(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20220614BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20220614BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220614BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20220614BHJP
C08G 59/20 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C08F2/50
C08F290/06
C09K3/10 B
C09K3/10 E
C09K3/10 L
C08G59/20
(21)【出願番号】P 2017566878
(86)(22)【出願日】2017-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2017044690
(87)【国際公開番号】W WO2018116928
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2016246623
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 秀幸
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-034708(JP,A)
【文献】特開2016-056361(JP,A)
【文献】国際公開第2015/123824(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C08F 2/50
C08F 290/06
C09K 3/10
C08G 59/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、マレイミド化合物と、重合開始剤とを含有し、
前記硬化性樹脂は、重合性官能基とアルキレンオキサイド骨格と水酸基とを有する化合物を含有し、
前記アルキレンオキサイド骨格を構成するアルキレン基として、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、又は、ヘキサメチレン基を有する
ことを特徴とする液晶表示素子用シール剤。
【請求項2】
重合性官能基とアルキレンオキサイド骨格と水酸基とを有する化合物は、1分子中に2個以上の重合性官能基を有することを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項3】
前記重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基及び/又はエポキシ基であることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項4】
重合性官能基とアルキレンオキサイド骨格と水酸基とを有する化合物は、下記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶表示素子用シール剤。
【化1】
式(1-1)中、A
1は、下記式(2-1)~(2-4)で表される構造を表し、X
1は、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、酸素原子、スルホニル基、カルボニル基、又は、結合手を表し、Y
1は、それぞれ独立に下記式(3-1)又は(3-2)で表される基を表し、nは、1以上3以下(平均値)である。
式(1-2)中、A
2は、下記式(4-1)~(4-
6)で表される構造を表し、X
2は、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、酸素原子、スルホニル基、カルボニル基、又は、結合手を表し、Y
2は、下記式(5)で表される基を表し、mは、1以上3以下(平均値)である。
【化2】
式(2-1)~(2-4)中、*は、結合位置を表す。
【化3】
式(3-1)中、R
1は、下記式(6-1)~(6-6)で表される構造、又は、結合手を表し、R
2は、水素原子又はメチル基を表し、式(3-2)中、R
3は、下記式(6-1)~(6-6)で表される構造、又は、結合手を表し、式(3-1)及び式(3-2)中、*は、結合位置を表す。
【化4】
式(4-1)~(4-
6)中、*は、結合位置を表す。
【化5】
式(5)中、R
4は、水素原子又はメチル基を表し、*は、結合位置を表す。
【化6】
式(6-1)~(6-6)中、*は、結合位置を表す(*で示した結合位置のうち、メチレン基側の結合位置が前記式(3-1)又は前記式(3-2)における酸素原子との結合位置となる)。
【請求項5】
マレイミド化合物は、1分子中に2個以上のマレイミド基を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項6】
マレイミド化合物は、炭素数5以上36以下の脂肪族炭化水素基を有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項7】
重合開始剤は、オキシムエステル系化合物を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有することを特徴とする上下導通材料。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6若しくは7記載の液晶表示素子用シール剤又は請求項8記載の上下導通材料を用いてなることを特徴とする液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性及び低液晶汚染性に優れ、耐衝撃性に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような、硬化性樹脂と光重合開始剤と熱硬化剤とを含有する光熱併用硬化型のシール剤を用いた液晶滴下工法と呼ばれる方式が用いられている。
液晶滴下工法では、まず、2枚の電極付き基板の一方に、ディスペンスにより長方形状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を基板のシール枠内に滴下し、真空下で他方の基板を重ね合わせ、シール部に紫外線等の光を照射して仮硬化を行う。その後、加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製する。現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0003】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、装置の小型化は最も求められている課題である。小型化の手法として、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、「狭額縁設計」ともいう)。
このような狭額縁設計に伴い、液晶表示素子において、画素領域からシール剤までの距離が近くなっており、シール剤によって液晶が汚染されることによる表示むらが生じやすくなっている。
【0004】
また、携帯端末の普及に伴い、液晶表示素子には耐衝撃性がますます要求されており、シール剤には液晶表示素子の落下等により外部から衝撃を受けた場合でもパネル剥がれ等を引き起こすことのないようにより高い接着性が求められている。しかしながら、従来のシール剤では、このような高い接着性と低液晶汚染性とを両立することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-133794号公報
【文献】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、接着性及び低液晶汚染性に優れ、耐衝撃性に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬化性樹脂と、マレイミド化合物と、重合開始剤とを含有し、上記硬化性樹脂は、重合性官能基とアルキレンオキサイド骨格と水酸基とを有する化合物を含有する液晶表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、重合性官能基を有する硬化性樹脂にアルキレンオキサイド骨格を導入することにより、液晶表示素子用シール剤の接着性及び硬化物の柔軟性を向上させ、液晶表示素子の耐衝撃性を向上させることを検討した。しかしながら、得られたシール剤は、液晶表示素子の設計によっては液晶汚染を生じさせることがあるという問題があった。そこで本発明者は鋭意検討した結果、硬化性樹脂としてアルキレンオキサイド骨格に加えて水酸基を有するものを用い、更に、マレイミド化合物を配合することにより、接着性及び低液晶汚染性に優れ、耐衝撃性に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、重合性官能基とアルキレンオキサイド骨格と水酸基とを有する化合物(以下、「本発明にかかる重合性化合物」ともいう)を含有する。本発明にかかる重合性化合物を後述するマレイミド化合物と組み合わせて用いることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、接着性、硬化物の柔軟性、及び、低液晶汚染性に優れるものとなる。
【0010】
本発明にかかる重合性化合物は、反応性の観点から、1分子中に2個以上の重合性官能基を有することが好ましい。
また、本発明にかかる重合性化合物の有する重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基及び/又はエポキシ基であることが好ましい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0011】
本発明にかかる重合性化合物は、上記アルキレンオキサイド骨格を1分子中に1個以上10個以下有することが好ましい。上記アルキレンオキサイド骨格の数がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性と低液晶汚染性とを両立する効果により優れるものとなる。本発明にかかる重合性化合物は、上記アルキレンオキサイド骨格を1分子中に2個以上5個以下有することがより好ましい。
【0012】
上記アルキレンオキサイド骨格を構成するアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。なかでも、得られる液晶表示素子用シール剤の接着性及び硬化物の柔軟性を向上させる効果により優れることから、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0013】
本発明にかかる重合性化合物は、上記水酸基を1分子中に1個以上30個以下有することが好ましい。上記水酸基の数がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性と低液晶汚染性とを両立する効果により優れるものとなる。本発明にかかる重合性化合物は、上記水酸基を1分子中に2個以上12個以下有することがより好ましい。
【0014】
本発明にかかる重合性化合物の分子量の好ましい下限は600、好ましい上限は3000である。本発明にかかる重合性化合物の分子量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が、塗布性等を悪化させることなく接着性と透湿防止性や低液晶汚染性とを両立する効果により優れるものとなる。本発明にかかる重合性化合物の分子量のより好ましい下限は700、より好ましい上限は1500である。
なお、本明細書において、上記「分子量」は、分子構造が特定される化合物については、構造式から求められる分子量であるが、重合度の分布が広い化合物及び変性部位が不特定な化合物については、重量平均分子量を用いて表す場合がある。本明細書において、上記「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0015】
本発明にかかる重合性化合物としては、具体的には、下記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物が好適に用いられる。
【0016】
【0017】
式(1-1)中、A1は、下記式(2-1)~(2-6)で表される構造を表し、X1は、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、酸素原子、スルホニル基、カルボニル基、又は、結合手を表し、Y1は、それぞれ独立に下記式(3-1)又は(3-2)で表される基を表し、nは、1以上3以下(平均値)である。
式(1-2)中、A2は、下記式(4-1)~(4-7)で表される構造を表し、X2は、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、酸素原子、スルホニル基、カルボニル基、又は、結合手を表し、Y2は、下記式(5)で表される基を表し、mは、1以上3以下(平均値)である。
【0018】
【0019】
式(2-1)~(2-6)中、*は、結合位置を表す。
【0020】
【0021】
式(3-1)中、R1は、下記式(6-1)~(6-6)で表される構造、又は、結合手を表し、R2は、水素原子又はメチル基を表し、式(3-2)中、R3は、下記式(6-1)~(6-6)で表される構造、又は、結合手を表し、式(3-1)及び式(3-2)中、*は、結合位置を表す。
【0022】
【0023】
式(4-1)~(4-7)中、*は、結合位置を表す。
【0024】
【0025】
式(5)中、R4は、水素原子又はメチル基を表し、*は、結合位置を表す。
【0026】
【0027】
式(6-1)~(6-6)中、*は、結合位置を表す。
なお、上記式(6-1)~(6-6)において、*で示した結合位置のうち、メチレン基側の結合位置が上記式(3-1)又は上記式(3-2)における酸素原子との結合位置となる。
【0028】
上記硬化性樹脂100重量部中における本発明にかかる重合性化合物の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は95重量部である。本発明にかかる重合性化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性と透湿防止性や低液晶汚染性とを両立させる効果により優れるものとなる。本発明にかかる重合性化合物の含有量のより好ましい下限は15重量部、より好ましい上限は85重量部、更に好ましい下限は20重量部、更に好ましい上限は75重量部、特に好ましい下限は40重量部である。
【0029】
上記硬化性樹脂は、透湿防止性等の観点から、本発明にかかる重合性化合物以外のその他の重合性化合物を含有することが好ましい。
上記その他の重合性化合物としては、本発明にかかる重合性化合物に含まれるもの以外の、その他のエポキシ化合物やその他の(メタ)アクリル化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」はアクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味する。
【0030】
上記その他のエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0031】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱化学社製)、EPICLON EXA-850CRP(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールE型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、R710(プリンテック社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA-1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、RE-810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA-7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EX-201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX-4000H(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-50TE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-80DE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP4032、EPICLON EXA-4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N-770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N-670-EXP-S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、NC-3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ESN-165S(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱化学社製)、EPICLON430(DIC社製)、TETRAD-X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YR-450、YR-207(いずれも新日鉄住金化学社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX-147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0032】
また、上記硬化性樹脂は、上記その他のエポキシ化合物として、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を含有してもよい。このような化合物としては、例えば、1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0033】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂のうち、市販されているものとしては、例えば、UVACURE1561(ダイセル・オルネクス社製)、BEEM-50(ケーエスエム社製)等が挙げられる
【0034】
上記その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記その他の(メタ)アクリル化合物は、反応性の高さから分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0035】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。
【0036】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、上記その他の重合性化合物として含有してもよいものとして上述したその他のエポキシ化合物と同様のものが挙げられる。
【0037】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0041】
上記イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0042】
また、上記イソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0043】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記三価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0044】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレート、ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレート、根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、M-1100、M-1200、M-1210、M-1600等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260等が挙げられる。
上記根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、アートレジンUN-330、アートレジンSH-500B、アートレジンUN-1200TPK、アートレジンUN-1255、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-7100、アートレジンUN-9000A、アートレジンUN-9000H等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、U-2HA、U-2PHA、U-3HA、U-4HA、U-6H、U-6HA、U-6LPA、U-10H、U-15HA、U-108、U-108A、U-122A、U-122P、U-324A、U-340A、U-340P、U-1084A、U-2061BA、UA-340P、UA-4000、UA-4100、UA-4200、UA-4400、UA-5201P、UA-7100、UA-7200、UA-W2A等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、AH-600、AI-600、AT-600、UA-101I、UA-101T、UA-306H、UA-306I、UA-306T等が挙げられる。
【0045】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂中の(メタ)アクリロイル基とエポキシ基との合計中における(メタ)アクリロイル基の含有割合を50モル%以上95モル%以下とすることが好ましい。
【0046】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、マレイミド化合物を含有する。
上記マレイミド化合物を本発明にかかる重合性化合物と組み合わせて用いることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、接着性、硬化物の柔軟性、及び、低液晶汚染性に優れるものとなる。
なお、本発明において上記マレイミド化合物は、上記硬化性樹脂及び後述する光重合開始剤には含まない。
【0047】
上記マレイミド化合物は、反応性の観点から、1分子中に2個以上のマレイミド基を有することが好ましい。
また、上記マレイミド化合物は、得られる液晶表示素子用シール剤の硬化物の柔軟性の観点から、炭素数5以上36以下の脂肪族炭化水素基を有することが好ましく、炭素数15以上25以下の脂肪族炭化水素基を有することがより好ましい。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいが、分岐鎖状であることが好ましい。上記脂肪族炭化水素基が分岐鎖状である場合、各側鎖の炭素数の好ましい下限は4、好ましい上限は12であり、より好ましい下限は6、より好ましい上限は9である。
【0048】
上記マレイミド化合物としては、具体的には、下記式(7)で表される化合物及び/又は下記式(8)で表される化合物が好適に用いられる。
【0049】
【0050】
式(7)中、R5は、炭素数2以上3以下のアルキレン基を表し、lは、2以上40以下の整数である。
【0051】
【0052】
式(8)中、R6は、炭素数5以上36以下の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
【0053】
上記式(8)中、R6の炭素数は、12以上36以下であることが好ましい。また、R6は、脂肪族環を有していることが好ましい。
上記式(8)で表される化合物としては、具体的には例えば、1,20-ビスマレイミド-10,11-ジオクチル-エイコサン(下記式(9-1)で表される化合物)、1-ヘプチレンマレイミド-2-オクチレンマレイミド-4-オクチル-5-ヘプチルシクロヘキサン(下記式(9-2)で表される化合物)、1,2-ジオクチレンマレイミド-3-オクチル-4-ヘキシルシクロヘキサン(下記式(9-3)で表される化合物)等が挙げられる。これらの上記式(8)で表される化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。また、これらの上記式(8)で表される化合物は、米国特許第5973166号明細書に記載の方法等によって合成することができる。
【0054】
【0055】
上記マレイミド化合物の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が20重量部である。上記マレイミド化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の接着性と低液晶汚染性とを両立させる効果により優れるものとなる。上記マレイミド化合物の含有量のより好ましい下限は2重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0056】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、重合開始剤を含有する。
上記重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0057】
上記ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤や、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0058】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等が挙げられる。なかでも、高感度で液晶汚染を抑制する効果に優れることからオキシムエステル系化合物が好ましい。
【0059】
上記オキシムエステル系化合物としては、例えば、1-(4-(フェニルチオ)フェニル)-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、O-アセチル-1-(6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)エタノンオキシム等が挙げられる。なかでも、O-アセチル-1-(6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)エタノンオキシムが好ましい。
【0060】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、BASF社製の光ラジカル重合開始剤、東京化成工業社製の光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
上記BASF社製の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、IRGACURE 184、IRGACURE 369、IRGACURE 379、IRGACURE 651、IRGACURE 819、IRGACURE 907、IRGACURE 2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO等が挙げられる。
上記東京化成工業社製の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0061】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物からなる開始剤(以下、「高分子アゾ開始剤」ともいう)が好ましい。
なお、本明細書において高分子アゾ化合物とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイル基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0062】
上記高分子アゾ化合物の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶汚染を抑制しつつ、硬化性樹脂と容易に混合することができる。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0063】
上記高分子アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記高分子アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記高分子アゾ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ化合物として市販されているものとしては、例えば、V-65、V-501(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
【0064】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0065】
上記カチオン重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤が好適に用いられる。
上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生タイプのものであってもよいし、非イオン性光酸発生タイプであってもよい。
【0066】
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類、鉄-アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール-アルミニウム錯体等の有機金属錯体類等が挙げられる。
【0067】
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-170(いずれもADEKA社製)等が挙げられる。
【0068】
上記重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が液晶汚染を抑制しつつ、保存安定性や硬化性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0069】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱硬化剤を含有してもよい。
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
【0070】
上記有機酸ヒドラジドとしては、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の有機酸ヒドラジド、味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジド等が挙げられる。
上記大塚化学社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、SDH、ADH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアUDH-J等が挙げられる。
【0071】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が優れた描画性を維持したまま、熱硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0072】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度調整、応力分散効果による接着性の更なる向上、線膨張率の改善、硬化物の透湿防止性の更なる向上等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0073】
上記充填剤としては、無機充填剤や有機充填剤を用いることができる。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。
上記有機充填剤としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
【0074】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、描画性等を悪化させることなく、接着性の更なる向上等の効果により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0075】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを更に良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0076】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。これらのシランカップリング剤は、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができる。
【0077】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性の更なる向上等の効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0078】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0079】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
【0080】
上記チタンブラックは、波長300nm以上800nm以下の光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370nm以上450nm以下の光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の液晶表示素子用シール剤に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。本発明の液晶表示素子用シール剤に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
【0081】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを含有する本発明の液晶表示素子用シール剤を用いて製造した液晶表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する液晶表示素子を実現することができる。
【0082】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、三菱マテリアル社製のチタンブラック、赤穂化成社製のチタンブラック等が挙げられる。
上記三菱マテリアル社製のチタンブラックとしては、例えば、12S、13M、13M-C、13R-N、14M-C等が挙げられる。
上記赤穂化成社製のチタンブラックとしては、例えば、ティラックD等が挙げられる。
【0083】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m2/g、好ましい上限は30m2/gであり、より好ましい下限は15m2/g、より好ましい上限は25m2/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0084】
上記遮光剤の一次粒子径は、液晶表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5000nmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の描画性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0085】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の基板に対する接着性や硬化後の強度や描画性を低下させることなくより優れた遮光性を発揮することができる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0086】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、反応性希釈剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0087】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、硬化性樹脂と、マレイミド化合物と、重合開始剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等とを混合する方法等が挙げられる。
【0088】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化物の25℃における貯蔵弾性率の好ましい下限が0.8GPa、好ましい上限が3.0GPaである。上記硬化物の25℃における貯蔵弾性率がこの範囲であることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤が接着性と透湿防止性や低液晶汚染性とを両立する効果により優れるものとなる。上記硬化物の25℃における貯蔵弾性率の好ましい下限は1.0GPa、好ましい上限は2.8GPa、より好ましい下限は1.2GPa、より好ましい上限は2.6GPaである。
なお、上記25℃における貯蔵弾性率、及び、後述する60℃における貯蔵弾性率を測定する硬化物としては、シール剤にメタルハライドランプを用いて100mW/cm2の紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、120℃で1時間加熱して硬化させたものが用いられる。
また、上記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば、IT計測制御社製、「DVA-200」等)を用いて、各測定温度において、試験片幅5mm、厚み0.35mm、掴み幅25mm、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で測定することができる。
【0089】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化物の60℃における貯蔵弾性率の好ましい下限が0.04GPaである。上記硬化物の60℃における貯蔵弾性率が0.04GPa以上であることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、透湿防止性により優れるものとなる。上記硬化物の60℃における貯蔵弾性率のより好ましい下限は0.1GPaである。
また、接着性の観点から、上記硬化物の60℃における貯蔵弾性率の好ましい上限は2.5GPaである。
【0090】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化物のガラス転移温度の好ましい上限が100℃である。上記ガラス転移温度が100℃以下であることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、より接着性に優れるものとなる。上記ガラス転移温度のより好ましい上限は80℃、更に好ましい上限は60℃である。
また、透湿防止性等の観点から、上記硬化物のガラス転移温度の好ましい下限は40℃、より好ましい下限は46℃である。
なお、本明細書において上記「ガラス転移温度」は、動的粘弾性測定により得られる損失正接(tanδ)の極大のうち、ミクロブラウン運動に起因する極大が現れる温度を意味する。上記ガラス転移温度は、粘弾性測定装置等を用いた従来公知の方法により測定することができる。
また、上記ガラス転移温度を測定する硬化物としては、上記貯蔵弾性率を測定する硬化物と同様にしてシール剤を硬化させたものが用いられる。
【0091】
本発明の液晶表示素子用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0092】
上記導電性微粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0093】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
本発明の液晶表示素子としては、狭額縁設計の液晶表示素子が好ましい。具体的には、液晶表示部の周囲の枠部分の幅が2mm以下であることが好ましい。
また、本発明の液晶表示素子を製造する際の本発明の液晶表示素子用シール剤の塗布幅は1mm以下であることが好ましい。
【0094】
本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、液晶滴下工法が好適に用いられ、具体的には例えば、以下の方法等が挙げられる。
まず、ITO薄膜等の電極付きのガラス基板やポリエチレンテレフタレート基板等の2枚の基板の一方に、本発明の液晶表示素子用シール剤を、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により塗布して枠状のシールパターンを形成する工程を行う。次いで、本発明の液晶表示素子用シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を基板のシールパターンの枠内に滴下塗布し、真空下で別の基板を重ね合わせる工程を行う。その後、本発明の液晶表示素子用シール剤のシールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を仮硬化させる工程、及び、仮硬化させたシール剤を加熱して本硬化させる工程を行う方法により、液晶表示素子を得ることができる。
【発明の効果】
【0095】
本発明によれば、接着性及び低液晶汚染性に優れ、耐衝撃性に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0097】
(本発明にかかる重合性化合物Aの作製)
撹拌羽、冷却管を取り付けたフラスコに、窒素フローを行いながらビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製、「EPICLON EXA-850CRP」)340.1g(1モル)及び1,6-ヘキサンジオール(東京化成工業社製)59.1g(0.5モル)を仕込み、150℃で撹拌し、溶解させた。その後、テトラメチルアンモニウムクロライド1.0gを添加し、150℃で6時間撹拌することによって変性エポキシ樹脂を得た。得られた変性エポキシ樹脂200gと、アクリル酸(東京化成工業社製)9.0g(0.13モル)と、ポリマー担持トリフェニルホスフィン(バイオタージ社製、「PS-Triphenylphosphine」)0.1gとを混合し、100℃で6時間反応させた。反応終了後、得られた樹脂をトルエンと水とで3回洗浄することにより、本発明にかかる重合性化合物Aを得た。
なお、得られた本発明にかかる重合性化合物Aは、GPC、1H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IR分析により、下記式(10)で表される化合物(nは1以上3以下(平均値))であることを確認した。
【0098】
【0099】
(本発明にかかる重合性化合物Bの作製)
撹拌羽、冷却管を取り付けたフラスコに、窒素フローを行いながらビスフェノールA(東京化成工業社製)228.3g(1モル)及び1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、「エポライト1600」)460g(2モル)を仕込み、150℃で撹拌し、溶解させた。その後、テトラメチルアンモニウムクロライド1.0gを添加し、150℃で6時間撹拌することによって変性エポキシ樹脂を得た。得られた変性エポキシ樹脂350gと、アクリル酸(東京化成工業社製)18.0g(0.25モル)と、ポリマー担持トリフェニルホスフィン(バイオタージ社製、「PS-Triphenylphosphine」)0.1gとを混合し、100℃で6時間反応させた。反応終了後、得られた樹脂をトルエンと水とで3回洗浄することにより、本発明にかかる重合性化合物Bを得た。
なお、得られた本発明にかかる重合性化合物Bは、GPC、1H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IR分析により、下記式(11)で表される化合物(nは1以上3以下(平均値))であることを確認した。
【0100】
【0101】
(本発明にかかる重合性化合物Cの作製)
撹拌羽、冷却管を取り付けたフラスコに、窒素フローを行いながらビスフェノールA(東京化成工業社製)228.3g(1モル)及びトリエチレングリコールジビニルエーテル(東京化成工業社製)175g(0.86モル)を仕込み、120℃で撹拌し、溶解させた。その後、6時間撹拌することによって多価フェノール樹脂を得た。得られた多価フェノール樹脂400gと、エピクロロヒドリン(東京化成工業社製)925g(10モル)と、n-ブタノール200gとを仕込み、溶解させた。その後、65℃に昇温し、共沸する圧力まで減圧し、水層を除去しながら反応を進めた。未反応のエピクロロヒドリンを減圧蒸留で留去した後、メチルイソブチルケトン1000gとn-ブタノール100gとを加えて撹拌し、更に10%水酸化ナトリウム水溶液を20g添加して、80℃で2時間反応させた。反応終了後、洗浄液が中性になるまで水で洗浄を行い、変性エポキシ樹脂を得た。得られた変性エポキシ樹脂350gと、アクリル酸(東京化成工業社製)72.06g(1モル)と、ポリマー担持トリフェニルホスフィン(バイオタージ社製、「PS-Triphenylphosphine」)0.1gとを混合し、100℃で6時間反応させた。反応終了後、得られた樹脂をトルエンと水とで3回洗浄することにより、本発明にかかる重合性化合物Cを得た。
なお、得られた本発明にかかる重合性化合物Cは、GPC、1H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IR分析により、下記式(12)で表される化合物(mは1以上3以下(平均値))であることを確認した。
【0102】
【0103】
(実施例1~7及び比較例1~3)
表1に記載された配合比に従い、各材料を遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1~7及び比較例1~3の液晶表示素子用シール剤を調製した。
【0104】
<評価>
実施例及び比較例で得られた液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
また、マレイミド化合物として、上記式(9-3)で表される化合物に代えて上記式(8)におけるR6がヘキサメチレン基である化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして液晶表示素子用シール剤を調製し、以下の評価を行ったところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【0105】
(硬化性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤をガラス基板上に約5μm塗布した後、同サイズのガラス基板を重ね合わせた。次いで、メタルハライドランプを用いて100mW/cm2の紫外線(波長365nm)を30秒照射した。赤外分光装置(BIORAD社製、「FTS3000」)を用い、(メタ)アクリロイル基由来ピークの光照射前後での変化量(減少率)を測定した。
光照射後の(メタ)アクリロイル基由来のピークの減少率が95%以上であった場合を「◎」、85%以上95%未満であった場合を「○」、75%以上85%未満であった場合を「△」、75%未満であった場合を「×」として硬化性を評価した。
【0106】
(接着性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部にスペーサー微粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI-H050」)1重量部を分散させた。次いで、該スペーサー粒子を分散させたシール剤を2枚のラビング済み配向膜及び透明電極付き基板(長さ75mm、幅75mm、厚み0.7mm)の一方に、表示部が45mm×55mmとなるようにシール剤の線幅1mmでディスペンサー塗布した。続いて液晶(チッソ社製、「JC-5004LA」)の微小滴を透明電極付き基板のシール剤の枠内全面に滴下塗布し、すぐにもう一方の透明電極付き基板を貼り合わせた。その後、シール剤部分にメタルハライドランプを用いて100mW/cm2の紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、120℃で1時間加熱することにより、実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について、液晶表示素子をそれぞれ10枚(10セル)ずつ作製した。
各液晶表示素子を2mの高さから落下させる落下試験を行った。落下試験後、全てのセルに剥がれや割れによる液晶漏れがなかった場合を「◎」、1セル以上4セル未満の液晶表示素子に液晶漏れがあった場合を「○」、4セル以上7セル未満の液晶表示素子に液晶漏れがあった場合を「△」、7セル以上の液晶表示素子に液晶漏れがあった場合を「×」として接着性を評価した。
【0107】
(透湿防止性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤を、平滑な離型フィルム状にコーターで厚さ200μm以上300μm以下に塗工した。次いで、塗工したシール剤にメタルハライドランプを用いて100mW/cm2の紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、120℃で1時間加熱してシール剤を硬化させ、透湿度測定用硬化フィルムを得た。JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準じた方法で透湿度試験用カップを作製し、得られた透湿度測定用硬化フィルムを取り付け、温度60℃湿度90%RHの恒温恒湿オーブンに投入して透湿度を測定した。透湿度が30g/m2・24hr未満であった場合を「○」、30g/m2・24hr以上70g/m2・24hr未満であった場合を「△」、70g/m2・24hr以上であった場合を「×」として透湿防止性を評価した。
【0108】
(低液晶汚染性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について、上記「(接着性)」と同様にして液晶表示素子を作製した。
得られた液晶表示素子について、100時間動作試験を行った後、80℃で1000時間電圧印加状態とした後のシール剤付近の液晶配向乱れを目視によって確認した。
配向乱れは周辺部及び表示部の色むらにより判断しており、色むらが全くなかった場合を「○」、周辺部に少しの色むらが確認された場合を「△」、色むらが表示部へと広がっていた場合を「×」として低液晶汚染性を評価した。
【0109】
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によれば、接着性及び低液晶汚染性に優れ、耐衝撃性に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。