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▶ オウエン マンフォード リミティドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】薬剤包装
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20220614BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20220614BHJP
   A61M 39/04 20060101ALI20220614BHJP
   A61J 1/20 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
A61M5/24 540
A61M5/28 530
A61M39/04
A61J1/20 316C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018501150
(86)(22)【出願日】2016-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 GB2016052114
(87)【国際公開番号】W WO2017009640
(87)【国際公開日】2017-01-19
【審査請求日】2019-05-10
(31)【優先権主張番号】1512222.9
(32)【優先日】2015-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501410160
【氏名又は名称】オウエン マンフォード リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】カウエ, トビー
(72)【発明者】
【氏名】エバンス, ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ウェッブ, コリン
(72)【発明者】
【氏名】マロン, ジェイク
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-500679(JP,A)
【文献】特表2015-513440(JP,A)
【文献】特開平8-182742(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0073353(US,A1)
【文献】国際公開第2015/081337(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/24
A61M 5/28
A61M 39/04
A61J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を包装するための、複数の異なる種類の投与装置と共に使用するのに適したカートリッジ(100;800;1000;1200)であって、
内部空洞(104;804;1004)を有する概してチューブ状の本体(102;802;1002)と、
前記本体の遠位端に配置された、シール要素(128;828;1028)を備える閉鎖部材(106;806;1006)と、
ピストン部材(108)であって、前記薬剤が該ピストン部材と前記シール要素(128;828;1028)との間に入るように前記空洞内に配置されたピストン部材と、
前記カートリッジを投与装置(200;400;900;1100)又は投与装置用のアダプタ(300)に連結するために前記本体の前記遠位端に配置された連結部材(114;514;1014)と、
前記投与装置又はアダプタの放部材(214;254;314;414;954;1154)を受けるためシール構造(126、129;826、829;1011、1026、1029)と、
を備え
前記連結部材(114;814;1014)は、前記カートリッジを前記投与装置又はアダプタに挿入すると、該投与装置又はアダプタの係合部(220;320;420;920;1120)と係合して該カートリッジ(100;800;1000;1200)を該投与装置又はアダプタ(200;300;400;900;1100)に留めるよう構成され、
前記シール構造(126、129;826、829;1011、1026、1029)は、前記シール要素(128;828;1028)に対して遠位側に配置され、前記カートリッジが前記投与装置又はアダプタに連結された場合に前記開放部材(214;254;314;414;954;1154)の周囲にシールを形成するよう構成されており、
前記シール構造は、前記開放部材(214;254;314;414;954;1154)を受け入れるための通路(126;826; 1026)を含み、シール要素(128;828;1028)は、前記通路を閉鎖し、前記通路(126;826;1026)の内壁は、前記開放部材(214;254;314;414;954)の周囲にシールを形成するように配置されたシール面(129;829;1029)を備えており、
前記連結部材は、前記投与装置又はアダプタ(200;300;400;900;1100)に対する前記カートリッジ(100;800;1000;1200)の第一挿入位置及び第二挿入位置を規定するよう構成されており、
前記連結部材(114;814;1014)は、係合構造(124;824;1024)を含み、前記係合構造(124;824;1024)は、前記投与装置または前記アダプタと協働し、それによって前記第一挿入位置及び前記第二挿入位置を規定する、第一及び第二の係合構造(124、132;824、832)を含む、
カートリッジ。
【請求項2】
前記シール要素(128;828;1028)は、前記カートリッジ(100;800;1000)が前記第一挿入位置にある場合は該シール要素(128;828;1028)が該カートリッジ(100;800;1000;1200)からの薬剤の放出を防止し、該カートリッジ(100;800;1000;1200)が前記第二挿入位置にある場合は該シール要素(128;828;1028)が前記投与装置又はアダプタ(200;300;400;900;1100)の前記開放部材(214;254;314;414;954;1154)と協働して該カートリッジ(100;800;1000;1200)から薬剤が流れ出るのを可能にするよう配置されている、
請求項に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記シール構造(126、129;826、829;1011、1026、1029)は、前記カートリッジ(100;800;1000;1200)が前記第一挿入位置ある場合に前記開放部材(214;254;314;414;954;1154)の周囲にシールを形成するよう構成されている、
請求項に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記シール構造(126、129;826、829;1011、1026、1029)は、前記開放部材(214;254;314;414;954;1154)の周囲にシールが形成された場合に、該開放部材(214;254;314;414;954;1154)の近位先端を受けるための、前記シール要素(128;828;1028)に隣接する密閉されたチャンバを提供する、
請求項1からのいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記シール面は前記通路の狭窄領域(129;829)によって規定される、
請求項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記通路(1026)の内壁は、シールリング(1157)を受けて前記開放部材(1154)の周囲にシールを形成するための凹部(1029)を有する、
請求項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記閉鎖部材(106;826)は、前記シール構造(126、129;826;829)を備える、
請求項1からのいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記閉鎖部材(106;826)は、前記開放部材(214;254;314;414;954)を受けて該開放部材(214;254;314;414;954)の周囲にシールを形成するよう弾性変形可能である、
請求項に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記連結部材(1014)は前記シール構造(1011、1026、1029)を備える、
請求項1からのいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記シール構造は、前記開放部材(1154、1155)を受けるためのチューブ状部(1011)を有する、
請求項に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記チューブ状部(1011)の近位端は、前記閉鎖部材(1006)を前記本体(1002)に留めるよう構成されている、
請求項10に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記閉鎖部材(1006)はエラストマーディスクである、
請求項に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記閉鎖部材は、少なくとも部分的に前記本体(102)の前記空洞(104)の遠位端に受けられるエラストマー栓(106)を含む、
請求項1からのいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項14】
前記本体(802;1002)の遠位端は環状のカラー(805;1005)を有し、前記連結部材(814;1014)は、該カラー(805;1005)と係合し、それによって該連結部材(814;1014)を該本体(802;1002)に固定するための、留め具構造(823;1023)を有する、
請求項に記載のカートリッジ。
【請求項15】
前記連結部材(814;1014)は、前記留め具構造(823;1023)が前記カラー(805;1005)に係合している場合に前記閉鎖部材(806;1006)にクランプ力を加えるよう構成され、それによって該閉鎖部材(806;1006)を前記本体(802;1002)に対して保持する、
請求項14に記載のカートリッジ。
【請求項16】
前記留め具構造(823;1023)と前記カラー(805;1005)との間の係合を維持するために該留め具構造(823;1023)に保持力を加える保持部材(1060;1260)を備える、
請求項14に記載のカートリッジ。
【請求項17】
前記係合構造(124;824;1024)は、前記カートリッジを挿入すると前記投与装置又はアダプタの前記係合部(220;320;420;920;1120)と協働する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項18】
前記係合構造又は該係合構造の少なくとも一つは、前記投与装置又はアダプタの前記係合部(220;320;420;920;1120)と協働するランプ構造(124;824;1024)であって、前記カートリッジを挿入すると該投与装置又はアダプタの該係合部と係合するよう構成されたランプ構造を有する、
請求項17に記載のカートリッジ。
【請求項19】
前記係合構造又は該係合構造の少なくとも一つは、前記投与装置又はアダプタの対応する突起と係合するための凹部を有する、
請求項17に記載のカートリッジ。
【請求項20】
前記シール要素は穴あけ可能な隔壁(128;528;828;1028)を含む、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の包装に関するものである。具体的には、本発明は、それだけに限らないが、注射可能又は点滴可能な薬剤用のカートリッジ式一次包装、並びに当該一次包装を使用するためのアダプタ及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮下注射用の薬剤は様々な異なる臨床的症状の治療に使用され、各状況に適合するために対応する様々な注射装置が開発されてきた。
【0003】
例えば、注射可能な薬剤は、別個の注射器に使用するための従来の薬瓶に入れても良い。このような薬瓶は、注射針で穴を開けることができ、それによって薬剤を注射器内に引き込むことを可能にする、ポリマー膜又は隔壁で閉じられていても良い。隔壁は、一般的には、針を引き抜いた後の薬剤の漏れを防止するために自己封止性を有する。
【0004】
別の手法として、単回投与分の薬剤が入った充填済の使い捨て注射器を提供する手法がある。この場合、薬剤は、スライド可能なストッパによってチューブ状の注射器本体に入っている。登録商標であるハイパック(米国、ニュージャージー、ベクトン・ディッキンソン)として販売されている一つの一般的なステーク針(staked-needle)構造においては、針は取り外せないように注射器本体の遠位端に固定されている。他の構造においては、注射器本体は、取り外し可能な針を、例えばルアー型の接続具(fitting)で受けるよう構成されていても良い。針を通した薬剤の放出のためのストッパの移動が可能となるように、プランジャが注射器本体の近位端から突出している。これらの使い捨て装置は、比較的安価であり、多くの場合固定の量の薬剤を放出するための従来の注射針と薬瓶より便利であるが、注射針と薬瓶と同様に、一般的には、訓練を受けた、それなりに手先が器用な者による使用にのみ適している。
【0005】
そのため、ある程度の注射作業の自動化が望まれる状況、及び/又は従来の注射器や充填済の注射器の使用が困難であったり不便であったりする状況で使用するための、より洗練された注射装置が開発されてきた。上記状況の例には、患者による薬剤の自己投与や訓練を受けていない者による応急処置が含まれる。
【0006】
例えば、自己注射器として知られている注射装置は、通常は、単一の、固定量の薬剤の投与のためのものである。このような装置においては、典型的には、トリガボタンやトリガスライダの操作といった一以上のユーザ操作により、針の挿入、薬剤の放出、容量表示(dose indication)、針の格納及び注射後の針のシールドの展開のうちの一つ以上が引き起こされる。
【0007】
自己注射器の薬剤投与量は、通常は、上述した種類のハイパック注射器といった、使い捨ての、固定針を有する充填済のガラス注射器の形で提供される。自己注射器機構は、典型的には、注射器のストッパを駆動するために機械的に駆動されるプランジャを含み、注射器本体を自己注射器本体に対して動かすことで針の挿入及び/又は格納をもたらすよう構成されていても良い。多くの場合、自己注射器は再利用できないものであり、充填済の注射器は交換できない。それどころか、薬剤の放出が完了すると、自己注射器は、充填済の注射器が中に入ったまま廃棄される。
【0008】
注射ペンとも呼ばれる別の注射装置は、複数回投与分の薬剤を含んでおり、再利用を意図したものとなっている。再利用可能な装置は、必ず、各注入において未使用の殺菌されている針を取り付けることを可能にするために交換可能である、使い捨ての単回用の両頭針用に設計されている。このような装置は、しばしば、各注入において放出される薬剤の量を調整するための機構を含んでおり、トリガボタンが起動されると所要の投与量を自動的に放出するトリガ機構が組み込まれていても良い。注射ペン装置は、例えばインシュリンやヒト成長ホルモンの自己投与用に日常的に用いられている。
【0009】
注射ペンにおいては、薬剤は典型的には充填済カートリッジに詰められている。薬剤は、カートリッジの遠位端にある自己封止ポリマー膜又は隔壁と、注射ペンのプランジャによって駆動可能なスライド可能ストッパとの間に入っている。隔壁は、針が装置に取り付けられると、針の内側端(inside end)によって穴があけられ、針が取り除かれると、薬剤が漏れるのを防止するために再密閉する。
【0010】
場合によっては、カートリッジの遠位端は、注射ペン装置の遠位端から突出する接続具を備え、針はカートリッジに直接係合する。別の構造においては、針は、カートリッジ自体とではなく、注射ペン装置の本体と係合する。注射ペン装置には、最も一般的には螺子接続針が用いられているが、バヨネット接続やクリップ接続といったその他の針の構造も知られている。
【0011】
いくつかの注射ペン装置は、各カートリッジが空になった場合に装置への再充填を可能にする交換可能カートリッジを採用している。他の場合においては、薬剤カートリッジは交換不可能であり、薬剤を使い切った場合は装置が廃棄される。
【0012】
治療によっては、点滴による比較的長い時間をかけた薬剤の輸液が好ましい。一般的になってきているものの一例として、糖尿病の治療のためのインシュリンポンプの利用が挙げられる。このような場合、薬剤は典型的には容器に詰められている。容器は、ポンプのプランジャ機構により駆動可能なスライド可能ストッパと、カニューレへの接続を可能にする接続具とを備える。接続具はルアー型又は専用の接続具を含んでも良く、カニューレは、可撓チューブによって、又はいわゆる「パッチポンプ(patch pump)」構造によって、直接又は剛性連結を介して容器に接続されていても良い。いくつかのポンプ構造においては再充填可能な容器が用いられており、この場合、再充填中のポンプ容器の確実な取り付けを可能にする対応する接続具を用いて薬剤を薬瓶に供給することができる。他のポンプ装置においては、空になった場合に交換される、充填済の、カートリッジ型容器が用いられている。他のポンプ構造においては、空になった場合に交換される充填済のカートリッジ型容器が用いられている。
【0013】
これらの例の全てにおいて、一次包装の構造(すなわち、製造元から最初に供給される薬剤の容器の種類)が、注射装置や輸液装置の良好且つ安全な操作の重要な鍵を握っていることが理解されよう。
【0014】
一次包装の互換性及び安全性を確保するために、市場に出回っている薬剤及び一次包装のあらゆる組み合わせを実験し認証を得る必要がある。認証作業は臨床実験や規制当局の承認を伴うため、多額の費用と多大な時間が必要となり得る。
【0015】
そのため、多くの薬剤は、現在のところ一種類又は二種類の異なる一次包装でしか手に入れることができず、その薬剤の投与が可能な装置の選択肢を狭めている。場合によっては、既存の薬剤用の新しい一次包装の認証には法外な費用がかかる。新しい装置用の新しい専用一次包装が開発された場合においても、増加した薬剤コストが医療支援団体や保険業者による新しい装置の承認を妨げ得る。逆に言うと、確立されている薬剤用の新しい放出装置を設計する際には、設計の態様は、問題になっている特定の薬剤に既に利用可能となっている一次包装の種類によって不必要に制限される。
【0016】
このため、異なる放出装置との互換性が改善された薬剤用の一次包装を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0017】
上記を背景として、そして第一態様から、本発明は、複数の異なる種類の投与装置と共に使用するのに適した、薬剤包装用のカートリッジに属する。カートリッジは、内部空洞を有する概してチューブ状の本体と、本体の遠位端に配置された、シール要素を備える閉鎖部材と、ピストン部材であって、薬剤がピストン部材とシール要素との間に入るように空洞内に配置されたピストン部材と、カートリッジを投与装置又は投与装置用のアダプタに連結するために本体の遠位端に配置された連結部材と、投与装置又はアダプタのシール要素開放部材を受けるためのシール構造とを備える。連結部材は、カートリッジを投与装置又はアダプタに挿入すると、投与装置又はアダプタの係合部と係合してカートリッジを投与装置又はアダプタに留めるよう構成され、シール構造は、シール要素に対して遠位側に配置され、カートリッジが投与装置又はアダプタに連結された場合に開放部材の周囲にシールを形成するよう構成されている。
【0018】
連結部材は、対応する係合部が設けられた適切な投与装置又はアダプタにカートリッジを留めることを可能にするように構成されている。このようにすることで、本発明のカートリッジは、投与装置がカートリッジと係合するよう構成されている場合は直接、或いは適切なアダプタを経て、複数の異なる種類の投与装置と共に用いることが可能な、薬剤用の一次包装を提供する。従って、有利に、薬剤を一種類の一次包装で製造者から供給することができる。
【0019】
「投与装置」という用語は、カートリッジから薬剤を放出するためにカートリッジに取り付けることが可能なあらゆる装置、器具又はアセンブリを含む。例えば、カートリッジは、再利用可能な注射ペン、自己注射器、使い捨て注射器及び輸液ポンプ(遠隔ポンプ及びパッチ型ポンプを含む)を含む投与装置と共に用いることができる。同様に、カートリッジは、針アセンブリ、カニューレコネクタ、輸液ラインコネクタ等の形態の投与装置に取り付けることができる。カートリッジは、ユニバーサルデザインでない異なるカートリッジと互換性のある注射ペン等の投与装置に用いることができるようにカートリッジを適合させるアダプタ、又はカートリッジを注射器又はその他装置に充填するためのバイアルとして用いることができるように適合させるアダプタと共に用いることもできる。
【0020】
単一のカートリッジ構造を複数の装置に用いることができるため、特定の薬剤を供給するために複数の薬剤包装の認証を得るという要件を回避することができる。更に、一種類の包装で薬剤を供給するコストは、特定の適用のために複数の包装を供給するコストよりも低い。また、カートリッジを多くの異なる臨床的症状で多くの異なる種類の投与装置に用いることができ、適切な薬剤投与方法を選択する際の患者及び臨床医の選択肢を増やすことができる。
【0021】
更に、投与装置又はアダプタの開放部材を受けて開放部材の周囲にシールを形成するシール構造を含めることにより、カートリッジによって開放部材の無菌状態を維持することが可能になる。シール構造はシール要素に対して遠位側にあるため、開放部材が薬剤の放出のためにシール要素と協働する前に開放部材の周囲のシールを確立させることができる。従って、容器又は装置のあらゆる薬剤接触部の無菌状態を損なうリスクを最小限にとどめながら、ユーザに供給するために事前にカートリッジを投与装置又はアダプタに組み付けることができる。そのため、シール構造によって、開放部材の周囲にシールが形成された場合に開放部材の近位先端を受けるためのシール要素に隣接した密閉されたチャンバ(chamber)を提供することができる。
【0022】
連結部材は、投与装置又はアダプタに対するカートリッジの第一挿入位置及び第二挿入位置を規定するよう構成されていても良い。シール要素は、カートリッジが第一挿入位置にある場合はシール要素がカートリッジからの薬剤の放出を防止し、カートリッジが第二挿入位置にある場合はシール要素が投与装置又はアダプタの開放部材と協働してカートリッジから薬剤が流れ出るのを可能にするよう配置されていても良い。従って、カートリッジから薬剤を放出させることなく、例えば運搬や保管のため、及び薬剤の無菌状態及び保全性を保つために、第一挿入位置でカートリッジを投与装置又はアダプタと係合させることができる。薬剤の投与が必要になった場合は、シール要素を通して薬剤を放出させるためにカートリッジを第二挿入位置に移動させることができる。
【0023】
好ましくは、シール構造は、開放部材の無菌状態を保つために、カートリッジが第一挿入位置ある場合に開放部材の周囲にシールを形成するよう構成されている。シールは、カートリッジが第二挿入位置に移動した場合も維持されても良く、代替的に、カートリッジが第二挿入位置に移動した場合に開放されても良い。
【0024】
シール構造は開放部材を受けるための通路を有しても良く、シール要素は通路を閉じても良い。通路の内壁は、開放部材の周囲にシールを形成するよう構成されたシール面を有しても良い。シール面は、例えば通路の狭窄領域によって規定されても良い。一つの実施形態においては、通路の内壁は、開放部材を通路内に受けた場合に開放部材の外面に対してシールを形成するよう弾性変形可能である。通路は、開放部材の外径より小さい内径を有しても良い。
【0025】
別の例においては、通路の内壁は、シールリングを受けて開放部材の周囲にシールを形成するための凹部を有する。エラストマーOリングを含み得るシールリングは、カートリッジ若しくは投与装置又はアダプタにより保持されていても良い。
【0026】
閉鎖部材は、シール構造を備えても良い。例えば、閉鎖部材は、開放部材を受けて開放部材の周囲にシールを形成するよう弾性変形可能であっても良い。一つの実施形態においては、閉鎖部材は、シール構造の通路を形成するボアを備える。
【0027】
連結部材は、好ましくは、例えば硬いプラスチック材料でできている、ポリマー成形品である。閉鎖部材は、好ましくは、エラストマー材でできている。
【0028】
閉鎖部材は、少なくとも部分的に本体の空洞の遠位端に受けられるエラストマー栓を含んでも良い。栓の外面が本体の内面と環状のシールを形成しても良い。このように構成することで、いくつかの従来型のカートリッジに使われている閉鎖部材を保持するための圧着された金属の端部接続具(crimped metal end fitting)は不要になる。本体は、本体内に栓を保持するための内部リップを備えても良い。代替的に、又は加えて、栓は、栓の外面と本体の内面との間の摩擦はめ合い(frictional fit)によって本体内に保持されていても良い。
【0029】
連結部材は、連結部材を本体に固定するために栓に取り付けられていても良い。例えば、連結部材は空洞内に伸びるスカートを含んでも良く、栓は連結部材を栓に取り付けるためにスカートにオーバーモールドされていても良い。代替的に、又は加えて、連結部材はさもなければ機械的に又は接着によって栓に取り付けられていても良い。本体のカラー又はネックとの係合ではなく栓への取り付けによって連結部材を本体に固定することで、本体の形状が複雑でなくて済むようになる。例えば、本体は、真っすぐな側面の外面を有するチューブでも良くなる。
【0030】
別の構造においては、連結部材はシール構造を備える。一つの例においては、シール構造は、開放部材を受けるためのチューブ状部又はスロートを有する。チューブ状部の近位端は、閉鎖部材を本体に留めるよう構成されていても良い。
【0031】
連結部材がシール構造を備える場合、閉鎖部材は単純な形状を有することができる。例えば、閉鎖部材はエラストマーディスクであっても良い。従って、閉鎖部材は、先行技術で知られている、圧着された端部接続具を有する薬剤カートリッジに用いられる種類のものであっても良い。連結部材によって閉鎖部材を本体に対して適切な位置に保持することができるため、圧着された端部接続具は不要である。しかしながら、いくつかの構成においては、圧着された端部接続具が設けられても良く、連結部材は端部接続具に密着しても良い。
【0032】
このような構造においては、連結部材は、本体と直接協働して連結部材を本体に取り付けるよう構成されていても良い。例えば、本体の遠位端は環状のカラーを有しても良く、連結部材は、カラーと係合し、それによって連結部材を本体に固定するための、留め具構造を有しても良い。カラーは、好ましくは、本体の縮径遠位部に配置されている。留め具構造は、カートリッジを組み立てる際に留め具構造をカラーに押し込めるように、傾斜した近位面を有しても良い。複数の留め具構造が設けられていても良い。
【0033】
連結部材は、留め具構造がカラーに係合している場合に閉鎖部材にクランプ力を加えるよう構成されても良く、それによって閉鎖部材が本体に対して保持される。カートリッジは、留め具構造とカラーとの間の係合を維持するために留め具構造に保持力を加える保持部材を備えても良い。このように構成することで、保持部材は、連結部材が不意に本体から離れることを防止する。保持部材は、例えば、連結部材及び本体のカラーの周囲に同心円状に配置されたバンド又はリングを含んでも良い。保持部材は、本体用のスリーブ又はハウジングの一部であっても良い。
【0034】
連結部材は、本体の遠位端に当接するフランジを備えても良い。連結部材は、フランジから遠位方向に伸びるスリーブ又はノーズを備えても良い。スリーブは、投与装置又はアダプタの受け部内に挿入するために構成されていても良い。係合構造が設けられる場合、係合構造は、連結部材のスリーブ上に配置しても良い。別の構成においては、連結部材は環状の本体を有し、係合構造は環状の本体上に配置される。係合構造は、環状の本体の外壁に形成された凹部内に配置しても良く、この場合、凹部は、投与装置又はアダプタの係合部を係合構造と係合させるようにガイドするよう成形されていても良い。
【0035】
連結部材は、投与装置又はアダプタの係合部と協働する係合構造を有しても良い。一つの実施形態においては、係合構造は、投与装置又はアダプタの係合部と協働するランプ構造を有する。ランプ構造は、カートリッジを挿入すると投与装置又はアダプタの係合部と係合するよう構成されていても良い。ランプ構造は、遠位方向にカートリッジを挿入した際にランプ構造が係合部を通過できるようにするために、傾斜した近位側を有しても良い。このように構成することで、カートリッジは、挿入すると、投与装置又はアダプタと係合するようガイドされる。ランプ構造は、カートリッジ挿入後のカートリッジの近位方向への移動を制限するために垂直な近位側を有しても良く、それによってカートリッジを投与装置又はアダプタに留めた後にカートリッジが投与装置又はアダプタから外れるのが防止される。ランプ構造は、連結部材上の環状の突起を含んでも良い。代替的に、ランプ構造は、連結部材の近位方向に伸びる脚に配置されていても良い。
【0036】
別の実施形態においては、係合構造は、投与装置又はアダプタの対応する突起と係合するための凹部を有する。例えば、凹部は連結部材の環状の溝を含んでも良い。
【0037】
連結部材が投与装置又はアダプタに対するカートリッジの第一及び第二挿入位置を規定するよう構成されている場合、連結部材は、投与装置又はアダプタと協働することで第一及び第二挿入位置を規定する第一及び第二係合構造を備えても良い。第一及び第二係合構造は、投与装置又はアダプタの同じ係合部と協働しても良く、或いは投与装置又はアダプタの対応する第一及び第二係合部と協働しても良い。
【0038】
シール要素は、好ましくは、閉鎖部材と一体的に形成されている。代替的に、シール要素は別の部品であっても良く、この場合、閉鎖部材は支持部及びシール要素部を備えても良い。シール要素は、穴あけ可能な隔壁、バルブ部品、又はカートリッジ内の薬剤を密封するためのその他のあらゆる適切な構造を含み得る。
【0039】
本発明の第二態様は、本発明の第一態様のカートリッジと共に使用する投与装置又はアダプタ用のカートリッジコネクタに属する。カートリッジコネクタは、カートリッジをカートリッジコネクタに挿入すると、カートリッジの連結部材と係合してカートリッジを投与装置又はアダプタに留めるよう構成された、係合部を有する。
【0040】
カートリッジコネクタの係合部は、カートリッジの連結部材の係合構造と係合するよう構成されていても良い。係合部は、例えば、一以上の留め具、一以上の突起、一以上の凹部、又はカートリッジの係合構造との係合に適したこれらのような特徴のあらゆる組み合わせを含み得る。一例では、係合部は、カートリッジの連結部材の係合構造と協働するランプ構造を有する。ランプ構造は、カートリッジを挿入する際にカートリッジの連結部材上の係合構造がランプ構造を通過できるようにするための傾斜した近位側を有しても良い。ランプ構造は係合構造と係合するための垂直な遠位側を有しても良く、それによってカートリッジ挿入後のカートリッジの近位方向への移動が制限される。
【0041】
本発明の第三態様においては、本発明の第二態様のカートリッジコネクタを備える投与装置が提供される。投与装置は、例えば、自己注射器、注射ペン、使い捨て注射装置、針アセンブリ、カニューレコネクタ、薬剤ポンプ、パッチポンプ又は輸液パッチを含み得る。
【0042】
投与装置は、カートリッジを挿入すると、閉鎖部材のシール要素と協働してカートリッジからの薬剤の放出を可能にするよう構成されたシール要素開放部材を備えても良い。
【0043】
投与装置が注射ペンである場合といったいくつかの場合においては、針の近位端が開放部材を提供するように、装置は、針が装置に取り付けられた場合にカートリッジのシール要素に穴を開ける交換可能な単回用の両頭皮下注射針を受け付けるように構成されていても良い。
【0044】
投与装置が自己注射器、使い捨て注射装置、針アセンブリ、輸液パッチ又はポンプを含む場合のような他の例では、投与装置は針といったカニューレを備えても良く、開放部材はカニューレと流体連通していても良い。言い換えると、開放部材とカニューレは別の部品であっても良い。一つの例においては、開放部材は、カニューレと流体連通するチューブ部材を有する。チューブ部材の近位端は、シール要素に穴を開けるために尖っていても良い。
【0045】
これらのような場合、シール構造は、チューブ部材に対して直接シールを形成するよう構成されていても良く、又は開放部材の別の部品に対してシールを形成するよう構成されていても良い。例えば、チューブ部材は開放部材の拡径部又はハブ部から伸びていても良く、シール構造は開放部材の拡径部とシールを形成するよう構成されていても良い。
【0046】
別の構造においては、開放部材は皮下注射針の近位端を含んでも良い(すなわち、皮下注射針は開放部材の役割も果たす)。
【0047】
開放部材とカニューレが別の部品である場合、カニューレは、開放部材に対して非軸方向に整列していても良い。例えば、カニューレは、開放部材に対してほぼ垂直であっても良い。カニューレは、針の経皮挿入を可能にするために、投与装置の本体に対して可動であっても良い。このような構成は、投与装置が輸液パッチ、パッチポンプ又はその他のウェアラブル装置を含む場合に特に便利である。
【0048】
本発明の第四態様は、薬剤を注射するための注射装置を提供する。注射装置は、係合部と皮下注射針とを有するハウジングと、薬剤カートリッジであって、内部空洞を規定する概してチューブ状本体と、本体の遠位端に配置されたておりシール要素を有する閉鎖部材と、薬剤がピストン部材とシール要素との間に入るように空洞内に配置されたピストン部材と、本体の遠位端に配置された連結部材とを有する薬剤カートリッジとを含む。連結部材は、カートリッジをハウジングに留めるために、係合部と係合しているか又は係合可能である。薬剤カートリッジは、本発明の第一態様に係るものであっても良い。一つの例においては、本発明のこの第四態様の注射装置は、単回使用を目的とした使い捨て注射装置である。
【0049】
好ましくは、連結部材が係合部と係合している時、ハウジングは、カートリッジの取り外しを防止するためにカートリッジを覆う。これは装置への細工の防止に役立つ。
【0050】
注射装置は、シール要素と協働して薬剤のカートリッジからの放出を可能にするよう構成された開放部材を更に備えても良い。一つの例においては、開放部材は、針の近位端を含む。代替的に、開放部材は、ハウジングと一体的に形成され得るチューブ状部材を含んでも良い。
【0051】
本発明の態様に係る投与装置及び注射装置は、ピストン部材に取り付けられた又は取付可能なプランジャを更に備えても良い。プランジャは、手動での使用を目的としたものであっても良く、その場合は、装置のハウジングは、プランジャの手動押下を補助するためのフィンガータブを備えても良い。他の場合においては、プランジャは、装置の駆動機構によって機械的に駆動しても良い。
【0052】
本発明の第一態様のカートリッジを、カートリッジに留まるよう特別に構成された係合部を含まない従来型の、既存の構造の注射ペン、ポンプ及びその他の装置に用いるのが望ましい場合がある。
【0053】
従って、第五態様においては、本発明は本発明の第一態様のカートリッジと共に使用するアダプタに及び、アダプタは、例えば従来型の構造の投与装置と共に用いることができるようにカートリッジを適合させるよう構成されている。
【0054】
アダプタは、係合部と、薬剤チャンバを収容するアダプタ本体と、チャンバ(304)の遠位端を密閉するためのアダプタシールとを備え、係合部は、カートリッジの連結部材と係合してカートリッジをアダプタに留めるよう構成されている。係合部は、カートリッジの連結部材を受けるよう構成されていても良い。
【0055】
アダプタはシール要素開放部材を更に備えていても良く、開放部材は、カートリッジがアダプタに留められた場合にカートリッジのシール要素と協働して薬剤がカートリッジからチャンバに流れることを可能にするよう構成されていても良い。カートリッジのシール要素は穴あけ可能な隔壁を含んでも良く、開放部材は、チャンバに流体接続されたチューブ状の穴あけ部材を含んでも良い。代替的な構成においては、シール要素はバルブを含んでも良く、開放部材は、バルブと協働することによってバルブを開けるよう構成されたバルブ開放部材を含んでも良い。
【0056】
アダプタは、アダプタシールをアダプタ本体に固定するためのキャップ接続具を備えても良い。例えば、キャップ接続具は圧着閉じ具(crimp closure)を含んでも良く、アダプタ本体は閉じ具を保持するためのリップを有しても良い。アダプタシールは、自己封止隔壁であっても良い。
【0057】
カートリッジを特定の投与装置と共に用いることができるように適合させるために、アダプタ本体の少なくとも一部は、カートリッジの連結部材の外径と異なる外径を有しても良い。具体的には、アダプタ本体は、薬剤投与装置との互換性を有するように寸法が決められていても良い。例えば、アダプタ本体は、カートリッジの連結部材の外径より小さく、装置に通常用いられている従来型のカートリッジの遠位部の外径と一致する外径を有しても良い。
【0058】
アダプタは、アダプタに使い捨て針を取り付けるための取付手段を備えても良い。取付手段は、例えばねじ山を含み得る。このように構成することで、アダプタは、本発明の第一態様のカートリッジを、針が従来型のカートリッジに直接取り付く投与装置に用いることを可能にする。代替的に、針が投与装置に取り付けられる場合、アダプタは、針取付手段を有さない平滑な本体を有しても良い。
【0059】
更なる態様においては、本発明は、本発明の第一態様の薬剤カートリッジに取り付けられた本発明の第五態様のアダプタを備える薬剤カートリッジアセンブリ、及びこの種類の薬剤カートリッジアセンブリを備える注射ペンに及ぶ。
【0060】
別の態様においては、本発明は、複数の異なる種類の投与装置と共に使用するのに適した、薬剤包装用のカートリッジに属する。カートリッジは、内部空洞を有する概してチューブ状の本体と、本体の遠位端に配置された、シール要素を備える閉鎖部材と、ピストン部材であって、薬剤がピストン部材とシール要素との間に入るように空洞内に配置されたピストン部材と、カートリッジを投与装置又は投与装置用のアダプタに連結するための連結部材とを備える。連結部材は、本体の遠位端に配置されており、カートリッジを投与装置又はアダプタに挿入するとカートリッジを投与装置又はアダプタに留めるように投与装置又はアダプタの対応する係合部と係合する係合構造を備える。この態様においては、投与装置又はアダプタのシール要素開放部材の周囲にシールを形成するためのシール構造の提供は任意である。
【0061】
更なる態様においては、本発明は、複数の異なる種類の投与装置と共に使用するのに適した、薬剤包装用のカートリッジに属する。カートリッジは、内部空洞を有する概してチューブ状の本体と、本体の遠位端に配置された、シール要素を備える閉鎖部材と、ピストン部材であって、薬剤がピストン部材とシール要素との間に入るように空洞内に配置されたピストン部材と、カートリッジを投与装置又は投与装置用のアダプタに連結するための連結部材とを備える。連結部材は、本体の遠位端に配置されている。カートリッジは、投与装置又はアダプタとシールを形成して投与装置又はアダプタのシール要素開放部材の近位先端を受けるためのシール要素に隣接する密閉されたチャンバを提供するための、シール構造を更に備える。
【0062】
カートリッジ及び/又は投与装置又はアダプタは、投与装置又はアダプタに対するカートリッジの第一及び第二挿入位置を規定するよう構成しても良い。第一挿入位置においては、シール要素がカートリッジからの薬剤の放出を防止し、そして第二挿入位置においては、シール要素開放部材がシール要素と協働してカートリッジからの薬剤の放出を可能にし得る。この場合、シール構造は、少なくともカートリッジが第一挿入位置にある場合に投与装置又はアダプタとシールを形成し得る。
【0063】
連結部材は、シール構造を備えても良い。シール構造は、投与装置又はアダプタの内側又は内壁とシールを形成するよう構成されていても良い。例えば、シール構造は、投与装置又はアダプタのチューブ状のソケット又はその他のチューブ状部或いは円筒形の凹部の内壁に対してシールを形成するよう構成されていても良い。別の例においては、シール要素開放部材に関連付けられた外径の周囲にシールを形成しても良い。シール構造によって形成されるシールは、シール要素に対して遠位側又は近位側に配置されていても良く、或いはシール要素と実質並んで配置されていても良い。
【0064】
発明の各態様における好適な及び/又は任意の特徴は、単独で又は適切な組み合わせで、発明の他の態様にも用いても良い。
【0065】
ここで、ほんの一例として、本発明の実施形態を添付の図面を参照しながら説明する。図面中においては、同様の特徴には同様の参照符号が用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1図1は、薬剤包装の断面図である。
図2図2は、図1に示す薬剤包装の展開等角図である。
図3図3は、図1に示す薬剤包装が部分的に挿入された注射装置の切り欠き等角図である。
図4図4は、図3に示す注射装置の一部の、薬剤包装挿入前の状態の断面図(図4(a))、薬剤包装が第一挿入位置にある状態の断面図(図4(b))、及び薬剤包装が第二挿入位置にある状態の断面図(図4(c))である。
図5図5は、図3に示す注射装置の、薬剤包装が第一挿入位置にある状態の断面図(図5(a))、薬剤包装が第二挿入位置にある状態の断面図(図5(b))、及び薬剤注射後の断面図(図5(c))である。
図6図6は、図3に示す注射装置と異形の注射装置の、薬剤包装が第一挿入位置にある状態の切り欠き等角図である。
図7図7は、図1に示す薬剤包装に取り付ける前のアダプタ装置の切り欠き等角図である。
図8図8は、図7に示すアダプタ装置の、薬剤包装が第一挿入位置にある状態の断面図である。
図9図9は、図7に示すアダプタ装置の、薬剤包装が第一挿入位置にある状態の断面図(図9(a))及び薬剤包装が第二挿入位置にある状態の断面図(図9(b))である。
図10図10は、投与装置の、図1に示す薬剤包装が第一挿入位置にある状態の断面図(図10(a))、図1に示す薬剤包装が第二挿入位置にあり針が引っ込んでいる状態の断面図(図10(b))、及び図1に示す薬剤包装が第二挿入位置にあり針が展開している状態の断面図(図10(c))である。
図11図11は、図10に示す投与装置及び薬剤包装の、針が引っ込んでいる状態の等角図(図11(a))及び針が展開している状態の等角図(図11(b))である。
図12図12は、別の薬剤包装の断面図、側面図及び等角図である。
図13図13は、図12に示す薬剤包装の連結部材の側面図である。
図14図14は、別の注射装置の、薬剤包装が入っていない状態の断面図(図14(a))、図12に示す薬剤包装が部分的に挿入されている状態の断面図(図14(b))、及び図12に示す薬剤包装が完全に挿入されている状態の断面図(図14(c))である。
図15図15は、図12に示す薬剤包装に取り付けられている別の投与装置の等角図、底面図、横断面図及び側面図である。
図16図16は、別の投与装置に用いる別の薬剤包装の、薬剤包装が部分的に挿入されている状態の切り欠き等角図(図16(a))及び薬剤包装が完全に挿入されている状態の切り欠き等角図(図16(b))である。
図17図17は、別の投与装置に用いる別の薬剤包装の、薬剤包装が部分的に挿入されている状態の切り欠き等角図(図17(a))及び薬剤包装が完全に挿入されている状態の切り欠き等角図(図17(b))である。
図18図18(a)及び図18(b)はそれぞれ、図17に示す薬剤包装と異形の薬剤包装の一部の、等角図及び展開図である。
図19図19は、別の投与装置に用いられている別の薬剤包装の一部の、薬剤包装が部分的に挿入されている状態の概略断面図(図19(a))及び薬剤包装が完全に挿入されている状態の概略断面図(図19(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1及び図2は、本発明に係るカートリッジ100状の薬剤包装を示す。カートリッジ100は、薬剤を入れるための空洞104を規定する、真っすぐな側面を有するチューブ状の本体102を備える。空洞104は、第一端である遠位端において、エラストマー栓106の形の閉鎖部材によって閉じられており、本体102の第二端である近位端を通した薬剤の漏れを防止するために、ピストン部材又はストッパ108が空洞104に受けられている。従って、薬剤は、栓106とストッパ108との間の空洞104に入っている。
【0068】
栓106は、栓106の波状の外面110が本体102の内壁112に対してシールを形成するように、部分的に空洞104に受けられている。保持リップ113は、栓106が、リップ113と、栓106と内壁112との間の摩擦はめ合いの両方によって本体102内に保持されるように、本体102の遠位端において本体102の内壁112に形成されている。
【0069】
概してチューブ状の連結部材114は、本体102の遠位端に取り付けられている。連結部材114は、例えばポリオキシメチレン(POM)やポリプロピレン(PP)といった硬いポリマーで形成されており、本体102の遠位端に当接するフランジ116を有する。図2において最も鮮明に示されているように、スカート118がフランジ114から近位に伸びている。エラストマーで形成される(例えばハロブチルで形成され得る)栓106は、栓106によって連結部材114が保持されるように、スカート118上にオーバーモールドされている。
【0070】
チューブ状のスリーブ又はノーズ122が連結部材114のフランジ116から遠位方向に伸びている。環状の突起124がノーズ122の周囲に形成されている。環状の突起は、傾斜した遠位面125(すなわち、カートリッジ100の長手方向軸に対してある傾斜角で配置された面)を有するランプ構造と、概してカートリッジ100の長手方向軸に垂直な近位面127を有する。環状のリップ132が、ノーズ122の遠位端の周りに配置されている。
【0071】
栓106の一部は、連結部材114のノーズ122内まで遠位方向に伸びている。ボア126は栓106の遠位端から内側に向かって伸びており、ボア126の近位端は、栓の薄い膜又は隔壁128の形に形成された部分によって閉じられている。
【0072】
栓106は、連結部材114の本体102への取り付けと、栓106と本体102の内壁112との間の側面シール及び隔壁128による空洞104のシールの両方の役割を果たすことが理解されよう。
【0073】
本体102は、他の材質(生体適合性を有し薬理学的に不活性であるプラスチック材料を含む)を用いても良いが、ガラス製であることが好ましい。
【0074】
ストッパ108は本体102内でスライド可能であり、ストッパ108を遠位方向に駆動して使用中のカートリッジ100から薬剤を押し出すためのプランジャ(不図示)を受けるための凹部130を有する。しかしながら、別の実施形態においては、ストッパには凹部が形成されていなくても良く、又はプランジャとの係合用の代替的な構造を有しても良い。
【0075】
これから説明するように、連結部材114のノーズ122の突起124は、投与装置の対応する係合部と協働してカートリッジ100を投与装置に留める役割を果たすよう構成された係合構造を規定する。適切な係合部を有する異なる種類の投与装置を提供することで、カートリッジ100を様々な異なる種類の投与装置と共に使用することが可能になる。
【0076】
図3から図5は、カートリッジ100と共に使用するために設計された投与装置の一例を示している。この例では、投与装置は、単回投与分の薬剤を放出することを意図した使い捨て注射器である。
【0077】
図3に示すように、注射器200は、カートリッジ100を受けるための、概してチューブ状の本体又はハウジング202を備える。ハウジング202は、ユーザがカートリッジ100を見ることができるようにするためののぞき窓204を有する。
【0078】
更に図4(a)を参照して、ハウジング202の縮径遠位部は、注射器200の針ホルダ206を形成している。針ホルダ206は、その遠位面に、皮下注射針210がポリマーシール212によって保持される凹部208を有する。チューブ状の穴あけ部材214の形をしたシール要素開放部材は、針ホルダ206の近位面から伸びてハウジング202の内部まで突出している。
【0079】
注射器200は、カートリッジ100を注射器200に留めることを可能にするためのカートリッジコネクタ手段を備える。二つの留め具220が、針ホルダ206に隣接するハウジング202の内壁から内側に伸びている。各留め具220は、傾斜した近位面222及びハウジング202の長手方向軸と概して直交する遠位面を有するランプ構造を有する。これから説明するように、留め具220は、カートリッジ100がハウジング202内に挿入され遠位方向に押し込まれるとカートリッジ100の連結部材114と協働し係合するよう構成された係合部の機能を果たす。
【0080】
図4(b)は、ハウジング202内の第一挿入位置に挿入されたカートリッジ100を示している。この位置においては、連結部材114の遠位端にあるリップ132は、留め具220を越えて押し込まれている。留め具220の傾斜した近位面222は、カートリッジ100の遠位方向への更なる移動を妨げるように、連結部材114の突起124の、相応に傾斜した遠位面125に突き当たっている。この第一挿入位置においては、穴あけ部材214は栓106のボア126内に位置するが、隔壁128には穴は開いていない。そのため、この位置においては、薬剤はカートリッジ100の空洞104内で密封されたままであるが、カートリッジ100は留め具220とリップ132との協働により注射装置200内に保持されている。
【0081】
ボア126は、穴あけ部材214用のシール構造を提供する。具体的には、ボア126の壁は、穴あけ部材214がボア126内に受けられた場合に栓106が穴あけ部材214の周りに環状のシールを形成するよう成形されている。このようにすることで、穴あけ部材214の近位先端を、隔壁128に隣接する、ボア126内に形成されるシールによって遠位端が閉じられている密閉されたチャンバ内で、無菌状態に維持することができる。図示されている例においては、ボア126の壁は、環状のシールを形成するために穴あけ部材214への押し付けに対する回復力がある、ボア126の狭窄領域129を規定するよう形成されている。従って、ボア126の狭窄領域129は、シール構造のシール面を提供する。
【0082】
十分な遠位方向の力がカートリッジ100に加わると、突起124及び留め具220の傾斜した面125、222は、突起124が留め具220を越えて移動できるように、協働して留め具220を強制的に半径方向外側に広げる。
【0083】
図4(c)は、カートリッジ100が一度ハウジング202内に完全に深く押し込まれて第二挿入位置をとっている状況を示している。この位置において、突起124の近位面127は、カートリッジ100の近位方向への移動を阻止するために、各留め具220の遠位面224に突き当たっている。留め具220が連結部材114のフランジ116に突き当たっているため、カートリッジ100の遠位方向への更なる移動も阻止されている。このようにして、カートリッジ100は注射器のハウジング202内に確実に留められている。
【0084】
連結部材114に対する隔壁128の位置は、カートリッジ100が第二挿入位置に動く際に、穴あけ部材214によって隔壁128に穴が開けられ、薬剤が空洞104から穴あけ部材214を通って皮下注射針210内に流れることを可能にする位置である。ボア126の狭窄領域129においてボア126の壁と穴あけ部材214との間に形成される環状のシールは、穴あけ部材214の無菌状態を保ち且つ薬剤の漏れを防止するために維持される。
【0085】
図5は、注射器200の操作の、考えられる一連のステップを示している。初めに図5(a)を参照して、注射器ハウジング202の近位端は二つの外側に伸びるフィンガータブ230を形成するように成形されているのが見て取れる。注射器200には、ストッパ108の凹部130内で保持されている末端部234を有するプランジャ232が装着されている。
【0086】
図5(a)においては、カートリッジ100は、隔壁128が無傷のままである第一挿入位置にある。この段階では、注射器200は、薬剤をカートリッジ100内で密封した状態で梱包し保管しても良い。針210の先端を密封するために、除去可能な針シールド(不図示)を用いることができる。針シールドが適当な位置にあり且つ穴あけ部材214と栓106のボア126との間にシールが形成された状態においては、注射器200自体が無菌パッケージに入っていいなくとも、装置の使用準備がされるまで、穴あけ部材214から針210の先端までの薬剤流路全体の無菌状態が維持される。
【0087】
注射器200の使用準備をするために、針シールドが取り除かれ、例えばプランジャに遠位方向の圧力を加えることでカートリッジ100が注射器ハウジング202に対して遠位方向に動かされる。カートリッジ100は、図5(b)に示す、留め具220が連結部材114の突起124とフランジ116との間に位置する第二挿入位置に移動する。隔壁128には薬剤が針210に到達できるように穴あけ部材214によって穴が開けられ、空気を出し且つ薬剤の流れを確認するために、プランジャ232を短い距離だけ押すことができる。
【0088】
針210を皮膚に挿入した時点で、ストッパ108を針210に向けて遠位方向に駆動して薬剤を注射するために、プランジャ232を親指の圧力を用いて押すことができる。フィンガータブ230は、注射中にユーザが注射器200を保持するのを補助する。
【0089】
ストッパ108が栓106に到達すると、図5(c)に示すように、それ以上薬剤を注射することができず、針210は皮膚から引き抜かれる。次いで、カートリッジ100を備えた注射器200は廃棄される。図5(c)から、注射器200のハウジング202はカートリッジ100を完全に覆うのに十分長く、従ってカートリッジ100へのアクセスを妨げて装置へのいたずらや装置の意図しない分解を抑制していることが理解されるであろう。
【0090】
図6は、図4及び図5に示す投与装置と異形の投与装置を示している。この異形においては、投与装置は、針ホルダ256が概してチューブ状の遠位伸長部258を有するという点を除いては、図4及び図5に示す注射器200と類似の注射器250を備える。針210は、ポリマーシール252によってチューブ状の伸長部258内に保持されている。
【0091】
除去可能な針シールド又はキャップ260は、注射器250の遠位端に取り付けられている。シールド260は、概してチューブ状の、閉じた遠位端及び開いた近位端を有する外装体262を備える。内部成形体(internal moulding)264が外装体262内に保持されている。内部成形体264の遠位端は、シールド260が注射器250に取り付けられている場合に針210の遠位端を受けて保護するよう成形されており、内部成形体264の近位端は、針ホルダ256のチューブ状の伸長部258を受けられる寸法となっている。シールド260は、内部成形体264とチューブ状の伸長部258との間の摩擦はめ合いによって、注射器250に固定されている。
【0092】
図6に示されている構成においては、カートリッジ100は、注射器250に対して第一挿入位置にある。図4(b)及び図5(a)を参照して上述したように、この位置においては、カートリッジ栓106の隔壁128は注射器250の穴あけ部材254によって穴が開けられていない。従って、薬剤はまだカートリッジ100内で密封されている。
【0093】
組み立てる前に注射器250の構成部品が殺菌されていれば、注射器が図6に示す構成となっている時は注射器250の薬剤が入る部分及び患者に接触する部分の無菌状態を維持することができる。具体的には、穴あけ部材254の無菌状態が保たれるように栓106と穴あけ部材254との間にシールが形成されており、針の無菌状態が保たれるように針シールド260が伸長部258に隙間なく取り付けられている。
【0094】
従って、注射器250は、第一挿入位置に取り付けられたカートリッジ100と一緒に、図6に示す状態で、販売、運搬、保管及びそれに続く臨床の場と共に使用するのに都合が良いように、任意に(図6には示されていない)プランジャと一緒に梱包することができ、プランジャはストッパ108に取り付けても後で組み立てるために別々にパッケージに入れても良い。図4(c)、図5(b)及び図5(c)を参照して上述したように、注射器250を使用可能な状態にするために、カートリッジ100を第二挿入位置に押し込んで隔壁128に穴を開け、次いでストッパを移動させて薬剤を放出させることができる。
【0095】
図3から図6に示す投与装置においては、カートリッジ100の隔壁128は、針ホルダ206と一体的に形成され且つ皮下注射針210とは異なる、専用の穴あけ部材214によって穴が開けられる。この構成の一つの長所は、穴あけ部材214の直径と、それに応じた栓106内のボア126の寸法を、針210の直径より大きくすることができる点である。しかしながら、異なる構成も可能であることが理解されよう。例えば、穴あけ部材は、第二針といった、針ホルダに取り付けられている別体の構成部品を含んでも良い。別の例では、針は両頭であり、針の近位端が穴あけ部材を形成するように針ホルダから近位方向に伸びる。この場合、別体の穴あけ部材を設ける必要がないため、装置の製造を単純化することができる。
【0096】
図1及び図2に示すカートリッジ100は、再利用可能な注射ペンやポンプ装置の交換可能なカートリッジとしても用いることができる。この例は、図7から図9を参照してこれから説明するように、アダプタを用いてカートリッジ100を取り付けることで達成することができる。
【0097】
図7及び図8を参照して、アダプタ300はアダプタ本体302を備える。アダプタ本体302は、本体302内にチャンバ304を規定するように概してチューブ状である。チャンバ304の遠位端は、圧着閉じ具又はキャップ308によってアダプタ本体302の遠位端に固定されている、自己封止隔壁306といった適切なアダプタシールで密閉されている。アダプタ本体302には、圧着キャップ(crimp cap)308を保持するための、外側に突出するリップ310が形成されている。
【0098】
チューブ状の穴あけ部材314がアダプタ本体302から近位方向に伸びており、薬剤チャンバ304は、穴あけ部材314のボアに流体連結されている。
【0099】
アダプタ300は、カートリッジの連結部材114と係合するための二つの内側に伸びる留め具320を有する係合部316も備える。留め具320は、構造及び機能が、図3及び図4を参照して上述した注射装置200の留め具220と類似しており、カートリッジ100を実質同じ方法でアダプタ300に留めることができる。
【0100】
従って、図8及び図9(a)は、アダプタ300の留め具320が連結部材114のリップ132と突起124との間にあり且つカートリッジ栓106の隔壁128が無傷のままである、アダプタ300に対して第一挿入位置にあるカートリッジ100を示している。穴あけ部材314は栓106のボア126内に受けられており、穴あけ部材314及びチャンバ304の無菌状態を保つために、ボア128の壁が、ボア128の狭窄領域129において、穴あけ部材314の周囲に環状のシールを形成している。この別の方法により、穴あけ部材314の近位端が、隔壁128と環状のシールで規定された密閉されたチャンバに受けられている。図9(b)は、アダプタ300をカートリッジ100に確実に連結するためにアダプタ300の留め具320が連結部材114の突起124とフランジ116との間に位置し、且つ穴あけ部材314によって隔壁128に穴が開けられている、第二挿入位置にあるカートリッジ100を示している。
【0101】
一旦隔壁128に穴が開けられると、薬剤は、カートリッジ100内の空洞104から、穴あけ部材314を通って、アダプタ300内のチャンバ304内に流れることができる。薬剤はまだチャンバ304内でアダプタ隔壁306によって密封されている。
【0102】
図9(b)に示す、一体化したカートリッジとアダプタのアセンブリ350は、次いで、注射ペン装置、ポンプ装置、又は類似の装置の専用のカートリッジの代わりに用いることができる。一旦アセンブリ350が装置に取り付けられると、アダプタ隔壁306は、使い捨ての皮下注射針やその他の穴あけ部材の取り付けによって穴を開けることができる。
【0103】
アダプタ300は、異なる装置に適合するために、特定の薬剤投与装置に適合するように寸法が決められていても良い。例えば、アダプタ本体302は、カートリッジの連結部材114の外径と異なる外径を有しても良い。アダプタ300は、使用を意図された装置に応じて、使い捨て針、放出チューブ又はその他の器具を取り付けるための(ねじ山やルアーロックといった)適当な留め具が設けられていても良い。アダプタシールは、隔壁の代わりに、バルブやその他の適当なシール手段を備えていても良い。
【0104】
図10及び図11は、図1及び図2に示すカートリッジ100に使用するために設計された、投与装置の別の例を示している。この場合、投与装置は、例えばパッチ型薬剤ポンプと共に使用するのに適した針挿入機構を有する、90度針アセンブリ(90-degree needle assembly)400である。
【0105】
針アセンブリ400は、可動針キャリッジ411に取り付けられた皮下注射針410を収容する本体402を備える。図11(a)及び図11(b)において最も鮮明に示されているように、針キャリッジ411は、本体402内で直線運動するように、本体402の向かい側の壁に形成されたスロット415を通って伸びるピン413によってガイドされている。針410は、本体402のベース401に対して直角に配置されている。
【0106】
図10を再度参照して、針アセンブリ400は、カートリッジ100を針アセンブリ400に留められるようにするためのカートリッジ連結手段も備える。連結手段は、本体402の近位端に形成された開口部417及び開口部417の周辺に配置された係合部留め具420を有する。留め具420は、本体402と一体的に形成されている。
【0107】
本体402は、開口部417に向かって近位方向に突出する、チューブの形をした穴あけ部材414も収容する。この例では、穴あけ部材414は、本体402内にある支持フレーム419上で支持されており、穴あけ部材414、支持フレーム419及び本体402は、単一の部品として、例えば射出成型により一体に成形されている。
【0108】
穴あけ部材414は、可撓チューブ421によって皮下注射針410と流体連通している。可撓チューブ421は近位端において支持フレーム419のニップル423に取り付けられている。ニップル423のボアは、穴あけ部材414のボアと連続している。チューブ421は遠位端において針キャリッジ411のニップル425に取り付けられており、ニップル425は針キャリッジ411内の内部通路によって針410のボアに接続されている。
【0109】
留め具420は、形状及び機能が、図3及び図5を参照して上述した注射装置200の留め具220と類似している。そのため、図10及び図11に示す投与装置においては、カートリッジ100が開口部417に挿入された場合、カートリッジ100は、針アセンブリ400に対する二つの挿入位置のうちの一つの位置においてアダプタに留められる。カートリッジ100は、適当な位置に取り付けられた場合、本体のベース401に対して平行に伸びる。
【0110】
図10(a)は、針アセンブリ400の留め具420が連結部材114のリップ132と突起124との間に位置し、且つカートリッジ栓106の隔壁128が無傷のままである第一挿入位置にある、カートリッジ100を示している。穴あけ部材414の無菌状態を保つために、栓106と穴あけ部材414との間に環状のシールが形成されている。図10(b)は、針アセンブリ400をカートリッジ100に確実に連結するためにアダプタ400の留め具420が連結部材114の突起124とフランジとの間に位置する第二挿入位置にある、カートリッジ100を示している。この位置においては、隔壁128は穴あけ部材414によって穴が開けられており、薬剤は、穴あけ部材414及び可撓チューブ421を通って、カートリッジ100から針410へ流れることができる。
【0111】
使用時は、図10(a)、図10(b)及び図11に示すように、針カートリッジ411は最初は後退位置に位置する。後退位置においては、針410は本体402内に隠れている。本体402のベース401を患者の皮膚に接着又は固定することが可能であり、次いで針カートリッジ411を(手動で又は機械的な手段で)移動させることで針をベース401の開口部403を通して本体402の外に伸ばして患者の皮膚に入れることができる。次いで、カートリッジ100のストッパ108を移動させることにより、針410を通して薬剤を放出することができる。この方法で、針アセンブリ400及び取り付けられたカートリッジ100を、例えばストッパ108がポンプのプランジャ(不図示)によって駆動されるパッチポンプに用いることができる。
【0112】
上記内容から、図1及び図2を参照して説明したカートリッジ100は、使い捨て注射器、注射ペン、自己注射器、ポンプ装置及び輸液セットを含む、複数の異なる種類の投与装置と共に使用するのに適していることが理解されよう。各ケースにおける薬剤の一次包装が同じであるため、このようなカートリッジ100の検証及び承認は、コストを増加させることなく同じ薬剤を多くの異なる種類の装置に供給することを可能にする。
【0113】
図1及び図2に示すカートリッジのいくつかの異形及び変形が可能である。例えば、一つの異形(不図示)においては、本体102の遠位端にあるリップ113を省くことができ、栓106は、栓106と本体102の内壁112との間の摩擦はめ合いのみによって空洞104内に保持することができる。この異形においては、本体102は真っすぐな側面を有する単純なチューブ状の形状とすることができ、その結果、部品及び製造のコストが下がり、製造工程が異形でない場合よりも単純になる。
【0114】
図示されている例においては、栓106は、連結部材114のスカート118上にオーバーモールドされている。しかしながら、栓及び連結部材は、例えば代替となる機械的連結や適当な接着剤による連結といった、異なる方法で互いを連結しても良い。これらのような場合、連結部材114のカラー118は無くても良い。
【0115】
更に、図1及び図2に示す実施形態においては、カートリッジのストッパは本体の遠位端に向かって直線的にスライド可能であるが、他の構成も可能である。例えば、ストッパは、本体の遠位端に向かって動くにつれて回転しても良い。このような異形の一つ(不図示)においては、プランジャ又は別の適当な駆動手段によってストッパが回転するよう駆動され、プランジャの遠位方向への移動によってカートリッジからの薬剤の放出を引き起こすことができるように、ストッパ及び本体に相補的なねじ山が形成されていても良い。
【0116】
図12は、本発明の別の実施形態に係る薬剤カートリッジ500を示している。特に図12(a)を参照して、カートリッジ500は、薬剤用の空洞504を規定する、概してチューブ状の本体502を備える。図1及び図2に示すカートリッジと同様に、図12に示すカートリッジ500においては、空洞504は、第一端である遠位端において、エラストマー栓506の形の閉鎖部材によって閉じられており、本体502の第二端である近位端を通した薬剤の漏れを防止するために、ピストン部材又はストッパ508が空洞504に受けられている。従って、薬剤は、栓506とストッパ508との間の空洞504に入っている。
【0117】
この実施形態においては、本体502は、本体502のネックを形成する、縮径遠位部分503を有する。環状のリップ又はカラー505が、本体502のネック503の遠位端に設けられている。図示されている例においてはネック503及びカラー505は本体502と一体的に形成されているが、他の例においては、ネック503及び/又はカラー505は別々の部品であっても良い。
【0118】
栓506は、遠位端にあるフランジ部507と、フランジ部507から近位方向に伸びる概してチューブ状の挿入部509を有する。挿入部509は、栓506の挿入部509の波状の外面510がネック503において本体502の内壁512に対してシールを形成するように、ネック503内に受けられている。
【0119】
ボア526は、栓506のチューブ状部509を通るように伸びており、穴あけ可能な膜又は隔壁528によって閉じられている。隔壁528は、栓506と一体的に形成されている。
【0120】
追加で図11(b)、図11(c)及び図12を参照して、連結部材514が本体502の遠位端に留められている。連結部材514は、キャップ部515と、キャップ部515から近位方向に伸びる、隙間519によって互いに離れている複数の脚517を有する。
【0121】
図13において最も鮮明に示されているように、ネック503のカラー505を受けるために、環状の溝523がキャップ部515の内面に形成されている。組み立て中に連結部材514が本体502の遠位端及び栓506に押し込まれた場合に、脚517がネック503のカラー505を通過してカラー505を溝523内にガイドするために脚517が外側に付勢されるように、各脚517の内面521には傾斜がつけられている。このようにすることで、連結部材514はカラー505の溝523との係合によって本体502に確実に取り付けられ、栓506は連結部材514によってネック503内に保持される。
【0122】
連結部材514の外面は、脚517の遠位端に隣接して配置された第一環状凹部542と、第一環状凹部542から遠位方向に離して連結部材514の遠位端に隣接して配置された第二環状凹部544を有する。キャップ部515は、連結部材514を通って隔壁528にアクセスすることを可能にする開口部546を有する。
【0123】
単回投与分の薬剤の放出を目的とした使い捨て注射器の形でのカートリッジ500の投与装置への応用の一つを、これから図14を参照しながら説明する。
【0124】
初めに図14(a)を参照して、注射装置600は、カートリッジ500(図14(a)においては不図示)を受けるための、概してチューブ状の本体又はハウジング602を備える。ハウジング602は、ハウジング602の端部を閉じる針ホルダ606で終結する、縮径遠位部分603を有する。針ホルダ606は、その遠位面に、皮下注射針610を保持するチューブ状のスリーブ608を有する。ハウジング602は、その近位端にフィンガータブ630も有する。
【0125】
針610の近位端614は、針ホルダ606からハウジング602の内部に突出している。カートリッジ連結手段を提供するために、ハウジング602の縮径部分603の内壁に環状の突起又はリッジ620が形成されている。
【0126】
これから説明するように、突起620は、カートリッジ500がハウジング602に挿入され遠位方向に押されるとカートリッジ500の連結部材514の環状凹部542、544と係合するよう構成されている。
【0127】
図14(b)は、ハウジング602に挿入中のカートリッジ500を示している。カートリッジ500の遠位端が針ホルダ606に近づくと、針610の近位端614が隔壁528に穴を開ける。
【0128】
カートリッジ500の連結部材514がハウジングの縮径部分603内に一旦完全に押し込まれると、図14(c)に示すように、環状の突起620は、カートリッジ500をハウジング602に留めるために、連結部材514の第一環状凹部544に位置する。薬剤は、カートリッジ500がこの位置にある状態で、注射のためにカートリッジ500から針610を通って流れ出ることができる。
【0129】
ストッパ508を遠位方向に動かして針610を通して薬剤の投薬を可能にするために、プランジャ(図14においては不図示)をストッパ508に取り付けることができることが理解されよう。薬剤注射後は、注射器600は、カートリッジ500と一緒に廃棄することができる。
【0130】
図15は、別の投与装置に使用されているカートリッジ500を示している。この場合、投与装置は、例えば輸液パッチポンプと共に用いるための90度針アセンブリ700を備える。
【0131】
針アセンブリ700は、本体702と、本体702内に成形された皮下注射針710を備える。図15(c)において見て取れるように、針710は本体702の内部のチャンバ704と流体連通している。チューブ状の穴あけ部材714もチャンバ704と流体連通しており、針710の軸に対して90度の角度で本体702から伸びている。
【0132】
針アセンブリ700は、本体702から穴あけ部材714の両側に且つ穴あけ部材714に概して平行に伸びる二つのアーム717を有するカートリッジ連結手段も備える。図15(a)及び図15(b)に示すように、各アーム717の内面には、対応する第一環状凹部542と係合するためのリッジ又は突起720が設けられている。
【0133】
図15に示すように、針アセンブリ700は、カートリッジ500の連結部材514をアーム717間の空間に挿入することによって、カートリッジ500に留めることができる。アーム717は、適当な位置に配置されている時、それらの間に連結部材514を抱く位置にあり、アーム717上の突起720は針アセンブリ700とカートリッジ500とを固定するように第一環状凹部542に位置する。
【0134】
カートリッジ500の挿入中、針アセンブリ700の穴あけ部材714は、カートリッジ500の栓506の隔壁528に穴を開ける。これにより、薬剤が、針アセンブリ700の内部のチャンバ704を通って、カートリッジ500から針710に向かって流れることが可能になる。針アセンブリ700及び取り付けられたカートリッジ500は、例えばカートリッジ500のストッパ(不図示)がポンプのプランジャ(不図示)によって駆動されるパッチポンプに用いることができる。
【0135】
図には示されていないが、カートリッジ500の連結部材514の第二環状凹部544は、図1及び図2に示すカートリッジ100を参照して上述したように、カートリッジ500は装置に係合しているが隔壁528は無傷のままである、装置に対するカートリッジ500の中間取り付け位置を提供する働きをすることができることが理解されよう。図14に示す装置に適用された場合、連結部材の環状凹部544とハウジングの環状突起620との間にシールが形成されても良い。他の異形においては、穴あけ部材又は針をボア又は経路に受けた場合に穴あけ部材又は針の周囲にシールを形成するよう寸法が設定されたボア又は経路によって、隔壁528を栓506の端部から近位側に離間させることができる。
【0136】
上記の例で説明したように、図11に示すカートリッジ500は、使い捨て注射器、注射ペン、自己注射器、ポンプ装置及び輸液セットを含む、複数の異なる種類の投与装置と共に使用するのにも適している。また、応用によっては、図11に示すカートリッジ500は、連結部材514を用いずに使用することも可能であることが理解されよう。
【0137】
図16(a)及び図16(b)は、本発明の更なる実施形態に係る、投与装置900と共に使用されている薬剤カートリッジ800を示している。図16にはカートリッジ800及び投与装置900の一部のみが示されている。図1図2及び図12を参照して上述したカートリッジと同様に、図16(a)及び図16(b)に示すカートリッジ800は、薬剤用の空洞804を規定する、概してチューブ状の本体802を備える。図16(a)を参照して、カートリッジ800は、第一端である遠位端において、閉鎖部材806によって閉じられている。本体802の第二端である近位端を閉じ且つ薬剤を閉鎖部材806とストッパ(図16においては不図示)との間の空洞804に保持するために、ピストン部材又はストッパが空洞804に受けられている。
【0138】
容器本体802は、容器本体802のネックを形成する、縮径遠位部分803を有する。環状のリップ又はカラー805が、容器本体802のネック803の遠位端に設けられている。閉鎖部材806は、カラー805の遠位端に対してシールを形成する平坦な近位面810を有するシーリングディスク807を備える。閉鎖部材806のキノコ型のスロート811は、シーリングディスク807から遠位方向に伸びる。スロート811は閉鎖部材806の遠位端から伸びるボア826を有し、ボア826の近位端は隔壁828によって閉じられている。スロート811の遠位端は外側に広がっている。ボア826の壁は、ボア826の狭窄領域829を規定するように成形されている。
【0139】
連結部材814は、閉鎖部材806を適切な位置に保つために、容器本体802の遠位端に留められている。連結部材814は、環状の本体又はリング815と、リング815から近位方向に伸びる複数の脚817を備える。図示されている例においては、三つの脚817があり、図16においてはそのうちの二つの脚817が視認できる。
【0140】
各脚817の近位端は、各脚817の内側に留め具構造823を規定するように成形されている。留め具構造823は、連結部材814を容器本体802のカラー805に押し込めるように傾斜した近位面お有し、留め具構造823の遠位面は、カラー805の近位側に突き当たるように容器の軸に対して垂直方向に配向されている。脚817はクランプバンド860によって適当な位置に保持され、この例では、クランプバンド860は、容器本体802が受けられている容器スリーブ862の遠位端に配置されている。クランプバンド860は、各脚817の外面に形成された周方向凹部819に位置する。
【0141】
周方向に伸びる複数のタブ825が、連結部材814のリング815の内側に配置されている。タブ825は、閉鎖部材806を保持するために、スロート826の広がった端部と閉鎖部材806のシーリングディスク807との間に位置する。脚817の留め具構造823がカラー805の近位側の適切な位置にありクランプバンド860によってその位置に保持されている状態で、タブ825は、閉鎖部材806のシーリングディスク807をカラー805の遠位端と密閉接触した状態に維持するクランプ力を閉鎖部材806に加える働きをする。
【0142】
連結部材814のリング815の外壁は、隣り合う脚817の対のそれぞれの間に配置された、角度方向に離間した(angularly-spaced)三つの凹部827を有する。凹部827は、投与装置900の対応する留め具920と協働するよう構成されている。各凹部827の内面は、連結部材814の近位端においてランプ構造824を規定し、ランプ構造824と連結部材814の遠位端との間で軸方向に離間した位置に配置された一対のリッジ構造832を規定するよう成形されている。カートリッジ800が投与装置900に挿入される際に投与装置900の留め具920を凹部827にガイドするのを補助するために、凹部827の側壁833は、連結部材814の遠位端に向かうにつれて凹部827が周方向に拡大するよう成形されている。
【0143】
この例では、投与装置900は取付可能な針アセンブリ状であり、図6を参照して上述した針ホルダ256と類似の針ホルダ956を備える。従って、図16に示す投与装置900においては、針ホルダ956は、概してチューブ状の遠位伸長部又はスリーブ958を有する。スリーブ958には、皮下注射針910がポリマーシール952によって保持されている。針910の遠位端(不図示)は、図16においてはその一部しか視認できない鍼キャップ960によって保護されている。この場合、針キャップ960は一体成型構造であり、閉じた遠位端(不図示)及び針ホルダ956のチューブ状の伸長部958の周囲に摩擦はめ合いを形成する近位端を有する硬いチューブを備える。針910は、針ホルダ956から近位方向に伸びるチューブ状の穴あけ部材954と流体連通している。三つのアーム917が針ホルダ956の周縁から近位方向に伸び、前述の留め具920がアーム917の近位端に配置されている。アーム917及び留め具920は、針アセンブリのカートリッジコネクタを提供する。
【0144】
図16(a)に示されている構成においては、カートリッジ800は針アセンブリ900に対して第一挿入位置にある。この第一挿入位置において、針アセンブリ900の各留め具920は、連結部材814の、対応するランプ構造824の遠位側にある凹部827に位置する。針アセンブリ900に対するカートリッジ800の第一挿入位置を越える遠位方向への移動は、留め具920のランプ構造824との当接による抵抗を受ける。リッジ構造832は、カートリッジ800の針アセンブリ900に対する近位方向への移動から守る役割を果たす。
【0145】
この第一挿入位置にある時、針アセンブリ900の穴あけ部材954は、閉鎖部材のボア826内に受けられている。しかしながら、閉鎖部材806の隔壁828は穴あけ部材954によって穴が開けられておらず、薬剤は空洞804内で密封されたままである。更に、穴あけ部材954の近位端を隔壁828に隣接するチャンバ内に閉じ込めるために、閉鎖部材806のボア826の狭窄領域829と穴あけ部材954の外面との間にシールが形成されている。このようにすることで穴あけ部材954の近位端の無菌状態を保つことができ、それによって、穴あけ部材954及び針910を通る流路も、針910の遠位端と一緒に、無菌状態が維持たれる。
【0146】
図16(b)は、カートリッジ800が針アセンブリ900に対して第二挿入位置まで遠位方向に移動し、針アセンブリ900の留め具920が連結部材814のランプ構造824に対して押圧された状態を示している。この第二挿入位置においては、針アセンブリ900の各留め具920は、連結部材814の対応するランプ構造824の近位側に位置する。留め具920の遠位側とランプ構造824の近位側との間の当接により、針アセンブリ900からのカートリッジ800の離脱が防止される。カートリッジ800の遠位方向への移動の結果として、穴あけ部材954によって隔壁828に穴が開けられている。従って、従って、カートリッジ800が第二挿入位置にある状態においては、針キャップ960を除去した後に、例えばカートリッジ800のストッパ(不図示)を駆動するための適当なプランジャ(不図示)の適用により、薬剤を針910から投薬することができる。
【0147】
図示されている例においては、クランプバンド860と関連付けられた容器スリーブ862は、カートリッジ800が手動注射用に使用される場合にユーザが把持することができるハウジングを提供する。この目的のために、容器スリーブ862は、容器本体802及び薬剤の検査を可能にするための開口又は窓863(図16(b)参照)を有する。この応用においては、針アセンブリ900をカートリッジ800に無菌状態であらかじめ取り付けておくことができ、この結合体を、カートリッジ800が第一挿入位置にある状態でユーザに供給することができる。使用するために必要になった場合には、薬剤が針910を通って流れ出ることができるように、カートリッジ800を第二挿入位置に移動させることができる。
【0148】
しかしながら、カートリッジ800及び/又は針アセンブリ900は、前述したように、自己注射器、ペン型注射器、輸液ポンプ等といった他の応用に使用することができる。これらのような応用においては、容器スリーブ862は、カートリッジ800を装置のカートリッジホルダに適切に取り付けられるようにするためにカートリッジ800の有効径を増加させるのに用いても良い。
【0149】
図16に示すカートリッジ800を組み立てるために、閉鎖部材806の近位面810がカラー805の遠位端と接触するように、閉鎖部材806を本体802の遠位端に配置することができる。次いで、連結部材814を本体802の遠位端に押し付けることで、カラー805の後ろにある留め具構造823と係合させて、閉鎖部材806を適当な位置に固定することができる。この操作は空洞804が薬剤で充たされた後に行うことができ、それによって空洞804内に閉じ込められる空気の量を最小限にとどめることができる。また、閉鎖部材806を連結部材814にあらかじめ取り付けておくことも可能であり、その結果得られるアセンブリを、一つの操作で本体802の遠位端に押し付けることが可能である。図16に示すカートリッジ800の異形においては、閉鎖部材806は、連結部材814の適当な構造にオーバーモールドされているか又は取り付けられている。
【0150】
図17(a)及び図17(b)は、針アセンブリ1100の形態の他の投与装置と共に用いられる、本発明の更なる実施形態に係る薬剤カートリッジ1000を示している。図17(a)及び図17(b)に示す薬剤カートリッジ1000及び針アセンブリ1100は、図16(a)及び図16(b)を参照して上述したものと類似のものであるため、違いのみを詳細に説明する。
【0151】
この場合、薬剤カートリッジ1000の空洞1004は、エラストマーディスクの形態の閉鎖部材1006によってその遠位端が閉じられている。閉鎖部材1006の近位面1010は、容器本体1002のカラー1005の遠位端に対してシールを形成している。閉鎖部材1006の中央領域は、穴あけ可能な隔壁1028を提供する。
【0152】
図16(a)及び図16(b)に示す実施形態と同様に、図17(a)及び図17(b)に示す実施形態においては、閉鎖部材1006は、容器本体1002のカラー1005の近位側と係合するために留め具構造1023が設けられた、容器本体1002の遠位端に留められる連結部材1014によって適当な位置に保持されている。留め具構造1023は、連結部材1014のリング1015から近位方向に伸びる複数の脚1017の近位端に配置されている。
【0153】
この場合、リング1015は、連結部材1014のチューブ状のスロート1011を支持する。スロート1011は連結部材1014と一体的に形成されており、概して円錐台形のボア1026を規定する。連結部材1014が本体1002の遠位端の適当な位置に留められている状態で、スロート1011の近位端は、閉鎖部材1006をカラー1005の遠位端に密着させるように閉鎖部材1006を押している。完全な円の周囲で閉鎖部材1006にシール力が加わるようにするために、スロート1011の周縁は途切れていない。
【0154】
スロート1011のボア1026は、針アセンブリ1100の穴あけ部材を受けるよう構成されている。この実施形態においては、穴あけ部材は拡径チューブ状ボス1155及び縮径先端部1154を有し、ボス1155は先端部1154と針ホルダ1156の間に配置されている。Oリング1157がボス1155の近位端に隣接して配置された環状溝1159に取り付けられている。
【0155】
針アセンブリ1100は、その他の点では、図16(a)及び図16(b)を参照して上述した針アセンブリ900と類似のものであり、従って連結部材1014の凹部のそれぞれに設けられたランプ構造1024及びリッジ構造1032と協働するよう構成された留め具1120が設けられている。
【0156】
図17(a)は、各留め具1120が対応するランプ構造1024の遠位側に位置する、針アセンブリ1100に対して第一挿入位置にあるカートリッジ1000を示している。この位置においては、針アセンブリ1100の穴あけ部材の先端部1154は、閉鎖部材1006の隔壁1028に穴を開けていない。ボス1155上のOリング1157は、スロート1011のボア1026の遠位端に隣接して設けられた環状溝1029に位置する。このようにして、Oリング1157は、スロート1011とボス1155との間に位置して、穴あけ部材1154の近位端を隔壁1028に隣接した無菌チャンバ内に閉じ込めるシールを形成する。
【0157】
この場合、カートリッジ1000は、ボス1155の溝1029が連結部材1014の更なる係合構造の役割を果たし、Oリング1157及び対応する溝1169が針アセンブリ1100の対応する更なる係合部の役割を果たすように、ボス1155の溝1029にあるOリング1157の位置によって第一挿入位置に保持されている。
【0158】
カートリッジ1000を第一挿入位置から第二挿入位置に移動させるためには、Oリング1157を溝1029から出すのに十分なだけOリング1157を変形させるのに十分な力をカートリッジ1000に遠位方向に加える必要がある。
【0159】
図17(b)は、針アセンブリ1100に対して第二挿入位置にある針カートリッジ1000を示しており、この状態においては針アセンブリ1100の各留め具1120が連結部材1014の対応するランプ構造1024の近位側に位置する。この第二挿入位置においては、穴あけ部材1154は、針キャップ1160を除去した後に針1110を通した薬剤の放出を可能にするために、隔壁1028に穴を開けている。スロート1011のボア1026の円錐台形状のおかげで、第二挿入位置にある時は、Oリング1157はボア1026の壁から離間している。
【0160】
図17(a)及び図17(b)に示すカートリッジ1000を組み立てるために、薬剤充填後に閉鎖部材1006を本体1002の遠位端に配置することができ、次いで連結部材1014を本体1002の遠位端に押し付けて閉鎖部材1006を適当な位置に留めることができる。この実施形態においては、閉鎖部材1006は、有利なことに、既知のカートリッジ型薬剤包装に隔壁を提供するのに用いられている標準形のものである。
【0161】
図16(a)及び図16(b)に示す実施形態と同様に、図17(a)及び図17(b)に示す実施形態においては、連結部材1014は、容器本体1002が受けられる容器スリーブ1062の遠位端に配置されたクランプバンド1060によって適当な位置に保持されている。
【0162】
図18(a)及び図18(b)は図17(a)及び図17(b)に示す容器の異形を示しており、組み立てられた容器1200の一部が図18(a)に示されており、展開図が図18(b)に示されている。図18(a)及び図18(b)に示す異形は図17(a)及び図17(b)に示す容器1000と同一であり、同様の特徴には同様の参照符号が用いられている。
【0163】
図18(a)及び図18(b)に示す異形においては、容器スリーブが設けられておらず、その代わりに単純なリング状のクランプバンド1260が設けられている。クランプバンド1260によって容器1200の径が実質増加しないように、クランプバンド1260の外径は、容器本体1002の外径とほぼ等しい。
【0164】
図19(a)及び図19(b)は、他の投与装置1400と共に用いられる、薬剤カートリッジ1300の他の異形を示している。薬剤カートリッジ1300の遠位部及び投与装置1400の近位部のみを示してある。
【0165】
図17及び図18に示す例と同様に、図19に示す構成においては、カートリッジ1300の空洞1304は、その遠位端がエラストマーディスクの形の閉鎖部材1306によって閉じられている。閉鎖部材1306の近位面1310は、容器本体1302のカラー1305の遠位端に対してシールを形成している。閉鎖部材1306の中央領域は、穴あけ可能な隔壁1328を提供する。
【0166】
閉鎖部材1306は、カートリッジ本体1302の遠位端に取り付けられた概してチューブ状の連結部材1314によって適当な位置に保持されている。連結部材1314の内側を向いた近位フランジ1023が、カラー1305の近位側と係合している。閉鎖部材1306をカラー1305の遠位端に密着させるために、連結部材1314の内側を向いた遠位フランジ1311が閉鎖部材1306を押圧している。
【0167】
一以上のシールリング1357の形態のシール構造が、連結部材1314の円筒形の外壁に配置されている。図示されている例においてはこのようなシールリング1357が二つ設けられているが、これより少ない又はこれより多くのシールリングがあっても良い。シールリング1357は、好適にはエラストマーOリングであり、連結部材1313の外壁に形成された対応する環状溝内で適切な位置に保持されている。
【0168】
投与装置1400は、カートリッジ1300の遠位端を受けるためにその近位端が開いているチューブ状のソケット1417を有する、カートリッジコネクタ部を備える。連結部材1314のシールリング1357は、ソケット1417の内壁に対してシールを形成するよう構成されている。穴あけ部材1454が、投与装置1400のディスク部1456から近位方向に伸びている。図19には示されていないが、穴あけ部材1454のボアは、前述の例を参照して説明したように、針又はカニューレと流体連通しており、使用前まで針又はカニューレは適切にシールされている。
【0169】
図19(a)は、投与装置1400に対して第一挿入位置にあるカートリッジ1300を示している。シールリング1357がソケット1417の内壁と接している状態において、穴あけ部材1454の近位端は、隔壁1328に隣接する無菌チャンバ内で密封されている。カートリッジ1300が投与装置1400に対して図19(b)に示す第二挿入位置まで遠位方向に移動すると、穴あけ部材1454は薬剤の放出を可能にするために隔壁1328に穴を開ける。
【0170】
図19には示されていないが、カートリッジ1300をソケット1417に挿入するとカートリッジ1300が投与装置1400に留まる或いは連結されるように、カートリッジ1300の連結部材1314を投与装置1400の適切な係合構造と係合するように構成することができることが理解されよう。例えば、カートリッジを第一挿入位置及び/又は第二挿入位置に配置するために、ソケット1417に、対応するシールリング1357と位置を合わせるための、適切な間隔を空けた環状凹部又は溝を設けても良く、或いは、前述の例を参照して説明したように、連結部材1314に他の係合構造を設けても良い。別法として、シールリング1357とソケット1417との間に発生する摩擦が、カートリッジ1300を投与装置1400に対する各位置に維持するのに十分であり得る。
【0171】
図19に示す例の異形においては、シールリングは、連結部材にではなく投与装置のソケットに保持されていても良い。この場合、連結部材は、カートリッジが投与装置に連結された際にシールリング上に位置させるための、一以上の環状溝又は凹部、或いはその他の適切な構造を備え得る。更なる異形においては、シールリングは、カートリッジが投与装置に連結された場合にシールはめ合い(sealing fit)を形成するように寸法が決められた連結部材及び/又はソケット上の環状のリッジ又は突起といった、他のシール形成手段に置き換えられるか或いは補われる。
【0172】
投与装置と共に用いられるカートリッジが説明されている上記の例の全てにおいて、投与装置をアダプタに置き換えること及びその逆も可能であることが理解されよう。
【0173】
図1図12図16図17図18及び図19を参照して上述したカートリッジ型薬剤包装は、薬剤をカートリッジ内で密封するためのシール要素として、穴あけ可能な隔壁を採用している。薬剤をカートリッジから放出するために、投与装置又はアダプタは、カートリッジが挿入される際に隔壁に穴を開ける穴あけ部材の形態のシール要素開放部材を備える。しかしながら、薬剤を包装内で密封するため及び薬剤を放出するための異なる構成が可能であることが理解されよう。
【0174】
例えば、図1及び図12の例では隔壁が栓と一体的に形成されているが、これらの例の異形においては、隔壁は、栓又は異なる形態の閉鎖部材の支持部によって支持又は保持される別要素であっても良い。穴あけ可能な隔壁の代替として、シール要素はバルブ部品であっても良い。例えば、バルブ部品は、カートリッジを密閉するように付勢され、カートリッジを挿入すると薬剤を放出するために装置又はアダプタの適切なバルブ開放部材と協働して移動することが可能になる、一以上のバルブ部材を含んでも良い。バルブ開放部材は、例えば、針の近位端又は図3から図11図16図17図18及び図19に示す装置の穴あけ部材と類似の別体のチューブ状の要素を含んでも良い。
【0175】
別の実施形態においては、シール要素は、薬剤の放出を開始するためにストッパをカートリッジの遠位端に向かって移動させた際の薬剤の圧力の上昇に応答して開くように設計されていても良く、この場合はバルブ開放部材やシール要素開放部材は不要である。例えば、自動的に開くシール要素又はこの種のバルブ部品は、一以上のスリットによって柔軟なバルブ部材に分割されたエラストマー隔壁を含み得る。この場合、バルブ部材は、薬剤の圧力が上昇し、バルブ部材がばらばらに広げられてシールが開放されるまで、互いに密着している。別の例では、隔壁は、圧力の上昇に応答して破裂するよう設計されている。これらの場合においても、シール要素の遠位側及び投与装置やアダプタを通る流路の無菌状態を維持するために、連結部材と投与装置との間のシールを形成するシール構造を設けても良い。
【0176】
特許請求の範囲で規定される本発明の範囲から逸脱することなく上述した例の更なる変形及び異形が可能であることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6
図7
図8
図9(a)】
図9(b)】
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図11(a)】
図11(b)】
図12(a)】
図12(b)】
図12(c)】
図13
図14(a)】
図14(b)】
図14(c)】
図15(a)】
図15(b)】
図15(c)】
図15(d)】
図16(a)】
図16(b)】
図17(a)】
図17(b)】
図18(a)】
図18(b)】
図19(a)】
図19(b)】