(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】機械式駐車場
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
E04H6/18 601F
E04H6/18 601A
(21)【出願番号】P 2017202595
(22)【出願日】2017-10-19
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】大場 浩一
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-276184(JP,A)
【文献】特開2014-080735(JP,A)
【文献】特開2015-161080(JP,A)
【文献】特開平02-115475(JP,A)
【文献】国際公開第94/012748(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降室に進入した車両を移送して格納する機械式駐車場であって、
前記乗降室内に投光された光の反射光に応じて物体の存在を検出する第1検出器と、
前記乗降室内から放射された熱放射の電磁波に応じて物体の存在を検出する第2検出器と、
前記第1検出器によって物体の存在が検出された場合、本機械式駐車場の動作を制限する制御部と、
を備え、
前記第1検出器は、前記乗降室の壁面際から内側に向かう方向を検出方向とし、
前記第2検出器は、前記乗降室の天井から下方に向かう方向を検出方向とし、前記乗降室のパレット配置部を囲む領域を検出領域とし、
前記制御部は、
入庫時には、前記乗降室内のパレット配置部及びその上方の空間において、前記第1検出器によって物体の存在が検出された場合、本機械式駐車場の動作を制限せず、
出庫時には、前記乗降室内の前記パレット配置部及びその上方の空間において、前記第1検出器によって物体の存在が検出された場合、本機械式駐車場の動作を制限するように制御することを特徴とする機械式駐車場。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2検出器によって物体の存在が検出された場合、本機械式駐車場の動作を制限することを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車場。
【請求項3】
前記乗降室は平面視において略矩形状であり、
前記第1検出器は、前記乗降室を平面視した場合に、前記乗降室の対角線上に離れて配置される一対の検出器を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の機械式駐車場。
【請求項4】
前記乗降室の壁面の近傍に開閉動作可能な扉を更に有し、
前記制御部は、前記第1検出器によって物体の存在が検出された場合、前記扉の閉動作を禁止することにより、本機械式駐車場の動作を制限することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の機械式駐車場。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1検出器によって物体の存在が検出された場合、本機械式駐車場の動作を制限するとともに、異常状態を外部に報知することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の機械式駐車場。
【請求項6】
前記第1検出器は、水平方向に投光された光の反射光に応じて物体の存在を検出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の機械式駐車場。
【請求項7】
前記第1検出器は、平面視の位置と高さとが異なる複数の検出器を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の機械式駐車場。
【請求項8】
前記第1検出器は、水平面に平行な面において2次元で物体の存在を検出可能であることを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の機械式駐車場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車場に関する。
【背景技術】
【0002】
少ないスペースで多数の車両を効率的に駐車できる駐車場として、機械式駐車場が知られている。機械式駐車場も種々の構造が提供されているが、その1つとしてパレット上に車両を載置し、このパレットを前後或いは左右にレールや溝を利用して移動させることにより、空いているパレットスペースへ運ぶ構成としたパレット式の機械式駐車場が提供されている。また、このパレット式の機械式駐車場にリフト及び立体的な駐車層を組み合わせることにより、より駐車効率を高めた機械式駐車場も提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両を入出庫階に呼び出されたパレット上に搭載して昇降操作させることにより格納するエレベータ式駐車装置が記載されている。特許文献1に記載の駐車装置では、入出庫階における昇降路の両側に乗降デッキが備えられており、当該乗降デッキ領域にはパッシブ赤外線センサが複数配置されている。パッシブ赤外線センサは乗降デッキ領域における人や動物を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は機械式駐車場について以下のような認識を得た。乗降室に進入した車両をパレットに載せて移送するパレット式の機械式駐車場では、安全性を向上するために駐車場の各種操作の際に乗降室内の人の有無を検出することが望ましい。
【0006】
例えば、乗降室内の人の有無を検出するために、乗降室内に赤外線センサを設けることが考えられる。しかし、赤外線センサは、動いている状態の人の有無を検出する能力は高いが、実質的に静止している状態の人の有無を検出する能力は高いとはいえない。これらから、本発明者は、機械式駐車場には、乗降室内における人を検出する能力を向上して安全性を高める観点で改善すべき課題があることを認識した。このような検出能力の問題は、人に限られず、乗降室内に置き忘れた荷物や動物などの物体についても生じうる。以降の説明においては、簡単のため、人や荷物、動物等を総称して物体と記載する。
このような課題はパレット式の機械式駐車場に限られず他の種類の機械式駐車場についても生じうる。
【0007】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗降室内における物体を検出する能力を向上して安全性を高めることが可能な機械式駐車場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の機械式駐車場は、乗降室に進入した車両を移送して格納する機械式駐車場であって、乗降室内に投光された光の反射光に応じて物体の存在を検出する第1検出器と、第1検出器によって物体の存在が検出された場合、本機械式駐車場の動作を制限するように制御する制御部と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乗降室内における物体を検出する能力を向上して安全性を高めることが可能な機械式駐車場を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る機械式駐車場の正面図である。
【
図2】
図1の機械式駐車場の乗降室を示す斜視図である。
【
図3】
図1の機械式駐車場の乗降室の周囲を示す平面図である。
【
図4】
図1の機械式駐車場の第1検出器の動作の一例を説明する側面視の説明図である。
【
図5】
図1の機械式駐車場の第1検出器の動作の一例を説明する平面視の説明図である。
【
図6】
図1の機械式駐車場の判定領域の一例を示す平面図である。
【
図7】
図1の機械式駐車場の判定領域の別の一例を示す平面図である。
【
図8】
図1の機械式駐車場の構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図1の機械式駐車場の入庫動作の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図1の機械式駐車場の出庫動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者は機械式駐車場について、安全性を高める観点で研究し、以下のような知見を得た。
乗降室に進入した車両を移送する移送機構を備える機械式駐車場は、安全な動作を確保するために、乗降室内における人の有無を検出することが望ましい。乗降室内の人の有無を検出するために、乗降室内に赤外線センサを設けることが考えられる。一例として、乗降室内の壁の高さ2m程度の位置に、検出面を斜め下向きにして赤外線センサを設置する構成について検討した。この構成では、動いている状態の人の有無は検出可能であるが、実質的に静止している状態の人の有無は検出できない場合があることが判明した。
【0013】
また、この構成では、しゃがみこんだ子ども、床に伏せている人、床に倒れている人など、低い位置にいる人を検出することができない場合があった。このことから、本発明者は、この構成は人の検出能力が高いとはいえないとの知見を得た。また、この構成では、乗降室全体をカバーするためには設置するセンサの数が多くなることも判明した。上述のように、このような検出能力の問題は、人に限られず、物体全般において生じうる。
【0014】
そこで、本発明者は、投光した光の反射光に応じて物体を検出することにより、静止状態の物体を検出できることを見出した。この構成では、低い位置にいる物体を検出するように設定することも可能である。このように物体を検出した検出結果に基づき、その検出結果が通常状態と異なる異常状態である場合には機械式駐車場の動作を制限することにより、駐車場の安全性が一層高まることが期待できる。
実施形態はこのような知見と思索に基づいて案出されたもので、以下にその具体的な構成を説明する。
【0015】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0016】
[実施の形態]
図1は、実施の形態に係る機械式駐車場100の正面図である。実施の形態に係る機械式駐車場100は、乗降室12に進入した自動車などの車両20を格納棚14へ格納する。以下、XYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な左右方向に対応し、Z軸方向は水平な前後方向に対応し、Y軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向およびZ軸方向はそれぞれX軸方向に直交する。
【0017】
まず、機械式駐車場100の全体構成を説明する。機械式駐車場100は、地上に設けられた建物24の地下に地下3階まで設けられた、いわゆる地下式の機械式駐車場である。機械式駐車場100は、乗降室12と、パレット36と、格納棚14と、を備える。格納棚14は建物24の地下1階~3階それぞれに設けられる駐車室である。
【0018】
機械式駐車場100は、パレットを用いたパレット式の駐車場である。機械式駐車場100は、移送機構37により、車両20が搭載された状態のパレット36を乗降室12と格納棚14との間で移送する。機械式駐車場100は、後述する昇降装置を用いてこのパレット36を昇降させる。機械式駐車場100は、後述する移載装置を使用してパレットを面方向に移動させたりする。これらの動作により、機械式駐車場100は格納棚14に車両20を駐車させるように構成される。なお、パレットを用いることは必須ではない。
【0019】
(乗降室)
図2は乗降室12を示す斜視図である。
図3は乗降室12の周囲を示す平面図である。
図2では車両20の記載を省略している。乗降室12は、機械式駐車場100へ車両20を入庫・出庫するために建物24内に設けられている。機械式駐車場100は、入庫の際、乗降室12に入場した車両20をその状態で格納棚14に移送して格納する。機械式駐車場100は、出庫の際、車両20を乗降室12に移送して退出させる。乗降室12は、建物24内において、例えば昇降路96の上端に設けられる。
【0020】
乗降室12は、床面12gと、天井12cと、壁部12wと、出入口16と、扉18と、パレット配置部52と、を備える。乗降室12は、床面12gと天井12cの間において4方の壁部12wによって画定された略直方体空間を囲む部屋である。乗降室12の一方の壁部12wに、車両20が出入りするための出入口16が設けられている。出入口16には上下方向に開閉可能な扉18が設けられている。
【0021】
扉18は、待機時には閉じられており、車両20が入場するときに開かれる。扉18は、車両20を格納するときには閉じられる。扉18は、車両20が退出するときには開かれ、車両20が退出した後は閉じられる。扉18の開閉動作は、後述する制御部32によって制御される。
【0022】
乗降室12の床面12gには、乗降室12と昇降路とを連通するパレット出庫口26が設けられている。このパレット出庫口26の大きさは、パレット36がパレット出庫口26の周面と干渉することなく通過できるように、平面視でのそのパレットの大きさに十分な量のマージンを加えた大きさとされる。実施の形態のパレット出庫口26は、例えば略矩形状を有する。
【0023】
(パレット配置部)
パレット配置部52は、乗降室12内において移送される車両20を載置するパレット36が配置される領域である。本例では、パレット配置部52は、パレット36の外縁に沿った矩形状の領域としている。移送される車両20は、パレット配置部52に配置されるパレット36上で待機する。
【0024】
次に、機械式駐車場100の乗降室12の周辺の構成について説明する。
図3に示すように、機械式駐車場100は、第1検出器44と、第2検出器48と、操作盤28と、制御装置30と、を主に含む。制御装置30は判定部40および制御部32を含む。操作盤28は乗降室12の外側に設けられる。制御装置30は乗降室12の内側に設けられる。制御装置30は乗降室12の内側に限られず他の場所に設けられてもよい。判定部40は、乗降室12内が異常であるか否かの異常判定を行う。制御部32は、機械式駐車場100の動作を制御する。特に、制御部32は、主に出入口16の扉18の開閉動作や、後述する移送機構の動作などを制御する。判定部40および制御部32については後述する。
【0025】
(第1検出器)
図4、
図5も参照して、第1検出器44について説明する。
図4は、第1検出器44の動作の一例を説明する側面視の説明図である。
図5は、第1検出器44の動作の一例を説明する平面視の説明図である。これらの図では、理解を容易にするため、各部の寸法は実際と異なる比率で示している。第1検出器44は、乗降室12内に出力光44eを投光して、物体44jからの反射光44fを検出する。反射物体としては、人、動物、荷物、車両、壁、駐車場の装置など出力光44eを受けて反射光44fを放出するものが含まれる。ここでは、物体44jが人である例について説明する。
【0026】
第1検出器44は、出力光44eを投光する投光部(不図示)と、反射光44fを受光する受光部(不図示)と、含んでいる。投光部と受光部は、離れて配置されてもよいが、本例では一体に配置されている。第1検出器44は、公知の原理に基づいて物体44jまでの距離Ldを特定する。本例では、第1検出器44は、出力光44eを所定の周波数のパルスとして出力し、このパルスの出力タイミングと受光した反射光44fのタイミングとの時間差および周波数に基づいて物体44jまでの距離Ldを特定している。
【0027】
第1検出器44は、ひとつまたは複数の検出器を含んでもよい。一例として、第1検出器44は、平面視において、パレット配置部52を挟むように配置された一対の検出器を含んでもよい。
図3の例では、乗降室12は平面視において略矩形状であり、第1検出器44は、乗降室12を平面視した場合に、乗降室12の対角線上に離れて配置される一対の検出器44b、44cを含んでいる。一対の検出器44b、44cを総括するときは各検出器という。
【0028】
第1検出器44は、乗降室12の床面12gから所定の高さにおいて出力光44eを投光するように配置されている。
図4の例では、検出器44bは床面12gからの高さH1に出力光44e(A)を投光するように配置されている。検出器44cは床面12gからの高さH2に出力光44e(B)を投光するように配置されている。出力光44eの高さは、所望の条件に応じて設定することができる。例えば、立っている人およびしゃがみこんでいる子どもなど低い位置にいる人を検出可能にするために、高さH1、H2は、5cm~20cmの範囲に設定されている。高さH1、H2は、好ましくは8~12cmの範囲に設定されてもよい。高さH1と高さH2とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。本例では、互いの出力光の影響を受けにくくするために、一対の検出器44b、44cの高さH1、H2に1cm~5cmの範囲で差を設けている。
【0029】
出力光44eとしては、所望の特性に応じていろいろな種類の光を採用することができる。本例では、出力光44eはレーザ光であり、第1検出器44はレーザセンサとして機能する。第1検出器44は、出力光44eの光路上において、第1検出器44に最も近い物体44jまでの距離Ldを取得することができる。出力光44eの光路の方向は一定であってもよいが、本例では、出力光44eは所定の方向に扇状にスキャンされる。この結果、第1検出器44は、扇状のスキャン面における物体44jまでの距離Ldを特定することができる。出力光44eのスキャン方向に制限はないが、本例では、出力光44eは水平方向にスキャンされる。したがって、第1検出器44は水平面に平行なスキャン面を形成する。出力光44eのスキャン面は水平面に対して傾斜していてもよい。
【0030】
各検出器は、互いに直交する一方の壁面と他方の壁面の出会った入隅部12h、12jの近傍に設けられる。出力光44eは、一方の壁面12wb、12wdに平行な角度から、他方の壁面12wa、12wcに平行な角度まで、略90°の検出領域44kをスキャンする。各検出器は、スキャンされた出力光44eにより、物体44jを検出したときの角度θdと、検出した距離Ldと、を特定することができる。角度θdは、任意の方向に対する角度であってもよい。
図5の例では、角度θdは、平面視における左右方向(X軸方向)に対する角度である。
【0031】
(第2検出器)
第2検出器48について説明する。
図4に示すように、第2検出器48は、乗降室12内の熱放射の発生源48bの動きを検出して物体の存在を検出する。熱放射の発生源48bとしては、人、動物、車両、床、移送機構などが考えられる。熱放射の発生源48bは、その温度に対応する波長の電磁波48eを放射する。ここでは、発生源48bが人であり、電磁波48eが赤外線である例について説明する。
【0032】
第2検出器48としては、公知の原理に基づく検出機構を採用することができる。本例では、第2検出器48は、焦電効果を利用した焦電素子(不図示)を含む赤外線センサとして機能する。第2検出器48は、発生源48bの温度に応じた波長の電磁波48eの画像をレンズを介して焦電素子に結像させることにより、検出範囲内の温度分布を検出することができる。
【0033】
第2検出器48は、ひとつまたは複数のセンサを含んでもよい。
図3、4の例では、第2検出器48はひとつのセンサを含んでいる。第2検出器48は、乗降室12の天井12cに入力面を鉛直方向で略下向に設けられている。第2検出器48は、平面視において、パレット配置部52の中心近傍に設けられてもよい。第2検出器48は、平面視にて、パレット配置部52を含む領域(以下、検出領域48mという)での発生源48bである人の存在を検出する。
【0034】
(判定部)
判定部40は、第1検出器44の検出結果および第2検出器48の検出結果に応じて異常判定を行う。判定部40は、第1判定部41と、第2判定部42と、を含んでいる。判定部40の第1判定部41は、第1検出器44の検出結果に応じて、乗降室12の内部が異常であるか否かの異常判定を行う。第1判定部41は、それぞれ検出器44b、44cに対応する判定部41b、41cを含んでいる。第2判定部42は、第2検出器48の検出結果に応じて乗降室12の内部が異常であるか否かの異常判定を行う。
【0035】
(第1判定部)
第1判定部41について説明する。第1判定部41は、入庫時において、乗降室12内のパレット配置部52及びその上方の空間を除く領域において、第1検出器44が物体の存在を検出した場合に異常と判定する。
図6は、入庫時における、第1検出器44の判定領域44pの一例を示す平面図である。判定領域44pは、検出領域44kのうち、異常判定の対象とする領域である。以下、平面視における判定領域44pについて説明する。
図6において、左上から右下に向かう線分が引かれた領域が検出器44bの判定領域44p1であり、右上から左下に向かう線分が引かれた領域が検出器44cの判定領域44p2である。そして、判定領域44pは、検出器44b、44cの判定領域44p1、44p2を合成した領域である。つまり、第1判定部41は、入庫時には乗降室12内のパレット配置部52を除く判定領域44pにおいて異常判定を行う。入庫時には、パレット配置部52には車両20が存在するから、パレット配置部52を含めて異常判定すると、車両20を検出して異常と判定する不都合が生じるからである。
【0036】
このため、
図5に示すように、第1判定部41は、検出時の出力光44eの角度に対応して判定領域44pを設定している。つまり、検出時の出力光44eの角度に対応して境界線44uを設定し、第1検出器44の位置を基準に境界線44uより近い側を判定領域44pとし、境界線44uより遠い側を非判定領域44sとしている。第1判定部41は、検出領域44kであっても、非判定領域44sにて物体を検出した場合は、異常判定の対象としないように構成されている。
図6の例では、判定領域44pは、検出領域44kからパレット配置部52を除いた領域である。
【0037】
(異常判定)
異常判定は、検出結果が所定の状態と異なる場合に、物体の存在を検出しており異常であると判定することを意味する。ここで所定の状態とは、乗降室12内において車両20や人が存在しないときにおける第1検出器44の検出結果に応じて設定される基準の状態である。車両20や人が存在しないときには、第1検出器44は、乗降室12の壁部12wや移送機構などの駐車場の設備を検出している。つまり、第1判定部41は、駐車場の設備を検出している状態を基準にして、この設備と異なる位置(この設備より近い位置)にて物体44jを検出した場合に異常と判定する。一例として、第1判定部41は、出力光44eのスキャンをしたときに第1検出器44の検出結果を記憶し、その記憶した検出結果を基準にしてもよい。第1判定部41は、その記憶後に新たに出力光44eをスキャンしたときの第1検出器44の検出結果が、記憶した検出結果と有意に異なる場合に異常と判定することができる。
【0038】
図7は、出庫時における、第1検出器44の判定領域44qの別の一例を示す平面図である。判定領域44qは、検出領域44kのうち、異常判定の対象とする領域である。以下、平面視における判定領域44qについて説明する。
図6において、左上から右下に向かう線分が引かれた領域が検出器44bの判定領域44q1であり、右上から左下に向かう線分が引かれた領域が検出器44cの判定領域44q2である。そして、判定領域44qは、検出器44b、44cの判定領域44q1、44q2を合成した領域である。第1判定部41は、出庫時において、乗降室12内のパレット配置部52を含む判定領域44qにおいて異常判定を行う。つまり、出庫時には、乗降室12内のパレット配置部52及びその上方の空間も含め、乗降室12内の全域において、第1検出器44が物体の存在を検出した場合に異常と判定する。出庫時には、乗降室12の内部には車両20が存在しないから、パレット配置部52を含めて異常判定しても不都合は生じないからである。むしろ、車両20が存在しない状態では、パレット配置部52に人が存在する可能性があるので、パレット配置部52を含めて異常判定することが望ましい。このように、第1判定部41は、入庫時と出庫時とにおいて、判定領域44pと判定領域44qとの間で判定領域を切り替え可能に構成されている。
【0039】
(第2判定部)
第2判定部42について説明する。第2判定部42は、第2検出器48が発生源48bの存在を検出したときに異常であると判定する。第2検出器48が赤外線センサである場合、第2判定部42は、背景温度が十分に低い状態であれば、検出した温度分布の中に高温の領域が存在するときに、人を検出したと異常判定することができる。しかし、壁面や床面の温度、車体の温度が高いときなど背景温度が高温である状態では、温度差だけで人の存在を検出することは難しい。そこで、本例では、第2判定部42は、発生源48bから放射される電磁波48eの変動に応じて発生源48bの存在を検出している。
【0040】
一例として、第2判定部42は、直前に第2検出器48が検出した温度分布との差分により異常判定を行うようにしてもよい。具体的には、第2判定部42は、直前に第2検出器48が検出した温度分布を記憶し、その記憶した温度分布を基準にして異常判定を行う。特に、第2判定部42は、所定のインターバルごとに、第2検出器48が検出した温度分布を記憶し、その記憶した温度分布を基準に異常判定している。第2判定部42は、その記憶後に第2検出器48が新たに検出した温度分布が、記憶した温度分布と有意に異なる場合に異常と判定している。このように差分を用いて判定することにより、第2検出器48は動いている人を検出することができる。
【0041】
図6に示すように、入庫時において、第1判定部41は、パレット配置部52については異常判定を行わない。このため、第2検出器48は、少なくともパレット配置部52を含む領域にて発生源48bの存在を検出することが望ましい。第2検出器48は、その検出領域48mが、平面視にてパレット配置部52を含むように設定されている。つまり、第2検出器48は、第1判定部41が異常判定を行わない領域について発生源48bの存在を検出するように構成されている。
【0042】
第1判定部41および第2判定部42は、その異常判定の結果を制御部32に出力する。制御部32はその判定結果に応じて機械式駐車場100の動作を制御する。制御部32は、第1判定部41および第2判定部42の少なくとも一方が異常と判定している状態では、機械式駐車場100の動作を制限する。一例として、制御部32は、入庫時に異常と判定している状態では、出入口16の扉18の閉動作および後述する移送機構37の動作を禁止または停止する。一例として、制御部32は、出庫時に異常と判定している状態では、出入口16の扉18の閉動作を禁止または停止する。
【0043】
(操作盤)
次に操作盤28について説明する。操作盤28は、駐車場の利用者または駐車場の管理者に対するユーザインタフェースとしての機能を有する。操作盤28は、扉18や移送機構37の動作開始などの操作の入力を受け付けて、操作結果を制御部32に出力するとともに駐車場の動作状態などを表示するタッチパネル(不図示)を備えてもよい。
【0044】
次に制御装置30について説明する。
図8は、機械式駐車場100の構成の一例を示すブロック図である。
図8は説明の上で重要ではない要素の一部を省略して表示している。
図8に示す制御装置30の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0045】
制御装置30は、制御部32、判定部40と、を含む。制御部32は、操作結果取得部32dと、扉制御部32gと、移送制御部32hと、を含む。操作結果取得部32dは、操作盤28からその操作結果を取得する。扉制御部32gは、出入口16を開閉するように扉18の開動作および閉動作を制御する。移送制御部32hは、乗降室12のパレット配置部52と格納棚14との間で車両20を移送するように移送機構37を制御する。
【0046】
次に、
図1を参照して、実施の形態の機械式駐車場100のその他の構成を説明する。機械式駐車場100において、移送機構37は、車両20を載せたパレット36を乗降室12と格納棚14との間で移送して格納または搬出する機構である。移送機構37は第1移載装置38と、第2移載装置39と、複数(例えば、2本または4本)のマスト90と、リフトフレーム88と、昇降装置94と、を含む。第2移載装置39は複数設けられる。1階~3階の格納棚14はそれぞれ複数(例えば、10)の駐車スペースを含む。それら複数の駐車スペースは、平面視した場合に移載方向(図のX軸方向)に5行、移載方向と実質的に直交する交差方向(図のZ軸方向)に2列のマトリクス状に配列される。駐車スペースはパレットと共に車両20が駐車されうる格納棚内の一つの駐車領域(駐車の1単位)である。1階~3階の格納棚14それぞれは、格納棚の床を画定するフレーム80を含む。それぞれのフレーム80には第2移載装置39が固定される。
【0047】
各マスト90は断面が略矩形の昇降路96の隅に設けられる支柱として機能する。リフトフレーム88は、平面視で略矩形状に形成され、複数のマスト90に昇降自在に支持される。リフトフレーム88の上部には第1移載装置38が搭載される。昇降装置94は昇降路96に沿ってリフトフレーム88を昇降させる。第1移載装置38の上部にはパレットが搭載される。第1移載装置38は、移載方向にパレットを移動可能に構成される。パレット36はいずれも平板状の部材である。パレット36の車両20が搭載される上面すなわち車両20の搭載面は略矩形である。パレット36は画一的な大きさを有する。
【0048】
(入庫動作)
次に、以上のように構成された機械式駐車場100の入庫動作の一例について説明する。
図9は、実施の形態に係る機械式駐車場100の入庫動作の一例を示すフローチャートである。
図9は、運転者または係員が操作盤28の入庫ボタン(不図示)を押下げてから、乗降室12に入場した車両20を格納棚14に移送するまでの処理S100を示している。
【0049】
処理が始まると、制御部32は、操作結果取得部32dを介して操作盤28の操作結果を取得し、入庫ボタンが押されたか否かを判定する(ステップS102)。入庫ボタンが押されていない場合(ステップS102のN)、制御部32は、処理をステップS102の先頭に戻し、ステップS102を繰り返す。
【0050】
入庫ボタンが押された場合(ステップS102のY)、制御部32は、乗降室12の出入口16の扉18を開く(開動作を行う)ように扉18を制御する(ステップS104)。扉18が開いたら、運転者は、車両20を乗降室12に入場させて、パレット配置部52のパレット36上に停車させる(ステップS106)。車両20を入場させたら、運転者らは乗降室12を退出する。運転者らが退出したら、運転者または係員は操作盤28から閉ボタン(不図示)を操作する。閉ボタンは、扉18を閉じて車両20を載せたパレット36を格納棚14に移送させる動作を起動するための操作ボタンである。閉ボタンを押下げることによりこの一連の動作が開始される。
【0051】
扉18が開いたら、制御部32は、操作結果取得部32dを介して操作盤28の操作結果を取得し、閉ボタンが押されたか否かを判定する(ステップS108)。閉ボタンが押されていない場合(ステップS108のN)、制御部32は、処理をステップS108の先頭に戻し、ステップS108を繰り返す。
【0052】
閉ボタンが押された場合(ステップS108のY)、第1判定部41は、第1検出器44から検出結果1を取得する(ステップS110)。検出結果1を取得したら、第1判定部41は、検出結果1が異常であるか否かを判定する(ステップS112)。つまり、第1判定部41は、第1検出器44が物体を検出したか否かを判定する。このステップにて、第1判定部41の判定部41b、41cは、第1検出器44の検出器44b、44cの検出結果について異常判定を行う。第1判定部41は、判定部41b、41cのいずれかが異常と判定した場合、検出結果1が異常であると判定する。一方で、判定部41b、41cの両方で異常と判定されなかった場合、第1判定部41は検出結果1が異常でないと判定する。第1判定部41は、入庫動作時において、乗降室12内のパレット配置部52を除く判定領域44pにおいて異常判定を行う(
図6を参照)。
【0053】
検出結果1が異常である場合(ステップS112のY)、制御部32は、機械式駐車場100の動作を制限する(ステップS118)。この例では、扉18の閉動作および、移送機構37の移送動作を禁止する。既に、これらの動作が起動していた場合は、その動作を停止させる。
【0054】
機械式駐車場100の動作を制限したら、制御部32は、運転者や係員、すなわち外部に異常状態を知らせるために警報を提示(報知)する(120)。警報は音、光、画像などを出力することにより提示されてもよい。警報を提示したら、制御部32は、処理をステップS108の先頭に戻し、ステップS108~S120の処理を繰り返す。この間、扉18や移送機構37は動作しない状態を継続する。
【0055】
検出結果1が異常でない場合(ステップS112のN)、第2判定部42は、第2検出器48から検出結果2を取得する(ステップS114)。検出結果2を取得したら、第2判定部42は、検出結果2が異常であるか否かを判定する(ステップS116)。つまり、第2判定部42は、第2検出器48が物体を検出したか否かを判定する。このステップにて、第2判定部42は、第2検出器48の検出結果について異常判定を行う。
【0056】
検出結果2が異常である場合(ステップS116のY)、制御部32は、処理をステップS118に移行する。ステップS118、S120およびステップS108に戻る処理は前述した通りである。つまり、ステップS118、S120は、検出結果1および検出結果2のいずれかが異常である場合に実行される。
【0057】
検出結果2が異常でない場合(ステップS116のN)、制御部32は、扉18を閉じて、車両20を移送するように、扉18および移送機構37を制御する(ステップS122、S124)。車両20を移送したら、制御部32は、処理S100を終了する。なお、処理S100はあくまでも一例であり、他のステップを追加したり、一部のステップを削除したり、ステップの順序を変更したりすることも可能である。
【0058】
(出庫動作)
次に、機械式駐車場100の出庫動作の一例について説明する。
図10は、実施の形態に係る機械式駐車場100の出庫動作の一例を示すフローチャートである。
図10は、運転者または係員が操作盤28の出庫ボタン(不図示)を押下げてから、車両20を格納棚14から乗降室12に移送させ、出入口16の扉18を開いて車両20を退出させ、扉18を閉じるまでの処理S140を示している。
【0059】
処理が始まると、制御部32は、操作結果取得部32dを介して操作盤28の操作結果を取得し、出庫ボタンが押されたか否かを判定する(ステップS142)。出庫ボタンが押されていない場合(ステップS142のN)、制御部32は、処理をステップS142の先頭に戻し、ステップS142を繰り返す。
【0060】
出庫ボタンが押された場合(ステップS142のY)、制御部32は、車両20を載せたパレット36を格納棚14からパレット配置部52に移送するように移送機構37を制御する(ステップS144)。車両20を移送したら、制御部32は、乗降室12の出入口16の扉18を開くように扉18を制御する(ステップS146)。
【0061】
扉18が開いたら、運転者は、車両20を乗降室12から退出させる(ステップS148)。車両20が退出したら、運転者または係員は操作盤28から閉ボタン(不図示)を操作する。この場合の閉ボタンは、扉18を閉じるための操作ボタンである。閉ボタンを押下げることにより扉18の閉動作が開始される。
【0062】
扉18が開いたら、制御部32は、操作結果取得部32dを介して操作盤28の操作結果を取得し、閉ボタンが押されたか否かを判定する(ステップS150)。閉ボタンが押されていない場合(ステップS150のN)、制御部32は、処理をステップS150の先頭に戻し、ステップS150を繰り返す。
【0063】
閉ボタンが押された場合(ステップS150のY)、第1判定部41は、第1検出器44から検出結果1を取得する(ステップS152)。検出結果1を取得したら、第1判定部41は、検出結果1が異常であるか否かを判定する(ステップS154)。つまり、第1判定部41は、第1検出器44が物体を検出したか否かを判定する。このステップにて、第1判定部41の判定部41b、41cは、第1検出器44の検出器44b、44cの検出結果について異常判定を行う。第1判定部41は、判定部41b、41cのいずれかが異常と判定した場合、第1判定部41として異常と判定する。一方で、判定部41b、41cの両方で異常と判定されなかった場合、第1判定部41は検出結果1が異常でないと判定する。第1判定部41は、出庫動作時において、乗降室12内のパレット配置部52を含む判定領域44qにおいて異常判定を行う(
図7を参照)。
【0064】
検出結果1が異常である場合(ステップS154のY)、制御部32は、機械式駐車場100の動作を制限する(ステップS160)。この例では、扉18の閉動作および、移送機構37の動作を禁止する。既にこれらの動作が起動していた場合は、その動作を停止させる。
【0065】
機械式駐車場100の動作を制限したら、制御部32は、運転者や係員に異常状態を知らせるために警報を提示する(S162)。警報は音、光、画像などを出力することにより提示されてもよい。警報を提示したら、制御部32は、処理をステップS150の先頭に戻し、ステップS150~S162の処理を繰り返す。この間、扉18や移送機構37は動作しない状態を継続する。
【0066】
検出結果1が異常でない場合(ステップS154のN)、第2判定部42は、第2検出器48から検出結果2を取得する(ステップS156)。検出結果2を取得したら、第2判定部42は、検出結果2が異常であるか否かを判定する(ステップS158)。つまり、第2判定部42は、第2検出器48が物体を検出したか否かを判定する。このステップにて、第2判定部42は、第2検出器48の検出結果について異常判定を行う。
【0067】
検出結果2が異常である場合(ステップS158のY)、制御部32は、処理をステップS160に移行する。ステップS160~S162およびステップS150に戻る処理は前述した通りである。つまり、ステップS160~S162は、検出結果1および検出結果2のいずれかが異常である場合に実行される。
【0068】
検出結果2が異常でない場合(ステップS158のN)、制御部32は、扉18を閉じる(閉動作を行う)ように、扉18を制御する(ステップS164)。扉18が閉じたら、制御部32は、処理S140を終了する。なお、処理S140はあくまでも一例であり、他のステップを追加したり、一部のステップを削除したり、ステップの順序を変更したりすることも可能である。
【0069】
次に、このように構成された実施の形態の機械式駐車場100の作用・効果を説明する。
【0070】
実施の形態の機械式駐車場100は、乗降室12に進入した車両20を移送して格納する機械式駐車場であって、乗降室12内に投光し、その反射光に応じて物体の存在を検出する第1検出器44と、第1検出器44の検出結果に応じて、乗降室12の内部が異常であるか否かの異常判定を行う判定部40と、機械式駐車場100の動作を制御する制御部32と、を備え、制御部32は、判定部40が異常と判定している場合には、機械式駐車場100の動作を制限する。この構成によれば、投光した光の反射光に応じて物体の存在を検出する第1検出器44を備えるので、乗降室12の内部における人を検出する能力を向上して安全性を高めることが可能になる。
【0071】
更に、実施の形態の機械式駐車場100は、乗降室12内の熱放射の発生源48bの動きを検出して物体の存在を検出する第2検出器48を備え、判定部40は、第1検出器44の検出結果に加えて、第2検出器48の検出結果に応じて異常判定を行う。この構成によれば、第1検出器44に加えて、検出原理の異なる第2検出器48を備えるので、乗降室12内における人を検出する能力を一層向上して安全性を高めることが可能になる。
【0072】
実施の形態の機械式駐車場100では、乗降室12内には、車両20を載置するパレット36が配置されるパレット配置部52が設けられ、第1判定部41は、乗降室12内のパレット配置部52及びその上方の空間を除く領域において、第1検出器44が物体の存在を検出した場合に異常と判定する。一方で、パレット配置部52及びその上方の空間においては、第1検出器44によって物体の存在が検出されたとしても、第1判定部41は異常でないと判定する。この構成によれば、パレット36上に車両20が配置された状態でも、車両20の存在に起因して異常と判定される可能性が減り、判定の信頼性を高めることが可能になる。
【0073】
実施の形態の機械式駐車場100では、第2判定部42は、乗降室12内の少なくともパレット配置部52を含む領域において、第2検出器48が物体の存在を検出した場合に異常と判定する。この構成によれば、パレット配置部52を含む領域において第2検出器48が物体の存在を検出するので、検出漏れを減らすことが可能になる。
【0074】
実施の形態の機械式駐車場100では、乗降室12は平面視において略矩形状であり、第1検出器44は、乗降室12を平面視した場合に、乗降室12の対角線上に離れて配置される一対の検出器を含む。この構成によれば、対角線上に離れて配置される一対の検出器により物体の存在を検出するので、一つの検出器により検出する場合に比べて、検出漏れを減らすことが可能になる。この構成では、パレット36上に車両20が配置された状態における第1検出器44の死角を減らすことができる。
【0075】
実施の形態の機械式駐車場100では、第1検出器44は、乗降室12の床面から所定の高さにおいて投光するように配置される。この構成によれば、しゃがみこんでいる子どもなど低い位置にいる人を検出できるように投光の高さを設定することができる。この構成では、乗降室12内における人を検出する能力を一層向上して安全性を高めることが可能になる。
【0076】
実施の形態の機械式駐車場100では、判定部40は、入庫時には、乗降室12内のパレット配置部52及びその上方の空間を除く領域において、第1検出器44が物体の存在を検出した場合に異常と判定し、出庫時には、乗降室12内のパレット配置部52及びその上方の空間を含む領域において、第1検出器44が物体の存在を検出した場合に異常と判定する。この構成によれば、入庫時と出庫時とで第1検出器44による検出範囲を切り替えることができる。この構成では、パレット36上に車両20が配置された状態での誤判定を減らし、車両20が存在しない状態での検出漏れを減らすことが可能になる。
【0077】
以上、本発明のいくつかの実施形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0078】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施の形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施の形態と重複する説明を適宜省略し、実施の形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0079】
(第1変形例)
実施の形態では、機械式駐車場がパレットを用いたパレット式の駐車場である例について説明したがこれに限られない。機械式駐車場は例えば、スラットコンベア式などパレットを用いない駐車場であってもよく、櫛歯のすれ違いによって車両をエレベータや格納棚に受け渡す方式であってもよい。
【0080】
(第2変形例)
実施の形態では、入庫時には、第1判定部41は、乗降室12内のパレット配置部52を除く判定領域44pにおいて異常判定を行う例について説明したがこれに限られない。第1判定部41は、パレット配置部52を含む判定領域44qにおいて異常判定を行うようにしてもよい。例えば、直前の状態との差分に基づき異常判定を行うことにより、誤判定を減らすことができる。
【0081】
(第3変形例)
実施の形態では、第2検出器48が乗降室12の天井12cにひとつ設けられる例について説明したがこれに限られない。第2検出器48は、複数の検出器を含んでもよく、天井12c以外の例えば壁部12wに設けられてもよい。
【0082】
(第4変形例)
実施の形態では、車両を入出庫する乗降室が共用される例について説明したがこれに限定されない。例えば、入庫用の乗降室と出庫用の乗降室とが別々に設けられてもよい。また、乗降室の入口と出口が出入口として共用される例について説明したがこれに限定されない。入口と出口とが別々に設けられてもよい。
【0083】
(第5変形例)
実施の形態では、第1検出器44と第2検出器48の両方が設けられた例について説明したがこれに限定されない。第1検出器44のみが設けられており、第2検出器が設けられていなくともよい。この場合には、判定部40には第1判定部41のみが設けられている。そして、第1検出器44によって物体が検出された場合には異常と判定し、制御部32によって機械式駐車場100の動作を制限する。一方、第1検出器44によって物体が検出されなかった場合には異常ではないと判定し、制御部32によって扉18を閉じ、車両20を移送するように制御する。
【0084】
(第6変形例)
実施の形態では、出力光44eを投光する投光部と反射光44fを受光する受光部を有する第1検出器44を用いた例について説明したがこれに限定されない。例えば第1検出器44には受光部のみが設けられていてもよい。この場合、ユーザが所持している投光機能を有する投光機器を投光部として用いることができる。このような場合であっても、第1検出器44の近傍においてユーザが投光機器を用いて投光すれば、実施の形態とおおよそ同様の効果を得ることができる。ただし、この場合には物体までの距離を得るためには、投光機器から投光される光の周波数を第1判定部41に入力する必要がある。
【0085】
(第7変形例)
実施の形態では、判定部40を備え、判定部40が第1検出器44、第2検出器48の検出結果に応じて乗降室12の内部が異常であるか否かを判定し、その判定結果に基づいて機械式駐車場100の動作を制限するか否かを決定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、判定部40を備えずに、乗降室12の内部が異常であるか否かを判定するステップを経ることなく、第1検出器44や第2検出器48の検出結果から直接的に機械式駐車場100の動作を制限するか否かを決定してもよい。
【0086】
上述の各変形例は実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0087】
本発明の一態様の概要は、次の通りである。本発明のある態様の機械式駐車場100は、乗降室12に進入した車両20を移送して格納する機械式駐車場であって、乗降室12内に投光された光の反射光に応じて物体44jの存在を検出する第1検出器44と、第1検出器44によって物体44jの存在が検出された場合、本機械式駐車場100の動作を制限するように制御する制御部32と、を備える。この態様によれば、光の反射光を利用して物体の存在を検出するので、乗降室12内に残っている人を検出する能力を向上させて、乗降室12内の安全性を向上させることができる。
【0088】
制御部32は、第1検出器44によって物体44jの存在が検出されない場合、本機械式駐車場100の動作を制限しないように制御してもよい。この場合、物体の存在が検出されなければ駐車場の動作は制限されないので、駐車場の円滑な動作を確保することができる。
【0089】
乗降室12内の熱放射の発生源48bから放射された電磁波に応じて物体44jの存在を検出する第2検出器48を備え、制御部32は、第2検出器48によって物体44jの存在が検出された場合、本機械式駐車場100の動作を制限するように制御してもよい。この場合、第1検出器44に加えて、異種の第2検出器48が設けられるので、乗降室12内に残っている人を検出する能力を向上させることができる。
【0090】
制御部32は、第1検出器44によって物体44jの存在が検出されず、且つ、第2検出器48によって物体44jの存在が検出されない場合、本機械式駐車場100の動作を制限しないように制御してもよい。この場合、物体の存在が検出されなければ、駐車場の動作は制限されないので、駐車場の円滑な動作を確保することができる。
【0091】
第2検出器48は、電磁波として赤外線を検出し、当該赤外線に基づいて物体44jの存在を検出してもよい。この場合、赤外線を利用するので、熱放射の原理に基づいて物体の存在を検出することができる。
【0092】
第2検出器48は、電磁波に応じて熱放射の発生源48bの動きを検出して物体44jの存在を検出してもよい。この場合、熱放射の原理に基づいて物体の動きを検出することができる。
【0093】
乗降室12内には、車両20を載置するパレット36が配置されるパレット配置部52が設けられ、制御部32は、乗降室12内のパレット配置部52において、第1検出器44によって物体44jの存在が検出された場合、本機械式駐車場100の動作を制限しないように制御してもよい。この場合、パレット配置部52に載置された車両20によって駐車場の動作が制限される可能性が低くなるので、駐車場の円滑な動作を確保することができる。
【0094】
制御部32は、乗降室12内のパレット配置部52の上方の空間において、第1検出器44によって物体44jの存在が検出された場合、本機械式駐車場100の動作を制限しないように制御してもよい。この場合、パレット配置部52及びその上方の空間の状態によって駐車場の動作が制限される可能性が低くなるので、駐車場の円滑な動作を確保することができる。
【0095】
制御部32は、乗降室12内のパレット配置部52及びその上方の空間を除く領域において、第1検出器44によって物体44jの存在が検出された場合、本機械式駐車場100の動作を制限するように制御してもよい。この場合、パレット配置部52及びその上方の空間を除く領域の状態に応じて駐車場の動作が制限されるので、乗降室12内の安全性を向上させることができる。
【0096】
制御部32は、入庫時には、乗降室12内のパレット配置部52及びその上方の空間において、第1検出器44によって物体44jの存在が検出された場合、本機械式駐車場100の動作を制限せず、出庫時には、乗降室12内のパレット配置部52及びその上方の空間において、第1検出器44によって物体44jの存在が検出された場合、本機械式駐車場100の動作を制限するように制御してもよい。この場合、入庫時にパレット配置部52及びその上方の空間の状態によって駐車場の動作が制限される可能性が低くなり、出庫時にパレット配置部52及びその上方の空間の状態に応じて、駐車場の動作が制限されるので、乗降室12内の安全性を向上させることができる。
【0097】
乗降室12内の熱放射の発生源48bから放射された電磁波に応じて物体44jの存在を検出する第2検出器48を備え、制御部32は、乗降室12内のパレット配置部52において、第2検出器48によって物体44jの存在が検出された場合、本機械式駐車場100の動作を制限するように制御してもよい。この場合、パレット配置部52上の発生源48bからの電磁波の状態に応じて駐車場の動作が制限されるので、検出漏れを減らすことができる。
【0098】
第1検出器44の検出結果に応じて乗降室12の内部が異常であるか否かを判定する判定部40を更に有し、制御部32は、判定部40の判定結果に応じて機械式駐車場の動作を制御してもよい。この場合、判定部40の判定結果に応じて駐車場の動作が制御されるので、より高度な判定条件に基づいて駐車場の動作を制御することができる。
【0099】
判定部40は、第1検出器44によって物体44jの存在が検出された場合、乗降室12の内部が異常であると判定し、制御部32は、乗降室12の内部が異常であると判定された場合、本機械式駐車場100の動作を制限するように制御してもよい。この場合、第1検出器44を利用するので物体の検出能力が高まり、判定部40の判定結果に応じて駐車場の動作が制御されるので、判断条件を高度化することが可能となり、駐車場の動作の信頼性を向上させることができる。
【0100】
第1検出器44は、乗降室12内に投光し、その反射光に応じて物体44jの存在を検出してもよい。この場合、第1検出器44によって投光された光の反射光を利用するので、反射光の光量などの特性が安定し、物体の検出の信頼性を向上させることができる。
【0101】
乗降室12は平面視において略矩形状であり、第1検出器44は、乗降室12を平面視した場合に、乗降室12の対角線上に離れて配置される一対の検出器44b、44cを含んでもよい。この場合、対角線上に配置された一対の検出器で物体の存在を検出するので、1つの検出器で検出する場合に比べて、検出漏れを減らすことができる。
【0102】
第1検出器44は、乗降室12の床面から所定の高さにおいて投光するように配置されてもよい。この場合、乗降室12内に残っている人を検出する能力を向上させることができる。
【0103】
乗降室12の壁面の近傍に開閉動作可能な扉18を更に有し、制御部32は、第1検出器44によって物体44jの存在が検出された場合、扉18の閉動作を禁止することにより、本機械式駐車場100の動作を制限してもよい。この場合、扉18の閉動作が禁止されているので、乗降室12内に残っている人は、容易に退出することができる。
【0104】
制御部32は、第1検出器44によって物体44jの存在が検出された場合、本機械式駐車場100の動作を制限するとともに、異常状態を外部に報知してもよい。この場合、異常状態が外部に報知されるので、駐車場の係員や運転者などが容易に異常状態を認識することができる。
【符号の説明】
【0105】
12・・乗降室、 14・・格納棚、 18・・扉、 20・・車両、 30・・制御装置、 32・・制御部、 36・・パレット、 40・・判定部、 44・・第1検出器、 44e・・出力光、 44f・・反射光、 44j・・物体、 48・・第2検出器、 48b・・発生源、 52・・パレット配置部、 100・・機械式駐車場。