(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】基板の貫通孔充填磁性体用ドリル
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20220614BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20220614BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20220614BHJP
B23B 51/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B28D1/14
H05K3/00 M
H05K3/46 X
H05K3/46 B
B23B51/00 S
B23B51/00 V
(21)【出願番号】P 2020003433
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 勉
(72)【発明者】
【氏名】奥田 壮馬
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-167262(JP,A)
【文献】特開2004-082318(JP,A)
【文献】実開平07-037532(JP,U)
【文献】特開2004-082248(JP,A)
【文献】米国特許第05184926(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
H05K 3/00
H05K 3/46
B23B 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の貫通孔内に充填された磁性体にさらに貫通孔を形成するための基板の貫通孔充填磁性体用ドリルであって、
ドリル先端側の刃先部と、
前記刃先部の基端に繋がる、その刃先部よりも小径のネック部と、
前記刃先部の先端から前記ネック部にかけて螺旋状に形成された1条の主溝と、
前記刃先部の先端から前記ネック部に繋がる部分まで前記主溝に沿って前記刃先部のみに形成された副溝と、を備え、
前記刃先部がその先端付近の最大径部から基端に向けて縮径して
おり、かつ、前記刃先部が前記ネック部に繋がる部分にフィレット形状を有している。
【請求項2】
請求項1記載の基板の貫通孔充填磁性体用ドリルであって、
前記刃先部の最大径部から基端に向けて縮径する角度は1°~20°である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板のコア基板等に用いられる基板の貫通孔内に充填された磁性体にさらに貫通孔を形成するためのドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント配線板には多層化による基板の反りが課題として存在し、この反りを防止するためコア基板が、絶縁樹脂中に補強繊維としてガラス繊維を含有する場合がある。
【0003】
このようなガラス繊維強化基板にスルーホール導体を設けるための貫通孔を孔明け加工するために従来、例えば特許文献1により、剛性を高めたドリルが提案されており、このドリルは、切屑排出溝を1条のみとするとともに、刃先部の先端逃げ面を多段面状として、逃げ面同士の交差稜線の少なくとも一つが被削材に接触するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プリント配線板のコア基板等に用いられる基板の貫通孔内に充填された磁性体にさらに貫通孔を形成し、その貫通孔内にめっきでスルーホール導体を設けて磁性体の電磁誘導により電流損失を抑制する場合がある。
【0006】
しかしながら上記従来のドリルでは、磁性体への貫通孔の孔明けの際に、ドリルで明けた孔の内壁面とドリル外周面とが接触することでスミアが発生し、磁性体はデスミアできない材料であるため、スミアの発生を抑制できるドリル形状が必要となるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、プリント配線板のコア基板等に用いられる基板の貫通孔内に充填された磁性体にさらに貫通孔を形成するためのドリルであって、スミアの発生を抑制できるドリルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板の貫通孔充填磁性体用ドリルは、基板の貫通孔内に充填された磁性体にさらに貫通孔を形成するためのドリルであって、
ドリル先端側の刃先部と、
前記刃先部の基端に繋がる、その刃先部よりも小径のネック部と、
前記刃先部の先端から前記ネック部にかけて螺旋状に形成された1条の主溝と、
前記刃先部の先端から前記ネック部に繋がる部分まで前記主溝に沿って前記刃先部のみに形成された副溝と、を備え、
前記刃先部がその先端付近の最大径部から基端に向けて縮径しており、かつ、前記刃先部が前記ネック部に繋がる部分にフィレット形状を有している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の基板の貫通孔充填磁性体用ドリルの一実施形態を示す側面図である。
【
図2】上記実施形態の基板の貫通孔充填磁性体用ドリルの刃先部を拡大して示す正面図である。
【
図3】上記実施形態の基板の貫通孔充填磁性体用ドリルの刃先部外周面の傾斜を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の基板の貫通孔充填磁性体用ドリルの一実施形態が図面に基づいて説明される。
図1は、本発明の基板の貫通孔充填磁性体用ドリルの一実施形態を示す側面図である。
図2は、上記実施形態の基板の貫通孔充填磁性体用ドリルの刃先部を拡大して示す正面図である。
図3は、上記実施形態の基板の貫通孔充填磁性体用ドリルの刃先部外周面の傾斜を示す説明図である。
【0011】
図中符号1で示されるこの実施形態の基板の貫通孔充填磁性体用ドリルは、プリント配線板のコア基板等に用いられる基板の貫通孔内に充填されたフェライト等の磁性体にさらに貫通孔を形成するためのドリルであって、工作機械のチャック等に把持されるシャンク2と、そのシャンク2と同一軸線上に配置されてシャンク2に一体的に結合されるドリル本体3とを備えており、ドリル本体3は、ドリル先端側の刃先部4と、その刃先部4の基端に繋がる、その刃先部4よりも小径のネック部5とを有して、アンダーカットタイプとされている。
【0012】
刃先部4の先端付近の最大径部の外径は例えば0.15mmとされ、刃先部4はその最大径部から刃先部4の基端に向けて例えば角度θ=1~20°で縮径しており、ネック部5の外径は例えば0.14mmとされている。また、刃先部4は、通常のドリルにおけると同様に、ドリル回転方向Tの前方に向く切刃6を有している。
【0013】
ドリル本体3は切屑排出用に、刃先部4の先端からネック部5にかけて所定のねじれ角で螺旋状に形成された1条のみの主溝7と、刃先部4の先端から主溝7に沿って刃先部4のみに形成された副溝8とを有しており、副溝8は、刃先部4の、ネック部5に繋がる部分10で主溝7の途中に合流して終了している。
【0014】
刃先部4は、通常のドリルにおけると同様に、先端逃げ面9を有している。先端逃げ面9は、図示例では単一面状であるが、軸線Oに対し周方向に並んだ多段面状でもよい。また、刃先部4の、ネック部5に繋がる部分10は、孔明け加工中の応力集中を緩和するためにフィレット形状(R形状)を有していてもよい。
【0015】
この実施形態の基板の貫通孔充填磁性体用ドリルによれば、主溝7を1条のみとするとともに副溝8を刃先部4のみに設けて主溝7の途中に合流させることで従来のドリルよりも剛性が高められているので、プリント配線板のコア基板等に用いられる基板の貫通孔内に充填されたフェライト等の磁性体にさらに貫通孔を形成する孔明け加工に用いても、長寿命と高い孔位置精度とを達成することができる。
【0016】
しかも、刃先部4がその先端付近の最大径部から刃先部4の基端に向けて縮径していて、その刃先部4の最大径部から基端までのいわゆるマージン部が軸線Oに向かってバックテーパ状に逃げていることから、基板の貫通孔内に充填された磁性体への貫通孔の穴あけの際に、ドリルで明けた孔の内壁面とドリル外周面とが、従来のように面接触するのでなくその最大径部において線接触するので、デスミアできない材料である磁性体へのスミアの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 基板の貫通孔充填磁性体用ドリル
2 シャンク
3 ドリル本体
4 刃先部
5 ネック部
6 切刃
7 主溝
8 副溝
9 先端逃げ面
10 ネック部に繋がる部分
O 軸線