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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】光子センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4863 20200101AFI20220614BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20220614BHJP
【FI】
G01S7/4863
G01S17/10
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019535786
(86)(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 GB2017053900
(87)【国際公開番号】W WO2018122560
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】1622429.7
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513249781
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー コート オブ ザ ユニバーシティー オブ エジンバラ
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY COURT OF THE UNIVERSITY OF EDINBURGH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【弁理士】
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】アフメット エルドアン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ヘンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ウォーカー
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0217264(US,A1)
【文献】特開2016-032608(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0300838(US,A1)
【文献】特開2016-151458(JP,A)
【文献】特開2015-108629(JP,A)
【文献】特表2014-514553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子検出用のセンサ装置であって、
数のピクセルデバイスを備え、各ピクセルデバイスは、
各々が光子検出イベントに応答して光子検出信号を生成するように構成された複数の光子検出器と、
前記光子検出信号を処理して光子検出イベント信号を生成するように構成された処理リソースであって、各光子検出イベント信号がそれぞれの光子検出イベントが発生した光子検出時間を表す時間データを含む、処理リソースと、
ピクセルメモリと、
検出期間にわたる光子検出イベントを表す検出データを取得すべく前記光子検出イベント信号を処理するように構成された他の処理リソースであって、
前記複数の光子検出器により生成された前記光子検出イベント信号の前記処理は時間-ディジタル変換プロセスを含み、
前記検出データは前記ピクセルデバイスの前記複数の光子検出器で時間の関数として検出された光子の分布を含み、前記ピクセルメモリは、前記検出データを格納するように構成される、他の処理リソースと、
前記検出データを前記ピクセルデバイスから送信する通信リソースと、
を備え、
前記光子検出イベント信号の前記処理は、前記検出データの蓄積及び/又は送信が前記光子検出イベント信号を直接蓄積及び/又は送信する場合より少ない蓄積容量及び/又は通信容量を使用するという結果をもたらす、
センサ装置。
【請求項2】
各光子検出器は単一光子アバランシェダイオード(SPAD)を備える、請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記光子検出イベント信号の前記処理はヒストグラミングプロセスを含み、及び/又は前記検出データはヒストグラムデータを含む、請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記他の処理リソースは、前記検出期間を光子検出イベントの分布のピークの測定又は予想位置に基づいて選択するように構成されている、請求項1-の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記光子検出イベント信号は前記検出期間中に得られ、前記光子検出イベント信号の前記処理は前記検出期間の一部分を選択し、前記検出期間の選択した部分の外部の光子検出イベント信号を排除する処理を含む、請求項1-の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記光子検出イベント信号の前記処理は、前記光子検出イベント信号を複数の時間ビンに割り当てる処理、及び必要に応じ、前記複数の時間ビンの各時間ビンに対してそれぞれのカウント値を表すカウントデータを得る処理を含む、請求項1-の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項7】
各時間ビンは時間インターバルを表す幅を有し、前記他の処理リソースは前記時間ビンの少なくとも1つの幅を選択又は変更するように構成されている、請求項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記他の処理リソースは、前記時間ビンの少なくとも1つの幅を自動的に又はユーザ入力に応答して、及び/又は、少なくとも1つの設定パラメータに基づいて選択又は変更するように構成されている、請求項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記他の処理リソースは、前記光子検出イベント信号を前記検出期間又は前記検出期間の前記選択部分に対して一連の時間ビンに亘って割り当てるように構成されている、請求項の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記他の処理リソースは、前記時間ビンの幅を選択又は変更するために及び/又は前記検出期間の一部分を選択するために前記時間データの一部分を変更及び/又は選択するように構成されている、請求項1-の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項11】
前記時間データの各項目は一連のビットを含み、前記時間データの変更は、前記時間データの前記項目の少なくともいくつかに対して、前記一連のビットの少なくともいくつかのビットを排除することを含む、請求項10に記載のセンサ装置。
【請求項12】
各ピクセルデバイスは前記他の処理リソースをリセットし、前記他の処理リソースからの信号を自動的に書き込むように構成されている、請求項1-11の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項13】
前記ピクセルデバイスの各々に対して、各ピクセルデバイスの前記通信リソースは前記ピクセルデバイスからの前記検出データを前記ピクセルデバイスから遠く離れた追加の処理リソース及び/又は前記ピクセルデバイスから遠く離れた他のメモリに送信するように構成されている、請求項1-12の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項14】
前記追加の処理リソース及び/又は前記他のメモリは前記複数のピクセルデバイスの各々からの検出データを処理及び/又は蓄積するように構成されている、請求項13に記載のセンサ装置。
【請求項15】
前記検出データは時間変化データを含み又は表し、前記追加の処理リソースは前記時間変化データから少なくとも一つの関心特徴を抽出するように構成されている、請求項13に記載のセンサ装置。
【請求項16】
前記センサ装置はチップ又は回路基板の上に設けられ、前記追加の処理リソース及び/又は前記他のリソースは前記チップ又は前記回路基板の外にある、請求項13-15の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項17】
前記複数のピクセルデバイスの各々に対して、前記ピクセルデバイスの前記他の処理リソース及び/又は前記メモリは前記複数の光子検出器に隣接して又は少なくとも部分的にそれらの下に位置する、請求項1-16の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項18】
前記複数のピクセルデバイスはアレイに配列され、前記複数のピクセルデバイスの少なくともいくつかに対して、前記ピクセルデバイスの前記他の処理リソース及び/又は前記メモリは前記ピクセルデバイスの前記光子検出器と隣接ピクセルデバイスの前記光子検出器との間に位置する、請求項1-17の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項19】
前記ピクセルデバイスの少なくともいくつかに対して、前記処理リソースは前記複数のピクセルデバイスの少なくともいくつかにより共有される共有処理リソース又はコンポーネントを備える、請求項1-18の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項20】
前記光子検出イベントは対象へのレーザ光線の照射に応答して生起し、前記装置は前記光子センサの動作及び/又は前記検出イベント信号及び/又は前記検出期間の処理が前記レーザ光線を照射するように構成されたレーザの動作と同期するように構成されている、請求項1-19の何れかに記載の装置。
【請求項21】
ライダーシステム、飛行時間システム、蛍光分光システム又はラマン分光システムで使用するように構成された請求項1-19の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項22】
ピクセルデバイスにおいて光子検出イベントに応答して光子検出イベント信号を取得するステップであって、各光子検出イベント信号は前記光子検出イベントが生起した検出時間を表す時間データを含む、ステップと、
前記ピクセルデバイスにおいて所定の期間に亘る光子検出イベントを表す検出データを取得すべく前記光子検出イベント信号を処理するステップであって、
複数の光子検出器により生成された前記光子検出イベント信号の前記処理は時間-ディジタル変換プロセスを含み、
前記検出データは前記ピクセルデバイスの前記複数の光子検出器で時間の関数として検出された光子の分布を含み、
ピクセルメモリが前記検出データを格納するように構成される、ステップと、
前記検出データを前記ピクセルデバイスから送信するステップと、
を含み、
前記処理は、前記検出データの蓄積及び/又は送信が前記光子検出イベント信号を直接蓄積及び/又は送信する場合より少ない蓄積容量及び/又は通信容量を使用するという結果をもたらす、
検出方法。
【請求項23】
レーザ光線を対象に照射するように構成されたレーザと、前記レーザ光線に応答して前記対象により放出される光子を検出するように構成された請求項1-21の何れかに記載のセンサ装置とを備える検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光子センサ装置、例えばスパース光子イベントの非同期検出及び測定に適した装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷結合デバイス(CCD)及び相補型メタルオキサイド半導体(CMOS)は2つのタイプの慣用ラインセンサである。どちらも時間分解出力を生成し得ない。競合単一光子アバランシダイオードアバランシェダイオード(SPAD)アレイ技術が存在する。
【0003】
ポイント、ライン及び2D画像アレイ等の様々な光検出器内のSPADが知られている。基本的なSPADレシーバは単一光子で叩かれると電子出力を生成する。これらの個々のレシーバは典型的には追加の回路とともにアレイに配列してピクセルデバイスを形成することができ、これは略してピクセルと称することができる。次に、ピクセルデバイスはリニアチェーンに配列してラインセンサを形成すること、又は2Dアレイに配列して画像センサを形成することができる。これらのセンサは高感度光学機器用に固有の組み合わせの検出機能を提供し、超高速光学現象に関連する時間分解情報を得ることできる。
【0004】
時間相関単一光子計数(TCSPC)ヒストグラミングに対して、オフチップヒストグラムメモリは大きい。既知の固体SPADセンサは時間-ディジタル変換器(TDC)をピクセルに実装するが、タイムスタンプデータは外部メモリリソース、例えば外部固体メモリ又はハードドライブを用いてTCSPCヒストグラミングを実行するためにオフチップで転送される。SPADにより検出された各光子がデータをオフチップ転送されることを要求するので、入/出力(I/O)データボトルネックになり得る。
【0005】
Pはピクセルの総数、Rは最大I/Oレート(ビット/秒)及びLは1ピクセルにつき発生されるワードのサイズ(ビット数)であるとすると、1ピクセル当たりの最大光子レートはR/(L×P)Hzに制限される。ピクセルの数が増加するにつれて、対応する減少が外部メモリに転送し得る光子の最大レートに生じる。このレートは、SPADがパルスを発生し得るレート(数100MHz)及びTDCがこれらのパルスを処理し得るレート(数100MHz)より著しく低い。チップのI/Oレートは通常はパッドの数、これらのパッドのデータレート及び電力消費により制限される。Gb/sの範囲のレートRは高解像度CMOSイメージセンサの典型である。これは約1000ピクセルのピクセルアレイに対して約1MHzの最大光子レートになり、これらの他のファクタにより決定される利用可能なピーク容量より2桁低い。10-100kピクセルを有する画像に対して、この状況は比例してより厳しくなる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様では、光子検出用センサ装置が提供され、該センサ装置は複数のピクセルデバイスを備え、各ピクセルデバイスは、光子検出イベントに応答して光子検出信号を生成するように構成された複数の光子検出器を備える。前記装置は、処理リソース、例えば当該ピクセルに専用の又は他のピクセルと共有される、前記光子検出信号を処理して光子検出イベント信号を生成するように構成された処理リソースを備えることができ、各光子検出イベント信号はそれぞれの光子検出イベントが発生した光子検出時間を表す時間データを含む。前記装置は、前記光子検出イベント信号を処理して検出期間に亘る光子検出イベントを表す検出データを得るように構成された他の処理リソースを備えることができる。前記装置は、ピクセルメモリを備えることができる。前記装置は、前記検出データを前記ピクセルデバイスから送信する通信リソースを備えることができる。前記光子検出イベント信号の前記処理は、前記検出データの蓄積及び/又は送信が前記光子検出イベント信号を直接蓄積及び/又は送信する場合よりも少ない蓄積容量及び/又は通信容量を使用するという結果をもたらす。前記ピクセルメモリは前記検出イベント信号及び/又は検出データを蓄積するように構成することができる。前記処理リソースが共有処理リソースである場合には、複数のピクセルに対して、検出信号を処理して光子検出イベント信号を生成するように構成された単一の共有処理リソース(例えば、TDC)を存在させてよい。
【0007】
各光子検出器は単一光子アバランシェダイオード(SPAD)を備えてよい。
【0008】
前記光子検出イベント信号の前記処理はヒストグラミングプロセスを含んでよく、前記検出データはヒストグラムデータを含んでよい。
【0009】
前記光子検出器により生成される前記光子検出信号の前記処理は時間-ディジタル変換プロセスを含んでよい。
【0010】
前記検出データは前記センサ装置で時間の関数として検出された光子の分布を表すものとしてよい。
【0011】
前記光子検出イベント信号の前記処理は、前記光子検出イベント信号を複数の時間ビンに割り当てる処理を含んでよい。前記光子検出イベント信号の前記処理は、前記複数の時間ビンの各時間ビンに対してそれぞれのカウント値を表すカウントデータを得る処理を含んでよい。検出イベントに応答して、収集及び蓄積された光子検出データは前記センサ装置に到達する光子の時間分布を表すものとしてよい。
【0012】
各時間ビンは時間インターバルを表す幅を有するものとしてよく、且つ前記他の処理リソースは前記時間ビンの少なくとも1つの幅を選択又は変更するように構成してよい。
【0013】
前記他の処理リソースは、前記時間ビンの少なくとも1つの幅を自動的に又はユーザ入力に応答して、及び/又は少なくとも1つの設定パラメータに基づいて選択又は変更するように構成してよい。
【0014】
前記他の処理リソースは、前記検出期間を光子検出イベントの分布のピークの測定又は予想位置などの関心特徴に基づいて選択するように構成してよい。
【0015】
前記光子検出イベント信号は前記検出期間中に得ることができ、前記光子検出イベント信号の前記処理は、前記検出期間の一部分を選択し、例えば検出データを得るために検出信号を処理する際に、前記検出期間の前記選択部分の外部から光子検出イベント信号を排除する処理を含んでよい。
【0016】
前記処理リソースは、前記検出期間の前記選択部分に対する前記検出イベント信号を前記時間ビンに割り当てるように構成してよい。
【0017】
前記他の処理リソースは、例えば前記時間ビンの幅を選択又は変更するために及び/又は前記検出期間の一部分を選択するために、前記時間データの一部分を変更及び/又は選択するように構成してよい。
【0018】
前記時間データの各項目は一連のビットを含み、前記時間データの変更は、タイムスタンプデータの前記項目の少なくともいくつかに対して、前記一連のビットの少なくともいくつかのビットを排除することを含んでよい。
【0019】
各ピクセルデバイスは前記他の処理リソースをリセットし、前記他の処理リソースからの信号を自動的に書き込むように構成してよい。
【0020】
前記時間データの少なくとも一部分の選択は、前記データの前記項目の少なくともいくつかに対して、前記一連のビットのいくつかをビットを選択することを含んでよい。
【0021】
前記装置は前記最初の処理リソースに提供されるクロック信号を修正する遅延発生器を更に備え、それにより光子検出データを遅延させる及び/又は前記検出期間をシフトさせるようにしてよい。
【0022】
前記ピクセルメモリは1つ以上のカウンタを備えてよい。前記ピクセルメモリはトライステートMUXコンポーネントを備えてよい。これらのカウンタは各ビンに対して検出された光子イベントの数をカウントするために使用してよい。露光時間の終了時に、カウンタの内容は(読出しに備えて)ヒストグラムメモリに蓄積され、カウンタは次の露光サイクルのためにリセットしてよい。
【0023】
前記ピクセルメモリは、5バイト又は10バイト以上及び1キロバイト未満のサイズを有してよい。好ましくは、ピクセルメモリは50バイト未満、例えば44バイトである。ピクセルメモリサイズはヒストグラムビンの数及び/又は1ビン当たりのビット数に基づいて選択することができる。例えば、32ビンで11ビット/ビン、従って全体で44バイトのピクセルヒストグラムメモリとしてよい。
【0024】
前記ピクセルデバイスの各々に対して、各ピクセルデバイスの前記通信リソースは前記ピクセルデバイスからの前記検出データを前記ピクセルデバイスから遠く離れた追加の処理リソース及び/又は前記ピクセルデバイスから遠く離れた他のメモリに送信するように構成してよい。
【0025】
前記追加の処理リソース及び/又は前記他のメモリは前記複数のピクセルデバイスの各々からの検出データを処理及び/又は蓄積するように構成してよい。
【0026】
前記センサ装置はチップ又は回路基板の上に設けられ、前記追加の処理リソース及び/又は前記他のリソースは前記チップ又は前記回路基板の外にあってよい。
【0027】
前記複数のピクセルデバイスの各々に対して、前記ピクセルデバイスの前記最初のリソース及び/又は他の処理リソース及び/又はメモリは前記複数の光子検出器に隣接して又は少なくとも部分的のその下に設置してよい。
【0028】
前記複数のピクセルデバイスはアレイに配列してよく、前記複数のピクセルデバイスの少なくともいくつかに対して、前記ピクセルデバイスの前記他の及び/又は最初の処理リソース及び/又はメモリは前記ピクセルデバイスの前記光子検出器と隣接ピクセルデバイスの前記光子検出器との間に設置してよい。
【0029】
前記光子検出イベントは対象へのレーザ光線の照射に応答して生起し得る。前記装置は、前記光子センサの動作及び/又は前記検出イベント信号及び/又は前記検出期間の処理が前記レーザ光線を照射するように構成されたレーザの動作と同期するように構成してよい。
【0030】
前記装置は、例えばライダーシステム、飛行時間システム、蛍光分光システム又はラマン分光システムで使用するように構成してよい。
【0031】
独立して提供することができる他の態様では、検出方法が提供され、該検出方法は、ピクセルデバイスにおいて光子検出イベントに応答して光子検出イベント信号を取得するステップであって、各光子検出イベント信号は前記光子検出イベントが生起した検出時間を表す時間データを含む、ステップと、前記ピクセルデバイスにおいて所定の期間に亘る光子検出イベントを表す検出データを取得すべく前記光子検出イベント信号を処理するステップと、前記検出データを前記ピクセルデバイスから送信するステップとを含み、前記処理は、前記検出データの蓄積及び/又は送信が前記光子検出イベント信号を直接蓄積及び/又は送信する場合よりも少ない蓄積容量及び/又は通信容量を使用するという結果をもたらす。
【0032】
別の態様では、レーザ光線を対象に照射するように構成されたレーザと、前記レーザ光線に応答して前記対象により放出される光子を検出するように構成された請求の範囲又は本明細書に記載されたセンサ装置とを備える検出システムが提供される。
【0033】
一つの態様における特徴は任意の他の態様における又はそれらの適切な組み合わせにおける特徴として提供し得る。例えば、方法の特徴は装置の特徴として提供することができ、その逆も同様である。
【0034】
本発明の様々な態様が、ほんの一例として、添付の図面を参照して以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】光子センサ装置の概略図である。
図2】一実施形態による光子センサチップの構造の概要を示す概略図である。
図3】光子センサ装置のピクセル素子の概略図である。
図4図4(a)及び図4(b)は光子センサ装置により発生される及び受信される信号のサブセットのタイミング図である。
図5】光子センサ装置により生成されるヒストグラムの例示的なプロット図である。
図6】11ビットヒストグラムビンの回路図である。
図7】ヒストグラムデコーダの回路図である。
図8】32ビットヒストグラムメモリの回路図である。
図9】光子センサを用いて取得された例示的な寿命減衰を示す。
図10】ラインセンサを用いて取得された最大カウントレートの比較を示す。
図11】ラインセンサを用いて取得された(a)TCSPCモード及び(b)ヒストグラムモードに基づく時間分解3Dスペクトルを示す。
図12】ラインセンサを用いて取得された(a)TCSPCモード及び(b)ヒストグラムモードに基づく推定寿命を示す。
図13】ラインセンサを用いて取得された(a)TCSPCモード及び(b)ヒストグラムモードとの間のカウントレート比較を示す。
図14】ヒストグラムモードのズーミング機能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
試料の特性を測定する光子センサ装置の例示的な構成が図1に示される。光子センサ装置は光子センサ10を有する。光学機器、例えば内視鏡など、が提供される。光学機器は、イメージングバンドル、キャピラリファイバ及び蛍光ビーズ及び/又は表面増感ラマンスペクトロスコピー(SERS)ファイバを備えるファイババンドルを有する。2つのパルスレーザが適切なフォーカス手段及び顕微鏡対物を介してファイババンドルと光学連通する。適切なフォーカス手段はダイクロイックミラーとし得る。
【0037】
レーザからのパルスレーザ光はマルチモードファイバに結合され、試料を照明するために使用される。試料の照明に応答して、光子検出イベントが生じる。検出イベントは用途に応じて変化する。例えば、検出イベントは蛍光散乱及び/又はラマン散乱により起こり得る。信号はファイババンドルにより受信され、ミラー又は格子を介して光子センサ装置に送信される。ラインセンサからのデータはその後コンピュータに送信され、ディスプレイに表示される。
【0038】
光子センサ10の例示的な実施形態が図2に示される。光子センサ10は1×512ピクセルを含むピクセルアレイを有する。センサ構造は、スキャン動作のために、毎秒1Mスペクトルの読み出し及びビデオレート光子計数/粗時間相関単一光子計数(TCSPC)を提供することができる。センサ構造は、いくつかある動作モードで特にオンチップ及びインピクセルのリアルタイムヒストグラミング(ヒストグラム生成)機能を提供する。センサ構造はインピクセルヒストグラミング機能にズーム及びシフト機能も提供する。
【0039】
ピクセルアレイの例示的なピクセルデバイス42(略してピクセルとも称する)も図2に示される。ピクセル42は2組の各組8個の「赤色」単一光子アバランシェダイオード(SPAD)44及び2組の各組8個の「青色」SPAD45を含む。図2の実施形態では赤色及び青色SPADが設けられるが、代替実施形態では、異なるSPADデバイス規格、例えば限定ではないが、異なる色感度のSPADの任意の他の適切な構成を設けてもよく、また全てのSPADを同じ規格、例えば同じ波長感度プロファイルを有するものとしても及び/又はすべてのSPADを任意のSPAD規格の混合としてもよい。
【0040】
赤色SPAD44は600nm~900nmの範囲の光に感応する。青色SPAD46は450nm~550nmの範囲の光に感応する。2組の赤色SPAD44及び2組の青色SPAD46は共同でピクセルSPADアレイ46を形成する。ピクセル42は、ピクセル内に配置された専用の処理リソース、例えば時間-ディジタル変換器(TDC)48、及びピクセル単位メモリリソース50など、も有する。TDCは光子検出イベント信号を、例えば時間スタンプデータ、ディジタルタイミング信号又はイベント発生時間の他の表現の形で提供する。ピクセル単位のメモリリソース50と関連する他の処理リソースが光子検出イベント信号を処理して検出データを得るためにピクセルごとに設けられる。他の処理リソースはピクセル単位のメモリリソースの一部として又は別のコンポーネントとして設けてもよい。最初の処理リソース、ピクセル単位メモリリソース及び他の処理リソースはセンサの動作モードに従って機能する。センサは制御モジュール52及び遅延発生器54の形態のグローバル処理リソースも有する。制御モジュール52は様々な設定パラメータの値を格納する設定レジスタを含んでよい。センサ10は、本実施形態ではセンサ出力バスの形態の通信リソースも含み、該センサ出力バスはシリアライザ56及び読み出しモジュール60を含む。センサ出力バスはセンサ10からの検出及び他のデータの外部処理リソース(図示せず)への送信を可能にする。
【0041】
例示のピクセルデバイス42は「赤色」及び「青色」SPADを有する。しかし、ピクセルデバイス42は一例にすぎない。例えば、ピクセルデバイスは同じ規格のSPADのみを用いて実装してもよい。
【0042】
単一光子の到着の瞬間はSPADの状態の変化、例えば非活性状態から活性状態への変化として登録される。活性化に続いて、各SPADは固有のデッドタイム期間を有し、これは典型的には数十ナノ秒続く。デッドタイム期間の経過後に、SPADは元の非活性状態にリセットする。
【0043】
各ピクセルの幅は23.78μmであるため、ピクセルアレイは約12.1275mmに等しい幅(62で示される)を有する。センサ10は2mm以下の高さ(64で示される)を有する。センサは約13mmに等しい幅を有する。上記の寸法は説明の目的のためにのみ提示され、他の数法及び形状も可能である。ピクセルアレイ及び個々のピクセルは任意の適切な形状及び大きさとしてよい。図2に示されるように、ピクセルアレイは分光分析又はライン走査用のラインセンサを形成するために1ピクセルの幅を有する一次元アレイとすることができる。代わりに、ピクセルアレイはイメージセンサを形成するために1ピクセルより大きい長さ及び幅を有する二次元アレイにしてもよい。
【0044】
本明細書の特徴は、センサ10はSPADアレイと平行にチップ上に配置されたメモリ及び処理コンポーネントのいくつかを選択したデバイスのみの処理及び/又は送信及び/又は格納を保証するために使用することができることにある。
【0045】
光子センサ10は様々な動作モードの1つで動作することができ、その選択によりピクセル単位メモリリソース50をどのように使用するかを決定する。特に関心がるのはオンチップヒストグラミングモードであり、このモードの動作は図3図4及び図5を参照して説明される。他の動作モードは単一光子計数(SPC)モード(時間ゲート)を含み、この場合にはメモリはカウンタAとカウンタBの2つのカウンタを有し、両カウンタは、例えば10ビットモードと20ビットモードを有する。他の動作モードは、例えば11ビット又は17ビットモードのTCSPC動作モードも含む。
【0046】
図3は、センサのピクセル42の回路コンポーネント及び処理ロジックにより実行される一連の動作を示すフローチャート及び回路図である。図3は、ピクセル42の光検出用のピクセルSPADアレイ46及びピクセル単位メモリ50を示す。図3は遅延発生器54も示す。制御リソース70も示す。制御リソース70はオンチップコントローラ54の一部分として設けても、オフチップとして設けてもよい。上記のピクセルコンポーネントに加えて、ピクセルはパルス合成回路72、他の処理リソース、例えばデコーダ(図3にピクセル単位メモリ50の一部分として示されている)、及び読み出しモジュール74も有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、単一TDC、又はTDCの少なくともいくつかのコンポーネント、が複数のピクセル42により共有される。従って、このような実施形態では、複数のピクセル42に対するタイムスタンプ又は他のタイミング情報が共通のTDCにより又は少なくともいくつかの共通コンポーネントを共有するTDCにより発生され得る。TDCのこのような共有は回路の縮小及び電力の低減を可能にするが、場合よってはより多くのSPADイベントの検出ミスを生じる可能性がある。
【0048】
遅延発生器54はすべてのピクセルに結合されたグローバルコンポーネントである。以下でより詳しく説明されるように、遅延発生器54はグローバル修正クロック信号をピクセルに提供する(STOPdで示されている)。特に、修正クロック信号はTDC48に提供される。修正クロック信号は概して、光子検出イベントをセンサ装置において生起せしめる対象からの蛍光又は他の光子放出プロセスの発生と一致する。ピクセル42のコンポーネントは、SPADアレイ46における光子の到着時間が遅延発生器54により提供される修正クロック信号を基準として測定されるように構成される。ピクセルの処理ロジックは複数の光子の到着時間測定値(例えば光子検出イベント信号と称することもできる)を提供することができ、該測定値を分類及び/又は処理してタイミング分布、例えばヒストグラムをピクセル単位メモリリソース50に沿って生成し記憶することができ、該ヒストグラムは例えば検出データと称することもできる。ピクセル42は検出データを含む又は表す読み出し信号をセンサ出力バスから提供することができ、該読み出し信号はSPADアレイでの検出期間に亘る検出光子の時間分布を表す。時間分布はピクセルごとに提供され、よってセンサ10はすべてのピクセルに対する時間分布を提供する。
【0049】
更に詳細には、SPADピクセルアレイ46の各SPADは複数のSPADパルスチャネルを介してパルス合成器72に結合され、各SPADは各自のSPADパルスチャネルを有する。各SPADは対応する処理ロジック(図示せず)を有し、該処理ロジックはフロントエンド、ディジタイザ、ディジタルバッファ、及びクェンチング回路を含み、それらは能動又は受動の何れかとしてよい。ディジタルバッファはSPADキャパシタンスが後続の回路により負荷されないように絶縁するとともにパルス信号をパルス合成回路72に送信するように働く。
【0050】
いくつかの実施形態ではピクセル処理ロジックの一部形成する、パルス合成回路72は、SPADアレイ46をTDC48に結合する。バルス合成回路は圧縮器として働き、SPAD出力を単一合成チャネルに合成する。単一チャネルは1光子カウントにつき1つの短パルスを提供する。比較的長いSPADパルス(数十ナノ秒)がパルス合成回路72により時間圧縮され、それによってSPADパルスの如何なるデッドタイムも除去される。比較的長いSPADパルス(数十ナノ秒)は最初に単安定により時間圧縮され、その後ORツリーにより論理和処理(空間圧縮)される。
【0051】
例示的な実施形態では、SPADアレイは赤色及び青色SPADを含み、赤色SPADからのSPADパルスは青色SPADからのSPADパルスとは別に合成される。本例では、青色又は赤色パルスストリームの何れか一方が次の処理ステップのために選択される。パルス合成器72はセンサの他の段、例えばTDC48及びピクセル単位メモリリソース50、のハードウェア要求を低減する有効な手段を提供する。パルス信号の精密な起源に関するいくつかの空間情報はSPADチャネルを合成することにより失われる。例えば、合成されたパルス信号を検査してパルスを発生した個別のSPADを決定することは不可能になるかもしれない。
【0052】
ピクセル処理ロジックの一部を構成するTDC48はパルス合成回路72から単一チャネル入力を受信するとともに遅延発生器54から遅延されたクロック信号を受信するよう構成され、該クロック信号はセンサのピクセルの各々に対するグローバルクロック信号として働く。TDC48はこれらの入力を処理し、光子検出イベントが発生した検出時間を表す検出時間データを含む検出イベント信号を発生する。
【0053】
システムは、異なるモード、例えばTCSPCモード及びヒストグラミングモード、で動作するように構成される。TDC及び他のコンポーネントはTCSPCモード及びヒストグラミングモードにおいて異なって動作し得る。TCSPCモード及びヒストグラミングモードにおける動作の更なる説明は図4に関連して以下で与えられる。
【0054】
ヒストグラミングモードにおいて、TDC48は、これらの入力を処理し、合成されたパルス信号の各パルスに対して発生した光子検出イベントの検出時間を表す時間データを含む光子検出イベント信号を発生するように構成される。TDCはゲートリング発振器TDCとしてよい。
【0055】
ピクセル処理ロジックの一部を形成する、例えば図7に示すようなデコーダは、ピクセルの別個のコンポーネントを形成しても、又はピクセルメモリリソース50の一部を形成してもよい。代わりに、デコーダはTDC48の一部を形成してもよい。デコーダはTDC48とメモリリソース50との間のインタフェースを提供する。デコーダは、TDC48により発生された光子検出イベント信号に少なくとも部分的に基づいて復号された信号及び少なくとも1つの制御パラメータを生成するように構成される。制御パラメータはヒストグラムの分解能を指示する又は決定するために使用し得るズーミングパラメータとしてよい。
【0056】
ユーザ制御の下で、ヒストグラム全体に亘るビンへの時間領域の割り当ては、有用な情報を含む領域のみがスパンされるまで、「ズーミング」プロセスにおいて連続的に改善することができる。通常いつでもオフチップ記憶されるデータのすべてを記憶する必要はないため、高度に時間分解されたデータを適度の量のオンチップメモリ/ピクセルで実現することができる。このメモリはあまり大きな面積を占めないため、このメモリは光感応領域に対して適度の充填比を維持しつつ各ピクセルに追加することができる。
【0057】
各ピクセル単位メモリリソース50は複数のメモリ部分に分割され、各メモリ部分は、例えばヒストグラムプロセスに使用される時間ビンとして作用する。メモリ部分はカウンタとし得る。デコーダは復号信号を対応するメモリ部分に提供し、対応するメモリ部分は受信した復号信号を計数する。従って、ピクセル単位メモリリソースは光子の時間分布をヒストグラムの形で表す計数データ、例えば計数値、を生成し記憶する。例えばズーミングパラメータによって、又は他の適切なプロセスを用いて、デコーダはヒストグラム時間分解能を設定することができる。ピクセル単位メモリリソース50はリプルカウンタのアレイなどの多くの代替方法で実装することができる。デコーダは1カウントづつインクリメントされるべき1つのヒストグラムビンを選択する論理ゲートチェーンとして実装することができる。
【0058】
ピクセルは、センサの別のコンポーネントからの又はセンサの外部からの読み出し信号を受信するように構成されたピクセル読み出しモジュール74を有する。読み出し信号の受信に応答して、読み出しモジュール74はメモリリソースの状態を表すピクセル出力信号78を生成する。ピクセル読み出しモジュール74はピクセル出力をセンサ出力バスに提供する。
【0059】
遅延発生器54は遅延パラメータを受信するように構成される。遅延パラメータはユーザ入力値又はピクセル出力78の何れかに基づいて制御リソース70により生成される。制御リソース70はピクセル42と遅延発生器54との間の帰還ループを提供し得る。遅延発生器54はレーザのパルスと同期したSTOP信号を受信し、遅延パラメータを用いてSTOP信号を調整して遅延されたSTOP信号を発生するように構成される。特定の実施形態では、STOPd信号はD×Tdelのタイミングだけ遅延されたSTOP信号のコピーであり、ここでDは遅延パラメータであり、Ddelは遅延ロックループ(DLL)又はプログラマブル遅延チェーンの基本遅延分解能である。
【0060】
使用中に、ヒストグラミングモードにおいて、光子放出イベントが発生し、光子がSPADアレイ46のSPADに入射し、ピクセルSPADアレイ46にSPADパルスを生ぜしめる。SPADパルスはSPADからその処理ロジックを介してパルス合成器72に送信される。パルス合成回路72は合成パルス信号をTDC48に提供する。TDC48は合成パルス信号の各パルスに対して光子検出イベント信号をタイムスタンプの形で生成する。タイムスタンプは実質的にはTDC48により受信された合成パルス信号の各パルスに対して生成される。TDCが検出されたSPADイベントを処理する(例えばタイムスタンプを発生する)のに要する時間は場合によってはパルスの見逃しを生じ得ることに留意されたい。例えば、発生したSPADパルスが互いに近すぎる場合には、TDCは現在のSPADパルスの処理中で次のSPADパルスを処理することができなくなり得る。
【0061】
デコーダはタイムスタンプを復号して復号信号を生成し、復号信号をピクセル単位メモリリソース50の正しい部分(例えば特定の時間ビンを表す)に分配し、それによりそれぞれのメモリ部分の計数を増加する。ピクセルSPADアレイに入射する光子のバーストの直後に、ピクセル単位メモリ50の部分に亘って計数分布が記憶される。読み出し信号に応答して、読み出しモジュール74はピクセル単位メモリ50の状態を表す読み出し信号78を送信する。送信信号はピクセルに対する計数分布を含む。
【0062】
送信ピクセル信号はセンサの他のピクセルからのピクセル信号と一緒にセンサ出力バスにより受信される。これらのピクセルセンサは一緒に更に処理されてセンサアレイヒストグラムを生成する。一例として、センサアレイヒストグラムが図5に示される。光子はヒストグラムビンをオフチップで加算することにより計数することもできる。
【0063】
図3を参照して別個の機能モジュールとして説明したが、TDC、デコーダ及びメモリは、STOP(又はSTOPd)信号を提供する遅延発生器と通信するピクセル処理ロジック回路の一部を形成してよい。一実施形態では、図7に示すように、TDCはゲートリング発振器、リプルカウンタ、及びシフトレジスタを含み、デコーダはロジックチェーンを含む。メモリリソースは、本実施形態では、インピクセルヒストグラムを実施するリプルカウンタのアレイにより提供される(例えば、図6及び図8を参照)。動作中、1つのSPADが光子放出し、TDC内のリプルカウンタを動作するゲートリングカウンタ(GRO)を始動する。これはシフトレジスタに1を入力するクロックを発生する。STOPパルスはシフトレジスタの状態をサンプリングしてサーモメータコードを生成し、該サーモメータコードはXORチェーンにより復号されてインピクセルヒストグラムを実施するリプルカウンタのアレイの単一ビンをインクリメントする。STOP信号はシフトレジスタが1をどのぐらい長くシフトした後に対応するヒストグラムビンを直接活性化するかをサンプリングする。シフトレジスタはGRO出力の分周出力により動作させてもよい。いくつかの実施形態では、ピクセル処理ロジックの他のコンポーネントが単一の1をシフトするように構成される場合にはデコーダは不要になる。
【0064】
図4(a)及び図(b)を参照するに、異なる動作モードにおけるセンサの代表的なタイミング図が示される。図4(a)はTCSPCモードにおけるシステムの動作に対するタイミング図を示す。TCSPCは光子効率及び特異性のために微小光時間分解イメージングに好ましい技術である。図4(b)はヒストグラムモードにおけるシステムの動作に対するタイミング図を示す。TDC、メモリリソース及びデコーダの動作はセンサの動作モードに依存する。
【0065】
例えば、図4(a)に示されるように、TCSPCモードにおける動作において、光子検出イベント、例えばタイムスタンプ、が露光時間窓内に捕獲される最初の光子に対してのみ生成される。図4(b)に示されるように、ヒストグラムモードにおける動作において、光子検出イベント信号が合成SPADパルスの各パルスに対して生成される。
【0066】
図4(a)及び図4(b)は両図とも17の波形を示す。第1(一番上)の波形はパルスレーザにより発生される波形である。パルスレーザは、例えば飛行時間システム又は蛍光/ラマン顕微鏡又は分光システムのための刺激を発生する。別の実施形態では、典型的にはMHzレートで単パルスを発生し得るレーザをパルスLIDARシステム内で試料を励起するため又はエコーを発生させるために使用することができる。第2の波形、STOPクロック、はレーザパルスに同期される。STOPクロックは通常はレーザからのSYNC出力から導出される。STOPクロック信号は基準信号を提供し、これを基準として光子の到着を測定することができる。STOPクロック信号は遅延発生器54に提供され、他の部分で記述したように設定時間だけ遅延させて第3の波形STOPdを提供することができる。第4の波形はSPADパルスを示す。第5の波形は可変露光窓(WIN)信号である。
【0067】
第6及び第7の波形はTDC波形であり、TDCカウンタ(TDC_counter)
及びTDC出力(TDC_output)波形に対応する。第8の波形はピクセルライト波形(PIX_WRITE)である。第9の波形はピクセルリセット波形(PIX_RESETn)である。ピクセルリセット信号はいくつかの他の制御信号、例えばPIX_WRITE、と一緒に(FPGAボードによって)外部から生成される。ピクセルリセット信号間の時間インターバルが露光時間を決定する(しかし、活性窓(即ち、図4(a)のWIN)内のSPADイベントのみは各露光サイクル内であるとみなされる)。
【0068】
第10の波形はAUTO_SEQ信号である。第11及び第12の波形はTDCライト信号(TDC_WRITE)及びTDCリセット信号(TDC_RESETn)に対応する。第13の波形(HIST_EN)はパラメータSelに対応し、これはメモリリソース内のヒストグラムモードをエネイブルする制御レジスタビットである。ヒストグラムモードパラメータ(HIST_MODE)制御信号は第14の波形である。この制御信号は表1、表2及び表3を参照して更に詳細に説明される。第15、第16及び第17の波形はヒストグラム読み出し波形(HIST_READOUT)、TDC読み出し(TDC_READOUT)及びピクセル出力信号(PIX_OUT)である。
【0069】
TCSPCモードとヒストグラムモードとの差は図4(a)と図4(b)を比較すると明らかである。例えば、TCSPCモードではタイムスタンプが露光時間内の最初の光子捕捉に対してのみ発生される。更に、TCSPCモードではヒストグラムメモリはバイパスされ、発生されたタイムスタンプは直接読み出される。
【0070】
ヒストグラムモードでは、TDCは露光時間内により多くのSPADを変換し、各変換されたSPADが(1つのヒストグラムビンをインクリメントすることにより)ヒストグラムを形成するために使用される。このモードでは、図4(b)に示すように、AUTO_SEQ制御信号をハイに設定することによって、(グローバルPIX_WRITE及びPIX_RESETnとは別に)TDC_WRITE及びTDC_RESETn制御信号が各ピクセルに対して自動的に且つ独立にオンチップ生成される。ヒストグラミングモードでは、多数の光子イベントがこれらのTDCリセット及びTDCライト信号により単一露光サイクル中に変換される。対照的に、TCSPCモードでは、1露光サイクルにつき1つの光子イベントのみが変換され、(すべてのピクセルの)すべてのTDCはグローバルリセット信号(PIX_RESTn)によりリセットされる。
【0071】
図4(b)及びヒストグラミングモードの動作を参照すると、光子が検出されてSPADパルスの形の検出信号を発生する(第4の波形に示される)。SPADパルスはTDCカウント信号をトリガし、次のSTOPdの立上り縁がTDCカウンタを停止する。TDCライト及びTDCリセット制御信号が自動的に各ピクセルに対して独立にオンチップ生成される。これらのTDC制御信号はグローバルピクセルライト信号及びピクセルリセット信号とは独立に生成される。TDCライト制御信号の受信に応答して、TDCはTDC値をメモリに書き込む。TDCリセット制御信号の受信に応答して、TDCカウンタはゼロにリセットされる。図4(b)に示されるように、グローバルピクセルライト制御信号信号(PIX_WRITE)がすべてのピクセルに送られる。グローバルピクセルライト信号の受信時に、現在のヒストグラムビンカウントがヒストグラムメモリに記憶され、ヒストグラムビンはグローバルピクセルリセット制御信号(PIX_RESETn)の受信時にクリアされる。これに続いてHIST_READOUT制御信号の下で各ヒストグラムが読み出される。
【0072】
ヒストグラムメモリはグローバルリセット信号によりリセットすることができる。しかしながら、ヒストグラミングモードでは、光子イベントの検出(例えばタイムスタンプの発生)後にTDCデータは更なる処理のためのヒストグラムモジュールに送られ、TDCカウンタが自動的にリセットされる(例えば、図4(b)の制御信号AUTO_SEQ,TDC_WRITE及びTDC_RESETn参照)。
【0073】
ここで図3にもどり、ピクセルのズーミング及び遅延機能を説明する。ヒストグラミングモードでは、タイムスタンプが検出期間中にTDCにより受信されるほぼすべての光子ごとに生成されるので、TDC48から送信されるタイミング信号は多数のタイムスタンプを含む(典型的には1kから1Mの間)。各タイムスタンプはTDC48により決定される。例えば、TDCはLビットワードのタイムスタンプを出力するように構成し得る。Lビットのタイムスタンプは2の時間インターバルに対応する情報を保存することができ、従って各TDCは本来最高時間分解能を有する。
【0074】
メモリリソース50は規定の数の区分又はカウンタを有し、各カウンタは所定のサイズを有する。各カウンタはカウント情報を保存するのに適切なサイズを有する。タイムスタンプ、Mビットサイズのカウンタは2までのイベントの発生をカウントすることができる。
【0075】
数値例はL=10及びM=8である。比較例として、イベントのタイミング情報を最高時間分解能で保存するにはメモリリソースをどのくらいの大きさにする必要があるかについて考察する。上記の値及びこの分解能では、2=1024カウンタ(各時間インターバルにつき1カウンタ)が必要とされ、各カウンタは8ビット(1バイト)である。この分解能でタイミング情報を記憶するためには、メモリは各ピクセルにつき1024バイトのサイズとなる。このようなサイズはオンチップピクセル単位メモリに対して大きすぎる。
【0076】
それゆえ、ピクセル単位メモリリソース50は低減した数のメモリ部分を備え、各メモリ部分はそれぞれの時間ビンに対応する。全部でN個の時間ビンがあり、N<2である。ビンの数を減らすことにより、必要とされるピクセル単位メモリエリアのオーバヘッドが減少し、メモリリソース50はピクセル42内に設置される。ピクセル内に設定されたメモリはメモリとTDC48との近さのために数100MHzのタイムスタンプの蓄積を達成することができる。本実施形態では、TDC出力の異なるビット数を選択することによってヒストグラムのズーミングが実行される。
【0077】
ピクセル単位メモリリソースはM×Nビットの大きさであり、ここでNはヒストグラムの時間ビンの数であり、Mは各ビンのカウンタの大きさである。ピクセルデコーダはLビットタイムスタンプを受信し、Lビットタイムスタンプの一部分を選択し、Lビットタイムスタンプの選択した部分がどのビンに割り当てられるべきかを決定する。
【0078】
例示的な実施形態では、ピクセルデコーダは設定パラメータK及びSelを含む入力信号を受信する。パラメータKはズーミングパラメータとみなせ、その値は時間ビンの大きさを決定する。Selはメモリリソースにおけるヒストグラムモードをイネーブルする制御レジスタビットである。入力信号K及びSelはそれぞれ図4(a)及び図4(b)にHIST_MODE及びHIST_ENとして示されている。デコーダはLビットワードのK及びNの値により決まる第1の部分を選択し、特に、デコーダはLビットワードのビットK~K+logN-1に対応する部分を選択する。この選択はヒストグラミングを実行する際に少なくともいくつかのビットを効果的に排除するためとみなせる。従って、この復号化された信号はlogKに等しい大きさを有する。同じ操作を各Lビットタイムスタンプに実行することにより、各ヒストグラムビンの時間インターバルはズーミングパラメータKにより決まる係数倍になる。Kは0からL-logNまでの任意の値に選択することができる。ズーミングパラメータKの選択はビン時間幅をTDC分解能ビン幅から2倍に増大する。
【0079】
オンチップヒストグラムオプションの例示的な実施形態が図5及び表1、表2及び表3に示されている。この特定の実施形態では、50psの時間分解能を有する12ビット(L=12)TDCに対してオプションが指定される。Kの値の選択又は変更はビンの時間幅を効果的に選択又は変更することができ、よってヒストグラムズーミングのレベルを効果的に選択又は変更することができる。オプション1~8は表1に示され、これらのオプションは7から0のKの値に対応する。オプション1,2及び3の下で生成されるヒストグラムが図5に示されている。この例示的実施形態では、時間ビンの数はN=12である。この実施形態では、12ビットTDCタイムスタンプの5ビット部分が選択される。2=32であるので、選択5ビット部分は時間ビンで表される32の可能な時間インターバルのうちの1つを表し、従ってこの部分がどのビンに割り当てられるべきかを決定する。
【0080】
図5(a)はTDCにより受信されるSTOP信号に対応するレーザ同期信号を示す。図5(b)は時間とともに光子カウントで測定された蛍光又は他の光子放出過程に対応する実際の応答曲線を示す。応答曲線はピークまでの第1の傾斜部及びピーク後の減衰部を有する。図5(c)~5(e)に示すヒストグラムは、システムにより生成された、連続的に細かくなる分解能における応答曲線の形状を表す。
【0081】
オプション1の選択はKを最大可能値7に選択することに対応する。得られるヒストグラムのプロットは図5(c)に示される。この選択はデコーダにTDCにより出力される12ビットタイムスタンプの5ビット部分を選択させ、この部分は12ビットタイムスタンプのビット7~11に対応する。このときデコーダはこの5ビット部分をヒストグラムメモリ(即ち、ヒストグラムビン)に割り当てる。ビット0~6はビニングレベルを決定する。この場合には、ビット0~6は2=128の連続TDCコードに対応する。従って、TDCコード0~127は第1のビンにビニングされ、第1のビンカウンタが1だけインクリメントされる。同様に、TDCコード128~256は第2のビンにビニングされ、第2のビンカウンタが1だけインクリメントされる。このように、すべての32ビンカウンタが更新される。オプション1のヒストグラムの総時間範囲は204.8nsであり、ビン幅は6.4nsである。
【0082】
オプション2の選択はKを第2の最大可能値6に選択することに対応する。得られるヒストグラムのプロットは図5(d)に示される。この選択はデコーダにTDCにより出力される12ビットタイムスタンプの5ビット部分を選択させ、この部分は12ビットタイムスタンプのビット6~10に対応する。このときデコーダはこの5ビット部分をヒストグラムメモリに割り当てる。ビット0~5はビニングレベルを決定する。この場合には、ビット0~5は2=64の連続TDCコードに対応する。従って、TDCコード0~63は第1のビンにビニングされ、第1のビンカウンタが1だけインクリメントされる。同様に、TDCコード64~127は第2のビンにビニングされ、第2のビンカウンタが1だけインクリメントされる。このように、すべての32ビンカウンタに入力が与えられる。ビット11により保持される情報は使用されない。最も高いビット、ビット11、の消失は総TDC範囲の値をオプション1と比較して半分に減少する。従って、オプション2のヒストグラムの総時間範囲は102.4nsであり、ビン幅は3.2nsである。
【0083】
オプション3の選択はKを第3の最大可能値5に選択することに対応する。得られるヒストグラムのプロットは図5(e)に示される。この選択はデコーダにTDCにより出力される12ビットタイムスタンプの5ビット部分を選択させ、この部分は12ビットタイムスタンプのビット5~9に対応する。このときデコーダはこの5ビット部分をヒストグラムメモリに割り当てる。ビット0~4はビニングレベルを決定する。この場合には、ビット0~4は2=32の連続TDCコードに対応する。従って、TDCコード0~31は第1のビンにビニングされ、第1のビンカウンタが1だけインクリメントされる。同様に、TDCコード32~63は第2のビンにビニングされ、第2のビンカウンタが1だけインクリメントされる。このように、すべての32ビンカウンタに入力が与えられる。ビット10及び11により保持される情報は使用されない。最も高い2ビット、ビット10及び11、の消失は総TDC範囲の値をオプション2と比較して半分に減少する。従って、オプション3のヒストグラムの総時間範囲は51.2nsであり、ビン幅は1.6nsである。
【0084】
Kの更なる選択は表1、表2、及び表3に示される。オプション8の選択はKを最小可能値0に選択することに対応する。この選択はデコーダにTDCにより出力される12ビットタイムスタンプの5ビット部分を選択させ、この部分は12ビットタイムスタンプのビット0~4に対応する。このときデコーダはこの5ビット部分をヒストグラムメモリに割り当てる。従って、ビット5~11ビットが保持するタイミング情報が記憶されない。
【0085】
オプション8ではビン幅は0.05nsであり、総TDC範囲は1.6nsである。このオプションでの分解能はTDCの固有の分解能に対応する。言い換えれば、時間ビン幅はTDCの時間分解能に等しい。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
HISTモード<2.0>はKのために選択された値に対応する。表2は各選択モードに対するTDC範囲をナノ秒単位で表わしている。総TDC範囲は利用可能な時間インターバルの数(第1の場合には212=4096)にTDCの時間分解能(50ps)を乗算することにより計算される。
【0089】
【表3】
【0090】
表3は表1及び表2の同じTDC範囲をTDCコードの利用可能な数として表し、ヒストグラムビン幅はTDCコードの数として表されている。
【0091】
表1、表2及び表3において、ヒストグラムビンサイズはビン連結ありの場合とビン連結なしの場合について記載されている。ビン連結は2つのMビットビンを単一の2Mビットビンとして使用することを可能にする。結果として、ビンサイズは2倍になり、ビン数は半分になる。
【0092】
11ビットヒストグラムビンの例示的な実施形態の回路図が図11に示される。各ビンは11ビットリプル加算器及びMUXベースのトライステートメモリユニットとして実装される。32ビットヒストグラムの例示的な実施形態の回路図が図7に示される。
【0093】
ビン連結の例示的な実施形態では、各ビンは図6に示すように実装される。動作中、ビン連結モードにおいて、2つの11ビット加算器が単に連結され(一方の加算器の最上位ビットが他方の加算器の最下位ビットに接続され)、22ビット加算器(事実上残りの2ビットはオーバフロービットであるため20ビット)を形成する。
【0094】
更なる処理リソースの一例であるヒストグラムデコーダの例示的な実施形態の回路図が図7に示されている。ヒストグラムデコーダは入力として、TDCからのタイムスタンプ(TDC_OUT)、ヒストグラムモード(HIST_MODE)制御信号及びヒストグラムモードイネーブル(HIST_EN)制御信号を入力として受け取る。ヒストグラムモード制御信号は表1、表2及び表3に関連して記載したように、Kの値を示す。
【0095】
ヒストグラムデコーダは、Kの値を用いてTDCタイムスタンプがヒストグラム窓内にあるかどうかを検査する。このとき、表1、表2及び表3に関連して記載したように、Kの値を用いて5ビットTDCデータチャンクがTDC出力から選択される。この5ビットの選択TDCデータチャンクはその後5-32デコーダにより変換され、この出力はその後ヒストグラムメモリに提供され、対応するヒストグラムカウンタをインクリメントする。
【0096】
32ヒストグラムビンメモリの回路図が図8に示される。図8は単一光子計数モードでの動作のために含まれる2つの単一光子カウンタSPCA及びSPCBも示す。図7を参照して説明したように、ヒストグラムデコーダはTDCタイムスタンプから導出されたヒストグラムビン情報を出力し、ビンカウンタをインクリメントする。割り当ては連続的に実行することができる。
【0097】
上述したズーミング機能に加えて、遅延信号はズーミング前にヒストグラムの遅延オフセットも提供する。遅延オフセットは関心特徴部、例えばピーク及び指数減衰部を、ヒストグラムのビンが2倍に拡大される際にこの特徴部がヒストグラムの第1のビンを占めるようにシフトさせる。パラメータDはヒストグラムの最初の数ビンに向かうレーザパルスに対応するヒストグラムの鋭い特徴部をシフトさせて有効なズーミングを可能にする。これは自働的に、又はシステムのユーザにより行うことができる。制御リソース70によって、システムは粗いビンサイズを用い次第にKを減少させることによりヒストグラムピーク位置をモニタ及び調整するとともにDの精密な選択によりピークを調整することができる。パルスレーザにより生成される鋭い特徴部の周囲の光波形の特徴のズーミングはより精密な距離推定をもたらすのでTOF測距システムにとって重要である。ズーミング及び遅延は蛍光成分の抑制をもたらすのでラマン分光分析にも重要である。
【0098】
前節で概説した遅延信号の使用は、検出期間又は検出期間の一部分(例えば、ピーク及びその後の減衰部のような関心特徴部において又はその直前で開始する検出期間の部分)を選択し、検出期間の選択部分の前及び/又は後の検出信号(例えば、ピークより早い時点に、もしあれば、得られる検出信号)を排除するために有効に使用することができる。
【0099】
ヒストグラミング又は他のプロセスに使用される検出期間又は検出期間の一部分を選択するために任意の他の適切なプロセスを使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、閾値プロセスを、カウント数が閾値レベルに到達するかそれを超える時点を決定することができる。この時点より前の検出期間の部分は、十分有用なデータを含まないと考えられるので、ヒストグラミング又は他のプロセスでの使用から排除することができる。同様に、いくつかの実施形態では、閾値プロセスを、カウント数がピーク後に更なる閾値レベル以下に下がる時点を決定するために使用することができる。この時点より後のデータは例えば除外し、減衰曲線の終わりを有効に切除することができる。他の実施形態では、使用する検出期間又は検出期間の一部分は光子検出イベントが予想される期間に基づいて選択することができる。例えば、対象へのレーザパルスの印加に続いて予想される光子検出イベントの開始前にデッドタイムが存在し、それに続いて予想される長さの減衰プロセスがあり、その減衰プロセス中に光子検出イベントの数がピークからゼロ又は閾値まで低下する。いくつかの実施形態では、有用又は所望のデータ、例えば検出イベント信号が得られると予想される期間と一致する検出期間が選択されるように、制御装置をレーザの動作と同期させることができる。
【0100】
図9は、図2を参照して説明した一次元センサを用いてオンチップピクセル単位ヒストグラムで取得した例示的な寿命減衰を示す。上図はピクセルアレイヒストグラムを示す3次元プロット図である。x軸はピクセル数を表し、y軸はビン数を表す。ビン数は0から31に及ぶ。ピクセル数は0から511に及ぶ。z軸は光子カウントを表す。従って、このプロット図は各ピクセルに対する各ビンの光子カウントを表す。
【0101】
下図は対応するヒートマップを示す。x軸はビン数を表し、y軸はピクセル数を表す。各ピクセルビンの色は上図に示される高さ(光子カウント)に対応する。
【0102】
いくつかの実施形態の特徴は、複数のピクセルの各々に対して、ピクセル単位処理リソース及び/又はメモリを、例えばSPADの下に層構造に形成された複数の光子検出器に隣接して又は少なくとも部分的にその下に設置することができることにある。ピクセルはアレイに配列することができ、少なくとも一部のピクセルに対して、ピクセルデバイスの処理リソース及び/又はメモリはピクセルのSPAD又は他の光子検出器と隣のピクセルのSPAD又は他の光子検出器との間に配置することができる。
【0103】
図2の実施形態のセンサ10は単一のチップ又は回路基板の上又は複数のチップ又は回路基板の上設けることができ、ピクセルデバイスの通信リソースは検出データを、チップ又は回路基板から、例えばチップ又は回路基板の外部の他のメモリ、プロセッサ又は他の処理リソースに送信するように構成することができる。例えば、ピクセルデバイスの各々からの検出データは、更なる処理及び記憶のためにPC又は他のコンピュータに、又はサーバに、又は専用の処理及び記憶ハードウェアに送信することができる。チップ又は回路基板は他の通信リソースを含むことができ、ピクセルデバイスの通信リソースからの検出データをチップ又は回路基板の他の通信リソースを介して他のメモリ及び/又は他の処理リソースに送信することができる。検出データは他の通信リソースによって受信し、再送信することができる。いくつかの実施形態ではチップ及び回路基板は、チップまたは回路基板外への送信前に検出データの更なる処理を実行可能にする、検出データ又は他のデータを記憶する追加のメモリ及び/又は追加の処理リソースを含むことができる。追加の処理リソースは、例えば検出データを処理して関心特徴を抽出することができる。関心特徴はヒストグラムデコーダ内で識別される関心特徴、例えばピークの位置又は高さ、又は減衰曲線をヒストグラムデータに適合させるために使用し得る1つ以上のフィッティングパラメータ、を含む。追加の処理リソースをチップ上に設けることによって、特徴抽出又は他のプロセスをより急速に実行することができる。しかしながら、追加の処理リソースは検出器と同じチップ又は回路基板の上に設けるだけでなく、いくつかの実施形態では追加の処理リソースはオフチップ又はオフ回路基板として設けてもよい。
【0104】
実施形態に基づくラインセンサを、すべてのモードにおける最大カウントレートを測定するために、100MHzでトリガされる制御LED照明の下で試験した。図10に示されるように、ピクセル単位ヒストグラミングは~1/4SPCカウントレートを達成し、TCSPCイベントタイミングを最大にする能力を実証している。センサの時間分解スペクトル性能を実証するためにフルオロセイン-ローダミンFRETを調査した。ラインセンサを分光器内に置き、483nmパルスレーザダイオード(20MHz繰り返し比)により照明された試料からの蛍光を捕集した。図11は、TCSPCモードで得られた混合物の時間分解スペクトル(図11(a))及びオンチップヒストグラミングモード(図11(b))を示す。2つの明確なピークが527nm及び584nmの波長で得られ、2つの異なる寿命を有する。蛍光寿命は関連する染料に関して予想どおりである(図12)。図13は、1波長当たりのオンチップヒストグラミングのデータ収集レートは純TCSPCモードより最大15倍になることを示す。これはフルオロセイン試料単独の場合の68倍になる。3.2ns/ビンから0.8ns/ビンへのズーミングが図14に示されている。本センサは既存の時間分解スペクトロスコピー及びイメージング応用を強化し、新たな応用を可能にする。
【0105】
いくつかの実施形態では、前記センサは光子が衝突したときだけ電力を消費する。実施形態により提供される別の利点は、前記センサはSPADベースの時間分解イメージセンサで出力されなければならない大きなデータ量も低減することにある。加えて、前記センサはセンサに入射する光子の数に対応して低い電力要件を有する。更なる利点として、前記センサは先進の低段数プロセスで積層3DCMOSに効率的に実装することができる。
【0106】
当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく開示の構成の様々な変形が可能であることは理解されよう。例えば、ピクセル単位メモリリソース50はより大きなメモリリソースの一部分としてよい。例えば、すべてのピクセルに対して1つのメモリリソースを設けるが、それを1ピクセルごとに独立のピクセル区分に分割してよい。更なる例では、時間ビンは等しい幅として示されているが、可変時間モードを実装し、ヒストグラム用に対数的に変化する時間幅例えばT,2T,4T,8T等を有する時間ビンを提供ことができる。これは、蛍光寿命で見られるような指数的に減少する波形の応答曲線に対して各ビンの光子カウントを均等化することができる。
【0107】
前記センサには更なる変更を加え、TDCを変換時間の関数である供給電圧で動作させることによってサーモメータデコーダの必要性を除去するとともに電力を低減することができる。
【0108】
いくつかの実施形態のセンサは短い(例えば、数100ns)光のバーストが発生するどこでも有用であり、イベントにおける光子の数を決定するのみならず、光子の空間位置及び到着時間を正確に獲得するのに望ましい。1つの用途は医学的/化学的用途、例えば内視鏡検査、癌検出、摂取可能ピル、のためのスペクトル蛍光寿命スキャニングの分野にある。本発明は上記の用途に限定されず、例えばTOF距離センシング/イメージング、3Dイメージング、ライダー、自動運転用ライダー(LDAS)、ビル内の人数計数、生産ライン上の3D物体スキャニング、防御用コーナ背後シーイング、バーコードスキャニング、ドローンによる地上ディジタル化、3Dレンジイメージング、オブジェクトディジタル化等に等しく使用することができる。
【0109】
処理リソース及び更なる処理リソースは所望の機能を提供する専用回路、例えば電子コンポーネントの専用回路配置として設けても、或いはソフトウェアハードウェア又はソフトウェアとハードウェアの任意の適切な組み合わせとして設けてもよい。
【0110】
特定の実施形態の上記の説明はほんの一例としてなされたものであり、限定を意図するものではない。様々な細部の変更が本明細書の範囲内でなし得ることは当業者に明らかであろう。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14