IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-プラズマ式治療装置 図1
  • 特許-プラズマ式治療装置 図2
  • 特許-プラズマ式治療装置 図3
  • 特許-プラズマ式治療装置 図4
  • 特許-プラズマ式治療装置 図5
  • 特許-プラズマ式治療装置 図6
  • 特許-プラズマ式治療装置 図7
  • 特許-プラズマ式治療装置 図8
  • 特許-プラズマ式治療装置 図9
  • 特許-プラズマ式治療装置 図10
  • 特許-プラズマ式治療装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】プラズマ式治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/44 20060101AFI20220614BHJP
   H05H 1/26 20060101ALI20220614BHJP
   A61C 19/06 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
A61N1/44
H05H1/26
A61C19/06 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018170478
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020039672
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】大下 貴也
(72)【発明者】
【氏名】長原 悠
(72)【発明者】
【氏名】安宅 元晴
(72)【発明者】
【氏名】井上 毅
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-212839(JP,A)
【文献】特開2018-32488(JP,A)
【文献】特開2017-217595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/06
H05H 1/26
A61N 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマが発生するプラズマ発生部と、前記プラズマ及び前記プラズマによって発生した活性ガスの何れか一方又は両方を吐出する吐出口を有するノズルと、を有する照射器具を備え、
さらに、前記ノズルから吐出される前記プラズマ又は前記活性ガスを、被照射体に対する照射面積を拡大させながら前記被照射体に照射する開口部を有する、着脱可能なカートリッジと、
前記プラズマ又は前記活性ガスの流量を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記カートリッジにおける前記開口部の開口面積に応じて、前記プラズマ又は前記活性ガスの流量を調整することにより、前記開口部から前記被照射体に向けて照射される前記プラズマ又は前記活性ガスの流速を一定に制御する、プラズマ式治療装置。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、前記カートリッジに備えられる前記開口部の開口面積に応じて、前記プラズマ又は前記活性ガスの流量を選択する選択手段を有する、請求項1に記載のプラズマ式治療装置。
【請求項3】
前記照射器具は、さらに、前記カートリッジに備えられる前記開口部の開口面積情報を識別する識別手段を備え、
前記制御部は、前記識別手段によって識別された前記開口面積情報に基づき、前記プラズマ又は前記活性ガスの流量を調整する、請求項1に記載のプラズマ式治療装置。
【請求項4】
前記カートリッジが、前記開口部が備えられた先端側に向かうに従って内径が漸次拡大するホーン形状である、請求項1~請求項3の何れか一項に記載のプラズマ式治療装置。
【請求項5】
前記カートリッジは、前記開口部が、先端面に設けられた複数の開口孔を有するシャワー形状である、請求項1~請求項3の何れか一項に記載のプラズマ式治療装置。
【請求項6】
前記カートリッジは、前記開口部が、前記先端面に設けられた複数の開口孔と、前記複数の開口孔と連通するように設けられ、該複数の開口孔に前記プラズマ又は前記活性ガスを導入する拡大流路とを有する、請求項1~請求項3の何れか一項に記載のプラズマ式治療装置。
【請求項7】
前記カートリッジは、前記開口部が、外周面に設けられた複数の開口孔と、前記複数の開口孔と連通するように設けられ、該複数の開口孔に前記プラズマ又は前記活性ガスを導入する拡大流路とを有する、請求項1~請求項3の何れか一項に記載のプラズマ式治療装置。
【請求項8】
前記カートリッジは、さらに、前記開口部の開口面積を切り替える切り替え手段を有し、
前記制御部は、前記カートリッジにおいて切り替えられる前記開口部の開口面積に応じて、前記プラズマ又は前記活性ガスの流量を調整する、請求項1に記載のプラズマ式治療装置。
【請求項9】
前記カートリッジは、前記開口部が、前記カートリッジの軸方向で回転可能に設けられ、且つ、複数の第1開口孔を有する外盤と、該外盤よりも前記プラズマ又は前記活性ガスの流れ方向における上流側に、前記カートリッジの内壁側に固定して設けられ、且つ、複数の第2開口孔を有する内盤とを備え、
前記外盤を回転させたとき、該外盤に設けられた前記第1開口孔と、前記内盤に設けられた前記第2開口孔とが連通するか、あるいは、前記外盤における前記第1開口孔が形成されていない領域によって、前記内盤における前記第2開口孔の少なくとも一部が塞がれることにより、前記開口部の開口面積を切り替える、請求項8に記載のプラズマ式治療装置。
【請求項10】
前記カートリッジは、さらに、前記外盤の回転位置検出手段を備え、
前記回転位置検出手段は、前記外盤を回転させて前記開口部の開口面積を切り替えたときに、前記外盤の位置情報を前記制御部に送信し、
前記制御部は、前記外盤の位置情報に基づき、前記開口部における開口面積を算出し、該算出結果に基づき、前記プラズマ又は前記活性ガスの流量を調整する、請求項9に記載のプラズマ式治療装置。
【請求項11】
前記カートリッジは、さらに、前記外盤を電気的又は機械的に回転させることで前記開口部の開口面積を切り替える切り替え機構を備え、
前記照射器具は、前記切り替え機構によって切り替えられる前記開口部の開口面積を設定するための開口面積設定手段を備える、請求項9又は請求項10に記載のプラズマ式治療装置。
【請求項12】
前記開口面積設定手段が、前記ノズルに設けられている、請求項11に記載のプラズマ式治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ式治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科治療等の医療用途において、プラズマ又はプラズマによって発生した活性種を含む活性ガスを患部に照射し、創傷等の治癒を図るプラズマ式治療装置が知られている。このようなプラズマ式治療装置としては、例えば、プラズマジェット照射装置や、活性ガス照射装置が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、歯科治療を行う照射器具にプラズマジェット照射手段を搭載し、治療患部にプラズマジェット照射を可能にした歯科用診療装置(プラズマジェット照射装置)が開示されている。このような、歯科用診療装置として用いられるプラズマジェット照射装置は、プラズマを発生し、発生したプラズマと、プラズマ中又は周辺の気体と反応して生成した活性種とを被照射体に直接照射するものである。活性種としては、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、オゾン、過酸化水素、スーパーオキシドアニオンラジカル等の活性酸素種、一酸化窒素、二酸化窒素、ペルオキシナイトライト、過酸化亜硝酸、三酸化二窒素等の活性窒素種等が挙げられる。
特許文献1に記載の発明によれば、発生したプラズマを患部に直接照射することで、創傷等の治癒を図っている。
【0004】
また、特許文献2には、照射器具内部で活性ガス(活性種)を発生させ、その活性ガスをノズルから吐出して患部に照射する活性ガス照射装置が開示されている。このような活性ガスは、例えば、活性酸素や活性窒素等である。
特許文献2に記載の発明によれば、上記同様、発生した活性ガスを患部に直接照射することで、創傷等の治癒を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5441066号公報
【文献】特開2017-050267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、プラズマ式治療装置においては、創傷の治癒等の効果を高めるため、プラズマ又は活性ガスを、被照射体の表面に対して、所定以上の流量、且つ、広範囲で照射することが求められる。また、プラズマによる治療効果は、プラズマ又は活性ガスの流速と時間との関係によって変化するプラズマ密度に依存することが知られており、この観点から、プラズマ又は活性ガスの流速を一定に保持することも求められる。
【0007】
上記のように、プラズマ又は活性ガスを、被照射体表面の広い範囲に照射するためには、例えば、図6の参考図に示すように、照射角度を拡大する部材をノズル先端に設ける方法が挙げられる(例えば、図6中に示す符号60を参照)。また、このような部材を用いた場合には、プラズマ又は活性ガスが吐出する開口面積が変化することから、プラズマ又は活性ガスの流量が一定である場合には、その流速も変化する。例えば、プラズマ又は活性ガスの流量を一定とし、且つ、開口面積を大きくした場合には、プラズマ又は活性ガスの流速は低くなる。
【0008】
一方、活性ガス中に含まれる活性種の寿命は非常に短いことから、この短い活性種寿命の範囲で、治療効果を可能な限り高めるためには、プラズマ又は活性ガスの流速を一定以上に保持することが求められる。しかしながら、上記のように、照射角度を拡大することを目的として、単に、プラズマ又は活性ガスが吐出する開口面積が大きな部材を採用した場合には、プラズマ又は活性ガスの流速が低下し、治療効果が低下するおそれがあった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、被照射体に対するプラズマ又は活性ガスの照射面積を拡大させながら、プラズマ又は活性ガスの流速を低下させることなく、最適な照射条件で治療を行うことが可能なプラズマ式治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を有する。
[1] プラズマが発生するプラズマ発生部と、前記プラズマ及び前記プラズマによって発生した活性ガスの何れか一方又は両方を吐出する吐出口を有するノズルと、を有する照射器具を備え、さらに、前記ノズルから吐出される前記プラズマ又は前記活性ガスを、被照射体に対する照射面積を拡大させながら前記被照射体に照射する開口部を有する、着脱可能なカートリッジと、前記プラズマ又は前記活性ガスの流量を調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記カートリッジにおける前記開口部の開口面積に応じて、前記プラズマ又は前記活性ガスの流量を調整することにより、前記開口部から前記被照射体に向けて照射される前記プラズマ又は前記活性ガスの流速を一定に制御する、プラズマ式治療装置。
[2] 前記制御部は、さらに、前記カートリッジに備えられる前記開口部の開口面積に応じて、前記プラズマ又は前記活性ガスの流量を選択する選択手段を有する、上記[1]に記載のプラズマ式治療装置。
[3] 前記照射器具は、さらに、前記カートリッジに備えられる前記開口部の開口面積情報を識別する識別手段を備え、前記制御部は、前記識別手段によって識別された前記開口面積情報に基づき、前記プラズマ又は前記活性ガスの流量を調整する、上記[1]に記載のプラズマ式治療装置。
[4] 前記カートリッジが、前記開口部が備えられた先端側に向かうに従って内径が漸次拡大するホーン形状である、上記[1]~[3]の何れか一項に記載のプラズマ式治療装置。
[5] 前記カートリッジは、前記開口部が、先端面に設けられた複数の開口孔を有するシャワー形状である、上記[1]~[3]の何れか一項に記載のプラズマ式治療装置。
[6] 前記カートリッジは、前記開口部が、前記先端面に設けられた複数の開口孔と、前記複数の開口孔と連通するように設けられ、該複数の開口孔に前記プラズマ又は前記活性ガスを導入する拡大流路とを有する、上記[1]~[3]の何れか一項に記載のプラズマ式治療装置。
[7]前記カートリッジは、前記開口部が、外周面に設けられた複数の開口孔と、前記複数の開口孔と連通するように設けられ、該複数の開口孔に前記プラズマ又は前記活性ガスを導入する拡大流路とを有する、上記[1]~[3]の何れか一項に記載のプラズマ式治療装置。
[8] 前記カートリッジは、さらに、前記開口部の開口面積を切り替える切り替え手段を有し、前記制御部は、前記カートリッジにおいて切り替えられる前記開口部の開口面積に応じて、前記プラズマ又は前記活性ガスの流量を調整する、上記[1]に記載のプラズマ式治療装置。
[9] 前記カートリッジは、前記開口部が、前記カートリッジの軸方向で回転可能に設けられ、且つ、複数の第1開口孔を有する外盤と、該外盤よりも前記プラズマ又は前記活性ガスの流れ方向における上流側に、前記カートリッジの内壁側に固定して設けられ、且つ、複数の第2開口孔を有する内盤とを備え、前記外盤を回転させたとき、該外盤に設けられた前記第1開口孔と、前記内盤に設けられた前記第2開口孔とが連通するか、あるいは、前記外盤における前記第1開口孔が形成されていない領域によって、前記内盤における前記第2開口孔の少なくとも一部が塞がれることにより、前記開口部の開口面積を切り替える、上記[8]に記載のプラズマ式治療装置。
[10] 前記カートリッジは、さらに、前記外盤の回転位置検出手段を備え、前記回転位置検出手段は、前記外盤を回転させて前記開口部の開口面積を切り替えたときに、前記外盤の位置情報を前記制御部に送信し、前記制御部は、前記外盤の位置情報に基づき、前記開口部における開口面積を算出し、該算出結果に基づき、前記プラズマ又は前記活性ガスの流量を調整する、上記[9]に記載のプラズマ式治療装置。
[11] 前記カートリッジは、さらに、前記外盤を電気的又は機械的に回転させることで前記開口部の開口面積を切り替える切り替え機構を備え、前記照射器具は、前記切り替え機構によって切り替えられる前記開口部の開口面積を設定するための開口面積設定手段を備える、上記[9]又は[10]に記載のプラズマ式治療装置。
[12] 前記開口面積設定手段が、前記ノズルに設けられている、上記[11]に記載のプラズマ式治療装置。
【0011】
なお、本明細書において、「活性ガス」とは、ラジカル等の活性種、励起した原子・及び分子、イオン等の何れかを含む化学活性の高いガスを指す。
【0012】
また、本明細書における、カートリッジに備えられる開口部の「開口面積」とは、カートリッジの先端側の開口部において、カートリッジの内部と外部とが連通している面積のことをいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプラズマ式治療装置によれば、上記構成を採用することにより、被照射体に対するプラズマ又は活性ガスの照射面積を大きくするために、開口面積の大きなカートリッジを備えた場合においても、プラズマ又は活性ガスの流速を低下させることなく、簡便な操作で最適な照射条件を設定して治療を行うことが可能になる。従って、創傷の治癒等の効果が高められ、且つ、操作性に優れたたプラズマ式治療装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ式治療装置を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプラズマ式治療装置が備える照射器具の部分断面図である。
図3図2に示す照射器具のx-x断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るプラズマ式治療装置の概略構成を示すブロック図である。
図5】本発明に係るプラズマ式治療装置の作用について説明する参考図である。
図6】本発明に係るプラズマ式治療装置の作用について説明する参考図である。
図7】本発明の一実施形態に係るプラズマ式治療装置を示す模式図であり、カートリッジの一例を示す部分破断図である。
図8】本発明の一実施形態に係るプラズマ式治療装置を示す模式図であり、カートリッジの他の例を示す部分破断図である。
図9】本発明の一実施形態に係るプラズマ式治療装置を示す模式図であり、カートリッジの他の例を示す部分破断図である。
図10】本発明の一実施形態に係るプラズマ式治療装置を示す模式図であり、カートリッジの他の例を示す部分破断図である。
図11】本発明の一実施形態に係るプラズマ式治療装置を示す模式図であり、カートリッジの他の例を示す部分破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のプラズマ式治療装置の実施形態を挙げ、その構成について図1図11を適宜参照しながら詳述する。なお、以下の説明で用いる各図面は、本発明のプラズマ式治療装置の特徴をわかりやすくするため、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0016】
本発明に係るプラズマ式治療装置は、プラズマが発生するプラズマ発生部と、前記プラズマ及び前記プラズマによって発生した活性ガスの何れか一方又は両方を吐出する吐出口を有するノズルと、を有する照射器具を備える。さらに、本発明に係るプラズマ式治療装置は、ノズルから吐出されるプラズマ又は活性ガスを、被照射体に対する照射面積を拡大させながら被照射体に照射する開口部を有する、着脱可能なカートリッジと、プラズマ又は活性ガスの流量を調整する制御部と、を備える。そして、本発明に係るプラズマ式治療装置は、制御部が、カートリッジにおける開口部の開口面積に応じて、プラズマ又は活性ガスの流量を調整することにより、開口部から被照射体に向けて照射されるプラズマ又は活性ガスの流速を一定に制御するものとして、概略構成される。
本発明のプラズマ式治療装置は、プラズマ発生部とノズルとを有する照射器具と、カートリッジを備えたものであれば、プラズマジェット照射装置であってもよく、活性ガス照射装置であってもよい。
【0017】
プラズマジェット照射装置は、プラズマを発生させる。プラズマジェット照射装置は、発生したプラズマと活性種とを被照射体に直接照射する。活性種は、プラズマ中の気体又はプラズマ周辺の気体とプラズマとが反応して生成される。活性種としては、活性酸素種、活性窒素種等を例示できる。活性酸素種としては、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、オゾン、過酸化水素、スーパーオキシドアニオンラジカル等を例示できる。活性窒素種としては、一酸化窒素、二酸化窒素、ペルオキシナイトライト、過酸化亜硝酸、三酸化二窒素等を例示できる。
活性ガス照射装置は、プラズマを発生させる。活性ガス照射装置は、活性種を含む活性ガスを被照射体に照射する。活性種は、プラズマ中の気体又はプラズマ周辺の気体とプラズマとが反応して生成される。
【0018】
<第一の実施形態>
以下、本発明のプラズマ式治療装置の第一の実施形態について、主に図1~9を参照しながら説明する。
本実施形態のプラズマ式治療装置は、活性ガス照射装置である。
【0019】
[プラズマ式治療装置の構成]
図1に示すように、プラズマ式治療装置100は、照射器具(インスツルメント)10と、供給ユニット20と、ガス管路30と、電気配線40とを備える。照射器具10が備えるノズル1の先端にはカートリッジ61が取り付けられている。
照射器具10は、照射器具10内で発生した活性ガスを吐出する。供給ユニット20は、照射器具10に電気及びプラズマ発生用ガスを供給する。
ガス管路30は、照射器具10と供給ユニット20とを接続している。電気配線40は、照射器具10と供給ユニット20とを電気的に接続している。
図示例においては、ガス管路30と電気配線40とは、各々独立しているが、ガス管路30と電気配線40とが一体に構成されていてもよい。
【0020】
(照射器具)
図2は、照射器具10における軸線に沿う断面を示す部分断面図である。図3は、図2に示す照射器具10のx-x断面図である。
照射器具10は、長尺状のカウリング2と、カウリング2の先端から突出するノズル1と、カウリング2内に位置するプラズマ発生部12と、カウリング2の外周面に設けられた操作スイッチ9(操作部)とを備える。また、上述したように、ノズル1の先端には、詳細を後述するカートリッジ61が固定されている。
【0021】
カウリング2は、胴体部2bと、胴体部2bの先端を塞ぐヘッド部2aとを備える。
胴体部2bは、管軸O1方向に延びる円筒状の部材である。なお、胴体部2bは、円筒形に限られず、四角筒、六角筒、八角筒等の多角筒形でもよい。
【0022】
胴体部2bの材料は、特に限定されないが、感電防止の観点から、電気絶縁性を有する材料が好ましい。胴体部2bは、電気絶縁性の材料のみで形成されてもよいし、電気絶縁性の材料とその表面に金属材料の層を有する多層構造でもよい。
電気絶縁性の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を例示できる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)等を例示できる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等を例示できる。
また、金属材料として、アルミや銅、鉄やステンレス等が例示できる。
胴体部2bの大きさは、特に限定されず、手指で把持しやすい大きさとすることができる。
【0023】
ヘッド部2aは、先端に向かうに従って漸次窄むように形成されている。即ち、本実施形態におけるヘッド部2aは円錐形である。なお、ヘッド部2aは、円錐形に限られず、四角錘、六角錘、八角錘等の多角錘形でもよい。
ヘッド部2aの先端には、ノズル1が挿入される嵌合孔2cが形成されている。ノズル1は、ヘッド部2aに着脱可能に設けられている。図2中において、符号O1は、胴体部2bの管軸である。ヘッド部2aの内部には、管軸O1方向に延びる第一の活性ガス流路7が形成されている。
胴体部2bの外周面には、操作スイッチ9が設けられている。
【0024】
ヘッド部2aの材料は、特に限定されず、絶縁性を有してもよいし、絶縁性を有しなくてもよい。ヘッド部2aの材料は、耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料が好ましい。耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料としては、ステンレス等の金属が挙げられる。ヘッド部2aと胴体部2bとの材料は、同じでもよく、異なってもよい。
ヘッド部2aの大きさは、プラズマ式治療装置100の用途等を勘案して決定される。例えば、プラズマ式治療装置100が口腔内治療器具である場合、ヘッド部2aの大きさは、口腔内に挿入できる大きさが好ましい。
【0025】
ノズル1は、嵌合孔2cに嵌合する台座部1bと、台座部1bから突出する照射管1cとを備える。台座部1bと照射管1cとは一体に形成されている。ノズル1の内部には、第二の活性ガス流路8が形成され、先端に吐出口1aが形成されている。第二の活性ガス流路8と第一の活性ガス流路7とは、連通している。
【0026】
ノズル1の材料は、特に限定されないが、絶縁性を有してもよいし、絶縁性を有しなくてもよい。ノズル1の材料は、耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料が好ましい。耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料としては、ステンレス等の金属が挙げられる。
また、ノズル1としては、衛生上の観点から、例えば、ディスポーザブルタイプの材料を用いてもよい。
【0027】
ノズル1における照射管1c内の流路の長さ(即ち、距離L2)は、プラズマ式治療装置100の用途等を勘案して、適宜決定できる。
吐出口1aの開口径は、例えば、0.5~5mmが好ましい。開口径が上記下限値以上であれば、活性ガスの圧力損失を抑制できる。開口径が上記上限値以下であれば、照射される活性ガスの流速を高めて、治癒等をより促進できる。
照射管1cは、管軸O1に対して屈曲している。
照射管1cの管軸O2と管軸O1とのなす角度θは、プラズマ式治療装置100の用途等を勘案して決定できる。
【0028】
図2及び図3に示すように、プラズマ発生部12は、管状誘電体3と、内部電極4と、外部電極5とを備える。
図3に示すように、管状誘電体3と内部電極4と外部電極5とは、管軸O1を中心として同心円状に位置している。
本実施形態において、内部電極4の外周面と外部電極5の内周面とは、管状誘電体3を挟んで互いに対向している。
【0029】
管状誘電体3は、管軸O1方向に延びる円筒状の部材である。管状誘電体3の内部には、管軸O1方向に延びるガス流路6が形成されている。第一の活性ガス流路7とガス流路6とは連通している。なお、管軸O1は、管状誘電体3の管軸と同じである。
【0030】
管状誘電体3の材料としては、公知のプラズマ装置に使用される誘電体材料が適用できる。管状誘電体3の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、合成樹脂等が挙げられる。管状誘電体3の誘電率は低いほど好ましい。
【0031】
管状誘電体3の内径Rは、内部電極4の外径dを勘案して適宜決定される。内径Rは、後述する距離sを所望の範囲とするように決定される。
【0032】
内部電極4は、管軸O1方向に延びる略円柱状の部材である。内部電極4は、管状誘電体3の内部に位置し、管状誘電体3の内面と離間している。
内部電極4は、管軸O1方向に延びる軸部と、軸部の外周面のねじ山とを備える。軸部は、中実でもよいし、中空でもよい。軸部は中実が好ましい。軸部が中実であれば、加工が容易であり、かつ機械的な耐久性を高められる。内部電極4のねじ山は、軸部の周方向に周回する螺旋状のねじ山である。内部電極4の形態は、雄ねじと同様の形態である。
内部電極4は、外周面にねじ山を有することで、ねじ山先端部の電界が局所的に強くなり、放電開始電圧が低くなる。このため、低電力でプラズマを生成し、維持できる。
なお、内部電極4は、外周面にねじ山等の凹凸を有しなくてもよい。即ち、内部電極4は、外周面に凹凸を有しない円柱の部材でもよい。
【0033】
内部電極4の外径dは、プラズマ式治療装置100の用途(即ち、照射器具10の大きさ)等を勘案して、適宜決定される。プラズマ式治療装置100が口腔内用治療器具である場合、外径dは、0.5~20mmが好ましく、1~10mmがより好ましい。外径dが上記下限値以上であれば、内部電極を容易に製造できる。加えて、外径dが上記下限値以上であれば、表面積が大きくなり、プラズマをより効率的に発生して、治癒等をより促進できる。外径dが上記上限値以下であれば、照射器具10を過度に大きくすることなく、プラズマをより効率的に発生し、治癒等をより促進できる。
【0034】
内部電極4のねじ山の高さhは、内部電極4の外径dを勘案して適宜決定できる。
内部電極4のねじ山のピッチpは、内部電極4の長さや外径d等を勘案して適宜決定できる。ピッチpは、0.2~3.0mmが好ましく、0.2~2.5mmがより好ましく、0.2~2.0mmがさらに好ましい。
【0035】
内部電極4の材料は、導電材であれば特に限定されず、公知のプラズマ装置の電極に使用される金属が適用できる。内部電極4の材料としては、ステンレス、銅、タングステン等の金属:及びカーボン等が挙げられる。
【0036】
内部電極4としては、JIS B 0205:2001のメートルねじの規格品(M2、M2.2、M2.5、M3、M3.5等)、JIS B 2016:1987のメートル台形ねじの規格品(Tr8×1.5、Tr9×2、Tr9×1.5等)、JIS B 0206:1973のユニファイ並目ねじの規格品(No.1-64UNC、No.2-56UNC、No.3-48UNC等)等と同等の仕様が好ましい。これらの規格品と同等の仕様であれば、コスト面で優位である。
【0037】
内部電極4の外面(ねじ山の頂点)と管状誘電体3の内面との距離sは、0.05~5mmが好ましく、0.1~1mmがより好ましい。距離sが上記下限値以上であれば、所望量のガスを容易に通流できる。距離sが上記上限値以下であれば、プラズマをより効率的に発生させ、活性ガスの温度をより低くできる。
【0038】
外部電極5は、管状誘電体3の外周面に沿って周回する環状の電極である。外部電極5は、管状誘電体3の外周面の一部に存在する。
【0039】
外部電極5の材料は、導電材であれば特に限定されず、公知のプラズマ装置の電極に使用される金属が適用できる。外部電極5の材料としては、ステンレス、銅、タングステン等の金属及びカーボン等が挙げられる。
【0040】
内部電極4の先端中心点Q1からヘッド部2aの先端Q2までの距離L1と、先端Q2から吐出口1aまでの距離L2との合計(即ち、内部電極4から吐出口1aまでの道のり)は、プラズマ式治療装置100の大きさや、活性ガスが照射された面(被照射体の表面)における温度等を勘案して適宜決定される。距離L1と距離L2の合計が長ければ、被照射体表面の温度をより低くできる。距離L1と距離L2の合計が短ければ、活性ガスのラジカル密度をより高めて、被照射体表面における清浄化、賦活化、治癒等の効果をより高められる。なお、先端Q2は、管軸O1と管軸O2との交点である。
被照射面の温度は、例えば、熱電対やサーモグラフィ等により測定される。
【0041】
操作スイッチ9は、使用者が操作することによって、ノズル1からの活性ガスの吐出を開始するための電気信号を発信する。
操作スイッチ9は、例えば、押釦である。操作スイッチ9が押釦である場合、操作スイッチ9は、使用者が押釦を1回押したときに電気信号を1回だけ発信する構成を有してもよく、使用者が押釦を押し続けている間、電気信号を発信し続ける構成を有してもよい。
【0042】
(供給ユニット)
図4は、本実施形態のプラズマ式治療装置(活性ガス照射装置)100の概略構成を示すブロック図である。
供給ユニット20は、ガスの供給源70と、制御部90と、図視略の給電部と、これらを収容する筐体21とを備える。
筐体21は、供給源70を離脱可能に収容する。これにより、筐体21に収容された供給源70内のガスがなくなったとき、供給源70を交換できる。
本実施形態においては、供給ユニット20を複数設けて、異種あるいは同種のガス2種以上を照射器具10に供給しても良い。
【0043】
図視略の給電部は、照射器具10の操作スイッチ9、プラズマ発生部12、及び供給ユニット20内の各構成要素に電気を供給する。
給電部は、プラズマ発生部12の内部電極4と外部電極5との間に印加する電圧及び周波数を調節できる。
給電部は、例えば、100Vの家庭用電源等の電源(図示略)と接続されている。
【0044】
供給源70は、プラズマ発生部12にプラズマ発生用ガスを供給する。供給源70は、内部にプラズマ発生用ガスが収容された耐圧容器である。図4に示すように、供給源70は、筐体21内に配置された配管75に対して着脱可能に装着されている。配管75は、供給源70とガス管路30とを接続している。
配管75には、電磁弁71、圧力レギュレータ73、流量コントローラ74及び圧力センサ72(残量センサ)が取り付けられている。
【0045】
電磁弁71が開状態となると、供給源70から配管75及びガス管路30を介して照射器具10にプラズマ発生用ガスが供給される。図示例では、電磁弁71は、弁開度が調節できる構成ではなく、開閉の切り替えのみができる構成である。なお電磁弁71は、弁開度が調節できる構成であってもよい。
【0046】
圧力レギュレータ73は、電磁弁71と供給源70との間に配置されている。圧力レギュレータ73は、供給源70から電磁弁71に向かうプラズマ発生用ガスの圧力を低下(プラズマ発生用ガスを減圧)させる。
【0047】
流量コントローラ74は、電磁弁71とガス管路30との間に配置されている。流量コントローラ74は、電磁弁71を通過したプラズマ発生用ガスの流量(単位時間当たりの供給量)を調整する。流量コントローラ74は、プラズマ発生用ガスの流量を、例えば3L/minに調整する。
流量コントローラ74は、電磁弁71とガス管路30との間に配置される。流量コントローラ74は、電磁弁71を通過したプラズマ発生用ガスの流量(単位時間当たりの供給量)を調整する。流量コントローラ74は、プラズマ発生用ガスの流量を、例えば3L/minに調整する。
【0048】
圧力センサ72は、供給源70におけるプラズマ発生用ガスの残量V1を検出する。圧力センサ72は、前記残量V1として、供給源70内の圧力(残圧)を測定する。圧力センサ72は、圧力レギュレータ73と供給源70との間(圧力レギュレータ73よりも一次側)を通過するプラズマ発生用ガスの圧力(一次圧)を、供給源70の圧力として測定する。圧力センサ72としては、例えば、キーエンス社のAP-V80シリーズ(具体的には、例えばAP-15S)等を採用することができる。
【0049】
配管75の供給源70側の端部には、継手76が設けられている。継手76には、供給源70が着脱可能に装着されている。供給源70を継手76に着脱させることで、電磁弁71、圧力レギュレータ73、流量コントローラ74及び圧力センサ72(以下、「電磁弁71等」という。)を筐体21に固定したまま、供給源70を交換することができる。
この場合、交換前の供給源70、交換後の供給源70のいずれについても共通の電磁弁71等を使用することができる。なお電磁弁71等は、供給源70に固定され、供給源70と一体的に筐体21から離脱可能であってもよい。
【0050】
制御部90は、例えば、情報処理装置を用いて構成される。すなわち、制御部90は、バスで接続されたCPU(Central Processor Unit)、メモリ及び補助記憶装置を備える。制御部90は、プログラムを実行することによって動作する。制御部90は、例えば、供給ユニット20に内蔵されていてもよい。制御部90は、照射器具10、及び供給ユニット20を制御する。
制御部90には、電磁弁71、圧力センサ72、流量コントローラ74、及び照射器具10の操作スイッチ9が電気的に接続されている。
制御部90は、電磁弁71、及び流量コントローラ74を制御する。
【0051】
制御部90には、照射器具10の操作スイッチ9が電気配線40を介して電気的に接続されている。使用者が操作スイッチ9を操作することによって、操作スイッチ9から制御部90に電気信号が送られる。操作スイッチ9からの電気信号を制御部90が受け付けると、制御部90は、電磁弁71、及び流量コントローラ74を作動させる。
【0052】
なお、詳細については後述のカートリッジとともに説明するが、本実施形態のプラズマ式治療装置100に備えられる制御部90は、カートリッジにおける開口部の開口面積に応じて、プラズマ又は活性ガスの流量を調整することにより、開口部から被照射体に向けて照射されるプラズマ又は活性ガスの流速を一定に制御する機能を有する。
【0053】
操作スイッチ9が押釦であり、使用者が押釦を1回押したときに電気信号を1回だけ発信する場合は、制御部90は、例えば、以下のように電磁弁71、及び流量コントローラ74を制御する。
操作スイッチ9からの電気信号を制御部90が受け付けると、制御部90が、電磁弁71を所定時間、開放して電磁弁71を通過したプラズマ発生用ガスの流量を流量コントローラ74に調整させる。また、制御部90が、内部電極4と外部電極5との間に電圧を所定時間、印加する。その結果、供給源70からプラズマ発生部12に一定量のプラズマ発生用ガスが供給され、ノズル1から活性ガスが所定時間(例えば、数秒から数十秒程度)、継続して吐出される。
【0054】
操作スイッチ9が押釦であり、使用者が押釦を押し続けている間、電気信号を発信し続ける場合は、制御部90は、例えば、以下のように電磁弁71、流量コントローラ74、及び図視略の給電部を制御する。
操作スイッチ9からの電気信号を制御部90が受け付けている間、制御部90が、電磁弁71を開放して電磁弁71を通過したプラズマ発生用ガスの流量を流量コントローラ74に調整させる。また、制御部90が、内部電極4と外部電極5との間に電圧を印加する。その結果、使用者が操作スイッチ9を押し続けている間、供給源70からプラズマ発生部12にプラズマ発生用ガスが供給され、ノズル1から活性ガスが継続して吐出される。
【0055】
(ガス管路)
ガス管路30は、供給ユニット20から照射器具10にプラズマ発生用ガスを供給する経路である。ガス管路30は、照射器具10の管状誘電体3の後端部に接続している。ガス管路30の材料は特に制限はなく、公知のガス管に用いる材料を適用できる。ガス管路30の材料としては、例えば、樹脂製の配管、ゴム製のチューブ等を例示でき、可撓性を有する材料が好ましい。
【0056】
(電気配線)
電気配線40は、供給ユニット20の給電部から照射器具10のプラズマ発生部12に電気を供給する配線、及び照射器具10の操作スイッチ9と供給ユニット20の制御部90とを電気的に接続する配線を備える。
電気配線40は、照射器具10の内部電極4、外部電極5及び操作スイッチ9に接続している。電気配線40の材料は特に制限はなく、公知の電気配線に用いる材料を適用できる。電気配線40の材料としては、絶縁材料で被覆した金属導線等を例示できる。
【0057】
(カートリッジ)
本発明に係るプラズマ式治療装置においては、照射器具10にカートリッジ61が取り付けられている。図1及び図2に示す例においては、図7の破断図に拡大して示すような、開口部61aが備えられた先端側に向かうに従って内径が漸次拡大するホーン形状とされたカートリッジ61が、ノズル1の先端に圧入するように、着脱可能に取り付けられている。
本実施形態におけるカートリッジは、例えば、洗浄して繰り返し使用できる構成であってもよく、あるいは、ディスポーザブルタイプのものであってもよい。カートリッジを洗浄する方法としては、例えば、エタノールによる洗浄の他、オートクレーブを用いた洗浄方法等が挙げられる。
【0058】
ここで、図5,6の参考図を参照して、本発明に係るプラズマ式治療装置で用いられるカートリッジの作用について説明する。
図5の参考図に示すように、従来のプラズマ式治療装置においては、ノズル1から被照射体Hの表面に対してプラズマ又は活性ガスを直接照射するケースが多かった。また、この場合のプラズマ又は活性ガスの照射角度は、ノズル1の内径W1から求められる開口面積に依存する。図5中に示すように、直線的な流路を有するノズル1からプラズマ又は活性ガスを直接照射した場合には、照射幅がW2と狭く、ノズル1の内径W1に比べて大きな差は無い。このため、図6の参考図に示すように、照射範囲を広げて治療効果を向上させることを目的として、被照射体Hに対するプラズマ又は活性ガスの照射面積を拡大させるためのカートリッジ60を用いることが考えられる。一方、上記のようなカートリッジを使用した場合、プラズマ又は活性ガスが吐出する開口面積が大きくなる。このため、プラズマ又は活性ガスの流量が一定である場合には、プラズマ又は活性ガスの流速が低くなる。本発明に係るプラズマ式治療装置は、被照射体Hに対するプラズマ又は活性ガスの照射範囲を拡大させるために、開口面積の大きなカートリッジを備えた場合においても、プラズマ又は活性ガスの流速を低下させることなく、簡便な操作で最適な照射条件を設定できる。
【0059】
即ち、図7に示すカートリッジ61は、被照射体Hに対して、ノズル1の吐出口1aから吐出されるプラズマ又は活性ガスを、照射角度αを拡大させて、被照射体Hに対する照射面積を拡大させながら、開口部61aから被照射体Hに向けて照射する。このような、ホーン形状とされたカートリッジ61を採用することで、プラズマ又は活性ガスがホーン形状の内壁に沿って拡散するので、被照射体Hに対する照射面積を効果的に拡大させながら、プラズマ又は活性ガスを被照射体Hに照射することが可能になる。これにより、被照射体Hの表面に対して、プラズマ又は活性ガスを広い面積で安定的に照射することが可能になり、治療効果の向上や効率化を図ることが可能になる。
【0060】
上述したように、本実施形態のプラズマ式治療装置100は、制御部90が、カートリッジ61における開口部61aの開口面積に応じて、プラズマ又は活性ガスの流量を調整することにより、開口部61aから被照射体Hに向けて照射されるプラズマ又は活性ガスの流速を一定に制御する。
具体的には、詳細な図示を省略するが、例えば、制御部90が、カートリッジに備えられる開口部61aの開口面積に応じて、プラズマ又は活性ガスの流量を選択する図視略のボタン等の選択手段を有する構成を採用することができる。これにより、被照射体Hに対するプラズマ又は活性ガスの照射範囲(照射面積)を拡大するために、カートリッジの開口部における開口面積を大きく構成した場合においても、プラズマ又は活性ガスの流量を増量させることで、プラズマ又は活性ガスの流速を低下させることなく、最適な照射条件で治療を行うことが可能になる。即ち、寿命の短い活性種を含む活性ガス(及びプラズマ)を一定以上の流速で被照射体Hの表面の広い面積に照射し、所定の流量を確保することで、治療効果がより高められる。
【0061】
ここで、上述した制御部90において、プラズマ又は活性ガスの流量を調整する手段としては、上記のような選択ボタンを用いた構成には限定されない。例えば、照射器具10において、さらに、カートリッジに備えられる開口部の開口面積情報を識別する図視略の識別手段を備え、制御部90が、上記の識別手段によって識別された開口面積情報に基づき、プラズマ又は前記活性ガスの流量を調整する構成を採用してもよい。
具体的には、例えば、カートリッジに、開口部の開口面積情報によって異なる凹凸形状を設けるとともに、照射器具10に図視略の切り替えレバーを設け、カートリッジの取付時に、カートリッジの凹凸形状によって切り替えレバーが適宜移動させられる構成を採用してもよい。この場合には、切り替えレバーによって切り替えられた開口面積情報が制御部90に送信されることで、プラズマ又は活性ガスの流量が所定の流量に切り替えられ、一定以上の流速が維持される。
上記構成を採用することで、カートリッジを交換した際に、選択ボタン等による流量の切り替え操作を省略できるので、操作性に優れたプラズマ式治療装置が実現できる。
【0062】
あるいは、例えば、カートリッジに、開口部の開口面積情報を識別する図視略のマイクロチップを埋め込み、照射器具10に図視略の読み取り手段を設け、カートリッジの取付時、マイクロチップに記憶された開口面積情報を読み取り手段で識別する構成を採用してもよい。この場合には、照射器具10の読み取り手段で読み取られた開口面積情報が制御部90に送信され、プラズマ又は活性ガスの流量が所定の流量に切り替えられることで、一定以上の流速が維持される。
あるいは、上記のマイクロチップによる識別手段に代えて、例えば、バーコード等による識別手段を採用しても構わない。
【0063】
ここで、本実施形態において説明するプラズマ又は活性ガスの流速の好ましい範囲としては、治療対象の部位の大きさや疾患の種類等に応じて適宜設定することができるが、例えば、概ね、10m/sec~200m/sec程度の流速である。
【0064】
なお、カートリッジの形状は、図7に示したホーン形状のものには限定されない。
例えば、図8に示す例のカートリッジ62のように、開口部62aが、先端面に設けられた複数の開口孔62bを有するシャワー形状とされたものであってもよい。上記のような複数の開口孔62bからなる開口部62aが備えられたシャワー形状のカートリッジ62を採用することで、開口孔62bの数量に応じて全体的な開口面積が増加するので、被照射体Hに対する照射面積を効果的に拡大させながら、プラズマ又は活性ガスを開口部62aから被照射体に向けて照射することが可能になる。
【0065】
また、図9に示す例のカートリッジ63のように、開口部63aが、先端面に設けられた複数の開口孔63bと、この複数の開口孔63bと連通するように設けられ、複数の開口孔63bにプラズマ又は活性ガスを供給する拡大流路63cとを有する構成を採用してもよい。図9に示すカートリッジ63をノズル1に取り付けることにより、ノズル1の吐出口1aから吐出されるプラズマ又は活性ガスは、まず、拡大流路63cに導入される。そして、拡大流路63cに導入されたプラズマ又は活性ガスは、拡大流路63cから複数の開口孔63bに流入した後、これら複数の開口孔63bの各々から被照射体Hに向けて照射される。この際、開口孔63bの数量に応じて全体的な開口面積が増加するので、被照射体Hに対する照射面積を効果的に拡大させながら、プラズマ又は活性ガスを開口部63aから被照射体Hに向けて照射することが可能になる。図9に示す例においては、複数の開口孔63bの各々からプラズマ又は活性ガスが吐出され、被照射体Hの表面の広い範囲に照射される。
【0066】
また、図11に示す例のカートリッジ64のように、開口部64aが、外周面64Aに設けられた複数の開口孔64bと、複数の開口孔64bと連通するように設けられ、複数の開口孔64bにプラズマ又は活性ガスを導入する拡大流路64cとを有する構成を採用してもよい。図11中においては詳細な図示を省略しているが、複数の開口孔64bは、外周面64Aの全面にわたって設けられている。
【0067】
図11に示すカートリッジ64をノズル1に取り付けることにより、ノズル1の吐出口1aから吐出されるプラズマ又は活性ガスは、まず、拡大流路64cに導入される。そして、拡大流路64cに導入されたプラズマ又は活性ガスは、拡大流路64cから複数の開口孔64bに流入した後、これら複数の開口孔64bの各々から、外周面64Aの周囲のほぼ360°にわたって照射される。このような構成のカートリッジ64を使用して、例えば、口腔内の治療を行った場合には、口腔内の皮膚の広い範囲に向けてプラズマ又は活性ガスを照射することが可能になる。
【0068】
[プラズマ式治療装置の使用方法]
次に、プラズマ式治療装置100の使用方法について説明する。
例えば、医師等の使用者は、照射器具10を持って移動させ、ノズル1を後述する被照射体に向ける。この状態で操作スイッチ9を押し、供給ユニット20の供給源70からガス管路30を介して照射器具10のプラズマ発生部12にプラズマ発生用ガスを供給し、供給ユニット20から照射器具10のプラズマ発生部12に電気を供給する。
プラズマ発生部12に供給したプラズマ発生用ガスは、管状誘電体3の後端部から管状誘電体3の内空部に流入する。プラズマ発生用ガスは、電圧を印加した内部電極4と外部電極5とが対向する位置において電離し、プラズマになる。
【0069】
本実施形態においては、内部電極4と外部電極5とが、プラズマ発生用ガスの流れる方向と直交する向きに対向している。内部電極4の外周面と外部電極5の内周面とが対向する位置で発生したプラズマは、ガス流路6と、第一の活性ガス流路7と、第二の活性ガス流路8とをこの順に通流する。この間、プラズマは、ガス組成を変化しつつ通流し、ラジカル等の活性種を含む活性ガスとなる。
【0070】
上記のように生じた活性ガスは、ノズル1の吐出口1aから吐出される。吐出された活性ガスは、吐出口1a近傍の気体の一部をさらに活性化して活性種を生成する。これらの活性種を含む活性ガスを被照射体に照射する。
【0071】
被照射体としては、例えば、細胞、生体組織、生物個体等を例示できる。
生体組織としては、各器官(内臓)、体表や体腔の内面を覆う上皮組織、歯周組織(歯肉、歯槽骨、歯根膜、セメント質等)、歯、骨等を例示できる。活性ガスの照射によって処理可能な疾患及び症状としては、例えば、歯肉炎、歯周病等の口腔内の疾患、皮膚の創傷等を例示できる。
生物個体としては、哺乳類(ヒト、犬、猫、豚等)、鳥類、魚類等を例示できる。
【0072】
プラズマ発生用ガスとしては、例えば、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン等)、窒素、空気、酸素等を例示できる。これらのガスは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
プラズマ発生用ガスは、窒素を主成分とすることが好ましい。本実施形態において、窒素を主成分とするとは、プラズマ発生用ガスにおける窒素の含有量が50体積%超であることをいう。
即ち、プラズマ発生用ガスにおける窒素の含有量は、50体積%超が好ましく、70体積%以上がさらに好ましく、80~100質量%がさらに好ましく、90~100質量%が特に好ましい。プラズマ発生用ガス中の窒素以外のガス成分としては、例えば、酸素、希ガス等を例示できる。
【0073】
プラズマ式治療装置100が口腔内用治療器具である場合、管状誘電体3に導入するプラズマ発生用ガスの酸素濃度は、1体積%以下が好ましい。酸素濃度が上限値以下であると、オゾンの発生を低減できる。
【0074】
管状誘電体3に導入するプラズマ発生用ガスの流量は、1~10L/minが好ましい。管状誘電体3に導入するプラズマ発生用ガスの流量が上記下限値以上であると、被照射体における被照射面の温度の上昇を抑制しやすい。プラズマ発生用ガスの流量が上記上限値以下であると、被照射体の清浄化、賦活化又は治癒をさらに促進できる。
【0075】
内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電圧は、5kVpp以上20kVpp以下が好ましい。ここで、交流電圧を表す単位「Vpp(Volt peak to peak)」は、交流電圧波形の最高値と最低値との電位差である。
なお、内部電極4が外周面に凹凸を有しない円柱の部材である場合、内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電圧は、10kVpp以上が好ましい。外周面に凹凸を有さない内部電極4を用いる場合、外周面に凹凸を有する内部電極4を用いる場合に比べて、内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電圧を高める必要がある。
印加する交流電圧が上記上限値以下であると、発生するプラズマの温度を低く抑えられる。印加する交流電圧が上記下限値以上であると、さらに効率的にプラズマを発生できる。
【0076】
内部電極4と外部電極5との間に印加する交流の周波数は、0.5kHz以上20kHz未満が好ましく、1kHz以上15kHz未満がより好ましく、2kHz以上10kHz未満がさらに好ましく、3kHz以上9kHz未満が特に好ましく、4kHz以上8kHz未満が最も好ましい。交流の周波数が上記上限値以下であると、発生するプラズマの温度を低く抑えられる。交流の周波数が上記下限値以上であると、さらに効率的にプラズマを発生できる。
【0077】
ノズル1の吐出口1aから照射する活性ガスの温度は、50℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましい。ノズル1の吐出口1aから照射する活性ガスの温度が上記上限値以下であると、被照射面の温度を40℃以下にしやすい。被照射面の温度を40℃以下にすることで、被照射部分が患部である場合にも、患部への刺激を低減できる。ノズル1の吐出口1aから照射する活性ガスの温度の下限値は、特に制限はなく、例えば、10℃である。活性ガスの温度は、吐出口1aにおける活性ガスの温度を熱電対で測定した値である。
【0078】
吐出口1aから被照射体の表面までの距離(照射距離)は、例えば、1.0~10mmの範囲とすることが好ましい。照射距離が上記下限値以上であると、被照射体表面の温度を低くし、被照射体への刺激をさらに緩和できる。照射距離が上記上限値以下であると、治癒等の効果をさらに高められる。
【0079】
吐出口1aから1mm以上10mm以下の距離で離れた位置の被照射体表面の温度は、40℃以下が好ましい。被照射体表面の温度が40℃以下であると、被照射体表面への刺激を低減できる。被照射体表面の温度の下限値は特に制限はないが、例えば10℃である。
被照射体表面の温度は、内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電圧、照射する活性ガスの吐出量、内部電極4の先端中心点Q1から吐出口1aまでの道のり等の組み合わせによっても調節できる。被照射体表面の温度は、熱電対を用いて測定できる。
【0080】
活性ガスに含まれる活性種としては、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、オゾン、過酸化水素、スーパーオキシドアニオンラジカル、一酸化窒素、二酸化窒素、ペルオキシナイトライト、過酸化亜硝酸、三酸化二窒素等を例示できる。活性ガスに含まれる活性種の種類は、例えば、プラズマ発生用ガスの種類等によって調節できる。
【0081】
活性ガス中におけるヒドロキシルラジカルの密度(ラジカル密度)は、0.1~300μmol/Lが好ましく、0.1~100μmol/Lがより好ましく、0.1~50μmol/Lがさらに好ましい。ラジカル密度が上記下限値以上であると、細胞、生体組織及び生物個体から選ばれる被照射体の清浄化、賦活化又は異常の治癒を促進しやすい。ラジカル密度が上記上限値以下であると、被照射体表面への刺激を低減できる。
【0082】
ラジカル密度は、例えば、以下の方法で測定できる。
DMPO(5,5-ジメチル-1-ピロリン-N-オキシド)0.2mol/L溶液0.2mLに対して、活性ガスを30秒間照射する。この際、吐出口1aから液面までの距離を5.0mmとする。活性ガスを照射した溶液について、電子スピン共鳴(ESR)法を利用してヒドロキシルラジカル濃度を測定し、これをラジカル密度とする。
【0083】
活性ガス中における一重項酸素の密度(一重項酸素密度)は、0.1~300μmol/Lが好ましく、0.1~100μmol/Lがより好ましく、0.1~50μmol/Lがさらに好ましい。一重項酸素密度が上記下限値以上であると、細胞、生体組織及び生物個体等の被照射体の清浄化、賦活化又は異常の治癒を促進しやすい。上記上限値以下であると、被照射体表面への刺激を低減できる。
【0084】
一重項酸素密度は、例えば、以下の方法で測定できる。
TPC(2,2,5,5-テトラメチル-3-ピロリン-3-カルボキサミド)0.1mol/L溶液0.4mLに対して、活性ガスを30秒間照射する。この際、吐出口1aから液面までの距離を5.0mmとする。活性ガスを照射した溶液について、電子スピン共鳴(ESR)法を利用して一重項酸素濃度を測定し、これを一重項酸素密度とする。
【0085】
吐出口1aから吐出する活性ガスの流量は、1~10L/minが好ましい。
吐出口1aから吐出する活性ガスの流量が上記下限値以上であると、活性ガスが被照射体表面に作用する効果を充分に高められる。吐出口1aから吐出する活性ガスの流量が上記上限値以下であると、活性ガスの被照射体表面の温度が過度に高まることを防止できる。加えて、被照射体表面が濡れている場合には、被照射体表面の急速な乾燥を防止できる。さらに、被照射体表面が患部である場合には、患者への刺激を抑制できる。プラズマ式治療装置100において、吐出口1aから吐出する活性ガスの流量は、管状誘電体3へのプラズマ発生用ガスの供給量で調節できる。
また、本発明に係るプラズマ式治療装置においては、上記の活性ガスの流量は、カートリッジにおける開口部の開口面積も勘案しながら調節する。
【0086】
プラズマ式治療装置100によって生じる活性ガスは、外傷や異常の治癒を促進する効果を有する。活性ガスを細胞、生体組織又は生物個体に照射することによって、その被照射部分の清浄化、賦活化、又はその被照射部分の治癒を促進できる。
【0087】
外傷や異常の治癒を促進する目的で活性ガスを照射する場合、その照射頻度、照射回数及び照射期間は特に制限はない。例えば、1~5.0L/minの照射量で活性ガスを患部に照射する場合、1日1~5回、毎回10秒~10分、1~30日間、等の照射条件が、治癒を促進する観点から好ましい。
【0088】
本実施形態のプラズマ式治療装置100は、特に口腔内用治療器具、歯科用治療器具として有用である。また、本実施形態のプラズマ式治療装置100は、動物治療用器具としても好適である。
【0089】
[作用効果]
以上説明したような、本実施形態のプラズマ式治療装置100によれば、上記構成を採用することにより、被照射体Hに対するプラズマ又は活性ガスの照射面積を拡大させるために、開口面積の大きなカートリッジを備えた場合においても、プラズマ又は活性ガスの流速を低下させることなく、簡便な操作で最適な照射条件を設定して治療を行うことが可能になる。従って、創傷の治癒等の効果が高められ、且つ、操作性に優れたたプラズマ式治療装置が実現できる。
【0090】
<第2の実施形態>
以下に、本発明に係る第2の実施形態のプラズマ式治療装置の詳細な構成について、主に図10を参照しながら説明する(図1等も適宜参照)。
本実施形態で説明するプラズマ式治療装置も、活性ガス式照射装置である。
また、本実施形態においては、上述した第1の実施形態のプラズマ式治療装置100と同じ構成については、同じ符号を付して説明するとともに、その詳しい説明を省略する。
【0091】
本実施形態のプラズマ式治療装置は、上記のような、開口面積が一定とされた開口部を有するカートリッジに代えて、開口面積が切り替え可能(可変)とされたカートリッジ80が照射器具10に取り付けられている点で、第1の実施形態のプラズマ式治療装置100とは異なる。また、本実施形態のプラズマ式治療装置は、制御部90が、カートリッジ80における開口面積の切り替え操作に応じて、プラズマ又は活性ガスの流量を調整するように構成されている点でも、第1の実施形態のプラズマ式治療装置100とは異なり、その他の構成については、プラズマ式治療装置100と概略共通である。
【0092】
図10に示すように、本実施形態のプラズマ式治療装置に備えられるカートリッジ80は、開口部81の開口面積を切り替える、以下に詳述するような切り替え手段を有している。そして、本実施形態では、制御部90が、カートリッジ80において切り替えられる開口部81の開口面積に応じて、プラズマ又は活性ガスの流量を調整できるように構成されている。
【0093】
具体的には、図10に示すカートリッジ80は、開口部81が、カートリッジ80の軸方向で回転可能に設けられ、且つ、複数の第1開口孔82aを有する外盤82と、この外盤82よりもプラズマ又は活性ガスの流れ方向における上流側に、カートリッジ80の内壁側に固定して設けられ、且つ、複数の第2開口孔83aを有する内盤83とから構成される。また、外盤82と内盤83とは、互いに隣接するように配置される。そして、カートリッジ80は、上記の外盤82を回転させたとき、この外盤82に設けられた第1開口孔82aと、内盤83に設けられた第2開口孔83aとが連通するか、あるいは、外盤82における第1開口孔82aが形成されていない領域によって、内盤83における第2開口孔83aの少なくとも一部が塞がれることにより、開口部81の開口面積を切り替えることが可能な構成とされている。即ち、本実施形態においては、開口部81を構成する外盤82と内盤83とで、開口面積の切り替え手段が構成される。
図10に示す例においては、複数の第1開口孔82aの各々からプラズマ又は活性ガスが吐出され、被照射体Hの表面の広い範囲に照射される。
【0094】
そして、本実施形態においては、カートリッジ80が、さらに、外盤82の回転位置を検出する図視略の回転位置検出手段を備えた構成とすることができる。本実施形態のプラズマ式治療装置は、この回転位置検出手段が、外盤82を回転させて開口部81の開口面積を切り替えたときに、外盤82の位置情報を制御部90に送信する。そして、制御部90は、外盤82の位置情報に基づき、開口部81における開口面積を算出し、この算出結果に基づき、プラズマ又は活性ガスの流量を調整する。
【0095】
外盤82の回転位置検出手段としては、例えば、LEDやホール素子を用いた光検出による手段の他、磁気センサによる磁気検出による手段や、小型の接点スイッチ等を用いた手段等を何ら制限無く採用することができる。
【0096】
本実施形態のプラズマ式治療装置によれば、回転可能な外盤82と、固定状態の内盤83とが重なる位置の関係に応じて、第1開口孔82a及び第2開口孔83aによる開口面積が変化することにより、カートリッジ80における開口部81の開口面積を所望の面積に設定することができる。そして、カートリッジ80に設けられた回転位置検出手段から、外盤82の回転位置情報を制御部90に送信することにより、制御部90においてプラズマ又は活性ガスの流量を調整し、カートリッジ80の開口部81から被照射体Hに向けて照射されるプラズマ又は活性ガスの流速を均一に制御することが可能になる。
従って、本実施形態のプラズマ式治療装置によれば、第1の実施形態のプラズマ式治療装置100と同様、被照射体Hに対するプラズマ又は活性ガスの照射面積を拡大させながら、プラズマ又は活性ガスの流速を低下させることなく、最適な照射条件で効果的な治療を行うことが可能になる。
【0097】
また、本実施形態のプラズマ式治療装置によれば、上記構成のカートリッジ80を備えることにより、カートリッジを交換することなく、1種類のカートリッジのみで各種の開口面積に調整することができるので、取扱性に優れ、ひいては装置の運転コストの低減も可能になる。
【0098】
なお、図10中では図示を省略しているが、本実施形態のプラズマ式治療装置においては、例えば、カートリッジ80が、さらに、外盤82を電気的又は機械的に回転させることで開口部81の開口面積を切り替える図視略の切り替え機構を備え、図2に示す照射器具2が、上記の切り替え機構によって切り替えられる開口部81の開口面積を設定するための図視略の開口面積設定手段を備える構成を採用してもよい。また、図視略の開口面積設定手段は、ノズル1に設けられていてもよい。
【0099】
外盤82を電気的に回転させる切り替え機構としては、例えば、小型モータや電磁バルブ等が挙げられる。このような構成を採用した場合、例えば、ボタンスイッチや回転スイッチ等から構成される開口面積設定手段を操作することで、この操作信号が制御部90に送信され、制御部90が図視略の切り替え機構の回転制御を行う。この切り替え機構の回転に伴って外盤82が回転することにより、外盤82の回転位置を所望の位置に設定し、開口部81の開口面積を所望の面積に設定できる。
【0100】
また、外盤82を機械的に回転させる切り替え機構としては、例えば、上記の開口面積設定手段と歯車やカム機構等で連結された機構等が挙げられる。このような構成を採用した場合、例えば、回転つまみ等から構成される開口面積設定手段を操作することで、この操作に連動して切り替え機構が回転し、これに伴って外盤82が回転する。これにより、外盤82の回転位置を所望の位置に設定し、開口部81の開口面積を所望の面積に設定できる。
【0101】
<他の実施形態>
なお、本発明のプラズマ式治療装置は、プラズマ発生部と、プラズマ及び活性ガスのいずれか一方又は両方を吐出するノズルを有する照射器具と、ノズルの先端に取り付けられるカートリッジとを備えたものであればよく、上記の実施形態には限定されない。
【0102】
例えば、図視略の給電部は、供給ユニット20の筐体21の内部に設けられていればよいが、供給ユニット20から独立して設けられてもよい。
図示例では、制御部90は、供給ユニット20の筐体21の内部に設けられているが、供給ユニット20から独立して設けられてもよい。
また、図示例では、供給ユニット20は1つのみ設けられているが、供給ユニットを複数設け、異種又は同種のガスの2種以上を照射器具10に供給する構成を採用してもよい。
また、図示例では、カートリッジ61等はノズル1に取り付けられているが、例えば、カウリング2に取り付けられていてもよい。
【0103】
また、操作スイッチ9が、上記の実施形態と異なってもよい。例えば、照射器具10に操作スイッチ9を設けることに代えて、供給ユニット20に足踏みペダルを設けてもよい。この場合、足踏みペダルを操作部とし、例えば、使用者が足踏みペダルを踏んだときに、供給源70からプラズマ発生用ガスをプラズマ発生部12に供給する構成を採用すること等ができる。
【0104】
上記の実施形態では、内部電極4の形状はねじ状であるが、内部電極と外部電極との間にプラズマを発生できれば、内部電極の形状は限定されない。
内部電極は、表面に凹凸を有してもよいし、表面に凹凸を有しなくてもよい。内部電極としては、外周面に凹凸を有する形状が好ましい。
内部電極の形状は、例えば、コイル状でもよいし、外周面に突起、穴、貫通孔が複数形成された棒形状又は筒形状でもよい。内部電極の断面形状としては、例えば、真円形、楕円形等の円形、四角形、六角形等の多角形を例示できる。
【0105】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記の実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のプラズマ式治療装置は、プラズマの効果をさらに高められる。このため、本発明のプラズマ式治療装置は、医療用治療器具又はヒトを除く動物治療用器具として好適である。
本発明の治療装置を用いた治療方法は、生体組織の治癒促進にも有効である。本発明の治療装置を用いた治療方法は、ヒトのみならず、ヒトを除く動物の治療にも有効である。
【符号の説明】
【0107】
1…ノズル
1a…吐出口
3…管状誘電体(プラズマ発生部)
4…内部電極(プラズマ発生部)
5…外部電極(プラズマ発生部)
9…操作スイッチ
10…照射器具
12…プラズマ発生部
60,61,62,63,64,80…カートリッジ
60a,61a,62a,63a,64a、81…開口部
62b,63b,64b…複数の開口孔
90…制御部
100…プラズマ式治療装置(活性ガス照射装置)
H…被照射体
α…照射角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11