を非破壊検査する方法であって、
(a)プラットフォームに移動可能に接続された導波プローブが留め具に近接する位置に、当該プラットフォームを移動させることと、
(b)前記プラットフォームが静止状態にある間に、前記留め具を通る蛇行経路に沿って前記導波プローブを移動させることと、
(c)前記導波プローブが前記蛇行経路に沿って移動する間に、前記留め具周辺を走査することと、を含む方法。
【0166】
付記15 (d)前記導波プローブからの信号波を収集することと、
(e) 前記収集した信号波を処理して、これら信号波が、前記留め具周辺の亀裂の存在を示唆しているかどうかを判定することと、
をさらに含む、付記14に記載の方法。
【0167】
付記16 留め具周辺の金属を非破壊検査するシステムであって、
複数の可動部と、前記可動部にそれぞれ機械的に接続された第1群のモーターと、を備えるプラットフォーム、
前記プラットフォームに取り付けられるとともに、X軸ステージ、Y軸ステージ、及びZ軸ステージを備え、前記X軸、Y軸、及びZ軸ステージが、それぞれX、Y、及びZ方向に並進可能である多段プローブ配置ヘッド、
前記X軸、Y軸、及びZ軸ステージの並進を駆動するように機械的に接続された第2群のモーター、
前記多段プローブ配置ヘッドの前記X軸及びY軸ステージの一方に回転可能に接続されるとともに、前記Z軸周りに回転可能な導波プローブ、
前記導波プローブの前記Z軸周りの回転を駆動するように機械的に接続されたモーター、
前記プラットフォームに搭載されるとともに、前記多段プローブ配置ヘッドの下の空間に向けられたカメラ、及び、
前記カメラが取得した撮像データを処理する操作と、
前記モーターを制御する操作と、
前記導波プローブを制御して、信号波を送出させる操作と、を実行するようにプログラムされたコンピュータシステムと、を備えるシステム。
【0168】
付記17 前記プラットフォームは、クローラー走行体、走査ブリッジ、又はロボットアームである、付記16に記載のシステム。
【0169】
付記18 前記カメラが取得した撮像データを処理する操作は、留め具の画像を表す撮像データを認識することと、さらに、前記留め具の位置を前記プラットフォームの基準系で特定することを含む、付記16に記載のシステム。
【0170】
付記19 前記モーターを制御する操作は、前記第2群のモーターのうちの少なくとも1つを駆動し、その後、駆動を停止して、前記導波プローブの中心軸が前記留め具に交差する開始位置に、前記導波プローブを移動させることと、前記導波プローブが前記開始位置にある状態で、前記導波プローブの前記Z軸周りの回転を駆動するように機械的に接続されたモーターを駆動することと、を含み、前記導波プローブを制御して信号波を送出させる操作は、前記導波プローブの回転中に、前記導波プローブを駆動して信号波を送出させることを含む、付記18に記載のシステム。
【0171】
付記20 前記モーターを制御する操作は、前記第2群のモーターのうちの少なくとも1つを駆動し、その後、駆動を停止して、前記導波プローブの中心軸が前記留め具の中心軸と同軸ではない開始位置に、前記導波プローブを移動させることをさらに含む、付記18に記載のシステム。
【0172】
付記21 前記モーターを制御する操作は、前記第2群のモーターのうち、前記Y軸ステージの並進を駆動するように機械的に接続されたモーターを駆動し、その後、駆動を停止して、前記導波プローブを前記開始位置から終了位置までY軸方向に並進移動させることをさらに含み、前記導波プローブを制御して信号波を送出させる操作は、前記導波プローブが前記開始位置から前記終了位置まで移動する間に、前記導波プローブを駆動して信号波を送出させることを含む、付記20に記載のシステム。
【0173】
以下に記載の方法クレームは、クレームに記載した工程をアルファベット順(請求項に記載したアルファベット順の項目付けは、先に記載した工程に言及する目的でのみ用いられる)や、記載の順に実行することを要件とすると解釈されるべきでない。また、2つ以上の工程の任意の部分を同時に実行することや、択一的に実行することを排除していると解釈されるべきではない。例えば、2つ以上のステージの並進移動は、一度に行ってもよいし、順に行ってもよいし、一部重なる時間帯で行ってもよい。