(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】壁掛け衛生器具の取付構造および施工方法
(51)【国際特許分類】
E03D 11/14 20060101AFI20220614BHJP
H02G 3/02 20060101ALI20220614BHJP
H02G 3/12 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
E03D11/14
H02G3/02
H02G3/12 030
(21)【出願番号】P 2018053185
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】征矢 正章
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-031140(JP,A)
【文献】特開平11-148164(JP,A)
【文献】特開2002-300710(JP,A)
【文献】特開2006-283520(JP,A)
【文献】実開平03-005786(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/00-13/00
H02G 3/02
H02G 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内装として設置される壁面に対し、壁掛け衛生器具を前記壁面の裏側から支持する架台
を複数台用意し、
各前記架台に、
前記壁掛け衛生器具の周辺の壁面内に配置され、前記壁面の裏側の給水配管と、前記壁面の手前の給水配管とを接続する
よう配管を接続するニップルである接続点部材と、
前記壁掛け衛生器具の周辺の壁面内に配置され、前記壁面の裏側の電気配線と、前記壁面の手前の電気配線とを接続する
電源アウトレットボックスである接続点部材と
を
支持し、
各前記架台は、
床面に底板にて固定されると共に前記底板の上側にそれぞれ垂直方向に沿って伸びる2本の柱材にて前記壁掛け衛生器具を支持する下脚部と、
該下脚部に対して左右および上方を包囲するよう取り付けられる周辺取付部と
を備え、
該周辺取付部には、前記壁掛け衛生器具の周辺の壁面内に配置されるニップルである接続点部材と電源アウトレットボックスである接続点部材とを前面を面一に配し、かつ前記壁掛け衛生器具に対するニップルである接続点部材と電源アウトレットボックスである接続点部材の位置関係を各前記架台すべてに統一して支持し、
前記壁掛け衛生器具を設置する壁面には、ニップルである接続点部材と電源アウトレットボックスである接続点部材との各々の適宜開口が開設されて後から前記架台に設置する
ことを特徴とする壁掛け衛生器具の取付構造。
【請求項2】
前記周辺取付部は、前記下脚部の前面をなす部材の周囲に取り付けられる縁材を備えていること
を特徴とする
請求項1に記載の壁掛け衛生器具の取付構造。
【請求項3】
前記ニップルである接続点部材および電源アウトレットボックスである接続点部材と前記下脚部の前記底板との位置関係は固定されるが、前記柱材の前記壁掛け衛生器具の固定部は上下に移動可能となっていること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁掛け衛生器具の取付構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の壁掛け衛生器具の取付構造を用い、
前記壁面の裏側の給水配管と、前記壁面の手前の給水配管とを接続する接続点部材と、
前記壁面の裏側の電気配線と、前記壁面の手前の電気配線とを接続する接続点部材を取り付けた前記架台を設置するステップの後に、
前記壁面を設置するステップを実行すること
を特徴とする壁掛け衛生器具の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の壁面に設置される壁掛け衛生器具を取り付けるための構造、および衛生器具を取り付ける際の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内には、ボード壁やパネル壁として構成される壁面に対し、便器のような衛生器具が取り付けられる場合がある。このような壁掛け衛生器具を取り付ける際の構造に関する技術として、例えば、下記特許文献1に記載の取付部材がある。下記特許文献1に記載の取付部材は、床面に固定される底板と、該底板の前部から垂直方向に延びる柱材を備えており、便器の背面の左右が一対の柱材の前面に固定されるようになっている。柱材と底板は壁面の裏側と一部内側に位置するように設置され、便器および該便器を支持する一部の部材が壁面から突出する形で、壁掛式の便器が壁に対して取り付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、便器が設置される壁面には、下地として鉄鋼等の構造材が内側に設けられる。軽量鉄鋼下地等と称されるもので、洗面所の間仕切り等に設けられる下地(軽量鉄鋼壁下地)の場合、壁の上下端にあたる位置にランナと呼ばれるコの字断面の部材を配置し、その間にスタッドと呼ばれる部材を垂直方向に沿って立て、それらの表面にボードやパネルを貼って壁面とする。このような下地を備えた壁の壁面に、上記特許文献1に記載の如き取付部材により便器を設置する場合には、取付部材と下地とが互いに干渉しないように配置を決めて施工する必要がある。
【0005】
また、便器のような衛生器具を設置する場合、器具洗浄用の水を引き込み、また衛生器具から水を排出するための配管をあわせて施工する必要がある。さらに、近年ではおしりシャワー機能や暖房便座機能といった付加機能を備えた便器、便器ケーシング内に電動フラッシュ弁を内蔵した便器等が一般化しており、それらに電力を供給するための電源アウトレットボックスや配線も便器の周辺に必要である。おしりシャワー機能を備えた便器の場合、便器内を洗浄するための水のほかに、シャワーへの上水を供給する給水配管も別途備えなくてはならない。壁面には、こうした配管設備や電気設備を取り付けるための工事も必要であるし、その際には、これらが壁面内の下地と干渉しないように施工する必要がある。
【0006】
建物の内装として設置される壁面に、衛生器具として便器を設置する場合の施工手順の一例を、
図4にフローチャートとして示す。まず、壁面の位置の墨出しをする(ステップS1)。建物の床面等に、壁を設置する位置を、壁面を構成するボードや下地(ランナ、スタッド)の配置がわかるよう、インク等により描き出す。続いて、墨出しされた壁面の位置に基づき、衛生器具を設置するための取付部材の位置の墨出しをする(ステップS2)。すなわち、ステップS1で墨出しされた壁面のどの位置に衛生器具を設置するかを描き出す。このとき、ランナやスタッドの位置ずらし要求等も合わせて描き込む。続いて、衛生器具を固定する取付部材を、ステップS2にて墨出しされた衛生器具の位置に合わせて設置する(ステップS3)。その上で、壁面を構成する下地を設置する(ステップS4)。設置される壁が上述の軽量間仕切りである場合、下地としてランナやスタッドを立てる。下地を設置したら、該下地に対し、図面内で配管設備や電気設備の寸法出しをする(ステップS5)。設置される予定の壁面に対し、配管設備や電気設備を設置する開口等を設ける位置を図面内で決定した後、開口周囲を補強するためのスタッドやランナの追加材料の墨出しをする。墨出しに基づき、ボードやパネルに開口が設けられ、下地に貼り付けられて壁面が形成される(ステップS6)。配管設備、電気設備を設置する(ステップS7)。つまり、給水のための配管や給水口、電気の供給のための電源ボックスや電気配線を設置する。便器を設置し、配管の水圧テスト等を行い、施工が完了する。
【0007】
このように、壁面に便器等の衛生器具を取り付ける場合、壁面と衛生器具との兼ね合い上、壁面に関する施工工程と、衛生器具や配管設備、電気設備に関する施工工程が複雑に交錯する。衛生器具や配管設備、電気設備に係る工事のほとんどは、壁面に係る工程がほぼ終了するまでは開始できないからである。そして通常、壁面を施工する者(建築業者等)と、衛生器具や配管設備、電気設備を施工する者(設備業者等)は異なる。
図4に即して説明すると、ステップS1,S4,S6は建築業者等が行うが、ステップS2,S3,S5,S7は設備業者等が行う。このため、
図4に示す如き手順を実行するにあたっては、同一の現場において施工を作業を行う者が頻繁に入れ替わったり、あるいは両者の間でその都度打ち合わせを行うことが必要になるなど、手順が複雑化して工期の長期化を招く要因となっていた。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、壁掛け衛生器具を取り付けるにあたって工程を簡略にし得る衛生器具の取付構造および施工方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、建物の内装として設置される壁面に対し、壁掛け衛生器具を前記壁面の裏側から支持する架台を複数台用意し、
各前記架台に、
前記壁掛け衛生器具の周辺の壁面内に配置され、前記壁面の裏側の給水配管と、前記壁面の手前の給水配管とを接続するよう配管を接続するニップルである接続点部材と、
前記壁掛け衛生器具の周辺の壁面内に配置され、前記壁面の裏側の電気配線と、前記壁面の手前の電気配線とを接続する電源アウトレットボックスである接続点部材と
を支持し、
各前記架台は、
床面に底板にて固定されると共に前記底板の上側にそれぞれ垂直方向に沿って伸びる2本の柱材にて前記壁掛け衛生器具を支持する下脚部と、
該下脚部に対して左右および上方を包囲するよう取り付けられる周辺取付部と
を備え、
該周辺取付部には、前記壁掛け衛生器具の周辺の壁面内に配置されるニップルである接続点部材と電源アウトレットボックスである接続点部材とを前面を面一に配し、かつ前記壁掛け衛生器具に対するニップルである接続点部材と電源アウトレットボックスである接続点部材の位置関係を各前記架台すべてに統一して支持し、
前記壁掛け衛生器具を設置する壁面には、ニップルである接続点部材と電源アウトレットボックスである接続点部材との各々の適宜開口が開設されて後から前記架台に設置する
ことを特徴とする壁掛け衛生器具の取付構造にかかるものである。
【0010】
本発明の壁掛け衛生器具の取付構造において、前記周辺取付部は、前記下脚部の前面をなす部材の周囲に取り付けられる縁材を備えていることが好ましい。
【0011】
本発明の壁掛け衛生器具の取付構造において、前記ニップルである接続点部材および電源アウトレットボックスである接続点部材と前記下脚部の前記底板との位置関係は固定されるが、前記柱材の前記壁掛け衛生器具の固定部は上下に移動可能となっていることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上述の壁掛け衛生器具の取付構造を用い、
前記壁面の裏側の給水配管と、前記壁面の手前の給水配管とを接続する接続点部材と、前記壁面の裏側の電気配線と、前記壁面の手前の電気配線とを接続する接続点部材を取り付けた前記架台を設置するステップの後に、
前記壁面を設置するステップを実行すること
を特徴とする壁掛け衛生器具の施工方法にかかるものである。
【0014】
本発明の壁掛け衛生器具の取付構造および施工方法によれば、壁面に衛生器具を取り付けるにあたって工程を簡略にし得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施による壁掛け衛生器具の取付構造の形態の一例を示す斜視図である。
【
図2】本実施例の壁掛け衛生器具の取付構造により、壁掛け衛生器具を壁面に取り付けた状態の一例を示す正面図である。
【
図3】本実施例の壁掛け衛生器具の取付構造により、壁掛け衛生器具を取り付ける際の施工の手順の一例を説明するフローチャートである。
【
図4】壁掛け衛生器具を取り付ける際の従来における施工の手順の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1、
図2は本発明の実施による壁掛け衛生器具の取付構造の形態の一例を示している。本実施例の壁掛け衛生器具の取付構造は、便器等である壁掛け衛生器具1を、建物の内装として設置される壁面2に取り付けるための架台3を備えている。尚、以下では便器等である壁掛け衛生器具1に着座した使用者にとっての向きを基準として、前後および上下左右の方向を規定するものとする。
【0018】
架台3は、床面4に固定され、壁掛け衛生器具1を支持する下脚部5と、該下脚部5に給水ニップル6や電源アウトレットボックス7といった接続点部材を支持する周辺取付部8を備えている。
【0019】
下脚部5の構成は、上記特許文献1に記載の取付部材と共通しており、2枚の底板9の上側に、それぞれ垂直方向に沿って延びる柱材10を備えている。底板9にはそれぞれ4つの貫通孔9aが備えられ、図示しないボルト等の固定構造により、底板9が床面4に固定されるようになっている。
【0020】
一対の柱材10は、垂直方向に沿って平行に伸び、下脚部5および架台3の前面をなしている。柱材10は、例えば金属板を屈曲したアングル材で形成され、下部は図示しない取付具や、あるいは溶接によって底板9に固定される。柱材10の上部には、壁掛け衛生器具1を固定するための固定部10aが設けられている。固定部10aは、例えば柱材10を前後に貫通する長孔と、ボルトやナット等の締結具を備え、ここに壁掛け衛生器具1の上部が固定される。固定部10aの長孔は、上下方向に長手方向を有し、下脚部5に対する衛生器具1の固定位置を上下方向に調整できるようになっている。
【0021】
柱材10の下部には、一対の柱材10同士を連結する横材11を取り付けるための連結部10bが備えられている。連結部10bは、例えば柱材10を前後に貫通する長孔と、ボルトやナット等の締結具を備えている。横材11は、例えば垂直方向に沿った面をなして左右に延びる板材であり、両端部がそれぞれ柱材10の連結部10bと連結されるようになっている。横材11の左右方向中間部には、前方に突出する支持部11aが備えられており、柱材10の固定部10aに上部を固定された壁掛け衛生器具1の下部が支持部11aに当接するようになっている。そして、壁掛け衛生器具1の自重や、衛生器具1に着座した使用者の重みにより、固定部10aを中心に生じるモーメントを支持部11aにおいて受け止め、衛生器具1の姿勢を保つようになっている。
【0022】
こうして、底板9や柱材10、横材11といった部材の主要な部分は壁面2の裏側に隠れ、固定部10aの一部(ボルトやナット等)や支持部11aが壁面2を構成するボードやパネルから露出した状態で、壁掛け衛生器具1が下脚部5により壁面2に対して支持される。
【0023】
そして、本実施例の特徴は、架台3を構成する下脚部5にさらに周辺取付部8を備え、該周辺取付部8に、壁掛け衛生器具1の周辺に配置される給水ニップル6や電源アウトレットボックス7といった接続点部材を取り付けた点にある。尚、本明細書でいう接続点部材とは、壁面2の裏側に位置する配管や配線の構造と、手前側に位置する配管や配線の構造とを壁面2の位置で接続する部材を指す。本実施例では、壁掛け衛生器具1として大便器を想定しており、大便器である壁掛け衛生器具1の設置および使用にあたって特に好適である給水ニップル6や電源アウトレットボックス7を接続点部材として想定しているが、本発明を実施するにあたり、架台3に取り付けられる接続点部材はこれに限定されるものではなく、壁掛け衛生器具1の周辺の壁面2に配置され得る接続点部材であれば適用することができる。
【0024】
また、本実施例では下脚部5として、上記特許文献1に記載の取付部材と共通する構造のものを説明したが、下脚部5の構成はこれに限定されない。下脚部5を含む架台3の全体が、壁面2に取り付けられる壁掛け衛生器具1を好適に支持できるようになっていれば、どのような構成であっても良い。ただし、もともと壁掛け衛生器具1を設置する目的で設計されている部材を下脚部5として使用し、該下脚部5に周辺取付部8を追加で取り付けるようにすれば、より簡単に本実施例の如き架台3を構成することができる。
【0025】
周辺取付部8は、下脚部5の左右および上方を包囲するコの字型の部材であり、下脚部5の上方に位置する縁材(上縁材)8a、右に位置する縁材(右縁材)8b、左に位置する縁材(左縁材)8cを備えて構成されている。右縁材8bは、下脚部5を構成する右側の柱材10の右側に、該柱材10に沿って前面を面一にして配置され、柱材10の右側面に対して固定される。左縁材8cは、下脚部5を構成する左側の柱材10の左側に、該柱材10に沿って前面を面一にして配置され、柱材10の左側面に対して固定される。上縁材8aは、左右の縁材8b,8cの上端部同士の間に張り渡される形で設置され、両端部は左右の縁材8b,8cと連結している。
【0026】
縁材8a,8b,8cは、コの字型を構成する全体を一枚の金属板を折り曲げて形成することもできるし、あるいはアングル材や棒状の部材同士をコの字型に接続することで形成しても良い。また、縁材8b,8cを下脚部5に連結するにあたっては、図示しない締結具等を用いても良いし、溶接しても良い。下脚部5の周囲に、給水ニップル6や電源アウトレットボックス7といった接続点部材を好適に支持できるようになっていれば何でも良い。
【0027】
給水ニップル6は、例えば便器である壁掛け衛生器具1に水を供給するための給水配管6c,6dを接続する部材である。本実施例では、便器である衛生器具1がおしりシャワー機能を備えている場合を想定し、右縁材8bの下部の右側、および上縁材8aの左側端部寄りの位置に、それぞれ接続点部材として給水ニップル6a,6bを取り付けている。衛生器具1の使用時においては、おしりシャワー用の水(上水)が給水ニップル6aから、器具洗浄用の水(上水または中水)が給水ニップル6bから、それぞれ供給される。
【0028】
電源アウトレットボックス7は、例えば壁掛け衛生器具1が電気によって作動する機構(シャワー機能や、暖房便座機能、非接触スイッチ等によりフラッシュ弁を作動させる電動フラッシュ弁機構等)を備えている場合に、壁掛け衛生器具1へ電気を供給するための電気配線の電源接続点をなす。本実施例の場合、右縁材8bの下部の上下方向中間部、および上縁材8aの右側端部寄りの位置に、それぞれ電源アウトレットボックス7a,7bを取り付けている。壁掛け衛生器具1の使用時においては、便器である壁掛け衛生器具1のおしりシャワー機能や、暖房便座機能といった各種機能を動作させるための電力が電源アウトレットボックス7aから、また、図示しない自動フラッシュ機構を動作させるための電力が電源アウトレットボックス7bから、それぞれ供給される。
【0029】
電源アウトレットボックス7aは、右縁材8bに直接取り付けられるのではなく、右縁材8bの右側に突出するように設けた突出部8dの右側に取り付けられている。これは、電源アウトレットボックス7aが衛生器具1に対しあまり近接して配置されると、衛生器具1が設置された状態において電源アウトレットボックス7aを使用しにくいといった配慮によるものである。
【0030】
電源アウトレットボックス7a,7bは、周辺取付部8に前面が面一となるように配置される。そして、最終的な設置状態においては、下脚部5と同様、周辺取付部8本体が壁面2の裏側に隠れる。また、給水ニップル6a,6bおよび電源アウトレットボックス7a,7bは、衛生器具1の周囲の壁面2において、ランナ2aやスタッド2bの手前側の面と前面を合わせるように設置される。
【0031】
給水ニップル6や電源アウトレットボックス7といった接続点部材を壁面2に配置するにあたっては、壁面2を構成するボードに適宜開口を設けてその縁に化粧材を施し、接続点部材をボード厚分だけ奥まった位置に配置する。給水ニップル6は、例えば壁面2を構成するボードに穴を空けた奥に見通せて位置するように設置し、接続時には給水配管6c,6dを手前よりボードを貫通した状態でボードの表と裏から締結する。
【0032】
ここで、接続点部材を壁面2のボード面表面に露出することとしてもよい。給水ニップル6は、例えば壁面2をなすボードの厚みに合わせて貫通して頭が出るよう設定し、該ボードを貫通して所定の雄ねじ長露出するように設置し、表側からナット等の締結具により固定する。接続時には、ボードの表裏の給水配管6c,6dを給水ニップル6を介して接続する。また、電源アウトレットボックス7は、例えば塗り代カバーを縁化粧の代わりにボードの表側からボックス本体に嵌め込み、壁面2に電源プラグの差込口が露出するように固定する。
【0033】
このように、本実施例の壁掛け衛生器具1の取付構造においては、架台3に周辺取付部8を設け、壁掛け衛生器具1の周囲に配置される給水ニップル6や電源アウトレットボックス7を、架台3に一体的に取り付けるようにしている。このため、後述する壁掛け衛生器具1や壁面2の施工時において、配管設備や電気設備といった周辺の設備の位置決めに係る工程を省略し、施工工程を簡略化することができる。
【0034】
すなわち、本実施例のようにすれば、現場における施工の工程に先んじて、工場において給水ニップル6や電源アウトレットボックス7を架台3に対して設置し、これらの接続点部材の配置を固定してしまうことができるのである。また、複数の壁掛け衛生器具1の設置を予定している場合、現場でそれらの壁掛け衛生器具1に対して一つひとつ接続点部材6,7の位置決めを行うのではなく、壁掛け衛生器具1を支持する架台3の全台に対し、工場にて一括で給水ニップル6や電源アウトレットボックス7の取り付け作業を行うことができる。したがって、各壁掛け衛生器具1に対する給水ニップル6や電源アウトレットボックス7の位置関係を容易に統一することができる。現場において複数の壁掛け衛生器具1を設置するにあたり、各壁掛け衛生器具1の周辺の壁面2の寸法等を測定し、個別に給水ニップル6や電源アウトレットボックス7の位置決めをすることで寸法や位置関係を統一するような手間が不要である。ほとんどの場合、特定の工事現場に設置する壁掛け衛生器具1は、同一の洗面所内に複数が設置される場合は無論のこと、異なった階の間でも同じ形式の壁掛け衛生器具1が採用されることが多く、このような現場への衛生器具1の設置において、狭い作業環境で慌しい現場に入る前に工場という別環境で下準備を行い、接続点部材6,7を衛生器具1に対して先に位置決めできる本実施例の如き構成は特に便利である。
【0035】
本実施例の如く、壁掛け衛生器具1を壁面2に取り付ける架台3を利用して周辺の給水ニップル6や電源アウトレットボックス7といった接続点部材を取り付けることは、壁掛け衛生器具1の周辺に設置されるこれらの部材の配置にあたって特に便利である。架台3を構成する下脚部5は、もともと壁掛け衛生器具1を壁面2に対し好適に取り付けるべく、壁掛け衛生器具1に対向する面をなす柱材10や横材11のうち、一部部材(固定部10aや支持部11a)を除く大部分が壁面2をなすボードやパネルの裏側に沿うように配置されるようになっている。そこで、本実施例においては、柱材10のなす面に沿うよう、柱材10の周囲に縁材8a,8b,8cを備えて周辺取付部8を形成し、ここに壁掛け衛生器具1周辺の壁面2に配置される給水ニップル6や電源アウトレットボックス7を取り付けるようにしている。このようにすれば、もともと壁面2を構成するボードの裏側に沿う面をなして配置されるよう設計された柱材10に対し、前後方向における位置を合わせるように給水ニップル6や電源アウトレットボックス7を配置することになるので、これらの接続点部材6,7を壁面2に対し、前後方向に関して適切な位置に簡単に配置することができるのである。
【0036】
また、前後方向に直交する向きに関する位置は、周辺取付部8を構成する各部材(縁材8a,8b,8c)の幅や長さ、下脚部5への取付位置等により適宜調整することができる。一部の部材(ここでは、電源アウトレットボックス7a)に関し、衛生器具1から特に大きく離間させる必要がある場合には、適宜突出部8dのような構造を設け、下脚部5から離れた位置に設置すれば良い。
【0037】
また、従来であれば壁面2によって支持していた給水ニップル6や電源アウトレットボックス7を、本実施例のように架台3に取り付けるようにすることで、これらの器具をより強固に固定できるという利点もある。架台3は、壁面2を構成するボードや下地(ランナ2aやスタッド2b。
図2参照)と比較して、取り付けに必要な剛性や強度を確保しやすい。器具の取り付けに際し、後付けの金具等も不要であり、作業も簡便である。
【0038】
次に、上記した架台3を用い、衛生器具1や壁面2を設置する際の施工手順の一例を、
図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0039】
まず、壁面の位置の墨出しをする(ステップS11)。建物の床面4等に、壁面2を設置する位置を、壁面を構成するボードや下地(ランナ、スタッド)の配置がわかるよう、インク等により描き出す。続いて、墨出しされた壁面の位置に基づき、衛生器具を設置するための取付部材の位置の墨出しをする(ステップS12)。すなわち、ステップS11で墨出しされた壁面2のどの位置に衛生器具1を設置するかを描き出す。このとき、ランナやスタッドの位置ずらし要求等も合わせて描き込む。ここまでは、従来例(
図4参照)におけるステップS1,S2と同様である。
【0040】
続いて、衛生器具1を固定する架台3を、ステップS12にて墨出しされた衛生器具1の位置に合わせて設置する(ステップS13)。ここで、架台3には予め、周辺取付部8を介して給水ニップル6や電源アウトレットボックス7が配置されている(
図1、
図2参照)。
【0041】
架台3を設置したら、壁面2の設置(ステップS14)に先行して、あるいは並行して、配管設備や電気設備の施工(ステップS15)を行うことができる。
【0042】
ステップS15は、各給水ニップル6a,6bにそれぞれ水を導く給水配管6c,6d、および、各電源アウトレットボックス7a,7bにそれぞれ電気を導く給電ケーブル(電気配線)7c,7dを設置し、接続する。本実施例の場合、配管設備のうち給水ニップル6a,6bの設置は済んでおり、また、電気設備のうち電源アウトレットボックス7a,7bの設置は済んでいるので、このステップS15では給水ニップル6a,6bおよび電源アウトレットボックス7a,7bの設置は必要ない。
【0043】
配管や配線の設置が済んだら、例えば給水ニップル6に閉止プラグを仮止めし、給水主管から給水ニップル6a,6bまでの配管の水圧テストを行う。また、コンセント差込口までの電気配線を電源アウトレットボックス7a,7bに接続したら、絶縁試験を行う。
【0044】
一方、ステップS14では、まず
図2に一点鎖線にて示す如く、架台3や、その周辺に配置された給水ニップル6、電源アウトレットボックス7を避けるように、壁面2の構成材である下地としてのランナ2aやスタッド2bを設置する。そして、ステップS15にあたる各種の工事の後、壁面2を構成するボードやパネルに所定の開口を施して下地に貼り付け、架台3のうち壁面2から突出する箇所に壁掛け衛生器具1が掛けられて固定される。さらに、壁面2の表側および裏面から接続点部材以降の配管工事、電気工事を行い、一連の施工が完了する。
【0045】
ここで、従来であれば、下地を設置した上で、設置を予定される壁面に対して配水器具や電気器具の位置決め(寸法出し)をし、開口を設けたボードを下地に貼り付けてから該配水器具や電気器具を設置する必要があった(
図4、ステップS4~S6参照)。一方、本実施例において、ステップS15は、ステップS14の壁面2の設置に先行して、あるいはステップS14と平行して行うことができる。従来の施工方法(
図4参照)では、壁面2の下地を設置し、また補強下地材を設置してから該壁面に対して各接続点部材を設置して給水配管を配管し、給電ケーブルを配線するという順序で各手順を実行せざるを得ず、配管設備や電気設備の施工は早くとも壁面の下地の施工後となっていたが、本実施例では壁面2の設置に先行して配水器具や電気器具が設置されるので、壁面2の設置の完了を待たずに給水配管6c,6dや給電ケーブル(電気配線)7c,7dの施工を行うことができるのである。
【0046】
このように、本実施例の場合、架台3に予め給水ニップル6や電源アウトレットボックス7が配置されているので、寸法出しの工程を省略し、工程同士の交錯を減らして手順を単純化することができる。こうして、給水ニップル6や電源アウトレットボックス7の設置に関する工程の一部を省略して施工に係る手間や時間を節減することができる。同一の現場において施工を作業を行う者が入れ替わる手間や、各ステップの施工者間で打ち合わせを行う手間を節減することができ、工期の大幅な短縮を図ることができる。
【0047】
ステップS15をステップS14に先行して実施する場合には、ランナ2aやスタッド2bが林立した狭い空間で工事する必要がないので、各設備の設置作業を楽に実行でき、工事費も安価に抑えることができる。また、ステップS15をステップS14と平行して実施する場合には、工期を一層短縮することができる。
【0048】
以上のように、上記本実施例の壁掛け衛生器具の取付構造においては、建物の内装として設置される壁面2に対し、壁掛け衛生器具1を壁面2のボードやパネルの裏側から支持する架台3に、壁掛け衛生器具1の周辺の壁面2内に配置され、壁面2の裏側の給水配管と、壁面2の手前の給水配管とを接続する接続点部材6と、壁掛け衛生器具1の周辺の壁面2内に配置され、壁面2の裏側の電気配線と、壁面2の手前の電気配線とを接続する接続点部材7とを支持している。こうすることにより、壁掛け衛生器具1や壁面2の施工時において、周辺の設備の位置決めに係る工程を省略し、施工工程を簡略化することができる。また、接続点部材6,7をより強固且つ簡便に固定することができる。
【0049】
本実施例の衛生器具の取付構造において、壁面2の裏側の給水配管と、壁面2の手前の給水配管とを接続する接続点部材6は、配管を接続する給水ニップルであり、壁面2の裏側の電気配線と、壁面2の手前の電気配線とを接続する接続点部材7は電源アウトレットボックスであるので、便器等である壁掛け衛生器具1を設置し、使用するにあたって特に好適である。
【0050】
本実施例の壁掛け衛生器具の取付構造において、架台3は、床面4に固定されると共に衛生器具1を支持する下脚部5と、該下脚部5に対して取り付けられ、壁掛け衛生器具1の周辺の壁面2内に配置される接続点部材6,7を支持する周辺取付部8とを備えているので、より簡単な構成で本発明を実施することができる。
【0051】
本実施例の壁掛け衛生器具の取付構造において、周辺取付部8は、下脚部5の前面をなす部材(柱材10)の周囲に取り付けられる縁材8a,8b,8cを備えているので、もともと壁面2に沿って配置されるよう設計された部材(柱材10)に対し、前後方向における位置を合わせるように接続点部材6,7を配置することになり、これらの接続点部材6,7を壁面2に対し、前後方向に関して適切な位置に簡単に配置することができる。
【0052】
また、本実施例の衛生器具の施工方法においては、上述の壁掛け衛生器具1の取付構造を用い、壁面2の裏側の給水配管と、壁面2の手前の給水配管とを接続する接続点部材6と、壁面2の裏側の電気配線と、壁面2の手前の電気配線とを接続する接続点部材6,7を取り付けた架台3を設置するステップS13の後に、壁面2を設置するステップS14を実行するようにしている。こうすることにより、壁面2の設置の完了を待たずに配管設備や電気設備の設置を行うことができる。
【0053】
したがって、上記本実施例によれば、壁掛け衛生器具を取り付けるにあたって工程を簡略にし得る。
【0054】
尚、本発明の壁掛け衛生器具の取付構造および施工方法は、上述の実施例にのみ限定されるものではない。例えば、壁掛け衛生器具としては大便器のほかに小便器やその他の器具も想定し得ること等、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1 衛生器具(便器)
2 壁面
3 架台
4 床面
5 下脚部
6 給水ニップル(接続点部材)
7 電源アウトレットボックス(接続点部材)
8 周辺取付部
8a 縁材(上縁)
8b 縁材(右縁)
8c 縁材(左縁)
10 部材(柱材)