(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】湿気硬化型樹脂組成物、電子部品用接着剤、及び、表示素子用接着剤
(51)【国際特許分類】
C08L 101/10 20060101AFI20220614BHJP
C08L 75/02 20060101ALI20220614BHJP
C08K 5/18 20060101ALI20220614BHJP
C09J 201/10 20060101ALI20220614BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220614BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C08L101/10
C08L75/02
C08K5/18
C09J201/10
C09J11/06
C09J175/04
(21)【出願番号】P 2018546718
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2018029943
(87)【国際公開番号】W WO2019035411
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2017158034
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】結城 彰
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】木田 拓身
(72)【発明者】
【氏名】玉川 智一
(72)【発明者】
【氏名】徐 坤
【審査官】佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/129568(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/072142(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/051914(WO,A1)
【文献】特開2016-147990(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056717(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/174371(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/190499(WO,A1)
【文献】特開2016-074781(JP,A)
【文献】特開2016-089174(JP,A)
【文献】冨田 裕子 et al.,光着色化技術,スリーボンド・テクニカルニュース,2016年,88,p.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C09J 1/00- 5/10
9/00-201/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化型樹脂と感光性着色剤とを含有
し、
前記湿気硬化型樹脂は、イソシアネート基を有する湿気硬化型ウレタン樹脂及び加水分解性シリル基含有樹脂の少なくともいずれかであり、
着色後の前記感光性着色剤と、前記湿気硬化型樹脂とが反応することを特徴とする湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記感光性着色剤として、ロイコ染料を含有する請求項1記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記感光性着色剤として、下記式(1)で表される化合物を含有する請求項1又は2記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【化1】
式(1)中、R
1及びR
2は、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は、3-トリフルオロメチルフェニル基であり、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(1)中、R
3は、水素原子、又は、炭素数1以上3以下のアルキル基である。
【請求項4】
前記感光性着色剤の含有量が、前記湿気硬化型樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下である請求項1、2又は3記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記湿気硬化型樹脂は、
イソシアネート基を有する湿気硬化型ウレタン樹
脂である請求項1、2、3又は4記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
光重合性化合物を含有する請求項1、2、3、4又は5記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
前記感光性着色剤の含有量が、前記光重合性化合物と前記湿気硬化型樹脂との合計100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下である請求項6記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
光酸発生剤を含有する請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
増感剤を含有する請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項10】
非感光性着色剤を含有する請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項11】
厚さ500μmの硬化物の光学濃度が1以上である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の湿気硬化型樹脂組成物を用いてなる電子部品用接着剤。
【請求項13】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の湿気硬化型樹脂組成物を用いてなる表示素子用接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色性及び硬化性に優れ、かつ、退色を抑制することができる湿気硬化型樹脂組成物に関する。また、本発明は、該湿気硬化型樹脂組成物を用いてなる電子部品用接着剤及び表示素子用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を有する表示素子として、液晶表示素子、有機EL表示素子等が広く利用されている。これらの表示素子では、通常、液晶又は発光層の封止、基板、光学フィルム、保護フィルム等の各種部材の接着等に樹脂組成物からなる接着剤が用いられている。
また、近年、半導体チップ等の電子部品では、高集積化、小型化が要求されており、例えば、接着剤層を介して複数の薄い半導体チップを接合して半導体チップの積層体とすることが行われている。このような半導体チップの積層体は、例えば、一方の半導体チップ上に接着剤を塗布した後、該接着剤を介して他方の半導体チップを積層し、その後、接着剤を硬化させる方法や、一定の間隔を空けて保持した半導体チップ間に接着剤を充填し、その後、接着剤を硬化させる方法等により製造されている。
【0003】
表示素子や電子部品に用いられる接着剤としては、接着状態の確認、隠蔽性や遮光性の向上等を目的として、着色剤を含有する接着剤が用いられる。例えば、特許文献1には、着色剤を含有する光硬化性着色接着剤が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されている光硬化性着色接着剤は、着色剤としてカーボンブラック等を用いており、硬化性樹脂を光硬化させるために照射される紫外線等の活性エネルギー線の大部分が該カーボンブラック等の着色剤に吸収される。そのため、着色性を高くするために該着色剤の配合量を多くすると、得られる接着剤が硬化性(深部硬化性)に劣るものとなるという問題があった。
【0004】
硬化性の低下を抑制しつつ接着剤の着色性を向上させる方法として、感光性着色剤を用いる方法が考えられる。例えば、特許文献2には、感光性着色剤としてロイコ染料を用いた光硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、光硬化性樹脂組成物にこのような感光性着色剤を配合した場合、一旦着色しても、その後、硬化物に退色が生じることがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-25021号公報
【文献】国際公開第2016/129568号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、着色性及び硬化性に優れ、かつ、退色を抑制することができる湿気硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該湿気硬化型樹脂組成物を用いてなる電子部品用接着剤及び表示素子用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、湿気硬化型樹脂と感光性着色剤とを含有する湿気硬化型樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、湿気硬化型樹脂を含有する湿気硬化型樹脂組成物に、着色剤として感光性着色剤を配合することにより、着色性及び硬化性に優れ、かつ、感光性着色剤を用いた場合に問題となる退色を抑制することができる湿気硬化型樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、感光性着色剤を含有する。上記感光性着色剤を含有することにより、本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、着色性及び硬化性(特に深部硬化性)に優れるものとなる。また、本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、上記感光性着色剤を用いた場合に問題となる退色を抑制することができる。
なお、本明細書において上記「感光性着色剤」とは、光照射により変色(発色)する特性を有する材料を意味する。
【0010】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物において上記感光性着色剤を用いていても退色を抑制することができる理由としては以下のことが考えられる。
即ち、上記感光性着色剤は、通常、光照射により直接的又は間接的に反応(着色反応)が進行することによって感光性着色剤の化学構造が変化して着色する。しかし、着色後、この着色反応の逆反応が進行した場合には、退色が生じることとなる。本発明の湿気硬化型樹脂組成物においては、着色後の感光性着色剤と後述する湿気硬化型樹脂とが反応することにより、着色反応の逆反応の進行が防止される。その結果、退色を抑制するという効果が発揮されると考えられる。
【0011】
上記感光性着色剤としては、例えば、ロイコ染料、フォトクロミック色素等が挙げられる。なかでも、光学濃度(OD値)を高くし、より一層優れた遮光性を呈する観点からロイコ染料が好ましい。
【0012】
上記ロイコ染料としては、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-アミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-(p-トルエンスルホンアミド)フタリド、3,3-ビス(2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(4-メトキシフェニル)ビニル)-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-フェニルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-フェニルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7,8-ジベンゾフルオラン、3-ジエチルアミノ-5-メチル-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジプロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノベンゾ[a]フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-フルオロアニリノフルオラン、3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-イソペンチルエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-プロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-(N-メチル-N-フェニルアミノ)-6-(N-エチル-N-p-トルイジノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、1,3,3-トリメチル-6’-クロロ-8’-メトキシインドリノベンゾスピロピラン、2’-アニリノ-3’-メチル-6’-(ジペンチルアミノ)スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-3-オン等が挙げられる。なかでも、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0013】
【0014】
式(1)中、R1及びR2は、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は、3-トリフルオロメチルフェニル基であり、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(1)中、R3は、水素原子、又は、炭素数1以上3以下のアルキル基である。
【0015】
上記感光性着色剤の含有量は、硬化性樹脂成分100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記感光性着色剤の含有量が0.1重量部以上であることにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が着色性により優れるものとなる。上記感光性着色剤の含有量が10重量部以下であることにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が硬化性により優れるものとなる。上記感光性着色剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は3重量部である。
なお、本明細書において上記「硬化性樹脂成分」は、湿気硬化型樹脂組成物が後述する光重合性化合物を含有しない場合は「湿気硬化型樹脂」を意味し、後述する光重合性化合物を含有する場合は「光重合性化合物と湿気硬化型樹脂との合計」を意味する。
【0016】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記感光性着色剤に加えて非感光性着色剤を含有してもよい。
上記非感光性着色剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。また、上記非感光性着色剤は、黒色を呈するものでなくてもよく、可視光領域の光を透過させ難い能力を有する材料であれば、酸化チタン等、後述する充填剤として挙げる材料等も上記非感光性着色剤に含まれる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
【0017】
上記チタンブラックは、波長300~800nmの光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370~450nmの光に対する透過率が高くなる物質である。
即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の湿気硬化型樹脂組成物に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する非感光性着色剤である。従って、後述する光重合開始剤として、上記チタンブラックの透過率の高くなる波長(370~450nm)の光によって反応を開始可能なものを用いることで、本発明の湿気硬化型樹脂組成物の光硬化を阻害し難くすることができる。また一方で、本発明の湿気硬化型樹脂組成物に含有される非感光性着色剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い非感光性着色剤としてもチタンブラックが好適である。
【0018】
上記チタンブラックは、光学濃度(OD値)が、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。上記チタンブラックの遮光性は高ければ高いほど良く、上記チタンブラックのOD値に好ましい上限は特に無いが、通常は5以下となる。また、上記チタンブラックは、黒色度(L値)が9以上であることが好ましく、11以上であることがより好ましい。
【0019】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているもの、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
【0020】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は5m2/g、好ましい上限は40m2/gであり、より好ましい下限は10m2/g、より好ましい上限は25m2/gである。
また、上記チタンブラックのシート抵抗の好ましい下限は、樹脂と混合された場合(70%配合)において、109Ω/□であり、より好ましい下限は1011Ω/□である。
【0021】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、12S、13M、13M-C、13R-N(いずれも三菱マテリアル社製)、ティラックD(赤穂化成社製)等が挙げられる。
【0022】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物において、上記非感光性着色剤の一次粒子径は、表示素子の基板間の距離以下等、用途に応じて適宜選択されるが、好ましい下限は30nm、好ましい上限は500nmである。上記非感光性着色剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、粘度及びチクソ性が大きく増大することなく、得られる湿気硬化型樹脂組成物が基板への塗布性及び作業性により優れるものとなる。上記非感光性着色剤の一次粒子径のより好ましい下限は50nm、より好ましい上限は200nmである。
なお、上記非感光性着色剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記非感光性着色剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0023】
上記非感光性着色剤の含有量は、硬化性樹脂成分100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が0.5重量部である。上記非感光性着色剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が、優れた描画性、基板等に対する接着性、及び、硬化後の強度を維持したまま、着色性により優れるものとなる。上記非感光性着色剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部である。
【0024】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、湿気硬化型樹脂を含有する。
上記湿気硬化型樹脂としては、湿気硬化型ウレタン樹脂及び加水分解性シリル基含有樹脂の少なくともいずれかであることが好ましい。なかでも、湿気硬化時の速硬化性に優れることから、湿気硬化型ウレタン樹脂がより好ましい。上記湿気硬化型ウレタン樹脂は、ウレタン結合とイソシアネート基とを有し、分子内のイソシアネート基が空気中又は被着体中の水分と反応して硬化する。
【0025】
上記湿気硬化型ウレタン樹脂は、1分子中にイソシアネート基を1個のみ有していてもよいし、2個以上有していてもよい。なかでも、分子の主鎖両末端にイソシアネート基を有することが好ましい。
【0026】
上記湿気硬化型ウレタン樹脂は、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、得ることができる。
【0027】
上記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応は、通常、ポリオール化合物中の水酸基(OH)とポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基(NCO)のモル比で[NCO]/[OH]=2.0~2.5の範囲で行われる。
【0028】
上記ポリオール化合物としては、ポリウレタンの製造に通常用いられている公知のポリオール化合物を使用することができ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアルキレンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0029】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸とポリオールとの反応により得られるポリエステルポリオール、ε-カプロラクトンを開環重合して得られるポリ-ε-カプロラクトンポリオール等が挙げられる。
【0030】
上記ポリエステルポリオールの原料となる上記多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5-ナフタル酸、2,6-ナフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0031】
上記ポリエステルポリオールの原料となる上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0032】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフランの開環重合物、3-メチルテトラヒドロフランの開環重合物、及び、これら若しくはその誘導体のランダム共重合体又はブロック共重合体、ビスフェノール型のポリオキシアルキレン変性体等が挙げられる。
【0033】
上記ビスフェノール型のポリオキシアルキレン変性体は、ビスフェノール型分子骨格の活性水素部分にアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等)を付加反応させて得られるポリエーテルポリオールであり、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。上記ビスフェノール型のポリオキシアルキレン変性体は、ビスフェノール型分子骨格の両末端に、1種又は2種以上のアルキレンオキシドが付加されていることが好ましい。上記ビスフェノール型としては特に限定されず、A型、F型、S型等が挙げられ、好ましくはビスフェノールA型である。
【0034】
上記ポリアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール、水素化ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0035】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートポリオール、ポリシクロヘキサンジメチレンカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0036】
上記湿気硬化型ウレタン樹脂の原料となるポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物が好適に用いられる。
上記芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの液状変性物、ポリメリックMDI、トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート等が挙げられる。
上記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
上記ポリイソシアネート化合物としては、なかでも、蒸気圧及び毒性の低い点、扱いやすさの点からジフェニルメタンジイソシアネート及びその変性物が好ましい。
上記ポリイソシアネート化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0037】
また、上記湿気硬化型ウレタン樹脂は、下記式(2)で表される構造を有するポリオール化合物を用いて得られたものであることが好ましい。下記式(2)で表される構造を有するポリオール化合物を用いることにより、接着性に優れる組成物、及び、柔軟で伸びがよい硬化物を得ることができ、後述する光重合性化合物との相溶性に優れるものとなる。
なかでも、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)化合物の開環重合化合物、又は、メチル基等の置換基を有するテトラヒドロフラン化合物の開環重合化合物からなるポリエーテルポリオールを用いたものが好ましい。
【0038】
【0039】
式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、lは、0~5の整数、mは、1~500の整数、nは、1~10の整数である。lは、0~4であることが好ましく、mは、50~200であることが好ましく、nは、1~5であることが好ましい。
なお、lが0の場合とは、Rと結合した炭素が直接酸素と結合している場合を意味する。
【0040】
上記加水分解性シリル基含有樹脂は、分子内の加水分解性シリル基が空気中又は被着体中の水分と反応して硬化する。
上記加水分解性シリル基含有樹脂は、1分子中に加水分解性シリル基を1個のみ有していてもよいし、2個以上有していてもよい。なかでも、分子の主鎖両末端に加水分解性シリル基を有することが好ましい。
【0041】
上記加水分解性シリル基は、下記式(3)で表される。
【0042】
【0043】
式(3)中、R4は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上20以下アリール基、炭素数7以上20以下のアラルキル基、又は、-OSiR5
3(R5は、それぞれ独立に、炭素数1以上20以下の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基である。また、式(3)中、Xは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基又は加水分解性基である。更に、式(3)中、aは、1~3の整数である。
【0044】
上記加水分解性基は特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。なかでも、活性が高いことから、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基が好ましく、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことから、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が更に好ましい。また、安全性の観点からは、反応により脱離する化合物がそれぞれエタノール、アセトンである、エトキシ基、イソプロペノキシ基が好ましい。
【0045】
上記ヒドロキシ基又は上記加水分解性基は、1個のケイ素原子に対して、1~3個の範囲で結合することができる。上記ヒドロキシ基又は上記加水分解性基が1個のケイ素原子に対して2個以上結合する場合には、それらの基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
上記式(3)におけるaは、硬化性の観点から、2又は3であることが好ましく、3であることが特に好ましい。また、保存安定性の観点からは、aは、2であることが好ましい。
【0047】
また、上記式(3)におけるR4としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、トリメチルシロキシ基、クロロメチル基、メトキシメチル基等が挙げられる。なかでも、メチル基が好ましい。
【0048】
上記加水分解性シリル基としては、例えば、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(クロロメチル)ジエトキシシリル基、(ジクロロメチル)ジメトキシシリル基、(1-クロロエチル)ジメトキシシリル基、(1-クロロプロピル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(エトキシメチル)ジメトキシシリル基、(1-メトキシエチル)ジメトキシシリル基、(アミノメチル)ジメトキシシリル基、(N,N-ジメチルアミノメチル)ジメトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジエトキシシリル基、(N-(2-アミノエチル)アミノメチル)ジメトキシシリル基、(アセトキシメチル)ジメトキシシリル基、(アセトキシメチル)ジエトキシシリル基等が挙げられる。
【0049】
上記加水分解性シリル基含有樹脂としては、例えば、加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル樹脂、分子鎖末端又は分子鎖末端部位に加水分解性シリル基を有する有機重合体、加水分解性シリル基含有ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0050】
上記加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル樹脂は、主鎖に加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとに由来する繰り返し構造単位を有することが好ましい。
【0051】
上記加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(メチルジメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(トリメトキシシリル)エチル、(メタ)アクリル酸2-(トリエトキシシリル)エチル、(メタ)アクリル酸2-(メチルジメトキシシリル)エチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルメチル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルメチル、(メタ)アクリル酸(メチルジメトキシシリル)メチル等が挙げられる。
【0052】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0053】
上記加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル樹脂を製造する方法としては、具体的には例えば、国際公開第2016/035718号に記載されている加水分解性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体の合成方法等が挙げられる。
【0054】
上記分子鎖末端又は分子鎖末端部位に加水分解性シリル基を有する有機重合体は、主鎖の末端及び側鎖の末端の少なくともいずれかに加水分解性シリル基を有する。
上記主鎖の骨格構造は特に限定されず、例えば、飽和炭化水素系重合体、ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体等が挙げられる。
【0055】
上記ポリオキシアルキレン系重合体としては、例えば、ポリオキシエチレン構造、ポリオキシプロピレン構造、ポリオキシブチレン構造、ポリオキシテトラメチレン構造、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体構造、ポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体構造を有する重合体等が挙げられる。
【0056】
上記分子鎖末端又は分子鎖末端部位に加水分解性シリル基を有する有機重合体を製造する方法としては、具体的には例えば、国際公開第2016/035718号に記載されている、分子鎖末端又は分子鎖末端部位のみに架橋性シリル基を有する有機重合体の合成方法が挙げられる。また、上記分子鎖末端又は分子鎖末端部位に加水分解性シリル基を有する有機重合体を製造する他の方法としては、例えば、国際公開第2012/117902号に記載されている反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の合成方法等が挙げられる。
【0057】
上記加水分解性シリル基含有ポリウレタン樹脂を製造する方法としては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタン樹脂を製造する際に、更に、シランカップリング剤等のシリル基含有化合物を反応させる方法等が挙げられる。具体的には例えば、特開2017-48345号公報に記載されている加水分解性シリル基を有するウレタンオリゴマーの合成方法等が挙げられる。
【0058】
上記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが好ましい。これらのシランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0059】
上記加水分解性シリル基含有樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エクセスターS2410、エクセスターS2420、エクセスターS3430(いずれもAGC社製)、XMAP SA-100S、サイリルMA440(いずれもカネカ社製)等が挙げられる。
【0060】
更に、上記湿気硬化型樹脂は、ラジカル重合性官能基を有していてもよい。
上記湿気硬化型樹脂が有していてもよいラジカル重合性官能基としては、不飽和二重結合を有する基が好ましく、特に反応性の面から(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
なお、ラジカル重合性官能基を有する湿気硬化型樹脂は、後述するラジカル重合性化合物には含まず、湿気硬化型樹脂として扱う。
【0061】
上記湿気硬化型樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は800、好ましい上限は1万である。上記湿気硬化型樹脂の重量平均分子量がこの範囲であることにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が硬化時に架橋密度が高くなり過ぎずに柔軟性により優れるものとなり、かつ、塗布性により優れるものとなる。上記湿気硬化型樹脂の重量平均分子量のより好ましい下限は2000、より好ましい上限は8000、更に好ましい下限は2500、更に好ましい上限は6000である。
なお、本明細書において上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。また、GPCで用いる溶媒としては、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0062】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物が後述する光重合性化合物を含有する場合、上記湿気硬化型樹脂の含有量は、上記光重合性化合物と上記湿気硬化型樹脂との合計100重量部に対して、好ましい下限が20重量部、好ましい上限が90重量部である。上記湿気硬化型樹脂の含有量がこの範囲であることにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が湿気硬化性及び光硬化性により優れるものとなる。上記湿気硬化型樹脂の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は75重量部、更に好ましい下限は41重量部、更に好ましい上限は70重量部である。
【0063】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、光重合性化合物を含有していてもよい。この場合、光硬化と湿気硬化との両方の硬化メカニズムを作用させることができるため、湿気硬化による接着性に加え、光硬化による形状安定性や硬化速度の向上が期待できる。従って、湿気硬化性樹脂組成物として半導体チップの接着のみならず、電子部品や筐体における狭額縁接着にも好ましく用いることができる。
【0064】
上記光重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物が好適に用いられる。
上記ラジカル重合性化合物としては、光重合性を有するラジカル重合性化合物であればよく、分子中にラジカル重合性官能基を有する化合物であれば特に限定されないが、ラジカル重合性官能基として不飽和二重結合を有する化合物が好適であり、特に反応性の面から(メタ)アクリル化合物が好適である。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味する。
【0065】
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。また、上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物のイソシアネート基は、全てウレタン結合の形成に用いられ、上記ウレタン(メタ)アクリレートは、残存イソシアネート基を有さない。
【0066】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、各種イミド(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
【0067】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0070】
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0071】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレート、ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYL RDX63182等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EA-1010、EA-1020、EA-5323、EA-5520、EA-CHD、EMA-1020等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシエステルM-600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA等が挙げられる。
上記ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、デナコールアクリレートDA-141、デナコールアクリレートDA-314、デナコールアクリレートDA-911等が挙げられる。
【0072】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、イソシアネート化合物に対して、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0073】
上記イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0074】
また、上記イソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0075】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記三価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0076】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレート、ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレート、根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、M-1100、M-1200、M-1210、M-1600等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL8411、EBECRYL8412、EBECRYL8413、EBECRYL8804、EBECRYL8803、EBECRYL8807、EBECRYL9260、EBECRYL1290、EBECRYL5129、EBECRYL4842、EBECRYL210、EBECRYL4827、EBECRYL6700、EBECRYL220、EBECRYL2220、KRM7735、KRM-8295等が挙げられる。
上記根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、アートレジンUN-9000H、アートレジンUN-9000A、アートレジンUN-7100、アートレジンUN-1255、アートレジンUN-330、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-1200TPK、アートレジンSH-500B等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、U-2HA、U-2PHA、U-3HA、U-4HA、U-6H、U-6LPA、U-6HA、U-10H、U-15HA、U-122A、U-122P、U-108、U-108A、U-324A、U-340A、U-340P、U-1084A、U-2061BA、UA-340P、UA-4100、UA-4000、UA-4200、UA-4400、UA-5201P、UA-7100、UA-7200、UA-W2A等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、AI-600、AH-600、AT-600、UA-101I、UA-101T、UA-306H、UA-306I、UA-306T等が挙げられる。
【0077】
また、上述した以外のその他のラジカル重合性化合物も適宜使用することができる。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
上記(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
上記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム等が挙げられる。
【0078】
上記ラジカル重合性化合物は、硬化性を調整する等の観点から、単官能ラジカル重合性化合物と多官能ラジカル重合性化合物とを含有することが好ましい。上記単官能ラジカル重合性化合物と上記多官能ラジカル重合性化合物とを含有することにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が硬化性及びタック性により優れるものとなる。なかでも、上記多官能ラジカル重合性化合物としてウレタン(メタ)アクリレートを上記単官能ラジカル重合性化合物と組み合わせて用いることが好ましい。また、上記多官能ラジカル重合性化合物は、2官能又は3官能であることが好ましく、2官能であることがより好ましい。
【0079】
上記ラジカル重合性化合物が、上記単官能ラジカル重合性化合物と上記多官能ラジカル重合性化合物とを含有する場合、上記多官能ラジカル重合性化合物の含有量は、上記単官能ラジカル重合性化合物と上記多官能ラジカル重合性化合物との合計100重量部に対して、好ましい下限が2重量部、好ましい上限が45重量部である。上記多官能ラジカル重合性化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が硬化性及びタック性により優れるものとなる。上記多官能ラジカル重合性化合物の含有量のより好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は35重量部である。
【0080】
上記光重合性化合物の含有量は、上記光重合性化合物と上記湿気硬化型樹脂との合計100重量部に対して、好ましい下限が10重量部、好ましい上限が80重量部である。上記光重合性化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が光硬化性及び湿気硬化性により優れるものとなる。上記光重合性化合物の含有量のより好ましい下限は25重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は59重量部である。
【0081】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、光重合開始剤を含有していてもよい。
上記光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等が挙げられる。
【0082】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、BASF社製の光ラジカル重合開始剤、東京化成工業社製の光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
上記BASF社製の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE784、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、IRGACURE TPO等が挙げられる。
上記東京化成工業社製の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0083】
上記光重合開始剤の含有量は、上記光重合性化合物と上記湿気硬化型樹脂との合計100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記光重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が光硬化性及び保存安定性により優れるものとなる。上記光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0084】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、光酸発生剤を含有することが好ましい。上記光酸発生剤を含有することにより、上記感光性着色剤の着色反応を促進することができる。
【0085】
上記光酸発生剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生型であってもよいし、非イオン性光酸発生型であってもよい。
【0086】
上記イオン性光酸発生型の光酸発生剤のアニオン部分としては、例えば、アニオン部分がBF4
-、PF6
-、SbF6
-、(BX4)-(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)等が挙げられる。
上記イオン性光酸発生型の光酸発生剤としては、例えば、上記アニオン部分を有する、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩等が挙げられる。
【0087】
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えば、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0088】
上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0089】
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0090】
上記芳香族アンモニウム塩としては、例えば、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0091】
上記(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩としては、例えば、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0092】
上記非イオン性光酸発生型の光酸発生剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドスルホネート等が挙げられる。
【0093】
上記光酸発生剤のうち市販されているものとしては、例えば、サンアプロ社製の光酸発生剤、みどり化学社製の光酸発生剤、ユニオンカーバイド社製の光酸発生剤、ADEKA社製の光酸発生剤、3M社製の光酸発生剤、BASF社製の光酸発生剤、ローディア社製の光酸発生剤等が挙げられる。
上記サンアプロ社製の光酸発生剤としては、例えば、CPI-100P、CPI-200K、CPI-210S等が挙げられる。
上記みどり化学社製の光酸発生剤としては、例えば、DTS-200等が挙げられる。
上記ユニオンカーバイド社製の光酸発生剤としては、例えば、UVI6990、UVI6974等が挙げられる。
上記ADEKA社製の光酸発生剤としては、例えば、SP-150、SP-170等が挙げられる。
上記3M社製の光酸発生剤としては、例えば、FC-508、FC-512等が挙げられる。
上記BASF社製の光酸発生剤としては、例えば、IRGACURE261、IRGACURE290等が挙げられる。
上記ローディア社製の光酸発生剤としては、例えば、PI2074等が挙げられる。
【0094】
上記光酸発生剤の含有量は、硬化性樹脂成分100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記光酸発生剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が着色性及び接着性により優れるものとなる。上記光酸発生剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は4重量部である。
【0095】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、増感剤を含有することが好ましい。上記増感剤は、上記光酸発生剤による上記感光性着色剤の着色反応の促進効果をより向上させる役割を有する。
【0096】
上記増感剤としては、例えば、2-(4-メチルフェニルスルホニル)フェノール、脂肪酸アミド、エーテル類、シュウ酸エステル類、ナフトエ酸エステル類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類、フタル酸ジエステル類、スルホンアミド類、炭化水素化合物、ビスフェノールS誘導体、ビスフェノールA誘導体、各種ワックス類、芳香族カルボン酸とアミンとの縮合物、高級直鎖グリコール類、高級ケトン類等が挙げられる。
上記脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、ステアリン酸メチロールアミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、ヤシ油脂肪酸アミド等が挙げられる。
上記エーテル類としては、例えば、1,2-ビスフェノキシエタン、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン、1,4-ジメトキシナフタレン、1,4-ジベンジルオキシナフタレン、ベンジルオキシチオフェニルエーテル、2-ベンジルオキシナフタレン、1,2-ビス(フェノキシメチル)ベンゼン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン等が挙げられる。
上記シュウ酸エステル類としては、例えば、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(p-メチルベンジル)、シュウ酸ジ(p-クロロベンジル)等が挙げられる。
上記ナフトエ酸エステル類としては、例えば、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニルエステル等が挙げられる。
上記p-ヒドロキシ安息香酸エステル類としては、例えば、ベンジルオキシ安息香酸ベンジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
上記フタル酸ジエステル類としては、例えば、テレフタル酸ジベンジル等が挙げられる。
上記スルホンアミド類としては、例えば、N-ジベンジルトルエンスルホンアミド、N-ベンジルトルエンスルホンアミド、p-トルエンスルホンアミド等が挙げられる。
上記炭化水素化合物としては、例えば、m-ターフェニル、p-ベンジルビフェニル等が挙げられる。
上記ビスフェノールS誘導体としては、例えば、4,4’-ジ(アリルオキシ)ジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0097】
上記増感剤の含有量は、硬化性樹脂成分100重量部に対して、好ましい下限は0.001重量部、好ましい上限は0.1重量部である。上記増感剤の含有量が0.001重量部以上であることにより、増感効果がより発揮される。上記増感剤の含有量が0.1重量部以下であることにより、吸収が大きくなり過ぎずに深部まで光を伝えることができる。上記増感剤の含有量のより好ましい下限は0.005重量部、より好ましい上限は0.05重量部である。
【0098】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、充填剤を含有することが好ましい。
上記充填剤を含有することにより、本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、好適なチクソ性を有するものとなり、塗布後の形状を充分に保持することができる。
【0099】
上記充填剤は、一次粒子径の好ましい下限が1nm、好ましい上限が50nmである。上記充填剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が塗布性及び塗布後の形状保持性により優れるものとなり、特に、狭額縁設計の表示素子に好適なものとなる。上記充填剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は30nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は20nmである。
なお、上記充填剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記充填剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
また、上記充填剤は、本発明の湿気硬化型樹脂組成物中において二次粒子(一次粒子が複数集まったもの)として存在する場合があり、このような二次粒子の粒子径の好ましい下限は5nm、好ましい上限は500nm、より好ましい下限は10nm、より好ましい上限は100nmである。上記充填剤の二次粒子の粒子径は、本発明の湿気硬化型樹脂組成物又はその硬化体を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより測定することができる。
【0100】
上記充填剤としては、無機充填剤が好ましく、例えば、シリカ、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、紫外線透過性に優れることから、シリカが好ましい。これらの充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0101】
上記充填剤は、疎水性表面処理がなされていることが好ましい。上記疎水性表面処理により、得られる湿気硬化型樹脂組成物が塗布後の形状保持性により優れるものとなる。
上記疎水性表面処理としては、シリル化処理、アルキル化処理、エポキシ化処理等が挙げられる。なかでも、形状保持性を向上させる効果に優れることから、シリル化処理が好ましく、トリメチルシリル化処理がより好ましい。
【0102】
上記充填剤を疎水性表面処理する方法としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等の表面処理剤を用いて充填剤の表面を処理する方法等が挙げられる。
具体的には例えば、上記トリメチルシリル化処理シリカは、シリカをゾルゲル法等の方法で合成し、シリカを流動させた状態で表面処理剤を噴霧する方法や、アルコール、トルエン等の有機溶媒中にシリカを加え、更に、表面処理剤と水とを加えた後、水と有機溶媒とをエバポレーターで蒸発乾燥させる方法等により作製することができる。
【0103】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は20重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が塗布性及び塗布後の形状保持性により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は2重量部、より好ましい上限は15重量部であり、更に好ましい下限は3重量部、更に好ましい上限は10重量部、特に好ましい下限は4重量部である。
【0104】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、更に、必要に応じて、イオン液体、溶剤、金属含有粒子、反応性希釈剤等の添加剤を含有してもよい。
【0105】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、湿気硬化型樹脂と、感光性着色剤と、必要に応じて添加する添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0106】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、含有する水分量が100ppm以下であることが好ましい。上記水分量が100ppm以下であることにより、保存中の上記湿気硬化型樹脂と水分との反応を抑制し、湿気硬化型樹脂組成物が保存安定性により優れるものとなる。上記水分量は80ppm以下であることがより好ましい。
なお、上記水分量は、カールフィッシャー水分測定装置により測定することができる。
【0107】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、25℃で固形でない。
本発明の湿気硬化型樹脂組成物における、コーンプレート型粘度計を用いて25℃、1rpmの条件で測定した粘度の好ましい下限は30Pa・s、好ましい上限は500Pa・sである。上記粘度がこの範囲であることにより、湿気硬化型樹脂組成物を電子部品用接着剤又は表示素子用接着剤に用いる場合に基板等の被着体に塗布する際の作業性により優れるものとなる。上記粘度のより好ましい下限は40Pa・s、より好ましい上限は300Pa・sである。
なお、本発明の湿気硬化型樹脂組成物の粘度が高すぎる場合は、塗布時に加温することで塗布性を向上させることができる。
【0108】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物のチクソトロピックインデックスの好ましい下限は1.3、好ましい上限は5.0である。上記チクソトロピックインデックスがこの範囲であることにより、得られる湿気硬化型樹脂組成物が塗布性及び塗布後の形状保持性により優れるものとなる。この形状保持性は、例えば、狭額縁設計の表示素子においては、塗布幅を保持し得る点で技術的意義が大きい。また、微細な半導体チップの接着においては接着面からはみ出ない状態を保持し得る点で技術的意義が大きい。上記チクソトロピックインデックスのより好ましい上限は4.0である。
なお、本明細書において上記チクソトロピックインデックスとは、コーンプレート型粘度計を用いて25℃、1rpmの条件で測定した粘度を、コーンプレート型粘度計を用いて25℃、10rpmの条件で測定した粘度で除した値を意味する。
【0109】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、厚さ500μmの硬化物の光学濃度(OD値)が1以上であることが好ましい。上記OD値が1以上であることにより、本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、接着状態を確認する際の容易性、隠蔽性、作業性等により優れるものとなる。上記OD値は2以上であることがより好ましい。
なお、上記湿気硬化型樹脂組成物の硬化物のOD値は、光学濃度計を用いて測定することができる。
【0110】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物を用いて好適に接着される被着体としては、金属、ガラス、プラスチック等の各種の被着体が挙げられる。
上記被着体の形状としては、例えば、フィルム状、シート状、板状、パネル状、トレイ状、ロッド(棒状体)状、箱体状、筐体状等が挙げられる。
【0111】
上記金属としては、例えば、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、クロム又はその合金等が挙げられる。
【0112】
上記ガラスとしては、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。
【0113】
上記プラスチックとしては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体樹脂等が挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体等が挙げられる。
上記芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体等が挙げられる。
上記ポリニトリル系樹脂としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体等が挙げられる。
上記ポリメタクリレート系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等が挙げられる。
上記ポリビニル系樹脂としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等が挙げられる。
【0114】
また、上記被着体としては、表面に金属メッキ層を有する複合材料も挙げられ、該複合材料のメッキの下地材としては、例えば、上述した、金属、ガラス、プラスチック等が挙げられる。
更に、上記被着体としては、金属表面を不動態化処理することにより不動態皮膜を形成した材料も挙げられ、該不動態化処理としては、例えば、加熱処理、陽極酸化処理等が挙げられる。特に、国際アルミニウム合金名が6000番台の材質であるアルミニウム合金等の場合は、上記不動態化処理として硫酸アルマイト処理又はリン酸アルマイト処理を行うことで、接着性を向上させることができる。
【0115】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物を用いて被着体を接着する方法としては、例えば、以下の工程を有する方法等が挙げられる。
即ち、まず、第1の部材に本発明の湿気硬化型樹脂組成物を塗布する工程を行う。次いで、湿気硬化型樹脂組成物を介して上記第1の部材と第2の部材とを貼り合せる工程(貼り合せ工程)を行う。上記貼り合せ工程後、本発明の湿気硬化型樹脂組成物中の湿気硬化型樹脂の湿気硬化により上記第1の部材と上記第2の部材とが接着される工程(湿気硬化工程)を行う方法等が挙げられる。また、本発明の湿気硬化型樹脂組成物が光重合性化合物を含有する場合は、上記第1の部材に本発明の湿気硬化型樹脂組成物を塗布した後、本発明の湿気硬化型樹脂組成物に光を照射し、本発明の湿気硬化型樹脂組成物中の光重合性化合物を硬化させる工程(光硬化工程)を行うことが好ましい。この場合、上記貼り合せ工程後に光を照射する工程を含むことが好ましい。上記貼り合わせ工程後に光を照射する工程を含むことで、被着体との接着直後の接着性(初期接着性)を向上させることができる。上記第1の部材及び/又は上記第2の部材が光を透過する材質である場合は、光を透過する上記第1の部材及び/又は上記第2の部材越しに光を照射することが好ましい。また、上記第1の部材及び/又は上記第2の部材が光を透過し難い材質である場合は、上記第1の部材と上記第2の部材とが上記湿気硬化型樹脂組成物を介して接着された構造体の側面、即ち、湿気硬化型樹脂組成物が露出された部分に光を照射することが好ましい。
【0116】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は、電子部品用接着剤や表示素子用接着剤に好適に用いることができる。本発明の湿気硬化型樹脂組成物を用いてなる電子部品用接着剤、及び、本発明の湿気硬化型樹脂組成物を用いてなる表示素子用接着剤もまた、それぞれ本発明の1つである。
【発明の効果】
【0117】
本発明によれば、着色性及び硬化性に優れ、かつ、退色を抑制することができる湿気硬化型樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該湿気硬化型樹脂組成物を用いてなる電子部品用接着剤及び表示素子用接着剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1】(a)は、接着性評価用サンプルを上から見た場合を示す模式図であり、(b)は、接着性評価用サンプルを横から見た場合を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0119】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0120】
(合成例1(湿気硬化型ウレタン樹脂Aの作製))
ポリオール化合物として100重量部のポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学社製、「PTMG-2000」)と、0.01重量部のジブチル錫ジラウレートとを500mL容のセパラブルフラスコに入れ、真空下(20mmHg以下)、100℃で30分間撹拌し、混合した。その後常圧とし、ポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタンジイソシアネート(日曹商事社製、「Pure MDI」)26.5重量部を入れ、80℃で3時間撹拌して反応させ、湿気硬化型ウレタン樹脂A(重量平均分子量2700)を得た。
【0121】
(合成例2(湿気硬化型ウレタン樹脂Bの作製))
ポリオール化合物として100重量部のポリプロピレングリコール(AGC社製、「EXCENOL 2020」)と、0.01重量部のジブチル錫ジラウレートとを500mL容のセパラブルフラスコに入れ、真空下(20mmHg以下)、100℃で30分間撹拌し、混合した。その後常圧とし、ポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタンジイソシアネート(日曹商事社製、「Pure MDI」)26.5重量部を入れ、80℃で3時間撹拌して反応させ、湿気硬化型ウレタン樹脂B(重量平均分子量2900)を得た。
【0122】
(合成例3(湿気硬化型ウレタン樹脂Cの作製))
合成例1と同様にして得られた湿気硬化型ウレタン樹脂A100重量部の入った反応容器に、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM-803」)9.8重量部を添加した。その後、80℃で1時間撹拌混合し、分子末端にイソシアネート基とトリメトキシシリル基とを有する湿気硬化型ウレタン樹脂C(重量平均分子量3100)を得た。
【0123】
(実施例1~10、比較例1、2)
表1に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌装置(シンキー社製、「あわとり練太郎」)にて撹拌した後、セラミック3本ロールにて均一に混合して実施例1~10、比較例1、2の湿気硬化型樹脂組成物を得た。
【0124】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各湿気硬化型樹脂組成物について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0125】
(着色性)
実施例及び比較例で得られた各湿気硬化型樹脂組成物を、500μm厚みのテフロン(登録商標)小片をギャップ剤として表面に有するスライドガラス上に塗布した。その上に更に別のスライドガラスを重ね、UV-LED(波長365nm)を用いて、3000mJ/cm2の紫外線を照射し、一晩放置することにより湿気硬化させて、厚さ500μmの着色性試験片を得た。得られた着色性試験片について、光学濃度計(X-rite社製、「スペクトロメーター」)を用いて光学濃度(OD値)を測定した。
OD値が1.5以上であった場合を「○」、1以上1.5未満であった場合を「△」、1未満であった場合を「×」として、着色性を評価した。
【0126】
(接着性)
実施例及び比較例で得られた各湿気硬化型樹脂組成物を、ディスペンス装置を用いて、ポリカーボネート基板上に約1mmの幅で塗布した。実施例9、10で得られた各湿気硬化型樹脂組成物については、ギャップ剤として100μm厚みのテフロン(登録商標)小片を撹拌装置によって均一に分散させてからポリカーボネート基板上に塗布した。次いで、UV-LED(波長365nm)を用いて、紫外線を3000mJ/cm
2照射することによって、湿気硬化型樹脂組成物を光硬化させた後、別のポリカーボネート基板を重ね、20gの重りを置き、一晩放置することにより湿気硬化させて、接着性評価用サンプルを得た。
図1に接着性評価用サンプルを上から見た場合を示す模式図(
図1(a))、及び、接着性評価用サンプルを横から見た場合を示す模式図(
図1(b))を示した。
得られた各接着性評価用サンプルを85℃、85RH%の恒温恒湿オーブンに入れ、地面に対して100gの重りを垂直につるし、24時間静置した。24時間静置後のズレが1mm以下であった場合を「○」、1mmを超え3mm以下であった場合を「△」、3mmを超えた場合を「×」として、湿気硬化型樹脂組成物の接着性を評価した。
【0127】
(退色防止性)
実施例及び比較例で得られた各湿気硬化型樹脂組成物を、500μm厚みのテフロン(登録商標)小片をギャップ剤として表面に有するスライドガラス上に塗布した。その上に更に別のスライドガラスを重ね、UV-LED(波長365nm)を用いて、3000mJ/cm2の紫外線を照射し、一晩放置することにより湿気硬化させて、厚さ500μmの試験片を得た。得られた試験片について、光学濃度計(X-rite社製、「スペクトロメーター」)を用いて光学濃度(OD値)Aを測定した。次に、各試験片を60℃90%RH環境下で、72時間放置した後、光学濃度計を用いて光学濃度(OD値)Bを測定した。
A-B<0.2であった場合を「○」、0.2≦A-B<0.5であった場合を「△」、0.5≦A-Bであった場合を「×」として退色防止性を評価した。
【0128】
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明によれば、着色性及び硬化性に優れ、かつ、退色を抑制することができる湿気硬化型樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該湿気硬化型樹脂組成物を用いてなる電子部品用接着剤及び表示素子用接着剤を提供することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 ポリカーボネート基板
2 湿気硬化型樹脂組成物