(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】二重袋構造体の梱包方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/32 20060101AFI20220614BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B65D81/32 D
B65D77/04 F
(21)【出願番号】P 2020112081
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000210687
【氏名又は名称】秩父コンクリート工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520236723
【氏名又は名称】アールテックコンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】秋久保 直人
(72)【発明者】
【氏名】濱中 弓
(72)【発明者】
【氏名】清水 進
(72)【発明者】
【氏名】守安 弘周
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3116206(JP,U)
【文献】実開平3-81887(JP,U)
【文献】米国特許第4061457(US,A)
【文献】特開2012-136235(JP,A)
【文献】特開2018-24435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/32
B65D 77/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁辺がヒートシールされて密封された外袋と、上記外袋の中に収容された、密封された内袋と、上記外袋と上記内袋の間の空間に収容されたセメント含有粉状材料と、上記内袋の中に収容された水含有液状材料とを含む二重袋構造体を、梱包用の箱体の中に収容するための二重袋構造体の梱包方法であって、
上記内袋は、その縁辺の一部が、上記外袋と共にヒートシールされていることによって、上記外袋に対する固着部分を形成しており、かつ、その縁辺の残部が、上記外袋に対して固着されずに、上記内袋のみについてヒートシールされているものであり、
上記内袋の縁辺の残部におけるヒートシールされている部分は、上記内袋の縁辺の一部における上記外袋と共にヒートシールされている部分、及び、上記外袋の縁辺のヒートシールされている部分に比べて、シール強度が小さいものであり、
(A) 上記内袋とは反対側の上記二重袋構造体の部分を持ち上げて、上記セメント含有粉状材料を流下させて、上記内袋の周囲及び上方を覆う状態とし、上記セメント含有粉状材料及び上記水含有液状材料を含む内容物収容部分を形成させるとともに、上記二重袋構造体の上部に、上記セメント含有粉状材料と上記水含有液状材料のいずれも収容されていない無収容部分を形成させる粉状材料流下工程と、
(B) 上記粉状材料流下工程で得られた上記二重袋構造体を、その上下方向の位置関係を維持したまま、上記無収容部分を上記内容物収容部分に向けて折り畳み、梱包用の形態を有する上記二重袋構造体を得る折り畳み工程と、
(C) 上記折り畳み工程で得られた上記梱包用の形態を有する二重袋構造体を、上下方向に反転させた後、梱包用の箱体の中に収容する収容工程、
を含むことを特徴とする二重袋構造体の梱包方法。
【請求項2】
上記外袋が矩形の形状を有し、かつ、上記内袋が矩形の形状を有する請求項1に記載の二重袋構造体の梱包方法。
【請求項3】
上記梱包用の箱体が、上記二重袋構造体を複数収容可能な内部空間を有する本体部分と、上記内部空間を区画するための仕切り手段である付属部分を有する請求項1又は2に記載の二重袋構造体の梱包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重袋構造体の梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートブロックを含む構造物の施工現場において、モルタルを用いて、コンクリートブロック間の目地を埋めることが行われている。
この作業を効率的に行なうための技術として、特許文献1に、セメント、細骨材等からなる粉粒体110を収容した施工器100と、ポリマーエマルション210を収容した補助器200を、例えば専用の工場で準備し、次いで、施工現場で、施工器100に、補助器200内のポリマーエマルション210を注入し、施工器100の容器120を手で揉むことによって、モルタル310を製造し、最後に、施工器100内のモルタル310を吐出させて、例えば目地モルタルとして使用することが記載されている(
図1~
図2参照)。
【0003】
一方、多室包装容器として、特許文献2に、固体材料(例えば、セメント及び骨材を含むもの)を充填するための第1室13と、液体材料(例えば、アスファルト乳剤)を充填するための第2室15を有する多室包装容器1であって、使用時に、両手で第1室13を外側から強く圧迫することによって、ヒートシール部11を剥離させて、第1室13内の固体材料を第2室15内に押し出し、相互に連通した第1室13と第2室15内で、練り込みを行い、舗装用常温補修材を得ることが記載されている(
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-112262号公報
【文献】特開2014-73868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、セメント含有粉状材料と水含有液状材料を施工現場で容易にかつ効率的に混合して水硬性組成物を調製するための二重袋構造体を梱包するための方法であって、運搬時に想定を超える衝撃が繰り返し加わることなどが原因で、施工現場に到着する前に二重袋構造体が破袋して、セメント含有粉状材料と水含有液状材料が意図せずに混合してしまう事態の発生を抑制することができる二重袋構造体の梱包方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、二重袋構造体として、外袋と、外袋に対して、一端を固着させて収容した内袋(該固着部分以外に、破袋し易いヒートシール部分を有するもの)と、外袋と内袋の間に収容されたセメント含有粉状材料と、内袋に収容された水含有液状材料を含むものを用い、かつ、(A)二重袋構造体の一端を持ち上げて、セメント含有粉状材料を流下させて、内袋の周囲及び上方を覆う状態とする工程、(B)工程(A)によって形成された、内容物を有しない無収容部分(外袋の一部)を、内容物収容部分(セメント含有粉状材料、内袋、及び、内袋の中の水含有液状材料、並びに、これらを覆っている外袋の残部)に向けて折り畳む工程、及び、(C)工程(B)で得た二重袋構造体を、上下方向に反転させた後、箱体の中に収容する工程、を含む方法によれば、上述の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、以下の[1]~[3]を提供するものである。
[1] 縁辺がヒートシールされて密封された外袋と、上記外袋の中に収容された、密封された内袋と、上記外袋と上記内袋の間の空間に収容されたセメント含有粉状材料と、上記内袋の中に収容された水含有液状材料とを含む二重袋構造体を、梱包用の箱体の中に収容するための二重袋構造体の梱包方法であって、
上記内袋は、その縁辺の一部が、上記外袋と共にヒートシールされていることによって、上記外袋に対する固着部分を形成しており、かつ、その縁辺の残部が、上記外袋に対して固着されずに、上記内袋のみについてヒートシールされているものであり、
上記内袋の縁辺の残部におけるヒートシールされている部分は、上記内袋の縁辺の一部における上記外袋と共にヒートシールされている部分、及び、上記外袋の縁辺のヒートシールされている部分に比べて、シール強度が小さいものであり、
(A) 上記内袋とは反対側の上記二重袋構造体の部分を持ち上げて、上記セメント含有粉状材料を流下させて、上記内袋の周囲及び上方を覆う状態とし、上記セメント含有粉状材料及び上記水含有液状材料を含む内容物収容部分を形成させるとともに、上記二重袋構造体の上部に、上記セメント含有粉状材料と上記水含有液状材料のいずれも収容されていない無収容部分を形成させる粉状材料流下工程と、
(B) 上記粉状材料流下工程で得られた上記二重袋構造体を、その上下方向の位置関係を維持したまま、上記無収容部分を上記内容物収容部分に向けて折り畳み、梱包用の形態を有する上記二重袋構造体を得る折り畳み工程と、
(C) 上記折り畳み工程で得られた上記梱包用の形態を有する二重袋構造体を、上下方向に反転させた後、梱包用の箱体の中に収容する収容工程、
を含むことを特徴とする二重袋構造体の梱包方法。
[2] 上記外袋が矩形の形状を有し、かつ、上記内袋が矩形の形状を有する、上記[1]に記載の二重袋構造体の梱包方法。
[3] 上記梱包用の箱体が、上記二重袋構造体を複数収容可能な内部空間を有する本体部分と、上記内部空間を区画するための仕切り手段である付属部分を有する、上記[1]又は[2]に記載の二重袋構造体の梱包方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の二重袋構造体の梱包方法によれば、施工現場に到着する前に二重袋構造体が破袋して、セメント含有粉状材料と水含有液状材料が意図せずに混合してしまう事態の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の梱包方法の対象である二重袋構造体の一例を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す二重袋構造体を用いた、本発明の梱包方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の梱包方法の対象である二重袋構造体の一例を示す。
図1中、本発明の二重袋構造体1は、外袋2と、内袋3と、外袋2と内袋3の間の内部空間(第一の空間)内に収容されたセメント含有粉状材料4及び第一の気体5と、内袋3の内部空間(第二の空間)に収容された水含有液状材料6及び第二の気体7とからなる。
なお、第一の気体5は、外袋2と内袋3の間の内部空間におけるセメント含有粉状材料4の移動を容易にするためのものである。第二の気体7は、任意に収容可能なものであり、内袋3の破袋に対する抵抗性を高めるためのものである。
【0011】
外袋2は、2枚の同一形状(矩形)の透明な合成樹脂製シートを対向して重ね合わせて、該2枚のシートの全周の縁辺部分をヒートシールしてなるものであり、後述する内袋3のヒートシール部分10に比べて、より大きなヒートシール強さを有するヒートシール部分8(4つの直線状かつ帯状のヒートシール部分からなる矩形のもの)を有するものである。
外袋2を構成するシートの例としては、ヒートシール性(特に、大きなヒートシール強さ)を付与するための材料からなる層を少なくとも有する、一層または二層以上の層からなるシートが挙げられる。
ここで、ヒートシール性を付与するための材料の例としては、ポリプロピレンが挙げられる。
また、シートが二層以上の層からなる場合、ポリプロピレン層以外に、ナイロン層等の層をシートに含めることができる。
【0012】
内袋3は、2枚の同一形状(矩形)の透明な合成樹脂製シートを対向して重ね合わせて、該2枚のシートの4辺の縁辺部分のうち、1辺については、外袋2を構成する対向した2枚のシートにおける縁辺に近い部分(
図1に示すとおり、外袋2のヒートシール部分8に隣接する領域に位置するもの)と共に、外袋2のヒートシール部分8と同等のヒートシール強さを有するものとなるようにヒートシールして、ヒートシール部分9(外袋2を構成する2枚のシートと内袋3を構成する2枚のシートとからなる、合計4枚のシートの積層体)として形成し、かつ、残りの3辺については、外袋2のヒートシール部分8に比べて小さなヒートシール強さを有するものとなるようにヒートシールして、ヒートシール部分10(内袋3を構成する2枚のシートからなる積層体)として形成してなるものである。
内袋2を構成するシートの例としては、ヒートシール性を付与するための材料からなる層を少なくとも有する、一層または二層以上の層からなるシートが挙げられる。
ここで、ヒートシール性を付与するための材料の例としては、外袋3と同様に、ポリプロピレンが挙げられる。
また、シートが二層以上の層からなる場合、ポリプロピレン層以外に、外袋3と同様に、ナイロン層等の層をシートに含めることができる。
ヒートシール強さは、例えば、プレス温度を変えることによって、調整することができる。
【0013】
外袋2と内袋3の間の内部空間(第一の空間)内に収容されたセメント含有粉状材料4(以下、「粉状材料4」と略すことがある。)の一例としては、セメントと、セメント100質量部に対して500質量部以下(例えば、350~450質量部)の量の細骨材(例えば、珪砂)との混合物が挙げられる。
粉状材料4の量は、外袋2の中に内袋3(水含有液状材料6及び第二の気体7が収容されたもの)が収容された状態において、粉状材料4が第一の空間を最大限に満たしている場合の量(100質量%)に対して、好ましくは5~65質量%、より好ましくは10~62質量%、さらに好ましくは15~59質量%、さらに好ましくは20~56質量%、特に好ましくは25~53質量%の量である。
該量が5質量%以上であると、二重袋構造体1を用いて製造されるモルタル等の水硬性組成物の量が、より大きくなるなどの点で、好ましい。該量が65質量%以下であると、粉状材料4を収容した外袋2の中に、内袋3を収容することが、より容易となる。
【0014】
外袋2と内袋3の間の内部空間(第一の空間)内に収容された第一の気体5の例としては、空気、窒素ガス等が挙げられる。
第一の気体5の量は、第一の気体5が粉状材料4の存在下で第一の空間(粉状材料4が収容されている空間)を最大限に満たしている場合の量(100体積%)に対して、好ましくは7~75体積%、より好ましくは9~70体積%、さらに好ましくは12~65体積%、さらに好ましくは16~60体積%、特に好ましくは20~55体積%である。
該量が7体積%以上であると、第一の空間内における粉状材料4と液状材料6の練り混ぜの作業が、より容易となる。該量が75体積%以下であると、内袋3を加圧したときに、ヒートシール部分10が、より開口し易くなり、液状材料6を第一の空間(粉状材料4が収容されている空間)内に流入させることが、より容易となる。
【0015】
内袋3に収容された水含有液状材料6(以下、「液状材料6」と略すことがある。)の一例としては、水及び接着性向上用樹脂を含むポリマーエマルションが挙げられる。
接着性向上用樹脂は、粉状材料4と液状材料6の混合物である水硬性組成物(例えば、モルタル)を、道路補修材、目地材等の用途に使用する際における接着性を向上させるために、液状材料6中に含ませておくものである。
接着性向上用樹脂の例としては、スチレンアクリル系樹脂、EVA(エチレン-酢酸ビニル)系樹脂、天然ゴム系樹脂、SBR(スチレン-ブタジエン-ラバー)系樹脂等が挙げられる。
【0016】
セメント100質量部に対する接着性向上用樹脂(固形分)の量は、好ましくは4~50質量部、より好ましくは10~40質量部、特に好ましくは15~35質量部である。
液状材料6を構成する成分として、水及び接着性向上用樹脂に加えて、分散剤(各種の減水剤)を用いることができる。
分散剤は、粉状材料4中のセメントの量に対する液状材料中の水の量(換言すると、水セメント比)を減少させて、道路補修材等としての使用後の水硬性組成物(例えば、モルタル)の硬化体としての強度(例えば、圧縮強度)を高めるためのものである。
分散剤の例としては、リグニンスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤等が挙げられる。
分散剤を用いる場合、セメント100質量部に対する分散剤(固形分)の量は、好ましくは0.1~3質量部である。
【0017】
液状材料6の量は、液状材料6が内袋3の内部空間(第二の空間)を最大限に満たしている場合の量(100質量部)に対して、好ましくは3~75質量%、より好ましくは8~68質量%、さらに好ましくは15~60質量%、さらに好ましくは25~55質量%、特に好ましくは35~50質量%の量である。
該量が3質量%以上であると、二重袋構造体1を用いて製造されるモルタル等の水硬性組成物の量が、より大きくなるなどの点で、好ましい。該量が75質量%以下であると、内袋3に対して不測の外力が加わったときの抵抗力(緩衝力)が、より高くなり、意図せずにヒートシール部分10が開口して、内袋3内の液状材料6が第一の空間(粉状材料4が収容されている空間)内に流入してしまう事態の発生を、より効果的に抑制することができる。
【0018】
内袋3の内部空間(第二の空間)には、液状材料6に加えて、第二の気体7を収容することができる。
第二の気体7の例は、第一の空間(粉状材料4が収容されている空間)内の第一の気体5の例と同じ(例えば、空気)である。
第二の気体7の量は、第二の気体7が液状材料6の存在下で第二の空間を最大限に満たしている場合の量(100体積%)に対して、好ましくは80体積%以下、より好ましくは75体積%以下、さらに好ましくは70体積%以下、特に好ましくは65体積%以下である。
該量が80体積%以下であると、内袋3に対して不測の外力が加わったときの抵抗力(緩衝力)が、より高くなり、意図せずにヒートシール部分10が開口して、内袋3内の液状材料6が第一の空間(粉状材料4が収容されている空間)内に流入してしまう事態の発生を、より効果的に抑制することができる。
【0019】
外袋2のヒートシール部分8、及び、内袋3のヒートシール部分9におけるヒートシール強さは、「JIS Z 0238:1998」(ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法)に規定される試験方法で測定される値として、好ましくは12N以上、より好ましくは15N以上、さらに好ましくは18N以上、特に好ましくは21N以上である。
該値が12N以上であると、ヒートシール部分8、9が開口して、外袋2から内容物(粉状材料4、液状材料6)が流出するのを、より確実に防止することができる。
該値の上限値は、特に限定されないが、通常、35Nである。
【0020】
内袋3のヒートシール部分10におけるヒートシール強さは、「JIS Z 0238:1998」(ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法)に規定される試験方法で測定される値として、好ましくは2~6N、より好ましくは2~5N、さらに好ましくは3~4N、特に好ましくは3Nである。
該値が2N以上であると、内袋3に対して不測の外力が加わったときに、意図せずにヒートシール部分10が開口して、内袋3内の液状材料6が第一の空間(粉状材料4が収容されている空間)内に流入してしまうのを、より確実に防止することができる。該値が6N以下であると、内袋3を加圧して、ヒートシール部分10を開口させ、液状材料6を第一の空間内に流入させる作業を、より容易に行うことができる。
【0021】
外袋2は、開封用の切込み11を有する。
二重袋構造体1の使用時において、粉状材料4と液状材料6の混合物である水硬性組成物は、開封用の切込み11を手で裂いて、外袋2を開封することによって、道路補修材等の用途に用いることができる。
【0022】
次に、
図1に示す二重袋構造体を用いた、本発明の梱包方法の一例について、説明する。
図2中の(a)は、梱包作業用の台等の上に載置された二重袋構造体1を、上方から見た状態を示す平面図である。
二重袋構造体1は、全体として矩形でかつ扁平な形状を有しており、支持せずに載置された状態では、例えば、
図2中の(a)に示すとおり、上方から見て、外袋2と内袋3の間の空間に収容されている粉状材料4と、内袋3に収容されている液状材料6とを含むものとして、目視することができる。
図2中の(a)の状態にある二重袋構造体1は、内袋3とは反対側の部分(
図2中の(a)における二重袋構造体1の左側の端部)を持ち上げると、
図2中の(b)(正面図)に示すように、上部に無収容部分12(
図1に示す第一の気体5のみが存在し、粉状材料が収容されていない空洞部分)を有し、かつ、下部に粉状材料4が偏在した状態となる。内袋3及び液状材料6は、その周囲を粉状材料4が覆うため、目視することができない。
【0023】
図2中の(b)の状態にある二重袋構造体1を、その状態を維持したまま、粉状材料4の上端の位置(
図2中の折り目13)にて折り曲げると、
図2中の(c)(正面図)に示すように、内容物収容部分(粉状材料4及び液状材料6を含む部分)の裏側(正面からは見えない側)に、上述の無収容部分(粉状材料が収容されていない扁平な空洞部分)が折り畳まれた状態となる。
その後、
図2中の(c)の状態にある二重袋構造体1を、上下方向に反転させる(換言すると、上下方向に180度回転させる)と、
図2中の(d)(正面図)に示すとおり、液状材料6の側方及び下方に、粉状材料4が存在する状態となる。この状態において、液状材料6を収容している内袋3は、その下方に、落下時に緩衝作用を有することのできる粉状材料4が位置しているため、運搬中の二重袋構造体1が落下した場合であっても、破袋に対する優れた抵抗性を有する。
【0024】
図2中の(d)の状態にある二重袋構造体1は、梱包用の箱体の中に収容して、二重袋構造体1が使用される施工現場に運搬される。
梱包用の箱体の形態の一例として、ダンボール箱(本体部分)と、該ダンボール箱の中に着脱可能に配設された、2つのダンボール片を十字の形状に組み合わせてなる仕切り手段(付属部分)とからなるものが挙げられる。
この例において、仕切り手段(付属部分)は、ダンボール箱(本体部分)の内部空間を4つの空間(上方から見て、4つの矩形の形状を有するもの)に区画し、これら区画された4つの空間の各々に、二重袋構造体1は収容される。この場合、4つの二重袋構造体1が、1つのダンボール箱の中に収容されることになる。
【0025】
梱包用の箱体の形態の他の例として、上部が開口した合成樹脂製の箱体が挙げられる。
該箱体は、好ましくは、上下方向に積み重ね可能な形態を有するものである。
該箱体の中に、複数の二重袋構造体1を区画して収容するための仕切り手段(付属部分)を配設してもよい。該仕切り手段の例としては、2つの合成樹脂片(または金属片)を十字の形状に組み合わせて、合成樹脂製の箱体の中に着脱可能に配設しうるものが挙げられる。
当該他の例の場合、梱包用の箱体は、使用後に廃棄することなく、繰り返し用いることができる。
【0026】
本発明の梱包方法によって梱包された二重袋構造体は、水硬性組成物の製造のために用いられる。以下、水硬性組成物の製造方法を説明する。
水硬性組成物の製造方法(以下、
図1参照)は、(A)二重袋構造体1の内袋3を加圧して、内袋3のヒートシール部分10(ヒートシール強さが小さい部分)を開口させて、液状材料6を、外袋2と内袋3の間の第一の空間内(換言すると、粉状材料4が収容されている空間内)に流入させる加圧工程と、(B)外袋2に対して、液状材料6と粉状材料4の混合を促進するための動作を加えて、これら2つの材料4、6が均一に混合してなる水硬性組成物を得る混合工程、を含む。
【0027】
加圧工程(A)における加圧は、例えば、施工現場で適宜定めた二重袋構造体1の載置のための面(例えば、アスファルト、コンクリート、金属等からなる堅固で平坦な面)の上に、二重袋構造体1を載置した後、二重袋構造体1の内袋3に対して上方から、手で押圧することによって行うことができる。
この際、加圧によってヒートシール部分10が開口した後も、内袋3内の液状材料6を手で押し出して、内袋3内の液状材料6のほぼ全量(例えば95質量%以上)を、外袋2と内袋3の間の空間(第一の空間)内に流入させる。
混合工程(B)における液状材料6と粉状材料4の混合を促進するための外袋2に対する動作の例としては、外袋2に対する加圧箇所を移動させながらの加圧(例えば、加圧箇所を移動させながら、手で押圧すること)や、外袋2に対する揺動(例えば、二重袋構造体1を上下方向に反転させる動作を複数回、繰り返すこと)や、これら加圧及び揺動を組み合わせること等が挙げられる。
【0028】
上述の混合の促進のための動作によって、液状材料6と粉状材料4が均一に混合してなる水硬性組成物を得ることができる。
得られた水硬性組成物(例えば、モルタル)は、開封用の切込み11を手で裂いて、外袋2を開封することによって、道路補修材等として用いることができる。
この際、開封用の切込み11が上に位置するように二重袋構造体1の位置を定めた後に、開封用の切込み11を裂いて、外袋を開封し、次いで、開封用の切込み11が下に位置するように二重袋構造体1を上下方向に反転させて、水硬性組成物を開封口(開口部分)から流出させ、補修すべき道路の施工箇所等に充填すればよい。
補修すべき道路の施工箇所に充填された水硬性組成物は、気中養生等の養生を経て、硬化体となる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例によって本発明を説明する。本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない
[使用材料]
以下に示す材料を使用した。
(a)粉状材料
粉状材料として、セメント100質量部と、細骨材(珪砂)400質量部の混合物を用いた。
(b)液状材料
液状材料として、水100質量部と、接着性向上用樹脂(スチレンアクリル系樹脂)300質量部(固形分の濃度:45質量%)の混合物であるポリマーエマルションを用いた。
(c)外袋及び内袋
外袋及び内袋の材料として、ポリプロピレン層を含む2層の積層構造を有する、厚さが65μmの合成樹脂フィルム(以下、「フィルム」と略すことがある。)を用いた。
【0030】
[実施例1]
以下のようにして、
図1に示す二重袋構造体1を得た。
内袋の製造用の矩形のフィルム(320mm×150mm)を2枚重ね合わせて、4辺の中の1辺を除く3辺の縁辺(幅:10mm)について、ヒートシール強さが3Nになるようにヒートシールを行い、3辺にヒートシール部分10を有しかつ1辺が開口した内袋3を得た。内袋3の最大収容量は、1,700ミリリットルであった。
この内袋3の中に液状材料800ミリリットル(約0.8kg)を収容し、さらに空気を100ミリリットル収容した状態で、開口した1辺の縁辺(幅:10mm)について、ヒートシール強さが3Nになるようにヒートシール(後で再度ヒートシールして25Nのヒートシール強さになるもの)を行い、密封された内袋3を得た。
【0031】
一方、外袋の製造用の矩形のフィルム(580mm×230mm)を2枚重ね合わせて、4辺の中の1辺を除く3辺の縁辺(幅:10mm)について、ヒートシール強さが25Nになるようにヒートシールを行い、1辺が開口した外袋2を得た。外袋2の最大収容量は、8,000ミリリットルであった。
この外袋2の中に、粉状材料2,350ミリリットル(約4kg)を収容し、次いで、内袋3を外袋2の中に収容した後、
図1に示すヒートシール部分9の位置にて、外袋2と内袋3について、ヒートシール強さが25Nになるようにヒートシールを行い、外袋2と内袋3が固着してなるヒートシール部分9を形成させた。
次に、ヒートシール部分9の両側の、外袋2の開口した部分を介して、外袋2の中に空気を供給し、空気が2,000ミリリットル収容された状態で、ヒートシールされていなかった外袋の1辺の縁辺(幅:10mm)について、ヒートシール強さが25Nになるようにヒートシールを行い、ヒートシール部分8を完成させた。
【0032】
得られた二重袋構造体1を、
図2中の(a)~(d)に示す手順を経る方法によって、梱包用の箱体の中に収容した。
なお、梱包用の箱体は、ダンボール箱と、該ダンボール箱の中に着脱可能に配設された、2つのダンボール片を十字の形状に組み合わせてなる仕切り手段とからなるもの(箱体の内部を4つの空間に仕切ったもの)であった。このような構造を有する1箱の梱包用の箱体の中に、4個の二重袋構造体1を収容した。
このようにして準備した10箱の箱体を用いて、以下の実験を行った。
まず、約150kmの距離がある2つの地点A、Bを定めた。
次いで、10箱の箱体をトラックに積み込み、地点Aから地点Bまで運搬した。
地点Bでは、トラックから10箱の箱体を降ろした後、これら10箱の箱体を再び、トラックに積み込んだ。
【0033】
その後、10箱の箱体を、地点Bから地点Aまで運搬した。トラックが地点Aに到着することで、10箱の箱体は、地点Aと地点Bの間を一往復(走行距離:約300km)したことになる。
地点Aでは、トラックから10箱の箱体を降ろした後、これら10箱の箱体を再び、トラックに積み込んだ。
次いで、上述と同様の作業、すなわち、10箱の箱体を、地点Aから地点Bまで運搬し、地点Bで箱体の積み下ろしを行い、さらに地点Aに戻り、地点Aで箱体の積み下ろしを行い、さらに地点Bに向かうという作業を繰り返した。
一方、地点Aと地点Bの間を往復する中で、地点Aに戻る毎に、10箱の箱体の中の二重袋構造体1(計40個)の破袋の有無を調べた。
その結果、40個の二重袋構造体1について、破袋は、全く見られなかった。
【0034】
[比較例1]
図2に示す方法に代えて、
図3に示す方法を用いて、二重袋構造体20(
図2中の(d)と異なる形態を有するため、
図3中の(c)では、符号20を付した。)を作製した。
ここで、
図3に示す方法は、以下のとおりである。
図3中の(a)は、
図2中の(a)と同じである。
図3中の(a)の状態にある二重袋構造体1は、内袋3(液状材料6を収容している袋)が位置する側の部分(
図3中の(a)における二重袋構造体1の外袋2の右側の端部)を持ち上げると、
図3中の(b)(正面図)に示すように、上部に無収容部分14(
図1に示す第一の気体5のみが存在し、粉状材料が収容されていない空洞部分)を有し、かつ、下部に粉状材料4が偏在した状態となる。
次に、
図3中の(b)の状態にある二重袋構造体1を、梱包用の箱体(図示せず)の中に収容する。この時点で、二重袋構造体1は、箱体の中に完全には収まらず、箱体の上方に、はみ出た状態にある。
箱体の中の二重袋構造体1について、内袋3(液状材料6を収容している袋)を上方から手で押圧して、箱体の中に収まるようにすれば、
図3中の(c)に示す二重袋構造体20を得ることができる。
【0035】
以上のようにして作製した二重袋構造体20を用いて、実施例1と同様にして、実験を行ったところ、以下の結果を得た。
地点Aと地点Bの間を1回、往復した後、地点Aにて、10箱の箱体の中の二重袋構造体20(全40個)の破袋の有無を調べたところ、破袋は、見られなかった。
地点Aと地点Bの間の往復をさらに1回(計2回)、行った後、破袋の有無を調べたところ、「収容している4個の二重袋構造体20の中の1個に破袋が見られた箱体」が、2箱、見つかり、また、「収容している4個の二重袋構造体20の中の3個に破袋が見られた箱体」が、1箱、見つかった。これら3箱以外の7箱の箱体の中の二重袋構造体20には、破袋は、見られなかった。
【0036】
破袋が見られなかった7箱の箱体について、地点Aと地点Bの間の往復をさらに1回(計3回)、行った後、破袋の有無を調べたところ、「収容している4個の二重袋構造体20の中の1個に破袋が見られた箱体」が、2箱、見つかり、また、「収容している4個の二重袋構造体20の中の2個に破袋が見られた箱体」が、2箱、見つかり、「収容している4個の二重袋構造体20の中の3個に破袋が見られた箱体」が、1箱、見つかった。これら5箱以外の2箱の箱体の中の二重袋構造体20には、破袋は、見られなかった。
破袋が見られなかった2箱の箱体について、地点Aと地点Bの間の往復をさらに1回(計4回)、行った後、破袋の有無を調べたところ、「収容している4個の二重袋構造体20の中の4個に破袋が見られた箱体」が、2箱、見つかった。破袋が見られない箱体は、皆無となったので、ここで実験を終えた。
【符号の説明】
【0037】
1,20 二重袋構造体
2 外袋
3 内袋
4 粉状材料(セメント、細骨材)
5 第一の気体(空気)
6 液状材料(水、接着性向上用樹脂、分散剤)
7 第二の気体(空気)
8,9 ヒートシール部分(ヒートシール強さが大きい部分)
10 ヒートシール部分(ヒートシール強さが小さい部分)
11 開封用の切込み
12,14 無収容部分(粉状材料及び液状材料が収容されていない部分)
13 折り目