(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】屋根ユニット輸送用金具、および、屋根施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/348 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
E04B1/348 L
E04B1/348 X
(21)【出願番号】P 2018137834
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 典之
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-186390(JP,A)
【文献】特開平07-041072(JP,A)
【文献】特開2000-170306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0031014(US,A1)
【文献】特開2010-255257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04B 7/02
E04G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小屋組部の上に第1の屋根パネルを取付けて、全体を側面視略三角形状に形成した第1の屋根ユニットにおける、前記第1の屋根パネルに取付可能なユニット側取付金具と、前記第1の屋根パネルと同等の幅寸法を有して、第2の屋根ユニットを構成する第2の屋根パネルに取付可能なパネル側取付金具とを有し、該パネル側取付金具と前記ユニット側取付金具とは、前記第1の屋根パネルの水上側の端部と前記第2の屋根パネルの端部との位置を揃えて平行に重ねた状態で互いに連結するものであることを特徴とする屋根ユニット輸送用金具。
【請求項2】
請求項
1に記載の屋根ユニット輸送用金具において、
前記ユニット側取付金具と前記パネル側取付金具との間には、前記第1の屋根パネルと前記第2の屋根パネルとを、端部の位置を揃えて平行に重ねた状態に位置決めする位置決め部が備えられていることを特徴とする屋根ユニット輸送用金具。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2に記載の屋根ユニット輸送用金具において、
前記パネル側取付金具は、前記第1の屋根パネルと前記第2の屋根パネルとの幅寸法の差を補完可能な補完部を備えていることを特徴とする屋根ユニット輸送用金具。
【請求項4】
小屋組部の上に第1の屋根パネルを取付けて、全体を側面視略三角形状に形成した第1の屋根ユニットと、前記第1の屋根パネルと同等の幅寸法を有して、第2の屋根ユニットを構成する第2の屋根パネルとを、前記第1の屋根パネルの水上側の端部と前記第2の屋根パネルの端部との位置を揃えて平行に重ねて屋根ユニット輸送用金具を用いて一体に連結した状態で、前記第1の屋根ユニットと前記第2の屋根パネルとを同時に建築現場へ輸送し、建築現場に設置された建物ユニットの上部に前記第1の屋根ユニットを設置すると共に、別の建物ユニットの上部にて、前記第2の屋根パネルを用いて前記第2の屋根ユニットを構築して、該第2の屋根ユニットを前記別の建物ユニットの上部に設置することを特徴とする屋根施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋根ユニット輸送用金具、および、屋根施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物には、ユニット工法によって構築されたもの(ユニット建物)がある。このユニット工法は、予め工場で製造された建物ユニットや屋根ユニットを建築現場へ輸送して、建築現場で組み立てることにより、短期間で建物(ユニット建物)を構築できるようにしたものである。
【0003】
このような、ユニット建物では、建物本体を構成する建物ユニットや、屋根を構成する屋根ユニットを建築現場へ効率的に輸送することが、工期の短縮やコストダウンなどを図る上で重要になる。
【0004】
従来の屋根ユニットの輸送手段には、幅寸法の大きい屋根ユニットの内側に、幅寸法の小さい屋根ユニットを入り込ませた状態で、大きい屋根ユニットと小さい屋根ユニットとをトラックで一緒に輸送するものが存在している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された輸送手段は、大きい屋根ユニットと小さい屋根ユニットとの間に、小さい屋根ユニットを大きい屋根ユニットの内側に入り込ませられるだけの十分な大きさの差がなければならず、大きさにあまり差のない屋根ユニットどうしには適用できないなどの問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、主に、上記した問題点を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、小屋組部の上に第1の屋根パネルを取付けて、全体を側面視略三角形状に形成した第1の屋根ユニットにおける、前記第1の屋根パネルに取付可能なユニット側取付金具と、前記第1の屋根パネルと同等の幅寸法を有して、第2の屋根ユニットを構成する第2の屋根パネルに取付可能なパネル側取付金具とを有し、該パネル側取付金具と前記ユニット側取付金具とは、前記第1の屋根パネルの水上側の端部と前記第2の屋根パネルの端部との位置を揃えて平行に重ねた状態で互いに連結するものである屋根ユニット輸送用金具などを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成によって、屋根ユニット輸送用金具を、ユニット側取付金具とパネル側取付金具とで構成しても良い。これにより、簡単な構成で、大きさにあまり差のない第1の屋根パネルと第2の屋根パネルとを確実に連結して、一体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態にかかる建物ユニットの一部分解した斜視図である。
【
図3】第1の屋根ユニットに第2の屋根パネルを設置して屋根ユニット構造体を形成する状態を示す斜視図である。
【
図4】第2の屋根パネルの製造工程図である。このうち、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程、(d)は第4工程である。
【
図5】
図3の屋根ユニット輸送用金具の拡大図である。このうち、(a)は連結前の状態、(b)は連結している状態である。
【
図6】
図5の正面図である。このうち、(a)は連結前の状態、(b)は連結後の状態である。
【
図7】
図5の側方断面図である。このうち、(a)は連結前の状態、(b)は連結後の状態である。
【
図8】屋根ユニット輸送用金具の変形例の
図5と同様の拡大図である。このうち、(a)は連結前の状態、(b)は連結している状態である。
【
図9】
図8の正面図である。このうち、(a)は連結前の状態、(b)は連結後の状態である。
【
図10】
図8の側方断面図である。このうち、(a)は連結前の状態、(b)は連結後の状態である。
【
図11】屋根ユニット構造体をトラックの荷台に搭載して輸送する状態を示す側面図である。
【
図12】建築現場で第2の屋根ユニットの妻小壁を建込んでいる様子を示す斜視図である。
【
図14】建築現場で第2の屋根ユニットの桁トラスを建込んでいる様子を示す斜視図である。
【
図16】建築現場で第2の屋根ユニットの第2の屋根パネルを設置している様子を示す斜視図である。
【
図17】(a)は
図16のD部の断面図、(b)はE部の断面図、(c)はF部の断面図、(d)はG部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図17は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例1】
【0012】
<構成>以下、構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、住宅などの建物1を、ユニット工法によって構築する。このユニット工法は、予め工場で製造された建物ユニット2や屋根ユニット4を建築現場3へ輸送して、建築現場3で組み立てることにより、短期間で建物1(ユニット建物6)を構築できるようにするものである。
【0014】
ユニット建物6は、例えば、複数の建物ユニット2の上にそれぞれ屋根ユニット4を設置したものとされる。この図では、屋根ユニット4は、中央の棟屋根ユニット4Aと、その両側の軒屋根ユニット4B,4Cとを妻方向Xに並べて成る列を、桁方向Yに一列または複数列有するものとなっており、全体として切妻屋根を構成している。
【0015】
棟屋根ユニット4Aは、小屋組部7の上に山形の屋根パネル8Aを取付けたものとなっている。軒屋根ユニット4B,4Cは、小屋組部7の上に平坦な屋根パネル8B,8Cを傾斜状態で取付けたものとなっている。小屋組部7は、主に、妻方向Xへ向いた妻小壁11と、桁方向Yへ向いた桁トラス12とで構成されている。棟屋根ユニット4Aの場合、桁トラス12は、両側に設置される。軒屋根ユニット4B,4Cの場合、桁トラス12は、片側(水上側)に設置される。
【0016】
軒屋根ユニット4B,4Cでは、妻小壁11は、建物ユニット2B,2Cの上部に当接配置される水平な辺と、水上側に位置する垂直な辺と、屋根パネル8B,8Cの傾斜に沿った斜辺とを有するほぼ直角三角形状のパネルとなっている。桁トラス12は、ほぼ矩形状をしたパネル枠となっている。屋根パネル8B,8Cは、それぞれ棟屋根ユニット4Aの山形の屋根パネル8Aと面一な状態で連続されると共に、軒先側の端部に、小屋組部7から突出するように外方に延びる軒部13を有することができる。これらにより、軒屋根ユニット4B,4Cは、側面視略三角形状に構成されている。但し、ユニット建物6における、建物ユニット2や屋根ユニット4の構成は、上記に限るものではない。
【0017】
そして、上記に対し、この実施例は、以下のような構成を備えている。
【0018】
(A)屋根ユニット構造体21について
図2(
図3)に示すように、小屋組部7の上に第1の屋根パネル8Bを取付けて、全体を側面視略三角形状に形成した第1の屋根ユニット4Bと、第1の屋根パネル8B(の幅寸法W1)と同等の幅寸法W2を有して(
図3)、第2の屋根ユニット4C(
図1)を構成する第2の屋根パネル8Cとを設ける。
第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根パネル8Cとを、第1の屋根パネル8Bの水上側の端部22と第2の屋根パネル8Cの端部23との位置を揃えて平行に重ねた状態で、屋根ユニット輸送用金具24を用いて一体に連結して屋根ユニット構造体21を構成する。
【0019】
ここで、都合上、ユニット建物6を、棟屋根ユニット4Aを用いずに、2つの軒屋根ユニット4B,4Cによって切妻屋根を構成するものとして説明する(
図16参照)。この場合、
図1の軒屋根ユニット4B,4Cを、それぞれ第1の屋根ユニット4Bおよび第2の屋根ユニット4Cとする。これらは同じ規格寸法で形成された建物ユニット2(建物ユニット2Bおよび別の建物ユニット2C)の上にそれぞれ設置するものとされる。なお、この実施例にかかる屋根ユニット構造体21は、片流れ屋根、桁切妻屋根、寄棟屋根、葺降し屋根(桁)などの屋根に対しては適用しない。
【0020】
同等の幅寸法W1,W2とは、第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cの桁方向Yの寸法が同じか、または、ほぼ同じことである(W1=W2またはW1≒W2、但し、W1≒W2の場合にはW1>W2)。この実施例にかかる屋根ユニット構造体21は、既存の方法では組み合わせができないような僅かな寸法差を有する2つの大型の屋根ユニット4B,4Cの間に適用されるものである。
【0021】
なお、既存の方法には、大きさに十分な差のある2つの屋根ユニット4を、幅寸法の大きい屋根ユニット4の内側に、幅寸法の小さい屋根ユニット4を入り込ませた状態に入れ子式に組み合わせるものや、十分に小型の2つの屋根ユニット4のうちの一方を上下反転させると共に、屋根パネル8どうしが面接触するように向きを整えて他方の屋根ユニット4の上に乗せることで上下に組み合わせるものなどがある。
【0022】
そして、第1の屋根ユニット4Bは、工場にて製造される。また、第2の屋根パネル8Cは、工場にて、以下の工程により製造される。まず、
図4(a)に示すように、第1工程(枠組工程)で横材31や垂木32などを組み合わせて(野地面が上向きとなる状態で)パネル枠33を作る。次に、
図4(b)に示すように、第2工程(金具取付工程)で垂木32にハリケーンタイ34(固定金具)を仮固定する。そして、
図4(c)に示すように、第3工程(面材取付工程)でパネル枠33の野地面に野地板35や防水シートなどの面材を取付ける。最後に、
図4(d)に示すように、第4工程(補助材取付工程)でパネル枠33を反転させて、パネル枠33の裏面側に小屋組部7を構築するための頭つなぎ材37や桁構造材38などの補助材を取付ける。桁構造材38はハリケーンタイ34を用いて垂木32に取付けられる。但し、第2の屋根パネル8Cの製造工程は、上記に限るものではない。
【0023】
更に、屋根ユニット構造体21は、工場にて製造される。この際、第2の屋根パネル8Cは、水上側または軒先側の端部23が、第1の屋根パネル8Bの水上側の端部22の位置に揃えられる(
図2)。特に、第2の屋根パネル8Cは、水上側の端部23を第1の屋根パネル8Bの水上側の端部22に揃えるのが好ましい。この際、第2の屋根パネル8Cの端部23と、第1の屋根パネル8Bの水上側の端部22は、第1の屋根ユニット4Bの妻小壁11の水上側の辺とほぼ一直線に並べられる。
【0024】
(B-1)屋根ユニット輸送用金具24について
【0025】
図5(~
図7)に示すように(
図2、
図3も併せて参照)、屋根ユニット輸送用金具24は、(小屋組部7の上に第1の屋根パネル8Bを取付けて、全体を側面視略三角形状に形成した第1の屋根ユニット4Bにおける)第1の屋根パネル8Bに取付可能なユニット側取付金具41と、(第1の屋根パネル8B(の幅寸法W1)と同等の幅寸法W2を有して、第2の屋根ユニット4Cを構成する)第2の屋根パネル8Cに取付可能なパネル側取付金具42とを有する。
パネル側取付金具42とユニット側取付金具41とは、第1の屋根パネル8Bの水上側の端部22と第2の屋根パネル8Cの端部23との位置を揃えて平行に重ねた状態で互いに連結するものとされる。
【0026】
ここで、屋根ユニット輸送用金具24は、少なくとも、第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cの妻側の各側面に、所要の間隔を有して2箇所以上設けられる(
図2、
図3)。この実施例では、屋根ユニット輸送用金具24の取付位置は、各側面の両端部近傍となっているが、これに限るものではない。
【0027】
ユニット側取付金具41は、第1の屋根パネル8Bの側部から第1の屋根パネル8Bと面直な方向(第2の屋根パネル8Cの側)へ延びる金具本体部43を備えている。金具本体部43は、主に、第1の屋根パネル8Bの側部と平行な面を有している。この面は、第1の屋根パネル8Bおよび第2の屋根パネル8Cの厚みと第1の屋根パネル8Bに対する第2の屋根パネル8Cの保持間隔44とを足した程度の長さを有する平坦面とされている。この平坦面の両側縁部には、第1の屋根パネル8Bとは反対側へ屈曲された補強用の屈曲縁部45(フランジ部)を形成することができる。
【0028】
そして、ユニット側取付金具41の金具本体部43は、その一端側(基端側)が、第1の屋根パネル8Bの側部にボルト・ナットなどの締結固定具46aによって固定可能な固定部43aとなっている。固定部43aの第1の屋根パネル8B側の面にはスペーサ47が一体的または別体に取付けられる。スペーサ47は、金具本体部43の幅寸法を長辺とし、第1の屋根パネル8Bの厚みを短辺とする長方形とほぼ同じ大きさかそれよりも若干小さいものとされ、金具本体部43よりも厚肉に形成される。
【0029】
ユニット側取付金具41の金具本体部43は、その他端側(先端側)が、パネル側取付金具42の一端部(先端部)と重ね合わせた状態でボルト・ナットなどの締結固定具46bによって互いに締結固定可能な締結部43bとされている。なお、ユニット側取付金具41やスペーサ47には、適宜の位置にボルト穴が設けられる。
【0030】
また、パネル側取付金具42は、第2の屋根パネル8Cの側部およびユニット側取付金具41の金具本体部43(の締結部43b)と平行な面を備えた金具本体部48を有している。この実施例では、パネル側取付金具42は、第2の屋根パネル8Cの側部から第2の屋根パネル8Cと面直な方向(第1の屋根パネル8Bの側)へ延びる金具本体部48を主に備えている。この実施例の金具本体部48は、第2の屋根パネル8Cの厚みの2倍程度の長さを有する平坦面を有している。
【0031】
パネル側取付金具42の金具本体部48は、その他端側(基端側)が、第2の屋根パネル8Cの側部にボルト・ナットなどの締結固定具46cによって固定可能な固定部48aとなっている。
【0032】
パネル側取付金具42の金具本体部48は、その一端側(先端側)が、ユニット側取付金具41の締結部43bに重ね合わせてボルト・ナットなどの締結固定具46bによって互いに締結固定可能な締結部48bとされている。締結部48bの締結部43b側の面には、締結部43bに当接可能なスペーサ49が一体的または別体に取付けられる。スペーサ49は、ユニット側取付金具41のスペーサ47とほぼ同様のものとすることができる。なお、パネル側取付金具42やスペーサ49には、適宜の位置にボルト穴が設けられる。
【0033】
(B-2)ユニット側取付金具41とパネル側取付金具42との間には、第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cとを、端部22,23の位置を揃えて平行に重ねた状態で互いに位置決め可能な位置決め部51を備えても良い。
【0034】
ここで、位置決め部51は、ユニット側取付金具41の他端部(締結部43b)に形成された位置決め用の切込部52と、パネル側取付金具42の他端部(固定部48a)から突設された位置決めピン53とを有するものとなっている。切込部52は、ユニット側取付金具41の基端側へ向かって幅が小さくなる逆三角形状とされて、ユニット側取付金具41の幅中央部に設けられている。位置決めピン53はパネル側取付金具42の幅中央部から面直外方へ向けて突設されている。そして、切込部52に位置決めピン53を嵌め合わせることで、第1の屋根パネル8Bの水上側の端部22と第2の屋根パネル8Cの端部23との位置が揃うように設定されている。
【0035】
(B-3)
図8(~
図10)に示すように(
図2、
図3も併せて参照)、パネル側取付金具42の変形例として、以下のようなパネル側取付金具55を設けることができる。即ち、パネル側取付金具55は、第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cとの幅寸法W1,W2の差(W1-W2)を補完可能な補完部56を備えるようにしても良い。
【0036】
ここで、補完部56は、第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cとの間に僅かな幅寸法W1,W2の差(W1-W2)がある場合に、幅寸法W1,W2の差を補って支障なく連結させるために用いられるものである。
【0037】
補完部56を有するパネル側取付金具55では、固定部48aと締結部48bとが間隔を有して対向した状態に配置される。固定部48aと締結部48bとは、つなぎ部48cによって連結される。つなぎ部48cは、第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cの幅寸法W1,W2の差と同じ長さ(W1-W2)に形成されることで補完部56として機能する。これにより、パネル側取付金具55は、側面視U字状の金具本体部48を有するものとなる。
【0038】
そして、つなぎ部48cの長さの異なるパネル側取付金具55を複数種類用意しておき、上記した幅寸法W1,W2の差(W1-W2)に応じて使い分けることで、幅寸法W1,W2の差(W1-W2)がある第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cとを容易に連結することができる。この場合、つなぎ部48cがスペーサ49の機能を備えているので、スペーサ49は、設けても設けなくても良い。
【0039】
固定部48aと締結部48bとつなぎ部48cとの間には、これらと直交する面を有する補強板部57を設けることができる。パネル側取付金具55のほぼ幅中央の位置などに位置決めピン53の邪魔にならないように設置される。
【0040】
(C)屋根ユニット輸送方法について
図2に示すように、小屋組部7の上に第1の屋根パネル8Bを取付けて、全体を側面視略三角形状に形成した第1の屋根ユニット4Bと、第1の屋根パネル8B(の幅寸法W1)と同等の幅寸法W2を有して、第2の屋根ユニット4Cを構成する第2の屋根パネル8Cとを、第1の屋根パネル8Bの水上側の端部22と第2の屋根パネル8Cの端部23との位置を揃えて平行に重ね、屋根ユニット輸送用金具24を用いて一体に連結した状態にする。この状態で、第1の屋根ユニット4Bを建物据付姿勢に対して90°回転させた起立姿勢にする。そして、
図11に示すように、第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根パネル8Cとを同時に輸送する。
【0041】
ここで、起立姿勢にした第1の屋根ユニット4Bおよび第2の屋根パネル8C(屋根ユニット構造体21)は、起立姿勢のままトラック61の荷台62に積んで、ロープなどを用いて直接固定して輸送することができる。
【0042】
なお、第2の屋根ユニット4Cの小屋組部7を構成する妻小壁11については、予め工場で製造しておくと共に、トラック61の荷台62の空いたスペースに直接またはラックなどの輸送用架台63を用いて搭載することで、輸送させるようにしても良い。また、第2の屋根ユニット4Cの小屋組部7を構成する桁トラス12については、予め工場で製造しておくと共に、他の屋根ユニット4(例えば、第1の屋根ユニット4Bや他の屋根ユニット4)に仮固定しておくことで、他の屋根ユニット4と一緒に輸送させるようにしても良い。
【0043】
(D)屋根施工方法について
図2に示すように、小屋組部7の上に第1の屋根パネル8Bを取付けて、全体を側面視略三角形状に形成した第1の屋根ユニット4Bと、第1の屋根パネル8B(の幅寸法W1)と同等の幅寸法W2を有して、第2の屋根ユニット4Cを構成する第2の屋根パネル8Cとを、第1の屋根パネル8Bの水上側の端部22と第2の屋根パネル8Cの端部23との位置を揃えて平行に重ねて屋根ユニット輸送用金具24を用いて一体に連結した状態で、
図11に示すように、第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根パネル8Cとを同時に建築現場3へ輸送する。
そして、
図12(~
図17)に示すように、建築現場3に設置された建物ユニット2Bの上部に第1の屋根ユニット4Bを設置すると共に、別の建物ユニット2Cの上部にて、第2の屋根パネル8Cを用いて第2の屋根ユニット4Cを構築して、第2の屋根ユニット4Cを別の建物ユニット2Cの上部に設置する。
【0044】
ここで、
図12~
図17の建物1は、説明の都合上、上記したように建物ユニット2Bと別の建物ユニット2Cの上に、それぞれ第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根ユニット4Cとを設置して、第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根ユニット4Cで切妻屋根を構成するユニット建物6となっている。但し、屋根ユニット構造体21が適用できる建物1は、上記構成のユニット建物6に限るものではない。
【0045】
建築現場3に輸送された屋根ユニット構造体21は、まず、屋根ユニット輸送用金具24を取り外すことによって、第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根パネル8Cとに分解される。
【0046】
次に、建築現場3に設置された建物ユニット2Bへ第1の屋根ユニット4Bを設置する。建物ユニット2Bへの第1の屋根ユニット4Bの設置は、通常通りに行う。
【0047】
そして、建築現場3に設置された建物ユニット2Cの上部で第2の屋根ユニット4Cを構築する。別の建物ユニット2Cの上部での、第2の屋根ユニット4Cの構築は、以下のように行う。
【0048】
まず、
図12に示すように、一対の妻小壁11をクレーンで吊上げて別の建物ユニット2Cの上部の妻側に建込む。妻小壁11は、上枠11aと下枠11bと縦材11cとで構成された三角枠に、三角形状の面材11d(
図13(a))を取付けたものなどとなっている。そして、
図13(a)(b)に示すように、妻小壁11の下枠11bをジョイントボルトやナットなどの締結具72で別の建物ユニット2Cの妻壁74などの上枠74aに固定する。
【0049】
この際、
図13(a)に示すように、外壁側の妻小壁11は、別の建物ユニット2Cの外壁73と面(面材11d)を合わせるように位置調整する。また、
図13(b)に示すように、内壁側の妻小壁11は、別の建物ユニット2Cの上枠74aと下枠11bとの合わせるように位置調整する。
【0050】
次に、
図14(
図15)に示すように、(第2の屋根ユニット4Cのための)桁トラス12(12C)を第1の屋根ユニット4B(の桁トラス12B)と(第2の屋根ユニット4Cのための)妻小壁11との間に建込む。桁トラス12は、上弦材12aと下弦材12bと縦材12c(
図15)と斜材12dとで構成された矩形枠状をしており、
図15に示すように、木ねじなどの固定具75で妻小壁11(の縦材11c)に縦材12cを固定する。桁トラス12(12C)は、他の屋根ユニット4(例えば、第1の屋根ユニット4Bや他の屋根ユニット4)に仮固定しておいたものを外して使用する。
【0051】
以上により、別の建物ユニット2Cの上部で小屋組部7が構築される。なお、妻小壁11および桁トラス12(12C)は、桁トラス12(12C)を先に設置して妻小壁11を後から設置するように組み立て手順を変更することも可能である。また、第2の屋根ユニット4Cの桁トラス12(12C)については、隣接する第1の屋根ユニット4Bにも桁トラス12(12B)があるため、状況によっては省略することも可能である。
【0052】
最後に、
図16に示すように、第2の屋根パネル8Cをクレーンで吊上げて小屋組部7の上部に据付ける。
【0053】
この際、
図17(a)(b)に示すように、第2の屋根パネル8Cの妻小壁11側の部分は、頭つなぎ材37を、妻小壁11の上枠11aにジョイントボルトなどの固定具76を用いて接合する。この際、頭つなぎ材37は、妻小壁11の上枠11aの内側に面を合わせるように位置調整する。
【0054】
図17(c)に示すように、第2の屋根パネル8Cの軒先側の部分は、桁構造材38を、別の建物ユニット2Cの桁壁77の上部にジョイントボルトなどの固定具78を用いて接合する。
【0055】
図17(d)に示すように、第2の屋根パネル8Cの桁トラス12側の部分は、桁トラス12の上弦材12aに対して木ねじなどの固定具79で接合する。
【0056】
以上により、別の建物ユニット2Cの上部で第2の屋根ユニット4Cが構築されると共に、別の建物ユニット2Cの上部に対して位置調整を行った状態で第2の屋根ユニット4Cが設置される。
【0057】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0058】
予め工場で製造した建物ユニット2や屋根ユニット4を建築現場3へ輸送して、建築現場3で組み立てることにより、短期間で建物1(ユニット建物6)を構築することができる。
【0059】
このようなユニット建物6では、建物本体を構成する複数の建物ユニット2や、屋根を構成する複数の屋根ユニット4を建築現場3へ効率的に輸送することが、ユニット建物6の工期の短縮やコストダウンなどを図る上で重要になる。
【0060】
(A)屋根ユニット構造体21の作用効果
【0061】
第1の屋根ユニット4Bと、第2の屋根ユニット4Cに用いる第2の屋根パネル8Cとを一体化して屋根ユニット構造体21を形成するようにした。この屋根ユニット構造体21を工場で製造することにより、第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根パネル8Cは、コンパクトにまとめて効率的に輸送できる荷姿になる。これにより、第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根ユニット4Cの主要部(第2の屋根パネル8C)とを1台のトラック61でまとめて輸送できるようになるので、輸送効率が向上され、第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根ユニット4Cとを2台のトラック61に分けてそれぞれ別々に輸送する場合と比べて、使用するトラック61の台数を削減して輸送の効率化を図ることができる。
【0062】
なお、第2の屋根ユニット4Cの残りの小屋組部7については、第2の屋根パネル8Cほど大きな部材で構成されていないため、トラック61に積み易い状態にして(例えば、妻小壁11と桁トラス12に分けて)トラック61の空きペースを利用して輸送したり、他の屋根ユニット4(例えば、第1の屋根ユニット4Bやその他の屋根ユニット4など)に仮固定したりして輸送できるので、輸送上特に問題はない。
【0063】
そして、側面視略三角形状の第1の屋根ユニット4Bと、第1の屋根パネル8B(の幅寸法W1)と同等の幅寸法W2を有する第2の屋根パネル8Cとを一体化することで、これまで一緒に輸送することが難しかった、大きさにあまり差のない複数の屋根ユニット4に対する輸送の問題をほぼ解消することができる。このような構造は、特に、2つの屋根ユニット4をそのまま組み合わせて一体化すると、トラック61で運べる大きさの制限を越えて輸送できなくなってしまうような比較的大型の屋根ユニット4に対して有効である。
【0064】
なお、2つの屋根ユニット4が、大きさに十分な差があるものどうしの場合には、幅寸法の大きい屋根ユニット4の内側に、幅寸法の小さい屋根ユニット4を入り込ませた状態にして2個同時に輸送することができるので、この実施例のように屋根ユニット構造体21にして輸送する必要はない。また、2つの屋根ユニット4が共に十分に小型である場合には、そのまま上下方向に組み合わせてトラック61で2個同時に輸送することができるので、この実施例のように屋根ユニット構造体21にして輸送する必要はない。
【0065】
この実施例では、大きさにあまり差のない(大型の)第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cとの間を屋根ユニット輸送用金具24で一体に連結して屋根ユニット構造体21にすることで、第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根パネル8Cとが、一体に取り扱えるようになると共に、これらをラックなどの輸送用架台を用いずにトラック61の荷台62に直接乗せて一度に輸送できるようになる(但し、屋根ユニット構造体21は、輸送用架台を用いてトラック61に乗せて輸送するようにしても良い)。しかも、第1の屋根ユニット4Bも第2の屋根パネル8Cもユニット単位の大きさになっているので、建築現場3への輸送後の(建物1を構築する際の)取り扱いも容易である。
【0066】
そして、第1の屋根パネル8Bの水上側の端部22と第2の屋根パネル8Cの端部23との位置を揃えて屋根ユニット輸送用金具24で連結することにより、第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根パネル8Cとを、第1の屋根ユニット4Bの水上側の辺を下にした起立姿勢にして自立させることができる。そのため、屋根ユニット構造体21を起立姿勢で安定して輸送することが可能になる。
【0067】
また、第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cとを平行に重ねて抱き合わせた状態にして屋根ユニット輸送用金具24で連結することにより、第1の屋根ユニット4Bに対して最もコンパクトな状態で第2の屋根パネル8Cを連結した屋根ユニット構造体21を作ることができる。
【0068】
(B)屋根ユニット輸送用金具24の作用効果
【0069】
屋根ユニット輸送用金具24を、ユニット側取付金具41とパネル側取付金具42,55とで構成しても良い。これにより、簡単な構成で、大きさにあまり差のない第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cとを確実に連結して、一体化する(屋根ユニット構造体21にする)ことができる。
【0070】
この際、第1の屋根パネル8Bにユニット側取付金具41を取付け、第2の屋根パネル8Cにパネル側取付金具42,55を取付けた状態で、第1の屋根パネル8Bに第2の屋根パネル8Cを重ねて、ユニット側取付金具41とパネル側取付金具42,55とを連結(締結固定)することで、簡単に第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cとを一体化できるので、作業性が良い。
【0071】
(B-2)そして、ユニット側取付金具41とパネル側取付金具42,55との間には、位置決め部51を設けても良い。これにより、第1の屋根パネル8Bの水上側の端部22と第2の屋根パネル8Cの端部23との位置を正確に揃えた状態で、第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cを容易且つ確実に一体化することができる。
【0072】
(B-3)パネル側取付金具55は、第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cとの幅寸法W1,W2の差を補完可能な補完部56を備えても良い。これにより、第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cとの間に僅かな幅寸法W1,W2の差があっても、補完部56が幅寸法W1,W2の差を補って支障なく第1の屋根パネル8Bに第2の屋根パネル8Cを連結することができる。
【0073】
(C)屋根ユニット輸送方法の作用効果
【0074】
第2の屋根パネル8Cを第1の屋根ユニット4Bと一体化した状態(屋根ユニット構造体21)で、屋根ユニット構造体21を起立姿勢にすることにより、第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根パネル8Cをトラック61の荷台62に乗せて輸送することができる。
【0075】
この際、第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cとを端部22,23の位置を揃えて屋根ユニット輸送用金具24で一体に連結することにより、第1の屋根パネル8Bと第2の屋根パネル8Cとが起立姿勢で安定して自立できるようになるので、例えば、ラックなどの輸送用架台を用いずに直接トラック61に乗せたり、簡単な輸送用架台を用いてトラック61に乗せたりして一度に輸送することが可能になる。
【0076】
(D)屋根施工方法の作用効果
【0077】
建築現場3へ輸送された屋根ユニット構造体21は、建築現場3で屋根ユニット輸送用金具24を外すことで、簡単に第1の屋根ユニット4Bと第2の屋根パネル8Cとに分解できる。
【0078】
そして、第1の屋根ユニット4Bは、建物ユニット2Bの上部に対して通常通りに設置することができる。また、第2の屋根パネル8Cは、別の建物ユニット2Cの上部で第2の屋根ユニット4Cとして完成させると共に、第2の屋根ユニット4Cを別の建物ユニット2Cの上部にそのまま設置することができる。
【0079】
このように、建築現場3で第2の屋根ユニット4Cを構築しつつ別の建物ユニット2Cの上部に設置することで、第2の屋根ユニット4Cは、ユニットとしての品質や強度を確保できるものとなり、精度管理や位置調整なども通常の屋根ユニット4と同様にできるものとなる。第2の屋根ユニット4Cは、工場で予め構築された妻小壁11や桁トラス12などのパネルを組み合わせて小屋組部7を作り、小屋組部7の上に第2の屋根パネル8Cを取付けるだけで構築できるので、(別の建物ユニット2Cの上であっても)比較的短時間で完成させることができる。また、第2の屋根ユニット4Cは、別の建物ユニット2Cの上部で構築しながら位置調整を行ったり、構築してから位置調整を行ったりすることができる。
【0080】
これにより、建物ユニット2Bや別の建物ユニット2Cなどの下側の建物本体の構造に影響を与えることなく、建物本体の上に屋根ユニット4をそれぞれ設置してユニット建物6を構築することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 建物
2 建物ユニット
2B 建物ユニット
2C 別の建物ユニット
3 建築現場
4 屋根ユニット
4B 第1の屋根ユニット
4C 第2の屋根ユニット
6 ユニット建物
7 小屋組部
8 屋根パネル
8B 第1の屋根パネル
8C 第2の屋根パネル
21 屋根ユニット構造体
22 水上側の端部
23 端部
24 屋根ユニット輸送用金具
41 ユニット側取付金具
51 位置決め部
55 パネル側取付金具
56 補完部
W1 幅寸法
W2 幅寸法