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  • 特許-RNAの免疫原性を低減するための方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】RNAの免疫原性を低減するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20220614BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220614BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61K31/7105
A61P43/00 105
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020189401
(22)【出願日】2020-11-13
(62)【分割の表示】P 2018509891の分割
【原出願日】2016-08-24
(65)【公開番号】P2021035979
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2015/069760
(32)【優先日】2015-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520193437
【氏名又は名称】バイオンテック・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カタリン・カリコ
(72)【発明者】
【氏名】ウグール・シャヒーン
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0142756(US,A1)
【文献】特表2013-500704(JP,A)
【文献】特表2008-504827(JP,A)
【文献】The American Society of Gene and Cell Therapy,2015年,Vol.23, No.9,pp.1456-1464
【文献】KARIKO KATALIN; ET AL,INCORPORATION OF PSEUDOURIDINE INTO MRNA YIELDS SUPERIOR NONIMMUNOGENIC VECTOR WITH 以下備考,MOLECULAR THERAPY,英国,NATURE PUBLISHING GROUP,2008年09月16日,VOL:16, NR:11,PAGE(S):1833 - 1840,http://dx.doi.org/10.1038/mt.2008.200,INCREASED TRANSLATIONAL CAPACITY AND BIOLOGICAL STABILITY
【文献】ANDERSON B R; ET AL,INCORPORATION OF PSEUDOURIDINE INTO MRNA ENHANCES TRANSLATION BY DIMINISHING PKR ACTIVATION,NUCLEIC ACIDS RESEARCH,INFORMATION RETRIEVAL LTD,2010年05月10日,VOL:38, NR:17,PAGE(S):5884 - 5892,http://dx.doi.org/10.1093/nar/gkq347
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 31/00-33/44
A61K 38/00-38/58
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然に存在するRNAから由来し、前記天然に存在するRNAと比較して低減されたU含有量を含むヌクレオチド配列を有する、少なくとも1種のペプチド又はタンパク質をコードし、Aに富む修飾RNA、を含む医薬組成物であって、U含有量の前記低減は、RNAのヌクレオチド配列中のUヌクレオシドのU以外のヌクレオシドによる置換を含み、前記U以外のヌクレオシドが、アデノシン(A)、グアノシン(G)、及びシチジン(C)からなる群から選択され、前記修飾RNAのA含有量は、前記天然に存在するRNAと比較して少なくとも40%まで増大しており、前記修飾RNAによってコードされるペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列は、前記天然に存在するRNAによってコードされるペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列と同一である、医薬組成物
【請求項2】
前記修飾RNAは、前記天然に存在するRNAによって誘導されるIFN-α分泌のレベルと比較して低減している、前記修飾RNAと接触した細胞からのIFN-α分泌のレベルを誘導することによって特徴づけされる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
対象の処置における使用のための、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNA療法、特に、RNAの免疫原性を低下させることに関する。具体的には、本発明は、RNAの免疫原性を低下させるための方法であって、ウリジン(U)含有量を低減することによってRNAのヌクレオチド配列を修飾する工程を含み、U含有量の前記低減は、RNAのヌクレオチド配列からのUヌクレオシドの排除及び/又はRNAのヌクレオチド配列中のUヌクレオシドのU以外のヌクレオシドによる置換を含む、方法を提供する。免疫原性が低下したRNAを使用すると、例えば、RNAの治療有効性を妨害し、又は対象において有害作用を誘導する免疫応答を誘発することなく薬学的に活性なペプチド又はタンパク質の発現を得るために、対象に薬物としてRNAを投与することが可能になる。
【背景技術】
【0002】
in vitroで転写されたmRNA(IVT mRNA)が、遺伝子療法において重要な役割を果たす潜在性を有する新薬クラスとして浮上している。1992年に治療剤として最初に記載されたが、IVT mRNAの免疫原性によりタンパク質補充療法のためのその開発が妨げられた。しかし、この問題は、mRNA中に修飾ヌクレオシドを導入することによって解決された(Kariko, K.、Buckstein, M.、Ni, H.、及びWeissman, D. (2005)、Suppression of RNA recognition by Toll-like receptors: the impact of nucleoside modification and the evolutionary origin of RNA.、Immunity、23、165~175頁を参照)。この研究では、すべてのウリジンが、最も一般的な天然に存在する修飾ヌクレオシドであるプソイドウリジンと交換された。プソイドウリジンで修飾されたmRNAは、高度に翻訳可能で非免疫原性であることが判明した(Kariko, K.、Muramatsu, H.、Welsh、F. A.、Ludwig, J.、Kato, H.、Akira, S.、及びWeissman, D. (2008)、Incorporation of pseudouridine into mRNA yields superior nonimmunogenic vector with increased translational capacity and biological stability.、Molecular therapy、16、1833~1840頁を参照)。代替の解決策は、ウリジン残基の25%を2-チオウリジン(s2U)と置き換えることであり、免疫原性が一部残留するmRNAをもたらした(Kormann, M. S.、Hasenpusch, G.、Aneja, M. K.、Nica, G.、Flemmer, A. W.、Herber-Jonat, S.、Huppmann, M.、Mays, L. E.、Illenyi, M.、Schams, A.、Griese, M.、Bittmann, I.、Handgretinger、R.、Hartl, D.、Rosenecker, J.、及びRudolph, C. (2011)、Expression of therapeutic proteins after delivery of chemically modified mRNA in mice.、Nature biotechnology、29、154~157頁を参照)。
【0003】
最近、修飾ヌクレオシドの使用を必要としない治療的に適用可能なIVT mRNAを生成するための代替法が報告された(Thess, A.、Grund, S.、Mui, B. L.、Hope, M. J.、Baumhof, P.、Fotin-Mleczek, M.、及びSchlake, T. (2015)、Sequence-engineered mRNA without chemical nucleoside modifications enables an effective protein therapy in large animals.、Molecular Therapy、23、1457~1465頁を参照)。この研究では、mRNAの配列組成が、各アミノ酸について最もGC含有量に富むコドンを選択することによって変更された。この研究は、このようなGCが最大化されたmRNAは、免疫活性化を低減し、それによってmRNAの翻訳及び半減期を改善する潜在性を有し得ることを示す。
【0004】
しかし、コドンが最適化されGCが最大化された配列の免疫原性の欠如は、この研究において明確に実証されておらず、その理由は、試験IVT mRNAがTransIT(登録商標)、市販の複合体形成剤を用いて製剤化されたためである。TransIT(登録商標)で製剤化されたRNAは、主にIFN-αを誘導することが公知である(Kariko, K.、Muramatsu, H.、Ludwig, J.、及びWeissman, D. (2011)、Generating the optimal mRNA for therapy: HPLC purification eliminates immune activation and improves translation of nucleoside-modified, protein-encoding mRNA.、Nucleic acids research、39、e142を参照)が、IFN-α誘導は、Thessらによって実施された実験のいずれにおいても測定されなかった。結果として、GCが最大化されたmRNAを使用することによる免疫活性化の低減のレベル及びこの方法の治療上の利益は、不明確なままである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Kariko, K.、Buckstein, M.、Ni, H.、及びWeissman, D. (2005)、Suppression of RNA recognition by Toll-like receptors: the impact of nucleoside modification and the evolutionary origin of RNA.、Immunity、23、165~175頁
【文献】Kariko, K.、Muramatsu, H.、Welsh、F. A.、Ludwig, J.、Kato, H.、Akira, S.、及びWeissman, D. (2008)、Incorporation of pseudouridine into mRNA yields superior nonimmunogenic vector with increased translational capacity and biological stability.、Molecular therapy、16、1833~1840頁
【文献】Kormann, M. S.、Hasenpusch, G.、Aneja, M. K.、Nica, G.、Flemmer, A. W.、Herber-Jonat, S.、Huppmann, M.、Mays, L. E.、Illenyi, M.、Schams, A.、Griese, M.、Bittmann, I.、Handgretinger、R.、Hartl, D.、Rosenecker, J.、及びRudolph, C. (2011)、Expression of therapeutic proteins after delivery of chemically modified mRNA in mice.、Nature biotechnology、29、154~157頁
【文献】T Thess, A.、Grund, S.、Mui, B. L.、Hope, M. J.、Baumhof, P.、Fotin-Mleczek, M.、及びSchlake, T. (2015)、Sequence-engineered mRNA without chemical nucleoside modifications enables an effective protein therapy in large animals.、Molecular Therapy、23、1457~1465頁
【文献】Kariko, K.、Muramatsu, H.、Ludwig, J.、及びWeissman, D. (2011)、Generating the optimal mRNA for therapy: HPLC purification eliminates immune activation and improves translation of nucleoside-modified, protein-encoding mRNA.、Nucleic acids research、39、e142
【文献】Mahiny及びKariko(Methods Mol Biol 1428:297~306頁、2016
【文献】「A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)」、H.G.W. Leuenberger、B. Nagel、及びH. Kolbl編、Helvetica Chimica Acta、CH-4010 Basel、Switzerland、(1995)
【文献】Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2版、J. Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor 1989
【文献】Molecular Cloning A Laboratory Manual、2版、Sambrook、Fritsch、及びManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989年版又は1991年版
【文献】Smith及びWaterman、1981、Ads App. Math.、2、482
【文献】Neddleman及びWunsch、1970、J. Mol. Biol.、48、443
【文献】Pearson及びLipman、1988、Proc. Natl Acad. Sci. USA、85、2444
【文献】Gallie DR、Tanguay RL、Leathers V.:(1995)、The tobacco etch viral 5' leader and poly(A) tail are functionally synergistic regulators of translation.、Gene、165、233~238頁
【文献】Semple, SC、Akinc, A、Chen, J、Sandhu, AP、Mui, BL、Cho, CKら(2010)、Rational design of cationic lipids for siRNA delivery.、Nat Biotechnol、28:172~176頁
【文献】Sallusto, F.及びA. Lanzavecchia.、1994.、Efficient presentation of soluble antigen by cultured human dendritic cells is maintained by granulocyte/macrophage colony-stimulating factor plus interleukin 4 and downregulated by tumor necrosis factor a.、J. Exp. Med.、179:1109頁
【文献】Kim, CH、Oh, Y、及びLee, TH(1997)、Codon optimization for high-level expression of human erythropoietin (EPO) in mammalian cells.、Gene、199:293~301頁
【文献】Kariko, K.ら、Kariko K、Muramatsu H、Keller JM、Weissman D(2012)、Increased erythropoiesis in mice injected with submicrogram quantities of pseudouridine-containing mRNA encoding erythropoietin.、Mol Ther、20:948~953頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、治療上適用可能で非免疫原性のRNA、特に、修飾ヌクレオシドの使用を同様に必要としないIVT mRNAを生成するための代替の、且つ更には優れた方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ウリジン含有量が低く、アデノシン含有量が増大したmRNA構築物は、免疫原性が低いことが本明細書で実証されている。これらのAに富む(U欠乏)mRNAの免疫原性及び翻訳可能性の両方がヒト樹状細胞(DC)においてin vitroで、且つBALB/cマウスにおいてin vivoで対応する野生型(wt)mRNAと比較された。
【0008】
本発明は、RNAの免疫原性の低減をもたらし、RNA療法においてそれを使用することを可能にして、例えば、目的のペプチド又はタンパク質を提供する真核生物、好ましくは哺乳動物mRNA等のRNAを変更する方法を対象とする。本発明は、このようなRNAを含む組成物にも関する。本発明は、RNA療法、例えば、細胞内で治療的に関連するペプチド又はタンパク質の発現を得るための薬物としての本明細書に記載のRNAの使用にも関する。主題の組成物及び方法は、タンパク質の発現の誤りを伴う無数の障害を処置することにおいて有用である。
【0009】
一態様では、本発明は、RNAの免疫原性を低下させる方法であって、ウリジン(U)含有量を低減することによってRNAのヌクレオチド配列を修飾する工程を含み、U含有量の前記低減は、RNAのヌクレオチド配列からのUヌクレオシドの排除及び/又はRNAのヌクレオチド配列中のUヌクレオシドのU以外のヌクレオシドによる置換を含む、方法に関する。
【0010】
一実施形態では、本方法は、
(i)第1のRNAのヌクレオチド配列を準備する工程と、
(ii)第1のRNAのヌクレオチド配列と比較して低減されたU含有量を含む第2のRNAのヌクレオチド配列を設計する工程と、任意選択で、
(iii)第2のRNAを準備する工程と
を含む。
【0011】
更なる態様では、本発明は、RNA転写のための核酸分子を準備する方法であって、
(i)第1のRNAのヌクレオチド配列をコードする第1のDNA配列を準備する工程と、
(ii)第1のRNAのヌクレオチド配列と比較して低減されたU含有量を含む第2のRNAのヌクレオチド配列をコードする第2のDNA配列を設計する工程であって、U含有量の前記低減は、RNAのヌクレオチド配列からのUヌクレオシドの排除及び/又はRNAのヌクレオチド配列中のUヌクレオシドのU以外のヌクレオシドによる置換を含む、工程と、
(iii)第2のDNA配列を含む核酸分子を準備する工程と
を含む方法に関する。
【0012】
本発明の方法の一実施形態では、RNAは、少なくとも1種のペプチド又はタンパク質をコードする。一実施形態では、ペプチド又はタンパク質は、薬学的に活性、又は抗原性である。一実施形態では、U含有量を低減することにより修飾されたRNAによってコードされるペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列は、非修飾RNAによってコードされるペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列と同一である。
【0013】
本発明の方法の一実施形態では、前記低減されたU含有量は、U含有量を低減することによって修飾されたRNAを非修飾RNAと比較してより低い免疫原性にする。
【0014】
本発明の方法の一実施形態では、U含有量を低減することによって修飾されたRNA中のU含有量は、非修飾RNAと比較して少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%低減される。
【0015】
本発明の方法の一実施形態では、U含有量は、RNAの5'非翻訳領域、コード領域、及び3'非翻訳領域のうちの1つ又は複数において低減される。本発明の方法の一実施形態では、U含有量は、RNAのコード領域内で低減される。
【0016】
本発明の方法の一実施形態では、U含有量の前記低減は、RNAのヌクレオチド配列中のUヌクレオシドのU以外のヌクレオシドによる置換を含む。
【0017】
本発明の方法の一実施形態では、U以外の前記ヌクレオシドは、アデノシン(A)、グアノシン(G)、5-メチルウリジン(m5U)、及びシチジン(C)からなる群から選択される。
【0018】
本発明の方法の一実施形態では、U含有量の前記低減は、Uヌクレオシドのアデノシン(A)ヌクレオシドによる置換を含む。
【0019】
本発明の方法の一実施形態では、U含有量の前記低減は、少なくとも1個のUヌクレオシドを含むコドンを、同じアミノ酸をコードするが、より少ないUヌクレオシドを含む、好ましくはUヌクレオシドを含まない他のコドンによって変更する工程を含む。
【0020】
一実施形態では、本発明の方法は、天然に存在するヌクレオシドの少なくとも1つの類似体をRNAのヌクレオチド配列中に導入する工程を更に含む。一実施形態では、天然に存在するヌクレオシドの類似体をRNAのヌクレオチド配列中に導入する工程により、RNAの免疫原性が低減される。一実施形態では、天然に存在するヌクレオシドの少なくとも1つの類似体をRNAのヌクレオチド配列中に導入する工程は、Uヌクレオシドのプソイドウリジンによる置換を含む。
【0021】
本発明の方法の一実施形態では、RNAはmRNAである。
【0022】
更なる態様では、本発明は、RNAを得る方法であって、(i)RNA転写のための核酸分子を準備する本発明の方法に従ってRNA転写のための核酸分子を準備する工程と、(ii)鋳型として核酸分子を使用してRNAを転写する工程とを含む方法に関する。
【0023】
更なる態様では、本発明は、天然に存在するRNAと比較して免疫原性が低下した修飾RNAであって、前記天然に存在するRNAと比較して低減されたU含有量を含むヌクレオチド配列を有し、U含有量の前記低減は、RNAのヌクレオチド配列からのUヌクレオシドの排除及び/又はRNAのヌクレオチド配列中のUヌクレオシドのU以外のヌクレオシドによる置換を含む、修飾RNAに関する。
【0024】
本発明のRNAの実施形態は、本発明の方法について上述した通りである。
【0025】
本明細書に記載のRNAは、例えば、遺伝子の一過性発現のために使用することができ、適用可能な分野は、機能性組換えタンパク質、例えば、エリスロポエチン、ホルモン、凝固阻害剤等をin vivoで一過性発現させるために投与されるRNA医薬品である。
【0026】
更なる態様では、本発明は、RNAを使用して対象を処置する方法であって、(i)RNAの免疫原性を低下させる本発明の方法に従ってRNAの免疫原性を低下させる工程と、(ii)対象にRNAを投与する工程とを含む方法に関する。
【0027】
更なる態様では、本発明は、RNAを使用して対象を処置する方法であって、(i)RNAを得る本発明の方法に従ってRNAを得る工程と、(ii)対象にRNAを投与する工程とを含む方法に関する。
【0028】
更なる態様では、本発明は、対象を処置する方法であって、対象に本発明のRNAを投与する工程を含む方法に関する。
【0029】
一実施形態では、本明細書に記載のRNAは、対象に繰り返して投与される。一実施形態では、本明細書に記載のRNAは、RNAによってコードされるペプチド又はタンパク質を発現させるために対象の細胞内に導入されるように対象に投与される。
【0030】
特に好適な一実施形態では、本明細書に記載のRNAは、in vitroで転写されたRNAである。一実施形態では、本明細書に記載のRNAは、プソイドウリジン及び/又は5-メチルシチジンによって修飾される。
【0031】
一実施形態では、U含有量を低下させると、U含有量が低減されていない状況と比較してRNAの免疫原性が低減される。
【0032】
本発明の特に好適な一実施形態では、U含有量を低減することによって修飾されているRNAは、非修飾RNAと比較してA含有量が増大しており、好ましくはGC含有量が低減している。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A】野生型マウスEPO(wt EPO)、GCに富むマウスEPO(最適化マウスEPO/omEPOとも呼ばれる)、Aに富むマウスEPO、並びにThess, A.、Grund, S.、Mui, B. L.、Hope, M. J.、Baumhof, P.、Fotin-Mleczek, M.、及びSchlake, T. (2015)に記載された、GCが最大化されたマウスEPOをコードするmRNAのヌクレオチド組成を示す図である。
図1B】野生型イヌEPO(wt EPO)及びAに富むイヌEPO(cEPO)をコードするmRNAのヌクレオチド組成を示す図である。
図2】実施例2に従って調製したLNP製剤化マウスEPO mRNA 10μgを注射して6/24時間後の血漿中のEPO&IFNアルファ(INF-α)のレベルを示す図である。最低レベルのIFN-αが、最低数のウリジンを含有したAに富むmRNAによって誘導された。Aに富むRNAは、wt EPO RNAと比較してより効率的に翻訳され、5倍多いEPOがそれから産生された。これらの結果は、RNAのU含有量とその免疫原性の間の直接相関を実証し、その理由は、最高のU含有量を含むwt RNAは、最も多いIFN-αを誘導し、一方、最低数のウリジンを含有したAに富むmRNAは、最も少ないIFN-αを誘導したためである。
図3】実施例4に従って調製したmRNA-リポソーム製剤20μgを注射して6/24時間後の血漿中のEPO&IFNアルファのレベルを示す図である。最高のU含有量を含むwt RNAは、最も多いIFN-αを誘導し、一方、Aに富むmRNAは、最も少ないIFN-αを誘導したので、結果は、LNP製剤化mRNAについて得たものと同様であった。
図4】TransIT複合体化マウスEPO mRNA 0.1μgをトランスフェクトされたヒトDCによるIFNアルファ誘導及びEPO産生を示す図である。インターフェロンアルファ(IFN-α)及びマウスEPOレベルは、TransIT複合体化0.1μg EPO mRNAに曝露して24時間後にヒト単球由来樹状細胞の培養基中で測定した。そのコード配列(CDS)中に最も少ないウリジン(U)を含有したAに富むEPO mRNAは、最も多くのEPOタンパク質を分泌し、GCに富む又はwt EPO mRNAより有意に少ないIFN-αを誘導した。
図5】野生型mRNAをコードするマウスEPO、GCに富むmRNAをコードするマウスEPO、及びAに富むmRNAをコードするマウスEPOのウリジン含有量の比較を示す図である。
図6】TransIT複合体化イヌEPO mRNA 3μgの腹腔内注射前(0日目)並びに腹腔内注射の7日後及び14日後にマウス(n=5)において得たヘマトクリット値を示す図である。7日目までに、ヘマトクリットは、そのコード配列(CDS)中に最も少ないウリジン(U)を含有し、GC(グアノシン及びシチジン)含有量が最低であったAに富むイヌEPO mRNAを注射されたすべてのマウスにおいて有意に増大した。Aに富むイヌEPO mRNAの投与の7日後に、ヘマトクリットは、wtイヌEPO mRNAを注射されたマウスより有意に高かった。*p値<0.05を表す。 ヘマトクリットは、Mahiny及びKariko(Methods Mol Biol 1428:297~306頁、2016)が記載した通り、20μL未満の血液を抜き取ることにより測定し、こうして失血関連ヘマトクリット増加を回避した。
図7】イヌEPOをコードする野生型mRNA及びイヌEPOをコードするAに富むmRNAのコード配列のウリジン含有量の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を以下で詳細に記載するが、本発明は、本発明に記載の特定の方法論、プロトコール、及び試薬が多様であり得るので、これらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のためだけであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになる本発明の範囲を限定するように意図されていないことも理解されるべきである。別段に定義されていない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
【0035】
以下において、本発明の要素を記載する。これらの要素は、特定の実施形態とともに列挙されているが、これらは、追加の実施形態を作るために任意の様式で、且つ任意の数で組み合わせることができることが理解されるべきである。様々に記載される実施例及び好適な実施形態は、明示的に記載される実施形態のみに本発明を限定するように解釈されるべきでない。本記載は、明示的に記載される実施形態を、開示され、且つ/又は好適な要素の任意の数と組み合わせる実施形態を支持及び包含することが理解されるべきである。更に、本願におけるすべての記載される要素の任意の並び換え及び組合せは、脈絡により別段に示されていない限り、本願の記載によって開示されているとみなされるべきである。
【0036】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)」、H.G.W. Leuenberger、B. Nagel、及びH. Kolbl編、Helvetica Chimica Acta、CH-4010 Basel、Switzerland、(1995)に記載されているように定義される。
【0037】
本発明の実行には、別段に示されてない限り、本分野の文献(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2版、J. Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor 1989を参照)に説明されている化学、生化学、及び組換えDNA技法の従来法を使用する。
【0038】
本明細書、及び以下に続く特許請求の範囲全体にわたって、脈絡により別段に要求されない限り、単語「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の変形は、述べたメンバー、整数、若しくは工程、又はメンバー、整数、若しくは工程の群を含めることを暗示するが、任意の他のメンバー、整数、若しくは工程、又はメンバー、整数、若しくは工程の群を除外せず、とはいえ、いくつかの実施形態では、このような他のメンバー、整数、若しくは工程、又はメンバー、整数、若しくは工程の群が除外される場合があり、即ち、主題は、述べたメンバー、整数、若しくは工程、又はメンバー、整数、若しくは工程の群を含めることにあることが理解される。本発明を記載することとの関連で(特に、特許請求の範囲との関連で)使用される用語「a」及び「an」及び「the」、並びに同様の言及は、本明細書で別段に示されていない限り、又は脈絡によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方に及ぶと解釈されるべきである。本明細書の値の範囲の記述は、その範囲内に入る各別個の値を個々に指す簡便な方法として機能を果たすように単に意図されている。本明細書で別段に示されていない限り、各個々の値は、それが本明細書で個々に列挙されているように明細書に組み込まれている。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書で別段に示されていない限り、又は脈絡により別段に明らかに矛盾しない限り、任意の適当な順序で実施することができる。本明細書に提供される任意且つすべての例、又は例示的な言い回し(例えば、「等」)の使用は、本発明をより良好に例示するように単に意図されており、別段に主張される本発明の範囲を限定しない。本明細書中の言い回しは、本発明の実行に本質的な任意の主張されていない要素を示すものとして解釈されるべきでない。
【0039】
いくつかの文献が、本明細書の本文全体にわたって引用されている。本明細書で引用される文献(すべての特許、特許出願、科学刊行物、製造者の仕様書、指示書等を含む)のそれぞれは、上記のものであれ、以下のものであれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。本明細書中のいずれも、先行発明によって本発明がそのような開示に先行する権利がないことを承認するものとして解釈されるべきでない。
【0040】
用語「免疫原性」は、特定の物質、特に、RNAの、ヒト等の動物の体内で免疫応答を惹起する能力を指す。言い換えれば、免疫原性は、体液性及び/又は細胞媒介免疫反応を誘導する能力である。望まれない免疫原性には、薬物等の治療物質に対する有機体による免疫応答が含まれる。この反応は、処置の治療効果を不活化する場合があり、有害作用を誘導し得る。
【0041】
U含有量を低減することによって修飾されている本明細書に記載のRNAは、より多くのUを含有する無修飾RNA分子より免疫原性が有意に低い。一実施形態では、修飾RNAは、その無修飾対応物より少なくとも5%免疫原性が低い。別の実施形態では、免疫原性は、少なくとも10%低減される。別の実施形態では、免疫原性は、少なくとも20%低減される。別の実施形態では、免疫原性は、少なくとも30%低減される。別の実施形態では、免疫原性は、少なくとも40%低減される。別の実施形態では、免疫原性は、少なくとも50%低減される。別の実施形態では、免疫原性は、少なくとも60%低減される。別の実施形態では、免疫原性は、少なくとも70%低減される。別の実施形態では、免疫原性は、少なくとも80%低減される。別の実施形態では、免疫原性は、少なくとも90%低減される。別の実施形態では、免疫原性は、除去され、又は本質的に除去され、即ち、約100%低減される。修飾RNA及びその無修飾対応物の相対的免疫原性は、所与の量の修飾RNAと同じ程度に同じ結果(例えば、同じ量のタンパク質の発現)を誘発するのに要求される無修飾RNAの量を判定することによって判定することができる。例えば、2倍多くの無修飾RNAが同じ応答を誘発するのに要求される場合、修飾RNAは、無修飾RNAより50%免疫原性が低い。別の実施形態では、修飾RNA及びその無修飾対応物の相対的免疫原性は、同じ量の無修飾RNAと比べて、修飾RNAの投与に応答して分泌されたサイトカイン(例えば、IL-12、IFN-α、TNF-α、RANTES、MIP-1α若しくはβ、IL-6、IFN-β、又はIL-8)の量を判定することによって判定される。例えば、半分ほどのサイトカインが分泌される場合、修飾RNAは、無修飾RNAより50%免疫原性が低い。
【0042】
「有意により低い免疫原性の」は、免疫原性の検出可能な低下を指す。別の実施形態では、この用語は、有効量のRNAを、検出可能な免疫応答を誘因することなく投与する、又は繰り返して投与することができるような低下を指す。別の実施形態では、この用語は、RNAを、RNAによってコードされるペプチド又はタンパク質の発現を検出可能に低減するのに十分な免疫応答を誘発することなく繰り返して投与することができるような低下を指す。別の実施形態では、低下は、RNAを、RNAによってコードされるペプチド又はタンパク質の発現を排除するのに十分な免疫応答を誘発することなく繰り返して投与することができるようなものである。
【0043】
「低下させること」、「低減すること」、又は「阻害すること」等の用語は、5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上のレベルの全体的な低下を引き起こす能力に関する。これは、完全な又は本質的に完全な低下、即ち、ゼロ又は本質的にゼロへの低下も含む。
【0044】
「増大させること」、「増強すること」、又は「延長すること」等の用語は、好ましくは、約少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも100%、好ましくは少なくとも200%、特に、少なくとも300%の増大、増強、又は延長に関する。これらの用語は、ゼロ又は測定不能若しくは検出不能レベルからゼロ超のレベル又は測定可能若しくは検出可能であるレベルへの増大、増強、又は延長に関する場合もある。
【0045】
本明細書で実証されるように、RNAの免疫原性は、RNAのU含有量を低減する、即ち、RNA中のUヌクレオシドのパーセンテージを低減することによって低下させることができる。RNAのU含有量の低減は、RNAのヌクレオチド配列からUヌクレオシドを排除し、且つ/又はRNAのヌクレオチド配列中のUヌクレオシドをU以外のヌクレオシドに置換することによって達成することができる。
【0046】
「RNAのヌクレオチド配列からUヌクレオシドを排除すること」は、UヌクレオシドがRNA配列から欠失されることを意味する。一実施形態では、Uヌクレオシドは、mRNA分子の非コード領域から排除される。一実施形態では、Uヌクレオシドは、mRNA分子の5'非翻訳領域(UTR)及び/又は3'UTRから排除される。本発明の一実施形態では、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも70%のUヌクレオシドが排除される。
【0047】
「RNAのヌクレオチド配列中のUヌクレオシドをU以外のヌクレオシドに置換すること」は、UヌクレオシドがRNA配列から欠失され、同じ数のU以外のヌクレオシドが、例えば、欠失されたUヌクレオシドの代わりに挿入されることを意味する。したがって、「RNAのヌクレオチド配列中のUヌクレオシドをU以外のヌクレオシドに置換すること」は、U含有量が、ヌクレオチドを除去することなく、したがって、RNA中のヌクレオチドの数を低減することなく低減されることを意味する。Uヌクレオシドは、mRNA分子の非コード領域及び/又はコード領域内で置換され得る。一実施形態では、Uヌクレオシドは、mRNA分子のコード領域内で置換される。一実施形態では、U含有量は、特定のアミノ酸をコードする1つのコドンを、同じ又は関連するアミノ酸、好ましくは同じアミノ酸をコードし、より少ないUを含有する別のコドンに置換することによって低減される。遺伝コードの縮重は、非修飾配列中に存在するUヌクレオシドの数を、同じコード能力を維持しながら低減することを可能にする。
【0048】
RNAのヌクレオチド配列は、U含有コドンを、修飾RNAによってコードされるペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列が、非修飾RNAによってコードされるペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列と同一であるように、同じアミノ酸をコードするが、より少ないUヌクレオシドを含み、好ましくはUヌクレオシドを含まない他のコドンに置換することによりRNAのコード領域内のU含有量を低減することによって修飾されることが、本発明によれば好適である。特に好適な一実施形態では、U含有量は、可能な最高程度に低減される。
【0049】
どのアミノ酸がコドンによってコードされるかに応じて、RNA配列の修飾のいくつかの異なる可能性が可能となり得る。A、C、又はGをもっぱら含むコドンによってコードされるアミノ酸の場合では、U含有量を低減するための修飾は必要でない。他の場合では、Uヌクレオシドを含むコドンは、同じアミノ酸をコードするが、Uヌクレオシドを含まない又はより少ないUヌクレオシドを含む他のコドンで単に置換することによって変更することができる。例えば、:
Argのコドンは、CGUの代わりにAGA、AGG、CGC、CGA、又はCGG、好ましくはAGAに変更することができる。
Glyのコドンは、GGUの代わりにGGC、GGA、又はGGG、好ましくはGGAに変更することができる。
Proのコドンは、CCUの代わりにCCC、CCA、又はCCG、好ましくはCCAに変更することができる。
Thrのコドンは、ACUの代わりにACC、ACA、又はACG、好ましくはACAに変更することができる。
Alaのコドンは、GCUの代わりにGCC、GCA、又はGCG、好ましくはGCAに変更することができる。
Leuのコドンは、UUA、UUG、又はCUUの代わりにCUC、CUA、又はCUG、好ましくはCUG又はCUCに変更することができる。
Ileのコドンは、AUUの代わりにAUC又はAUA、好ましくはAUCに変更することができる。
Valのコドンは、GUUの代わりにGUC、GUA、又はGUG、好ましくはGUGに変更することができる。
Serのコドンは、UCUの代わりにUCC、UCA、UCG、又はAGUに変更することができ、好ましくは、Serのコドンは、UCU、UCC、UCA、UCG、又はAGUの代わりにAGCに変更することができる。
Pheのコドンは、UUUの代わりにUUCに変更することができる。
Asnのコドンは、AAUの代わりにAACに変更することができる。
Hisのコドンは、CAUの代わりにCACに変更することができる。
Tyrのコドンは、UAUの代わりにUACに変更することができる。
Aspのコドンは、GAUの代わりにGACに変更することができる。
Cysのコドンは、UGUの代わりにUGCに変更することができる。
【0050】
しかし、特定のコドンのU含有量を配列変化によって変更することができず、依然として同じアミノ酸をコードする事例が存在する。例えば、
Met - AUG
停止 - UAA、UAG、又はUGA
Trp - UGG
【0051】
本発明の一実施形態では、Uヌクレオシドを含み、同じアミノ酸をコードするが、Uヌクレオシドを含まない又はより少ないUヌクレオシドを含む他のコドンによって置換され得るコドンの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%が、同じアミノ酸をコードするが、Uヌクレオシドを含まない又はより少ないUヌクレオシドを含む他のコドンによって置換される。特に好適な一実施形態では、Uヌクレオシドを含み、同じアミノ酸をコードするが、Uヌクレオシドを含まない又はより少ないUヌクレオシドを含む他のコドンによって置換され得るコドンの少なくともすべてが、同じアミノ酸をコードするが、Uヌクレオシドを含まない又はより少ないUヌクレオシドを含む他のコドンによって置換され、その結果、RNAの免疫原性が低下する。
【0052】
本発明の一実施形態では、Uヌクレオシドの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも70%が置換によって排除される。RNAのU含有量が、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、又は好ましくは少なくとも40%且つ最大で80%、好ましくは最大で70%、好ましくは最大で60%、又は好ましくは最大で50%低減されることが本発明によれば好適である。RNAのヌクレオチド配列が、U含有コドンを、同じアミノ酸をコードするが、より少ないUヌクレオシドを含む、好ましくはUヌクレオシドを含まない他のコドンに置換することにより、RNAのコード領域内のU含有量を低減することによって修飾されるだけである場合、上記は、コード領域のヌクレオチド配列のみに関連し得る。
【0053】
U含有量が低減されている修飾RNAにおいて、GC含有量が非修飾RNAと比較して有意に増大していないことが本発明によれば好適である。この点において、「有意に増大していない」は、GC含有量がせいぜい10%、好ましくはせいぜい5%、より好ましくはせいぜい3%、2%、又は1%増大していることを意味する。特に好適な一実施形態では、GC含有量は増大してない、即ち、それは本質的に一定であり、又は低減されている。この点において、「低減されたGC含有量」は、GC含有量が少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、又は少なくとも10%低減されていることを好ましくは意味する。RNAのヌクレオチド配列が、U含有コドンを、同じアミノ酸をコードするが、より少ないUヌクレオシドを含む、好ましくはUヌクレオシドを含まない他のコドンに置換することによりRNAのコード領域内のU含有量を低減することによって修飾されているだけである場合、上記は、コード領域のヌクレオチド配列のみに関連し得る。
【0054】
U含有量が低減されている修飾RNAにおいて、A含有量が非修飾RNAと比較して増大していることが本発明によれば好適である。この点において、「増大したA含有量」は、A含有量が少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、好ましくは少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも37%、又は少なくとも40%増大していることを好ましくは意味する。RNAのヌクレオチド配列が、U含有コドンを、同じアミノ酸をコードするが、より少ないUヌクレオシドを含む、好ましくはUヌクレオシドを含まない他のコドンに置換することによりRNAのコード領域内のU含有量を低減することによって修飾されているだけである場合、上記は、コード領域のヌクレオチド配列のみに関連し得る。
【0055】
A含有量の増大(及びGC含有量の有意でない増大、好ましくは一定のGC含有量又はGC含有量の低減)は、Uヌクレオシドを含むコドンを、同じアミノ酸をコードするが、Uヌクレオシドを含まない又はより少ないUヌクレオシドを含み、高A含有量及び低GC含有量を有する他のコドンに少なくとも部分的に置換することにより変更することによって実現することができる。例えば、
Argのコドンは、CGUの代わりにAGAに変更することができる。
Glyのコドンは、GGUの代わりにGGAに変更することができる。
Proのコドンは、CCUの代わりにCCAに変更することができる。
Thrのコドンは、ACUの代わりにACAに変更することができる。
Alaのコドンは、GCUの代わりにGCAに変更することができる。
【0056】
代替として又は追加的に、A含有量の増大(及びGC含有量の有意でない増大、好ましくは一定のGC含有量又はGC含有量の低減)は、コドンを、同じアミノ酸をコードし、置換されるコドンのようにより多くのUヌクレオシドを含まず、好ましくはUヌクレオシドを含まず、高A含有量及び低GC含有量を有する他のコドンに少なくとも部分的に置換することにより実現することができる。例えば、
Argのコドンは、CGG、AGG、CGC、及びCGAの代わりにAGAに変更することができる。
Glyのコドンは、GGC及びGGGの代わりにGGAに変更することができる。
Proのコドンは、CCC及びCCGの代わりにCCAに変更することができる。
Thrのコドンは、ACC及びACGの代わりにACAに変更することができる。
Alaのコドンは、GCC及びGCGの代わりにGCAに変更することができる。
Gluのコドンは、GAGの代わりにGAAに変更することができる。
Lysのコドンは、AAGの代わりにAAAに変更することができる。
【0057】
特に好適な一実施形態では、U含有量が低減されている修飾RNAは、Aに富む(又は非修飾RNAと比較してAが濃縮されている、即ち、そのA含有量が増大している)。
【0058】
用語「Aに富む」は、本明細書で使用する場合、25%超のA含有量を有する核酸分子を指す。特定の態様では、Aに富む核酸は、約30%のA~約37%のAを含み、追加の態様では、Aに富む核酸は、約26%超のA、約27%超のA、約28%超のA、約29%超のA、約30%超のA、約31%超のA、約32%超のA、約33%超のA、約34%超のA、約35%超のA、約36%超のA等を含む。RNAのヌクレオチド配列が、U含有コドンを、同じアミノ酸をコードするが、より少ないUヌクレオシドを含む、好ましくはUヌクレオシドを含まない他のコドンに置換することによりRNAのコード領域内のU含有量を低減することによって修飾されているだけである場合、上記は、コード領域のヌクレオチド配列のみに関連し得る。
【0059】
一実施形態では、本発明によるAに富むRNAは、約60%未満のGC含有量を有する。別の実施形態では、Aに富むRNAは、約55%未満のGC含有量を有する。別の実施形態では、Aに富むRNAは、約54%未満のGC含有量を有する。別の実施形態では、Aに富むRNAは、約53%未満のGC含有量を有する。別の実施形態では、Aに富むRNAは、約52%未満のGC含有量を有する。別の実施形態では、Aに富むRNAは、約51%未満のGC含有量を有する。別の実施形態では、Aに富むRNAは、約50%未満のGC含有量を有する。RNAのヌクレオチド配列が、U含有コドンを、同じアミノ酸をコードするが、より少ないUヌクレオシドを含む、好ましくはUヌクレオシドを含まない他のコドンに置換することによりRNAのコード領域内のU含有量を低減することによって修飾されているだけである場合、上記は、コード領域のヌクレオチド配列のみに関連し得る。
【0060】
用語「GCに富む」は、本明細書で使用する場合、50%超のG+C含有量を有する核酸分子を指す。特定の態様では、GCに富む核酸は、約60%のGC~約75%のGCを含み、追加の態様では、GCに富む核酸は、約55%超のGC、約60%超のGC、約61%超のGC、約62%超のGC、約63%超のGC、約64%超のGC、約65%超のGC、約66%超のGC、約67%超のGC、約68%超のGC、約69%超のGC、約70%超のGC等を含む。RNAのヌクレオチド配列が、U含有コドンを、同じアミノ酸をコードするが、より少ないUヌクレオシドを含む、好ましくはUヌクレオシドを含まない他のコドンに置換することによりRNAのコード領域内のU含有量を低減することによって修飾されているだけである場合、上記は、コード領域のヌクレオチド配列のみに関連し得る。
【0061】
一実施形態では、本発明によるGCに富むRNAは、約30%未満のA含有量を有する。別の実施形態では、GCに富むRNAは、約25%未満のA含有量を有する。別の実施形態では、GCに富むRNAは、約24%未満のA含有量を有する。別の実施形態では、GCに富むRNAは、約23%未満のA含有量を有する。別の実施形態では、GCに富むRNAは、約22%未満のA含有量を有する。別の実施形態では、GCに富むRNAは、約21%未満のA含有量を有する。別の実施形態では、GCに富むRNAは、約20%未満のA含有量を有する。RNAのヌクレオチド配列が、U含有コドンを、同じアミノ酸をコードするが、より少ないUヌクレオシドを含む、好ましくはUヌクレオシドを含まない他のコドンに置換することによりRNAのコード領域内のU含有量を低減することによって修飾されているだけである場合、上記は、コード領域のヌクレオチド配列のみに関連し得る。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「U含有量」は、パーセントとして典型的には表現されるウリジン(U)である特定のRNA分子又はRNA配列のヌクレオシドの量を指す。特定のRNAの配列が分かっている場合、U含有量は、式:
【0063】
【数1】
【0064】
(式中、G、C、A、及びUは、特定のRNA分子又はRNA配列中の各残基の数を指す)を使用して判定してパーセントU含有量をもたらすことができる。RNAのヌクレオチド配列が、U含有コドンを、同じアミノ酸をコードするが、より少ないUヌクレオシドを含む、好ましくはUヌクレオシドを含まない他のコドンに置換することによりRNAのコード領域内のU含有量を低減することによって修飾されているだけである場合、上記は、コード領域のヌクレオチド配列のみに関連し得る。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「A含有量」は、パーセントとして典型的には表現されるアデノシン(A)である特定のRNA分子又はRNA配列のヌクレオシドの量を指す。特定のRNAの配列が分かっている場合、A含有量は、式:
【0066】
【数2】
【0067】
(式中、G、C、A、及びUは、特定のRNA分子又はRNA配列中の各残基の数を指す)を使用して判定してパーセントA含有量をもたらすことができる。RNAのヌクレオチド配列が、U含有コドンを、同じアミノ酸をコードするが、より少ないUヌクレオシドを含む、好ましくはUヌクレオシドを含まない他のコドンに置換することによりRNAのコード領域内のU含有量を低減することによって修飾されているだけである場合、上記は、コード領域のヌクレオチド配列のみに関連し得る。
【0068】
本明細書で使用する場合、用語「G+C含有量」又は「GC含有量」は、パーセントとして典型的には表現されるグアノシン(G)又はシチジン(C)である特定のRNA分子又はRNA配列のヌクレオシドの量を指す。特定のRNAの配列が分かっている場合、G+C含有量は、式:
【0069】
【数3】
【0070】
(式中、G、C、A、及びUは、特定のRNA分子又はRNA配列中の各残基の数を指す)を使用して判定してパーセントGC含有量をもたらすことができる。RNAのヌクレオチド配列が、U含有コドンを、同じアミノ酸をコードするが、より少ないUヌクレオシドを含む、好ましくはUヌクレオシドを含まない他のコドンに置換することによりRNAのコード領域内のU含有量を低減することによって修飾されているだけである場合、上記は、コード領域のヌクレオチド配列のみに関連し得る。
【0071】
ヌクレオシド、特に、コドンを置換するのに使用することができる様々な異なる方法が存在する。例えば、塩基置換を、標準的な部位指向突然変異誘発によってRNAを作製するのに使用されるDNA鋳型中で行うことができる(例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、2版、Sambrook、Fritsch、及びManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989年版又は1991年版を参照)。代わりに、RNA全体を、標準的なin vitro転写技法を使用して酵素を用いてDNA鋳型から合成することができる。酵素を用いて合成されるRNAの場合では、他の修飾、例えば、RNA安定性を増強するための修飾を行うことが望ましい場合がある。例えば、キャップを、キャッピング酵素を使用して転写後に、又は転写中に合成されるRNAに付加することができる。同様に、ポリAテールを、DNA鋳型から酵素を使用して、例えば、ポリAポリメラーゼを用いて転写後に、又は転写中に付加することができる。
【0072】
上述した配列変化に加えて、他の配列変化をRNA中に行うことができ、例えば、対象のRNAを、ヌクレアーゼ感受性モチーフを除去することによってよりヌクレアーゼ耐性にすることができることが理解されるべきである。ある特定のRNAは、細胞内でもともと不安定であり、これは通常、ヌクレアーゼによって認識されるこのような不安定なRNA内の不安定な配列モチーフの存在に起因する。このような配列がRNA中に存在する場合、これらを標準的な遺伝子操作によって排除し、置き換え、又は修飾することができる。
【0073】
用語「ヌクレオシド」は、リン酸基を含まないヌクレオチドとして考えることができる化合物に関する。ヌクレオシドは、糖(例えば、リボース又はデオキシリボース)に連結されている核酸塩基である一方、ヌクレオチドは、ヌクレオシド及び1個又は複数のリン酸基から構成される。ヌクレオシドの例としては、シチジン、ウリジン、アデノシン、及びグアノシンがある。
【0074】
ウリジンは、β-N1-グリコシド結合を介してリボース環(又はより具体的には、リボフラノース)に付着したウラシルを含有するグリコシル化ピリミジン類似体である。これは、核酸を構成する5つの標準的なヌクレオシドの1つであり、その他はアデノシン、チミジン、シチジン、及びグアノシンである。5つのヌクレオシドは一般に、それぞれその1文字コードU、A、T、C、及びGに省略される。しかし、チミジンはより一般に、「dT」(「d」は「デオキシ」を表す)として書かれ、その理由は、それがウリジン中に見つかるリボフラノース環ではなく2'-デオキシリボフラノース部分を含有するためである。これは、チミジンがリボ核酸(RNA)ではなくデオキシリボ核酸(DNA)中に見つかるためである。反対に、ウリジンは、DNAではなくRNA中に見つかる。残りの3つのヌクレオシドは、RNA及びDNAの両方中に見つけることができる。RNA中では、これらは、A、C、及びGとして表され、一方DNA中では、これらは、dA、dC、及びdGとして表される。
【0075】
本発明によれば、核酸又は核酸分子は、好ましくはデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)である核酸を指す。本発明によれば、核酸は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換えで調製された及び化学合成された分子を含む。本発明によれば、核酸は、一本鎖又は二本鎖及び直鎖状又は共有結合的に閉じた環状分子の形態にあり得る。本発明による用語「核酸」は、ヌクレオチド塩基、糖、又はリン酸において化学的に誘導体化された核酸、並びに非天然ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体を含有する核酸も含む。
【0076】
本発明との関連で、用語「RNA」は、リボヌクレオチド残基を含み、好ましくはリボヌクレオチド残基から完全又は実質的に構成されている分子を指す。用語「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2'位でヒドロキシル基を含むヌクレオチドに関する。用語「RNA」は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離RNA、例えば、部分的に又は完全に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、及び1つ又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換、及び/又は変更によって天然に存在するRNAと異なる修飾RNA等の組換えで生成されたRNAを含む。このような変更は、RNAの末端への、又は内部での、例えば、RNAの1つ若しくは複数のヌクレオチドにおいて等での非ヌクレオチド材料の付加を含み得る。RNA分子内のヌクレオチドは、非標準的なヌクレオチド、例えば、天然に存在しないヌクレオチド、又は化学合成されたヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドも含み得る。これらの変更されたRNAは、類似体、特に天然に存在するRNAの類似体と呼ぶことができる。本発明によれば、RNAは、mRNAを含み、好ましくはmRNAに関する。本明細書に記載のmRNA等のRNAは、約500から約10000の間、5000、又は2000ヌクレオチドの長さを有しうる。別の実施形態では、RNAは、約500から約1000ヌクレオチドの長さを有する。別の実施形態では、RNAは、30超のヌクレオチド長である。別の実施形態では、RNAは、50超のヌクレオチド長である。別の実施形態では、長さは、少なくとも60ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも80ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも100ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも120ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも140ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも160ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも180ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも200ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも250ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも300ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも350ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも400ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも450ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも500ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも600ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも700ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも800ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも900ヌクレオチドである。別の実施形態では、長さは、少なくとも1000ヌクレオチドである。
【0077】
本明細書で使用する場合、用語「RNA」は、化学的に修飾された、天然に存在しないRNAを含む。このような化学修飾は、RNA分子を天然に存在するRNA分子よりヌクレアーゼに対してより耐性にし得る。RNA分子の核酸配列の例示的な修飾には、例えば、塩基の修飾、例えば、塩基の化学修飾が含まれる。用語「化学修飾」は、本明細書で使用する場合、天然に存在するRNAにおいて見られるものと異なる化学的性質を導入する修飾を含む。例えば、化学修飾としては、修飾ヌクレオチド、例えば、ヌクレオチド類似体の導入、又はRNA分子中に天然に見つからないペンダント基を含めること等の共有結合性修飾がある。このような修飾体としては、それだけに限らないが、プソイドウリジン、1-メチルプソイドウリジン、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン、2'-O-メチルプソイドウリジン、5-メチルジヒドロウリジン、5-メチルシチジン、5-メチルウリジン、N6-メチルアデノシン、2-チオウリジン、2'-O-メチルウリジン、1-メチルアデノシン、2-メチルアデノシン、2'-O-メチルアデノシン、2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン、イノシン、1-メチルイノシン、3-メチルシチジン、2'-O-メチルシチジン、2-チオシチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、5,2'-O-ジメチルシチジン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、7-メチルグアノシン、2'-O-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、ジヒドロウリジン、5,2'-O-ジメチルウリジン、4-チオウリジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-チオ-2'-O-メチルウリジン、5-ヒドロキシウリジン、5-メトキシウリジン、及び3-メチルウリジンがある。
【0078】
用語「mRNA」は、「メッセンジャー-RNA」を意味し、DNA鋳型を使用することによって生成される転写物に関し、ペプチド又はタンパク質をコードする。典型的には、mRNAは、5'UTR、タンパク質コード領域、3'UTR、及びポリ(A)配列を含み、5'キャップも含み得る。mRNA分子のいくつかの領域は、5'キャップ、5'UTR、3'UTR、及びポリ(A)配列を含むタンパク質に翻訳されない。
【0079】
用語「非翻訳領域」(又はUTR)は、2つのセクションのいずれか、mRNAの鎖上のコード領域の各側の一方を指す。それが5'側に見つかる場合、それは、5'UTRと呼ばれ、それが3'側に見つかる場合、それは、3'UTRと呼ばれる。
【0080】
用語「5'非翻訳領域」は、遺伝子の5'末端、タンパク質コード領域の開始コドンから上流に位置し、転写されるがアミノ酸配列に翻訳されない領域、又はRNA分子中の対応する領域に関する。この領域は、ウイルス、原核生物、及び真核生物における異なる機構による転写物の翻訳の調節に重要である。非翻訳と呼ばれるが、5'UTR又はその部分は、時にタンパク質産物に翻訳される。次いでこの産物は、mRNAの主要なコード配列の翻訳を調節することができる。しかし多くの他の有機体では、5'UTRは、完全に非翻訳であり、翻訳を調節するのに複雑な二次構造を代わりに形成する。5'UTRは、転写開始部位から始まり、コード領域の開始配列の前の一ヌクレオチド(nt)(通常AUG)で終わる。原核生物では、5'UTRの長さは、3~10ヌクレオチド長である傾向があり、一方真核生物では、それは、100~数千ヌクレオチド長のいずれかである傾向がある。真核生物と原核生物の5'UTRのエレメントは、大いに異なる。原核生物5'UTRは、開始コドンから通常3~10ヌクレオチド上流であるシャインダルガーノ配列(AGGAGGU)としても公知のリボソーム結合部位(RBS)を含有する。その一方で、真核生物5'UTRは、コザック共通配列(ACCAUGG)を含有し、この配列は、開始コドンを含有する。
【0081】
用語「3'非翻訳領域」は、遺伝子の3'末端、タンパク質コード領域の終止コドンの下流に位置し、転写されるがアミノ酸配列に翻訳されない領域、又はRNA分子中の対応する領域に関する。3'非翻訳領域内の調節領域は、mRNAのポリアデニル化、翻訳効率、局在化、及び安定性に影響を与え得る。3'UTRは、調節タンパク質及びマイクロRNA(miRNA)の両方の結合部位を含有する。3'非翻訳領域は、典型的には、翻訳産物の終止コドンから転写プロセス後に通常付着されるポリ(A)配列に及ぶ。哺乳動物mRNAの3'非翻訳領域は、典型的には、AAUAAAヘキサヌクレオチド配列として公知の相同領域を有する。この配列は、おそらくポリ(A)付着シグナルであり、しばしばポリ(A)付着部位の10~30塩基上流に位置する。
【0082】
本発明によれば、第1のポリヌクレオチド領域は、前記第1のポリヌクレオチド領域の5'末端が第2のポリヌクレオチド領域の3'末端に最も近い前記第1のポリヌクレオチド領域の部分である場合、前記第2のポリヌクレオチド領域の下流に位置していると見なされる。
【0083】
ポリアデニル化は、一次転写産物RNAへのポリ(A)配列又はテールの付加である。ポリ(A)配列は、アデニル酸と呼ばれる複数のアデノシン一リン酸残基からなる。言い換えれば、これは、アデニン塩基のみを有するRNAのストレッチである。真核生物では、ポリアデニル化は、翻訳のために成熟メッセンジャーRNA(mRNA)を産生するプロセスの一部である。したがってこれは、遺伝子発現のより大きいプロセスの一部を形成する。ポリアデニル化のプロセスは、遺伝子の転写として始まり、完了し、又は終わる。新しく作製されたプレmRNAの3'のほとんどのセグメントは、一連のタンパク質によって最初に切り離され、次いでこれらのタンパク質は、RNAの3'末端でポリ(A)配列を合成する。ポリ(A)配列は、mRNAの核外輸送、翻訳、及び安定性に重要である。この配列は、経時的に短縮され、それが十分短くなったとき、mRNAは、酵素分解される。
【0084】
用語「ポリアデニル配列」、「ポリ(A)配列」、又は「ポリ(A)テール」は、典型的にはRNA分子の3'末端に位置するアデニル酸残基の配列を指す。本発明は、コード鎖に相補的な鎖中のチミジル酸残基の繰り返しに基づいてDNA鋳型によってRNA転写中に付着される一方、通常、DNA中でコードされないが、核内での転写後に鋳型非依存性RNAポリメラーゼによってRNAの遊離3'末端に付着される配列を提供する。本発明によれば、一実施形態では、ポリ(A)配列は、少なくとも20、好ましくは少なくとも40、好ましくは少なくとも80、好ましくは少なくとも100、好ましくは最大で500、好ましくは最大で400、好ましくは最大で300、好ましくは最大で200、特に、最大で150個のAヌクレオチド、好ましくは連続したAヌクレオチド、特に、約120個のAヌクレオチドを有する。用語「Aヌクレオチド」又は「A」は、アデニル酸残基を指す。
【0085】
用語「5'キャップ」は、mRNA分子の5'末端に見つかるキャップ構造を指し、一般に、珍しい5'-5'三リン酸連結を介してmRNAに接続されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態では、このグアノシンは、7位でメチル化されている。用語「慣例的な5'キャップ」は、天然に存在するRNA 5'キャップ、好ましくは7-メチルグアノシンキャップ(m7G)を指す。本発明との関連で、用語「5'キャップ」は、5'キャップ類似体を含み、それは、RNAキャップ構造に類似し、好ましくはin vivo及び/又は細胞内で、RNAに付着された場合にRNAを安定化する能力を有するように修飾されている。RNAへの5'キャップ又は5'キャップ類似体の提供は、前記5'キャップ又は5'キャップ類似体の存在下でDNA鋳型のin vitro転写によって実現することができ、前記5'キャップは、生成されるRNA鎖中に共転写的に組み込まれ、又はRNAは、例えば、in vitro転写によって生成することができ、5'キャップは、キャッピング酵素、例えば、ワクシニアウイルスのキャッピング酵素を使用して転写後に生成することができる。
【0086】
本発明の一実施形態では、RNAは、一本鎖自己複製RNA等の自己複製RNAである。一実施形態では、自己複製RNAは、プラスセンスの一本鎖RNAである。一実施形態では、自己複製RNAは、ウイルスRNA又はウイルスRNAに由来するRNAである。一実施形態では、自己複製RNAは、アルファウイルスゲノムRNAであり、又はアルファウイルスゲノムRNAに由来する。一実施形態では、自己複製RNAは、ウイルス遺伝子発現ベクターである。一実施形態では、ウイルスは、セムリキ森林ウイルスである。一実施形態では、自己複製RNAは、1種又は複数の導入遺伝子を含有する。一実施形態では、RNAがウイルスRNAであり、又はウイルスRNAに由来する場合、導入遺伝子は、構造タンパク質をコードするウイルス配列等のウイルス配列と部分的又は完全に入れ替わることができる。一実施形態では、自己複製RNAは、in vitroで転写されたRNAである。
【0087】
特定の実施形態では、本発明によるRNAは、異なるRNA分子の集団、例えば、異なるペプチド及び/又はタンパク質を任意選択でコードする異なるRNA分子の混合物、全細胞RNA、RNAライブラリー又はその部分、例えば、未分化細胞、特に、胚性幹細胞等の幹細胞等の特定の細胞型内で発現されるRNA分子のライブラリー、又は分化細胞と比べて未分化細胞、特に、発現が胚性幹細胞等の幹細胞内に濃縮されたRNA等のRNA分子のライブラリーの画分を含む。したがって、本発明によれば、用語「RNA」は、細胞からのRNAの単離を含むプロセスによって、且つ/又は組換え手段、特に、in vitro転写によって得ることができるRNA分子の混合物、全細胞RNA、又はこれらの画分を含み得る。
【0088】
本発明によれば、用語「遺伝子」は、1種若しくは複数の細胞産物の産生及び/又は1つ若しくは複数の細胞間又は細胞内機能の実現を担う特定の核酸配列を指す。より具体的には、前記用語は、特異的タンパク質又は機能若しくは構造RNA分子をコードする核酸を含むDNAセクションに関する。
【0089】
RNAは、細胞から単離することができ、DNA鋳型から作製することができ、又は当技術分野で公知の方法を使用して化学合成することができる。好適な実施形態では、RNAは、DNA鋳型からin vitroで合成される。特に好適な一実施形態では、RNA、特に、mRNAは、DNA鋳型からin vitro転写によって生成される。in vitro転写方法は、当業者に公知である。例えば、様々なin vitro転写キットが市販されている。特に好適な一実施形態では、RNAは、in vitroで転写されたRNA(IVT RNA)である。
【0090】
好ましくは、本明細書に記載のRNAは、起源が真核生物、好ましくは哺乳動物である。好適な実施形態では、RNAは、真核生物mRNAの特徴、例えば、5'キャップの存在及び/又はポリ(A)配列の存在を含む。
【0091】
好適な実施形態では、本発明による核酸分子は、ベクターである。用語「ベクター」は、その最も一般的な意味においてここで使用され、例えば、核酸を原核及び/又は真核宿主細胞内に導入し、適切な場合、ゲノム内に一体化するのを可能にする前記核酸の任意の中間ビヒクル(intermediate vehicle)を含む。このようなベクターは、細胞内で好ましくは複製及び/又は発現される。ベクターは、プラスミド、ファージミド、又はウイルスゲノムを含む。用語「プラスミド」は、本明細書で使用する場合、一般に、染色体DNAとは独立に複製することができる染色体外遺伝物質、通常、環状DNA二重鎖の構築物に関する。
【0092】
本明細書に記載の核酸は、組換え及び/又は単離分子であり得る。
【0093】
「単離分子」は、本明細書で使用する場合、その天然環境から分離された、且つ好ましくは他の細胞物質等の他の分子を実質的に含まない分子を指すように意図されている。用語「単離核酸」は、本発明によれば、核酸が、(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってin vitroで増幅された、(ii)クローニングによって組換え産生された、(iii)例えば、切断及びゲル電気泳動分画によって精製された、又は(iv)例えば、化学合成によって合成されたことを意味する。単離核酸は、組換えDNA技法によるマニピュレーションに利用可能な核酸である。
【0094】
本発明との関連における用語「組換え型の」は、「遺伝子操作によって作製された」を意味する。好ましくは、本発明との関連における組換え核酸等の「組換え型物体」は、天然に存在しない。
【0095】
用語「天然に存在する」は、本明細書において使用する場合、物体を自然において見つけることができる事実を指す。例えば、有機体(ウイルスを含む)中に存在し、自然における源から単離することができ、実験室で人によって意図的に修飾されていないペプチド、タンパク質、又は核酸は、天然に存在する。
【0096】
1種を超えるペプチド又はタンパク質の発現のための核酸、特にRNAとして、異なるペプチド若しくはタンパク質が異なる核酸分子中でコードされる核酸型、又はペプチド若しくはタンパク質が同じ核酸分子中でコードされる核酸型のいずれも使用することができる。
【0097】
用語RNAの「安定性」は、RNAの「半減期」に関する。「半減期」は、分子の活性、量、又は数の半分を排除するのに必要とされる時間に関する。本発明との関連で、RNAの半減期は、前記RNAの安定性を示す。RNAの半減期は、RNAの「発現の継続時間」に影響を与え得る。長い半減期を有するRNAは、長時間にわたって発現されることが予期され得る。
【0098】
用語「発現」は、その最も一般的な意味で本発明によって使用され、例えば、転写及び/又は翻訳によるRNA及び/又はペプチド若しくはタンパク質の産生を含む。RNAに関して、用語「発現」又は「翻訳」は、特に、ペプチド又はタンパク質の産生に関する。これは、核酸の部分的な発現も含む。更に、発現は、一過性又は安定であり得る。
【0099】
本発明によれば、「RNA発現」、「RNAを発現する」、又は「RNAの発現」等の用語は、RNAによってコードされるペプチド又はタンパク質の産生に関する。好ましくは、このような用語は、RNAによってコードされるペプチド又はタンパク質を発現する、即ち産生するためのRNAの翻訳に関する。
【0100】
本発明との関連で、用語「転写」は、DNA配列内の遺伝子コードがRNAへと転写されるプロセスに関する。引き続いて、RNAは、タンパク質へと翻訳され得る。本発明によれば、用語「転写」は、「in vitro転写」を含み、用語「in vitro転写」は、RNA、特に、mRNAが、好ましくは適切な細胞抽出物を使用して無細胞系内でin vitro合成されるプロセスを指す。好ましくは、クローニングベクターが、転写物を生成するために適用される。これらのクローニングベクターは、一般に転写ベクターと呼ばれ、本発明によれば、用語「ベクター」によって包含される。本発明によれば、RNAは、好ましくはin vitroで転写されたRNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のin vitro転写によって得ることができる。転写を制御するためのプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼのための任意のプロモーターであり得る。RNAポリメラーゼの特定の例は、T7、T3、及びSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは、本発明によるin vitro転写は、T7又はSP6プロモーターによって制御される。in vitro転写のためのDNA鋳型は、核酸、特に、cDNAをクローニングし、in vitro転写のためにそれを適切なベクター中に導入することによって得ることができる。cDNAは、RNAの逆転写によって得ることができる。
【0101】
用語「翻訳」は、本発明によれば、メッセンジャーRNAの鎖が、アミノ酸の配列のアセンブリーにペプチド又はタンパク質を作製するように指示する細胞のリボソーム内のプロセスに関する。
【0102】
用語「発現制御配列」は、本発明によれば、プロモーター、リボソーム結合配列、及び遺伝子の転写又は導出されたRNAの翻訳を制御する他の制御エレメントを含む。本発明の特定の実施形態では、発現制御配列は、調節することができる。発現制御配列の正確な構造は、種又は細胞型に応じて変動し得るが、通常、それぞれ転写及び翻訳の開始に関与する5'非転写並びに5'及び3'非翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等を含む。より具体的には、5'非転写発現制御配列は、機能的に連結した遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を包含するプロモーター領域を含む。発現制御配列は、エンハンサー配列又は上流アクチベーター配列も含み得る。
【0103】
本明細書に指定した核酸配列、特に、転写可能及びコーディング核酸配列は、前記核酸配列に相同又は非相同であり得る任意の発現制御配列、特にプロモーターと組み合わせることができ、用語「相同の」は、核酸配列が、やはり発現制御配列に天然に機能的に連結されている事実を指し、用語「非相同の」は、核酸配列が発現制御配列に天然に機能的に連結されていない事実を指す。
【0104】
用語「プロモーター」又は「プロモーター領域」は、RNAポリメラーゼの認識及び結合部位を提供することによってコード配列の発現を制御する遺伝子の前記コード配列の上流の(5')DNA配列を指す。プロモーター領域は、前記遺伝子の転写の調節に関与する更なる因子の更なる認識又は結合部位を含み得る。プロモーターは、原核生物又は真核生物遺伝子の転写を制御することができる。プロモーターは、「誘導性」であり得、誘導因子に応答して転写を開始することができ、又は転写が誘導因子によって制御されない場合、「構成的」であり得る。誘導プロモーターは、誘導因子が存在しない場合、非常に小さい程度にのみ発現されるか、又はまったく発現されない。誘導因子の存在下で、遺伝子は、「スイッチオン」されるか、又は転写のレベルが増大する。これは通常、特異的転写因子の結合によって媒介される。
【0105】
本発明による好適なプロモーターの例は、SP6、T3、又はT7ポリメラーゼのプロモーターである。
【0106】
本発明によるRNAの免疫原性の低下は、前記RNAの発現の増強をもたらし得る。
【0107】
「発現の増強」、「増強された発現」、又は「発現の増大」等の用語は、所与の数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の量が、同じ数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の量より多いことを本発明との関連で意味し、ここでRNA分子の発現は、RNAの発現の増強又は増大をもたらす条件を除いて同じ条件下で実施される。この脈絡において、「同じ条件」は、例えば、同じペプチド又はタンパク質をコードするRNA配列が同じ手段によって対象に投与され、ペプチド又はタンパク質の量が同じ手段によって測定される状況を指す。ペプチド又はタンパク質の量は、モルで、又は質量によって(by weight)、例えば、グラムで、又は質量によって(by mass)、又はポリペプチド活性によって与えられる場合があり、例えば、ペプチド又はタンパク質が酵素である場合、それは触媒活性として与えられる場合があり、又はペプチド若しくはタンパク質が抗体若しくは抗原若しくは受容体である場合、それは結合親和性として与えられる場合がある。一実施形態では、「発現の増強」、「増強された発現」、又は「発現の増大」等の用語は、所与の数のRNA分子によって、且つ所与の時間内に発現されるペプチド又はタンパク質の量が、同じ数のRNA分子によって、且つ同じ時間内に発現されるペプチド又はタンパク質の量より多いことを本発明との関連で意味する。例えば、特定の時点で所与の数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の最大値は、同じ数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の最大値より高い場合がある。他の実施形態では、所与の数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の最大値は、同じ数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の最大値より高い必要はないが、所与の時間内に所与の数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の平均量は、同じ数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の平均量より多い場合がある。後者の場合は、「発現のより高いレベル」又は「発現のレベルの増大」と本明細書で呼ばれ、発現のより高い最大値及び/又は発現のより高い平均値に関する。代替として又は追加的に、「発現の増強」、「増強された発現」、又は「発現の増大」等の用語は、ペプチド又はタンパク質がRNA分子
によって発現される時間がより長い場合があることも本発明との関連で意味する。したがって、一実施形態では、「発現の増強」、「増強された発現」、又は「発現の増大」等の用語は、RNAが安定に存在し発現される時間が同じ数のRNA分子が安定に存在し発現される時間より長いために、所与の数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の量が、同じ数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の量より多いことも本発明との関連で意味する。これらの場合は、「発現の継続時間の増大」とも本明細書で呼ばれる。好ましくは、このようなより長い時間は、RNAの投与後、又はRNAの第1の投与後(例えば、繰り返し投与の場合における)、少なくとも48時間、好ましくは少なくとも72時間、より好ましくは少なくとも96時間、特に、少なくとも120時間、又はそれ以上にわたる発現を指す。
【0108】
発現のレベル及び/又はRNAの発現の継続時間は、例えば、ELISA手順、免疫組織化学手順、定量的画像分析手順、ウエスタンブロット、質量分析、定量的免疫組織化学検査手順、又は酵素アッセイを使用することにより、発現される合計量及び/若しくは所与の時間内に発現される量等の量、並びに/又はRNAによってコードされるペプチド若しくはタンパク質の発現の時間を測定することによって判定することができる。
【0109】
好ましくは、本発明によれば、対象にRNAを投与した後、RNAは、対象の細胞によって吸収されることになり、即ち、対象の細胞は、RNAによってコードされるペプチド又はタンパク質の発現のためにRNAをトランスフェクトされることになる。
【0110】
用語「トランスフェクション」は、細胞内への核酸、特にRNAの導入を指す。本発明の目的に関して、用語「トランスフェクション」は、細胞内への核酸の導入、又はこのような細胞による核酸の取込みも含み、細胞は、対象、例えば、患者の中に存在し得る。したがって、本発明によれば、核酸をトランスフェクトするための細胞は、in vitro又はin vivoで存在することができ、例えば、細胞は、患者の臓器、組織、及び/又は有機体の一部を形成することができる。本発明によれば、トランスフェクションは、一過性又は安定であり得る。トランスフェクションの一部の用途については、トランスフェクトされた遺伝物質が一過性にのみ発現される場合、それは十分である。トランスフェクションプロセスで導入される核酸は、通常核ゲノム内に一体化されないので、異質核酸は、有糸分裂によって希釈され、又は分解されることになる。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞は、希釈率を大いに低減する。トランスフェクトされた核酸が細胞及びその娘細胞のゲノム内に実際に残ることが望まれる場合、安定なトランスフェクションが行われなければならない。RNAは、そのコードされるペプチド又はタンパク質を一過性に発現するように細胞内にトランスフェクトすることができる。
【0111】
本発明によれば、核酸をin vitroで細胞内に導入、即ち、移入又はトランスフェクトするのに有用な任意の技法を使用することができる。好ましくは、核酸は、標準技法によって細胞内にトランスフェクトされる。このような技法としては、電気穿孔、リポフェクション、及びマイクロインジェクションがある。本発明の特に好適な一実施形態では、核酸は、電気穿孔によって細胞内に導入される。電気穿孔又は電気透過処理は、外部印加電場によって引き起こされる細胞形質膜の導電率及び透過性の有意な増大に関する。これは通常、何らかの物質を細胞内に導入するやり方として分子生物学において使用される。
【0112】
本発明によれば、タンパク質又はペプチドをコードする核酸の細胞内への導入、又は細胞によるタンパク質又はペプチドをコードする核酸の取込みにより、前記タンパク質又はペプチドの発現がもたらされることが好適である。細胞は、コードされたペプチド若しくはタンパク質を細胞内に(例えば、細胞質内且つ/若しくは核内に)発現することができ、コードされたペプチド若しくはタンパク質を分泌することができ、又はそれを表面上に発現することができる。
【0113】
本発明によれば、核酸、特に、RNAの投与は、裸の核酸として、又は投与試薬と組み合わせて実現される。好ましくは、核酸の投与は、裸の核酸の形態においてである。好ましくは、RNAは、RNase阻害剤等の安定化物質と組み合わせて投与される。本発明は、核酸の細胞内への導入の繰り返しにより、長時間にわたる持続発現が可能になることも想定する。RNAは、RNAが、例えば、RNAと複合体を形成し、又はRNAが密閉若しくは封入されるベシクルを形成することによって会合され、裸のRNAと比較してRNAの安定性を増大させることができる任意の担体とともに投与することができる。本発明による有用な担体としては、例えば、カチオン性脂質等の脂質含有担体、リポソーム、特に、カチオン性リポソーム、及びミセルがある。カチオン性脂質は、負に荷電した核酸と複合体を形成し得る。任意のカチオン性脂質を本発明によって使用することができる。
【0114】
本発明によれば、核酸は、特定の細胞に向けることができる。このような実施形態では、核酸を細胞に投与するのに使用される担体(例えば、レトロウイルス又はリポソーム)は、結合標的分子を有し得る。例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体又は標的細胞上の受容体のリガンド等の分子を、核酸担体に組み込み、又は結合させることができる。リポソームによる核酸の投与が望まれる場合、エンドサイトーシスに関連した表面膜タンパク質に結合しているタンパク質を、標的化及び/又は吸収を可能にするためにリポソーム製剤中に組み込んでもよい。このようなタンパク質としては、特定の細胞型に特異的であるカプシドタンパク質又はこれらの断片、内部移行されるタンパク質に対する抗体、細胞内部位を標的とするタンパク質等がある。
【0115】
インターフェロンは、抗ウイルス性、抗増殖性、及び免疫モジュレート活性によって特徴付けられる重要なサイトカインである。インターフェロンは、調節される細胞表面上のインターフェロン受容体に結合することによって細胞内での遺伝子の転写を変更及び調節し、それによって細胞内のウイルス複製を防止するタンパク質である。インターフェロンは、2つの型に群分けすることができる。IFN-ガンマは唯一のII型インターフェロンであり、その他のすべてはI型インターフェロンである。I型及びII型インターフェロンは、遺伝子構造(II型インターフェロン遺伝子は、3つのエクソンを有し、I型は、1つのエクソンを有する)、染色体の位置(ヒトでは、II型は、第12染色体上に位置し、I型インターフェロン遺伝子は、第9染色体に連結され、第9染色体上にある)、及びこれらが産生される組織の型(I型インターフェロンは、遍在的に合成され、II型はリンパ球によって合成される)が異なる。I型インターフェロンは、細胞受容体への結合を互いに競合的に阻害し、一方、II型インターフェロンは、別個の受容体を有する。本発明によれば、用語「インターフェロン」又は「IFN」は、好ましくはI型インターフェロン、特に、IFN-アルファ及びIFN-ベータに関する。
【0116】
本発明によれば、用語「宿主細胞」は、形質転換し、又は外因性核酸をトランスフェクトすることができる任意の細胞を指す。用語「宿主細胞」は、本発明によれば、原核(例えば、大腸菌(E.coli))又は真核細胞(例えば、酵母細胞及び昆虫細胞)を含む。哺乳動物細胞、例えば、ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長類由来の細胞等が特に好ましい。細胞は、多数の組織型に由来し、初代細胞及び細胞株を含み得る。具体例としては、ケラチノサイト、末梢血白血球、骨髄幹細胞、及び胚性幹細胞がある。他の実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球、又はマクロファージである。核酸は、単一で、又は数コピーで宿主細胞内に存在してもよく、一実施形態では、宿主細胞内で発現される。
【0117】
本発明によれば、用語「ペプチド」は、オリゴ及びポリペプチドを含み、2以上、好ましくは3以上、好ましくは4以上、好ましくは6以上、好ましくは8以上、好ましくは10以上、好ましくは13以上、好ましくは16以上、好ましくは20以上、最大で好ましくは50、好ましくは100、又は好ましくは150の、ペプチド結合を介して互いに連結された連続したアミノ酸を含む物質を指す。用語「タンパク質」は、大きいペプチド、好ましくは少なくとも151アミノ酸を有するペプチドを指すが、用語「ペプチド」及び「タンパク質」は、同義語として本明細書で通常使用される。
【0118】
用語「ペプチド」及び「タンパク質」は、本発明によれば、アミノ酸成分だけでなく、糖及びリン酸構造等の非アミノ酸成分も含有する物質を含み、エステル、チオエーテル、又はジスルフィド結合等の結合を含有する物質も含む。
【0119】
本発明によれば、RNA等の核酸は、ペプチド又はタンパク質をコードすることができる。したがって、RNA等の核酸は、ペプチド又はタンパク質をコードするコード領域(オープンリーディングフレーム(ORF))を含有し得る。前記核酸は、コードされたペプチド又はタンパク質を発現し得る。例えば、前記核酸は、抗原又は薬学的に活性なペプチド若しくはタンパク質、例えば、免疫学的に活性な化合物(好ましくは抗原でない)等をコード及び発現する核酸であり得る。この点において、「オープンリーディングフレーム」又は「ORF」は、開始コドンで始まり、停止コドンで終わるコドンの連続ストレッチである。
【0120】
本発明によれば、用語「ペプチド又はタンパク質をコードするRNA」は、RNAが、適切な環境下に、好ましくは細胞内に存在する場合、アミノ酸のアセンブリーに、翻訳のプロセス中にペプチド又はタンパク質を産生する、即ち発現するように指示することができることを意味する。好ましくは、本発明によるRNAは、ペプチド又はタンパク質の翻訳を可能にする細胞翻訳機構と相互作用することができる。
【0121】
本発明によれば、一実施形態では、RNAは、薬学的に活性なRNAを含み、又はそれからなる。「薬学的に活性なRNA」は、薬学的に活性なペプチド又はタンパク質をコードするRNAであり得る。
【0122】
用語「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」は、ペプチド又はタンパク質の発現が例えば、疾患又は障害の症状を寛解させることにおいて有効である場合、対象の処置において使用することができるペプチド又はタンパク質を含む。例えば、薬学的に活性なタンパク質は、タンパク質を通常発現しない、又はタンパク質を誤発現する細胞内のタンパク質発現を戻し、又は強化することができ、例えば、薬学的に活性なタンパク質は、望ましいタンパク質を供給することによって突然変異を補償することができる。更に、「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」は、対象において有益な転帰を生じさせることができ、例えば、対象にとって感染疾患に対する予防接種となるタンパク質を生成するのに使用することができる。好ましくは、「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」は、治療有効量で対象に投与されたとき、対象の状態又は病態に対して正の又は有利な効果を有する。好ましくは、薬学的に活性なペプチド又はタンパク質は、治癒的又は対症的性質を有し、投与されて疾患又は障害の1つ又は複数の症状を寛解させ、緩和し、和らげ、逆転し、その発症を遅延させ、又はその重症度を小さくすることができる。薬学的に活性なペプチド又はタンパク質は、予防的性質を有する場合があり、疾患の発症を遅延させ、又はこのような疾患若しくは病状の重症度を小さくするのに使用され得る。用語「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」は、タンパク質又はポリペプチド全体を含み、その薬学的に活性な断片も指すことができる。これは、ペプチド又はタンパク質の薬学的に活性な類似体も含み得る。用語「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」は、抗原であるペプチド及びタンパク質を含み、即ち、ペプチド又はタンパク質は、治療的又は部分的若しくは完全に保護的であり得る対象における免疫応答を誘発する。
【0123】
「有効量」又は「治療有効量」(例えば、RNA、ペプチド、又はタンパク質に関して)は、治療効果を発揮するのに十分な量を指す。別の実施形態では、この用語は、検出可能量のRNAによってコードされるペプチド又はタンパク質の発現を誘発するのに十分なRNAの量を指す。
【0124】
薬学的に活性なタンパク質の例としては、それだけに限らないが、サイトカイン及び免疫系タンパク質、例えば、免疫学的に活性な化合物(例えば、インターロイキン、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン、インテグリン、アドレシン、セレクチン、ホーミング受容体、T細胞受容体、免疫グロブリン、可溶性主要組織適合複合体抗原、免疫学的に活性な抗原、例えば、細菌、寄生虫、又はウイルス抗原等、アレルゲン、自己抗原、抗体)、ホルモン(インスリン、甲状腺ホルモン、カテコールアミン、ゴナドトロピン、栄養ホルモン、プロラクチン、オキシトシン、ドーパミン、ウシソマトトロピン、レプチン等)、成長ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン)、増殖因子(例えば、上皮増殖因子、神経増殖因子、インスリン様増殖因子等)、増殖因子受容体、酵素(組織プラスミノゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、生合成又は分解性コレステロール、ステロイド産生酵素、キナーゼ、ホスホジエステラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、デヒドロゲナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アロマターゼ、シトクロム、アデニル酸シクラーゼ又はグアニル酸シクラーゼ、ノイラミニダーゼ等)、受容体(ステロイドホルモン受容体、ペプチド受容体)、結合タンパク質(成長ホルモン又は成長因子結合タンパク質等)、転写及び翻訳因子、腫瘍増殖抑制タンパク質(例えば、血管新生を阻害するタンパク質)、構造タンパク質(コラーゲン、フィブロイン、フィブリノーゲン、エラスチン、チューブリン、アクチン、及びミオシン等)、血液タンパク質(トロンビン、血清アルブミン、第VII因子、第VIII因子、インスリン、第IX因子、第X因子、組織プラスミノゲンアクチベーター、プロテインC、フォンウィルブランド因子、抗トロンビンIII、グルコセレブロシダーゼ、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)又は修飾第VIII因子、抗凝固因子等)等がある。
【0125】
一実施形態では、本発明による薬学的に活性なタンパク質は、リンパ恒常性の調節に関与するサイトカイン、好ましくは、T細胞の発生、プライミング、拡大、分化、及び/又は生存に関与し、好ましくはこれらを誘導又は増強するサイトカインである。一実施形態では、サイトカインは、インターロイキンである。一実施形態では、本発明による薬学的に活性なタンパク質は、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、及びIL-21からなる群から選択されるインターロイキンである。
【0126】
用語「免疫学的に活性な化合物」は、好ましくは免疫細胞の成熟を誘導及び/若しくは抑制し、サイトカイン生合成を誘導及び/若しくは抑制することによって免疫応答を変更する、且つ/又はB細胞による抗体産生を刺激することによって体液性免疫を変更する任意の化合物に関する。免疫学的に活性な化合物は、それだけに限らないが、抗ウイルス及び抗腫瘍活性を含めた強力な免疫刺激活性を有し、免疫応答の他の態様を、例えば、広範囲のTH2媒介疾患を処置するのに有用であるTH2免疫応答から免疫応答をそらして下方調節することもできる。免疫学的に活性な化合物は、ワクチンアジュバントとして有用であり得る。
【0127】
一実施形態では、疾患関連抗原等の抗原をコードするRNAは、特に、抗原を伴う疾患を有する哺乳動物の処置が望まれる場合、哺乳動物に投与される。RNAは、好ましくは哺乳動物の抗原提示細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、又は他の細胞)内に吸収される。RNAの抗原性翻訳産物が形成され、産物は、T細胞が認識するために細胞の表面上に提示される。一実施形態では、抗原又は任意選択のそのプロセシングによって産生される産物は、T細胞がそのT細胞受容体を通じて認識し、これらの活性化をもたらすために、MHC分子において細胞表面上に提示される。
【0128】
本発明は、本明細書に記載のペプチド、タンパク質、又はアミノ酸配列の「バリアント」も含む。
【0129】
本発明の目的に関して、アミノ酸配列の「バリアント」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸付加バリアント、アミノ酸欠失バリアント、及び/又はアミノ酸置換バリアントを含む。
【0130】
アミノ酸挿入バリアントは、特定のアミノ酸配列中に単一又は2つ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合では、1つ又は複数のアミノ酸残基がアミノ酸配列中の特定の部位内に挿入されるが、得られる産物の適切なスクリーニングを用いてランダムに挿入することも可能である。
【0131】
アミノ酸付加バリアントは、1つ又は複数のアミノ酸、例えば、1、2、3、5、10、20、30、50、又はそれ以上のアミノ酸等のアミノ及び/又はカルボキシ末端融合を含む。
【0132】
アミノ酸欠失バリアントは、配列からの1つ又は複数のアミノ酸の除去によって、例えば、1、2、3、5、10、20、30、50、又はそれ以上アミノ酸の除去等によって特徴付けられる。欠失は、タンパク質の任意の位置内とすることができる。タンパク質のN末端及び/又はC末端で欠失を含むアミノ酸欠失バリアントは、N末端及び/又はC末端トランケーションバリアントとも呼ばれる。
【0133】
アミノ酸置換バリアントは、配列中の少なくとも1種の残基が除去され、別の残基がその場所に挿入されることによって特徴付けられる。相同タンパク質又はペプチド同士間で保存されていないアミノ酸配列中の位置内にある修飾、及び/又はアミノ酸を同様の性質を有する他のアミノ酸と置き換えることが好ましい。好ましくは、タンパク質バリアント中のアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、即ち、同様に帯電したアミノ酸又は無荷電のアミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、自己の側鎖に関係しているアミノ酸のファミリーの1つの置換を伴う。天然に存在するアミノ酸は一般に、4つのファミリー、即ち、酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び無荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)のアミノ酸に分類される。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは時折、芳香族アミノ酸として合同で分類される。
【0134】
所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列のバリアントであるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%になる。類似性又は同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は約100%であるアミノ酸領域について好ましくは与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200アミノ酸からなる場合、類似性又は同一性の程度は、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、又は約200のアミノ酸、好ましくは連続アミノ酸について好ましくは与えられる。好適な実施形態では、類似性又は同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するための整列は、当技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最良配列整列を使用して、例えば、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix: Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignを使用して行うことができる。
【0135】
「配列類似性」は、同一であるか、又は保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸のパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列同士間で同一であるアミノ酸又はヌクレオチドのパーセンテージを示す。
【0136】
用語「パーセンテージ同一性」は、最良整列をした後に得られる、比較される2つの配列間で同一であるアミノ酸残基のパーセンテージを表すように意図されており、このパーセンテージは、純粋に統計的であり、2つの配列間の差異は、ランダムに、且つこれらの全長にわたって分布している。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、これらの配列を最適に整列した後にこれらを比較することによって慣例的に実施され、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定及び比較するために、セグメントによって、又は「比較のウインドウ」によって実施される。比較のための配列の最適な整列は、手作業に加えて、Smith及びWaterman、1981、Ads App. Math.、2、482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman及びWunsch、1970、J. Mol. Biol.、48、443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson及びLipman、1988、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85、2444の類似性検索法によって、又はコンピュータープログラムであって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group社、575 Science Drive、Madison、Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N、及びTFASTA)を使用する、プログラムによって、生成することができる。
【0137】
パーセンテージ同一性は、比較されている2つの配列間の同一の位置の数を判定し、この数を比較された位置の数で除し、得られた結果に100を乗じ、その結果、これらの2つの配列間のパーセンテージ同一性を得ることによって計算される。
【0138】
相同アミノ酸配列は、本発明によれば、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を呈する。
【0139】
本発明によれば、ペプチド又はタンパク質のバリアントは、好ましくは、それが導出されたペプチド又はタンパク質の機能的性質を有する。
【0140】
用語「疾患」又は「障害」は、個体の体に影響する異常な状態を指す。疾患は、特異的な症状及び徴候に関連した医学的状態と解釈されることが多い。疾患は、感染疾患等、元来外部源からの要因によって引き起こされる場合があり、又は疾患は、自己免疫疾患等、体内の機能不全によって引き起こされる場合がある。本明細書で使用する場合、用語「疾患」又は「障害」は、特に、例えば症状の低減及び/又は寛解によって実証されるような、ペプチド又はタンパク質(上述した)の発現から利益を受ける状態を含む。
【0141】
本発明によれば、用語「疾患」は、がん疾患も指す。用語「がん疾患」又は「がん」(医学用語:悪性新生物)は、細胞の群が、制御されない増殖(正常な限界を超える分裂)、侵襲(隣接組織への侵入及びその破壊)、並びに時に転移(リンパ又は血液を介して体内の他の場所に拡散する)を呈する疾患のクラスを指す。がんのこれらの3つの悪性の性質は、良性腫瘍を区別し、良性腫瘍は、自己限定的であり、侵襲又は転移しない。ほとんどのがんは、腫瘍、即ち、細胞の異常増殖によって形成される腫大又は病変部を形成する(新生物細胞又は腫瘍細胞と呼ばれる)が、白血病のようないくつかのがんは腫瘍を形成しない。がんの例としては、それだけに限らないが、癌、リンパ腫、芽腫、肉腫、神経膠腫、及び白血病がある。より特定すれば、このようながんの例としては、骨がん、血液がん、肺がん、肝がん、膵がん、皮膚がん、頭部又は頸部のがん、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん、性器及び生殖器の癌、ホジキン病、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、膀胱のがん、腎臓のがん、腎細胞癌、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉性がん、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、及び下垂体腺腫がある。用語「がん」は、本発明によれば、がん転移も含む。
【0142】
用語「感染疾患」は、個体から個体に又は有機体から有機体に伝達され得、微生物因子によって引き起こされる任意の疾患(例えば、感冒)を指す。感染疾患の例としては、ウイルス感染症、例えば、AIDS(HIV)、A、B、若しくはC型肝炎、ヘルペス、帯状疱疹(水痘)、風疹(風疹ウイルス)、黄熱病、デング熱等、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、出血性感染疾患(マールブルグ若しくはエボラウイルス)、及び重症急性呼吸器症候群(SARS)等、細菌感染症、例えば、レジオネラ病(レジオネラ)、性感染症(例えば、クラミジア若しくは淋病)、胃潰瘍(ヘリコバクター)、コレラ(ビブリオ)、結核、ジフテリア、大腸菌、ブドウ球菌、サルモネラ、若しくは連鎖球菌(破傷風)による感染症等;原虫病原体による感染症、例えば、マラリア、睡眠病、リーシュマニア症等;トキソプラスマ症、即ち、マラリア原虫、トリパノソーマ、リーシュマニア、及びトキソプラズマによる感染症;又は例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、若しくはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)によって引き起こされる真菌感染症がある。
【0143】
用語「自己免疫疾患」は、体が自己組織の一部の構成要素に対して免疫原性(即ち、免疫系)応答を生じさせる任意の疾患を指す。言い換えれば、免疫系は、体内の一部の組織又はシステムを自己として認識するその能力を失い、これが外来性であるかのようにこれを標的とし、攻撃する。自己免疫疾患は、主に1つの臓器が影響されるもの(例えば、溶血性貧血及び抗免疫甲状腺炎)、並びに自己免疫疾患プロセスが多くの組織を通じて広がるもの(例えば、全身性エリテマトーデス)に分類することができる。例えば、多発性硬化症は、脳及び脊髄の神経線維を囲繞する鞘を攻撃するT細胞によって引き起こされると考えられている。これは、協調の喪失、脱力感、及びかすみ目をもたらす。自己免疫疾患は、当技術分野で公知であり、これらとしては、例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ループス、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、溶血性貧血、抗免疫甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、セリアック病、クローン病、大腸炎、糖尿病、強皮症、乾癬等がある。
【0144】
本発明によれば、免疫応答は、抗原又はその断片、例えば、疾患関連抗原をコードする適当なmRNAを対象に導入することによって刺激され得る。
【0145】
用語「抗原」は、免疫応答が生成されるエピトープを含む作用物質に関する。用語「抗原」は、特に、ペプチド及びタンパク質を含む。用語「抗原」は、形質転換を通じてのみ抗原性に、そして感作性になる(例えば、分子中で中間的に、又は体タンパク質で完了することによって)作用物質も含む。抗原は、好ましくは、免疫系の細胞、例えば、抗原提示細胞様樹状細胞又はマクロファージ等によって提示可能である。更に、抗原又はそのプロセシング産物は、好ましくは、T若しくはB細胞受容体によって、又は抗体等の免疫グロブリン分子によって認識できる。好適な実施形態では、抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原、ウイルス抗原、又は細菌性抗原である。
【0146】
用語「疾患関連抗原」は、疾患に関連した任意の抗原を指すのにその最も広い意味で使用される。疾患関連抗原は、エピトープを含有する分子であり、エピトープは、宿主の免疫系を刺激して疾患に対する細胞性抗原特異的免疫応答及び/又は体液性抗体応答を生ずる。したがって疾患関連抗原は、治療目的で使用され得る。疾患関連抗原は、好ましくは、微生物、典型的には微生物抗原による感染症に関連し、又はがん、典型的には腫瘍に関連する。
【0147】
用語「抗原を伴う疾患」は、抗原に関係する任意の疾患、例えば、抗原の存在及び/又は発現によって特徴付けられる疾患を指す。抗原を伴う疾患は、感染疾患、自己免疫疾患、又はがん疾患若しくは単にがんであり得る。上述したように、抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原、ウイルス抗原、又は細菌性抗原であり得る。
【0148】
一実施形態では、疾患関連抗原は、腫瘍関連抗原である。この実施形態では、本発明は、がん又はがん転移の処置に有用であり得る。好ましくは、病変臓器又は組織は、疾患関連抗原を発現するがん細胞等の疾患細胞によって特徴付けられ、且つ/又は疾患関連抗原と疾患細胞表面との会合によって特徴付けられる。インタクトな若しくは実質的にインタクトな腫瘍関連抗原又はその断片、例えば、MHCクラスI及びクラスIIペプチド又は核酸、特に、このような抗原若しくは断片をコードするmRNA等で免疫化すると、MHCクラスI及び/又はクラスII型応答を誘発し、したがって、がん細胞及び/又はCD4+ T細胞を溶解することができるCD8+細胞傷害性Tリンパ球等のT細胞を刺激することが可能になる。このような免疫化は、体液性免疫応答(B細胞応答)を誘発し、腫瘍関連抗原に対する抗体の産生ももたらし得る。一実施形態では、用語「腫瘍関連抗原」は、細胞質、細胞表面、及び細胞核に由来し得るがん細胞の構成要素を指す。特に、これは、細胞内に、又は腫瘍細胞上の表面抗原として好ましくは大量に産生される抗原を指す。腫瘍関連抗原の例としては、HER2、EGFR、VEGF、CAMPATH1-抗原、CD22、CA-125、HLA-DR、ホジキンリンパ腫、又はムチン-1があるが、これらに限定されない。
【0149】
本発明によれば、腫瘍関連抗原は、好ましくは、型及び/又は発現レベルに関して腫瘍又はがん及び腫瘍又はがん細胞に特徴的である任意の抗原を含む。一実施形態では、用語「腫瘍関連抗原」は、通常の条件下で、即ち、健康な対象において、限られた数の臓器及び/若しくは組織内で、又は特定の発達段階において特異的に発現されるタンパク質に関し、例えば、腫瘍関連抗原は、通常の条件下で、胃組織、好ましくは胃粘膜、生殖器、例えば、精巣、栄養膜組織、例えば、胎盤、又は生殖系列細胞内で特異的に発現され得、1つ又は複数の腫瘍又はがん組織内で発現されるか、又は異常に発現される。この脈絡において、「限られた数」は、好ましくは、3以下、より好ましくは2又は1以下を意味する。本発明との関連における腫瘍関連抗原としては、例えば、分化抗原、好ましくは細胞型特異的分化抗原、即ち、通常の条件下で、ある特定の分化段階である特定の細胞型において特異的に発現されるタンパク質、がん/精巣抗原、即ち、通常の条件下で、精巣及び時に胎盤内で特異的に発現されるタンパク質、並びに生殖系列特異的抗原がある。本発明との関連で、腫瘍関連抗原は、好ましくは正常組織内で発現されず、若しくは稀にしか発現されず、又は腫瘍細胞内で突然変異される。好ましくは腫瘍関連抗原又は腫瘍関連抗原の異所性発現は、がん細胞を同定する。本発明との関連で、対象、例えば、がん疾患に罹患している患者においてがん細胞によって発現される腫瘍関連抗原は、好ましくは、前記対象における自己タンパク質である。好適な実施形態では、本発明との関連における腫瘍関連抗原は、通常の条件下で、本質的でない組織若しくは臓器、即ち、免疫系によって損傷された場合に対象の死に至らない組織若しくは臓器、又は免疫系によってアクセス可能でない、若しくはほんのわずかにしかアクセス可能でない臓器若しくは体の構造内で特異的に発現される。好ましくは、腫瘍関連抗原は、それが発現されるがん細胞によってMHC分子において提示される。
【0150】
腫瘍免疫療法、特に、腫瘍ワクチン接種において標的構造として本発明によって企図される腫瘍関連抗原の判定基準を理想的に満たす分化抗原の例は、クローディンファミリーの細胞表面タンパク質、例えばCLDN6及びCLDN18.2である。これらの分化抗原は、様々な起源の腫瘍内で発現され、これらの選択的発現(毒性関連正常組織内での発現無し)及び形質膜への局在化に起因して抗体媒介がん免疫療法に関連した標的構造として特に適している。
【0151】
本発明において有用であり得る抗原の更なる例は、p53、ART-4、BAGE、ベータカテニン/m、Bcr-abL CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、CLAUDIN-12、c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1、G250、GAGE、GnT-V、Gap100、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(又はhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A、好ましくはMAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、又はMAGE-A12、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/メラン-A、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM-1、-2、-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、p190マイナーBCR-abl、Pm1/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1又はRU2、SAGE、SART-1又はSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、SURVIVIN、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、TPTE、及びWT、好ましくはWT-1である。
【0152】
用語「ウイルス抗原」は、抗原的性質を有する、即ち、個体において免疫応答を惹起することができる任意のウイルス成分を指す。ウイルス抗原は、ウイルスリボ核タンパク質又はエンベロープタンパク質であり得る。
【0153】
用語「細菌性抗原」は、抗原的性質を有する、即ち、個体において免疫応答を惹起することができる任意の細菌成分を指す。細菌性抗原は、細菌の細胞壁又は細胞質膜に由来し得る。
【0154】
「抗原プロセシング」は、抗原の、前記抗原の断片であるプロセッション産物(procession product)への分解(例えば、タンパク質のペプチドへの分解)、及び細胞、好ましくは抗原提示細胞による特異的T細胞への提示のためのこれらの断片の1つ又は複数のMHC分子との会合(例えば、結合を介した)を指す。
【0155】
用語「免疫応答」は、本明細書で使用する場合、免疫原性の細菌若しくはウイルス等の有機体、細胞、又は物質等に対する免疫系の反応に関する。用語「免疫応答」には、自然免疫応答及び適応免疫応答が含まれる。好ましくは、免疫応答は、免疫細胞の活性化、サイトカイン生合成及び/又は抗体産生の誘導に関連する。免疫応答は、抗原提示細胞、例えば樹状細胞及び/又はマクロファージ等の活性化、前記抗原提示細胞による抗原又はその断片の提示、並びにこの提示に起因する細胞傷害性T細胞の活性化の工程を含むことが好適である。
【0156】
用語「処置する」又は「処置」は、個体の健康状態を改善し、且つ/又は寿命を延長する(増大させる)任意の処置に関する。前記処置は、個体における疾患を排除し、個体における疾患の発生を停止若しくは減速し、個体における疾患の発生を阻害若しくは減速し、個体における症状の頻度若しくは重症度を低下させ、且つ/又は疾患を現在有する、若しくは疾患を以前に有したことのある個体における再発を低下させることができる。
【0157】
特に、用語「疾患の処置」は、疾患又はその症状の治癒、継続時間の短縮、寛解、疾患又はその症状の進行又は悪化の減速又は阻害を含む。
【0158】
用語「免疫療法」は、特異的免疫反応及び/又は免疫エフェクター機能を好ましくは伴う処置に関する。
【0159】
用語「免疫化」又は「ワクチン接種」は、治療的又は予防的理由で対象を処置するプロセスを記述する。
【0160】
用語「in vivo」は、対象における状況に関する。
【0161】
用語「対象」及び「個体」は、互換的に使用され、哺乳動物に関する。例えば、本発明との関連における哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、飼いならされた動物、例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ等、実験動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット等、及び動物園の動物等の捕らわれている動物である。用語「動物」は、本明細書で使用する場合、ヒトも含む。用語「対象」は、患者、即ち、疾患を有する動物、好ましくはヒトも含み得る。
【0162】
本明細書に記載のRNA等の核酸は、特に本明細書に記載の処置に使用される場合、核酸並びに任意選択で1種又は複数の薬剤学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含む医薬組成物又はキットの形態で存在し得る。
【0163】
医薬組成物は、好ましくは滅菌したものであり、有効量の核酸を含有する。
【0164】
医薬組成物は通常、均一な剤形で提供され、当技術分野で公知の様式で調製することができる。医薬組成物は、例えば、溶液又は懸濁液の形態であり得る。
【0165】
医薬組成物は、塩、緩衝物質、防腐剤、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含むことができ、これらのすべては、好ましくは薬学的に許容される。用語「薬学的に許容される」は、医薬組成物の活性成分の作用を妨害しない材料の無毒性を指す。
【0166】
薬学的に許容されない塩は、薬学的に許容される塩を調製するのに使用してもよく、本発明の中に含まれる。この種類の薬学的に許容される塩は、非制限的な様式で、以下の酸から調製されるものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等。薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、又はカルシウム塩等としても調製することができる。
【0167】
医薬組成物中に使用するのに適した緩衝物質としては、塩での酢酸、塩でのクエン酸、塩でのホウ酸、及び塩でのリン酸がある。
【0168】
医薬組成物中に使用するのに適した防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン、及びチメロサールがある。
【0169】
用語「担体」は、適用を促進し、増強し、又は可能にするために活性成分と組み合わされる、天然又は非天然(合成)の性質の有機又は無機成分を指す。本発明によれば、用語「担体」は、患者への投与に適している1種又は複数の適合性の固体フィラー若しくは液体フィラー、希釈剤、又は封入物質も含む。
【0170】
非経口投与に可能な担体物質は、例えば、滅菌水、グルコース溶液、リンガー、リンガー乳酸塩、滅菌塩化ナトリウム溶液、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーである。
【0171】
用語「賦形剤」は、本明細書で使用する場合、医薬組成物中に存在することができ、活性成分でないすべての物質、例えば、担体、バインダー、滑剤、増粘剤、表面活性剤、防腐剤、乳化剤、緩衝液、香味剤、又は着色剤等を示すことが意図されている。
【0172】
本明細書に記載の医薬組成物は、任意の慣例的な経路を介して、例えば、注射又は注入によるものを含めた非経口投与等によって投与され得る。投与は、好ましくは非経口的、例えば、静脈内、動脈内、皮下、リンパ節内、皮内、又は筋肉内である。
【0173】
非経口投与に適した組成物は通常、好ましくはレシピエントの血液に対して等張性である、活性化合物の滅菌した水性又は非水性製剤を含む。適合性の担体及び溶媒の例は、リンガー液及び等張性塩化ナトリウム溶液である。更に、通常、滅菌固定油が溶液又は懸濁培地として使用される。
【0174】
本明細書に記載の作用物質及び組成物は、好ましくは有効量で投与される。「有効量」は、単独で、又は更なる用量と一緒に所望の反応又は所望の効果を実現する量を指す。特定の疾患又は特定の状態の処置の場合では、所望の反応は、好ましくは疾患の過程の阻害に関する。これは、疾患の進行の減速、及び特に、疾患の進行の中断又は逆転を含む。疾患又は状態の処置における所望の反応は、前記疾患又は前記状態の発病の遅延又は発病の予防でもあり得る。
【0175】
本明細書に記載の作用物質又は組成物の有効量は、処置される状態、疾患の重症度、年齢、生理的条件、サイズ、及び体重を含めた患者の個々のパラメータ、処置の継続時間、付随療法のタイプ(存在する場合)、特定の投与経路、並びに同様の要因に依存することになる。したがって、本明細書に記載の作用物質の投与される用量は、これらのパラメータのいくつかに依存し得る。患者の反応が初期用量で不十分である場合には、より高い用量(又は異なるより局在的な投与経路によって実現される有効により高い用量)を使用することができる。
【0176】
本発明を、実例としてのみ、且つ限定の目的でなく解釈されるべきである以下の図面及び実施例によって詳細に記載する。本記載及び実施例に基づいて、更なる実施形態が、熟練労働者に利用可能であり、本発明の範囲内に同様にある。
【実施例
【0177】
(実施例1)
mRNAの生成及び精製
マウスEPO又はイヌEPOをコードするDNAは、GenScript社から注文され、合成された。コーディングmRNAは、マウスエリスロポエチン(EPO)をコードするRNAをコードする直鎖状プラスミドから、T7 RNAポリメラーゼ、並びにわずか4種の塩基ヌクレオチドATP、GTP、UTP、及びCTP(Megascript、Ambion社)を使用して生成した。すべてのmRNAは、タバコエッチウイルス(TEV)リーダーに対応する同一の5'UTR(Gallie DR、Tanguay RL、Leathers V.:(1995)、The tobacco etch viral 5' leader and poly(A) tail are functionally synergistic regulators of translation.、Gene、165、233~238頁)及び同一の3'UTRを含有した。更に、すべてのIVT mRNAは、3'UTRから30nt下流においてリンカー(GCAUAUGACU)によって中断された100nt長のpolyAテールを含有した。すべてのIVT mRNAを、m7Gキャッピング酵素及び2'-O-メチルトランスフェラーゼ(CellScript社、Madison、WI)を使用してキャッピングした。
【0178】
とりわけ、以下のマウスEPO mRNAを生成した:mEPO:EPOのコード配列が55% GC及び125ウリジンを含有した野生型(wt);2)omEPO:63% GC及び92ウリジンを含むGCに富む;並びに3)53% GC及び80ウリジンを含む、Aに富むEPO。生成したmRNAを記載された通りにHPLC精製した(Kariko, K, Muramatsu, H, Ludwig, J、及びWeissman, D (2011)、Generating the optimal mRNA for therapy: HPLC purification eliminates immune activation and improves translation of nucleoside-modified, protein-encoding mRNA.、Nucleic Acids Res、39:e142)。非コード領域のヌクレオチド組成も同様に修飾することができる。本発明の効果を実証する目的のために、コード領域のみを記載した通りに修飾した。mRNAのすべての他のエレメントは、上述した通り一定に保った。
【0179】
(実施例2)
mRNAを捕捉した脂質ナノ粒子(LNP)の調製
LNPは、マイクロ流体混合デバイス、NanoAssemblr Benchtop Instrument(Precision NanoSystems社、Vancouver、BC)を使用して調製した。エタノール中の脂質混合物1体積(適切なモル比でのDLin-KC2-DMA (DLin-KC2-DMAは、Semple, SC、Akinc, A、Chen, J、Sandhu, AP、Mui, BL、Cho, CKら(2010)、及びRational design of cationic lipids for siRNA delivery.、Nat Biotechnol、28:172~176頁に従って合成した)、コレステロール(Sigma Aldrich社、Taufkirchen Germany)、DSPC(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、Corden Pharma社、Liestal Switzerland)、mPEG2000-セラミドC16(Avanti Polar Lipids社、Alabster、AL、USA))、及びクエン酸塩緩衝液100mM、pH5.4中のRNA 3体積(17:1w/w 脂質/RNA)を、12mL/分(エタノールについて3mL/分及び水性緩衝液について9mL/分)の組み合わせた流量でマイクロ流体カートリッジによって混合した。結果として生じる相をクエン酸塩緩衝液100mM、pH5.4 2体積と直接混合した。次いで混合物を、Slide-A-Lyser透析カセット(10K MWCO、ThermoFisher Scientific社)でリン酸緩衝食塩水(PBS)に対して2.5時間透析してエタノールを除去した。次いで粒子を、Amicon超遠心濾過機(30kDa NMWL、Merck Millipore社)を使用して限外濾過によって再濃縮して約0.3~0.5mg/mLの総RNA濃度にした。siRNA封入効率をQuant-iT RiboGreen RNAアッセイ(Life Technologies社)によって判定した。簡単に言えば、封入効率を、0.5% Triton X-100の存在下と非存在下でのLNP間の蛍光を比較することによってRNA結合色素RiboGreenを使用して判定した。界面活性剤の非存在下で、蛍光は、アクセス可能な遊離RNAのみから測定することができ、一方、界面活性剤の存在下で、蛍光は、総RNA量から測定される。
【0180】
(実施例3)
TransIT複合体化mRNAの調製
実施例1に従って生成したmRNAを、製造者に従ってTransIT-mRNA(Mirus Bio社、Madison、WI)に複合体形成させた。通常のポリプロピレンチューブ中で、最初にダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を計量し、次いでmRNA 1μgを迅速に添加し、その後TransIT-mRNA試薬1.1μl及びブースト試薬0.7μlを添加して、DMEM 100μlの最終体積中の複合体を得た。成分を組み合わせ、20秒間ボルテックスし、次いで2分間放置し、直ちに注射した。異なる量のmRNAを複合体形成させるために、試薬の体積及び最終体積を比例してスケール変更した。
【0181】
(実施例4)
リポソームmRNA製剤の調製
リポソームを、脂質のエタノール性溶液が撹拌下で水相中に注入される、いわゆるエタノール注入技法の改変によって製造した。脂質として、2:1のモル比の合成カチオン性脂質DOTMA及びリン脂質DOPEを使用した。約400nmのサイズ範囲内のリポソームをもたらす製造プロトコールを、適切なサイズのRNA-リポプレックスを得るために使用した。簡単に言えば、脂質のエタノール溶液を調製し、滅菌濾過し、撹拌下で注射用水(WFI)中に注入して約6~10mMの水相中の脂質濃度を得た。こうして所定のサイズを有するリポソーム未処理分散体を得た。引き続いて、リポソーム未処理分散体を、より大きい凝集物の量を低減するために濾過した。引き続いて、リポソーム分散体の脂質含有量を判定し、結果に応じて、リポソームをWFIで希釈して約4mMの最終濃度にした。リポソームを、脱発熱物質化され、滅菌された10mLガラスバイアル中に満たし、これを滅菌された栓及びフリップオフクリンプキャップを用いて閉じた。
【0182】
mRNAを、最終体積200μl中のリポソーム20μg mRNAを得るように調製した。最初に、RNAを希釈して、10mM HEPES/0.1mM EDTAの最終濃度において1μg RNA/HEPES/EDTA 1μlを得た。RNA 20μlのアリコートを計量してエッペンドルフチューブ中に入れ、次いで水146μl及び1.5M NaCl 20μlを添加し、よく混合した。RNA溶液を室温で2分間インキュベートし、次いでリポソーム溶液14μlを添加し、ボルテックスし、次いで室温にて10分間インキュベートした。最後に、リポソームmRNAを実験に使用し、又は注射した。
【0183】
(実施例5)
製剤化したmRNAの投与/注射
実施例2~4による製剤化したmRNAをヒト樹状細胞にin vitroで、又はBALB/cマウスにin vivoで以下のように投与した:
ヒト樹状細胞に、実施例3によるTransIT複合体化mRNA 0.1μgをトランスフェクトした。PBMCからのDCの精製には、Sallusto及びLanzavecchia(Sallusto, F.及びA. Lanzavecchia.、1994.、Efficient presentation of soluble antigen by cultured human dendritic cells is maintained by granulocyte/macrophage colony-stimulating factor plus interleukin 4 and downregulated by tumor necrosis factor a.、J. Exp. Med.、179:1109頁)によって元来記載された方法を、軽微な改変を施して使用した。簡単に言えば、単球をフィコール密度勾配遠心分離によってPBMCから精製した。ヒトCD14+細胞を、CD14 MicroBeads (Miltenyi Biotec社)を使用して正の選択によって選択した。未成熟DCを生成するために、精製した単球を、グルタミン(2mM)、HEPES(15mM)、1% NHS(Sigma社)、GM-CSF(50ng/mL)、及びIL-4(100ng/mL)を補充したRPMI1640中で4日間培養した。細胞を、10% FCSを補充した培養基中1×105細胞/200μl/ウェルの密度で96ウェルプレート中に播種した。細胞に、TransIT複合体化0.1μg mRNA/ウェル17μlを添加することによってトランスフェクトした。複合体は、実施例3に記載した通りに生成した。細胞を一晩培養し、培地をトランスフェクションの24時間後に回収した。マウスEPOレベルをELISA(Erythropoietin DuoSet ELISA Developmentキット、R&D社)によって測定し、マウスIFNもELISA(eBioscience社、白金ELISA)によって測定した。
実施例4によるリポソーム複合体化mRNA 20μgを、6週齢BALB/cマウス、動物5匹/群に眼窩後方経路によって静脈内に注射した。注射の6時間後に、動物から採血を行い、EDTAを使用して引き抜いた血液の凝固を阻害した。血漿を遠心分離によって分離し、収集した。マウスEPOレベルをELISA(Erythropoietin DuoSet ELISA Developmentキット、R&D社)によって測定し、マウスIFNもELISA(eBioscience社、白金ELISA)によって測定した。
実施例2によるLNP製剤化mRNA 10μgを、6週齢BALB/cマウス、動物5匹/群に眼窩後方経路によって静脈内に注射した。注射の6時間後に、動物から採血を行い、EDTAを使用して引き抜いた血液の凝固を阻害した。血漿を遠心分離によって分離し、収集した。マウスEPOレベルをELISA(Erythropoietin DuoSet ELISA Developmentキット、R&D社)によって測定し、マウスIFNもELISA(eBioscience社、白金ELISA)によって測定した。結果を図2に示す。
【0184】
配列
アミノ酸配列:
すべての使用した/コドン最適化マウスEPO核酸配列は、以下のアミノ酸配列を有する同じマウスEPOタンパク質をコードする:
MGVPERPTLLLLLSLLLIPLGLPVLCAPPRLICDSRVLERYILEAKEAENVTMGCAEGPRLSENITVPDTKVNFYAWKRMEVEEQAIEVWQGLSLLSEAILQAQALLANSSQPPETLQLHIDKAISGLRSLTSLLRVLGAQKELMSPPDTTPPAPLRTLTVDTFCKLFRVYANFLRGKLKLYTGEVCRRGDR.
核酸配列:
1)マウスEPO(mEPO)又は野生型EPO(wt EPO)とも呼ばれる元のマウスEPOをコードする配列:
ATGGGGGTGCCCGAACGTCCCACCCTGCTGCTTTTACTCTCCTTGCTACTGATTCCTCTGGGCCTCCCAGTCCTCTGTGCTCCCCCACGCCTCATCTGCGACAGTCGAGTTCTGGAGAGGTACATCTTAGAGGCCAAGGAGGCAGAAAATGTCACGATGGGTTGTGCAGAAGGTCCCAGACTGAGTGAAAATATTACAGTCCCAGATACCAAAGTCAACTTCTATGCTTGGAAAAGAATGGAGGTGGAAGAACAGGCCATAGAAGTTTGGCAAGGCCTGTCCCTGCTCTCAGAAGCCATCCTGCAGGCCCAGGCCCTGCTAGCCAATTCCTCCCAGCCACCAGAGACCCTTCAGCTTCATATAGACAAAGCCATCAGTGGTCTACGTAGCCTCACTTCACTGCTTCGGGTACTGGGAGCTCAGAAGGAATTGATGTCGCCTCCAGATACCACCCCACCTGCTCCACTCCGAACACTCACAGTGGATACTTTCTGCAAGCTCTTCCGGGTCTACGCCAACTTCCTCCGGGGGAAACTGAAGCTGTACACGGGAGAGGTCTGCAGGAGAGGGGACAGGTGA
2)最適化マウスEPO(omEPO)とも呼ばれるGCに富むマウスEPOをコードする配列。この配列は、GeneArt AG社、Regensburgによってコドン最適化された:
ATGGGCGTCCCCGAAAGGCCTACCCTGCTGCTGCTCCTGTCTCTGCTCCTGATCCCCCTGGGACTGCCCGTGCTGTGCGCCCCTCCCAGGCTGATCTGCGACAGCAGGGTGCTGGAAAGATACATCCTGGAAGCCAAAGAGGCCGAGAACGTCACAATGGGCTGCGCCGAGGGCCCCAGACTGAGCGAGAACATCACCGTGCCCGACACCAAGGTCAACTTCTACGCCTGGAAGAGGATGGAAGTGGAGGAACAGGCCATCGAGGTCTGGCAGGGACTGTCTCTGCTGTCCGAGGCCATCCTGCAGGCCCAGGCTCTGCTGGCCAATTCTAGCCAGCCCCCCGAGACACTGCAGCTGCACATCGACAAGGCCATCAGCGGCCTGAGAAGCCTGACCAGCCTGCTGAGGGTGCTGGGAGCCCAGAAAGAGCTGATGAGCCCCCCTGACACCACCCCCCCTGCCCCCCTGAGGACCCTGACCGTGGACACCTTCTGCAAGCTGTTCAGGGTGTACGCCAACTTCCTGAGGGGCAAGCTGAAGCTGTACACCGGCGAGGTCTGCAGACGGGGCGACAGATGA
3)Aに富むマウスEPOをコードする配列:
ATGGGAGTGCCAGAAAGACCAACCCTGCTGCTGCTGCTCAGCCTGCTACTGATCCCACTGGGACTCCCAGTCCTCTGCGCACCACCAAGACTCATCTGCGACAGCAGAGTGCTGGAAAGATACATCCTAGAAGCAAAAGAAGCAGAAAACGTCACGATGGGATGCGCAGAAGGACCAAGACTGAGCGAAAACATCACAGTCCCAGACACCAAAGTCAACTTCTACGCATGGAAAAGAATGGAAGTGGAAGAACAGGCAATAGAAGTGTGGCAAGGACTGAGCCTGCTCAGCGAAGCAATCCTGCAGGCACAGGCACTGCTAGCAAACAGCAGCCAGCCACCAGAAACCCTGCAGCTGCACATAGACAAAGCAATCAGCGGACTAAGAAGCCTCACCAGCCTGCTGAGAGTACTGGGAGCACAGAAAGAACTGATGAGCCCACCAGACACCACCCCACCAGCACCACTCAGAACACTCACAGTGGACACTTTCTGCAAACTCTTCAGAGTCTACGCAAACTTCCTCAGAGGAAAACTGAAACTGTACACGGGAGAAGTCTGCAGAAGAGGGGACAGATGA
4)Entelechon社独自のアルゴリズムを使用してEntelechon社によって最適化された超最適化マウスEPO(somEPO)及びコドン最適化ヒトEPO(Kim, CH、Oh, Y、及びLee, TH(1997)、Codon optimization for high-level expression of human erythropoietin (EPO) in mammalian cells.、Gene、199:293~301頁)。この配列は、以前に使用されたものであり、例えば、Kariko, K.ら、Kariko K、Muramatsu H、Keller JM、Weissman D(2012)、Increased erythropoiesis in mice injected with submicrogram quantities of pseudouridine-containing mRNA encoding erythropoietin.、Mol Ther、20:948~953頁に記載された。
ATGGGAGTTCCTGAAAGACCAACTCTGTTGCTCTTGCTGTCTTTGCTGCTGATTCCTCTGGGTCTTCCGGTGCTTTGCGCACCTCCCAGGCTTATCTGCGATAGCAGGGTGCTTGAGAGGTACATCCTGGAAGCTAAAGAAGCCGAAAACGTGACCATGGGCTGCGCCGAGGGCCCTAGGCTCAGTGAAAACATTACTGTTCCCGATACGAAAGTCAATTTCTACGCCTGGAAGCGGATGGAAGTGGAGGAACAGGCCATAGAGGTGTGGCAAGGTCTGTCTCTCCTGAGCGAGGCAATCCTTCAAGCCCAGGCTCTGCTGGCCAATTCAAGCCAGCCACCCGAGACCCTCCAGCTGCACATTGACAAGGCTATCAGCGGTCTGAGATCCCTGACGTCCCTGTTGCGAGTCCTGGGCGCTCAGAAGGAGCTGATGAGTCCACCCGATACCACACCTCCAGCACCGCTCCGCACACTCACTGTGGACACCTTTTGTAAACTGTTCAGAGTCTACGCCAACTTTCTGCGAGGCAAGCTGAAGCTCTATACAGGAGAGGTGTGTAGGAGAGGAGACCGGTGA
5) GCが最大化されたマウスEPO(Thess, A.、Grund, S.、Mui, B. L.、Hope, M. J.、Baumhof, P.、Fotin-Mleczek, M.、及びSchlake, T. (2015)、Sequence-engineered mRNA without chemical nucleoside modifications enables an effective protein therapy in large animals (Molecular Therapy、23、1457~1465頁)に記載された):
ATGGGCGTGCCCGAGCGGCCGACCCTGCTCCTGCTGCTCAGCCTGCTGCTCATCCCCCTGGGGCTGCCCGTCCTCTGCGCCCCCCCGCGCCTGATCTGCGACTCCCGGGTGCTGGAGCGCTACATCCTCGAGGCCAAGGAGGCGGAGAACGTGACCATGGGCTGCGCCGAGGGGCCCCGGCTGAGCGAGAACATCACGGTCCCCGACACCAAGGTGAACTTCTACGCCTGGAAGCGCATGGAGGTGGAGGAGCAGGCCATCGAGGTCTGGCAGGGCCTGTCCCTCCTGAGCGAGGCCATCCTGCAGGCGCAGGCCCTCCTGGCCAACTCCAGCCAGCCCCCGGAGACACTGCAGCTCCACATCGACAAGGCCATCTCCGGGCTGCGGAGCCTGACCTCCCTCCTGCGCGTGCTGGGCGCGCAGAAGGAGCTCATGAGCCCGCCCGACACGACCCCCCCGGCCCCGCTGCGGACCCTGACCGTGGACACGTTCTGCAAGCTCTTCCGCGTCTACGCCAACTTCCTGCGGGGCAAGCTGAAGCTCTACACCGGGGAGGTGTGCCGCCGGGGCGACCGCTGA
6)アミノ酸配列:
すべての使用した/コドン最適化イヌEPO(イヌ(Canis lupus familiaris))核酸配列は、以下のアミノ酸配列(Swiss-Prot番号J9NYY7)を有する同じイヌEPOタンパク質をコードする:
MCEPAPPKPTQSAWHSFPECPALLLLLSLLLLPLGLPVLGAPPRLICDSRVLERYILEAREAENVTMGCAQGCSFSENITVPDTKVNFYTWKRMDVGQQALEVWQGLALLSEAILRGQALLANASQPSETPQLHVDKAVSSLRSLTSLLRALGAQKEAMSLPEEASPAPLRTFTVDTLCKLFRIYSNFLRGKLTLYTGEACRRGDR
核酸配列:
7)イヌEPO(cEPO)又は野生型EPO(wt EPO)とも呼ばれる元のイヌEPOをコードする配列:
ATGTGCGAACCCGCCCCACCTAAGCCCACTCAGTCTGCTTGGCACAGTTTCCCCGAATGTCCAGCTCTCCTGCTGCTGCTCTCCCTGCTGCTCCTGCCCCTCGGGCTGCCTGTGCTGGGCGCTCCTCCAAGACTCATCTGCGACAGCAGGGTGCTGGAGCGGTACATCCTGGAGGCTAGAGAAGCCGAGAATGTCACCATGGGGTGTGCTCAGGGATGCTCCTTCAGCGAGAACATCACCGTGCCCGACACTAAGGTGAACTTCTATACATGGAAGCGGATGGATGTGGGACAGCAGGCCCTCGAAGTGTGGCAGGGCCTCGCTCTGCTGTCTGAAGCCATCCTGAGGGGACAGGCCCTCCTGGCTAATGCCAGCCAGCCTTCAGAGACCCCCCAGCTGCACGTGGACAAAGCCGTGTCAAGCCTGAGATCCCTCACAAGCCTCCTGAGGGCTCTGGGCGCTCAGAAGGAAGCCATGTCTCTGCCAGAGGAAGCCAGCCCTGCCCCACTCAGGACCTTCACTGTCGATACCCTGTGCAAGCTGTTCAGGATCTATTCCAACTTTCTGAGGGGCAAACTGACACTCTATACTGGGGAGGCTTGTAGGCGGGGAGACCGATGA
8)Aに富むイヌEPOをコードする配列:
ATGTGCGAACCAGCACCACCTAAACCAACACAGAGCGCATGGCACAGCTTCCCAGAATGCCCAGCACTGCTGCTGCTGCTCAGCCTGCTACTGCTGCCACTGGGACTCCCAGTCCTCGGAGCACCACCAAGACTCATCTGCGACAGCAGAGTGCTGGAAAGATACATCCTAGAAGCAAGAGAAGCAGAAAACGTCACGATGGGATGCGCACAAGGATGCAGCTTCAGCGAAAACATCACAGTCCCAGACACCAAAGTCAACTTCTACACATGGAAAAGAATGGACGTGGGACAGCAGGCACTGGAAGTGTGGCAAGGACTGGCACTGCTCAGCGAAGCAATCCTGAGAGGACAGGCACTGCTAGCAAACGCAAGCCAGCCAAGCGAAACCCCACAGCTGCACGTAGACAAAGCAGTGAGCAGCCTAAGAAGCCTCACCAGCCTGCTGAGAGCACTGGGAGCACAGAAAGAAGCCATGAGCCTGCCAGAAGAAGCCAGCCCAGCACCACTCAGAACATTCACAGTGGACACCCTGTGCAAACTGTTCAGAATATACAGCAACTTCCTCAGAGGAAAACTGACACTGTACACGGGAGAAGCTTGCAGAGGAGGAGACAGATGA
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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