(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】独特の性質を有する硫酸カルシウム半水和物の新規産生方法
(51)【国際特許分類】
C01F 11/46 20060101AFI20220614BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20220614BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220614BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220614BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C01F11/46 D
A61P13/08
A61P35/00
A61K47/02
A61K31/167
(21)【出願番号】P 2019520633
(86)(22)【出願日】2017-10-16
(86)【国際出願番号】 EP2017076325
(87)【国際公開番号】W WO2018073165
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-14
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519132481
【氏名又は名称】リッズ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス アクセーン
(72)【発明者】
【氏名】ステファン グルデン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-065016(JP,A)
【文献】特開昭48-067193(JP,A)
【文献】国際公開第2015/104340(WO,A1)
【文献】特開2020-097523(JP,A)
【文献】特開2002-249317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/46
A61P 13/08
A61P 35/00
A61K 47/02
A61K 31/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸カルシウム半水和物粉末を産生する方法であって、以下の:
a) 密閉されたキャビネット内で、制御された温度、前記キャビネット内の空気循環、及び前記キャビネットからの調節可能な排出空気流を用いて、硫酸カルシウム二水和物を処理すること;
b) 前記温度を100~200℃に調節すること;
c) 1~12時間の行程所要時間を許容すること; 及び
d) 前記キャビネットからの湿潤排出空気流量を、0.2~1.5L/sに調節すること、
の段階を含む方法。
【請求項2】
段階bにおける前記温度が、150~220℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階bにおける前記温度が、180~210℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
段階bにおける前記温度が、185~205℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
段階bにおける前記温度が、190~203℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
段階bにおける前記温度が、200℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
段階cにおける前記時間が、2~8時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
段階cにおける前記時間が、3~5時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
段階cにおける前記時間が、3.5~4.5時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
段階cにおける前記時間が、約4時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
段階dにおける前記排気が、0.25~1L/sである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
段階dにおける前記排気が、0.25~0.8L/sである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
段階dにおける前記排気が、0.3~0.7L/sである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
段階dにおける前記排気が、0.4~0.6L/sである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品、治療薬又は製薬産業で用いるための硫酸カルシウム半水塩を産生するための新規方法に関する。硫酸カルシウム半水和物は、生体適合性及び生分解性の無機物質であり、従って、例えば少なくとも1つの医薬活性成分を含む制御放出組成物等の医薬組成物中の担体として適している。硫酸カルシウムはまた、化粧品用途又は治療用途の組織補充材料として単独で用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ヒト又は他の何れかの哺乳動物に投与するための医薬的に活性な化合物のための担体として適した無機組成物を産生する方法に関する。
【0003】
硫酸カルシウムは、多様な目的に用いられ、種々の形態及び水和状態で存在する。
【0004】
硫酸カルシウム水和物、特に石膏(硫酸カルシウム二水和物)及び半水和物は、例えば、整形外科用途及び歯科用途のセメント、石膏ボード、又は骨間隙充填剤等の広範囲の目的のために多くの工業用途で用いられる。これらの充填剤製品のいくつかはまた、活性医薬成分を含み、それにより徐放性医薬組成物が達成される。γ-無水物の形態(無水形態)において、硫酸カルシウムは、乾燥材として用いられる。
【0005】
硫酸カルシウム半水和物は、α及びβで表される少なくとも2つの異なる形態型で存在する。調製経路は、2つの形態のうちどちらが得られるかに関し、極めて重要である。Christensenら(Dalton Trans., 2010, 39, 2044-2048)は、α型は、水熱条件、すなわち120~160℃の温度範囲及び8バールまでの圧力で得ることができ、一方、β型は、120~180℃の温度範囲で乾熱することによって得ることができると示唆している。170℃を超える温度では、γ-無水物が、形成し始める可能性がある(Christensen et al, Chem. Mater. 2008, 20, 2124-2132)。
【発明の概要】
【0006】
硫酸カルシウム半水和物を製造する方法は、半水和物によって調製された製剤の溶解特性に不可欠であること、すなわち、患者への薬物放出速度に関連することを見出した。驚くべきことに、この知見は、仮に硫酸カルシウム半水和物が、医薬組成物の調製方法の間に硫酸カルシウム二水和物に再結晶化した場合にさえも当てはまる。従って、硫酸カルシウム半水和物を調製するための方法の製品特性が制御可能であることが重要である。
【0007】
本発明は、人体又は他の何れかの哺乳類に投与される治療活性物質のための担体として適した無機組成物を産生する方法に関する。本発明の組成物は、硫酸カルシウムに基づいており、いくつかの薬物送達、例えば、罹患している臓器等の体の特定の部分の標的治療のために、又は、例えばホルモン剤及び抗ホルモン剤の標的放出又は局所放出等の例えば膀胱癌の癌等の局所治療等の目的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、崩壊試験に合格した4つの試験塊の経時的な薬物の放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物は、再現可能で良好な溶解特性を有する医薬組成物を調製するために有利に用いられ得ることが見出された。そのような医薬組成物は、患者の血清又は体組織への制御可能な薬物放出速度をもたらす。
【0010】
本発明の一態様は、以下の:
a. 密閉されたキャビネット内で、制御された温度、キャビネット内の空気循環、及びキャビネットからの制御された排出空気流(air outflow)を用いて、硫酸カルシウム二水和物を処理すること;
b. 前記温度を100℃超に調製すること;
c. 1~12時間の工程所要時間を許容すること; 及び
d. 前記キャビネットからの湿潤排出空気流量を0.2~2L/sに調製すること、
の工程を含む硫酸カルシウム半水和物粉末の産生方法である。
【0011】
本発明の一態様において、方法中の工程bの温度は、約150~220℃である。
【0012】
本発明の一態様において、方法中の工程bの温度は、約180~210℃である。
【0013】
本発明の一態様において、方法中の工程bの温度は、約185~205℃である。
【0014】
本発明の一態様において、方法中の工程bの温度は、約190~203℃である。
【0015】
本発明の一態様において、方法中の工程bの温度は、約200℃である。
【0016】
本発明の一態様において、方法中の工程cの時間は、2~8時間である。
【0017】
本発明の一態様において、方法中の工程cの時間は、3~5時間である。
【0018】
本発明の一態様において、方法中の工程cの時間は、3.5~4.5時間である。
【0019】
本発明の一態様において、方法中の工程cの時間は、約4時間である。
【0020】
本発明の一態様において、方法中の工程dの湿潤排出空気流量は、0.2~1.5L/sである。
【0021】
本発明の一態様において、方法中の工程dの湿潤排出空気流量は、0.25~1L/sである。
【0022】
本発明の一態様において、方法中の工程dの湿潤排出空気流量は、0.25~0.8L/sである。
【0023】
本発明の一態様において、方法中の工程dの湿潤排出空気流量は、0.3~0.7L/sである。
【0024】
本発明の一態様において、方法中の工程dの湿潤排出空気流量は、0.4~0.6L/sである。
【0025】
本発明の一態様において、方法中の工程dの湿潤排出空気流量は、約0.5L/sである。
【0026】
本発明の方法のための適切な工程温度は、100℃超、例えば、150、160、170、180、185、190、195、200、203、205、210、215又は220℃である。
【0027】
本発明の方法のための適切な工程所要時間は、1、2、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11又は12時間である。
【0028】
本発明の方法のための出口を通る適切な湿潤排出空気流量は、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、又は2L/sである。
【0029】
出発物質である硫酸カルシウム二水和物は、いくつかの供給元から市販されている。総水分又は水分含有量は、供給元とバッチの間で異なる。硫酸カルシウム等の医薬品の総水分量又は含水量は、水が結晶構造の一部である結合水(水和水)と遊離水の両方を含むことができる。硫酸カルシウム二水和物は、硫酸カルシウムの1分子当たり2個の水分子の結合水(水和水)及び約X重量%の遊離水を含有する。総水分量は、重量法又はカールフィッシャー滴定等の種々の技術によって決定され得る。結合水と遊離水の区別及び正確な測定は、熱重量分析(TGA)であり、ここで、温度の関数として重量損失は、含水量のパーセンテージでの推定を可能にする。
【0030】
本発明の他の態様において、硫酸カルシウム二水和物は、温度を正しいレベルに制御しかつ、維持し、そして急激な温度低下を避けるために密閉キャビネット中に段階的に充填される。
【0031】
粉末の過熱及び/又は乾燥工程のための従来の製薬設備は、1時間当たりのキャビネット内の空気量を完全に交換した量で表され得る。約100~150dm3の小さな加熱キャビネットに関して、交換量は、20/時であり得、及び約350~600dm3のより大きな加熱キャビネットは、60/時であり得る。交換量及びキャビネット容積は、ほぼ直線で相関する。本発明で見出されたことは、キャビネット内に一定の中間湿度環境を保ち、約20gの遊離湿度又は水に相当する最大で約1.5kgを充填するために、排出空気流量は、キャビネット容積に関係なく、0.2~2L/sの範囲にある必要があるということである。0.5L/sの排出空気流量に相当する1時間当たりのキャビネット容積として表された交換量は、小さいキャビネットで12~18、大きいキャビネットでは、3~5である。
【0032】
同時にキャビネットに充填される粉末の量は、0.01~20kg/m3、好ましくは約0.05~5 kg/m3の範囲内にあるべきである。
【0033】
本発明は、高い化学的純度及び高い形態学的純度の硫酸カルシウム半水和物を産生するための新規方法に関する。本発明の方法は、実質的にβ型であるが、ある程度のアモルファス含量を有する硫酸カルシウム半水和物を提供する。
【0034】
一態様において、本発明は、硫酸カルシウムから製造された原薬及び薬物担体を含む注入可能なインビボで凝固する放出調節医薬組成物に関する。当該組成物は、流体の状態で針を通して投与され、注入部位で固化し、及びそれらの薬理学的効果が望まれる特定の領域に原薬を送達するように設計される。例えば、当該組成物は、限局性癌の治療における使用に適している。凝固材料を調製するための方法は、製薬業界におけるパラメータ設定に関して、及び材料科学の分野における材料の挙動に関して現在記載されていることの両方で独特かつ、非慣習的である。
【0035】
硫酸カルシウムのインビボ凝固製剤は、少なくとも部分的に硫酸カルシウム半水和物を含む。当該半水和物は、硫酸カルシウム二水和物から熱処理によって産生される。熱処理の手順の詳細は、製剤の性質にとって非常に重要である。
【0036】
使用
本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物は、ヒト又は他の哺乳物に投与される医薬組成物中の医薬活性成分のための担体として用いられ得る。医薬的に活性な成分の放出速度は、医薬組成物が調製される方法に影響され得る。従って、即時放出、遅延放出及び制御放出又はそれらの組み合わせのために、本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物を含む医薬組成物を調製することが可能である。
【0037】
本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物は、硫酸カルシウム二水和物等の他の形態の硫酸カルシウムを調製するための出発材料としてさらに用いられ得る。本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物は、そのような硫酸カルシウム二水和物の物理的性質に影響を及ぼし得る。
【0038】
医薬有効成分(API)の充填
本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物は、粉末の適切な粒度分布を達成するために従来通り摩砕され得る。
【0039】
医薬有効成分(API)は、様々な方法で、本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物に充填され得る。硫酸カルシウム半水和物は、例えば、APIと混合してAPI充填二成分混合物を生成することができる。これは乾式混合によって行われ得る。これはまた、硫酸カルシウムが不活性である溶媒(例えばアルコール)中にAPIを溶解することによっても実施され得る。これにより、API及び溶媒の溶質中に硫酸カルシウム粉末のスラリーが生じる。スラリーを攪拌しながら溶媒を蒸発させることにより、APIと硫酸カルシウムの乾燥粉末が形成される。
【0040】
本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物が、硫酸カルシウム二水和物への再結晶等の他の形態の硫酸カルシウムに変換される際に、APIの充填がさらに同時に行われ得る。そのような製剤中のAPI充填硫酸カルシウム二水和物は、前駆体硫酸カルシウム半水和物がどのように調製されたかに応じて、異なる物理的性質及び放射速度/放出プロファイルを有し得る。
【0041】
そのような二成分混合物はさらに、APIを充填した高密度顆粒(又は本体)中に従来通りに圧縮することができる。APIを充填した高密度顆粒(又は本体)は、それが調製される方法、例えば緻密化工程で使用された圧力等に応じて、異なる物理的性質及び放出速度/放出プロファイルを有し得る。適切な圧力は、約1~3時間で1000~5000バールである。
【0042】
好ましくは、そのようなAPIを充填した高密度顆粒(又はその本体)は、本発明によって調製される硫酸カルシウム半水和物を、十分な水で湿らせてそれを硫酸カルシウム二水和物に変換し、同時に約4000バールの圧力を約1時間かけることによって調製される。
【0043】
アイソスタティックプレス(isostatic press)は、5000バールまでの圧力を加えるための適切な装置である。
【0044】
そのような高密度顆粒を製造する方法は、WO2007/104549に記載される。
【0045】
それは、水と混合され固化のために静置され、それによって硫酸カルシウム二水和物を形成する硫酸カルシウム半水和物が、出発物質(例えば、アルファ又はベータ半水和物)の特性に依存して機械的強度を主に担う異なる特性の凝固材料を形成する、技術的な応用として知られる。
【0046】
本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物は、例えば、従来型の摩砕により適当な平均粒度分布にさらに加工され得る。
【0047】
本発明によって調製された硫酸カルシウムを含有する医薬組成物は、少なくとも1つの追加の医薬活性成分を含有し得る。
【0048】
本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物を用いて調製された医薬組成物(製剤)は、制御放出、特に持続制御放出を必要とし得る何れかの治療的、予防的及び/又は診断的活性物質と共に適用可能である。関連する薬理学的クラスの例は、例えば、抗癌剤である。抗癌剤、すなわち、腫瘍薬(neoplastic agent)に関して、本発明は、ホルモン剤、抗ホルモン剤、化学療法剤及び/又は他の薬理学的剤の標的化され制御された局所的放出のために用いられ得る。それはまた、骨充填剤等の活性物質を加えることなく、又は小じわ及び/又は整形手術のためのような化粧品用途として治療用途に用いられ得る。
【0049】
特に興味深いのは、前立腺疾患、より具体的には、良性前立腺肥大症、前立腺癌及び/又は前立腺炎(prostatite)の治療に用いるための、本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物を含有する製剤である。前立腺関連疾患の治療のためには、特定の抗アンドロゲン剤等の抗癌剤を用いることが特に有用であり得る。より好ましくは、1つ以上の治療的、予防的及び/又は診断的に活性な物質は、フルタミド(flutamide)、ヒドロキシフルタミド(hydroxyflutamide)、シプロテロン(cyproteron)、ニルタミド(nilutamide)又はビカルタミド(bicalutamide)又は同様のものである。
【0050】
さらに、場合によっては、抗アンドロゲン及びゴナドトロピン放出ホルモン又はそれらの類似体の組み合わせを用いることが有利であり得る。
【0051】
好ましくは、本発明によって調製された、高密度硫酸カルシウム中の1つ以上の治療的、予防的及び/又は診断的に活性な物質は、前立腺関連疾患又は病状における使用に適している。さらに、活性物質は、アンドロゲン又はその誘導体、抗アンドロゲン又はその誘導体、エストロゲン又はその誘導体、抗エストロゲン又はその誘導体、ゲスターゲン(gestagen)又はその誘導体、抗ゲスターゲン又はその誘導体、オリゴヌクレオチド、プロゲスタゲン又はその誘導体、性腺刺激放出ホルモン又はその誘導体、ゴナドトロピン又はその誘導体、副腎及び/又は前立腺酵素阻害剤、膜排出タンパク質及び/又は膜輸送タンパク質、免疫系モジュレーター、血管新生阻害剤、又はそれらの組み合わせである。
【0052】
本発明によって調製される硫酸カルシウム半水和物を含有する製剤はまた、局所的又は全身的な持続的薬物の放出のために軟組織又は器官における適用するために適した何れか他の適切な活性物質を含み得る。そのような製剤は、他の治療、例えば、疼痛、神経疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病)、自己免疫疾患、免疫疾患、及び免疫学的及び免疫調節療法(肝炎、MS、腫瘍)、感染症、炎症関連疾患、代謝性疾患、肥満、泌尿生殖器の疾患、心血管疾患(血圧を含む)、造血性、抗凝固性、血栓溶解性及び抗血小板性疾患、寄生虫感染症の化学療法、微生物性疾患及び腫瘍性疾患、高コレステロール血症、脂質異常症、造血性疾患、呼吸器系疾患(喘息、慢性肺閉塞)、腎臓病、胃腸疾患、肝疾患、ホルモン障害、新陳代謝(replacement)及び置換(substitution)、ビタミン類新陳代謝(vitamins replacement)及び置換においても調査され得る。
【0053】
本発明によって調製される硫酸カルシウム半水和物を含有する製剤における使用のための様々な薬理学的クラスからの活性物質の例は、例えば、抗菌剤、抗ヒスタミン剤及び充血緩和剤、抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、局所麻酔薬、抗真菌剤、アメーバ剤若しくはトリコモナス剤、鎮痛薬、抗不安薬、抗凝固剤、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗凝固薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、緑内障治療薬、抗マラリア薬、抗菌剤、抗腫瘍薬、抗肥満薬、抗精神病薬、降圧剤、抗自己免疫障害剤、抗インポテンツ剤、抗パーキソニズム剤、抗アルツハイマー剤、解熱剤、抗コリン作用薬、抗潰瘍剤、食欲抑制剤、ベータ遮断剤、ベータ-2アゴニスト、アルファ受容体アンタゴニスト及びアゴニスト、血糖降下剤、気管支拡張剤、中枢神経系に作用する剤、心血管剤、認知促進薬、避妊薬、コレステロール低下薬、脂質異常に対する剤、細胞分裂阻害剤、利尿剤、殺菌剤、H-2遮断薬、ホルモン剤、抗ホルモン剤、睡眠剤、変力剤、筋弛緩剤、筋収縮剤、物理的活性化剤(physic energizers)、鎮静剤、交感神経刺激薬、血管拡張薬、血管収縮薬、精神安定剤、電解質サプリメント、ビタミン、尿酸排泄増加薬、強心配糖体、膜流出阻害剤、膜輸送タンパク質阻害剤、去痰剤、下剤、造影剤、放射性医薬品、イメージング剤、ペプチド、酵素、成長因子、ワクチン、ミネラル微量元素等を含み得る。
【0054】
治療的、予防的及び/又は診断的に活性な原薬はまた、医薬的に許容される塩、溶媒和物若しくはその複合体、又は何れかの適切な結晶若しくはアモルファス形態、又はプロドラッグ形態であり得る。
【0055】
特定の実施形態において、活性物質は、1つ以上のアルキル化剤、1つ以上の代謝拮抗薬、1つ以上の有糸分裂阻害剤、1つ以上のトポイソメラーゼ阻害剤、1つ以上の生物学的細胞調節剤、1つ以上のホルモン又は抗ホルモン剤及び同様のものである。
【0056】
より具体的に、1つ以上の活性物質は、メファラン(mephalan)、ブスルファン(busulfan)、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、シクロホスファミド(cyclophosphamid)、ダカルバジン(dacarbazin)、クロラムブシル(chlorambucil)、ロムスチン(lomustin)、カルボプラチン(carboplatin)、テモゾロミド(temozolomid)、トレオスルファン(treosulfan)等のアルキル化剤; ペメトレキセド(pemetrexed)、シタラビン(cytarabin)、アザチオプリン(azathioprin)、フルダラビンホスファト(fludarabinphosphat)、フルオロウラシル(fluoruracil)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、クラドリビン(cladribin)、メトトレキサート(methotrexat)、テガフール(tegafur)、ウラシル(uracil)、カペシタビン(capecitabin)等の代謝拮抗薬; ビノレルビン(vinorelbin)、ビンクリスチン(vinkristin)、パシタキセル(pacitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、ビンブラスチン(vinblastin)等の抗真菌剤; ドキソルビシン(doxorubicin)、アムサクリン(amsakrin)、イリノテカン(irinotecan)、ダウノルビシン(daunorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、エトポシド(etoposid)、イダルビシン(idarubicin)、トポテカン(topotecan)、マイトマイシン(mitomycin)、ミトキサントロン(mitoxantron)等のトポイソメラーゼ阻害剤; ブレオマイシン(bleomycin)等の生物学的細胞調節剤; ポリエストラジオールホスフェート(polyestradiolphosphate)、エストラジオール(estradiol)、アナストロゾール(anastrozol)、エキセメスタン(exemestan)、フルベストラント(fluvestrant)、レトロゾール(letrozol)、タモキシフェン(tamoxifen)、メゲストロールアセテート(megestrolacetate)、メドロキシプロゲステロンアセテート(medroxyprogesteron acetate)、オクトレオチド(octreotid)、トリプトレリン(triptorelin)、リュープロレリン(leuprorelin)、ブセレリン(buserelin)、ゴセレリン(goserelin)等のホルモン若しくは抗ホルモン; イマチニブ(imatinib)等のアスパラギナーゼ、チロシンキナーゼ阻害剤; ミトタン(mitotan)、セレコキシブ(celecoxib)、レノグラスチム(lenograstim)、インターフェロンγ-1b(interferon γ-1 b)、インターフェロンα-2b、ペグフィルグラスチム(pegfilgrastim)、フィルグラスチム(filgrastim)、アルデスロイキン(aldesleukin)、ベバシズマブ(bevacizumab)、セツキシマブ(cetuximab)、トラスツズマブ(trastuzumab)、アレムツズマブ(alemtuzumab)、リツキシマブ(rituximab)、ボルテゾミブ(bortezomib)、テモポルフィン(temoporfin)、メチルアミノレブリナート(methylaminolevulinat)、アナグレイド(anagrelid)、エストラムスチンホスファト(estramustinphosphat)等の他の剤であり得る。
【0057】
好ましい実施形態において、活性物質は、前立腺関連疾患又は病状の治療に適する。
【0058】
本発明によって調製される硫酸カルシウム半水和物を含有する製剤は、最小侵襲技術、及び長期間にわたる薬物の持続(制御)局所放出プロファイルで局所的に投与され得る。そのような活性物質の局所的及び持続的送達は、活性物質の局所濃度-時間プロファイル及びそれらの局所薬理学的効果を最適化し、全身曝露を最小化し、それにより副作用を低減し、従って、活性物質及び活性物質を含む医薬組成物の安全性及び有用性を高める。さらに、治療法のコンプライアンスも向上する。
【0059】
本発明によって調製される硫酸カルシウム半水和物を含有する他の好ましい製剤は、治療的、予防的及び/又は診断的に活性な物質が、アンドロゲン又はその誘導体、エストロゲン又はその誘導体、抗エストロゲン又はその誘導体、ゲスターゲン又はその誘導体、抗ゲスターゲン又はその誘導体、オリゴヌクレオチド、プロゲスタゲン又はその誘導体、ゴナドトロピン放出ホルモン又はその類似体若しくは誘導体、ゴナドトロピン阻害剤又はその誘導体、副腎及び/又は前立腺酵素阻害剤、膜排出及び/又は膜輸送タンパク質、免疫系モジュレーター、血管新生阻害剤、又はそれらの組み合わせであるものである。
【0060】
崩壊試験
崩壊試験は、1Lの0.9%NaCl水性溶液を含有する直径190mmのガラス結晶皿の底部の直径方向反対側の端部付近に、それぞれ、重量約300mgの固化した試験製剤A~Gの3つの成形塊を配置することによって実施された。塊は、24時間後及びその後毎日目視で評価された。試験製剤A~Gは、塊が48時間後にそれらの元の形状を維持した場合は合格とマークされたが、塊が崩壊し始め、それによって48時間後にそれらの形状がなくなった場合は、不合格とマークされた。
【0061】
各試験製剤A~Gは、シリンジ中に1.6mL 0.25%Na-CMC水性溶液と共に、A) 0.45gの未充填マトリックス; B) 0.59gのAPI充填マトリックス; 及びC) 0.59gのAPI充填顆粒からなる混合粉末を懸濁することによって調製された。シリンジ内容物はよく混合され、混合物は、ペーストを形成し、そこからそれぞれ約300mgの重量の3つのサンプルを不活性表面上に射出し、30分以内に円形及び平らな底の成形塊と称されるものに固化させた。
【0062】
無充填マトリックスは、本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物を2μmの平均粒形まで従来の摩砕方法によって調製された。
【0063】
API充填マトリックスは、無充填マトリックスから調製された。無充填マトリックス(75g)は、イソプロパノール中の原薬2-ヒドロキシ-フルタミド(75g)の溶液中に懸濁された。懸濁液を、攪拌下で乾燥させ、本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物及び原薬2-ヒドロキシフルタミドからなるAPI充填マトリックスを作製した。
【0064】
API充填顆粒は、API充填マトリックスから調製された。API充填マトリックス(150g)を水(15mL)で湿らせ、4000バールの圧力で1時間静水圧プレスに入れ、それによって、本発明によって調製されたAPI充填マトリックス中の硫酸カルシウム半水和物は、再結晶し、硫酸カルシウム二水和物になり、APIを封入した硫酸カルシウム二水和物の緻密構造を形成する。これにより、硫酸カルシウム二水和物及び補足された原薬2-ヒドロキシフルタミドからなるAPI充填顆粒が作製される。その後、API充填顆粒は、粉砕され、摩砕され及び125~300μmの粒形にふるい分けされ崩壊試験に用いられる。
【0065】
【0066】
崩壊試験に合格した活性剤2-ヒドロキシフルタミドを含有する同じ製剤バッチからの4つの試験塊の経時的薬物放出を以下の
図1に示す。
【0067】
連続的で滑らかな放出曲線は、成形塊が、分解することなく、ゆっくり/徐々に溶解する(粉々になる/崩壊)ことを必要とすることが示されている。成形塊が、粉々になる/崩壊すると、薬物放出は、強く増加する。従って、上記の崩壊試験は、薬物放出を分析することなく、試験製剤A~Gの品質をチェックするための迅速な方法である。
【0068】
従って、製剤が、十分に凝集塊を形成することは、徐放及び経時的な薬物放出にとって不可欠である。成形塊の凝集性は、硫酸カルシウム半水和物の製造方法に依存することがわかった。本発明によって調製された硫酸カルシウム半水和物から調製された成形塊は、上記崩壊試験に全て合格した。
【0069】
本発明はまた、本明細書の記載の方法の何れかによって得られる硫酸カルシウム半水和物粉末に関する。
【実施例】
【0070】
実施例
一般的手順
典型的に、硫酸カルシウム半水和物は、以下のように調製される: Carl Roth(品番0256.3)からの硫酸カルシウム二水和物を、直径190mmの円筒形ガラス結晶皿に注ぐ。500gの自由流動性粉末が、各ガラス結晶皿に均等に分配され、これは、一般に約30~40mmの粉末層の厚さに相当する。結晶皿の適宜な数が、約0.5L/sの排出空気流、200℃で予備加熱した加熱キャビネット内に挿入される。4時間加熱した後、半水和物が産生され、キャビネットから取り出し、室温で少なくとも30分間冷却した。さらなる加工及び崩壊試験における評価のために、代表的なサンプルを取り出すことが出来る。
【0071】
試験製剤A~Gを上記の一般手順を用いて調製し、代表的なサンプルを取り出し、崩壊試験で評価した。崩壊試験の結果を表1に示す。