(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】基板搬送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20220614BHJP
B65G 49/07 20060101ALI20220614BHJP
B25J 15/04 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B65G49/07 E
B25J15/04 Z
(21)【出願番号】P 2017154443
(22)【出願日】2017-08-09
【審査請求日】2020-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134028
【氏名又は名称】株式会社SCREEN SPE テック
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 宏平
(72)【発明者】
【氏名】迎垣 孝一
(72)【発明者】
【氏名】近森 隆一
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-191412(JP,A)
【文献】特表2002-520240(JP,A)
【文献】特開2014-207338(JP,A)
【文献】特開2011-3695(JP,A)
【文献】特開2003-62786(JP,A)
【文献】特開2010-135381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B65G 49/07
B25J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する基板搬送装置において、
基板の下面に当接して基板を保持するアームと、
前記アームの先端部に設けられ、基板の側端面に当接して前記アームの進出方向への基板の移動を規制する係止部と、
前記アームの基端部側の取付部と、
前記係止部と前記取付部との間に位置し、前記取付部から先端側へ延出された延出部と、
前記基端部を前記アームの長軸周りに回転させる回転機構を備えたアーム形状可変機構と、
を備え、
前記アーム形状可変機構は、前記アームを基板の収納位置に進入させる進入時には、前記係止部が基板の下面と干渉せず、かつ、前記アームの進退方向に直交する方向から見た前記延出部が略直線状であり基板の下面と干渉しない形状とし、前記アームで基板を保持したまま前記アームを基板の収納位置から退出させる退出時には、前記係止部が基板の側端面に当接し、かつ、前記延出部が下方に湾曲する形状となるように、前記回転機構により、前記係止部と前記延出部とを一体的に回転させることで、前記アームの進退方向に直交する方向から見た形状を変える機能を備え
、
更に、
前記アームは、棒状を呈し、二本で構成され、基板の撓みに応じた湾曲する形状であり、
前記回転機構は、前記二本のアームの基端部をそれぞれ回転可能に保持するアーム保持部と、前記アーム保持部を貫通したアームの基端部に取り付けられた従動ローラを含む複数のローラと、これらのローラに掛け渡された無端ベルトと、対称に配置された前記二つの無端ベルトの間に配置され、前記二つの無担ベルトに固定された昇降片と、前記昇降片に作動軸が連結されたエアシリンダとを含み、前記エアシリンダの伸縮動作に伴って、前記アームの進入時には、前記係止部を横方向に向け、前記アームの退出時には、前記係止部を上方向に向けることを特徴とする基板搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ、液晶ディスプレイ用基板、プラズマディスプレイ用基板、有機EL用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスプレイ用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板(以下、単に基板と称する)を搬送する基板搬送装置に係り、特に、撓んだ基板を搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、基板の下面に当接する3本の細板状のアームと、両端の二本のアームをそれぞれ長軸周りに回転する回転機構と、中央のアームを垂直方向に昇降させる垂直移動機構とを駆動機構部に備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この基板搬送装置は、例えば、複数枚の基板を高さ方向に収納したカセットのうち、搬出したい基板の下面にアームを進入させた後、アームを上昇させるとともにアームを退出させることによりカセットから基板を搬出する。その際に、基板が撓んでいると、アームを進入させることが困難であるが、両端の二本のアームを撓みに応じて長軸周りに回転させて傾斜させ、中央のアームを撓みに応じて下降させた後、撓んだ基板の下方に三本のアームを進入させて基板を搬出する。これにより、基板の撓みにより基板の下方の間隔が狭くなっていてもアームを進退させることができるので、撓む基板であっても標準的な収納間隔のカセットでの搬送を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、スループットを高めるために基板の搬送を高速で行い、落下防止の構成をアームに備えたものには適用できないという問題がある。
【0006】
一般的に、この構成では、基板の水平方向での移動を規制したり、落下を防止したりするために、基板の端面に当接する係止部をアームの先端部に設けている。この係止部は、少なくとも基板の厚さ分だけはアームの上面から突出しているので、先端部に係止部を備えたアームでは、撓んだ基板の搬送を行うことが困難であるという問題がある。
【0007】
特に、最近では、デバイスにおける集積度を向上させるために三次元積層デバイスのための薄い基板が使用されることがある。例えば、200mm(8インチ)径の基板は、725μm厚が製品規格であるが、これよりも薄い基板(例えば、200μm厚)を用いてデバイスを製造することがある。この種の基板は、液晶ディスプレイ用基板などよりも小さい上に、高スループットが求められるので、高速での搬送が求められている。したがって、上述した撓みに起因する問題が生じやすく、従来技術では搬送に用いることができない。
【0008】
また、最近では、規格よりも狭い間隔で基板を収納することもあるが、そのような狭い間隔で収納された撓んだ基板を搬送することも困難となっている。さらに、進入方向と直角方向の断面で見たときの撓みを有する基板の搬送には有効であるが、進入方向に平行な垂直断面で見たときの撓みを有する基板の搬送には対応できないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、先端部に係止部を備えたアームであっても、撓んだ基板、かつ、規格よりも狭い間隔で配置された基板の搬送を行うことができる基板搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、基板を搬送する基板搬送装置において、基板の下面に当接して基板を保持するアームと、前記アームの先端部に設けられ、基板の側端面に当接して前記アームの進出方向への基板の移動を規制する係止部と、前記アームの基端部側の取付部と、前記係止部と前記取付部との間に位置し、前記取付部から先端側へ延出された延出部と、前記基端部を前記アームの長軸周りに回転させる回転機構を備えたアーム形状可変機構と、を備え、前記アーム形状可変機構は、前記アームを基板の収納位置に進入させる進入時には、前記係止部が基板の下面と干渉せず、かつ、前記アームの進退方向に直交する方向から見た前記延出部が略直線状であり基板の下面と干渉しない形状とし、前記アームで基板を保持したまま前記アームを基板の収納位置から退出させる退出時には、前記係止部が基板の側端面に当接し、かつ、前記延出部が下方に湾曲する形状となるように、前記回転機構により、前記係止部と前記延出部とを一体的に回転させることで、前記アームの進退方向に直交する方向から見た形状を変える機能を備え、更に、前記アームは、棒状を呈し、二本で構成され、基板の撓みに応じた湾曲する形状であり、前記回転機構は、前記二本のアームの基端部をそれぞれ回転可能に保持するアーム保持部と、前記アーム保持部を貫通したアームの基端部に取り付けられた従動ローラを含む複数のローラと、これらのローラに掛け渡された無端ベルトと、対称に配置された前記二つの無端ベルトの間に配置され、前記二つの無担ベルトに固定された昇降片と、前記昇降片に作動軸が連結されたエアシリンダとを含み、前記エアシリンダの伸縮動作に伴って、前記アームの進入時には、前記係止部を横方向に向け、前記アームの退出時には、前記係止部を上方向に向けることを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、アーム形状可変機構は、進入時には、係止部が基板の下面と干渉せず、かつ、アームの進退方向に直交する方向から見た延出部が略直線状であり基板の下面と干渉しない形状とするので、アームの係止部が基板と干渉せずにアームが進入できる。また、退出時には、係止部が基板の側端面に当接し、かつ、延出部が下方に湾曲する形状となるように、回転機構により、係止部と延出部とを一体的に回転させるので、アームの係止部で基板の側端面を係止して基板の移動を規制しつつアームが基板を搬出できる。このように進入時と退出時とでアーム形状を可変することにより、先端部に係止部を備えたアームであっても、撓んだ基板、かつ、規格よりも狭い間隔で配置された基板の搬送を行うことができる。
【0012】
(削除)
【0013】
(削除)
【0014】
(削除)
【0015】
(削除)
【0016】
(削除)
【0017】
(削除)
【0018】
(削除)
【0019】
(削除)
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る基板搬送装置によれば、アーム形状可変機構は、進入時には、第1の形状とするので、アームの係止部が基板と干渉せずにアームが進入できる。また、退出時には、第2の形状とするので、アームの係止部で基板の側端面を係止して基板の移動を規制しつつアームが基板を搬出できる。このように進入時と退出時とでアーム形状を可変することにより、先端部に係止部を備えたアームであっても、撓んだ基板、かつ、規格よりも狭い間隔で配置された基板の搬送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例に係る基板搬送装置の概略構成を示す全体図である。
【
図5】基板搬送装置の要部を前方から見た斜視図である。
【
図6】基板搬送装置の要部を後方から見た斜視図である。
【
図9】基板搬送装置による基板の搬出動作を示した模式図である。
【
図10】基板搬送装置の第1の変形例を示す斜視図である。
【
図11】基板搬送装置の第1の変形例を示す縦断面図である。
【
図12】基板搬送装置の第2の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
図1は、実施例に係る基板搬送装置の概略構成を示す全体図であり、
図2はカセット及び基板搬送装置の側面図であり、
図3は、基板搬送装置を後方から見た斜視図であり、
図4は、基板搬送装置を前方から見た斜視図であり、
図5は、基板搬送装置の要部を前方から見た斜視図であり、
図6は、基板搬送装置の要部を後方から見た斜視図である。
【0023】
実施例に係る基板搬送装置1は、カセットCに離間して積層収納された複数枚の基板Wを一枚ずつ搬送する。基板Wは、例えば、厚さが薄く、カセットCに収納された状態では、上面がへこみ、下方に突出した状態である。つまり、側面視では、基板搬送装置1側から見て下方に湾曲しており、基板搬送装置1の受け渡し方向に直交する方向(
図1の紙面手前奥方向)から見ても下方に湾曲している。
【0024】
基板搬送装置1は、図示しない昇降機構によって昇降される基台3を備えている。この基台3は、進退駆動機構5を備えている。進退駆動機構5は、駆動モータ7と、一つの主動ローラ9と、二つの従動ローラ11,13とを備えている。駆動モータ7は、駆動軸が上方に向けられて基台3に取り付けられ、基台3の上面から突出したその駆動軸に主動ローラ9が取り付けられている。二つの従動ローラ11,13は、主動ローラ9を挟んで
図1の左右に離間して、基台3の端部側に配置されている。従動ローラ11は、その高さ方向の幅が主動ローラ9よりも上方に広く形成されている。従動ローラ13は、その高さが従動ローラ11の高さに合わせて基台3の上面から上方へ離間して配置されている。主動ローラ9と従動ローラ11の下部には、無端ベルト15が架け渡され、従動ローラ11の上部と従動ローラ13には、無端ベルト17が架け渡されている。無端ベルト17の一部位は、移動基台19に固定されている。
【0025】
基台3の上面であって、
図1及び
図3における無端ベルト17の奥側には、無端ベルト17に平行にリニアガイド21が取り付けられている。リニアガイド21のレールに取り付けられて移動自在のブロックには、移動基台19が取り付けられている。上述した駆動モータ7が駆動されると、無端ベルト15の回転に伴って無端ベルト17が回転し、これにより移動基台19が基台3の長手方向にリニアガイド21に沿って移動する。その移動位置は、
図2に示すように、アーム29がカセットC内に進出した進出位置(図中に二点鎖線で示す)と、
図2に示すようにアーム29がカセットCから退出した退出位置(図中に実線で示す)との二箇所となっている。なお、図示省略しているが、移動基台19には、センサで位置検出される検出片が設けられ、基台3にはその検出片を検出するセンサが設けられている。移動基台19は、その上部に支柱23が立設されている。
【0026】
図5に示すように、支柱23の上部側にはステー25が取り付けられている。このステー25の幅は、支柱23の幅よりも広く、ステー25の両端部が支柱23の両端部よりも突出している。ステー25の両端部には、それぞれアーム保持部27が取り付けられている。アーム保持部27は、アーム29の基端部をその長軸の軸周りに回転可能に保持する。アーム29の基端部は、アーム保持部27とステー25とを貫通している。ステー25から突出しているアーム29の基端部には、従動ローラ31が取り付けられている。したがって、従動ローラ31が回転すると、これに連動してアーム29が回転する。
【0027】
図6に示すように、ステー25の中央側には、縦方向に離間して二つの従動ローラ33,35が回転軸を水平にした状態で取り付けられている。従動ローラ31,33,35には、無端ベルト37が架け渡されている。従動ローラ31と従動ローラ33との水平方向における間と、従動ローラ33と従動ローラ35と垂直方向における間には、無端ベルト37の張力を高めるためのテンションローラ
38が取り付けられている。上述した従動ローラ31,33,35及びテンションローラ
38は、ステー25の縦方向の中心線を挟んで
対称に同様に配置されている。つまり、各アーム29用に、上述した従動ローラ31,33,35及びテンションローラ
38が設けられている。ステー25の横方向における中心位置であって、従動ローラ35同士の間には、昇降片39が配置されている。この昇降片39は、上部の両側面が二つの無端ベルト37に固定されている。昇降片39の下部は、ステー25の中心に取り付けられたエアシリンダ41の作動軸に連結されている。したがって、例えば、エアシリンダ41が作動軸を収縮動作されると、
図6に示すように昇降片39が下降され、無端ベルト37の移動に伴ってアーム29の係止部29bが上を向いた状態とされる(本発明における「第2の形状」に相当)。一方、エアシリンダ41が作動軸を伸長動作されると、昇降片39が上昇され、無端ベルト37の移動に伴って
図4に示すようにアーム29の係止部29bが外方向を向いた状態とされる(本発明における「第1の形状」に相当)。
【0028】
なお、上述したアーム保持部27と、従動ローラ31,33,35と、無端ベルト37と、テンションローラ38と、昇降片39と、エアシリンダ41とが本発明における「アーム形状可変機構」及び「回転機構」に相当する。
【0029】
ここで、
図7及び
図8を参照して、上述したアーム29の詳細について説明する。なお、
図7は、退出時におけるアームの縦断面図であり、
図8は、退出時におけるアームの平面図である。
【0030】
本実施例におけるアーム29は、外観が細い棒状を呈し、基板搬送装置1は二本のアーム29を備えている。アーム29は、例えば、アルミニウムをアルマイト処理したものや、セラミックまたはカーボンで構成されている。
【0031】
アーム29は、基端部側の取付部29aと、先端部側の係止部29bと、取付部29aと係止部29bとの間に位置し、取付部29aから先端側へ延出された延出部29cと、取付部29a側の当接支持部29dとを備えている。取付部29aは、上述したアーム保持部27で回転可能に保持される。係止部29bは、基板Wの外周側下面を当接支持するとともに、基板Wの側端面に当接し、アーム29が基板Wの収納位置へ進出する際の進出方向(換言すると、退出する際における退出方向の反対側)への基板Wの移動を規制する。延出部29cは、基板Wの湾曲度合いに応じて、上面が凹状に湾曲形成されていることが好ましい。当接支持部29dは、基板Wの外周側下面に当接して支持する。基板Wが薄く、撓んで下方に湾曲している場合には、アーム29で基板Wを下方からすくい上げるようにすると、係止部29bと当接支持部29dだけでなく、延出部29cにも基板Wの下面が当接するが、延出部29cを凹状に湾曲形成されているので、基板Wとの擦れを抑制できる。したがって、基板Wとアーム29との擦れに伴うパーティクルの発生を抑制でき、基板Wを清浄に搬送できる。
【0032】
図3及び
図4に示すように、基板搬送装置1は、リニアガイド21を挟んだ従動ローラ13の反対側にあたる基台3に支持板43が立設されている。支持板43は、支柱23よりも頂部が高く形成されている。その頂部には、位置規制板45が取り付けられている。位置規制板45は、アーム29側に基板Wの周縁形状に合わせて凹状に湾曲した当接部47を形成されている。当接部47は、基板Wの側端面との接触面積を少なくするために傾斜面を形成されている。また、位置規制板45は、アーム保持部27やステー25の両端部との干渉を回避するための凹部49が形成されている。支持板43は、そのリニアガイド21側の側面に、エアシリンダ51が作動軸を縦方向に向けて取り付けられている。このエアシリンダ51の作動軸と、位置規制板45の下面との間には、平面視Uの字状を呈する移載アーム53が配置されている。移載アーム53は、その下面がエアシリンダ
51の作動軸の先端に連結されている。移載アーム53の上面には、平面視で基板Wの外径より小さな円に内接する正三角形の各頂点に対応する位置に支持ピン55が立設されている。
【0033】
エアシリンダ51が非作動のときは、作動軸が収縮し、移載アーム53とともに三本の支持ピン55がアーム29より下方の待機位置(
図2に示す位置)に位置する。一方、エアシリンダ51が作動したときは、作動軸が伸長し、移載アーム53とともに三本の支持ピン55が上昇し、支持ピン55の頂部がアーム29より高い位置に突出する。これによりアーム29で支持された基板Wがアーム29から持ち上げられ、図示しない他の搬送機構との間で基板Wを受け渡すことができる。
【0034】
上述した駆動モータ7と、エアシリンダ41,51は、
図1に示すように制御部57によって操作される。制御部57は、マイクロコントローラなどから構成されている。
【0035】
次に、
図9を参照して、上述した基板搬送装置1の動作について説明する。なお、
図9は、基板搬送装置による基板の搬出動作を示した模式図である。
【0036】
基板Wは、
図2に示すように、複数枚がカセットCに収納されている。カセットCは、標準規格に応じた間隔で上下方向に複数個形成された載置棚C1を備えている。基板Wは、例えば、薄厚のものであり、載置棚C1に載置された状態で基板搬送装置1側から見ても、その直交する方向(
図2)から見ても基板Wの中央部が下方へ撓んだ状態となっているものとする。
【0037】
制御部57は、エアシリンダ51の作動軸を収縮させて支持ピン55を下降させた状態で、エアシリンダ41の作動軸を伸長させてアーム29の係止部29bを外側に向けた状態とする(
図4及び
図9(a)参照)。そして、駆動モータ7を作動させてアーム29を進出位置に移動させる(
図9(b)参照)。このとき、アーム29の係止部29bが側方に向けられているので、基板Wが湾曲していても基板Wの下面と接触するのを防止できる。次いで、エアシリンダ41の作動軸を収縮させてアーム29を回動させ、係止部29bを上方へ向ける(
図5及び
図6並びに
図9(c)参照)。そして、制御部57は、図示しない昇降機構を操作して、基板搬送装置1を僅かに上昇させて基板Wをアーム29で保持する(
図9(d)参照)。さらに制御部57は、駆動モータ7を操作して、アーム29を退出位置に移動させる(
図9(e)参照)。図示省略しているが、この状態で制御部57は、エアシリンダ51の作動軸を上昇させて基板Wを支持ピン55に移載し、図示しない他の搬送機構との間で基板Wを受け渡しする。
【0038】
上述した実施例によると、基板搬送装置1は、進入時には、側方から見たアーム29の形状を係止部29bが外方を向いた第1の形状とするので、アーム29の係止部29bが基板Wと干渉せずにアーム29が進入できる。また、退出時には、側方から見たアーム29の形状を係止部29bが上方を向いた第2の形状とするので、アーム29の係止部29bで基板Wの側端面を係止して基板Wの移動を規制しつつアーム29が基板Wを搬出できる。このように進入時と退出時とでアーム29の側面視における形状を可変することにより、先端部に係止部29bを備えたアーム29であっても、撓んだ基板W、かつ、規格よりも狭い間隔で配置された基板Wの搬送を行うことができる。
【0039】
なお、上述した実施例では、アーム29が長軸の軸周りに回転されることにより、アーム29の進退方向に直交する方向から見た形状を変えた。しかしながら、本発明は、そのような構成に限定されるものではない。以下の本発明の変形例について説明する。
【0040】
<第1の変形例>
【0041】
図10及び
図11を参照して、変形例1について説明する。なお、
図10は、基板搬送装置の第1の変形例を示す斜視図であり、
図11は、基板搬送装置の第1の変形例を示す縦断面図である。
【0042】
アーム291は、外観が棒状を呈しており、先端部の係止部291bだけが可動する。つまり、係止部291bは、延出部291cの先端部に半分の厚さにされた半割部61と、半割部61に対して回転軸63で揺動可能に取り付けられた係止片65とを備えている。係止片65は、回転軸63よりも上方の位置に貫通穴67が形成されている。また、アーム291は、半割部61と基端部とを連通する操作穴69が形成されている。この操作穴69には、操作ワイヤー71が挿通されている。操作ワイヤー71は、例えば、上述したエアシリンダ41の作動軸に連結されている。エアシリンダ41の作動軸を収縮させると、
図10に示すように係止片65が起立して、基板Wの側端縁を係止できる姿勢となる。したがって、基板Wの収納位置に進出する際には、エアシリンダ41の作動軸を伸長させて係止片65を
図10中に二点鎖線で示す伸長姿勢とし(「非係止姿勢」)、基板Wを係止し退出する際には、エアシリンダ41の作動軸を収縮させて係止片65を
図10中に実線で示す起立姿勢とする(「係止姿勢」)。
【0043】
なお、上述した半割部61と、回転軸63と、係止片65と、操作ワイヤー71とが本発明における「アーム形状可変機構」及び「係止部変位機構」に相当する。
【0044】
このような構成によると、簡易な構成で上述した実施例と同様の効果を奏する。また、先端部の係止部202bだけを動作させるので、負荷を軽減できる。
【0045】
<第2の変形例>
【0046】
図12を参照して第2の変形例について説明する。なお、
図12は、基板搬送装置の第2の変形例を示す平面図である。
【0047】
上述した実施例及び第1の変形例は、アーム29,291の外観が棒状を呈するものであったが、本発明はアームの形状が棒状に限定されるものではない。
【0048】
例えば、アーム292は、外観が板状を呈する。そして、取付部292aから当接支持部292d及び延出部292cを通って係止部292bにわたって操作穴67が形成され、この操作穴67には操作ワイヤー71が挿通されている。操作ワイヤー71の先端は、第1の変形例のように係止片65に連結されている。係止片65の操作は、上述した第1の変形例と同様に行うことができる。
【0049】
このような構成によると、第1の変形例と同様の効果を奏する上に、板状のアーム292により剛性を高くすることができるので、より径が大きな基板Wの搬送も行うことができる。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0051】
(1)上述した実施例では、アーム29の延出部29cが基板Wの撓みに応じて湾曲形成されているが、本発明はこのような実施形態に限定されない。つまり、延出部29cを湾曲形成させずに直線的に形成してもよい。
【0052】
(2)上述した実施例では、従動ローラ31,33,35とエアシリンダ41などによりアーム29の側面視における形状を変化させたが、本発明はこのような実施形態に限定されない。例えば、ステー25にステッピングモータを取り付けて、ステッピングモータの回転によりアーム29をその長軸周りに回転させるようにしてもよい。
【0053】
(3)上述した実施例では、係止部29bを外側に向けた姿勢でアーム29を基板W側に進出させているが、係止部29bを内側に向けた姿勢でアーム29を基板W側に進出させるようにしてもよい。
【0054】
(4)上述した実施例では、係止部29bを回転力や引っ張り力により側面視における形状を変形させているが、本発明はこのような実施形態に限定されない。例えば、係止部29bに形状記憶合金を用い、ここを電気的に加熱して係止部29bの形状を変形するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 … 基板搬送装置
C … カセット
W … 基板
3 … 基台
5 … 進退駆動機構
7 … 駆動モータ
9 … 主動ローラ
11,13 … 従動ローラ
15,17 … 無端ベルト
19 … 移動基台
21 … リニアガイド
27 … アーム保持部
29 … アーム
29a … 取付部
29b … 係止部
29c … 延出部
29d … 当接支持部
31,33,35 … 従動ローラ
37 … 無端ベルト
41,51 … エアシリンダ
57 … 制御部