(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ネットワーク加入者ユニット
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
H02J3/46
(21)【出願番号】P 2019507195
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2018064925
(87)【国際公開番号】W WO2018224562
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】102017112438.1
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ファルク,アンドレアス
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19502786(DE,A1)
【文献】国際公開第14/012595(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02875560(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0204651(US,A1)
【文献】米国特許第05239252(US,A)
【文献】特開平02-231990(JP,A)
【文献】特開2009-176107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給ネットワークのためのネットワーク加入者装置(10)であって、
-
前記電力供給ネットワークと前記ネットワーク加入者装置(10)との間の電力の送り込みおよび電力の引き出しのための電力交換を制御するための制御ユニット(14)、
- 前記電力供給ネットワークへの前記ネットワーク加入者装置(10)の接続点(11)で
電圧ゼロ交差の時間を決定するための装置(13)、
-
受信ユニット(12)であって、当該受信ユニット(12)から離れて配置された送信機(21)から電圧ゼロ交差の基準時間の信号を受信するための受信ユニット(12)
を含むネットワーク加入者装置(10)において、
前記制御ユニット(14)は、前記装置(13)によって決定される前記電圧ゼロ交差の時間と前記基準時間との間の
時間差を決定するよう構成され、
前記制御ユニット(14)は、前記電力供給ネットワークに供給される電力と前記電力供給ネットワークから取り出される電力との間の地域的均衡が求められるように、
前記時間差に基づいて、前記電力交換における電力の送り込みおよび電力の引き出しの増減を制御するように構成されることを特徴とするネットワーク加入者装置(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワーク加入者装置(10)において、前記受信ユニット(12)は、無線受信機として設計されることを特徴とするネットワーク加入者装置(10)。
【請求項3】
請求項2に記載のネットワーク加入者装置(10)において、前記受信ユニット(12)は、
前記基準時間を決定するときに、前記基準時間の信号の送信機(21)と前記受信ユニット(12)との間の前記信号の伝搬時間を考慮するように構成されることを特徴とするネットワーク加入者装置(10)。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のネットワーク加入者装置(10)において、
前記電力供給ネットワークに電力を供給する供給装置として設計されることを特徴とするネットワーク加入者装置(10)。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のネットワーク加入者装置(10)において、
前記電力供給ネットワークから電力を引き出す消費部としてとして設計されることを特徴とするネットワーク加入者装置(10)。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のネットワーク加入者装置(10)において、前記ネットワーク加入者装置(10)は、所定の期間にわたり、
電力単位あたりの料金である価格係数で加重された交換された電力を記憶するよう構成され、前記価格係数は、
前記時間差に基づいて決定されることを特徴とするネットワーク加入者装置(10)。
【請求項7】
請求項6に記載のネットワーク加入者装置(10)において、前記制御ユニット(14)は、
前記時間差の変動範囲を決定し、かつ
前記変動範囲に基づいて前記価格係数の大きさを調整するように構成されることを特徴とするネットワーク加入者装置(10)。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のネットワーク加入者装置(10)において、前記制御ユニット(14)は、
前記接続点(11)での前記電圧ゼロ交差の時間が前記基準時間から遅れる方へ変化するときに、前記電力供給ネットワークへの送込みを増加させるか、または前記電力供給ネットワークからの引き出しを減少させるように構成されることを特徴とするネットワーク加入者装置(10)。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のネットワーク加入者装置(10)において、前記制御ユニット(14)は、
決定された前記時間差を所定の期間にわたって
平均した値である、
前記時間差に対するベース値を決定し、かつ
現在決定されている前記時間差と前記ベース値の間の差
に基づいて前記電力交換を制御するように構成されることを特徴とするネットワーク加入者装置(10)。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のネットワーク加入者装置(10)において、エネルギー貯蔵部(16’)をさらに含み、前記制御ユニットは、前記エネルギー貯蔵部(16’)をそれぞれ充電または放電することにより、
前記電力供給ネットワークへの電力の送込みまたは前記電力供給ネットワークからの電力の引き出しを制御するように構成されることを特徴とするネットワーク加入者装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギー供給ネットワークのためのネットワーク加入者ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、電気エネルギー供給ネットワークの安定性は、送り込まれる電力の合計が、引き出される電力の合計に対応することを必要とする。エネルギー供給ネットワークのオペレータは、したがって、この均衡を維持するために、送り込まれるエネルギーまたは引き出される電力を制御する。不均衡がある場合、ネットワーク周波数が変化する。例えば、引き出されるエネルギーが、送り込まれるエネルギーを超える場合、ネットワーク周波数が減少し、送り込まれるエネルギーが、引き出されるエネルギーを超える場合、ネットワーク周波数が増加する。
【0003】
ドイツで分散的に生成されるエネルギーの割合は、絶えず増加しているため、それらの供給装置の供給電力を制御するために送電網オペレータが直接アクセスすることができる供給装置の数は減少している。したがって、多くの分散的エネルギー生産者にとって、ネットワークパラメータ、特にネットワーク周波数に応じて供給電力を独立して制御することは、標準的な必要条件である。
【0004】
欧州特許出願公開第2875560A1号明細書は、消費部がそれらのネットワーク接続点でネットワーク周波数を同様に決定して、それをベース値と比較することをさらに提案する。比較の結果として、消費部は、エネルギー供給ネットワークからの電気エネルギーの引出しを制御し、したがって均衡の達成に独立して寄与する。
【0005】
ネットワーク周波数は、全体の接続されたエネルギー供給ネットワーク内で同じでなければならないため、この制御方法は、全体のネットワーク内で均衡を維持するのに役立ち得るのみである。したがって、地域的に電力の送込みと消費との間に著しい不均衡が存在する場合があり、それは、地域間の電力の伝送によって補償されなければならない。エネルギー供給ネットワークの遠隔区域間における伝送線路の容量は、限定されるため、全体のネットワーク内で送込みと消費との間の均衡が存在するにもかかわらず、これらの伝送線路が過負荷になることが起こり得る。これは、例えば、ドイツの北部では、十分な消費がそこで実現されずに多くのエネルギーがネットワークに送り込まれ、ドイツの南部では、十分な送込みがそこで実現されずに多くのエネルギーがネットワークから引き出される場合に当てはまる。
【0006】
したがって、遠隔ネットワーク地域間の伝送線路における容量の増加が不要になるように、地域レベルで同様に送込みと引出しとの間の均衡を確保するのに適した、エネルギー供給ネットワークへのまたはエネルギー供給ネットワークからの電力の送込みおよび引出しのための制御メカニズムを提供することが望ましい。
【0007】
中電圧および高電圧の変圧器は、局所的な電圧を安定させるために動作時に変圧比を変更する制御装置が装備されていることが多いため、この時点での電圧は、不十分またはあまり適切でない指標である。このような電圧制御介入のため、瞬間的な電圧からエネルギーの流れ方向を導出することは、確実に可能ではない。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、エネルギー供給ネットワークに送り込まれる電力と、それから引き出されるエネルギーとの間で地域的均衡が求められるように、エネルギー供給ネットワークとのエネルギー交換を設定することができるネットワーク加入者ユニットを提供するという目的に基づいている。
【0009】
目的は、独立請求項1に記載のネットワーク加入者ユニットによって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項で説明される。
【0010】
電気エネルギー供給ネットワークのための本発明によるネットワーク加入者ユニットは、エネルギー供給ネットワークとのネットワーク加入者ユニットの電力交換を制御するための制御ユニットと、ネットワーク加入者ユニットとエネルギー供給ネットワークとの接続点で電圧ゼロ交差を決定するための装置と、基準時間の信号を受信するための受信ユニットとを含む。制御ユニットは、装置によって決定される電圧ゼロ交差の時間と基準時間との時間オフセットを決定し、かつ時間オフセットに応じて電力交換を制御するように構成される。
【0011】
基準時間は、好ましくは、ネットワーク地域がネットワーク地域間の伝送線路、特に最高電圧レベルの線路に接続される接続領域または接続点でのエネルギー供給ネットワークの電圧ゼロ交差の時間に基づいて決定される。ネットワーク加入者ユニットのネットワーク接続点での電圧ゼロ交差の時間と、基準時間との間の時間オフセットは、したがって、ネットワーク地域内に送込みと消費との間の均衡が存在する程度の尺度として機能し得る。
【0012】
消費されるよりも多くのエネルギーがネットワーク地域内で生成される場合、ネットワーク加入者ユニットのネットワーク接続点での電圧ゼロ交差の時間は、ネットワーク地域の接続点での電圧ゼロ交差に先行する傾向がある。明確に言うと、ネットワーク地域で接続されたユニットは、一括して、それらの送込みまたは消費挙動でネットワーク周波数を増加させる、すなわちネットワークを加速しようとしている。ネットワーク地域内の消費が生成よりも高い場合、ネットワーク加入者ユニットのネットワーク接続点での電圧ゼロ交差の時間は、ネットワーク地域の接続点での電圧ゼロ交差に遅れる傾向がある。明確に言うと、ネットワーク地域のネットワーク加入者は、ネットワーク周波数を減少させる、すなわちネットワークを減速しようとする。
【0013】
しかしながら、ここで、電圧の突然の位相変化がエネルギー供給ネットワーク内で生じ得ることに留意するべきである。例えば、ネットワーク電圧を実装するための変電所において、電圧のこのような突然の位相変化、したがって電圧ゼロ交差の時間オフセットが生じ得る(例えば、DY5スイッチンググループを用いた変圧器を使用するとき)。したがって、本発明によるネットワーク加入者ユニットの制御ユニットが、時間オフセットのベース値を基準にしてエネルギー供給ネットワークとの電力交換を方向付けることは有利である。このベース値は、基準時間と電圧ゼロ交差との間の位相シフトを考慮しており、前記位相シフトは、地域的送込みと地域的消費との間の不均衡に起因しない。
【0014】
ネットワーク加入者ユニットの接続点で決定された時間オフセットがベース値よりも小さい場合、制御ユニットは、消費よりも多い送込みまたはネットワーク地域で望まれるよりも多くの送込みがあると結論付け、ネットワーク加入者ユニットの送込みを減少させるかまたはその消費を増加させる。逆に、時間オフセットがベース値を上回る場合、すなわち時間オフセットが、基準時間より遅れている電圧ゼロ交差の方向に変化するとき、制御ユニットは、消費を減少させるかまたは送込みを増加させることによって応答する。
【0015】
しかしながら、原則として、基準時間は、接続領域または接続点でのエネルギー供給ネットワークの電圧ゼロ交差の時間に基づいて決定されなくてもよい。基準時間は、したがって、互いに局所的に分離された複数の接続点、例えば異なる伝送線路へのネットワーク地域の接続点での電圧ゼロ交差を平均することにより、同様に確認することができる。望ましい方式で関連ネットワーク地域内の本発明によるすべてのネットワーク加入者ユニットの電力交換に一括して影響を与えるために、他のネットワークパラメータに基づいて、例えば測定点で決定される伝送電力に基づいてこの基準時間を決定することが同様に考えられる。
【0016】
ネットワーク加入者ユニットの受信ユニットは、好ましくは、無線受信機として実施される。このようにして、追加のケーブル配線支出が回避され、正しい基準時間を伝送するためのインフラストラクチャの構築が低く抑えられる。しかしながら、基準時間の有線伝送は排除されない。
【0017】
本発明の有利な実施形態では、受信ユニットは、基準時間の決定において、基準時間信号の送信機と受信ユニットとの間の信号の伝搬時間を考慮するように構成される。基準時間の送信機とネットワーク加入者ユニットとの物理的距離が非常に大きいため、基準時間に対する信号の伝搬時間が時間オフセットの正しい決定に関連する場合、これは、特に重要である。基準時間信号の送信機と受信ユニットとの距離は、ネットワーク加入者ユニットに記憶され得るか、または例えばネットワーク加入者ユニットが(例えば、GPS信号を通して)絶対的にその位置を決定するか、もしくは(例えば、三角測量を通して)予め位置が分かっている1つもしくは複数の送信機に対してその位置を決定することにより、ネットワーク加入者ユニットによって独立して決定され得る。
【0018】
電圧のゼロ交差の代わりに、時間オフセットを決定するための基盤としてピークまたは任意の他の位相位置を同様に使用することができる。したがって、本出願に関連して、電圧ゼロ交差という用語は、AC電圧が極性を変更する特定の時点だけでなく、時間オフセットを決定するための基準点として使用される、AC電圧の位相プロファイルと固定関係にあるAC電圧の位相プロファイルの各時点も含むように意図される。対応する時点は、例えば、PLL(位相ロックループ)アルゴリズムを用いて決定することができる。
【0019】
本発明の1つの実施形態では、ネットワーク加入者ユニットは、供給装置として、例えば風力発電所、太陽光発電システムまたはコジェネレーションユニットとして実施される。この場合、制御ユニットは、エネルギー供給ネットワークへの電気エネルギーの送込みを制御する。
【0020】
本発明のさらなる実施形態では、ネットワーク加入者ユニットは、消費部として実施される。この場合、制御ユニットは、ネットワーク加入者ユニットの消費を制御する。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態では、ネットワーク加入者ユニットは、エネルギー貯蔵部を含み、制御ユニットは、エネルギー貯蔵部を充電または放電することにより、エネルギー供給ネットワークとの電力交換を制御するように構成される。有利には、ネットワーク加入者ユニットの制御ユニットは、この場合、エネルギー貯蔵部を充電するために、特定の時間オフセットのためにエネルギー供給ネットワークに送り込まれるべきでない生成されたエネルギーをエネルギー貯蔵部へ部分的にまたは完全に方向転換させるように構成される。制御ユニットは、エネルギー貯蔵部が放電されるように、所定の時間に生成され得ないが、エネルギー供給ネットワークに送り込まれる電気エネルギーをエネルギー貯蔵部から引き出すように同様に構成され得る。同様に、制御ユニットは、決定された時間オフセットのためにエネルギー供給ネットワークから電気エネルギーが引き出されない場合、ネットワーク加入者ユニットの消費部がエネルギー貯蔵部から電気エネルギーを受け取ることを確実にし得る。当然のことながら、制御ユニットは、決定された時間オフセットがエネルギー供給ネットワークからの電力の引出しを支持するとき、エネルギー貯蔵部がエネルギー供給ネットワークから充電されることを同様に確実にし得る。
【0022】
エネルギー供給ネットワークとの電力交換を制御することに加えて、ネットワーク加入者ユニットは、同様に、価格係数で加重された所定の期間にわたり、交換された電力を蓄積するように構成され得、価格係数は、時間オフセットの関数として決定される。このようにして、エネルギーメータの機能を同様にネットワーク加入者ユニットによって同時に実現することができ、送り込まれるかまたは引き出されるエネルギーのエネルギー供給者に請求する目的で変動価格を割り当てることができ、前記変動価格は、ネットワーク地域内のそれぞれの供給状況に依存する。ネットワーク地域の安定性、すなわち地域的消費と地域的送込みとの間の均衡に寄与するネットワーク加入者ユニットの挙動は、したがって金銭的インセンティブによって報酬を与えられ、したがってそれに応じて、ネットワーク地域を不安定にする挙動を金銭的に制裁することができる。
【0023】
有利には、制御ユニットは、決定された時間オフセットを所定の期間にわたって平均することにより、時間オフセットのベース値を確認し、かつ現在決定されている時間オフセットとベース値との間の差に応じて電力交換を制御するように構成され得る。ベース値の決定は、例えば、変更された境界条件、例えば他のネットワーク加入者、変電所またはネットワーク区域の追加または撤去を通したネットワーク地域のインフラストラクチャの変更を考慮するために規則的または不規則な間隔で繰り返すことができる。ベース値の確認は、したがって、この場合に適応的に行われる。
【0024】
ネットワークの周辺区域において、最大の引出しと最大の局所的生成との間の位相差の帯域幅は、中心的なネットワークノードにおけるよりも大きい場合がある。したがって、価格係数の形式の金銭的評価は、生じている位相差の全帯域幅に対して行うものとする。この理由のため、より大きい位相差は、ネットワークの周辺区域で中心的なネットワークノードにおけるのと同じ金銭的評価、すなわち同じ変動範囲の価格係数につながるべきである。評価パラメータは、したがって、ネットワークノードで正しく生じているベース位相および位相帯域幅である。
【0025】
本発明の有利な改良形態において、制御ユニットは、時間オフセットの帯域幅を決定し、かつ帯域幅に応じて価格係数の大きさを調整するように構成される。この目的のため、制御ユニットは、特にそのプロセスで時間オフセットの関数として電力交換を能動的に制御することなく、所定の期間にわたって時間オフセットの値を観察することができる。その後、第1の価格係数は、時間オフセットの平均値に割り当てられ得、および第2の価格係数は、極値または統計的に帯域幅に関連付けられ(例えば、標準偏差σだけ)、かつ平均値から外れた値に割り当てられ得る。これらの2つの価格係数は、したがって、例えば線形補間を通して、時間オフセットの他の値に対する価格係数の割当てのための基準点を形成することができる。特に、価格係数のための基準点は、ネットワーク加入者ユニットのネットワーク接続点での電圧ゼロ交差が遅れている場合、すなわち平均値と比較して増加した時間オフセット値の場合、より高い価格係数が使用され、電圧ゼロ交差が先行している場合、すなわち平均値と比較して短い時間オフセット値の場合、より低い価格係数が特定の電力交換のための基盤として使用されるように選択することができる。したがって、送込みの増加は、遅れているネットワーク状態で経済的に支持されるのに対して、消費の増加は、この場合、それに応じて不利な条件に置かれる。先行しているネットワーク状態の場合、送込みおよび消費は、正確に逆の方式で経済的に評価される。電力交換を制御することにより、ネットワーク加入者ユニットは、したがって経済的に有利な動作を用いてネットワーク安定化に寄与することができる。
【0026】
時間オフセットに応じたエネルギー供給ネットワークとの電力交換の制御に加えて、ネットワーク加入者ユニットは、他のネットワークパラメータ、特にネットワーク周波数および/または電圧振幅に応じて以前から知られている方式で電力交換を制御することができる。
【0027】
本発明のさらなる態様は、ネットワーク加入者ユニットまたは複数のネットワーク加入者ユニットを用いてネットワーク内の電力流を決定および監視するという目的に基づいている。本発明のこの態様による電気エネルギー供給ネットワークのためのネットワーク加入者ユニットは、ネットワーク加入者ユニットとエネルギー供給ネットワークとの接続点で電圧ゼロ交差を決定するための装置と、基準時間の信号を受信するための受信ユニットとを含む。ネットワーク加入者ユニットは、基準時間に対する電圧ゼロ交差の時間を決定し、かつこの時間を記憶して前記時間を即時のまたは後の送信のために提供するように構成される。ネットワーク加入者ユニットは、好ましくは、多数の電圧ゼロ交差を検出し、かつそれらの電圧ゼロ交差から、電圧ゼロ交差の位相の時間プロファイルと同様にネットワーク周波数を決定、記憶および送信する。
【0028】
評価ユニットは、ネットワーク加入者ユニットの一部またはネットワーク加入者ユニットから遠隔に配置された独立したユニットであり得、電圧ゼロ交差の時間についてのデータまたはネットワーク周波数および/もしくは位相の時間プロファイルについてのデータを複数のネットワーク加入者ユニットから受信する。このデータから、評価ユニットは、基準時間に応じて前記ネットワーク加入者ユニットの2つずつの電圧ゼロ交差間の位相オフセットについての情報を決定し、この情報から位相オフセットの時間プロファイルについての情報を生成する。評価ユニットは、位相オフセットの時間プロファイルから、対応するネットワーク加入者ユニット間に広がるネットワーク区域の電力流変化の時間プロファイルを決定するようにさらに構成される。例えば、関連ネットワーク区域における既知の電力流を用いて基準位相オフセットを決定することにより、ネットワーク加入者ユニットの各2つの間の位相オフセットについての情報を較正することにより、このネットワーク区域における現在の電力流を結論付けることができる。この較正は、好ましくは、較正後、それぞれのネットワーク加入者ユニット間の関連ネットワーク区域における電力流についての情報を確認することが可能であるように評価ユニットによって実行される。
【0029】
較正の品質は、特にこれらの電力流が許容電力流の極値を表すとき、いくつかの既知の電力流において位相オフセットを決定することによって改善することができる。あるいは、関連ネットワーク区域のインピーダンスについての知識または正当な仮定を使用して較正を行うかまたは改善することができる。
【0030】
電圧ゼロ交差の時間を決定する精度は、複数の電圧ゼロ交差の時間を決定し、かつ複数の電圧ゼロ交差の時間の決定中に一定のネットワーク周波数を仮定して前記時間を平均することによって同様に向上され得る。
【0031】
本発明のこの態様の第1の実施形態では、第1のネットワーク加入者ユニットは、変圧器の第1の側に配置され、および第2のネットワーク加入者ユニットは、変圧器の第2の側に配置される。この構成では、変圧器を介した電力流は、評価ユニットによって監視され得る。
【0032】
有利には、評価ユニットは、ネットワーク区域における位相オフセットから決定された電力流がこのネットワーク区域に対する許容値範囲外であるとき、警告信号を生成し、好ましくはそれを通信相手に送信するように構成される。結果として、ネットワーク区域またはネットワーク区域に配置されたネットワーク構成要素の過負荷を示唆し、例えば適切な反対の応答を通して理想的に回避することができる。
【0033】
さらなる有利な実施形態では、評価ユニットは、決定された電力流情報を上位ユニットまたは同様にネットワーク加入者ユニット自体に送信する。後者の場合、ネットワーク加入者ユニットは、送信された電力流情報に応じてそれらの送込み挙動を変更することができ、特に望ましくない電力流を打ち消すことができる。上位ユニットは、同様に、望ましくない電力流を打ち消すために適当な措置をとることができる。
【0034】
さらなる態様と関連付けられた方法は、以下のステップを含む。第1のネットワーク加入者ユニットにおいて、第1のネットワーク加入者ユニットに接続されたエネルギー供給ネットワークの電圧ゼロ交差の第1の時間は、第1のネットワーク加入者ユニットで受信している基準時間信号に対して決定される。第2のネットワーク加入者ユニットにおいて、第2のネットワーク加入者ユニットに接続されたエネルギー供給ネットワークの電圧ゼロ交差の第2の時間は、第2のネットワーク加入者ユニットで受信している基準時間信号に対して決定される。第1および第2のネットワーク加入者ユニットを接続しているネットワーク区域における電力流は、時間の差から決定される。この目的のため、既知の電力流および/または接続ネットワーク区域の線路インピーダンスについての知識もしくは仮定を用いて時間差を決定することにより、較正を使用することができる。確認された電力流が許容値範囲外である場合、警告信号を生成および送信することができる。
【0035】
以下の本文では、図を用いて本発明を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本発明によるネットワーク加入者ユニットを例示する。
【
図2】
図2は、エネルギー供給ネットワークのネットワーク地域の概略図を例示する。
【
図3】
図3は、エネルギー供給ネットワークの異なる地点での電圧プロファイルを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明によるネットワーク加入者ユニット10の内部の設計を示す。ネットワーク加入者ユニット10は、エネルギー供給ネットワークに接続するための接続点11を有する。この接続は、一相または三相でもたらされ得る。接続部11に接続されたエネルギー供給ネットワークの電圧ゼロ交差の時間を決定するために、装置13が接続点11に接続される。さらに、ネットワーク加入者ユニット10は、特に無線信号として外部の時間信号を受信することができる受信ユニット12を有する。これらの2つの時間の間の時間オフセットを決定するために、時間信号は、装置13に転送され、装置13で電圧ゼロ交差の時間と比較される。比較の結果は、ネットワーク加入者ユニット10の制御ユニット14に転送され、制御ユニット14は、今度は接続部15、16、17を介して消費部17’、発電機15’および/またはエネルギー貯蔵部16’に接続される。制御ユニット14は、時間オフセットに応じて、エネルギー供給ネットワークと、消費部17’、発電機15’および/またはエネルギー貯蔵部16’との間の接続点11を介した電力交換を制御する。この目的のため、制御ユニット14は、エネルギー供給ネットワークとの電力交換を制御するために、接続部15、16、17を介して電力流を個別にまたは連帯的に変更することができる。消費部17’、発電機15’および/またはエネルギー貯蔵部16’は、この場合、ネットワーク加入者ユニット10の一部であり得、それにより、これは、供給装置、消費部または貯蔵部として機能し、またはネットワーク加入者ユニット10は、これらの構成要素が接続され、これらの構成要素を制御する独立した装置であり得る。
【0038】
本発明によるネットワーク加入者ユニット10は、
図2に概略的に例示されるように、ネットワーク地域23内の異なる場所で使用することができる。本発明によるネットワーク加入者ユニット10は、本発明による他のネットワーク加入者ユニットとの任意の組合せで使用することができるが、同様に本発明によらないネットワーク加入者ユニットとの任意の組合せで使用することができる。これらは、電力の消費部、発電機および/または貯蔵部を含み得る。したがって、
図2に示される実施形態では、消費部17’に接続されるネットワーク加入者ユニット10は、独立したユニットとして実施されるのに対して、本発明による他のネットワーク加入者ユニット10は、貯蔵部16’および/または発電機15’を有する。
【0039】
ネットワーク地域23は、送信機21が同時に配置される接続点で伝送線路22に接続される。送信機21は、この場合、信号情報として基準時間が含まれる無線信号を送信する。基準時間は、好ましくは、伝送線路22の電圧のゼロ交差に基づいて決定される。
【0040】
本発明による異なるネットワーク加入者ユニット10は、この無線信号を受信し、基準時間に関してそれを評価する。ここで、送信機と受信機との間の物理的距離に起因する無線信号の伝搬時間がそれぞれ考慮される。
【0041】
ネットワーク地域23内において、エネルギー供給ネットワークのインピーダンスは、離散的なネットワークインピーダンス25の形式で表される。これらは、エネルギー供給ネットワークに位相シフトを引き起こし、前記位相シフトは、ネットワークインピーダンス25の場所で流れる電力に依存する。電力に依存しない成分を同様に含むさらなる位相シフトは、エネルギー供給ネットワーク内の電圧レベルを調整する変圧器24によって引き起こされることがある。エネルギー供給ネットワークの異なる地点間の位相シフトは、これらの地点間のネットワーク電力流の方向および大きさの尺度を提供し、したがって送込みと消費との間の局所的な不均衡がこれらの地点の少なくとも1つの領域にあるように、ネットワークインピーダンス25および変圧器24の位相シフトは、ネットワーク地域内の線路に沿って合計される。
【0042】
図3は、送信機21の場所での時間的な電圧プロファイル30を下のグラフに示し、ネットワーク加入者ユニット10の受信ユニット12の場所での時間的な電圧プロファイル30を上のグラフに示す。時刻Tにおける送信機21の場所での電圧ゼロ交差と比較して、受信ユニット12またはネットワーク加入者ユニット10の場所での電圧ゼロ交差は、代わりに時間オフセットΔt=t
0-T=Δφ/ωだけ遅い時刻t
0に起こる。この場合、ωは、ネットワーク周波数に対応し、Δφは、位相オフセットに対応する。位相オフセットまたは時間オフセットは、ネットワーク地域における送込みと消費との間の均衡の状態に依存する部分と、それに依存しない部分とに分けることができる。依存しない部分は、上述の方式で決定し、ベース値として考慮することができる。ネットワークとの本発明によるネットワーク加入者ユニット10の電力交換は、好ましくは、ネットワーク地域における送込みと消費との間の不均衡が相殺されるように、依存する成分によって専ら決定される。位相オフセットは、ネットワーク地域23内の負荷分散がどのように変動するかに応じて変動範囲内で時間の関数として変動し得る。
【0043】
図3を使用して、同様に本発明のさらなる態様による電力流の決定を解説することができる。ここで、例示される電圧プロファイル30は、2つのネットワーク加入者ユニット10の場所での電圧プロファイルと理解するべきであり、それらのネットワーク加入者ユニット10は、両方とも
図1におけるように受信ユニット12を含む。この場合、基準時間信号は、エネルギー供給ネットワークの別の場所での電圧ゼロ交差を参照する必要はないが、例えばGPS無線信号によって送信される原子時計の時間信号であり得る。上のグラフと関連付けられたネットワーク加入者ユニットは、時刻t
0において電圧ゼロ交差を決定するのに対して、下のグラフと関連付けられたネットワーク加入者ユニットは、時刻Tにおいて電圧ゼロ交差を決定する。時間オフセットΔt=t
0-T=Δφ/ωは、ここで、2つのネットワーク加入者ユニットを接続するネットワーク区域における電力流およびそのネットワーク区域の線路インピーダンス、特にそのインダクタンスに依存する。例えば、関連時間オフセットΔtが2つの電力流値に対して知られている場合、関連電力流は、任意の他の時間オフセットに内挿または外挿を通して同様に割り当てることができる。ここで、特にネットワーク位相に段差を引き起こすことのある変圧器がネットワーク加入者間に配置される場合、ゼロの時間オフセットは、同様に、必ずしもゼロの電力流に割り当てられなくてもよいことに留意するべきである。この場合、ゼロから外れた時間オフセットまたは位相オフセットをゼロの電力流に同様に関連付けることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 ネットワーク加入者ユニット
11 接続点
12 受信ユニット
13 装置
14 制御ユニット
15 接続部
15’ 発電機
16 接続部
16’ エネルギー貯蔵部
17 接続部
17’ 消費部
21 送信機
22 伝送線路
23 ネットワーク地域
24 変圧器
25 ネットワークインピーダンス
30 電圧プロファイル