(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】吸入器流量制御機構
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2019560127
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(86)【国際出願番号】 US2018030088
(87)【国際公開番号】W WO2018204217
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-03-16
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520448463
【氏名又は名称】キンデーバ ドラッグ デリバリー リミティド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ホドソン,ピーター ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ハウギル,スティーブン ジェイ.
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0099266(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0017189(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器であって、
吸入流に反応して、前記吸入流内に吸入される物質の放出をトリガする呼吸作動式トリガ機構と、
前記吸入流の一部を運ぶ前記吸入器内の第1の流体流路と、
前記第1の流体流路を通る吸入流を調節するように構成された流量調節器と、
前記吸入流の一部を運ぶ前記吸入器内の第2の流体流路であって、前記流量調節器を迂回する、第2の流体流路と、を備え、
前記トリガ機構をトリガすることが、前記第2の流体流路を通る流れを低減する又は遮断する、吸入器。
【請求項2】
前記第2の
流体流路が、トリガした後に前記トリガ機構の一部によって少なくとも部分的に遮断される、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記トリガ機構が、プリトリガ位置においてキャニスタを支持するように構成された作動部材を備え、前記作動部材は、トリガするとポストトリガ位置に移動して、前記第2の
流体流路を少なくとも部分的に遮断する、請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記作動部材が、バルブ部材を画定し、
前記吸入器が、前記第2の
流体流路のためのバルブシートを備え、
前記作動部材の前記プリトリガ位置では、前記バルブ部材と前記バルブシートとの間隔が空いており、前記ポストトリガ位置では、前記バルブ部材が前記バルブシートに当接する、請求項3に記載の吸入器。
【請求項5】
前記吸入器が、キャニスタの作動方向を画定し、
前記バルブシートが、前記作動方向と反対方向に面しており、
前記バルブ部材が、前記作動方向に移動して前記バルブシートに当接する、請求項4に記載の吸入器。
【請求項6】
前記バルブ部材と前記バルブシートとが、係合時に嵌合するように形作られている、請求項4又は5に記載の吸入器。
【請求項7】
前記バルブ部材が凸状であり、前記バルブシートが凹状である、請求項6に記載の吸入器。
【請求項8】
前記トリガ機構が、前記作動部材のプリトリガ位置からポストトリガ位置への移動を選択的に可能にするためのトグル機構を備える、請求項3~7のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項9】
前記トグル機構が、前記吸入流内に配置されたベーンを備え、前記ベーンは、ユーザが吸入すると、前記トグル機構を、前記トグル機構との協働により前記作動部材が前記作動部材のプリトリガ位置に維持される準備状態と、前記トグル機構が前記作動部材の移動を可能にする前記作動部材のポストトリガ状態との間で、移動させるように移動可能となる、請求項8に記載の吸入器。
【請求項10】
前記作動部材は、枢動軸周りに枢動可能な作動アームである、請求項3~9のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項11】
前記作動アームが、前記枢動軸に対して前記キャニスタの反対側の位置で前記第2の
流体流路を少なくとも部分的に遮断するように構成されている、請求項10に記載の吸入器。
【請求項12】
前記第1の
流体流路が、前記吸入器に画定された第1の流入口を有し、前記第2の
流体流路が、前記第1の流入口とは異なる、前記吸入器に画定された第2の流入口を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項13】
吸入流を運ぶための流出口を備え、
前記第1の流入口及び前記第2の流入口が、前記流出口に隣接している、請求項12に記載の吸入器。
【請求項14】
前記第1の流入口及び前記第2の流入口が、
吸入流を運ぶための流出口の両側にある、請求項12又は13に記載の吸入器。
【請求項15】
前記第1の流入口、前記第2の流入口、及び、前記流出口を選択的に覆うように構成されたカバー部材を備える、請求項13又は14に記載の吸入器。
【請求項16】
前記トリガ機構が、前記第2の
流体流路の下流に配置されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項17】
前記トリガ機構は、前記トリガ機構がトリガしたときに、キャニスタ出口の上流の前記第2の流体流路を通る流れを低減する又は遮断する、請求項16に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年5月4日に出願された英国特許出願第1707095.4号の利益を主張するものであり、その開示の全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、吸入器、特に呼吸作動式医療用吸入器のための流量制御機構に関する。本出願はまた、吸入器、及び特にこのような流量制御機構を含む医療用吸入器に関する。
【0003】
[関連出願]
本明細書に記載される本発明は、出願人の国際公開第2018/048797号に記載されている種類の吸入器での実装によく適している。したがって、許可された場合には、この文献は参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
呼吸器疾患及び他の疾患の治療のための気道へのエアロゾル化された薬剤の送達は、従来、加圧式定量吸入器(pMDI)、ドライパウダー吸入器(DPI)、又はネブライザ型吸入器のいずれかの吸入器を使用して行われる。pMDI吸入器は、特に業界標準になっており、喘息又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)のいずれかに罹患している多くの患者にはよく知られている。従来のpMDIデバイスは、絞りバルブで密閉されたアルミニウム容器を備えるキャニスタを含む。この容器には、医薬製剤が入っている。医薬製剤は、液状ハイドロフルオロアルカン(hydrofluoroalkane、HFA)推進剤中に懸濁させた1種以上の医薬品化合物の微細粒子、又は推進剤/共溶媒系に溶解させた1種以上の医薬品化合物の溶液のいずれかを含む加圧製剤である。例えば、界面活性剤、安定剤として作用する酸、充填剤などの他の賦形剤が含まれてもよい。1種の薬剤を溶液で、別の薬剤を懸濁液形態で組み込んだ製剤も知られている。
【0005】
従来の経肺用pMDIでは、密閉キャニスタはアクチュエータ内にある状態で患者に提供される。アクチュエータは、従来、キャニスタを囲む概ね円筒状の垂直のチューブに加えて吸気(又は吸入)オリフィスを画定する患者部分(例えば、マウスピース又はノーズピース)を形成する概ね水平のチューブを含む、概ねL形状の樹脂成形物である。このような吸入器を使用するために、患者は、息を吐き出し、患者ポートを体腔(例えば、口又は鼻)内に配置してから吸入し、吸気オリフィスを通して空気を吸い込む。(鼻薬物送達の場合、吸入が必要でない場合がある)。このような吸入器の大半は経肺用の「プレスアンドブリーズ」型のものであり、患者は、絞りバルブを動作させて定量の薬物をキャニスタから吸入空気流中に、そこからマウスピースを通じて自身の肺へと放出するために、キャニスタの突出端部を押さなければならない。出てくるエアロゾル化された薬物の雲霧が、最大の治療的利点をもたらすために、肺まで十分に深く届くべき場合、これには吸入と用量放出のタイミングの協調をかなりの程度必要とする。患者が、吸入流ができ上がる前に、用量を放出した場合、薬の一部はマウスピース又は患者の口内で失われるであろう。逆に、吸入の開始のかなり後に放出された場合、肺の深部領域は、既に空気で充満し、放出された薬剤エアロゾルの次のボーラスが入り込まないこともある。
【0006】
出てくる薬物エアロゾルのプルームの速度を低下させるために、及び薬物エアロゾルが膨張することができ、その推進剤がより完全に蒸発できる容積を提供するために、pMDIのマウスピース上に装着するスペーサデバイスがこれまでに考案されている。このスペーサデバイスは、協調の課題のいくつかを回避する役割を果たすとともに、過度に速い薬剤粒子の吸入に起因する高度の咽頭沈着の傾向も回避する。しかしながら、スペーサデバイスは非常に嵩張るものであり、過度の割合の薬剤をその壁に保持し得ることで、患者に届く用量が減少する。スペーサデバイスは、また、静電荷に非常に敏感であることもあり、多くの場合、スペーサデバイスが洗浄される又は乾燥される仕方に強く影響を受けることもある。
【0007】
一部の患者にとって大きな問題となり得ることを克服するために、自動呼吸作動式トリガ機構を用いて、患者の吸い込む息のみに応答して用量を放出するpMDI装置設計が創出されている。典型的には、ユーザによって準備され(例えば、ばねを圧縮することによって)及びトリガ機構によって開放されてキャニスタ上に作動負荷を提供することによって薬剤を放出するエネルギー蓄積手段が設けられる。一旦トリガされると、吸入器は、リセット機構によって次の動作のためにリセットされる必要がある。
【0008】
3M Company、St.Paul、MN、USAから入手可能なAUTOHALER(登録商標)定量吸入器及びTeva Pharmaceutical Industries Ltd.(Israel)から入手可能なEASIBREATHE(登録商標)吸入器は、呼吸作動を用い、用量放出を吸入とより適切に協調させようと試みる2つのそのようなpMDI装置である。多くの他の吸入器呼吸作動式機構及びリセット機構が提案されてきたが、1つ以上の弱点又は欠点を有する傾向がある。
【0009】
呼吸作動式吸入器は吸入と薬剤用量放出との間の協調の実現を有効に補助するものであり、多くの患者の肺への薬剤送達は結果として向上したものの、これらデバイスは、患者が吸入器の使用技法において呈し得る、考えられる欠点の全てを克服することはできない。例えば、患者が用量放出の良好なタイミングを達成することができたとしても、呼吸作動又は単に良好なプレスアンドブリーズの協調によるものであるかを問わず、患者は最適に満たない流量で吸入する傾向を有し得る。例えば、非常に高い吸息流量(すなわち、体積流量)は、咽頭後部に過剰かつ問題となる薬剤沈着を生じさせる可能性がある一方、非常に低い吸息流量はエアロゾル化された薬物スプレーの同伴が乏しくなる可能性がある。関連する更なる潜在的課題は、非常に高い吸息流量は肺をより急速に充満することになり得ることから、結果的に、良好な協調が更に一層必要となることである。
【0010】
吸入と用量放出の乏しい協調のため、多くの患者はその医療用吸入器の治療的利点を完全には得ていない。例えば、コントロール不良の喘息である患者の多くは、(i)10~50リットル/分(L/分)の流量に達することができず、(ii)この流量を少なくとも1.5秒間維持することができず、及び(iii)吸気後、自身の呼吸を少なくとも5秒間止めることができない。乏しい吸入器使用手技は特に喘息のコントロール不良に相関することが判明している。
【0011】
患者のpMDIを介した吸入の仕方は、肺への薬物送達の重要な決定因子であるため、全ての患者が同様かつ一貫した仕方で吸入することが望ましい。製薬会社により提供されているガイダンスにおける一般的見解は、pMDI薬剤は、遅くかつ深い吸入(通常、50~60L/分未満と解釈される)を行う患者が服用すべきであるというものである。
【0012】
しかしながら、従来のpMDI及び他の吸入器では、吸入流量制御は、ユーザ毎、更には同一患者の呼吸毎にばらつく。一部の患者は時として250L/分もの流量に達する場合があるが、他の患者ははるかに低い流量にしか達することができない場合がある。薬物をより低い流量で吸入すると、上気道内の薬剤衝突が減少し、肺のより深部における薬剤沈着が増加する傾向にある。患者が自身の喘息又は吸入器の使用を必要とする何らかの他の呼吸器疾患を制御できない場合、このことは患者の生活の質に影響を及ぼし、更なる医療介入の必要に至る場合がある。これは明らかに都合が悪い。
【0013】
吸入器の設計はそれぞれ、空気流に対するその固有抵抗(R)を有する。これは、多くの場合、単位(Pa)
0.5(分/L)で表され、次式により、吸入空気流量(FR)及び患者が生成する圧力損失(PD)に関連付けられる。
【数1】
【0014】
既存のpMDI吸入器は、通常、空気流に対し、例えば、0.5(Pa)0.5(分/L)未満の低い固有抵抗を有し、患者が自身の吸入流量を制御することを困難にする。呼吸プロファイルは急速すぎるものとなり得る。こうした状況下では、呼吸と用量の協調は困難になる可能性があり、患者間及び患者内両方のばらつきが高くなり得る。これほどの抵抗では、また、患者が例えば2~2.5秒を超える時間の定常流量に達することは困難な可能性がある。吸息操作中に及び吸入と吸入との間で流量の一貫性を得ることは困難な可能性がある。例えば、相当に高いがかなり一時的な流量に患者が達する、流量の「急上昇」が発生する可能性がある。このことは、患者の気道内における薬剤の乏しい空間的分布に繋がる恐れがある。
【0015】
1つの解決策は、流れに対する吸入器の抵抗を増加させる(すなわち、Rを増加させる)ことである。しかしながら、pMDIデバイスの設計に大きな固定(「静的」)抵抗を付加することも問題を招く。吸入器内の空気流路の幾何学的形状を制限することによって、例えば、1.6(Pa)0.5(分/L)以上の、はるかに高い抵抗が生成され得る。このような抵抗は、液状推進剤のエネルギー容量なくシステムから用量の薬物粉末を分散させる及び/又は解凝集させるのに必要なエネルギーを生成するために高抵抗を必要とする一部のDPIデバイスでは一般的なものである。しかし、残念ながら、高抵抗によって多くの患者が吸入器を通じてよりゆっくりとかつ絶え間なく、より長時間(例えば、5秒以上)吸入することがはるかに容易になる一方で、このような抵抗に抗して適切な量の空気を苦心して吸入する一部のより虚弱な患者にとって高抵抗は障害となる。特に、COPD患者はその肺機能障害のせいでこのような高抵抗で吸入することを困難と感じることが多い。
【0016】
低い又は高い吸入器抵抗に関連する上記の問題のいくつかを克服しつつスペーサデバイスの必要性もまた回避するために、例えば、国際公開第2017/112748号、国際公開第2017/112452号、及び国際公開第2017/112400号に記載されているように、流量調節器、及び流量調節器アセンブリが開発されている。これらの流量調節器は、経験する、すなわち、流量調節器の入口と出口との間で経験する圧力損失の関数として、その幾何学的形状及び空気流に対する抵抗を変更する能力を有する。流量調節器(「流量制限器」、「流れ制限器」、「流れレギュレータ」、「流れ制限デバイス」又はその派生語とも称され得る)は、空気流量を、低い差圧で得られる値により一致する値に制限して患者間及び患者内の吸入のばらつきを低減するために、高い差圧では空気流抵抗を増加させる一方、低い差圧では相当の空気流量を可能にする。
【0017】
呼吸作動式用量放出トリガシステム及び流量調節器システムの両方を組み込む、高性能なpMDI吸入器が提案されている。このような吸入器では、流量調節器がそれに空気流を制限する空気流量が、呼吸作動システムがトリガする空気流量よりも、個々の吸入器(及び個々の吸入事象)において大きいことが重要である。そうでない場合には、吸入器を通る空気流が用量の薬剤の放出をトリガするのに必要な空気流に達するのを流量調節器が妨げる可能性がある。これは、薬剤放出をトリガする際の明らかな問題であろう。
【0018】
そのシナリオを回避するために、このような吸入器を、トリガ流量(TFR)と調節流量(GFR)との間に明確な差を有するように構成することが有益であろう。例えば、これらの吸入器を、15±5L/分のTFR及び30±5L/分のGFRを有するように指定してもよく、これは、「最悪の場合」に、20L/分の最大可能TFRと25L/分の最小可能GFRとの間に少なくとも5L/分が存在するであろうことを意味する。しかしながら、このような仕様は、GFRを不都合に高く設定しなければならない可能性があり、またTFRを不安定に低く設定しなければならない可能性があることを意味するため、完璧とは言えない。加えて、仕様間にこのような隔たりがある場合でも、仕様から外れた状況が時々生じる可能性があるという潜在的懸念が依然として存在する。
【0019】
これらの問題の1つ以上を克服する、又は少なくとも軽減することが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【0020】
本発明の第1の態様によれば、吸入器が提供され、この吸入器は、吸入流に反応して、吸入流内に吸入される物質の放出をトリガする呼吸作動式トリガ機構と、吸入流の一部を運ぶ吸入器内の第1の流体流路と、第1の流体流路を通る吸入流を調節するように構成された流量調節器と、吸入流の一部を運ぶ吸入器内の第2の流体流路であって、流量調節器を迂回する、第2の流体流路と、を備え、トリガ機構をトリガすることが、第2の流体流路を通る流れを低減する又は遮断する。
【0021】
好都合には、この構成により、TFRをGFRに近付ける、又は更にはGFRよりも大きくすることができる。両流路がプリトリガの吸入流に寄与し、そのため、TFRが高くなり、そのうち一定の割合は調節されていない。第2の流路の閉鎖(又は部分閉鎖)により、調節される吸入流量の割合が増加し(最大100%)、これは、TFRとは無関係にGFRを選択することができることを意味する。
【0022】
好ましくは、第2の流路は、トリガした後にトリガ機構の一部によって少なくとも部分的に遮断される。既に機能を実行したトリガ機構の既存の構成要素を使用することにより、最小限のコスト及び設計変更で本発明を実施することができる。
【0023】
例えば、トリガ機構は、プリトリガ位置においてキャニスタを支持するように構成された作動部材を備えることができ、この作動部材は、トリガするとポストトリガ位置に移動して、第2の流路を少なくとも部分的に遮断する。
【0024】
作動部材は、バルブ部材を画定することができ、吸入器は、第2の流路のためのバルブシートを備えることができ、作動部材のプリトリガ位置では、バルブ部材とバルブシートとの間隔が空いており、ポストトリガ位置では、バルブ部材がバルブシートに当接する。これは、トリガ動作中に既に移動している構成要素を利用している。
【0025】
好ましくは、吸入器が、キャニスタの作動方向を画定し、バルブシートが、作動方向と反対方向に面しており、バルブ部材が、作動方向に移動してバルブシートに当接する。好ましくは、バルブ部材とバルブシートとが、係合時に嵌合するように形作られており、例えば、バルブ部材は凸状であってもよく、バルブシートは凹状であってもよい。好都合には、これにより、各構成要素の自己整列が可能になり、所望の程度まで流れを遮断するために良好な密閉を形成することができる。
【0026】
好ましくは、トリガ機構は、作動部材のプリトリガ位置からポストトリガ位置への移動を選択的に可能にするためのトグル機構を備える。トグル機構は、吸入流内に配置されたベーンを備えることができ、ベーンは、ユーザが吸入すると、トグル機構を、トグル機構との協働により作動部材が作動部材のプリトリガ位置に維持される準備状態と、トグル機構が作動部材の移動を可能にする作動部材のポストトリガ状態との間で、移動させるように移動可能となる。
【0027】
好ましくは、作動部材は、枢動軸周りに枢動可能な作動アームである。この場合、作動アームは、枢動軸に対してキャニスタの反対側の位置で第2の流路を少なくとも部分的に遮断するように構成されていることが好ましい。これにより、最大可動範囲が、プリトリガ位置のバルブシートを通過することが可能になる。
【0028】
好ましくは、第1の流路は、吸入器に画定された第1の流入口を有し、第2の流路は、第1の流入口とは異なる、吸入器に画定された第2の流入口を有する。好ましくは、第1の流入口及び第2の流入口は、流出口に隣接している。第1の流入口及び第2の流入口は、流出口の両側にあってもよい。吸入器は、第1の流入口、第2の流入口、及び、流出口を選択的に覆うように構成されたカバー部材を備えることができる。
【0029】
好ましくは、トリガ機構は、第2の流路の下流に配置されている。好ましくは、トリガ機構は、トリガ機構がトリガしたときに、キャニスタ出口の上流の第2の流体流路を通る流れを低減する又は遮断する。これにより、バルブが目詰まりしたり、薬剤による効果が低下したりするのを防ぐ。
【0030】
両流路がプリトリガの吸入流に寄与し、そのため、TFRが高くなり、そのうち一定の割合は調節されていない。第2の流路の閉鎖(又は部分閉鎖)により、調節される合計吸入流量の割合が増加し(最大100%)、これは、TFRとは無関係にGFRを選択することができることを意味する。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、吸入器が提供され、この吸入器は、吸入流に反応して、吸入流に吸入される物質の放出をトリガする呼吸作動式トリガ機構であって、吸入流に反応するベーンを備える呼吸作動式トリガ機構と、吸入流の少なくとも一部を調節するように構成された、第1の状態及び第2の状態を有する流量調節器であって、第2の状態では、流量調節器は、第1の状態よりも広い流れ面積を調節することができる、流量調節器と、を備え、ベーンの作動が、流量調節器を第1の状態から第2の状態に変化させる。
【0032】
好都合には、プリトリガの流量調節器の作動を少なくとも部分的に防止するということは、プリトリガには流れの大部分が調節されていないことを意味する。第1の態様と同様に、この構成により、TFRをGFRに近付ける、又は更にはGFRよりも大きくすることができる。
【0033】
好ましくは、流量調節器は、流量調節部材を備え、第2の状態では、流量調節部材は、流量調節部材を通過する流れに反応して移動することができ、第1の状態では、流量調節部材の移動が拘束されている。
【0034】
好ましくは、第1の状態では、流量調節部材の移動が防止されている(完全に拘束されている)。
【0035】
好ましくは、流量調節部材は、流路の側壁に対して枢動可能であり、この場合、第1の状態では、流量調節部材は、流量調節部材(又はその一部)が側壁に当接する開放位置に保持され得る。
【0036】
好ましくは、ベーンは静止位置を有し、吸入器は、流量調節部材と共に移動するように結合されたアームを備え、静止位置にあるベーンが、アームの移動を拘束し、静止位置から離れるように作動されると、アームの移動が可能になる。
【0037】
好ましくは、吸入器は、流量調節器通路に繋がる流入口と、吸入流通路から繋がる流出口とを備え、流量調節器通路及び吸入流通路が隣接している。
【0038】
好ましくは、ベーンは、第1の端部において枢動可能に取り付けられており、第1の端部と反対側に自由端を備え、ベーンの静止状態では、自由端が、流量調節器通路に隣接する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】本発明による第1のpMDI吸入器の第1の斜視図である。
【
図3】
図2のpMDI吸入器の第2の斜視図である。
【
図4】
図2のpMDI吸入器の一部の詳細斜視図である。
【
図6】キャニスタと共に示された、
図2のpMDI吸入器の部分組立品の第1の分解図である。
【
図7】キャニスタの一部と共に示された、
図6の部分組立品の第2の分解図である。
【
図8】
図6の部分組立品の第1の部分の斜視図である。
【
図10】
図6の部分組立品の第2の部分の斜視図である。
【
図11】
図6の部分組立品の第2の部分の斜視図である。
【
図12】
図6の部分組立品の第3~第8の部分の斜視図である。
【
図13】
図6の部分組立品の第3~第8の部分の斜視図である。
【
図14】
図6の部分組立品の第3~第8の部分の斜視図である。
【
図15】
図6の部分組立品の第3~第8の部分の斜視図である。
【
図15a】
図6の部分組立品の第3~第8の部分の斜視図である。
【
図16】
図6の部分組立品の第3~第8の部分の斜視図である。
【
図17】
図6の部分組立品の第3~第8の部分の斜視図である。
【
図18】非作動の静止状態にある
図6の部分組立品の斜視断面図である。
【
図19】キャニスタ及びキャニスタを装填するためのキャニスタ装填機構の一部と共に示された、非作動の静止状態にある
図6の部分組立品の斜視断面図である。
【
図20a】非作動の静止状態にある
図6の部分組立品の断面図である。
【
図21a】
図2のpMDI吸入器で使用される流量調節器構成要素の斜視図である。
【
図21b】
図21aの流量調節器構成要素と共に組み立てられた
図2のpMDI吸入器の流量調節器支持構成要素の端面図である。
【
図21c】
図21aの流量調節器構成要素と共に組み立てられた
図2のpMDI吸入器の流量調節器支持構成要素の端面図である。
【
図22】本発明による第2のpMDI吸入器の一部の斜視断面図である。
【
図23】
図22のpMDI吸入器の部分組立品の分解図である。
【
図28】本発明による、第1の状態にある第3のpMDI吸入器の断面図である。
【
図29】本発明による、第2の状態にある第3のpMDI吸入器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
先行技術
図1は、絞りバルブ54を用いてクリンプ46において密閉された缶53を含むキャニスタであって、医薬製剤52が入っているキャニスタ51の形態のバルブ付き容器を含む従来の加圧式定量吸入器(pMDI)50を表す。キャニスタ51は、ハウジング(又は「アクチュエータ」)55内に位置している。ハウジング(又は「アクチュエータ」)55は、キャニスタ51を受ける寸法につくられた開いた端47を有し、開いた端47からキャニスタ51の基部49が突出することができる管状スリーブ部分56と、吸気オリフィス(又は空気出口)45を画定する患者ポート57の形態の(例えば、マウスピースの形態の)部分を含む。吸入器のこのような患者ポートは、本明細書中では簡略化のために、「マウスピース」と呼ばれる場合がある。しかしながら、こうしたマウスピースは、これにかえて、鼻吸入器のノーズピースであるように構成されることができ、本開示は本明細書中に特に言及されていない場合であっても鼻吸入器に等しく適用できることが、理解される。ハウジング55の開放上端47は、吸込オリフィス又は空気入口を画定することができ、空気出口45は、吸入オリフィス又は空気出口を画定することができる。
【0041】
ステム部分58は、絞りバルブ54から突出しており、ハウジング55の一体部品として形成されたステムソケット59内に配置され、摩擦によって保持されている。スプレーオリフィス40が、ステムソケット59に形成されており、バルブステム部分58と吸気オリフィス45との間に流体連通のための通路をもたらす。使用時、患者は、患者ポート(例えば、マウスピース)57を体腔(例えば、口)の中に入れ、そして、キャニスタ51の突出している基部49を下方に同時に押しながら患者ポートを通して吸い込む。押す力は、キャニスタ51をバルブのステム部分58に相対的に下方に動かす役割を果たす。この相対的な移動は、キャニスタ51内のバルク製剤から定量の医薬製剤を分離して、ステム部分58内に形成された中空ボア48を介して定量の医薬製剤を排出する役割を果たす。そして、排出された用量は、ステムソケット59を流体通路に沿って通り、患者ポート57を通り患者の体腔(例えば、口腔及び/又は鼻腔)の中に入りそこから患者の気道の中に入る、細かい呼吸に適したスプレー41の形態で、スプレーオリフィスを介して出て、これによって患者の疾患を治療する。
【0042】
第1の実施形態
図2~
図4は、本発明による第1の加圧式定量吸入器(pMDI)60の斜視図を示す。ハウジング62は、主ハウジング本体63を含む。キャニスタ61(
図1~
図4には図示せず)は、主ハウジング本体63内に配置される。キャニスタ61は、
図1のキャニスタ51と同一である。主ハウジング本体63は、キャニスタ61を受け入れて取り囲む寸法につくられた概ね管状のスリーブ部分64と、吸気オリフィス(又は空気出口)145を画定する患者ポート157の形態の(例えば、マウスピース65の形態の)部分とを含む。吸入器のこのような患者ポートは、本明細書中では簡略化のために、「マウスピース」と呼ばれる場合がある。しかしながら、こうしたマウスピースは、これにかえて、鼻吸入器のノーズピースであるように構成されることができ、本開示は本明細書中に特に言及されていない場合であっても鼻吸入器に等しく適用できることが、理解される。ハウジングは、マウスピースカバー67を更に備え、このマウスピースカバー67は、マウスピース65が覆われる第1の位置(
図2及び
図3に示す)と、マウスピース65が覆われない第2の位置(
図4)との間で移動するように、主ハウジング本体に回転可能に取り付けられている。第1の吸込オリフィス又は空気入口68及び第2の吸込オリフィス69は、マウスピース65に隣接して画定されている。マウスピースカバー67がその第1の位置にあるとき、第1の吸込オリフィス68及び第2の吸込オリフィス69もまた、マウスピース65と共に覆われている。これらの特徴を以下により詳細に説明する。
【0043】
図5は、pMDI60の部分分解図を示す。主ハウジング本体63は、第1の部品70及び第2の部品71を含む。第1の部品70及び第2の部品71は、共に組み立てられると、キャニスタ61が受け入れられる容積を画定する。pMDI60は、マウスピース65と反対側のハウジング62の端部に配置されたキャニスタ作動機構72、及びマウスピース65に近接して配置された呼吸作動式トリガ機構100を含む。キャニスタ作動機構72及び呼吸作動式トリガ機構100の両方は、以下に説明するように、キャニスタ61の作動を制御して、キャニスタ内容物を自動的に分与する。
【0044】
図6及び
図7は、本発明の呼吸作動式トリガ機構100の分解図を示す。トリガシステム100は、下側本体構成要素165、トリガ機構シャーシ101、ベーン110の形態の呼吸応答部材、トグルリンク120、作動アーム130、フェイシャ構成要素175、流量調節器支持構成要素186、及びボタン構成要素140を含む。トリガ機構100は、キャニスタ61を受け入れるように構成されている。
【0045】
図8及び
図9は、トリガ機構シャーシ101の図(
図9は断面図である)を示す。トリガ機構シャーシ101は、空気流出口145を画定するマウスピース157を形成する中空管、掃引弧104を提供する壁、従トラック106及び主トラック106aを画定するトグルアクスルトラック105、並びにアクスル位置特徴部103を含む。流量調節器通路190は、マウスピース157に隣接してその下方に設けられており、第1の空気入口68において入口開口部193を有する。トリガ機構シャーシ101はまた、スプリングの端部を保持するためのシース109を提供し、2つの半管状位置特徴部102を含む。トリガ機構シャーシ101はまた、掃引弧104から半径方向に突出した直立壁198を含む。壁198は、弧104から壁198の自由(上部)端まで延びている一連の流路199を画定する。これらの流路199は、第2の空気入口69に隣接して形成されている。流路199は、凹状バルブシート203(
図18に表示した)の第1の部分200で終端している。トリガ機構シャーシ101は、好ましくは、可塑性材料から射出成形される。
【0046】
第1の入口68及び第2の入口69は、出口145と同じ方向に面していることに留意されたい。これは、吸気流が方向を変えなければならず、更に(以下に明らかになるように)キャニスタ61の出口を通過して運ばれることを意味する。
【0047】
図10及び
図11は、ステムソケット160を画定するノズルブロック159を含む下側本体構成要素165を示す。下側本体構成要素165はまた、呼吸作動式トリガ機構の他の構成要素を支持するシャーシを提供する。下側本体構成要素165は、作動アームの枢動軸を受け入れるためのベアリング167を含む。下側本体構成要素165は、好ましくは、可塑性材料から射出成形される。
【0048】
図12は、ベーン110を示す。ベーン110は湾曲したベーン壁を有し、このベーン壁は、一端部にスタブアクスル111の形態のベーン枢動軸と、ベーン壁の端部からスタブアクスル111と共にベーン壁に沿っていくらか形成されたトグルリンク枢動軸位置特徴部112とを有する。ベーン110はまた、ボス113を含む。ベーン110は、好ましくは、可塑性材料から射出成形される。
【0049】
図13は、トグルリンク120を示す。トグルリンク120は、ほぼ矩形状のフレームであり、上側が上部バー125で連結され、下側が下部バー123で連結された2つの側壁を含む。上部バー125は前方に湾曲し、各端部で矩形状フレームを越えて外側に延びており、その外側延長部はボス124をもつスタブアクスル122の形態である。下部バー123は下方に湾曲し、各端部で矩形状フレームを越えて外側に延びており、その外側延長部はスタブ枢動軸121の形態のトグル枢動軸である。トグルリンク120は、好ましくは、可塑性材料から射出成形される。
【0050】
図14は、作動アーム130を示す。作動アーム130は、リング形状であり、垂直な対称面を有する。作動アーム130は、第1の端部において2つのスタブ枢動軸133を有する。第1の端部の反対側では、第2の端部において半径方向外側に延びたタブ201が設けられている。垂直な対称面は、タブ201と交わっている。バルブ部材202が、タブ201の自由端に設けられている。枢動軸133とタブ201との間には、2つの追従ボス134が設けられている。各ボス134の隣には一体型スプリングアーム132がある。作動アームの内縁には、枢動軸133とボス134の間の途中に2つの出っ張り部131がある(
図14では、出っ張り部の1つが作動アームの壁によって隠れている)。作動アーム130は、好ましくは、可塑性材料から射出成形される。スプリングアーム132に適切な特性を付与するために、可塑性材料は、好ましくは、アセタール材料である。
【0051】
図15は、フェイシャ構成要素175を示す。フェイシャ175は、マウスピース157を受け入れるための開口部176を含む概ね平坦なプレートを含む。フェイシャ175は、その下端部において、トリガ機構シャーシ101の管状位置特徴部102と係合することができる2つの位置特徴部177を含む。フェイシャ175はまた、位置特徴部177同士の間に第1のグリル194を形成している。第1のグリル194は、一連の開口部207を画定する。第2のグリル195は、第1のグリル194に対して開口部176の反対側に設けられている。
図15aは、第2のグリル195をより詳細に示す(
図15aは、
図15の「a」の範囲の詳細図である)。第2のグリル195は、複数の入口チャネル205から、フェイシャ構成要素175の自由(上部)端まで延びている複数の流路204を画定する。流路は、凹状バルブシート203(
図18に表示した)の第2の部分206で終端している。第1グリルの194は、第1の流体入口68の入口点を提供し、第2グリル195は、第2の流体入口69の入口点を提供する。フェイシャ構成要素175は、好ましくは、可塑性材料から射出成形される。
【0052】
図16は、ボタン構成要素140を示す。ボタン構成要素140は、一端部に突出ボタン143と、他端部に2つの接触特徴部141とを含む。ボタン構成要素140はまた、2つの一体型リターンスプリングアーム142を含む。ボタン構成要素140は、好ましくは、可塑性材料から射出成形される。スプリングアーム142に適切な特性を付与するために、可塑性材料は、好ましくは、アセタール材料である。
図16のボタン構成要素は、患者が吸入器をプレスアンドブリーズモードで使用することを可能にするオーバーライド特徴部として機能し、必要に応じて、絞りバルブを準備するために使用することができる。ボタン構成要素が存在する実施形態では、オーバーライドによって、患者は、ボタン構成要素を使用してトグル機構119の裏側に当たるように(以下に説明する)(例えば、ベーンの裏側に当たるように)前方に押圧し、ベーンをそのトリガ点を過ぎた角度まで移動させることが可能になる。その後、バルブが作動されると、トグル機構119は既にロック解除位置にあるが、(ベーンがマウスピースの床に当たった状態で)依然として作動位置内へ強制されることになる。換言すれば、オーバーライドボタンが押された状態では、本デバイスは、従来のプレスアンドブリーズ吸入器と同様に作用することになる。
【0053】
図17は、流量調節器支持構成要素186を示す。流量調節器支持構成要素186は、折り畳み可能なシリコーン管流量調節器構成要素(以下に説明する)を取り付けることができる基部197を含む。流量調節器の内部支持構造は、流量調節器支持構成要素186上に形成された2つの湾曲した、部分楕円の支持特徴部191によって提供される。支持特徴部191は、横材又は横梁189によって接合されている。加えて、流れ調節器支持特徴部は、その背後では上方に延び、開口部187を有する壁になっている。流量調節器支持構成要素186が下側本体構成要素165上に組み立てられるとき、この開口部187は、患者によるアクセスのためにボタン143が突出する場所を提供する。
【0054】
図21aは、流量調節器構成要素310を示す。流量調節器構成要素310は、(この実施形態では)シリコーン材料から構成された可撓性管状要素である。流量調節器構成要素310は、実質的に均一な断面形状を有し、この断面形状は、本明細書では、ほぼ楕円であり、例えば円である。
【0055】
アセンブリ
図18~
図20aは、静止(非作動)位置にある、
図6~
図17に示した構成要素から組み立てられた呼吸作動式トリガ機構100を示す。トリガ機構シャーシ101は下側本体構成要素165に取り付けられており、フェイシャ175はトリガ機構シャーシ101を覆うように位置している。フェイシャ構成要素175及びトリガ機構シャーシが連携して、流路199及び流路204が連携して(第2流体入口69における)開口部205からバルブシート203への流路を形成するようにする。第1のグリル194の開口部207は、第1の流体入口68から流量調節器通路190内への空気流を可能にする。
【0056】
折り畳み可能なシリコーン管流量調節器構成要素310(国際公開第2017/112748号に開示されているものと同様)は、流量調節器支持構成要素186上に取り付けられている。支持特徴部は、流量調節器構成要素310の管腔内に受け入れられる。
図21b及び
図21cに示されるように、構成要素310は、横梁189によって定位置に保持される支持特徴部191によって全開状態で支持される。それによって、流量調節器支持構成要素は、以下に説明するように、患者が課す吸息圧損失の影響下で空気が流れ得る中央管腔を画定する。
【0057】
基部197の外径は流量調節器構成要素310の初期内径よりも大きく、この2つの構成要素の組立は、流量調節器構成要素310を、基部197を覆うように伸張させることによって達成することができる。この位置合わせによって、管状要素102の本来の(例えば、円形の)断面がほぼ楕円形(例えば、以前よりアスペクト比が大きいほぼ楕円形)の断面(すなわち、横断面)形に変形されることになる。
【0058】
図19、
図20a、及び
図20bに示されるように、作動アーム130は下側本体構成要素165内に取り付けられており、前者のスタブ枢動軸133は、軸A周りに回転するように後者の軸受167内に回転可能に取り付けられている。機構の静止時には(
図20a)、スプリングアーム132もトグルリンク120に接触した状態で、作動アーム130の前部がトグルリンク120の上端に載っている。
【0059】
ベーン110は、このベーンのスタブアクスル111がトリガ機構シャーシ101の位置特徴部103に係合し、及びベーンの湾曲した壁がトリガ機構シャーシ101の掃引弧104内にある状態で、トリガ機構シャーシ101内に取り付けられている。ベーンは、軸B周りにシャーシ101に対して回転することができる(
図20a)。
【0060】
トグルリンク120もまた、トグルリンク120が静止位置にあるときには、そのスタブアクスル122がトグルアクスルトラック105内にある状態で、トリガ機構シャーシ101内に取り付けられている。追って更に詳細に説明するように、ベーン110及びトグルリンク120が、トグル機構119を形成している。トグルリンク120の底部にあるスタブ枢動軸121は、ベーン110の裏側のトグルリンク枢動軸位置特徴部112と係合しており、この係合は軸C(
図20a)を中心とした回転可能ヒンジの形態である。
【0061】
スプリング115が提供され(
図18のみに示す)、このスプリングは、撓みの長手方向軸を有するコイルスプリングである。すなわち、スプリング115は、スプリング115の一端から他端まで螺旋の中心に沿って延びる中心線を有する。その中心線(本発明の範囲内では直線である必要はない)が長手方向軸を画定し、それに沿ってスプリングが撓む。撓む間、その長手方向軸の形状は、スプリングを荷重する又は荷重開放するのにつれて曲がる。スプリング115によって提供される主たる反力は、長手方向軸の線に沿ったスプリングの圧縮又は伸長ではなく、長手方向の撓みに起因する。スプリング115は、第1の端部においてトリガ機構シャーシ101のシース109の内側に取り付けられ、第2の端部においてベーン110のボス113を覆うように取り付けられている。
図18の呼吸作動式トリガ機構の静止時には、スプリング115は、ボス113とシース109との間の意図的な位置ずれによって中央でわずかに上方に曲がっている。この曲がりは、機構の静止時には、小さな残留スプリング力をもたらし、それによって、ベーン110を静止位置に保持し、静止時の(例えば、準備済みで、トリガする準備ができている)機構の安定性をわずかに高める。
【0062】
動作
使用時には、従来のpMDIキャニスタ61(
図19に示す)が、そのステム部分58の先端がステムソケット159と係合し、その絞りバルブの下側が作動アーム130の2つの出っ張り部131に接触した状態で、呼吸作動式トリガシステム100内に配置される。
【0063】
使用時には、キャニスタ61に力が加えられる。これは、(ユーザの手によって)直接でも、又はばね若しくは他の弾性手段に蓄えられたエネルギーによってでもよい。作動アーム130を使用して、この力をpMDIキャニスタからトリガ機構100に伝達する。しかしながら、作動アーム130を介したトリガ機構100からの抵抗が、トグル機構119が作動されるまで、キャニスタ61が移動することを防止し、よって絞りバルブ54が始動することを防止する。作動アーム130は、その長さに沿ってほぼ半分までpMDIキャニスタのフェルールと接触しており、その他端部でトグルリンク120と係合している。この構成は、トグル機構119に加えられる力の減少をもたらし、およそ2:1の追加の機械的利点を提供する。換言すれば、トグル機構119は、自身の抵抗力の約2倍のキャニスタからの力に抵抗することができる。作動アームにはまたスプリングアーム132が取り付けられており、このスプリングアームは、トグルリンク120に逆らって作用し、作動後に作動アーム130を元の状態に戻すのに十分な力を提供する。
【0064】
静止時には、
図19及び
図20aに示すように、変形した(例えば、圧縮した)弾性部材300を介して患者がキャニスタの基部49に加える負荷をトグルリンク120が支持した状態で、機構100は安定している。
【0065】
空気を吸入器に入れることができる2つの流体入口68、69がある。
【0066】
第1の流体流路は、
図20aのF1として示され、第2の流体流路は、F2として示されている。流量調節器構成要素310の空気出口端のみが固定して支持されて(すなわち、基部197によって)いるが、流量調節器構成要素310の空気入口端部は自立しており、内部支持構造体上に折り畳むことができる。
【0067】
流量調節器の主要機能は、過度に速い吸入、その結果としての、口及び咽頭における過度の薬剤沈着を回避するために、患者が吸入器を通じて吸入するときに空気流を調節し、患者の吸息流量を狭く及び制御された範囲に制限することである。本開示の流量調節器は、したがって、肺への深い薬剤浸透及び沈着の増加の達成を補助することができる。このような流量調節器の使用によって、低い肺機能(例えば特に重篤なCOPD患者)を有する患者が比較的低い吸入器空気流抵抗を受けることを可能にする(このような患者が適度な快適性を伴って十分な空気を吸入することを可能にする)一方、強い肺を有する患者には吸入に対して一時的により高い空気流抵抗を与える(それによって、これら患者がより長く、より深く吸入することを可能にする一方で同時に、その吸入空気流量をより虚弱な患者の吸入空気流量に酷似するレベルに制限する)。換言すると、吸息空気流量を患者間及び吸入間ではるかに一定に維持することができる。したがって、薬剤送達がはるかに予測可能となり、医師が信頼レベルの向上をもって治療計画を指示することを可能にする。
【0068】
図21bは、静止時の流量調節器(すなわち、流量調節器構成要素310がつぶれていない状態)を例示する。
図21cは、動作状態(すなわち、患者の吸息空気流が流量調節器を実質的に通過し、流量調節器構成要素310がつぶれた状態)にある流量調節器を示す。
【0069】
空気は、流路F1(
図20b)に沿って吸い込まれると、支持特徴部191同士の間で横材189を通過して流量調節器構成要素310内に流入する。空気流路を通過する空気流の速度によって、空気流路F1内の気圧の低下が引き起こされる(すなわち、ベルヌーイ効果による)。空気流路F1内の減圧によって楕円形断面流量調節器構成要素310の短軸に沿って(すなわち、横断方向Tにおいて)直径の減少が生じ、
図21cに示すように、内方への曲げがもたらされる。流量調節器構成要素310は、一端(すなわち、その出口端部)が基部197によって支持されているため、内方への曲げは空気入口68の方の流量調節器構成要素310の端部で主に起こり、内方への曲げは空気流路の断面積を制限する。
【0070】
ある程度までは、空気流路F1内の圧力の低下が大きくなるほど流量調節器構成要素310の内方への曲げは大きくなる。空気流路の断面積の結果的な減少により、空気流量に対する抵抗を増加することになる。しかしながら、流量調節器の空気流路は、流量調節器が用いられる医療用吸入器の空気流に対する全体的な総抵抗のわずか一部である(例えば、吸入器が空気流に対し中程度の静的抵抗を有する場合、総吸入器空気流抵抗の約50%以下の可能性がある)ため、流量調節器を通る空気の質量流量は、その残留断面積の減少に応じて低下しない。これは、流量調節器構成要素310内の残留空気流路を通る空気の速度は、流量調節器構成要素310がつぶれるにつれて上昇し、その空気流路にかかるベルヌーイ力が更に増加することを意味する。この効果は、流量調節器の動作の相当な双安定性に繋がる傾向にある。つまり、つぶれの開始は、内方へのつぶれを推進するベルヌーイ力を、それが流量調節器構成要素310の材料の抵抗剛性力に最終的に平衡するまで高める「正のフィードバック」に繋がる。換言すると、いくつかの実施形態では、流量調節器101は実質的に双安定であり得る。流量調節器はどの時点においても2つの状態のうちの1つ、すなわち、実質的に「開放」若しくは「つぶれていない」状態(
図21b)、又は実質的に「つぶれた」状態(
図21c)のいずれかにある傾向にある。
【0071】
楕円形断面管状要素102が完全につぶれることは支持特徴部191によって妨げられる。これらの特徴部は、横材189と共に、流量調節器構成要素310の長軸に沿った(すなわち、横方向Lにおける)直径の大幅な減少を防止する構造的支持をもたらす。
【0072】
流量調節器構成要素310の有限剛性とは、特徴部191及び横材189によって形成された内部支持構造体の角部の周りに小さい追加の間隙が残されることを意味する。流量調節器構成要素310が、内部支持構造体と流量調節器構成要素310との間の全ての小さい残留空気通路又は間隙を閉鎖するのに十分には曲がることができない(
図21c参照)。したがって、少なくとも最小限の又は残留空気流は常に継続的に流れることができる。つまり、低下する圧力は、流量調節器構成要素310が完全につぶれ、流量調節器全体の全ての空気流を封鎖するのに十分な値には決して到達できない。
【0073】
流量調節器は、第1の流路F1を通る流体の流量に対して反応し、流量が増加すると、(ベンチュリ効果によって)流量調節器通路を通る管腔を狭め始める。したがって、第1の流体入口68を通る流れが調節される。
【0074】
第2の流路F2の開始時の第2の入口69を通る流れは、流路199及び流路204によって形成されたチャネルを通過し、トリガ機構100がその静止(非作動)位置にあるとき、
図18に示すように、全開しているバルブシート203から吸入器に入る。この第2の流路F2は調節されない。両方の流路は収束し、吸入流IFに寄与する。
【0075】
調節されていない流路F2が第2の流体入口69に入るので、ユーザは自由に高流量で吸入することができる(プリトリガ)。患者が吸入するにつれて、空気は、上述のように第2の流路F2に沿って内方に、そして空気出口145通って外方に通過して、ベーン110の湾曲壁の2つの側面(凸状及び凹状)を横切って圧力低下を引き起こす。流路F1はまた、この吸入流IFに寄与するが、調節されている。吸入流IFによって引き起こされる圧力低下により、ベーン110は、そのスタブアクスル111がトリガ機構シャーシ101の位置特徴部103内で回転する状態で、
図20a/
図20bに描かれているように、軸B周りに時計回りに回転する。
【0076】
図19及び
図20aの非作動状態と比較した場合のトリガ機構100の作動状態が
図20bに示されている。ベーン110は、その作動位置において、マウスピースの基部に当たるように位置している。いくつかの実施形態では、ベーンには、作動時には従来のマウスピースの床に当たって位置することを可能にするが、静止位置にある間は空気流に対する十分な抵抗を提供する特定の輪郭が付与された。
【0077】
ベーン110が回転するにつれて、ベーン110の裏側のトグルリンク枢動軸位置特徴部112は、マウスピース157の開放端に向かって変位する。この変位がトグルリンク120のスタブ枢動軸121を前方に(すなわち、マウスピース157に向かって)引っ張り、結果としてトグルリンク機構のラッチを解除し、曲がったスプリング115(
図18に示す)からの小さな復元力を克服する。予荷重が、キャニスタ基部49に加えられ、そこからキャニスタ51及びその絞りバルブ54を通じて作動アーム130及びトグルリンク120に加えられた状態では、トグルリンク120が概して下方に移動して、トグルリンク機構が崩れる(
図20a及び
図20b)。トグルリンク120の移動は、その底部スタブ枢動軸121が、トグルリンク枢動軸位置特徴部112の回転変位によって軸Cを中心にして回るように引っ張られることによって、及びその上部スタブアクスル122がトグルアクスルトラック105をたどることによって、導かれる。
【0078】
加えられた荷重の下でキャニスタが下方に移動し続けるにつれて、今度は、作動アーム130が、トグルリンク120を、そのスタブアクスル122がトグルアクスルトラック105の主トラック106aを出てその湾曲した下方部分、すなわち従トラック106内へ通過するまで、押し下げる。これら従トラック106の前方に湾曲した性質が、スタブアクスル122(そしてトグルリンク120の上端部)を作動アーム130の邪魔にならない前方へ移動させる。これにより、作動アーム130は、絞りバルブ54内へのバルブステム58の総移動長までキャニスタ51の移動を可能にするのに十分なほど下方に移動することができる。
【0079】
最終的に、作動アーム130は、バルブ凸状部材202が凹状バルブシート203と係合し第2の流体入口69を通る空気の更なる大きな進入を防止する点(
図20bに示す)まで軸A周りに回転することになる。換言すれば、流路F2は遮断される。この時点では、及び薬剤がキャニスタ61から放出されるときには、吸入器内への空気流の大部分(全てではないが)は、流路F1を通る。すなわち、調節される。
【0080】
開放(調節されない)流路を設けることにより、ユーザは、最初のうちはベーンを横切る大きな圧力低下を生成することができる。この圧力低下は、調節された第1の入口68のみを通る流れで可能であろう圧力低下よりも高い。上述したように、大きな、調節されていない流れ部分は、薬剤吸入にとって一般に望ましくないので、例えば、キャニスタ61が薬剤を放出するときには、調節された吸入流量の割合が大幅に(いくつかの実施形態では100%まで)増加する。これにより、トリガが行われると、高度に又は完全に調節された流量を伴った信頼性の高い作動がもたらされる。
【0081】
機構自体に関して、極端な部品寸法公差の場合であっても、バルブステム58を十分に移動させて、1回分の用量のエアロゾル化された薬剤製剤を放出することができることに留意されたい。換言すれば、呼吸作動式トリガ機構100は、トリガ点の後のバルブ運動の「フォロースルー」を可能にする。2つの追従ボス134は、上部スタブアクスル122を阻んでトグルリンク120を下に保持し、それによって、出っ張り部131から荷重が取り除かれる(例えば、キャニスタから荷重が解除されるとき)までトグルリンク120及びベーン110がベーンリターンスプリング115によってリセットされるのを防止することに留意されたい。2つの追従ボス134はまた、トグルが作動アーム130の頂部を乗り越えられないようにして、トグルを確実に下方へ押し込むのにも役立つ。
【0082】
ハウジング構成要素70及び71は、呼吸作動式トリガ機構が嵌め込まれる外側シェルを提供する。これらのハウジング構成要素は、患者により魅力的で人間工学的な形態を提供し、内部の機構の保護を提供する。構成要素71の後部には、窓開口部166が設けられており(
図3)、これを通って、ボタン構成要素140上のボタン143が突出することができる。このボタン143は手動オーバーライドとして機能し、何らかの理由で患者が呼吸作動式ではなく手動で用量を服用することを希望する場合、ボタン143を押すと、接触特徴部141がベーン110の背部を押し、呼吸作動したかのようにベーンを回転させ始める。
【0083】
この機構のリセットは次のようにして生じる。第1のステップは、荷重がpMDIキャニスタ51の基部49から取り除かれることであり、例えば、患者が完全に自動化された呼吸作動式吸入器内の噴射スプリング(図示せず)から荷重解放すること、又は患者がpMDIキャニスタ51の基部49を下方に押すのを止めることのいずれかによって、取り除かれる。pMDIキャニスタから荷重を取り除くことにより、バルブ54内のリターンスプリングがバルブをリセットすることが可能になり、スプリングアーム132が作動アーム130をその静止位置に復帰させることが可能になる。追従ボス134が作動アーム130と共に上方に戻るように移動するにつれて、ベーンスプリング115がトグルリンク120及びベーン110をリセットするので、上部スタブアクスル122はそれらのトラック106及び106aを上に戻ることができる。トグルリンク機構はこうしてリセットされ、バルブシート203は再び露出される。
【0084】
スプリングが確実に本機構を復帰させるようにするために、曲げ予荷重力が加えられる。予荷重により、構成要素の寸法公差が最悪の場合、又は摩耗又は薬品、埃、若しくは水分の存在によってデバイスの摩擦がわずかに増加する場合でも、本機構が確実にリセットされることになる。この側面荷重構成において従来の圧縮コイルスプリングを使用する、あるいは、引張コイルスプリング(図示せず)を使用することにより、低い比較的一定の力がもたらされ、この力を使用して、機械的pMDI呼吸作動式トリガ機構をリセットすることができる。
【0085】
トグル機構119は、オーバーセンタしないように設計され、代わりに、そのスタブアクスル111及びスタブ枢動軸121で発生する摩擦によって保持されるように設計されている。トグル機構119はまた、ベーン110及びトグルリンク120を整列した状態から外れるように引く方向にトグル機構119が動かされるまで、大きな荷重を引き止めるようにも設計されている。トグル機構119内の摩擦は、トグルによって引き止められている荷重が、ベーン110及びトグルリンク120に対して垂直に近い方向にかなり大きい合力で作用することができるとき、すなわち、それらのリンクのうちの1つが、その静止位置から所定の角度に達したときに、克服される。この角度は機構全体の摩擦量によって異なることになる。
【0086】
スタブアクスル111の形態のベーン枢動軸(
図20a及び
図20bの軸B周りに回転可能)は、トグルリンク120のスタブ枢動軸121(軸C周りに回転可能)の近くに配置されている。ベーン110は、マウスピースの基部に向かって下方に枢動する。これにより、本機構が作動位置になると作動アーム130がトグルリンク120を過ぎた状態を継続できるように、トグルリンク120を設計することが可能になる。このフォロースルーは、pMDIバルブが確実に総移動長に到達することを可能にするために必要であり、pMDIバルブ及びキャニスタの寸法のばらつきに対する本機構のロバスト性を大幅に改善する。このフォロースルーは、ベーン110が確実にマウスピースの基部に当たって保持されるようにするが、薬剤を分与するために作動アームがその傍を通過し(すなわち、それにより「フォロースルー」が可能になる)ことを可能にする。
【0087】
ベーン110の静止位置は、空気流がトリガ機構を過ぎて漏れるのを防ぐのを促進するようにある角度(
図20a)に設定されている。これはまた、トリガ機構がベーン110と衝突する危険性を回避し、したがって不必要な摩擦を加えることを回避する。ベーン110は、静止時には、吐き出された湿気及び細菌並びに呼気中の他の望ましくない物質に対する防壁を提供し、これは、患者が無分別に吸入器内へ息を吐き出した場合に、吸入器の主要部分を保護するのに都合が良い。
【0088】
第2の実施形態
図22~
図27を参照すると、本発明による第2のpMDI1060が示されている。第2のpMDIは、第1のpMDI60と非常に類似しており、ここでは相違点のみを説明する。これらの違いは、呼吸作動式トリガ機構1100の様々な構成要素(呼吸作動式トリガ機構100と比較して)にある。
【0089】
図23を参照すると、トリガシステム1100は、下側本体構成要素1165、トリガ機構シャーシ1101、ベーン1110の形態の呼吸応答部材、トグルリンク1120、作動アーム1130、フェイシャ構成要素1175、流量調節器支持構成要素1186、流量調節器フラップ構成要素1220、及びボタン構成要素1140を含む。
【0090】
トリガ機構シャーシ1101、ベーン1110、トグルリンク1120、作動アーム1130、フェイシャ構成要素1175、及びボタン構成要素1140は、第1のpMDI60のものと実質的に同一であり、したがって詳細には説明しない。
【0091】
図24は、流量調節器支持構成要素1186を示す。流量調節器支持構成要素1186は、2つの対向する枢動軸受容アーム1222を有する基部1197を含む。各アームは、その自由端上に凹状枢動面1223を画定する。加えて、流量調節器支持構成要素は、その背後では上方に延び、開口部1187を有する壁になっている。流量調節器支持構成要素1186が下側本体構成要素1165上に組み立てられるとき、この開口部1187は、患者によるアクセスのためにボタンが突出する場所を提供する。
【0092】
図25は、流量調節器フラップ構成要素1220を示す。流量調節器フラップ構成要素1220は、取付端1225及び自由端1226を有するフラップ1224を含む。取付端1225の両側には、2つの対向するスタブシャフト部1227が設けられており、各スタブシャフト部1227は、そこから延びている湾曲した弾性板ばね部材1228を有する。停止部材1229はフラップ1224の面から延びている。
【0093】
アセンブリ
図26及び
図27は、組み立てられたトリガシステム1100を側面(
図26)から及び断面(
図27)で示す。フラップ構成要素1220は、軸D周りに回転するように流量調節器支持構成要素1186に接触して回転可能に受け入れられる。スタブシャフト部1227は、枢動軸受容アーム1222の端部で凹状枢動面1223に当接し、トリガ機構シャーシ1101と係合することによって定位置に保持される。スプリングアーム1228は、マウスピース構成要素1101(又はより具体的には、
図26に示されるそれぞれ外向きのペグ1192)に当接し、ここでは荷重が加えられた構成で示されている。
【0094】
図27を参照すると、フラップ1224は、トリガ機構シャーシ1101の流量調節器通路1190内に位置する。停止部材1229は、フラップ1224が空気流の外で、通路の壁に接触して位置することを防止する。
【0095】
動作
静止位置(図示された)では、フラップ1224の自由端を通過する流路Pが存在する。圧力がフラップを通過して(及び、流路Pに隣接するその下側表面で)低下し、フラップ1224は、D周りに時計回り方向に回転し始め、スプリングアーム1228を変形させる。したがって、流量が増加するにつれて、流路断面が減少し、今度は流量を減少させることになる。このようにして流量が調節される。スプリングアーム1228は、フラップ1224がその静止(空気流なし)位置から回転されるときに、(
図26に描かれているように)概ね反時計回りの復元力を発揮する。
【0096】
流量調節器の動作における前述の違い以外は、第2のpMDI1060は、第1のpMDIと同じように動作する。具体的には、作動アーム1130が、トリガシステム1100のトリガ時に、調節されていないバイパス流路を閉じるように構成されている。
【0097】
第1の実施形態と同様に、第2の実施形態は、トリガする前には大部分が調節されていない流れを提供し、トリガした後には調節された流れを提供する。
【0098】
第3の実施形態
図28及び
図29は、本発明による第3の呼吸作動式pMDI吸入器501の側断面図を示す。
【0099】
吸入器501は、一般に、pMDIキャニスタ506を収容するハウジング450を含む。キャニスタ506は、バルブを有し、そこからステム部分510が突出している。ステム510は、ハウジング450内のノズルブロック512に係合される。
【0100】
ハウジング450は、逆さまにしたキャニスタ506を受け入れる寸法につくられた、端部452を有する管状のスリーブ部分451と、吸気オリフィス(又は空気出口)526を画定する患者ポート453の形態の(例えば、マウスピースの形態の)部分とを更に備える。吸気オリフィス526に隣接して、流量調節器通路461に繋がる空気入口528が設けられている。出口526及び入口528は、一般に、患者ポート453及び流量調節器通路461を通る流路が隣接し、概ね平行であるように、一般に同じ方向に面している。吸気流は、入口528から出口526へと移動するとき、方向をほぼ反対にしてノズルブロック512を通過して流れなければならないということになる。
【0101】
吸入器501は、準備機構454、トリガ機構455、及び流量調節器456を含む。
【0102】
準備機構454は、ハウジング450の管状スリーブ部分451の端部452から突出するレバー504を含む。レバー504は、水平静止状態と垂直準備状態(
図28)との間で約90度にわたって枢動可能である。準備機構は、レバー504の端部と逆さまにしたキャニスタ506の基部との間に囲いに入った加圧スプリング508を更に備える。
【0103】
トリガ機構455は、ロッカー514、留め具516、ベーン518、及び引張スプリング520を含む。ロッカー514は、枢動軸534周りに回転可能に取り付けられている。ロッカーは、第1のキャニスタ当接部536及び第2のキャニスタ当接部538を画定する。ロッカー514は、
図28及び
図29に示されるように引張スプリング520によって反時計回り方向に付勢されている。
【0104】
留め具516は、枢動軸532においてロッカーに枢動可能に取り付けられており、ベーン当接部458を画定する。
【0105】
ベーン518は、その自由下端部に調節器当接部459を含む。
【0106】
流量調節器456は、枢動軸530周りに回転可能なフラップ524を含む。アーム522は、共に回転するためにフラップ524に結合されている。
【0107】
動作
図28では、pMDI吸入器501は、準備された状態で示されている。この状態では、レバー504は、スプリング508をキャニスタ506の基部に対して圧縮するように回転されている。キャニスタは、ロッカーの当接部536上のキャニスタの当接部によって定位置に保持されるので、キャニスタは移動することができず、スプリングは圧縮してエネルギーを蓄える。
【0108】
ロッカー514は、留め具516によって拘束されるため、ロッカー枢動軸534で時計回りに枢動することを防止される。留め具516は、同様に、下方に移動すること又はベーン518との転がり接触に抵抗して移動することを、そのベーン当接部458によって防止される。
【0109】
患者がマウスピースで吸入して出口526から空気を吸い込むと、空気が入口528から引き込まれる。アームがベーン518の調節器当接部459によって拘束されていることにより、フラップ524が開放位置又は下部位置に保持されることに留意されたい。換言すれば、アーム522は、ベーン518の底縁部に接触して拘束された状態に保持されており、そのため、この段階ではフラップ524は上昇することができない。
【0110】
出口526での圧力が低下すると、ベーンは反時計回りに回転する。
【0111】
図29は、噴射した状態の呼吸作動式吸入器501を示す。レバー504は上がったままである。留め具516のベーン当接部458とのベーン518の頂部の転がり接触により、留め具がベーンの頂部から滑り落ちて下方に移動し、ロッカー514が時計回りに回転することが可能になる。ロッカーの移動により、キャニスタ506は、スプリング508の力の下で下方に移動し、ステム部分510をキャニスタ内に押し詰めることが可能になる。結果として得られた薬剤の流れは、ノズルブロック512内を流体出口526に向かって通過する。
【0112】
キャニスタ506はその時、ロッカーの第2の当接部538に載っており、この第2の当接部538は、第1の当接部536よりもロッカー枢動軸534に近い。
【0113】
ベーン518の回転(したがってベーンの調節器当接部の移動)により、調節器456のアーム522が、フラップ524の上面を通過する空気流によって作り出されたベルヌーイ力の影響下で、上昇することが可能になる。これにより、今度は、フラップ524の移動が可能になり、入口528を通る空気流が調節されることに繋がる。
【0114】
第3の実施形態は、プリトリガには調節されていない流れを提供し、ポストトリガには調節された流れを提供する。
【0115】
患者の吸入が弱まると、フラップ524は重力下でその静止位置に復帰する(これは、非常に低い力を有するばねを用いることによっても達成され得る)。同様に、ベーン518は、垂直位置に復帰して、結合されたアーム522を再び捕捉することができる。
【0116】
変形例
変形例は、本発明の範囲内に含まれる。
【0117】
第1及び第2の実施形態の両方において、迂回流路F2は、トリガされた状態では完全に遮断される。完全な遮断が好ましいが、迂回流路の部分的な遮断又は閉塞もまた所望の効果へと作用することに留意されたい。
【0118】
同様に、第3の実施形態では、流量調節器は、プリトリガの状態では完全に不動化されるように示されている。流量調節器部材の移動は、代わりに部分的に拘束されてもよく、すなわち、限定的な移動が許容されてもよいことが理解されるであろう。
【0119】
両方の場合において、重要なことは、調節された流れの断面(すなわち、その断面にわたって調節器が作用し得る)がプリトリガの状態からポストトリガの状態で増加することである。