(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】短絡電流遮断回路
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20220614BHJP
H03K 17/567 20060101ALI20220614BHJP
H03K 17/08 20060101ALI20220614BHJP
H02H 3/24 20060101ALI20220614BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220614BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20220614BHJP
H02H 7/26 20060101ALI20220614BHJP
H01H 33/59 20060101ALN20220614BHJP
【FI】
H02J1/00 309D
H03K17/567
H03K17/08 Z
H02H3/24 A
H02J7/00 S
H02J1/00 309Q
H02H3/087
H02H7/26 A
H01H33/59 A
(21)【出願番号】P 2019013726
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 雄治
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐治
(72)【発明者】
【氏名】片山 幸弘
【審査官】原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-130869(JP,A)
【文献】特開平08-308093(JP,A)
【文献】特開平07-307469(JP,A)
【文献】特開2007-110844(JP,A)
【文献】特開2014-055902(JP,A)
【文献】特開2015-136264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/28-33/59
H02H 1/00-3/253
7/00
7/10-7/30
99/00
H02J 1/00-1/16
7/00-7/12
7/34-11/00
H03K 17/00-17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源設備における直流電源母線の所定の電圧降下を検出して光信号を出力する検出器と、
蓄電池と前記直流電源母線との接続を開閉するスイッチングデバイスと、
前記検出器の出力する光信号に基づいて、前記スイッチングデバイスに前記蓄電池と前記直流電源母線とを遮断する制御信号を出力する制御装置と、
を備え
、
前記スイッチングデバイスは、順方向素子と逆方向素子が並列に接続されてなる双方向のデバイスで構成され、前記順方向素子と前記逆方向素子とは異なる制御信号で制御されており、
前記逆方向素子がONからOFFに切り替わり、前記順方向素子がOFFからONに切り換わる際に、前記逆方向素子と前記順方向素子が共にONとなる期間を有する、
ことを特徴とする短絡電流遮断回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記スイッチングデバイスは、複数のスイッチングデバイスが並列に接続されてなる、
ことを特徴とする短絡電流遮断回路。
【請求項3】
請求項1において、
前記スイッチングデバイスと直列に接続されたインピーダンス素子を備え、
前記インピーダンス素子は、前記スイッチングデバイスと前記直流電源母線との間に設けられている、
ことを特徴とする短絡電流遮断回路。
【請求項4】
請求項
1において、
前記順方向素子および前記逆方向素子はIGBTで構成されている、
ことを特徴とする短絡電流遮断回路。
【請求項5】
請求項1において、
前記直流電源母線には、交流電源の交流電圧を整流する充電器の直流電圧が供給されている、
ことを特徴とする短絡電流遮断回路。
【請求項6】
請求項1において、
前記制御装置の出力する制御信号によって、前記蓄電池と前記スイッチングデバイスとの間に備えられた蓄電池遮断器を遮断する、
ことを特徴とする短絡電流遮断回路。
【請求項7】
請求項
5において、
前記制御装置の出力する制御信号によって、前記蓄電池と前記スイッチングデバイスとの間に備えられた蓄電池遮断器を遮断する、
ことを特徴とする短絡電流遮断回路。
【請求項8】
請求項
6または請求項
7において、
前記スイッチングデバイスは、前記制御装置の出力する制御信号によって遮断動作を実施し、
前記蓄電池遮断器は、前記スイッチングデバイスに流れる電流が低減した後に、前記制御装置の出力する制御信号によって遮断動作を実施する、
ことを特徴とする短絡電流遮断回路。
【請求項9】
請求項
5または請求項
7において、
前記充電器の動作信号と、
前記充電器とは異なる第2の充電器の動作信号と、
該第2の充電器の整流した第2の直流電源母線と前記直流電源母線との間の母線連絡回路遮断器を開閉する遮断信号と、
を前記制御装置に入力して前記制御装置の出力を制御する、
ことを特徴とする短絡電流遮断回路。
【請求項10】
請求項
5または請求項
7において、
直流電力の代替電源と前記直流電源母線との間に接続された代替電源遮断器の開閉信号を前記制御装置に入力して前記制御装置の出力を制御する、
ことを特徴とする短絡電流遮断回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡電流遮断回路に関する。特に、直流電源設備における短絡電流の遮断回路に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所内で使用される直流電源設備は、交流電源に接続される充電器と、充電器に接続される蓄電池と、直流設備に給電するための直流電源母線とによって構成されている。
直流電源設備の重要な回路保護のひとつとして短絡事故の対策がある。短絡事故を対象として、蓄電池の遮断器、直流電源母線の遮断器などで保護協調を考慮して実施されている。
短絡事故が発生すると負荷に近い側の遮断器から順次開放し、停電範囲を最小限としつつ事故の除去を行う。
【0003】
直流回路における事故時の電流を遮断する技術として、特許文献1および特許文献2がある。
特許文献1の[要約]には、「[課題]送電損失が少なく、小型化を可能とした直流電流遮断装置を提供する。[解決手段]本実施形態の直流電流遮断装置3は、自励式半導体素子11とサイリスタを直列に接続した半導体素子部と、サイリスタに並列に接続したアレスタ9と、半導体部とキャパシタ10を並列に接続した半導体遮断器5と、半導体遮断器5と直列に接続した電流抑制リアクトル6と、半導体遮断器5と直列に接続した機械接点式断路器7とを備える。」と記載され、直流電流遮断装置の技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2の日本語の要約には、「半導体スイッチ回路(1)は、高電圧ノード(NH)および低電圧ノード(NL)間に直列接続された複数のスイッチングユニット(2d~2a)と、それぞれ複数のスイッチングユニット(2d~2a)に対応して設けられた複数のダイオード(11d~11a)とを備える。複数のダイオード(11d~11a)のカソードはそれぞれ複数のスイッチングユニット(2d~2a)に接続され、低電圧ノード(NL)に接続されたスイッチングユニット(2a)に対応するダイオード(11a)のアノードは所定の電源電圧を受ける。各スイッチングユニット(2a)は、半導体スイッチング素子(30a)と、半導体スイッチング素子(30a~30d)を駆動するゲート駆動回路(20a)と、対応するダイオード(11a)のカソードから直流電圧を受けてゲート駆動回路(20a)へ駆動電力を供給する直流/直流コンバータ(13a)とを含む。」と記載され、半導体スイッチ回路の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-103427号公報
【文献】国際公開第2015/011949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2に記載された技術は、遮断器と並列にアレスタを接続し、短絡時に発生する過電圧によってアレスタを動作させ、故障電流を低減するものである。アレスタが動作するまでは短絡電流が流れ続けることから、その間に短絡電流が増加し、機器への損傷の可能性が増加するという課題(問題)がある。
また、特許文献1では過電圧を発生させるため、コンデンサを用いるが発電所内の直流電源設備は故障時には数十kA程度の大電流であって、その必要容量も過大なものとなるという課題(問題)がある。
【0007】
本発明は、前記した課題に鑑みて創案されたものであって、直流電源母線の短絡事故による短絡電流を高速に遮断する短絡電流遮断回路を提供することを課題(目的)とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明を以下のように構成した。
すなわち、本発明の短絡電流遮断回路は、直流電源設備における直流電源母線の所定の電圧降下を検出して光信号を出力する検出器と、蓄電池と前記直流電源母線との接続を開閉するスイッチングデバイスと、前記検出器の出力する光信号に基づいて前記スイッチングデバイスに前記蓄電池と前記直流電源母線とを遮断する制御信号を出力する制御装置と、を備え、前記スイッチングデバイスは、順方向素子と逆方向素子が並列に接続されてなる双方向のデバイスで構成され、前記順方向素子と前記逆方向素子とは異なる制御信号で制御されており、前記逆方向素子がONからOFFに切り替わり、前記順方向素子がOFFからONに切り換わる際に、前記逆方向素子と前記順方向素子が共にONとなる期間を有する、ことを特徴とする。
【0009】
また、その他の手段は、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、直流電源母線の短絡事故による短絡電流を高速に遮断する短絡電流遮断回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る短絡電流遮断回路の構成例と、短絡電流遮断回路を適用した直流電源設備の単線による結線例を示す図である。
【
図2】蓄電池から流れる短絡電流の解析波形例を示す図である。
【
図3A】本発明の第1実施形態に係る短絡電流遮断回路における制御装置の第1の論理回路構成例を示す図である。
【
図3B】本発明の第1実施形態に係る短絡電流遮断回路における制御装置の第2の論理回路構成例を示す図である。
【
図3C】本発明の第1実施形態に係る短絡電流遮断回路における制御装置の第3の論理回路構成例を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る短絡電流遮断回路の構成例と、短絡電流遮断回路を適用した自系の充電器と予備充電器と可搬電源とを備えた直流電源設備の単線による結線例を示す図である。
【
図5A】本発明の第2実施形態に係る短絡電流遮断回路における制御装置の第1の論理回路構成例を示す図である。
【
図5B】本発明の第2実施形態に係る短絡電流遮断回路における制御装置の第2の論理回路構成例を示す図である。
【
図5C】本発明の第2実施形態に係る短絡電流遮断回路における制御装置の第3の論理回路構成例を示す図である。
【
図5D】本発明の第2実施形態に係る短絡電流遮断回路における制御装置の第4の論理回路構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下においては「実施形態」と表記する)を、適宜、図面を参照して説明する。
【0013】
≪第1実施形態≫
本発明の第1実施形態に係る短絡電流遮断回路(短絡電流遮断装置)の構成と機能を、適宜、
図1、
図2、
図3A,3B,3Cを参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る短絡電流遮断回路100の構成例と、短絡電流遮断回路100を適用した直流電源設備の単線による結線例を示す図である。
図1において、電源関連としては、交流電源101と直流電源母線103と蓄電池105が設けられている。
また、
図1において、短絡電流遮断回路100、充電器102、直流負荷104、蓄電池遮断器111、負荷遮断器114が設けられている。
【0014】
図1における交流電源101は、発電所内の交流電源である。交流電源101と直流電源母線103との間に充電器102が備えられている。充電器102は、整流器を内蔵しており、交流電源101の交流電圧(交流電力)を整流して、直流電源母線103に直流電圧(直流電力)を供給している。また、充電器102の運転状態(稼働状態)を示す信号として、動作信号(通信線)1102が短絡電流遮断回路100に出力されている。
直流負荷(負荷)104は、負荷遮断器114を介して直流電源母線103に接続されている。直流電源母線103から直流負荷104に直流電力が供給される。
また、直流電源母線103は、短絡電流遮断回路100と蓄電池遮断器111とを介して蓄電池105に接続されている。蓄電池105は、直流電源母線103から直流電力の供給を受ける。また、状況に応じて蓄電池105は、直流電源母線103に直流電力を供給する。
【0015】
以上の構成において、交流電源101が正常に交流電力を供給する通常運転時は、前記したように、充電器102から出力される直流電力(直流電圧)を、直流電源母線103を介して、直流負荷104への給電と、蓄電池105の充電とを行う。
交流電源101の停止時は、充電器102の直流電力(直流電圧)の出力が無くなり、蓄電池105から蓄電池遮断器111と短絡電流遮断回路100とを介して直流電源母線103に直流電力(直流電圧)を給電する。
【0016】
なお、前記したように、
図1は直流電源設備の単線による結線例である。
図1において、直流電源母線103は1本で記載しているが、実際には正負の2本の母線を備えて構成されている。
また、交流電源101は、例えば3相交流電源または単相交流電源である。交流電源101が3相交流電源である場合には、充電器102は、3相交流を整流して直流に変換し、直流電源母線103に直流電力(直流電圧)を供給する。
【0017】
《短絡電流遮断回路100》
短絡電流遮断回路100は、複数のスイッチングデバイス107、複数のインピーダンス素子108、遮断回路母線106A,106B、検出器109、制御装置110、光通信線(通信線)1109、通信線1110、制御線1100(制御線1148,1149,1111を含む)を備えて構成されている。
スイッチングデバイス107は、インピーダンス素子108と直列接続されている。また、スイッチングデバイス107の一方の端子が遮断回路母線106Bに接続され、インピーダンス素子108の一方の端子が遮断回路母線106Aに接続されている。遮断回路母線106Aは、直流電源母線103に接続されている。遮断回路母線106Bは、蓄電池遮断器111の一方の端子に接続されている。
【0018】
また、遮断回路母線106Aと遮断回路母線106Bとの間には、スイッチングデバイス107とインピーダンス素子108の直列回路が複数、接続されている。スイッチングデバイス107が単体では、電流の遮断が困難な場合があるため、スイッチングデバイス107を複数、並列接続することによって、1個あたりに流れる電流値を低減する。
なお、直流電源母線103の短絡事故の際には、検出器109で直流電圧の低下を検出し、その検出信号を光通信線1109で制御装置110に伝達し、制御装置110の制御信号で、スイッチングデバイス107と蓄電池遮断器111とを遮断(電路の開放動作)する。
また、通信線1110は複数の通信線(信号線)からなり、光通信線1109と、充電器102の動作信号を伝送する通信線1102が含まれている。そのため、光通信線1109は、実際には、検出器109と制御装置110との間の比較的に長い距離を光通信によって信号を伝達する。
【0019】
スイッチングデバイス107は、複数の半導体素子を備えて構成されている。
図1においては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成された順方向素子148と逆方向素子149が並列に接続されて構成されている。
順方向素子148のコレクタと逆方向素子149のエミッタが蓄電池105側の遮断回路母線106Bに接続され、順方向素子148のエミッタと逆方向素子149のコレクタが直流電源母線103側の遮断回路母線106Aに接続されている。
【0020】
なお、順方向素子と逆方向素子の観点は、蓄電池105に流れる電流の方向から表記している。つまり、蓄電池105が直流電源母線103に直流電力を供給(放電)する場合に機能するのが順方向素子148であり、蓄電池105が直流電源母線103から直流電力を需給(充電)する場合に機能するのが逆方向素子149であると呼称している。
そのため、蓄電池105の充電時は、逆方向素子149をON(導通)とし、順方向素子148をOFF(非導通)とする。
また、蓄電池105の放電時は、順方向素子148をON(導通)とし、逆方向素子149をOFF(非導通)とする。
【0021】
また、インピーダンス素子108は、スイッチングデバイス107の過電流を防止するための回路素子である。つまり、複数の並列構成のスイッチングデバイス107が動作するが、一つのスイッチングデバイス107の遮断動作が遅れた場合に、この動作遅れのスイッチングデバイス107に電流が集中して過大な電流が流れるのを、インピーダンス素子108を備えることによって、防止、低減するためのものである。
複数のインピーダンス素子108の保護作用によって、複数のスイッチングデバイス107が、所定の電流値以下で適正に遮断動作が行われる。そして、複数のスイッチングデバイス107の電流値の合計が充分に低減されることによって、蓄電池遮断器111が、蓄電池105を直流電源母線103から支障なく遮断することが可能となり、蓄電池遮断器111は遮断動作を実施する。
【0022】
また、スイッチングデバイス107は、直流電源母線103の短絡事故後、マイクロ秒~ミリ秒で遮断電流を絞り込む動作を開始する。また、蓄電池遮断器111は、直流電源母線103の短絡事故検知後、遮断動作に概ね数十ミリ秒を要する。
なお、流れる電流を充分に低減させることなく、蓄電池遮断器111をOFF(開放)すると、回路に寄生するインダクタンスによって異常な高電圧が発生して、蓄電池遮断器111や関連する直流電源設備を損傷する可能性がある。
【0023】
検出器109は、直流電源母線103の電圧を監視している。直流電源母線103の電圧が所定の閾値以下に低下したことを検出した場合に、直流電源母線103の短絡事故と判定する。この所定の電圧の閾値は、通常では生じる恐れのない電圧値とし、例えば定格電圧の50%とする。なお、前記の電圧の閾値は、直流設備の信頼性などを考慮して変更可能である。
検出器109は、フォトカプラなどの電気から光への変換器を備えている。検出器109は、直流電源母線103の閾値以下の電圧降下(短絡事故)と判定した場合に、光通信線1109を通じて、制御装置110に光信号を伝達する。
なお、直流電源母線103の電圧が正常(閾値超)である場合には、光信号をON(発光)して、電圧が異常(閾値以下)である場合には、光信号をOFF(消光)する。
【0024】
また、前記したように、
図1においては、光通信線1109と充電器102の動作信号の通信線(信号線)1102とを併せて通信線1110と表記している。光通信線1109は、光信号であるが、通信線1102は電気信号でも光信号でもよい。
また、光通信線1109は、検出器109と制御装置110との間に設けられており、この間の距離が長い場合に、光信号を用いることによって、高速に信号を伝達することができる。すなわち、検出器109は、直流電源母線103の異常な電圧低下(短絡事故)を光通信線1109によって、高速に制御装置110に伝送する。
【0025】
制御装置110は、後記するように論理回路の入力の条件に応じて、スイッチングデバイス107および蓄電池遮断器111の開閉を制御している。
その一つの入力信号として、検出器109からの直流電源母線103の短絡事故の信号を、光通信線1109を介して受け取ると、制御装置110は、制御線1100を介して、スイッチングデバイス107および蓄電池遮断器111に開放(遮断、OFF)の信号であるそれぞれ制御信号1148,1149、開閉信号(遮断信号)1111を送る。
スイッチングデバイス107、および蓄電池遮断器111は、直流電源母線103と蓄電池105との間を開放、すなわち遮断する。
【0026】
なお、
図1においては、制御信号1148,1149と開閉信号(遮断信号)1111を伝送する制御線(1148,1149,1111)とを併せて制御線1100と表記している。すなわち、制御線1100は、順方向素子148を制御する制御線(順方向素子制御線)1148、逆方向素子149を制御する制御線(逆方向素子制御線)1149、蓄電池遮断器111を開放する制御線1111を含んでなる制御線の呼称である。
また、制御線1148,1149のそれぞれに伝達される制御信号1148,1149を簡単化のために、それぞれ制御線と制御信号とに同一の符号を用いて表記している。
同様に、制御線1111に伝達される制御信号1111を簡単化のために、制御線と制御信号とに同一の符号を用いて表記している。
【0027】
また、前記したように、蓄電池遮断器111は、複数のスイッチングデバイス107のみで電流が遮断できない場合のバックアップ用として設置する。また、蓄電池遮断器111は、検出器109による信号を受けた制御装置110の出力である制御信号1111によって、回路の開放(遮断動作)を行う。前記したように、まず複数のスイッチングデバイス107が遮断動作を開始して、電流値を所定の適正レベル以下に低減した後に、蓄電池遮断器111の遮断動作を行う。
【0028】
《直流電源母線に短絡事故が発生した場合の蓄電池短絡電流と問題》
次に、直流電源母線103に短絡事故が発生した場合の蓄電池短絡電流、およびそれに関する事象および問題について説明する。
直流電源母線103において、短絡事故が発生すると、例えば蓄電池遮断器111が遮断されない場合には、蓄電池105から短絡電流が故障点(短絡事故発生地点)に向かって流れる。
図2は、蓄電池105から流れる短絡電流の解析波形例を示す図である。
図2において、横軸は時間(時間の推移)、単位は(ms)であり、縦軸は短絡電流の電流値、単位は(kA)である。また横軸において0で示す時点が、短絡事故の発生した時間(時刻)である。
また、特性線1002で示したのが短絡電流の波形例である。
【0029】
図2に示すように、時間0で短絡後、数ミリ秒~数十ミリ秒(ms)程度の時間で急速に電流(特性線1002)が上昇し、最大短絡電流値(概ね2200~2300kA)となる。
なお、
図2に示す電流の特性は、短絡した後の電圧も概ね短絡した時点と同じ電圧と仮定した特性である。ただし、短絡が発生した状態において電圧降下が生じたとしても過大な電流が流れる可能性があることを示している。
蓄電池遮断器111(
図1)の動作は、故障検知後、数十m秒を要することがある。蓄電池遮断器111のみで回路を遮断する場合には、遮断の際に過大な短絡電流が流れており、接続されている蓄電池105の容量によっては、短絡電流が過大となって蓄電池遮断器111の開放が困難となることがある。
特に近年の発電所では、直流負荷への長時間給電が要求されていることから蓄電池105の大容量化が進められている。この大容量化に伴い短絡電流が増加する傾向にあって、短絡電流を遮断するのがより難しくなっていることへの対応が求められている。
この一つの対策として、
図1に示す回路構成を採用している。
【0030】
《短絡事故が発生した場合の動作》
次に、
図1に示した回路構成において、直流電源母線103に短絡事故が発生した場合の動作について説明する。
直流電源母線103において短絡事故が発生すると、直流電源母線103の電圧が低下する。
検出器109では直流電源母線103の電圧を監視している。その電圧により、検出器109に備えられたフォトカプラなどの電気から光への変換器で光信号に変換する。
直流電源母線103の短絡によって、閾値を超える電圧低下が起こると、前記したように、検出器109は、光信号は出力しなくなる。この電圧低下を意味するOFF(消光)された光信号が光通信線1109を介して、制御装置110に伝送される。
制御装置110は、光通信線1109を含む通信線1110を介して電圧低下を把握して、所定の演算により、スイッチングデバイス107と蓄電池遮断器111を遮断する信号(1148,1149,1111)を生成して、その遮断信号をスイッチングデバイス107と蓄電池遮断器111に伝送する。
【0031】
制御装置110から信号を受けて、スイッチングデバイス107は、OFF(遮断)動作を始める。前記したように、直流電源母線103の短絡事故が検出された後、スイッチングデバイス107は、マイクロ秒~ミリ秒で電流を絞り込む動作を開始して、電流(短絡電流)を急速に低減させる。
その後、蓄電池遮断器111は、数十ミリ秒で開放(OFF、遮断)して、短絡電流は0となる。
なお、前記したように、蓄電池遮断器111がOFF(開放、遮断)となる前に、複数のスイッチングデバイス107がOFF(遮断)する動作をして、短絡電流を抑制している。そのため、蓄電池遮断器111は、大電流遮断の負担を掛けられることなく、容易に短絡電流を遮断できる。
【0032】
《制御装置110の第1の論理回路構成例》
図3Aは、本発明の第1実施形態に係る短絡電流遮断回路100における制御装置110の第1の論理回路構成例を示す図である。
図3Aで示した論理回路110Aは、次に示す三つの状況に対応するように構成されている。
【0033】
(1)充電器102が正常に動作している場合
すなわち、充電器102が交流電源101を整流して、直流電力(直流電圧)を直流電源母線103に供給している正常な状況の場合である。
(2)直流電源母線103が短絡事故を発生した場合
すなわち、充電器102が交流電源101の交流電力を整流して直流電力(直流電圧)を直流電源母線103に供給している状況において、直流電源母線103に短絡事故が生じて、蓄電池105を保護するために、スイッチングデバイス107と蓄電池遮断器111を開放(遮断)する場合である。
(3)充電器102の動作を停止する場合
すなわち、交流電源101の供給が停止されて充電器102の動作を停止する場合。または、充電器102の動作を停止して、交流電源101の供給を中止する場合である。なお、直流電源母線103に短絡事故は発生していない場合である。
【0034】
前記の(1)、(2)、(3)の各場合について、順に説明するが、まず(1)の「充電器102が正常に動作している場合」の観点で次に説明する。
【0035】
<(1)充電器102が正常に動作している場合>
図3Aにおいて、制御装置110の論理回路110Aは、入力信号として、検出器109の検出信号1109と、充電器102の動作信号1102を入力する。
なお、光通信線1109(
図1)を伝送される検出器109の検出信号(1109)は、光信号であり、
図3Aに示した検出器109の検出信号1109は電気信号に変換された信号である。簡単化のために、同一の符号(1109)を用いて表記している。
【0036】
また、
図3Aにおける検出器109の検出信号1109は、直流電源母線103の直流電圧が正常(所定の電圧)である場合には、高電位であるH信号である。そして、直流電源母線103の直流電圧の異常(低電圧)を検知した場合に、検出信号1109は低電位であるL信号となる。
なお、検出信号1109は、光信号である場合には、光が送られているときH信号、光が消えた場合(消えている場合)には、L信号に相当して、制御装置110に入力される際、もしくは入力された後に、それぞれH信号およびL信号の電気信号に変換される。
また、充電器102が正常に動作している場合には、充電器102の動作信号1102は、H信号である。
なお、H信号とは、高電位、正電位、1の各信号に相当する。また、L信号とは低電位、負電位、0の各信号に相当する。
【0037】
また、制御装置110の論理回路110Aは、論理的な出力信号としてスイッチングデバイス107の順方向素子148(制御信号1148)と逆方向素子149(制御信号1149)のON/OFF信号(オン・オフ信号)、および蓄電池遮断器111(開閉信号1111)のON/OFF信号をそれぞれ出力する。
また、順方向素子148は、出力信号である制御信号(順方向素子制御信号)1148がH信号の場合にON(導通)する。また逆方向素子149は、出力信号である制御信号(逆方向素子制御信号)1149がH信号の場合にONする。また、蓄電池遮断器111は、開閉信号1111がH信号の場合にON(導通状態)し、L信号の場合にOFF(非導通状態)する。
【0038】
以上の状況を、論理回路110Aにおいては、入力信号として「検出器」、「充電器」と表記し、また出力信号として「逆方向素子」、「順方向素子」、「蓄電池遮断器」とそれぞれ簡略化して表記している。
また、制御信号(順方向素子制御信号)1148が伝送される制御線1148において、簡単化のために、同一の符号(1148)を用いて表記している。
また、制御信号(逆方向素子制御信号)1149が伝送される制御線1149において、簡単化のために、同一の符号(1149)を用いて表記している。
また、開閉信号1111が伝送される制御線1111において、簡単化のために、同一の符号(1111)を用いて表記している。
【0039】
また、
図3Aにおいて、制御装置110の論理回路110Aは、AND回路351と、OR回路361と、NOT回路371を備えている。なお、AND回路とは論理積の回路であり、OR回路とは論理和の回路であり、NOT回路とは論理否定回路(反転回路)をそれぞれ意味するものとする。
AND回路351は、検出器109の検出信号1109と、充電器102の動作信号1102とを入力し、AND(論理積)した結果を逆方向素子149のゲート入力と、OR回路361の第1入力端子とに出力している。
充電器102の動作信号1102は、前記したAND回路351以外に、NOT回路371のゲートに入力している。NOT回路371は、反転した信号をOR回路361の第2入力端子と、順方向素子148のゲート入力とに出力している。
AND回路351の出力信号とNOT回路371の出力信号とを入力したOR回路361の出力は、開閉信号1111として蓄電池遮断器111の制御端子に入力している。
【0040】
以上の論理回路構成により、充電器102が動作状態であって動作信号1102がH信号であり、かつ直流電源母線103の直流電圧が正常であって検出器109(検出信号1109)が高電位であるH信号の場合には、AND回路351はH信号を出力する。そのため、逆方向素子149のゲートがH信号となって、逆方向素子149はON状態(導通状態)となる。
この場合には、交流電源101(
図1)の交流電圧が充電器102(
図1)で整流されて、直流電源母線103に直流電圧が生成され、検出器109は、正常な直流電圧を検出して、検出信号1109がH信号の状態を反映している。
また、OR回路361には、第1入力端子にAND回路351のH信号が入力しているので、OR回路361の出力はH信号となっており、蓄電池遮断器111は、ON状態(導通状態)である。
以上より、交流電源101(
図1)の交流電圧が充電器102(
図1)で整流されて、直流電源母線103に生成された直流電圧(直流電力)が、スイッチングデバイス107の逆方向素子149と蓄電池遮断器111を介して蓄電池105に流入し、蓄電池105を充電する。
【0041】
<(2)直流電源母線103が短絡事故を発生した場合>
次に、「直流電源母線103が短絡事故を発生した場合」の観点で、
図3Aに示した論理回路110Aの動作を次に説明する。
充電器102が交流電源101の交流電力を整流して直流電力(直流電圧)を直流電源母線103に供給している状況において、直流電源母線103に短絡事故が生じると、直流電源母線103の線間の電圧は低下する。
この直流電源母線103の直流電圧の低下を、検出器109は、異常と判定してL信号の検出信号1109を出力する。
図3Aにおいて、検出器109の検出信号1109がL信号になるとAND回路351の出力はL信号となる。
そのため、逆方向素子149は、L信号を受けてOFF(開放)する。
【0042】
また、充電器102(動作信号1102)がH信号の状態を保っていると、NOT回路371の出力は、L信号となって、順方向素子148と蓄電池遮断器111もL信号を受けてOFF状態(開放、遮断状態)となる。
したがって、逆方向素子149、順方向素子148、蓄電池遮断器111は、すべてOFF状態(開放、遮断状態)となって、直流電源母線103の短絡事故が、蓄電池105へ影響を与えることを回避できる。
なお、蓄電池遮断器111かスイッチングデバイス107かのいずれかがOFF状態(開放、遮断状態)であれば、蓄電池105は、直流電源母線103の異常(短絡事故)から保護される。
以上により、直流電源母線103に短絡事故が発生した際に、短絡電流の抑制、および瞬時遮断が可能となる。
【0043】
<(3)充電器102の動作を停止する場合>
次に、「充電器102の動作を停止する場合」、かつ「直流電源母線103に短絡事故は発生していない場合」の観点で、
図3Aに示した論理回路110Aの動作を次に説明する。
つまり、交流電源101の供給が停止されて充電器102の動作を停止する場合、または、充電器102の動作を停止して、交流電源101の供給を中止する場合の論理回路110Aの動作を説明する。
充電器102が交流電源101からの整流動作(充電動作)を停止(L信号)すると、NOT回路371でH信号が生成され、順方向素子148と蓄電池遮断器111は、共にON状態(導通状態)となる。
【0044】
すなわち、直流電源母線103には、交流電源101と充電器102からの直流電力の供給がなくなると、順方向素子148と蓄電池遮断器111が共にON状態(導通状態)となることにより、蓄電池105の直流電力(直流電圧)が直流電源母線103に流入して直流電力(直流電圧)を補完する。つまり、充電器102による蓄電池105への充電と、交流電源停止時の蓄電池105による直流負荷104への瞬時給電とを実現できる。
ただし、充電器102が交流電源101からの整流動作(充電動作)を停止(L信号)した場合に、蓄電池105の直流電力(直流電圧)が直流電源母線103に流入して直流電力を補完すると説明したのは、直流電源母線103における直流電力の供給源についてである。
【0045】
蓄電池105の直流電力(直流電圧)が直流電源母線103に流入して直流電力を補完する場合においては、直流電源母線103が短絡していない場合である。
図3Aに示した回路は、前記の状況を簡易的に示した回路である。直流電源母線103に関わる詳細な状況を示す場合分けをしていない。
なお、蓄電池105の直流電力(直流電圧)が直流電源母線103に流入して直流電力を補完した場合には、直流電源母線103の直流電圧は所定の電圧が確保されるので、検出器109は、正常な直流電圧を検出する。そのため、充電器102が交流電源101からの整流動作(充電動作)を復活(H信号)した場合には、直流電源母線103の直流電力(直流電圧)の供給先として、蓄電池105から、交流電源101に接続された充電器102からの直流電力(直流電圧)に速やかに切り替わる。
また、順方向素子148と逆方向素子149とを並列接続してスイッチングデバイス107を構成していることにより、充電器102が交流電源101を整流して生成した直流電圧と、蓄電池105の直流電圧と、の高い方から低い方へ直流電力(直流電圧)が供給される。
【0046】
なお、前記したように、
図3Aの論理回路は、制御装置110の論理動作を簡明に示すための簡易的に構成、表記した回路である。実際には、様々な状態の場合の組み合わせがあり、それらの状況に応じて、論理回路を再構成することがある。また、状態に応じた信号の切り替わり目において、信号の順序を保つために遅延回路を備える必要となる場合もある。
次に、論理回路を追加する例(
図3B)と遅延回路を追加する例(
図3C)を、順に説明する。
【0047】
《制御装置110の第2の論理回路構成例》
図3Bは、本発明の第1実施形態に係る短絡電流遮断回路100における制御装置110の第2の論理回路構成例を示す図である。
図3Bの論理回路110Bは、
図3Aの論理回路110Aに、入力信号として短絡検出器120とNOT回路372を、さらに設けたものである。
また、
図3AにおけるNOT回路371の代わりにNOR回路391を備えている。NOR回路391の第1入力端子には充電器102の動作信号1102が入力し、第2入力端子にはNOT回路372の出力信号が入力している。また、NOR回路391の出力信号は、順方向素子148のゲートと、OR回路361の第2入力端子に入力している。
なお、NOR回路とは否定論理和の回路である。
この
図3Bにおいて、
図3Aから変更した部分を主体として説明する。また、
図3Aと同じ構成であって重複する部分については、適宜、説明を省略する。
【0048】
図3Bにおいて、短絡検出器120は、直流電源母線103が短絡しているか否かを検出する装置である。直流電源母線103が正常であって、短絡していない場合にはH信号を出力する。また、直流電源母線103が短絡状態の場合には、L信号を出力する。
検出器109が直流電源母線103の異常な電位を検出するのに対して、短絡検出器120は直流電源母線103の短絡状態そのものを検出する。
検出器109は、直流電源母線103の異常な電位を検出するので、高速に直流電源母線103の短絡を検出する。短絡検出器120は、直流電源母線103の短絡状態を確実に検出する手順が必要であるので、検出器109の検出する時間に比較すれば、低速である。
【0049】
そのため直流電源母線103が短絡事故を起こした場合、
図3Bに示す論理回路110Bにおいては、検出器109が直流電源母線103の直流電圧の異常を検知して、逆方向素子149、順方向素子148、蓄電池遮断器111をOFF状態(開放状態、遮断状態)にする。
その後、短絡検出器120が、直流電源母線103が短絡しているか否かを着実に検証して、L信号を出力し、NOT回路372とNOR回路391を介してOR回路361の第2入力端子にL信号を送る。また、検出器109のL信号と共に、OR回路361の出力をL信号として、蓄電池遮断器111を確実に遮断(OFF)する。
また、NOR回路391がL信号となると、順方向素子148も確実にOFF状態となり、蓄電池105の直流電圧(直流電力)が短絡した直流電源母線103に流入するのを防止する。
【0050】
《制御装置110の第3の論理回路構成例》
図3Cは、本発明の第1実施形態に係る短絡電流遮断回路100における制御装置110の第3の論理回路構成例を示す図である。
図3Cの論理回路110Cは、
図3Aの論理回路110AのOR回路361と蓄電池遮断器111との間に、遅延回路381を追加したものである。
図3Cにおけるその他の論理回路構成は、
図3Aと同じ構成である。重複する説明は省略する。
図3Cにおいて、遅延回路381は、開閉信号1111のL信号の伝達を遅らせて、蓄電池遮断器111の遮断動作を遅らせるための回路である。
【0051】
すなわち、検出器109が直流電源母線103の直流電圧降下を検出して、逆方向素子149のOFF動作と蓄電池遮断器111のOFF動作(遮断動作)を行う際に、遅延回路381を設けることによって、逆方向素子149をOFF、すなわちスイッチングデバイス107を先にOFFさせた後、あるいはスイッチングデバイス107に流れる電流を充分に低減した後に、蓄電池遮断器111をOFF(開放、遮断)させるためである。
このように、スイッチングデバイス107をOFF動作させ、流れる電流を充分に低減させた後に、蓄電池遮断器111をOFF(開放)することによって、蓄電池遮断器111を寄生インダクタンス等による遮断時の高圧発生を防ぎ、損傷なく遮断するための回路例である。
【0052】
なお、以上において、制御装置110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等、一般的なコンピュータとしてのハードウエアを有するものを適用して構成する。
このCPU、RAM、ROMの構成を用いて、論理回路110A,110B,110Cの構成と動作を実現する。また、制御装置110の論理回路を前記のようにコンピュータを用いて構成することにより、論理回路110A,110B,110Cなどの回路構成を適宜、変更したり、選択することができて、様々な状況に迅速に対応できる。
【0053】
<第1実施形態の総括>
第1実施形態の短絡電流遮断回路100によれば、直流電源母線103の短絡事故、すなわち直流電圧の異常な降下を検出器109によって直ちに検出する。
検出器109によって検出された直流電源母線103の短絡事故、直流電圧の異常な降下は、光信号として、制御装置110に高速に伝達され、複数のスイッチングデバイス107と蓄電池遮断器111の遮断動作をする。
また、前記のように、スイッチングデバイス107は複数台、並列に備えられているので、直流電源母線103と蓄電池105との間の遮断動作において、短絡電流を素早く低減する。そのため、蓄電池遮断器111は、大電流遮断の負担がなく、無理なく直流電源母線103と蓄電池105との間の短絡電流を遮断する。
このように、直流電源母線103の短絡事故を素早く検知し、直流電源母線103と蓄電池105との間の短絡電流を遮断して、関連する機器の耐量低下および損傷拡大の防止をする。
【0054】
<第1実施形態の効果>
本発明の第1実施形態によれば、直流電源母線103の短絡事故による電圧降下を検出器109で検出し、光信号で制御装置110に高速に伝達する。そして、短絡事故による短絡電流を高速に遮断することによって、過電圧・過電流を防止し、機器の耐量低下および損傷拡大防止を図る短絡電流遮断回路(短絡電流遮断装置)を提供できる。
また、直流電源の運用に支障を与えず、短絡電流の抑制と瞬時遮断を実現する短絡電流遮断回路(短絡電流遮断装置)を提供できる。
【0055】
≪第2実施形態≫
本発明の第2実施形態に係る短絡電流遮断回路の構成と機能を、適宜、
図4、
図5A,5B,5C,5Dを参照して説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る短絡電流遮断回路400の構成例と、短絡電流遮断回路400を適用した自系の充電器(自系充電器、第1の充電器)102と予備充電器(第2の充電器)402と可搬電源(代替電源)406とを備えた直流電源設備の単線による結線例を示す図である。
図4において、電源関連としては、交流電源101、交流電源401、直流電源母線(第1の直流電源母線)103、予備電源母線(第2の直流電源母線)403、蓄電池105が設けられている。
また、
図4において、短絡電流遮断回路400、充電器(自系充電器)102、予備充電器402、直流負荷104、可搬電源(代替電源)406、蓄電池遮断器111、負荷遮断器114、母線連絡回路遮断器415,416、可搬電源遮断器(代替電源遮断器)417が設けられている。
【0056】
以上の構成において、第2実施形態の
図4における交流電源101、直流電源母線103、蓄電池105、充電器102、直流負荷104、蓄電池遮断器111、負荷遮断器114については、第1実施形態の
図1で示した構成と同じであるので重複する説明は、適宜、省略する。
【0057】
図4において、予備充電器402は、交流電源401から交流電力(交流電圧)の供給を受けて整流し、直流電力(直流電圧)を予備電源母線403に供給している。
予備電源母線403と直流電源母線103との間に、母線連絡回路遮断器415および母線連絡回路遮断器416が備えられている。
母線連絡回路遮断器415および母線連絡回路遮断器416は、ON(導通)すると予備充電器402で得られた直流電力(直流電圧)が、予備電源母線403と母線連絡回路遮断器415,416とを介して直流電源母線103に供給される。
なお、予備充電器402で得られた直流電力(直流電圧)が、予備電源母線403を介して直流電源母線103に供給されるのは、充電器102が動作を停止している場合である。
また、代替電源である可搬電源406から、ON状態の可搬電源遮断器417を介して、直流電源母線103に接続された直流電源設備へ電力を融通することができる。
【0058】
また、短絡電流遮断回路400は、複数のスイッチングデバイス107、複数のインピーダンス素子108、遮断回路母線106A,106B、検出器109、制御装置410、光通信線1109、通信線4110,4111を備えて構成されている。なお、通信線4110には、光通信線1109と通信線4111が含まれている。
また、通信線4111には複数の通信線(信号線)1102,4102,4115,4116,4117が含まれ、複数の信号が伝送されている。
また、制御装置410が出力する制御線4100、制御線1148、制御線1149、制御線1111を備えている。なお、制御線4100には、制御線1148,4119,1111が含まれている。
【0059】
以上の構成において、第2実施形態の
図4における複数のスイッチングデバイス107、複数のインピーダンス素子108、遮断回路母線106A,106B、検出器109、光通信線1109は、第1実施形態の
図1で示した構成と同じであるので重複する説明は、適宜、省略する。
また、
図4における制御線1148,1149,1111は、
図1における制御線1148,1149,1111とそれぞれ同じであるので重複する説明は、適宜、省略する。
また、
図4の制御線4100は、前記したように、制御線1148,1149,1111を含んでなる制御線群であって、
図1の制御線1100と実質的に同じであるので、重複する説明は、適宜、省略する。
【0060】
図4に示す第2実施形態の短絡電流遮断回路400において、
図1に示す第1実施形態の短絡電流遮断回路100と異なるのは、制御装置410の構成と、制御装置410に入力する通信線4110である。なお、前記したように、通信線4110は、光通信線1109と通信線4111を併せて表記している。
すなわち、予備充電器402の母線連絡回路遮断器415や可搬電源406の可搬電源遮断器417の動作状況を信号として送信する通信線4111を、制御装置410に取り込んでいる。また、制御装置410は、制御する論理回路構成が制御装置110と異なり、再構成している。
【0061】
<制御装置410の論理回路構成>
次に
図4の制御装置410の論理回路構成例を
図5A,5B,5C,5Dを参照して説明する。
図4の制御装置410の動作は、様々な状態の組み合わせがあって、すべてを一緒に説明すると煩雑である。そのため、様々な状態を場合分けし、第1、第2、第3、第4の論理回路構成例として、それぞれ
図5A、
図5B、
図5C、
図5Dで順に説明する。
【0062】
《制御装置410の第1の論理回路構成例》
図5Aは、本発明の第2実施形態に係る短絡電流遮断回路400における制御装置410の第1の論理回路構成例を示す図である。ただし、自系の充電器(自系充電器)102と、予備充電器402との切り替えについて説明しているが、可搬電源406との関連については、省略している。
図5Aにおいて、制御装置410の論理回路410Aは、入力信号として、検出器109の検出信号1109と、充電器102の動作信号1102と、予備充電器402の動作信号4102とを入力する。
なお、予備充電器402の動作信号4102は、母線連絡回路遮断器415,416の開閉信号(4115,4116)を便宜上、兼ねるものとする。つまり、予備充電器402を動作させる場合には、母線連絡回路遮断器415,416はON(導通)するものとする。
【0063】
また、前記したように、検出器109の検出信号1109は、直流電源母線103の直流電圧が正常である場合には、高電位であるH信号である。そして、直流電源母線103の直流電圧の異常(低電圧)を検知した場合に、検出信号1109は低電位であるL信号となる。
【0064】
また、制御装置410の論理回路410Aは、第1実施形態の
図3Aで示したのと同様に、論理的な出力信号としてスイッチングデバイス107の順方向素子148と逆方向素子149の開閉信号(OFF/ON信号)、および蓄電池遮断器111の開閉信号をそれぞれ出力する。
また、制御装置410の論理回路410Aは、AND回路551,552、OR回路561,562、NOT回路571,572を備えている。
以上において、AND回路551、OR回路561、NOT回路571は、第1実施形態の
図3で示したAND回路351、OR回路361、NOT回路371にそれぞれ対応しており、基本的な動作・機能は同じである。
【0065】
図5Aの論理回路構成が
図3Aの論理回路構成と異なるのは、AND回路552と、OR回路562と、NOT回路572である。
図5Aにおいて、自系充電器102の動作信号1102は、OR回路562の第1入力端子とNOT回路572のゲートに入力している。
NOT回路572の出力信号は、AND回路552の第1入力端子に入力している。
AND回路552は、前記のNOT回路572の出力と、予備充電器402の動作信号4102とを入力して、その結果(論理積、AND)をOR回路562の第2入力端子に入力している。
OR回路562は、前記したように、自系充電器102の動作信号1102と、AND回路552の出力信号とを入力して、その結果(論理和、OR)をAND回路551の第2端子とNOT回路571のゲートに入力している。
【0066】
以上のAND回路552と、OR回路562と、NOT回路572との回路構成の役目は、自系充電器102の動作信号1102と予備充電器402の動作信号4102をOR回路562で選択していることである。
また、NOT回路572は、自系充電器102が動作しているときは、L信号をAND回路552の第1ゲートに入力しているので、AND回路552で予備充電器402の動作信号が伝わるのを阻止している。そのため、自系充電器102が動作していないときに、予備充電器402の動作信号がOR回路562の出力端子に伝達される構成となっている。
【0067】
すなわち、自系充電器102と予備充電器402との関係において、自系充電器102が優先的に動作する。そして、自系充電器102が動作を停止している場合に、予備充電器402が動作するように回路構成されている。
そのため、自系充電器102が動作を停止すると、それに代わって予備充電器402が交流電源401の交流電圧(交流電力)を整流し、予備電源母線403と母線連絡回路遮断器415,416とを介して、直流電源母線103に直流電力(直流電圧)を供給することが可能となる動作をする。
また、OR回路562の出力信号は、AND回路551の第2ゲートと、NOT回路571のゲートに入力しているので、以降は、第1実施形態の
図3Aで説明した動作に対応した動作となる。重複する説明は、省略する。
以上により、自系充電器102の停止時においても、予備充電器402によって、蓄電池105の充電や直流負荷104への直流電力供給が可能となる。
【0068】
《制御装置410の第2の論理回路構成例》
図5Bは、本発明の第2実施形態に係る短絡電流遮断回路400における制御装置410の第2の論理回路構成例を示す図である。ただし、自系の充電器(自系充電器)102と、可搬電源(代替電源)406との切り替えについて説明しているが、予備充電器402との関連については、省略している。
【0069】
図5Bにおいて、制御装置410の論理回路410BのAND回路551,552、OR回路561,562、NOT回路571,572からなる論理回路構成は、
図5の論理回路構成と同様である。
また、
図5Bにおける制御装置110の入力側の検出器109の検出信号1109と、自系充電器102の動作信号1102は、
図5Aにおける構成と同じである。
また、
図5Bにおける制御装置110の出力側の出力信号が逆方向素子149、順方向素子148、蓄電池遮断器111を制御するのは、
図5Aにおける構成と同じである。
図5Bの論理回路410Bが、
図5Aの論理回路410Aと異なるのは、
図5Bにおける可搬電源(代替電源)406が
図5Aにおける予備充電器402に置き換わっていることである。
【0070】
すなわち、
図5Bにおいては、可搬電源406が、
図5Aにおける予備充電器402に対応する役目をする。
そのため、自系充電器102の動作が停止した場合に、可搬電源406(開閉信号4117)が直流電源母線103に直流電力(直流電圧)を供給する。
その他の機能・動作は、
図5Aの説明と重複するので省略する。
なお、
図5Bの論理回路の構成においては、可搬電源406が自系充電器102の代替えとなる例を示した。すなわち、可搬電源406の直流電力を直流負荷104と蓄電池105にも供給できる場合の論理回路である。しかし、可搬電源406の直流電力を直流負荷104には、供給するが、蓄電池105には供給しない方がよい場合もある。この場合の論理回路を次に、説明する。
【0071】
《制御装置410の第3の論理回路構成例》
図5Cは、本発明の第2実施形態に係る短絡電流遮断回路400における制御装置410の第3の論理回路構成例を示す図である。
可搬電源406が自系充電器102の代替えとなる場合において、可搬電源406が
図4における直流負荷104および蓄電池105に直流電力(直流電圧)を供給する場合の例を
図5B(第2の論理回路構成例)で示した。
しかし、可搬電源406の電力容量が、蓄電池105の電力容量に比較して小さい場合には、可搬電源406の直流電力を蓄電池105に供給するのは避ける方が望ましい。
すなわち、蓄電池105への充電(給電)を防ぎ、電力容量が限られている可搬電源(代替電源)406の直流電力をすべて直流負荷(負荷)104への給電に用いた方がよい場合がある。
この場合の論理回路例を示したのが
図5Cに示す論理回路410Cである。
【0072】
図5Cにおいて、制御装置110の論理回路410Cは、AND回路551とOR回路561の構成要素と配線、および入力と出力が
図5Bの論理回路410Bと同じである。
図5BにおけるOR回路562、NOT回路571,572、AND回路552の代わりに、
図5Cでは、NOR回路591を設けている。そして、
図5CにおけるNOR回路591の第1入力端子には充電器102の動作信号1102が入力し、第2入力端子には可搬電源406の可搬電源遮断器417の開閉信号4117が入力している。また、NOR回路591の出力はOR回路561の第2入力端子に接続されている。
【0073】
以上の論理回路410Cの構成において、可搬電源406が直流電源母線103に接続され、可搬電源遮断器417の開閉信号4117がH信号(ON)で、充電器102の動作信号1102がL信号(OFF)の場合には、順方向素子148、逆方向素子149、蓄電池遮断器111は、すべてOFF状態(L信号)となる。
そのため、可搬電源406の直流電力(直流電圧)は、蓄電池105に供給されない。
また、可搬電源406の直流電力(直流電圧)は、直流電源母線103を介して、直流負荷104へ給電される。すなわち、電力容量が限られている可搬電源(代替電源)406の直流電力をすべて直流負荷(負荷)104への給電に用いられる。
【0074】
また、
図5Cにおいて、可搬電源406が使用されないように、可搬電源遮断器417の開閉信号4117がL信号(OFF)の場合には、NOR回路591の動作に影響を与えない。つまり、NOR回路591は、実質的にNOT回路と同等の動作をする。
そのため、
図5Cにおいて、可搬電源遮断器417の開閉信号4117がL信号(OFF)の場合には、
図5Cの回路は、
図3Aに示した回路と同等になり、充電器102と検出器109の動作の関係は、
図3Aを参照した第1実施形態の動作と同様の動作をする。つまり、可搬電源406がない場合と同様の動作をする。重複する説明は省略する。
【0075】
《制御装置410の第4の論理回路構成例》
図5Dは、本発明の第2実施形態に係る短絡電流遮断回路400における制御装置410の第4の論理回路構成例を示す図である。
図5Dにおいては、自系の充電器(自系充電器)102と、予備充電器402と、可搬電源406が表記されている。
図5Dにおいて、自系充電器102から予備充電器402もしくは可搬電源406との切り替えについて説明する。
ただし、予備充電器402と可搬電源406が共に使用できる場合においては、予備充電器402を優先して使用し、可搬電源406からの直流電力(直流電圧)は供給されない論理回路構成例を示している。
【0076】
図5Dにおいて、制御装置410の論理回路410Dは、入力信号として、検出器109の検出信号1109と、充電器102の動作信号1102と、予備充電器402の動作信号4102と、可搬電源406の可搬電源遮断器417の開閉信号4117とを入力する。
なお、前記したように、予備充電器402の動作信号4102は、母線連絡回路遮断器415,416の開閉信号(4115,4116)を便宜上、兼ねるものとする。つまり、予備充電器402を動作させる場合には、母線連絡回路遮断器415,416はON(導通)するものとする。
また、制御装置410の論理回路410Dは、
図5A、
図5Bで示したのと同様に、論理的な出力信号としてスイッチングデバイス107の順方向素子148と逆方向素子149のON/OFF信号であるそれぞれ制御信号(順方向素子制御信号)1148と制御信号(逆方向素子制御信号)1149、および蓄電池遮断器111のOFF/ON信号である開閉信号1111をそれぞれ出力する。
【0077】
図5Dにおいて、制御装置410の論理回路410Dは、AND回路551,552,553、OR回路561,563、NOT回路571,572,573を備えている。
以上において、AND回路551,552、OR回路561、NOT回路571,572は、
図5Aで示したAND回路551,OR回路561,NOT回路571,572にそれぞれ対応しており、基本的な動作・機能は同じである。
また、
図5Dにおける3入力のOR回路563は、
図5Aにおける2入力のOR回路562に置き換わったものである。
図5Dの論理回路410Dにおいては、AND回路553とNOT回路573が、
図5Aの論理回路410Aに対して追加されている。
【0078】
図5Dにおいて、可搬電源406を動作信号(可搬電源遮断器417の開閉信号4117)は、3入力のAND回路553の第3入力端子に入力している。
予備充電器402の動作信号4102(母線連絡回路遮断器415,416の開閉信号4115,4116)は、NOT回路573で反転した信号となって、3入力のAND回路553の第2入力端子に入力している。
自系充電器102の動作信号1102は、NOT回路572で反転した信号となって、3入力のAND回路553の第1入力端子に入力している。
【0079】
また、3入力のOR回路563の第1入力端子には、自系充電器102の動作信号1102が入力している。
3入力のOR回路563の第2入力端子には、AND回路552の出力信号が入力している。
3入力のOR回路563の第3入力端子には、AND回路553の出力信号が入力している。
3入力のOR回路563の出力信号は、AND回路551の第2入力端子とNOT回路571のゲートに入力している。
以上の回路構成によって、3入力のOR回路563は、自系充電器102(動作信号1102)、予備充電器402(動作信号4102、開閉信号4115,4116)、可搬電源406(開閉信号4117)のいずれかの信号を出力する。
【0080】
また、NOT回路572とAND回路552とを組み合わせた回路によって、自系充電器102の動作信号1102が、予備充電器402の動作信号4102に対して優先する動作をする。
また、NOT回路572とNOT回路573とAND回路553とを組み合わせた回路によって、自系充電器102の動作信号1102と予備充電器402の動作信号4102とが、可搬電源406(可搬電源遮断器417)の開閉信号4117に対して優先する動作をする。
すなわち、AND回路552,553とNOT回路572,573とを組み合わせた回路によって、第1優先順位が自系充電器102、第2優先順位が予備充電器402、第3優先順位が可搬電源406となるように回路構成がされている。
【0081】
なお、
図5Dの論理回路410Dは、
図4に示すように、自系充電器102、予備充電器402、可搬電源406、蓄電池105がある場合における制御装置410の論理回路410Dの論理動作を簡明に示すための簡易的に構成、表記した回路である。
実際には、説明した以外の様々な状態の場合の組み合わせや優先順位があり、それらの状況に応じて、論理回路を再構成することがある。
また、状態に応じた信号の切り替わり目において、信号の順序を保つために遅延回路を備えることが必要となる場合もある。
【0082】
<第2実施形態の効果>
以上のように本発明の第2実施形態によれば、予備充電器402や可搬電源(代替電源)406を備えた場合の電源系統の構成において、自系充電器102が動作を停止した場合に、予備充電器402もしくは可搬電源406によって、直流電源母線103の直流電力の復旧ができる。
また、本発明の第2実施形態として示した回路構成においても、直流電源母線103の短絡事故において、短絡電流を高速に遮断して、過電圧・過電流を防止し、機器の耐量低下および損傷拡大防止を図る短絡電流遮断回路(短絡電流遮断装置)を提供できる。
また、直流電源の運用に支障を与えず、短絡電流の抑制と瞬時遮断を実現できる。
【0083】
≪その他の実施形態≫
なお、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものでなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成の一部で置き換えることが可能であり、さらに、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部または全部を追加・削除・置換をすることも可能である。
また、図中に示した制御線や通信線(情報線)は説明上、必要と考えられるものを示しており、製品上で必要なすべての制御線や通信線や部品(備品)を示しているとは限らない。
以下に、その他の実施形態や変形例について、さらに説明する。
【0084】
《スイッチングデバイスの回路構成》
図1で示した第1実施形態の短絡電流遮断回路において、スイッチングデバイス107を複数個、並列に接続した構成を示した。
ただし、スイッチングデバイス107を複数個、並列に接続した回路全体を一つのスイッチングデバイスの装置として、見なすこともできる。
すなわち、スイッチングデバイスは複数に限定されない。一つのスイッチングデバイスであっても有効な回路構成をとることが可能である。
また、
図1において、スイッチングデバイス107とインピーダンス素子108を直列に接続をした回路構成で説明した。
ただし、スイッチングデバイスをスイッチングデバイス107とインピーダンス素子108が直列に接続された回路構成として、一つのスイッチングデバイスとして見なすこともできる。
【0085】
《スイッチングデバイスの素材》
スイッチングデバイス107は、IGBTで構成される例として示したが、同様の動作が可能であれば、MOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)、光トリガサイリスタ等を備えて構成しても良い。
【0086】
《制御装置の構成》
第1実施形態において、制御装置110はCPU、RAM、ROM等、一般的なコンピュータとしてのハードウエアを有するものを適用する例を示した。しかし、この例に限定されない。
例えば、専用のIC(Integrated Circuit)で構成してもよいし、汎用のICを組み合わせて構成してもよい。また、リレー回路等によって構成する方法もある。
また、制御装置110からの出力は蓄電池側の遮断回路に適用することで構成したが、充電器盤内に備えられたサイリスタのゲートシフト制御等に適用しても良い。
【0087】
《光通信線》
第1実施形態および第2実施形態においては、直流電源母線103の短絡を検出する検出器109の出力信号を光通信線1109で光通信をすると説明した。
しかし、光通信線による光通信は、直流電源母線103の短絡を検出する検出器109の出力信号に限定されない。
図1における充電器102の動作信号1102を伝送する通信線に光通信を用いてもよい。
また、
図4における通信線4102,4115,4116,4117に光通信を用いてもよい。これらの通信線が長い箇所においては、光通信を用いることによって高速に信号が伝送される効果がある。
【0088】
《光通信》
第1実施形態における検出器109について、直流電源母線103の電圧が正常(閾値超)である場合には、光信号をON(発光)して、電圧が異常(閾値以下)である場合には、光信号をOFF(消光)すると説明した。つまり、光通信線1109は、ON状態(発光)とOFF状態(消光)の信号でそれぞれH信号とL信号とを表す伝達方法を用いるとしたが、この方法に限定されない。光信号を多ビットの信号で構成し、複数のビットから構成される複数の状態信号を伝達する方法をとってもよい。
また、ON状態(発光)をL信号、OFF状態(消光)をH信号に割り当てる方法もある。
【0089】
《逆方向素子と順方向素子の切り替わりのタイミング》
第1実施形態における
図3Aに示した論理回路110Aにおいて、充電器102が動作を停止して交流電源101からの直流電源母線103への電力供給を停止し、蓄電池105から直流電力を直流電源母線103へ供給するように切り替える場合には、逆方向素子149がONからOFFに変わり、順方向素子148がOFFからONに変わると説明した。
しかし、直流電源母線103への直流電力(直流電圧)の供給を速やかに安定して実施するためには、直流電力(直流電圧)の供給の切り替えの際には、順方向素子148が早めにONし、その後で、逆方向素子149がOFFすることが望ましい。すなわち、直流電力(直流電圧)の供給の切り替えの過渡期には、順方向素子148と逆方向素子149が共にON状態となる期間を有することが望ましい。
このような回路は、
図3Aの論理回路110Aにおいて、遅延回路、もしくは所定の論理回路を追加することで具現化できる。
また、同様のことは、
図3B,3C、
図5A,5B,5C,5Dの回路についても回路変更もしくは追加により可能である。
【0090】
<その他の補足事項>
本発明の構成要素ではないが、関連する事項を以下に補足説明する。
【0091】
《交流電源101,401》
図4において、交流電源101と交流電源401とは別の電源系統であるとして説明した。しかし、交流電源101と交流電源401が同じ電源系統であってもよい。例えば、充電器102の充電能力が充分でない場合に、予備充電器402を用いて、予備電源母線403を介して直流電源母線103に直流電力を供給する場合にも、本発明の短絡電流遮断回路400は適用できる。
また、交流電源101と交流電源401とが、周波数が別の電源系統の場合(例えば50Hzと60Hz)にも、本発明の短絡電流遮断回路400は適用できる。
【0092】
《予備電源母線403に関して》
図4において、予備電源母線403には、直流負荷や蓄電池の接続構成を明記していなかった。しかし、予備電源母線403に、直流負荷や蓄電池が接続され、交流電源401が予備充電器402で整流された直流電力(直流電圧)が予備電源母線403に供給されている、いわば第2の直流電力系統が構成されている場合もある。
すなわち、交流電源101が充電器102で整流された直流電力(直流電圧)の直流電源母線103の第1の直流電力系統と、交流電源401が予備充電器402で整流された直流電力(直流電圧)の予備電源母線403の第2の直流電力系統との間で、直流電力を融通、調整し合う電力系統において、本発明の短絡電流遮断回路400は適用できる。
【0093】
《直流電源母線103への電力供給源》
第1実施形態および第2実施形態をそれぞれ示す
図1、
図4においては、発電所内の交流電源101の交流電圧(交流電力)を充電器(自系充電器)102で整流して直流電圧(直流電力)を供給するとして説明した。しかし、充電器(自系充電器)102は、交流電源の交流電圧(交流電力)を整流する機器に限定されない。
例えば、発電所が太陽光発電設備を備える場合には、充電器(自系充電器)102は、太陽光発電設備で生成する直流電圧(直流電力)を適正に変換して直流電源母線103に供給する電力変換器であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
100,400 短絡電流遮断回路(短絡電流遮断装置)
101,401 交流電源
102 充電器、自系充電器(第1の充電器)
103 直流電源母線(第1の直流電源母線)
104 直流負荷、負荷
105 蓄電池
106A,106B 遮断回路母線
107 スイッチングデバイス
108 インピーダンス素子
109 検出器
110,410 制御装置
110A,110B,110C,410A,410B,410C,410D 論理回路
111 蓄電池遮断器
114 負荷遮断器
120 短絡検出器
148 順方向素子(IGBT)
149 逆方向素子(IGBT)
351,551,552,553 AND回路
361,561,562,563 OR回路
371,372,571,572,573 NOT回路
381 遅延回路
391,591 NOR回路
402 予備充電器(第2の充電器)
403 予備電源母線(第2の直流電源母線)
406 可搬電源(代替電源)
415,416 母線連絡回路遮断器
417 可搬電源遮断器(代替電源遮断器)