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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】成形機
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/26 20060101AFI20220614BHJP
   B29C 45/66 20060101ALI20220614BHJP
   B29C 45/80 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B22D17/26 H
B22D17/26 J
B29C45/66
B29C45/80
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020216882
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2022-02-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】辻 眞
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博成
(72)【発明者】
【氏名】豊島 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】野田 三郎
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140610(JP,A)
【文献】特開2017-006931(JP,A)
【文献】特開2016-107306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 15/00- 17/32
B29C 45/64- 45/68
B29C 45/74- 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースの上に固定され、固定金型を保持する固定ダイプレートと、
前記ベースの上に型開閉方向に移動可能に設けられ、可動金型を前記固定金型に対向して保持する可動ダイプレートと、
前記固定金型と前記可動金型の型締めが可能なトグル機構と、
前記ベースの上に前記型開閉方向に移動可能に設けられ、前記トグル機構のリンクの一端が固定されるリンクハウジングと、
前記トグル機構を駆動する駆動装置と、
一端を前記固定ダイプレートに固定可能で、前記型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第1のタイバーと、
一端を前記固定ダイプレートに固定可能で、前記型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第2のタイバーと、
一端を前記固定ダイプレートに固定可能で、前記型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第3のタイバーと、
一端を前記固定ダイプレートに固定可能で、前記型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第4のタイバーと、
前記第1のタイバーの前記他端の固定位置を調整する第1の調整機構と、
前記第2のタイバーの前記他端の固定位置を調整する第2の調整機構と、
前記第3のタイバーの前記他端の固定位置を調整する第3の調整機構と、
前記第4のタイバーの前記他端の固定位置を調整する第4の調整機構と、
溶湯を前記固定金型と前記可動金型とで形成される空洞内に充填する射出装置と、
を備え、
前記第1の調整機構、前記第2の調整機構、前記第3の調整機構、及び前記第4の調整機構のそれぞれは、
前記リンクハウジングに固定される電動機と、
前記電動機を用いて駆動され、タイバーを囲む環状で、前記タイバーの回りを回転可能なリングギアと、
前記リングギアの回転により前記型開閉方向に移動可能で、前記被係合部を固定可能な分割ナット装置と、を含み、
少なくとも前記固定金型と前記可動金型の型締めを行う際に、前記リングギアと前記リンクハウジングが接することを特徴とする成形機。
【請求項2】
前記第1の調整機構、前記第2の調整機構、前記第3の調整機構、及び前記第4の調整機構のそれぞれは、
前記電動機の出力軸に同心状に固定されたピニオンを、更に含み、
前記被係合部は、第1の凹凸部を有し、
前記分割ナット装置は、前記第1の凹凸部に係合可能な第2の凹凸部を有する分割ナットと、前記分割ナットを支持し、前記タイバーを囲む環状で、一部が前記リングギアに囲まれ、前記一部に雄ねじ部を有する支持部材と、を有し、
前記リングギアは、外周側に前記ピニオンに噛み合うギア部と、内周側に前記雄ねじ部に噛み合う雌ねじ部と、を有することを特徴とする請求項1記載の成形機。
【請求項3】
前記第2の凹凸部のピッチは前記雌ねじ部のピッチよりも大きく、前記第2の凹凸部の前記型開閉方向の長さは前記雌ねじ部の前記型開閉方向の長さよりも小さいことを特徴とする請求項2記載の成形機。
【請求項4】
前記第2の凹凸部の高さは前記雌ねじ部の高さよりも大きいことを特徴とする請求項3記載の成形機。
【請求項5】
前記リングギアの前記型開閉方向に垂直な方向の厚さは、前記型開閉方向に前記リンクハウジングに向かって連続的に薄くなることを特徴とする請求項2ないし請求項4いずれか一項記載の成形機。
【請求項6】
前記第1の調整機構、前記第2の調整機構、前記第3の調整機構、及び前記第4の調整機構を独立に制御する制御装置を、更に備えることを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の成形機。
【請求項7】
前記第1のタイバーに加わる応力を測定する第1の測定器と、
前記第2のタイバーに加わる応力を測定する第2の測定器と、
前記第3のタイバーに加わる応力を測定する第3の測定器と、
前記第4のタイバーに加わる応力を測定する第4の測定器と、
を更に備え、
前記制御装置は、第1の成形動作の際に得られた前記第1の測定器、前記第2の測定器、前記第3の測定器、及び前記第4の測定器の測定結果に基づき、前記第1の成形動作に続く第2の成形動作の前に、前記第1の調整機構、前記第2の調整機構、前記第3の調整機構、及び前記第4の調整機構を制御することを特徴とする請求項6記載の成形機。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1の成形動作の際に得られた前記第1の測定器、前記第2の測定器、前記第3の測定器、及び前記第4の測定器の前記測定結果に基づき、
前記第1の成形動作に続く前記第2の成形動作の前に、前記第1のタイバー、前記第2のタイバー、前記第3のタイバー、及び前記第4のタイバーに加わる応力の差分が、前記第1の成形動作の際の応力の差分よりも小さくなるように、前記第1の調整機構、前記第2の調整機構、前記第3の調整機構、及び前記第4の調整機構を制御することを特徴とする請求項7記載の成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイバーの固定位置を調整する調整機構を備えた成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
成形機の一例であるダイカストマシンでは、例えば、トグル機構を用いて型締めされた金型内の空洞に、射出装置を用いて溶湯を充填することで、成形品(ダイカスト品)を製造する。型締力が適正に制御されないと、成形品の歩留まりが低下するおそれがある。例えば、型締力が不足すると、バリが発生し歩留まりが低下するおそれがある。また、型締力が過剰になると、成形機や金型が破損するおそれがある。
【0003】
特許文献1には、複数のタイバーに螺合された複数のタイバーナットを、同時に回転させることにより、型締力を調整する型締装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-112003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、複数のタイバーに加わる応力を独立して調整可能な成形機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の成形機は、ベースと、前記ベースの上に固定され、固定金型を保持する固定ダイプレートと、前記ベースの上に型開閉方向に移動可能に設けられ、可動金型を前記固定金型に対向して保持する可動ダイプレートと、前記固定金型と前記可動金型の型締めが可能なトグル機構と、前記ベースの上に前記型開閉方向に移動可能に設けられ、前記トグル機構のリンクの一端が固定されるリンクハウジングと、前記トグル機構を駆動する駆動装置と、一端を前記固定ダイプレートに固定可能で、前記型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第1のタイバーと、一端を前記固定ダイプレートに固定可能で、前記型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第2のタイバーと、一端を前記固定ダイプレートに固定可能で、前記型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第3のタイバーと、一端を前記固定ダイプレートに固定可能で、前記型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第4のタイバーと、前記第1のタイバーの前記他端の固定位置を調整する第1の調整機構と、前記第2のタイバーの前記他端の固定位置を調整する第2の調整機構と、前記第3のタイバーの前記他端の固定位置を調整する第3の調整機構と、前記第4のタイバーの前記他端の固定位置を調整する第4の調整機構と、溶湯を前記固定金型と前記可動金型とで形成される空洞内に充填する射出装置と、を備え、前記第1の調整機構、前記第2の調整機構、前記第3の調整機構、及び前記第4の調整機構のそれぞれは、前記リンクハウジングに固定される電動機と、前記電動機を用いて駆動され、タイバーを囲む環状で、前記タイバーの回りを回転可能なリングギアと、前記リングギアの回転により前記型開閉方向に移動可能で、前記被係合部を固定可能な分割ナット装置と、を含み、少なくとも前記固定金型と前記可動金型の型締めを行う際に、前記リングギアと前記リンクハウジングが接する
【0007】
上記態様の成形機において、前記第1の調整機構、前記第2の調整機構、前記第3の調整機構、及び前記第4の調整機構のそれぞれは、前記電動機の出力軸に同心状に固定されたピニオンを、更に含み、前記被係合部は、第1の凹凸部を有し、前記分割ナット装置は、前記第1の凹凸部に係合可能な第2の凹凸部を有する分割ナットと、前記分割ナットを支持し、前記タイバーを囲む環状で、一部が前記リングギアに囲まれ、前記一部に雄ねじ部を有する支持部材と、を有し、前記リングギアは、外周側に前記ピニオンに噛み合うギア部と、内周側に前記雄ねじ部に噛み合う雌ねじ部と、を有することが好ましい。
【0008】
上記態様の成形機において、前記第2の凹凸部のピッチは前記雌ねじ部のピッチよりも大きく、前記第2の凹凸部の前記型開閉方向の長さは前記雌ねじ部の前記型開閉方向の長さよりも小さいことが好ましい。
【0009】
上記態様の成形機において、前記第2の凹凸部の高さは前記雌ねじ部の高さよりも大きいことが好ましい。
【0010】
上記態様の成形機において、前記リングギアの前記型開閉方向に垂直な方向の厚さは、前記型開閉方向に前記リンクハウジングに向かって連続的に薄くなることが好ましい。
【0011】
上記態様の成形機において、前記第1の調整機構、前記第2の調整機構、前記第3の調整機構、及び前記第4の調整機構を独立に制御する制御装置を、更に備えることが好ましい。
【0012】
上記態様の成形機において、前記第1のタイバーに加わる応力を測定する第1の測定器と、前記第2のタイバーに加わる応力を測定する第2の測定器と、前記第3のタイバーに加わる応力を測定する第3の測定器と、前記第4のタイバーに加わる応力を測定する第4の測定器と、を更に備え、前記制御装置は、第1の成形動作の際に得られた前記第1の測定器、前記第2の測定器、前記第3の測定器、及び前記第4の測定器の測定結果に基づき、前記第1の成形動作に続く第2の成形動作の前に、前記第1の調整機構、前記第2の調整機構、前記第3の調整機構、及び前記第4の調整機構を制御することが好ましい。
【0013】
上記態様の成形機において、前記制御装置は、前記第1の成形動作の際に得られた前記第1の測定器、前記第2の測定器、前記第3の測定器、及び前記第4の測定器の前記測定結果に基づき、前記第1の成形動作に続く前記第2の成形動作の前に、前記第1のタイバー、前記第2のタイバー、前記第3のタイバー、及び前記第4のタイバーに加わる応力の差分が、前記第1の成形動作の際の応力の差分よりも小さくなるように、前記第1の調整機構、前記第2の調整機構、前記第3の調整機構、及び前記第4の調整機構を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のタイバーに加わる応力を独立して調整可能な成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の成形機の全体構成を示す模式図。
図2】実施形態の成形機の模式図。
図3】実施形態の成形機の模式図。
図4】実施形態の調整機構の模式断面図。
図5】実施形態の調整機構の動作の説明図。
図6】実施形態の成形機の成形動作のフロー図。
図7】実施形態の成形機を用いた成形動作の説明図。
図8】実施形態の成形機を用いた成形動作の説明図。
図9】実施形態の成形機を用いた成形動作の説明図。
図10】実施形態の成形機を用いた成形動作の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
実施形態の成形機は、ベースと、ベースの上に固定され、固定金型を保持する固定ダイプレートと、ベースの上に型開閉方向に移動可能に設けられ、可動金型を固定金型に対向して保持する可動ダイプレートと、固定金型と可動金型の型締めが可能なトグル機構と、ベースの上に型開閉方向に移動可能に設けられ、トグル機構のリンクの一端が固定されるリンクハウジングと、トグル機構を駆動する駆動装置と、一端を固定ダイプレートに固定可能で、型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第1のタイバーと、一端を固定ダイプレートに固定可能で、型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第2のタイバーと、一端を固定ダイプレートに固定可能で、型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第3のタイバーと、一端を固定ダイプレートに固定可能で、型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第4のタイバーと、第1のタイバーの他端の固定位置を調整する第1の調整機構と、第2のタイバーの他端の固定位置を調整する第2の調整機構と、第3のタイバーの他端の固定位置を調整する第3の調整機構と、第4のタイバーの他端の固定位置を調整する第4の調整機構と、溶湯を固定金型と可動金型とで形成される空洞内に充填する射出装置と、を備え、第1の調整機構、第2の調整機構、第3の調整機構、及び第4の調整機構のそれぞれは、リンクハウジングに固定される電動機と、電動機を用いて駆動され、タイバーを囲む環状で、タイバーの回りを回転可能なリングギアと、リングギアの回転により型開閉方向に移動可能で、被係合部を固定可能な分割ナット装置と、を含む。
【0018】
図1は、実施形態の成形機の全体構成を示す模式図である。図1は、一部に断面図を含む側面図である。図2は、実施形態の成形機の模式図である。図2は、成形機をリンクハウジング側から見た側面図である。図3は、実施形態の成形機の模式図である。図3は、図1のAA’断面である。図3は、トグル機構の図示を省略している。
【0019】
実施形態の成形機はダイカストマシンである。実施形態のダイカストマシン100は、コールドチャンバ式のダイカストマシンである。
【0020】
図1ないし図3は、ダイカストマシン100の動作開始前の初期状態を示す。この場合の初期状態とは、金型が開ききった状態、いわゆる型開限の状態である。
【0021】
ダイカストマシン100は、金型の内部(図1中の空洞Ca)に液状金属(溶湯)を射出し、その液状金属を金型内で凝固させることにより、ダイカスト品を製造する。金属は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛合金、又は、マグネシウム合金である。
【0022】
ダイカストマシン100は、ベース10、固定ダイプレート12、可動ダイプレート14、リンクハウジング16、第1のタイバー18a、第2のタイバー18b、第3のタイバー18c、第4のタイバー18d、固定金型20、可動金型22、トグル機構24、トグル移動機構26、押出機構28、タイバー固定機構29、第1の調整機構30a、第2の調整機構30b、第3の調整機構30c、第4の調整機構30d、射出装置32、制御装置34、表示装置35、第1の測定器36a、第2の測定器36b、第3の測定器36c、第4の測定器36d、を備える。
【0023】
以下、第1のタイバー18a、第2のタイバー18b、第3のタイバー18c、及び第4のタイバー18dを総称して、単にタイバー18と記載する場合がある。また、第1の調整機構30a、第2の調整機構30b、第3の調整機構30c、及び第4の調整機構30dを総称して、単に調整機構30と記載する場合がある。また、第1の測定器36a、第2の測定器36b、第3の測定器36c、及び第4の測定器36dを総称して、単に測定器36と記載する場合がある。
【0024】
トグル機構24は、型締モータ40(駆動装置)、第1のねじ軸42、クロスヘッド44、複数のリンク46を備える。型締モータ40は駆動装置の一例である。型締モータ40は、例えば、電動モータである。
【0025】
トグル移動機構26は、トグル移動モータ50、第2のねじ軸52、ナット部54、ガイドレール55を含む。トグル移動モータ50は、例えば、電動モータである。
【0026】
押出機構28は、押出モータ56、押出板58、押出軸60、ピン支持板62、押出ピン64を含む。
【0027】
タイバー固定機構29は、例えば、ハーフナットを含む。
【0028】
射出装置32は、スリーブ74、プランジャ76、射出駆動部78、位置センサ80を有する。プランジャ76は、プランジャチップ76aとプランジャロッド76bを含む。スリーブ74には、開口部82が設けられる。
【0029】
固定ダイプレート12はベース10の上に固定される。固定ダイプレート12には固定金型20を取り付けることが可能である。
【0030】
可動ダイプレート14は、ベース10の上に型開閉方向に移動可能に設けられる。型開閉方向とは、図1等に示す型開方向及び型閉方向の両方向を意味する。可動ダイプレート14は、ベース10の上に設けられたガイドレール55の上を型開閉方向に移動する。可動ダイプレート14には、可動金型22を取り付けることが可能である。
【0031】
リンクハウジング16は、ベース10の上に型開閉方向に移動可能に設けられる。リンクハウジング16は、ベース10の上に設けられたガイドレール55の上を型開閉方向に移動する。リンクハウジング16には、複数のリンク46の一部の一端が固定される。
【0032】
トグル機構24は、リンクハウジング16と可動ダイプレート14との間に設けられる。複数のリンク46の一部の一端がリンクハウジング16に固定される。また、複数のリンク46の別の一部の一端が可動ダイプレート14に固定される。
【0033】
トグル機構24により、リンクハウジング16と可動ダイプレート14との間の距離が変化する。トグル機構24により、固定金型20と可動金型22の型締めが可能となる。
【0034】
トグル機構24は、例えば、型締モータ40を用いて駆動される。型締モータ40により、第1のねじ軸42が回転することにより、クロスヘッド44が型開閉方向に移動する。クロスヘッド44の型開閉方向の移動に伴い、複数のリンク46が動作し、可動ダイプレート14がリンクハウジング16に対して相対的に型開閉方向に移動する。
【0035】
トグル機構24は、例えば、油圧シリンダを用いて駆動されても構わない。
【0036】
第1のタイバー18a、第2のタイバー18b、第3のタイバー18c、及び第4のタイバー18dは、型開閉方向に延びる。タイバー18の一端は、固定ダイプレート12に固定可能である。
【0037】
タイバー18は、固定ダイプレート12、可動ダイプレート14、及びリンクハウジング16を貫通する。タイバー18は、可動ダイプレート14に対して摺動可能である。タイバー18は、固定されていない状態では、固定ダイプレート12及びリンクハウジング16に対して摺動可能である。
【0038】
タイバー18は、固定金型20と可動金型22に型締力が加えられている間は、型締力を支える。
【0039】
タイバー固定機構29は固定ダイプレート12に固定される。タイバー18は固定ダイプレート12に対し、タイバー固定機構29を用いて固定又は非固定(解放)の状態にすることが可能である。
【0040】
タイバー固定機構29は、タイバー18を所望の位置で固定する。タイバー固定機構29は、例えば、ハーフナットを用いて、タイバー18を固定ダイプレート12に対して固定する。タイバー固定機構29は、例えば、ねじであっても構わない。
【0041】
タイバー18の他端には、被係合部18xが設けられる。タイバー18の他端は、分割ナット装置92に固定可能である。
【0042】
タイバー18の被係合部18xは、第1の凹凸部18xxを有する。第1の凹凸部18xxは、例えば、テーパ形状を有する。
【0043】
押出機構28は、製造されたダイカスト品を金型から押し出して分離する機能を有する。押出板58には、型閉方向に延びる押出軸60の一端が固定される。押出軸60は、可動ダイプレート14を貫通する。押出軸60は、可動ダイプレート14に対して摺動可能である。
【0044】
押出軸60の他端は、ピン支持板62に固定される。ピン支持板62には、押出ピン64が固定される。押出ピン64は、可動金型22に出没可能に設けられる。押出ピン64は、型閉方向に延びる。押出ピン64は、例えば、複数本設けられる。
【0045】
押出モータ56を駆動することにより、押出ピン64が型開閉方向に移動する。
【0046】
第1の測定器36aは、型締時に第1のタイバー18aに加わる応力を測定する。第2の測定器36bは、型締時に第2のタイバー18bに加わる応力を測定する。第3の測定器36cは、型締時に第3のタイバー18cに加わる応力を測定する。第4の測定器36dは、型締時に第4のタイバー18dに加わる応力を測定する。
【0047】
測定器36は、例えば、タイバー18の伸びを測定し、測定された伸びを引っ張り応力に換算する。第1の測定器36a、第2の測定器36b、第3の測定器36c、及び第4の測定器36dを用いて、第1のタイバー18a、第2のタイバー18b、第3のタイバー18c、及び第4のタイバー18dに型締時に加わる応力を独立に測定することが可能である。
【0048】
第1の調整機構30a、第2の調整機構30b、第3の調整機構30c、及び第4の調整機構30dは、リンクハウジング16に固定される。第1の調整機構30aは第1のタイバー18aの固定位置を調整する。第2の調整機構30bは第2のタイバー18bの固定位置を調整する。第3の調整機構30cは第3のタイバー18cの固定位置を調整する。第4の調整機構30dは第4のタイバー18dの固定位置を調整する。
【0049】
図4は、実施形態の調整機構の模式断面図である。第1の調整機構30a、第2の調整機構30b、第3の調整機構30c、及び第4の調整機構30dのそれぞれが図4に示す構造と同様の構造を有する。
【0050】
調整機構30は、モータ86(電動機)、ピニオン88、リングギア90、分割ナット装置92、アクチュエータ93、第1のタイバーガイド94、及び第2のタイバーガイド95を備える。モータ86は、電動機の一例である。モータ86は、出力軸86aを有する。分割ナット装置92は、分割ナット92a、支持部材92bを有する。
【0051】
タイバー18の被係合部18xは、第1の凹凸部18xxを有する。分割ナット92aは第2の凹凸部92axを有する。支持部材92bは雄ねじ部92bxを有する。リングギア90は、ギア部90xと雌ねじ部90yを有する。
【0052】
モータ86は、リンクハウジング16に固定される。モータ86は、出力軸86aを有する。出力軸86aは、例えば、型開閉方向に平行である。
【0053】
ピニオン88は、出力軸86aに同心状に固定される。ピニオン88は、例えば、いわゆる外歯車且つ平歯車である。ピニオン88は、外周に型開閉方向に切られた複数の歯を有している。ピニオン88は、出力軸86aと共にその軸回りに回転する。
【0054】
リングギア90は、環状である。リングギア90は、タイバー18を囲む。リングギア90は、分割ナット装置92の支持部材92bを囲む。
【0055】
リングギア90は、外周側にピニオン88に噛み合うギア部90xを有する。ギア部90xは、外周に型開閉方向に切られた複数の歯を有している。リングギア90は、ピニオン88の回転に伴い、タイバー18の回りを回転可能である。リングギア90は、ピニオン88を介してモータ86により駆動される。ピニオン88とリングギア90は、例えば、噛み合わせを維持した状態で、型開閉方向に相対移動が可能である。
【0056】
リングギア90は、内周側に雌ねじ部90yを有する。雌ねじ部90yは、支持部材92bに設けられた雄ねじ部92bxに噛み合う。雌ねじ部90yの型開閉方向のピッチは、例えば、5mm以上20mm以下である。
【0057】
リングギア90の型開閉方向に垂直な方向の厚さ(図4中のt)は、例えば、開閉方向にリンクハウジング16に向かって連続的に薄くなる。
【0058】
タイバー18の被係合部18xは、第1の凹凸部18xxを有する。第1の凹凸部18xxの型開閉方向のピッチは、例えば、20mm以上100mm以下である。
【0059】
分割ナット装置92は、タイバー18の被係合部18xを固定可能である。分割ナット装置92は、リングギア90の回転により型開閉方向に移動可能である。
【0060】
分割ナット92aは、例えば、ナットが2つに分割されたハーフナットである。分割ナット92aは、第2の凹凸部92axを有する。第2の凹凸部92axは、第1の凹凸部18xxと対向する。
【0061】
第2の凹凸部92axは、第1の凹凸部18xxに係合可能である。第2の凹凸部92axを第1の凹凸部18xxに係合することで、タイバー18が分割ナット装置92に固定される。
【0062】
第2の凹凸部92axは、例えば、テーパ形状を有する。
【0063】
第2の凹凸部92axの型開閉方向のピッチは、例えば、20mm以上100mm以下である。第2の凹凸部92axの型開閉方向のピッチは、例えば、雌ねじ部90yの型開閉方向のピッチよりも大きい。
【0064】
第2の凹凸部92axの高さは、例えば、雌ねじ部90yの高さよりも大きい。第2の凹凸部92axの高さとは、第2の凹凸部92axの凹部の底から凸部の頂部までの、型開閉方向に垂直な方向の長さである。また、雌ねじ部90yの高さとは、雌ねじ部90yのねじ溝の底からねじ山の頂部までの、型開閉方向に垂直な方向の長さである。
【0065】
第2の凹凸部92axの型開閉方向の長さ(図4中のL2)は、例えば、雌ねじ部90yの型開閉方向の長さ(図4中のL1)よりも小さい。
【0066】
支持部材92bは、分割ナット92aを支持する。分割ナット92aは、支持部材92bにより、型開閉方向に垂直な方向に摺動可能に支持される。
【0067】
支持部材92bはタイバー18を囲む。支持部材92bは、環状である。
【0068】
支持部材92bの一部は、リングギア90に囲まれる。支持部材92bの一部は雄ねじ部92bxを有する。雄ねじ部92bxは、リングギア90の雌ねじ部90yと噛み合う。
【0069】
アクチュエータ93は、分割ナット92aを型開閉方向に垂直な方向に移動させる機能を有する。アクチュエータ93を用いて、分割ナット92aの第2の凹凸部92axは、第1の凹凸部18xxに係合される。アクチュエータ93を用いて、タイバー18を調整機構30に対し固定又は非固定(解放)の状態にすることが可能である。
【0070】
アクチュエータ93は、例えば、エアシリンダである。アクチュエータ93は、例えば、油圧シリンダであっても構わない。
【0071】
第1のタイバーガイド94は、タイバー18と支持部材92bとの間に設けられる。第1のタイバーガイド94は、タイバー18の支持部材92bに対する型開閉方向の移動を潤滑にする機能を有する。
【0072】
第2のタイバーガイド95は、タイバー18とリンクハウジング16との間に設けられる。第2のタイバーガイド95は、タイバー18のリンクハウジング16に対する型開閉方向の移動を潤滑にする機能を有する。
【0073】
以下、調整機構30の動作について説明する。図5は、実施形態の調整機構の動作の説明図である。
【0074】
モータ86の回転によりピニオン88が回転する。ピニオン88は、出力軸86aの回りを回転する。
【0075】
ピニオン88の回転により、ピニオン88に噛み合うリングギア90が回転する。リングギア90は、タイバー18及び支持部材92bの回りを回転する。
【0076】
リングギア90の雌ねじ部90yと、支持部材92bの雄ねじ部92bxが噛み合っているため、リングギア90の回転に伴い、支持部材92bは型開閉方向に移動する。リングギア90の回転運動は、支持部材92bの直進運動に変換される。
【0077】
モータ86の回転方向を変えることで、リングギア90の回転方向が変わる。リングギア90の回転方向に応じて、支持部材92bは型開方向又は型閉方向に進む。
【0078】
支持部材92bが型開閉方向に移動することで、支持部材92bに支持された分割ナット92aも型開閉方向に移動する。分割ナット92aは、タイバー18の被係合部18xに対して型開閉方向に移動する。
【0079】
分割ナット92aが型開閉方向に移動することで、分割ナット92aの第2の凹凸部92axと、被係合部18xの第1の凹凸部18xxを、水平方向の位置ずれなく噛み合わせることが可能となる。
【0080】
分割ナット装置92の型開閉方向の移動可能量は、例えば、第1の凹凸部18xxのピッチの1倍以上2倍以下である。すなわち、分割ナット92aの型開閉方向の移動可能量は、例えば、第1の凹凸部18xxのピッチの1倍以上2倍以下である。
【0081】
制御装置43は、ダイカストマシン100の成形動作を制御する。制御装置43は、例えば、トグル機構24、トグル移動機構26、押出機構28、タイバー固定機構29、第1の調整機構30a、第2の調整機構30b、第3の調整機構30c、第4の調整機構30d、及び射出装置32の動作を制御する。制御装置43は、第1の調整機構30a、第2の調整機構30b、第3の調整機構30c、及び第4の調整機構30dの動作を独立に制御する。
【0082】
制御装置34は、例えば、第1の測定器36a、第2の測定器36b、第3の測定器36c、及び第4の測定器36dの測定結果に基づき、第1の調整機構30a、第2の調整機構30b、第3の調整機構30c、及び第4の調整機構30dの動作を独立に制御する。制御装置34は、例えば、第1の成形動作の際に得られた第1の測定器36a、第2の測定器36b、第3の測定器36c、及び第4の測定器36dの測定結果に基づき、第2の成形動作の前に、第1のタイバー18a、第2のタイバー18b、第3のタイバー18c、及び第4のタイバー18dに加わる応力が、最適値となるように、第1の調整機構30a、第2の調整機構30b、第3の調整機構30c、及び第4の調整機構30dの動作を独立に制御する。制御装置34は、例えば、第1の成形動作の際に得られた第1の測定器36a、第2の測定器36b、第3の測定器36c、及び第4の測定器36dの測定結果に基づき、第2の成形動作の前に、第1のタイバー18a、第2のタイバー18b、第3のタイバー18c、及び第4のタイバー18dに加わる応力の差分が、第1の成形動作よりも小さくなるように、第1の調整機構30a、第2の調整機構30b、第3の調整機構30c、及び第4の調整機構30dの動作を独立に制御する。
【0083】
制御装置34は、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。制御装置34は、例えば、CPU、及び半導体メモリを含む。制御装置34は、例えば、半導体メモリに記憶された制御プログラムを含む。
【0084】
表示装置35は、例えば、制御装置34の前面に設けられる。表示装置35は、例えば、オペレータの入力操作を受け付ける。オペレータは、表示装置35を用いて、ダイカストマシン100の成形条件等の設定が可能となる。また、表示装置35は、例えば、ダイカストマシン100の成形条件、動作状況等を画面に表示する。入力表示装置35は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイである。
【0085】
次に、実施形態の成形機を用いた成形動作について、説明する。図6は、実施形態の成形機の成形動作のフロー図である。図7ないし図10は、実施形態の成形機を用いた成形動作の説明図である。
【0086】
実施形態のダイカストマシン100の成形動作は、図6に示すように、型厚情報取得ステップ(S01)、分割ナット閉位置演算ステップ(S02)、分割ナット閉位置調整ステップ(S03)、可動ダイプレート前進ステップ(S04)、分割ナット閉ステップ(S05)、型締めステップ(S06)、射出ステップ(S07)、型開きステップ(S08)、分割ナット開ステップ(S08)、可動ダイプレート後退ステップ(S10)、分割ナット閉位置演算ステップ(S11)、分割ナット閉位置個別調整ステップ(S12)、及び押出ステップ(S13)を備える。
【0087】
型厚情報取得ステップ(S01)において、ダイカストマシン100は、いわゆる、型開限の状態である。型厚情報取得ステップ(S01)において、ダイカストマシン100は、型厚情報を取得する。型厚情報は、固定金型20の厚さと可動金型22の厚さの和である金型の厚さの情報である。
【0088】
型厚情報は、例えば、オペレータによって表示装置35から入力される。型厚情報は、例えば、あらかじめ制御装置34の中の半導体メモリに記憶されている。
【0089】
分割ナット閉位置演算ステップ(S02)では、型厚情報を基に、制御装置34が分割ナット装置92の型開閉方向の分割ナット閉位置を演算し決定する。分割ナット閉位置は、分割ナット92aを閉じた際に、分割ナット92aの第2の凹凸部92axと、被係合部18xの第1の凹凸部18xxが、水平方向の位置ずれなく噛み合わせることが可能な位置である。
【0090】
分割ナット閉位置は、例えば、あらかじめ制御装置34に記憶された被係合部18xの第1の凹凸部18xxの位置情報と、型厚情報から算出することが可能である。
【0091】
分割ナット閉位置調整ステップ(S03)では、分割ナット閉位置演算ステップ(S02)で決定された分割ナット閉位置へ分割ナット92aを移動する。具体的には、図7に示すように、制御装置34からの指令により、モータ86を所定の方向に所定の量だけ回転し、分割ナット装置92を所定の量だけ型開閉方向に移動する。
【0092】
可動ダイプレート前進ステップ(S04)では、リンクハウジング16及び可動ダイプレート14を型閉方向に前進させる。リンクハウジング16及び可動ダイプレート14は、トグル移動機構26を用いて移動される。リンクハウジング16及び可動ダイプレート14は、固定金型20に可動金型22が接触するまで前進する。
【0093】
分割ナット閉ステップ(S05)では、分割ナット92aを閉じる。具体的には、図8に示すように、制御装置34からの指令により、アクチュエータ93を駆動し、分割ナット92aの第2の凹凸部92axと、被係合部18xの第1の凹凸部18xxを噛み合わせる。
【0094】
図9は、図8の場合よりも金型の厚さが薄い場合を示す。図9に示すように、金型の厚さが薄い場合は、タイバー18の実効長が図8の場合よりも短くなる位置で、第2の凹凸部92axと第2の凹凸部92axが噛み合う。タイバー18の実効長とは、型締めを行った後の固定ダイプレート12とリンクハウジング16との間の距離である。
【0095】
型締めステップ(S06)では、トグル機構24を用いて型締めを行う。固定金型20に可動金型22との間に型締力が加えられる。型締力によりタイバー18が伸び、タイバー18に引っ張り応力が加わる。
【0096】
第1のタイバー18a、第2のタイバー18b、第3のタイバー18c、及び第4のタイバー18dのそれぞれに加わる引っ張り応力の大きさは、第1の測定器36a、第2の測定器36b、第3の測定器36c、及び第4の測定器36dを用いて独立に測定される。測定された結果は、例えば、制御装置34に伝送され、制御装置34に記憶される。
【0097】
射出ステップ(S07)では、射出装置32を用いて射出動作が行われる。具体的には、例えば、図示しないホッパー等を用いて、開口部82からスリーブ74の中へ溶湯が供給される。そして、スリーブ74内でプランジャチップ76aを前進させて溶湯を金型内の空洞Caへ充填する。金型内の空洞Caへ充填された溶湯が型締めされることで、ダイカスト品が製造される。
【0098】
型開きステップ(S08)では、トグル機構24を用いて型開きを行う。型開きステップ(S08)では、固定金型20と可動金型22が離間する。
【0099】
分割ナット開ステップ(S09)では、分割ナット92aを開く。具体的には、制御装置34からの指令により、アクチュエータ93を駆動し、分割ナット92aの第2の凹凸部92axと、被係合部18xの第1の凹凸部18xxの噛み合わせを開放する。
【0100】
可動ダイプレート後退ステップ(S10)では、リンクハウジング16及び可動ダイプレート14を型開方向に後退させる。リンクハウジング16及び可動ダイプレート14は、トグル移動機構26を用いて移動される。
【0101】
分割ナット閉位置個別演算ステップ(S11)では、第1の測定器36a、第2の測定器36b、第3の測定器36c、及び第4の測定器36dを用いて測定された測定結果をもとに、第1のタイバー18a、第2のタイバー18b、第3のタイバー18c、及び第4のタイバー18dに加わる引っ張り応力が、最適値となるように、第1の調整機構30a、第2の調整機構30b、第3の調整機構30c、及び第4の調整機構30dのそれぞれの分割ナット装置92の型開閉方向の分割ナット閉位置を制御装置34が、個別に演算し決定する。例えば、第1のタイバー18a、第2のタイバー18b、第3のタイバー18c、及び第4のタイバー18dに加わる引っ張り応力の差分が、第1の成形動作よりも小さくなる分割ナット閉位置を、制御装置34が個別に演算し決定する。
【0102】
例えば、第1の測定器36aで測定された第1のタイバー18aに加わった引っ張り応力だけが大きかった場合、分割ナット閉位置個別演算ステップ(S11)では、第2の成形動作の際に、第1のタイバー18aに加わる引っ張り応力が小さくなるように、第1の調整機構30aの分割ナット閉位置を決定する。この場合、第1のタイバー18aの実効長が他のタイバー18の実効長よりも長くなるように、第1の調整機構30aの分割ナット閉位置を決定する。
【0103】
分割ナット閉位置個別調整ステップ(S12)では、分割ナット閉位置個別演算ステップ(S11)で決定された分割ナット閉位置へ分割ナット92aを移動する。具体的には、例えば、図10に示すように、制御装置34からの指令により、第1の調整機構30aのモータ86のみを所定の量だけ回転し、第1の調整機構30aの分割ナット装置92のみを所定の量だけ型開閉方向に移動する。
【0104】
押出ステップ(S13)では、押出機構28を用いてダイカスト品の押し出しを行う。具体的には、押出モータ56を駆動することにより、押出ピン64が可動金型22に対して相対的に型閉方向に移動し、ダイカスト品が可動金型22から押し出される。可動金型22から押し出されたダイカスト品は、例えば、図示しないロボットアームを用いてピックアップされる。
【0105】
以上の第1の成形動作により、ダイカスト品が製造される。次のダイカスト品を製造する場合には、可動ダイプレート前進ステップ(S04)から第2の成形動作を開始する。
【0106】
なお、分割ナット閉位置個別演算ステップ(S11)及び分割ナット閉位置個別調整ステップ(S12)を実行するタイミングは、必ずしも可動ダイプレート後退ステップ(S10)と押出ステップ(S13)との間でなくとも構わない。例えば、分割ナット閉位置個別演算ステップ(S11)は、射出ステップ(S07)以降、第2の成形動作の可動ダイプレート前進ステップ(S04)の前に実行されれば構わない。また、分割ナット閉位置個別調整ステップ(S12)は、可動ダイプレート後退ステップ(S10)以降、第2の成形動作の可動ダイプレート前進ステップ(S04)の前に実行されれば構わない。
【0107】
次に、実施形態の成形機の作用及び効果について説明する。
【0108】
ダイカストマシンでは、ダイカスト品を成形した後、異なる種類のダイカスト品を成形する際に、金型が交換される。交換後の金型の型厚に応じてタイバー18の実効長を変更する必要が生じる。
【0109】
実施形態のダイカストマシン100では、調整機構30の分割ナット装置92は、型開閉方向に連続的に移動することが可能である。このため、タイバー18の固定位置を任意に変更することが可能である。したがって、タイバー18の実効長を任意の長さに変更することが可能である。言い換えれば、任意の型厚の金型に対して最適な位置でタイバー18を固定することが可能である。
【0110】
ダイカストマシンでは、型締めされた状態で、複数のタイバー18の間で、タイバー18に加わる引っ張り応力に差が生じる場合がある。タイバー18に加わる引っ張り応力に差が生じると、例えば、金型に加わる応力の分布が不均一になり、成形したダイカスト品が不良となるおそれがある。すなわち、ダイカスト品の歩留まりが低下するおそれがある。また、過剰に引っ張り応力が加わったタイバー18が破損するおそれがある。
【0111】
実施形態のダイカストマシン100では、第1の調整機構30a、第2の調整機構30b、第3の調整機構30c、及び第4の調整機構30dを用いて、第1のタイバー18a、第2のタイバー18b、第3のタイバー18c、及び第4のタイバー18dに加わる引っ張り応力を独立して調整が可能である。したがって、例えば、タイバー18に加わる引っ張り応力を均等にすることが可能となる。よって、例えば、タイバー18の破損を抑制することが可能となる。
【0112】
第2の凹凸部92axと雌ねじ部90yには、型締めの際に同程度の力を支える必要がある。第2の凹凸部92axと雌ねじ部90yが、同程度の力を支える観点から、第2の凹凸部92axのピッチが雌ねじ部90yのピッチより大きく、第2の凹凸部92axの型開閉方向の長さ(図4中のL2)が雌ねじ部90yの長さ(図4中のL1)よりも小さいことが好ましい。また、第2の凹凸部92axと雌ねじ部90yが、同程度の力を支える観点から、第2の凹凸部92axの高さが雌ねじ部90yの高さよりも大きいことが好ましい。
【0113】
第1の凹凸部18xx及び第2の凹凸部92axは、テーパ形状を有することが好ましい。第1の凹凸部18xx及び第2の凹凸部92axがテーパ形状を有することで、第1の凹凸部18xxと第2の凹凸部92axとの係合が容易となる。
【0114】
リングギア90の型開閉方向に垂直な方向の厚さ(図4中のt)は、例えば、型開閉方向にリンクハウジング16に向かって連続的に薄くなることが好ましい。上記構成により、型締め時に、リンクハウジング16の側の雌ねじ部90yの端部の応力集中が低減される。型開閉方向に垂直な方向の厚さtが薄くなることにより、リンクハウジング16が変形しやすくなり、雌ねじ部90yの端部の応力集中が低減する。
【0115】
タイバー18の破損を抑制する観点から、制御装置43は、第1の成形動作の際に得られた第1の測定器36a、第2の測定器36b、第3の測定器36c、及び第4の測定器36dの測定結果に基づき、第1の成形動作に続く第2の成形動作の前に、第1のタイバー18a、第2のタイバー18b、第3のタイバー18c、及び第4のタイバー18dに加わる応力の差分が、第1の成形動作よりも小さくなるように、第1の調整機構30a、第2の調整機構30b、第3の調整機構30c、及び第4の調整機構30dを制御することが好ましい。
【0116】
以上、実施形態によれば、複数のタイバーに加わる応力を独立して調整可能なダイカストマシンを提供することができる。
【0117】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。実施形態においては、成形機などで、本発明の説明に直接必要としない部分については記載を省略したが、必要とされる、成形機などに関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0118】
実施形態においては、ダイカストマシンを成形機の例として説明したが、本発明を射出成形機等に適用することも可能である。
【0119】
実施形態においては、トグル機構を駆動する駆動装置がモータである場合を例に説明したが、例えば、駆動装置は油圧装置であっても構わない。
【0120】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての成形機は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0121】
10 ベース
12 固定ダイプレート
14 可動ダイプレート
16 リンクハウジング
18a 第1のタイバー
18b 第2のタイバー
18c 第3のタイバー
18d 第4のタイバー
18x 被係合部
18xx 第1の凹凸部
19 タイバーナット
20 固定金型
22 可動金型
24 トグル機構
26 トグル移動機構
28 押出機構
30 タイバー固定機構
30a 第1の調整機構
30b 第2の調整機構
30c 第3の調整機構
30d 第4の調整機構
32 射出装置
34 制御装置
36a 第1の測定器
36b 第2の測定器
36c 第3の測定器
36d 第4の測定器
40 型締モータ(駆動装置)
86 モータ(電動機)
86a 出力軸
88 ピニオン
90 リングギア
90x ギア部
90y 雌ねじ部
92 分割ナット装置
92a 分割ナット
92ax 第2の凹凸部
92b 支持部材
92bx 雄ねじ部
100 ダイカストマシン(成形機)
Ca 空洞
【要約】
【課題】複数のタイバーに加わる応力を独立して調整可能な成形機を提供する。
【解決手段】実施形態の成形機は、固定金型を保持する固定ダイプレートと、可動金型を固定金型に対向して保持する可動ダイプレートと、固定金型と可動金型の型締めが可能なトグル機構と、リンクハウジングと、一端を固定ダイプレートに固定可能で、型開閉方向に延び、他端に被係合部を有する第1ないし第4のタイバーと、第1ないし第4のタイバーの他端の固定位置を調整する第1ないし第4の調整機構と、射出装置と、を備え、第1ないし第4の調整機構のそれぞれは、リンクハウジングに固定される電動機と、電動機を用いて駆動され、タイバーを囲む環状で、タイバーの回りを回転可能なリングギアと、リングギアの回転により型開閉方向に移動可能で、被係合部を固定可能な分割ナット装置と、を含む。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10