(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ゴム補強用の複合繊維コード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D02G 3/28 20060101AFI20220614BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20220614BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20220614BHJP
D02G 3/48 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
D02G3/28
B60C9/00 G
D02G3/04
D02G3/48
(21)【出願番号】P 2018050961
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡村 脩平
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/063913(WO,A1)
【文献】特開2012-219387(JP,A)
【文献】特開2008-223200(JP,A)
【文献】特開平06-300085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00 - 19/12
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高弾性率繊維からなる繊維束Aと、低弾性率繊維からなる繊維束Bから構成される複合繊維コードであって、繊維束Aが2本以上の繊維束からなる下撚り(撚り1)と上撚り(撚り2)が逆方向の諸撚り繊維束であり、繊維束Aと繊維束Bとが共に、繊維束Aの上撚り方向と逆方向にさらに上撚り(撚り3)されており、
繊維束Aの下撚り(撚り1)の撚り係数(TM1)、繊維束Aの上撚り(撚り2)の撚り係数(TM2)及び繊維束A及び繊維束Bの上撚り(撚り3)の撚り係数(TM3)が、下記式(1)~(4)を満たし、
ゴム成分を含有することを特徴とするゴム補強用の複合繊維コード。
1.0≦TM1≦5.0 (1)
1.0≦TM2≦5.0 (2)
1.0≦TM3≦5.0 (3)
2.0≦TM3-(TM2-TM1)≦6.0 (4)
(ただし、「撚り係数=T×√D/1055」、TM;撚り係数、T;撚り数
(回/m)、D;原糸の繊度(tex)を示す。)
【請求項2】
繊維束Bが上撚り(撚り3)前に、あらかじめ逆方向に下撚り(撚り4)されたものである請求項1記載のゴム補強用の複合繊維コード。
【請求項3】
高弾性率繊維が、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキザール繊維、芳香族ポリエステル繊維の群から選ばれたいずれか一つの繊維である請求項1または請求項2に記載のゴム補強用の複合繊維コード。
【請求項4】
ゴム成分が、カーボンブラックと酸化亜鉛を含む樹脂またはゴムである請求項1~3のいずれか1項記載のゴム補強用の複合繊維コード。
【請求項5】
内層にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)樹脂が存在するものである請求項1~4のいずれか1項記載のゴム補強用の複合繊維コード。
【請求項6】
複合繊維コード中の繊維以外の付着物の総量が、繊維重量当たり10.0~25.0重量%である請求項1~5のいずれか1項記載のゴム補強用の複合繊維コード。
【請求項7】
破断時の強度が10.0cN/dtex以上、破断時の伸度が5.0%~8.0%、2.0%伸長時の荷重が4.0cN/dtex以下、かつ5.0%伸長時の荷重が6.0cN/dtex以上である請求項1
~6のいずれか1項記載のゴム補強用の複合繊維コード。
【請求項8】
請求項1
~7のいずれか1項記載のゴム補強用の複合繊維コードを含むゴム製品。
【請求項9】
高弾性率繊維からなる繊維束Aと、低弾性率繊維からなる繊維束Bから構成される複合繊維コードの製造方法であって、繊維束Aが下撚りと上撚りが逆方向に諸撚りされた繊維束であり、
繊維束Aと繊維束Bとを合糸し、繊維束Aの上撚り方向と逆方向にさらに上撚りし、
その後その表面にゴム成分を付着処理することを特徴とする
請求項1記載のゴム補強用の複合繊維コードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム補強用の複合繊維コードに関し、さらに詳しくはゴムベルト、タイヤ等のゴム製品の補強用に最適なゴム補強用の複合繊維コード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムベルト、ゴムタイヤ等のゴム製品の強度、耐久性を向上させるために、補強用繊維をゴム内に埋め込むことが広く一般に行われている。従来、この補強用繊維としては、ガラス繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維(ナイロン)、芳香族ポリアミド繊維(アラミド)、カーボン繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキザール繊維等が、それぞれ単独で広く用いられてきた。
【0003】
しかしこれらの中で、特に補強性に優れた高剛性繊維を用いた場合には、最終的にゴム製品に成形する際のゴムの変形に繊維の変形が追随せず、成型加工性が大きく劣るという問題があった。逆に成形性を重視して低剛性繊維を用いた場合には、最終的にゴム成形物を使用する際にコードに期待される剛性を、十分に満たすことができなかった。
【0004】
そこでかかる問題の改善策として、例えば特許文献1~3には、高剛性繊維と低剛性繊維を用いた複合繊維コードが提案されている。
【0005】
しかしこのような複合繊維コードは、低荷重領域での伸度は確保しやすいものの、最終的な引張強度は十分に得られないという問題があった。各繊維を均一に撚り合わせるために、どうしても高剛性繊維の含有率が低くなりやすいことや、強い撚りを施す必要があり、コード全体としての剛性が低下しやすかったのである。
【0006】
また高剛性繊維は一般に高物性の代償としてその表面が比較的不活性であることが多く、マトリックスゴムとの接着性が不十分であるという問題もあった。不足する接着力を向上させるためには、接着樹脂の付着量を増加させる手法が一般的であるが、その場合にはコード外周に付着した多量の樹脂によってコードが硬くなり、複合繊維コードの加工性が低下するという問題があった。
【0007】
単純に高剛性繊維と低剛性繊維とを複合させただけでは、ゴム製品の成型加工時に求められる成型時の伸張によるゴム組成物成形性と、最終的にゴム成形物を使用する際にコードに期待される剛性とを、同時に高いレベルで両立させることはできなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-326915号公報
【文献】特開平01-247204号公報
【文献】特開2009-132324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、ゴム製品の成型加工時に求められる成型時の伸張によるゴム組成物成形性と、最終的にゴム成形物を使用する際にコードに期待される剛性とを同時に満たすゴム補強用の複合繊維コードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のゴム補強用の複合繊維コードは、高弾性率繊維からなる繊維束Aと、低弾性率繊維からなる繊維束Bから構成される複合繊維コードであって、繊維束Aが2本以上の繊維束からなる下撚り(撚り1)と上撚り(撚り2)が逆方向の諸撚り繊維束であり、繊維束Aと繊維束Bとが共に、繊維束Aの上撚り方向と逆方向にさらに上撚り(撚り3)されており、
繊維束Aの下撚り(撚り1)の撚り係数(TM1)、繊維束Aの上撚り(撚り2)の撚り係数(TM2)及び繊維束A及び繊維束Bの上撚り(撚り3)の撚り係数(TM3)が、下記式(1)~(4)を満たし、ゴム成分を含有することを特徴とする。
1.0≦TM1≦5.0 (1)
1.0≦TM2≦5.0 (2)
1.0≦TM3≦5.0 (3)
2.0≦TM3-(TM2-TM1)≦6.0 (4)
(ただし、「撚り係数=T×√D/1055」、TM;撚り係数、T;撚り数
(回/m)、D;原糸の繊度(tex)を示す。)
【0011】
さらには、繊維束Bが上撚り(撚り3)前に、あらかじめ逆方向に下撚り(撚り4)されたものであることや、高弾性率繊維が、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキザール繊維、芳香族ポリエステル繊維の群から選ばれたいずれか一つの繊維であることが好ましい。
【0012】
また、ゴム成分が、カーボンブラックと酸化亜鉛を含む樹脂またはゴムであることや、内層にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)樹脂が存在するものであること、複合繊維コード中の繊維以外の付着物の総量が、繊維重量当たり10.0~25.0重量%であることが好ましい。
【0014】
そして特には、破断時の強度が10.0cN/dtex以上、破断時の伸度が5.0%~8.0%、2.0%伸長時の荷重が4.0cN/dtex以下、かつ5.0%伸長時の荷重が6.0cN/dtex以上であることが好ましい。
【0015】
また本発明は上記のゴム補強用の複合繊維コードを含むゴム製品を包含し、もう一つの本発明であるゴム補強用の複合繊維コードの製造方法は、高弾性率繊維からなる繊維束Aと、低弾性率繊維からなる繊維束Bから構成される複合繊維コードの製造方法であって、繊維束Aが下撚りと上撚りが逆方向に諸撚りされた繊維束であり、繊維束Aと繊維束Bと
を合糸し、繊維束Aの上撚り方向と逆方向にさらに上撚りし、その後または途中工程にて
ゴム成分を付着処理することを特徴とし、上記の本発明のゴム補強用の複合繊維コードを製造する発明である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ゴム製品の成型加工時に求められる成型時の伸張によるゴム組成物成形性と、最終的にゴム成形物を使用する際にコードに期待される剛性とを同時に満たすゴム補強用の複合繊維コードが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のゴム補強用の複合繊維コードは、高弾性率繊維からなる繊維束Aと、低弾性率繊維からなる繊維束Bから構成される複合繊維コードである。そして繊維束Aが2本以上の繊維束からなる、下撚り(撚り1)と上撚り(撚り2)が逆方向の諸撚り繊維束であり、繊維束Aと繊維束Bとが共に、繊維束Aの上撚り方向と逆方向にさらに上撚り(撚り3)されており、かつ複合繊維コード中には、さらにゴム成分を含有しているものである。さらには、この複合繊維コードに用いられている繊維束Bが上撚り(撚り3)前に、あらかじめ逆方向に下撚り(撚り4)されたものであることが好ましい。
【0018】
この本発明の複合繊維コードにおいて、それを構成する高弾性率繊維としては、原糸の弾性率が300cN/dtex以上の繊維であることが好ましい。また、低弾性率繊維としては原糸の弾性率が300cN/dtex未満の繊維であることが好ましい。さらにはこの高弾性率繊維の弾性率としては、JIS L 1017の初期引張抵抗度で示される弾性率が400~1200cN/dtexの範囲であることが好ましく、一方、低弾性率繊維の弾性率としては10~250cN/dtexの範囲であることが好ましい。また高弾性率繊維の弾性率と低弾性率繊維の弾性率の比としては1.5~20倍、特には2.0~10倍の範囲にあることが好ましい。
【0019】
またこのような繊維の強度としては複合繊維コードに用いるそれぞれの構成比にもよるが、高弾性率繊維の原糸の破断強度が10.0~30.0cN/dtex、低弾性率繊維の破断強度が2.0~10.0cN/dtexの範囲にあることが好ましい。さらには高弾性率繊維の原糸の破断強度が15.0~25.0cN/dtex、低弾性率繊維の破断強度が3.0~9.0cN/dtexの範囲にあることが特に好ましい。
【0020】
このような本発明にて使用される高弾性率繊維の具体例としては、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、カーボン繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキザール繊維、芳香族ポリエステル繊維等を挙げることができる。中でも本発明に用いる高弾性率繊維としては、芳香族ポリアミド繊維であることが好ましい。
【0021】
さらに芳香族ポリアミド繊維の中でも、パラ型芳香族ポリアミド繊維が耐熱性と強度にさらに優れているためより好ましい。パラ型芳香族ポリアミド繊維は、芳香族ポリアミドの延鎖結合が共軸または平行であり、かつ反対方向に向いているポリアミドの繊維である。具体的には、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(例えば、テイジンアラミドB.V.製「トワロン」)や、共重合型の芳香族ポリアミド繊維であるコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(例えば、帝人株式会社製「テクノーラ」)を例示することができる。
【0022】
またこのような芳香族ポリアミド繊維としては、芳香族ホモポリアミドからなるものと、芳香族コポリアミドからなるものが知られているが、本発明では、耐薬品性に優れた芳香族コポリアミド繊維(共重合芳香族ポリアミド繊維)であることが好ましい。
【0023】
この場合、芳香族コポリアミドの芳香族基はすべて同一であってもよく、相異なっていてもよい。芳香族基の水素原子は、ハロゲン原子、低級アルキル基、フェニル基で置換されていてもよい。中でも特に、共重合型の芳香族ポリアミド繊維であるコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(例えば、帝人(株)製「テクノーラ」)が、疲労耐久性に優れるために特に好ましい。
【0024】
上記のような芳香族ポリアミド繊維としては、従来から知られているものを用いることができ、知られている方法で製造することができる。例えば特開昭49-100322号公報、特開昭47-10863号公報、特開昭58-144152号公報および特開平4-65513号公報に記載されている。
【0025】
本発明の複合繊維コードでは上記のような高弾性率繊維とともに、それよりも弾性率の低い低弾性率繊維を共に用いることが必要である。
【0026】
本発明にて用いられる低弾性率繊維としては、特に限定されるものではなく、汎用の有機合成繊維等を広く用いることができる。より具体的にはナイロン6やナイロン66、ナイロン46等で知られる脂肪族ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等で知られるポリエステル繊維、ビニロンとして知られるポリビニリアルコール繊維、あるいはレーヨン繊維、等が挙げられる。
【0027】
本発明の複合繊維コードは、上記のような高弾性率繊維と低弾性率繊維とを用い、高弾性率繊維からなる繊維束Aと、低弾性率繊維からなる繊維束Bから構成される。この時、高弾性率繊維と低弾性率繊維との重量比率としては、65:35~95:5の範囲が好ましい。高弾性率繊維の比率が低すぎると、強度や高伸長領域での弾性率が低くなる傾向にある。また、高弾性率繊維の比率が逆に高すぎても、低伸長領域での弾性率が高くゴムとの加硫時の伸長性が悪くなり、成型性の悪い複合コードとなる傾向にある。
【0028】
本発明のゴム補強用の複合繊維コードは、このような高弾性率繊維または低弾性率繊維からなるそれぞれの単繊維が集合した繊維束Aと繊維束Bから構成されるものであるが、さらにこれらの繊維束は特定の撚り構造をとることが必要である。
【0029】
まず本発明では、高弾性率繊維からなる繊維束Aが2本以上の繊維束からなり、さらにその下撚り(撚り1)と上撚り(撚り2)が逆方向の諸撚り繊維束であることが必要である。そしてこの繊維束Aとともに、低弾性率繊維からなる繊維束Bを合せ、繊維束Aの上撚り(撚り2)方向と逆方向(すなわち繊維束Aの下撚り(撚り1)と同方向)にさらに上撚り(撚り3)された複合繊維コードであることが必須である。
【0030】
本発明ではこのように高弾性率繊維に複数回の逆方向の撚りをかけることによって、高弾性率繊維から成るコードの引張物性と、単繊維の配向を制御している。そしてさらにその後に低弾性率繊維を併せる手段を取ることで、理想的な引張物性と、各単繊維の配向、そして良好な耐疲労性を両立する手段を見出したのである。
【0031】
さらに詳細に述べると、本発明の複合繊維コードでは、S方向、あるいはZ方向に下撚り(撚り1)された高弾性率繊維からなる撚り糸(繊維束A)を2本以上束ねて、下撚り方向と逆方向に上撚り(撚り2)した諸撚りの撚糸コードと、高弾性率繊維よりも低い弾性率の低弾性率繊維からなる撚り糸(繊維束B)とを、高弾性率繊維の繊維束Aの上撚り(撚り2)方向と逆方向(繊維束Aの下撚り(撚り1)と同方向)にさらに上撚り(撚り3)された合撚糸としている。
【0032】
先に高弾性率繊維のみで下撚りと上撚りを施し繊維束Aとし、その後に低弾性率繊維と併せる手段を取ることで、理想的な引張物性と、単繊維の配向、そして良好な耐疲労性を両立することが可能となったのである。
【0033】
このような3段階以上の撚り構造を採用することにより、本発明の複合繊維コードは、最終的にゴム製品とした時に屈曲時に単糸に加わる応力が分散され、耐屈曲疲労性が向上する。また、高弾性率繊維に3回の撚り(撚り1、撚り2、撚り3)を施すことによって、複合繊維コード中で単糸の傾きを制御し、初期の引張強力の低下を抑えることができるようになった。また、好ましくは弾性率の低い繊維の配合率を下げることによって、伸長時にはまず低弾性率の繊維がより優先的に伸長されることで低弾性率を示し、引張時の途中段階からは配合比率の高い高弾性率の繊維に応力を負担させ、十分な高い物性を得ることができるようになった。
【0034】
さらには本発明の複合繊維コードとしては、低弾性率繊維からなる繊維束Bは、繊維束Aとの上撚り前に、あらかじめ逆方向(繊維束Aの1回目の上撚りと同方向、あるいは下撚りと逆方向)であるS方向、あるいはZ方向に撚られたものであることが好ましい。低弾性率繊維にもこのように2回の撚りを掛けることによって、さらに細かな物性を制御することが可能となる。
【0035】
またこれらの撚り数を下記のような範囲に調整することも好ましい。
なおここで本発明の繊維の撚り数としては、下記式の撚り係数(TM)で表される値を採用した。
TM = T×√D/1055
(ただし、TMは撚り係数、Tは撚り数(回/m)、Dは総繊度(tex)を表す。)
この計算式は、綿の紡績糸に使用される計算式であるK=t/√N、(Kは撚係数、tは撚数t/inch(25.4mm)、Nは綿番手)において、綿の比重を芳香族ポリアミド繊維の比重に変更し、綿番手を繊度(tex)に変換して、再計算したものであり、撚り係数が高いほど、強い撚り(コードの方向に対し、単糸の角度が大きくなる)がかかっていることとなる。
【0036】
そして本発明のゴム補強用の複合繊維コードにおいては、繊維束Aの下撚り(撚り1)の撚り係数(TM1)、繊維束Aの上撚り(撚り2)の撚り係数(TM2)及び繊維束A及び繊維束Bの上撚り(撚り3)の撚り係数(TM3)が、下記式(1)~(4)を満たすことが好ましい。
1.0≦TM1≦5.0 (1)
1.0≦TM2≦5.0 (2)
1.0≦TM3≦5.0 (3)
2.0≦TM3-(TM2-TM1)≦6.0 (4)
特に式(4)のTM3-(TM2-TM1)で表される式は、高弾性率繊維の単繊維の配向に強く相関する。本発明の複合コードは、特に式(4)の範囲の際に、理想的な引張物性と、単繊維の配向、良好な耐疲労性、をより高いレベルで両立することが可能となる。
【0037】
さて、本発明の複合繊維コードでは、さらにその複合繊維コードが、ゴム成分を含有することが必要である。高弾性率繊維を含有する複合繊維コードは、一般にゴムとの反応性や接着力が低いためである。ここでゴム成分としてはゴムまたは樹脂を含み、水系や溶剤系のゴム糊に由来しても良いし、合成繊維とゴムとの接着性の向上に汎用的に用いられるレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂(以下「RFL樹脂」ということがある)に由来するゴムラテックス成分であっても良い。
【0038】
ゴム成分の付着量としては5.0重量%以上であることが好ましく、さらには6.0~15.0重量%の範囲にあることが好ましい。付着量が少なすぎると、このゴム成分の最終的に繊維ゴム複合体としたときに、マトリックスゴム中への拡散が不十分となりやすく、接着力が向上しにくい傾向にある。逆に多すぎると、ゴム中に拡散できない過剰な層となり、この層で凝集破壊が起こりやすく、この場合も接着力が低下する傾向にある。
【0039】
特にこのような本発明の複合繊維コードのゴム成分としては、特にその複合繊維コードの最外層のゴム成分として、カーボンブラックと酸化亜鉛を含む樹脂またはゴムであることが好ましい。これは例えば水系や溶剤系のゴム糊として、カーボンブラックと酸化亜鉛を含ませることができる。例えばゴム糊を用いる場合、最外層として繊維コードの表面に、ゴム糊に由来する被膜を形成させることが好ましい。
【0040】
この最外層の被膜の重量としては、繊維コード重量全体に対して5~15重量%であることが好ましい。また撚糸を行った後に処理することによって、複合繊維コードの内部には存在せず、基本的に最外層にのみ存在することが好ましい。
【0041】
さらにこのような最外層の被膜としては、特にはカーボンブラックと酸化亜鉛とを含む塩素含有樹脂(ハロゲン含有ポリマー)であることが好ましい。このような塩素含有樹脂としては、塩素化天然ゴム、ポリクロロプレン、塩素化ポリクロロプレン、塩素化ポリブタジエン、ヘキサクロロペンタジエン、塩素化ブタジエンスチレン共重合体、塩素化エチレンプロピレン共重合体及びエチレン/プロピレン/非共役ジエン三元共重合体、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリ(2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン)、塩素化されたポリ(塩化ビニル)等が好ましく、クロロスルホン化ポリエチレンが特に好ましい。被膜における塩素含有樹脂の含有量は、被膜の重量を基準として例えば30~95重量%、好ましくは50~95重量%である。この範囲であると、さらに良好な接着力を得ることができる。
【0042】
被膜におけるカーボンブラックの含有量は、被膜の重量を基準としては、好ましくは0.5~10重量%、さらに好ましくは1~5重量%であり、酸化亜鉛の含有量は、被膜の重量を基準として好ましくは1~20重量%、さらに好ましくは5~15重量%であることが好ましい。
【0043】
さらにこの被膜には、塩素含有樹脂、カーボンブラックおよび酸化亜鉛に加えて、ブロックドポリイソシアネート化合物などの架橋剤を添加することも好ましい。特にゴム成分として、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂を併用した場合、それとの親和性がさらに向上し、より高い接着力が得られる。
【0044】
このような最外層のゴム成分となる被膜としては、例えばゴムを有機溶剤に溶解させたゴム糊や、クロロスルホン化ポリエチレンやハロゲン含有ポリマーなどの、溶剤系接着剤または水系接着剤を用いて、複合繊維コードの表面に設けることができる。そのような溶剤系接着剤や水系接着剤は市販品を用いることもでき、例えば株式会社 東洋化学研究所製の「メタロックF112」、LORD社(LORD Corporation)製の「CHEMLOK CH233X」、「CHEMLOK CH238S」、「CHEMLOK CH8216」を用いることができる。特に取扱い性の面では、水系接着剤であることが好ましく、例えば塩素含有樹脂とカーボンブラックと酸化亜鉛を含有する「CHEMLOK CH8216」を好適に用いることができる。このような水系の接着剤を使用することで、実質的にその製造工程において有機溶剤を一切使用せずに環境負荷の少ない製造工程を実現することができる。
【0045】
これらの接着剤に由来するゴム成分は、ゴム補強用の複合繊維コードの被着体となるゴム中に拡散および相互作用し、ゴムマトリックスの剛性や凝集力を向上させ、複合コードとの剛性の差異を低減させる効果を有する。複合コードとゴムマトリックスとを一体化させ、接着力を向上させることが可能となるのである。
【0046】
また本発明の複合繊維コードのゴム成分としては、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂系接着剤中のゴムラテックスに由来するものであることも好ましい。特に内層にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)樹脂が存在するものであることが好ましい。内層とは最外層のゴム成分となる被膜の内側を意味し、特には一旦RFL処理した後で撚糸し、複合繊維コードの内層に存在するものであることが好ましい。このようなレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂を含むことにより優れた接着力が得られ、その含有量そしては複合繊維コード全体の重量に対して5~15%ほど存在していることが好ましい。
【0047】
より具体的なレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂としては、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が1:0.6~1:8の範囲にあるものが好ましく、1:0.8~1:6の範囲にあるものがさらに好ましい。ホルムアルデヒドの量が少なすぎると、レゾルシン・ホルマリンの縮合物の架橋密度が低下すると共に分子量の低下を招くため、樹脂層の凝集力が低下することにより接着性が低下し、耐屈曲疲労性が低下するおそれがあり好ましくない。他方、ホルムアルデヒドの量が多すぎると、架橋密度上昇によりレゾルシン・ホルマリン縮合物が硬くなり、被着体のゴムとの共加硫時にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂とゴムとの相溶化が阻害され接着性が低下する傾向がある。
【0048】
レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂におけるレゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスとの配合比率は、固形分重量比として、レゾルシン・ホルマリン:ゴムラテックスが、好ましくは1:3~1:16の範囲、さらに好ましくは1:4~1:10である。ゴムラテックスの比率が少ないとゴムとの共加硫成分が少ないため接着力が低下する傾向があり、他方、ゴムラテックスの比率が多すぎると、接着剤被膜として充分な強度を得にくく、接着力や耐久性が低下する傾向がある。また、接着処理した繊維コードの粘着性が高くなり、接着処理工程やベルト成型工程でカムアップや取り扱い性などの工程通過性が低下するおそれがある。
【0049】
レゾルシンとしては、予めオリゴマー化したレゾルシン-ホルマリン初期縮合物やクロロフェノールとレゾルシンをホルマリンとオリゴマー化した多核クロロフェノール系レゾルシン-ホルマリン初期縮合物を、必要に応じて単独で、あるいは組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本発明の複合繊維コード中のゴム成分ともなるゴムラテックスとしては、例えば、水素添加アクリロニトリルーブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンラテックス、イソプレンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックス、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックスを例示することができ、これらを単独または併用して使用することができる。樹脂層の強度を高めることができることから、ゴムラテックスとしては、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックス(Vp-SBRラテックス)を用いることが特に好ましい。さらには繊維コードの単糸の表面にあらかじめエポキシ化合物を処理し、さらにその表面のRFL接着剤中のゴムラテックスとしてVp-SBRラテックスを用いることが、親和性が高め接着性を向上させるためには好ましい。
【0051】
さらにレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂には、架橋剤を併用することも好ましい。架橋剤としては、アミン、エチレン尿素、ブロックドイソシアネート化合物などを例示することができる。なかでも、処理剤の経時安定性がよく、前処理剤との相互作用が良好なことから、ブロックドイソシアネート化合物が好ましい。ブロックドイソシアネート化合物の具体例としては、ジメチルピラゾールブロック、メチルエチルケトンオキシムブロック、カプロラクタムブロックのブロックドイソシアネートを例示することができる。これら二種類以上を組み合わせることも好ましい。
【0052】
RFL接着剤に用いる架橋剤の添加量は、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス樹脂の全重量あたり、0.5~40重量%であることが好ましい。さらに好ましくは10~30重量%である。添加量を増やすことにより、接着力が向上する。ただし添加量が多すぎると接着剤のゴムに対する相容性が低下し、逆にゴムとの接着力が低下する場合がある。
【0053】
このようなレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス樹脂は、本発明の複合繊維コードの最外層のゴム成分としてすべての撚糸後に処理しても良いが、より好ましい態様としては、先に述べた最表面の被膜となるゴム糊成分の内層として用いることが好ましい。その場合は3回の全て撚糸後にレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス処理(RFL処理)とゴム糊処理(ゴム糊付着処理)を行っても良いが、さらには撚糸の途中段階や撚糸の前にRFL処理を行い、全ての撚糸が終了した後の工程にてゴム糊処理(ゴム糊付着処理)を行うことが好ましい。
【0054】
また本発明の複合繊維コードに用いる高弾性率繊維や低弾性率繊維は、上記のようなゴム成分を付着させる前に、あらかじめエポキシ処理を行ったものであることが好ましい。特にこのエポキシ処理は高弾性率繊維においてより効果的である。パラ型芳香族ポリアミド繊維を始めとする高弾性率繊維は、一般的に表面が不活性であるため、他の物質と接着しづらいからである。被着体のゴムとの十分な接着性を得るためには、複合繊維コードとする前の各単繊維を、エポキシ化合物で表面処理して用いることが好ましい。このようなエポキシ表面処理を行い、さらにレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂を併用した場合、特にマトリックスゴムと繊維との化学的親和性を向上させることができるのである。また高弾性率繊維のみエポキシ処理し、低弾性率繊維はエポキシ処理しない態様も好ましい。低弾性率繊維は比較的表面活性が高く、エポキシ処理しない態様でもエポキシ処理した高弾性率繊維と同等な接着性を発揮し、さらに柔軟な繊維コードを得やすくなる。
【0055】
このようなエポキシ化合物は、繊維束全体の表面のみにではなく、繊維束を構成する繊維の単糸それぞれの表面に付着していることが好ましい。そのためには、製糸の際など撚糸を行う前に行うことが好ましい。撚糸を一旦行った後では、繊維束の内部の単糸の表面に十分に付着させることが困難になる。
【0056】
繊維に対するエポキシ化合物の固形分付着量は、繊維の重量を基準として、好ましくは0.05~5.0重量%である。さらに好ましくは0.2~2.0重量%である。付着量が少ないと単糸の表面に形成されるエポキシ樹脂の層が薄くなり、繊維の単糸同士の密着性や、単糸とその後付与するレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂等との密着性を得ること困難な傾向にある。他方、付着量が多すぎると、エポキシ樹脂によって単糸同士が強く集束されてしまい、結果的に繊維コードが硬くなり、耐屈曲疲労性が低下する傾向にある。
【0057】
このような繊維の表面処理に用いるエポキシ化合物としては、具体的には、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシドとの反応生成物、レゾルシン、ピス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノールと前記ハロゲン含有エポキシドとの反応生成物、過酢酸または過酸化水素等で不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、すなわち3,4-エポキシシクロヘキセンエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3、4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル)アジベートを挙げることができる。
【0058】
これらのうち、多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応生成物が特に好ましく、多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物のようなポリエポキシド化合物と硬化剤により生成される化合物も好ましい。ポリエポキシド化合物を用いる場合には、乳化剤、例えばアルキルベンゼンスルフォン酸ソーダ、ジオクチルスルフォサクシネートナトリウム塩を用いて、乳化液としてもよい。
【0059】
ポリエポキシド化合物には、アミン系やイミダゾール系の硬化剤、ポリイソシアネートとオキシム、フェノール、カプロラクタムなどのブロック化剤との付加化合物であるブロックドポリイソシアネート、エチレンイミンとの反応化合物であるエチレン尿素を併用してもよい。
【0060】
ポリエポキシ化合物を用いる場合、ポリエポキシド化合物の重量をA重量部とし、硬化剤、ブロックドポリイソシアネートおよびエチレン尿素の重量をB重量部としたときの両者の関係が、0.05≦(A)/〔(A)+(B)〕≦0.9の条件を満たすことが好ましい。この範囲であると、特に良好な接着性を得ることができる。
【0061】
このようなエポキシ処理は先に述べたように特に高弾性率繊維により効果的であるが、同時に低弾性率繊維に用いることも好ましい。特に一般的に表面が不活性なポリエステル繊維を使用する場合、高弾性率繊維と同様に、エポキシド化合物による処理を施すことが、特に効果的である。一方、脂肪族ポリアミド繊維やポリビニルアルコール繊維、レーヨン繊維のような、接着性に優れる繊維の場合、先ほど述べたように処理しないことが効果的な場合がある。
【0062】
特にこのエポキシ処理は先に述べたRFL処理と併用することが好ましく、エポキシ化合物の処理の後にレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス樹脂の処理を行うことが好ましい。これらの処理はその目的に応じ、共に撚糸処理の前に実施しても良いし、撚糸処理の後、または前後に実施することも好ましい。
【0063】
特に好ましくは、製糸工程で予めエポキシ化合物で処理された原糸について、撚糸処理の前にRFL処理を実施し、さらに撚糸後にゴム糊処理を行う方法である。そのように処理することで、より繊維束内部に各種接着剤成分が含浸するため、良好な接着力を得られ、好ましい。
【0064】
本発明のゴム補強用の複合繊維コードにおいては、このような接着剤等の各種の成分の繊維コードへの総付着量としては、複合コード中の繊維以外の付着物の総量が、繊維重量当たり10.0~25.0重量%であることが好ましい。
【0065】
本発明の複合繊維コードは、高弾性率繊維からなる繊維束Aと、低弾性率繊維からなる繊維束Bから構成される複合繊維コードであって、上記のような接着剤成分由来のゴム成分を含有するものであるが、本発明の繊維コードにおいては、高弾性率繊維と、低弾性率繊維とを上記の特定の撚り方法で撚糸した構造とすることで、ゴム補強用として最適な物性を実現できることとなった。低伸長領域では低弾性率繊維由来の低い弾性率を示し、高伸長領域では高弾性率繊維由来の高い弾性率を示す複合コードとなったのである。
【0066】
さらには本発明の複合繊維コードとしては、破断時の強度が10.0cN/dtex以上、破断時の伸度が5.0%~8.0%、2.0%伸長時の荷重が4.0cN/dtex以下、かつ5.0%伸長時の荷重が6.0cN/dtex以上であることが好ましい。さらには破断時の強度としては、10.0~20.0cN/dtexであることが好ましい。また、2.0%伸長時の荷重は0.5~4.0cN/dtex、5.0%伸長時の荷重が10.0~15.0cN/dtexの範囲であることが好ましい。
【0067】
このように高強力の繊維コードであるにも関わらず、2.0%までの低伸長時の荷重や弾性率を低く抑えることにより、加工性、特に低弾性率のゴムとの加工性を良くすることが可能となった。また2.0~5.0%までの実用的な伸長時の弾性率を高くすることにより、本発明の複合繊維コードによって補強されたゴム製品は、優れた耐疲労性を確保することが可能となった。本発明の複合繊維コードは、成型加工時の伸張によるゴム組成物成形性と、その後のゴム成形物使用時の剛性を、同時に満たすことが可能となったのである。
【0068】
また、本発明のゴム補強用の繊維複合コードは、JIS K7017の3点曲げ装置にて測定される曲げ強さとして、20MPa以下であることが好ましい。さらには0.5~10MPaの範囲にあることが好ましい。JIS K7017の3点曲げ装置にて測定される曲げ強さは、コードの硬さに比例するが、大きすぎると(硬すぎると)、最終的にゴム製品にした時の耐屈曲疲労性が低下する傾向にある。本発明のコードは、基本特性に加えてさらにコードを柔軟にすることによって、繊維単糸間の集束が緩やかになり、繊維の屈曲歪や結晶構造におけるキンクバンドの発生を減少させることが可能となる。特に高弾性率繊維として、分子構造が剛直な芳香族ポリアミド繊維を用いた場合に、有効である。
【0069】
このような柔軟な繊維コードを得るためには、表面に処理される接着剤成分を変更するほか、その処理工程において、繊維コードに緩やかな屈曲等を与えて柔軟化処理を行うことが効果的である。特にエポキシ化合物、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂、ゴム糊等の接着剤成分の中でも、繊維コードに緩やかな屈曲を与えることで過剰に付着しているレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂の層を物理的に破壊する柔軟化工程を採用することが効果的である。
【0070】
このような本発明のゴム補強用の複合繊維コードの製造方法としては、もう一つの本発明である、高弾性率繊維からなる繊維束Aと、低弾性率繊維からなる繊維束Bから構成される複合繊維コードの製造方法であって、繊維束Aが下撚りと上撚りが逆方向に諸撚りされた繊維束であり、繊維束Aと繊維束Bとを合糸し、繊維束Aの上撚り方向と逆方向にさらに上撚りし、その後または途中工程にてゴム成分を付着処理する製造方法を採用することで得ることができる。
【0071】
高弾性率繊維や低弾性率繊維及びそれらの繊維からなる高弾性率繊維からなる繊維束Aと、低弾性率繊維からなる繊維束Bは、それぞれ前述したものを用いることができる。
【0072】
繊維に付着処理するゴム成分としては、前述したゴム糊またはRFL樹脂由来の成分を用いることができる。さらには繊維があらかじめエポキシ化合物処理されていることや、最表面に溶剤系または水系のゴム糊処理を行うことが好ましい。特には中間段階にてRFL処理を行うことや、エポキシ化合物処理、RFL処理、ゴム糊処理を順に行うことが好ましい。
【0073】
本発明の複合繊維コードの製造方法に好ましく用いられる表面処理の方法を、さらに詳細に述べる。
【0074】
まずは、好ましい態様の一つである、高弾性率繊維や低弾性率繊維などの繊維を、エポキシ化合物で表面処理をする方法を群述する。この処理は、特に高弾性率繊維としてパラ型芳香族ポリアミド繊維を用いる場合や、低弾性率繊維としてポリエステル繊維を用いる場合に、特に好適である。
【0075】
エポキシ化合物を繊維に表面処理する際には、エポキシ化合物を含む溶液を各繊維の製糸工程で油剤と混合して繊維の単糸に付着させることができる。あるいは、各繊維の製糸後、製糸工程とは別の工程で、エポキシ化合物を含む油剤(乳化剤)を各繊維の単糸に付着させ、加熱処理することが好ましい。熱処理する場合、油剤付着処理後100~250℃の温度で10~120秒間熱処理することが好ましい。
【0076】
例えば、ポリエポキシド化合物を用いて表面処理する場合、ポリエポキシド化合物と、硬化剤、ブロックドポリイソシアネートもしくはエチレン尿素とを含む乳化液を、芳香族ポリアミド繊維等の各繊維の製糸工程で、油剤と混合して繊維の単糸に付着させ、または各繊維の製糸後、製糸工程とは別の工程でこの油剤(乳化剤)を繊維の単糸に付着させ、油剤の付着後に、100~250℃の温度で10~120秒間の熱処理をすることが好ましい。
【0077】
また、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂からなる接着剤を処理する方法としては、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂やそれを含む溶液を繊維にローラーで接触させる、ノズルから溶液を繊維に噴霧して塗布する、溶液に繊維を浸漬するといった手段を採用することができる。
【0078】
レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂の含有量を制御するためには、圧接ローラーによる絞り、スクレバーによるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターなどの手段を用いることができる。含有量を増加するためには、複数回、繊維に付着させてもよい。
【0079】
レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂は、この樹脂を含む溶液に、処理すべき繊維を接触、例えば浸漬や塗布した後、乾燥、熱処理を行うことで含有させることができる。熱処理条件としては、例えば100℃~250℃の温度で60~300秒間の乾燥、熱処理を行うことが好ましい。さらには、100~180℃の温度での60~240秒間の乾燥、次いで200~245℃の温度での60~240秒間の多段の熱処理を行うことが好ましい。
【0080】
乾燥および熱処理の温度が低すぎると、最終的に得られる複合コードと、ゴム補強の場面で使用されるゴムとの接着が不十分となる傾向にある。他方、乾燥および熱処理の温度が高すぎると、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂が高温下で空気酸化され、得られる複合コードとゴム補強の場面で使用させるゴムとの接着活性が低下する傾向がある。
【0081】
本発明のゴム補強用の複合繊維コードの製造方法では、高弾性率繊維からなる繊維束Aと、低弾性率繊維からなる繊維束Bには撚りを掛けることが必須である。上記の表面処理であるレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂による処理を、撚りをかける前に施した場合、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂を多量に含む粘度の高い溶液がより含浸しやすく、接着性が向上する傾向にある。ただしこの場合は撚りを掛けたのちに、さらにその表面にゴム糊処理を行うことが好ましく、複合繊維コード表面のゴム成分は、ゴム糊由来のものとなり、内層のゴム成分がRFL中のゴムラテックス由来のものとなる。一方、すべての撚りを掛けたのちにRFL処理を行うこともでき。この場合は複合繊維コード表面のゴム成分は、RFL中のゴムラテックス由来のものとなる。
【0082】
なお、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂を、高弾性率繊維Aと、低弾性率繊維Bに含有させる処理を行う前に、繊維の単繊維の広がりを抑制し取扱い性を保つために、まず撚り係数TM=0.1以下のわずかな撚りを施し、その後にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂の溶液に浸漬するなどして接触させて、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂を含有させる処理をし、その後にさらに撚りを施して繊維コードにする態様は、工程通過性や作業性が向上し、繊維コードの内部への樹脂の含浸も容易であるために好ましく、特に良好な接着性を得ることができる方法である。
【0083】
本発明の複合コードの製造方法についての好ましい具体的な態様の一つとしては下記のような方法がある。第一に高弾性率繊維Aの表面をエポキシ化合物で表面処理し、その後、単繊維に実質的に意図的な撚りを施すことなく、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂を含む溶液に浸漬処理する。得られた樹脂を含浸した繊維糸条に下撚り(撚り1)を施し、その下撚糸からなる撚り糸を2本以上束ねて、下撚り方向と逆方向に上撚り(撚り2)した諸撚りの撚糸コードとする。一方、同様にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)樹脂を付着させた低弾性率繊維Bを、下撚り(撚り4)または下撚りをすることなく、高弾性率繊維Aの諸撚り糸と併せて合撚(撚り3)した後、その表面にカーボンブラックと酸化亜鉛を含む樹脂および又はゴム被膜を付着させる方法である。
【0084】
特には本発明の複合繊維コードの最表面には、樹脂および/またはゴムからなりカーボンブラックと酸化亜鉛とを含む被膜を設けることが好ましい。方法としては、これらの成分を含む溶液に繊維コードを接触させ、乾燥する方法が適用できる。より具体的には、例えば複合繊維コードを処理液に浸漬し、その後80~180℃の温度で60~300秒間の乾燥および熱処理することが好ましい。乾燥および熱処理の温度が不足すると乾燥が不十分となり、工程通過性が悪化する傾向にある。他方、乾燥および熱処理の温度が高すぎると、接着成分が高温下で失活し、接着活性が低下してしまう傾向がある。
【0085】
本発明の製造方法では、さらにレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂を含有させる工程等において、繊維コードに緩やかな屈曲を与えることで、過剰に付着しているレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂の層を破壊する柔軟化を行うことも効果的である。
【0086】
このような本発明のゴム補強用の複合繊維コードは、引張強度、加硫時の伸長性、加硫成型後の実使用時の高弾性率、耐疲労性、ゴム接着性に優れた補強用の複合繊維コードである。そして、タイヤ、ホース、ベルト等の用途のゴム補強用繊維コードとして有用である。さらには伝動ベルトの心線やタイヤコードとして好適に用いられる。特には、ベルト側面に露出する摩擦伝動ベルトや歯付ベルトの心線に用いることや、特には加硫時に伸長性が求められる難成形性の伝動ベルトの心線として、好適に用いることができる。
【0087】
本発明のゴム補強用の複合繊維コードは、耐久性と破断強力の向上により、伝動ベルトの長寿命化を期待できる。そしてその他、伝動ベルトの小型化や細幅化による、軽量化や伝達効率の向上等の省エネルギー化をももたらすことが可能である。
【実施例】
【0088】
以下、実施例をあげて本発明を説明する。なお、本発明の実施例における評価は下記の測定法で行った。レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂は「RFL」と略すことがある。
【0089】
(1)コード繊度およびコード径
JIS L1017に準じて測定して、コード繊度(重量)およびコード径(コードゲージ)を測定した。
【0090】
(2)曲げ強さ
繊維コードについてJIS K7017の3点曲げ装置にて測定した。応力は以下の式で計算した。エッジスパン長は25mmで試験速度は25mm/min.で実施した。
[曲げ強さ]=([曲げ荷重]×8Lv)/(π×D3)
(但し、Lvはエッジスパン長、Dはコードゲージ(コード径)を表す。)
【0091】
(3)引張強度、破断伸度、2.0%伸長時の荷重、5.0%伸長時の荷重
ASTM D885に準じて引張試験を実施し、測定した。最終的な処理をした繊維コードの繊度を使用して計算した。破断伸度は、高弾性率繊維の破断時の伸度とし、高弾性率繊維の破断後に、低弾性率繊維が破断せずに残った場合の伸度は、考慮しないこととした。
【0092】
(4)繊維コードの剥離接着力
剥離接着力は繊維コードとゴムとの剥離接着力を示す値である。ゴムシート表層近くに7本の繊維コードを埋め、温度150℃で30分間、1MPaのプレス圧力で加硫し、次いで両端の2本の繊維コードを取り除き、残りの5本の繊維コードをゴムシートから200mm/分の速度で剥離し、そのときに要した力を繊維コード本数で割り、繊維コード1本当たりの接着力を算出した。評価に用いるゴムとしては、下記の配合組成で作製したEPDMゴムを用いた。
(EPDMゴムの配合組成)
エチレン-プロピレン-ジエンゴム: 100重量部
カーボンブラック: 35重量部
酸化亜鉛: 5重量部
ステアリン酸: 1重量部
老化防止剤: 2重量部
シリカ: 20重量部
加硫促進剤: 2重量部
レゾルシン・ホルマリン共重合体: 2重量部
ヘキサメトキシメチロールメラミン: 2重量部
硫黄: 1重量部
【0093】
(5)繊維コードの屈曲疲労後強力保持率
繊維コードに0.4cN/dtexの荷重をかけて直径10mmφのローラーに取り付け、100rpmの往復運動をさせ、100,000回の繰返し屈曲を行ったのち、繊維コードを取り出して残強力を測定し、屈曲疲労後強力保持率を求めた。
【0094】
[実施例1]
(エポキシ処理)
高弾性率繊維Aとして芳香族ポリアミド繊維(コポリパラフェニレン・3、4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製 テクノーラ 1670dtex、1000フィラメント、弾性率650cN/dtex)を準備した。
【0095】
この芳香族ポリアミド繊維に、デナコールEX-313(グリセロールポリグリシジルエーテル、ナガセケムテックス株式会社製)17.5gに界面活性剤としてネオコールSW-30(ジオクチルスルフォサクシネートナトリウム塩、第一工業製薬株式会社製)14.5g、ピペラジン4g、水656.2gから成る固形分濃度3.7重量%のエポキシ溶液によって表面処理し、乾燥後、巻き取りを実施することにより、単糸表面にエポキシ化合物が処理された芳香族ポリアミド繊維を得た。
【0096】
同様に1100dtex/249フィラメントのポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維、帝人株式会社製、「テトロン」「P952NL」、弾性率92cN/dtex)を上記のエポキシ溶液によって表面処理し、エポキシ処理されたポリエステル繊維を得た。
【0097】
(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂処理液)
レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6であるレゾルシン-ホルマリン初期縮合物(スミカノール700S、住友化学株式会社製、濃度65重量%)19.8gを、水154.5gに10%苛性ソーダ水5.0gと20%アンモニア水19.9gを加えたアルカリ水溶液に溶解し、これにビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックス(ニポール2518FS、日本ゼオン株式会社製、濃度40重量%)415gと水368.9gを添加した。この液に、37%ホルマリン水16.8g、およびメチルエチルケトンオキシムブロックジフェニルメタンジイソシアネート(DM6400、明成化学工業株式会社製、濃度42%)を添加し、20℃で48時間熟成して、固形分濃度20重量%のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂を含む水分散体(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂処理剤)を調製した。
【0098】
(ゴム成分処理液)
クロロスルホン化ポリエチレンゴム固形分165gと、酸化亜鉛30gと、カーボンブラック5gと、添加剤としてεカプロラクタムブロックドジフェニルメタンジイソシアネート固形分100gと、水700gとを混合し、固形分濃度30重量%の水系分散体(ゴム成分処理液)とした。
【0099】
(撚糸処理)
上記のエポキシ処理された1670dtex/1000フィラメントの芳香族ポリアミド繊維を、コンピュートリーター処理機(CAリッツラー製ディップコード処理機)を用いて、上記のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂処理剤中に浸漬処理した後、130℃で2分間乾燥し、引き続き235℃で1分間熱処理を行い、RFL処理された芳香族ポリアミド繊維を得た。
【0100】
得られた芳香族ポリアミド繊維はその後引き続き、Z方向に撚り係数2.0(165回/m)の撚り(撚り1)を掛けた下撚り糸2本とし、それらをS方向に撚り係数2.9(165回/m)の撚り(撚り2)で上撚りし、アラミド繊維(コポリパラフェニレン・3、4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維)の諸撚りコードを得た。
【0101】
一方、前述のエポキシ処理された1100dtex/249フィラメントのポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)を、同様にコンピュートリーター処理機(ディップコード処理機)を用いて、上記のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂処理剤中に浸漬処理した後、130℃で2分間乾燥し、引き続き235℃で1分間熱処理を行い、RFL処理されたポリエステル繊維を得た。
得られたポリエステル繊維はその後引き続き、S方向に撚り係数1.8(180回/m)の撚り(撚り4)を施した。
【0102】
さらにその後、上述の芳香族ポリアミド繊維の諸撚りコード1本とポリエステル繊維の片撚り糸1本とを併せて、Z方向に撚り係数3.6(180回/m)の合撚(撚り3)を施し、複合撚糸コードを得た。
【0103】
最後に再度コンピュートリーター処理機(ディップコード処理機)を用いて、上記で得られた複合撚糸コードを、上記の酸化亜鉛とカーボンブラックを含むゴム成分処理液(固形分濃度30重量%)に浸漬した後に、定長で150℃、120秒間の乾燥を行い、最表面層にゴム成分の被膜(オーバーコート)を有する複合繊維コードを得た。ゴムとの補強時には、適度の伸びによりゴムとの成形性に優れ、耐屈曲疲労性などの物性に優れたものであった。複合繊維コードの処理条件を表1に、得られた複合繊維コードの評価結果を表2に示す。
【0104】
[実施例2]
最後の合撚(撚り3)時の条件を撚り係数3.6(180回/m)から、撚り係数2.0(100回/m)で施した以外は実施例1と同様にして複合繊維コードを得た。複合繊維コードの処理条件を表1に、得られた複合繊維コードの評価結果を表2にまとめて示す。
【0105】
[実施例3]
合撚(撚り3)後の酸化亜鉛とカーボンブラックを含むゴム成分処理液による処理を行わず、最表面の被膜(オーバーコート)を有しない以外は同様の複合繊維コードを得た。複合繊維コードの処理条件を表1に、得られた複合繊維コードの評価結果を表2にまとめて示す。
【0106】
[実施例4]
実施例1のエポキシ処理とRFL処理を最初の撚糸(撚り1)の前から、最後の合撚(撚り3)後に行う順番に変更し、その後は実施例1と同様に酸化亜鉛とカーボンブラックを含むゴム成分処理液による処理を行い、最表面に被膜(オーバーコート)を有する複合繊維コードを得た。実施例1と比較し、複合繊維コード内部へのRFL接着剤の含浸は少ないものであった。複合繊維コードの処理条件を表1に、得られた複合繊維コードの評価結果を表2にまとめて示す。
【0107】
[実施例5]
実施例1の芳香族ポリアミド繊維を共重合タイプからポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製 「トワロン」「T1000」1680dtex、1000フィラメント、弾性率680cN/dtex)に変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維コードを得た。複合繊維コードの処理条件を表1に、得られた複合繊維コードの評価結果を表2にまとめて示す。
【0108】
[実施例6]
実施例1のエポキシ処理されたポリエステル繊維を、エポキシ処理を行っていない1400dtex/210フィラメントのポリアミド繊維(ナイロン66繊維、旭化成株式会社製、「レオナT5」、弾性率84cN/dtex)に変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維コードを得た。複合繊維コードの処理条件を表1に、得られた複合繊維コードの評価結果を表2にまとめて示す。
【0109】
[実施例7]
最後の合撚(撚り3)時の条件を撚り係数3.6(180回/m)から、撚り係数1.2(60回/m)で施した以外は実施例1と同様にして複合繊維コードを得た。
複合繊維コードの処理条件を表1に、得られた複合繊維コードの評価結果を表2にまとめて示す。
【0110】
[比較例1]
実施例1の諸撚りの芳香族ポリアミド繊維に代えて、Z方向に撚り係数2.4(200回/m)の片撚りを施した芳香族ポリアミド繊維の下撚り糸2本を用い、これにZ方向に撚り係数2.0(200回/m)の片撚りを施したポリエステル繊維を合わせ、最後にS方向に撚り係数3.7(200回/m)で合撚糸処理した以外は、実施例1と同様にして、複合繊維コードを得た。複合繊維コードの処理条件を表1に、得られた複合繊維コードの評価結果を表2にまとめて示す。
【0111】
【0112】