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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】溶接装置及び溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/08 20060101AFI20220614BHJP
   B23K 9/32 20060101ALI20220614BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B23K37/08 D
B23K9/32 Z
B23K31/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018102528
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019206023
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】笠野 和輝
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-050282(JP,A)
【文献】特公昭46-021287(JP,B1)
【文献】特開昭57-22882(JP,A)
【文献】実開昭54-74726(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0084333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/08
B23K 9/32
B23K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接対象である溶接ワイヤおよび母材をアークにより溶融させる溶接部と、
前記溶接部で溶融された溶融金属から一部を除去する除去機構と、を備え
前記除去機構は、
前記溶融金属を掻き出す掻き出し部と、
前記掻き出し部により掻き出された該溶融金属を貯留するための溜め部と、を有する、
溶接装置。
【請求項2】
前記除去機構は、
前記溶融金属のうち、該溶融金属が凝固してビードが形成された際、前記母材の表面よりも盛り上がる部分である余盛り部分に相当する分を除去する
請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記掻き出し部は、前記溶融金属を掻き出すスクレーパである
請求項1または請求項2に記載の溶接装置。
【請求項4】
前記溜め部は、移動方向の後方側で部材が立ち上がるように構成されている
請求項1または請求項2に記載の溶接装置。
【請求項5】
溶接ワイヤと母材との間に発生するアークによって前記溶接ワイヤと前記母材を溶融させ、溶融金属の溶融池を形成するステップと、
除去機構により、前記溶融池から溶融金属の一部を掻き出し、掻き出された金属が前記溶融池に戻ることがないよう貯留することで、該溶融金属の一部を除去するステップと、を有する溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接装置及び溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接構造物では、溶接時に加わる熱によって溶接変形が生じる。溶接変形は部材の組み立て精度の悪化につながる。このため、溶接後にバーナー等で炙る、プレス機で圧下するといった変形を矯正する工程が必要となる。こうした溶接変形の矯正工程が、溶接工程全体の施工効率低下の一因となっていた。
【0003】
特許文献1には、エンドミルにより溶接後の余盛りを削除する溶接装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-285829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶接工程の効率化に向けては、溶接時に生じる溶接変形を低減する溶接装置や溶接方法が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、溶接変形を低減する溶接装置及び溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る溶接装置は、溶接対象である溶接ワイヤおよび母材をアークにより溶融させる溶接部と、前記溶接部で溶融された溶融金属から一部を除去する除去機構と、を備え、前記除去機構は、前記溶融金属を掻き出す掻き出し部と、前記掻き出し部により掻き出された該溶融金属を貯留するための溜め部と、を有する
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、溶接変形を低減する溶接装置及び溶接方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一の実施例に係る溶接装置の使用状態を示す斜視図である。
図2】一の実施例に係る溶接装置の使用状態を示す模式断面図である。
図3】溶融池の形状を示す上面図である。
図4】参考例に係る溶接装置の使用状態を示す模式断面図である。
図5】溶接変形のシミュレーション結果を対比して説明する図である。
図6】一の実施例と参考例とを対比するビードの結晶構造を比較する断面図である。
図7】他の実施例に係る溶接装置の使用状態を示す斜視図である。
図8】さらに他の実施例に係る溶接装置の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
一の実施例に係る溶接装置1について、図1を用いて説明する。図1は、一の実施例に係る溶接装置1の使用状態を示す斜視図である。
【0012】
溶接装置1は、溶接ワイヤ2が送給される溶接トーチ3と、余盛り除去機構4と、を備えている。また、図1の例では、2つの母材5を突合せ継手で溶接する例を示している。
【0013】
また、溶接装置1は、図示しない溶接電源と、図示しないワイヤ送給装置と、を備えている。溶接電源は、溶接ワイヤ2と母材5との間にアーク6(後述する図2参照)を発生させるための電源であり、一方の電極が母材5と接続され、他方の電極が溶接トーチ3の図示しないコンタクトチップに接続される。ワイヤ送給装置は、溶接ワイヤ2を溶接トーチ3に自動的に送給する装置である。
【0014】
溶接トーチ3は、図示しないコンタクトチップを備えている。コンタクトチップは、ワイヤ送給装置から送給された溶接ワイヤ2を案内するとともに、溶接電源からの溶接電流を溶接ワイヤ2に供給する。
【0015】
溶接トーチ3の移動方向F3を矢印で示す。溶接トーチ3は、2つの母材5が突合せた部分の上を移動する。溶接電源から供給される溶接電流により、溶接ワイヤ2と母材5との間にアーク6(後述する図2参照)が発生する。この際、アーク6の発する高熱により、溶接ワイヤ2が溶融し、溶滴となって母材5の側に移行する。また、母材5の一部も溶融する。溶融した溶接ワイヤ2及び母材5は、溶融金属として溶融池7を形成する。そして、溶融池7の溶融金属が冷却され凝固することによりビード8を形成し、2つの母材5が溶接される。
【0016】
なお、本実施例の溶接装置1は、ガスメタルアーク溶接(GMAW:Gas Metal Arc Welding)、サブマージアーク溶接(SAW:Submerged Arc Welding)、フラックス入りワイヤアーク溶接(FCAW:Flux Cored Arc Welding)等のアーク溶接を用いる溶接装置とすることができる。
【0017】
溶接装置1がガスメタルアーク溶接を行う溶接装置の場合、溶接装置1は図示しないシールドガス供給装置を備えている。シールドガス供給装置は、炭酸ガス、アルゴンガス等のシールドガスを溶接トーチ3に供給する装置である。供給されたシールドガスは、溶接トーチ3の図示しないノズルから噴射され、溶接中にアーク6と溶融金属とを覆い、空気が溶接雰囲気内に侵入することを防ぐ。
【0018】
また、溶接装置1がサブマージアーク溶接を行う溶接装置の場合、溶接装置1は図示しないフラックス供給装置を備えている。フラックス供給装置は、移動方向F3を基準として、溶接トーチ3よりも前側で母材5の表面にフラックスを供給する。
【0019】
また、溶接装置1がフラックス入りワイヤアーク溶接を行う溶接装置の場合、溶接ワイヤ2は、中空構造を有しており、内部にフラックス等が充填されている。
【0020】
余盛り除去機構4は、溶融池7から溶融金属の一部(ビード8の余盛り分)を除去する機能を有している。余盛り除去機構4は、移動方向F3を基準として、溶接トーチ3の後方側に配置されている。余盛り除去機構4の移動方向F4を矢印で示す。余盛り除去機構4は、溶接トーチ3に追随して、同じ方向に移動する。なお、溶接トーチ3がマニピュレータによって移動する自動溶接装置である場合、余盛り除去機構4も溶接トーチ3と同一のマニピュレータに取り付けられていてもよい。また、溶接トーチ3と余盛り除去機構4とがそれぞれ独立のマニピュレータに取り付けられていてもよい。
【0021】
次に、余盛り除去機構4について図2を用いてさらに説明する。図2は、一の実施例に係る溶接装置1の使用状態を示す模式断面図である。なお、図2においては、溶接トーチ3は図示を省略している。また、母材5の表面の高さを破線5aで示している。
【0022】
一の実施例に係る余盛り除去機構4は、断面視して、略L字形状のスクレーパとして形成されている。余盛り除去機構4は、母材5の表面を摺動する、または、母材5の表面から僅かに浮き上がって移動することにより、溶融池7から溶融金属の一部を掻き出して、ビード8の余盛りを低減する。
【0023】
余盛り除去機構4は、掻き出し部41と、溜め部42と、を有している。
【0024】
掻き出し部41は、溶融池7から溶融金属を掻き出す部位である。掻き出し部41は、下側(溶融池7の側)が平坦に形成され、上側(溶融池7とは反対側)にテーパを有するくさび形状に形成されている。掻き出し方向F9に示すように、溶融池7の溶融金属の一部、具体的には、母材5の表面よりも盛り上がっている部分が、掻き出し部41によって掻き出される。掻き出された溶融金属9は、掻き出し部41のテーパに沿って余盛り除去機構4の上に乗り上げ、溜め部42へ移動する。
【0025】
溜め部42は、掻き出された溶融金属9が再び溶融池7に戻らないように貯留するための部位である。図2に示す余盛り除去機構4では、移動方向F4の後方側で部材が立ち上がることにより、掻き出し部41で掻き出された溶融金属9が再び溶融池7に戻らないように構成されている。
【0026】
なお、溜め部42の溶融金属9は、凝固した後に所定のタイミング(例えば、溶接の終了後)で溜め部42から排出される。なお、排出方法は、これに限られるものではなく、図2において紙面の垂直方向(図1の余盛り除去機構4の長手方向)に、溜め部42の溶融金属9が排出される構成であってもよい。
【0027】
また、余盛り除去機構4は、鉄の溶融温度以上での耐熱性を有するとともに、非導電性の材料で構成されることが好ましい。具体的には、余盛り除去機構4の材料として、セラミックを用いることができる。余盛り除去機構4が耐熱性を有することにより、熱による変形を防止することができる。余盛り除去機構4が非導電性の材料で構成されることにより、溶接ワイヤ2と余盛り除去機構4との間で放電することを防止して、溶接ワイヤ2と母材5との間でアーク6を発生させることができる。
【0028】
なお、余盛り除去機構4はスクレーパとして形成されるものとして説明したが、これに限られるものではなく、溶融池7から溶融金属の一部を掻き出すことができる構成であれば、その他の構造であってもよい。例えば、溶融金属の一部を掻き出す掻き出し部を有するローラとして構成してもよい。
【0029】
図3は、溶融池7の形状を示す上面図である。
【0030】
図3に示すように、アーク6により、母材5の金属が溶融して窪み10が形成される。そして、溶接トーチ3の進行方向の後方側に溶融池7が形成される。ここで、上面視して、溶接ワイヤ2の中心から溶融池7の後端までの進行方向長さLは、MAG溶接にて溶接速度30cm/minとし、種々の溶接条件においても概ね5mm以上15mm以下となっている。このため、溶接ワイヤ2の中心から水平距離で5mm以内の位置に余盛り除去機構4の掻き出し部41の先端を設けることが好ましい。また、余盛り除去機構4の後端は、図2に示すように、溶融池7の範囲で収まることが好ましい。このように構成することにより、余盛り除去機構4が通過して溶融金属の一部を掻き出した時点では溶融金属はまだ凝固しておらず、余盛り除去機構4が通過した後に溶融金属は凝固してビード8を形成することができる。
【0031】
ここで、参考例に係る溶接装置1Xについて図4を用いて説明する。図4は、参考例に係る溶接装置1Xの使用状態を示す模式断面図である。参考例に係る溶接装置1Xは、図1及び図2に示す溶接装置1と比較して、余盛り除去機構4を備えていない点で異なっている。その他の構成は同様であり、重複する説明を省略する。
【0032】
アーク6の発する高熱により、溶接ワイヤ2が溶融し、溶滴となって母材5の側に移行する。また、母材5の一部も溶融する。溶融した溶接ワイヤ2及び母材5は、溶融金属として溶融池7Xを形成する。溶接ワイヤ2が溶滴移行するため、溶融池7Xは母材5の表面よりも盛り上がって形成される。そして、溶融池7Xの溶融金属が冷却され凝固することによりビード8Xを形成する。ビード8Xは、母材5の表面よりも盛り上がった余盛りを形成する。
【0033】
一の実施例に係る溶接装置1と参考例に係る溶接装置1Xとを対比して説明する。図5は、溶接変形のシミュレーション結果を対比して説明する図であり、(a)は一の実施例に係る溶接装置1でアーク溶接した際のシミュレーション結果、(b)は参考例に係る溶接装置1Xでアーク溶接した際のシミュレーション結果を示す。なお、上段にシミュレーションに用いた母材とビードの断面形状を示し、中段にビードの拡大図を示し、下段に溶接変形のシミュレーション結果を示している。なお、シミュレーション結果は母材5の板厚方向の変形量が大きいほど色が黒くなるように図示されている。
【0034】
溶接変形は、溶接中に溶融され凝固する溶融金属の膨張・収縮によって生じる。図4に示す溶接装置1Xで溶接された場合では、ビード8Xの余盛り部分も収縮する。このため、図5(b)に示すように、母材5の溶接変形は、母材5の表面がマイナス方向に変形し、変形量が大きく、ビード8Xの周囲から幅方向(ビード8Xの短手方向)に亘って広く及んでいる。
【0035】
これに対し、図2に示す溶接装置1では、溶融池7の溶融金属が凝固する前に、余盛り除去機構4によって、溶融金属の一部(余盛り分)が溶融池7から掻き出される。これにより、一の実施例に係る溶接装置1では、参考例に係る溶接装置1Xと比較して、溶接の際に凝固する溶融金属の量を低減することができる。このため、図5(a)に示すように、溶接装置1で溶接した際の母材5の溶接変形は、変形量も小さく、範囲も狭くなっている。
【0036】
このため、図5(b)に示す余盛りありのビード8Xにおける溶接変形と比較して、図5(a)に示す余盛りが除去されたビード8における溶接変形を低減することができる。
【0037】
次に、一の実施例におけるビード8の断面形状と、参考例におけるビード8Xの余盛り分を切削したビード8X2の断面形状と、を比較する。図6は、ビードの断面形状を対比して説明する図であり、(a)は一の実施例におけるビード8の断面形状の模式図、(b)は一の実施例におけるビード8の表層のミクロ組織を示す断面模式図、(c)は参考例におけるビード8X2の断面形状の模式図、(d)は参考例におけるビード8X2の表層のミクロ組織を示す断面模式図である。
【0038】
アークにより溶融した溶融金属は母材5の側から凝固する。このため、図6(a)に示すように、溶融金属の最終凝固部先端81は、ビード8の表面の略中央に形成される。また、溶融金属が凝固する際、母材5の側から最終凝固部先端81に向けて凝固するため、凝固溶接金属による線模様82が形成される。このため、線模様82は、ビード8の表面の略中央の最終凝固部先端81まで伸び収束するように形成される。
【0039】
余盛りありのビード8Xにおいても、ビード8Xの表面の略中央に最終凝固部先端が形成され、母材5の側から最終凝固部先端に向けて凝固溶接金属による線模様が形成される。そして、余盛り分を切削(または研削)したビード8X2の断面形状においては、図6(c)に示すように、最終凝固部先端が切削により消失しており、線模様82は、ビード8X2の切削後の表面の一点に向けて収束するようには形成されていない。
【0040】
このように、一の実施例に係る溶接装置1で溶接されたビード8の断面状態と、参考例に係る溶接装置1Xで溶接され余盛り分が切削されたビード8X2の断面状態とは、線模様82の構成が異なっている。
【0041】
また、ビード8の表面付近83のミクロ組織は、図6(b)に示すように、ビード8の表面が切削されておらず凝固した際のままであるため、粒界とビード表面とが一致するように形成されている。
【0042】
これに対し、ビード8X2の表面付近83Xのミクロ組織は、図6(d)に示すように、ビード8X2の表面が切削されているため、粒界とビード表面とが一致していない個所が生じる。
【0043】
このように、一の実施例に係る溶接装置1で溶接されたビード8の断面状態と、参考例に係る溶接装置1Xで溶接され余盛り分が切削されたビード8X2の断面状態とは、ビードの表面付近のミクロ組織においても構成が異なっている。
【0044】
また、粒界に沿って浸食する腐食は、図6(d)のミクロ組織と比較して、図6(b)のミクロ組織の方が、腐食に対して強くなる。
【0045】
以上、一実施例に係る溶接装置1によれば、余盛り除去機構4で溶融池7から溶融金属の一部を除去することにより、凝固前の溶融金属を低減することができる。これにより、溶融金属の膨張・凝固によって生じる溶接変形を低減することができる。
【0046】
また、従来の溶接変形を低減させる手法として、溶接時の入熱を低減させた溶接方法の開発が行われている。しかし、溶接入熱を低減させた溶接方法では、溶接入熱の低下に伴い、1パスで溶接部に溶着させることができる溶着金属の量が低下し、溶接パス数の増加につながり、施工効率が低下するという課題がある。これに対し、一実施例に係る溶接装置1によれば、入熱を低減させなくても溶接変形を低減させることができるので、施工効率の低下を防止することができる。
【0047】
また、従来の溶接変形を低減させる手法として、溶接変形を低減させる溶接材料の開発が行われている。しかし、溶接変形を低減させる溶接材料では、特殊な材料が必要となり、コスト増につながるという課題がある。これに対し、一実施例に係る溶接装置1によれば、溶接ワイヤ2、シールドガス、フラックス等の溶接材料は、従来の溶接装置と同様のものを用いることができるので、特殊な材料を必要とせず、コスト増加を防止することができる。
【0048】
また、一実施例に係る溶接装置1によれば、従来の溶接装置に余盛り除去機構4を追加することで構成することができるので、装置コストを過度に増加させずに装置を構成することができる。
【0049】
図7は、他の実施例に係る溶接装置1Aの使用状態を示す斜視図である。溶接装置1Aは、溶接装置1と比較して、余盛り除去機構4Aの構成が異なっている。その他の構成は同様であり、重複する説明を省略する。
【0050】
余盛り除去機構4Aは、移動方向F3を基準として、溶接トーチ3の後方で、幅方向(上下方向と直交し、かつ、移動方向F3と直交する方向)にずれた位置に配置されている。これにより、余盛り除去機構4Aが溶融池7及びビード8を覆わない位置に配置されている。余盛り除去機構4Aの移動方向F4Aを矢印で示す。余盛り除去機構4Aは、溶接トーチ3に追随して、平行に移動する。
【0051】
余盛り除去機構4Aは、幅方向にガスGを噴射するノズル45を備えている。ノズル45からガスGを噴射することによって、溶融池7から溶融金属の一部(余盛り分)を吹き飛ばして除去する。なお、ガスGとしては、炭酸ガス、アルゴンガス等のシールドガスを用いることが好ましい。
【0052】
他の実施例に係る溶接装置1Aによれば、一実施例に係る溶接装置1と同様に溶接変形を低減することができる。また、施工効率の低下を防止することができる。また、特殊な材料を必要とせず、コスト増加を防止することができる。また、装置コストを過度に増加させずに装置を構成することができる。
【0053】
また、他の実施例に係る溶接装置1Aによれば、余盛り除去機構4Aが溶融池7の上を通ることなく構成することができるので、設置の自由度を向上させることができる。
【0054】
また、他の実施例に係る溶接装置1Aの余盛り除去機構4Aによれば、除去した溶融金属を吹き飛ばすことができるので、溜め部42から掻き出した金属を取り除く余盛り除去機構4と比較して、連続使用が可能となる。
【0055】
図8は、さらに他の実施例に係る溶接装置1Bの使用状態を示す斜視図である。溶接装置1Bは、溶接装置1と比較して、余盛り除去機構4Bの構成が異なっている。その他の構成は同様であり、重複する説明を省略する。
【0056】
余盛り除去機構4Bは、溶接トーチ3と一体に形成されている。
【0057】
他の実施例に係る溶接装置1Bによれば、一実施例に係る溶接装置1と同様に溶接変形を低減することができる。また、施工効率の低下を防止することができる。また、特殊な材料を必要とせず、コスト増加を防止することができる。また、装置コストを過度に増加させずに装置を構成することができる。
【0058】
また、他の実施例に係る溶接装置1Bの余盛り除去機構4Bによれば、溶接トーチ3とともに余盛り除去機構4Bを移動させることができる。これにより、例えば、溶接トーチ3がマニピュレータによって移動する自動溶接装置である場合、マニピュレータを追加することなく、装置を構成することができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B 溶接装置
2 溶接ワイヤ(溶接対象)
3 溶接トーチ(溶接部)
4,4A,4B 余盛り除去機構(除去機構)
5 母材(溶接対象)
6 アーク
7 溶融池
8 ビード
81 最終凝固部先端
9 (掻き出された)溶融金属
10 窪み
41 掻き出し部
42 溜め部
45 ノズル
F3,F4 移動方向
F9 掻き出し方向
G ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8