IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社川島製作所の特許一覧

<>
  • 特許-海苔供給機 図1
  • 特許-海苔供給機 図2
  • 特許-海苔供給機 図3
  • 特許-海苔供給機 図4
  • 特許-海苔供給機 図5
  • 特許-海苔供給機 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】海苔供給機
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/60 20160101AFI20220614BHJP
【FI】
A23L17/60 103Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018240395
(22)【出願日】2018-12-22
(65)【公開番号】P2020099276
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)販売日は、平成30年11月17日。販売場所は、株式会社大坪鉄工の海苔工場(福岡県柳川市大和町徳益711-2)。 (2)販売日は、平成30年11月17日。販売場所は、堤 義昭の海苔工場(福岡県柳川市大和町中島335)。 (3)販売日は、平成30年11月15日。販売場所は、本村昭治の海苔工場(佐賀県佐賀市川副町犬井道1580-4)。 (4)販売日は、平成30年11月9日。販売場所は、田中和博の海苔工場(佐賀県佐賀市川副町犬井道376)。 (5)販売日は、平成30年11月16日。販売場所は、橋本勝範の海苔工場(熊本県熊本市南区川口町4488-1)。 (6)販売日は、平成30年11月21日。販売場所は、藤川晃英の海苔工場(福岡県柳川市大浜町775-1)。 (7)販売日は、平成30年11月15日。販売場所は、龍 寛太の海苔工場(福岡県大川市新田594-3)。 (8)販売日は、平成30年11月15日。販売場所は、中尾康寛の海苔工場(福岡県柳川市矢留本町443-3)。 (9)販売日は、平成30年11月16日。販売場所は、津田丸水産の海苔工場(熊本県玉名郡長洲町長洲3296-2)。 (10)販売日は、平成30年11月15日。販売場所は、牛嶋昭成の海苔工場(熊本県熊本市松尾町近津747)。 (11)販売日は、平成30年11月13日。販売場所は、平河 努の海苔工場(福岡県柳川市大和町中島612)。 (12)販売日は、平成30年11月15日。販売場所は、中島良人の海苔工場(佐賀県佐賀市川副町大詫間465-3)。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (13)販売日は、平成30年11月15日。販売場所は、ふるさと水産の海苔工場(佐賀県佐賀市川副町大詫間1255-1)。 (14)販売日は、平成30年11月16日。販売場所は、林 龍治の海苔工場(熊本県玉名市岱明町鍋807)。 (15)販売日は、平成30年11月14日。販売場所は、田中圭紀の海苔工場(福岡県柳川市大和町中島572-3)。 (16)販売日は、平成30年11月13日。販売場所は、高田達也の海苔工場(福岡県柳川市大和町栄803-1)。 (17)販売日は、平成30年11月17日。販売場所は、大曲 司の海苔工場(福岡県柳川市南浜武598,599-2)。 (18)販売日は、平成30年11月13日。販売場所は、椛島菊徳の海苔工場(福岡県柳川市南浜武394-6)。 (19)販売日は、平成30年11月1日。販売場所は、小柳信治の海苔工場(福岡県柳川市大和町中島1913)。 (20)販売日は、平成30年11月15日。販売場所は、田中和徳の海苔工場(福岡県柳川市南浜武708-1)。 (21)販売日は、平成30年11月13日。販売場所は、荒牧 聖の海苔工場(福岡県柳川市大和町中島745-5)。 (22)販売日は、平成30年11月23日。販売場所は、荒巻滋美の海苔工場(福岡県柳川市南浜武501)。 (23)販売日は、平成30年11月6日。販売場所は、田中稔大の海苔工場(福岡県柳川市南浜武680-4)。 (24)販売日は、平成30年11月19日。販売場所は、妻夫木秀忠の海苔工場(福岡県柳川市南浜武605)。 (25)販売日は、平成30年11月19日。販売場所は、椛島裕一の海苔工場(福岡県柳川市南浜武211-1)。 (26)販売日は、平成30年12月7日。販売場所は、昴水産の海苔工場(佐賀県佐賀市川副町鹿江863-1)。
(73)【特許権者】
【識別番号】392024699
【氏名又は名称】株式会社川島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086092
【弁理士】
【氏名又は名称】合志 元延
(72)【発明者】
【氏名】川島 一美
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-097065(JP,A)
【文献】特開平5-201604(JP,A)
【文献】特開平7-223746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔を多数枚重積可能なストック部と、前記ストック部から送り出された海苔を、処理ラインへと供給可能なコンベア部とを、有してなる海苔供給機において、
前記ストック部の下部に、送り出し機構が設けられており、該送り出し機構は、保持アーム,吸引部,押出手段を備え、重積海苔を順次下側から一枚ずつ前記コンベア部へと送り出し、
該保持アームは、重積海苔を下側から保持する保持姿勢と、保持を開放する開放姿勢とに、搖動変位可能であり、
該吸引部は、平姿勢と傾斜姿勢とに搖動変位可能であり、まず平姿勢において、該保持アームの開放姿勢により落下した重積海苔を、下側から接触保持しつつ直接吸引可能であり、かつ事後、そのまま傾斜姿勢に変位することにより、重積海苔のうち保持,吸引した最下一枚の下側海苔のみを湾曲せしめ、
該保持アームは、重積海苔と湾曲した一枚の該下側海苔との間に生じた隙間に、保持姿勢により挿入可能であり、もって重積海苔と該下側海苔とを分離せしめると共に、重積海苔を保持し、
該押出手段は、該吸引部にて保持,吸引,湾曲中の該下側海苔を、そのまま該吸引部から前記コンベア部に向け、前進動により押出し可能であること、を特徴とする海苔供給機。
【請求項2】
請求項1において、該保持アームは、対をなし重積海苔の両側に設けられ、該吸引部は、対をなし重積海苔の下側に設けられ、該押出手段は、前記コンベア部と反対側に設けられること、を特徴とする海苔供給機。
【請求項3】
請求項2において、該吸引部は、フラット面の吸引口が、平姿勢では上向きに位置し、傾斜姿勢では側方に向け傾斜位置すること、を特徴とする海苔供給機。
【請求項4】
請求項3において、対をなす該吸引部は、該下側海苔の両端部を下側から保持,吸引可能であり、もって該下側海苔は、該吸引部の平姿勢から傾斜姿勢への変位により、フラットな中央部に対し両端部が下降湾曲すること、を特徴とする海苔供給機。
【請求項5】
請求項1において、該海苔供給機は、処理ラインである海苔生産ラインの異物検査装置で異物が検出,回収された海苔について、異物の除去後に、除去確認のため前記異物検査装置そして生産ラインに再供給すべく、生産ラインに付設されること、を特徴とする海苔供給機。
【請求項6】
請求項1において、該海苔供給機は、処理ラインである海苔加工ラインに海苔を供給すべく付設され、加工ラインは、少なくとも焼き装置を備えており焼海苔を調製すること、を特徴とする海苔供給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔供給機に関する。すなわち海苔を、生産ラインや加工ライン等の処理ラインに供給する、海苔供給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
海苔供給機は、乾燥海苔(以下単に海苔という)を、生産ラインや加工ラインに供給するために用いられる。
すなわち海苔供給機は、例えば、海苔の生産ラインの異物検査装置にて異物検出,選別,回収された海苔について、異物を除去した後、除去確認のため異物検査装置そして生産ラインに再供給するために、使用される。
又例えば、海苔を焼海苔や味付海苔に加工する加工ラインに供給するために、使用される。
【0003】
《従来技術》
この種の海苔供給機1は、図5に示したように、海苔Aを多数枚重積可能なストック部2と、ストック部2から送り出された海苔A’を、生産ラインB等へと供給可能なコンベア部3とを、備えている。
そして図4中に示したように、ストック部2の下部に、重積海苔Aを順次下側から一枚ずつコンベア部3へと送る送り出し機構4が、設けられており、送り出し機構4は、保持アーム5と吸引部6を備えている。
図4は、このような従来例の海苔供給機1について、送り出し機構4の動作ステップを示し、送り出し機構4により、重積海苔A中から一枚の下側海苔A’が、コンベア部3へと順次送り出される。
【0004】
図4に示した従来の送り出し機構4の動作ステップについて、海苔A,A’の状態を中心に説明する。
(1)図は、動作開始の重積状態を示し、重積海苔(海苔束)Aが、左右一対の保持アーム5上に保持されている。
(2)図は、落下状態を示す。保持アーム5が開放され、重積海苔Aは、真下のブロワの吸引部6上に落下,保持される。
(3)図は、吸着,湾曲状態を示す。吸引部6の左右の下降傾斜面6’が吸引口となっているので、重積海苔Aのうち最下一枚の下側海苔A’が、吸引により引かれた状態となる。そして下側海苔A’の左右端部が、吸引部6に吸着されて下降湾曲せしめられ、もって上位の重積海苔Aとの間に隙間Sが生じる。
(4)図は、分離,吸着・湾曲開放状態を示す。重積海苔Aと、下側海苔A’との間に生じた隙間Sに、保持アーム5が挿入される。上位の重積海苔Aと、左右端部が下降湾曲した下位の下側海苔A’との間に、保持アーム5が挿入される。
もって保持アーム5にて保持された重積海苔Aと、下側海苔A’とが、分離される。そして、吸引部6が吸引を解除して降下し、吸引が開放された一枚の下側海苔A’が、コンベア部3(図5を参照)へと送り出される。
(5)図は、コンベア部3へ向けての送り出しを示す。
なお(1)図~(4)図は正面説明図、(5)図は側面説明図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
技術的背景欄中に記載した異物検査装置としては、例えば、次の特許文献1に示されたものが挙げられる。
【文献】特開2012-217427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
《従来技術の問題点》
ところで、このような従来の海苔供給機1の送り出し機構4については、次の課題が問題として指摘されていた。
すなわち、図4中に示したように、従来の吸引部6は、左右端部が下降傾斜面6´となった略山形形状,固定形状をなしており、→その吸引により、(1)図,(2)図に示したようにフラットな下側海苔A’の左右端部が、(3)図に示したように下降湾曲せしめられ、→もって生じた隙間Sに、(4)図に示したように保持アーム5が挿入され、もって重積海苔Aと分離されるようになっている。
このように、一枚の下側海苔A’の左右端部を、上下間隔を存して位置する下位の吸引部6の左右傾斜面6´が吸引することにより、下降湾曲せしめるようになっていた。そこで、吸引部6について強力な吸引力が必要となり、大型のブロワが従来必須的に使用されていた。
もって、従来の送り出し機構4そして海苔供給機1については、第1に、供給安定面について、第2に、コスト面やスペース面について、問題が指摘されていた。
【0007】
第1に、海苔Aの供給安定面については、次のとおり。
上下間隔が介在した間接的吸引方式・強力吸引方式に起因し、下側海苔A’の左右端部が予定通り湾曲されないことがあり、以後の隙間S形成,分離等の動作ステップに、支障が生じることがあった。
海苔Aは、含有水分量の多少(乾燥度)や肉厚の大小(厚薄)等によって、硬いものや軟らかいものがあり、対応して吸引部6のブロワの吸引力を調整制御する必要が生じるが、その調整がスムーズに行かないことが多々あった。その他、間接的吸引方式・強力吸引方式に起因した送り出しミス,供給ミス,供給不安定化等の虞が、指摘されていた。
例えば、a.重積海苔Aが腰の強い硬いケースでは、図4の(3’)図,(4’)図に示したように、吸引不足,湾曲困難等により、不良箇所Rが生じ易かった。b.重積海苔Aが腰の弱い軟らかいケースでは、吸引過剰,複数枚束湾曲,分離困難等により、不良箇所Rが生じ易かった。c.形状が変形した海苔Aのケースでも、これらに準じ、不良箇所Rが発生し易かった。
【0008】
第2に、コスト面やスペース面については、次のとおり。
吸引部6に大型のブロワが使用され、その吸引力の調整制御も要し、コスト高となると共に、サイズが大型化し設置場所を広く取る、という指摘があった。
【0009】
《本発明について》
本発明の海苔供給機は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、海苔の供給安定性が向上し、第2に、コスト面やスペース面にも優れた、海苔供給機を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
請求項1の海苔供給機は、海苔を多数枚重積可能なストック部と、前記ストック部から送り出された海苔を、処理ラインへと供給可能なコンベア部とを、有している。
そして、前記ストック部の下部に送り出し機構が設けられたており、該送り出し機構は、保持アーム,吸引部,押出手段を備え、重積海苔を順次下側から一枚ずつ前記コンベア部へと送り出す。
該保持アームは、重積海苔を下側から保持する保持姿勢と、保持を開放する開放姿勢とに、搖動変位可能である。
該吸引部は、平姿勢と傾斜姿勢とに搖動変位可能である。そして、まず平姿勢において、該保持アームの開放姿勢により落下した重積海苔を、下側から接触保持しつつ直接吸引可能である。かつ事後、そのまま傾斜姿勢に変位することにより、重積海苔のうち保持,吸引した最下一枚の下側海苔のみを、湾曲せしめる。
該保持アームは、重積海苔と湾曲した一枚の該下側海苔との間に生じた隙間に、保持姿勢により挿入可能であり、もって、重積海苔と該下側海苔とを分離せしめると共に、重積海苔を保持する。
該押出手段は、該吸引部にて保持,吸引,湾曲中の該下側海苔を、そのまま該吸引部から前記コンベア部に向け、前進動により押出し可能であること、を特徴とする。
【0011】
請求項2については、次のとおり。
請求項2の海苔供給機では、請求項1において、該保持アームは、対をなし重積海苔の両側に設けられる。該吸引部は、対をなし重積海苔の下側に設けられる。該押出手段は、前記コンベア部と反対側に設けられること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。
請求項3の海苔供給機では、請求項2において、該吸引部は、フラット面の吸引口が、平姿勢では上向きに位置し、傾斜姿勢では側方に向け傾斜位置すること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。
請求項4の海苔供給機では、請求項3において、対をなす該吸引部は、該下側海苔の両端部を下側から保持,吸引可能であり、もって該下側海苔は、該吸引部の平姿勢から傾斜姿勢への変位により、フラットな中央部に対し両端部が下降湾曲すること、を特徴とする。
【0012】
請求項5については、次のとおり。
請求項5の海苔供給機では、請求項1において、該海苔供給機は、処理ラインである海苔生産ラインの異物検査装置で異物が検出,回収された海苔について、異物の除去後に、除去確認のため前記異物検査装置そして生産ラインに再供給すべく、生産ラインに付設されること、を特徴とする。
請求項6については、次のとおり。
請求項6の海苔供給機では、請求項1において、該海苔供給機は、処理ラインである海苔加工ラインに海苔を供給すべく付設される。加工ラインは、少なくとも焼き装置を備えており焼海苔を調製すること、を特徴とする。
【0013】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)海苔供給機の送り出し機構では、重積海苔が、保持姿勢の一対の保持アームにて保持されている。
(2)そして、保持アームが開放姿勢に変位すると、重積海苔が、傾斜姿勢の一対の吸引部上に落下して保持される。
(3)それから重積海苔は、吸引部が平姿勢に変位することにより、最下の下側海苔が、吸引部の上向きに位置したフラット面の吸引口により、直接接触吸引される。
(4)それから吸引部が、元の傾斜姿勢に変位することにより、吸引部に保持され接触吸引された最下一枚の下側海苔が、下降湾曲せしめられる。
(5)もって、重積海苔と湾曲した下側海苔との間に、隙間が形成され、この隙間に保持アームが、元の保持姿勢に変位して挿入される。そこで、重積海苔と下側海苔とが分離され、重積海苔は保持アームにて保持される。
(6)それから、吸引部にて保持,吸引,湾曲中の下側海苔は、押出手段にて、吸引部からコンベア部に向け押出される。
(7)そして下側海苔は、コンベア部へ受け渡され、吸引部による保持,吸引,湾曲から開放されフラット化されて、搬送される。
(8)送り出し機構がこのような動作ステップを辿り、ストック部の重積海苔から一枚の下側海苔がコンベア部に送られて、処理ラインの生産ラインや加工ラインに、順次投入される。
(9)本発明の海苔供給機は、このような保持アーム,吸引部,押出手段を組み合わせた送り出し機構を採用し、吸引部として、工程に合わせての変位方式と、下側海苔の直接的・接触吸引方式とを採用したことを、特徴とする。
もって、湾曲その他の動作ステップが、正確,確実に実施されるようになる。
(10)海苔は、産地,生産現場,年度,気候,処理ライン等によって、品質が相違する。特に、含有水分量(乾燥状態)や肉厚等によって、硬柔つまり腰の強弱が顕著化する。形状変形も発生する。
これらに対し本発明は、直接的・接触吸引方式を採用したことにより、湾曲,その他の動作ステップが、品質相違にかかわらず、正確,確実に実施可能である。
(11)しかも本発明は、構成が簡単であり、調整も容易である。
(12)そこで、本発明に係る海苔供給機は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0014】
《第1の効果》
第1に、海苔の供給安定性が向上する。
本発明の海苔供給機は、ストック部下部の送り出し機構として、所定の保持アーム,吸引部,押出手段を、組み合わせて採用してなる。
そして吸引部が、工程に合わせての変位方式と直接的・接触吸引方式とにより、最下一枚の下側海苔を湾曲せしめるようになっている。前述したこの種従来例のように、間隔を存した間接的吸引方式による湾曲ではなく、大型のブロワが必須的な強力吸引方式による湾曲でもない。
そこで本発明によると、海苔の湾曲等が正確に行われ、送り出し機構の動作ステップが、支障なく確実に行われるようになる。硬い海苔から柔らかい海苔まで硬軟に関係なく、更には形状変形した海苔であっても,湾曲ミス,送り出しミス,供給ミスの発生が回避される等、供給安定性が向上する。
【0015】
《第2の効果》
第2に、コスト面やスペース面にも優れている。
本発明の海苔供給機は、所定の保持アーム,吸引部,押出手段を備えた送り出し機構を採用してなり、構成が簡単であり、調整も容易である。もって、コスト面に優れると共に、サイズがコンパクト化,小型化され、設置場所面にも優れている。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る海苔供給機について、発明を実施するための形態の説明に供し、送り出し機構の動作ステップ1の正面説明図である。そして海苔について、(1)図は、動作開始状態、(2)図は、落下状態、(3)図は、吸着状態、(4)図は、分離,湾曲状態を示す。
図2】同発明を実施するための形態の説明に供、送り出し機構の動作ステップ2の側面説明図である。そして下側海苔について、(1)図は、押出し前の状態(分離,湾曲状態)、(2)図は、押出し中の状態、(3)図は、押出し後の吸着・湾曲開放状態を示す。
図3】同発明を実施するための形態の説明に供する。そして(1)図は、保持アームと吸引部の斜視図、(2)図は、押出手段とコンベア部の平面図である。
図4】従来例に係る海苔供給機の説明に供し、(1)図~(4)図は、送り出し機構の動作ステップ1の正面説明図である。そして海苔について、(1)図は、動作開始状態、(2)図は、落下状態、(3)図は、吸着,湾曲状態、(4)図は、分離,吸着・湾曲開放状態を示す。 (5)図は、送り出し機構の動作ステップ2の側面説明図である。 (3)’図は、吸着,湾曲の不具合例の正面説明図、(4)’図は、分離等の不具合例の正面説明図である。
図5】海苔供給機の適用例の側面説明図である。そして(1)図は、生産ラインへの適用例を示し、(2)図は、加工ラインへの適用例を示す。
図6】本発明に係る海苔供給機の全体説明図である。そして(1)図は、側面説明図、(2)図は、平面説明図、(3)図は、斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
《本発明の概要》
まず、本発明の概要については、次のとおり。
海苔供給機8は、図5図6に示したように、海苔Aを多数枚重積可能なストック部9と、ストック部9から送り出された海苔A’を、生産ラインBや加工ラインC等の処理ラインへと供給可能なコンベア部10とを、有している。
対象とされる海苔A,A’は、硬いもの~柔らかいもの~形状変形したもの等、各種考えられる。
そしてストック部9の下部に、図1図3に示したように、重積海苔Aを順次下側から一枚ずつコンベア部10へと送り出す、送り出し機構11が設けられており、送り出し機構11は、保持アーム12,吸引部13,押出手段15等を、備えている。
本発明の概要については、以上のとおり。以下、このような本発明の海苔供給機8について、更に詳述する。
【0018】
《保持アーム12について》
まず、図1図3を参照して、保持アーム12について説明する。
海苔供給機8のストック部9下部に設けられた送り出し機構11は、まず、保持アーム12を備えている。
保持アーム12は、中央に間隔を存しつつ左右一対設けられ、それぞれ横軸(図示では前後軸)16にて、機体フレームに揺動可能,上下変位可能に設けられている。両保持アーム12間には、ストック部9に収納された重積海苔Aが位置し、両保持アーム12はその両側に設けられている。
もって、左右の両保持アーム12は、それぞれ対応して、重積海苔Aの保持姿勢D(図1の(1)図,(4)図,図2の(1)図~(3)図,図3の(1)図)と、開放姿勢E(図1の(2)図,(3)図)とに、揺動変位可能となっている。
上位の保持姿勢Dにおいて、左右の両保持アーム12は、重積海苔Aを下側,両側から保持する。下位の開放姿勢Eにおいて、左右の両保持アーム12は、重積海苔Aの保持を開放する。
保持アーム12については、以上のとおり。
【0019】
《吸引部13について》
次に、図1図3を参照して、吸引部13について説明する。
海苔供給機8の送り出し機構11は、次に、吸引部(吸引ファン)13を備えている。吸引部13は、中央に間隔を存しつつ左右一対設けられると共に、それぞれ横軸(図示では前後軸)17にて、機体フレームに揺動可能,上下変位可能に設けられている。
そして、ストック部9に収納された重積海苔Aの下側に設けられている。吸引部13の上面はフラット面をなし、吸引口18が配されている。
もって、左右の両吸引部13は、それぞれ対応して、上位の平姿勢F(図1の(3)図,図3の(1)図)と、下位の傾斜姿勢G(図1の(1)図,(2)図,(4)図)とに、揺動変位可能となっている。フラット面の吸引口18は、平姿勢Fでは上向きに位置し、傾斜姿勢Gでは側方に向け傾斜位置する。
【0020】
まず傾斜姿勢Gにおいて、左右の両吸引部13は、保持アーム12の開放姿勢Eへの変位により落下した重積海苔Aの左右両端部を、その突片にて下側,両側から保持する(図1の(2)図を参照)。
それから平姿勢Fへの変位により、海苔Aの左右両端部を、上面のフラット面にて下側,両側から接触保持しつつ、フラット面に設けられた吸引口18により、直接的に接触吸引する(図1の(3)図を参照)。
そして事後、再び傾斜姿勢Gへ変位するが、左右の吸引部13は、そのまま直接的な接触吸引を続行する。もって、重積海苔Aのうち保持され吸引された最下一枚の下側海苔A’だけが、フラットな中央部に対し左右両端部を下方に向け大きく下降湾曲せしめられる。そして、上位のフラットな重積海苔Aとの間に隙間Sが形成される(図1の(4)図を参照)。
ところで、左右の保持アーム12は、左右の両吸引部13の傾斜姿勢Gへの変位により、重積海苔Aと下降湾曲した最下一枚の下側海苔A’との間に生じた左右の隙間Sに対し、それぞれ保持姿勢Dへの変位により挿入される。
もって保持アーム12は、重積海苔Aと一枚の下側海苔A’とを分離せしめると共に、事後、重積海苔Aを保持する(図1の(4)図を参照)。
吸引部13としては通常、ファンやブロワが用いられる。ファンで必要十分な場合が多いが、ブロワが用いられることもある。勿論、ファンを用いる場合は、全体が小型化されるという利点もある。
吸引部13については、以上のとおり。
【0021】
《押出手段15について》
次に、図2図3の(2)図を参照して、押出手段15について説明する。
海苔供給機8の送り出し機構11は、押出手段15を備えており、押出手段15は、吸引部13を介しコンベア10とは反対側に設けられている。
そして吸引部13に保持,吸引,湾曲中の下側海苔A’を、そのまま吸引部13からコンベア部10に向け、前進動により押出し可能である。
【0022】
このような押出手段15について、更に詳述する。図示の押出手段15は、押出プレート15と駆動アーム15とリニアガイド15を備えている。
押出プレート15は板状をなし、吸引部13上に保持,吸引,湾曲された下側海苔A’の前後端部の一方側に、対向位置している。下側海苔A’の前後端部の他方側には、コンベア部10に対向位置している。
そして押出プレート15は、駆動アーム15の搖動により、リニアガイド15にて、方向や距離を直線的にガイドされつつ、前進動,後退動可能となっている。駆動アーム15は、電磁ソレノイドにてリンク駆動される。
もって下側海苔A’では、前述により吸引部13にて左右両端部を保持,吸引,湾曲された状態のまま(図1の(4)図,図2の(1)図を参照)、押出手段15にて前後端部の一方を押動される(図2の(2)図を参照)。押出手段15の前進動により押動され、もってコンベア部10へと押出される。
そして下側海苔A’は、吸引部13からコンベア部10へ完全に押出されることにより、吸引部13による保持,吸引,湾曲から開放され(図2の(3)図を参照)、フラット化されてコンベア部10にて搬送される。
押出手段15については、以上のとおり。
【0023】
《海苔供給機8の使用例1》
次に、図5の(1)図,更には図6を参照して、海苔供給機8の生産ラインBでの使用例について、説明する。
この使用例において海苔供給機8は、海苔Aの処理ラインである生産ラインBの異物検査装置19にて異物が検出,選別,回収された海苔Aについて、異物が除去された後、異物除去確認のために異物検査装置19、そして生産ラインに再供給すべく、生産ラインBに付随して設けられる。
そして海苔供給機8により、ストック部9の重積海苔(異物除去海苔)Aのうち、一枚の下側海苔(異物除去海苔)A’が、送り出し機構11によりコンベア部10へと送られ、投入待機位置に至り位置確認センサ20がこれを検出すると、同位置で待機する。
それから生産ラインB側において、ラインコンベア21にて送られる海苔(一般海苔)A間に空きスペースがあると、海苔A’が投入される。図中、22はコンベア部10の駆動ローラー、23は押えローラー、24は異物検査装置19への入口コンベアである。
海苔供給機8の使用例1については、以上のとおり。
【0024】
《海苔供給機8の使用例2》
次に、図5の(2)図,更には図6を参照して、海苔供給機8の加工ラインCでの使用
例について、説明する。
この使用例において、海苔供給機8は、海苔Aの処理ラインである加工ラインCに、海苔Aを供給すべく設けられる。加工ラインCは、図示例では、検査装置25,焼き装置26,味付装置27,乾燥装置28等を、少なくとも順に備えている。
そして海苔供給機8により、ストック部9の重積海苔Aのうち、一枚の下側海苔A’が、送り出し機構11によりコンベア部10へと送られ、順次、加工ラインCの入口コンベア29へと投入され、もって味付加工された焼海苔A”(つまり味付海苔)が調製される。
なお、このような図示例によらず、焼海苔A”のみを調製することも考えられる。この場合の加工ラインCは、焼き装置26が中心装置となり、味付装置27,乾燥装置28は使用されない。
海苔供給機8の使用例2については、以上のとおり。
【0025】
《作用等》
本発明の海苔供給機8の送り出し機構11等は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のように動作する。
(1)ストック部9下部の送り出し機構11では、図示例ではフラットな重積海苔(海苔束)Aが、保持姿勢Dの左右一対の保持アーム12上に積まれて、下側から保持されている(図1の(1)図を参照)。
【0026】
(2)そして保持アーム12が、上位の保持姿勢Dから下位の開放姿勢Eに降下変位すると、重積海苔Aは、真下で傾斜姿勢Gを取る左右一対の吸引部(吸引ファン)13の突片上に落下して、左右両端部を下側,両側から保持される(図1の(2)図を参照)。
【0027】
(3)それから重積海苔Aは、左右の吸引部13が上位の平姿勢Fに上昇変位することにより、左右両端部を、下側,両側から接触保持されつつ接触吸引される(図1の(3)図を参照)。
図示例では、吸引部13の吸引口18(図3の(1)図を参照)の存するフラット面が、上面となっており、重積海苔Aは、最下の下側海苔A’が、左右両端部を左右の吸引部13により平面的,直接的に接触吸引される。
【0028】
(4)それから左右の吸引部13が、元の下位の傾斜姿勢Gに降下変位して戻る。すると、吸引部13にて保持,吸引されていた重積海苔Aの最下一枚の下側海苔A’は、それ迄のフラット状態から、左右両端部が下方に向けそれぞれ引かれ、もって大きく下降湾曲する。
すなわち、重積海苔Aの最下位に位置する一枚の下側海苔A’は、フラットな中央部に対し、左右端部が、傾斜姿勢Gの左右の吸引部13にて接触吸引され続けるので、引かれて下方へ大きく下降湾曲する(図1の(4)図,図2の(1)図を参照)。
【0029】
(5)もって、フラットな重積海苔Aと、吸引部13に吸引され左右両端部が下方に大きく下降湾曲した最下一枚の下側海苔A’との間に、左右両端部にそれぞれ隙間Sが形成される。
この両隙間Sに、左右の保持アーム12が、下位の開放姿勢Eから元の上位の保持姿勢Dへ上昇変位することにより、挿入される(図1の(4)図を参照)。
もって保持アーム12は、上位の重積海苔Aと下位一枚の下側海苔A’との間を、分離させると共に、重積海苔Aを下側から保持する。最下一枚の下側海苔A’は、そのまま下側から吸引部13にて吸引され続ける。
【0030】
(6)それから、このように吸引部13にて保持,吸引,湾曲中の一枚の下側海苔A’は、押出手段15の前進動により、吸引部13上からコンベア部10上に向け、押出される(図2の(1)図,(2)図を参照)。
【0031】
(7)そして下側海苔A’は、吸引部13からコンベア部10へ完全に押出され、全体的に受け渡される(図2の(3)図を参照)。下側海苔A’は、吸引部13による保持,吸引,湾曲から開放され、フラット化されてコンベア部10にて搬送されることになる。
【0032】
(8)さて、この海苔供給機8は、送り出し機構11がこのような動作ステップを辿り、ストック部9の重積海苔Aから一枚の下側海苔A’が、コンベア部10へと送り出される。
そして下側海苔A’は、海苔供給機8のコンベア部10から、処理ラインへと供給される。例えば、生産ラインBの異物検査装置19や、加工ラインCの焼き装置26に向けて、順次投入される(図5の(1)図,(2)図を参照)。
【0033】
(9)さて、この海苔供給機8は、送り出し機構11として、このような保持アーム12,吸引部13,押出手段15を、組み合わせて採用したことを特徴とする。
吸引部13として、工程に合わせての変位方式と、下側海苔A’に対して直接的・接触吸引方式とを採用して、下側海苔A’の左右両端部を湾曲させることを特徴とする。
もって、送り出し機構11の動作ステップが、正確,確実に実施されるようになる。
【0034】
(10)海苔Aは、自然の産物であると共に、産地,生産現場,生産年度,気候等による湿度の違いによっても、品質が相違する。生産ライン用か加工ライン用かによっても、品質が相違する。
すなわち、含有水分量の多少(乾燥状態)や肉厚の大小(厚薄)等によって、硬く腰の強い海苔Aもあるが、反対に柔らかく腰の弱い海苔Aもある。更に、形状変形した海苔Aもある。
そしてこのように品質の相違が顕著化しがちな海苔Aであるが、本発明は、直接的・接触吸引方式を採用したことにより、湾曲,その他の動作ステップを正確,確実に実施可能である。
【0035】
(11)しかも、この海苔供給機8の送り出し機構11は、所定の保持アーム12,吸引部13,押出手段15よりなり、構成が簡単であり、調整も容易である。
特に、海苔A’の湾曲は、吸引部13の変位のみにて、簡単容易に実現される。又、海苔A’の吸引部13によるによる保持,吸引,湾曲の開放は、コンベア部10への押出手段15を利用することにより、簡単容易に実現される。
作用等については、以上のとおり。
【符号の説明】
【0036】
A 重積海苔(海苔)
A’ 下側海苔
A” 焼海苔
B 生産ライン(処理ライン)
C 加工ライン(処理ライン)
D 保持姿勢
E 開放姿勢
F 平姿勢
G 傾斜姿勢
R 不良箇所
S 隙間
1 海苔供給機(従来例)
2 ストック部(従来例)
3 コンベア部(従来例)
4 送り出し機構(従来例)
5 保持アーム(従来例)
6 吸引部(従来例)
6’ 下降傾斜面
8 海苔供給機(本発明)
9 ストック部(本発明)
10 コンベア部(本発明)
11 送り出し機構(本発明)
12 保持アーム(本発明)
13 吸引部(本発明)
15 押出手段(本発明)
15 押出プレート
15 駆動アーム
15 リニアガイド
16 軸
17 軸
18 吸引口
19 異物検査装置
20 位置確認センサ
21 ラインコンベア
22 駆動ローラー
23 押えローラー
24 入口コンベア
25 検査装置
26 焼き装置
27 味付装置
28 乾燥装置
29 入口コンベア
図1
図2
図3
図4
図5
図6