(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】チップ部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 13/00 20130101AFI20220614BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220614BHJP
H01L 41/338 20130101ALI20220614BHJP
H01L 41/293 20130101ALI20220614BHJP
【FI】
H01G13/00 391H
H01L21/78 Q
H01L21/78 M
H01G13/00 351Z
H01L41/338
H01L41/293
(21)【出願番号】P 2019542048
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2018033487
(87)【国際公開番号】W WO2019054338
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2017174835
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509302663
【氏名又は名称】エヌジーケイ・セラミックデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】小熊 勇
(72)【発明者】
【氏名】緒方 孝友
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 茂
(72)【発明者】
【氏名】太田 英武
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-66658(JP,A)
【文献】特開2001-284163(JP,A)
【文献】特開2009-246134(JP,A)
【文献】特開2009-246167(JP,A)
【文献】特開2005-259964(JP,A)
【文献】特開2011-66308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0240593(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0090656(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 13/00
H01L 21/301
H01L 41/338
H01L 41/293
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスのグリーンシート(14)又はグリーン積層体(16)をキャリアシート(10)に保持する工程と、
前記キャリアシート(10)に保持された前記グリーンシート(14)又はグリーン積層体(16)を、前記キャリアシート(10)の一部と共に切断する工程と、
切断後の前記グリーンシート(14)又はグリーン積層体(16)のうち、少なくとも製品とならない部分(22)を前記キャリアシート(10)の一部と共に剥離して、前記キャリアシート(10)上に複数のチップ片(24)を残す工程と、
前記複数のチップ片(24)を前記キャリアシート(10)に保持した状態で、前記剥離によって露出した前記複数のチップ片(24)の側面部(24a)に少なくとも表面処理を施す工程とを有することを特徴とするチップ部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のチップ部品の製造方法において、
さらに、前記複数のチップ片(24)を新しいキャリアシート(100)に保持した後、当初貼り付けてあったキャリアシート(10)から前記複数のチップ片(24)を剥離する工程と、
前記キャリアシート(100)に保持された前記チップ片(24)を、前記キャリアシート(100)の一部と共に切断する工程と、
切断後の前記チップ片(24)のうち、少なくとも製品とならない部分(22)を前記キャリアシート(100)の一部と共に剥離して、前記キャリアシート(100)上に複数のチップ片(24)を残す工程と、
前記複数のチップ片(24)を前記キャリアシート(100)に保持した状態で、前記剥離によって露出した前記複数のチップ片(24)の他方の側面部に少なくとも表面処理を施す工程とを有することを特徴とするチップ部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のチップ部品の製造方法において、
前記キャリアシート(10、100)は、基材層(12)と、該基材層(12)の一方の面に形成された粘着層(18)とを有するシートが2層以上積層されていることを特徴とするチップ部品の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のチップ部品の製造方法において、
前記キャリアシート(10、100)の前記粘着層(18)は、温度変化や紫外線照射によって粘着力が変化することを特徴とするチップ部品の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載のチップ部品の製造方法において、
各前記粘着層(18)の粘着力は任意に設定され、各層で同一又は異なる粘着力を有することを特徴とするチップ部品の製造方法。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載のチップ部品の製造方法において、
前記キャリアシート(10)は、第1シート(10A)と第2シート(10B)が積層されて構成され、
前記第1シート(10A)は、第1基材層(12a)と、前記グリーンシート(14)又はグリーン積層体(16)が貼着される第1粘着層(18a)とを有し、
前記第2シート(10B)は、第2基材層(12b)と、前記第1シート(10A)が貼着される第2粘着層(18b)とを有することを特徴とするチップ部品の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載のチップ部品の製造方法において、
前記第1粘着層(18a)の粘着力が前記第2粘着層(18b)の粘着力より低いことを特徴とするチップ部品の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載のチップ部品の製造方法において、
前記第2粘着層(18b)の粘着力は、前記第1粘着層(18a)の粘着力の4倍以上であることを特徴とするチップ部品の製造方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載のチップ部品の製造方法において、
前記第1粘着層(18a)の厚みが前記第2粘着層(18b)の厚みよりも薄いことを特徴とするチップ部品の製造方法。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載のチップ部品の製造方法において、
前記第1粘着層(18a)は、粘着力が0.05N/25mm以上で、且つ、厚みが10μm以下であることを特徴とするチップ部品の製造方法。
【請求項11】
請求項6~10のいずれか1項に記載のチップ部品の製造方法において、
前記第2粘着層(18b)は、粘着力が0.4N/25mm以上で、且つ、厚みが40μm以下であることを特徴とするチップ部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ部品の製造方法に関し、例えば圧電素子等のセラミック製チップ部品の製造方法に適用して好適なチップ部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チップ部品の製造方法として、例えば特許第5556070号公報に記載された製造方法がある。この製造方法は、接着シートと、エネルギー線照射により粘着力が低下するダイシングテープとが積層された1層のダイシングテープ一体型接着シートを、半導体ウエハに貼り付ける工程と、半導体ウエハ及び接着シートを切断することにより、半導体ウエハを個片化して複数の半導体チップを作製する工程とを有する。
【発明の概要】
【0003】
ところで、半導体ウエハを個片化して得られた半導体チップは、すでにイオン注入工程、配線工程、電極形成工程等を経ており、個片化することで、半導体チップとして完成している。
【0004】
一方、チップ部品においては、セラミックスグリーンシート又はセラミックス積層体を個片化して複数のチップ片とした後、チップ片の側面に電極等を形成するための少なくとも表面処理を施す工程に投入しなければならない。チップ片は非常に小さいものであり、多数個のチップ片を作製することから、ハンドリングが難しく、また、各チップ片に対する表面処理のための位置決めが困難になるという問題がある。
【0005】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、下記効果を奏するチップ部品の製造方法を提供することを目的とする。
(a)複数のチップ片をシートに貼着した状態でハンドリングすることができ、容易に次工程に投入することができる。
(b)複数のチップ片をシートに貼着した状態で少なくとも表面処理を行うことができる。
【0006】
[1] 本発明に係るチップ部品の製造方法は、セラミックスのグリーンシート又はグリーン積層体をキャリアシートに保持する工程と、前記キャリアシートに保持された前記グリーンシート又はグリーン積層体を、前記キャリアシートの一部と共に切断する工程と、切断後の前記グリーンシート又はグリーン積層体のうち、少なくとも製品とならない部分を前記キャリアシートの一部と共に剥離して、前記キャリアシート上に複数のチップ片を残す工程と、前記複数のチップ片を前記キャリアシートに保持した状態で、前記剥離によって露出した前記複数のチップ片の側面部に少なくとも表面処理を施す工程とを有することを特徴とする。
【0007】
これにより、複数のチップ片をキャリアシートに貼着した状態でハンドリングすることができ、容易に次工程に投入することができる。しかも、複数のチップ片をキャリアシートに貼着した状態で少なくとも表面処理を行うことができる。従って、表面処理を終えたチップ片(チップ部品)をシートから剥離することで、容易に複数のチップ部品を作製することができる。
【0008】
[2] 本発明において、さらに、前記複数のチップ片を新しいキャリアシートに保持した後、当初貼り付けてあったキャリアシートから前記複数のチップ片を剥離する工程と、前記新しいキャリアシートに保持された前記チップ片を、前記キャリアシートの一部と共に切断する工程と、切断後の前記チップ片のうち、少なくとも製品とならない部分を前記キャリアシートの一部と共に剥離して、前記キャリアシート上に複数のチップ片を残す工程と、前記複数のチップ片を前記新しいキャリアシートに保持した状態で、前記剥離によって露出した前記複数のチップ片の他方の側面部に少なくとも表面処理を施す工程とを有してもよい。これにより、複雑な形状のチップ片を多数形成することができると共に、各チップ片の複数の側面にそれぞれ電極膜を形成することができる。
【0009】
[3] 本発明において、前記キャリアシートは、基材層と、該基材層の一方の面に形成された粘着層とを有するシートが2層以上積層されていることが好ましい。
【0010】
これにより、切断後の前記グリーンシート又はグリーン積層体のうち、少なくとも製品とならない部分を剥離する際に、キャリアシートの1層目(上層)のシートのうち、製品とならない部分に対応した箇所も剥離することとなる。その結果、1層目のシートに、チップ片の側面に沿った側壁を有する凹部が形成される。
【0011】
そのため、その後のチップ片の側面部に対する表面処理が容易となり、しかも、シートにチップ片を貼着した状態で表面処理を行うことができる。
【0012】
[4] 本発明において、前記キャリアシートの前記粘着層は、温度変化や紫外線照射によって粘着力が変化することが好ましい。
【0013】
キャリアシートから製品とならない部分を剥離する際に、温度を変化させたり、紫外線を照射することで、キャリアシートの粘着層の粘着力が低下することから、製品とならない部分をキャリアシートの一部と共に容易に剥離することができ、キャリアシート上に複数のチップ片を残すことができる。
【0014】
[5] 本発明において、各前記粘着層の粘着力は任意に設定され、各層で同一又は異なる粘着力を有してもよい。
【0015】
[6] 本発明において、前記キャリアシートは、第1シートと第2シートが積層されて構成され、前記第1シートは、第1基材層と、前記グリーンシート又はグリーン積層体が貼着される第1粘着層とを有し、前記第2シートは、第2基材層と、前記第1シートが貼着される第2粘着層とを有してもよい。
【0016】
[7] 本発明において、前記第1粘着層の粘着力が前記第2粘着層の粘着力より低いことが好ましい。
【0017】
[8] 本発明において、前記第2粘着層の粘着力は、前記第1粘着層の粘着力の4倍以上であることが好ましい。さらに好ましくは12倍以上である。
【0018】
[9] 本発明において、前記第1粘着層の厚みが前記第2粘着層の厚みよりも薄いことが好ましい。
【0019】
[10] 本発明において、前記第1粘着層は、粘着力が0.05N/25mm以上で、且つ、厚みが10μm以下であることが好ましい。
【0020】
[11] 本発明において、前記第2粘着層は、粘着力が0.4N/25mm以上で、且つ、厚みが40μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、粘着力が5.9N/25mm以上で、且つ、厚みが40μm以下であり、より好ましくは、粘着力が5.9N/25mm以上で、且つ、厚みが10μm以下である。
【0021】
本発明に係るチップ部品の製造方法によれば、下記効果を奏する。
(a)複数のチップ片をシートに貼着した状態でハンドリングすることができ、容易に次工程に投入することができる。
(b)複数のチップ片をシートに貼着した状態で少なくとも表面処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の実施の形態に係るチップ部品の製造方法(第1製造方法)を示すフローチャートである。
【
図2】
図2Aは、第1製造方法において、セラミックスのグリーンシート又はグリーン積層体をキャリアシートに保持した状態を示す斜視図であり、
図2Bは
図2AにおけるIIB-IIB線上の断面図であり、
図2Cはキャリアシートに保持されたグリーンシート又はグリーン積層体を、キャリアシートの一部と共に切断する状態を示す斜視図であり、
図2Dは
図2CにおけるIID-IID線上の断面図である。
【
図3】
図3Aは、第1製造方法において、切断後のグリーンシート又はグリーン積層体のうち、ダミー部をキャリアシートの一部と共に剥離して、キャリアシート上に複数のチップ片を残した状態を示す斜視図であり、
図3Bは
図3AにおけるIIIB-IIIB線上の断面図であって、ダミー部をキャリアシートの一部と共に剥離している状態を示す断面図であり、
図3Cは、露出した複数のチップ片の側面部に少なくとも表面処理を施して複数のチップ部品を作製した状態を示す斜視図であり、
図3Dは
図3CにおけるIIID-IIID線上の断面図である。
【
図5】第2の実施の形態に係るチップ部品の製造方法(第2製造方法)を示すフローチャートである。
【
図6】
図6Aは、第2製造方法において、一方の側面部にそれぞれ電極膜が形成された複数のチップ片をキャリアシートから剥離し、新しいキャリアシートの上面に貼り換えた状態を示す斜視図であり、
図6Bは、新しいキャリアシートに保持されたチップ片を、新しいキャリアシートの一部と共に切断する状態を示す斜視図であり、
図6Cは、露出した複数のチップ片の他方の側面部に少なくとも表面処理を施して複数のチップ部品を作製した状態を示す斜視図である。
【
図7】実施例1~7及び比較例の評価を示す表1である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るチップ部品の製造方法の実施の形態例を
図1~
図7を参照しながら説明する。なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0024】
本実施の形態に係るチップ部品は、図示しないが、例えば1層のセラミックスグリーンシートを個片化して得られた複数のチップ片の各側面に電極等を形成することで得られる。あるいは、例えば複数のセラミックグリーンシートと複数の内部電極が積層されたセラミックス積層体を個片化して得られた複数のチップ片の各側面に電極等を形成することで得られる。なお、上記セラミックグリーンシートは、内部電極や外部電極が形成されていてもよい。その後、チップ部品は焼成され、例えば圧電素子や共振器、フィルタ等として製品化される。チップ部品は、例えば直方体状を有し、縦が0.2~0.4mm、横が0.8~1.2mm、厚みが0.05~0.2mmである。
【0025】
そして、第1の実施の形態に係るチップ部品の製造方法(以下、第1製造方法と記す)は、
図1に示すように、第1工程、第2工程、第3工程、第4工程及び第5工程を有する。
【0026】
第1工程は、
図1のステップS1において、
図2A及び
図2Bに示すように、セラミックスのグリーンシート14又はグリーン積層体16をキャリアシート10に保持する。キャリアシート10は、基材層と、該基材層の一方の面に形成された粘着層とを有するシートが2層以上積層されている。
【0027】
第1製造方法では、
図2Bに示すように、キャリアシート10は、第1シート10Aと第2シート10Bが積層されて構成されている。第1シート10Aは、第1基材層12aと、グリーンシート14又はグリーン積層体16が貼着される第1粘着層18aとを有する。第2シート10Bは、第2基材層12bと、第1シート10Aが貼着される第2粘着層18bとを有する。
【0028】
そして、この第1工程(貼着工程)では、キャリアシート10の第1シート10Aの上面(第1粘着層18aの上面)にグリーンシート14又はグリーン積層体16を貼着する。
【0029】
次に、第2工程(切断工程)は、
図1のステップS2において、キャリアシート10に保持されたグリーンシート14又はグリーン積層体16を、キャリアシート10の一部と共に切断する。具体的には、
図2C及び
図2Dに示すように、切断手段であるナイフ20を、刃先が第2シート10Bの第2粘着層18bに到達する位置まで移動させることで、グリーンシート14又はグリーン積層体16並びに第1シート10Aを切断する。グリーンシート14又はグリーン積層体16の切断位置は、グリーンシート14又はグリーン積層体16のうち、製品となる部分と製品とならない部分との境界である。この場合、グリーンシート14又はグリーン積層体16並びに第1シート10Aが切断できればよいため、刃先の位置は、第1シート10Aの第1基材層12aの途中あるいは第2シート10Bの第2粘着層18bの途中あるいは第2シート10Bの第2基材層12bの途中まで達してもよい。
【0030】
次に、第3工程(ダミー部剥離工程)は、
図1のステップS3において、
図3A及び
図3Bに示すように、切断後のグリーンシート14又はグリーン積層体16のうち、少なくとも製品とならない部分(以下、ダミー部22と記す(
図3B参照))をキャリアシート10の一部と共に剥離して、キャリアシート10上に複数のチップ片24を残す。このとき、ダミー部22と共に、該ダミー部22の下に貼着された切断後の第1シート10Aの一部も剥離される。
【0031】
その後、ステップS4において、複数のチップ片24をキャリアシート10に保持した状態でハンドリングして、次工程(側面処理工程)に投入する。
【0032】
次に、第4工程(側面処理工程)は、
図1のステップS5において、
図3C及び
図3Dに示すように、上述した剥離によって露出した複数のチップ片24の側面部24aに少なくとも表面処理を施して複数のチップ部品26(
図3D参照)を作製する。ステップS3でのダミー部22の剥離によって、複数のチップ片24の間には、隙間28(空間)が形成される。
【0033】
そのため、キャリアシート10に複数のチップ片24を貼着した状態で、露出した複数のチップ片24の側面部24aに、ペースト塗布等の表面処理を行うことで、複数のチップ片24の側面部24aに例えば電極膜30(側面電極等)を形成することができる。もちろん、表面処理のほか、複数のチップ片24の側面部24aに種々の加工(溝の形成等)を行うことも可能となる。
【0034】
次に、第5工程(チップ部品剥離工程)は、
図1のステップS6において、チップ部品26をキャリアシート10から剥離する。すなわち、第2シート10Bから剥離する。
【0035】
このように、第1製造方法では、第3工程において、切断後のグリーンシート14又はグリーン積層体16のうち、少なくともダミー部22をキャリアシート10の一部と共に剥離して、キャリアシート10上に複数のチップ片24を残すようにしたので、複数のチップ片24をキャリアシート10に貼着した状態でハンドリングすることができ、容易に次工程(側面処理工程)に投入することができる。しかも、複数のチップ片24をキャリアシート10に貼着した状態で少なくとも表面処理を行うことができる。
【0036】
ここで、キャリアシート10に関し、以下の構成のキャリアシート10を採用してもよい。
【0037】
第1シート10Aの第1粘着層18aの粘着力を第2シート10Bの第2粘着層18bの粘着力よりも低くすることが好ましい。また、
図4に示すように、第2粘着層18bの厚みtbを第1粘着層18aの厚みta程度まで薄くすることが好ましい。
【0038】
第1粘着層18aの粘着力を高くすると、キャリアシート10からチップ部品26を剥離する際に、表面処理した部分(電極等)の一部が剥離するおそれがある。反対に、第1粘着層18aの粘着力を低くし過ぎると、第2工程(切断工程)での切断時に、チップ片24の位置ずれが生じ、第3工程でのダミー部剥離工程でダミー部22と共に剥離されるおそれがある。
【0039】
また、第2粘着層18bの粘着力を低くすると、切断工程にて、チップ片24の位置ずれが生じやすくなり、チップ片24を整列させることが困難になるおそれがある。この場合、多数のチップ片24に一度に表面処理等を行う場合に支障が生じるおそれもある。
【0040】
一方、第2粘着層18bの厚みtbを大きくすると、切断工程で、第2粘着層18bの剪断方向へのずれ量が大きくなり、この場合も、チップ片24の位置ずれが生じやすくなり、チップ片24を整列させることが困難になるおそれがある。
【0041】
第2粘着層18bの粘着力を第1粘着層18aの粘着力よりも高くし、且つ、第2粘着層18bの厚みtbを薄くすることで、チップ片24の位置ずれを抑制することができる。しかも、チップ片付きのキャリアシート10を次工程にハンドリングする際に、チップ片24が、残存する第1シート10Aと共に剥離するおそれもなくなる。
【0042】
第1シート10Aの第1粘着層18a及び第2シート10Bの第2粘着層18bは、温度変化や紫外線照射によって粘着力が変化する粘着層であることが好ましい。例えば第1シート10Aとして、第1粘着層18aの温度が予め設定されたスイッチング温度以下になった段階で粘着力が低下する感温性粘着シートを用いることができる。また、例えば第1シート10Aとして、紫外線を照射することで第1粘着層18aの粘着力が低下する紫外線硬化型粘着テープを用いることができる。これは、第2シート10Bについても同様である。
【0043】
これにより、第1シート10A及び第2シート10Bとしてそれぞれ感温性粘着シートを使用した場合、第1工程及び第2工程では、第1シート10Aの第1粘着層18a及び第2シート10Bの第2粘着層18bの温度をスイッチング温度よりも高い温度に設定する。そして、第3工程において、第2粘着層18bの温度をスイッチング温度よりも低い温度に設定することで、ダミー部22を、その下に貼着された切断後の第1シート10Aの一部と共に剥離し易くなる。
【0044】
第4工程に投入する段階(ハンドリング)並びに第4工程(表面処理等)では、第2粘着層18bの温度を、例えば第3工程での温度に維持して処理を行ってもよい。処理時間の短縮を図ることができる。
【0045】
もちろん、第4工程に投入する段階以降(ステップS4以降)において、再び第1シート10Aの第1粘着層18a及び第2シート10Bの第2粘着層18bの温度をスイッチング温度よりも高い温度に設定してもよい。これにより、第1粘着層18a及び第2粘着層18bの粘着力が高くなり、複数のチップ片24をキャリアシート10に貼着した状態でハンドリングすることができる。また、第4工程での表面処理等を行う際に、チップ片24がキャリアシート10から剥離することがなくなる。
【0046】
その後の第5工程では、第1シート10Aの第1粘着層18a及び第2シート10Bの第2粘着層18bの温度を、スイッチング温度よりも低い温度に設定して、チップ部品26を剥離する。
【0047】
仮に、第5工程で、第1シート10Aの第1粘着層18a及び第2シート10Bの第2粘着層18bの温度をスイッチング温度よりも低い温度に設定すれば、第1粘着層18aの粘着力が低くなるため、チップ部品26を剥離しやすくなる。しかし、急激な温度変化によって、チップ部品26の側面部に形成された電極等が剥がれる等、問題が生じるおそれがある。そのため、表面処理等を実施した以降は、第1粘着層18a及び第2粘着層18bの温度をスイッチング温度より低下させないことが好ましい。従って、第1粘着層18aの粘着力が第2粘着層18bの粘着力より低いことが好ましい。これにより、チップ部品26をキャリアシート10から剥離する際に、チップ部品26の側面部に形成された電極等が剥がれることがなくなり、チップ部品26の歩留まりを向上させることができる。
【0048】
次に、第2の実施の形態に係るチップ部品の製造方法(以下、第2製造方法と記す)について
図5及び
図6A~
図6Cを参照しながら説明する。
【0049】
この第2製造方法は、上述した第1製造方法とほぼ同様の工程を踏むが、チップ片24の側面部24aに対して複数回の表面処理等を実施する工程を有する点で異なる。
【0050】
具体的には、先ず、
図5の第1A工程(ステップS101)~第4A工程(ステップS105)を経ることで、
図6Aに示すように、チップ片24の一方の側面部への表面処理等によって電極膜30が形成される。
【0051】
その後、
図5の第1B工程(ステップS106:貼り換え工程)において、
図6Aに示すように、複数のチップ片24を新しいキャリアシート100に保持する。すなわち、複数のチップ片24を新しいキャリアシート100に貼り換える。例えば、複数のチップ片24を当初のキャリアシート10に載せた状態で、複数のチップ片24上に熱発泡シート(図示せず)を貼り付ける。その後、複数のチップ片24が当初のキャリアシート10と熱発泡シートとで挟まれた状態のワークを、スイッチング温度以下にして当初のキャリアシート10を剥離する。
【0052】
その後、高温側の温度差を利用して熱発泡シートから新しいキャリアシート100に貼り換える。すなわち、複数のチップ片24を熱発泡シートに載せた状態で、複数のチップ片24上に新しいキャリアシート100を貼り付ける。その後、複数のチップ片24が新しいキャリアシート100と熱発泡シートとで挟まれた状態のワークを、高温(熱発泡シートの剥離開始点以上)にして熱発泡シートを剥離する。これにより、新しいキャリアシート100に複数のチップ片24が貼り換えられる。こうすることで、当初のキャリアシート10上に整列して貼着されていた複数のチップ片24を、その整列状態を維持させた状態で、新しいキャリアシート100に貼り換えることができる。
【0053】
次に、
図5の第2B工程(ステップS107:切断工程)において、
図6Bに示すように、新しいキャリアシート100に保持された複数のチップ片24を、キャリアシート100の一部と共に切断する。
【0054】
次に、
図5の第3B工程(ステップS108:ダミー部剥離工程)において、
図6Cに示すように、切断処理によって生じたダミー部22(
図6B参照)をキャリアシート100の一部と共に剥離して、キャリアシート100上に複数のチップ片24を残す。このとき、ダミー部22と共に、該ダミー部22の下に貼着された切断後の第1シート100Aの一部も剥離される。
【0055】
その後、ステップS109において、複数のチップ片24をキャリアシート100に保持した状態でハンドリングして、次工程(側面処理工程)に投入する。
【0056】
次に、
図5の第4B工程(ステップS110:側面処理工程)において、
図6Cに示すように、上述したダミー部22の剥離によって露出した複数のチップ片24(
図6B参照)の他方の側面部に少なくとも表面処理(電極膜30の形成)を施して複数のチップ部品26を作製する。
【0057】
次に、
図5の第5工程(ステップS111:チップ部品剥離工程)において、チップ部品26(一方の側面部及び他方の側面部にそれぞれ電極膜30が形成されたチップ片)をキャリアシート100から剥離する。
【0058】
このように、第1工程~第4工程の一連の工程を繰り返すことで、複雑な形状のチップ片24を多数形成することができると共に、各チップ片24の複数の側面にそれぞれ電極膜30を形成することができる。
【実施例】
【0059】
実施例1~6及び比較例について、キャリアシート10の粘着層の粘着力及び厚みを変えてチップ部品の不良率を確認した。
【0060】
(実施例1)
実施例1は、キャリアシート10として、第1シート10A及び第2シート10Bの2層構造のシートを用いた。第1シート10Aとして、クールオフタイプの感温性粘着シート(ニッタ株式会社製:CS5010C25)を用い、第2シート10Bとして、同じくクールオフタイプの感温性粘着シート(ニッタ株式会社製:CS5040C08)を用いた。
【0061】
具体的には、第1シート10Aは、第1粘着層18aの粘着力が0.1N/25mm、厚みが10μmである。第2シート10Bは、第2粘着層18bの粘着力が0.4N/25mm、厚みが40μmである。
【0062】
そして、
図1に示す製造工程に沿って複数のチップ部品26を作製した。この場合、第2工程(切断工程)では、グリーンシート14又はグリーン積層体16を80℃に加温して切断した。この第2工程では、縦方向に124列、横方向に53列の切れ込みを入れた。
【0063】
第3工程(ダミー部剥離工程)では、等ピッチの櫛歯状の治具にて、ダミー部22をキャリアシート10の一部(切断後の第1シート10Aの一部)と共に剥離した。第4工程(側面処理工程)では、各チップ片24の側面部24aに、スクリーン印刷によって側面電極30を形成した、そして、第5工程(チップ部品剥離工程)では、キャリアシート10上に残存するチップ部品26を剥離した。
【0064】
(実施例2)
実施例2は、キャリアシート10の第2シート10Bとして、クールオフタイプの感温性粘着シート(ニッタ株式会社製:CS5010C05)を用いた点以外は、上述した実施例1と同様にして複数のチップ部品26を作製した。第2シート10Bは、第2粘着層18bの粘着力が1.2N/25mm、厚みが40μmである。
【0065】
(実施例3)
実施例3は、キャリアシート10の第2シート10Bとして、クールオフタイプの感温性粘着シート(ニッタ株式会社製:CS5010C02)を用いた点以外は、上述した実施例1と同様にして複数のチップ部品26を作製した。第2シート10Bは、第2粘着層18bの粘着力が5.9N/25mm、厚みが40μmである。
【0066】
(実施例4)
実施例4は、キャリアシート10の第2粘着層18bの厚みtbを30μmに調整した点以外は、上述した実施例3と同様にして複数のチップ部品26を作製した。
【0067】
(実施例5)
実施例5は、キャリアシート10の第2粘着層18bの厚みtbを20μmに調整した点以外は、上述した実施例3と同様にして複数のチップ部品26を作製した。
【0068】
(実施例6)
実施例6は、キャリアシート10の第2粘着層18bの厚みtbを10μmに調整した点以外は、上述した実施例3と同様にして複数のチップ部品26を作製した。
【0069】
(実施例7)
実施例7は、キャリアシート10の第1シート10Aとして、クールオフタイプの感温性粘着シート(ニッタ株式会社製:CS5010C80)を用いた点以外は、上述した実施例3と同様にして複数のチップ部品26を作製した。第1シート10Aは、第1粘着層18aの粘着力が0.05N/25mm、厚みが10μmである。
【0070】
(比較例)
比較例は、キャリアシート10として、第1シート10Aのみの1層構造のシートを用いた。第1シート10Aとして、クールオフタイプの感温性粘着シート(ニッタ株式会社製:CS5010C25)を用いた。具体的には、第1シート10Aは、第1粘着層18aの粘着力が0.1N/25mm、厚みが10μmである。
【0071】
そして、比較例では、図示しないが、セラミックスのグリーンシート14又はグリーン積層体16をキャリアシート10(第1シート10Aのみ)に保持した。その後、キャリアシート10に保持されたグリーンシート14又はグリーン積層体16を、キャリアシート10の一部と共に切断した。これによって、キャリアシート10上に複数のチップ片24が保持されることとなる。
【0072】
その後、複数のチップ片24をキャリアシート10に保持した状態でハンドリングして、次工程に投入した。その後、キャリアシート10から複数のチップ片24を剥離した。次いで、複数のチップ片24を次工程(表面処理等)のために整列した。そして、各チップ片24の側面部24aに、スクリーン印刷によって側面電極30を形成した。
【0073】
[不良率]
不良率は、1枚のキャリアシート10上に貼着されたグリーンシート14又はグリーン積層体16から作製されるチップ部品26の予定個数をM、実際に作製されたチップ部品26の個数をAとしたとき、A/Mを算出することで求めた。
【0074】
【0075】
表1の結果から、比較例は、ハンドリングの状態が不良であった。すなわち、ハンドリング中にキャリアシート10からチップ片24が脱落し、不良率が増加した。これは、キャリアシート10が第1シート10Aのみで構成されていることから、切断工程において、第1シート10A(キャリアシート)の第1基材層12aにまで切れ込みが入る。そのため、ハンドリングの際に、第1シート10Aが第1基材層12aに入った切れ込みの部分で折れ曲がり、キャリアシート10の安定した保持が困難になったのが原因と考えられる。また、比較例では、チップ片24への表面処理等の前段階で、複数のチップ片24を整列する必要があった。この整列作業の段階でのチップ片24の紛失も不良率が増加した要因と考えられる。
【0076】
一方、実施例1~7は、不良率が5%未満で、良好であった。これは、キャリアシート10として2層構造を採用したことから、ハンドリングが良好であったことと、複数のチップ片24をキャリアシート10に貼着した状態で表面処理等を実施でき、しかも、チップ片24の整列作業が不要になったことから、不良率が大幅に低減したものと考えられる。
【0077】
実施例1以外の実施例2~7は不良率が1%未満であった。実施例1は、第2シート10Bの第2粘着層18bの粘着力が0.4N/25mmと小さかったため、切断工程で、例えば縦方向に124列の切れ込みを入れる際に、チップ片24の位置が第1粘着層18aと共に徐々にずれ、これが不良率につながったものと考えられる。
【0078】
不良率が1%未満であった実施例2~7の結果を詳細に検討すると、実施例7を除く実施例2~6は、第2シート10Bの第2粘着層18bの粘着力が大きいほど不良率が低下している。これは、第2粘着層18bの粘着力が大きくなるほど、切断工程でのチップ片24及び第1粘着層18aの位置ずれが起こりにくくなり、これにより、不良率が低減したものと考えられる。
【0079】
また、第2シート10Bの第2粘着層18bの厚みtbが小さいほど不良率が低下している。これは、第2粘着層18bの厚みtbを小さくすることで、切断工程で、第2粘着層18bの剪断方向へのずれ量が小さくなり、これにより、不良率が低減したものと考えられる。
【0080】
実施例7は、第1粘着層18aの粘着力が0.05N/25mmと小さいことから、切断工程での切断時に、チップ片24の位置ずれが生じやすくなり、第3工程でのダミー部剥離工程でダミー部22と共に剥離され、これが不良率につながったものと考えられる。
【0081】
なお、本発明に係るチップ部品の製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。