(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】インモールドラベル、インモールド成形品、及び、インモールド成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20220614BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/37
(21)【出願番号】P 2017194588
(22)【出願日】2017-10-04
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市来 智仁
(72)【発明者】
【氏名】松本 早紀
(72)【発明者】
【氏名】奥野 泰正
(72)【発明者】
【氏名】阿由葉 稔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健司
(72)【発明者】
【氏名】松崎 学
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-123446(JP,A)
【文献】特表2013-518003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
B29C 45/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と側面と前記底面と前記側面との間に配置された曲面部とを有し、かつ前記底面の上方側が開口した樹脂基材の外表面に貼り付けて用いられるインモールドラベルであって、
前記インモールドラベルは、第一方向に沿って伸びる切込みが設けられ、前記切込みによって形成された10以上の帯状分割部を備え
、
前記切込みは、第二方向に沿って配置され、第一の切込みと、前記第一の切込みの長さに対して20~95%の長さを有する第二の切込みとを含
み、
前記帯状分割部は、前記底面側に配置され、かつ、前記曲面部の少なくとも一部と重畳するように配置されることを特徴とするインモールドラベル。
【請求項2】
前記第一の切込みと前記第二の切込みとの間隔は、2mm以上、35mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のインモールドラベル。
【請求項3】
前記第一の切込み及び前記第二の切込みの形状は、直線状、又は、端部側が広がったV字状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインモールドラベル。
【請求項4】
前記第一の切込みの長さは、前記インモールドラベルの前記第一方向の長さに対して、3%以上、80%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のインモールドラベル。
【請求項5】
樹脂基材と、前記樹脂基材の外表面に貼り付けられた請求項1~4のいずれかに記載のインモールドラベルとを備え、
前記樹脂基材は、
底面と側面と、前記底面と前記側面との間に配置された曲面部とを有し、かつ前記底面の上方側が開口し、
前記インモールドラベルの前記帯状分割部
は、前記底面側に配置され、かつ、前記曲面部の少なくとも一部と重畳することを特徴とするインモールド成形品。
【請求項6】
前記曲面部の曲率半径は、10mm以上、50mm以下であることを特徴とする請求項5に記載のインモールド成形品。
【請求項7】
凹型と凸型のいずれか一方に樹脂注入口を有する金型を用い、前記凹型の内側に、前記帯状分割部が前記樹脂注入口側となるように請求項1~4のいずれかに記載のインモールドラベルを配置するラベル配置工程と、
前記凹型と前記凸型との間に形成されたキャビティに、前記樹脂注入口から樹脂組成物を充填する充填工程とを含むことを特徴とするインモールド成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドラベル、該インモールドラベルを備えたインモールド成形品、及び、該インモールドラベルを用いたインモールド成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品の表面に加飾等を施す方法の一つとして、インモールド成形が用いられる。上記インモールド成形は、金型内に予め印刷等を施したラベルをセットし、その後、金型内に樹脂組成物を充填することで、成形品の表面にラベルを一体化させる製法である。
【0003】
インモールド成形に用いられるラベル(以下、インモールドラベルともいう)の形状に関し、種々の検討が行われており、例えば、特許文献1には、印刷用基層と接着層とを具備した横長帯形乃至扇形のインモールドラベルにおいて、横巾全長に亘る一部を基部として、基部の上下方向部分の少なくとも一方部分を、該一方部分へ多数の切離し線を縦設することで、基部側を連結部とし、かつラベルの上端乃至下端側を自由端とする複数の隣接する帯状片で形成することを特徴とするインモールドラベルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
曲面部を有する基材とインモールドラベルとを一体化させる場合、上記曲面部にインモールドラベルを沿わせることが困難であり、上記曲面部でシワ等の成形不良が発生しやすかった。そのため、従来のインモールド成形品では、上記基材の曲面部と重ならないように、金型内にインモールドラベルを配置して、インモールド成形を行うことが主流であった。
【0006】
近年、意匠性を高める観点から、基材の底面から側面の上端にかけて、より広い範囲に加飾を施す要請がある。しかしながら、上記基材の曲面部とインモールドラベルの一部とが重なるようにインモールド成形を行うと、インモールドラベルの端部がめくれ上がり、インモールドラベルに大きいシワが発生したり、めくれた部分から樹脂組成物がインモールドラベルの外側に回り込むことがあった。本発明者らの検討によると、上記のような問題は、(1)曲面部を有する基材にインモールドラベルを適用する場合に、上記インモールドラベルが金型のキャビティの曲面部に充分に密着せず、上記インモールドラベルと金型の隙間から樹脂組成物が漏れることにより発生すると考えられる。また、(2)樹脂注入口から高速で流入してくる溶融した樹脂組成物と、インモールドラベルとが衝突することによって、インモールドラベルの端部が屈曲することにより発生すると考えられる。
図11は、端部のめくれ上がりに起因する大きいシワの発生を説明した帯状分割部の拡大平面模式図である。
図11中、白抜き矢印は、樹脂組成物の流入方向を示す。
図11に示したように、従来のインモールドラベル200では、切り込み201により形成された帯状分割部202の端部から流入した樹脂組成物により、帯状分割部202がめくれ上がり、大きいシワ203が発生する。
【0007】
上記特許文献1では、インモールドラベルに複数の隣接する帯状片を形成することで、インモールドラベルを容器体表面の曲面部に貼着して、シワのない見栄えの良いインモールドラベル容器を提供することが検討されている。しかしながら、本発明者が上記インモールドラベル成形品に発生するシワをより詳細に観察したところ、上記インモールドラベルの端部がめくれ上がることにより発生する大きいシワに加えて、更に、上記インモールドラベルに形成した切込みの最奥位置で、小さいシワが発生していることを見出した。上記切込みの最奥位置で発生する小さいシワは、上記特許文献1に開示されたように、単にインモールドラベルに切込みを入れただけでは解消できず、更なる検討の余地があった。なお、本明細書中、上記切込みの最奥位置とは、上記帯状分割部の端部を始点とした場合に、切込みの終点を指す。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、大小のシワの発生及び樹脂の回り込みを抑制することができるインモールドラベル、該インモールドラベルを用いたインモールド成形品の製造方法、及び、大小のシワの発生及び樹脂の回り込みがなく、外観のよいインモールド成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、成形時にインモールドラベルの端部がめくれ上がることを抑制するために、インモールドラベルの一端に入れる切込数の影響を検討した。その結果、切込みの数を増やし、10以上の帯状分割部を設けることで、上記インモールドラベルの端部がめくれ上がることに起因する大きいシワの発生、及び、樹脂の回り込みを抑制できることが分かった。
【0010】
一方で、本発明者らは、切込みの数を増やすと、上記切込みの最奥位置で小さいシワが発生しやすいことを見出し、上記小さいシワの発生原因を検討した。
図12は、切込みの最奥位置での小さいシワの発生を説明した帯状分割部の拡大平面模式図である。インモールド成形を行う場合、
図12に示したように、インモールドラベル200は、基材の曲面に沿って白抜き矢印で示したように両方向に引っ張られる。このとき、切込み201の最奥位置に応力が集中するため、小さいシワ204が発生することが分かった。更に、上記小さいシワは、隣接する切り込み部の間隔が狭くなる程、発生しやすいことが分かった。
【0011】
本発明者らは、更に検討を重ね、インモールドラベルの一端に10以上の帯状分割部を設けることで、上記大きいシワの発生及び樹脂の回り込みを抑制しつつ、かつ、長さの異なる切込みを入れることで、隣り合う切込み間の距離を広げ、上記小さいシワの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明の一態様は、第一方向に沿って伸びる切込みが設けられ、上記切込みによって形成された10以上の帯状分割部を備えるインモールドラベルであって、上記切込みは、第二方向に沿って配置され、第一の切込みと、上記第一の切込みの長さに対して20~95%の長さを有する第二の切込みとを含むことを特徴とするインモールドラベルである。
【0013】
上記第一の切込みと上記第二の切込みとの間隔は、2mm以上、35mm以下であることが好ましい。
【0014】
上記第一の切込み及び上記第二の切込みの形状は、直線状、又は、端部側が広がったV字状であることが好ましい。
【0015】
上記第一の切込みの長さは、上記インモールドラベルの上記第一方向の長さに対して、3%以上、80%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の他の一形態は、樹脂基材と、上記樹脂基材の外表面に貼り付けられた本発明のインモールドラベルとを備え、上記樹脂基材は、曲面部を有し、上記曲面部の少なくとも一部と上記インモールドラベルの上記帯状分割部とが重畳することを特徴とするインモールド成形品である。
【0017】
上記樹脂基材は、底面と側面とを有し、上記底面の上方側が開口した容器であり、上記曲面部は、上記底面と上記側面との間に配置され、上記曲面部の曲率半径は、10mm以上、50mm以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の更に他の一形態は、凹型と凸型のいずれか一方に樹脂注入口を有する金型を用い、上記凹型の内側に、上記帯状分割部が上記樹脂注入口側となるように本発明のインモールドラベルを配置するラベル配置工程と、上記凹型と上記凸型との間に形成されたキャビティに、上記樹脂注入口から樹脂組成物を充填する充填工程とを含むことを特徴とするインモールド成形品の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のインモールドラベル、及び、本発明のインモールド成形品の製造方法によれば、大小のシワの発生及び樹脂の回り込みを抑制したインモールド成形品を提供することができる。本発明のインモールド成形品は、大小のシワの発生及び樹脂の回り込みがなく、外観のよい成形品である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態1の第一例に係るインモールドラベルを示した平面模式図である。
【
図2】実施形態1の第二例に係るインモールドラベルを示した平面模式図である。
【
図3】実施形態1の第三例に係るインモールドラベルを示した平面模式図である。
【
図4】実施形態1の第四例に係るインモールドラベルを示した平面模式図である。
【
図5】実施形態2に係るインモールドラベルの一例を示した平面模式図である。
【
図6】本発明のインモールド成形品の一例を示した模式図であり、底面から観察した斜視図である。
【
図7】
図6に示したインモールド成形品のV-V´での断面模式図である。
【
図8】
図6に示したインモールド成形品の平面模式図である。
【
図9】本発明のインモールド成形品の製造に用いる金型の一例を示した断面模式図である。
【
図10】
図9の金型に本発明のインモールドラベルを配置した状態を模式的に示した一部切り欠き斜視図である。
【
図11】端部のめくれ上がりに起因する大きいシワの発生を説明した帯状分割部の拡大平面模式図である。
【
図12】切込みの最奥位置での小さいシワの発生を説明した帯状分割部の拡大平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<インモールドラベル>
[実施形態1]
図1は、実施形態1の第一例に係るインモールドラベルを示した平面模式図である。
図1に示したように、第一例に係るインモールドラベル10A(以下、ラベル10Aともいう)は、第一方向Xに沿って伸びる切込みが設けられ、上記切込みによって形成された10以上の帯状分割部1を備える。帯状分割部1は、ラベル10Aの両端と切込みの間、及び、隣り合う切込みの間に形成される。帯状分割部1の数を10以上とすることで、ラベル10Aを金型内に配置する際に、金型の曲面に沿わせて配置することができるため、帯状分割部1の端部がめくれ上がることに起因する大きいシワの発生を抑制することができる。また、細かく切込みを入れることで、個々の帯状分割部1の端部の剛性が向上し曲がり難くなるため、樹脂注入口から樹脂組成物を充填しても、帯状分割部1の端部がめくれ上がらず、ラベルの裏側に樹脂組成物が回り込むことを防ぐことができる。帯状分割部1の数が10未満では、帯状分割部1の端部の剛性が低下し、インモールド成形を行った際に、成形品に上記大きいシワの発生及び樹脂の回り込みが発生する。
【0022】
上記切込みは、第二方向Yに沿って配置され、第一の切込みAと、第一の切込みAの長さに対して20~95%の長さを有する第二の切込みBとを含む。
図1中、L
Xは第一方向Xの長さを表し、L
Aは第一の切込みAの長さを表し、L
Bは第二の切込みBの長さを表す。長さの異なる切込みを設けることで、切込みの最奥位置をずらし、切込み最奥位置でのY方向の剛性を維持することができる。これにより、帯状分割部1の数を増大させて、上記大きいシワの発生及び樹脂の回り込みが発生を抑制しつつ、切込みの最奥位置で発生する小さいシワの発生も抑制することができる。
【0023】
第一の切込みAの長さLAに対する第二の切込みBの長さLB(以下、LB/LAともいう)は、20~95%である。上記LB/LAが20%未満であると、帯状分割部1の端部の剛性が不十分となり、インモールド成形を行った際に、成形品に上記大きいシワの発生及び樹脂の回り込みが発生する。これは、上記LAに対して上記LBが短すぎるために、第二の切込みBを形成した効果が充分に得られないためであると考えられる。一方、上記LB/LAが95%を超えると、第一の切込みA及び第二の切込みBの最奥位置において、第二方向Yへの剛性を維持できなくなるため、特に上記小さいシワが発生しやすい。上記LB/LAの好ましい下限は25%であり、好ましい上限は85%であり、より好ましい上限は70%であり、更に好ましい上限は50%であり、特に好ましい上限は40%である。
【0024】
第一方向Xと第二方向Yとは、異なる方向に延伸している。ラベル10Aの第一方向Xの長さLXと、第二方向Yの長さLYとは、同じであってもよいし、異なってもよい。上記LXと上記LYとが異なる場合、上記LXと上記LYのどちらが長くてもよい。上記LX及び上記LYは特に限定されず、ラベル10を貼り付ける樹脂基材の形状により適宜変更することができる。上記LXは、例えば、35mm~200mmである。上記LYは、例えば、150mm~600mmである。なお、上記第一方向Xは、ラベル10Aの外縁の一辺に沿った方向であり、上記第二方向Yは、上記第一方向Xと交差し、かつ、上記ラベル10Aの外縁のうち、上記一辺とは異なる辺に沿った方向である。上記LXとは、ラベル10Aの上記帯状分割部1が形成された側の端部を下端、反対側の端部を上端としたとき、上記第一方向Xに沿ったラベル10Aの下端(帯状分割部1の端部)から上端までの長さである。上記LYとは、ラベル10Aの上記帯状分割部1が形成された側の端部(ラベル10の下端)の長さである。
【0025】
第一の切込みA及び第二の切込みBの形状は、直線状、又は、端部(下端)側が広がったV字状であることが好ましい。第一の切込みAの形状、及び、第二の切込みBの形状は、同じであってもよいし、異なってもよい。実施形態1では、第一の切込みA及び第二の切込みBの形状が直線状である場合を説明する。
【0026】
第一の切込みAの長さLAは、インモールドラベルの第一方向Xの長さLXに対して、3%以上、80%以下であることが好ましい。第一方向Xの長さLXに対する第一の切込みAの長さLA(以下、LA/LXともいう)が3%未満であると、切込みが浅いため、ラベル10Aの下端が金型の曲面沿わず、大きいシワ及び樹脂の回り込みが発生するおそれがある。一方、上記LA/LXが80%を超えると、切込みが深すぎるため、ラベル10を金型キャビティに装填した時にラベル10が破れるおそれがある。上記LA/LXの好ましい下限は5%であり、好ましい上限は60%であり、より好ましい下限は10%であり、より好ましい上限は55%である。
【0027】
第二の切込みBの長さLBは、インモールドラベルの第一方向Xの長さLXに対して、0.6%以上、70%以下であることが好ましい。第一方向Xの長さLXに対する第二の切込みBの長さLB(以下、LB/LXともいう)が0.6%未満であると、切込みが浅いため、ラベル10Aの端部(下端)が金型の曲面沿わず、大きいシワ及び樹脂の回り込みが発生するおそれがある。一方、上記LB/LXが70%を超えると、切込みが深すぎるため、ラベル10を金型キャビティに装填した時にラベル10が破れるおそれがある。上記LB/LXの好ましい下限は3%であり、好ましい上限は50%であり、より好ましい下限は5%であり、より好ましい上限は40%であり、更に好ましい上限は35%であり、特に好ましい上限は30%である。
【0028】
第一の切込みAと第二の切込みBとの間隔は、2mm以上、35mm以下であることが好ましい。上記間隔が2mm未満となると、隣り合う切込みの最奥位置が近くなり、切込み最奥位置でのY方向の剛性が低下し、切込みの最奥位置で小さいシワが発生するおそれがある。一方で、上記間隔が35mmを超えると、帯状分割部1の端部の剛性が低下し、帯状分割部1の端部がめくれ上がることに起因する大きいシワの発生及び樹脂の回り込みが発生するおそれがある。上記第一の切込みAと第二の切込みBとの間隔は、上記第一の切込みAと第二の切込みBにより形成される帯状分割部の幅に相当する。ラベル10が備える全ての上記第一の切込みAと第二の切込みBにより形成される帯状分割部の幅が2mm以上、35mm以下であることが好ましい。
【0029】
第一の切込みAと第二の切込みBとの配置パターンとしては、
図1に示したように、第二方向Yに沿って、第一の切込みAと第二の切込みBとが交互に配置される配置パターンが挙げられる。このように配置することで、帯状分割部1の数を増大しても、隣り合う切込みの最奥位置をずらすことで、切込み最奥位置でのY方向の剛性を維持し、小さいシワの発生を効果的に抑制することができる。第一の切込みAと第二の切込みBとは、交互に等間隔で配置されることが好ましい。
【0030】
他の配置パターンとしては、
図2、3のように、第二方向Yに沿って、第一の切込みA及び第二の切込みBの少なくとも一方が連続して配置される繰り返しパターンを含む配置パターンが挙げられる。上記繰り返しパターンは、インモールドラベルの第二方向Yに沿って、少なくとも1回含まれていればよく、全ての帯状分割部が上記繰り返しパターンにより構成されていなくてもよい。第一の切込みAの連続回数、及び、第二の切込みBの連続回数は、2回以上、5回以下であることが好ましい。第一の切込みAが連続して配置される場合の隣接する第一の切込みA間の間隔、及び、第二の切込みBが連続して配置される場合の隣接する第二の切込みB間の間隔は、上記第一の切込みAと第二の切込みBとの間隔と同じであってもよいし、異なってもよい。
【0031】
上記いずれの配置パターンにおいても、隣接する切り込み間の間隔は、2mm以上、35mm以下であることが好ましい。また、上記隣接する切り込み間の間隔は、等間隔であることが好ましい。更に、ラベル10が備える全ての帯状分割部1の幅が、2mm以上、35mm以下であることが好ましい。
【0032】
図2は、実施形態1の第二例に係るインモールドラベルを示した平面模式図である。
図2に示したように、第二例に係るインモールドラベル10B(以下、ラベル10Bともいう)は、第二方向Yに沿って、第一の切込みA及び第二の切込みBがそれぞれ二回ずつ連続して配置される繰り返しパターンP1を含む。
図3は、実施形態1の第三例に係るインモールドラベルを示した平面模式図である。
図3に示したように、第三例に係るインモールドラベル10C(以下、ラベル10Cともいう)は、第二方向Yに沿って、第一の切込みAが1回と第二の切込みBが二回連続して配置される繰り返しパターンP2を含む。
図2に示した繰り返しパターンP1、及び、
図3に示した繰り返しパターンP2を含む場合であっても、
図1に示した第一の切込みAと第二の切込みBとを交互に配置する場合と同様に、上記大小のシワの発生及び樹脂の回り込みを抑制することができる。小さいシワをより効果的に抑制する観点からは、第一の切込みAと第二の切込みBとを交互に配置することがより好ましい。
【0033】
本発明のインモールドラベルの全体形状は、成形品の形状によって、適宜、変更できるが、第一方向Xに延伸する二辺と、第二方向Yに延伸する二辺を有していればよい。上記第二方向Yに延伸する二辺のうちの一辺には、上記帯状分割部1が設けられる。上記インモールドラベルの全体形状としては、例えば、長方形、正方形等の四角形;曲線を有する帯状等が挙げられる。
図1~
図3に示したラベル10A~10Cの全体形状は長方形である。
【0034】
図4は、実施形態1の第四例に係るインモールドラベルを示した平面模式図である。
図4に示したように、第四例に係るインモールドラベル10D(以下、ラベル10Dともいう)の全体形状は曲線を有する帯状であってもよい。上記曲線を有する帯状の外縁形状は、交点を有さない一対の曲線と、上記一対の曲線同士を結ぶ線分から構成されていることが好ましい。上記一対の曲線は、互いに平行であることがより好ましい。ラベル10Dの全体形状が曲線を有する帯状である場合、上記曲線に沿った方向が第二方向Yであることが好ましい。
図4では、ラベル10Dの下端の曲線に沿った長さがL
Yである。
【0035】
上記インモールドラベルの構造は特に限定されず、インモールドラベルとして一般的に用いられるラベルを用いることができる。上記インモールドラベルは、例えば、基材層を有する。上記基材層は、特に限定されないが、紙、合成紙、樹脂フィルム 又は、これらの積層体が挙げられる。上記樹脂フィルムは、延伸フィルム又は無延伸フィルムであってもよい。また、印刷適性を向上させるために、コロナ放電等の表面処理を施したものであってもよい。上記樹脂フィルムとしては、ナイロン6(PA6)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、又は、ポリプロピレン(PP)等を含有するものを用いることができる。また、上記基材層は、PETフィルムにアルミニウム、アルミナ等を蒸着した蒸着PETフィルムでもよい。上記合成紙には、樹脂と繊維と混合したもの、樹脂を繊維状に形成して紙のような風合いとなるように加工したもの等が挙げられる。上記合成紙としては、例えば、PP紙(例えば、ユポコーポレーション社製、ユポ紙)が挙げられる。上記基材層の厚さは、例えば、30μm~200μmである。
【0036】
上記インモールドラベルは、上記基材層のみから構成されてもよいし、基材層と印刷層との積層体であってもよい。上記印刷層は、印刷可能なものであれば特に限定されず、上記樹脂フィルムと同様のものを用いることができる。また、上記インモールドラベルは、接着層を有してもよい。上記接着層は、上記基材層の全面に形成されていてもよいし、一部に形成されていてもよい。上記接着層としては、樹脂基材と接着するものであれば特に限定されない。
【0037】
上記インモールドラベルの製法は特に限定されず、例えば、基材層を形成した後、上記印刷層、接着層等を積層し、その後、所望の形状に切り出す方法が挙げられる。上記積層方法は、特に限定されず、例えば、ドライラミネーション法、押出ラミネーション法、押出コーティング法その他のコーティング法等を用いることができる。第一の切込みA及び第二の切込みBは、インモールドラベルの切り出しと同時に形成されてもよいし、インモールドラベルを切り出した後に形成されてもよい。インモールドラベルの切り出し、並びに、第一の切込みA及び第二の切込みBの形成方法は、特に限定されず、打抜き刃、レーザーカット等により形成することができる。
【0038】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係るインモールドラベルの一例を示した平面模式図である。
図5に示したように、実施形態2に係るインモールドラベル10E(以下、ラベル10Eともいう)では、第一の切込みA及び第二の切込みBの形状が、端部(下端)側が広がったV字状である。第一の切込みA及び第二の切込みBの形状をV字状とすることで、曲面部を有する樹脂基材に対してインモールド成形した場合に、上記曲面部において、帯状分割部1同士の重なりを低減又は無くすことができる。
【0039】
上記V字状は線対称に形成されていることが好ましい。実施形態2において、帯状分割部1の端部同士を結んだ直線又は曲線をラベル10Eの下端とすると、上記LAは、上記ラベル10Eの下端から第一の切込みAの終点までの距離であり、上記第二の切込みBの長さLBは、上記ラベル10Eの下端から第一の切込みBの終点までの距離である。上記LYは、上記ラベル10Eの下端における第二方向Yに沿った直線又は曲線の長さである。
【0040】
ラベル10Eにおいて、帯状分割部1の端部は、ラベル10Eの第二方向Yに沿った直線又は曲線で構成されることが好ましい。例えば、
図5では、ラベル10Eの下端が曲線であるため、帯状分割部1の端部もラベル10Eの下端の曲線に沿った曲線で構成されている。
【0041】
<インモールド成形品>
本発明のインモールド成形品は、樹脂基材と、上記樹脂基材の外表面に貼り付けられた本発明のインモールドラベルとを備え、上記樹脂基材は、曲面部を有し、上記曲面部の少なくとも一部と上記インモールドラベルの上記帯状分割部とが重畳する。本発明のインモールド成形品は、本発明のインモールドラベルを作製した後に、得られたインモールドラベルと樹脂基材とを一体化させることにより得られる。本発明のインモールドラベルは、上述の第一の切込みAと、第二の切込みBと、これらにより形成された帯状分割部1を備えるため、上記曲面部にもインモールドラベルを沿わせることができる。更に、本発明のインモールドラベルは、長さの異なる第一の切込みAと第二の切込みBとを有することから、上記大小のシワ及び樹脂の回り込みを抑制しつつ、上記樹脂基材の曲面部にも加飾等を行うことができる。本発明のインモールド成形品は、インモールド成形により、樹脂基材とインモールドラベルとが一体化されているため、インモールドラベル同士がわずかに重なっていても、成形品の外表面に突出しない。そのため、本発明のインモールド成形品は、外表面が滑らかであり美観に優れる。
【0042】
上記インモールド成形品としては、例えば、家電、自動車、又は、これの部品;文房具;食器等の食品用容器;バケツ、洗剤容器、歯ブラシ等の日用品等が挙げられる。なかでも、本発明のインモールド成形品は、食品用容器、特に曲面を有する食品用容器として好適に用いることができる。
【0043】
上記樹脂基材は、底面と側面とを有し、上記底面の上方側が開口した容器であることが好ましい。
図6は、本発明のインモールド成形品の一例を示した模式図であり、底面から観察した斜視図である。
図7は、
図6に示したインモールド成形品のV-V´での断面模式図である。
図7は、
図6の上下を反転させた断面模式図である。
図8は、
図6に示したインモールド成形品の平面模式図である。
図6及び
図7に示したように、本発明のインモールド成形品100は、樹脂基材20の外表面にインモールドラベル10が一体化されており、樹脂基材20の曲面部の少なくとも一部とインモールドラベルの帯状分割部とが重畳している。インモールドラベル10(以下、ラベル10ともいう)としては、樹脂基材の形状に合わせて、上述のラベル10A、10B、10C、10D及び10Eのいずれを用いてもよい。
【0044】
図7に示したように、曲面部20bは、底面部20aと側面部20cとの間に配置される。曲面部20bの曲率半径R(
図7参照)は、10mm以上、50mm以下であることが好ましい。また、上記底面部と上記側面部との成す角θ(
図7参照)は、90°以上、150°以下であることが好ましい。側面部20c及び底面部20aのそれぞれに直線部分があることが好ましく、上記θは、側面部20cに沿った直線と底面部20aに沿った直線とのなす角である。
【0045】
底面部20aと平行な面における断面形状としては、円、楕円、多角形、複数の円弧が結合した形状(瓢箪形、三つ葉形、四つ葉形等)、円弧と直線とが結合した形状(涙型、ハート型等)等が挙げられる。
図6~
図8では、底面部20aと平行な面における断面形状が円である場合を例示した。上記楕円は、短軸の長さを長軸の長さで除した楕円率が0.1以上、1未満であってもよい。上記楕円率のより好ましい下限は、0.3以上である。上記多角形は、各角は丸みを帯びてもよい。
【0046】
容器の全体形状は、特に限定されないが、例えば、円柱、角錐、円錐台、角錐台等が挙げられる。上記円錐台及び角錐台は、容器の上方に向かって開口していることが好ましい。上記円柱、角錐、円錐台、角錐台等は、底面と側面との間に曲面部を有するものである。底面部20aの垂線を含む面における断面形状としては、略台形、略長方形、略正方形等が挙げられる。
【0047】
側面部20cの上端の内径(開口部の直径)φは、例えば、80mm~180mmである。インモールド成形品100の高さHは、例えば、35mm~125mmである。上記高さHとは、
図7に示したように、底面部20aから側面部20cの上端に向かう垂線と、開口を挟んで対向する側面部20c同士を結んだ直線との交点との距離である。
【0048】
インモールド成形品100は、一つの樹脂基材20に対して一枚のラベル10が貼り付けられたものであってもよいし、一つの樹脂基材20に対して複数のラベル10が貼り付けられたものであってもよい。例えば、上記底面部20aと平行な面における断面形状が、上記複数の円弧が結合した形状、上記円弧と直線とが結合した形状等の複雑な形状である場合、一つの樹脂基材20に対して複数のラベル10を用いることが好ましい。なお、一つの樹脂基材20に対して複数のラベル10を用いる場合、上記帯状分割部1の数及び第二方向Yの長さLYは、それぞれ、一枚のラベル10の帯状分割部1の数及びLYを指す。
【0049】
上記樹脂基材は、インモールド成形できる樹脂を含む樹脂組成物により形成されたものである。上記樹脂組成物は特に限定されないが、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ乳酸(PLA)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジぺート(PBSA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等が好ましい。
【0050】
上記熱可塑性樹脂は、更に、酸変性ポリオレフィン等を含有してもよい。上記酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。
【0051】
上記樹脂基材は、上記熱可塑性樹脂の他に、タルク、マイカ、モンモリロナイト等の層状ケイ酸塩;炭酸カルシウム、グラスファイバー、セルロース繊維等のフィラーを含有してもよい。
【0052】
<インモールド成形品の製造方法>
本発明のインモールド成形品の製造方法は、凹型と凸型のいずれか一方に樹脂注入口を有する金型を用い、上記凹型の内側に、上記帯状分割部が上記樹脂注入口側となるように本発明のインモールドラベルを配置するラベル配置工程と、上記凹型と上記凸型との間に形成されたキャビティに、上記樹脂注入口から樹脂組成物を充填する充填工程とを含む。
【0053】
上記金型は、凹型と凸型から構成され、上記凹型と上記凸型のいずれか一方に樹脂注入口を有するものであれば、特に限定されない。
図9は、本発明のインモールド成形品の製造に用いる金型30の一例を示した断面模式図である。
図9では、凹型32が樹脂注入口35を有する場合を例示する。金型30は、凹型32と凸型31から構成され、凹型32と凸型31との間にはキャビティ33が形成される。凹型32と凸型31は、成形品の曲面部に対応する曲面部を有する。樹脂組成物は、ランナ34を通って注入され、樹脂注入口35から、キャビティ33に充填される。上記金型30の隙間距離Wは、特に限定されないが、3mm以下であることが好ましい。
【0054】
図10を用いて、上記ラベル配置工程を説明する。
図10は、
図9の金型に本発明のインモールドラベルを配置した状態を模式的に示した一部切り欠き斜視図である。
図10に示したように、上記ラベル配置工程は、凹型32の内側に、ラベル10の帯状分割部が樹脂注入口35側となるように配置する。ラベル10は、上記帯状分割部が凹型32の曲面部と少なくとも一部と重畳するように配置される。ラベル10は、隣り合う帯状分割部の一部が重なるように配置することが好ましい。このように配置することで、凹型32の曲面部に沿ってラベル10を配置することができる。上記帯状分割部は、樹脂注入口35と重畳しないことが好ましい。ラベル10が接着層を有する場合、上記接着層が凹型32と反対側になるように、凹型32の内側にラベル10を配置する。
【0055】
凹型32の内側にラベル10を配置する方法は特に限定されず、静電気により凹型32の内側に固定する方法を用いてもよい。静電気により固定する場合、まず、凸部形状を有する疑似コアの表面にラベル10をセットし、帯電機によりラベルを帯電させ、その後、上記疑似コアを凹型32の内側に挿入することで、静電気によりラベル10が凹型32の内側に固定される。静電気により固定する場合、ラベル10は静電気が発生しやすい材質であることが好ましい。
【0056】
上記充填工程は、例えば、射出成形により行われる。上記射出成形としては、樹脂組成物を射出成形機により金型のキャビティに充填する一般的な射出成形を用いることができる。また、射出成形機と超臨界流体発生装置とを組み合わせ、超臨界流体と樹脂組成物とを含む溶融樹脂を金型のキャビティに充填する超臨界射出成形を用いることもできる。上記超臨界流体としては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、及び、ヘリウム等の不活性ガスの超臨界流体が挙げられる。なかでも、二酸化炭素、又は、窒素の超臨界流体が好ましい。上記樹脂組成物としては、上記樹脂基材の説明で例示した、インモールド成形できる樹脂を含む樹脂組成物と同様のものを用いることができる。
【0057】
上記充填工程の後に、更に、上記キャビティに充填された上記溶融樹脂が固化し終わる前に、上記金型の一部を移動させて上記キャビティの容積を拡大させる工程(以下、「コアバック」ともいう)を含んでもよい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
<インモールドラベル>
(実施例1)
基材層として厚さ0.1mmのポリプロピレン(PP)フィルム、印刷層及び接着層の順で積層したフィルムを用い、
図4に示したインモールドラベルを作成した。実施例1では、直線状の第一の切込みAと直線状の第二の切込みBとを等間隔に交互に配置し、帯状分割部を48個設けた。第一の切込みAの長さL
Aは10mm、第二の切込みBの長さL
Bは5mm、第一方向Xの長さL
Xは75mmとした。
【0060】
(実施例2~17及び比較例1~7)
実施例1と同様のPPフィルムを用いて、実施例2~17及び比較例1~7に係るインモールドラベルを作成した。実施例2~17及び比較例1~7では、第一の切込みA及び第二の切込みBの形状、長さ、配置、又は、帯状分割部の数を下記表1に示したように変更したこと以外は、実施例1と同様である。なお、比較例1では、切込みを設けなかった。比較例2~4では、切込みの長さを一定とした。表1中、Aは第一の切込みを表し、Bは第二の切込みを表し、LAは第一の切込みAの長さを表し、LBは第二の切込みBの長さを表し、LXは第一方向Xの長さを表す。
【0061】
【0062】
<インモールド成形品>
まず、以下の方法でインモールド成形品の樹脂基材を構成する樹脂組成物を調製した。ポリプロピレン(PP)40重量%、ポリ乳酸(PLA)25重量%、無水マレイン酸変性ポリプロピレン10重量%及びタルク25重量%をドライブレンドし、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX30」)を使って温度設定200℃で混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。
【0063】
図9に示した金型を用い、
図10に示したように、凹型の内側に各インモールドラベルの帯状分割部が樹脂注入口側となるように配置した。各インモールドラベルは静電気により凹型の内側に固定した。その後、射出成形機(日精樹脂工業株式会製)を用いて、上記で得られたペレット状の樹脂組成物をシリンダ内で溶融させつつ、以下の成形条件で射出成形し、上記実施例及び比較例に係るインモールドラベルを備えたインモールド成形品を作成した。
(成形条件)
シリンダ温度:210℃
金型温度:45℃
射出速度:50mm/秒
スクリュ背圧:15MPa
キャビティ厚み:1.5mm
【0064】
得られたインモールド成形品は、いずれも
図6~
図8に示したような丼型形状であった。上記インモールド成形品100(以下、成形品100ともいう)は、底面部20aと側面部20cとの間に配置された曲面部20bとで構成されるものであった。成形品100は、開口部の直径φが125mm、高さHが70mm、曲率半径Rが30mm、側面部20cに沿った直線と底面部20aに沿った直線とのなす角θが110°であった。
【0065】
<評価>
上記実施例及び比較例に係るインモールドラベルを用いて、それぞれ、1000個ずつインモールド成形品を作成した。得られたインモールド成形品について、以下の方法により、(1)大きいシワの発生、(2)小さいシワの発生、及び、(3)樹脂の回り込みを評価した。結果を下記表2に示した。
【0066】
(1)大きいシワの発生
インモールド成形品の表面を目視にて観察し、インモールドラベルの帯状分割部がめくれ上がったような大きいシワが発生していないかを確認した。1000個のインモールド成形品中、上記大きいシワが発生した成形品が0個である場合を◎(合格)、1個である場合を○(合格)、2個又は3個である場合を△(合格)、4個以上である場合を×(不合格)とした。
【0067】
(2)小さいシワの発生
インモールド成形品の表面を目視にて観察し、インモールドラベルの切込みの最奥位置にラベルが引きつったような小さいシワが発生していないかを確認した。1000個のインモールド成形品中、上記小さいシワが発生した成形品が0個である場合を◎(合格)、1個である場合を○(合格)、2個又は3個である場合を△(合格)、4個以上である場合を×(不合格)とした。
【0068】
(3)樹脂の回り込み
インモールド成形品の表面を目視にて観察し、インモールドラベルの表面に樹脂が重なっているかを確認した。1000個のインモールド成形品中、樹脂の回り込みが発生した成形品が0個である場合を◎(合格)、1個である場合を○(合格)、2個又は3個である場合を△(合格)、4個以上である場合を×(不合格)とした。
【0069】
【0070】
実施例1~17に係るインモールドラベルを備えたインモールド成形品はいずれも、大きいシワの発生、小さいシワの発生及び樹脂の回り込みの評価結果が合格であった。一方、切込みを入れなかった比較例1は、全ての評価結果が不合格であった。切込みの長さを一定とした比較例2~4では、特に小さいシワの発生を抑制する効果が不充分であった。帯状分割部の数が10未満とした比較例7では、大きいシワの発生及び樹脂の回り込みが見られた。
【符号の説明】
【0071】
1 帯状分割部
10、10A、10B、10C、10D、10E インモールドラベル
20 樹脂基材
20a 底面部
20b 曲面部
20c 側面部
30 金型
31 凸型
32 凹型
33 キャビティ
34 ランナ
35 樹脂注入口
100 インモールド成形品
200 従来のインモールドラベル
201 切り込み
202 帯状分割部
203 大きいシワ
204 小さいシワ