(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】有機化合物、これを含む発光ダイオードおよび発光装置
(51)【国際特許分類】
C07D 495/04 20060101AFI20220614BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220614BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C07D495/04 101
C07D495/04 CSP
H05B33/22 D
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
(21)【出願番号】P 2020128875
(22)【出願日】2020-07-30
(62)【分割の表示】P 2018201933の分割
【原出願日】2018-10-26
【審査請求日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】10-2017-0140169
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】イ ナヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ スンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ビン ジョンクヮン
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特許第6744376(JP,B2)
【文献】特開平08-015879(JP,A)
【文献】特開2009-200263(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2015-0027362(KR,A)
【文献】特開2016-162961(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194429(WO,A1)
【文献】特開2011-124235(JP,A)
【文献】特開2007-329454(JP,A)
【文献】特開平07-160022(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2017-0003472(KR,A)
【文献】特開2008-244430(JP,A)
【文献】Bulletin of the Chemical Society of Japan,1992年,65(8),2168-72,javascript:void(0)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される有機化合物。
【化1】
(化学式1で、R
1aおよびR
1bは、それぞれ独立して、水素であるか、または下記の構造を有し、
【化2】
R2aおよびR2bは、それぞれ独立して、水素であり、
Xは、CR5R6であり、R5およびR6は、それぞれ独立して、下記の構造のうち、いずれか一つを有し、
【化3】
但し、R5またはR6は、
であり、
Yは、CR7R8であり、R7およびR8は、それぞれ独立して、シアノ基であり、XとYは同一ではなく、かつ、
Z1とZ2は、それぞれ独立して、Sである。)
【請求項2】
互いに対向する第1電極および第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、請求項1に記載の有機化合物を含む正孔移動層を含む発光層とを備える発光ダイオード。
【請求項3】
前記正孔移動層は、前記有機化合物であるドーパントと、下記化学式3~下記化学式5で表されるいずれか一つのホストを含む、請求項2に記載の発光ダイオード。
【化4】
【化5】
【化6】
(化学式3~化学式5で、R
11~R
14は、それぞれ独立して、非置換もしくは置換されたC
1~C
20直鎖または側鎖のアルキル基、非置換もしくは置換されたC
1~C
20アルコキシ基、非置換もしくは置換されたC
5~C
30アリール基または非置換もしくは置換されたC
4~C
30ヘテロアリール基である;aとbは、それぞれ独立して1~4の整数である;nは、1以上の整数である。)
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の発光ダイオードを備える発光装置。
【請求項5】
基板と、
前記基板の上部に位置する前記発光ダイオードと、
前記基板と前記発光ダイオードとの間に位置し、前記発光ダイオードに連結される薄膜トランジスタと、を備える、請求項4に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物に関し、より詳細には、電荷移動特性が向上した有機化合物と、これを利用して発光効率が向上した発光ダイオードおよび発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平板表示装置のうち有機発光ダイオード(organic light emitting diode;OLED)表示装置と、量子ドット発光ダイオード(quantum dot light emitting diode;QLED)表示装置は、薄型構造が可能であり、消費電力が少ないため、液晶表示装置(Liquid Crystal Display(LCD) device)に代える次世代表示装置として注目を集めている。
【0003】
有機発光ダイオードや量子ドット発光ダイオードは、電子注入電極(負極)と正孔注入電極(正極)との間に形成された有機発光層に電荷を注入すると、電子と正孔がペアを組んだ後に消滅しながら光を発する素子である。プラスチックのような曲がりやすい(flexible)透明基板の上にも素子を形成できると共に、低い電圧で(10V以下)駆動が可能であり、また、電力消耗が比較的に少なく、色純度に優れているという長所がある。
【0004】
図1は、従来の有機発光ダイオードを構成する電極と発光層を構成する材料のバンドギャップエネルギー準位を概略的に示すダイヤグラムである。
図1を参照すると、有機発光ダイオードは、互いに対向する正極および負極と、正極と負極との間に位置する発光物質層(Emitting Material Layer;EML)と、正極と発光物質層(EML)との間に位置する正孔注入層(Hole Injection Layer;HIL)および正孔輸送層(Hole Transport Layer;HTL)と、負極と発光物質層(EML)との間に位置する電子輸送層(Electron Transport Layer;ETL)とを含む。
【0005】
前述したように、有機発光ダイオードは、電子注入電極(負極)と正孔注入電極(正極)との間に形成された有機素材の発光層に電荷キャリアを注入すると、電子(electron)と正孔(hole)がペアを組んだ後に消滅しながら光を発する素子である。発光物質層(EML)は、有機発光材料からなるが、正極と負極でそれぞれ注入された正孔と電子が発光物質層(EML)で会ってエキシトン(Exciton)を形成する。このエネルギーにより発光物質層(EML)に含まれた発光材料が励起状態(excited state)となるが、有機発光材料が励起状態から基底状態(ground state)にエネルギー転移が発生し、発生したエネルギーを光として放出して発光する。
【0006】
なお、正孔注入層(HIL)および正孔輸送層(HTL)は、正極から発光物質層(EML)に正電荷キャリアである正孔を注入、伝達し、電子注入層(図示せず)および電子輸送層(ETL)は、負極から発光物質層(EML)に負電荷キャリアである電子を注入、伝達する。正孔と電子を発光物質層(EML)に注入、伝達できるように、それぞれの層は、適切なバンドギャップエネルギーを有する材料で構成されなければならない。従来、OLEDを構成する発光層は、蒸着工程を通じて形成されてきたが、最近では、有機材料の浪費を低減することができ、カラーフィルターが要求されない溶液工程(solution process)を通じて発光層を形成するようにもなっている。
【0007】
一例として、正孔注入層(HIL)は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)からなり、正孔輸送層(HTL)は、ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニル-アミン)(ポリ-TPD)からなり、電子輸送層(ETL)は、2-ビフェニル-4-イル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(PBD)からなることができる。
【0008】
ところが、発光物質層(EML)を構成する発光素材の最高被占分子軌道(Highest Occupied Molecular Orbital;HOMO)エネルギー準位は、非常に低く(deep)、最低空分子軌道(Lowest Unoccupied Molecular orbital;LUMO)エネルギー準位は、非常に高い(high)。したがって、正孔輸送層(HTL)から発光物質層(EML)に正孔が輸送される時と、電子輸送層(ETL)から発光物質層(EML)に電子が輸送される時、発光物質層(EML)を構成する発光材料のエネルギー準位と隣接する電荷輸送層間のエネルギー準位との差に起因するエネルギー障壁が形成される。
【0009】
しかしながら、電子輸送層(ETL)のLUMOエネルギー準位と発光物質層(EML)のLUMOエネルギー準位の差(ΔGL)に比べて、正孔輸送層(HTL)のHOMOエネルギー準位と発光物質層(EML)のHOMOエネルギー準位の差(ΔGH)が非常に大きい。すなわち、正孔輸送層(HTL)を構成する有機化合物のHOMOエネルギー準位に比べて発光物質層(EML)の発光材料は、非常に低いHOMOエネルギー準位を有している。したがって、発光物質層(EML)への電子の移動および注入に比べて、発光物質層(EML)への正孔の移動および注入が遅延され、これにより、発光物質層(EML)に正電荷である正孔と負電荷である電子がバランスよく注入されることはできない。特に、正孔輸送層(HTL)を構成する有機材料のHOMOエネルギー準位より非常に低い(deep)HOMOエネルギー準位(価電子帯エネルギー準位)を有する無機発光材料を発光物質層(EML)に使用する量子ドット発光ダイオードにおいて正孔と電子の注入不均衡の問題は、さらに深刻となる。
【0010】
正孔に比べて電子が過度に発光物質層(EML)に注入されると、過度に注入された電子の相当部分は、正孔と再結合してエキシトンを形成せずに消滅する。また、正孔に比べて電子が迅速に発光物質層(EML)に注入されることにより、正孔と電子が発光物質層(EML)を構成する発光材料で再結合されず、発光物質層(EML)と正孔輸送層(HTL)の界面で再結合される。これにより、発光ダイオードの発光効率が低下すると共に、所望の発光を具現するために高い駆動電圧が要求されて、消費電力を増加させる原因となっている。
【0011】
なお、多数の積層構造を有する発光ダイオードを製造するために、溶液工程を通じて薄膜を形成する場合、上部層を形成するために使用された溶媒によって下部層が溶け、上部層と下部層間の界面で材料の混合が起こることがある。すなわち、溶液工程を通じて製造される発光ダイオードの隣接する発光層を積層する場合、隣接する発光層を構成する各々の発光材料および/または電荷輸送材料をすべて分散、溶解させることができる相溶(compatible)溶媒を使用することができない。
【0012】
したがって、溶液工程を適用しようとする発光ダイオードにおいてそれぞれの発光層に対して使用できる溶媒の種類が制限される。制限的に使用される溶媒に分散、溶解し得る正孔輸送層(HTL)の材料も限定的なので、発光物質層(EML)と正孔輸送層(HTL)のエネルギー準位の差を適切に制御できる材料を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、発光物質層への正孔移動速度を向上させることにより、正孔と電子のような電荷が発光物質層にバランスよく注入され得る発光ダイオードおよび発光装置を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、発光効率が向上し、低電圧駆動を具現することができる発光ダイオードおよび発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、本発明は、多数の環外二重結合(exocyclic double bonds)を有する縮合ヘテロ芳香環をコアとし、環外二重結合を介して電子求引(electron withdrawing)特性が強い官能基が置換されている有機化合物を提供する。
【化1】
(化学式1で、R
1a、R
1b、R
2aおよびR
2bは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミン基、非置換もしくは置換されたC
1~C
20脂肪族エステル基、非置換もしくは置換されたC
1~C
20アルキルアミド基、非置換もしくは置換されたC
1~C
20アルキル基、非置換もしくは置換されたC
1~C
20アルコキシ基、非置換もしくは置換されたC
1~C
20アルキルアミン基、非置換もしくは置換されたC
5~C
30アリール基、非置換もしくは置換されたC
4~C
30ヘテロアリール基、非置換もしくは置換されたC
5~C
30アラルキル基、非置換もしくは置換されたC
4~C
30ヘテロアラルキル基、非置換もしくは置換されたC
5~C
30アラルコキシ基、非置換もしくは置換されたC
4~C
30ヘテロアラルコキシ基、非置換もしくは置換されたC
5~C
30アリールアミン基または非置換もしくは置換されたC
4~C
30ヘテロアリールアミン基である;Xは、酸素もしくはCR
5R
6であり、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、ハロゲン、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、C
1~C
20アルキル基、C
5~C
30アリル基もしくはC
4~C
30ヘテロアリル基であって、C
1~C
20アルキル基、C
5~C
30アリル基およびC
4~C
30ヘテロアリル基は、それぞれシアノ基、ニトロ基およびハロゲンで構成される群から選択される少なくとも1つの置換基に選択的に置換される;Yは、酸素もしくはCR
7R
8であり、R
7およびR
8は、それぞれ独立して、ハロゲン、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、C
1~C
20アルキル基、C
5~C
30アルキル基もしくはC
4~C
30ヘテロアリル基であって、C
1~C
20アルキル基、C
5~C
30アルキル基、C
5~C
30アリル基およびC
4~C
30ヘテロアリル基は、それぞれシアノ基、ニトロ基およびハロゲンで構成される群から選択される少なくとも1つの置換基に選択的に置換され、XとYは同一ではない;Z
1とZ
2は、それぞれ独立して、NR
3、SもしくはOであり、R
3は、水素または非置換もしくは置換されたC
1~C
20アルキル基である。)
【0016】
本発明の他の態様において、本発明は、前記有機化合物が発光層の正孔移動層に使用された発光ダイオードを提供する。
【0017】
例示的な実施形態において、前記有機化合物は、正孔移動層のドーパントとして使用され得るが、この場合、トリフェニルアミン系有機物質が正孔移動層のホストとして使用され得る。
【0018】
本発明の他の態様によれば、本発明は、基板と、基板の上部に位置する前述した発光ダイオードと、前記基板と前記発光ダイオードとの間に位置し、前記発光ダイオードに連結される駆動素子とを含む発光装置、一例として発光表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明において、多数の環外二重結合を有する縮合ヘテロ芳香環をコアとし、環外二重結合を介して電子求引特性が強い官能基が置換されている有機化合物と、前記有機化合物を含む発光ダイオード、および発光装置を提案する。
【0020】
本発明による有機化合物は、多数の環外二重結合を有する縮合ヘテロ芳香環のコアを有しているので、正孔移動層に本発明の有機化合物を使用して正孔移動層と発光物質層間のHOMOエネルギーバンドギャップを大きく低減することができる。また、環外二重結合を介して電子求引特性に優れた多数の官能基が置換されて、正孔に対する移動度(mobility)を向上させることができる。
【0021】
本発明による有機化合物を正孔移動層に適用して、発光物質層に正孔と電子がバランスよく注入されて、正孔と電子が消失されずに有効にエキシトンを形成して、発光に寄与することができる。これにより、発光効率が向上し、低電圧駆動が可能であるので、消費電力を減少させることができる発光ダイオードおよび発光装置を具現、製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来の発光ダイオードを構成する電極および電極の間に位置する発光層を構成する材料のエネルギー準位を概略的に示すダイヤグラムである。
【
図2】本発明の例示的な第1実施形態によって、正常構造(normal structure)を有する発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明の例示的な第1実施形態による発光ダイオードを構成する電極と発光層を構成する材料のエネルギー準位を概略的に示すダイヤグラムである。
【
図4】本発明の例示的な第2実施形態によって、反転構造(inverted structure)を有する発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
【
図5】本発明の例示的な第2実施形態による発光ダイオードを構成する電極と発光層を構成する材料のエネルギー準位を概略的に示すダイヤグラムである。
【
図6】本発明の例示的な実施形態による発光ダイオードが適用された発光装置の一例として、発光ダイオード表示装置を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、必要な場合に添付の図面を参照しつつ本発明を説明する。
発光ダイオードにおいて電荷輸送材料として使用される化合物は、電荷移動度に優れている必要があり、発光物質層に電荷をバランスよく注入できなければならない。本発明の一態様による有機化合物は、このような特性を満たすことができ、下記化学式1で表示され得る。
【0024】
【化2】
(化学式1で、R
1a、R
1b、R
2aおよびR
2bは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミン基、非置換もしくは置換されたC
1~C
20脂肪族エステル基、非置換もしくは置換されたC
1~C
20アルキルアミド基、非置換もしくは置換されたC
1~C
20アルキル基、非置換もしくは置換されたC
1~C
20アルコキシ基、非置換もしくは置換されたC
1~C
20アルキルアミン基、非置換もしくは置換されたC
5~C
30アリール基、非置換もしくは置換されたC
4~C
30ヘテロアリール基、非置換もしくは置換されたC
5~C
30アラルキル基、非置換もしくは置換されたC
4~C
30ヘテロアラルキル基、非置換もしくは置換されたC
5~C
30アラルコキシ基、非置換もしくは置換されたC
4~C
30ヘテロアラルコキシ基、非置換もしくは置換されたC
5~C
30アリールアミン基または非置換もしくは置換されたC
4~C
30ヘテロアリールアミン基である;Xは、酸素もしくはCR
5R
6であり、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、ハロゲン、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、C
1~C
20アルキル基、C
5~C
30アリル基もしくはC
4~C
30ヘテロアリル基であって、C
1~C
20アルキル基、C
5~C
30アリル基およびC
4~C
30ヘテロアリル基は、それぞれシアノ基、ニトロ基およびハロゲンで構成される群から選択される少なくとも1つの置換基に選択的に置換される;Yは、酸素もしくはCR
7R
8であり、R
7およびR
8は、それぞれ独立して、ハロゲン、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、C
1~C
20アルキル基、C
5~C
30アルキル基もしくはC
4~C
30ヘテロアリル基であって、C
1~C
20アルキル基、C
5~C
30アルキル基、C
5~C
30アリル基およびC
4~C
30ヘテロアリル基は、それぞれシアノ基、ニトロ基およびハロゲンで構成される群から選択される少なくとも1つの置換基に選択的に置換され、XとYは同一ではない;Z
1とZ
2は、それぞれ独立して、NR
3、SもしくはOであり、R
3は、水素または非置換もしくは置換されたC
1~C
20アルキル基である。)
【0025】
本明細書で「非置換」、「置換されていない」または「非置換された」とは、水素原子が結合されたことを意味し、この場合、水素原子は、軽水素、重水素および三重水素が含まれる。
【0026】
本明細書で「置換された」において置換基は、例えば、非置換された、またはハロゲン原子、シアノ基および/またはニトロ基で置換されたC1~C20アルキル基、非置換された、またはハロゲン原子、シアノ基および/またはニトロ基で置換されたC1~C20アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、-CF3のようなアルキルハライド基、非置換された、またはハロゲン原子、シアノ基および/またはニトロ基でそれぞれ置換されたヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボニル基、アミン基、C1~C10アルキル置換アミン基、C5~C30アリール置換アミン基、C4~C30ヘテロアリール置換アミン基、ニトロ基、ヒドラジル基(hydrazyl group)、スルホン酸基、C1~C20アルキルシリル基、C1~C20アルコキシシリル基、C3~C30シクロアルキルシリル基、C5~C30アリールシリル基、C4~C30ヘテロアリールシリル基、C5~C30アリール基、C4~C30ヘテロアリール基などが挙げられるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0027】
本明細書で「ヘテロ芳香環」、「ヘテロシクロアルキレン基」、「ヘテロアリレン基」、「ヘテロアリールアルキレン基」、「ヘテロアリールオキシレン基」、「ヘテロシクロアルキル基」、「ヘテロアリール基」、「ヘテロアリールアルキル基」、「ヘテロアリールオキシル基」、「ヘテロアリールアミン基」等で使用された用語「ヘテロ」は、これらの芳香族または脂環族(alicyclic)環を構成する炭素原子のうち1個以上、例えば1~5個の炭素原子がN、O、Sおよびこれらの組合せで構成される群から選択された一つ以上のヘテロ原子で置換されたことを意味する。
【0028】
一つの例示的な実施形態によれば、化学式1でR1a、R1b、R2a、R2b、Xおよび/またはYが芳香環で置換された場合、これらの芳香環は、それぞれ独立して、非置換もしくは置換されたフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、テトラフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、インデニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アズレニル基、ピレニル基、フルオレニル基、テトラセニル基、インダセニル基またはスピロフルオレニル基のような非縮合または縮合された(fused)ホモ芳香環、および/またはピロリル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、テトラジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、インドロカルバゾリル基、インデノカルバゾリル基、ベンゾフラノカルバゾリル基、ベンゾチエノカルバゾリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、シノリニル基、キナゾリニル基、ベンゾキノリニル基、ベンゾイソキノリニル基、ベンゾキナゾリニル基、ベンゾキノキサリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フラニル基、ピラニル基、オキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ジオキシニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、チオピラニル基、チアジニル基、チオフェニル基またはN-置換されたスピロフルオレニル基のような非縮合または縮合されたヘテロ芳香環であってもよい。しかしながら、これに限定されるものではない。
【0029】
例えば、化学式1でR1a、R1b、R2a、R2b、Xおよび/またはYが芳香族官能基で置換された場合、これらの官能基は、フッ素のようなハロゲン原子、ニトロ基および/またはシアノ基の中から選択される一つ以上の官能基で置換されたフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基またはスピロフルオレニル基のようなアリール基および/またはフッ素のようなハロゲン原子、ニトロ基および/またはシアノ基の中から選択される一つ以上の官能基で置換されたベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピロリル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、テトラジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、インドロカルバゾリル基、インデノカルバゾリル基、ベンゾフラノカルバゾリル基、ベンゾチエノカルバゾリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、シノリニル基、キナゾリニル基、ベンゾキノリニル基、ベンゾイソキノリニル基、ベンゾキナゾリニル基またはベンゾキノキサリニル基のようなヘテロアリール基であってもよい。
【0030】
化学式1で表される有機化合物は、多数の環外二重結合(exocyclic double bonds)を有する縮合ヘテロ芳香環のコアを有しているので、最高被占分子軌道関数(Highest Occupied Molecular Orbital;HOMO)エネルギー準位が低い。したがって、発光ダイオードの正孔移動層に適用する場合、正孔移動層と発光物質層間のHOMOエネルギーバンドギャップを低減することができる。また、環外二重結合を介して電子求引特性に優れた多数の官能基が置換されていて、正孔に対する移動度特性に優れている。特に、本発明による有機化合物は、それぞれの環外二重結合を介して互いに異なる電子求引特性に優れた官能基が置換されて、正孔に対する移動度特性がさらに向上する。
【0031】
したがって、化学式1の有機化合物を発光ダイオードに適用して、発光物質層に正孔と電子がバランスよく注入されるように誘導することができる。化学式1の有機化合物を発光ダイオードに適用する場合、正極と負極でそれぞれ注入された正孔と電子は消失されずに、発光物質層に注入されて、有効なエキシトンを形成することができ、発光物質層と隣接する電荷移動層の界面でなく、発光材料が位置する領域で発光を具現することができる。したがって、化学式1の有機化合物を使用して、発光効率が向上し、低電圧駆動が可能な発光ダイオードを製作することができる。
【0032】
一つの例示的な実施形態によれば、前記化学式1でR
1a、R
1b、R
2aとR
2bのうち少なくとも一つは、水素、重水素または三重水素であり、R
1a、R
1b、R
2aまたはR
2bが水素、重水素および三重水素でない場合、他のR
1a、R
1b、R
2aおよびR
2bは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基およびニトロ基の中から選択される少なくとも一つで置換されたC
5~C
30アリール基またはハロゲン原子、シアノ基およびニトロ基の中から選択される少なくとも一つで置換されたC
5~C
30ヘテロアリール基であってもよい。いくつかの実施形態において、R
2aおよびR
2bは全て水素である。他の実施形態において、R
1aおよびR
1bは、全てハロゲン原子、シアノ基およびニトロ基の中から選択される少なくとも一つで置換されたC
5~C
30アリール基である。特定の実施形態において、R
1aおよびR
1bは、全て水素である。さらに他の実施形態において、R
1aおよびR
1bは、全て下記の構造を有する。
【化3】
また、いくつかの実施形態において、前記Xは、CR
5R
6であって、R
5は、ハロゲン原子、ハロアルキル基(例えば、-CF
3)、シアノ基、ニトロ基、またはシアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子の中から選択される少なくとも一つで置換されたC
5~C
30アリール基もしくはC
4~C
30ヘテロアリール基であり、R
6は、ハロゲン原子、シアノ基およびニトロ基の中から選択される少なくとも一つで置換されたC
5~C
30アリール基またはハロゲン原子、シアノ基およびニトロ基の中から選択される少なくとも一つで置換されたC
4~C
30ヘテロアリール基であってもよい。特定の実施形態において、R
5は、ハロアルキル基、(例えば、-CF
3)、シアノ基、またはシアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子の中から選択される少なくとも一つで置換されたC
5~C
30アリール基もしくはC
4~C
30ヘテロアリール基であってもよい。特定の実施形態において、R
5およびR
6は、下記の構造のうち、1つを有する。
【化4】
また、前記Yは、CR
7R
8であって、R
7とR
8は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基であってもよい。いくつかの実施形態において、R
7およびR
8は、全てシアノ基である。また、いくつかの実施形態において、Z
1およびZ
2は、全てSである。
また、他の実施形態において、R
1aおよびR
1bは同一であり、水素、非置換もしくは置換されたC
5~C
14アリル基、非置換もしくは置換されたC
4~C
14ヘテロアリル基、非置換もしくは置換されたアラルキル基、非置換もしくは置換されたC
4~C
14ヘテロアラルキル基であって、置換基は、望ましくはハロゲン、さらに望ましくはフッ素である。そして、
酸素もしくはCR
7R
8であり、R
7およびR
8は、それぞれ独立して、ハロゲン、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、C
1~C
20アルキル基、C
5~C
30アルキル基もしくはC
4~C
30ヘテロアリル基であって、C
1~C
20アルキル基、C
5~C
30アルキル基、C
5~C
30アリル基およびC
4~C
30ヘテロアリル基は、それぞれシアノ基、ニトロ基およびハロゲンで構成される群から選択される少なくとも1つの置換基に選択的に置換され、XとYは同一ではない;Z
1とZ
2は、それぞれ独立して、NR
3、SもしくはOであり、R
3は、水素または置換されたり、もしくは置換されていないC
1~C
20アルキル基である。R
2aおよびR
2bは水素であり、Z
1およびZ
2は全てSであり、YはCR
7R
8であって、R
7およびR
8は、シアノ基であり、XはCR
5R
6であって、R
5およびR
6は、下記の構造のうち、いずれか1つを有する。
【化5】
【0033】
より具体的に記述すると、発光ダイオードの正孔移動層に使用され得る有機化合物は、下記化学式2で表されるSH01~SH13のうちいずれか一つの有機化合物を含むことができる。すなわち、いくつかの実施形態において、前記有機化合物は、次の化学式2のうち、1つの構造を有する。
【0034】
【0035】
化学式2で表される有機化合物は、HOMOエネルギー準位が低い、環外二重結合を有する縮合ヘテロ芳香環をコアとして有していて、それぞれの環外二重結合を介して電子求引特性に優れ、異なる官能基が置換されていて、高い正孔移動度特性を有する。したがって、化学式2で表される有機化合物を正孔移動層に適用して、発光効率に優れ、低い電圧で駆動できる発光ダイオードを具現することができる。したがって、一実施形態は、前述のいずれか一つの実施形態に係る有機化合物を含む発光ダイオードを提供する。
【0036】
次に、本発明による有機化合物を含む発光ダイオードについて説明する。
図2は、本発明の例示的な第1実施形態によって、正常構造(normal structure)を有する発光ダイオードを概略的に示す断面図であり、
図3は、本発明の例示的な第1実施形態による発光ダイオードを構成する電極と発光層を構成する材料のバンドギャップエネルギーを概略的に示すダイヤグラムである。
【0037】
図2に示されるように、本発明の例示的な実施形態による発光ダイオード100は、第1電極110と、第1電極と対向する第2電極120と、第1電極110と第2電極120との間に位置し、発光物質層(Emitting material layer;EML)150を含む発光層130とを含む。一例として、発光層130は、第1電極110と発光物質層150との間に位置する第1電荷移動層140と、発光物質層150と第2電極120との間に位置する第2電荷移動層160とをさらに含むことができる。
【0038】
本発明の第1実施形態において、第1電極110は、正孔注入電極と同じ正極(アノード)であってもよい。第1電極110は、ガラスまたは高分子であってもよい基板(
図2に図示せず)上に形成され得る。一例として、第1電極110は、インジウム-スズ-酸化物(indium-tin-oxide;ITO)、インジウム-亜鉛-酸化物(indium-zinc-oxide;IZO)、インジウム-スズ-亜鉛-酸化物(indium-tin-zinc oxide;ITZO)、インジウム-銅-酸化物(indium-copper-oxide;ICO)、スズ酸化物(SnO
2)、インジウム酸化物(In
2O
3)、カドミウム:酸化亜鉛(Cd:ZnO)、フッ素:酸化スズ(F:SnO
2)、インジウム:酸化スズ(In:SnO
2)、ガリウム:酸化スズ(Ga:SnO
2)およびアルミニウム:酸化亜鉛(Al:ZnO;AZO)を含むドープまたは非ドープの金属酸化物であってもよい。選択的に、第1電極110は、前述した金属酸化物以外にも、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)または炭素ナノチューブ(Carbon nanotube、CNT)を含む金属素材または非金属素材からなることができる。
【0039】
本発明の第1実施形態において、第2電極120は、電子注入電極と同じ負極(カソード)であってもよい。一例として、第2電極120は、Ca、Ba、Ca/Al、LiF/Ca、LiF/Al、BaF2/Al、CsF/Al、CaCO3/Al、BaF2/Ca/Al、Al、Mg、Au:MgまたはAg:Mgからなることができる。例えば、第1電極110と第2電極120は、30~300nmの厚さで積層され得る。
【0040】
一つの例示的な実施形態において、下部発光タイプの発光ダイオードである場合に、第1電極110は、ITO、IZO、ITZO、AZOのような透明導電性金属からなることができ、第2電極120は、Ca、Ba、Ca/Al、LiF/Ca、LiF/Al、BaF2/Al、Al、Mg、Ag:Mg合金などが使用できる。
【0041】
発光層130を構成できる第1電荷移動層140は、第1電極110と発光物質層150との間に位置する。本発明の第1実施形態において、第1電荷移動層140は、発光物質層150に正孔を供給する正孔移動層であってもよい。一例として、第1電荷移動層140は、第1電極110と発光物質層150との間で第1電極110に隣接して位置する正孔注入層(hole injection layer;HIL)142と、第1電極110と発光物質層150との間で発光物質層150に隣接して位置する正孔輸送層(hole transport layer;HTL)144とを含む。
【0042】
正孔注入層142は、第1電極110から発光物質層150に正孔の注入を容易にする。一例として、正孔注入層142は、ポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート(poly(ethylenedioxythiophene):polystyrenesulfonate;PEDOT:PSS)、テトラフルオロ-テトラシアノ-キノジメタン(tetrafluoro-tetracyano-quinodimethane;F4-TCNQ)がドープされた4,4’,4”-トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(diphenylamino)triphenylamine;TDATA);例えばF4-TCNQがドープされた亜鉛フタロシアニン(zinc phthalocyanine;ZnPc)のようなp-ドープされたフタロシアニン、F4-TCNQがドープされたN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(1-ナフチル)-1,1’-ビフェニル-4,4”-ジアミン(N,N’-diphenyl-N,N’-bis(1-naphtyl)-1,1’-biphenyl-4,4”-diamine;α-NPD)、ヘキサアザトリフェニレン-ヘキサニトリル(hexaazatriphenylene-hexanitrile;HAT-CN)およびこれらの組合せで構成される群から選択される有機物からなることができるが、本発明はこれに限定されない。一例として、F4-TCNQのようなドーパントは、ホストに対して1~30重量%の割合でドープされ得る。正孔注入層142は、発光ダイオード100の構造および形態によって省略されてもよい。
【0043】
正孔輸送層144は、第1電極110から発光物質層150に正孔を伝達する。図面では、第1電荷移動層140を正孔注入層142と正孔輸送層144とに区分したが、第1電荷移動層140は、単一層からなってもよい。例えば、正孔注入層142が省略され、第1電荷移動層140は、正孔輸送層144のみからなってもよい。
【0044】
一つの例示的な実施形態において、正孔輸送層144は、前記化学式1~化学式2で表される有機化合物を含むことができる。
【0045】
化学式1~化学式2で表される有機化合物は、縮合ヘテロ芳香環のコアに、多数の環外二重結合を介して電子求引特性が強い官能基が非対称的に置換されている。したがって、化学式1~化学式2で表される有機化合物は、HOMOエネルギー準位が低く、正孔との結合力に優れていて、優れた正孔移動度特性を有する。したがって、
図3に概略的に示されるように、化学式1~化学式2で表される有機化合物を正孔移動層、例えば正孔輸送層(HTL)に適用する場合、正孔輸送層(HTL)の全体的なHOMOエネルギー準位が低くなり(deep HOMO)、正孔輸送層(HTL)のHOMOエネルギー準位と発光物質層(EML)のHOMOエネルギー準位の差(ΔG’
H)が大きく減少して、正孔輸送層(HTL)と発光物質層(EML)の間のエネルギー障壁を除去することができる。
【0046】
すなわち、化学式1~化学式2で表される有機化合物を正孔輸送層(HTL)に適用することにより、正孔輸送層(HTL)のHOMOエネルギー準位と発光物質層(EML)のHOMOエネルギー準位の差(ΔG’H)は、電子輸送層(ETL)の最低空分子軌道(Lowest Unoccupied Molecular orbital;LUMO)エネルギー準位と発光物質層(EML)のLUMOエネルギー準位の差(ΔGL)と同一になるか、または大きな差を有しない。
【0047】
このように、化学式1~化学式2の有機化合物を正孔移動層に使用することにより、正孔と電子が発光物質層(EML)にバランスよく注入されてエキシトンを形成するので、エキシトンを形成せずに消滅される電子が減少するか、またはなくなる。また、発光物質層(EML)と隣接する電荷移動層(HTL、ETL)の界面でなく、発光物質層(EML)に注入された発光材料で発光が効率的に起こることができる。したがって、発光ダイオード100の発光効率を最大化することができ、低電圧で駆動が可能になるので、消費電力を低減することができる。
【0048】
一例として、正孔注入層142および正孔輸送層144を含む第1電荷移動層140は、真空気相蒸着法、スパッタリング法を含む真空蒸着工程や、スピンコート(spin coating)、ドロップコート(drop coating)、ディップコート(dip coating)、スプレーコート(spray coating)、ロールコート(roll coating)、フローコート(flow coating)はもちろん、キャスト工程、スクリーン印刷またはインクジェットプリント方式のような溶液工程を単独または組み合わせて使用することができる。例えば、正孔注入層142と正孔輸送層144の厚さは、10nm~200nm、好ましくは10nm~100nmであってもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0049】
一つの例示的な実施形態において、化学式1~化学式2で表される有機化合物は、正孔輸送層144のドーパントとして使用され得る。この際、正孔輸送層144のホストは、特に制限されるものではないが、正孔移動度に優れたトリアミンモイエティを有する有機材料が使用できる。一例として、正孔輸送層144のホストは、下記化学式3~化学式5で表されるいずれか一つの有機材料を含むことができる。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
(化学式3~化学式5で、R11~R14は、それぞれ独立して、非置換もしくは置換されたC1~C20直鎖または側鎖のアルキル基、非置換もしくは置換されたC1~C20アルコキシ基、非置換もしくは置換されたC5~C30アリール基または非置換もしくは置換されたC4~C30ヘテロアリール基である;aとbは、それぞれ1~4の整数である;nは、1以上の整数である。)
【0054】
正孔輸送層144がホストとドーパントからなる場合、化学式1~化学式2で表される有機化合物は、ホスト100重量部に対して1~200重量部、好ましくは10~200重量部の割合で添加され得るが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0055】
例示的な実施形態において、化学式3~化学式5でR11~R14は、それぞれ独立して、非置換もしくは置換されたC1~C20直鎖または側鎖のアルキル基である。一例として、化学式3~化学式5で表される有機化合物は、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](Poly[N,N’-bis(4-butylphenyl)-N,N’-bis(phenyl)-benzidine];poly-TPD、p-TPD)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-コ-(4,4’-(N-(4-sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))]((poly[(9,9-dioctylflorenyl-2,7-diyl)-co-(4,4’-(N-(4-sec-butylphenyl)diphenylamine))];TFB)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-コ-(4,4’-(N-(p-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))]((poly[(9,9-dioctylflorenyl-2,7-diyl)-co-(4,4’-(N-(p-butylphenyl)diphenylamine))]),ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](poly[bis(4-phenyl)(2,4,6-trimethylphenyl)amine];PTAA)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン(N,N’-Bis(3-methylphenyl)-N,N’-bis(phenyl)benzidine;TPD)、N,N’-ビス(4-メチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン(N,N’-Bis(4-methylphenyl)-N,N’-bis(phenyl)benzidine)、N1,N4-ジフェニル-N1,N4-ジ-m-トリルベンゼン-1,4-ジアミン(N1,N4-diphenyl-N1,N4-di-m-tolylbenzene-1,4-diamine;TTP)、N,N,N’,N’-テトラ(3-メチルフェニル)-3,3’-ジメチルベンジジン(N,N,N’,N’-tetra(3-methylphenyl)3,3’-dimethylbenzidine;HMTPD),ジ-[4-(N,N’-ジ-p-トリル-アミノ)-フェニル]シクロヘキサン(di-[4-(N,N’-di-p-tolyl-amino)-phenyl]cyclohexane;TAPC)、N4,N4’-ビス(4-(6-((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ヘキシル)フェニル)-N4,N4’-ジフェニルビフェニル-4,4’-ジアミン(N4,N4’-Bis(4-(6-((3-ethyloxetan-3-yl)methoxy)hexyl)phenyl)-N4,N4’-diphenylbiphenyl-4,4’-diamine;OTPD)、4,4’,4”-トリス(N,N-フェニル-3-メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4’’-tris(N,N-phenyl-3-methylphenylamino)triphenylamine)等を含むが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0056】
この際、正孔輸送層144のホストとしてポリマーを使用し、化学式1~化学式2で表される有機化合物をドーパントとして併用することが好ましい。この場合、正孔輸送層144の正孔移動度特性が向上し、正孔輸送層144のHOMOエネルギー準位を低くして(deep HOMOエネルギー準位)、正孔輸送層144と発光物質層150の間のHOMOエネルギー障壁を低くしたり、除去することができる。
【0057】
なお、発光物質層150は、無機発光粒子または有機発光材料からなることができる。発光物質層150が無機発光粒子からなる場合、無機発光粒子は、量子ドット(quantum dot、QD)または量子ロッド(quantum rod、QR)のようなナノ無機発光粒子からなることができる。
【0058】
量子ドットまたは量子ロッドは、不安定な状態の電子が伝導帯(conduction band)から価電子帯(valence band)に下降しつつ発光する無機粒子である。これらのナノ無機発光粒子は、吸光係数(extinction coefficient)が非常に大きく、無機粒子のうちでは量子効率(quantum yield)にも優れているので、強い蛍光を発生させる。また、ナノ無機発光粒子のサイズによって発光波長が変更されるので、ナノ無機発光粒子のサイズを調節すると、可視光線全領域帯の光を得ることができるので、多様なカラーを具現することができる。すなわち、量子ドットまたは量子ロッドのようなナノ無機発光粒子を発光物質層150の発光材料として使用すると、個別画素の色純度を高めることができると共に、高い純度の赤色(R)、緑色(G)、青色(B)発光で構成された白色光を具現することができる。
【0059】
一つの例示的な実施形態において、量子ドットまたは量子ロッドは、単一構造を有してもよい。他の例示的な実施形態において、量子ドットまたは量子ロッドは、コア/シェルの異種構造を有することができる。この際、シェルは、一つのシェルからなってもよく、多数のシェルからなってもよい。
【0060】
コアおよび/またはシェルを構成する反応前駆体の反応性と注入速度、リガンドの種類および反応温度などによってこれらのナノ無機発光粒子の成長程度、結晶構造などを調節することができ、これにより、エネルギーバンドギャップの調節による多様な波長帯の光放出を誘導することができる。
【0061】
一例として、量子ドットまたは量子ロッドは、中心に光を放出するコア成分と、コアの表面にコアを保護するためにシェルが囲んでいる異種構造(heterologous structure)を有することができ、シェルの表面に量子ドットまたは量子ロッドを溶媒に分散させるためのリガンド成分が取り囲むことができる。例えば、量子ドットまたは量子ロッドは、コアを構成する成分のエネルギーバンドギャップ(energy bandgap)がシェルのエネルギーバンドギャップにより取り囲まれた構造であって、電子と正孔がコアに向かって移動して、コア内で電子と正孔の再結合が行われて、エネルギーを光として発散する発光体であるタイプ-Iコア/シェル構造を有することができる。
【0062】
量子ドットまたは量子ロッドがタイプ-Iコア/シェル構造を有する場合、コアは、実質的に発光が起こる部分であり、コアのサイズによって量子ドットまたは量子ロッドの発光波長が決定される。量子閉じ込め効果(quantum-confine effect)を受けるために、コアは、それぞれの素材によってエキシトンボーア半径(exciton Bohr radius)より小さいサイズを有しなければならないし、当該サイズで光学的バンドギャップ(optical band gap)を有しなければならない。
【0063】
なお、量子ドットまたは量子ロッドを構成するシェルは、コアの量子閉じ込め効果を促進し、量子ドットまたは量子ロッドの安定性を決定する。単一構造のコロイド量子ドットまたは量子ロッドの表面にあらわれた原子は、内部原子とは異なって、化学結合に参加しない電子状態(lone pair electron)を有している。これら表面原子のエネルギー準位は、量子ドットまたは量子ロッドの伝導帯(conduction band edge)と価電子帯(valence band edge)との間に位置して電荷をトラップすることができ、表面欠陥が形成される。表面欠陥に起因するエキシトンの非発光結合過程(non-radiative recombination process)に起因して量子ドットまたは量子ロッドの発光効率が減少することができ、トラップされた電荷が外部酸素および化合物と反応して、量子ドットまたは量子ロッドの化学的組成の変形を引き起こしたり、量子ドットまたは量子ロッドの電気的/光学的特性が永久的に喪失されることがある。
【0064】
したがって、一つの好ましい実施形態において、量子ドットまたは量子ロッドは、コア/シェルの異種構造を有することができる。コアの表面にシェルが効率的に形成され得るためには、シェルを構成する材料の格子定数(lattice constant)は、コアを構成する材料の格子定数と類似していなければならない。コアの表面をシェルで取り囲むことにより、コアの酸化を防止して量子ドットまたは量子ロッドの化学的安定性を向上させ、コアの表面における表面トラップに起因するエキシトンの損失を最小化し、分子振動によるエネルギー損失を防止して、量子効率を向上させることができる。
【0065】
量子ドットまたは量子ロッドは、量子閉じ込め効果を有する半導体ナノ結晶または金属酸化物粒子であってもよい。例えば、量子ドットまたは量子ロッドは、II-VI族、III-V族、IV-VI族またはI-III-VI族のナノ半導体化合物を含むことができる。より具体的に、量子ドットまたは量子ロッドを構成するコアおよび/またはシェルは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgTeおよび/またはこれらの組合せのようなII族~VI族化合物半導体ナノ結晶;GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSbおよび/またはこれらの組合せのようなIII族~V族化合物半導体ナノ結晶;PbS、PbSe、PbTeおよび/またはこれらの組合せのようなIV族~VI族化合物半導体ナノ結晶;AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuGaS2、CuGaSe2および/またはこれらの組合せのようなI-III-VI族化合物半導体ナノ結晶;ZnO、TiO2および/またはこれらの組合せのような金属酸化物ナノ粒子;CdSe/ZnSe、CdSe/ZnS、CdS/ZnSe、CdS/ZnS、ZnSe/ZnS、InP/ZnS、ZnO/MgOおよび/またはこれらの任意の組合せのようなコア-シェル構造のナノ結晶であってもよい。半導体ナノ粒子は、Eu、Er、Tb、Tm、Dyのような希土類元素またはこれらの任意の組合せでドープされるか、ドープされないか、またはMn、Cu、Ag、Alのような遷移金属元素またはこれらの任意の組合せでドープされてもよい。
【0066】
例えば、量子ドットまたは量子ロッドを構成するコアは、ZnSe、ZnTe、CdSe、CdTe、InP、ZnCdS、CuxIn1-xS、CuxIn1-xSe、AgxIn1-xSおよびこれらの組合せで構成される群から選択され得る。また、量子ドットまたは量子ロッドを構成するシェルは、ZnS、GaP、CdS、ZnSe、CdS/ZnS、ZnSe/ZnS、ZnS/ZnSe/CdSe、GaP/ZnS、CdS/CdZnS/ZnS、ZnS/CdSZnS、CdxZn1-xSおよびこれらの組合せで構成される群から選択され得る。
【0067】
なお、量子ドットは、均質合金(homogeneous alloy)量子ドットまたは傾斜合金(gradient alloy)量子ドットのような合金量子ドット(alloy QD;一例として、CdSxSe1-x、CdSexTe1-x、ZnxCd1-xSe)であってもよい。
【0068】
発光物質層150が量子ドットまたは量子ロッドのような無機発光粒子からなる場合、溶媒に量子ドットまたは量子ロッドを含む溶液を利用した工程を通じて第1電荷移動層140、例えば正孔輸送層144上に塗布された後に、溶媒を揮発させることにより、発光物質層150を形成する。
【0069】
一つの例示的な実施形態において、発光物質層150は、溶媒に発光ナノ粒子である量子ドットまたは量子ロッドが含まれた分散液をコートする溶液工程を通じて第1電荷移動層140上にコートし、溶媒を揮発させて形成することができる。発光物質層150を形成する方法として、スピンコート、ドロップコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、フローコートはもちろん、キャスト工程、スクリーン印刷またはインクジェットプリント方式のような溶液工程を単独または組み合わせて積層され得る。
【0070】
一つの例示的な実施形態において、発光物質層150は、440nm、530nm、620nmのPL発光特性を有するナノ無機発光粒子である量子ドットまたは量子ロッドを含んで白色発光ダイオードを製作することができる。選択的に、発光物質層150は、赤色、緑色、青色のうちいずれか一つの色を有する発光ナノ粒子である量子ドットまたは量子ロッドを含み、それらのうちいずれか一つの色で個別的に発光するように具現され得る。
【0071】
他の選択的な実施形態において、発光物質層150は、有機発光材料からなることができる。発光物質層150が有機発光材料からなる場合、通常的に使用される有機発光材料なら特に限定されない。例えば、発光物質層150は、赤色、緑色および/または青色を発光する有機発光材料からなることができ、蛍光材料または燐光材料を含むことができる。また、発光物質層150を構成する有機発光材料は、ホストおよびドーパントを含むことができる。有機発光材料がホスト-ドーパントシステムからなる場合、ドーパントは、ホスト重量に対して1~50重量%、好ましくは1~30重量%の割合でドープされ得るが、本発明はこれに限定されない。
【0072】
発光物質層150に使用される有機ホストは、通常的に使用する物質なら、特に限定されない。一例として、発光物質層150に使用される有機ホストは、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Tris(8-hydroxyquinoline)aluminum;Alq3)、TCTA、PVK、4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル(4,4’-bis(N-carbazolyl)-1,1’-biphenyl;CBP)、4,4’-ビス(9-カルバゾリル)-2,2’-ジメチルビフェニル(4,4’-Bis(9-carbazolyl)-2,2’-dimethylbiphenyl;CDBP)、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン(9,10-di(naphthalene-2-yl)anthracene;ADN)、3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン(3-tert-butyl-9,10-di(naphtha-2-yl)anthracene;TBADN)、2-メチル-9,10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン(2-methyl-9,10-bis(naphthalene-2-yl)anthracene;MADN),1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(1,3,5-tris(N-phenylbenzimidazole-2-yl)benzene、TPBi)、ジスチリルアリレン(distyrylarylene;DSA)、mCP、1,3,5-トリス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(1,3,5-tris(carbazol-9-yl)benzene;TCP)等からなることができる。
【0073】
発光物質層150が赤色を発光する時、発光物質層150に含まれるドーパントは,5,6,11,12-テトラフェニルナフタレン(5,6,11,12-tetraphenylnaphthalene;Rubrene)、ビス(2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル-ピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(Bis(2-benzo[b]-thiophene-2-yl-pyridine)(acetylacetonate)iridium(III);Ir(btp)2(acac))、ビス[1-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-イソキノリン](アセチルアセトネート)iridium(III)(Bis[1-(9,9-diemthyl-9H-fluorn-2-yl)-isoquinoline](acetylacetonate)iridium(III);Ir(fliq)2(acac))、ビス[2-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-キノリン](acetylacetonate)iridium(III)(Bis[2-(9,9-diemthyl-9H-fluorn-2-yl)-quinoline](acetylacetonate)iridium(III);Ir(flq)2(acac))、ビス(2-フェニルキノリン)(2-(3-メチルフェニル)ピリジネート)イリジウム(III)(Bis-(2-phenylquinoline)(2-(3-methylphenyl)pyridinate)iridium(III);Ir(phq)2typ)、イリジウム(III)ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)キノリン)ピコリネート(Iridium(III)bis(2-(2,4-difluorophenyl)quinoline)picolinate;FPQIrpic)等のような有機化合物または有機金属錯体を含むことができるが、本発明はこれに限定されない。
【0074】
発光物質層150が緑色を発光する時、発光物質層150に含まれるドーパントは、N,N’-ジメチル-キナクリドン(N,N’-dimethyl-quinacridone;DMQA)、クマリン6,9,10-ビス[N,N-ジ-(p-トリル)-アミノ]アントラセン(9,10-bis[N,N-di-(p-tolyl)amino]anthracene;TTPA)、9,10-ビス[フェニル(m-トリル)アミノ]アントラセン(9,10-bis[phenyl(m-tolyl)-amino]anthracene;TPA)、ビス(2-フェニルピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(bis(2-phenylpyridine)(acetylacetonate)iridium(III);Ir(ppy)2(acac))、fac-トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(fac-tris(phenylpyridine)iridium(III);fac-Ir(ppy)3)、トリス[2-(p-トールリン)ピリジン]イリジウム(III)(tris[2-(p-tolyl)pyridine]iridium(III);Ir(mppy)3)等のような有機化合物または有機金属錯体を含むことができるが、本発明はこれに限定されない。
【0075】
発光物質層150が青色を発光する時、発光物質層150に含まれるドーパントは、4,4’-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ビフェニル(4,4’-bis[4-(di-p-tolylamino)styryl]biphenyl;DPAVBi)、ペリレン(perylene)、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(2,5,8,11-tetra-tert-butylperylene;TBPe)、ビス(3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)イリジウム(III)(bis(3,5-difluoro-2-(2-pyridyl)phenyl-(2-carboxypyridyl)iridium(III);FirPic)、mer-トリス(1-フェニル-3-メチルイミダゾリン-2-イリデン-C,C2’)イリジウム(III)(mer-tris(1-phenyl-3-methylimidazolin-2-ylidene-C,C2’)iridium(III);mer-Ir(pmi)3)、トリス(2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジン)イリジウム(III)(tris(2-(4,6-difluorophenyl)pyridine)iridium(III);Ir(Fppy)3)等のような有機化合物または有機金属錯体を含むことができるが、本発明はこれに限定されない。
【0076】
発光物質層150が有機発光材料からなる場合、発光物質層150は、真空気相蒸着法、スパッタリング法を含む真空蒸着工程や、スピンコート、ドロップコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、フローコートはもちろん、キャスト工程、スクリーン印刷またはインクジェットプリント方式のような溶液工程を単独または組み合わせて使用することができる。
【0077】
なお、第2電荷移動層160は、発光物質層150と第2電極120との間に位置する。本実施形態において、第2電荷移動層160は、発光物質層150に電子を供給する電子移動層であってもよい。一つの例示的な実施形態において、第2電荷移動層160は、第2電極120と発光物質層150との間で第2電極120に隣接して位置する電子注入層(electron injection layer;EIL)162と、第2電極120と発光物質層150との間で発光物質層150に隣接して位置する電子輸送層(electron transport layer;ETL)164とを含む。
【0078】
電子注入層162は、第2電極120から発光物質層150への電子注入を容易にする。例えば電子注入層162は、Al、Cd、Cs、Cu、Ga、Ge、In、Liのような金属にフッ素がドープされるか、結合された素材からなるか、または、Al、Mg、In、Li、Ga、Cd、Cs、Cuなどでドープされるか、ドープされない二酸化チタニウム(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO3)、酸化タンタル(Ta2O3)のような金属酸化物からなることができる。
【0079】
電子輸送層164は、発光物質層150に電子を伝達する。電子輸送層164は、無機物および/または有機物からなることができる。電子輸送層164が無機物からなる場合、電子輸送層164は、Al、Mg、In、Li、Ga、Cd、Cs、Cuなどでドープされるか、ドープされない二酸化チタニウム(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化亜鉛マグネシウム(ZnMgO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO3)、酸化タンタル(Ta2O3)、酸化ハフニウム(HfO3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウムシリコン(ZrSiO4)、酸化バリウムチタン(BaTiO3)、酸化バリウムジルコニウム(BaZrO3)のような金属/非金属酸化物;Al、Mg、In、Li、Ga、Cd、Cs、Cuなどでドープされるか、ドープされないCdS、ZnSe、ZnSのような半導体粒子;Si3N4のような窒化物およびこれらの組合せで構成される群から選択される無機物からなることができる。
【0080】
電子輸送層164が有機物からなる場合、電子輸送層164は、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、トリアゾール系化合物、イソチアゾール系化合物、オキサジアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、フェナントロリン(phenanthroline)系化合物、ペリレン(perylene)系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物やアルミニウム錯体のような有機物が使用できる。具体的に、電子輸送層164を構成できる有機物質は、3-(ビフェニル-4-イル)-5-(4-テトラブチルフェニル)-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾール(3-(biphenyl-4-yl)-5-(4-tertbutylphenyl)-4-phenyl-4H-1,2,4-triazole、TAZ)、バソクプロイン(bathocuproine、2,9-dimethyl-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline;BCP)、2,2’,2”-(1,3,5-ベンゼントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)(2,2’,2”-(1,3,5-Benzenetriyl)-tris(1-phenyl-1-H-benzimidazole);TPBi)、2-[4-(9,10-ジ-2-ナフタレニル-2-アントラセニル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール(2-[4-(9,10-Di-2-naphthalenyl-2-anthracenyl)phenyl]-1-phenyl-1H-benzimidazole)、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Tris(8-hydroxyquinoline)aluminum;Alq3)、ビス(2-メチル-8-キノリナト)-4-フェニルフェノレートアルミニウム(III)(bis(2-methyl-8-quninolinato)-4-phenylphenolatealuminum(III);Balq)、ビス(2-メチル-キノリナト)(トリフェニルシロキシ)、8-ヒドロキシ-キノリナトリチウム(8-hydroxy-quinolinato lithium、Liq)、アルミニウム(III)(bis(2-methyl-quinolinato)(tripnehylsiloxy)aluminum(III);Salq)およびこれらの組合せで構成される素材から選択され得るが、本発明はこれに限定されない。
【0081】
第1電荷移動層140と同様に、
図2で第2電荷移動層160を電子注入層162と電子輸送層164の2層で示すが、第2電荷移動層160は、電子輸送層164の1層のみからなってもよい。また、前述した無機物からなる電子輸送材料にセシウムカーボネートをブレンドした電子輸送層164の1層で第2電荷移動層160を形成してもよい。
【0082】
電子注入層162および/または電子輸送層164を含む第2電荷移動層160は、スピンコート、ドロップコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、フローコートはもちろん、キャスト工程、スクリーン印刷またはインクジェットプリント方式のような溶液工程を単独または組み合わせて使用することができる。一例として、電子注入層162および電子輸送層164は、10~200nm、好ましくは10~100nmの厚さで積層され得る。
【0083】
例えば、第1電荷移動層140を構成する正孔輸送層144が有機物からなり、第2電荷移動層160が無機物からなる混成電荷移動層(charge transport layer;CTL)を導入する場合、発光ダイオード100の発光特性が向上することができる。
【0084】
なお、正孔が発光物質層150を通過して第2電極120に移動したり、電子が発光物質層150を通過して第1電極110に行く場合、素子の寿命と効率に減少をもたらすことができる。これを防止するために、本発明の例示的な第1実施形態による発光ダイオード100は、発光物質層150に隣接して少なくとも1個のエキシトン遮断層が位置することができる。
【0085】
例えば、本発明の第1実施形態による発光ダイオード100は、正孔輸送層144と発光物質層150との間に電子の移動を制御、防止できる電子遮断層(electron blocking layer、EBL)が位置することができる。
【0086】
一例として、電子遮断層(EBL)は、TCTA、トリス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]アミン(tris[4-(diethylamino)phenyl]amine)、N-(ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-(4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン、トリ-p-トリルアミン(tri-p-tolylamine)、1,1-ビス(4-(N,N-ジ(p-トリル)アミノ)フェニル)シクロヘキサン(1,1-bis(4-(N,N’-di(p-tolyl)amino)phenyl)cyclohexane;TAPC)、m-MTDATA、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(1,3-bis(N-carbazolyl)benzene;mCP)、3,3’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル(3,3’-bis(N-carbazolyl)-1,1’-biphenyl;mCBP)、Poly-TPD、フタロシアニン銅(copper phthalocyanine;CuPc)、DNTPDおよび/または1,3,5-トリス[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン(1,3,5-tris[4-(diphenylamino)phenyl]benzene;TDAPB)等からなることができる。
【0087】
また、発光物質層150と電子輸送層164との間に第2エキシトン遮断層として正孔遮断層(hole blocking layer、HBL)が位置して、発光物質層150と電子輸送層164との間に正孔の移動を防止することができる。一つの例示的な実施形態において、正孔遮断層の素材として電子輸送層164に使用され得るオキサジアゾール系、トリアゾール系、フェナントロリン系、ベンゾオキサゾール系、ベンゾチアゾール系、ベンズイミダゾール系、トリアジン系などの有機誘導体が使用され得る。
【0088】
例えば正孔遮断層は、発光物質層150に使用された素材と比較して、HOMO(highest occupied molecular orbital;最高被占分子軌道)エネルギー準位が低い2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(2,9-dimethyl-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline;BCP)、BAlq、Alq3、PBD、スピロ-PBDおよび/またはLiqなどからなることができる。
【0089】
前述したように、本発明の第1実施形態によれば、第1電極110と発光物質層150との間に位置する正孔輸送層144に化学式1~化学式2で表される有機化合物を含んでいる。化学式1~化学式2の化合物は、ヘテロ芳香環のコアに連結される多数の環外二重結合それぞれに異なる種類の電子求引官能基が結合されて、HOMOエネルギー準位が低いばかりでなく、正孔に対する移動度特性に優れている。正孔輸送層144のHOMOエネルギー準位を低くして、正孔輸送層144と発光物質層150の間のHOMOエネルギー障壁を減少させる。発光物質層150に正孔と電子がバランスよく注入されて、発光ダイオード100の発光効率が向上し、低電圧で駆動することができることとなり、消費電力を低減することができる。
【0090】
なお、
図2および
図3では、仕事関数値が相対的に低い第1電極と発光物質層との間に正孔移動層が位置し、仕事関数が相対的に高い第2電極と発光物質層との間に電子移動層が位置する正常構造(normal structure)を有する発光ダイオードについて説明した。発光ダイオードは、正常構造でなく、反転構造(inverted structure)を有することができ、これについて説明する。
図4は、本発明の例示的な第2実施形態によって、反転構造を有する発光ダイオードを概略的に示す断面図であり、
図5は、本発明の例示的な第2実施形態による発光ダイオードを構成する電極と発光層を構成する材料のバンドギャップエネルギーを概略的に示すダイヤグラムである。
【0091】
図4に示されるように、本発明の例示的な第2実施形態による発光ダイオード200は、第1電極210と、第1電極210と対向する第2電極220と、第1電極210と第2電極220との間に位置する発光物質層250を含む発光層230とを含む。発光層230は、第1電極210と発光物質層250との間に位置する第1電荷移動層240と、第2電極220と発光物質層250との間に位置する第2電荷移動層260とをさらに含むことができる。
【0092】
本発明の第2実施形態において、第1電極210は、電子注入電極と同じ負極(カソード)であってもよい。一例として、第1電極210は、ITO、IZO、ITZO、ICO、SnO2、In2O3、Cd:ZnO、F:SnO2、In:SnO2、Ga:SnO2およびAZOのようなドープされるか、ドープされない金属酸化物であるか、または、前述した金属酸化物以外にも、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)または炭素ナノチューブを含む素材からなることができる。
【0093】
本発明の第2実施形態において、第2電極220は、正孔注入電極と同じ正極(アノード)であってもよい。一例として第2電極220は、Ca、Ba、Ca/Al、LiF/Ca、LiF/Al、BaF2/Al、CsF/Al、CaCO3/Al、BaF2/Ca/Al、Al、Mg、Au:MgまたはAg:Mgであってもよい。例えば、第1電極210と第2電極220は、30~300nmの厚さで積層され得る。
【0094】
本発明の第2実施形態において、第1電荷移動層240は、発光物質層250に電子を供給する電子移動層であってもよい。一つの例示的な実施形態において、第1電荷移動層240は、第1電極210と発光物質層250との間で第1電極210に隣接して位置する電子注入層242と、第1電極210と発光物質層250の間で発光物質層250に隣接して位置する電子輸送層244とを含む。
【0095】
電子注入層242は、Al、Cd、Cs、Cu、Ga、Ge、In、Liのような金属にフッ素がドープされるか、結合された素材からなるか、または、Al、Mg、In、Li、Ga、Cd、Cs、Cuなどでドープされるか、ドープされないTiO2、ZnO、ZrO、SnO2、WO3、Ta2O3のような金属酸化物からなることができる。
【0096】
電子輸送層244は、無機物および/または有機物からなることができる。電子輸送層244が無機物からなる場合、電子輸送層244は、Al、Mg、In、Li、Ga、Cd、Cs、Cuなどでドープされるか、ドープされないTiO2、ZnO、ZnMgO、ZrO、SnO2、WO3、Ta2O3、HfO3、Al2O3、ZrSiO4、BaTiO3、BaZrO3のような金属/非金属酸化物;Al、Mg、In、Li、Ga、Cd、Cs、Cuなどでドープされるか、ドープされないCdS、ZnSe、ZnSのような半導体粒子;Si3N4のような窒化物およびこれらの組合せで構成される群から選択される無機物からなることができる。
【0097】
電子輸送層244が有機物からなる場合、電子輸送層244は、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、トリアゾール系化合物、イソチアゾール系化合物、オキシジアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、ペリレン系化合物やアルミニウム錯体が使用できる。具体的に、電子輸送層244を構成できる有機物質は、TAZ、BCP、TPBi、2-[4-(9,10-ジ-2-ナフタレニル-2-アントラセニル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール、Alq3、Balq、LIQ、Salqおよびこれらの組合せで構成される群から選択される有機物からなることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0098】
なお、第1電荷移動層240は、電子輸送層244の1層のみからなってもよい。また、前述した無機粒子からなる電子輸送材料にセシウムカーボネートをブレンドした電子輸送層244の1層で第1電荷移動層240を形成してもよい。一例として、電子注入層242および電子輸送層244は、10~200nm、好ましくは10~100nmの厚さで積層され得る。
【0099】
発光物質層250は、無機発光粒子または有機発光材料からなることができる。無機発光粒子は、量子ドットまたは量子ロッドのようなナノ無機発光粒子であってもよい。量子ドットまたは量子ロッドは、単一構造を有するか、またはコア/シェルの異種構造を有することができる。
【0100】
量子ドットまたは量子ロッドは、量子閉じ込め効果を有する半導体ナノ結晶または金属酸化物粒子であってもよい。例えば、量子ドットまたは量子ロッドは、II-VI族、III-V族、IV-VI族またはI-III-VI族のナノ半導体化合物を含むことができる。より具体的に、量子ドットまたは量子ロッドを構成するコアおよび/またはシェルは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgTeおよび/またはこれらの組合せのようなII族~VI族化合物半導体ナノ結晶;GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSbおよび/またはこれらの組合せのようなIII族~V族化合物半導体ナノ結晶;PbS、PbSe、PbTeおよび/またはこれらの組合せのようなIV-VI族化合物半導体ナノ結晶;AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuGaS2、CuGaSe2および/またはこれらの組合せのようなI-III-VI族化合物半導体ナノ結晶;ZnO、TiO2および/またはこれらの組合せのような金属酸化物ナノ粒子;CdSe/ZnSe、CdSe/ZnS、CdS/ZnSe、CdS/ZnS、ZnSe/ZnS、InP/ZnS、ZnO/MgOおよび/またはこれらの任意の組合せのようなコア-シェル構造のナノ結晶であってもよい。半導体ナノ粒子は、Eu、Er、Tb、Tm、Dyのような希土類元素またはこれらの任意の組合せでドープされるか、ドープされないか、またはMn、Cu、Ag、Alのような遷移金属元素またはこれらの任意の組合せでドープされ得る。
【0101】
発光物質層250が量子ドットまたは量子ロッドのような無機発光粒子からなる場合、溶媒に量子ドットまたは量子ロッドを含む溶液を利用した工程を通じて第1電荷移動層240、例えば電子輸送層244上に塗布された後に、溶媒を揮発させることにより、発光物質層250を形成する。
【0102】
発光物質層250が有機発光材料からなる場合、発光物質250は、赤色、緑色および/または青色を発光する有機発光材料からなることができ、蛍光材料または燐光材料を含むことができる。また、発光物質層250を構成する有機発光材料は、ホストおよびドーパントを含むことができる。有機発光材料がホスト-ドーパントシステムからなる場合、ドーパントは、ホスト重量に対して1~50重量%、好ましくは1~30重量%の割合でドープされ得るが、本発明はこれに限定されない。
【0103】
発光物質層250が有機発光材料からなる場合、発光物質層250は、真空気相蒸着法、スパッタリング法を含む真空蒸着工程や、スピンコート、ドロップコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、フローコートはもちろん、キャスト工程、スクリーン印刷またはインクジェットプリント方式のような溶液工程を単独または組み合わせて使用することができる。
【0104】
なお、本発明の第2実施形態において、第2電荷移動層260は、発光物質層250に正孔を供給する正孔移動層であってもよい。一つの例示的な実施形態において、第2電荷移動層260は、第2電極220と発光物質層250との間で第2電極220に隣接して位置する正孔注入層262と、第2電極220と発光物質層250との間で発光物質層250に隣接して位置する正孔輸送層264とを含む。
【0105】
正孔注入層262は、PEDOT:PSS、F4-TCNQがドープされたTDATA、例えばF4-TCNQがドープされたZnPcのようなp-ドープされたフタロシアニン、F4-TCNQがドープされたα-NPD、HAT-CNおよびこれらの組合せで構成される群から選択される物質からなることができるが、本発明はこれに限定されない。一例として、F4-TCNQのようなドーパントは、ホストに対して1~30重量%の割合でドープされ得る。正孔注入層262は、発光ダイオード200の構造および形態によって省略され得る。
【0106】
正孔輸送層264は、化学式1~化学式2で表される有機化合物を含む。一例として、化学式1~化学式2で表される有機化合物は、正孔輸送層264のドーパントとして使用され得、この場合、正孔輸送層264は、トリフェニルアミンモイエティを含む有機素材、一例として、前述した化学式3~化学式5で表される有機材料をホストとして使用することができる。
【0107】
第2電荷移動層260は、単一層からなってもよい。例えば、正孔注入層262が省略され、第2電荷移動層260は、正孔輸送層264のみからなってもよい。正孔注入層262と正孔輸送層264の厚さは、10nm~200nm、好ましくは10nm~100nmであってもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0108】
第1実施形態と同様に、本発明の例示的な第2実施形態による発光ダイオード200は、発光物質層250に隣接して少なくとも1個のエキシトン遮断層が位置することができる。例えば、発光ダイオード200は、発光物質層250と正孔輸送層264との間に位置して、電子の移動を制御、防止できる電子遮断層および/または電子輸送層244と発光物質層250との間に位置して、正孔の移動を制御、防止できる正孔遮断層をさらに含むことができる。
【0109】
本発明の第2実施形態による発光ダイオード200において第2電極220と発光物質層250との間に位置する第2電荷移動層260を構成する正孔輸送層264は、化学式1~化学式2で表される有機化合物を含んでいる。これにより、
図5に概略的に示されるように、正孔輸送層(HTL)のHOMOエネルギー準位と発光物質層(EML)のHOMOエネルギー準位の差(ΔG’
H)が大きく減少して、正孔輸送層(HTL)と発光物質層(EML)との間のエネルギー障壁を除去することができる。
【0110】
すなわち、化学式1~化学式2で表される有機化合物を正孔輸送層(HTL)に適用することにより、正孔輸送層(HTL)のHOMOエネルギー準位と発光物質層(EML)のHOMOエネルギー準位の差(ΔG’H)は、電子輸送層(ETL)のLUMOエネルギー準位と発光物質層(EML)のLUMOエネルギー準位の差(ΔGL)と同一になるか、または大きな差を有しない。正孔と電子が発光物質層(EML)にバランスよく注入されてエキシトンを形成するので、エキシトンを形成せずに消滅される電子が減少するか、またはなくなる。また、発光物質層(EML)と隣接する電荷移動層(HTL、ETL)の界面でなく、発光物質層(EML)に注入された発光素材で発光が効率的に起こる。これにより、発光ダイオード200の発光効率を最大化することができ、低電圧で駆動が可能になるので、消費電力を低減することができる。
【0111】
したがって、化学式1~化学式2で表される有機化合物が正孔移動層に適用された発光ダイオードは照明装置や表示装置のような発光装置に適用され得る。一例として、本発明による有機化合物が正孔移動層に適用された発光ダイオードを有する発光装置について説明する。
図6は、本発明の例示的な実施形態による発光表示装置を概略的に示す断面図である。
【0112】
図6に示されるように、発光表示装置300は、基板310と、基板310上に位置する駆動素子としての駆動薄膜トランジスタTrと、駆動薄膜トランジスタTrに連結される発光ダイオード400とを含む。
【0113】
基板310上には、酸化物半導体物質または多結晶シリコンからなる半導体層322が形成される。半導体層322が酸化物半導体物質からなる場合、半導体層322の下部には遮光パターン(図示しない)が形成され得、遮光パターンは、半導体層322に光が入射することを防止して、半導体層322が光により劣化することを防止する。これとは異なって、半導体層322は、多結晶シリコンからなってもよく、この場合、半導体層322の両端に不純物がドープされていてもよい。
【0114】
半導体層322の上部には、絶縁物質からなるゲート絶縁膜324が形成される。ゲート絶縁膜324は、シリコン酸化物(SiO2)またはシリコン窒化物(SiNx)のような無機絶縁物質からなることができる。ゲート絶縁膜324の上部には、金属のような導電性物質からなるゲート電極330が半導体層322の中央に対応して形成される。
【0115】
ゲート電極330の上部には、絶縁物質からなる層間絶縁膜332が形成される。層間絶縁膜332は、シリコン酸化物(SiO2)やシリコン窒化物(SiNx)のような無機絶縁物質で形成されるか、またはベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)やフォトアクリル(photo-acryl)のような有機絶縁物質で形成され得る。
【0116】
層間絶縁膜332は、半導体層322の両側を露出する第1および第2半導体層コンタクトホール334、336を有する。第1および第2半導体層コンタクトホール334、336は、ゲート電極330の両側でゲート電極330と離隔して位置する。層間絶縁膜332上には、金属のような導電性物質からなるソース電極340とドレーン電極342が形成される。
【0117】
ソース電極340とドレーン電極342は、ゲート電極330を中心に離隔して位置し、それぞれ前記第1および第2半導体層コンタクトホール334、336を介して前記半導体層322の両側と接触する。半導体層322、ゲート電極330、ソース電極340、ドレーン電極342は、駆動素子としての駆動薄膜トランジスタTrを構成する。
【0118】
図6で、駆動薄膜トランジスタTrは、半導体層322の上部にゲート電極330、ソース電極340およびドレーン電極342が位置するコプラナ(coplanar)構造を有する。これとは異なって、駆動薄膜トランジスタTrは、半導体層の下部にゲート電極が位置し、半導体層の上部にソース電極とドレーン電極が位置する逆スタッガード(inverted staggered)構造を有することができる。この場合、半導体層は、非晶質シリコンからなることができる。
【0119】
図示してはいないが、ゲート配線とデータ配線が互いに交差して画素領域を定義し、ゲート配線とデータ配線に連結されるスイッチング素子がさらに形成される。スイッチング素子は駆動素子である駆動薄膜トランジスタTrに連結される。また、パワー配線がゲート配線またはデータ配線と平行に離隔して形成され、1フレームの間に駆動素子としての駆動薄膜トランジスタTrのゲート電極の電圧を一定に維持するようにするためのストレージキャパシタがさらに構成され得る。
【0120】
なお、駆動薄膜トランジスタTrのドレーン電極342を露出するドレーンコンタクトホール352を有する保護層350が、駆動薄膜トランジスタTrを覆って形成される。例えば、保護層350は、シリコン酸化物(SiO2)やシリコン窒化物(SiNx)のような無機絶縁物質で形成されるか、またはベンゾシクロブテンやフォトアクリルのような有機絶縁物質で形成され得る。
【0121】
保護層350上には、ドレーンコンタクトホール352を介して駆動薄膜トランジスタTrのドレーン電極342に連結される第1電極410が各画素領域別に分離して形成される。第1電極410は、正極(アノード)または負極(カソード)であってもよく、仕事関数値が比較的大きい導電性物質からなることができる。例えば、第1電極410は、ITO、IZO、ITZO、ICO、SnO2、In2O3、Cd:ZnO、F:SnO2、In:SnO2、Ga:SnO2およびAZOのようなドープされるか、ドープされない金属酸化物であるか、または、前述した金属酸化物以外にも、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)または炭素ナノチューブを含む金属素材からなることができる。
【0122】
なお、本発明の発光表示装置300が上部発光方式(top-emission type)の場合、第1電極410の下部には反射電極または反射層がさらに形成され得る。例えば、反射電極または反射層は、アルミニウム-パラジウム-銅(aluminum-paladium-copper:APC)合金からなることができる。
【0123】
また、保護層350上には第1電極410の端を覆うバンク層368が形成される。バンク層368は、画素領域に対応して第1電極410の中央を露出する。
【0124】
第1電極410上には、発光層430が形成される。発光層430は、発光物質層のみからなってもよいが、発光効率を高めるために多数の電荷移動層を有することができる。一例として、
図6で発光層430は、第1電極410と第2電極420との間に順次に積層される第1電荷移動層440、発光物質層450および第2電荷移動層460からなることを例示する。
【0125】
例えば、第1電荷移動層440は、正孔移動層であってもよく、有機物からなる正孔注入層142(
図2参照)と正孔輸送層144(
図2参照)からなることができる。第1電荷移動層440を構成する正孔輸送層は、化学式1~化学式2で表される有機化合物を含む。この有機化合物は、正孔輸送層のドーパントとして使用され得、この場合、化学式3~化学式5で表されるトリフェニルアミンモイエティを有する有機材料が正孔輸送層のホストとして使用され得る。
【0126】
発光物質層440は、無機発光材料または有機発光材料からなることができる。なお、第2電荷移動層450は、電子移動層であってもよく、電子注入層162(
図2参照)と電子輸送層164(
図2参照)からなることができる。例えば、第2電荷移動層450は、無機物または有機物からなることができる。
【0127】
発光層430が形成された基板310の上部に第2電極420が形成される。第2電極420は、表示領域の前面に位置し、仕事関数値が比較的小さい導電性物質からなることができ、負極または正極であってもよい。例えば、第2電極420は、Ca、Ba、Ca/Al、LiF/Ca、LiF/Al、BaF2/Al、CsF/Al、CaCO3/Al、BaF2/Ca/Al、Al、Mg、Au:MgまたはAg:Mgであってもよい。
【0128】
図6では、例示的に、第1電極410と発光物質層450との間に正孔移動層としての第1電荷移動層440が位置し、第2電極420と発光物質層450との間に電子移動層としての第2電荷移動層460が位置する正常構造の発光ダイオード400を示す。
【0129】
他の実施形態において、第1電極410と発光物質層450との間に電子移動層としての第1電荷移動層が位置し、第2電極420と発光物質層450との間に正孔移動層としての第2電荷移動層が位置する反転構造の発光ダイオードを製作することができる。この場合、化学式1~化学式2で表される有機化合物は、第2電極420と発光物質層450との間に位置する第2電荷移動層460を構成する正孔輸送層に使用され得る。
【0130】
化学式1~化学式2で表される有機化合物を正孔移動層であってもよい第1電荷移動層440または第2電荷移動層450に適用して、正孔移動層と発光物質層450との間のHOMOエネルギー準位の差を減少させることにより、これらの正孔移動層と発光物質層450の間のHOMOエネルギー障壁を除去することができる。化学式1~化学式2で表される有機化合物を正孔移動層であってもよい第1電荷移動層440または第2電荷移動層450に適用して、正孔の移動特性を向上させることができる。これにより、正孔と電子が発光物質層450にバランスよく注入されて、発光ダイオード400および発光表示装置300の発光効率が向上し、低電圧で駆動して消費電力を低減することができる。
【0131】
以下、例示的な実施形態を通じて本発明を説明するが、本発明が下記実施例に記載された技術思想に限定されない。
合成例1:化合物SH01の合成
(1)S1の合成
【化10】
【0132】
化合物S(9.0g、58mmol)を無水エーテル(anhydrous ether、500mL)に溶かし、常温でブチルリチウム(n-BuLi、2.5M溶液、49mL)を滴加し、常温で12時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ、エチルアセテートで有機層を抽出し、無水硫酸マグネシウムで処理して乾燥した。得られた反応物をアセトンで再結晶化して、化合物S-1を8.56g得た(収率62%)。
【0133】
【0134】
化合物S-1(5g、23mmol)、マロノニトリル(3.10g、46mmol)、ピリジン10mL、クロロホルム200mLを入れ、常温で撹拌した後、TiCl4 5mLをゆっくり添加した後、反応混合物を5時間加熱撹拌した。反応混合物を常温まで温度を上げた後、CH2Cl2とH2Oで抽出し、有機層であるCH2Cl2溶媒を無水Na2SO4で処理して乾燥した。得られた反応物をCH2Cl2とアセトニトリルで再結晶化して、化合物S-2を2.74g得た(収率45%)。
【0135】
【0136】
250mLの二つ口フラスコにF(10g、64mmol)と炭酸カリウム(14.4g、128mmol)を入れ、DMF 100mLに溶かす。シアン酢酸エチル(9.7mL、70.4mmol)を入れ、80℃で16時間撹拌した。反応終了後、水と少量の酢酸を入れ、30分間撹拌した後、多量のクロロホルムと水を利用して数回抽出し、塩水で洗った後、溶媒を減圧蒸留し、ジクロロメタンとヘキサンを展開溶媒として使用してカラムして、化合物F-1を14.3g得た(収率90%)。
【0137】
【0138】
250mLの二つ口フラスコに化合物F-1(10.0g、40mmol)を酢酸10mLと水10mLの混合溶媒で溶かす。硫酸1mLを入れた後、14時間加熱還流した。反応終了後、温度を常温に下げた後、氷水を添加し、水とエチルアセテートを利用して抽出し、エチルアセテート層をさらにNaHCO3水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄した後、溶媒を減圧蒸留し、得られた生成物をジクロロメタンとヘキサンでカラムして、化合物F-2を6.05g得た(収率85%)。
【0139】
【0140】
化合物S-2(2g、7.5mmol)をF-2(2.66g、15mmol)、ピリジン10mL、クロロホルム200mLを入れ、常温で撹拌した後、TiCl4 5mLをゆっくり添加した後、反応混合物を5時間加熱撹拌した。反応混合物を常温まで温度を上げた後、CH2Cl2とH2Oで抽出し、有機層であるCH2Cl2溶媒を無水Na2SO4で処理して乾燥した。得られた反応物をCH2Cl2とアセトニトリルで再結晶化して、化合物SH01を4.34g得た(収率68%)。
【0141】
【0142】
化合物S-2(2g、7.45mmol)、F-3(2.39g、15mmol)、ピリジン10mL、クロロホルム200mLを入れ、常温で撹拌した後、TiCl4 5mLをゆっくり添加した後、反応混合物を5時間加熱撹拌した。反応混合物を常温まで温度を上げた後、CH2Cl2とH2Oで抽出し、有機層であるCH2Cl2溶媒を無水Na2SO4で処理して乾燥した。得られた反応物をCH2Cl2とアセトニトリルで再結晶化して、化合物SH02を2.17g得た(収率71%)。
【0143】
【0144】
化合物S-2(2g、7.45mmol)、F-4(2.66g、15mmol)、ピリジン10mL、クロロホルム200mLを入れ、常温で撹拌した後、TiCl4 5mLをゆっくり添加した後、反応混合物を5時間加熱撹拌した。反応混合物を常温まで温度を上げた後、CH2Cl2とH2Oで抽出し、有機層であるCH2Cl2溶媒を無水Na2SO4で処理して乾燥した。得られた反応物をCH2Cl2とアセトニトリルで再結晶化して、化合物SH03を2.52g得た(収率71%)。
【0145】
合成例4:化合物SH04の合成
(1)S-4の合成
【化17】
【0146】
S-3(3.0g、8mmol)、ペンタフルオロフェニルボロン酸(3.56g、17.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.22g、0.41mmol)、炭酸カリウム(5.0g、36.18mmol)を1、4-ジオキサン(90mL)と水(30mL)混合溶液に入れ、80℃で4時間撹拌した。反応終了後、水とエチルアセテートを利用して、抽出した後、濃縮し、ジクロロメタンとn-ヘキサンを利用してカラム分離した。その後、ジクロロメタンと石油エーテルを利用して沈殿液を作った後、濾過して、化合物S-4を3.42g得た(収率78%)。
【0147】
【0148】
化合物S-4(3g、5.4mmol)、マロノニトリル0.74g(11mmol)、ピリジン7mL、クロロホルム200mLを入れ、常温で撹拌した後、TiCl4 4mLをゆっくり添加した後、反応混合物を5時間加熱撹拌した。反応混合物を常温まで温度を上げた後、CH2Cl2とH2Oで抽出し、有機層であるCH2Cl2溶媒を無水Na2SO4で処理して乾燥した。得られた反応物をCH2Cl2とアセトニトリルで再結晶化して、化合物S-5を1.34g得た(収率41%)。
【0149】
【0150】
化合物S-5(1g、1.67mmol)、F-2(0.59g、3.3mmol)、ピリジン5mL、クロロホルム100mLを入れ、常温で撹拌した後、TiCl4 2.5mLをゆっくり添加した後、反応混合物を5時間加熱撹拌した。反応混合物を常温まで温度を上げた後、CH2Cl2とH2Oで抽出し、有機層であるCH2Cl2溶媒を無水Na2SO4で処理して乾燥した。得られた反応物をCH2Cl2とアセトニトリルで再結晶化して、化合物SH04を0.48g得た(収率38%)。
【0151】
【0152】
化合物S-2(2g、7.5mmol)、F-22.66g(15mmol)、ピリジン15mL、クロロホルム200mLを入れ、常温で撹拌した後、TiCl4 6mLをゆっくり添加した後、反応混合物を5時間加熱撹拌した。反応混合物を常温まで温度を上げた後、CH2Cl2とH2Oで抽出し、有機層であるCH2Cl2溶媒を無水Na2SO4で処理して乾燥した。得られた反応物をCH2Cl2とアセトニトリルで再結晶化して、化合物TH01を4.22g得た(収率86%)。
【0153】
【0154】
化合物S-1(2g、9.1mmol)、F-3(2.91g、18mmol)、ピリジン15mL、クロロホルム200mLを入れ、常温で撹拌した後、TiCl4 6mLをゆっくり添加した後、反応混合物を5時間加熱撹拌した。反応混合物を常温まで温度を上げた後、CH2Cl2とH2Oで抽出し、有機層であるCH2Cl2溶媒を無水Na2SO4で処理して乾燥した。得られた反応物をCH2Cl2とアセトニトリルで再結晶化して、化合物TH02を3.76g得た(収率85%)。
【0155】
【0156】
化合物S-1(2g、9.1mmol)、F-4(3.23g、18mmol)、ピリジン15mL、クロロホルム200mLを入れ、常温で撹拌した後、TiCl4 6mLをゆっくり添加した後、反応混合物を5時間加熱撹拌した。反応混合物を常温まで温度を上げた後、CH2Cl2とH2Oで抽出し、有機層であるCH2Cl2溶媒を無水Na2SO4で処理して乾燥した。得られた反応物をCH2Cl2とアセトニトリルで再結晶化して、化合物TH03を4.02g得た(収率82%)。
【0157】
【0158】
化合物S-4(1g、1.81mmol)、F-2(0.65g、3.62mmol)、ピリジン5mL、クロロホルム100mLを入れ、常温で撹拌した後、TiCl4 3mLをゆっくり添加した後、反応混合物を5時間加熱撹拌した。反応混合物を常温まで温度を上げた後、CH2Cl2とH2Oで抽出し、有機層であるCH2Cl2溶媒を無水Na2SO4で処理して乾燥した。得られた反応物をCH2Cl2とアセトニトリルで再結晶化して、化合物TH04を1.16g得た(収率74%)。
【0159】
実施例1:発光ダイオードの製作
合成例1によって合成されたSH01化合物を正孔輸送層のドーパントとして使用して発光ダイオードを製作した。ITOガラスの発光面積が3mm×3mmサイズになるようにパターニングした後、洗浄した。次に、以下のような順序によって発光層および負極を積層した。正孔注入層(HIL、PEDOT:PSS、スピンコート(7000rpm)後に150℃で30分間加熱;30nm)、正孔輸送層(HTL、TFB:SH01(2:1~1:2重量比)、真空チャンバーに移送した後に蒸着(1×10-6Torr)、20nm)、発光物質層(EML、InP/ZnSe/ZnS、スピンコート(2000rpm)後に80℃で1時間加熱;20nm)、電子輸送層(ETL、2-[4-(9、10-ジ-2-ナフタレニル-2-アントラセニル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール:LIQ(50%)、基板を真空チャンバーに移送した後に蒸着(1×10-6Torr)、40nm)、負極(Al、蒸着(1×10-6Torr)、80nm)。
【0160】
蒸着後に、被膜形成のために蒸着チャンバーから乾燥ボックス内に移し、後続してUV硬化エポキシおよび水分ゲッターを使用してカプセル化(Encapsulation)を行った。この発光ダイオードは、9mm2の放出領域を有する。
【0161】
実施例2:発光ダイオードの製作
合成例2によって合成されたSH02化合物を正孔輸送層のドーパントとして使用することを除いて、実施例1の手続を繰り返して発光ダイオードを製作した。
【0162】
実施例3:発光ダイオードの製作
合成例3によって合成されたSH03化合物を正孔輸送層のドーパントとして使用することを除いて、実施例1の手続を繰り返して発光ダイオードを製作した。
【0163】
実施例4:発光ダイオードの製作
合成例4によって合成されたSH04化合物を正孔輸送層のドーパントとして使用することを除いて、実施例1の手続を繰り返して発光ダイオードを製作した。
【0164】
比較例1:発光ダイオードの製作
正孔輸送層にドーパントを適用せず、TFBのみを適用することを除いて、実施例1の手続を繰り返して発光ダイオードを製作した。
【0165】
比較例2:発光ダイオードの製作
比較合成例1によって製造されたTH01化合物を正孔輸送層のドーパントとして使用することを除いて、実施例1の手続を繰り返して発光ダイオードを製作した。
【0166】
比較例3:発光ダイオードの製作
比較合成例2によって製造されたTH02化合物を正孔輸送層のドーパントとして使用することを除いて、実施例1の手続を繰り返して発光ダイオードを製作した。
【0167】
比較例4:発光ダイオードの製作
比較合成例3によって製造されたTH03化合物を正孔輸送層のドーパントとして使用することを除いて、実施例1の手続を繰り返して発光ダイオードを製作した。
【0168】
比較例5:発光ダイオードの製作
比較合成例4によって製造されたTH04化合物を正孔輸送層のドーパントとして使用することを除いて、実施例1の手続を繰り返して発光ダイオードを製作した。
【0169】
実験例:発光ダイオードの物性評価
実施例1~4と、比較例1~5でそれぞれ製造された発光ダイオードを外部電力供給源に連結し、本発明において製造されたすべての素子のEL特性を一定の電流供給源(KEITHLEY)および光度計PR650を使用して室温で評価した。具体的に、実施例1~4と、比較例1~5でそれぞれ製作された発光ダイオードの駆動電圧(V)、電流効率(Cd/A)、外部量子効率(external quantum efficiency、EQE)および発光波長に対する色座標を測定した。測定結果を表1に示す。
【0170】
【0171】
表1に示されたように、本発明によって合成された有機化合物をTFBにドープした正孔輸送層を適用した発光ダイオードは、TFBのみからなる正孔輸送層を適用した発光ダイオードと比較して、電圧は最大29.2%減少し、電力効率は最大139.9%、外部量子効率は最大154.4%向上した。また、本発明によって合成された有機化合物をTFBにドープした正孔輸送層を適用した発光ダイオードは、比較合成例によって合成された有機化合物をTFBにドープした正孔輸送層を適用した発光ダイオードと比較して、電圧は最大16.4%減少し、電力効率は最大139.9%、外部量子効率は最大94.7%向上した。したがって、本発明によって合成された有機化合物を正孔輸送層に適用することにより、低電圧駆動が可能であり、発光効率および量子効率が大きく改善された発光ダイオードおよび発光装置を具現することができることを確認した。
【0172】
以上、本発明の例示的な実施形態および実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明が前記実施形態および実施例に記載された技術思想に限定されるものではない。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、前述した実施形態および実施例に基づいて多様な変形と変更を容易に追考することができるであろう。しかしながら、このような変形と変更は、すべて本発明の権利範囲に属するという点は、特許請求の範囲の記載から明白である。
【符号の説明】
【0173】
100、200、400 発光ダイオード
110、210、410 第1電極
120、220、320 第2電極
130、230、430 発光層
140 第1電荷移動層(正孔移動層)
150、250、450 発光物質層
160 第2電荷移動層(電子移動層)
240 第1電荷移動層(電子移動層)
260 第2電荷移動層(正孔移動層)
300 発光表示装置
440 第1電荷移動層
460 第2電荷移動層
Tr 駆動薄膜トランジスタ