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特許7088726真空ポンプ、真空ポンプ検査装置、及び真空ポンプ検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】真空ポンプ、真空ポンプ検査装置、及び真空ポンプ検査方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
F04D19/04 H
F04D19/04 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018081112
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019190303
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100173680
【弁理士】
【氏名又は名称】納口 慶太
(72)【発明者】
【氏名】深美 英夫
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-185578(JP,A)
【文献】特開平01-116318(JP,A)
【文献】特開2012-193705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ軸と、
前記ロータ軸を回転させるモータと、
前記ロータ軸を磁気浮上させる磁気軸受と、
前記ロータ軸との間に所定の隙間を介在させた保護軸受と、
前記ロータ軸の位置を検出する変位センサと、
前記モータや前記磁気軸受の制御が可能な制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
少なくとも、前記ロータ軸が相対的に高速な自転を行う第1状態とすることと、前記磁気軸受の制御をOFFすることにより前記ロータ軸前記保護軸受との間の前記隙間の範囲内で偏倚させ、公転しながら相対的に低速な自転を行う第2状態とすることが可能であり、
前記変位センサの出力情報を取得し、
前記第2状態で、前記出力情報に基づく前記ロータ軸の回転方向を求め、
前記回転方向が正常か否かを判定し、
前記回転方向が正常でない場合にはその旨の報知出力を行うことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
ロータ軸と、
前記ロータ軸を回転させるモータと、
前記ロータ軸を磁気浮上させる磁気軸受と、
前記ロータ軸との間に所定の隙間を介在させた保護軸受と、
前記ロータ軸の位置を検出する変位センサと、
前記モータや前記磁気軸受の制御が可能な制御手段と、を備えた真空ポンプの検査に用いられる真空ポンプ検査装置であって、
前記ロータ軸を、少なくとも、相対的に高速な自転を行う第1状態とすることと、前記磁気軸受の制御をOFFすることにより前記保護軸受との間の前記隙間の範囲内で偏倚させ、公転しながら相対的に低速な自転を行う第2状態とすることが可能であり、
前記変位センサの出力情報を取得し、
前記第2状態で、前記出力情報に基づく前記ロータ軸の回転方向を求め、
前記回転方向が正常か否かを判定し、
前記回転方向が正常でない場合にはその旨の報知出力を行うことを特徴とする真空ポンプ検査装置。
【請求項3】
ロータ軸と、
前記ロータ軸を回転させるモータと、
前記ロータ軸を磁気浮上させる磁気軸受と、
前記ロータ軸との間に所定の隙間を介在させた保護軸受と、
前記ロータ軸の位置を検出する変位センサと、
前記モータや前記磁気軸受の制御が可能な制御手段と、を備えた真空ポンプの検査に用いられる真空ポンプ検査方法であって、
前記磁気軸受の制御をOFFすることにより、前記ロータ軸を、前記保護軸受との間の前記隙間の範囲内で偏倚させ、公転しながら相対的に低速な自転を行う状態とする工程と、
前記変位センサの出力に基づく前記ロータ軸の回転方向を求める工程と、
前記回転方向が正常か否かを判定する工程と、
前記回転方向が正常でない場合にはその旨の報知出力を行う工程と、を備えたことを特徴とする真空ポンプ検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばターボ分子ポンプ等の真空ポンプやその検査装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、真空ポンプの一種としてターボ分子ポンプが知られている(特許文献1など)。このターボ分子ポンプにおいては、ポンプ本体内のモータへの通電によりロータ翼を回転させ、ポンプ本体に吸い込んだガスの気体分子を弾き飛ばすことによりガスを排気するようになっている。また、このようなターボ分子ポンプには、モータとして3相式の直流ブラシレスモータを用いたものなどがある(特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3169892号公報
【文献】特許第5276586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなターボ分子ポンプにおいては、例えば製品出荷前の検査段階で、モータへの通電により適正な方向に回転するか否かの確認がある。回転方向の確認手法としては、モータを、例えば300rpm未満の低速で駆動し、検査者が目視により回転翼の回転方向を確認するものがある。また、回転方向の検出のために専用のセンサ(ロータリエンコーダなどの回転方向センサ)を設け、直接的に回転方向の検出を行うことも考えられる。
【0005】
さらに、特許文献2に開示されているようなブラシレスモータを用いた場合には、十分に高い回転数(例えば500rpm程度)に達していれば、専用の回転方向センサを設けなくても、各相のコイルに発生する誘起電圧の関係から回転位相を求めて回転方向を検出することが可能である。つまり、例えば3相のコイルのうちの1つをモータ内センサ(ピックアップコイル)とし、モータ内センサによる信号波形と、モータへの回転パルス波形(駆動パルス波形)とを比較することで、回転位相を検出することが可能である。
【0006】
しかし、前述のように回転方向の検出を検査者の目視により行ったのでは、検査工程の自動化が制限されることとなる。また、専用の回転方向センサを用いたのでは、その分の部品コストが上昇する。さらに、誘起電圧を検出する場合には、回転数がある程度以上(例えば少なくとも300rpm以上)に到達しなければ、誘起電圧が低く回転位相の検出を行うことができない。
【0007】
本発明の目的とするところは、低速回転の状態であっても、専用の回転方向センサを追加することなく、回転方向の検査を自動的に行うことが可能な真空ポンプや、真空ポンプの検査装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、ロータ軸と、
前記ロータ軸を回転させるモータと、
前記ロータ軸を磁気浮上させる磁気軸受と、
前記ロータ軸との間に所定の隙間を介在させた保護軸受と、
前記ロータ軸の位置を検出する変位センサと、
前記モータや前記磁気軸受の制御が可能な制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
少なくとも、前記ロータ軸が相対的に高速な自転を行う第1状態とすることと、前記磁気軸受の制御をOFFすることにより前記ロータ軸前記保護軸受との間の前記隙間の範囲内で偏倚させ、公転しながら相対的に低速な自転を行う第2状態とすることが可能であり、
前記変位センサの出力情報を取得し、
前記第2状態で、前記出力情報に基づく前記ロータ軸の回転方向を求め、
前記回転方向が正常か否かを判定し、
前記回転方向が正常でない場合にはその旨の報知出力を行うことを特徴とする真空ポンプにある。
【0009】
また、上記目的を達成するために他の本発明は、ロータ軸と、
前記ロータ軸を回転させるモータと、
前記ロータ軸を磁気浮上させる磁気軸受と、
前記ロータ軸との間に所定の隙間を介在させた保護軸受と、
前記ロータ軸の位置を検出する変位センサと、
前記モータや前記磁気軸受の制御が可能な制御手段と、を備えた真空ポンプの検査に用いられる真空ポンプ検査装置であって、
前記ロータ軸を、少なくとも、相対的に高速な自転を行う第1状態とすることと、前記磁気軸受の制御をOFFすることにより前記保護軸受との間の前記隙間の範囲内で偏倚させ、公転しながら相対的に低速な自転を行う状態とすることが可能であり、
前記変位センサの出力情報を取得し、
前記第2状態で、前記出力情報に基づく前記ロータ軸の回転方向を求め、
前記回転方向が正常か否かを判定し、
前記回転方向が正常でない場合にはその旨の報知出力を行うことを特徴とする真空ポンプ検査装置にある。
【0010】
また、上記目的を達成するために他の本発明は、ロータ軸と、
前記ロータ軸を回転させるモータと、
前記ロータ軸を磁気浮上させる磁気軸受と、
前記ロータ軸との間に所定の隙間を介在させた保護軸受と、
前記ロータ軸の位置を検出する変位センサと、
前記モータや前記磁気軸受の制御が可能な制御手段と、を備えた真空ポンプの検査に用いられる真空ポンプ検査方法であって、
前記磁気軸受の制御をOFFすることにより、前記ロータ軸を、前記保護軸受との間の前記隙間の範囲内で偏倚させ、公転しながら相対的に低速な自転を行う状態とする工程と、
前記変位センサの出力に基づく前記ロータ軸の回転方向を求める工程と、
前記回転方向が正常か否かを判定する工程と、
前記回転方向が正常でない場合にはその旨の報知出力を行う工程と、を備えたことを特徴とする真空ポンプ検査方法にある。
【発明の効果】
【0011】
上記発明によれば、低速回転の状態であっても、専用の回転方向センサを追加することなく、回転方向の検査を自動的に行うことが可能な真空ポンプや、真空ポンプの検査装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るターボ分子ポンプの断面と検査治具の概略構成を示す説明図である。
図2】ブラシレスモータに係る制御回路の構成を概略的に示す説明図である。
図3】2相モードの駆動制御における起動電流の通電パターンを示す説明図である。
図4】(a)は駆動電圧ベクトルを示す説明図、(b)は2相モードの駆動制御時に発生する磁束ベクトルを示す説明図、(c)は同じく2相モードの駆動制御時に発生するトルクの状態を示す説明図である。
図5】ロータの加速時における、電流Iu、Iv、Iw、電圧Vu-n、Vv-n、Vw-n、 電位差Vu-v、積分器から出力される磁束推定信号φu-v、コンパレータから出力され るROT信号の関係を示す説明図である。
図6】(a)~(d)は、2相モードの駆動制御時におけるモータ巻線が作る磁界と、ロータの磁極との位置関係を示す説明図である。
図7】(a)はロータの回転方向と磁束推定信号φu-vの極性との関係を示す説明図、(b)は磁束推定信号φu-vの極性とトルクの作用方向との関係を示す説明図である。
図8】検査治具により行われる回転方向検出の機能を概略的に示すフローチャートである。
図9】(a)はロータ軸と保護ベアリングとの関係を概略的に示す説明図、(b)はロータ軸の傾きを概略的に示す説明図である。
図10】検出されたロータ軸の変位に係る軌跡の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る真空ポンプについて、図面に基づき説明する。図1は真空ポンプとしてのターボ分子ポンプ10を縦断して概略的に示している。このターボ分子ポンプ10は、例えば、半導体製造装置、電子顕微鏡、質量分析装置などといった対象機器の真空チャンバ(図示略)に接続されるようになっている。
【0014】
ターボ分子ポンプ10は、円筒状のポンプ本体11と、箱状の電装ケース(図示略)とを一体に備えている。これらのうちのポンプ本体11は、図中の上側が対象機器の側に繋がる吸気部12となっており、下側が補助ポンプ等に繋がる排気部13となっている。そして、ターボ分子ポンプ10は、図1に示すような鉛直方向の垂直姿勢のほか、倒立姿勢や水平姿勢、傾斜姿勢でも用いることが可能となっている。
【0015】
電装ケース(図示略)には、ポンプ本体11に電力供給を行うための電源回路部や、ポンプ本体11を制御するための制御回路部が収容されているが、これらにより行われるポンプ本体11の制御については後述する。
【0016】
ポンプ本体11は、略円筒状の本体ケーシング14を備えている。本体ケーシング14内には、排気機構部15と回転駆動部(以下では「モータ」と称する)16とが設けられている。これらのうち排気機構部15は、ターボ分子ポンプ機構部17とネジ溝ポンプ機構部18とにより構成された複合型のものとなっている。
【0017】
ターボ分子ポンプ機構部17とネジ溝ポンプ機構部18は、ポンプ本体11の軸方向に連続するよう配置されており、図1においては、図中の上側にターボ分子ポンプ機構部17が配置され、図中の下側にネジ溝ポンプ機構部18が配置されている。以下に、ターボ分子ポンプ機構部17やネジ溝ポンプ機構部18の基本構造について概略的に説明する。
【0018】
図1中の上側に配置されたターボ分子ポンプ機構部17は、多数のタービンブレードによりガスの移送を行うものであり、所定の傾斜や曲面を有し放射状に形成された固定翼(以下では「ステータ翼」と称する)19と回転翼(以下では「ロータ翼」と称する)20とを備えている。ターボ分子ポンプ機構部17において、ステータ翼19とロータ翼20は十段程度に亘って交互に並ぶよう配置されている。
【0019】
ステータ翼19は、本体ケーシング14に一体的に設けられており、上下のステータ翼19の間に、ロータ翼20が入り込んでいる。ロータ翼20は、回転軸(以下では「ロータ軸」と称する)21に一体化されており、ロータ軸21の回転に伴いロータ軸21と同じ方向に回転する。なお、図1では、図面が煩雑になるのを避けるため、ポンプ本体11における部品の断面を示すハッチングの記載を省略している。
【0020】
ロータ軸21は、ターボ分子ポンプ機構部17から下側のネジ溝ポンプ機構部18に達し、軸方向の中央部において前述のモータ16(後述する)が配置されている。ネジ溝ポンプ機構部18は、ロータ円筒部23とネジステータ24を備えており、ロータ円筒部23とネジステータ24の間に所定の隙間であるネジ溝部25を形成している。ロータ円筒部23は、ロータ軸21に連結されており、ロータ軸21と一体に回転できるようになっている。ネジ溝ポンプ機構部18の後段には排気パイプに接続する為の排気口26が配置されており、排気口26の内部とネジ溝部25が空間的に繋がっている。
【0021】
本実施形態のモータ16は、高周波駆動が可能な3相式のブラシレスモータである。このモータ16は、ロータ軸21の外周に固定された回転子(以下では「ロータ」と称する)112と、回転子を取り囲むように配置された固定子(以下では「ステータ」と称する)113とを有している。モータ16を作動させるための電力の供給は、前述の電装ケース(図示略)に収容された電源回路部や制御回路部により行われる。このような構成のモータ16に係る駆動制御については後述する。
【0022】
前述のロータ軸21の支持には、磁気浮上による非接触式の軸受である磁気軸受が用いられている。磁気軸受としては、モータ16の上下に配置された2組のラジアル磁気軸受(径方向磁気軸受)30と、ロータ軸21の下部に配置された1組のアキシャル磁気軸受(軸方向磁気軸受)31とが用いられている。
【0023】
これらのうち各ラジアル磁気軸受30は、ロータ軸21に形成されたラジアル電磁石ターゲット30A、これに対向する複数(例えば2つ)のラジアル電磁石30B、およびラジアル方向変位センサ30Cなどにより構成されている。ラジアル方向変位センサ30Cはロータ軸21の径方向変位を検出する。そして、ラジアル方向変位センサ30Cの出力に基づいて、ラジアル電磁石30Bの励磁電流が制御され、ロータ軸21が、径方向の所定位置で軸心周りに回転できるよう浮上支持される。
【0024】
アキシャル磁気軸受31は、ロータ軸21の下端側の部位に取り付けられた円盤形状のアーマチュアディスク31Aと、アーマチュアディスク31Aを挟んで上下に対向するアキシャル電磁石31Bと、ロータ軸21の下端面から少し離れた位置に設置したアキシャル方向変位センサ31Cなどにより構成されている。アキシャル方向変位センサ31Cはロータ軸21の軸方向変位を検出する。そして、アキシャル方向変位センサ31Cの出力に基づいて、上下のアキシャル電磁石31Bの励磁電流が制御され、ロータ軸21が、軸方向の所定位置で軸心周りに回転できるよう浮上支持される。
【0025】
そして、これらのラジアル磁気軸受30やアキシャル磁気軸受31を用いることにより、ロータ軸21(及びロータ翼20)が高速回転を行うにあたって摩耗がなく、寿命が長く、且つ、潤滑油を不要とした環境が実現されている。また、本実施形態においては、ラジアル方向変位センサ30Cやアキシャル方向変位センサ31Cを用いることにより、ロータ軸21について、軸方向(Z方向)周りの回転の方向(θz)のみ自由とし、その他の5軸方向であるX、Y、Z、θx、θyの方向についての位置制御が行われている。
【0026】
さらに、ロータ軸21の上部及び下部の周囲には、所定間隔をおいて半径方向の保護ベアリング(「保護軸受」、「タッチダウン(T/D)軸受」、「バックアップ軸受」などともいう)36、37が配置されている。これらの保護ベアリング36、37により、例えば万が一電気系統のトラブルや大気突入等のトラブルが生じた場合であっても、ロータ軸21の位置や姿勢を大きく変化させず、ロータ翼20やその周辺部が損傷しないようになっている。なお、本実施形態においては、保護ベアリング36、37を用いてロータ軸21(及びロータ翼20)の回転方向検出を行えるようになっているが、この回転方向検出の具体的内容については後述する。
【0027】
このようなロータ軸21の支持構造の下でモータ16が駆動され、ロータ翼20が回転すると、図1中の上側に示す吸気部12からガスが吸引され、ステータ翼19とロータ翼20とに気体分子を衝突させながら、ネジ溝ポンプ機構部18の側へガスの移送が行われる。ネジ溝ポンプ機構部18では、ターボ分子ポンプ機構部17から移送されたガスを、ロータ円筒部23とネジステータ24との隙間に導入し、ネジ溝部25内で圧縮する。ネジ溝部25内のガスは、排気部13から排気口26へ進入し、排気口26を介してポンプ本体11から排出される。ここで、ロータ軸21や、ロータ軸21と一体的に回転するロータ翼20、ロータ円筒部23、及び、ロータ112等を、例えば「ロータ部」、或は「回転部」等と総称することが可能である。
【0028】
次に、本実施形態におけるモータ16の駆動制御について、図2図7に基づいて説明する。図2は、前述したモータ(16)の制御回路141における主要な構成を概略的に示している。制御回路141は、その大部分が、前述の電装ケース(図示略)内に配置された制御回路部に含まれるものである。そして、制御回路141は、モータ(16)に備えられたモータ配線部105、モータ配線部105に通電するためのモータ駆動回路115、モータ駆動回路115を制御する制御手段としてのマイクロコンピュータ130等を備えている。
【0029】
モータ配線部105は、スター結線されたモータ巻線107U、107V、107W等を有している。また、モータ駆動回路115は、マイクロコンピュータ130の制御に従って、これらのモータ巻線107U、107V、107Wへ電流を供給するようになっている。
【0030】
本実施形態のモータ(16)は、ロータ112の磁極の位置を検出するための磁極センサを備えておらず、モータ巻線107U、107V、107Wに発生する誘導起電力(誘起電力)に基づいてロータ112の磁極の位置を検出できるようになっている。ここで、図2では、図示が煩雑にならないよう、各モータ巻線107U、107V、107Wとロータ112を横に並べて示しているが、モータ巻線107U、107V、107Wは、ロータ112の外周部に配置されている。
【0031】
このようなモータ16に接続されたモータ駆動回路115は、直流電源116と、3相ブリッジを構成する6つのトランジスタ131a~131fを備えている。各トランジスタ131a~131fのベースは、それぞれマイクロコンピュータ130に接続されている。各トランジスタ131a~131fは、マイクロコンピュータ130からのベース(ゲート)駆動パルスによりオン/オフされ、モータ巻線107U、107V、107Wに所定の電流を供給する。
【0032】
このような制御回路141には、更に差動増幅器103、直流遮断フィルタ102、積分器101及びコンパレータ104等が設けられている。これらのうち差動増幅器103は、3相のうちの2相のモータ巻線107U、107Vと接続されている。そして、差動増幅器103は、モータ巻線107Uの電圧Vuと、モータ巻線107Vの電圧Vvとの電位差Vu-vに応じた信号出力を行う。なお、添え字のu、vは、それぞれU相端子、V相端子を表している。以下では、中点109を基準としたU相、V相、W相の各電位を、それぞれVu-n、Vv-n、Vw-nと表す。また、添え字のnは中点109を表している。
【0033】
上述の直流遮断フィルタ102は、差動増幅器103の出力信号に含まれる直流成分をカットする。これは、差動増幅器103の出力に直流成分が含まれていると積分器101がこれを含めて積分してしまうので、予め直流遮断フィルタ102によって直流成分を取り除くためである。なお、直流遮断フィルタ102として、ハイパスフィルタを用いることも可能である。
【0034】
前述の積分器101は、直流成分を取り除いた差動増幅器103の出力を積分し、差動増幅器103の出力に重畳している電気的ノイズを取り除く。通常、モータ(16)が駆動されると種々の電気的ノイズが発生する。差動増幅器103で得られる信号にはこれらのノイズが重畳されており、本来必要な信号がノイズに埋もれてしまう場合がある。このため、差動増幅器103の出力信号を積分器101にて積分すると、ノイズが平均化され、ノイズに埋もれていた前記信号(電位差Vu-vに応じた信号)を抽出することができる。
【0035】
このようなノイズはランダムなものであり、正負両方にほぼ等しい割合で重畳していると考えることができる。そして、積分された信号は、ノイズが平均化されてキャンセルされたものとなる。また、電位差Vu-v、即ちモータ巻線107Uとモータ巻線107Vの電位差を積分すると、モータ巻線107Uとモータ巻線107Vとの間の鎖交磁束となる。以下では、積分器101が出力する信号を磁束推定信号(φu-v)と表すこことする。
【0036】
前述のコンパレータ104における入力端子は、積分器101とグランドに接続されており、出力端子はマイクロコンピュータ130に接続されている。コンパレータ104は、2値信号を出力する。この2値信号は、高低2種類の電圧を対応させた信号である。そして、以下では、これらの信号のうち電圧が高いものをHi、電圧が低いものをLoと表す。
【0037】
コンパレータ104は、前述の磁束推定信号とグランドレベルを比較し、磁束推定信号がグランドレベルより大きければHiを出力し、磁束推定信号がグランドレベルより小さければLoを出力する。コンパレータ104は、ロータ112と同期したパルス信号を生成する。以下では、コンパレータ104の出力をROT信号(回転パルス信号)と表す。
【0038】
マイクロコンピュータ130は、コンパレータ104からROT信号を受け取り、このROT信号に同期してモータ駆動回路115のトランジスタ131c、131d、131e、131fをスイッチングして、所定の駆動電圧ベクトルをモータ巻線107V、107Wに出力する。なお、モータ駆動回路115の制御の高速化を図るために、マイクロコンピュータ130の代わりに、例えば、DSP(Digital Signal Processor)を用いるようにしてもよい。
【0039】
続いて、本実施形態において、モータ(16)の起動時や停止時などの低速度回転期間に実行される、2相モードの駆動制御について説明する。なお、低速度回転期間とは、ロータ112の回転数がPLL回路をロックできる回転数に満たないような相対的に低速な期間(例えば回転数が500rpm以下程度の期間)を意味している。
【0040】
図3は、2相モードの駆動制御における起動電流の通電パターンを示した図である。 本実施形態では、図3(a)に示す通電パターンAと、図3(b)に示す通電パターンBの2つの通電パターンを用いて低速回転期間における制御を行う。図3(a)に示す通電パターンAでは、モータ巻線107U、107V、107Wの、U→W方向とV→W方向に同時に電流を流す。図3(b)に示す通電パターンBでは、モータ巻線107U、107V、107Wの、W→U方向とW→V方向に同時に電流を流す。
【0041】
ここでは、U→W方向に流す電流をIuで示し、V→W方向に流す電流をIvで示す。また、モータ巻線107Wを流れる電流をIwで示す。これらのIu、Iv、Iwは、各モータ巻線のU、V、Wから中点109のnへ流れる方向を正とした場合、通電パターンA、Bに共通して次式(1)を満たす関係にある。

Iu=Iv=-Iw/2 …(1)
【0042】
各通電パターンにおいてモータ巻線107U、107Vには、モータ巻線107Wを流れる電流の半分の大きさの電流が流れる。なお、電流Iu、Iv、Iwの波形には矩形波を用いる。ここでは、W相モータ巻線107Wを第1巻線と称し、U相及びV相のモータ巻線107U、107Vを第2巻線として称することが可能である。
【0043】
図4(a)は、駆動電圧ベクトルを示した図である。図4(a)に示すように、3相全波方式のブラシレスモータのモータ巻線107U、107V、107Wに出力する駆動電圧ベクトルは6種類ある。以下では、U相モータ巻線107UからV相モータ巻線107Vに電流を流す場合の駆動電圧ベクトルを駆動電圧ベクトル1、U相モータ巻線107UからW相モータ巻線107Wに電流を流す場合の駆動電圧ベクトルを駆動電圧ベクトル2とする。
【0044】
また、V相モータ巻線107VからW相モータ巻線107Wに電流を流す場合の駆動電圧ベクトルを駆動電圧ベクトル3、V相モータ巻線107VからU相モータ巻線107Uに電流を流す場合の駆動電圧ベクトルを駆動電圧ベクトル4とする。さらに、W相モータ巻線107WからU相モータ巻線107Uに電流を流す場合の駆動電圧ベクトルを駆動電圧ベクトル5、W相モータ巻線107WからV相モータ巻線107Vに電流を流す場合の駆動電圧ベクトルを駆動電圧ベクトル6とする。そして、以下ではこのような「1」~「6」の番号により、各駆動電圧ベクトルを区別する。さらに、 これらの駆動電圧ベクトルの番号は、図4(a)において丸で囲んで(丸数字によって)示す。
【0045】
上述した電流の通電パターンAは駆動電圧ベクトル2と駆動電圧ベクトル3を同時に出力する状態であり、通電パターンBは駆動電圧ベクトル5と駆動電圧ベクトル6を同時出力する状態である。通電パターンAの場合には、トランジスタ131a、131c、131fをオンして駆動電圧ベクトル2、3を同時に出力し、通電パターンBの場合には、トランジスタ131b、131d、131eをオンして駆動電圧ベクトル5、6を同時に出力する。なお、通電パターンA、Bでモータ巻線107U、107V、107Wに流れる電流の調整は、動作させるトランジスタのベース(ゲート)電圧をマイクロコンピュータ130によりPWM(パルス幅変調)制御することにより行われている。
【0046】
図4(b)は、2相モードの駆動制御時に発生する磁束ベクトルを示した図である。 図4(b)に示すベクトル図では、通電パターンA時に発生する磁束ベクトルをΦaで示し、通電パターンB時に発生する磁束ベクトルをΦbで示す。また、ロータ112の永久磁石の磁束ベクトルをΦcで示し、ロータ112の回転角度をθで示す。なお、θは、U相モータ巻線107UからV相モータ巻線107Vに電流を流す場合の駆動電圧ベクトル1の出力時に発生する磁束ベクトルΦdを0°とし、図4(b)中の時計回りを正(+)方向とする。
【0047】
本実施形態では、通電パターンA、Bによる通電を交互に行うことにより、モータ巻線107U、107V、107Wに、図4(b)に示す磁束ベクトルΦa、Φbにより形成される磁界を発生させ、この磁界にロータ112を吸引させて回転させる。そして、U相端子とV相端子の電圧の差からROT信号を生成し、このROT信号により通電パターンAにおける駆動電圧ベクトル2、3、及び通電パターンBにおける駆動電圧ベクトル5、6をフィードバック制御する。
【0048】
図4(c)は、2相モードの駆動制御時に発生するトルクの状態を示した図である。 図4(c)に示すように、通電パターンA時に発生するトルクと通電パターンB時に発生するトルクとでは、位相が180°反転している。また、2相モードの駆動制御時においては、不起動点を除く範囲において正(+)負(-)両方向のトルクを発生させることができるように構成されている。なお、不起動点とは、ロータ角度(ロータ軸21等の回転角度)θが90°及び270°における正負いずれのトルクも発生できない状態を示す。
【0049】
続いて、2相モードの駆動制御について、加速時の動作を例にして説明する。図5は、ロータ112の加速時における、電流Iu、Iv、Iw、電圧Vu-n、Vv-n、Vw-n、電位差Vu-v、積分器101から出力される磁束推定信号φu-v、コンパレータ104から出力されるROT信号の関係を表している。モータ(16)の始動時は、通電パターンA、Bを直流に近い周波数で交互に繰り返し、ロータ112の磁極をモータ巻線107U、107V、107Wがつくる磁界に吸引し追随させる。
【0050】
ロータ112が毎秒1回転程度回転するようになると、相間電圧としてモータ巻線107Uとモータ巻線107Vの電位差Vu-vが検出できるようになる。本実施形態では、インダクタンスによる電圧降下の位相と大きさ、抵抗成分が等しいU相-V相間の電位差Vu-v(相間電圧)を検出する。
【0051】
通電パターンAにより駆動電圧ベクトル2、3が出力されている間はU→W方向とV→W方向に電流が流れ、通電パターンBにより駆動電圧ベクトル5、6が出力されている間はW→U方向とW→V方向に電流が流れ、モータ巻線107Wにはモータ巻線107U、107Vを流れる双方の電流が流れるので、電流Iu、Iv、Iwの波形はそれぞれ図5に示したようになる。
【0052】
通電パターンA、Bによる通電を交互に行うことによりロータ112が回転すると、モータ巻線107U、107V、107Wに誘導起電圧として電圧Vu-n、Vv-n、Vw-nが生じる。モータ巻線107U、107V、107Wには駆動電流が流れる。そして、電圧Vu-n、Vv-n、Vw-nの波形には、モータ巻線107U、107V、107Wのインダクタンスによる電圧降下等に起因して、スパイク状の電圧117、118、119等が現れる。また、電圧Vu-n、Vv-n、Vw-nには、モータ巻線107U、107V、107Wの抵抗成分に起因する直流成分120、121、122が含まれている。
【0053】
本実施形態では、電圧Vu-nとVv-nの電圧差Vu-vを差動増幅器103で測定し、電圧差Vu-vに基づいて、ロータ112の磁極の位置を検出する。電圧Vv-n、Vu-nは同じ位相に同じ大きさのスパイク状の電圧117、118が現れるので、差動増幅器103において電圧Vv-n、Vu-nの差をとる際にこれらのスパイク状の電圧117、118を消去(相殺)することができる。また、電圧Vv-n、Vu-nには、同じ極性、同じ大きさの直流成分120、121が重畳されるので、差動増幅器103において電圧Vv-n、Vu-nの差をとる際に、これらの直流成分120、121を消去することができる。
【0054】
電位差Vu-vは、モータ巻線107U、107V、107Wにおけるそれぞれの抵抗成分Ru、Rv、Rw、各相のインダクタンスLu、Lv、Lwを用いて次式(2)のように表される。

Vu-v=Vu-n+Ru×Iu+ω×Lu×Iu-Vv-n-Rv×Iv-ω×Lv×Iv…(2)

ここで、ωはロータ112の角速度である。
【0055】
各相の抵抗成分Ru、Rv、Rwの大きさが等しく、また、各相のインダクタンスLu、Lv、Lwの大きさが等しい場合には、前述の式(1)や上記(2)に基づいて、電位差Vu-vは、次式(3)のように表される。

Vu-v=Vu-n-Vv-n …(3)
【0056】
つまり、各相の抵抗成分Ru、Rv、Rwに起因する電圧降下分、及び、インダクタンスLu、Lv、Lwに起因する電圧降下分は、互いに相殺され、電位差Vu-vには現れない。そのため、差動増幅器103の出力、即ち電位差Vu-vは、図5に示すようにロータ112の回転に同期し、ほぼノイズが現れていないきれいなサインカーブとなる。なお、各相の抵抗成分Ru、Rv、Rwの大きさが等しい場合には、上述したように直流成分120、121を消去することができるので、差動増幅器103と積分器101との間に必ずしも直流遮断フィルタ102を設ける必要はない。
【0057】
差動増幅器103から出力された電位差Vu-vは直流遮断フィルタ102で直流成分をカットした後、積分器101に入力される。積分器101は電位差Vu-vを積分し、磁束推定信号φu-vを出力する。磁束推定信号φu-vは積分により電位差Vu-vより位相が90°遅れる。また、電位差Vu-vに重畳されていたノイズは積分されることにより消去される。なお、積分器101から出力される磁束推定信号φu-vと電位差Vu-vは、次式(4)を満たす関係にある。
φu-v=-∫Vu-vdt …(4)
【0058】
このように磁束推定信号φu-vは、モータ巻線107Uとモータ巻線107Vの電位差Vu-vを積分することにより得られる。なお、上述したように電位差Vu-vが、ほぼノイズが現れていないきれいなサインカーブの信号として現れるため、ここではきれいな磁束推定信号φu-vが得られる。
【0059】
コンパレータ104は、磁束推定信号φu-vをグランドレベルと比較しROT信号を出力する。コンパレータ104から出力されるROT信号は、磁束推定信号φu-vがグランドレベルより大きいときはHiとなり、磁束推定信号φu-vがグランドレベルより小さいときは信号Loとなる。
【0060】
そして、マイクロコンピュータ130はコンパレータ104からROT信号を受け取り、加速時においてROT信号がHiである間は通電パターンAによる起動電流の通電を行い、加速時においてROT信号がLoである間は通電パターンBによる起動電流の通電を行う。なお、ここでは加速時の制御方法について説明しているが、減速時における制御方法は、加速時の場合と通電パターンが逆になる。
【0061】
続いて、2相モードの駆動制御時(低速度回転期間)におけるフィードバック制御について詳しく説明する。図6(a)~(d)は、2相モードの駆動制御時におけるモータ巻線107U、107V、107Wが作る磁界と、ロータ112の磁極との位置関係を示した図である。図6(a)~(d)に示す位置関係を、それぞれ位置A~Dと示す。図6(a)~(d)に示すように位置A~Dは、モータ巻線107U、107V、107Wが作る磁界の向きと、ロータ112の磁極の向きの組合せがそれぞれ異なっている。
【0062】
図7(a)はロータ112の回転方向と磁束推定信号φu-vの極性との関係を示した図であり、図7(b)は磁束推定信号φu-vの極性とトルクの作用方向との関係を示した図である。なお、ここでは、図6(a)~(d)の時計回りを正転方向とし、反時計回りを逆転方向とする。
【0063】
ロータ112が正転方向に回転している場合において、モータ巻線107U、107V、107Wが作る磁界と、ロータ112の磁極との位置が、図6(a)の位置Aに示す関係にある間は、磁束推定信号φu-vの極性は負(マイナス)となる。一方、ロータ112が逆転方向に回転している場合において、モータ巻線107U、107V、107Wが作る磁界と、ロータ112の磁極との位置が、図6(a)の位置Aに示す関係にある間は、磁束推定信号φu-vの極性は正(プラス)となる。同様に、ロータ112の回転方向と磁束推定信号φu-vの極性との関係は、図7(a)に示すようになる。
【0064】
図7(b)に示すように2相モードの駆動制御時には、磁束推定信号φu-vの極性が正(プラス)となる期間に通電パターンAの駆動電流の供給を行った場合に、逆転方向にトルクが作用する。また、磁束推定信号φu-vの極性が正(プラス)となる期間に、反対に通電パターンBの駆動電流の供給を行った場合に、正転方向にトルクが作用する。
【0065】
一方、磁束推定信号φu-vの極性が負(マイナス)となる期間に通電パターンAの駆動電流の供給を行った場合に正転方向にトルクが作用し、反対に通電パターンBの駆動電流の供給を行った場合に逆転方向にトルクが作用する。
【0066】
図2図7に基づき説明した2相モードの駆動制御時には、磁束推定信号φu-vの極性、通電パターン、トルクの作用方向の間に、図7(b)に示すような関係が成立する。つまり、磁束推定信号φu-vの極性に合わせてU、V、W相の出力極性を切り替えることにより起動する方向にトルクを与えることができる。
【0067】
モータ(16)の起動時などのように正転方向への加速を行う期間は、正転方向にトルクが作用するように駆動電流の通電パターンを制御する。一方、モータ(16)の停止時など逆転方向への加速(正転方向への制動)を行う期間は、逆転方向にトルクが作用するように駆動電流の通電パターンを制御する。
【0068】
例えば、正転方向への加速を行う場合には、図5に示すように、磁束推定信号φu-vが正となるTβの期間(ROT信号がHiの期間)は、通電パターンBによる駆動電流の供給を行い正転方向にトルクを作用させ、磁束推定信号φu-vが負となるTαの期間(ROT信号がLoの期間)は、通電パターンAによる駆動電流の供給を行い正転方向にトルクを作用させる。
【0069】
また、逆転方向への加速を行う場合には、磁束推定信号φu-vが正となる期間は、通電パターンAによる駆動電流の供給を行い逆転方向にトルクを作用させ、磁束推定信号φu-vが負となる期間は、通電パターンBによる駆動電流の供給を行い逆転方向にトルクを作用させる。
【0070】
このように本実施形態によれば、磁束推定信号φu-vの極性に応じて、2相モードにおける駆動電流の通電パターンを切り替えることにより、適切に希望方向のトルクを得ることができるため、ロータ112の正転方向又は逆転方向への加速動作をスムーズに行うことができる。つまり、低速度回転期間における駆動制御の高い安定性を確保することができる。
【0071】
さらに、本実施形態によれば、モータ巻線107U、107V、107Wの抵抗成分Ru、Rv、Rwに起因する電圧降下分の影響が磁束推定信号φu-vに現れない、即ち磁束推定信号φu-vに直流オフセットが現れない(重畳しない)ため、適切な信号に基づくフィードバック制御を行うことができ、低速度回転期間における駆動制御のより高い安定性を確保することができる。
【0072】
なお、ロータ軸21やロータ翼20等(以下では「ロータ軸21等」と称する)のロータ部における回転数が、位相同期回路(PLL回路)をロックできる回転数にまで上昇し、定格回転の状態となったに後は、マイクロコンピュータ130により、PLL回路を利用した3相モードのモータドライブ方式に制御方式が切り替えられる。本実施形態では、このときの動作状態や制御状態を第1状態とする。また、3相モードのモータドライブ方式については、一般的な種々の方式を採用することができるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0073】
次に、ロータ軸21等に係る回転方向検出について説明する。先ず、モータ16を駆動した場合のロータ軸21等の回転方向は、モータ16に対する配線の適否(適切か否か)によって決まり、モータ16に対する配線が適正に行われていれば、予め決められた一定の方向に一致する。このため、本実施形態のターボ分子ポンプ10では、ロータ軸21等の回転部に係る回転速度(回転数)の制御が行われる一方、回転方向検出のための専用の検出機器(ロータリエンコーダ等)は備えられていない。そして、モータ16に対する配線が適正に行われていれば、ロータリエンコーダ等の回転方向検出のための専用の検出機器は不要であるということができる。
【0074】
しかし、万が一配線が適正に行われず電流が本来の方向とは逆の方向に流れるようになっていた場合には、マイクロコンピュータ130が正常なモータ制御を行ったとしても、ロータ軸21等が、正常な方向とは逆の方向に回転することもあり得る。また、回転数が未だある程度以上(例えば500rpm以上)に到達していないような低速回転期間においては、誘起電圧が十分には高まらず、誘起電圧の値が低いため、回転方向の検出のために誘起電圧を利用することは困難である。
【0075】
そこで、本実施形態では、保護ベアリング36、37による支持状態(タッチダウンした状態)を利用し、専用の回転方向検出機器を用いることなく、出荷前に行われる検査工程で、ロータ軸21等をある程度回転させながら、目視によらずに配線の適否を確認できるようにしている。ここで、ロータ軸21等の正常な回転方向は、ポンプ本体11を真上(吸気部12の側)から見た場合の時計回りの方向としている。
【0076】
本実施形態における回転方向検出の機能は、例えば、組み立て工場での出荷前の検査で用いられる検査治具に組み込むことが可能である。図1には、ターボ分子ポンプ10に加えて、検査の際にターボ分子ポンプ10に電気的に接続される検査装置としての検査治具41を概略的に示している。この検査治具41は、マイクロコンピュータ(図示略)を使用した検査処理部42や、検査結果に係る表示を行うための表示部43を備えており、ターボ分子ポンプ10における回転方向検出や、検出結果に基づく制御処理を行えるようになっている。
【0077】
この検査治具41を用いた検査システムにおいては、図8に示すように、先ず、低速度回転の状態にあるモータ(図1中の符号16)の通電制御(駆動制御)がOFFされ、磁気軸受(図1中の符号30、31)の制御がOFFされる(S1)。そして、適度に回転方向への勢いが残されたロータ軸21の、保護ベアリング36、37へのタッチダウンが行われる(S2)。
【0078】
このS2の工程により、ロータ軸21等は、重力を利用して自重により保護ベアリング36、37に接触しながら、惰性で回転している状態となる。本実施形態では、このときの動作状態や制御状態を第2状態とする。前述の第1状態(定格回転の状態)と、この第2状態との間の動作状態や制御状態を第3状態などと称して、第1状態や第2状態と区別することが可能である。
【0079】
図9(a)は、ロータ軸を下方から見た図となっている。惰性で回転しているロータ軸21と、保護ベアリング(ここでは上部の保護ベアリング36のみ図示する)との関係を模式化して概略的に示している。ロータ軸21は、保護ベアリング36の内側に位置しており、ロータ軸21の外周面と、保護ベアリング36の内周面との間には、図中に強調して示すように隙間Hが存在している。そして、この隙間Hに関し、最大となる部位における隙間(H=Hmax)は、本実施形態では200μm程度となっている。
【0080】
ロータ軸21は、矢印Eで示すように自転しながら、保護ベアリング36との間の隙間Hの範囲内で偏倚(へんい:片寄ることの意)し、矢印Fで示すように旋回し公転する。図示は省略するが、上部の保護ベアリング36のみでなく、下部の保護ベアリング(37)においても同様の隙間Hが形成されており、このことから、例えば図9(a)、(b)に模式化して示すように、ロータ軸21は、上部及び下部の保護ベアリング(36、37)との隙間Hの大きさの範囲内で、軸方向に対し傾斜しながら自転や公転を行う。
【0081】
ここで、図9(a)、(b)に示す矢印E、Fの方向や、X軸及びY軸の方向は、あくまでも説明や(図示略)を簡略化するためのものであり、モータ16に係る配線が正常な場合と正常でない場合や、ロータ軸21を、例えば図1の上方から監視している場合と下方から監視している場合、水平面内での座標の決め方、及びこれらの組合せ方次第で異なり得るものである。以下では、図9(a)が、モータ16の配線が正常であり、且つ、ロータ軸21を下方から見ている状況を示しているものとして説明を行う。
【0082】
続いて、図8に前述のS2に続けて示すように、ロータ軸21の出力情報としてのポジション信号(Xi、Yi)が測定される(S3)。ポジション信号の情報は、一定時間毎に取得されており、添え字のi(=1、2、3、・・・)は、ポジション信号を取得したタイミングの違いを表している。そして、ポジション信号(X1、Y1)、(X2、Y2)、(X3、Y3)、・・・から得られる位置情報を時系列にプロットすることで、図10に例示するような、ロータ軸(21)に係る水平面内(XY面内)での軌跡46の図表が得られる。
【0083】
図10においては、ポジション信号(Xi、Yi)を取得した位置が丸い点により示され、連続した点が直線を介して順次繋げられている。さらに、図10中の矢印Fはロータ軸21の公転方向を示しており、この公転方向は、図9(a)、(b)に示す矢印Fに一致しているものである。
【0084】
また、図中の左上部に示された点Pは、最後に取得されたポジション信号(Xi、Yi)の位置(軌跡46の終点)を示している。さらに、図中の中央に示された点Qは、磁気軸受30、31がONされてロータ軸21が高速で定常回転している場合の、ロータ軸21に係る軸心の位置を示している。ここで、図10は、上下のラジアル方向変位センサ30Cのうち、上部に位置するラジアル方向変位センサ30Cから得られたポジション信号(Xi、Yi)による軌跡46を例示している。
【0085】
続いて、図8に前述のS3に続けて示すように、ポジション信号(Xi、Yi)の変化に基づき回転方向θRが検出される(S4)。この回転方向θRは、ロータ軸21の自転の方向(例えば図9(a)における矢印Eで示す方向)に対応するものであるが、本実施形態においては、回転方向θRが、ロータ軸21の公転方向と同一であるとみなして取扱われている。そして、ポジション信号(Xi、Yi)に基づき判定されたロータ軸21の公転方向と一致する方向に、ロータ軸21が自転しているものとして、ロータ軸21の回転方向θRが判定される。
【0086】
その後、タッチダウン直前までのモータ駆動トルク方向θTが呼び出され(S5)、両方向θR、θTの比較が行われる(S6)。タッチダウン直前までの回転方向を示すθTは、モータ制御の開始前に予め決められているにものであり、一定である。本実施形態では、ポンプ本体11の上方(吸気部12の側)から見て時計回りとなる方向がθTとなっている。
【0087】
そして、S6において、両方向θR、θTが同一であれば(S6:YES)、ロータ軸21の自転方向が正常であり、モータ16の配線が適正である(ポンプ正常の状態である)旨の判定が行われる(S7)。この場合、検査治具41に設けられた表示部43において、報知出力として、ポンプ正常である旨の表示を行うことも可能である。表示部43におけるポンプ正常である旨の表示としては、所定のランプやLEDを点灯させないこと、青色等の所定色で点灯させること、所定のディスプレイで文字表示を行うことなどを例示できる。
【0088】
一方、S6において、両方向θR、θTが同一でなければ(S6:NO)、ロータ軸21の自転方向が正常ではなく、モータ16の配線が適正でない(ポンプ異常の状態である)旨の判定が行われる(S8)。そして、報知出力として、表示部43においてアラームの出力が行われ、ポンプ異常の発生が報知される。表示部43におけるアラームの出力としては、所定のランプやLEDを赤色等の所定色で点灯させること、所定のディスプレイで文字表示を行うことなどを例示できる。
【0089】
前述のように、保護ベアリング36、37へのタッチダウン(S2)を行うのは、以下の理由による。すなわち、ロータ軸21の定格回転中回転が安定した状態にあり、図9(a)に二点鎖線で示すように、ロータ軸21がラジアル磁気軸受30や保護ベアリング36(及び37)の中央に同心的に位置する。ここで、回転の定格状態において、前述したように、ロータ軸21の中心は点Qに位置している。さらに、ロータ軸21の外周面と保護ベアリング36(及び37)の内周面との片側ずつの隙間(H=Hr)は、各々100μm程度となっている。この定格状態における隙間Hrは、ロータ軸21の全周に亘りほぼ均一になる。
【0090】
そして、上述のような定格状態時には、ロータ軸21の変位(振れ)が相対的に小さく、ポジション信号(Xi、Yi)に十分な変化が表れず、回転方向の検知が困難である。このため、本実施形態では回転方向を確認するにあたり、ロータ軸21を一旦強制的に保護ベアリング36、37にタッチダウンさせ、ロータ軸21が相対的に大きく偏倚できる隙間Hを確保している。そして、位置情報の変化量が十分に大きくなるようにし、位置の違いを認識し易くしてから、ポジション信号(Xi、Yi)の変化に基づき回転方向を検知している。
【0091】
なお、上述のようなロータ軸21の偏倚動作のために、ロータ軸21を保護ベアリング36、37にタッチダウンさせた場合には、ロータ軸21が保護ベアリング36、37に接触する。そして、接触の際の回転速度や摩擦の程度により、ロータ軸21の回転方向が反転してしまうこともある。このようなタッチダウン時におけるロータ軸21の反転を防止するため、タッチダウンさせずにロータ軸21を偏倚させ、僅かであってもロータ軸21の中心は点Qからずらした状態で、ポジション信号(Xi、Yi)に基づく回転方向の検出を可能とすることが考えられる。
【0092】
タッチダウンさせずにロータ軸21を偏倚させるために、例えば、上下のラジアル磁気軸受30のうちの少なくとも一方の浮上制御を不均衡な状態とすることが可能である。前述のようにラジアル磁気軸受30は、複数(ここでは2つ)のラジアル電磁石30B(図1)を備えている。このため、1つのラジアル電磁石30Bの通電をOFFすると、浮上制御が不均衡な状態となる。そして、ロータ軸21は、非対称な磁気環境下で浮上することとなり、ロータ軸21と保護ベアリング36、37との非接触状態を維持したまま、ロータ軸21を偏倚させて公転させることができる。
【0093】
前述のような回転方向の検査を行う検査処理部42は、ターボ分子ポンプのマイクロコンピュータ130に対し所定の信号を入力し、モータ16の通電制御や、ロータ軸21を偏倚させるための磁気軸受30、31の制御を、マイクロコンピュータ130に行わせるものであってもよい。また、検査処理部42自身が、ターボ分子ポンプのマイクロコンピュータ130を介さずに、モータ16や磁気軸受30、31の制御を行うようにしてもよい。
【0094】
以上説明したような本実施形態のターボ分子ポンプ10によれば、ロータ軸21を、低速回転中に強制的に保護ベアリング36、37にタッチダウンさせる。そして、ラジアル方向変位センサ30Cのポジション信号(Xi、Yi)を利用し、ロータ軸21等の回転方向を検知する。したがって、ロータリエンコーダ等のような回転方向検出のための専用の機器を追加することなく、既存の検出機器によって、回転方向の検出を自動化して行うことが可能となる。
【0095】
また、回転方向検出を、モータ16における誘起電圧が低い低速回転の状態で行うことが可能である。そして、これらのことから、モータ配線に係る不具合を簡易且つ早期に発見することができ、モータ配線の不具合による回転方向異常(逆回転)を防止することが可能である。
【0096】
さらに、ロータ軸21を保護ベアリング36、37にタッチダウンさせる機能や、ラジアル方向変位センサ30Cの出力信号を処理する機能は、従来のターボ分子ポンプにおける制御回路部のマイクロコンピュータ130や、用いられる制御プログラム(ソフトウエア)にも備えられているものである。このため、既存の機能の多くを利用しながら、回転方向θRの判定や、基準となる回転方向(モータ駆動トルク方向)θTとの比較の機能を、最小限度の追加機能として付加するのみで回転方向の検出を行うことができる。
【0097】
また、本実施形態のターボ分子ポンプ10においては、ポンプ本体11と電装ケース(図示略)等との間の配線接続に関して、モータ駆動方式に対する最適化が図られている。つまり、本実施形態では、ポンプ本体11への配線接続は、気密性が高いハーメチックコネクタを用いて行われている。そして、このようなハーメチックコネクタが結線された側とは逆側の端部(配線の端部)においては、電装ケース中の配線基板に対する接続のために、例えば合成樹脂製のコネクタを用いる手法や、コネクタを用いずに直接はんだ付けする手法などを採用し得る。
【0098】
そして、電装ケース中の配線基板に対する接続に関して、例えば各種のコネクタを用いた場合には、雄雌のコネクタの形状等に係る対応関係によって、本実施形態のモータ16に対する配線の誤り(誤配線)を防止することができる。このようなコネクタによる配線であっても、コネクタにリード線を結線する際に誤配線が起きる可能性があるが、結線が正しく行われれば、その後の繋ぎ間違いによる誤配線は起こり難い。このため、一般的には、コネクタを利用してモータ駆動線の接続することが多く行われている。しかし、モータ配線にコネクタを用いた場合には、繰り返し抜き差しを行うと、嵌合部分における接触抵抗が上昇する場合がある。
【0099】
本実施形態のターボ分子ポンプ10においては、電源の小型化が図られており、モータ16は、小型で効率の良いものとなっている。このため、モータ16の電気的特性としての抵抗は、例えば50mΩ程度であり、一般的なターボ分子ポンプ(例えば100mΩ程度)に比べて小さい。さらに、本実施形態のモータ16では、前述のように、ロータ起動時の回転パルスをモータの誘導起電圧を利用して生成している。
【0100】
このため、本実施形態のモータ配線にコネクタを用いた場合には、モータ16が嵌合部分での接触抵抗の影響を受け易くなってしまう。つまり、上述のようにコネクタの嵌合部分において接触抵抗が上昇すると、電気回路系における抵抗が変化し、ロータ起動時の回転パルスが予定通りに生成されず、予定通りの起動ができなくなることも考えられる。
【0101】
一方、コネクタに代えて半田付けを採用すれば、上述のようなコネクタの抜き差しの繰り返しによる接触抵抗の変化は生じ難くなる。しかし、分解組立が困難になり、サービスメンテナンス性を大きく損なうこととなる。
【0102】
これらのことから本実施形態では、サービスメンテナンス性を考慮するとともに、品質を安定させるため、駆動線の配線には、端子台へのつなぎ込みが採用されている。 端子台へのつなぎ込みとしては、ねじ式端子台を用いたものや、ねじによらないクランプ式端子台を用いたものなど、一般的な種々の方式を採用すること可能である。また、配線の素線に関しても、素線の末端に圧着端子等の導電部材を装着したものや、圧着端子等の導電部材を用いずに素線を端子台に接続するものなど、一般的な種々の方式を採用すること可能である。
【0103】
ただし、このように端子台へのつなぎ込みを採用した場合には、コネクタを採用した場合に比べて誤配線のリスクが高まるため、前述したように検査工程での回転方向の検査を行うことで、誤配線があった場合であっても適切な対応が可能となる。そして、このような誤配線への対応を、自動化され目視によらない検査により行うことが可能である。
【0104】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、種々に変形することが可能なものである。例えば、上述の実施形態では、上下のうちの上部のラジアル方向変位センサ30Cに係る出力信号(ポジション信号)を利用してロータ軸21の変位を検出しているが、これに限定されず、例えば下部のラジアル方向変位センサ30Cの出力信号(ポジション信号)を利用してもよい。
【0105】
また、図8に示すS1の処理で、ロータ軸21に対し、モータ16の低速回転制御をOFFして惰性による回転を行わせているが、低速回転制御をONにしたままでS1以降に示すような回転方向検出の処理を行ってもよい。
【0106】
さらに、ロータ軸21の回転方向検出を検査治具41により行っているが、例えば、ターボ分子ポンプ10のマイクロコンピュータ130に、前述のような回転方向検出の機能を付加し、ターボ分子ポンプ10が回転方向検出を行えるようにしてもよい。また、その場合には、回転方向の異常が検出された場合の報知出力を、電装ケース(図示略)に備えた表示部や、ターボ分子ポンプ10が接続された外部制御機器において行えるようにすることが考えられる。
【符号の説明】
【0107】
10 ターボ分子ポンプ(真空ポンプ)
11 ポンプ本体
16 モータ
21 ロータ軸
30 ラジアル磁気軸受(磁気軸受)
30C ラジアル方向変位センサ(変位センサ)
36、37 保護ベアリング(保護軸受)
41 検査治具(検査装置)
42 検査処理部
43 表示部
112 ロータ(回転子)
130 マイクロコンピュータ(制御手段)
図1
図2
図3
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図10