(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】媒体を分析するための装置、ならびに関連する卵識別装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/359 20140101AFI20220614BHJP
G01N 33/08 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G01N21/359
G01N33/08
(21)【出願番号】P 2020503307
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018043996
(87)【国際公開番号】W WO2019027814
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-04-21
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ワルカス,ジョエル・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィックストーム,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】バスチアーノ,アマンダ・エリザベス
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05995858(US,A)
【文献】特開2015-102545(JP,A)
【文献】特開2013-117454(JP,A)
【文献】特開2004-347327(JP,A)
【文献】特表2004-516475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G01N 33/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵の現状を非侵襲的に特定するための装置であって、
卵に向けて光を放出するように構成された発光体アセンブリであって、第1の光信号を放出するように構成された第1の発光体源と、第2の光信号を放出するように構成された第2の発光体源とを有し、前記第1及び第2の光信号は位相直交で前記卵を通して送信される前記発光体アセンブリと、
前記卵を通して送信された前記第1及び第2の光信号を検出するように構成された検出器アセンブリであって、さらに前記第1及び第2の光信号それぞれの相対振幅を分離するように構成されている前記検出器アセンブリと、
前記検出された第1及び第2の光信号を処理して、前記第1及び第2の光信号の前記相対振幅または絶対振幅のうちの少なくとも一方を用いて前記卵の現状を特定するように構成されているプロセッサと、
を含む前記装置。
【請求項2】
前記第1の光信号は第1の波長で放出され、前記第2の光信号は、前記第1の波長とは異なる第2の波長で放出される請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の発光体源は約780~830ナノメートルの範囲の光を放出するように構成され、前記第2の発光体源は約850~940ナノメートルの範囲の光を放出するように構成されている請求項
2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の光信号は共通の周波数で送信される請求項
1に記載の装置。
【請求項5】
前記検出器アセンブリは位相敏感検出器を含む請求項
1に記載の装置。
【請求項6】
前記検出された第1及び第2の光信号は処理されて、極座標系上にプロットされ、閾値レベルに対して評価されて前記卵の現状を判定する請求項
1に記載の装置。
【請求項7】
前記検出された第1及び第2の光信号は、前記卵内の生存胚を示す信号振幅の関数として処理される請求項
1に記載の装置。
【請求項8】
さらに複数の発光体アセンブリ及び検出器アセンブリを含み、複数の発光体・検出器対を構成し、前記発光体は、直交周波数関係を伴う信号を送信する請求項
1に記載の装置。
【請求項9】
卵の現状を分析する方法であって、
分析すべき卵を通して第1の光信号及び第2の光信号を位相直交で送信することと、
前記卵を通して送信された前記第1及び第2の信号を検出することと、
前記第1及び第2の光信号それぞれの相対振幅を分離することと、
前記第1及び第2の光信号の前記相対振幅及び絶対振幅のうちの少なくとも一方を用いて前記卵の現状を判定することと、
を含む前記方法。
【請求項10】
第1の光信号及び第2の光信号を送信することは、第1の光信号及び第2の光信号を異なる波長で送信することをさらに含む請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の光信号は約780~830ナノメートルの範囲で送信され、前記第2の光信号は約850~940ナノメートルの範囲で送信される請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
第1の光信号及び第2の光信号を送信することは、第1の光信号及び第2の光信号を共通の周波数で送信することをさらに含む請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記検出された第1及び第2の光信号は位相敏感である請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記卵の現状を判定することはさらに、抽出した振幅及び位相データを処理して、極座標系上にプロットし、閾値レベルに対して評価して前記卵の現状を判定することを含む請求項
9に記載の方法。
【請求項15】
前記卵の現状を判定することはさらに、前記検出された第1及び第2の光信号の前記振幅の変調が、前記卵が生存胚を含むことを示していると判定することを含む請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全般的に、分析すべき媒体の特性を特定するためのデバイスに関する。より詳細には、本開示は、媒体の特性を特定するために用いる発光体・検出器システムであって、ある場合には、鳥卵内の胚の生存能力または存在を判定するために用い得るシステム、及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家禽卵を何らかの観察可能な品質に基づいて見分けることは、家禽業界では良く知られた、長い間利用されている慣行である。「キャンドリング」はこのような技術の1つに対する一般名であり、ロウソクの光を用いて卵を検査する元々の慣行にその起源がある用語である。卵に精通した者であれば周知のように、卵殻はほとんどの照明条件下で不透明に見えるが、実際には多少半透明であり、直接光の前に置けば卵の中身を観察することができる。
【0003】
生存家禽に孵化されるべき卵を通常は胚発育中にキャンドリングして、透明卵、腐敗卵、及び死亡卵(まとめて、本明細書では「非生存卵」と言う)を識別する。非生存卵(生存不能卵とも言う)を孵卵から取り除いて、利用可能な孵卵器スペースを増やす。多くの場合、孵化する前に、生存卵(生存可能卵とも言う)内に卵内注射によって物質を導入することが望ましい。民間家禽業界では、孵化後の死亡率を減らすかまたは孵化した鳥の成長速度を上げるために、鳥卵内に種々の物質を注射することが採用されている。
【0004】
民間の家禽生産では、民間のブロイラー卵のうち一定の割合のみが孵化する。孵化しない卵には、受精しなかった卵、並びに受精したが死んだ卵が含まれる。民間の家禽生産で生じる非生存卵の数の故に、卵内注射及び処置物質のコスト用に自動化された方法を用いること、生存卵を識別(または非生存卵を識別)して非生存卵を取り除くかまたは生存卵のみに選択的に注射するための自動化された方法を用いることが望ましい。
【0005】
卵は「生存」卵の場合がある。すなわち、生存可能な胚がある。
図1に孵卵のおよそ1日目の生存家禽卵1を例示する。
図2に孵卵のおよそ11日目の生存卵1を例示する。卵1は、10で表される辺りに多少細い端部を有し、また20で示す辺りに広がった端部または丸い端部が対向して配置されている。
図1では、胚2が卵黄3の上に示されている。卵1には、広がった端部20に隣接して気室4が含まれている。
図2に例示するように、ひよこの翼5、脚部6、及びくちばし7が発育している。
【0006】
卵は「透明」または「無精」卵の場合がある。すなわち、胚がない。より詳細には、「透明」卵は腐敗しなかった無精卵である。卵は「早期死亡」卵の場合がある。すなわち、胚がおよそ1~5日経って死んでいる。卵は「中期死亡」卵の場合がある。すなわち、胚がおよそ5~15日経って死んでいる。卵は「後期死亡」卵の場合がある。すなわち、胚がおよそ15~18日経って死んでいる。
【0007】
卵は「腐敗」卵の場合がある。すなわち、卵には、腐敗した無精卵黄(たとえば、卵の殻に亀裂が入った結果)、あるいは腐敗した死亡胚が含まれている。「早期死亡」、「中期死亡」、または「後期死亡胚」は腐敗卵の場合があるが、これらの用語を本明細書で用いる場合、腐敗していない卵を指す。透明卵、早期死亡卵、中期死亡卵、後期死亡卵、及び腐敗卵は「非生存」卵であると分類される場合もある。なぜならば、それらには生存胚が含まれていないからである。
【0008】
以前のキャンドリング装置の中には、不透明度特定システムを用いているものがあった。このシステムでは、複数の光源及び対応する光検出器がアレイ状に搭載されて、光源と光検出器との間のフラット上に卵を通す。しかしこのシステムは、特に腐敗卵に関して、生存卵と非生存卵とを見分けることに限られている。腐敗卵には、有害な病原体が含まれている場合があり、これに近接する本来は生存可能卵を汚染する可能性がある。
【0009】
したがって、生存卵と非生存卵とを正確に区別することができる卵識別システム、特に腐敗卵を識別することができる卵識別システムを提供することが望ましいであろう。さらに、このように生存卵と非生存卵とを見分けることを高スループットで正確に行いやすくする関連する方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0010】
前述及び他の必要性は、本開示の態様によって満たされる。本開示では、一態様により、分析すべき媒体を調べるための装置が提供される。装置は、媒体に向けて光を放出するように構成された発光体アセンブリを有する。発光体アセンブリは、第1の光信号を放出するように構成された第1の発光体源と、第2の光信号を放出するように構成された第2の発光体源とを有する。第1及び第2の光信号は位相直交で媒体を通して送信される。検出器アセンブリが、媒体を通して送信された第1及び第2の光信号を検出するように構成されている。検出器アセンブリはさらに、第1及び第2の光信号それぞれの相対振幅または絶対振幅を分離するように構成されている。プロセッサが、検出信号を処理して、第1及び第2の光信号の相対振幅または絶対振幅のうちの少なくとも一方を用いて媒体の特性を特定するように構成されている。
【0011】
別の態様では媒体を分析する方法が提供される。本方法には、分析すべき媒体を通して第1の光信号及び第2の光信号を位相直交で送信することが含まれる。本方法にはさらに、媒体を通して送信された第1及び第2の光信号を検出することと、第1及び第2の光信号それぞれの相対振幅または絶対振幅を分離することとが含まれる。本方法にはさらに、第1及び第2の光信号の相対振幅または絶対振幅のうちの少なくとも一方を用いて媒体の特性を判定することが含まれる。
【0012】
さらに別の態様では、卵の現状を非侵襲的に特定するための装置が提供される。装置には、卵に向けて光を放出するように構成された発光体アセンブリが含まれる。発光体アセンブリは、第1の光信号を放出するように構成された第1の発光体源と、第2の光信号を放出するように構成された第2の発光体源とを有する。第1及び第2の光信号は位相直交で卵を通して送信される。検出器アセンブリが、卵を通して送信された第1及び第2の光信号を検出するように構成されている。検出器アセンブリはさらに、第1及び第2の光信号それぞれの相対振幅または絶対振幅を分離するように構成されている。プロセッサが、検出された第1及び第2の光信号を処理して、第1及び第2の光信号の相対振幅または絶対振幅のうちの少なくとも一方を用いて卵の現状を特定するように構成されている。
【0013】
さらに別の態様では、卵の現状を分析する方法が提供される。本方法には、分析すべき卵を通して第1の光信号及び第2の光信号を位相直交で送信することが含まれる。本方法にはさらに、卵を通して送信された第1及び第2の信号を検出することと、第1及び第2の光信号それぞれの相対振幅または絶対振幅を分離することとが含まれる。本方法にはさらに、第1及び第2の光信号の相対振幅または絶対振幅のうちの少なくとも一方を用いて卵の現状を判定することが含まれる。
【0014】
このように、本明細書の他の場所でも詳述しているように、本開示の種々の態様によって利点が得られる。
【0015】
以上のように本開示の種々の実施形態を概略的に説明した上で、添付図面を参照する。図面は必ずしも一定の比率では描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】孵卵のおよそ11日目の生存鶏卵を例示する。
【
図3】本開示の一態様による卵識別装置の概略斜視図である。
【
図4】卵を固定位置に収容することができる卵フラットの概略斜視図である。
【
図5】本開示の一態様による卵識別システムを例示する図である。
【
図6】本開示の一態様による卵識別方法の一部を例示するグラフである。
【
図7】本開示の一態様による卵識別方法の一部を例示するグラフである。
【
図8】本開示の一態様による、媒体の特性を特定するために用いる方法による検出器ゲイン対検出光のパワー変動の周波数のプロットである。
【
図9】本開示の一態様による、
図8の場合よりも長いサンプル時間に対する検出器ゲイン対検出光のパワー変動の周波数のプロットである。
【
図10】本開示によるアナログ実施態様を例示する図である。
【
図11】本開示によるダウンコンバータのデジタル実施態様を例示する図である。
【
図12】隣接チャネル除去及び周波数計画に対する本開示の方法態様を例示する図である。
【
図13】本開示の方法の一部として直交誤差の効果を例示する図である。
【
図14】異なる卵タイプの光学密度対送信光の波長のプロットである。
【
図15】干渉光を用いずに生存卵と非生存卵とを識別するための信号パワー対位相角をプロットするグラフである。
【
図16】干渉光を用いずに生存卵と非生存卵とを識別するための信号パワー対位相角をプロットするグラフである。
【
図17】
図5に示すシステムに対するフィルタ帯域幅とノイズフロアとの間の測定された関係を例示する図である。
【
図18】
図5に示すシステムに対するフィルタ帯域幅とノイズフロアとの間の測定された関係を例示する図である。
【
図19】生存卵と非生存卵とを識別するための信号パワー対位相角をプロットするグラフであり、自己干渉光の効果を例示する図である。
【
図20】生存卵と非生存卵とを識別するための信号パワー対位相角をプロットするグラフであり、自己干渉光の効果を例示する図である。
【
図21】生存卵と非生存卵とを識別するための信号パワー対位相角をプロットするグラフであり、自己干渉光の効果を例示する図である。
【
図22】生存卵と非生存卵とを識別するための信号パワー対位相角をプロットするグラフであり、自己干渉光の効果を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本開示の種々の態様について、添付図面を参照して以下でより十分に説明する。図面では、本開示の一部だがすべてではない態様を示す。実際には、本開示を多くの異なる形態で具体化してもよく、本明細書で述べる態様に限定されると解釈してはならない。むしろこれらの態様は、本開示が適用される法的要件を満たすように提供される。全体を通して同様の番号は同様の要素を指す。
【0018】
本開示は、分析すべき媒体の1つ以上の特性を判定または特定するための装置及び方法に関する。本開示は、パルス酸素測定、ガス分析、または分析すべき他の物体もしくは媒体に用途があり得る。より詳細には、本開示は、卵内の胚の生存能力の判定を向上させるための装置及び方法に関する。場合によっては、本開示を、複数の卵の生存能力の判定を高スループットで行うために実施してもよい。場合によっては、卵を識別システムに無接触または非接触で通してもよいが、他の場合では、卵に機械的な光シールを接触させて漂遊信号(たとえば、周辺光)を減らしてもよい。本明細書で用いる場合、用語「無接触」及び「非接触」は、生存能力を判定するときの発光体・検出器対の動作中に、卵と本明細書で開示した卵識別システムの特定のコンポーネントとの間の離間に配置された関係を維持することを指す。
【0019】
さらに、本開示は、卵の生存能力を判定するために送信(いわゆる「スルービーム」)モードを用いる装置及び方法に関する。送信モードで動作させることによって、卵識別装置の発光体及び検出器を共通の長手軸に沿って軸方向に位置合わせして、装置を実現可能な方法で構成し得るようにしてもよい。すなわち、発光体アセンブリ及び検出器アセンブリを卵の両側に配置して、卵がそれらの間を容易に通って評価及び識別ができるようにしてもよい。
【0020】
本開示の態様による本方法及び装置を用いて、胚発育(孵卵期間とも言う)中の任意の時点で生存卵と非生存卵とを正確に識別してもよい。本開示の態様は、胚発育期間中の特定の日(たとえば、11日目)または時間のみにおける識別に限定されない。加えて、本開示の態様による方法及び装置を任意の種類の鳥卵(たとえば、限定することなく、鶏、七面鳥、カモ、ガチョウ、ウズラ、キジ卵、外来鳥卵など)とともに用いてもよい。
【0021】
図3に、本開示の種々の態様を実施することができる卵識別装置100を例示する。卵識別装置100には、フレーム120及び搬送機システム140が含まれていてもよい。搬送機システム140は、卵フラット50(
図4)に収容される複数の卵を卵識別システム160まで運ぶように構成されている。場合によっては、卵識別装置100にはオペレータインターフェースディスプレイ180が含まれていてもよい。オペレータインターフェースディスプレイ180は、卵識別装置100及び/または分析用に卵識別システム160を通る卵に関する情報を表示することができる。卵識別装置100には、その種々の態様(たとえば、卵識別システム160の特定のコンポーネントを有効及び無効にできること)を制御するための1つ以上のコントローラが含まれていてもよい。卵識別装置100は持ち運び可能であってもよく、また場合によっては、他の関連するデバイス(たとえば、卵注射装置、卵選別装置、卵搬送装置、卵除去装置、または性別識別装置など)に接続され得るようにモジュール方式で構成してもよい。場合によっては、卵識別システム160を、卵注射装置、卵選別装置、卵搬送装置、卵除去装置、または性別識別装置に直接適用してもよい。
【0022】
図4を参照して、卵フラット50を、複数の端部54を有する本体52で形成してもよい。本体52は複数の開口ポケット56を画定してもよい。各ポケット56は、対応する卵の端部を収容することができる。場合によっては、卵の細い端部10(
図1及び2)をポケット56内に収容して、丸い端部20が卵フラット50の上方に突き出るようにしてもよい。複数の突起部材58をポケット56の周りに設けて、卵が縦向きに維持されるようにしてもよい。卵を卵フラット50に入れて運んでもよいが、卵の現状を特定するために複数の卵をある時間にわたって卵識別システム160に渡す任意の手段を用いてもよい。
【0023】
次に
図5を参照して、本開示の態様により卵の現状を非侵襲的に特定するための卵識別システム160を概略的に例示する。本明細書で説明するシステム及び方法は、卵の評価の全体を通して卵殻構造が無傷のままであるという点で非侵襲性であると言ってもよい。発光体・検出器対500を卵の分類で用いるために設けてもよい。例示した発光体・検出器対500には、発光体アセンブリ200と検出器アセンブリ300とが含まれていてもよい。動作時には、複数の発光体・検出器対500をアレイ状に配設して、卵フラット50(
図4)によって支持される対応するアレイの卵を分類するために用いてもよい。発光体アセンブリ200には発光体ハウジングが含まれていてもよい。本開示の態様は発光体ハウジングの例示した構成に限定されない。発光体ハウジングは、限定することなく種々の形状、サイズ、及び構成を有していてもよい。発光体アセンブリ200のアレイを、卵識別システム160のフレームまたは他の支持部材を介して支持してもよい。卵識別システム160を無接触で動作させて卵が物理的に接触しないようにしてもよいため、発光体アセンブリ200を静止位置に配置してもよい。
【0024】
卵1に、卵1の丸い端部20に近接して位置する発光体アセンブリ200の第1及び第2の発光体源210、220から出る光を照射してもよい。場合によっては、2つの発光体源210、220から出る光ビームを結合して平行にして、結合信号によって表される単一ビームにしてもよい。場合によっては、発光源210、220から放出された光を平行にして及び/またはフォーカスしてもよい。本開示の種々の実施形態によれば、物体に約400~2600ナノメートルの範囲内の波長の光を照射してもよい。鳥卵の応用例の場合、個々の各発光源210、220は特に、卵に可視スペクトル、赤外線スペクトル、近赤外スペクトル、または紫外線スペクトル内の波長の光を照射してもよい。第1及び第2の発光体源210、220は異なる波長の光を放出する。第1及び第2の発光体源210、220は、約750~950nm、好ましくは約800~910nmの範囲の光を放出してもよい。場合によっては、第1の発光体源210は、約800~810nmの範囲、好ましくは約805~809nmの範囲の光を放出してもよい。この領域では、鳥卵の高い選択性が得られる一方で、第1の発光体波長の良好な送信特性が得られる。第2の発光体源は、約900~910nmの範囲、好ましくは約905~910nmの範囲の光を放出してもよい。この領域でも、鳥卵の高い選択性が得られる一方で、第2の発光体波長の良好な送信特性が得られる。他の卵タイプ及び材料では、異なる波長が必要なこともある。
【0025】
発光体アセンブリ200を、卵1の長手軸に沿って電磁放射線の放出が最大になるように構成して、放出が卵1に向けてコヒーレントに送られるようにしてもよい。すなわち、卵1の所定の領域上に発光源210の放出を投影するように発光体アセンブリ200を構成してもよい。いくつかの態様によれば、発光体源210、220を、たとえば、発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオード(LD)、レンズ、バッフル、及び結合手段であって電磁スペクトルの種々の部分から光を放出するように構成されたもので形成してもよい。しかし、本開示の態様はLEDまたはLDを用いることに限定されない。限定することなく、種々のタイプの発光体源を用いてもよい。詳細には、光の狭いスペクトルを放出する任意の供給源を用いてもよい。
【0026】
検出器アセンブリ300を、発光体アセンブリ200の反対側の卵1の細い端部10に隣接して配置してもよく、また検出器アセンブリ300は、卵を通して送信された光を受け取ってもよい。検出器アセンブリ300にはさらに、検出デバイス、たとえばフォトダイオード、レンズ、バッフル、増幅器、及びフィルタが含まれていてもよい。検出器アセンブリ300を、媒体または材料を通して送信された放射束の目標部分を、波長の関数として測定するように構成してもよい。本明細書で光測定値に対して用語「強度」を用いることに関しては、パワー測定値(ワット)に言及する場合には「放射束」、またはパワー/面積(W/m^2)に言及する場合には「放射照度」と解釈しなければならない。検出器アセンブリ300を、卵1に対する光強度値を、卵の現状(すなわち、生存能力または生存無能力)を判定するための利用可能な情報に変換するように構成してもよい(たとえば、マイクロプロセッサを介して)。同様に、光強度値を処理して、当該の卵が早期死亡、中期死亡、後期死亡、透明、亀裂、腐敗、及び/または紛失であるかを判定するのに用いてもよい。卵1の丸い端部20を図示して、照射されていると説明しているが、発光体アセンブリ200と検出器アセンブリ300の位置を切り替えて、電磁放射線を上向きに送って卵1の細い端部10内に入れ、送信光を丸い端部20で検出することもできる。
【0027】
卵識別システム160には、1つ以上のコントローラまたは適切なハードウェアが含まれていてもよい。たとえば、コントローラ(複数可)75、80は、発光源210、220を制御するドライバであってもよい。オペレータがコントローラとやり取りできるように、オペレータインターフェース(たとえば、ディスプレイ)180を好ましくは設けてもよい。コントローラを、1つ以上の発光源210、220を作動及び作動停止させる制御信号を発生させるように構成してもよい。関数発生器(たとえば、任意の関数発生器70など)を設けて、電気波形を発生させ、振幅、周波数、及び位相を制御してもよい。任意の関数発生器によって周期的なユーザ定義の波形を発生させることができる。コントローラにはまた、必要に応じて、1つ以上の発光源210、220及び検出器アセンブリ300を制御し、検出器アセンブリ300からの信号を処理するかまたは他の場合には評価及び測定する他のデバイスが含まれていてもよい。コントローラには、プロセッサ、または好適なソフトウェアを含む他の好適なプログラム可能もしくはプログラム不能な回路が含まれていてもよい。
【0028】
プロセッサ600を検出器アセンブリ300に動作可能に接続してもよく、プロセッサ600は、場合によっては、検出器アセンブリ300から信号を受け取って処理してもよい。プロセッサ600はまた、卵に対して生成されたデータセットを既知の卵状態に関連付けられるデータと比較してもよく、この比較データを用いて、タイプ(すなわち、生存、透明、死亡、腐敗)に従って卵を分類してもよい。プロセッサ600は、1)検出器アセンブリ300から信号を受け取って処理し、2)各卵に関連付けられるデータを処理及び記憶するように構成してもよい。
【0029】
オペレータインターフェース180は、任意の好適なユーザインターフェースデバイスであってもよく、好ましくはタッチスクリーンまたはキーボードが含まれている。オペレータインターフェース180によって、ユーザは、コントローラから種々の情報を取り出し、種々のパラメータを設定し、及び/またはコントローラをプログラム/再プログラムすることができてもよい。オペレータインターフェース180には、他の周辺デバイス、たとえば、プリンタ、及びコンピュータネットワークへの接続部が含まれていてもよい。フラット50内の複数の卵のそれぞれの特定された状態を、オペレータインターフェース180を介して、卵の集団または群に対する累積統計値とともに図式的に表示してもよい。このような累積統計値を、分類データを用いてプロセッサ600が集めて、計算して、及び/または推定してもよい。累積統計値には、各集団、群、またはフラットに対して、早期死亡割合、中期死亡割合、及び腐敗卵の割合が含まれていてもよい。これらの統計値は、孵化場及び孵卵器動作、ならびに品種または群のステータス及び能力をモニタ及び評価するのに有用であり得る。
【0030】
本開示によって、2つの別個の信号を同じ正弦波搬送波上で送信し、送信信号を検出し、検出器における別個の各信号の相対振幅を分離するための新しい装置及び方法が提供される。結合信号を、各信号に対する影響(たとえば、減衰)が異なる媒体を通して送信してもよい。媒体と2つの信号との相互作用によって、媒体についての有用な情報(特性)が得られる。検出信号によって、相対振幅または絶対振幅の両方を通して、媒体についての特性を特定する手段が得られる。単一搬送波上で二波長を用いることは、光吸収測定の分野では新しいことである。直交振幅変調(QAM)を用いることは、デジタルデータを送信するための通信システムの分野で用いられる技術である。送信部ではなく、測定した媒体への吸収によって、振幅変調が適用される。2つの波長を吸収することによって、検出信号振幅の変化が媒体に応じて異なる。これは、位相偏移キーイング(単一象限)がなく、振幅シフトキーイング(滑らかな移行)がないという点で単純化される。この新しい方法によって、媒体の特性を特定するために用い得る非常に正確な相対的吸収測定値が得られる。
【0031】
2つの信号を位相直交(すなわち、90度位相)で送信することで、2つの信号の直交性によって、各信号の振幅を高精度で再生することができ、各信号の位相を知ることができる。信号を較正するために、対象とする信号のみを有効にして、送信信号の生成に用いた基準信号に対する受信信号の位相を測定することによって、いずれかの信号の位相が容易に測定され得る。したがって、第1の信号の基準位相を決定し、第2の信号に対する駆動信号を補償して、2つの信号を検出器において位相直交にしてもよい。
【0032】
この技術は、振幅の小さい変化を2つの信号間で見分けるのに優位である。なぜならば、両信号に対して経路ゲインまたは減衰が同じだからである。さらに、信号は同じ周波数で送信され得るため、信号処理(たとえば、フィルタ応答)において周波数依存性のばらつきが生じると、両信号に等しく影響する。
【0033】
これに関連して、本開示では、90度の位相オフセットを伴って媒体中を送信される第1の周期信号及び第2の周期信号が提供される。結合信号を、第1の周期信号及び第2の周期信号との相互作用が異なる媒体を通して送信してもよい。媒体はこれらの信号をそれぞれ減衰させてもよい。媒体を出た信号は、第1の周期信号及び第2の周期信号の振幅中に材料特性についての有用な情報を有し得る。光信号の場合、光検出器の出力振幅は、最大及び最小の検出放射束(流束は、光検出器に達したものを意味する)の間の差である。第1の周期信号及び/または第2の周期信号の初期位相が分かれば、各信号の振幅を決定し得る。
【0034】
場合によっては、第1の周期信号及び第2の周期信号は、異なる波長で放出された光であってもよい。発光源と反対側に位置する光検出器によって光信号を検出してもよい。媒体は、異なる波長の光が媒体を通して送信されることによってその特性が明らかになる任意の材料であってもよい。場合によっては、媒体は鳥卵たとえば鶏卵であってもよい。
【0035】
前述したように、第1及び第2の周期信号を90度の位相オフセットを伴う位相直交で送信してもよい。ベクトル解析では、内積によって2つのベクトル間の角度を以下のように決定することができる。
a・b=∥a∥∥b∥cos(Θ)
【0036】
たとえば、a及びbが3次元空間R3における非ゼロベクトルで、Θがそれらの間の角度である場合、a・b=0となるのはcos(Θ)=0のときのみである。これは、2つのベクトルは内積の値がゼロの場合に垂直であるという有用な物理的解釈をもたらす。したがって、内積を用いて、2つのベクトルが垂直または直交しているか否かを判定するための好都合な方法が得られる。ノルム(長さ)が1であるベクトルを単位ベクトルと言う。単位ベクトルは正規化されていると言う。ベクトルの群が互いに直交して正規化されている場合、系は正規直交であると言う。正規直交ベクトル集合は基準系を構成する。直交座標系でのx-y平面、複素変数を記述する実数/虚数平面、及び3次元系を記述するi-j-kベクトルは、良く知られた基準系を規定する正規直交ベースのベクトル集合の例である。
【0037】
さらに、
図6及び7を参照して、内積によって、ベクトルcがどのように別のベクトルa上に「射影される」かの指標が得られる。aが非ゼロ単位ベクトル(∥a∥=1)であると仮定する。bが第2の非ゼロ単位ベクトル(∥b∥=1)で、bがaに直交すると仮定すると、a・b=0である。ベクトルcをc=αa+βb(α及びβはスカラ)と記述してもよい。生成物αを、cのaに沿った成分、またはcのaに沿った射影という。
a・c=a・(αa+βb)=αa・a+βa・b(注意:a・b=0)
α=(a・c)/(a・a)=(∥a∥∥c∥cos(Θ))/(∥a∥∥a∥cos(0))(注意:∥a∥=1)
α=a・c=∥c∥cos(Θ)
【0038】
フーリエ級数の展開において、ベクトルの直交性の概念は関数に一般化される。間隔α≦x≦β上での2つの実数値関数u(x)及びv(x)の標準内積は、次のように規定される。
【0039】
α≦x≦β上で、関数u及びvは、それらの内積が消える場合、すなわち以下である場合、直交していると言う。
【0040】
関数の集合は、集合内の関数の別個の各対が直交している場合、互いに直交していると言う。以下の定理によって、これらの概念は関数sin(mπx/l)及びcos(mπx/l)に関係付けられる。関数sin(mπx/l)及びcos(mπx/l)、m=1、2、…、は、間隔-l≦x≦l上で互いに直交する関数の集合を構成する。これらは、直交関係として知られる以下の等式を満たす。
【0041】
方程式(1)、(2)、(3)における関係を、m!=nであるときに周波数で直交すると言ってもよく、一方で、方程式(2)における関係を、m=nであるときに位相で直交すると言ってもよい。開示した装置及び方法の実施態様において、周波数で直交する2つの信号を用いてもよい。代替的に、開示した装置及び方法の実施態様において、位相で直交する2つの信号を用いてもよい。
【0042】
そのベクトル対応物と同様に、互いに直交する関数の集合を用いて基準系を構成して、他の関数を記述してもよい。たとえば、正弦、余弦、または複素指数を用いるフーリエ級数を用いて、任意の周期関数を記述してもよい。
【0043】
これらの結果を直接積分によって得てもよい。たとえば、次式である。
ただし、m+n及びm-nはゼロではない。m及びnは正であるため、m+n≠0である。他方で、m-n=0である場合、m=nであり、積分の値は別の方法で求めなくてはならない。この場合、次式となる。
【0044】
前述の方程式(1)及び(3)において、m=nのときの積分値は積分時間の関数であることに注意されたい。すなわち、再生された「信号」の「強度」は積分時間とともに増加する。前述の方程式(1)、(2)、(3)において、周波数は1/(2l)の整数倍数であり、そうでない場合には残存する誤差項が存在することに注意されたい。さらに、直接積分(m≠n)の結果において、m及び/またはnの大きな値に対して、第2項は第1項と比べて小さいことに注意されたい。逆に、m及びnが同じ値に近づく領域において第1項は大きくなる。
【0045】
前述の方程式(1)~(3)において、以下であるとする。
m=cf/fo
n=cfo/fo=c
l=c/(2fo)
x=t
【0046】
ここで、
fo=所望の検出周波数
c=lにおけるfoの周期の整数。なお、積分時間は2lである。
t=時間
【0047】
fo=10kHz、c=10周期または2msである以下の例について考える。
m=10f/10000=f/1000
n=10
l=10/(2*10000)=0.0005
【0048】
場合によっては、複数の発光体・検出器対を実装して、卵識別装置100の中を移動する卵に対するスループットを増加させてもよい。本開示の態様により、このような配置における発光体が、周波数計画スキームに従う直交周波数関係を有する信号を送信してもよい。
【0049】
図8に検出器ゲイン対周波数をプロットする。mが整数値(すなわち、f/1000が整数)であるときに、ヌルが起きてゼロ信号が検出されることに注意されたい。これは周波数計画において有用で、複数の発光体が異なる周波数で送信することを可能にする場合がある。積分時間またはデータサンプリング(収集サイズ及び時間)を制御することによって、検出器を、これらの周波数ヌル上で放出する隣接した送信部に対して非常に鈍感に形成してもよい。この例では、検出器は、1,000Hz境界上で設定された隣接信号に鈍感である(f
o=10,000Hz検出周波数である場合を除く)。しかし、mが整数でないときには、検出信号中に考慮すべき残存するゲイン項が存在する。
【0050】
図9に、c=50周期または10msに設定することによってゲインがどのように影響されるかを示す。所望の周波数f
oの信号ゲインと第1の「ローブ」におけるゲインとの比は同じままであるが、各ローブにおける最大ゲインはf
oの方に引き寄せられる。たとえば、12.5kHz干渉物の結果は、c=50/10msの場合よりもc=10/1msの場合の方がはるかに厳しい。積分時間を増加させると、これらのローブにおけるゲインはそれほど重要ではなくなる。加えて、キャンセル周波数の数が積分時間とともに増加して、周波数計画の密度を上げることができる(すなわち、隣接チャネルを配置するのにより多くのヌルが利用できる)。
【0051】
本開示の信号処理を、位相敏感検出器を用いて行ってもよい。たとえば、製品SR510/SR530、SR810/SR830、及びSR850などのロックイン増幅器である(すべて、Stanford Research Systemsから販売されている)。ロックイン増幅器は、極めて雑音の多い環境から既知の搬送波を用いて信号を抽出することができるタイプの増幅器である。このようなロックイン増幅器を、デジタルドメインにおいてダウンコンバージョン乗算を行うために用いてもよい。アナログゲインブロック及びアンチエイリアシング段に続いて、これらのシステムはアナログデジタル変換(ADC)を即座に実行してもよい。
【0052】
ロックイン測定では周波数基準が必要である。典型的に、被試験物体を基準信号によって励起する。
VREF*sin(2πf0t+θREF)
ここで、
VREF=基準の振幅
f0=基準の周波数(ヘルツ)
t=時間(秒)
θREF=基準信号の位相(ラジアン)
【0053】
一般性を失うことなく、VREFを単一であると仮定してもよい。そして、基準信号に対して以後のすべての振幅を考慮してもよい。検出器によってシステムからの信号が増幅される。この増幅プロセスからの出力は以下のように表される。
VSIG*sin(2πft+θSIG)
ここで、
VSIG=出力信号の振幅
f=出力信号の周波数(ヘルツ)
t=時間(秒)
θREF=基準信号の位相(ラジアン)
【0054】
典型的なロックイン応用例ではVSIG<<VREFであることに注意されたい。検出器は増幅信号に本来の基準信号を乗じてもよい。乗算は位相敏感であってもよく、デジタルドメインまたはアナログドメインのいずれかで行ってもよい。パワースペクトル密度(PSD)の出力は2つの正弦波の積である。
VPSD=VSIG*sin(2πft+θSIG)*sin(2πf0t+θREF)注意:VREF=1を仮定
=(1/2)VSIG*cos(2π[f-f0]t+θSIG-θREF)-(1/2)VSIG*cos(2π[f+f0]t+θSIG+θREF)
【0055】
所与の入力周波数に対して、PSD出力は2つのAC信号である。一方は差周波数(f0-f)であり、他方は和周波数(f0+f)である。PSD出力がローパスフィルタを通ると、AC和項(f0+f)が取り除かれて、差分項が残る。
=(1/2)VSIG*cos(2π[f-f0]t+θSIG-θREF)
【0056】
f=f0であるとき、DC信号はPSDにおいて以下のようになる。
VPSD=(1/2)VSIG*cos(θSIG-θREF)
【0057】
この最後の方程式によって、信号間の位相θSIG-θREFが時不変である必要性が明らかである。そうでない場合には、cos(θSIG-θREF)は変化して、VPSDは厳密にはDC信号ではない。言い換えれば、検出器基準は信号基準に位相固定されていてもよい。θREFをθSIGに調整することによって、θSIG-θREFをゼロに等しくして、cos(θSIG-θREF)=1にしてもよい。この調整は、混合器の前に位相調整θ=θSIG-θREFを用いて行ってもよく、次のようになる。
VPSD=(1/2)VSIG
【0058】
逆に、θREFをθSIG-90°に調整することによって、(θSIG-θREF)を90に等しくしてもよい。この場合、cos(θSIG-θREF)=0であり、入力信号はキャンセルされる。典型的に、ロックイン増幅器応用例では、第2のPSDを加えることによってこの位相依存性をなくしてもよい。第2のPSDが、90°だけシフトした基準オシレータによって信号に乗じた場合、すなわち基準信号sin(2πf0t+90+θREF)=cos(2πf0t+θREF)である場合には、そのローパスフィルタリングされた出力は次のようになる。
VPSD2=(1/2)VSIG*sin(θSIG-θREF)
【0059】
こうして2つの出力がある。一方はcosθに比例し、他方はsinθに比例する。第1の出力I及び第2の出力Qを次のようにする。
I=(1/2)VSIG*cosθ
Q=(1/2)VSIG*sinθ
【0060】
これらの2つの量は、信号をロックイン基準オシレータに対するベクトルとして表している。「I」を「同相」成分と言い、「Q」を「直交」成分と言う。典型的に、ロックイン増幅器では、以下のように、大きさ計算から位相依存を取り除くことに加えて、第2のPSDを用いて出力及び入力信号間の位相差を計算する。
R=(I2+Q2)1/2=(1/2)VSIG
θ=tan-1(Q/I)
【0061】
ロックイン増幅器が与える位相敏感検出をパルス酸素測定などの光学マルチスペクトル測定に適用して、単一の基準周波数f0上で2つの波長を測定することを可能にしてもよい。この技術によって、波長λ1及びλ2の2つの信号の検出パワー間で単純なレシオメトリック比較を行うことができる。
【0062】
次の条件で、システムの直交除去特性を用いて2つの信号を同じ周波数で送信及び検出してもよい。
i)2つの信号は90°位相外れである(たとえば、それらは位相で直交する)
ii)2つの信号と基準との間の位相差は既知である
【0063】
本明細書で用いる場合、用語「基準周波数」は「チャネル」と交換可能に用いる。概念的には、個々の波長に対するパワー測定値を検出器でそれらの周波数によって区別してもよい。2つの波長をさらに、基準周波数またはチャネル内でそれらの位相によって区別してもよい。
【0064】
図10に、本開示によるアナログ実施態様を示す。直交基準クロック
sin(2πf
0+θ
REF) (A)
cos(2πf
0+θ
REF) (F)
これらを、直接デジタル合成(DDS)1000を用いて発生させてもよい。これらの2つの基準は、任意の絶対位相θ
REFを有するが、互いに対する90°の相対位相を有する。必要な信号を発生させることができる典型的なデバイスは、製品AD9854(Analog Devicesから販売)、またはAFG3022C Arbitrary Function Generator(AFG)(Tektronicsから販売)である。直交基準を発生させるための他の方法があることに注意されたい(たとえばデジタル除算を備えたフェーズロックドループ)。測定システムの性質を変えずに、直交基準を発生させるための他の方法を用いてもよい。
【0065】
基準信号(A)及び(F)を用いて光パワードメインにおける信号の忠実な再生を、狭帯域の照明源(たとえば、中心波長がλ
1及びλ
2の発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオード(LD))を用いて行う。すなわち、発光体の光パワーは入力信号に対して線形に変化してもよい。
図10に示すように、駆動回路1002は入力信号を、LED1004を駆動するために用いる電流に変換して、P
OPT≒K*I
LEDとなるようにする。ここで、P
OPTは光出力パワー、I
LEDはLED電流、Kは定数である。LDをLEDの代わりに用いても良い。
【0066】
2つの光源を(必須ではないが)結合して平行にして単一ビーム1006にしてもよい。単一ビームを用いて、システムを較正すること及び検出信号と干渉する可能性がある迷光を制御することの種々の態様に対処する。測定はビームを結合及び/または平行化せずに行ってもよいが、較正及び検出が難しくなる。ビームの結合及び平行化は、限定することなく、ダイクロイックミラー、ランダム化2分岐光ファイバー束、または2色LEDを用いて実施してもよい。ダイクロイックミラー(たとえば、45度ダイクロイックミラー)を用いて、異なる波長の2つのビームを結合してもよい。ダイクロイックミラーは、透明基材(たとえばガラスまたはサファイア)の一方の側に光干渉コーティングを、他方の側に任意的な反射防止コーティングを施したものを有している。2つのビームを正確にオーバーラップさせることを望む場合、2つの異なる波長のLEDを遠隔に配置して、ランダム化2分岐光ファイバー束を用いて均質化してもよい。ケーブル束には2つの入力と1つの出力とがある。2色LEDは2つの独立に制御されたダイが共通のパッケージに入っている。
【0067】
結合して平行にしたビームを試験物体1008に送ってもよい。試験物体1008を通った光は吸収されて散乱される。放射線は試験物体1008を通して送信されると何桁も減衰し得る。試験物体1008を通して送信された放射線を任意的に集光レンズ1010を用いて収集して、検出器アセンブリ300上での光パワーを増加させ、収集光に対する空間選択性を得てもよい。
図10に示すように、シリコンPINダイオード1020を用いており、シリコンPINダイオード1020は、電磁スペクトルの可視及び近赤外線(NIR)部分の波長に対して動作する。
【0068】
PINダイオード1020が生成する光電流を電圧信号に変換してもよい。電圧電流変換を、PINダイオード1020に抵抗器を取り付けることによって行ってもよい。しかし、高ゲイン/低ノイズ応用例の場合には、トランスインピーダンス増幅器1030を設けてもよい。信号対雑音比(SNR)を向上させるために、システムの帯域幅制約内でトランスインピーダンス増幅器のゲインを最大にしてもよい。
【0069】
続けて電圧増幅器1040を設けることでさらなるゲインを得てもよい。必要に応じて、この第2段によって信号のスケーリングを得てもよいが、このスケーリング段を犠牲にしてSNRのわずかな劣化が生じる。
【0070】
ダウンコンバージョンの前に、DCブロック(アナログ)、アンチエイリアシング(デジタル)、及び/またはノイズ帯域幅制約(アナログ/デジタル)を得るために、さらなるフィルタリング1050を必要としてもよい。場合によっては、第2ゲイン段1040及びフィルタ段1050を結合してもよい。
【0071】
フィルタ段の出力は次のように表される。
V(t)=Asin(2πf0+θSIG)+Bcos(2πf0+θSIG) (E)
ここで、
θSIG=フィルタブロックの出力における信号の位相
A=この点まで伝搬している直交基準のI出力のゲイン/減衰
B=この点まで伝搬している直交基準のQ出力のゲイン/減衰
【0072】
遅延/位相回転段1060の出力は次の通りである。
sin(2πf0+θREF+θ) (B)
cos(2πf0+θREF+θ) (G)
【0073】
フィルタ段(E)の出力に位相調整された基準信号を乗じて1070、ローパスフィルタ1080を用いて高周波成分を取り除いた結果、次のようになる。
[Asin(2πf+θSIG)+Bcos(2πf+θSIG)]*sin(2πf0+θREF+θ)
=(1/2)Acos([f-f0]t+θSIG-θREF-θ)-(1/2)Acos([f+f0]t+θSIG+θREF+θ)
+(1/2)Bsin([f+f0]t+θSIG+θREF+θ)-(1/2)Bsin([f-f0]t+θSIG-θREF-θ) (C)
≒(1/2)Acos([f-f0]t+θSIG-θREF-θ)-(1/2)Bsin([f-f0]t+θSIG-θREF-θ) (D)
θ=θSIG-θREF
≒(1/2)Acos([f-f0]t)-(1/2)Bsin([f-f0]t)と設定する。
【0074】
f=f0(またはf0付近)の場合、
≒(1/2)A(アナログデジタル変換器(ADC)1090へのI入力において)
[Asin(2πf+θSIG)+Bcos(2πf+θSIG)]*cos(2πf0+θREF+θ)
=(1/2)Asin([f-f0]t+θSIG-θREF-θ)+(1/2)Acos([f+f0]t+θSIG+θREF+θ)
+(1/2)Bcos([f-f0]t+θSIG-θREF-θ)-(1/2)Bcos([f+f0]t+θSIG+θREF+θ) (C)
≒(1/2)Asin([f-f0]t+θSIG-θREF-θ)+(1/2)Bcos([f-f0]t+θSIG-θREF-θ) (D)
θ=θSIG-θREF
≒(1/2)Asin([f-f0]t)+Bcos([f-f0]t)と設定することを、次の場合に行う。
f=f0(またはf0付近)
≒(1/2)B(アナログデジタル変換器(ADC)1090へのQ入力において)
【0075】
代替的な態様では、
図11に示すように、デジタルドメインにおいて斜線ブロックを実施する。これらのブロックは、コンピュータによって(たとえば、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)上で実行されるソフトウェアにおいて)、またはロジック(たとえばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA))において実施してもよい。ADC1090の前に、フィルタブロック1050によってローパス、アンチエイリアシングフィルタを実施してもよい。ADC1090の出力はフィルタ出力(E)のデジタル版を表す。乗算1100をコンピュータによって処理してもよい。以後のローパスフィルタ機能を、ソフトウェアまたはデジタルハードウェアで(たとえば、FIRまたはIIRフィルタで、またはFFT/DFTを直接用いて)実施してもよい。
【0076】
また位相遅延1060をコンピュータによってまたは単純なデジタル時間遅延として処理してもよい。使用する際、I及びQの両基準信号を検出器に印加する必要がなくてもよい。たとえ単一の基準を印加しても、第2を再び発生させることが可能である。
【0077】
図11に示すダウンコンバータのデジタル実施態様には、アナログ実施態様と比べていくつかの利点がある。第1に、デジタル乗算には、アナログ乗算器に共通の障害(たとえばdcオフセット、クロック漏れ、及び位相不均衡)がない。アナログ乗算器の障害は補償手段が必要となる場合がある。第2に、デジタル位相遅延をバランスさせられる場合があり、周波数及び温度に起因するばらつきの影響を受けない場合がある。第3に、アナログ乗算器はDSP及びFPGAよりも費用がかかる場合がある。
【0078】
I及びQ成分を再生するための
図10及び11に例示したダウンコンバージョン(受信信号(E)に、送信信号を発生させるために用いた基準信号(B)及び(G)を乗じる)は、適切な間隔にわたって積分したときの方程式(1)、(2)、及び/または(3)を実現したものであることに注意されたい。積分時間を長くすることによって、再生信号の振幅を大きくして信号対雑音比(SNR)を大きくする。デジタルドメインでは、積分及び以後のLPF(ローパスフィルタ)を、信号処理で用いる積分及びダンプブロックによって実現してもよい。これに関連して、離散フーリエ変換(DFT)は、サンプリング開始が受信信号(E)と同期したときの同期ダウンコンバータである。標準DFTは正確な位相を再生しないので、DFTに対する係数を、正規化された基準から選ばなくてはならない。同様に、高速フーリエ変換(FFT)を用いる場合には、基準信号ゼロ交差から始まるようにサンプリングが同期する場合を除いて、検出信号に対する正確な位相を与えない固定された回転因子を用いるように係数を最適化してもよい。
【0079】
システム位相較正に関して言えば、I及びQ上での信号を区別するために、乗算器の前で基準信号の位相を補正して、θ=θSIG-θREF=0となるようにしてもよい。位相補正は、1つの供給源を無効にする(たとえば、λ1供給源を有効にする一方で、λ2供給源を無効にする)ことによって、システムを従来のロックイン増幅器に縮小するプロセスである。したがって、λ1供給源の位相及び振幅を、θ=tan-1(Q/I)及びR=(I2+Q2)1/2として測定すべきである。この場合、Q成分が十分に小さくなるまで位相を調整すれば十分である。較正は、λ1供給源を無効にし、λ1供給源を有効にして、I成分が十分に小さいことを検証することによって、検証してもよい。代替的に、試験物体(たとえば、卵)がないときに、基準信号(E)の位相を測定してもよい。測定した位相を基準として用いてもよい。λ2に対するλ1の吸収を、この初期基準位相に対して定量化してもよい。
【0080】
振幅較正に関して言えば、フィルタブロック1050の出力における信号は次のように表されている。
V(t)=Asin(2πf+θSIG)+Bcos(2πf+θSIG) (E)
ここで、
A=この点まで伝搬している直交基準のI出力のゲイン(減衰)
B=この点まで伝搬している直交基準のQ出力のゲイン(減衰)
【0081】
A及びBの大きさは、試験物体1008だけでなく計測器のコンポーネントも含む個々のブロックゲインの積を表す。ビーム結合器/平行化光学部品1006において光源を結合したら、I及びQの両経路は同じ物理媒体に従うが、発光体アセンブリ1004の出力パワー及び放射照度に対する変動率、並びにビーム結合器/平行化光学部品1006に対する結合効率が存在する。
【0082】
測定システムの変動性を補償するために、波長に対する応答が既知である試験物体1008を測定して、測定した応答から試験物体1008の性能を差し引いてもよい。既知の波長不変の減衰を伴う減光フィルタを用いてもよい。このようなフィルタを用いれば、係数A及びBは等しいはずである。減光フィルタを用いた測定結果を用いて、以後のすべての測定値に対する補正係数を計算してもよい。たとえば、Aの測定値が0.4でBの測定値が0.5である場合、以後のすべての測定値について、Bに0.5/0.4=1.25を乗じることによって、BをAに対して補正してもよい。較正の間、信号パワーを、最良の結果が得られるように意図された試験物体から放射されるものと同様のレベルまで、減光フィルタによって減衰させてもよい。代替的に、検出器におけるダイナミックレンジが十分であるならば、検出器を用いて較正を直接行ってもよい。代替的に、第2の(低ゲインの)検出器を用いて十分なダイナミックレンジを得てもよい。
【0083】
使用目的によっては、たとえば、高スループットで鳥卵の現状を特定するのに複数の発光体・検出器対を用いる場合には、種々の基準周波数を適切に選択することによって、多チャネル/多周波数検出システムでの隣接する干渉信号の除去を最適化してもよい。以下の式、
V
SIG*sin(2πft+θ
SIG)*sin(2πf
0t+θ
REF)≒(1/2)V
SIG*cos([f
0-f]t+θ
SIG-θ
REF)
を、n/f
0秒にわたって積分することで、f=f
0/2nであるときの理想的なシステムにおける完全なキャンセルが証明される。ここで、nは、f
0周期の数で表現された積分時間である。
図12に、f
0=10kHzで、信号を500μ秒またはn=5周期にわたって積分した例を示す。この場合、検出器は、2kHzのヌル点またはその付近の信号に対して高レベルの除去を施してもよい。
【0084】
較正は、ND(中性濃度)フィルタを用いてオフセット計算を行うことによってかまたは直接測定することによって行ってもよい。減光フィルタの固定減衰を用いてλ1及びλ2での応答を測定すれば、システム性能を正規化することができる。
【0085】
同じ信号経路に沿って同じ周波数の直交ベクトルで送信することで、ゲイン差、群遅延、温度変化、並びに複数の周波数または複数の信号経路を用いることによって導入される他の変数に起因するばらつきがヌルになる。優位なことに、単一の信号経路であれば、複数の信号経路を用いることに付随するコストが回避される。
【0086】
場合によっては、ノイズ信号によってDC出力誤差が生じることがある。これはオフセットまたはゲイン誤差として現れる場合がある。両効果ともノイズ振幅及び周波数に依存するため、それらをすべての場合でゼロにオフセットすることはできず、測定精度を制限することになる。誤差は性質上DCであるため、時定数を長くしても役に立たない。ほとんどの市販ロックイン増幅器において、許容ノイズの規定を出力への影響がフルスケールの数パーセントを超えないレベルとしている。
【0087】
図13に直交誤差(Θerr)の効果を示す。信号A及びBがほぼ直交である(すなわちほぼ90度離れている)場合を考え、振幅Aの信号は誤差があってI軸と位置が合っていないが、振幅Bの信号はQと完全に位置が合っていると仮定する。そして、振幅Aの信号はI上に射影してA*cos(Θerr)の信号となり、Q上に射影してA*sin(Θerr)の信号となる。ロックイン増幅器は、I上への射影であるA*cos(Θerr)を再生することができる。しかし、Q上への射影であるA*sin(Θerr)は、ロックイン増幅器がBと区別することができない干渉信号である。この射影は、他のどんな手段(たとえばFFT)を用いても区別することができない。直交誤差に起因する干渉は十分に低いため測定値を制限しない場合がある。
【0088】
直交誤差に起因する信号対干渉比(S/I)は次のように計算してもよい。
S/I=B/(A*sin(Θerr))
【0089】
下表1で、B及びAの異なる振幅に対して直交誤差によって制限される測定フロアを計算している。振幅差が大きい場合(A/B=10)であっても、35dBを超える信号除去が実現され得ることに注意されたい。
【0090】
【0091】
図14に、異なる卵タイプ対送信光の波長(ナノメートル)の光学密度(OD)を示す。光学密度は対数目盛であり、付加的な各整数値は送信光の一桁の減少を表す。800nm~925nm(対象とする波長)での光学密度のばらつきを比べると、2つの波長における信号振幅のばらつきは、最大一桁程度変化すると予想され得る。次に、
図14に示す2点(810、910)を参照して、それらの間の線の勾配は、腐敗卵及び生存卵の場合で逆になっていることが示される。したがって、これらの2点から比を計算することは、腐敗卵と生存卵とを区別するのに十分である。
【0092】
図17及び18に、SR850ロックイン増幅器に対してフィルタ帯域幅と信号ノイズとの間で測定した関係を例示する。時定数(TC)設定を信号に対してプロットしている。TC設定は以下の通りである。2=100μs、3=300μs、4=1ms、5=3ms、6=10ms、7=30ms、及び8=100ms。フィルタ設定は以下の通りである。0=6dB/oct、1=12dB/oct、2=18dB/oct、3=24dB/oct。
【0093】
各卵に対して受信信号(E)から大きさ(R)及び位相(θ)を再生したら、大きさ(R)及び位相(θ)を極座標に移して、互いに対してプロットしてもよい。これを
図15、16、及び19~22に示す。図示したように、プロットすると生存卵は非生存卵から分離される。したがって、
図22に示すように閾値レベルを設定して、受信信号の大きさ(R)及び位相(θ)に対するこのような閾値レベルに基づいて、卵が生存可能であるかまたは生存不能であると識別または判定されるようにしてもよい。閾値は、検出プロセス中に生存と非生存との間の分離が最大になるように較正プロセスによって決定してもよい。実際の閾値は、実施するシステムで用いる実際の電子機器及び光学部品に依存する場合がある。第1及び第2の供給源をほぼ同じパワーにすることで、見分けることが改善される。
【実施例】
【0094】
実験室プロトタイプを構成していくつかの試験で用いた。
図5に概略図を示す。
【0095】
直交基準クロック
sin(2πf0+θREF) (A)
cos(2πf0+θREF) (F)
を、Tektronix AFG3022C Arbitrary Function Generator70を用いて発生させた。これらの2つの基準は、任意の絶対位相θREFを有するが、互いに対する90°の相対位相を有する。一対のStanford Research Systems LDC501 Laser Diode Controllers 75、80に対して、基準信号(A)及び(F)を変調信号として用いることで、全高調波歪み(THD)が低い状態で光パワードメインにおける各信号の忠実な再生を行う。すなわち、照明源の光パワー出力は入力信号に対して線形に変化する。POPT≒K*IDRIVE。ここで、POPTは光出力パワー、IDRIVEは照明源を流れる駆動電流、Kは定数である。
【0096】
試験中、レーザーダイオードコントローラ75、80を用いて、以下の狭帯域の照明源を表示した波長で駆動した。
発光ダイオード(LED)結合
OSRAM SFH 4780S 680mW、810nm
Marubeni SMBB910D-1100、470mW、910nm
レーザーダイオード(LD)結合
ThorLabs L808P010 10mW、808nm
ThorLabs M5-905-0100 100mW、905nm
【0097】
LED及びLDの両方を用いてビーム分散及び不要な迷光を最小にするとき、平行化レンズ205及び207を用いた。830nmのシャープなカットオフ波長を有するSemrock LPD02-830RU-25 45度ダイクロイックミラー209を用いて、2つの照明源を結合して単一ビームにした。結合して平行にしたビームを、異なる既知の状態(生存、腐敗、死亡)の試験物体(E17~E19鶏卵1)に送った。
【0098】
試験物体を通して送信された放射線を一連の3つの集光レンズで収集して、試験物体と検出器との間を伝達した光パワーを増加させ、+/-12度の受け入れ円錐の外側の光を最小にした。
【0099】
試験で用いた検出器300は、Vishay TEM5110X01 Silicon PIN Diodeであった。PINダイオードによって生じた光電流を、Texas Instruments OPA380高速トランスインピーダンス増幅器を用いて電圧信号に変換した。
【0100】
第2のゲイン段(9)の出力は次のように表される。
V(t)=Asin(2πf0+θSIG)+Bcos(2πf0+θSIG) (E)
ここで、
θSIG=フィルタブロックの出力における信号の位相
A=この点まで伝搬している直交基準のI出力のゲイン/減衰
B=この点まで伝搬している直交基準のQ出力のゲイン/減衰
【0101】
SR850 Lock-In増幅器95を用いて、受信信号(E)から大きさ(R)及び位相(θ)を再生した。
【0102】
TEK AFG 3022Cからの同期化出力信号をSRS SR850 External Reference Input(B)に接続することによって、位相較正を維持した。Q供給源(905nmLD/910nmLED)をターンオフすることによって、SR850の位相をI供給源(808nmLD/810nmLED)と、器具の較正特徴を用いて位置合わせした。
【0103】
図15に、開示した方法を孵卵の18日目に施した120個の卵に対して、信号パワー(大きさ(R))に対する位相角(θ)をプロットする。各卵は光シーリングスタンド上に配置した。発光体源としてレーザーダイオード(808nm及び904nm)を用いた。時定数(TC)は100msに設定した。
【0104】
図16に、開示した方法を孵卵の17日目及び18日目に施した216個の卵に対して、信号パワー(大きさ(R))に対する位相角(θ)をプロットする。各卵は光シーリングスタンド上に配置した。レーザーダイオード(808nm及び904nm)を発光体源として用いた。時定数(TC)は100msに設定した。
【0105】
図19に、開示した方法を孵卵の17日目及び18日目に施した168個の卵に対して、信号パワー(大きさ(R))に対する位相角(θ)をプロットする。卵は、分析を受けるときに卵フラット内に配置した。レーザーダイオード(808nm及び904nm)を発光体源として用いた。時定数(TC)は100msに設定し、フィルタ設定は「1」とした。自己干渉光を制御する試みは行わなかった。
【0106】
図20に、開示した方法を孵卵の17日目及び18日目に施した168個の卵に対して、信号パワー(大きさ(R))に対する位相角(θ)をプロットする。卵は、分析を受けるときに卵フラット内に配置した。3/4インチPVCパイプの半インチ高さ部分を延ばしたが、卵フラットには触れなかった。レーザーダイオード(808nm及び904nm)を発光体源として用いた。時定数(TC)は100msに設定し、フィルタ設定は「1」とした。
【0107】
図21に、開示した方法を孵卵の17日目及び18日目に施した168個の卵に対して、信号パワー(大きさ(R))に対する位相角(θ)をプロットする。卵は、分析を受けるときに卵フラット内に配置した。レーザーダイオード(808nm及び904nm)を発光体源として用いた。時定数(TC)は100msに設定し、フィルタ設定は「1」とした。
【0108】
図22に、開示した方法を孵卵の17日目及び18日目に施した168個の卵に対して、信号パワー(大きさ(R))に対する位相角(θ)をプロットする。卵は、分析を受けるときに卵フラット内に配置した。レーザーダイオード(808nm及び904nm)を発光体源として用いた。時定数(TC)は100msに設定し、フィルタ設定は「8」とした。
【0109】
本明細書で述べた本開示の多くの変更及び他の態様が、前述の説明及び関連付けられる図面に示した教示の利益を有する本開示が関係する当業者に想起される。したがって、当然のことながら、本開示は開示した特定の態様には限定されず、変更及び他の態様が添付の請求項の範囲に含まれることが意図される。本明細書では特定の用語を用いているが、それらは一般的及び記述的な意味で用いているだけであり、限定を目的とするものではない。