(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】筒状ラベル連続体のレーザー印刷方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20220614BHJP
G09F 3/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B23K26/00 B
G09F3/00 D
G09F3/00 Q
G09F3/00 G
(21)【出願番号】P 2018058588
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 重徳
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-120252(JP,A)
【文献】特開2003-195436(JP,A)
【文献】特開2006-305889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
G09F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
向かい合った一対の折り目にて第1面部と第2面部に区画され且つ前記第1面部と第2面部の内面同士が向かい合った状態の筒状ラベル連続体の、前記第1面部から第2面部方向にレーザー光を照射し、所望の表示を形成するレーザー印刷方法であって、
前記筒状ラベル連続体が、フィルムそのものがレーザー照射によって所望の表示を生じる筒状フィルムを有し、
前記筒状ラベル連続体の内側にスペーサー部材を介在させることにより、前記筒状ラベル連続体の第1面部の内面と第2面部の内面を離反させた状態で、前記レーザー光を照射する、筒状ラベル連続体のレーザー印刷方法
で、
前記スペーサー部材が、前記第1面部の内面に対面した第1板部と、前記第1板部の第1面部とは反対側に配置された第2板部と、を有し、
前記第1板部が、前記レーザー光を透過する材料から形成され、
前記第2板部が、前記レーザー光を吸収する材料から形成されている、筒状ラベル連続体のレーザー印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状ラベルにレーザー光を用いて所望の表示を印刷する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料容器などの各種被着体の周囲に筒状ラベルが装着された、包装体が広く流通している。
筒状ラベルは、通常、長尺帯状のフィルムを筒状に形成した筒状ラベル連続体を、所定長さに切断することによって得られる。
機械的且つ連続的に包装体を製造する場合には、長尺帯状のフィルムを筒状に形成した筒状ラベル連続体を扁平状に折り畳み、これをロールに巻き取り、このロールをラベラーに装填し、ロールから筒状ラベル連続体を引き出してライン上に送り、被着体の直前で筒状ラベル連続体を所定長さに切断して1つの筒状ラベルを形成し、その筒状ラベルを開口させた状態で被着体に被せて装着するという一連の工程が行われる。
前記筒状ラベルには、グラビア印刷法などによって、様々なデザイン表示が予め印刷されている。前記デザイン表示は、定型的であるが、例えば、商品の製造年月日、賞味期限、懸賞キャンペーンを行っている場合の懸賞応募IDなどのような表示は、個別的に決定される非定形的なものであり、前記デザイン表示とは別個に印刷されることが多い。
このような非定形的な表示は、例えば、レーザー印刷によって印刷できる。
【0003】
例えば、特許文献1には、レーザー発色剤を含む表層と中間層とレーザー発色層を含む裏層とを有する熱収縮性の積層フィルムを、筒状に形成した筒状ラベルが開示されている。
上述のように、筒状ラベルは、通常、扁平状に折り畳んだ筒状ラベル連続体の形態で提供されるので、レーザー印刷も、扁平状に折り畳んだ筒状ラベル連続体に対して行われる。
【0004】
詳しくは、筒状ラベル連続体は、概念的には、筒状ラベルが連続的に繋がったものと言える。この筒状ラベル連続体(筒状ラベル)は、通常、向かい合った一対の折り目にて扁平状に折り畳んだ状態で、ラベラーのライン上を搬送される。扁平状の筒状ラベル連続体は、一対の折り目にて区画された第1面部と第2面部の内面同士が向かい合った状態となっている。この扁平状の筒状ラベル連続体の第1面部の外面に対して、第1面部から第2面部方向にレーザー光を照射することにより、第1面部の所定領域に所望の表示が形成される(つまり、第1面部にレーザー印刷できる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、扁平状に折り畳んだ筒状ラベル連続体に、上記のようにレーザー印刷した際に、第1面部だけでなく、第2面部にも表示が形成されることがあるという問題がある。
本来、第1面部の所定領域のみにレーザー印刷しようとしているにも拘わらず、予期せぬ第2面部にもレーザー照射により表示が表れると、筒状ラベルのデザイン性が低下する。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、フィルムそのものがレーザー照射によって所望の表示を生じる筒状フィルムを含む筒状ラベル連続体において、所定領域のみに表示を形成できるレーザー印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点の原因について鋭意研究した。
レーザー印刷できる筒状ラベルとしては、特許文献1のようなフィルムそのものがレーザー光で発色などする筒状ラベルと、フィルムそのものは発色しないが、そのフィルムの一部分にレーザー光で発色する発色インキ層が設けられた筒状ラベルと、が知られている。両筒状ラベルについて、レーザー印刷を試みたところ、前者の筒状ラベルでは上記問題が生じ、後者の筒状ラベルでは上記問題が生じなかった。
この点、さらに研究したところ、前者の筒状ラベルはフィルムそのものがレーザー印刷可能であるので、扁平状の状態で第1面部から第2面部方向にレーザー光を照射すると、レーザー光の焦点が第1面部だけでなく第2面部にも合ってしまい、第2面部に表示が生じることが判ってきた。
この問題は、そのものがレーザー印刷可能なフィルムを用いた筒状ラベルの特有の問題と言え、後者の筒状ラベルでは気付けない問題である。かかる知見の下、本発明を完成した。
【0009】
本発明の筒状ラベル連続体のレーザー印刷方法は、向かい合った一対の折り目にて第1面部と第2面部に区画され且つ前記第1面部と第2面部の内面同士が向かい合った状態の筒状ラベル連続体の、前記第1面部から第2面部方向にレーザー光を照射し、所望の表示を形成するレーザー印刷方法であって、前記筒状ラベル連続体が、フィルムそのものがレーザー照射によって所望の表示を生じる筒状フィルムを有し、前記筒状ラベル連続体の内側にスペーサー部材を介在させることにより、前記筒状ラベル連続体の第1面部の内面と第2面部の内面を離反させた状態で、前記レーザー光を照射する。
【0010】
そして、前記スペーサー部材が、前記第1面部の内面に対面した平坦な第1板部と、前記第1板部の第1面部とは反対側に配置された第2板部と、を有し、前記第1板部が、前記レーザー光を透過する材料から形成され、前記第2板部が、前記レーザー光を吸収する材料から形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の筒状ラベル連続体のレーザー印刷方法によれば、レーザー光を照射して、筒状ラベル連続体の第1面部の所定領域のみに表示を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】扁平状の筒状ラベル連続体を上斜めから見た斜視図。
【
図2】
図1の矢印II方向から見た図(扁平状の筒状ラベル連続体を軸方向から見た上面図)。
【
図4】扁平状の筒状ラベルを上斜めから見た斜視図。
【
図6】筒状ラベル連続体にレーザー印刷を行い、被着体に装着するまでのライン上での流れを示す概略参考図。
【
図8】
図7のVIII-VIII線で切断した断面図。
【
図13】第1変形例のスペーサー部材の断面図(第1変形例のスペーサー部材を
図10のXII-XII線と同様の箇所で切断)。
【
図14】第2変形例のスペーサー部材の断面図(第2変形例のスペーサー部材を
図10のXII-XII線と同様の箇所で切断)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本明細書において、ラベル基材の「表面」は、ラベル基材から形成される各種ラベルを被着体に装着した際に、外側となる面(被着体とは反対側の面)を指し、「裏面」は、その反対側の面(被着体側の面)を指す。「平面視形状」は、フィルムの表面に対して鉛直方向から見た形状をいう。
「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
なお、各図において、厚みや寸法などは、実際のものと異なっていることに留意されたい。
【0014】
[筒状ラベル連続体]
図1乃至
図3は、筒状ラベル連続体1を示している。
筒状ラベル連続体1は、概念的には、筒状ラベルがその軸方向に連続的に繋がったものである。軸方向は、筒状ラベル連続体1及び筒状ラベルを円筒状に開いた際に、その中心点を通る方向をいい、周方向は、その軸周り方向をいう。
すなわち、扁平状の筒状ラベル連続体1を、その軸方向所定長さで切断することにより(
図1の矢印箇所が切断箇所で、切断線を一点鎖線で示している)、軸方向長さが所定長さの筒状ラベルが得られる。
図4は、筒状ラベル連続体1から切り出した、1つの筒状ラベル10を示す。扁平状の筒状ラベル10は、容器などの被着体に装着する際には、
図5に示すように、筒状に開かれる。
【0015】
以下、筒状ラベル連続体1に対してレーザー印刷を行う場合を説明するが、筒状ラベル10(筒状ラベル連続体1から切り出した後)にレーザー印刷を行ってもよい。
筒状ラベル連続体1と筒状ラベル10は、前者が軸方向に非常に長いという点を除いて、基本的に同様な構成であるため、筒状ラベル10にレーザー印刷する方法については、筒状ラベル連続体1のレーザー印刷方法の説明中、「筒状ラベル連続体1」を「筒状ラベル10」に読み替えることにより、筒状ラベル10のレーザー印刷方法を説明したものとする。
【0016】
筒状ラベル連続体1は、筒状フィルム2を有する。筒状ラベル連続体1の筒状フィルム2は、長尺状である。長尺状とは、軸方向の長さが周方向の長さに比して十分に長い状態をいい、長尺状の筒状フィルム2の軸方向長さは、例えば、10m以上、好ましくは50m以上である。
筒状フィルム2は、長尺帯状のフィルムの第1側端部を第2側端部に重ね合わせ、その重ね合わせ部分2aを接着することによって筒状に形成されたものである。前記第1側端部と第2側端部の接着方法は、特に限定されず、溶剤を用いた溶着、接着剤を用いた接着などが挙げられる。
【0017】
筒状フィルム2を形成するフィルムは、レーザー照射により所望の表示が生じるフィルムが用いられる。
フィルムは、レーザー照射により、フィルムそのものに所望の表示を表すことができるものであれば特に限定されない。
このようなフィルムとしては、例えば、特開2014-26271号公報に記載のフィルムなどを用いることができる。
簡単に説明すると、フィルムとして、例えば、3層構造の積層体が用いられる。前記フィルムは、表層と、表層の裏面に積層された中間層と、中間層の裏面に積層された裏層と、からなる。ただし、
図2及び
図3では、フィルムを3層構造で表さず、1層で表している。
【0018】
表層の表面及び裏層の裏面は、平滑である。表層の表面側(フィルムの表面側)及び裏層の表面側(フィルムの裏面側)からレーザー光を照射することにより、中間層の内部に所望の表示が表れる。
中間層の内部に表示を良好に形成するためには、例えば、表層及び裏層の形成材料として中間層よりもレーザー光の吸収率の低い材料を用い、中間層の形成材料としてレーザー光の吸収率の高い材料を用いることが好ましい。また、これらの形成材料の熱的特性等を考慮して、積層フィルムの各層を適宜形成することができる。
【0019】
表層及び裏層の形成材料は、レーザー光を実質的に吸収及び反射せず、レーザー光によって溶融又は焼けないことを条件として、特に限定されない。表層及び裏層の形成材料は、例えば、それぞれ独立して、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂から選ばれる1種、又は2種以上の混合物などを主成分として含む。表層及び裏層の形成材料は、ポリスチレン系樹脂又はポリエステル系樹脂が好ましい。表層及び裏層は、同種の樹脂又は互いに異なる樹脂から形成されていてもよい。
表層及び裏層の厚みは、特に限定されないが、例えば、3μm~50μmである。
【0020】
中間層の形成材料は、レーザー光を吸収でき、所望の表示を生じるものであることを条件として、特に限定されず、上記のような樹脂を用いることができるが、中でもポリスチレン系樹脂を用いることが好ましい。中間層を形成するポリスチレン系樹脂の重量平均分子量は、例えば、1万~10万であり、好ましくは1.5万~8万であり、より好ましくは2万~6万である。表層及び裏層の形成材料がポリスチレン系樹脂である場合、その樹脂は、中間層を形成するポリスチレン系樹脂よりも重量平均分子量が大きいことが好ましい。
例えば、フィルムとしては、2種3層のフィルムが挙げられる。このような2種3層フィルムとしては、表層及び裏層が何れもポリエステル系樹脂から形成され且つ中間層がポリスチレン系樹脂から形成されたフィルム、又は、表層、中間層及び裏層が何れもポリスチレン系樹脂から形成されたフィルムなどが挙げられる。
中間層の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm~90μmであり、好ましくは、20μm~60μmである。
【0021】
フィルムは、内部に生じる表示を視認できるようにするため、透明なものが用いられる。フィルムの透明は、有色透明又は無色透明を含むが、好ましくは無色透明である。
フィルムの厚みは、特に限定されないが、例えば、15μm~120μmであり、好ましくは20μm~100μmである。
なお、上記フィルムは、レーザー照射により所望の表示が生じるフィルムの一例であり、これ以外に、特開2017-213875号公報に記載の3種5層のフィルム、特許文献1(特開2015-232610号公報)に記載のフィルム及び特許第4241122号に記載のフィルムのようなレーザー発色剤を含むフィルムなどを用いてもよい。
【0022】
前記フィルムは、熱収縮性及び/又は自己伸縮性を有するものでもよく、或いは、実質的に熱収縮性及び自己伸縮性を有さないものでもよい。前記熱収縮性は、所定温度(例えば、70℃~100℃)に加熱されることによって収縮する性質をいう。自己伸縮性は、引っ張り力を加えることによって伸張し、その後、引っ張り力を解除することによってほぼ元の状態に復元する性質をいう。
好ましくは、熱収縮性を有するフィルムが用いられる。熱収縮性を有するフィルムは、公知の成膜法によって得られる。例えば、合成樹脂及び各種の添加剤を配合した樹脂組成物を、ミキサーなどで混合し、押出機を用いて溶融しTダイスから押出し、これを延伸して熱セットすることによって得ることができる。延伸処理は、テンター方式、チューブ方式の何れでもよい。延伸処理は、通常、70~110℃程度の温度で、第1方向(例えば、製膜時のTD方向)に2.0~8.0倍、好ましくは3.0~7.0倍程度延伸することにより行われる。さらに、必要に応じて、第2方向(例えば、製膜時のMD方向)にも、例えば1.5倍以下の低倍率で延伸処理を行ってもよい。延伸処理によって、フィルムに熱収縮性を付与できる。
【0023】
前記熱収縮性を有するフィルムとしては、少なくとも第1方向(第1方向は、筒状フィルム2にした際に、その周方向となる)に主として熱収縮するフィルムが用いられ、第2方向に若干熱収縮又は熱伸長するフィルムを用いてもよい。前記第1方向は、フィルムの面内における1つの方向を意味し、第2方向は、前記面内において前記第1方向と直交する方向である。熱収縮性を有するフィルムの第1方向(主たる熱収縮方向)における熱収縮率は、特に限定されないが、好ましくは20%以上であり、より好ましくは、30%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。なお、前記第1方向における熱収縮率は、大きいほど好ましいが、それにも自ずと限界があるため、前記第1方向における熱収縮率は、理論上、100%未満である。前記フィルムが第2方向に熱変化するフィルムである場合、その第2方向における熱収縮率は、例えば、-3~15%であり、好ましくは0~10%である。前記熱収縮率のマイナスは、熱伸長を意味する。
ただし、前記熱収縮率は、加熱前(23℃標準気圧に24時間保管)のフィルムの長さ(元の長さ)と、85℃の温水中に10秒間浸漬した後のフィルムの長さ(浸漬後の長さ)と、の割合であり、下記式から求められる。
前記熱収縮率(%)=[{(第1方向(又は第2方向)の元の長さ)-(第1方向(又は第2方向)の浸漬後の長さ)}/(第1方向(又は第2方向)の元の長さ)]×100。
熱収縮性を有するフィルムを用いた場合には、少なくとも周方向に熱収縮しうる筒状フィルム2が得られ、自己伸縮性を有するフィルムを用いた場合には、周方向に伸縮しうる筒状フィルム2が得られる。
【0024】
なお、前記筒状フィルム2には、必要に応じて、所望の文字や絵柄などを表したデザイン印刷層及び/又は白色印刷層が設けられていてもよい。
デザイン印刷層や白色印刷層を筒状フィルム2の内面側に設ける場合には、透明なフィルムが用いられる。好ましくは、デザイン印刷層及び/又は白色印刷層を筒状フィルム2の内面側に設けられる。
図3を参照して、好ましい筒状ラベル連続体1は、デザイン印刷層21及び白色印刷層22が筒状フィルム2の内面に設けられる。両印刷層21,22が設けられる場合、白色印刷層22は、デザイン印刷層21の内面側に設けられる。
【0025】
デザイン印刷層21は、筒状フィルム2の内面の略全体に設けられていてもよいが、筒状フィルム2の内面のうち、第1面部41のレーザー印刷予定領域Zを除いた領域の一部又は略全体に設けられていることが好ましい。例えば、
図3のように、デザイン印刷層21は、第1面部41のレーザー印刷予定領域Z及びこの領域Zに対面する第2面部42の対面領域Wを除いた領域の一部又は略全体に設けられていてもよく、或いは、この対面領域Wにも設けられていてもよい(図示せず)。
【0026】
白色印刷層22は、筒状フィルム2の内面のうち、第1面部41のレーザー印刷予定領域Z及び第2面部42の対面領域Wを除いた領域の一部又は略全体に設けられていてもよいが、少なくともレーザー印刷予定領域Zに設けられていることが好ましく、少なくともレーザー印刷予定領域Z及び対面領域Wに設けられていることがより好ましい。図示例では、白色印刷層22は、筒状フィルム2の内面の略全体に設けられている。
レーザー印刷予定領域Z(特に、レーザー印刷予定領域Z及び対面領域W)に白色印刷層22が設けられていることにより、第1面部41のレーザー印刷予定領域Zにレーザー光を照射した際に、それが第2面部42の対面領域Wに作用し難く、第2面部に表示が生じることを確実に防止できる。
【0027】
さらに、筒状フィルム2には、必要に応じて、任意の機能層が設けられていてもよい(機能層は不図示)。前記機能層としては、表面保護層、滑り層などが挙げられる。デザイン印刷層や前記のような機能層は、通常、各種インキを用いた印刷法にて形成される。
本発明において、そのものがレーザー照射によって所望の表示を生じるフィルムの「そのもの」とは、成膜したフィルムそのものを意味し、上述のデザイン印刷層、白色印刷層及び機能層のような成膜したフィルムに付随される層(成膜後に付加される層)を含まない。このような層は、機械的強度が小さく、フィルムに付随するものであって、それ自体単独で層を維持できるものではない。
【0028】
図1乃至
図3に示すように、筒状ラベル連続体1は、通常、扁平状に折り畳まれた状態で、搬送、保管などに供される。
具体的には、柔軟な筒状ラベル連続体1(筒状フィルム2)は、円筒状に開くことができるが、通常、向かい合った一対の折り目3,3にて2つ折りにされ、全体的に扁平状にされている。
一対の折り目3,3は、筒状ラベル連続体1の周長を二分する箇所に形成され、軸方向に延びている。扁平状とされた筒状ラベル連続体1は、前記2つの折り目3,3にて第1面部41と第2面部42に区画されており、その第1面部41の内面41aと第2面部42の内面42aが向かい合って面接触している。なお、
図2及び
図3では、2つの折り目3,3を基準にして、その2つの折り目3,3で挟まれた紙面上側のフィルム部分が第1面部41であり、紙面下側のフィルム部分が第2面部42である。
【0029】
[レーザー印刷方法]
上記扁平状の筒状ラベル連続体1は、通常、芯材に巻き取られてロール品とされた状態で保管、運搬に供される。
このロール品から扁平状の筒状ラベル連続体1を引き出し、搬送装置で搬送し、レーザー印刷を行う。
扁平状の筒状ラベル連続体は、第1面部と第2面部の内面同士が略接した状態で搬送されるが、その状態で第1面部の所定領域に表示を形成すべく、第1面部から第2面部方向に(つまり、フィルムの厚み方向に)レーザー光を照射すると、第1面部でなく第2面部にも表示が形成されるおそれがある。
本発明では、扁平状の筒状ラベル連続体について、第1面部の内面と第2面部の内面を離反させた状態でレーザー光を照射するものである。このように離反させた状態にあっては、第1面部に焦点を合わせて照射したレーザー光は、第2面部に焦点が合わず、第2面部がレーザー印刷されることを防止できる。従って、筒状ラベル連続体の第1面部の所定領域のみに所望の表示を形成できる。
【0030】
図6は、筒状ラベル連続体1にレーザー印刷を行った後、筒状ラベル10を切り出し、その筒状ラベル10を被着体Aに装着するまでの流れを示す概略参考図である。
図7は、レーザー印刷を行う箇所(レーザー印刷部9)を拡大した正面図であり、
図8及び
図9は、
図7の断面図である。
レーザー印刷から被着体に装着する過程は、ラベラーのライン上で一連に行われることが多く、図示例は、このように一連に行われる場合を示している。
もっとも、本発明のレーザー印刷方法は、筒状ラベル連続体にレーザー印刷を行った後、芯材に巻き取ってロール品として保管などしてもよい(図示せず)。つまり、レーザー印刷と被着体の装着を別のラインで行ってもよい。
【0031】
図6を参照して、扁平状の筒状ラベル連続体1をロール品81から引き出し、ラベラーのレーザー印刷部9まで搬送する。
レーザー印刷部9には、筒状ラベル連続体1の内側に介在されるスペーサー部材5と、レーザー装置6と、が設けられている。
レーザー印刷部9には、スペーサー部材5を所定位置に保持する保持機構が具備されている。
保持機構は、スペーサー部材5に設けられた係止凸部71と、ライン設備に具備された左右一対のガイド72と、を有する。スペーサー部材5の上下一対の係止凸部71,71の間にガイド72を当て、一対のガイド72,72によってスペーサー部材5を挟持することにより、スペーサー部材5が所定位置に保持される。
なお、図示例では、係止凸部71は、スペーサー部材5の左右にそれぞれ上下一対設けられているが、左右の上方のみに設けられていてもよい。
【0032】
また、前記スペーサー部材5は、既存のラベラーのライン設備に新たに設けてもよい。既存ラベラーをそのまま利用でき且つ比較的安価に実施できることから、既存のラベラーに設置されているインナーガイドなどをスペーサー部材として使用してもよい。なお、インナーガイドは、例えば、筒状ラベル連続体にミシン目を形成した際に擬似的に付着する筒状ラベル連続体の内面同士を一旦離反させるための設備である。
【0033】
筒状ラベル連続体1は、このスペーサー部材5の外側であって、スペーサー部材5とガイド72の間に挿通され、搬送される。なお、
図7において、筒状ラベル連続体1を二点鎖線で表している。
筒状ラベル連続体1がスペーサー部材5の外側に挿通されているので、スペーサー部材5は、筒状ラベル連続体1の内側に介在されている。かかるスペーサー部材5は、扁平状の筒状ラベル連続体1の第1面部41の内面41aと第2面部42の内面42aを離反させ且つその離反間隔を維持するものである。
【0034】
スペーサー部材5について、
図10乃至
図12を参照して詳述すると、スペーサー部材5は、開口53aを有する枠部53と、その枠部53の開口53aに設けられた第1板部51と、その枠部53の枠内に設けられ且つ第1板部51に積層された第2板部52と、を有する。
また、枠部53の外側には、左右上下に各一対の係止凸部71が突設されている。係止凸部71は、上述のように、ガイド72と協働してスペーサー部材5を搬送ラインの所定位置に保持する保持機構を構成する。
【0035】
枠部53は、スペーサー部材5の外形を成しており、例えば、その外形は、正面視略矩形状で且つ側面視略細長い舟形状である。
枠部53の開口53aの形状は、特に限定されず、例えば、略矩形状、略円形状、略楕円形状などが挙げられる。
スペーサー部材5の外側に筒状ラベル連続体1を挿通した状態で筒状ラベル連続体1を円滑に搬送できるようにするために、係止凸部71が突設されている部分における枠部53の周長は、筒状ラベル連続体1の周長よりも小さく、好ましくは、筒状ラベル連続体1の周長×0.5~同周長×0.98である。
【0036】
スペーサー部材5の厚み(枠部53の厚み)は、レーザー印刷する際の、第1面部41の内面41aと第2面部42の内面42aの離反間隔に相当する。
スペーサー部材5の厚みは、特に限定されないが、余りに小さいと前記離反間隔が小さくなり過ぎることから、例えば、3mm以上であり、好ましくは5mm以上であり、より好ましくは7mm以上である。スペーサー部材5の厚みの上限は、特にないが、例えば、筒状ラベル連続体1の直径(筒状ラベル連続体1を円筒状に開いたときの直径)×1/3以下であり、好ましくは筒状ラベル連続体1の直径×1/5以下である。具体的な数値では、スペーサー部材5の厚みは、例えば、30mm以下であり、好ましくは20mm以下である。
なお、枠部53の横幅は、前記枠部53の周長及び厚みに基づいて適宜決定できる。
【0037】
枠部53の開口53aには、第1板部51及び第2板部52が固定的に設けられている。
第1板部51は、スペーサー部材5を筒状ラベル連続体1の内側に介在させた際に、筒状ラベル連続体1の第1面部41の内面41aに対面し、第2板部52は、第2面部42の内面42aに対面する。従って、第1板部51の表面51aは、第1面部41の内面41aに対面し、第2板部52の裏面52bは、第2面部42の内面42aに対面する。
第1板部51の表面51a、第2板部52の裏面52b並びに枠部53の表面及び裏面は、それぞれ独立して、凹凸面とされていてもよく、或いは、平滑な面とされていてもよい。第1面部41に綺麗にレーザー印刷できることから、少なくとも第1板部51の表面51aは平滑面であることが好ましい。また、筒状ラベル連続体1がスペーサー部材5に干渉し難くなることから、第1板部51の表面51a、第2板部52の裏面52b並びに枠部53の表面及び裏面は、図示のように、いずれも平滑面であることが好ましい。
【0038】
第1板部51の表面51aは、枠部53の表面から突出していてもよいが、枠部53の表面と面一又は枠部53の表面から内側に下がって配置されていることが好ましく、特に、図示のように、枠部53の表面と面一であることがより好ましい。
第2板部52の裏面52bは、枠部53の裏面から突出していてもよいが、枠部53の裏面と面一又は枠部53の裏面から内側に下がって配置されていることが好ましく、特に、図示のように、枠部53の裏面と面一であることがより好ましい。
第1板部51の表面積は、レーザー光が照射される範囲を考慮して適宜設定できる。つまり、レーザー光が照射される箇所に対応して第1板部51が存在するように、第1板部51の大きさは適宜設定される。
また、第2板部52は、第1板部51と略同じ面積に形成される。
なお、図示例では、枠部53と第2板部52は、同じ材料で一体的に形成されている。各断面図で、枠部53と第2板部52の概念上の境界を小破線で示している。
この第2板部52の表面に、接着剤などの固定手段を介して第1板部51の裏面が固定されることにより、第1板部51が枠部53に固定されている。
【0039】
第1板部51及び第2板部52は、いずれもレーザー光の反射率の小さい材料から形成されていることが好ましく、さらに、レーザー光を吸収し且つレーザー光で破損し難い材料から形成されていることがより好ましい。
レーザー光の小さい材料としては、レーザー光を透過する性質を有する材料、レーザー光を吸収する性質を有する材料などが挙げられる。
レーザー光を透過する性質を有し且つレーザー光を吸収し難い材料としては、ガラス、汎用樹脂などが挙げられる。
レーザー光を吸収する性質を有し且つレーザー光を透過しない材料としては、ステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属類、セラミックなどが挙げられる。
【0040】
本実施形態では、第1板部51は、レーザー光の反射率が小さい材料のうちレーザー光を透過し且つレーザー光を吸収し難い材料から形成され、第2板部52は、レーザー光の反射率が小さい材料のうちレーザー光を吸収し且つレーザー光を透過しない材料から形成されている。
具体的には、第1板部51がガラスで形成され、第2板部52及び枠部53がステンレスで形成されている。
【0041】
また、
図8及び
図9を主に参照して、レーザー装置6は、レーザー光63を照射するレーザー光源61と、その照射方向に配置されたレンズなどの集光光学系部材62と、を有する。レーザー光63の焦点は、スペーサー部材5の外側に挿通されて搬送される筒状ラベル連続体1の第1面部41に合うように調整されている。好ましくは、レーザー光63の照射方向が、第1面部41(及びスペーサー部材5の表面)に対して鉛直となるように調整されている。
レーザー光63としては、ファイバーレーザー光線(希土類元素がドープされたもの。波長=1,064nm)、YAGレーザー光線(イットリウム・アルミニウム・ガーネットレーザー光線。波長=1,064nm)や、YVO
4レーザー光線(イットリウム・バナデートレーザー光線。波長=1,064nm)などを使用できる。鮮明な表示を形成できることから、ファイバーレーザー光線又はYVO
4レーザー光線を用いることが好ましい。
なお、レーザー装置6は、従来からレーザー印刷に用いられているものを使用できる。
【0042】
図6乃至
図9を参照して、扁平状の筒状ラベル連続体1は、第1面部41の内面41aと第2面部42の内面42aが略接した状態で、ロール品81から引き出されて搬送される。レーザー印刷部9に至り、その筒状ラベル連続体1がスペーサー部材5の外側に挿通されると、少なくともスペーサー部材5の厚み分、第1面部41の内面41aが第2面部42の内面42aから離反した状態で搬送される。例えば、第1面部41の内面41aを、前記第2面部42の内面42aに対して3mm以上離反させた状態となる。スペーサー部材5に挿通されている間、第1面部41の内面41aが第1板部51の表面51aに略接し且つ第2面部42の内面42aが第2板部52の裏面52bに略接し、第1面部41及び第2面部42が第1板部51の表面51aに略平行な状態で、筒状ラベル連続体1が搬送される。
レーザー印刷部9において、筒状ラベル連続体1の第1面部41のレーザー印刷予定領域にレーザー光を照射することにより、筒状フィルム2の第1面部41に、所望の表示が形成される。所望の表示は、特に限定されず、文字や記号のほか、絵柄などであってもよい。
【0043】
本発明の方法によれば、筒状ラベル連続体1の第1面部41の内面41aと第2面部42の内面42aを離反させた状態でレーザー印刷するため、第2面部42にレーザー光が作用してそこに表示が形成されることを防止できる。
さらに、第1面部41の内面41aを、前記第2面部42の内面42aに対して3mm以上離反させた状態でレーザー光を照射することにより、第2面部42は、第1面部41に対して焦点を合わせて照射されたレーザー光の焦点から確実に外れるようになる。
【0044】
また、スペーサー部材5は、レーザー光の反射率が小さい材料から形成されているので、第1面部41を透過したレーザー光がスペーサー部材5で反射されて再び第1面部41に作用することを防止でき、従って、第1面部41に二重表示などが生じるおそれがない。
特に、スペーサー部材5のうちレーザー印刷予定領域に対応する領域が、レーザー光を吸収する材料で形成されている部分(上記では第2板部52)を有することにより、第2面部42にレーザー光が作用することを確実に防止できる。
【0045】
上述のように、スペーサー部材5のうち、第1板部51がレーザー光を透過し且つレーザー光を吸収し難い材料から形成され、第2板部52が、レーザー光を吸収し且つレーザー光を透過しない材料から形成されていることにより、第1面部41を透過したレーザー光が、第1板部51を透過し、第2板部52に吸収されるので、第2面部42に作用することがない。
なお、レーザー光を吸収する材料は、レーザー光に当たると少しずつ欠損するおそれがあるが、上記第2板部52の表面(レーザー光の照射側)には、第1板部51が配置されているので、レーザー光にて第2板部52が部分的に欠損しても、その第2板部52の欠損屑が飛散せず、欠損屑が第1板部51によって筒状ラベル連続体1の内面に付着することを防止できる。
【0046】
レーザー印刷部9にてレーザー印刷された筒状ラベル連続体1は、扁平状に戻された後、従来公知の工程を経て、被着体Aに装着される。
図6を参照して簡単に説明すると、レーザー印刷後の筒状ラベル連続体1は、スペーサー部材5を脱した後、ピンチロール82にて扁平状に戻され、テトラガイド83及びピンチロール84で折り直しされる。その後、カッターなどの切断装置85で、筒状ラベル連続体1を切断して扁平状の筒状ラベル10を得た後、それを筒状に開いて被着体Aに装着する。
なお、熱収縮性を有する筒状フィルム2を用いている場合には、被着体Aに外嵌した後、筒状ラベル10を加熱することにより、被着体に装着できる。
【0047】
上記実施形態では、スペーサー部材5の枠部53の開口53aが略四角筒状に形成され、その開口53aに略直方体状の第1板部51が嵌め込まれているが、これに限定されず、例えば、
図13に示すように、開口53aが略錐台筒状に形成され、その開口53aに略錐台状の第1板部51が嵌め込まれていてもよい。換言すると、開口53aが断面視でテーパ状に形成され、第1板部51も断面視でテーパ状に形成され、そのテーパ面を有する開口53aにテーパ面を対面させて第1板部51が嵌め込まれていてもよい。このようにテーパ状にすることにより、第1板部51が嵌め込み易くなる。
【0048】
上記実施形態では、スペーサー部材5は、材質の異なる第1板部51と第2板部52を有するが、例えば、
図14に示すように、第1板部51、第2板部52及び枠部53が1つの材料で一体的に形成されていてもよい。このような一体的に形成されているスペーサー部材5は、レーザー光の反射率が小さい材料で形成されていることが好ましく、さらに、レーザー光を透過し且つレーザー光を吸収し難い材料で形成されていることが好ましい。
なお、
図14に、第1板部51、第2板部52及び枠部53の概念上の境界を小破線で示している。
【0049】
また、上記実施形態では、スペーサー部材5は、枠部53の開口53aに第1板部51及び第2板部52が設けられているが、例えば、
図15及び
図16に示すように、枠部53の開口53aが開放されたままでもよい。
もっとも、上記実施形態のように、スペーサー部材5が、レーザー光の照射領域に対応して、第1面部41の内面41aに対面した表面(第1板部51の表面51a)を有することにより、レーザー印刷時に第1面部41が安定し、綺麗にレーザー印刷することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 筒状ラベル連続体
10 筒状ラベル
2 筒状フィルム
3 折り目
41 第1面部
41a 第1面部の内面
42 第2面部
42a 第2面部の内面
5 スペーサー部材
51 スペーサー部材の第1板部
52 スペーサー部材の第2板部
6 レーザー装置
9 レーザー印刷部