(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】飛沫低減可能なテーブル及びソファ
(51)【国際特許分類】
F24F 9/00 20060101AFI20220614BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20220614BHJP
F24F 13/072 20060101ALI20220614BHJP
A47B 31/02 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
F24F9/00 E
F24F9/00 A
F24F13/02 A
F24F13/072 A
A47B31/02 Z
(21)【出願番号】P 2020142173
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】520326150
【氏名又は名称】大館 貴浩
(74)【代理人】
【識別番号】100098279
【氏名又は名称】栗原 聖
(72)【発明者】
【氏名】大館 貴浩
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-024550(JP,A)
【文献】特開平10-019335(JP,A)
【文献】特開平04-340042(JP,A)
【文献】実公平04-051296(JP,Y2)
【文献】特開2017-219282(JP,A)
【文献】実公昭56-051834(JP,Y2)
【文献】特開平06-254340(JP,A)
【文献】特開平10-318582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 9/00
F24F 13/02
F24F 13/072
A47B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人同士が当該テーブルを介して相対向して使用し、前記テーブルの前記人同士の略中間に設置されるエアー装置を備えるテーブルであって、前記エアー装置は、気体を送風する送風手段と、前記送風手段から送風される気体を下向きに帯状に吐出するスリット状の吹出口を備える上部送風ダクトと、前記上部送風ダクトから吹き出された気体を吸入する吸入手段と、前記上部送風ダクトから下向きに帯状に吹き出された気体を前記吸入手段を介してそのまま帯状に吸入可能な吸入口を備えた下部吸入ダクトと、前記上部送風ダクトと前記下部吸入ダクトとを上下に所定の間隔を置いて配置するためのダクト配置手段と、前記下部吸入ダクトに吸入された気体を床面に向かって排出するための排出用ダクトと、を有し、前記上部送風ダクトから前記下部吸入ダクトへ下向きに流れる帯状の気体により、
前記テーブルを介して相対向する人同士の口及び/又は鼻から発出された飛沫の一部を前記下部吸入ダクトに吸入して排出用ダクトから床面に向かって排出すると共に、前記帯状の気体を超えて前記テーブルの相手側まで飛散した飛沫の飛散角度を下げることで前記テーブルの相手側内に落下させることで、前記飛沫が相手方の身体まで届くのを低減することを特徴とする
飛沫低減可能なテーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の
飛沫低減可能なテーブルにおいて、少なくとも前記上部送風ダクト、前記下部吸入ダクト、及びダクト配置手段がテーブルに一体的なユニットとして設けられて
おり、前記ダクト配置手段は、前記上部送風ダクトと前記下部吸入ダクトとを上下に所定の間隔を置いて配置するための部材であるだけでなく、空気を下方又は上方に循環させる空気の管でもあり、更に、前記テーブルは、内部に空洞が形成されている脚を有し、前記脚と内部の空洞が排出ダクトとして機能するようになっていることを特徴とする
飛沫低減可能なテーブル。
【請求項3】
請求項1に記載の
飛沫低減可能なテーブルが、テーブル一体型の吸気ユニットとテーブル分離型の送風ユニットが組合されて構成されるものであり、前記テーブル一体型の吸気ユニットでは、少なくとも下部吸入ダクトがテーブルに一体的な吸入ユニットとして設けられ、テーブル分離型の送風ユニットでは、少なくとも上部送風ダクトとダクト配置手段とが一体的な送風ユニットとして設けられており、更に、当該送風ユニットをテーブルに装着する装着部を有していることを特徴とする
飛沫低減可能なテーブル。
【請求項4】
請求項1に記載の
飛沫低減可能なテーブルにおいて、前記上部送風ダクト、前記下部吸入ダクト及び前記ダクト配置手段とが床より自立且つ可動なユニットとして設けられ、更に、前記上部送風ダクトと下部吸入ダクトとの間隔及び/又は前記下部吸入ダクトの高さ位置を調節可能な間隔・高さ調節
部材を有すると共に、前記下部吸入ダクトの下面側に連通して設けられた排出ダクトを有していることを特徴とする
飛沫低減可能なテーブル。
【請求項5】
人同士が当該ソファを介して相隣接して使用し、前記ソファの前記人同士の略中間に設置されるエアー装置を備えるソファであって、前記エアー装置は、気体を送風する送風手段と、前記送風手段から送風される気体を下向きに帯状に吐出するスリット状の吹出口を備える上部送風ダクトと、前記上部送風ダクトから吹き出された気体を吸入する吸入手段と、前記上部送風ダクトから下向きに帯状に吹き出された気体を前記吸入手段を介してそのまま帯状に吸入可能な吸入口を備えた下部吸入ダクトと、前記上部送風ダクトと前記下部吸入ダクトとを上下に所定の間隔を置いて配置するためのダクト配置手段と、前記下部吸入ダクトに吸入された気体を床面に向かって排出するための排出用ダクトと、を有し、前記上部送風ダクトから前記下部吸入ダクトへ下向きに流れる帯状の気体により、前記ソファ介して相隣接する人同士の口及び/又は鼻から発出された飛沫の一部を前記下部吸入ダクトに吸入して排出用ダクトから床面に向かって排出すると共に、前記帯状の気体を超えて前記ソファの相手側まで飛散した飛沫の飛散角度を下げることで前記飛沫が相手方の口及び/又は鼻まで届くのを低減する飛沫低減可能なソファであって、前記上部送風ダクト、前記下部吸入ダクト及び前記ダクト配置手段とが、該下部吸入ダクトを含む構造体を肘置きとして用いることで、肘置きユニットとして構成されることを特徴とする
飛沫低減可能なソファ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛沫低減可能なテーブル及びソファに関し、特に、ウイルス等による通常の飛沫感染を防止できるだけでなく、エアロゾルによるマイクロ飛沫感染をも低減可能なテーブル及びソファに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、毎冬にインフルエンザ(流行性感冒)が流行し、この病は各種のインフルエンザウイルスによる接触感染と飛沫感染が原因とされてきた。近年、コロナウイルスの一種であるSARSウイルスやMARSウイルスによる重症の呼吸器感染症も東南アジアや中東を中心に流行したが、我が国での流行は殆ど無かった。しかしながら、2020年初頭より新型コロナウイルス(COVID-19)による感染が全世界で蔓延し、パンデミックが叫ばれている。この新型コロナウイルスによる感染も、接触感染と飛沫感染が主因とされ、感染を防ぐために、いわゆる社会的距離(social distance)を確保すること、また、特に我が国では、いわゆる3密を避けること等が推奨されている。このような状況下、いわゆる営業・接待・飲食等の対人相手との会話や身体的接触(接近)を避けられない業種では、国や自治体より接待・飲食店の営業自粛が要求され、或いは遠隔通信を利用したオンライン営業等による代替が要望されている。しかしながら、高級レストランから町の食堂、また、いわゆる夜の街とされるバー・クラブ等の飲食店は膨大な数存在し、その店内設備も、もともと相手との身近な会話や身体的接触(接近)を前提としたものであるため、店内で上述した3密を避けること等は極めて困難であるばかりか、新型コロナ禍での来客の激減により廃業を余儀なくされる事態も見込まれている。
【0003】
そこで、例えば、飲食店等では、アクリル板等によるパーティションを設置し、或いはアルコール等による消毒を頻回行う等の感染予防策を講じ、また、マスクやマウスシールド、更にはフェイスシールドまで装着しての接待等も行われており、これらの感染防止具に関する提案も多くなされている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3226600号
【文献】実用新案登録第3227242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの感染防止具ではエアロゾルによるマイクロ飛沫感染を防止するのは困難である上に、例えば、アクリル板等によるパーティションでは、お客のタバコにライターで火をつける、お客のグラス等にお酌をする等の重要な接待行為が危険或いは物理的に困難となってしまう。このため、興ざめにより益々来客が減少し、いわゆる夜の街の飲食店等は廃業するか否かの瀬戸際にある店も多い。更に、クラスターが多発したとされるカラオケ店、ライブハウス、ジム等も会話(発声)や身体的接触(指導)を必須とするため、ウィズコロナの時代には存亡の危機に立たされている。このため、これら飲食店・対人営業のみならず、広く、他人との物理的接触(近接)や会話を可能としながら飛沫感染を防止できるのみならずマイクロ飛沫感染をも軽減可能な感染防止技術の開発が切望される。
【0006】
本発明の目的は、上述した問題点を解消し、他人との物理的接触(近接)や会話を可能としながら飛沫感染を防止できるのみならずマイクロ飛沫感染をも軽減可能な感染防止技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、新規且つ有用な感染防止技術について鋭意研究を重ねた結果、飛沫低減可能なテーブルを、気体を送風する送風手段と、前記送風手段から送風される気体を下向きに帯状に吐出するスリット状の吹出口を備える上部送風ダクトと、前記上部送風ダクトから吹き出された気体を吸入する吸入手段と、前記上部送風ダクトから下向きに帯状に吹き出された気体を前記吸入手段を介してそのまま帯状に吸入可能な吸入口を備えた下部吸入ダクトと、前記上部送風ダクトと前記下部吸入ダクトとを上下に所定の間隔を置いて配置するためのダクト配置手段と、前記下部吸入ダクトに吸入された気体を床面に向かって排出するための排出用ダクトとを有し、前記上部送風ダクトから前記下部吸入ダクトへ下向きに流れる帯状の気体により、前記テーブルを介して相対向する人同士の口及び/又は鼻から発出された飛沫の一部を前記下部吸入ダクトに吸入して排出用ダクトから床面に向かって排出すると共に、前記帯状の気体を超えて前記テーブルの相手側まで飛散した飛沫の飛散角度を下げることで前記テーブルの相手側内に落下させることで、前記飛沫が相手方の身体まで届くのを低減する構成とすることで、他人との物理的接触(近接)や会話を可能としながら飛沫感染を防止できるのみならずマイクロ飛沫感染をも軽減可能になることを見出した。
【0008】
即ち、上記目的を達成するため、本発明の飛沫低減可能なテーブルは、人同士が当該テーブルを介して相対向して使用し、前記テーブルの前記人同士の略中間に設置されるエアー装置を備えるテーブルであって、前記エアー装置は、気体を送風する送風手段と、前記送風手段から送風される気体を下向きに帯状に吐出するスリット状の吹出口を備える上部送風ダクトと、前記上部送風ダクトから吹き出された気体を吸入する吸入手段と、前記上部送風ダクトから下向きに帯状に吹き出された気体を前記吸入手段を介してそのまま帯状に吸入可能な吸入口を備えた下部吸入ダクトと、前記上部送風ダクトと前記下部吸入ダクトとを上下に所定の間隔を置いて配置するためのダクト配置手段と、前記下部吸入ダクトに吸入された気体を床面に向かって排出するための排出用ダクトと、を有し、前記上部送風ダクトから前記下部吸入ダクトへ下向きに流れる帯状の気体により、前記テーブルを介して相対向する人同士の口及び/又は鼻から発出された飛沫の一部を前記下部吸入ダクトに吸入して排出用ダクトから床面に向かって排出すると共に、前記帯状の気体を超えて前記テーブルの相手側まで飛散した飛沫の飛散角度を下げることで前記テーブルの相手側内に落下させることで、前記飛沫が相手方の身体まで届くのを低減することを特徴とする。また、前記床面には、別途、ウイルス吸着性のカーペット等を敷くようにしても良い。
【0009】
前記飛沫低減可能なテーブルにおいて、少なくとも前記上部送風ダクト、前記下部吸入ダクト、及びダクト配置手段がテーブルに一体的なユニットとして設けられており、前記ダクト配置手段は、前記上部送風ダクトと前記下部吸入ダクトとを上下に所定の間隔を置いて配置するための部材であるだけでなく、空気を下方又は上方に循環させる空気の管でもあり、更に、前記テーブルは、内部に空洞が形成されている脚を有し、前記脚と内部の空洞が排出ダクトとして機能するようになっているようにしても良い。また、前記飛沫低減可能なテーブルが、テーブル一体型の吸気ユニットとテーブル分離型の送風ユニットが組合されて構成されるものであり、前記テーブル一体型の吸気ユニットでは、少なくとも下部吸入ダクトがテーブルに一体的な吸入ユニットとして設けられ、テーブル分離型の送風ユニットでは、少なくとも上部送風ダクトとダクト配置手段とが一体的な送風ユニットとして設けられており、更に、当該送風ユニットをテーブルに装着する装着部を有しているようにしても良い。 本発明者が本発明装置に関し、一体型と分離型の2種類の装置を開発・提案するのは以下の理由による。即ち、将来感染の拡大が落ち着き、その防止対策の必要性が減じた場合、送風ユニットはとても目障りなものになる。しかしながら、季節性または一部地域で再び感染が拡大する可能性は否定できない。そこで、分離型の送風ユニットは、それ自体を取り外し、テーブルユニットはテーブル天板に覆い(元の天板と同じ又は類似の素材の薄い天板やテーブルクロス)をする事で、装置を使用しない場合でも、通常のテーブルとして違和感なく使うことができる。このように、分離型のメリットは、感染拡大時期とそうでない時期とで使い分ける事が可能になることにある。
【0010】
前記飛沫低減可能なテーブルにおいて、前記上部送風ダクト、前記下部吸入ダクト及び前記ダクト配置手段とが床より自立且つ可動なユニットとして設けられ、更に、前記上部送風ダクトと下部吸入ダクトとの間隔及び/又は前記下部吸入ダクトの高さ位置を調節可能な間隔・高さ調節部材を有すると共に、前記下部吸入ダクトの下面側に連通して設けられた排出ダクトを有しているようにしても良い。また、人同士が当該ソファを介して相隣接して使用し、前記ソファの前記人同士の略中間に設置されるエアー装置を備えるソファであって、前記エアー装置は、気体を送風する送風手段と、前記送風手段から送風される気体を下向きに帯状に吐出するスリット状の吹出口を備える上部送風ダクトと、前記上部送風ダクトから吹き出された気体を吸入する吸入手段と、前記上部送風ダクトから下向きに帯状に吹き出された気体を前記吸入手段を介してそのまま帯状に吸入可能な吸入口を備えた下部吸入ダクトと、前記上部送風ダクトと前記下部吸入ダクトとを上下
に所定の間隔を置いて配置するためのダクト配置手段と、前記下部吸入ダクトに吸入された気体を床面に向かって排出するための排出用ダクトと、を有し、前記上部送風ダクトから前記下部吸入ダクトへ下向きに流れる帯状の気体により、前記ソファ介して相隣接する人同士の口及び/又は鼻から発出された飛沫の一部を前記下部吸入ダクトに吸入して排出用ダクトから床面に向かって排出すると共に、前記帯状の気体を超えて前記ソファの相手側まで飛散した飛沫の飛散角度を下げることで前記飛沫が相手方の口及び/又は鼻まで届くのを低減する飛沫低減可能なソファであって、前記上部送風ダクト、前記下部吸入ダクト及び前記ダクト配置手段とが、該下部吸入ダクトを含む構造体を肘置きとして用いることで、肘置きユニットとして構成されるようにしても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、他人との物理的接触(近接)や会話を可能としながら飛沫感染を防止できるのみならずマイクロ飛沫感染をも軽減可能な感染防止技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る飛沫低減装置(基本原理型)の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る飛沫低減装置の基本原理及び作用効果を説明するための図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る飛沫低減装置(テーブル一体型)の構成を示す図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る飛沫低減装置(テーブルユニット)のうち、テーブル一体型の吸気ユニットの構成を示す図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係る飛沫低減装置(テーブルユニット)のうち、テーブル分離型の送風ユニットの構成を示す図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態に係る飛沫低減装置(床よりの自立可動ユニット)の構成を示す図である。
【
図7】本発明の第5の実施形態に係る飛沫低減装置(クラブ・スナック・キャバクラ用肘置きユニット)の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る飛沫低減装置について説明する。
(第1の実施形態:基本原理型)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る飛沫低減装置(基本原理型)の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の飛沫低減装置100は、気体を送風する送風手段としての送風ファン(ダクトファン)102と、送風ファン102から送風される気体を下向きに帯状に吐出するスリット状の吹出口104を備える上部送風ダクト106と、吹出口104から吹き出された気体を吸入する吸入手段としての吸入ファン(軸流ファン)108と、吹出口104から下向きに帯状に吹き出された気体を吸入ファン108を介してそのまま帯状に吸入可能な吸入口110を備えた下部吸入ダクト112と、上部送風ダクト106と下部吸入ダクト112とを上下に所定の間隔を置いて配置するためのダクト配置手段としての支柱114A、114Bと、下部吸入ダクト112に吸入された気体を床面116に向かって排出するための排出用ダクト118とを有しており、上部送風ダクト106(の吹出口104)から下部吸入ダクト112(の吸入口110)へ下向きに流れる帯状の気体により、該帯状の気体を挟んだ両側であるR、L相互間における飛沫の飛来を低減することを特徴としている。
【0014】
ここで、
図2を参照して、本実施形態の飛沫低減装置100の基本原理及び作用効果について説明しておく。
図2は、本発明の実施形態に係る飛沫低減装置の基本原理及び作用効果を説明するための図である。
図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る飛沫低減装置(基本原理型)100は、人物Aと人物Bがテーブル200を挟んで、それぞれイス202A、202Bに座り、相互に対面しながら会話・打ち合わせ等を行う場合に、上述した帯状の気体を挟んだ両側に両人物AとBが位置するように、テーブル200の略中央位置に設置して使用する。ここで、本発明の飛沫低減装置を提案・出願する時点での本発明の重要なターゲットは、コロナウィルス感染者の会話時・非会話時の息、咳、くしゃみ等により発生する飛沫・マイクロ飛沫(エアロゾル)が相手側(会話等の相手側)まで達し、空中に飛来したままその鼻・口等に直接侵入して、又はその衣服等に付着した(マイクロ)飛沫を当該相手方が手で触った後、その手で鼻・口等に触れることにより感染し、又は、テーブルの相手側スペース中に落下して付着した(マイクロ)飛沫を介して同様に相手方が感染する場合である。ところで、新型コロナウィルスに関しては、様々な知見が得られ始めており、例えば、スーパーコンピュータ富岳を用いたシュミレーション等によるマイクロ飛沫(エアロゾル)の電車内における拡がり方も発表されている。また、新型コロナウィルスを含んだ飛沫等を有効に遮蔽するためには、従来のアクリル板等の衝立の高さは、少なくとも人の頭の高さまであることが望ましいとされている。そこで、
図2に示すように、本実施形態に係る飛沫低減装置100においても、上部送風ダクト106(の吹出口104)は、座した状態での両人物AとBの略頭の高さに設定されている。また、送風ファン(ダクトファン)102(
図1参照)から送風する気体には、通常の空気を用いている。
【0015】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る飛沫低減装置100では、上部送風ダクト106(の吹出口104)から下部吸入ダクト112の吸入口110へ下向きに流れる帯状の空気により、該帯状の空気を挟んだ両側であるR、L相互間における飛沫の飛来が低減される。即ち、
図2に示す人物Aと人物Bのいずれか一方が、例えば、新型コロナウィルスに感染し、感染力を有するウィルスをその唾液、鼻水等に含む状態であっても、例えば、人物Aが感染者である場合、人物Aの咳、くしゃみ等により発生する飛沫は、矢印a1、a2に示すように、帯状の空気により遮られ、この帯状の空気と共に下部吸入ダクト112に吸入された後、排出用ダクト118から床面116に向かって排出される。従って、これら飛沫が人物Bの側に飛来するのが防止される。尚、本実施形態では、床面にウイルス吸着性のカーペット220を敷いており、床面116に向かって排出された空気は、このカーペット220に吹き付けられるので、上記飛沫に含まれる新型コロナウィルスを吸着し、再飛散するのを抑止することもできる。
一方、人物Bが感染者である場合、人物Bの咳、くしゃみ等により発生する飛沫は、矢印では図示しないが、上記人物Aの場合と同様に、帯状の空気と共に下部吸入ダクト112に吸入された後、排出用ダクト118から床面116に向かって排出される。また、人物Bの会話時の息等により発生するマイクロ飛沫(エアロゾル)が存在しても、矢印b1、b2に示すように、帯状の空気により下方に屈折され、テーブル200の人物A側の上面に落下し、付着するので、人物Aの衣服等に付着するのを防止可能である。従って、テーブル上面のアルコール消毒等を徹底することで感染のリスクを有効に低減することも可能である。尚、排出用ダクト118には、下部吸入ダクト112に吸入された空気を濾過して排出するための濾過部材(フィルタ)を備え、この濾過部材には、例えば、いわゆるN95マスクと同程度のウイルス吸着性(非透過性)のものを用いることも好適である。また、別途設けた紫外線照射装置(図示せず)によりカーペット220に紫外線を照射してウィルスを非活性化することも考えられる。
【0016】
(第2の実施形態:テーブル一体型)
次に、本発明の第2の実施形態に係る飛沫低減装置について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る飛沫低減装置(テーブル一体型)の構成を示す図である。
図3に示すように、本実施形態の飛沫低減装置300は、少なくとも上部送風ダクト306、下部吸入ダクト312、及びダクト配置手段としての支柱ダクト314A、314Bがテーブル330に一体的なユニットとして設けられている。尚、本実施形態では、ダクト配置手段である支柱ダクト314A、314Bは、上部送風ダクト306と下部吸入ダクト312とを上下に所定の間隔を置いて配置するための部材であるだけでなく、支柱ダクト314Aは、空気取入口303から取り入れた空気を、ダクトファン305の吸引力により下方に循環させ、支柱ダクト314Bは、ダクトファン305を通過した空気を上部送風ダクト306まで上方に循環させる空気の管(ダクト)としての機能を有する。
図3に示すように、本実施形態の飛沫低減装置300は、更に、テーブル330の脚332内には空洞332aが形成されており、即ち、脚332と空洞332aは排出ダクトとして機能するようになっている。この空洞332aは、図中に破線で示すテーブル埋込型の下部吸入ダクト312と連通して形成されている。この空洞332a内には、ダクトファン335が設けられており、上部送風ダクト306のスリット状の吹出口304から吹き出され、テーブル表面に形成された吸込みスリット312Aを介して下部吸入ダクト312内に流れ込んだ空気は、ダクトファン335に吸引されて空洞332a内に流入し、脚332の底面側の排出口332bから床面320(床面320とテーブル台座336の隙間)に向かって排気される。スリット状の吹出口304から吹き出された帯状の空気がテーブル表面の吸込みスリット312Aを介して吸入されることで形成される帯状の空気により、この帯状の空気を挟んだ両側(前側と後側)であるF、B相互間における飛沫の飛来が低減されるのは、第1の実施形態と同様である。
【0017】
(第3の実施形態:テーブルユニット)
次に、本発明の第3の実施形態に係る飛沫低減装置について説明する。
図4及び
図5は、本発明の第3の実施形態に係る飛沫低減装置(テーブルユニット)の構成を示す図であり、
図4はテーブル一体型の吸気ユニット、
図5はテーブル分離型の送風ユニットを示す。即ち、
図4及び
図5に示すように、本実施形態の飛沫低減装置400は、テーブル一体型の吸気ユニット(
図4)とテーブル分離型の送風ユニット(
図5)が組合されて構成される。まず、テーブル一体型の吸気ユニット(
図4)では、テーブル440の天板440Aの表面にスリット状の吸込口412Aを形成し、吸込まれた空気は、センターポールを通り、テーブル台座(ベース部)436と高さ調節用の四隅のアジャスター439との隙間から排出される。即ち、テーブル一体型の吸気ユニット(
図4)では、少なくとも下部吸入ダクト412がテーブル440に一体的な吸入ユニットとして設けられている。また、テーブル分離型の送風ユニット(
図5)では、少なくとも上部送風ダクト502とダクト配置手段としての支柱504Aとが一体的な送風ユニットとして設けられており、更に、これらにより構成される送風ユニットをテーブル440(
図4参照)に装着する装着部506を有しており、この装着部506の2本の挟み込み部材506a、506bをテーブル440の天板440A下に設けられたリブ(図示せず)に差し込むことで、テーブル440側と組み立てる。
本発明者が本発明装置に関し、一体型と分離型の2種類の装置を開発・提案するのは以下の理由による。即ち、将来感染の拡大が落ち着き、その防止対策の必要性が減じた場合、送風ユニットはとても目障りなものになる。しかしながら、季節性または一部地域で再び感染が拡大する可能性は否定できない。そこで、分離型の送風ユニットは、それ自体を取り外し、テーブルユニットはテーブル天板に覆い(元の天板と同じ又は類似の素材の薄い天板やテーブルクロス)をする事で、装置を使用しない場合でも、通常のテーブルとして違和感なく使うことができる。このように、分離型のメリットは、感染拡大時期とそうでない時期とで使い分ける事が可能になることにある。
【0018】
まず、
図4に示すように、本実施形態のテーブル一体型の吸気ユニット444は、下部吸入ダクト412がテーブル440に一体的な吸入ユニットとして設けられている。、更に、テーブル440の脚432内には空洞432aが形成されており、即ち、脚432と空洞432aは排出ダクトとして機能するようになっている。この空洞432a内には、ダクトファン435が設けられており、後述するテーブル分離型の送風ユニット(
図5)の上部送風ダクト502のスリット状の吹出口503から吹き出され、テーブル440の表面に形成された吸込みスリット412Aを介して吸入ダクト412内に流れ込んだ空気は、ダクトファン435に吸引されて空洞432a内に流入し、脚432の底面側の排出口432bから床面420に向かって排気される。尚、テーブル台座(ベース部)436の四隅の下面側には、それぞれアジャスター439が設けられており、これらアジャスター439によりテーブル440は床面420上を移動可能になっている。上述した排気は、矢印436kにて示すように、アジャスター439の存在により形成される床面420とテーブル台座(ベース部)436の隙間から、四方に排出される。スリット状の吹出口503から吹き出された帯状の空気がテーブル440の表面の吸込みスリット412Aを介して吸入されることで形成される帯状の空気により、この帯状の空気を挟んだ両側(前側と後側)であるF、B相互間における飛沫の飛来が低減されるのは、第1及び第2の実施形態と同様である。
【0019】
次に、
図5に示すように、本実施形態のテーブル分離型の送風ユニット555(
図5)では、上部送風ダクト502とダクト配置手段としての支柱504Aとが一体的な送風ユニットとして設けられており、更に、これらにより構成される送風ユニットをテーブル440(
図4参照)に装着する装着部506をを有しており、この装着部506の2本の挟み込み部材506a、506bをテーブル440の天板440A下に設けられたリブ(図示せず)に差し込むことで、テーブル440側と組み立てる。尚、
図4に示した吸気ユニット444では、テーブル440の表面に形成された吸込みスリット412Aが4本形成されているが、
図5に示す送風ユニット555においても、スリット状の吹出口503が、図示はしないが4枚形成されているものとしても良いし、或いは、それぞれスリット状の吹出口503が2枚ずつ形成されている2つの送風ユニット555を1つのテーブル440側と組み立てるようにしても良い。
【0020】
(第4の実施形態:床よりの自立可動ユニット)
次に、本発明の第4の実施形態に係る飛沫低減装置について説明する。
図6は、本発明の第4の実施形態に係る飛沫低減装置(床よりの自立可動ユニット)の構成を示す図である。
図6に示すように、本実施形態の飛沫低減装置600は、上部送風ダクト602、下部吸入ダクト604及びダクト配置手段としての支柱606が床660より自立且つ可動なユニットとして設けられている。更に、上部送風ダクト602と下部吸入ダクト604との間隔及び/又は下部吸入ダクト604の高さ位置を調節可能な間隔・高さ調節部材608を有している。即ち、
図6に示すように、本実施形態の飛沫低減装置600では、ダクト配置手段としての支柱606が下部吸入ダクト604を挿通し、そのまま床面660より自立するポールとして構成され、ポール下端にはキャスター614aが設けられた5葉の台座614が形成されている。ポールの下側略半分にはコイル状芯が刻設されており、調節ネジ部618により下部吸入ダクト604をコイル状芯が刻設された高さの範囲内で上下動させることで、その高さ位置を調節可能に構成されている。スリット状の吹出口603から吹き出された帯状の空気が下部吸入ダクト604に直列に8個設けられた軸流ファン609により吸込み口604Aを介して吸入されることで形成される帯状の空気により、この帯状の空気を挟んだ両側(右側と左側)であるR、L相互間における飛沫の飛来が低減されるのは、第1乃至第3の実施形態と同様である。下部吸入ダクト604の軸流ファン609により吸入された空気は、下部吸入ダクト604の下面側に連通して設けられた排出ダクト(フレキシブルダクト)616内を流れ、床面660に向かって排気される。
【0021】
(第5の実施形態:クラブ・スナック・キャバクラ用肘置きユニット)
次に、本発明の第5の実施形態に係る飛沫低減装置について説明する。
図7は、本発明の第5の実施形態に係る飛沫低減装置(クラブ・スナック・キャバクラ用肘置きユニット)の構成を示す図である。
図7に示すように、本実施形態の飛沫低減装置700は、上部送風ダクト702、下部吸入ダクト704及びダクト配置手段としての支柱706とが一体的な、該下部吸入ダクト704を介した肘置きユニットとして設けられている。即ち、本実施形態の飛沫低減装置700では、下部吸入ダクト704を含む構造体705が比較的幅広の肘置き様に形成されており、この肘置きユニットを長椅子(ソファ)707に設置し、例えば、客とホステス等がその両脇に座るようにすることで、この肘置きを挟んだ両側間、即ち、客とホステス間での飛沫の飛来を低減する。尚、上部送風ダクト702のスリット状の吹出口708から吹き出された帯状の空気が下部吸入ダクト704に直列に8個設けられた軸流ファン709により吸込み口704Aを介して吸入されることで形成される帯状の空気により、この帯状の空気を挟んだ両側(右側と左側)であるR、L相互間における飛沫の飛来が低減されるのは、第1乃至第4の実施形態と同様である。下部吸入ダクト704の軸流ファン709により吸入された空気は、下部吸入ダクト704の先端下面側に連通して設けられた排出ダクト(フレキシブルダクト)726内を流れ、床面739に向かって排気される。
【0022】
本実施形態の飛沫低減装置700によれば、肘置きユニットを長椅子(ソファ)に設置し、例えば、客とホステス等がその両脇に座るようにすることで、客は肘置きに肘を置いてくつろげる上に、肘置きを挟んだ両側間、即ち、客とホステス間での飛沫の飛来を低減することができる。しかもアクリル板等を遮蔽用に使用していないので、ホステスがその手を帯状の空気を通過させて客にお酌をしたり、客のタバコにライターで火を着ける等も可能である。
【0023】
[変形例]
尚、イスではなく、変形例として、板の間・畳敷きの座って飲食する座卓に組み合わせて用いる衝立式ユニットも考えられる。但し、床面に向かって排気できないので、床内に排出経路を設ける等の設備が必要となろう。また、飛沫低減装置そのものにはファン等は無く、外付の送風手段から送風、外付の吸入手段により吸入する等、セントラル空気循環の設備を設けることも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上に述べた実施形態では、本発明をテーブルとイス又はソファを組み合わせた接客方式の態様に適用したが、本発明は、特許請求の範囲の記載の範囲内で、その他の用途或いは態様にも広く適用することができる。例えば、帯状のカーテンとして空気(エア)を用いたが、オゾン等の他の気体を用いても良い。ウイルスを完全に非活性化するには、オゾンの濃度は人体に有害なレベルになると言われるが、そこまで高濃度ではない家庭用オゾン発生器によるオゾンを用いることでも、ウィルスによる感染を軽減することは可能である。更に、帯状の気体カーテンを2重或いは3重のカーテンとしても良く、即ち、スリット状の吹出口と吸入口等は、それぞれ複数あっても良い。更にまた、本発明の原理は、劇場・ライブハウス等で舞台と観客席との間で飛沫の飛来を低減する気体カーテンとして応用展開も可能である。
【符号の説明】
【0025】
100、300、400、600、700 飛沫低減装置、102 送風ファン(ダクトファン)、104、304、503、708 吹出口、106、306、502、602、702 上部送風ダクト、108 吸入ファン(軸流ファン)、 110 吸入口、112、312、412、604、704 下部吸入ダクト、114A、114B、504A、606、706 支柱、 116 床面、118 排出用ダクト、R、L 両側、A、B 人物、 200 テーブル、202A、202B イス、a1、a2、b1、b2 矢印、220 カーペット、314A、314B 支柱ダクト、330 テーブル、303 空気取入口、 305、335 ダクトファン、 332 脚、332a 空洞、 312A 吸込みスリット、332b 排出口、320 床面、 336、436 テーブル台座、F、B 両側(前側と後側)、440 テーブル、 440A 天板、412A 吸込口、 439 アジャスター、506 装着部、 506a、506b 挟み込み部材、444 吸気ユニット、 555 送風ユニット、660、739 床面、 608 間隔・高さ調節部材、614a キャスター、614 台座、618 調節ネジ部、609、709 軸流ファン、604A、704A 吸込み口、616、726 排出ダクト(フレキシブルダクト)705 構造体、707 長椅子(ソファ)、