IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニッタ化工品株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図1
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図2
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図3
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図4
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図5
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図6
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図7
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図8
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図9
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図10
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図11
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図12
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図13
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図14
  • 特許-空気ばね及びその組立方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】空気ばね及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20220614BHJP
   F16F 9/05 20060101ALI20220614BHJP
   F16B 5/02 20060101ALN20220614BHJP
   B61F 5/10 20060101ALN20220614BHJP
【FI】
F16F9/32 V
F16F9/05
F16B5/02 A
B61F5/10 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018181314
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020051518
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】安永 裕喜
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第1388441(EP,A2)
【文献】実開昭52-022891(JP,U)
【文献】特開平04-145240(JP,A)
【文献】特開平10-288236(JP,A)
【文献】特開2008-215455(JP,A)
【文献】特開2010-203487(JP,A)
【文献】特開2010-281433(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2775162(EP,A2)
【文献】欧州特許出願公開第3176462(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第102000971(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
F16F 9/02- 9/05
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面板と、下側部材と、前記上面板及び下側部材の間に介装される筒状の可撓部材と、前記可撓部材の上端部を前記上面板に止着する装着リングと、前記装着リングと前記上面板とを締結する複数の締結部とを備えた空気ばねであって、前記装着リングと前記上面板とが前記空気ばねの中心軸を中心にして相対的に唯一の位置関係にあるときのみ、前記装着リングと前記上面板との適正な締結を許容する許容部を備え、前記複数の締結部は、前記装着リング及び上面板のうち、一方に形成されたネジ孔と、他方に形成された貫通孔と、前記貫通孔を通して前記ネジ孔に螺合されるネジとを一組とする締結部を複数組備えてなり、下記の(A)、(B)及び(C)のうち少なくとも1つの構成を有することを特徴とする空気ばね。
(A)前記複数の締結部のうち少なくとも一組の締結部のネジ孔径、貫通孔径及びネジ径が、その他の組の締結部のネジ孔径、貫通孔径及びネジ径と異なるように設けられ、前記少なくとも一組の締結部が、前記許容部として機能する構成。
(B)前記装着リング及び上面板において、前記空気ばねの中心軸を中心とする同一円周上に沿って等間隔に複数の締結部の設定位置が設けられ、前記複数の締結部のうち、少なくとも一組の締結部は、前記設定位置から前記空気ばねの半径方向及び/又は空気ばねの周方向にずれた位置に配置され、その他の組の締結部は、前記設定位置に配置され、前記少なくとも一組の締結部が、前記許容部として機能する構成。
(C)前記許容部は、前記装着リング及び上面板のうち、一方に形成された凸部と、他方に形成された凹部とを備え、前記装着リングと前記上面板とが前記空気ばねの中心軸を中心にして相対的に唯一の位置関係にあるときのみ、前記凸部が前記凹部に嵌合する構成。
【請求項2】
請求項1に記載の空気ばねの組立方法であって、前記下側部材に前記可撓部材の下端部を取り付けた後、前記装着リングと前記上面板とを適正に締結した後の前記上面板と前記下側部材との相対的な位置関係が予め規定された唯一の位置関係になるように、前記許容部の位置を調整しつつ前記装着リングを前記可撓部材の上端部に装着し、その後、前記装着リングと前記上面板とを適正に締結することを特徴とする空気ばねの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面板及び下側部材を備えた、車両搭載用の空気ばねに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両などの車両に用いられる空気ばねとして、特許文献1の図5に示すように、車両の車体に取り付けられる上面板と、その下方で台車側に配置される下側部材と、上面板及び下側部材にわたって配備されるゴム製筒状の可撓部材(ダイアフラムやベローズなど)とを備えたものが知られている。下側部材は、ダイアフラムの下端部が嵌装される下面板と、下面板と台車フレームとの間に介装される弾性機構とを備える。弾性機構は、一般的にストッパーを呼ばれており、頂板と底板との間に、複数の弾性体層の間に鋼板を挟み込んで積層した積層ゴムを介在させたものが多用される。
【0003】
上記構成の空気ばねを車両に搭載する場合、車体に対する上面板の向きと、台車フレームに対する下側部材の向きとが予め定められている場合がある。この場合、空気ばねは、空気ばねの中心軸を中心として、上面板と下側部材との相対的な位置関係が予め規定された位置関係(位相関係)とすることが必要とされる。この上面板と下側部材との相対的な位置関係がずれていると、空気ばねを車両に取り付けることができないといった問題が生じていた。
【0004】
上記課題を解決するために、空気ばねを組み立てる際に、組立用治具が用いられる。図13図15は、組立用治具を用いて空気ばねを組み立てる手順を示す図である。図13に示すように、組立用治具は、下側部材3を位置決めして載置する台座部31と、台座部31の左右両側に形成される一対のガイド部32、32とを備える。ガイド部32は、台座部31の側方に張り出すように設けられる基部33と、基部33の先端部から垂直に立設されるポール部34とを有する。
【0005】
台座部31に載置した下側部材3に、筒状の可撓部材4の下端部を嵌装した後、第一位置決め部材51にて位置決めされた状態の装着リング18を可撓部材4の上端部に装着する。装着リング18には中心から同一円周上に沿って等間隔に複数のネジ孔21が形成される。第一位置決め部材51は細長いプレート状の本体部の両端に形成された、左右のポール部34、34が挿通可能な一対のガイド孔52、52と、装着リング18に形成されたネジ孔21に嵌合可能な複数のピン部53とを有する。第一位置決め部材51は、ピン部53をネジ孔21に挿入することで装着リング18と合体した状態で、ガイド孔52にポール部34を挿入する。これにより、装着リング18のネジ孔21を下側部材3に対して位置決めした状態で可撓部材4の上端部に装着することが可能となる。
【0006】
可撓部材4の上端部に装着リング18を装着した後、第一位置決め部材51をガイド部32から取り外し、図14に示すように、第二位置決め部材61を装着した上面板2を装着リング18上に載置する。上面板2には中心から同一円周上に沿って等間隔に複数の貫通孔22が形成されており、全てのネジ孔21と貫通孔22とが重ね合せ可能に設けられる。第二位置決め部材61は平板状で、上面板2のボス部6を嵌入可能な中心孔部62と、左右のポール部34、34が挿通可能な一対のガイド孔63、63と、上面板2に形成された位置合せ用固定部10の一部と同形に設けられた位置合せ部64とを有する。
【0007】
第二位置決め部材61は、中心孔部62に上面板2のボス部6を嵌通させた状態で、ガイド孔63にポール部34を挿入する。そして、図15に示すように、位置合せ部64と上面板2の位置合せ用固定部10とを重ねて位置合わせすることによって、上面板2は、装着リング18及び下側部材3に対して位置決めすることが可能となる。この状態で、上面板2の上から、貫通孔22を通してネジ23をネジ孔21に螺合させることで空気ばねを組立てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-288236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記組立用治具を用いた空気ばねの組立方法においては、ガイド部から第一位置決め部材を取り外し、第二位置決め部材に付け替えて上面板の位置決めを行なう必要があり、この第一位置決め部材と第二位置決め部材の付け替えの間にガイド部のポール部と台座部との位置関係がずれる場合があり、これにより上面板と下側部材との相対的な位置関係がずれる可能性が生じていた。しかも、上面板と下側部材との相対的な位置関係がずれた、組立不良の空気ばねは、上面板と下側部材との相対的な位置関係が正常な空気ばねと外観で見分けるのは困難であり、不良チェックに手間がかかるという問題もあった。
【0010】
そこで、本発明においては、上面板及と下側部材との相対的な位置関係のずれの発生を抑制するとともに、組立後の空気ばねに組立不良品が混入する可能性を抑制可能な空気ばね及びその組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様としての空気ばねは、上面板と、下側部材と、前記上面板及び下側部材の間に介装される筒状の可撓部材と、前記可撓部材の上端部を前記上面板に止着する装着リングと、前記装着リングと前記上面板とを締結する複数の締結部とを備え、前記装着リングと前記上面板とが前記空気ばねの中心軸を中心にして相対的に特定の位置関係にあるときのみ、前記装着リングと前記上面板との適正な締結を許容する許容部を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記複数の締結部は、前記装着リング及び上面板のうち、一方に形成されたネジ孔と、他方に形成された貫通孔と、前記貫通孔を通して前記ネジ孔に螺合されるネジとを一組とする締結部を複数組備えてなり、前記複数の締結部のうち少なくとも一組の締結部のネジ孔径、貫通孔径及びネジ径が、その他の組の締結部のネジ孔径、貫通孔径及びネジ径と異なるように設けられ、前記少なくとも一組の締結部が、前記許容部として機能するようにしてもよい。
【0013】
また、前記複数の締結部は、前記装着リング及び上面板のうち、一方に形成されたネジ孔と、他方に形成された貫通孔と、前記貫通孔を通して前記ネジ孔に螺合されるネジとを一組とする締結部を複数組備えてなり、前記装着リング及び上面板において、空気ばねの中心軸を中心とする同一円周上に沿って等間隔に複数の締結部の設定位置が設けられ、前記複数の締結部のうち、少なくとも一組の締結部は、前記設定位置から前記空気ばねの半径方向及び/又は空気ばねの周方向にずれた位置に配置され、その他の組の締結部は、前記設定位置に配置され、前記少なくとも一組の締結部が、前記許容部として機能するようにしてもよい。
【0014】
また、前記許容部は、前記装着リング及び上面板のうち、一方に形成された凸部と、他方に形成された凹部とを備え、前記装着リングと前記上面板とが前記空気ばねの中心軸を中心にして相対的に特定の位置関係にあるときのみ、前記凸部が前記凹部に嵌合する構成にしてもよい。
【0015】
上面板と、下側部材と、前記上面板及び下側部材の間に介装される筒状の可撓部材と、前記可撓部材の上端部を前記上面板に止着する装着リングと、前記装着リングと前記上面板とを締結する複数の締結部とを備えた空気ばねを組み立てる方法として、前記空気ばねに、前記装着リングと前記上面板とが前記空気ばねの中心軸を中心にして相対的に特定の位置関係にあるときのみ、前記装着リングと前記上面板との適正な締結を許容する許容部が設けられ、前記下側部材に前記可撓部材の下端部を取り付けた後、前記装着リングと前記上面板とを適正に締結した後の前記上面板と前記下側部材との相対的な位置関係が予め規定された位置関係になるように、前記許容部の位置を調整しつつ前記装着リングを前記可撓部材の上端部に装着し、その後、前記装着リングと前記上面板とを適正に締結するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の一態様に係る空気ばねによれば、装着リングと上面板とが空気ばねの中心軸を中心にして相対的に特定の位置関係にあるときのみ、装着リングと上面板との適正な締結を許容する許容部を備えたため、組立用治具において、第一位置決め部材によって装着リングを位置決めした状態で下側部材に装着すれば、第二位置決め部材を使用する必要がない。したがって、第一位置決め部材及び第二位置決め部材の付け替えによる上面板及と下側部材との相対的な位置関係のずれを抑制することができる。
また、許容部は装着リングと上面板とが相対的に特定の位置関係にあるときのみ、装着リングと上面板との適正な締結を許容することから、上面板及と下側部材との相対的な位置関係がずれた状態で外観上適正に空気ばねを組み立てることができず、組立後の空気ばねに組立不良品が混入する可能性を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る空気ばねの第1実施形態を示す平面図
図2図1の空気ばねのA-A断面図
図3図2の円で囲まれたB部分の拡大図
図4】本発明の空気ばねを搭載した鉄道車両を示す概略図
図5】本発明の空気ばねの組立工程を示す図で、下側部材を組立用治具に載置した状態を示す図
図6図5の下側部材に可撓部材を取付けた後、位置決め部材で位置決めされた装着リングを組立用治具にセットして可撓部材に装着した状態を示す図
図7図6の装着リングから位置決め部材を取り外した状態を示す図
図8図7の装着リングに上面板を位置合せしつつ取り付ける状態を示す図
図9図8の上面板を装着リングに載置した後の状態を示す図
図10】本発明に係る空気ばねの第2実施形態を示す平面図
図11】本発明に係る空気ばねの第2実施形態の変形例を示す平面図
図12】本発明に係る空気ばねの第3実施形態を示す平面図
図13】従来の空気ばねの組立工程を示す図で、第一位置決め部材で位置決めされた装着リングを組立用治具にセットして可撓部材に装着した状態を示す図
図14図13の第一位置決め部材を取り外し、第二位置決め部材61を装着した上面板2を組立用治具にセットする状態を示す図
図15図14の第二位置決め部材と上面板とを位置合せした状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を基に説明する。図1は、本発明に係る空気ばねとして鉄道車両用の空気ばねの実施形態を示す平面図である。図2は、図1の空気ばねのA-A断面図であり、図3図2中、円で囲まれたB部分の拡大図である。
【0019】
図1図3に示すように、本実施形態の空気ばね1は、上面板2と、その下側に配置される下側部材3と、上面板2及び下側部材3の間に筒状の可撓部材4を備える。上面板2は略円板状に形成された本体部5と、本体部5の中央部に形成され、車体に嵌合可能な筒状のボス部6と、本体部5の外縁部から半径方向外方に突設された、ネジ止め用の貫通孔7を有する固定部8、10とを有する。固定部10は、上面板2の前後左右の方向を合せつつ、車体に固定する位置合せ用の固定部とされ、他の固定部8とは異なる形状(平面視矩形状)・大きさに形成される。
【0020】
下側部材3は、弾性機構9と、弾性機構9の頂部に装着される円盤状の下面板11と、弾性機構9の底部に装着される円板状の支持部材12とを備える。支持部材12の中央には、下方に向かって軸部13が垂設され、台車に嵌合可能とされる。また、支持部材12には、台車に設けられた位置決め用ピンに嵌合可能な位置決め用孔14が形成される。
【0021】
弾性機構9は、中心材15と、外筒16と、中心材15及び外筒16の間に介在される弾性層17とを備え、弾性層17は、弾性材層18と中間筒20とが交互に積層された構造とされ、中心材15及び外筒16とともに一体的に加硫成形される。具体的に、中心材15はテーパ筒状に形成された有蓋円筒状に形成され、その外周の全周にわたってゴム材により弾性材層18が設けられ、断面ハ字状に形成される。これにより、いわゆるコニカルストッパーが形成される。中心材15、外筒16及び中間筒20は金属等の硬質材料により構成される。
【0022】
弾性機構9としては、積層ゴム構造を備え、ストッパーとしての機能を有するものであればよく、頂板と、底板との間に弾性材層と硬質板とが交互に水平に積層された積層ゴムを用いることもできる。また、下側部材3として、弾性機構9を除いた構成とすることも可能である。
【0023】
可撓部材4は、補強コードが埋設された補強ゴム層を中間層とする筒状積層ゴムから構成されており、可撓部材4の上端部及び下端部にはビードコアに補強ゴム層を巻き付けた肉厚のビード部が形成されている。可撓部材4としては、具体的に、ダイアフラムやベローズが用いられる。可撓部材4の上端部は、装着リング18を介して、装着リング18と上面板2とを締結する複数の締結部19によって上面板2に気密に止着され、可撓部材4の下端部は、下面板11に気密に外嵌される。
【0024】
複数の締結部19は、図3に示すように、装着リング18に形成されたネジ孔21と、上面板2に形成された貫通孔22と、貫通孔22を通してネジ孔21に螺合されるネジ23とを一組として、これを複数組備えてなる。具体的に、空気ばね1の中心軸Pを中心とする同一円周上に沿って等間隔に複数の締結部19が形成される。本実施形態では18個の締結部19が設けられる。
【0025】
図4は、本発明の空気ばね1を搭載した鉄道車両24を示す概略図である。図示のように、空気ばね1は、車体25と台車26との間に設置される。台車26は、レール上を転がる左右一対の車輪27、27と、一対の車輪27、27を前後に配した支持フレーム28とを備える。車体25の底面と支持フレーム28との間に左右一対の空気ばね1,1が介装される。
【0026】
台車26の支持フレーム28には、支持部材12の軸部13を嵌合可能な凹部(図示せず)が設けられ、凹部の近傍には支持部材12の位置決め用ピン(図示せず)が立設されており、支持部材12の位置決め用孔14が嵌合可能とされる。車体25の底面には、ボス部6を嵌合可能な凹状のボス受部(図示せず)が設けられ、ボス受部の周りには上面板2の固定部8、10の貫通孔7と重ね合わせ可能な図示しないネジ孔が形成されており、ボルト等のネジ類によって上面板2を車体25底面にネジ止め可能とされる。
【0027】
したがって、支持部材12の位置決め用孔14を位置決め用ピンに嵌合するとともに、上面板2の固定部8の貫通孔7を車体25底面のネジ孔に正しく合せて空気ばね1を車両24に搭載したときには、図1に示すように、空気ばね1を平面視したときに中心軸Pを中心として、上面板2と下側部材3との相対的な位置関係が予め規定された位置関係(位相関係)となる。
【0028】
すなわち、空気ばね1は、上面板2と下側部材3とが、空気ばね1の中心軸Pを中心として、種々の位置関係(位相関係)の状態で組み立てることができるものの、空気ばね1を車両24に正しく取り付けるには、空気ばね1組立後の上面板2と下側部材3とが、空気ばね1の中心軸Pを中心として、相対的に予め規定された位置関係であることが必要とされる。
【0029】
そうすると、空気ばね1組立後の上面板2と下側部材3との相対的な位置関係が予め規定された位置関係となるように、空気ばね1組立時において、装着リング18と上面板2とを空気ばね1の中心軸Pを中心にして相対的に特定の位置関係になるようにして両者を締結することが必要とされる。
【0030】
そのため、本実施形態では、空気ばね1に、装着リング18と上面板2とが空気ばね1の中心軸Pを中心にして相対的に特定の位置関係にあるときのみ、装着リング18と上面板2との適正な締結を許容する許容部29を設けた。装着リング18と上面板2とを適正に締結することにより、可撓部材4の上端部が上面板2に気密に止着される。
【0031】
具体的に、複数組の締結部19のうち1組の締結部19aのネジ孔径、貫通孔径及びネジ径を、その他17組の締結部19bのネジ孔径、貫通孔径及びネジ径とは異径にする。すなわち、締結部19aのネジ孔径、貫通孔径及びネジ径を締結部19bのネジ孔径、貫通孔径及びネジ径よりも小径又は大径になるようにし、この1組の締結部19aを許容部29としている。なお、本実施形態では、締結部19aのネジ孔径、貫通孔径及びネジ径を、締結部19bのネジ孔径、貫通孔径及びネジ径よりも小さくなるようにしている。
【0032】
本実施形態では1組の締結部19aを許容部29としているが、これに限らず、締結部19aを複数組として許容部29とすることも可能である。この場合には、許容部29となる複数組の締結部19aが、上面板2と下側部材3とが相対的に特定の位置関係にあるときのみ装着リング18と上面板2との適正な締結を許容するように配置されていることが必要とされる。
【0033】
上記構成においては、許容部29を構成する貫通孔22とネジ孔21とが相対するように重ね合わせてネジ径の小さいネジ23で締結し、その他の締結部19bについてはネジ径の大きいネジ23で締結しない限り、全ての締結部19を適正に締結することはできない。いいかえれば、全ての締結部19が適正に締結されていることを視認により確認できれば、装着リング18と上面板2とが空気ばね1の中心軸Pを中心にして相対的に特定の位置関係にあることの証明となり、組立後の空気ばね1に組立不良品が混入する可能性を抑制することが可能となる。
【0034】
上記空気ばね1の組立方法について説明する。図5に示すように、組立用治具は、下側部材3を位置決めして載置する台座部31と、台座部31の左右両側に形成される一対のガイド部32、32とを備える。ガイド部32は、台座部31の側方に張り出すように設けられる基部33と、基部33の先端部から垂直に立設されるポール部34とを有する。
【0035】
台座部31の中央には下側部材3の支持部材12の軸部13を嵌合可能な凹部(図示せず)が形成されており、また、台座部31において、凹部の近傍には支持部材12の位置決め用孔14に嵌合可能なピン35が立設されている。このピン35は支持フレーム28に形成される位置決め用ピンに見立てて形成されている。従って、位置決め用孔14をピン35に嵌合させることにより、ガイド部32、ひいては台車26に対して下側部材3の位置決めが可能となる。
【0036】
台座部31に載置した下側部材3に、可撓部材4の下端部を嵌装した後、図6に示すように、位置決め部材36にて位置決めされた状態の装着リング18を可撓部材4の上端部に装着する。装着リング18には中心から同一円周上に沿って等間隔に複数のネジ孔21が形成される。位置決め部材36は、細長いプレート状の本体部の両端に形成された、左右のポール部34、34が挿通可能なガイド孔37、37と、直径方向に対向する装着リング18の上端部部分の2箇所を上方から嵌合する断面略逆U字形状の嵌合部38とを備える。
【0037】
嵌合部38の天面には下方に向かってピン部39が形成されており、装着リング18に形成されたネジ孔21に嵌合可能とされる。2箇所の嵌合部38、38には合わせて6つのピン部39が形成されており、そのうちの1つのピン部39aは許容部29となる締結部19aのネジ径に合わせて他のピン部39bとは異径とされる(本実施形態ではピン部39aはピン部39bよりも小径とされる)。上記構成の位置決め部材36を用いることにより、許容部29を構成するネジ孔21の位置決めをしつつ可撓部材4に装着リング18を装着することができる。
【0038】
図7に示すように、位置決め部材36をガイド部32から取り外した状態では、許容部29を構成する小径のネジ孔21は、下側部材3に対して位置決めされる。そして、第二位置決め部材は用いず、図8に示すように、許容部29を構成する小径の貫通孔22を、許容部29を構成する小径のネジ孔21に相対するように重ねて上面板2を装着リング18上に載置する。これにより、装着リング18と上面板2とが空気ばね1の中心軸Pを中心にして相対的に特定の位置関係となる(図9参照)。
【0039】
その後、許容部29となる締結部19aは小径のネジ23で、その他の締結部19bは大径のネジ23でそれぞれネジ止めする。これにより、装着リング18と上面板2とを適正に締結することができる。上述の手順により組み立てられた空気ばね1は、空気ばね1の中心軸Pを中心として、上面板2と下側部材3とが相対的に予め規定された位置関係となり、車両24に取り付け可能となる。
【0040】
以上詳述したように、本発明の空気ばねの組立方法は、空気ばね1に、装着18リングと上面板2とが空気ばね1の中心軸Pを中心にして相対的に特定の位置関係にあるときのみ、装着リング18と上面板2との適正な締結を許容する許容部29が設けられ、下側部材3に可撓部材4の下端部を取り付けた後、装着リング18と上面板2とを適正に締結した後の上面板2と下側部材3との相対的な位置関係が予め規定された位置関係になるように、許容部29の位置を調整しつつ装着リング18を可撓部材4の上端部に装着し、その後、装着リング18と上面板2とを適正に締結することを特徴とする。
【0041】
具体的に、許容部29は、装着リング18及び上面板2のそれぞれに許容部29を構成する構成部材を備えており、装着リング18に設けられた許容部29の構成部材の位置を調整しつつ装着リング18を可撓部材4の上端部に装着する。その後、上面板2に設けられた許容部29の構成部材と、装着リング18に設けられた許容部29の構成部材とを互いに相対するように重ねることで装着リング18と上面板2とを適正に締結することができる。これにより、組立用治具として用いる位置決め部材36は1種類のみでよく、位置決め部材を付け替える必要がないことから、上面板2と下側部材3との相対的な位置関係のずれの発生を抑制することができる。
【0042】
[第2実施形態]
図10は、本発明の第2実施形態を示す空気ばねの平面図である。本実施形態では、装着リング18及び上面板2において、空気ばね1の中心軸Pを中心とする同一円周上に沿って等間隔に複数の締結部19の設定位置が設けられ、複数の締結部19のうち、少なくとも一組の締結部19aは、設定位置から空気ばね1の半径方向及び/又は空気ばねの周方向にずれた位置に配置され、その他の組の締結部19bは設定位置に配置され、少なくとも一組の締結部19aが、許容部29として機能する点が特徴とされ、その他の構成は第1実施形態と同様とされる。なお、締結部19aを構成するネジ孔21、貫通孔22及びネジ23の大きさは、他の締結部19bと同じとされる。
【0043】
図10に示すように、本実施形態では、一組の締結部19aが設定位置から距離Xだけ半径方向内方にずれた位置に配置されているが、これに限らず、複数組の締結部19aを許容部29とすることも可能である。この場合には、許容部29となる複数組の締結部19aが、上面板2と下側部材3とが相対的に特定の位置関係にあるときのみ装着リング18と上面板2との適正な締結を許容するように配置されていることが必要とされる。
【0044】
上記構成によれば、装着リング18と上面板2とが空気ばね1の中心軸Pを中心にして相対的に特定の位置関係となったときのみ、全ての締結部19について装着リング18と上面板2とを適正に締結することができる。なお、本実施形態では、締結部19aは、設定位置から距離Xだけ半径方向内方にずれた位置に配置されているが、これに限らず、図11に示すように、設定位置から距離Xだけ周方向にずれた位置に配置してもよいし、半径方向及び周方向の両方向にずれた位置に配置してもよい。
【0045】
[第3実施形態]
図12は、本発明の第3実施形態を示す空気ばねの平面図である。本実施形態では、許容部として、装着リング18及び上面板2のうち、一方に形成された凸部と、他方に形成され、装着リング18と上面板2とが適正に締結されたときに、凸部に係合する凹部とを備えた点が特徴とされ、その他の構成は第1実施形態と同様とされる。
【0046】
図12に示すように、本実施形態では、許容部29として、装着リング18に凸部41が形成され、上面板2に凹部42として貫通孔が形成されている。上記構成によれば、装着リング18と上面板2とが空気ばね1の中心軸Pを中心にして相対的に特定の位置関係となったときのみ、全ての締結部19について装着リング18と上面板2とを適正に締結することができる。なお、本実施形態では、許容部29として一対の凸部41及び凹部42を設けているが、これに限らず、複数対の凸部41及び凹部42を設けることも可能である。
【0047】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。たとえば、本実施形態においては、装着リング18にネジ孔21を形成し、上面板2に貫通孔22を形成して上面板側からネジ23を用いてネジ止めしているが、これに限らず、装着リング18に貫通孔22を形成し、上面板2にネジ孔21を形成して装着リング側からネジ止めするようにしてもよい。また、本発明の空気ばねは、鉄道車両用のみならず、トラック・バス等の自動車用として用いることもできる。
【0048】
本実施形態及び上記変形例に開示されている構成要件は互いに組合せ可能であり、組合せることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 空気ばね
2 上面板
3 下側部材
4 可撓部材
5 本体部
6 ボス部
7 貫通孔
8 固定部
9 弾性機構
10 位置合せ用固定部
11 下面板
12 支持部材
13 軸部
14 位置決め用孔
18 装着リング
19 締結部
19a 1組の締結部
19b 他の組の締結部
20 中間筒
21 ネジ孔
22 貫通孔
23 ネジ
29 許容部
31 台座部
32 ガイド部
33 基部
34 ポール部
35 ピン
36 位置決め部材
37 ガイド孔
38 嵌合部
39 ピン部
39a 1つのピン部
39b 他のピン部
41 凸部
42 凹部
P 空気ばね中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15