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  • 特許-流動接触分解法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】流動接触分解法
(51)【国際特許分類】
   C10G 11/18 20060101AFI20220614BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20220614BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20220614BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20220614BHJP
   C07C 4/06 20060101ALI20220614BHJP
   C07C 15/04 20060101ALI20220614BHJP
   C07C 15/06 20060101ALI20220614BHJP
   C07C 15/067 20060101ALI20220614BHJP
   B01J 8/24 20060101ALI20220614BHJP
   B01J 8/26 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C10G11/18
C07C11/04
C07C11/06
C07C11/08
C07C4/06
C07C15/04
C07C15/06
C07C15/067
B01J8/24 301
B01J8/26
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020515317
(86)(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 IN2018050338
(87)【国際公開番号】W WO2018220643
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】201721015215
(32)【優先日】2017-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】515325737
【氏名又は名称】ヒンドゥスタン・ペトロリアム・コーポレーション・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】プラモド・クマール
(72)【発明者】
【氏名】ヒリシケーシュ・シュリラム・シダイェ
(72)【発明者】
【氏名】ペディー・ヴィ・シー・ラオ
(72)【発明者】
【氏名】スリ・ガネシュ・ガンダム
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-532351(JP,A)
【文献】特表2015-501859(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104903427(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油化学供給原料留分を生産するための流動接触分解装置(FCCU)(100)であって、
脱塩された原油(102)の流及び再生触媒の第1の流(114)を受け取り、第1の分解生成物流(104)を生成する第1の反応装置(105);
軽質分解ナフサ(LCN)(157)の流及び再生触媒の第2の流(119)を受け取り、第2の分解生成物流(106)を生成する第2の反応装置(110);
塔底流(190)及び再生触媒の第3の流(124)を受け取り、第3の分解生成物流(108)を得る第3の反応装置(115)
1の分解生成物流(104)、第2の分解生成物流(106)、及び第3の分解生成物流(108)の成分を分離して、ガス留分(130)、分解ナフサ流(150)、サイクルカット油流(180)、及び塔底流(190)を生成する分留塔及びガス濃縮セクション(125);及び
第1の分留塔(132)、第2の分留塔(155)及び第3の分留塔(161)のうちの1つ又は複数
を含み、
第2の反応装置(110)が受け取るLCN(157)は、分解ナフサ流(150)から得られ、
ガス留分(130)及び分解ナフサ流(150)が、第1の分留塔(132)、第2の分留塔(155)及び第3の分留塔(161)のうちの1つ又は複数においてさらに分留されて、エチレン(137)、プロピレン(139)、ブチレン(141)、ベンゼン(163)、トルエン(165)及びキシレン(167)が石油化学供給原料留分として得られる、流動接触分解装置(FCCU)(100)。
【請求項2】
第1及び第3の反応装置(105、115)は並流反応装置として操作され、第2の反応装置(110)は向流反応装置として操作される、請求項1に記載のFCCU(100)。
【請求項3】
第3の反応装置(115)が、第1の反応装置(105)より高い毎時質量空間速度(WHSV)で操作され、流動化の乱流領域にある、請求項2に記載のFCCU(100)。
【請求項4】
ガス留分(130)は、第1の分留塔(132)で蒸留されて、エチレン(137)、プロピレン(139)及びブチレン(141)が得られ、分解ナフサ流(150)は、第2の分留塔(155)で分留されて、LCN(157)、MCN(159)及びHCN(169)が得られ、さらに、第2の反応装置(110)が、3か所の供給注入位置を、異なる高さで含み、第2の反応装置(110)中に、HCN(169)は塔頂の注入位置で導入され、LCN(157)は中部の注入位置で導入され、ブチレン(141)は底部の注入位置で導入される、請求項1に記載のFCCU(100)。
【請求項5】
第1の反応装置(105)中における触媒の油に対する比が、5:1から25:1の範囲内であり、操作温度が550~600℃の範囲内である、請求項1に記載のFCCU(100)。
【請求項6】
第2の反応装置(110)中における触媒の油に対する比が、10:1から50:1の範囲内であり、操作温度が600~650℃の範囲内である、請求項1に記載のFCCU(100)。
【請求項7】
第3の反応装置(115)中における触媒の油に対する比が、3:1から10:1の範囲内であり、操作温度が550~580℃の範囲内である、請求項1に記載のFCCU(100)。
【請求項8】
分留塔及びガス濃縮セクション(125)からの塔底流(190)が、第3の反応装置(115)に送られて、第3の分解生成物流(108)を生成し、塔底生成物はFCCU(100)からの生成物として得られることはない、請求項1に記載のFCCU(100)。
【請求項9】
第1、第2、及び第3の反応装置(105、110、115)から受け取る廃触媒流(112、117、122)中の廃触媒を再生し、再生触媒の第1、第2、及び第3の流(114、119、124)を提供する再生装置(120)を含む、請求項1に記載のFCCU(100)。
【請求項10】
MCN(159)は、第3の分留塔(161)で分留されて、ベンゼン(163)、トルエン(165)及びキシレン(167)が得られる、請求項に記載のFCCU(100)。
【請求項11】
石油化学供給原料留分を生産するための脱塩された原油の流動接触分解のための方法であって、
第1の反応装置(105)中で、脱塩された原油(102)の流と再生触媒の第1の流(114)とを反応させて、第1の分解生成物流(104)を生成する工程;
第2の反応装置(110)中で、軽質分解ナフサ(LCN)(157)の流と再生触媒の第2の流(119)とを反応させて、第2の分解生成物流(106)を生成する工程;
第3の反応装置(115)中で、塔底流(190)と再生触媒の第3の流(124)とを反応させて、第3の分解生成物流(108)を得る工程
留塔及びガス濃縮セクション(125)中で、第1の分解生成物流(104)、第2の分解生成物流(106)、及び第3の分解生成物流(108)の成分を分離して、ガス留分(130)、分解ナフサ流(150)、サイクルカット油流(180)、及び塔底流(190)を生成する工程;及び
第1の分留塔(132)、第2の分留塔(155)及び第3の分留塔(161)のうちの1つ又は複数の中で、ガス留分(130)及び分解ナフサ流(150)を分留して、石油化学供給原料留分としてエチレン(137)、プロピレン(139)、ブチレン(141)、ベンゼン(163)、トルエン(165)及びキシレン(167)を得る工程
を含み、
第2の反応装置(110)が受け取るLCN(157)は、分解ナフサ流(150)から得られる、方法。
【請求項12】
第1及び第3の反応装置(105、115)は並流反応装置として操作され、第2の反応装置(110)は向流反応装置として操作される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第3の反応装置(115)が、第1の反応装置(105)より高い毎時質量空間速度(WHSV)で、乱流領域で流動化されて操作される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ガス留分(130)は、第1の分留塔(132)で蒸留されて、エチレン(137)、プロピレン(139)及びブチレン(141)が得られ、分解ナフサ流(150)は、第2の分留塔(155)で分留されて、LCN(157)、MCN(159)及びHCN(169)が得られ、さらに、HCN(169)は第2の反応装置(110)中の塔頂の注入位置で導入され、LCN(157)は第2の反応装置(110)中の中部の注入位置で導入され、ブチレン(141)は第2の反応装置(110)中の底部の注入位置で導入される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
第1の反応装置(105)中における触媒の油に対する比が、5:1から25:1の範囲内であり、操作温度が550~600℃の範囲内である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
第2の反応装置(110)中における触媒の油に対する比が、10:1から50:1の範囲内であり、操作温度が600~650℃の範囲内である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
第3の反応装置(115)中における触媒の油に対する比が、3:1から10:1の範囲内であり、操作温度が550~580℃の範囲内である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
分留塔及びガス濃縮セクション(125)からの全ての塔底流(190)が、第3の反応装置(115)に送られて、第3の分解生成物流(108)を生成し、底部生成物がFCCU(100)からの生成物として得られることはない、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
第1、第2及び第3の反応装置(105、110、115)から受け取った廃触媒流(112、117、122)中の廃触媒を、再生装置(120)において再生し、再生触媒の第1、第2及び第3の流(114、119、124)を提供する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、流動接触分解法、特に石油化学供給原料を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精製のプロセスによって原油から種々の炭化水素生成物が得られる。既存の精製プロセスは、複数の工程及び複数の装置をともなう。原油は、熱交換器及び炉を使用して加熱される。次で、常圧蒸留塔で蒸留されると、ナフサ、ケロシン及びディーゼル油留分、並びに残留する原油が得られる。
【0003】
ナフサ留分は、典型的には2つの流:軽質ナフサ及び重質ナフサに分割される。重質ナフサはほとんど価値がなく、典型的にはディーゼル油とブレンドされる。軽質ナフサは、低いリサーチ・オクタン価(RON)値を有する。製油所では、軽質ナフサのRON値を増大させるために異性化及び接触改質法が使用される。処理された軽質ナフサは、それぞれ異性化油及び改質油として知られており、内燃機関用燃料(MS)中にブレンドされる。いくつかの事例で、軽質ナフサは過剰量であり、製油所は内燃機関用燃料(MS)よりも安い価格で販売している。同様に、ケロシンの留分は、メルカプタン酸化(MerOx)装置で処理されて、価値の高い生成物である航空タービン燃料油(ATF)を生成するが、ケロシンの残留留分は、ATFに対する不十分な需要及び/又は政府の規制が理由で、一般的に比較的安い価格で販売される。
【0004】
減圧蒸留残油(RCO)又は常圧塔底油(ATB)と称される残留する原油は、典型的には、炉で加熱され、真空下で蒸留される。得られた留分は、通常、減圧軽油(VGO)及びショート・レジデュー(SR)又は減圧塔底油(VTB)と呼ばれる。VGO流は、典型的には流動接触分解装置(FCCU)又は水素化分解装置でグレードアップされる。FCCUは、典型的には、高オクタン価のガソリン及びオレフィンに富むLPGを生じる。エチレン、プロペン及びブチレンなどの石油化学の前駆体又は供給原料は、LPGからFCC装置によって得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の既存の精製方法では、原油から最終生成物を生産するために、複数の装置が必要になる。各装置で、異なる熱交換器、炉及び生成物冷却装置が必要になる。装置の設計では、製油所で処理される原油に制限が課される。典型的な製油所は、MS、ATF及びディーゼル油のような燃料の生産を重視する。燃料油は、SR及びFCCU底油を使用する製油所によっても生産される。しかしながら、石油化学供給原料に対する高い要求のための現在のシナリオでは、原油からのその生産には、少なくとも2基の蒸留装置、1基のFCC装置、続いてさらに少なくとも3基の蒸留装置が必要になる。さらに既存の精製方法では、石油化学供給原料を生産する同時に、望ましくない価値の低い燃料油が生産される。
【0006】
添付の図を参照して、詳細な説明が記載されている。図において、参照番号の一番左側の数字が、参照番号が最初に現れる図を同定する。同じ番号が、同様の特徴及び成分を参照するために、図面全体を通して使用される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の対象の実施形態により、流動接触分解(FCC)法を実施するための流動接触分解装置(FCCU)のブロックダイヤグラムを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
原油から石油化学供給原料を生産するための既存の精製方法では、複数の装置が必要になる。各装置で、異なる熱交換器、炉及び生成物冷却装置を必要になる。これらの装置の設計では、製油所で処理される原油に制限が課される。典型的な製油所は、MS、ATF及びディーゼル油のような燃料の生産を重視する。燃料油は、SR及びFCCU底油を使用する製油所によっても生産される。しかしながら、石油化学供給原料に対する高い要求の現在のシナリオでは、原油からのその生産には、少なくとも2基の蒸留装置、1基のFCC装置、続いてさらに少なくとも3基の蒸留装置が必要になる。さらに、この方法では、製油所は、SR及びFCC底油から、ある種の望ましくない価値の低い燃料油と一緒に、ガソリン及びディーゼル油などの燃料を生産する。
【0009】
本発明の対象は、脱塩された原油から直接石油化学供給原料を生産するための流動接触分解(FCC)法を記載する。石油化学供給原料は、典型的には、エチレン及びプロピレンを含むオレフィン、並びにベンゼン、トルエン及びキシレンを含む芳香族を含む。本発明の対象による方法によれば、石油化学供給原料を生産するための既存の精製方法と比較して、工程及び装置がかなり削減される。本明細書に記載されている方法は、底油、ケロシン、及び価値の低い燃料油を生じない。それだけでなく、ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族溶媒が原油から生産される。
【0010】
本発明の流動接触分解法は、3基の反応装置系を含むFCCUで実施される。一例では、脱塩された原油及び再生触媒が、並流反応装置である第1の反応装置の底部から注入される。第1の反応装置からの生成物の流は、分留塔及びガス濃縮セクションで分留されて、ガス留分、分解ナフサ留分、サイクルカット油(cycle cut oil)、及びボトム流が生成される。ガス留分が蒸留されて、軽質オレフィンが生成され、残留するガスは燃料ガス及びLPGとして使用される。分解ナフサ留分が、分留されて、軽質分解ナフサ(LCN)、中質分解ナフサ(MCN)及び重質分解ナフサ(HCN)流が生成される。MCN流が分留されて、BTX芳香族が生成される。一例では、LCNは第2の反応装置に供給物として送られる。別の例では、LCNに加えて、HCN、及びブチレン(軽質オレフィンの一部として得られる)流も第2の反応装置で分解される。一例では、第2の反応装置は、向流タイプの反応装置である。第2の反応装置は、高さを変えて3か所の別々の供給物注入位置、塔頂位置、中部位置及び底部位置を有することができる。HCN流は、第2の反応装置の塔頂位置から、LCN流は中部位置から、ブチレン流は底部位置から注入されて、3つの流は全て反応装置中で上向きに流れる。一例では、再生触媒は、第2の反応装置の塔頂から注入されて下の方向に流れる。塔頂位置からのHCNの注入は、反応装置の塔頂から注入される再生触媒が、最初にHCN流と接触して再生触媒の表面上にコークス層を形成することを確実にして、このコークス層は、3つの流が全て第2の反応装置に供給されたときに、中部位置及び底部位置からそれぞれ注入されたLCN及びブチレン流のそれに続く効率的な分解に役立つ。
【0011】
塔底流は、第3の反応装置で分解される。一例では、塔底流及び再生触媒は、並流タイプの反応装置である第3の反応装置の底部から注入される。第2及び第3の反応装置からの生成物流は、第1の反応装置からの生成物流と同様に、分留塔及びガス濃縮セクションで分留されて、ガス留分、分解ナフサ留分、サイクルカット油及び塔底流が生成される。これらは、上で論じられたように、さらに処理されて軽質オレフィン及び芳香族が生成される。
【0012】
塔底流は、該プロセスから引き出されないので、塔底流に関して閉じたループ流動接触分解法が続く。これは、価値の低い中間体生成物又は塔底生成物が生産されずに、価値の高い石油化学供給原料が直接生産されることを確実にする。
【0013】
図1を参照して、本発明の対象をさらに説明する。詳細な説明及び図では、本発明の対象の原理を単に例示するだけであることに留意するべきである。本明細書中で明示的に記載されていない又は示されていなくても、本発明の対象の原理を含む種々の配列が工夫され得る。そのうえ、本発明の対象の原理、態様、及び例を列挙する、並びにそれらの特定の例を挙げる本明細書中における全ての陳述は、それらの等価物を包含することが意図されている。
【0014】
図1は、本発明の対象の実施形態に従って流動接触分解法を実施する流動接触分解装置(FCCU)(100)のブロックダイヤグラムを例示する。一例では、FCCU(100)は、第1の反応装置(105)、第2の反応装置(110)、第3の反応装置(115)、再生装置(120)、及び分留塔及びガス濃縮セクション(125)を含む。それに加えて、FCCU(100)は、第1の分留塔(132)、第2の分留塔(155)、第3の分留塔(161)、水素処理装置(185)及びメタセシス装置(143)の1つ又は複数を含んでもよい。流動接触分解装置(100)は、原油処理中に利用され得る種々の他の中間のサブ装置を含むこともできるが、簡単のために、これまでに言及したサブ装置のみが記載され、図1に示されているが、これらに限定されない。
【0015】
脱塩された原油の流(102)及び再生触媒の第1の流(114)は、FCCU(100)の第1の反応装置(105)に注入されて、第1の分解生成物流(104)が得られる。脱塩された原油(102)は、第1の反応装置(105)中で再生触媒の第1の流(114)と並流で流れる。一例では、第1の反応装置中において、触媒の油の対する比は、5:1から25:1の所定の範囲内であり、550~600℃の所定の温度範囲内で操作される。
【0016】
第1の分解生成物流(104)は、分留塔及びガス濃縮セクション(125)で分留されて、ガス留分(130)、分解ナフサ流(150)、サイクル油カット(180)及び塔底流(190)が得られる。ガス留分(130)は、第1の分留塔(132)で蒸留されて、エチレン(137)、プロピレン(139)、ブチレン(141)並びに燃料ガス及びLPGとして使用され得る残留ガス(135)に分離される。一例では、エチレン(137)とブチレン(141)とは、メタセシス装置(143)中でメタセシスを受けてプロピレン(145)を生成することもある。別の例では、ブチレン(141)の一部又は全部がFCCU(100)でさらなる反応のために使用されることもある。任意選択で、水素は、水素処理装置(185)で使用するために残留ガス(135)から回収される。
【0017】
分解ナフサ流(150)は、第2の分留塔(155)でLCN(157)、MCN(159)、及びHCN(169)流に分留される。LCN(157)の沸点は35~70℃の範囲内であってもよく、MCN(159)の沸点は70~150℃の範囲内であってもよく、及びHCN(169)の沸点は150~190℃の範囲内であってもよい。沸点の範囲は、いくつかの事例では重ならないことが見出されるが、LCN(157)、MCN(159)及びHCN(169)の沸点の範囲は重なってもよい。例えば、LCN(157)の沸点が25~100℃の範囲内であってもよく、MCN(159)の沸点が50~170℃の範囲内であってもよく、及びHCN(169)の沸点が120~200℃の範囲内であってもよい。
【0018】
MCN(159)の流は、第3の分留塔(161)でさらに分留されて、BTX芳香族、即ち、ベンゼン(163)、トルエン(165)及びキシレン(167)が得られる。任意選択で、溶媒抽出を使用して、MCN(159)中で芳香族化合物を濃縮してから、MCN(159)を分留してBTX芳香族が得られる。一例では、HCN流(169)をサイクルカット油(180)とブレンドして、芳香族溶媒(189)を生成する。任意選択で、サイクルカット油(180)とHCN(169)流とのブレンドを水素処理装置(185)で水素処理して、硫黄を除去し、ディーゼル油(187)を生成する。別の例では、HCN流(169)の一部又は全部がFCCU(100)におけるさらなる反応のために使用され得る。
【0019】
したがって、LCN(157)、及び任意選択でHCN(169)及びブチレン(141)流の一方又は両方が、FCCU(100)の第2の反応装置(110)中で、再生触媒の第2の流(119)により、完全に又は部分的のいずれかに分解されて、第2の分解生成物流(106)が得られる。第2の反応装置(110)は、3か所の別々の供給物注入位置である塔頂位置、中部位置、及び底部位置を有することができる。第2の反応装置(110)には、HCN流(169)が、第2の反応装置(110)の塔頂位置から注入され、LCN流(157)が中部位置から、及びブチレン(141)流が底部位置から注入される。さらに、第2の反応装置(110)中で、HCN(169)、LCN(157)及びブチレン(141)流は、上方向に、即ち、下向きに流れる再生触媒の第2の流(119)に対して向流で流れる。第2の反応装置(110)に送られる供給物に依存して、供給物注入の位置は変化し得ることは理解されるであろう。例えば、LCN(157)だけが第2の反応装置(110)に供給される場合には、該反応装置は燃料注入の供給を中部位置でのみ受けることができる。一例では、第2の反応装置(110)において、触媒の油に対する比は、10:1から50:1の所定の範囲内であり、600~650℃の所定の温度範囲内で操作される。
【0020】
塔底流(190)は、FCCU(100)の第3の反応装置(115)中で、再生触媒の第3の流(124)により分解されて、第3の分解生成物流(108)が得られる。第3の反応装置(115)中で、塔底流(190)は、再生触媒の第3の流(124)と並流で流れるが、第1の反応装置(105)よりも高い毎時質量空間速度(WHSV)で流れる。第3の反応装置(115)中で、触媒は、乱流領域で流動化され、触媒の油に対する比は3:1から10:1の所定の範囲内であり、550~580℃の所定の温度範囲内で操作される。
【0021】
第2の分解生成物流(106)及び第3の分解生成物流(108)は、分留塔及びガス濃縮セクション(125)で分留される。第1の分解生成物流(104)と同様に、第2及び第3の分解生成物流(106、108)の分留も、ガス留分(130)、分解ナフサ流(150)、サイクル油カット(180)及び塔底流(190)が生じる。これらは、分留塔及びガス濃縮セクション(125)で分離されて、生成物は、第1の分解生成物流(104)からの生成物に関して上で論じたように処理される。
【0022】
したがって、3基全ての反応装置(105、110、115)の生成物流は、分留塔及びガス濃縮セクション(125)に供給されて、ガス留分(130)、分解ナフサ流(150)、サイクルカット油(180)及び塔底流(190)が得られることが理解されるであろう。一例では、塔底流(190)の全てが、リサイクルされて第3の反応装置(115)に戻され、それにより、FCCU(100)からの塔底流の生成は生じない。さらに、分解ナフサ流(150)から得られたLCN(157)は、第2の反応装置(110)にリサイクルされ、一方、HCN(169)も、任意選択で第2の反応装置(110)にリサイクルされてもよい。同様に、ガス留分(130)から得られたブチレン(141)も、任意選択で第2の反応装置(110)にリサイクルされてもよい。
【0023】
本明細書で開示されているように、FCCU(100)は、0.01kg/cm~2kg/cmの範囲内の所定の圧で操作される。FCC法で使用される触媒は、Y-ゼオライト、ペンタシル、及びそれらの組合せから選択され得る。3基の反応装置(105)、(110)及び(115)から廃触媒は、廃触媒の再生のために、第1の流(112)、第2の流(117)、及び第3の流(122)として、再生装置(120)に送られる。廃触媒上に生成されたコークスは、再生装置(120)中で空気(107)を使用して燃焼されて、燃焼ガス(103)が放出される。次に、再生触媒は、再生装置(120)から第1の再生された流(114)、第2の再生された流(119)及び第3の再生された流(124)として、第1の反応装置(105)、第2の反応装置(110)、及び第3の反応装置(115)にそれぞれ送られる。一例では、第1の(112)及び第3の(122)流中の廃触媒は、スチームを使用して、ストリップされて吸着されている炭化水素が除去された後、再生されてもよいが、ストリップするスチームを、第2の(117)流で廃触媒のために使用することはできない。
【0024】
したがって、本発明の対象は、流動接触分解装置及び脱塩された原油から直接、軽質オレフィン及び芳香族などの石油化学供給原料を生産する方法を提供する。本発明の対象に記載されている装置及び方法は、石油化学供給原料を生産するための既存の精製方法及び装置と比較して大きく削減された工程及びサブ装置をもたらす。本明細書に記載されている方法は、底部の価値の低い燃料油、及びケロシンの生産をもたらさない。本明細書に記載されている方法は、原油から、既存の精製方法よりも少ない工程で芳香族溶媒を生産する。本明細書に記載されている方法は、原油から、ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族溶媒も生産する。
【0025】
したがって、石油化学供給原料留分を生産するための脱塩された原油の流動接触分解装置のための方法も、本発明の対象により提供される。該方法は、第1の反応装置(105)中で、脱塩された原油(102)の流と再生触媒の第1の流(114)とを反応させて、第1の分解生成物流(104)を生産することを含む。さらに、該方法は、第2の反応装置(110)中で、軽質分解ナフサ(LCN)(157)の流と再生触媒の第2の流(119)とを反応させて、第2の分解生成物流(106)を生産することを含む。さらに、該方法は、第3の反応装置(115)中で、塔底流(190)と再生触媒の第3の流(124)とを反応させて、第3の分解生成物流(108)を得ることを含む。さらに、該方法は、分留塔及びガス濃縮セクション(125)中で、第1の分解生成物流(104)、第2の分解生成物流(106)、及び第3の分解生成物流(108)の成分をで分離して、ガス留分(130)、分解ナフサ流(150)、サイクルカット油(180)、及び塔底流(190)を生成することを含み、ここで、第2の反応装置(110)が受け取るLCN(157)は、分解ナフサ流(150)から得られ、ガス留分(130)及び分解ナフサ流(150)は、さらに分留されて、エチレン(137)、プロピレン(139)、ブチレン(141)、ベンゼン(163)、トルエン(165)及びキシレン(167)が、石油化学供給原料留分として得られる。
【0026】
一例では、第1及び第3の反応装置(105、115)は、並流反応装置として操作され、第2の反応装置(110)は、向流反応装置として操作される。例えば、第3の反応装置(115)は、第1の反応装置(105)よりも高い毎時質量空間速度(WHSV)で及び乱流領域の流動化で操作され得る。
【0027】
一例では、HCN(169)は、第2の反応装置(110)中の塔頂注入位置で導入され、LCN(157)は、第2の反応装置(110)中の中部注入位置で導入され、及びブチレン(141)は、第2の反応装置(110)中の底部注入位置で導入される。
【0028】
一例では、第1の反応装置(105)中における触媒の油に対する比は、5:1から25:1の範囲内であり、操作温度は550~600℃の範囲内である。
【0029】
一例では、第2の反応装置(110)中における触媒の油に対する比は、10:1から50:1の範囲内であり、操作温度は、600~650℃の範囲内である。
【0030】
一例では、第3の反応装置(115)中における触媒の油に対する比は、3:1から10:1の範囲内であり、操作温度は、550~580℃の範囲内である。
【0031】
一実施態様では、分留塔及びガス濃縮セクション(125)からの全ての塔底流(190)が、第3の反応装置(115)に送られて、第3の分解生成物流(108)を生成し、塔底生成物が、FCCU(100)から生成物として得られることはない。
【0032】
一例では、LCN(157)に加えて、重質分解ナフサ(HCN)(169)、及びブチレン(141)も第2の反応装置(110)に供給されて、ここで、第2の反応装置(110)が受け取るHCN(169)は、分解ナフサ流(150)から得られ、第2の反応装置(110)が受け取るブチレン(141)は、ガス留分(130)から得られる。一例では、リサイクルされて第2の反応装置(110)に戻されたHCN(169)は、分解ナフサ流(150)から生産されたHCN(169)の一部である。別の例では、分解ナフサ流(150)から生産された全てのHCN(169)は、第2の反応装置(110)にリサイクルされてもよい。同様に、一例では、第2の反応装置(110)にリサイクルされたブチレン(141)は、ガス留分(130)から生産されたブチレン(141)の一部である。別の例では、ガス留分(130)から生産された全てのブチレン(141)は第2の反応装置(110)にリサイクルされてもよい。
【0033】
本発明の対象の原理は、以下の実施例によってさらに例示されるであろう。該実施例は、単に例示のためであり、決して限定することは意味されないことが理解されるべきである。
【実施例1】
【0034】
この例は、低硫黄原油の分解からの収率を例示する。実験は、固定流動床反応装置で実施した。触媒は、815℃、10時間で失活した。この例では、LCN及び塔底流は、リサイクル流である。供給原料の性質をTable 1(表1)に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
操作条件及び収率をTable 2(表2)に示す。この例では、LCN流だけが第2の反応装置にリサイクルされ、ブチレンは生成物として取り出され、HCNは水素処理された。しかしながら、他の例では、前に論じたように、HCN及びブチレンも第2の反応装置に部分的に又は完全にリサイクルされ得ることは理解されるであろう。燃料ガスは、水素、メタン及びエタンを含む。LPGは、プロパン、ブタン及びイソブテンを含む。
【0037】
反応装置についてTable 2(表2)に示された収率の質量パーセンテージは、それぞれの供給原料の質量に対するものである。
【0038】
【表2】
【0039】
石油化学供給原料の収率をTable 3(表3)に示す。Table 3(表3)中の収率は、FCCUで処理された原油に対する質量パーセンテージとして示されている。残留する収率は、収率が表中に示されていないサイクルカット油、LPG、LCOなどの他の生成物に対応することは理解されるであろう。
【0040】
【表3】
【0041】
したがって、石油化学供給原料を高収率で、生成物として価値の低い中間部及び底部の生産なしで、原油から直接得ることができる。
【0042】
本発明の種々の特性を具体化する本明細書に記載の例示の系及び方法が示されているが、本発明が、これらの実施形態に限定されないことは、当業者により理解されるであろう。改変は、当業者により、特に前述の教示に照らして行われ得る。改変が、本発明の真の範囲から逸脱することなく行われ得ることも、認識され及び理解されるであろう。したがって、詳細な説明は、本発明に対する限定でなく、例示と考えられるべきである。
【符号の説明】
【0043】
100 流動接触分解装置(FCCU)
102 脱塩された原油
103 燃焼ガス
104 第1の分解生成物流
105 第1の反応装置
106 第2の分解生成物流
107 空気
108 第3の分解生成物流
110 第2の反応装置
112 第1の流
114 再生触媒の第1の流
115 第3の反応装置
117 第2の流
119 再生触媒の第2の流
120 再生装置
122 第3の流
124 再生触媒の第3の流
125 分留塔及びガス濃縮セクション
130 ガス留分
132 第1の分留塔
135 残留ガス
137 エチレン
139 プロピレン
141 ブチレン
143 メタセシス装置
145 プロピレン
150 分解ナフサ流
155 第2の分留塔
157 LCN
159 MCN
161 第3の分留塔
163 ベンゼン
165 トルエン
167 キシレン
169 HCN
180 サイクルカット油
185 水素処理装置
187 ディーゼル油
189 芳香族溶媒
190 塔底流
図1