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特許7088815防錆剤の作用向上剤、並びにこれを用いた乳化重合用組成物および防錆剤含有エマルジョン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】防錆剤の作用向上剤、並びにこれを用いた乳化重合用組成物および防錆剤含有エマルジョン
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/42 20220101AFI20220614BHJP
   C08F 2/26 20060101ALI20220614BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220614BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20220614BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20220614BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220614BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220614BHJP
【FI】
C09K23/42
C08F2/26 A
C08L101/00
C08K5/42
C08K3/32
C09D201/00
C09D7/63
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018214727
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2020081905
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390014856
【氏名又は名称】日本乳化剤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 博樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 絢子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雄太
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522847(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0101910(US,A1)
【文献】特開2016-069523(JP,A)
【文献】特開2013-136554(JP,A)
【文献】特開平09-136027(JP,A)
【文献】特開2016-033180(JP,A)
【文献】特開昭62-255468(JP,A)
【文献】特開昭63-276871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/00-23/56
C08F 2/26
C08K 5/42
C23F 11/00
C10M 145/26、151/00
C07C 305/10、305/18
C08L 101/00
C09C 1/00、3/06、3/08
C09D 17/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防錆剤の作用向上剤であって、
下記化学式(1):
【化1】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数2~4のアルケニル基を表し、Aは炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基を表し、mはAOの平均付加モル数を表し1~150の数であり、lは1~3の整数であり、nはQの原子価を表し1または2であり、Qは1価金属カチオン、2価金属カチオンまたは含窒素化合物カチオンを表す、
で表されるイオン結合性塩を含む、作用向上剤。
【請求項2】
が有機アンモニウムイオンである、請求項1に記載の作用向上剤。
【請求項3】
がエチレン性不飽和結合を有する有機アンモニウムイオンである、請求項2に記載の作用向上剤。
【請求項4】
がメチル基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の作用向上剤。
【請求項5】
Aがエチレン基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の作用向上剤。
【請求項6】
mが5~120の数である、請求項1~5のいずれか1項に記載の作用向上剤。
【請求項7】
防錆剤の作用を向上する方法であって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の作用向上剤を防錆剤と併用することを含む、方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の作用向上剤と、重合性モノマーと、溶媒と、を含む、乳化重合用組成物。
【請求項9】
前記作用向上剤の含有量が、前記重合性モノマー(前記作用向上剤を含まない)100質量%に対して0.5~5質量%である、請求項8に記載の乳化重合用組成物。
【請求項10】
防錆剤と、請求項1~6のいずれか1項に記載の作用向上剤と、樹脂エマルジョンと、を含む、防錆剤含有エマルジョン。
【請求項11】
請求項8または9に記載の乳化重合用組成物の乳化重合物を含む、請求項10に記載の防錆剤含有エマルジョン。
【請求項12】
前記作用向上剤の含有量が、前記樹脂エマルジョン(前記防錆剤および前記作用向上剤を含まない)100質量%に対して0.5~10質量%である、請求項10または11に記載の防錆剤含有エマルジョン。
【請求項13】
前記防錆剤の含有量が、前記樹脂エマルジョン(前記防錆剤を含まない)100質量%に対して1~50質量%である、請求項10~12のいずれか1項に記載の防錆剤含有エマルジョン。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の防錆剤含有エマルジョンを含む、塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防錆剤の作用向上剤、並びにこれを用いた乳化重合用組成物および防錆剤含有エマルジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材などの鉄基金属材やアルミニウム、チタンなどの非鉄金属材、特にアルミニウムやその合金用の防錆剤として、従来、リン酸塩、リン酸エステル、ホスホン酸などのリン系防錆剤、あるいは有機酸アミン塩、有機スルホン酸金属塩、複素環化合物のような有機系防錆剤が汎用されている。
【0003】
ここで、錆の発生は、金属が空気および電解質である水に接触して酸化することによって起こる。そのため、錆の発生を防止するには、金属表面を空気や水から遮断する方法が取られるのが一般的である。例えば、水性塗料に防錆性を付与する方法としては、従来、空気と反応して金属の表面に被膜を形成する顔料を使用する方法や、密着性およびバリア性に優れた樹脂を使用する方法などがある。前者の例としては、例えば、リン酸塩や亜鉛粉末などを使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、後者の例としては、付着性および耐久性に優れたエポキシ樹脂や塩化ビニリデン系樹脂を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献2および特許文献3を参照)。
【0004】
ところで、近年、地球環境保護に対する関心が高まり、塗料に対する溶剤規制や重金属に対する規制が強化されるなどの影響で溶剤系塗料から水系塗料へ移行する動きが活発となっており、溶剤系塗料と同等の性能を有する防錆性、防湿性に優れた水系塗料が強く望まれている。このような流れの中で、例えば特許文献2や特許文献3に開示されているように、塩化ビニリデン系共重合樹脂エマルジョンなどの樹脂エマルジョンの形態を有する水系塗料が種々提案されている。
【0005】
水系塗料に用いられる樹脂エマルジョンは、重合性モノマーと乳化剤とを水中に含有するモノマー組成物を乳化重合することによって製造される。ここで、樹脂エマルジョンに対して防錆性を付与するための技術として、例えば特許文献4では、所定の化学構造(リン酸エステル構造)を有する反応性界面活性剤を乳化重合用の乳化剤として用いる技術が提案されている。また、例えば特許文献5においても、所定の化学構造(1級アミノ基を含有するポリエーテルアミン構造)を有する界面活性剤を乳化重合用の乳化剤として用いる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-199546号公報
【文献】特開2013-151598号公報
【文献】特開2015-166436号公報
【文献】特開平11-309361号公報
【文献】特開2003-290643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、乳化重合用乳化剤を用いて樹脂エマルジョンに防錆性を付与する従来の技術には、依然として改善の余地があることが判明した。具体的に、特許文献4に開示されているようなリン酸エステル型界面活性剤を用いた場合には、十分な重合安定性が達成できず、得られた樹脂エマルジョンに電解質が混入した際の乳化安定性が不十分であることが判明した。また、その結果として、得られた樹脂エマルジョンを塗料として使用するために顔料を配合すると、凝集物が発生するという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献5に開示されているようなポリエーテルアミン型界面活性剤を用いた場合についても、十分な乳化性が得られず、乳化重合用乳化剤として使用することができないことが判明した。
【0009】
本発明は、従来技術における上述したような課題に鑑みなされたものであり、樹脂エマルジョンの重合安定性を十分に確保しつつ、当該樹脂エマルジョンの防錆性を向上させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、驚くべきことに、所定の化学構造を有するイオン結合性塩が、他の防錆剤と併用された際に当該他の防錆剤が有している防錆作用を向上する作用を有していることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の一形態によれば、防錆剤の作用向上剤であって、下記化学式(1):
【0012】
【化1】
【0013】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数2~4のアルケニル基を表し、Aは炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基を表し、mはAOの平均付加モル数を表し1~150の数であり、lは1~3の整数であり、nはQの原子価を表し1または2であり、Qは1価金属カチオン、2価金属カチオンまたは含窒素化合物カチオンを表す、
で表されるイオン結合性塩を含む、作用向上剤が提供される。
【0014】
また、本発明の他の形態によれば、防錆剤の作用を向上する方法であって、上記所定の作用向上剤を防錆剤と併用することを含む方法もまた、提供される。
【0015】
さらに、本発明のさらに他の形態によれば、上記所定の作用向上剤と、重合性モノマーと、溶媒と、を含む、乳化重合用組成物もまた、提供される。
【0016】
また、本発明のさらに他の形態によれば、防錆剤と、上記所定の作用向上剤と、樹脂エマルジョンと、を含む、防錆剤含有エマルジョンもまた、提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、樹脂エマルジョンの重合安定性を十分に確保しつつ、当該樹脂エマルジョンの防錆性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
本発明の一形態は、防錆剤の作用向上剤に関する。ここで、本明細書において、「防錆剤の作用向上剤」とは、他の防錆剤と併用された際に、当該他の防錆剤が有している防錆作用を向上する作用を意味する。また、本明細書では、「防錆剤の作用向上剤」を単に「作用向上剤」とも称する場合がある。そして、ある化合物が「防錆剤の作用向上剤」としての用途を有しているか否かは、当該化合物を他の防錆剤と併用しない場合と比較して、併用した場合に当該他の防錆剤の防錆作用が向上されるか否かを指標として確認することができる。なお、防錆作用の評価試験としては、後述する実施例の欄に記載されている試験が採用されうる。
【0020】
[イオン結合性塩の構造]
本形態に係る作用向上剤は、下記化学式(1):
【0021】
【化2】
【0022】
で表されるイオン結合性塩を含むものである。
【0023】
化学式(1)において、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
【0024】
化学式(1)において、Rは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数2~4のアルケニル基を表す。炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。また、炭素数2~4のアルケニル基としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基が挙げられる。なかでも、Rは好ましくは水素原子、メチル基または1-プロペニル基であり、より好ましくは水素原子またはメチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0025】
化学式(1)において、Aは、炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基を表す。炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基としては、エチレン基、メチルメチレン基、トリメチレン基、1-メチルエチレン基、2-メチルエチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,1-ジメチルジメチレン基、1,2-ジメチルジメチレン基が挙げられる。これらのアルキレン基は酸素原子とともにオキシアルキレン基を形成する。このオキシアルキレン基(AO基)は同一または異種の混合物(ブロックまたはランダム)でもよく、好ましくは、オキシエチレン基単独、オキシプロピレン基単独、またはオキシエチレン基とオキシプロピレン基との混合物(ブロックまたはランダム)であり、より好ましくはオキシエチレン基またはオキシプロピレン基であり、特に好ましくはオキシエチレン基(つまり、Aはエチレン基)である。
【0026】
化学式(1)において、mはAOの平均付加モル数を表し、1~150の数であり、好ましくは5~120の数である。
【0027】
化学式(1)において、lは1~3の整数である。化学式(1)で表されるイオン結合性塩は、通常、lが1である化合物(1モル付加体)と、1が2である化合物(2モル付加体)と、lが3である化合物(3モル付加体)との混合物の形態として存在する。
【0028】
化学式(1)において、nはQの原子価を表し、1または2である。つまり、Qが1価のカチオンであればnは1であり、Qが2価のカチオンであればnは2である。
【0029】
化学式(1)において、Qは1価金属イオン、2価金属イオンまたは含窒素化合物イオンを表す。
【0030】
1価金属カチオンの例としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられる。
【0031】
2価金属カチオンの例としては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられる。
【0032】
含窒素化合物カチオンとしては、アンモニウムイオン(NH )のほか、有機アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピロリニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、トリアゾリウムイオン、トリアジニウムイオン、キノリニウムイオン、イソキノリニウムイオン、インドリニウムイオン、キノキサリニウムイオン、ピペラジニウムイオン、オキサゾリニウムイオン、チアゾリニウムイオンおよびモルホリニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。上記の各イオンは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和結合を有していてもよい。
【0033】
有機アンモニウムイオンの具体的な例としては、以下のようなイオンが挙げられる。例えば、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、モノプロピルアンモニウムイオン、ジプロピルアンモニウムイオン、トリプロピルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、モノブチルアンモニウムイオン、ジブチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、モノペンチルアンモニウムイオン、ジペンチルアンモニウムイオン、トリペンチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、モノヘキシルアンモニウムイオン、ジヘキシルアンモニウムイオン、モノヘプチルアンモニウムイオン、ジヘプチルアンモニウムイオン、モノオクチルアンモニウムイオン、ジオクチルアンモニウムイオン、モノノニルアンモニウムイオン、モノデシルアンモニウムイオン、モノウンデシルアンモニウムイオン、モノドデシルアンモニウムイオン、モノトリデシルアンモニウムイオン、モノテトラデシルアンモニウムイオン、モノペンタデシルアンモニウムイオン、モノヘキサデシルアンモニウムイオン、モノヘプタデシルアンモニウムイオン、モノオクタデシルアンモニウムイオン、モノノナデシルアンモニウムイオン、モノイコシルアンモニウムイオン、モノヘンイコシルアンモニウムイオン、モノドコシルアンモニウムイオン、モノトリコシルアンモニウムイオン、メチル(エチル)アンモニウムイオン、メチル(プロピル)アンモニウムイオン、メチル(ブチル)アンモニウムイオン、メチル(ペンチル)アンモニウムイオン、メチル(ヘキシル)アンモニウムイオン、メチル(ヘプチル)アンモニウムイオン、メチル(オクチル)アンモニウムイオン、メチル(ノニル)アンモニウムイオン、メチル(デシル)アンモニウムイオン、メチル(ウンデシル)アンモニウムイオン、メチル(ドデシル)アンモニウムイオン、メチル(トリデシル)アンモニウムイオン、メチル(テトラデシル)アンモニウムイオン、メチル(ペンタデシル)アンモニウムイオン、メチル(ヘキサデシル)アンモニウムイオン、メチル(ヘプタデシル)アンモニウムイオン、メチル(オクタデシル)アンモニウムイオン、メチル(ノナデシル)アンモニウムイオン、メチル(イコシル)アンモニウムイオン、メチル(ヘンイコシル)アンモニウムイオン、メチル(トリコシル)アンモニウムイオン、エチル(プロピル)アンモニウムイオン、エチル(ブチル)アンモニウムイオン、エチル(ペンチル)アンモニウムイオン、エチル(ヘキシル)アンモニウムイオン、エチル(ヘプチル)アンモニウムイオン、エチル(オクチル)アンモニウムイオン、エチル(ノニル)アンモニウムイオン、エチル(デシル)アンモニウムイオン、エチル(ウンデシル)アンモニウムイオン、エチル(ドデシル)アンモニウムイオン、エチル(トリデシル)アンモニウムイオン、エチル(テトラデシル)アンモニウムイオン、エチル(ペンタデシル)アンモニウムイオン、エチル(ヘキサデシル)アンモニウムイオン、エチル(ヘプタデシル)アンモニウムイオン、エチル(オクタデシル)アンモニウムイオン、エチル(ノナデシル)アンモニウムイオン、エチル(イコシル)アンモニウムイオン、エチル(ヘンイコシル)アンモニウムイオン、エチル(トリコシル)アンモニウムイオン、ジメチル(エチル)アンモニウムイオン、ジメチル(プロピル)アンモニウムイオン、ジメチル(ブチル)アンモニウムイオン、ジメチル(ペンチル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘプチル)アンモニウムイオン、ジメチル(オクチル)アンモニウムイオン、ジメチル(ノニル)アンモニウムイオン、ジメチル(デシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ウンデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ドデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(トリデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(テトラデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ペンタデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘキサデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘプタデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(オクタデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ノナデシル)アンモニウムイオン、ジメチル(イコシル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘンイコシル)アンモニウムイオン、ジメチル(トリコシル)アンモニウムイオン、トリメチル(エチル)アンモニウムイオン、トリメチル(プロピル)アンモニウムイオン、トリメチル(ブチル)アンモニウムイオン、トリメチル(ペンチル)アンモニウムイオン、トリメチル(ヘキシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ヘプチル)アンモニウムイオン、トリメチル(オクチル)アンモニウムイオン、トリメチル(ノニル)アンモニウムイオン、トリメチル(デシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ウンデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ドデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(トリデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(テトラデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ペンタデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ヘキサデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ヘプタデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(オクタデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ノナデシル)アンモニウムイオン、トリメチル(イコシル)アンモニウムイオン、トリメチル(ヘンイコシル)アンモニウムイオン、トリメチル(トリコシル)アンモニウムイオン等のアルキルアンモニウムイオン。
【0034】
モノビニルアンモニウムイオン、ジビニルアンモニウムイオン、トリビニルアンモニウムイオン、モノプロペニルアンモニウムイオン、ジプロペニルアンモニウムイオン、トリプロペニルアンモニウムイオン、モノブテニルアンモニウムイオン、ジブテニルアンモニウムイオン、トリブテニルアンモニウムイオン、モノペンテニルアンモニウムイオン、ジペンテニルアンモニウムイオン、トリペンテニルアンモニウムイオン、モノヘキセニルアンモニウムイオン、ジヘキセニルアンモニウムイオン、モノヘプテニルアンモニウムイオン、ジヘプテニルアンモニウムイオン、モノオクテニルアンモニウムイオン、ジオクテニルアンモニウムイオン、モノノネニルアンモニウムイオン、モノデセニルアンモニウムイオン、モノウンデセニルアンモニウムイオン、モノドデセニルアンモニウムイオン、モノトリデセニルアンモニウムイオン、モノテトラデセニルアンモニウムイオン、モノペンタデセニルアンモニウムイオン、モノヘキサデセニルアンモニウムイオン、モノヘプタデセニルアンモニウムイオン、モノオクタデセニルアンモニウムイオン、モノノナデセニルアンモニウムイオン、モノイコセニルアンモニウムイオン、モノヘンイコセニルアンモニウムイオン、モノドコセニルアンモニウムイオン、モノトリコセニルアンモニウムイオンなどのアルケニルアンモニウムイオン。
【0035】
ジメチル(ビニル)アンモニウムイオン、ジメチル(プロペニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ブテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ペンテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘキセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘプテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(オクテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ノネニル)アンモニウムイオン、ジメチル(デセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ウンデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ドデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(トリデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(テトラデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ペンタデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘキサデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘプタデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(オクタデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ノナデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(イコセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘンイコセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(トリコセニル)アンモニウムイオン、ビス(2-メトキシエチル)モノエチルアンモニウムイオン、トリメチル(ビニル)アンモニウムイオン、ビス(2-メトキシエチル)モノメチルアンモニウムイオンなどのアルキル基およびアルケニル基を有するモノアンモニウムイオン。
【0036】
モノベンジルアンモニウムイオン、(1-フェネチル)アンモニウムイオン、(2-フェネチル)アンモニウムイオン(別名:モノフェネチルアンモニウムイオン)、ジベンジルアンモニウムイオン、ビス(1-フェネチル)アンモニウムイオン、ビス(2-フェネチル)アンモニウムイオン(別名:ジフェネチルアンモニウムイオン)などの芳香族置換アルキルアンモニウムイオン;モノシクロペンチルアンモニウムイオン、ジシクロペンチルアンモニウムイオン、トリシクロペンチルアンモニウムイオン、モノシクロヘキシルアンモニウムイオン、ジシクロヘキシルアンモニウムイオン、モノシクロヘプチルアンモニウムイオン、ジシクロヘプチルアンモニウムイオンなどの炭素数5~16のシクロアルキルアンモニウムイオン;ジメチル(シクロペンチル)アンモニウムイオン、ジメチル(シクロヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチル(シクロヘプチル)アンモニウムイオン等のアルキル基およびシクロアルキル基を有するモノアンモニウムイオン;(メチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、ビス(メチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、(ジメチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、ビス(ジメチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、(エチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、ビス(エチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、(メチルエチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、ビス(メチルエチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、(ジエチルシクロペンチル)アンモニウムイオン、(メチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、ビス(メチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、(ジメチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、ビス(ジメチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、(エチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、ビス(エチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、(メチルエチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、(ジエチルシクロヘキシル)アンモニウムイオン、(メチルシクロヘプチル)アンモニウムイオン、ビス(メチルシクロヘプチル)アンモニウムイオン、(ジメチルシクロヘプチル)アンモニウムイオン、(エチルシクロヘプチル)アンモニウムイオン、(メチルエチルシクロヘプチル)アンモニウムイオン、(ジエチルシクロヘプチル)アンモニウムイオンなどのアルキルシクロアルキルアンモニウムイオン。
【0037】
モノメタノールアンモニウムイオン、ジメタノールアンモニウムイオン、トリメタノールアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、モノ(n-プロパノール)アンモニウムイオン、ジ(n-プロパノール)アンモニウムイオン、トリ(n-プロパノール)アンモニウムイオン、モノイソプロパノールアンモニウムイオン、ジイソプロパノールアンモニウムイオン、トリイソプロパノールアンモニウムイオン、モノブタノールアンモニウムイオン、ジブタノールアンモニウムイオン、トリブタノールアンモニウムイオン、モノペンタノールアンモニウムイオン、ジペンタノールアンモニウムイオン、トリペンタノールアンモニウムイオン、モノヘキサノールアンモニウムイオン、ジヘキサノールアンモニウムイオン、モノヘプタノールアンモニウムイオン、ジヘプタノールアンモニウムイオン、モノオクタノールアンモニウムイオン、モノノナノールアンモニウムイオン、モノデカノールアンモニウムイオン、モノウンデカノールアンモニウムイオン、モノドデカノールアンモニウムイオン、モノトリデカノールアンモニウムイオン、モノテトラデカノールアンモニウムイオン、モノペンタデカノールアンモニウムイオン、モノヘキサデカノールアンモニウムイオン、モノメチルモノエタノールアンモニウムイオン、モノエチルモノエタノールアンモニウムイオン、モノエチルモノプロパノールアンモニウムイオン、モノエチルモノブタノールアンモニウムイオン、モノエチルモノペンタノールアンモニウムイオン、モノプロピルモノエタノールアンモニウムイオン、モノプロピルモノプロパノールアンモニウムイオン、モノプロピルモノブタノールアンモニウムイオン、モノプロピルモノペンタノールアンモニウムイオン、モノブチルモノエタノールアンモニウムイオン、モノブチルモノプロパノールアンモニウムイオン、モノブチルモノブタノールアンモニウムイオン、モノブチルモノペンタノールアンモニウムイオン、ジメチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノプロパノールアンモニウムイオン、ジエチルモノブタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノペンタノールアンモニウムイオン、ジプロピルモノエタノールアンモニウムイオン、ジプロピルモノプロパノールアンモニウムイオン、ジプロピルモノブタノールアンモニウムイオン、ジプロピルモノペンタノールアンモニウムイオン、ジブチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジブチルモノプロパノールアンモニウムイオン、ジブチルモノブタノールアンモニウムイオン、ジブチルモノペンタノールアンモニウムイオン、モノメチルジエタノールアンモニウムイオン、モノメチルジプロパノールアンモニウムイオン、モノメチルジブタノールアンモニウムイオン、モノメチルジペンタノールアンモニウムイオン、モノエチルジエタノールアンモニウムイオン、モノエチルジプロパノールアンモニウムイオン、モノエチルジブタノールアンモニウムイオン、モノエチルジペンタノールアンモニウムイオン、モノプロピルジエタノールアンモニウムイオン、モノプロピルジプロパノールアンモニウムイオン、モノプロピルジブタノールアンモニウムイオン、モノプロピルジペンタノールアンモニウムイオン、モノブチルジエタノールアンモニウムイオン、モノブチルジプロパノールアンモニウムイオン、モノブチルジブタノールアンモニウムイオン、モノブチルジペンタノールアンモニウムイオン、モノシクロヘキシルモノエタノールアンモニウムイオン、モノシクロヘキシルジエタノールアンモニウムイオン、モノシクロヘキシルモノプロパノールアンモニウムイオン、モノシクロヘキシルジプロパノールアンモニウムイオン、モノ(β-アミノエチル)モノエタノールアンモニウムイオン、モノtert-ブチルモノエタノールアンモニウムイオン、モノtert-ブチルジエタノールアンモニウムイオン、モノ(β-アミノエチル)イソプロパノールアンモニウムイオンジエチルモノイソプロパノールアンモニウムイオン、トリメチルモノエタノールアンモニウムイオン、トリエチルモノエタノールアンモニウムイオン、トリエチルモノプロパノールアンモニウムイオン、トリエチルモノブタノールアンモニウムイオン、トリエチルモノペンタノールアンモニウムイオン、トリプロピルモノエタノールアンモニウムイオン、トリプロピルモノプロパノールアンモニウムイオン、トリプロピルモノブタノールアンモニウムイオン、トリプロピルモノペンタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノメチルエタノールアンモニウムイオン、ビス(2-メトキシエチル)モノエチルモノメチルアンモニウムイオン、モノエチルモノメチルジエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノメチルモノエタノールアンモニウムイオンなどのアルカノールアンモニウムイオン。入手容易性の観点から、モノエチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノメチルエタノールアンモニウムイオン、ビス(2-メトキシエチル)モノエチルアンモニウムイオン、ビス(2-メトキシエチル)モノエチルモノメチルアンモニウムイオン、モノエチルジエタノールアンモニウムイオン、モノエチルモノメチルジエタノールアンモニウムイオンが好ましく、モノエチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノエタノールアンモニウムイオン、ジエチルモノメチルモノエタノールアンモニウムイオンが特に好ましい。
【0038】
また、ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、1-(アクリルアミドエチル)トリメチルアンモニウムイオン、1-(メタクリルアミドエチル)トリメチルアンモニウムイオン、1-(アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムイオン、1-(メタクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムイオン、1-(アクリルアミドエチル)ジメチルアンモニウムイオン、1-(メタクリルアミドエチル)ジメチルアンモニウムイオン、1-(アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニウムイオン、1-(メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルモノ(2-イソシアノエチル)アンモニウムイオン、ジエチルモノ(2-シアノプロピル)アンモニウムイオン、ジエチルモノ(1,2-エポキシプロパン)アンモニウムイオンなどの反応性を有する有機アンモニウムイオンも好ましく用いられる。
【0039】
なお、上記のアンモニウムイオンにおいて、N上の置換基であることを示す「N-」や「N,N-」などの記載は省略する。
【0040】
イミダゾリウムイオンの具体的な例としては、例えば、イミダゾリウムイオン、N-イソブチルイミダゾリウムイオン、2-メチルイミダゾリウムイオン、2-エチルイミダゾリウムイオン、2-n-プロピルイミダゾリウムイオン、2-イソプロピルイミダゾリウムイオン、2-n-ブチルイミダゾリウムイオン、2-フェニルイミダゾリウムイオン、4-メチルイミダゾリウムイオン、4-エチルイミダゾリウムイオン、4-ニトロイミダゾリウムイオン、4-フェニルイミダゾリウムイオン、2-メチル-4-フェニルイミダゾリウムイオン、4,5-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-イソブチル-2-メチルイミダゾリウムイオン、1-イソブチル-2,3-メチルイミダゾリウムイオン、2,4,5-トリメチルイミダゾリウムイオン、2,4,5-トリフェニルイミダゾリウムイオン、ベンズイミダゾリウムイオン、2-メチルベンズイミダゾリウムイオン、2-フェニルベンズイミダゾリウムイオンなどが挙げられる。入手容易性の観点から、1-イソブチル-2-メチルイミダゾリウムイオン、1-イソブチル-2,3-メチルイミダゾリウムイオンが特に好ましい。
【0041】
ピリジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、ピリジニウムイオン、2-イソブチルピリジニウムイオン、3-イソブチルピリジニウムイオン、3-メチルピリジニウムイオン、4-メチルピリジニウムイオン、2-エチルピリジニウムイオン、3-エチルピリジニウムイオン、4-エチルピリジニウムイオン、4-プロピルピリジニウムイオン、2-n-ヘキシルピリジニウムイオン、3-n-ヘキシルピリジニウムイオン、3,5-ジメチルピリジニウムイオン、3,5-ジエチルピリジニウムイオン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジニウムイオン、2-ベンジルピリジニウムイオン、4-ベンジルピリジニウムイオン、2-フェニルピリジニウムイオン、3-フェニルピリジニウムイオン、4-フェニルピリジニウムイオン、2,6-ジフェニルピリジニウムイオン、2-(3-フェニルプロピル)ピリジニウムイオン、4-(3-フェニルプロピル)ピリジニウムイオン、2-ベンゾイルピリジニウムイオン、3-ベンゾイルピリジニウムイオン、4-ベンゾイルピリジニウムイオン、2-メトキシピリジニウムイオン、2-n-ブトキシピリジニウムイオン、2,6-ジメトキシピリジニウムイオン、2-メトキシ-6-メチルピリジニウムイオン、4-メトキシ-3-ニトロピリジニウムイオン、3-エトキシ-2-ニトロピリジニウムイオン、2-メトキシ-3-ニトロピリジニウムイオン、4-(4-ニトロベンジル)ピリジニウムイオン、2-ビニルピリジニウムイオン、4-ビニルピリジニウムイオン、2-ヒドロキシピリジニウムイオン、3-ヒドロキシピリジニウムイオン、4-ヒドロキシピリジニウムイオン、2,4-ジヒドロキシピリジニウムイオン、2,6-ジヒドロキシピリジニウムイオン、3-ヒドロキシメチルピリジニウムイオン、4-ヒドロキシメチルピリジニウムイオン、2-(2-ヒドロキシエチル)ピリジニウムイオン、2-ヒドロキシ-6-メチルピリジニウムイオン、3-ヒドロキシ-2-メチルピリジニウムイオン、5-ヒドロキシ-2-メチルピリジニウムイオン、2-ヒドロキシ-3-ニトロピリジニウムイオン、2-ヒドロキシ-5-ニトロピリジニウムイオン、4-ヒドロキシ-3-ニトロピリジニウムイオン、3-ヒドロキシ-2-ニトロピリジニウムイオン、2-ヒドロキシ-6-メチル-5-ニトロピリジニウムイオン、2-エテニルピリジニウムイオン、2-エチニルピリジニウムイオン、2-メチル-5-エチルピリジニウムイオン、4-エチル-2-メチルピリジニウムイオン、5-ブチル-2-メチルピリジニウムイオン、2-エチル-6-イソプロピルピリジニウムイオン、3-エチル-4-メチルピリジニウムイオン、2-メチル-5-ビニルピリジニウムイオン、4-(フェニルプロピル)ピリジニウムイオン、4-(1-ピペリジル)ピリジニウムイオン、4-ピロリジノピリジニウムイオン、2-ピロリジン-2-イルピリジニウムイオン、4-フェノキシピリジニウムイオン、2-メチル-3-エチルピリジニウムイオン、2-メチル-5-(イソ)プロピルピリジニウムイオン、2-アセチルピリジニウムイオン、3-アセチルピリジニウムイオン、4-アセチルピリジニウムイオン、2-メチル-5-アセチルピリジニウムイオン、2,6-ジアセチルピリジニウムイオン、2-フェノキシ-5-アセチルピリジニウムイオン、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)ピリジニウムイオン、2,2’-ビピリジニウムイオン、2,6-ビス(p-トリル)ピリジニウムイオン、N-Boc-3-ヒドロキシ-1,2,3,6-テトラヒドロピリジニウムイオン、N-Boc-1,2,3,6-テトラヒドロピリジニウムイオンなどが挙げられる。
【0042】
ピロリジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、ピロリジニウムイオン、N-メチルピロリジニウムイオン、N-エチルピロリジニウムイオン、N-プロピルピロリジニウムイオン、N-ブチルピロリジニウムイオン、N-フェニルピロリジニウムイオン、N-ニトロソピロリジニウムイオン、2-メチルピロリジニウムイオン、2-フェニルピロリジニウムイオン、3-フェニルピロリジニウムイオン、3-ヒドロキシ-1-メチルピロリジニウムイオン、3-(4-メチルフェニル)ピロリジニウムイオン、3-(ピロリジニウム-1-イルメチル)ピペリジン、2-ピロリジニウム-2-イルピリジンなどが挙げられる。
【0043】
ピロリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、ピロリニウムイオン、N-メチルピロリニウムイオン、2-アセチル-5-メチルピロリニウムイオン、ピロリニウム-1-カルボン酸メチル、2-アセチルピロリニウムイオン、3-アセチルピロリニウムイオン、2,5-ジメチル-1-(4-ニトロフェニル)-1H-ピロリニウムイオン、1-フルフリルピロリニウムイオン、1-(2-ニトロフェニル)ピロリニウムイオン、1,2,5-トリメチルピロリニウムイオン、2,4-ジメチルピロリニウム-3,5-ジカルボン酸ジエチル、4-メチルピロリニウム-3-カルボン酸エチル、4-フェニルピロリニウム-3-カルボン酸エチル、3,4,5-トリメチルピロリニウム-2-カルボン酸エチル、2,5-ジメチルピロリニウム-3-カルボン酸メチル、1,2,5-トリメチル-1H-ピロリニウム-3-カルボン酸メチル、N-トリメトキシシリルピロリニウムイオン、N-トリエトキシシリルピロリニウムイオン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)ピロリニウムイオン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)ピロリニウムイオンなどが挙げられる。
【0044】
ピペリジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、2,6-ジメチルピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-ピペリドニイウムイオン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジニウムイオン、2,2-6-6-テトラメチル-4-アセトキシピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-アセトアミドピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-オキソピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-メトキシピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-プロポキシピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-(2-ヒドロキシ-4-オキサペントキシ)ピペリジニウムイオン、2,2,6,6-テトラメチル-4-メタクリレートピペリジニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-メタクリレートピペリジニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-オキシカルボニル-2-プロペンピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-シクロペンチル-2-フェニルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-(2-シクロプロピル-2-フェニルプロパノイル)オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-(2-シクロペンチル-2-ピリジン-3-イルプロパノイル)オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-シクロペンチル-2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-(2-シクロブチル-2-フェニルプロパノイル)オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-シクロペンチル-2-(4-メトキシフェニル)プロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-シクロペンチル-2-(2-チエニル)プロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-シクロペンチル-2-(5-メチル-2-チエニル)プロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(3-ブロモフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(4-ブロモフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(4-シアノフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(3-シアノフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(3-メチルチオフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(4-メチルチオフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(4-メチルスルホニルフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(3-メチルスルホニルフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(4-フルオロフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(4-クロロフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、1,3-ジメチル-4-[2-(3-フルオロフェニル)-2-シクロペンチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオン、および1,3-ジメチル-4-[2-(5-クロロ-2-チエニル)-2-シクロブチルプロパノイル]オキシピペリジニウムイオンなどが挙げられる。
【0045】
ピラジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、ピラジニウムイオン、ピラジニウムカルボン酸メチル、ピラジニウム-2-カルボニトリル、ピラジニウムカルボキサミド、2-アセチル-3-エチルピラジニウムイオン、2-アセチル-3-メチルピラジニウムイオン、2-アセチルピラジニウムイオン、2-(アミノメチル)-5-メチルピラジニウムイオン、2-アミノ-3-(フェニルメチル)ピラジニウムイオン、2,3-ビス(2’-ピリジル)-5,6-ジヒドロピラジニウムイオン、2-シアノピラジニウムイオン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジニウムイオン、2,3-ジエチルピラジニウムイオン、6,7-ジヒドロ-5-メチル-5H-シクロペンタピラジニウムイオン、3,5-ジメチル-2-エチルピラジニウムイオン、2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジニウムイオン、2,3-ジメチルピラジニウムイオン、2,5-ジメチルピラジニウムイオン、2,6-ジメチルピラジニウムイオン、2,3-ジフェニルピラジニウムイオン、2-エトキシ-3-エチルピラジニウムイオン、2-エトキシ-3-メチルピラジニウムイオン、2-エトキシピラジニウムイオン、5-エチル-2,3-ジメチルピラジニウムイオン、2-エチル-3-メトキシピラジニウムイオン、2-エチル-3-メチルピラジニウムイオン、エチルピラジニウムイオン、2-フルフリルチオピラジニウムイオン、5-イソブチル-2,3-ジメチルピラジニウムイオン、2-イソブチル-3-メトキシピラジニウムイオン、2-イソプロピルピラジニウムイオン、2-(2-メルカプトエチル)ピラジニウムイオン、2-メトキシ-3-エチルピラジニウムイオン、2-メトキシ-3-(1-メチルプロピル)ピラジニウムイオン、2-メトキシピラジニウムイオン、5-メチル-6,7-ジヒドロシクロペンタピラジニウムイオン、2-メチルメルカプト-3-メチルピラジニウムイオン、2-メチル-3-(メチルチオ)ピラジニウムイオン、2-メチル-3-n-プロピルピラジニウムイオン、2-メチルピラジニウムイオン、2-(メチルチオ)-3-エチルピラジニウムイオン、2-(メチルチオ)ピラジニウムイオン、2-プロピルピラジニウムイオン、2-(1H-ピラゾール-4-イル)ピラジニウムイオン、2,3,5,6-テトラメチルピラジニウムイオン、2,3,5-トリメチルピラジニウムイオン、2-ビニルピラジニウムイオンなどが挙げられる。
【0046】
ピリミジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、ピリミジニウムイオン、4-メチルピリミジニウムイオン、4-ヒドロキシピリミジニウムイオン、4,6-ジメチルピリミジニウムイオン、4,6-ジヒドロキシピリミジニウムイオン、2,4,5-トリヒドロキシピリミジニウムイオン、4,6-ジヒドロキシ-2-メチルピリミジニウムイオン、4,6-ジヒドロキシ-5-ニトロピリミジニウムイオン、2,4-ジメチル-6-ヒドロキシピリミジニウムイオン、4,6-ジメチル-2-ヒドロキシピリミジニウムイオン、2-[4-n-(ヘキシルオキシ)フェニル]-5-n-オクチルピリミジニウムイオン、4-ヒドロキシピラゾロ[3,4-d]-ピリミジニウムイオン、4,6-ジヒドロキシピラゾロ[3,4-d]ピリミジニウムイオンなどが挙げられる。
【0047】
トリアゾリウムイオンの具体的な例としては、例えば、1,2,3-トリアゾリウムイオン、1,2,4-トリアゾリウムイオン、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾリウムイオン、3-ヒドロキシ-1,2,4-トリアゾリウムイオン、3-メチル-1,2,4-トリアゾリウムイオン、1-メチル-1,2,4-トリアゾリウムイオン、1-メチル-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾリウムイオン、4-メチル-1,2,3-トリアゾリウムイオン、ベンゾトリアゾリウムイオン、トリルトリアゾリウムイオン、1-ヒドロキシベンゾトリアゾリウムイオン、4,5,6,7-テトラヒドロトリアゾリウムイオン、3-アミノ-1,2,4-トリアゾリウムイオン、3-アミノ-5-メチル-1,2,4-トリアゾリウムイオン、カルボキシベンゾトリアゾリウムイオン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾリウムイオン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾリウムイオン、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾリウムイオン、2-(2’-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾリウムイオンなどが挙げられる。
【0048】
トリアジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、1,2,3-トリアジニウムイオン、1,2,4-トリアジニウムイオン、1,3,5-トリアジニウムイオン、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジニウムイオン、3-(2-ピリジル)-5,6-ジフェニル-1,2,4-トリアジニウムイオン、5,6-ジフェニル-1,2,4-トリアジニウムイオン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリエチル-s-トリアジニウムイオン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリフェニル-1,3,5-トリアジニウムイオン、2-(4-ピリジニル)-1,3,5-トリアジニウムイオン、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジニウムイオン、2,4,6-トリフェニル-s-トリアジニウムイオン、2,4,6-トリ(2-ピリジル)-s-トリアジニウムイオン、2,4,6-トリス(アリルオキシ)-1,3,5-トリアジニウムイオン、1,3,5-トリス(4-ピリジル)-2,4,6-トリアジニウムイオン、2,4,6-トリス(2-ピリジル)-1,3,5-トリアジニウムイオン、1-(1,3,5-トリアジニウム-2-イル)ピペラジン、2,4,6-トリピリジル-s-トリアジニウムイオン、2,4,6-トリス(アリルオキシ)-1,3,5-トリアジニウムイオンなどが挙げられる。
【0049】
キノリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、キノリニウムイオン、2-メチルキノリニウムイオン、3-メチルキノリニウムイオン、4-メチルキノリニウムイオン、8-メチルキノリニウムイオン、2,8-ジメチルキノリニウムイオン、3,8-ジメチルキノリニウムイオン、4,8-ジメチルキノリニウムイオン、7-メチルキノリニウムイオン、2,7-ジメチルキノリニウムイオン、3,7-ジメチルキノリニウムイオン、4,7-ジメチルキノリニウムイオン、6-メチルキノリニウムイオン、2,6-ジメチルキノリニウムイオン、3,6-ジメチルキノリニウムイオン、4,6-ジメチルキノリニウムイオン、8-エチルキノリニウムイオン、2-メチル-8-エチルキノリニウムイオン、4-メチル-8-エチルキノリニウムイオン、7-イソプロピル-2-メチルキノリニウムイオン、6-tert-ブチル-4-メチルキノリニウムイオンなどが挙げられる。
【0050】
イソキノリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、イソキノリニウムイオン、3-メチルイソキノリニウムイオン、4-メチルイソキノリニウムイオン、5-メチルイソキノリニウムイオン、6-メチルイソキノリニウムイオン、7-メチルイソキノリニウムイオン、8-メチルイソキノリニウムイオン、1,3-ジメチルイソキノリニウムイオン、5,8-ジメチルイソキノリニウムイオン、5,6,7,8-テトラメチルイソキノリニウムイオン、3-tert-ブチルイソキノリニウムイオン、4-tert-ブチルイソキノリニウムイオン、6-tert-ブチルイソキノリニウムイオン、7-tert-ブチルイソキノリニウムイオンなどが挙げられる。
【0051】
インドリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、インドリニウムイオン、3-メチルインドリニウムイオン、2-メチルインドリニウムイオン、1-メチル-3-メチルインドリニウムイオン、2,3-ジメチルインドリニウムイオン、3-エチルインドリニウムイオン、2-フェニルインドリニウムイオン、3-フェニルインドリニウムイオン、2,3-フェニルインドリニウムイオン、2,3-ジメチル-7-ニトロインドリニウムイオン、2,3-ジメチル-7-クロロインドリニウムイオン、3-エチル-7-メチルインドリニウムイオン、2,3-ジメチル-7-メトキシメチルインドリニウムイオン、7-メトキシメチル-3-メチルインドリニウムイオン、3-(ピリジン-2-イル)インドリウニムイオン、3-(ピリジン-2-イル)-2-メチルインドリニウムイオン、3-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)-2-メチルインドリニウムイオン、3-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)-7-エチル-2-メチルインドリニウムイオン、3-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)-7-メトキシメチル-2-メチルインドリニウムイオン、3-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)-2-ブトキシメチルインドリニウムイオン、3-(4,6-ジエトキシピリミジン-2-イル)-7-メトキシメチルインドリニウムイオンなどが挙げられる。
【0052】
キノキサリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、キノキサリニウムイオン、2-メチルキノキサリニウムイオン、2,3-ジメチルキノキサリニウムイオンなどが挙げられる。
【0053】
ピペラジニウムイオンの具体的な例としては、例えば、ピペラジニウムイオン、N-メチルピペラジニウムイオン、N-エチルピペラジニウムイオン、N-(イソ)プロピルピペラジニウムイオン、N-ブチルピペラジニウムイオン、N-フェニルピペラジニウムイオン、2-メチルピペラジニウムイオン、2,5-ジメチルピペラジニウムイオン、2,6-ジメチルピペラジニウムイオン、1,4-ジフェニルピペラジニウムイオン、1-アセチルピペラジニウムイオン、1-アリルピペラジニウムイオン、1-(2-メチルアリル)ピペラジニウムイオン、1-(1-メチルブチル)ピペラジニウムイオン、1-ベンゾイルピペラジニウムイオン、1-シクロペンチルピペラジニウムイオン、1-ホルミルピペラジニウムイオン、1-フェネチルピペラジニウムイオン、1-(4-ピリジル)ピペラジニウムイオン、1-(2-ピロリジノエチル)ピペラジニウムイオン、1-(o-トリル)ピペラジニウムイオン、1,4-ジエチルピペラジニウムイオン、1,4-ジホルミルピペラジニウムイオン、1-(1,3-ジメチルブチル)ピペラジニウムイオン、1-(2,3-ジメチルフェニル)ピペラジニウムイオン、1-(2,6-ジメチルフェニル)ピペラジニウムイオン、1-(3,4-ジメチルフェニル)ピペラジニウムイオン、N,N’-ジメチルピペラジニウムイオン、1-(2-エトキシエチル)ピペラジニウムイオン、1-(2-エトキシフェニル)ピペラジニウムイオン、1-(2-メトキシエチル)ピペラジニウムイオン、1-(2-メトキシフェニル)ピペラジニウムイオン、1-(3-メトキシフェニル)ピペラジニウムイオン、1-(4-メトキシベンジル)ピペラジニウムイオン、1-(4-メトキシベンゾイル)ピペラジニウムイオン、1-[2-(フェノキシ)エチル]ピペラジニウムイオン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジニウムイオン、N-(4-ヒドロキシフェニル)ピペラジニウムイオン、1-(2-ヒドロキシエチル)-4-イソプロピルピペラジニウムイオン、N-4-ベンジル-2-フェニルピペラジニウムイオン、1-ベンジル-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(3-ビフェニリル)ピペラジニウムイオン、1-(4-ビフェニリル)ピペラジニウムイオン、1-シクロヘキシル-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(2,3-ジメチルフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(2,4-ジメチルフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(2,5-ジメチルフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-エチル-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(1-エチルプロピル)ピペラジニウムイオン、1-(2-メトキシフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(2-メトキシフェニル)-4-(ピペリジン-4-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(3-メトキシフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(3-メトキシフェニル)-4-(ピペリジン-4-イルメチル)ピペラジニウムイオン、2-メチル-1-(3-メチルフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、2-メチル-1-(3-メチルフェニル)-4-(ピペリジン-4-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-[(1-メチルピペリジン-3-イル)メチル]ピペラジニウムイオン、1-メチル-4-(ピペリジン-3-イルメチル)ピペラジニウムイオン、1-(3-メチルピリジン-2-イル)ピペラジニウムイオン、1-(ピペリジン-3-イルメチル)-4-プロピルピペラジニウムイオン、1-(ピペリジン-4-イルメチル)-4-プロピルピペラジニウムイオン、1-アセチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)ピペラジニウムイオンなどが挙げられる。
【0054】
オキサゾリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、オキサゾリニウムイオン、4-メチルオキサゾリニウムイオン、5-メチルオキサゾリニウムイオン、4-フェニルオキサゾリニウムイオン、4,5-ジフェニルオキサゾリニウムイオン、4-エチルオキサゾリニウムイオン、4,5-ジメチルオキサゾリニウムイオン、5-フェニルオキサゾリニウムイオン、ベンゾオキサゾリニウムイオン、5-クロロベンゾオキサゾリニウムイオン、5-メチルベンゾオキサゾリニウムイオン、5-フェニルベンゾオキサゾリニウムイオン、6-メチルベンゾオキサゾリニウムイオン、5,6-ジメチルベンゾオキサゾリニウムイオン、4,6-ジメチルベンゾオキサゾリニウムイオン、6-メトキシベンゾオキサゾリニウムイオン、5-メトキシベンゾオキサゾリニウムイオン、4-エトキシベンゾオキサゾリニウムイオン、5-クロロベンゾオキサゾリニウムイオン、6-メトキシベンゾオキサゾリニウムイオン、5-ヒドロキシベンゾオキサゾリニウムイオン、6-ヒドロキシベンゾオキサゾリニウムイオン、ナフト[1,2]オキサゾリニウムイオン、ナフト[2,1]オキサゾリニウムイオンなどが挙げられる。
【0055】
チアゾリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、チアゾリニウムイオン、2-アミノチアゾリニウムイオン、2-メチルチアゾリニウムイオン、2-メトキシチアゾリニウムイオン、2-エトキシチアゾリニウムイオン、2-イソブチルチアゾリニウムイオン、2-トリメチルシリルチアゾリニウムイオン、5-トリメチルシリルチアゾリニウムイオン、4-メチルチアゾリニウムイオン、4,5-ジメチルチアゾリニウムイオン、2-エチルチアゾリニウムイオン、2,4-ジメチルチアゾリニウムイオン、2-アミノ-5-メチルチアゾリニウムイオン、2-アミノ-4-メチルチアゾリニウムイオン、2,4,5-トリメチルチアゾリニウムイオン、ベンゾチアゾリニウムイオン、2-メチルベンゾチアゾリニウムイオン、2,5-ジメチルベンゾチアゾリニウムイオンなどが挙げられる。
【0056】
モルホリニウムイオンの具体的な例としては、例えば、モルホリニウムイオン、N-メチルモルホリニウムイオン、N-エチルモルホリニウムイオン、N-(イソ)プロピルモルホリニウムイオン、N-(イソ)ブチルモルホリニウムイオン、N-アセチルモルホリニウムイオン、N-(2-ニトロブチル)モルホリニウムイオン、N-フェニルモルホリニウムイオン、4-モルホリノアセトフェノン、N-(メタ)アクリルモルホリニウムイオン、N-(メタ)アクリロイルモルホリニウムイオン、ビス(2-モルホリニウムエチル)エーテル、4-モルホリニウムニトロベンゼン、ジモルホリニウムメタン、アセトアセトモルホリド、4-tert-ブチル-2-(フェノキシメチル)モルホリニウムイオン、2,6-ジメチルモルホリニウムイオン、4-(2,3-エポキシプロピル)モルホリニウムイオン、N-ホルミルモルホリニウムイオン、N-(2-ヒドロキシエチル)モルホリニウムイオン、N-(4-ニトロフェニル)モルホリニウムイオン、N-ノナノイルモルホリニウムイオンなどが挙げられる。入手容易性の観点から、N-メチルモルホリニウムイオン、N-エチルモルホリニウムイオンが特に好ましい。
【0057】
本発明において、Qは、含窒素化合物カチオンであることが好ましく、有機アンモニウムイオンであることがより好ましく、エチレン性不飽和結合を有する有機アンモニウムイオンであることがより好ましい。Qは、より好ましくは、N,N-ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノ(2-イソシアノエチル)アンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノ(2-シアノプロピル)アンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノ(1,2-エポキシプロパン)アンモニウムイオンである。Qは、さらにより好ましくは、N,N-ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオンである。Qは、特に好ましくは、N,N-ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオンである。
【0058】
がエチレン性不飽和結合を有する場合、本発明のイオン結合性塩が有するエチレン性不飽和結合の数は、特に制限されず、用途により任意に選択できるが、好ましくは1つである。
【0059】
上述したような化学式(1)で表されるイオン結合性塩の例としては、以下の化合物が挙げられる(いずれも、lが1~3の混合物として例示される)。
【0060】
1)ポリオキシエチレン(7)[スチレン化(メチルフェニルエーテル)]硫酸エステルアンモニウム塩(化合物(A))
2)ポリオキシプロピレン(8)[スチレン化(メチルフェニルエーテル)]硫酸エステルアンモニウム塩(化合物(B))
3)ポリオキシエチレン(30)[スチレン化(メチルフェニルエーテル)]硫酸エステルアンモニウム塩(化合物(C))
4)ポリオキシエチレン(7)[スチレン化(フェニルエーテル)]硫酸エステルアンモニウム塩(化合物(D))
5)ポリオキシプロピレン(8)[スチレン化(フェニルエーテル)]硫酸エステルアンモニウム塩(化合物(E))
6)ポリオキシエチレン(30)[スチレン化(フェニルエーテル)]硫酸エステルアンモニウム塩(化合物(F))
7)ポリオキシエチレン(12)[スチレン化(メチルフェニルエーテル)]硫酸エステルジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウム塩(化合物(G))
8)ポリオキシエチレン(12)[スチレン化(メチルフェニルエーテル)]硫酸エステルアンモニウム塩(化合物(H))
9)ポリオキシエチレン(12)[スチレン化(メチルフェニルエーテル)]硫酸エステルナトリウム塩(化合物(I))
10)ポリオキシエチレン(12)[スチレン化(フェニルエーテル)]硫酸エステルアンモニウム塩(化合物(J))
11)ポリオキシエチレン(12)[スチレン化(ブチルフェニルエーテル)]硫酸エステルナトリウム塩(化合物(K))
12)ポリオキシエチレン(10)[メチルスチレン化(メチルフェニルエーテル)]硫酸エステルナトリウム塩(化合物(L))
13)ポリオキシプロピレン(20)[メチルスチレン化(メチルフェニルエーテル)]硫酸エステルナトリウム塩(化合物(M))
14)[ポリオキシプロピレン(5)ポリオキシエチレン(6)]ランダム[スチレン化(メチルフェニルエーテル)]硫酸エステルアンモニウム塩(化合物(N))
15)[ポリオキシプロピレン(10)ポリオキシエチレン(20)]ブロック[スチレン化メチルフェニルエーテル)]硫酸エステルナトリウム塩(化合物(O))。
【0061】
上記記載例において、例えばポリオキシエチレン(7)はオキシエチレン基が平均7モル付加していることを示し、ポリオキシプロピレン(8)はオキシプロピレン基が平均8モル付加していることを示し、他はこれに準ずる。
【0062】
化学式(1)で表される化合物(イオン結合性塩)は、炭素数1~4のアルキル基または炭素数2~4のアルケニル基(Rに対応)で置換されていてもよいフェノール化合物に、常法に従って、スチレンまたはメチルスチレンを反応させて得られるスチレン化アルキルフェノール誘導体を出発物質として、それ自体公知の方法に従って製造される。
【0063】
具体的には、まず、上記手法により得られるスチレン化アルキルフェノール誘導体のフェノール性水酸基に、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの塩基触媒の存在下でアルキレンオキシドの所望のモル数を付加する。次いで、無水硫酸、クロロスルホン酸、スルファミン酸、硫酸等の硫酸化剤を用いて硫酸エステル化し、この硫酸エステル化体を塩基を用いて中和することによりカチオン(Q)との塩に変換して、化学式(1)で表される化合物(イオン結合性塩)を得ることができる。
【0064】
[イオン結合性塩の用途]
本発明において、化学式(1)で表される化合物(イオン結合性塩)は、上述したように、防錆剤の作用向上剤として用いられる。すなわち、本発明の他の形態によれば、防錆剤の作用を向上する方法であって、上記所定の作用向上剤を防錆剤と併用することを含む方法もまた、提供される。
【0065】
(防錆剤)
本発明において、化学式(1)で表される化合物(イオン結合性塩)によって防錆作用を向上される防錆剤の具体的な形態について特に制限はなく、従来公知の任意の防錆剤が採用されうる。防錆剤としては、例えば、亜鉛系防錆剤、含窒素化合物系防錆剤などが挙げられる。
【0066】
亜鉛系防錆剤としては、亜鉛、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛カルシウム、亜リン酸亜鉛ストロンチウム、ポリリン酸亜鉛シアナミド亜鉛、シアナミド亜鉛カルシウム、またはそれらの水和物が挙げられる。
【0067】
含窒素化合物系防錆剤としては、炭素数1~24のアルキル基を有するアルキルアミン、これらのエチレンオキシド(1~20モル)付加物、およびポリアルキルアミン等のアルキルアミン系;アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルアリールスルホネート、石油スルホネート等のスルホネートのアミン塩;ラウロイルサルコシン、オレオイルサルコシン等のアシルサルコシン系;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン系;6~24の炭素原子から構成される環状アミンのエチレンオキシド(1~20モル)付加物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びテトラエチレンペンタミン等の窒素原子が2個以上のアミンおよびそのエチレンオキシド(1~60モル)付加物;イミダゾール、メチルイミダゾール、エチルメチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、アミノベンゾイミダゾール、フェニルベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、トリフェニルイミダゾール、イミダゾリン等のイミダゾール系;ポリエーテルアミン、アルケニルコハク酸等が挙げられる。
【0068】
これらの他にも、特許文献4に開示されているようなリン酸エステル構造を有する防錆剤などのリン酸系防錆剤、グルコン酸塩および/またはヘプトグルコン酸塩と糖類化合物との混合物、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、ケイ酸塩類、亜硝酸塩類、クロム酸塩類、オキシ酸類などが用いられてもよい。
【0069】
本発明に係る作用向上剤は、上述したものに代表されるような他の防錆剤と併用されることで、当該他の防錆剤が有している防錆作用を向上するものであるが、本発明に係る作用向上剤と他の防錆剤との併用の具体的な形態について特に制限はなく、上記他の防錆剤が防錆作用を発揮するために添加される環境に対して、本発明に係る作用向上剤が併存するように添加されていれば、本発明の作用効果は発現しうるものと考えられる。以下では、本発明における好ましい実施形態として、防錆剤が樹脂エマルジョンに添加されて防錆作用を発揮する場合における、本発明に係る作用向上剤の使用形態について説明する。
【0070】
ここで、本発明に係る作用向上剤は、乳化重合用乳化剤として、優れた乳化性能を発揮できるという性質を有している。このため、本発明に係る作用向上剤(イオン結合性塩)を乳化重合用の乳化剤として用いて乳化重合を行うことによって、きわめて優れた重合安定性が達成されうる。ただし、本発明に係る作用向上剤の使用形態はこれに限定されず、別途得られた樹脂エマルジョンに防錆剤とともに添加されるという使用形態も採用されうる。すなわち、上述したような樹脂エマルジョンの実施形態において、本発明に係る作用向上剤の使用形態は、以下の2つに大別される。
【0071】
(1)本発明に係る作用向上剤を乳化重合用乳化剤として用いて重合性モノマーを乳化重合し、得られた樹脂エマルジョンに防錆剤を添加して防錆剤含有エマルジョンとする形態;
(2)本発明に係る作用向上剤以外の乳化重合用乳化剤を用いて重合性モノマーを乳化重合し、得られた樹脂エマルジョンに防錆剤および本発明に係る作用向上剤を添加して防錆剤含有エマルジョンとする形態。
【0072】
これらのうち、まず(1)の形態について説明すると、(1)の形態では、まず、本発明に係る作用向上剤と、重合性モノマーと、溶媒と、を含む、乳化重合用組成物を調製する。ここで、本発明において乳化重合用乳化剤を用いて乳化重合されうる単量体(重合性モノマー)について特に制限はなく、従来公知の重合性モノマーが用いられうるが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル類;臭化ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸、プロピオン酸、第三級合成飽和カルボン酸等の脂肪酸類のビニルエステル類:スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル類:エチレン、ブタジエンなどのモノオレフィンまたは共役ジオレフィン類:アクリロニトリルなどのシアン化ビニル類:アクリルアミドなどのα,β-不飽和アミド類:アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのα,β-不飽和カルボン酸類が挙げられる。
【0073】
重合開始剤としては、通常乳化重合用に使用される開始剤を特に限定することなく使用でき、例えばカリウム、ナトリウム、アンモニウムの過硫酸塩または過ホウ酸塩、過酸化水素などの無機過酸化物;過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルパーオキシド、過酢酸などの有機過酸化物;2,2-アゾビスイソブチロニトリル、4-アゾビス-(4-シアノペンタノイック)酸またはそのアルカリ金属塩などのラジカル生成重合開始剤を使用することができ、その使用量は好ましくは0.01~3.0質量%、より好ましくは0.1~2.0質量%、さらに好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0074】
また、重合開始剤として過酸化物を使用する場合に必要があれば、当該過酸化物とアスコルビン酸、可溶性亜硫酸塩、ハイドロサルファイト、チオ硫酸塩などの還元剤とを併用することができ、また水中で重金属イオンを発生する金属単量体または硫酸第一鉄などの水中で金属イオンを発生する金属化合物とを組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用することもできる。
【0075】
また、連鎖移動剤も併用することができ、そのようなものとして例えばt-ドデシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、四塩化炭素、クロロホルム、トリフェニルメタンなどを使用することができる。
【0076】
さらにまた、乳化重合技術において慣用の添加剤、例えばキレート化剤、緩衝剤、有機酸の塩などを使用することができる。
【0077】
溶媒としては、水のほか、アルコール、グリコール、グリコールエーテルなどの有機溶媒が用いられうるが、好ましくは水が溶媒として用いられる。
【0078】
(1)の形態において、乳化重合用組成物における本発明に係る作用向上剤の使用量は、樹脂エマルジョン(防錆剤および作用向上剤を含まない)100質量%に対して、好ましくは0.5~10質量%であり、より好ましくは1~7質量%であり、さらに好ましくは2~5質量%である。なお、(1)の形態において、化学式(1)で表される作用向上剤(イオン結合性塩)単独でも充分に乳化重合用乳化剤としての機能を発揮することができるが、必要に応じて従来公知の界面活性剤、反応性乳化剤(ただし、これらの概念には本発明に係るイオン結合性塩は含まれないものとする)、高分子乳化剤、保護コロイドなどを併用することもできる。併用できる界面活性剤としては、例えば陰イオン性界面活性剤としては長鎖アルキル硫酸塩、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩などであり、また非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、プルロニック型界面活性剤などが挙げられる。また併用できる反応性乳化剤の例としては、スルホン酸基またはスルホネート基を有するビニル単量体、硫酸エステル基を有するビニル単量体やそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ポリオキシエチレン等のノニオン基を有するビニル単量体、4級アンモニウム塩を有するビニル単量体などが挙げられる。
【0079】
併用できる高分子乳化剤の例としては、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリヒドロキシアルキレン(メタ)アクリレートなどが挙げられ、また併用できる保護コロイドの例としては、アルギン酸ナトリウムなどのようなアニオン性保護コロイド、ヒドロキシエチルセルロースのような非イオン性保護コロイドなどが挙げられる。
【0080】
陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子乳化剤および/または保護コロイドと併用する場合は、本発明に係る陰イオン性界面活性剤1質量部あたりそれぞれ0.05~10質量部程度が適当である。
【0081】
(1)の形態においては、上述した乳化重合用組成物を用いて乳化重合を行うことにより、当該乳化重合用組成物の乳化重合物を含む樹脂エマルジョンを得ることができる。すなわち、本発明の他の形態によれば、防錆剤と、作用向上剤と、樹脂エマルジョンと、を含む、防錆剤含有エマルジョンもまた、提供される。ここで、乳化重合用組成物の乳化重合は、従来公知の乳化重合方法により行うことができる。そのような方法としては、一括仕込み法、単量体添加法、単量体エマルジョン添加法などがあり、好ましい方法は単量体エマルジョン添加法である。
【0082】
(1)の形態では、上述した乳化重合によって得られた樹脂エマルジョンに対して、上記他の防錆剤を添加することにより、防錆剤含有エマルジョンを得ることができる。ただし、本発明の作用効果を損なわないのであれば、乳化重合前の乳化重合用組成物や、乳化重合を行っている最中の反応系に対して、上記他の防錆剤の一部または全部を一括または分割して添加しても構わない。上記他の防錆剤の含有量について特に制限はないが、防錆剤の含有量は、樹脂エマルジョン(防錆剤を含まない)100質量%に対して、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは5~40質量%であり、さらに好ましくは10~30質量%である。
【0083】
一方、(2)の形態では、乳化重合用組成物に配合される乳化重合用乳化剤として、上述した作用向上剤に代えて当該作用向上剤以外の乳化重合用乳化剤を用いること、および、乳化重合により得られた樹脂エマルジョンに対して当該作用向上剤を後添加すること以外は、上述した(1)の形態と同様にして防錆剤含有エマルジョンを得ることができる。なお、作用向上剤以外の乳化重合用乳化剤の例は、(1)の形態の説明において上述した通りであるため、ここでは重複した説明を省略する。
【0084】
このようにして得られた防錆剤含有エマルジョンは、例えば塗料に配合されうる。本発明に係る防錆剤含有エマルジョンは、作用向上剤を含有していることから、防錆剤の作用が向上されている。したがって、本発明に係る防錆剤含有エマルジョンが配合された塗料は、優れた防錆性能を発揮することができ、例えば鉄などからなる基材上に塗布された場合に、基材における錆の発生を効果的に防止することができる。
【実施例
【0085】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには限定されない。なお、以下の記載において、「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。
【0086】
[作用向上剤としてのイオン結合性塩]
本実施例では、作用向上剤として、以下のイオン結合性塩(1)~(4)を用いた。
【0087】
イオン結合性塩(1):上記化合物(G)
イオン結合性塩(2):上記化合物(H)
イオン結合性塩(3):上記化合物(I)
イオン結合性塩(4):上記化合物(J)。
【0088】
[樹脂エマルジョンの製造例]
(製造例1)
アクリル酸ブチル100部、メタクリル酸メチル70部、スチレン30部、およびアクリル酸4部を混合して、重合性モノマーを調製した。
【0089】
一方、イオン交換水105部にイオン結合性塩(1)4.08部(重合性モノマー100質量%に対して2質量%)を添加し、混合した。そこへ、上記で調製した重合性モノマーを添加し、乳化させた。その後、過硫酸アンモニウム1.02部(重合性モノマー100質量%に対して0.5質量%)を添加し、よく混合してモノマーエマルジョンを調製した。
【0090】
次に、攪拌機、温度計、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応器に脱イオン水100部および上記で調製したモノマーエマルジョンの5質量%(15.7部)を仕込んで攪拌を開始し、窒素気流中で30分かけて80℃まで昇温し、80℃にて30分間維持して初期重合を行った。
【0091】
続いて、残りのモノマーエマルジョンを80℃にて3時間かけて連続的に滴下して重合させ、滴下終了後1時間熟成を行って、樹脂エマルジョンを得た。
【0092】
(製造例2)
イオン結合性塩(1)に代えて、イオン結合性塩(2)を用いたこと以外は、上述した製造例1と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0093】
(製造例3)
イオン結合性塩(1)に代えて、イオン結合性塩(3)を用いたこと以外は、上述した製造例1と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0094】
(製造例4)
イオン結合性塩(1)に代えて、イオン結合性塩(4)を用いたこと以外は、上述した製造例1と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0095】
(製造例5)
イオン結合性塩(1)に代えて、アデカリアソープ(登録商標)SR10(硫酸エステル型反応性界面活性剤、株式会社ADEKA製)を用いて乳化重合を行い、得られた乳化重合物に対してイオン結合性塩(1)1.02部(重合性モノマー100質量%に対して0.5質量%)を後添加したこと以外は、上述した製造例1と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0096】
(製造例6)
得られた乳化重合物に対するイオン結合性塩(1)の添加量を10.2部(重合性モノマー100質量%に対して5質量%)に変更したこと以外は、上述した製造例5と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0097】
(比較製造例1)
乳化重合により得られた乳化重合物に対してイオン結合性塩(1)を後添加しなかったこと以外は、上述した製造例5と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0098】
(比較製造例2)
イオン結合性塩(1)に代えて、ニューコール(登録商標)LA407(ポリオキシエチレンアルキルアミン型界面活性剤、日本乳化剤株式会社製)1.02部(重合性モノマー100質量%に対して0.5質量%)を後添加したこと以外は、上述した製造例5と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0099】
(比較製造例3)
イオン結合性塩(1)に代えて、ニューコール(登録商標)LA407(ポリオキシエチレンアルキルアミン型界面活性剤、日本乳化剤株式会社製)10.2部(重合性モノマー100質量%に対して5質量%)を後添加したこと以外は、上述した製造例6と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0100】
(比較製造例4)
イオン結合性塩(1)に代えて、ニューコール(登録商標)560-SF(ポリオキシエチレンアルキルフェノール型界面活性剤、日本乳化剤株式会社製)を後添加したこと以外は、上述した製造例5と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0101】
(比較製造例5)
イオン結合性塩(1)に代えて、ニューコール(登録商標)560-SF(ポリオキシエチレンアルキルフェノール型界面活性剤、日本乳化剤株式会社製)を後添加したこと以外は、上述した製造例6と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0102】
(比較製造例6)
イオン結合性塩(1)に代えて、アクアロン(登録商標)KH10(硫酸エステル型反応性界面活性剤、第一工業製薬株式会社製)を用いたこと以外は、上述した製造例1と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0103】
(比較製造例7)
イオン結合性塩(1)に代えて、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いたこと以外は、上述した製造例1と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0104】
(比較製造例8)
イオン結合性塩(1)に代えて、ニューコール(登録商標)2607PCA(リン酸エステル型界面活性剤、日本乳化剤株式会社製)を用いたこと以外は、上述した製造例1と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0105】
(比較製造例9)
イオン結合性塩(1)に代えて、ニューコール(登録商標)LA407(ポリオキシエチレンアルキルアミン型界面活性剤、日本乳化剤株式会社製)を用いたこと以外は、上述した製造例1と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0106】
(製造例7)
アクリル酸ブチル80部、およびメタクリル酸メチル80部を混合して、重合性モノマーを調製した。
【0107】
一方、イオン交換水160部にイオン結合性塩(1)4.8部(重合性モノマー100質量%に対して3質量%)を添加し、混合した。そこへ、上記で調製した重合性モノマーを添加し、乳化させた。その後、過硫酸アンモニウム0.8部(重合性モノマー100質量%に対して0.5質量%)を添加し、よく混合してモノマーエマルジョンを調製した。
【0108】
次に、攪拌機、温度計、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応器に脱イオン水80部および上記で調製したモノマーエマルジョンの5質量%(8.0部)を仕込んで攪拌を開始し、窒素気流中で30分かけて80℃まで昇温し、80℃にて30分間維持して初期重合を行った。
【0109】
続いて、残りのモノマーエマルジョンを80℃にて3時間かけて連続的に滴下して重合させ、滴下終了後1時間熟成を行って、樹脂エマルジョンを得た。
【0110】
(比較製造例10)
イオン結合性塩(1)に代えて、アクアロン(登録商標)KH10(硫酸エステル型反応性界面活性剤、第一工業製薬株式会社製)を用いたこと以外は、上述した製造例7と同様の手法により、樹脂エマルジョンを得た。
【0111】
[樹脂エマルジョンの評価]
上述した各製造例および各比較製造例において得られた樹脂エマルジョンについて、以下の評価を行った。ここで、製造例1~6で得られた樹脂エマルジョンの評価結果を下記の表1に示す。また、比較製造例1~9で得られた樹脂エマルジョンの評価結果を下記の表2に示す。さらに、製造例7および比較製造例10で得られた樹脂エマルジョンの評価結果を下記の表3に示す。
【0112】
(1)固形分量の測定
樹脂エマルジョン1gを秤量して純水5gを加えた後、105℃にて2時間乾燥させた後の蒸発残分を質量%で表し、固形分量とした。
【0113】
(2)重合安定性(凝集物量)
樹脂エマルジョンを200μmのメッシュナイロンでろ過し、残渣の質量から、下記の評価基準に従って重合安定性を評価した。
【0114】
◎:樹脂エマルジョンの固形分に対し、ろ過残渣の量が0.1質量%未満であった;
○:樹脂エマルジョンの固形分に対し、ろ過残渣の量が0.1質量%以上10質量%未満であった;
×:樹脂エマルジョンの固形分に対し、ろ過残渣の量が10質量%以上であった(この例では、防錆性能の評価を行うことができなかった)。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
[防錆剤含有エマルジョンの防錆性評価]
上述した各製造例および各比較製造例において得られた樹脂エマルジョンのそれぞれを用い、以下の手法により、実施例1~7および比較例1~10の防錆剤含有エマルジョン、および比較例11の防錆剤非含有エマルジョンを調製した。
【0119】
(実施例1~6)
上述した製造例1~6で得られた樹脂エマルジョンのそれぞれを用いて、樹脂エマルジョン100質量%に対して20質量%の防錆剤(リン酸亜鉛・4水和物)を添加することにより、各製造例に対応する実施例1~6の防錆剤含有エマルジョンを調製した。
【0120】
(実施例7)
上述した製造例1で得られた樹脂エマルジョンを用いて、樹脂エマルジョン100質量%に対して15質量%の防錆剤(リン酸亜鉛・4水和物)を添加することにより、実施例7の防錆剤含有エマルジョンを調製した。
【0121】
(比較例1~7、10)
上述した比較製造例1~7で得られた樹脂エマルジョンのそれぞれを用いて、樹脂エマルジョン100質量%に対して20質量%の防錆剤(リン酸亜鉛・4水和物)を添加することにより、各比較製造例に対応する比較例1~7および比較例10の防錆剤含有エマルジョンを調製した。なお、比較製造例8および比較製造例9で得られた樹脂エマルジョンについては、十分な重合安定性が得られなかったため、防錆剤の添加による防錆剤含有エマルジョンの調製および後述する防錆性の評価は行わなかった。
【0122】
(比較例11)
防錆剤を添加することなく、上述した製造例1で得られた樹脂エマルジョンをそのまま用いて、比較例11の防錆剤非含有エマルジョンとした。
【0123】
続いて、上記で得られた防錆剤含有(または非含有)樹脂エマルジョンを用いて、以下の手法により防錆性を評価した。
【0124】
(防錆性の評価方法)
アセトンで洗浄した一般構造用圧延鋼材であるSS400のブラスト板(150×70×2.3[mm])の上に、防錆剤含有エマルジョンを10milのバーコーターを用いて塗布し、塗膜を形成した。その後、塗膜を60℃にて1時間乾燥し、さらに室温にて24時間放置した。そして、この塗膜に対角線のカットを入れた。カット後、直ちに対角線の交点から下の塗膜部分を5質量%塩化ナトリウム水溶液中に室温で5日間浸漬した。浸漬終了後、カット線(逆V字型)からの錆の発生幅をカット線に沿って5mmごとに測定し、得られた値の平均値を算出して、以下の基準で評価した:
◎:錆の発生幅が3mm未満;
○:錆の発生幅が3mm以上5mm未満;
△:錆の発生幅が5mm以上10mm未満;
×:錆の発生幅が10mm以上または塗膜全体に錆が発生。
【0125】
これらの評価結果を下記の表4に示す。
【0126】
【表4】
【0127】
表4に示す結果から、本発明に係る作用向上剤を他の防錆剤と併用している各実施例の防錆剤含有エマルジョンは、優れた防錆性能を発揮することがわかる。一方、各比較例の防錆剤含有エマルジョンでは、十分な防錆性能が達成できなかった。また、本発明による防錆性の向上効果は、モノマー組成にかかわらず発揮されることも確認された。
【0128】
さらに、本発明に係る作用向上剤を乳化重合用乳化剤として用いた実施例1~4および実施例7(上述した(1)の形態に対応)、並びに当該作用向上剤を樹脂エマルジョンに後添加した実施例5および実施例6(上述した(2)の形態に対応)のいずれにおいても、同等の優れた防錆性能が発揮されることがわかる。
【0129】
なお、比較例11の結果から、本発明に係るイオン結合性塩がそれ自体で防錆性能を発揮しているわけではないことも確認された。すなわち、本発明に係るイオン結合性塩は、他の防錆剤と併用されることにより、当該他の防錆剤の防錆作用を向上させる機能を有していることがわかる。