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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】皮内針及びその包装体並びに注射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20220614BHJP
   A61M 5/46 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
A61M5/32 510F
A61M5/46
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020506423
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2019008622
(87)【国際公開番号】W WO2019176648
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2018049357
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】中島 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 陽一郎
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158143(WO,A1)
【文献】特表2016-520364(JP,A)
【文献】国際公開第2011/40188(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第3713754(DE,A1)
【文献】仏国特許出願公開第2684004(FR,A1)
【文献】特開2000-84079(JP,A)
【文献】特表2005-525198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に穿刺可能な針先(14a)を有する針管(14)と、
前記針管(14)を保持する針ハブ(16)と、
前記針ハブ(16)からフランジ状に伸び出た拡径部(30)と、
前記拡径部(30)の先端側に伸び出て前記針管(14)の周囲を囲うように円筒状に形成されたリング突部(32)と、
前記拡径部(30)に回動可能に取り付けられ、前記針ハブ(16)に接近した開位置から、前記針先(14a)を覆った閉位置に変位可能なプロテクタ(80)と、を有し、
前記プロテクタ(80)は、
前記拡径部(30)と同一直径の円形の領域の内側に設けられた回動軸部と、
前記拡径部(30)の直径よりも小さい幅に形成された蓋体(82b)と、
前記回動軸部に回動自在に支持されるとともに、前記開位置において前記蓋体(82b)を前記回動軸部よりも前記針ハブ(16)の軸近くに離間させる腕部(84)と、
を備えたことを特徴とする皮内針。
【請求項2】
請求項1記載の皮内針であって、前記開位置において前記蓋体(82b)の自由端を前記針ハブ(16)から離間させる開位置規制部材を有することを特徴とする皮内針。
【請求項3】
請求項1又は2記載の皮内針であって、前記蓋体(82b)は、前記プロテクタ(80)の閉位置において前記蓋体(82b)の停止位置を規制する閉位置規制部材を有し、該閉位置規制部材は前記蓋体(82b)の前記針先(14a)と対向する内面(82b1)を前記リング突部(32)よりも先端側に離間させることを特徴とする皮内針。
【請求項4】
請求項1記載の皮内針であって、前記蓋体(82b)を閉位置に固定するロック機構を有することを特徴とする皮内針。
【請求項5】
請求項1記載の皮内針であって、前記蓋体(82b)の回動軸部寄りの部分には、開位置において前記針ハブ(16)の一部を収容する切欠部(83)が形成されていることを特徴とする皮内針。
【請求項6】
請求項1記載の皮内針であって、前記腕部(84)は、前記回動軸部の軸方向に離間して一対設けられていることを特徴とする皮内針。
【請求項7】
請求項6記載の皮内針であって、前記回動軸部は軸方向に離間して配置された一対の軸ピン(31a)を有し、前記腕部(84)は前記軸ピン(31a)に回動自在に係合していることを特徴とする皮内針。
【請求項8】
生体に穿刺可能な針先(14a)を有する針管(14)を備えた皮内針(10)と、
前記皮内針(10)を収容する器体(70)と、を備えた包装体であって、
前記皮内針(10)は、生体に穿刺可能な針先(14a)を有する針管(14)と、前記針管(14)を保持する針ハブ(16)と、前記針ハブ(16)からフランジ状に伸び出た拡径部(30)と、前記拡径部(30)の先端側に伸び出て前記針管(14)の周囲を囲うように円筒状に形成されたリング突部(32)と、前記拡径部(30)に回動可能に取り付けられ、前記針ハブ(16)に接近した開位置から、前記針先(14a)を覆った閉位置に変位可能なプロテクタ(80)と、を有し、前記プロテクタ(80)は、前記拡径部(30)と同一の直径であって前記針ハブ(16)の軸に中心を有する円形の領域の内側に設けられた回動軸部と、前記拡径部(30)の直径よりも小さい幅に形成された蓋体(82b)と、前記回動軸部に回動自在に支持されるとともに、前記開位置において前記蓋体(82b)を前記回動軸部よりも前記針ハブ(16)の軸近くに離間させる腕部(84)とを有し、
前記器体(70)は、前記拡径部(30)の直径に略等しい内径に形成されており、前記皮内針(10)を前記プロテクタ(80)の開位置とした状態で収容することを特徴とする包装体。
【請求項9】
生体に穿刺可能な針先(14a)を有する針管(14)を備えた皮内針(10)と、
前記皮内針(10)に脱着可能に装着されるシリンジ(20)と、を備えた注射装置であって、
前記皮内針(10)が、前記針管(14)を保持する針ハブ(16)と、前記針ハブ(16)からフランジ状に伸び出た拡径部(30)と、前記拡径部(30)の先端側に伸び出て前記針管(14)の周囲を囲うように円筒状に形成されたリング突部(32)と、前記拡径部(30)に回動可能に取り付けられ、前記針ハブ(16)に接近した開位置から、前記リング突部(32)及び前記針管(14)を覆った閉位置に変位可能なプロテクタ(80)と、を有し、前記プロテクタ(80)は、前記拡径部(30)と同一の直径であって前記針ハブ(16)の軸に中心を有する円形の領域の内側に設けられた回動軸部と、前記拡径部(30)の直径よりも小さい幅に形成された蓋体(82b)と、前記回動軸部に回動自在に支持されるとともに、前記開位置において前記蓋体(82b)を前記回動軸部よりも前記針ハブ(16)の軸近くに離間させる腕部(84)と、を備えたことを特徴とする注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を生体に注入する際に用いられる皮内針及びその包装体並びに注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、皮膚上層部に薬剤を注射するために皮内針が提案されている。皮内針は、針管の針先を皮膚上層部内にとどめておくため、針管の突出長さを3mm以下とした構造となっている。このように、皮内針は針管の突出長さが短いことから、一般的な皮下注射用の注射針よりも誤穿刺を起こしにくい構造となっている。しかしながら、皮内針においても、針先が露出していることには変わりなく、薬剤の投与後や注射装置の廃棄時に針管の針先が誤って使用者に穿刺されるおそれがある。
【0003】
このような不具合を解消するため、国際公開第2016/158143号には、回動可能なプロテクタを皮内針に設ける技術が記載されている。この皮内針では、使用後にプロテクタを回動させて針管の針先を覆うことで、針先が誤って使用者に穿刺されることを防いでいる。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上記の皮内針は、小型化された包装体への収容性が考慮されておらず、取扱性に難があった。
【0005】
本発明は、包装体への収容性に優れ、取扱性を更に向上できる皮内針及びその包装体並びに注射装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の一観点に係る皮内針は、生体に穿刺可能な針先を有する針管と、針管を保持する針ハブと、前記針ハブからフランジ状に伸び出た拡径部と、前記拡径部の先端側に伸び出て前記針管の周囲を囲うように円筒状に形成されたリング突部と、前記拡径部に回動可能に取り付けられ、前記針ハブに接近した開位置から、前記針先を覆った閉位置に変位可能なプロテクタと、を有し、前記プロテクタは、前記拡径部と同一直径の円形の領域の内側に設けられた回動軸部と、前記拡径部の直径よりも小さい幅に形成された蓋体と、前記回動軸部に回動自在に支持されるとともに、前記開位置において前記蓋体を前記回動軸部よりも前記針ハブの軸近くに離間させる腕部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記の皮内針によれば、回動軸部を針ハブの軸寄りの位置に設けるとともに、蓋体の幅を拡径部の直径よりも小さくし、更にプロテクタの開位置において蓋体が針ハブの軸近くに配置されている。これにより、プロテクタの開位置において蓋体が針ハブの軸付近にコンパクトに収まる。これにより、皮内針を拡径部の直径と同程度の内径を有する小型の包装体に収容可能となる。
【0008】
上記の皮内針において、前記開位置において前記蓋体の自由端を前記針ハブから離間させる開位置規制部材を設けてもよい。この構成により、針ハブにシリンジを取り付ける際に、蓋体の自由端がシリンジと接触してシリンジの取付けを妨げる不具合を防止できる。
【0009】
上記の皮内針において、前記蓋体は、前記プロテクタの閉位置において前記蓋体の停止位置を規制する閉位置規制部材を有し、該閉位置規制部材は前記蓋体の前記針先と対向する内面を前記リング突部よりも先端側に離間させるようにしてもよい。この構成により、リング突部よりも突出した針管を蓋体で覆うことができる。
【0010】
上記の皮内針において、前記蓋体を閉位置に固定するロック機構を設けてもよい。この構成により、閉位置で固定された蓋体が再び開いて針先が露出するのを防止できる。
【0011】
上記の皮内針において、前記蓋体の回動軸部寄りの部分には、開位置において前記針ハブの一部を収容する切欠部が形成されていてもよい。この構成により、開位置において、蓋体を針ハブの軸により接近した位置に収めることができ、プロテクタをコンパクトに収容することが可能となる。
【0012】
上記の皮内針において、前記腕部は、前記回動軸部の軸方向に離間して一対設けられていてもよい。さらに、この場合には前記回動軸部は軸方向に離間して配置された一対の軸ピンを有し、前記腕部が前記軸ピンに回動自在に係合していてもよい。この構成により、回動軸部付近の剛性が高まり、回動軸回り以外の方向からの力が加わった場合であっても、プロテクタの回動方向がずれることがなくなり、プロテクタが外れて針先が露出する不具合を防止できる。
【0013】
また、本発明の別の一観点に係る包装体は、上記の皮内針の拡径部の直径に略等しい内径に形成されており、上記の皮内針をプロテクタの開位置で収容することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明のさらに別の一観点に係る注射装置は、上記の皮内針と、上記の皮内針に脱着可能に取り付けられたシリンジとを有することを特徴とする。
【0015】
上記諸観点に係る皮内針及びその包装体並びに注射装置によれば、小型化された包装体への収容性に優れ、取扱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る皮内針を収容した包装体を一部切り欠いて示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る注射装置の斜視図である。
図3図1の皮内針を収容した包装体の断面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る皮内針をプロテクタの開位置で示す斜視図である。
図5図5Aは、プロテクタの蓋部材を外面側から示す斜視図であり、図5Bはプロテクタの蓋部材を内面側から示す斜視図である。
図6図6は、図4の針ハブ部分の斜視図である。
図7図4の皮内針にシリンジを取り付けた状態の断面図である。
図8図4の皮内針をプロテクタの閉位置で示す断面図である。
図9図8の皮内針を先端側から見た状態で示す正面図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る皮内針の断面図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係る皮内針のプロテクタを構成する蓋部材の斜視図である。
図12】本発明の第3の実施形態に係る皮内針の針ハブ部分の斜視図である。
図13図13Aは、本発明の第3の実施形態に係る皮内針をプロテクタの開位置で示す斜視図であり、図13B図13Aの状態における蓋部材とプロテクタ取付部との位置関係を示す説明図である。
図14図14Aは、図13Aの皮内針をプロテクタの中間位置で示す斜視図であり、図14B図14Aの状態における蓋部材とプロテクタ取付部との位置関係を示す説明図である。
図15図15Aは、図13Aの皮内針をプロテクタの閉位置で示す斜視図であり、図15B図15Aの状態における蓋部材とプロテクタ取付部との位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る皮内針10は、図1に示すように、皮内針(医療用針)10を個別に包装する包装体12に収容されて製品提供される。皮内針10は、使用直前まで包装体12内に密封されることで、無菌状態に保たれる。
【0019】
包装体12は、皮内針10を収容する器体70と、器体70を閉塞するシール部材72とを有する。シール部材72は、使用時に、使用者によって器体70から剥がされることで、皮内針10を器体70から取り出し可能とする。
【0020】
器体70は、内部に空間を有する円筒状に形成されている。器体70の底面74は、後述する針ハブ16の拡径部30の直径よりも若干大きな円形に形成されている。また器体70の底面74からは、筒壁76が皮内針10の軸方向に伸び出ている。筒壁76は、針ハブ16の拡径部30の直径よりも若干大きな内径に形成されている。また、器体70の上端部にはフランジ部78が形成されている。このフランジ部78にシール部材72が貼り付けられる。
【0021】
皮内針10は、このような包装体12に、プロテクタ80の蓋部材82を開位置にした状態で収容される。プロテクタ80は、開位置において、拡径部30の直径を有する円筒状の領域内に収まるように形成されており、包装体12と干渉することなく収容される。
【0022】
皮内針10は、図2に示すように、針管14及び針ハブ16を有し、注射装置18の一部品を構成する。この皮内針10は、使用時に皮内針10とは別に提供されたシリンジ20に組み付けられる。使用者は、皮内針10にシリンジ20を取り付けて注射装置18を組み上げた後、皮内針10の針先14aを生体に穿刺する。そして、穿刺状態で、シリンジ20のプランジャ56を押圧することで、針管14を介してシリンジ20に貯蔵されている薬液を生体の皮内に注射する。また、皮内針10は、注射後に、使用した針管14をプロテクタ80で覆うことで非露出状態とすることで、針管14の誤刺を防止しつつ廃棄される。
【0023】
以下、皮内針10の各構成について説明する。図3に示すように、皮内針10の針管14は、軸心部に針孔15を有する硬質な中空管に構成されている。針管14の最先端には鋭利な刃面よりなる針先14aが形成されている。針管14の太さは、特に限定されないが、例えば26~33ゲージのサイズ(0.2~0.45mm)であり、より好ましくは30~33ゲージを適用するとよい。針管14を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、その他の金属又は硬質樹脂があげられる。
【0024】
皮内針10の針ハブ16は、針管14を固定する第1部材22と、第1部材22に取り付けるシリンジ20を組み付けるための第2部材24とを備える。これらの第1、第2部材22、24を構成する材料としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂材料があげられる。また、針ハブ16は、第2部材24の内部に弾性部材26を有している。
【0025】
第1部材22は、針管14を直接保持する軸部28と、軸部28の外周面から径方向外側にフランジ状に広がる拡径部30と、拡径部30の先端面30aから先端方向に突出するリング突部32と、を有する。軸部28は、略円柱状に形成されており、その軸心部には針管14を収容固定する固定孔29が設けられている。固定孔29には、針管14の挿入状態で接着剤34が注入されることで、針管14と第1部材22との固着がなされる。
【0026】
また、軸部28は、第2部材24内に収納される収納部位28aと、拡径部30よりも先端側に突出する突出部位28bと、を有する。軸部28の突出部位28bは、リング突部32よりも先端方向にわずかに突出し、生体の表面に接触する先端面28b1を有する。固定孔29に固定された針管14は、先端面28b1から適切な寸法(突出長)だけ突出している。例えば、針管14の突出長は、生体の皮膚の表面から真皮層までの深さに設計され、概ね0.5~3.0mmの範囲内であるとよい。
【0027】
拡径部30は、軸部28の外周面から軸部28の軸心と直交する方向に広がる円板状に形成されている。拡径部30は、リング突部32よりもさらに径方向外側に延び出ている。拡径部30の基端側の面である基端面30b(リング突部32が設けられた先端面30aと反対側の面)には、第2部材24が接合されている。また、拡径部30の外周縁には、外方に向かって一対の爪部36(図2参照)が突出するようにして形成されている。一対の爪部36は、拡径部30の外周縁上で互いに反対位置(180°異なる位置)に設けられている。
【0028】
リング突部32は、拡径部30から先端側に向けて壁状に短く突出した部位であり、軸部28から所定距離だけ離れた部分を周回するように円筒状に形成されている。皮内針10の使用時には、リング突部32の端面32a全体が生体の皮膚に接触する。これにより、リング突部32は、注射装置18が皮膚に対して垂直になる穿刺姿勢をガイドし、針管14の皮内への穿刺長さを一定にする。
【0029】
第2部材24は、軸心部に貫通孔25を有する略円筒状に形成されている。貫通孔25の先端側には、第1部材22の収納部位28aが挿入される一方で、貫通孔25の中間側には、弾性部材26が収容される。貫通孔25の基端側には、注射装置18の組立時にシリンジ20のノズル44(図7参照)が挿入される。貫通孔25の基端側の内周面は、ノズル44の外周面に面接触可能なテーパ形状に形成されている。
【0030】
第2部材24の先端には、径方向外側に広がる接続用拡径部38が設けられている。接続用拡径部38の外周縁は、第1部材22の拡径部30の外周縁よりも内側に位置する。接続用拡径部38の先端面38aは、振動溶着等の適宜の固着方法により拡径部30の基端面30bに固定される。また、第2部材24の基端側の外周面には、シリンジ20の雌ネジ部47(図7参照)が捻じ込まれる雄ネジ部40が設けられている。
【0031】
次に、皮内針10に設けられたプロテクタ80の構造について説明する。プロテクタ80は、図3及び図4に示す開位置において、包装体12に収容され、皮内針10の使用後は、軸部28の軸方向に垂直な回動軸回りに回動することで図8及び図9に示す閉位置に回動して針先14aを覆う。そのプロテクタ80は、図4に示すように、蓋部材82と、その蓋部材82を回動自在に保持するプロテクタ取付部31とを有している。
【0032】
なお、以下の説明において、針ハブ16の軸に接近する方向を内向き、内方又は内側と呼び、針ハブ16の軸から離間する方向を外向き、外方、又は外側と呼ぶ。蓋部材82は、蓋体82bと腕部84とを有している。
【0033】
蓋体82bは、閉位置(図8参照)に移動した際に針管14の針先14aを含む部分を覆うための板状の部材である。なお、閉位置において蓋体82bが針管14と対向する面を内面82b1と呼び、その反対側の面を外面82b2と呼ぶ。
【0034】
図5Aに示すように、蓋体82bはリング突部32の全域を覆うべく、リング突部32と同様の形状に形成される。蓋体82bの幅W(図9参照)は、リング突部32の直径と同等の大きさに形成される。
【0035】
なお、蓋体82bの幅Wを拡径部30の直径Dよりも大きくすると、拡径部30の直径のサイズに合わせて作製された包装体12に皮内針10を収容できなくなってしまう。そのため、蓋体82bの幅Wは、拡径部30の直径Dよりも小さくすることが好ましい。
【0036】
図5Aに示すように、蓋体82bの外面82b2の回動軸部寄りの部分には、その外面82b2を斜めに曲面状に切り欠いてなる切欠部83が形成されている。この切欠部83は、図4に示すように、蓋体82bの開位置において第2部材24を受け入れて当接する部分であり、第2部材24の円筒状の側面形状に対応する曲面に形成されている。この切欠部83は、図5Aに示すように、その一部が内面82b1まで貫通しているが、この貫通部分は針管14の針先14aから外れた位置に形成されているため、針先14aの保護に当たって特に支障はない。このような切欠部83を設けておくことにより、開位置において蓋体82bを針ハブ16の軸付近に配置でき、蓋体82bをコンパクトに収めることができるため、包装体12への収容が容易になる。
【0037】
一方、蓋体82bの自由端側(軸取付部84cと反対側の端側)には斜めに切り欠かれた先端面82cが形成されている。この先端面82cは、包装体12に収容された皮内針10にシリンジ20を取り付ける際に、蓋体82bがシリンジ20と接触するのを防止するために設けられている。すなわち、蓋体82bの先端面82cは、開位置において、取り付けるシリンジ20よりも先端側に位置するように形成されており、蓋体82bがシリンジ20の取付け領域を外れるように形成されている。
【0038】
図5Bに示すように、蓋体82bの内面82b1の周縁部からは、壁部82dが壁状に突出して形成されている。この壁部82dの端面82d1(第1の面)は、閉位置(図8参照)において、リング突部32の端面32aと当接する面となっている。すなわち、壁部82dの端面82d1がリング突部32の端面32aに当接することで、蓋体82bの閉位置でプロテクタ80の回動を停止させる。この端面82d1を有する壁部82dが閉位置規制部材を構成している。
【0039】
この壁部82dの内面82b1からの突出高さは、リング突部32に対する針管14の針先14aの先端方向への突出長さと同等又はそれよりも長くとられている。これにより、閉位置において、蓋体82bの内面82b1がリング突部32から先端方向に離間した位置に保たれ、リング突部32よりも突出した針先14aを蓋体82bで覆うことができる。
【0040】
また、壁部82dの一部分には、壁部82dよりもさらに突出した壁状の案内突片88が形成されている。この案内突片88は、リング突部32の内周面の内側に入る形状に形成されている。閉位置において、案内突片88がリング突部32の内部に挿入されることで、蓋体82bのガタつきを防ぐことができる。
【0041】
また、壁部82dは、自由端側で一部分が切欠かれており、その部分に、爪部89aを有する係止片89が内面82b1から突出して形成されている。この係止片89は、閉位置においてリング突部32の開口部32b(図8参照)に内側から係合することで、蓋体82bを閉位置に固定するロック機構を構成する。
【0042】
図5Aに示すように、蓋体82bの回動軸方向の両側部からは、一対の腕部84が伸び出ている。これらの腕部84は、蓋体82bと一体的に形成されている。腕部84は、蓋体82bの内面82b1側に垂直に伸び出た第1腕部84aと、その第1腕部84aに対して略直角に屈曲して伸びた第2腕部84bと、第2腕部84bの端部に設けられた軸取付部84cとを有する。
【0043】
軸取付部84cは、回動軸回りに円筒状に形成されており、その中心部に軸ピン31aを受け入れる円形の孔部87が設けられている。軸取付部84cには、図4に示すように、斜めに切り欠かれた切欠面84c1が形成されている。切欠面84c1は、蓋体82bの開位置において、拡径部30と同一直径の円形の領域の内側に形成されている。
【0044】
第2腕部84bは、軸取付部84cから伸び出た部分であり軸取付部84cと一体的に形成されている。第2腕部84bは、蓋体82bが開位置に移動した際に、第1腕部84aが第2部材24の接続用拡径部38の基端面38bに接するように配置させるために設けられている。すなわち、この第2部材24を設けたことにより、開位置において蓋部材82を接続用拡径部38の内側に配置することができ、蓋部材82を針ハブ16の軸に近づけてコンパクトに収容できる。第2腕部84bの長さは、拡径部30及び接続用拡径部38の厚みに応じて適宜設定され得る。
【0045】
第1腕部84aは、第2腕部84bから略直角に屈曲して伸び出ている。この第1腕部84aは、蓋体82bを回動軸部(軸ピン31a)より所定距離だけ離間させることにより、開位置において蓋体82bを針ハブ16の軸近くに収容可能とする。
【0046】
第1腕部84aには開位置において接続用拡径部38と接触する傾斜面84eが形成されている。この傾斜面84eが接続用拡径部38と接触することで開位置への回動が停止し、蓋部材82がそれ以上針ハブ16の軸に接近できないように規制する。すなわち、この傾斜面84eは、開位置において蓋部材82が一定角度で停止するように蓋部材82の位置を規制する開位置規制部材を構成している。この傾斜面84eの角度は、図3に示すように、開位置において蓋部材82の自由端が針ハブ16の第2部材24から所定距離だけ離間するように形成されている。これにより、皮内針10にシリンジ20を取り付ける際に、蓋部材82とシリンジ20が接触して取付け作業が妨げられるといった不具合を防止できる。
【0047】
図6に示すように、拡径部30には、一端を直線状に切り欠いた切欠辺30cが形成されており、その切欠辺30cの中央部からプロテクタ取付部31が径方向外側に向けて伸び出ている。プロテクタ取付部31は、先端側から見てT字型に形成されており、その両側部からは、それぞれ軸ピン31aが伸び出ている。軸ピン31aは、針ハブ16の軸に垂直な方向に円柱状に伸びて形成された部材であり、その中心軸が蓋部材82の回動軸部(回転軸)となる。図9に示すように、プロテクタ80の回動軸部は、拡径部30の直径を有する円形の領域Eよりも内側(針ハブ16の軸寄り)に形成されている。このように構成することにより、プロテクタ80の開位置において、プロテクタ取付部31を含むプロテクタ80全体を、円形の領域Eに収容することができ、小型の包装体12へ収容が可能となる。
【0048】
プロテクタ80は、上記の蓋部材82をプロテクタ取付部31に取り付けることで作製される。すなわち、蓋部材82の腕部84を軸方向に押し広げつつ、一対の軸取付部84cの間にプロテクタ取付部31に押し込む。そして、軸取付部84cの孔部87に軸ピン31aに嵌め込むことによりプロテクタ80が完成する。
【0049】
上記のプロテクタ80を有する皮内針10は、図7に示すようにシリンジ20を取り付けて使用される。シリンジ20の先端部42は、薬液の貯留空間61に連通する吐出路45が形成されたノズル44と、ノズル44の周囲で雌ネジ部47が内側に形成されたコネクタ部46と、を有する。ノズル44の先端面は、雄ネジ部40と雌ネジ部47の装着状態で、弾性部材26の基端面と接触してこれを押圧する。
【0050】
皮内針10の弾性部材26は、針管14の基端を液密に保持して、針孔15をノズル44の吐出路45に対向させる筒状の中継部材である。弾性部材26の内部には、針管用孔部48が設けられ、この針管用孔部48には、挿入された針管14を接触保持する内突部50が形成されている。この弾性部材26は、第2部材24の貫通孔25の内周面に嵌め込まれ、且つ先端側において径方向外側に突出する外方凸部52が第1部材22の基端面と第2部材24の段差部24aに挟み込まれることで、強固に固定される。
【0051】
一方、注射装置18のシリンジ20は、図2に示すように、予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジとして構成されている。このシリンジ20は、図2に示すように、シリンジ本体54と、シリンジ本体54内に相対移動可能に挿入されるプランジャ56と、シリンジ本体54の外側を覆うホルダ58と、を有する。
【0052】
シリンジ本体54は、上記の先端部42(ノズル44及びコネクタ部46)と、先端部42に連なり薬液を貯留する貯留空間61を有する胴部60と、を備える。一方、プランジャ56は、貯留空間61内に液密に挿入されるガスケット62を先端に有し、また注射装置18の使用者が押圧操作するための操作部64を基端に有する。なお、シリンジ20は、予めガスケット62が貯留空間61に収容されており、使用時にプランジャ56をガスケット62に取り付けるタイプのものであってもよい。
【0053】
ホルダ58は、シリンジ本体54を収容固定する円筒体であり、注射装置18を太くして使用者の把持操作を容易化するために用いられる。このため、ホルダ58の基端には、プランジャ56の操作部64の押圧時に使用者の指に引っ掛けるための引掛部66が設けられている。なお、注射装置18はホルダ58を備えていなくてもよい。
【0054】
ホルダ58の内部空間を構成する内壁には、シリンジ本体54の胴部60の先端部分を支持する複数の支持片(不図示)が設けられている。また、ホルダ58の外周には、シリンジ本体54の基端のフランジ(不図示)を係止する係止窓68が設けられ、さらにホルダ58の先端付近には、シリンジ本体54の貯留空間61を視認可能とする視認用窓69が設けられている。
【0055】
本実施形態に係る皮内針10、皮内針10を収容した包装体12及び注射装置18は、基本的に以上のように構成され、以下その作用について説明する。
【0056】
皮内針10は、図1に示すように包装体12の器体70に収められた状態で提供される。上述したように、この状態では、皮内針10の一対の爪部36が器体70の係合部に引っ掛かることで、包装体12からの皮内針10の脱落が防止されている。また、包装体12は、器体70のフランジ部78にシール部材72が貼り付けられることで、皮内針10を密封している。
【0057】
注射装置18の使用時には、包装体12のシール部材72を剥がし、包装体12にシリンジ20の先端を挿入して、皮内針10の基端部とシリンジ20の先端部42との接続を行う。すなわち、図7に示すように、先端部42のノズル44を第2部材24の貫通孔25に挿入するとともに、コネクタ部46の雌ネジ部47を皮内針10の雄ネジ部40に捻じ込んでゆく。この際、皮内針10のプロテクタ80は開位置に保たれ、その蓋部材82の自由端は、皮内針10の軸から所定距離離間することで、シリンジ20のコネクタ部46と干渉しない位置に配置されている。これにより、プロテクタ80はシリンジ20の取付けの妨げとなることはない。
【0058】
皮内針10とシリンジ20の接続が完了した後、シリンジ20を包装体12から引き離す。これにより、皮内針10の一対の爪部36が包装体12の係合部から外れ、皮内針10とシリンジ20が一体化したまま包装体12から取り出される。
【0059】
その後、皮内針10の針管14を生体に穿刺してシリンジ20の貯留空間61に貯留した薬液の注射を行う。薬液の注射後は、使用した皮内針10の廃棄を行う。
【0060】
この際に、使用者が指先でプロテクタ80を回動させてプロテクタ80(蓋部材82)を閉位置に移動させる。図8及び図9に示すように、プロテクタ80の回動操作により、リング突部32の内側に、蓋部材82の案内突片88が接触しつつ挿入され、蓋部材82がリング突部32を覆う。さらに、蓋部材82をリング突部32の基端側に押し込むことにより、係止片89の爪部89aがリング突部32の開口部32bに引っかかることで蓋体82bが閉位置にロックされる。すなわち、蓋部材82がリング突部32から外れないように固定される。このようにしてプロテクタ80が皮内針10の針先14aを覆った状態で固定されることにより、安全に皮内針10を廃棄することができる。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る皮内針10は、プロテクタ80を拡径部30に設けた回動軸回りに回動可能に取り付けるとともに、蓋部材82の幅Wを拡径部30の直径Dよりも小さくしたことにより、拡径部30の直径と同程度の内径を有する小型の包装体12に収容可能としている。
【0062】
また、腕部84を設けることにより、プロテクタ80の開位置において、蓋体82bを針ハブ16の軸近くにコンパクトに収容できるため、包装体12への収容性が向上する。
【0063】
また、開位置において、蓋体82bの自由端を皮内針10の雄ネジ部40から離間させる開位置規制部材として腕部84に傾斜面84eを設けた。この構成により、針ハブ16にシリンジ20を取り付ける際に、蓋体82bの自由端がシリンジ20と接触してシリンジ20の取付けを妨げる不具合を防止できる。
【0064】
また、蓋体82bには、閉位置において蓋体82bの停止位置を規制する閉位置規制部材としての壁部82d(端面82d1)を有しており、この壁部82dによって閉位置において蓋体82bの内面82b1がリング突部32よりも先端側に離間した状態に保たれる。これにより、蓋体82bが針先14aを先端側から覆うことができる。
【0065】
また、閉位置において、蓋体82bに設けられた係止片89がリング突部32に設けられた開口部32bに係合することで、蓋部材82を閉位置に固定する。これにより、閉位置に移動させた後に蓋部材82が開いて針管14が露出する不具合を防止できる。
【0066】
さらに、蓋体82bの回動軸部寄りの部分には開位置において針ハブ16の側壁の一部を収容する切欠部83が設けられている。これにより、開位置において、蓋体82bを針ハブ16の軸近くに配置することができ、プロテクタ80を針ハブ16の軸近くにコンパクトに収容できる。
【0067】
また、蓋体82bの回動軸方向に離間した一対の腕部84を用いることにより回動軸部付近の剛性が高まり、回動軸回り以外の方向の力が作用した場合であっても、腕部84が変形して蓋体82bの回動方向がずれる不具合を防止できる。これにより、蓋体82bが針管14の位置からずれた位置に回動して使用者の指が針管14に接触する事故を防止できる。この場合において、一対の腕部84を軸ピン31aで回動自在に係合させたことにより、肉薄のヒンジ部で回動軸部を構成する場合よりも更に強度を高めることができる。
【0068】
(第2実施形態)
以下、図10を参照しつつ本実施形態に係る皮内針10Aについて説明する。なお、皮内針10Aの内部構造は図3に示す皮内針10と同様であるため説明を省略する。また、皮内針10Aにおいて、図1図9を参照しつつした皮内針10と同様の構成については同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0069】
本実施形態の皮内針10Aは、プロテクタ90において、皮内針10と異なる。以下、プロテクタ90について説明する。プロテクタ90は、拡径部30に設けられたヒンジ部91を介して拡径部30に対して回動可能に形成されている。ヒンジ部91は、拡径部30よりも径方向内側に設けられている。すなわち、皮内針10Aの軸Mからヒンジ部91までの距離R2は、拡径部30の半径R1よりも小さい。図示の例では、このヒンジ部91は、他の部分よりも肉薄に形成された部分としているが、これに限定されるものではない。例えば、図3及び図4に示すような軸ピン31aと軸取付部84cを有していてもよい。プロテクタ90は、このようなヒンジ部91を中心にして皮内針10Aの軸Mに垂直な方向(図の紙面に垂直な方向)の軸回りに回動可能となっている。
【0070】
ヒンジ部91からは、腕部92が伸び出ている。更に、その腕部92からは蓋体94が略垂直に屈曲して伸び出ており、その蓋体94の自由端側には、リング突部32の開口部32bに係合する係止片98が形成されている。また、蓋体94の中央部には、閉位置で針管14と対向する突出部96が設けられている。
【0071】
腕部92は、ヒンジ部91と蓋体94の内面94aとを離間させる部材であり、この腕部92によって、ヒンジ部91の回動軸部と蓋体94との間に形成される長さL2は、ヒンジ部91とリング突部32の端面との皮内針10Aの軸方向の距離L1と略同じ値に形成される。蓋体94の内面94aは、プロテクタ90を閉位置に回動させた際に、リング突部32の端面32aと当接する。
【0072】
蓋体94の形状は、プロテクタ90を閉位置に回動させた際に、中央の突出部96の内面96aが針管14と対向する位置に配置されるものであればよい。また、蓋体94は、図示の開位置において、皮内針10Aの軸Mを中心とし、半径R1の領域の内側に入るサイズに形成される。これにより、小型の包装体12(図1参照)に収容することができる。
【0073】
突出部96の内面96aと、蓋体94の内面94aとの距離T2は、リング突部32の端面に対する針管14の突出長さT1よりも大きく形成されることで、突出部96によって針管14を覆うことができる。
【0074】
本実施形態のプロテクタ90においては、開位置においてプロテクタ90の自由端を皮内針10Aの軸から離間した位置で停止させる開位置規制部材として、皮内針10Aの側壁から伸び出た規制片99を設ける。この規制片99が蓋体94と接触することにより、プロテクタ90を皮内針10Aの軸から所定の距離d2だけ離間させることができる。この距離d2は、シリンジ20のコネクタ部46の肉厚d1より大きくとることが好ましい。
【0075】
以上のような本実施形態の皮内針10Aによっても、小型化された包装体12への収容性が向上する。
【0076】
(第3実施形態)
以下、図11図15Bを参照しつつ、本実施形態の第3実施形態に係る皮内針10Bについて説明する。なお、皮内針10B(図13A参照)の内部構造は図3に示す皮内針10と同様であるため説明を省略する。また、皮内針10Bにおいて、図1図9を参照しつつした皮内針10と同様の構成については同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0077】
本実施形態のプロテクタ80A(図13A参照)は、図11に示す蓋部材82Aを図12に示すプロテクタ取付部31に取り付けることで構成される。本実施形態の蓋部材82Aは、その回動動作の途中で抵抗力を発生させて安全性を高めるために、軸取付部84cに中間位置ロック片100及び開位置ロック片104を設けた点で、図5Aに示す蓋部材82と異なっている。
【0078】
図11に示すように、軸取付部84cには、プロテクタ取付部31の軸ピン31aが挿入される孔部87が設けられている。軸取付部84cは、孔部87の外周側であって、対向する腕部84に向かう摺動面87aにおいて、プロテクタ取付部31(図12参照)と摺動するように構成されている。本実施形態では、摺動面87aの周方向の一部に、対向する腕部84に向けて突出した中間位置ロック片100が形成されている。
【0079】
中間位置ロック片100は、孔部87の軸の中心側に向けて張り出した第1突起部101a及び第2突起部101bと、それらの間に形成された係合凹部102とを備えている。第1突起部101a及び第2突起部101bは、孔部87の周方向に離間して形成されている。第1突起部101a及び第2突起部101bは、係合凹部102より孔部87の軸の中心側に接近した部分である。第1突起部101a及び第2突起部101bの中心側の端部は、蓋部材82Aの回動の際に、軸ピン31aの基部に形成された軸支持部31b(図12参照)と干渉しないように、孔部87の軸から半径R3程度離間した位置に形成されている。
【0080】
中間位置ロック片100の孔部87の周方向の位置は、特に限定されないが、蓋部材82Aが拡径部30(図13A参照)よりも先端側に回動した場合に、回動に対する抵抗力を発揮する位置に形成することが好ましい。
【0081】
開位置ロック片104は、孔部87周りに円筒状に形成された軸取付部84cの外周部分から径方向外方に向けて突出して形成されている。開位置ロック片104は、第2腕部84bの延在方向に延び出ており、蓋部材82Aを開位置とした状態において、拡径部30の切欠辺30c(図12参照)に当接することで、蓋部材82Aの回動を規制するように構成されている。
【0082】
なお、本実施形態の蓋部材82Aは、壁部82dから突出した案内突片88(図5B参照)は備えておらず、壁部82dのみで、リング突部32を覆うように構成されている。なお、蓋部材82Aはこれに限定されるものではなく、案内突片88を設けてもよい。
【0083】
図12に示すように、本実施形態の針ハブ16Aは、拡径部30の一端を直線状に切り欠いた切欠辺30cを備え、その切欠辺30cの中央部からプロテクタ取付部31が径方向外側に向けて伸び出ている。プロテクタ取付部31は、先端側から見てT字型に形成されており、その両側部からは、それぞれ軸ピン31aが延び出ている。軸ピン31aは、針ハブ16Aの軸に垂直な方向に円柱状に延びて形成された部材であり、その中心軸が蓋部材82Aの回動軸部となる。
【0084】
プロテクタ取付部31の軸ピン31aの基端側には、軸ピン31aを支持する軸支持部31bが軸ピン31aの軸方向に延びて形成されている。軸支持部31bは、軸ピン31aの径方向外方に広がって形成されており、軸ピン31aとの間に、軸ピン31aの軸に垂直な端面よりなる段部31b2が形成されている。この段部31b2は、蓋部材82Aの摺動面87aと摺動する面を構成する。また、軸支持部31bと切欠辺30cとの間には、軸取付部84cを挿通させるための凹部31cが形成されている。
【0085】
図12の部分拡大図に示すように、軸支持部31bの側面は、軸ピン31aの軸から半径R3の範囲に沿って形成された弧状の曲面31b1によって構成されている。これにより、曲面31b1は、軸取付部84cの中間位置ロック片100と干渉することはない。一方、軸支持部31bの基端面30b側の角には、軸ピン31aの軸から半径R3の範囲よりも外方に突出した回動規制突起31dが形成されている。この回動規制突起31dは、中間位置ロック片100と当接して蓋部材82Aの回動に抵抗力を発生させるように構成されている。
【0086】
以下、本実施形態の皮内針10Bの作用について説明する。
【0087】
図13Aに示すように、蓋部材82Aの一対の孔部87をプロテクタ取付部31の軸ピン31aに嵌合させることで、本実施形態の皮内針10Bのプロテクタ80Aが構成される。
【0088】
図13Bに示すように、蓋部材82Aの開位置では、軸取付部84cの外周部分から突出した開位置ロック片104が切欠辺30cに当接する。そのため、蓋部材82Aは、図示の位置から右回りに閉じる方向に回動させようとする力に対して、開位置ロック片104が切欠辺30cに当接して抵抗する。そのため、皮内針10Bの輸送中や使用時に、蓋部材82Aがぐらついて意図せず閉まるのを防ぐことができる。
【0089】
なお、使用者が指などで、所定以上の力で蓋部材82Aを閉じる方向に回動すると、開位置ロック片104と切欠辺30cとで抵抗力を発生しつつも、蓋部材82Aを閉じることができる。また、開位置ロック片104が切欠辺30cから外れると、蓋部材82Aをスムーズに回動させることができる。
【0090】
蓋部材82Aを閉じる方向に回動させると、図14Aに示す中間位置において蓋部材82Aの回動が一旦規制される。この場合には、図14Bに示すように、中間位置ロック片100の第1突起部101a又は第2突起部101bが軸支持部31bの回動規制突起31dと干渉することにより、蓋部材82Aの回動が抵抗力を受けて規制される。そして、中間位置ロック片100の係合凹部102に回動規制突起31dが嵌まり込むことで、蓋部材82Aの回動が停止する。このように、蓋部材82Aの回動が閉位置に近い中間位置で一端停止することで、蓋部材82Aが勢い良く締まりすぎて使用者が操作を誤って誤穿刺するトラブルを防ぐことができる。すなわち、蓋部材82Aの回動が一旦抵抗を受けることにより、使用者は、閉位置に向けて注意深く蓋部材82Aを操作するようになり、誤穿刺を防ぐことができる。
【0091】
中間位置から更に、蓋部材82Aを閉じる方向に回動させると、図15Bに示すように、中間位置ロック片100が回動規制突起31dからはずれる。そして、図15Aに示すように蓋部材82Aが閉位置に移動して回動が停止する。これにより、蓋部材82Aにより、針先14aが覆われ、皮内針10Bを安全に廃棄できるようになる。
【0092】
本実施形態の皮内針10Bは、以下の効果を奏する。
【0093】
本実施形態の皮内針10Bは、蓋部材82Aの回動を規制する開位置ロック片104及び中間位置ロック片100を備えている。開位置ロック片104は、軸取付部84cの外周部分から径方向外方に向けて突出して形成されており、蓋部材82Aが針ハブ16Aの軸近くに配置された開位置において、切欠辺30cと当接することにより、蓋部材82Aの回動を阻止するように構成されている。これにより、蓋部材82Aが皮内針10Bの輸送中又は使用中に不用意に閉まるといった不具合を防ぐことができる。
【0094】
皮内針10Bにおいて、中間位置ロック片100は、軸取付部84cの摺動面87aから突出して形成されており、プロテクタ取付部31の回動規制突起31dと干渉することで、蓋部材82Aが閉位置に回動する前に、抵抗力を発生するように構成されている。これにより、蓋部材82Aの回動速度が一旦低下し、使用者に注意を促す機会を与えることにより、誤穿刺を防ぐことができる。
【0095】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。例えば、シリンジ20はプレフィルドシリンジではなく、使用直前に薬液を充填して使用するものであってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15