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  • 特許-アクリル粘着剤及び粘着テープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】アクリル粘着剤及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/16 20060101AFI20220614BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220614BHJP
【FI】
C09J133/16
C09J7/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018096380
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2018193553
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017099910
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石堂 泰志
(72)【発明者】
【氏名】内田 徳之
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特許第6014781(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/181691(WO,A1)
【文献】特開2018-031003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル共重合体を含有するアクリル粘着剤であって、
前記アクリル共重合体は、フッ素含有モノマーに由来する構成単位を30重量%以上、炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を15重量%以上含有し、更に、炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を含有し、
前記アクリル粘着剤は、下記式(1)で表されるクリープ試験回復量変化率が500%を超える
ことを特徴とするアクリル粘着剤。
クリープ試験回復量変化率(%)=Y/X×100 (1)
式(1)中、X及びYはそれぞれ、アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を60℃、湿度90%の条件でイソプロパノール80重量%と水20重量%との混合液に24時間浸漬した前後でのクリープ試験回復量を表す。
【請求項2】
前記アクリル共重合体は、前記炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が40重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のアクリル粘着剤。
【請求項3】
ゲル分率が60重量%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のアクリル粘着剤。
【請求項4】
ゲル分率が32重量%以下であることを特徴とする請求項3記載のアクリル粘着剤。
【請求項5】
前記炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーは、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のアクリル粘着剤。
【請求項6】
少なくとも一方の面に請求項1、2、3、4又は5記載のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有することを特徴とする粘着テープ。
【請求項7】
電子機器の部品を固定するために用いられることを特徴とする請求項6記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール耐性に優れ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等が付着した場合であっても粘着力を維持することができるアクリル粘着剤に関する。また、本発明は、該アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器において部品を固定する際、粘着テープが広く用いられている。具体的には、例えば、携帯電子機器の表面を保護するためのカバーパネルをタッチパネルモジュール又はディスプレイパネルモジュールに接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするために粘着テープが用いられている。このような電子機器部品の固定に用いられる粘着テープは、例えばアクリル粘着剤を含有する粘着剤層等を有しており、高い粘着性に加え、使用される部位の環境に応じて、耐熱性、熱伝導性、耐衝撃性等の機能が要求されている(例えば、特許文献1~3)。
【0003】
近年、電子機器の小型化、軽量化及び低コスト化によって、携帯電話、スマートフォン、ウェアラブル端末等の常に身に着けたり、手元に置いたりするタイプの電子機器が広く普及している。このような携帯型の電子機器は、日常的に使用される消毒液、洗浄液、アルコール飲料等に触れる機会が多いことから、粘着テープには、これら消毒液等が電子機器に付着し、仮に粘着テープに付着しても、消毒液等に含まれるアルコールによって劣化しない性能が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-052050号公報
【文献】特開2015-021067号公報
【文献】特開2015-120876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アルコール耐性に優れ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等が付着した場合であっても粘着力を維持することができるアクリル粘着剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アクリル共重合体を含有するアクリル粘着剤であって、前記アクリル共重合体は、フッ素含有モノマーに由来する構成単位を30重量%以上含有し、前記アクリル粘着剤は、下記式(1)で表されるクリープ試験回復量変化率が500%を超えるアクリル粘着剤(本明細書中、「第1の本発明のアクリル粘着剤」ともいう)である。また、本発明は、アクリル共重合体を含有するアクリル粘着剤であって、前記アクリル共重合体は、炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を70重量%以上含有し、前記アクリル粘着剤は、下記式(1)で表されるクリープ試験回復量変化率が150%を超えるアクリル粘着剤(本明細書中、「第2の本発明のアクリル粘着剤」ともいう)である。
クリープ試験回復量変化率(%)=Y/X×100 (1)
式(1)中、X及びYはそれぞれ、アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を60℃、湿度90%の条件でイソプロパノール80重量%と水20重量%との混合液に24時間浸漬した前後でのクリープ試験回復量を表す。
以下、本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、アクリル共重合体を含有するアクリル粘着剤において、アクリル共重合体にフッ素含有モノマーに由来する構成単位、又は、炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を特定の含有量で含有させることにより、アクリル粘着剤のアルコール耐性を高めることができることを見出した。更に、本発明者らは、アクリル粘着剤に対して特定のクリープ試験を行い、それにより「クリープ試験回復量変化率」を算出したところ、得られた「クリープ試験回復量変化率」とアクリル粘着剤のアルコール耐性との間に相関関係があることを見出した。即ち、本発明者らは、アクリル共重合体にフッ素含有モノマーに由来する構成単位又は炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を特定の含有量で含有させたそれぞれの場合において、「クリープ試験回復量変化率」をそれぞれ特定範囲に調整することにより、アクリル粘着剤のアルコール耐性を高めることができることを見出した。これにより、本発明を完成させるに至った。
なお、本明細書における「アルコール」とは、炭素数4以下の低級アルコールを主成分(含有量が50重量%以上)とするものを意味し、水やより炭素数の多いアルコール等の他の溶媒、添加剤等を含んでいてもよい。
【0008】
まず、第1の本発明のアクリル粘着剤について説明する。第1の本発明のアクリル粘着剤は、アクリル共重合体を含有する。第1の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体は、フッ素含有モノマーに由来する構成単位を30重量%以上含有する。
上記アクリル共重合体にフッ素含有モノマーに由来する構成単位を上記含有量で含有させることにより、アクリル粘着剤のアルコール耐性を高めることができ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等がアクリル粘着剤に付着した場合であってもアクリル粘着剤の粘着力を維持することができる。
【0009】
上記フッ素含有モノマーは特に限定されず、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、アルコール耐性が高いことから、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート又は2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのフッ素含有モノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。上記アクリル共重合体のガラス転移点を下げて粘着力を調整しやすいという観点からは、アクリレートが好ましい。
【0010】
上記フッ素含有モノマーに由来する構成単位の含有量が30重量%以上であれば、フッ素自身の高い撥水撥油性と、フッ素原子の密なパッキングとにより、上記アクリル共重合体の分子鎖内へのアルコールの浸入が抑えられる。このため、上記アクリル共重合体のアルコールに対する膨潤率が低くなり、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。上記含有量の好ましい下限は40重量%、より好ましい下限は50重量%である。
上記フッ素含有モノマーに由来する構成単位の含有量の上限は特に限定されないが、好ましい上限は80重量%である。上記フッ素含有モノマーに由来する構成単位の含有量が80重量%以下であれば、アクリル粘着剤が固くなり過ぎず、充分なタック性を維持することができ、充分な粘着力を発揮することができる。上記含有量のより好ましい上限は60重量%である。
【0011】
第1の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体は、更に、炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。
上記アクリル共重合体に炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を含有させることにより、ポリマー間の絡み合いが増加して、アルコールへの浸漬前後のアクリル粘着剤の粘着力及び凝集力が向上する。これにより、アクリル粘着剤が剥離しにくくなり、アルコール耐性が向上する。更に、上記アクリル共重合体に炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を含有させることにより、アクリル粘着剤のオレイン酸に対する耐性を高めることもできる。これにより、アクリル粘着剤は、オレイン酸を主成分とする皮脂に対して耐性が高くなり、アルコール耐性に加えて、人の手が頻繁に触れる部分に用いられても剥離しにくくなる性能を両立しやすくなる。
【0012】
上記炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、アクリル粘着剤が固くなり過ぎず、充分なタック性を維持することができ、充分な粘着力を発揮することができること、また、オレイン酸に対する耐性にも優れることから、エチルアクリレート、メチルアクリレートが好ましい。
【0013】
上記炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。上記炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が上記範囲であることにより、上記アクリル共重合体の極性が高くなりすぎることを避けることができ、アクリル粘着剤へのアルコールの浸入が抑えられ、アルコール耐性が向上する。上記炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0014】
第1の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体は、更に、炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。
上記アクリル共重合体に炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を含有させることにより、上記アクリル共重合体の極性を低くすることができ、アクリル粘着剤へのアルコールの浸入が抑えられ、アルコール耐性が向上する。
【0015】
上記炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、好適な粘着力を発揮できることから、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート又はオクチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0016】
上記炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は15重量%、好ましい上限は40重量%である。上記炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が上記範囲であることにより、上記アクリル共重合体の極性が高くなりすぎることを避けることができ、アクリル粘着剤へのアルコールの浸入が抑えられ、アルコール耐性が向上する。更には、上記アクリル共重合体の極性が低くなりすぎてオレイン酸に対する耐性が低下することも避けることができる。上記炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は35重量%である。
【0017】
第1の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体は、更に、極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。
上記アクリル共重合体に極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有させることにより、アクリル粘着剤の凝集力を高め、粘着力を高めることができる。
【0018】
上記極性官能基は、架橋反応等の反応性を有するものであり、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一つが好ましい。なかでも、粘着力の向上に寄与できることから、水酸基又はカルボキシル基がより好ましい。
上記水酸基を有するモノマーとして、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。上記エポキシ基を有するモノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの極性官能基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0019】
上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は5重量%である。上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が上記範囲であることにより、アクリル粘着剤の凝集力をより高めることができる。また、アクリル粘着剤のゲル分率及び膨潤率を調整しやすくなる。
【0020】
第1の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、酢酸ビニル等に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0021】
第1の本発明のアクリル粘着剤は、下記式(1)で表されるクリープ試験回復量変化率が500%を超える。
第1の本発明のアクリル粘着剤において、下記式(1)で表されるクリープ試験回復量変化率を上記範囲に調整することにより、アクリル粘着剤のアルコール耐性を高めることができ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等がアクリル粘着剤に付着した場合であってもアクリル粘着剤の粘着力を維持することができる。
クリープ試験回復量変化率(%)=Y/X×100 (1)
式(1)中、X及びYはそれぞれ、アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を60℃、湿度90%の条件でイソプロパノール80重量%と水20重量%との混合液に24時間浸漬した前後でのクリープ試験回復量を表す。
【0022】
図1は、クリープ試験を模式的に示す図である。クリープ試験においては、アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を縦10mm×横10mmの平面状に裁断する(試験片Bとする)。図1に示すように、試験片Bの上面に対して厚み25μmのPETフィルムCを、下面に対して長さ100mm、幅10mmの金属台座D(SUS製)をそれぞれ貼り付けて試験サンプルを作製する。この試験サンプルの上面のPETフィルムCをおもりEにより水平方向(矢印方向)に200gの荷重を加えて3分間引っ張る。測定は23℃にて行う。ここで、下面の金属台座Dに接着している試験片Bの一端の位置を基準として、上面のPETフィルムCに接着している試験片Bの一端の、上面のPETフィルムCの引っ張り方向への変位Lを測定する。
【0023】
その後、試験サンプルに加えていた200gの荷重をはずす(図示せず)。すると、変位Lは徐々に回復して小さくなる。なお、通常、変位Lは、荷重を加える前の状態(変位L=0)には戻らない。本明細書においては、試験サンプルに加えていた200gの荷重をはずした時点の変位Lと、荷重をはずしてから3分後の変位Lとの差を、クリープ試験回復量という。
そして、クリープ試験回復量変化率とは、アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を60℃、湿度90%の条件でイソプロパノール80重量%と水20重量%との混合液に24時間浸漬した前後でのクリープ試験回復量の変化率をいう。上記式(1)中、Xは、アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を上記混合液に浸漬する前のクリープ試験回復量を、Yは、アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を上記混合液に浸漬した後のクリープ試験回復量を表す。なお、上記混合液への浸漬は、粘着面のセパレータ(離型処理したPETフィルム等)が付いた状態のまま行う。上記混合液に浸漬した後のクリープ試験は、試験片を上記混合液に24時間浸漬し、試験片を取り出した後、付着した液をふき取り、24時間の乾燥時間を設けてから実施する。また、24時間の乾燥後にクリープ試験を実施する際、試験片のセパレータを剥がした後、3秒以内に測定装置への貼り付けを行う。
【0024】
なお、下面の金属台座Dに接着している試験片Bと上面のPETフィルムCとが面一状になるように試験片B上に上面のPETフィルムCを貼り付ける。また、上面のPETフィルムCの一端の変位Lをμm単位で測定できる検出器(図示せず)を設置する。
【0025】
上記クリープ試験回復量変化率を上記範囲に調整する方法は特に限定されないが、上記アクリル共重合体にフッ素含有モノマーに由来する構成単位を上記含有量で含有させたうえで、次のような方法を採用することが好ましい。即ち、上記アクリル共重合体の組成や重量平均分子量を調整する方法、架橋剤、シランカップリング剤、粘着付与剤等の含有量を調整する方法、アクリル粘着剤のゲル分率を調整する方法、固体状添加物(フィラー等)や液状添加物を配合する方法等を採用することが好ましい。なかでも、上記アクリル共重合体に、フッ素含有モノマーに由来する構成単位に加えて、炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位及び炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の両方を含有させることがより好ましい。
【0026】
次いで、第2の本発明のアクリル粘着剤について説明する。第2の本発明のアクリル粘着剤は、アクリル共重合体を含有する。第2の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体は、炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を70重量%以上含有する。
上記アクリル共重合体に炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を上記含有量で含有させることにより、アクリル粘着剤のアルコール耐性を高めることができ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等がアクリル粘着剤に付着した場合であってもアクリル粘着剤の粘着力を維持することができる。
【0027】
上記炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、好適な粘着力を発揮できることから、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート又はオクチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味し、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルの両方を意味する。
【0028】
上記炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が70重量%以上であれば、上記アクリル共重合体の極性が低くなり、上記アクリル共重合体の分子鎖内へのアルコールの浸入が抑えられる。このため、上記アクリル共重合体のアルコールに対する膨潤率が低くなり、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。上記含有量の好ましい下限は80重量%、より好ましい下限は85重量%である。
上記炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量の上限は特に限定されず、100重量%であってもよい。
【0029】
第2の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体は、更に、極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。
上記アクリル共重合体に極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有させることにより、アクリル粘着剤の凝集力を高め、粘着力を高めることができる。
【0030】
上記極性官能基は、架橋反応等の反応性を有するものであり、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一つが好ましい。なかでも、粘着力の向上に寄与できることから、水酸基又はカルボキシル基がより好ましい。
上記水酸基を有するモノマーとして、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。上記エポキシ基を有するモノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの極性官能基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0031】
上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は5重量%である。上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が上記範囲であることにより、アクリル粘着剤の凝集力をより高めることができる。また、アクリル粘着剤のゲル分率及び膨潤率を調整しやすくなる。
【0032】
第2の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、酢酸ビニル等に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0033】
第2の本発明のアクリル粘着剤は、上述した式(1)で表されるクリープ試験回復量変化率が150%を超える。
第2の本発明のアクリル粘着剤において、上述した式(1)で表されるクリープ試験回復量変化率を上記範囲に調整することにより、アクリル粘着剤のアルコール耐性を高めることができ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等がアクリル粘着剤に付着した場合であってもアクリル粘着剤の粘着力を維持することができる。
【0034】
上記クリープ試験回復量変化率を上記範囲に調整する方法は特に限定されないが、上記アクリル共重合体に炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を上記含有量で含有させたうえで、次のような方法を採用することが好ましい。即ち、上記アクリル共重合体の組成や重量平均分子量を調整する方法、架橋剤、シランカップリング剤、粘着付与剤等の含有量を調整する方法、アクリル粘着剤のゲル分率を調整する方法、固体状添加物(フィラー等)や液状添加物を配合する方法等を採用することが好ましい。なかでも、上記アクリル共重合体の重量平均分子量を調整する方法、アクリル粘着剤のゲル分率を調整する方法がより好ましい。
【0035】
以下、第1の本発明のアクリル粘着剤、及び、第2の本発明のアクリル粘着剤に共通する事項について説明する。
第1の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体、及び、第2の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体は、重量平均分子量の好ましい下限が20万、好ましい上限が200万である。上記アクリル共重合体の重量平均分子量が上記範囲であることによって、アルコールへの浸漬前後のアクリル粘着剤の粘着力及び凝集力が向上する。上記アクリル共重合体の重量平均分子量のより好ましい下限は30万、より好ましい上限は160万である。
なお、重量平均分子量は、重合条件(例えば、重合開始剤の種類又は量、重合温度、モノマー濃度等)によって調整できる。
【0036】
第1の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体、及び、第2の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体を合成するには、上記構成単位の由来となるアクリルモノマーを重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、エマルジョン重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。なかでも、合成が簡便であることから、溶液重合が好ましい。また、特にアクリロニトリルに由来する構成単位の含有量を多くする場合には、エマルジョン重合が好ましい。
【0037】
重合方法として溶液重合を用いる場合、反応溶剤として、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの反応溶剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0038】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物として、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0039】
第1の本発明のアクリル粘着剤、及び、第2の本発明のアクリル粘着剤は、架橋剤を含有することが好ましい。
第1の本発明のアクリル粘着剤、及び、第2の本発明のアクリル粘着剤に架橋剤を添加することにより、上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の極性官能基を架橋し、架橋構造を構築することができる。これにより、アクリル粘着剤のゲル分率及び膨潤率を調整しやすくなる。
【0040】
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、架橋反応後に形成される結合が分極しており、アクリル粘着剤が各種被着体と相互作用しやすく界面接着力が強固になることから、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、第1の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体、又は、第2の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が20重量部であり、より好ましい下限が0.05重量部、より好ましい上限が10重量部である。
【0041】
第1の本発明のアクリル粘着剤、及び、第2の本発明のアクリル粘着剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
第1の本発明のアクリル粘着剤、及び、第2の本発明のアクリル粘着剤にシランカップリング剤を添加することにより、アクリル粘着剤と被着体との界面の接着強度を高めることができる。
【0042】
上記シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0043】
上記シランカップリング剤の含有量は特に限定されないが、第1の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体、又は、第2の本発明のアクリル粘着剤に含まれるアクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。上記シランカップリング剤の含有量が0.1重量部以上であれば、アクリル粘着剤と被着体との界面の接着強度が高くなり、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。上記シランカップリング剤の含有量が5重量部以下であれば、アクリル粘着剤を剥離した際の糊残りを抑えることができ、アクリル粘着剤を用いて粘着テープとしたときのリワーク性が向上する。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は4重量部であり、更に好ましい下限は1重量部、更に好ましい上限は3重量部である。
【0044】
第1の本発明のアクリル粘着剤、及び、第2の本発明のアクリル粘着剤は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等の粘着付与剤、その他の樹脂等を含有していてもよい。
【0045】
第1の本発明のアクリル粘着剤、及び、第2の本発明のアクリル粘着剤は、ゲル分率が60重量%以下であることが好ましい。上記ゲル分率が60重量%以下であれば、上記クリープ試験回復量変化率を上記範囲に調整しやすくなり、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。上記ゲル分率のより好ましい上限は50重量%である。
上記ゲル分率の下限は特に限定されないが、好ましい下限は5重量%である。
なお、本明細書における「ゲル分率」とは、下記式(2)により求められる値である。即ち、酢酸エチルに浸漬する前のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量に対する、酢酸エチルに浸漬し、乾燥した後のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量の割合を百分率で表した値である。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W) (2)
(W:基材の重量、W:酢酸エチル浸漬前のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量、W:酢酸エチル浸漬、乾燥後のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量)
【0046】
第1の本発明のアクリル粘着剤、及び、第2の本発明のアクリル粘着剤は、60℃、湿度90%の条件でイソプロパノ-ル80重量%と水20重量%との混合液に24時間浸漬した後の膨潤率が100重量%以上、150重量%以下であることが好ましい。上記膨潤率が100重量%以上であれば、上記混合液への粘着剤成分の溶出がないことを意味しており、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。上記膨潤率が150重量%以下であれば、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。上記膨潤率のより好ましい上限は140重量%であり、更に好ましい上限は130重量%である。
なお、本明細書における「膨潤率」とは、下記式(3)により求められる値である。即ち、イソプロパノ-ル80重量%と水20重量%との混合液に浸漬する前のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量に対する、イソプロパノ-ル80重量%と水20重量%との混合液に浸漬し、乾燥した後のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量の割合を百分率で表した値である。混合液への粘着剤成分の溶出がある場合、膨潤率は100重量%を下回る。
膨潤率(重量%)=100×(W-W)/(W-W) (3)
(W:基材の重量、W:イソプロパノ-ル80重量%と水20重量%との混合液浸漬前のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量、W:イソプロパノ-ル80重量%と水20重量%との混合液浸漬、乾燥後のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量)
【0047】
少なくとも一方の面に第1の本発明のアクリル粘着剤、又は、第2の本発明のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープもまた、本発明の1つである。
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmである。上記粘着剤層の厚みが5μm以上であれば、粘着テープの粘着力が向上する。上記粘着剤層の厚みが100μm以下であれば、粘着テープの加工性が向上する。
【0048】
本発明の粘着テープは、少なくとも一方の面に上記粘着剤層を有していれば、基材を有するサポートタイプであってもよいし、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。サポートタイプの場合には、基材の片面に上記粘着剤層が形成されていてもよいし、両面に上記粘着剤層が形成されていてもよい。
【0049】
上記基材は特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、PETフィルム等のポリエステル系樹脂フィルム等が挙げられる。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエチレン発泡体シート、ポリプロピレン発泡体シート等のポリオレフィン発泡体シート、ポリウレタン発泡体シート等が挙げられる。なかでも、PETフィルムが好ましい。また、耐衝撃性の観点からはポリオレフィン発泡体シートが好ましい。
また、上記基材として、光透過防止のために黒色印刷された基材、光反射性向上のために白色印刷された基材、金属蒸着された基材等も用いることができる。
【0050】
本発明の粘着テープの製造方法は特に限定されず、例えば、本発明の粘着テープが基材を有する両面粘着テープである場合は以下のような方法が挙げられる。
まず、アクリル共重合体及び必要に応じて添加剤等に溶剤を加えてアクリル粘着剤aの溶液を作製して、このアクリル粘着剤aの溶液を基材の表面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去して粘着剤層aを形成する。次に、形成された粘着剤層aの上に離型フィルムをその離型処理面が粘着剤層aに対向した状態に重ね合わせる。
次いで、上記離型フィルムとは別の離型フィルムを用意し、この離型フィルムの離型処理面にアクリル粘着剤bの溶液を塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去することにより、離型フィルムの表面に粘着剤層bが形成された積層フィルムを作製する。得られた積層フィルムを粘着剤層aが形成された基材の裏面に、粘着剤層bが基材の裏面に対向した状態に重ね合わせて積層体を作製する。そして、上記積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた粘着テープを得ることができる。
【0051】
また、同様の要領で積層フィルムを2組作製し、これらの積層フィルムを基材の両面のそれぞれに、積層フィルムの粘着剤層を基材に対向させた状態に重ね合わせて積層体を作製し、この積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた粘着テープを得てもよい。
【0052】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、アルコール耐性に優れているため、日常的に使用される消毒液、洗浄液、アルコール飲料等に触れる機会が多い電子機器の部品を固定するために特に好ましく用いることができる。具体的には、スマートフォンやタブレット端末等の携帯電子機器のタッチパネル部分を固定したり、カーナビ等の車載電子機器のディスプレイパネル部分を固定したりするのに本発明の粘着テープを好ましく用いることができる。
【0053】
本発明の粘着テープの形状は特に限定されず、長方形等であってもよいが、上述のようにタッチパネル部分又はディスプレイパネル部分の固定に好適であることから、額縁状が好ましい。また、本発明の粘着テープは、アルコール耐性に優れ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等が付着した場合であっても粘着力を維持できるため、粘着テープの幅が狭くても好ましく用いることができ、粘着テープの幅が5mm以下の場合に特に好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、アルコール耐性に優れ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等が付着した場合であっても粘着力を維持することができるアクリル粘着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】クリープ試験を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0057】
参考例1)
(1)アクリル共重合体の製造
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、ブチルアクリレート67重量部、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート30重量部、アクリル酸3重量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、アクリル共重合体含有溶液を得た。
【0058】
(2)アクリル共重合体の分子量測定
得られたアクリル共重合体をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過し、測定サンプルを調製した。この測定サンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、アクリル共重合体のポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)を求めた。カラムとしてはGPC LF-804(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いた。
【0059】
(3)粘着テープの製造
得られたアクリル共重合体含有溶液に、アクリル共重合体100重量部に対して、架橋剤としてコロネートL(日本ポリウレタン工業社製)を0.75重量部(固体成分比率)加え、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルム(東洋クロス社製 SP3030)上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが35μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させて粘着剤層を形成させた。この粘着剤層を、基材となる厚み50μmのコロナ処理したPETフィルムの両面に転着させ、40℃で48時間養生し、両面粘着テープを得た。
【0060】
(4)ゲル分率の測定
得られた両面粘着テープを20mm×40mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、重量を測定した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(2)を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W) (2)
(W:基材の重量、W:酢酸エチル浸漬前の試験片の重量、W:酢酸エチル浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0061】
(5)クリープ試験回復量変化率の測定
図1は、クリープ試験を模式的に示す図である。クリープ試験においては、得られた両面粘着テープを縦10mm×横10mmの平面状に裁断した(試験片Bとする)。図1に示すように、試験片Bの上面に対して厚み25μmのPETフィルムC(東洋紡社製 東洋紡エステルフィルムE5107、コロナ処理面を貼り付けに使用)を、下面に対して長さ100mm、幅10mmの金属台座D(SUS製)をそれぞれ貼り付けて試験サンプルを作製した。この試験サンプルの上面のPETフィルムCをおもりEにより水平方向(矢印方向)に200gの荷重を加えて3分間引っ張った。測定は23℃にて行った。ここで、下面の金属台座Dに接着している試験片Bの一端の位置を基準として、上面のPETフィルムCに接着している試験片Bの一端の、上面のPETフィルムCの引っ張り方向への変位Lを測定した。
【0062】
その後、試験サンプルに加えていた200gの荷重をはずした(図示せず)。すると、変位Lは徐々に回復して小さくなった。試験サンプルに加えていた200gの荷重をはずした時点の変位Lと、荷重をはずしてから3分後の変位Lとの差を、クリープ試験回復量とした。
そして、下記式(1)を用いて、得られた両面粘着テープを60℃、湿度90%の条件でイソプロパノール80重量%と水20重量%との混合液に24時間浸漬した前後でのクリープ試験回復量の変化率を算出し、クリープ試験回復量変化率とした。
クリープ試験回復量変化率(%)=Y/X×100 (1)
式(1)中、X及びYはそれぞれ、アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を60℃、湿度90%の条件でイソプロパノール80重量%と水20重量%との混合液に24時間浸漬した前後でのクリープ試験回復量を表す。なお、上記混合液への浸漬は、粘着面のセパレータ(離型処理したPETフィルム)が付いた状態のまま行った。上記混合液に浸漬した後のクリープ試験は、試験片を上記混合液に24時間浸漬し、試験片を取り出した後、付着した液をふき取り、24時間の乾燥時間を設けてから実施した。また、試験片のセパレータを剥がした後、3秒以内に測定装置への貼り付けを行った。
【0063】
参考例2~3、7~11、実施例4~6、比較例1~6)
使用するモノマー及び添加剤の種類及び量を表1又は2に記載のように変更したこと以外は参考例1と同様にして両面粘着テープを得た。なお、下記に示す材料を用いた。
・粘着付与剤 KE359(荒川化学工業社製)
・架橋剤 テトラッドC(三菱ガス化学製)
・シランカップリング剤 KBM403(共に信越化学工業社製)
【0064】
<評価>
参考例、実施例及び比較例で得られた両面粘着テープについて、下記の評価を行った。結果を表1又は2に示した。
(1)180°引きはがし粘着力(180°ピール試験)
得られた両面粘着テープを5mm幅の短冊状に裁断して試験片を作製し、片面の離型フィルムを剥離除去して粘着剤層を露出させた。この試験片をステンレス板に、その粘着剤層がステンレス板に対向した状態となるように載せた後、試験片上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラを一往復させることにより、試験片とステンレス板とを貼り合わせ、その後、23℃で24時間静置して試験サンプルを作製した。
JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、180°引きはがし粘着力(N/mm)(浸漬前)を測定した。なお、180°引きはがし粘着力が機器の測定限界値未満であった場合は0とした。
その後、試験サンプルをイソプロパノール80重量%と水20重量%との混合液(アルコール)のバスに60℃、湿度90%の条件で24時間浸漬し、取り出した後、付着した液体を軽くふき取り、24時間静置した。その後、180°引きはがし粘着力(N/mm)(浸漬前)と同様にして180°引きはがし粘着力(N/mm)を測定した。
また、混合液(アルコール)のバスに浸漬した前後での粘着力保持率を算出した。粘着力保持率が40%以上の場合を◎、15%以上40%未満の場合を〇、15%未満の場合を×とした。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、アルコール耐性に優れ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等が付着した場合であっても粘着力を維持することができるアクリル粘着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープを提供することができる。
【符号の説明】
【0068】
B 試験片
C PETフィルム
D 金属台座
E おもり
L 変位
図1