(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】トラックローラアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B62D 55/14 20060101AFI20220614BHJP
B62D 55/15 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B62D55/14 Z
B62D55/15
(21)【出願番号】P 2021039247
(22)【出願日】2021-03-11
(62)【分割の表示】P 2018567070の分割
【原出願日】2017-05-17
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2016-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・エル・レッカー
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-007039(JP,A)
【文献】特開2016-094062(JP,A)
【文献】特開2015-147436(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125761(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0121643(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/00 - 55/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変化するローラ内径を備えるローラ内面を有するトラックローラと、
シャフト外径を備えるシャフト外面を有するローラシャフトであって、前記シャフト外面および前記ローラ内面が、前記トラックローラが前記ローラシャフトについて回転することができるように構成されている、ローラシャフトと、
第一のシャフト端に圧入される第一のカラーと、
第二のシャフト端に圧入される第二のカラーと、を備え
、前記トラックローラが前記第一のカラーおよび前記第二のカラーの軸方向内側への移動を妨げるとき、前記ローラシャフトを圧縮軸荷重で圧縮することにより、
前記ローラシャフトの圧縮軸荷重を取り除くと、前記ローラシャフトが、圧縮されたシャフトの長さから通常のシャフトの長さに伸びるのに伴って、前記第一のカラーおよび前記第二のカラーが軸方向外側に移動できるようにして、前記ローラ内面から前記第一のカラーおよび前記第二のカラーの軸方向の隙間が形成される、ローラアセンブリ。
【請求項2】
前記トラックローラおよび前記第一のカラーは、第一のシール空洞を画定し、前記トラックローラおよび前記第二のカラーは第二のシール空洞を画定し、
前記第一のシール空洞内に配置される第一のシールアセンブリと、
前記第二のシール空洞内に配置される第二のシールアセンブリと、を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のローラアセンブリ。
【請求項3】
中空円筒形を有する第一のブッシュ本体と、第一のブッシュ端から径方向外側に伸びる第一のブッシュフランジと、を有する第一のフランジブッシュであって、前記第一のブッシュフランジが前記ローラ内面の第一の係合肩部に係合するまでローラ内面に圧入され、前記第一のカラーが前記第一のブッシュフランジに係合するまで前記ローラシャフトに圧入される、第一のフランジブッシュと、
中空円筒形を有する第二のブッシュ本体と、第二のブッシュ端から径方向外側に伸びる第二のブッシュフランジと、を有する第二のフランジブッシュであって、前記第二のフランジブッシュが前記ローラ内面の第二の係合肩部に係合するまで前記ローラ内面に圧入され、前記第二のカラーは、第二のカラー内側端が前記第二のブッシュフランジに係合するまで前記ローラシャフトに圧入される、第二のフランジブッシュと、
を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のローラアセンブリ。
【請求項4】
前記圧縮軸荷重を適用して取り除くことは、カラー分離距離を約0.50mm(およそ0.01969インチ)増大する、ことを特徴とする請求項1に記載のローラアセンブリ。
【請求項5】
前記ローラ内面および前記シャフト外面は、前記トラックローラの長手方向中央に近接する潤滑油リザーバを画定する、ことを特徴とする請求項1に記載のローラアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に軌道式機械に関し、より詳細には、軌道式機械用トラックローラアセンブリおよびトラックローラアセンブリを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
掘削機、ブルドーザ、トラックローダおよびスキッドステアローダなどの軌道式機械は、様々な用途で使用されている。一般に、これらの機械は、オペレータステーション、電源、車台および機械の横側面に位置する一対の軌道システムを有する。各軌道システムは、軌道式機械の長手方向に広がっている方向に沿って位置づけられるローラフレーム、ローラフレームに取り付けられ、電源によって回転可能に駆動される駆動スプロケット、およびこれもローラフレームに回転するため取り付けられる一つまたは複数のアイドラホイールを含みうる。無限軌道は、駆動スプロケットおよび一つまたは複数のアイドラホイールを囲む。無限軌道は、駆動スプロケットにより係合され、それにより電源が駆動スプロケットおよびアイドラホイール上の無限軌道を駆動して、作業面上で軌道式機械を推進することができる。さらに無限軌道をローラフレームから分離し、無限軌道に軌道式機械を駆動する所望の形態を持たせるため、既知の軌道システムは、通常一つまたは複数の上方および/または下方のトラックローラアセンブリを含む。これらのトラックローラアセンブリは、駆動スプロケットと一つまたは複数のアイドラホイールとの間に長手方向に広がっているローラフレームの軸に沿って位置づけられて、所望の進路に沿って無限軌道を進める。
【0003】
トラックローラアセンブリは、ローラフレームまたはトラックローラアセンブリへの支持部材に取り付けられたローラシャフトを含んでもよく、貫通孔を有するトラックローラは、ローラシャフトに回転可能に取り付けることができる。ローラシャフトは、定位置に固定することができ、トラックローラは、軌道式機械が移動中、ローラシャフトの周りを回転することができ、無限軌道は、トラックローラアセンブリ上を進む。軌道式機械は、トラックローラアセンブリが水、泥、砂、石または他の材料、およびさらに化学要素の摩損性混合物にさらされうる劣悪な環境でも稼働することができる。これらの混入物は、ローラシャフトとトラックローラの貫通孔との間の空間に進入し、ローラシャフトおよび貫通孔の表面の摩損をもたらしうる。したがって、トラックローラシールは、上述の混入物がローラシャフトと貫通孔との間の空間に侵入することを防止し、ローラシャフトと貫通孔との間の空間内に潤滑油を保持して摩擦および摩損を最小化するために、使用することができる。
【0004】
概して上述の種類のトラックローラのシールは、当業界では既知である。例えば、「Method of Forming a Seal Assembly Around a Shaft」と題する、2003年5月27日にBedfordらに発行の米国特許第6,568,684号は、シャフトの周囲にシールを形成する方法を開示する。より具体的には、シール表面に係合する二つのシール部材を使用するトラックローラのシールは、トラックローラへの混入物の進入を制限し、トラックローラから潤滑油が漏出することを軽減する。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様では、トラックローラを組み立てる方法が開示される。その方法は、ローラ内径が変化するトラックローラがローラシャフトの周囲を回転できるように構成されるトラックローラのローラ内面に、一つのシャフト外径を備えるトラックローラがローラシャフトの周囲を回転できるように構成されるシャフト外面を有するローラシャフトを挿入すること、および第一のカラーの軸方向内側への移動がトラックローラの第一の係止肩部により妨げられ、第二のカラーの軸方向内側への移動がトラックローラの第二の係止肩部により妨げられるまで、第一のカラーをローラシャフトの第一のシャフト端におよび第二のカラーをローラシャフトの第二のシャフト端に圧入し、第一のカラーおよび第二のカラーを軸方向内側に押し込むことを含んでもよい。その方法はさらに、ローラシャフトに圧縮軸荷重を加えて、第一のカラーおよび第二のカラーに対して相対的に内側に移動するローラシャフトのシャフトの長さを通常のシャフトの長さから圧縮されたシャフトの長さに縮小すること、およびローラシャフトが伸びて通常のシャフトの長さに戻り、ローラシャフトが伸びて通常のシャフトの長さに戻ると、第一のカラーおよび第二のカラーが軸方向に離間する方向に移動するように、ローラシャフトから圧縮軸荷重を取り除くことを含んでもよい。
【0006】
本開示の別の態様では、ローラアセンブリが開示される。ローラアセンブリは、変化するローラ内径を備え、トラックローラがローラシャフトの周りを回転できるように構成されるローラ内面を有するトラックローラ、一つのシャフト外径を備え、トラックローラがローラシャフトの周りを回転できるように構成されるシャフト外面を有するローラシャフト、第一のシャフト端に圧入される第一のカラー、および第二のシャフト端に圧入される第二のカラーを含んでもよい。ローラ内面から第一のカラーと第二のカラーの軸方向の隙間は、トラックローラが第一のカラーおよび第二のカラーの軸方向内側への移動を妨げるとき、圧縮軸荷重でローラシャフトを圧縮することにより生成され、その後、ローラシャフトから圧縮軸荷重を取り除くと、ローラシャフトが、圧縮されたシャフトの長さから通常のシャフトの長さに伸びるので、第一のカラーおよび第二のカラーが軸方向外側に移動できる。
【0007】
本開示のさらなる態様では、トラックローラを組み立てる方法が開示される。その方法は、ローラ内径が変化するトラックローラのローラ内面に第一のフランジブッシュおよび第二のフランジブッシュを圧入することを含んでもよく、第一のフランジブッシュは中空円筒形を有する第一のブッシュ本体および第一のブッシュ端から径方向外側に延びる第一のブッシュのフランジを有し、第二のフランジブッシュは、中空円筒形を有する第二のブッシュ本体および第二のブッシュ端から径方向外側に延びる第二のブッシュのフランジを有し、第一のフランジブッシュおよび第二のフランジブッシュは、第一のブッシュのフランジが第一の係止肩部と係合し、第二のブッシュのフランジが第二の係止肩部と係合するまで、軸方向内側に圧入される。その方法はさらに、ローラシャフトの周りを回転できるように、シャフト外面、第一のブッシュ本体および第二のブッシュ本体が、シャフトの径方向の隙間を与えるよう構成される、トラックローラのローラ内面に一つのシャフト外径を備えるシャフト外面を有するローラシャフトを挿入すること、第一のカラーの内側端が第一のブッシュのフランジと係合するまで、第一のカラーをローラシャフトの第一のシャフト端に圧入することおよび第二のカラーの内側端が第二のブッシュのフランジと係合するまで第二のカラーをローラシャフトの第二のシャフト端に圧入すること、圧縮軸荷重をローラシャフトに加えて、第一のカラーおよび第二のカラーに対して相対的に内側に移動するローラシャフトのシャフトの長さを通常のシャフトの長さから圧縮されたシャフトの長さに縮小すること、およびローラシャフトが伸びて通常のシャフトの長さに戻るように圧縮軸荷重をローラシャフトから取り除くことを含んでもよく、ローラシャフトが伸びて通常のシャフトの長さに戻ると、第一のカラーおよび第二のカラーは、軸方向に離間する方向に移動する。
【0008】
追加の態様は、本特許の特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、本開示による、トラックキャリアローラを有する軌道式機械の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の軌道式機械のトラックローラアセンブリの断面図である。
【
図3】
図3は、トラックローラアセンブリにおける代替の密封構成を示す
図2の断面図の拡大部分である。
【
図4】
図4は、トラックローラアセンブリにおけるさらなる代替の密封構成を示す
図3の断面図の拡大部分である。
【
図5】
図5は、トラックローラアセンブリにおける別の代替の密封構成を示す
図3の断面図の拡大部分である。
【
図6】
図6は、トラックローラアセンブリにおける追加の代替の密封構成を示す
図3の断面図の拡大部分である。
【
図7】
図7は、トラックローラアセンブリにおけるさらなる代替の密封構成を示す
図3の断面図の拡大部分である。
【
図8】
図8は、トラックローラアセンブリにおける別の代替の密封構成を示す
図3の断面図の拡大部分である。
【
図9】
図9は、本開示による、トラックローラアセンブリルーチンの流れ図である。
【
図10】
図10は、ローラシャフトの圧縮前の組み立て中の
図2のトラックローラアセンブリの左部分の拡大断面図である。
【
図12】
図12は、圧縮軸荷重がローラシャフトから取り除かれた後の
図10の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1Aおよび1Bを参照すると、軌道式機械10は、鉱業、建設業、農業、輸送業、廃棄物処理または当技術分野で既知の任意の他の産業などの産業と関連する、ある種類の運転を実施する移動機を実現しうる。例えば、機械10は、油圧ショベルまたは他の適切な機械などの土木機械であってもよい。機械10は、バケット14、機械10を推進するための軌道車台16の形態の駆動システム、インプルメントシステム12および車台16に電力を供給する電源18、およびインプルメントシステム12および車台16のオペレータ制御のためのオペレータステーション20などのインプルメントの位置または方向を調節するよう構成されるインプルメントシステム12を含んでもよい。油圧ショベルが図示されるが、本明細書に開示されるローラは、材料ローダ、トラクタなどの車台を有する任意の他の種類の機械に実装されてもよい。
【0011】
電源18は、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、ガス燃料エンジンまたは当技術分野で既知の任意の他の種類の内燃機関などのエンジンを具現化してもよい。電源18は、代替で、燃料電池、蓄電装置、または当技術分野で既知の別の電源などの非燃焼電源を実現しうると企図される。電源18は、インプルメントシステム12を動かすため油圧動力または空気動力に変換され、車台16の軌道22を駆動するため適切な動力伝達アセンブリ(図示せず)により駆動トルクに変換されうる機械的または電気的パワー出力を発生することができる。
【0012】
車台16は、当技術分野で既知の標準軌道駆動システムであってもよく、機械10の本体26に連結され、駆動スプロケット28およびローラフレーム24に枢動可能に連結された一つまたは複数のアイドラプーリ30を有するローラフレーム24を含む。無限軌道22は、駆動スプロケット28およびアイドラプーリ30によって支持されるが、不均整な地面を横切るとき、無限軌道22が移動して機械10に安定性をもたらすことができるように教示されない可能性がある。ローラフレーム24に枢動可能に連結されたトラックローラ32は、作業面で機械10を支持する。ローラフレーム24の上では、駆動スプロケット28とフロントアイドラプーリ30との間で無限軌道22の一部が、少なくとも一つのキャリアローラ36によって支持される。キャリアローラ36は、ローラフレーム24から上の方に延びるキャリアスタンド38に回転可能に取り付けられ、それにより、キャリアローラ36は、無限軌道22が駆動スプロケット28とアイドラプーリ30との間で移動すると、回転する。本明細書に図示される車台16は低スプロケット式車台であるが、当業者なら、本明細書に開示される概念が、ローラフレーム24の上に取り付けられた駆動スプロケット28およびローラフレーム24の前後にアイドラプーリ30を有する高架スプロケット車台など、他の種類の車台で実施されうることを理解するであろう。
【0013】
図2は、本開示による、アセンブリルーチンにしたがって組み立てられうるトラックローラ32の実施例を示す。本明細書における考察は、アセンブリルーチンにしたがって組み立てられうるキャリアローラ36にも等しく適用されうる。トラックローラ32およびキャリアローラ36におけるローラカラー、ローラシャフトおよびローラシールの本構成は、例示目的のみである。本開示によるアセンブリルーチンは、「ローラ」という用語により集合的に含まれるアイドラプーリ、スプロケットなどのシャフトに取り付けられる他の回転する構成要素で実施されてもよい。
【0014】
トラックローラ32は、トラックローラ32およびトラックローラ32の両側でローラシャフト40の端部に圧入されるカラー42を貫通する軸上のローラシャフト40によって、ローラフレーム24に(または、キャリアローラ36の場合キャリアスタンド38に)回転可能に取り付けられる。図示の実施形態では、ローラシャフト40はカラー42の外面を越えて伸びてなく、カラー42は、ローラフレーム24に係合および保持されて、トラックローラ32がローラシャフト40の周りを回転するとき、ローラフレーム24に対する回転に対してローラシャフト40およびカラー42を保持する。代替の実施形態では、ローラシャフト40は、カラー42の一方を越えて伸び、片持ち式配置でローラフレーム24に取り付けられる端部を有してもよく、またはローラシャフト40は、トラックローラ32およびカラー42の両側から延伸し、ローラフレーム24によって二重に支持されてもよい。
【0015】
トラックローラ32は、ローラ内径が変化するローラ内面44を有し、ローラシャフト40は、ほぼ均一なシャフトの外径を有するシャフト外面46を有する。ローラ内面44とシャフト外面46の部分は、トラックローラ32の長手方向中央近くの間に油またはグリースなどの潤滑油がトラックローラ32の移動する構成要素に油をさすため配置される潤滑油リザーバ48を画定する。トラックローラ32は、一対のフランジブッシュ50などのベアリングによってローラシャフト40に回転可能に取り付けられる。
【0016】
各フランジブッシュ50は、円筒形のブッシュ本体52およびブッシュ本体52の一端から径方向外側に伸びるブッシュのフランジ54を有しうる。ブッシュ本体52は、リザーバ48から長手方向外側に向かうローラ内面44の対応する部分と締りばめを生じるブッシュ外径を有する中空の円筒であってもよい。ブッシュ本体52は、ローラ内面44の対応する部分に圧入され、それにより、フランジブッシュ50はローラシャフト40の周りをトラックローラ32と回転する。ブッシュ本体52およびブッシュのフランジ54のブッシュ内径は、シャフトの外径よりわずかに大きくて、トラックローラ32およびフランジブッシュ50がローラシャフト40に対して最小の径方向移動でローラシャフト40に対して回転することを可能にする。ブッシュの内径は、リザーバ48からの潤滑油がブッシュ本体52とローラシャフト40との間を流れることができるブッシュ内面とシャフト外面46との間がおよそ0.25mm(およそ0.009843インチ)ほどであってもよい径方向の隙間を生じる。ブッシュのフランジ54は、ブッシュ本体52が圧入されるローラ内面44の部分でローラ内径より大きいフランジ外径を有する。ローラ内面44は、径方向外側に延伸して、ブッシュのフランジ54を係合して、ローラ内面44に沿って適切にフランジブッシュ50を位置づけるブッシュ係止肩部56を画定する。
【0017】
図示のようにブッシュ本体52およびブッシュのフランジ54を有するフランジブッシュ50は、ただ一つの単一構成要素として形成される。しかし、当業者なら、フランジブッシュ50は、本明細書に記載される通り、フランジブッシュ50の機能を実行するために組み合わされる複数の別々の構成要素から形成されてもよいことを理解するであろう。例えば、円筒形ラジアルベアリングは、ブッシュ本体52として機能し、ローラ内面44の対応する部分に圧入され、ブッシュ内面とシャフト外面46との間に径方向の隙間を生じるブッシュ内径を有してもよい。ワッシャまたはその他の種類のスラストベアリングは、ブッシュのフランジ54として機能し、ローラシャフト40上およびブッシュ係止肩部56と対応するカラー42との間に配置され、トラックローラ32に付与されるスラスト荷重を吸収することができる。ベアリングの他の構成は、「フランジブッシュ」という用語が本明細書で使用されるとき、明らかになろう。
【0018】
カラー42およびローラ内面44の外側部分は結合して、トラックローラ32およびローラシャフト40の両端にシールの空洞58を画定する。シールアセンブリ60は、シールの空洞58内に配置されて、互いに対して回転する構成要素の間に、トラックローラ32内のリザーバ48からの潤滑油を保持し、泥、砂および他の破片のシールの空洞58の通過ならびに互いに対して移動する部品の摩耗を防ぐシールを形成する。図示の実施形態では、各シールアセンブリ60は、第一のシールリング62および第一のトロイダルシール部材64により形成されるカラー側シール部ならびに第二のシールリング66および第二のトロイダルシール部材68により形成されるローラ側シール部を有する。シールリング62、66は、横並びに、カラーシール空洞表面70と係合する第一のシール部材64およびローラ内面44のローラシール空洞表面72と係合する第二のシール部材66に隣接して位置づけられる。カラー42は、それぞれ、シールリング62、66とシール空洞表面70、72との間およびシール部材64、68とシール空洞表面70、72との間を潤滑油が通過するのを防ぐシールを形成する位置でローラシャフト40に圧入される。潤滑油をリザーバ48からシールアセンブリ60に供給するため、カラー42のカラー内側端74とブッシュのフランジ54との間に軸方向の隙間が設けられる。カラー内側端74とブッシュのフランジ54との間の軸方向の隙間は、一例示的実施形態では、およそ0.25mm(およそ0.009843インチ)としうるが、実際の軸方向の隙間は、トラックローラ32の特定の実施形態に基づいて変化してもよい。図の制約により、ブッシュ本体52とローラシャフト40との間およびカラー内側端74とブッシュのフランジ54との間の比較的小さい径方向および軸方向の隙間は、本明細書に含まれる図面の多くで視覚的にはっきりしない。しかし、当業者であれば、部品の間にこうした径方向および軸方向の隙間が存在することは理解されよう。例示目的のために適切な場合、構成要素の寸法は、本開示の読者の理解の利益のために誇張される。
【0019】
図3~8は、本開示にしたがって組み立てられたトラックローラ32で実施されうるシールアセンブリ60の様々な代替の構成を示す。
図3を参照すると、ローラシール空洞表面72は、シールが第一のシールリング62およびカラー側シール部の第一のシール部材64だけを使用して形成することができるように変更されてもよい。第一のシールリング62は、ローラシール空洞表面72に面しかつ接し、第一のシール部材64はカラーシール空洞表面70に押し付けられて、その間にシールを形成する。
図4では、カラーシール空洞表面70は、同様の方法で変更され、それにより、第二のシールリング66から成るローラ側シール部分および第二のシール部材68だけが、シールの空洞58を密閉するために使用されている。
【0020】
シール空洞表面70、72は、
図5および6において同様の方法で変更されるが、代替の側面シール部構成が、シールの空洞58内に取り付けられてもよい。
図5を参照すると、カラー側シール部は、外側方向側面上の第一の負荷リング78および内側方向側面上の第一のシールリップ80を受けるよう変更された第一のシールリング76によって形成することができる。カラー側シール部は、シールの空洞58内に、カラーシール空洞表面70と係合する第一の負荷リング78およびローラシール空洞表面72と係合する第一のシールリップと共に取り付けられる。
図6では、ローラ側面シール部は、ローラシール空洞表面72と係合する第二の負荷リング84およびカラーシール空洞表面70と係合する第二のシールリップと共にシールの空洞58内に取り付けられ、内側方向側面上の第二の負荷リング84および外側側面上の第二のシールリップ86を受けるよう変更された第二のシールリング82によって形成されうる。
図7および8は、側面シール部構成の組み合わせが、シールの空洞58内に一緒に実施される場合のさらなる代替の実施形態を示す。
【0021】
カラーがローラシャフトに圧入されない場合の既知のトラックローラおよびキャリアローラアセンブリでは、その代わり、カラーは、ローラシャフトおよびカラー内の貫通孔に挿入されるダウエルピンでローラシャフトに固定される。カラーは、ローラシャフト上を摺動可能なので、Oリングの溝がローラシャフトの外面またはカラーの内面に機械加工されず、Oリングが境界面を密閉するために取り付けられない場合、潤滑油がローラシャフトとカラーの間を漏出しうる。こうした構成および本明細書に記載の構成では、ブッシュのフランジ54とカラー内側端74との間の軸方向の隙間に厳格な管理を維持して、ローラシャフト40に沿ったトラックローラ32の軸方向の移動を最小化することが望ましい。シール部材64、68または負荷リング78、84がシール空洞表面70、72から係脱し、シールリング62、66が互いに係脱し、または他の分離が起こり、シールアセンブリ60を構成する場合、過度な軸方向の移動は、シールアセンブリ60での漏出をもたらしうる。ダウエルで固定されたトラックローラでは、ダウエル、カラー、トラックローラおよびフランジブッシュの内面を作製するためならびにローラシャフトおよびカラーに穴を機械加工する際の通常の累積公差で、
図3~8のシールアセンブリ60に対して要求される軸方向の隙間を実現不可能にしうる。
【0022】
シールアセンブリ60の構成要素の累積公差はさらに、信頼できるシールが形成できない可能性を増加させる。例えば、上述のダウエル構成では、累積公差は、製造された構成要素に対して通常の公差を使用して、およそ0.50mm(およそ0.01969インチ)~およそ1.50mm(およそ0.05906インチ)の範囲でブッシュのフランジ54とカラー内側端74との間の合計の軸方向の隙間を許容できる。トラックローラ32の構成要素の製造における公差に関するより厳格な管理は可能であるが、これらの構成要素へのこうした管理の利用は費用がかかる。
【0023】
図9は、ローラシャフト40に沿ってトラックローラ32の過度な、望まない軸方向の移動をすることなく潤滑油の流れのため、ブッシュのフランジ54に対してカラー42のカラー内側端74をより確実に位置づけて、その間に所望の軸方向の隙間を達成することができるトラックローラアセンブリルーチン100の実施形態を示す。トラックローラアセンブリルーチン100は、フランジブッシュ50がローラ内面44の対応する部分に圧入されるブロック102で開始してもよい。ブッシュ本体52は、ブッシュのフランジ54が、ローラ内面44のブッシュ係止肩部56によって係合されるまでローラ内面44の対応する部分に圧入される。
【0024】
フランジブッシュ50をブロック102で取り付けて、ルーチン100の管理は、シールアセンブリ60の側面シール部が、
図2~8に示すもの、または特定の実施形態で使用されうる他のシールアセンブリの配置などシールアセンブリ60の特定の構成に応じて、カラーシール空洞表面70および/またはローラシール空洞表面72内に取り付けられる、ブロック104に進むことができる。挿入されるとき、シール部材64、68または負荷リング78、84とシール空洞表面70、72との間の係合は、シールリング62、66、76、82をトラックローラ32およびカラー42とおよそ同心状に整列させて、ローラシャフト40およびカラー42の挿入を容易にする。
【0025】
側面シール部が、トラックローラ32および/またはカラー42内に取り付けられた後、管理はブロック106に進んでもよく、そこで、ローラシャフト40は、トラックローラ32のローラ内面44に挿入される。シャフト外面46とブッシュ本体52との間の径方向の隙間により、ローラシャフト40はトラックローラ32に滑り込むことができる。ローラシャフト40は、ローラシャフト40のシャフト端108がトラックローラ32の対応するローラ端110を越えて伸びるようにトラックローラ32に対して位置づけられる。この位置付けにより、カラー42をローラシャフト40に取り付けることが可能になる。
【0026】
ブロック112で、カラー42は、ローラシャフト40の対応するシャフト端108に取り付けられる。カラーの内面114のカラー内径は、シャフト外面46と締りばめを生成するよう寸法設定され、それにより、カラー42はローラシャフト40に圧入される必要がある。組み立てプロセスのこの時点で、カラー42は、カラー内側端74が対応するブッシュのフランジ54に隣接するまで軸方向内側に押し込まれ、それにより、
図10に示すように、カラー42とフランジブッシュ50との間に少しの軸方向の隙間も残さない。カラー42をフランジブッシュ50に隣接して、カラー42は、ブッシュのフランジ54からの軸方向の隙間を設けるその最終組み立て位置に対してローラシャフト40の軸方向内側に位置づけられる。その結果、例示の目的で、シャフト端108は、ローラシャフト40上のカラー42の位置を調節することに備えて、カラー42のカラー外側端116を越えて伸びてもよい。
【0027】
カラー42をローラシャフト40に取り付けると、管理は、圧縮軸荷重120が、
図11に示すようにローラシャフト40のシャフト端108に加えられるブロック118に進んでもよい。圧縮軸荷重120は、ローラシャフト40の長さを圧縮し、短くするのに十分な大きさである。カラー42は、フランジブッシュ50と係合して、カラー42の軸方向内側への移動が妨げられているので、ローラシャフト40が短くなるとき、シャフト外面46がカラーの内面114に対して摺動する。圧縮軸荷重120は、カラー内側端74とブッシュのフランジ54との間の特定の軸方向の隙間の距離のおよそ2倍に等しい長さだけローラシャフト40を圧縮する所望のシャフト圧縮荷重値を有する。例えば、カラー内側端74の一つと対応するブッシュのフランジ54との間の特定の軸方向の隙間の距離が、0.25mm(0.009843インチ)の場合、シャフト圧縮荷重値は、ローラシャフト40を二つのカラーからブッシュまでの軸方向の隙間となる0.50mm(0.01969インチ)圧縮するために必要な圧縮負荷であってもよい。図示の実施形態では、圧縮軸荷重120は、ローラ端110が対応するカラー外側端116と同じ高さになるまで、ローラシャフト40を圧縮するのに十分でありうる。代替の実施形態では、ローラ橋110の一つ以上が、ローラシャフト40が圧縮される前および後に、カラー外側端116を越えて伸びてもよい。圧縮荷重の大きさは、ローラシャフト40の長さおよび外形ならびにローラシャフト40を作っている材料、カラー内面114の内径およびローラシャフト40とカラー42の間の相対的な軸方向の移動に抵抗する面46と114の間の対応する摩擦力などの要因に基づいて変わる。
【0028】
ブロック118で、ローラシャフト40を圧縮し、カラー42に対して移動した後、アセンブリルーチン100の管理は、ブロック122に進んでもよく、そこでは、圧縮軸荷重120がローラシャフト40から取り除かれる。圧縮荷重がローラシャフト40から取り除かれるとき、ローラシャフト40は軸方向に伸び、圧縮軸荷重120が加えられる前の通常の長さに戻る。ローラシャフト40とカラー42の間の締りばめにより、トラックローラ32に対する軸方向外側への動きによりカラー42にかかる制約がなくなり、ローラシャフト40が伸びるとカラー42はローラシャフト40と共に移動し、それにより、ローラシャフト40が、軸方向に短くなっていた長さだけカラー42間の距離は増える。その結果、上記実施例では、ローラシャフト40がその通常の長さに戻った後、カラー42は、追加のおよそ0.50mm(およそ0.01969インチ)だけ離されるが、カラー外側端116は、シャフト端108と同じ高さのままである。
【0029】
カラー42の追加の分離は、ブッシュのフランジ54とカラー内側端74との間に軸方向の隙間をもたらし、それにより、隙間124(
図12に例示目的で誇張された距離で示す)が、カラー42とフランジブッシュ50との間に存在する。シャフト外面46とブッシュ本体52との間の径方向の隙間は、カラー42間の増えた分離に等しい長さだけトラックローラ32とローラシャフト40との間の相対的な軸方向の移動を可能にし、それにより、隙間124の幅は、一つのカラー内側端74が対応するブッシュのフランジ54に接触するときの分離していない状態から最大の増加した分離距離の間で変化する。もちろん、隙間124の距離は、トラックローラ32が無限軌道22を案内するためローラフレーム24の周りを動作すると、両極端の間で変化する。
【0030】
圧縮軸荷重120を取り除いて、ローラシャフト40がその通常の長さでカラー42が位置する場所に戻ると、管理はブロック126に進んでもよく、そこで、カラー42はそれぞれのシャフト端108に固定される。ローラシャフト40およびカラー42は、ローラシャフト40とカラー42の間の相対移動を防ぐため任意の適切な取り付け方法または機構を用いて固定されてもよい。例えば、コールドメタルトランスファー(CMT)、制御された短絡(CSC)、レーザまたは他の種類の溶接が使用されてもよい。代替で、スウェージリングなどの追加の接続構成要素が本アセンブリに含まれてもよい。圧縮軸荷重120が取り除かれたとき、確立される位置にカラー42を保持できる他の機構は、当業者に明らかになるであろうし、発明者が企図するものである。
【0031】
トラックローラ32、ローラシャフト40およびカラー42が組み立てられると、管理はブロック128に進んでもよく、そこで、ローラアセンブリは、潤滑油で満たされる。トラックローラ32は、トラックローラ32を貫通する潤滑油開口(図示せず)を含んで、潤滑油リザーバ48をトラックローラ32を囲む雰囲気に流体接続することができる。潤滑油は、潤滑油リザーバ48に潤滑油開口を通して追加することができ、潤滑油開口は、ねじ付きプラグ(図示せず)または他の適切な開閉機構で密閉される。潤滑油リザーバ48内の潤滑油は、フランジブッシュ50を越えてシールの空洞58に流れることができる。この時点では、ローラアセンブリは取り付け準備ができていて、管理はブロック160に進んでもよく、そこで、ローラシャフト40および/またはカラー42は、ローラフレーム24、台車34または他の支持構造体に搭載される。支持構造体にかかわらず、ローラシャフト40またはカラー42は、支持構造体に対する移動を防止するために固定される。同時に、トラックローラ32は、ローラシャフト40の周りを回転自在で、無限軌道22を案内する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
トラックローラ32、ローラシャフト40およびカラー42の構成および付随的なアセンブリルーチン100は、カラー42とフランジブッシュ50との間に軸方向の隙間に合うよりきつい公差を設ける。ローラシャフト40の圧縮および短縮は、圧入およびブッシュのフランジ54との係合後にカラー42間の追加の間隔距離に影響を及ぼす単なるパラメータなので、径方向の隙間の累積公差は、実質的に無視される。結果として、アセンブリのその他の構成要素、具体的には、シールアセンブリ60の構成要素に対する機械加工のプロセスは、シールの空洞58内のシールを維持するため公差の正確な管理として要求されない。その結果、アセンブリに対する機械費を大きく低減することができる。
【0033】
その構成はまた、一部の構成要素および対応する機械加工プロセス全体を除去する。ダウエルは、ローラシャフト40に対するカラー42の位置を保持するためには必要とされない。ダウエルが無い場合、ローラシャフト40およびカラー42にダウエルの穴を形成する機械加工プロセスは、製造プロセスから取り除かれる。追加で、シャフト外面46とカラー内面114との間の締りばめは、十分に潤滑油の漏出を防止することができる。その結果、Oリングシールおよび対応するOリングの溝に対する機械加工プロセスは、設計から取り除かれる。これらの減少は、ローラアセンブリの費用のさらなる低減をもたらしうる。
【0034】
前述の本文は、数多くの異なる実施形態の詳細な説明を記載したが、当然のことながら、保護の法律上の範囲は、本特許の最後に記載した特許請求の範囲の文言によって規定される。詳細な説明は、単なる例示と解釈されるべきであり、全ての可能な実施形態を説明することは、不可能ではないにしても、非現実的であることから、全ての可能な実施形態を説明することはしない。現在の技術か、または本特許の出願日以降に開発された技術のいずれかを使用して、数多くの代替の実施形態を実施することができるが、これも、保護の範囲を規定する特許請求の範囲に含まれる。
【0035】
用語が明示的に本明細書に規定されていない場合、その用語の意味を、明示的にまたは暗示によるどちらでも、その明白なまたは通常の意味を越えて制限することを意図しない、かつこうした用語は、本特許の任意の節においてなされたいずれの記述に基づいても範囲を制限すると解釈されるものではない(特許請求の範囲の言語を除いて)ことも理解されたい。本特許の最後の特許請求の範囲に記載される任意の用語が、一つの意味と一致する方法で本明細書で言及される程度に、単に読者を混乱させないように説明を明瞭にするため言及されるが、こうした請求項の用語は、その一つの意味に、含蓄的にまたはその他の方法で、制限されることを意図するものではない。
【符号の説明】
【0036】
1 マトリックス
2 導電性領域
3 絶縁性領域
4 皮膚
5a,5b 電極
6 エネルギ源
7 第1の面
8 第2の面