(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】導電性顔料ペースト、塗工材、及び塗工膜
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20220614BHJP
C09C 1/44 20060101ALI20220614BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20220614BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220614BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220614BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220614BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20220614BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220614BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C09D17/00
C09C1/44
C09D5/24
C09D7/63
C09D7/61
C09D201/00
H01B1/24 A
H01B13/00 Z
H01B5/14 Z
(21)【出願番号】P 2021152204
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2021-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】沖山 陽彦
(72)【発明者】
【氏名】北村 貴志
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-113347(JP,A)
【文献】特開平11-293165(JP,A)
【文献】特開2021-084945(JP,A)
【文献】有機合成化学,第28巻, 第12号,第1266-1271頁 (1970).
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00- 3/12
C09D 15/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)
、並びに重量平均分子量10万以上かつ溶解性パラメーターδDが9.3未満である皮膜形成樹脂(E)を含有し、
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有
し、
活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)が、イソシアネート化合物、アルコキシシラン化合物、活性水素基と反応してアシル基を形成するカルボン酸以外の化合物、エポキシ化合物、及びα,β不飽和カルボニル基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、
導電性顔料ペースト。
【請求項2】
顔料分散樹脂(A)が活性水素基として水酸基を含有する、請求項1に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項3】
顔料分散樹脂(A)の水酸基価が100mgKOH/g以上である、請求項2に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項4】
顔料分散樹脂(A)がポリビニルアルコール(a1)及び/又は変性ポリビニルアルコール(a2)を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項5】
ポリビニルアルコール(a1)及び/又は変性ポリビニルアルコール(a2)のけん化度が85mol%以上100mol%未満である、請求項
4に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項6】
カーボンナノチューブ(B-1)が、平均外径1nm以上25nm以下、平均長さ0.1μm以上100μm以下の多層カーボンナノチューブである、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項7】
平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)が、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、グラフェン、黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項8】
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと有機溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとが、0.6<|δA-δC|<2.0の関係である、請求項1~7のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項9】
有機化合物(D)の分子量が1000以下である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項10】
顔料分散樹脂(A)及び有機化合物(D)は、下記方法で測定される水酸基価変化率が5%以上の要件を満たす、請求項2~
9のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
<水酸基価変化率測定方法>
有機溶媒(C)8.45gに、顔料分散樹脂(A)0.10g、有機化合物(D)を顔料分散樹脂(A)の活性水素基の合計モル数に対して2.7倍モル(270%)加えて、100℃で1時間加熱する。その後、未反応の有機化合物(D)を除去し、JIS K 0070-1992に基づいて水酸基価測定を行う。
ブランクとして有機化合物(D)を加えない場合についても同様の手順で測定を行い、以下の式(1)により水酸基価変化率を算出する。
水酸基価変化率=(OHV0-OHV*)×100/OHV0 ・・・(1)
OHV0:有機化合物(D)を加えない場合の水酸基価
OHV*:有機化合物(D)を加えた場合の水酸基価
【請求項11】
顔料分散樹脂(A)の固形分含有量が、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として0.1質量%以上10質量%以下、かつ導電性顔料(B)の含有量を基準として0.1質量%以上20質量%以下である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項12】
導電性顔料(B)の含有量が、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として50.0質量%以上97.0質量%以下、かつ導電性顔料ペーストの総量を基準として3.0質量%以上35.0質量%以下である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項13】
顔料分散樹脂(A)の活性水素基の合計モル数を基準として、有機化合物(D)の反応性官能基濃度が1モル%以上50モル%以下の範囲内である、請求項1~
12のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項14】
活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)
、並びに重量平均分子量10万以上かつ溶解性パラメーターδDが9.3未満である皮膜形成樹脂(E)を含有する導電性顔料ペーストを製造する方法であり、
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有
し、
活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)が、イソシアネート化合物、アルコキシシラン化合物、活性水素基と反応してアシル基を形成するカルボン酸以外の化合物、エポキシ化合物、及びα,β不飽和カルボニル基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、
導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項15】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)及び有機溶媒(C)を含有する成分を分散処理した後、有機化合物(D)を加えてさらに混合することを特徴とする、請求項
14に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項16】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを含有する塗工材。
【請求項17】
さらに少なくとも1種の金属元素を有する金属含有粒子を含有する、請求項
16に記載の塗工材。
【請求項18】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストに、少なくとも1種の金属元素を有する金属含有粒子を添加する、塗工材の製造方法。
【請求項19】
請求項
16又は17に記載の塗工材を塗工して得られる導電性塗工膜。
【請求項20】
請求項
16又は17に記載の塗工材を板状基材の両面に塗工して得られる導電性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高顔料濃度においても、顔料分散性及び貯蔵安定性に優れる導電性顔料ペースト及び塗工材、並びに、仕上がり性などに優れる塗工膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料を顔料分散樹脂及び溶媒等の混合物中に分散させたペースト状の顔料分散体が、塗料、塗工材、コーティング材、電磁波シールド、ディスプレイパネル、タッチスクリーンパネル、着色フィルム、着色シート、化粧材、保護材、磁石改質材、印刷用インキ、デバイス部材、電子機器部材、プリント配線板、太陽電池、機能性ゴム部材、樹脂成形膜等の分野で広く用いられている。さらに、これらの材料に静電塗装性、導電性、電磁波シールド性、帯電防止性等の機能を付与するために導電性顔料や導電性高分子等を含有させている。
これらの分野では、顔料分散性、貯蔵安定性、塗工性、導電性、仕上がり性、耐溶剤性等の性能向上がますます要求されており、そのため、優れた顔料分散能力と、形成された顔料分散体中の顔料粒子を再凝集させないだけの優れた貯蔵安定性を有する顔料分散樹脂及び顔料ペーストの開発がなされつつある。
顔料ペーストの設計にあたっては、顔料分散樹脂が塗工膜等の最終製品そのものの導電性能に悪い影響を及ぼさないように、あるいは溶媒及び顔料分散樹脂の使用量を低減することや乾燥時の使用エネルギーを低減する観点から、少量の顔料分散樹脂で高濃度かつ均一に分散された顔料ペーストを作製することが重要となっている。
【0003】
特許文献1には、導電性材料としてのカーボンナノチューブおよびカーボンブラックを含むカーボン複合ペーストであって、水溶性キシラン水溶液に分散させたカーボンナノチューブ、およびアセトンに分散させたカーボンブラックを混合して混合液を作製し、ろ過により混合液から水溶性キシラン水溶液およびアセトンを分離することによって作製されるカーボン複合ペーストが記載されている。
特許文献2には、導電助剤として少なくとも2種以上の異なる炭素材料と、溶媒とを含有する導電助剤分散液であって、1種目の導電助剤が、平均一次粒子径20~50nm、BET比表面積300~1,400m2/g、平均分散粒子径280~1,500nm、2種目の導電助剤が、平均一次粒子径20~70nm、BET比表面積10~200m2/g、平均分散粒子径500~1,500nmであり、1種目の導電助剤と2種目の導電助剤との質量比が20~80:80~20である導電助剤分散液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/064708号
【文献】特開2019-61916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のカーボン複合ペーストは、乾燥してカーボン複合フィラーを作製した後に、樹脂材料と混練し加熱成型を行って導電性シートを作製するためのもので、顔料分散性や貯蔵安定性等について検討されておらず、塗工材として用いるものでもない。
特許文献2の導電助剤分散液は、比表面積が大きい炭素材料を20質量%以上含むために分散性が十分でない場合があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高顔料濃度においても顔料分散性に優れ適切な粘度(低い粘度)を有し、貯蔵安定性に優れ、塗膜の導電性が優れる導電性顔料ペースト及び塗工材を提供することである。さらに、仕上がり性などに優れる導電性塗工膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)、カーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有する導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、並びに活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)を含有する導電性顔料ペーストによって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の導電性顔料ペースト、塗工材、導電性塗工膜及び導電性材料を提供するものである。
【0008】
項1:活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、並びに活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)を含有し、
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有する導電性顔料ペースト。
項2:顔料分散樹脂(A)が活性水素基として水酸基を含有する、項1に記載の導電性顔料ペースト。
項3:顔料分散樹脂(A)の水酸基価が100mgKOH/g以上である、項2に記載の導電性顔料ペースト。
項4:顔料分散樹脂(A)がポリビニルアルコール(a1)及び/又は変性ポリビニルアルコール(a2)を含有する、項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項5:ポリビニルアルコール(a1)及び/又は変性ポリビニルアルコール(a2)のけん化度が85mol%以上100mol%未満である、項3に記載の導電性顔料ペースト。
項6:カーボンナノチューブ(B-1)が、平均外径1nm以上25nm以下、平均長さ0.1μm以上100μm以下の多層カーボンナノチューブである、項1~5のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項7:平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)が、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、グラフェン、黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種である、項1~6のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項8:顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと有機溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとが、0.6<|δA-δC|<2.0の関係である、項1~7のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項9:有機化合物(D)が、イソシアネート化合物、アルコキシシラン化合物、活性水素基と反応してアシル基を形成する化合物、エポキシ化合物、及びエチレン性不飽和基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1~8のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項10:有機化合物(D)の分子量が1000以下である、項1~9のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項11:顔料分散樹脂(A)及び有機化合物(D)は、下記方法で測定される水酸基価変化率が5%以上の要件を満たす、項2~10のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
<水酸基価変化率測定方法>
有機溶媒(C)8.45gに、顔料分散樹脂(A)0.10g、有機化合物(D)を顔料分散樹脂(A)の活性水素基の合計モル数に対して2.7倍モル(270%)加えて、100℃で1時間加熱する。その後、未反応の有機化合物(D)を除去し、JIS K 0070-1992に基づいて水酸基価測定を行う。
ブランクとして有機化合物(D)を加えない場合についても同様の手順で測定を行い、以下の式(1)により水酸基価変化率を算出する。
水酸基価変化率=(OHV0-OHV*)×100/OHV0 ・・・(1)
OHV0:有機化合物(D)を加えない場合の水酸基価
OHV*:有機化合物(D)を加えた場合の水酸基価
項12:顔料分散樹脂(A)の固形分含有量が、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として0.1質量%以上10質量%以下、かつ導電性顔料(B)の含有量を基準として0.1質量%以上20質量%以下である、項1~11のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項13:導電性顔料(B)の含有量が、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として50.0質量%以上97.0質量%以下、かつ導電性顔料ペーストの総量を基準として3.0質量%以上35.0質量%以下である、項1~12のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項14:顔料分散樹脂(A)の活性水素基の合計モル数を基準として、有機化合物(D)の反応性官能基濃度が1モル%以上50モル%以下の範囲内である、項1~13のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項15:さらに重量平均分子量10万以上、かつ溶解性パラメーターδDが9.3未満である皮膜形成樹脂(E)を含有する、項1~14のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項16:活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、並びに活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)を含有する導電性顔料ペーストを製造する方法であり、
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有する、導電性顔料ペーストを製造する方法。
項17:顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)及び有機溶媒(C)を含有する成分を分散処理した後、有機化合物(D)を加えてさらに混合することを特徴とする、項16に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項18:項1~15のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを含有する塗工材。
項19:さらに少なくとも1種の金属元素を有する金属含有粒子を含有する、項18に記載の塗工材。
項20:項1~15のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストに、少なくとも1種の金属元素を有する金属含有粒子を添加する、塗工材の製造方法。
項21:項18又は19に記載の塗工材を塗工して得られる導電性塗工膜。
項22:項18又は19に記載の塗工材を板状基材の両面に塗工して得られる導電性材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性顔料ペースト及び塗工材は、高顔料濃度においても顔料分散性に優れ適切な粘度(低い粘度)を有し、貯蔵安定性に優れ、塗膜の導電性が優れている。さらに、導電性塗工膜は、仕上がり性などに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
【0011】
本発明の「塗工材」は、導電性顔料ペーストを含んだ液状の組成物である。
本発明の「導電性塗工膜」は、前記塗工材を塗工して乾燥した固形状の組成物である。
本発明の「導電性材料」は、前記塗工材を板状基材の両面に塗工して得られるものである。
溶解性パラメーターとは、一般にSP値(ソルビリティ・パラメーター)とも呼ばれるものであって、溶媒や樹脂の親水性又は疎水性の度合い(極性)を示す尺度である。また、溶媒と樹脂、樹脂間の溶解性や相溶性を判断する上で重要な尺度となるものであり、溶解性パラメーターの値が近い(溶解性パラメーターの差の絶対値が小さい)と、一般的に溶解性や相溶性が良好となる。
本発明では、まず適度な分散状態の導電性顔料(B)を有する導電性顔料ペーストが調整される。さらに諸性能を満足する塗工膜を得るため、導電性顔料ペーストに金属含有粒子等の成分を追加して塗工材又は導電性材料が製造される。
【0012】
[導電性顔料ペースト]
本発明の導電性顔料ペーストは、活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、並びに活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)を含有し、導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有する導電性顔料ペーストである。
【0013】
<活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)>
活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)は、活性水素基を有し、顔料分散作用を有する樹脂であれば特に限定されない。
活性水素基としては、例えば、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、カルボキシル基、アミド基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基が挙げられる。
【0014】
樹脂としては、重量平均分子量10万以上、かつ溶解性パラメーターδDが9.3未満である皮膜形成樹脂(E)以外の樹脂であれば特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
なかでも、該ペースト又は塗工材から形成される導電性塗工膜の優れた導電性を低下させることなく、導電性塗工膜に十分な造膜性を付与する観点から、顔料分散樹脂(A)としては、下記式(1)の重合性不飽和基含有モノマーを含むモノマーを重合又は共重合することにより得られるビニル(共)重合体(A-1)を含有することが好ましい。尚、本発明の「(共)重合体」とは、1種類のモノマーを重合した重合体と2種以上のモノマーを共重合した共重合体の両方を含むものである。
C(-R)2=C(-R)2 ・・・式(1)
[上記式において、Rは、それぞれ同じでも異なってもよく、水素原子又は有機基である。]
【0015】
上記ビニル(共)重合体(A-1)としては、その構造中に「-CH2-CH(-X)-」で表される構造単位(ただし、Xは活性水素基又は活性水素基を含む有機基である。)を含むものが好ましい。上記ビニル(共)重合体(A-1)としては、例えば、水酸基含有ビニル(共)重合体、1級アミノ基及び/又は2級アミノ基含有ビニル(共)重合体、カルボキシル基含有ビニル(共)重合体、アミド基含有ビニル(共)重合体、スルホン酸基含有ビニル(共)重合体、リン酸基含有ビニル(共)重合体等が挙げられる。これらの(共)重合体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
水酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール-脂肪酸ビニル共重合体、ビニルアルコール-エチレン共重合体、ビニルアルコール-(N-ビニルホルムアミド)共重合体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。(共)重合体中のビニルアルコール単位は脂肪酸ビニル単位を(共)重合した後に加水分解して得られたものでも良い。
アミノ基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、アミノエチル(メタ)アクリレートとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体、メチルアミノエチル(メタ)アクリレートとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
カルボキシル基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸の重合体、又はポリ(メタ)アクリル酸とその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
アミド基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリルアミドの重合体、又は(メタ)アクリルアミドとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
スルホン酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、アリルスルホン酸又はスチレンスルホン酸等の重合体、アリルスルホン酸及び/又はスチレンスルホン酸とその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
リン酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェートの重合体、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェートとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0017】
上記ビニル(共)重合体(A-1)は、上記の「-CH2-CH(-X)-」で表される構造単位以外に、必要に応じて共重合可能な重合性不飽和基含有モノマー由来の構造単位を含んでいてもよい。共重合可能な重合性不飽和基含有モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、バレリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル等のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;メチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体;(メタ)アクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体又はビニリデン単量体;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;3-(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム基含有単量体;ビニルトリメトキシシラン、N-ビニルホルムアミド、メタアクリルアミド等が挙げられる。これらの単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
上記ビニル(共)重合体(A-1)の重合方法は、それ自体既知の重合方法で製造することができ、例えば溶液重合を用いることが好ましいが、これに限られるものではなく、バルク重合や乳化重合や懸濁重合等でもよい。溶液重合を行う場合には、連続重合でもよいしバッチ重合でもよく、単量体は一括して仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
溶液重合において使用する重合開始剤は、特に限定するものではないが、具体的には、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルパレロニトリル)等のアゾ化合物;アセチルパ
ーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物;ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカネート、α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリル等の公知のラジカル重合開始剤を使用できる。
重合反応温度は、特に限定するものではないが、通常30℃以上200℃以下程度の範囲で設定できる。
【0019】
このようにして得ることができるビニル(共)重合体(A-1)は、重合度が例えば100以上、好ましくは150以上であり、例えば4,000以下、好ましくは3,000以下、より好ましくは700以下である。
また、重量平均分子量としては、例えば1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは7,000以上であり、例えば200,000以下、好ましくは100,000以下、より好ましくは30,000以下である。
上記ビニル(共)重合体(A-1)は、合成終了後に脱溶媒及び/又は溶媒置換することで、固体又は任意の溶媒に置き換えた樹脂溶液にできる。
脱溶媒の方法としては、常圧で加熱により行ってもよいし、減圧下で脱溶媒してもよい。溶媒置換の方法としては、脱溶媒前、脱溶媒途中、又は脱溶媒後のいずれの段階で置換溶媒を投入してもよい。
【0020】
本発明においては、活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)が活性水素基として水酸基を含有することが好ましい。活性水素基として水酸基を含有する顔料分散樹脂(A)の水酸基価は、例えば100mgKOH/g以上、好ましくは300mgKOH/g以上、より好ましくは500mgKOH/g以上であり、例えば2000mgKOH/g以下、好ましくは1700mgKOH/g以下、より好ましくは1400mgKOH/g以下である。
【0021】
活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)は、顔料分散性を向上させる観点、及び導電性塗工膜の表面抵抗率を低減させる観点から、好ましくは水酸基含有ポリビニル(共)重合体を含有し、より好ましくはポリビニルアルコール(a1)及び/又は変性ポリビニルアルコール(a2)を含有する。ポリビニルアルコール(a1)及び/又は変性ポリビニルアルコール(a2)のけん化度は、特に限定されない。例えば70mol%以上、好ましくは80mol%以上、より好ましくは85mol%以上であり、例えば100mol%(完全ケン化物)以下であり、好ましくは100mol%未満である。
【0022】
(溶解性パラメーターδA)
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAとしては、顔料分散性、貯蔵安定性、及び溶媒との相溶性の観点から、例えば9.3以上、好ましくは10.0以上、より好ましくは11.0以上であり、例えば13.5以下、好ましくは13.0以下、より好ましくは12.5以下である。
樹脂の溶解性パラメーターは、当業者に公知の濁度測定法をもとに数値定量化されるものであり、具体的には、K.W.SUH、J.M.CORBETTの式(Journal of Applied Polymer Science,12,2359,1968)に準じて求めることができる。
顔料分散樹脂(A)が2種以上の場合の「顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδA」は、各樹脂の溶解性パラメーター値に質量分率を乗じたものを合計した値である。
【0023】
(顔料分散樹脂(A)の含有量)
顔料分散樹脂(A)の固形分含有量は、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、例えば10質量%以下、好ましくは7.5質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
また、顔料分散樹脂(A)の固形分含有量は、導電性顔料(B)の含有量を基準として、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、例えば20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0024】
<導電性顔料(B)>
導電性顔料(B)は、カーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有する。導電性顔料(B)は、さらに、カーボンナノチューブ(B-1)以外であり、平均粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)以外の、その他の導電性顔料(B-3)を含有していてもよい。
【0025】
(カーボンナノチューブ(B-1))
カーボンナノチューブ(B-1)としては、単層カーボンナノチューブ、又は多層カーボンナノチューブをそれぞれ単独で、又は組合せて使用できる。特に粘度、導電性及びコストの関係から、多層カーボンナノチューブを用いることが好ましい。
カーボンナノチューブ(B-1)の平均外径としては、例えば1nm以上、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上であり、例えば30nm以下、好ましくは25nm以下、より好ましくは20nm以下である。
カーボンナノチューブ(B-1)の平均長さとしては、例えば0.1μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、例えば100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下である。
カーボンナノチューブ(B-1)の比表面積としては、粘度及び導電性の関係から、例えば1m2/g以上、好ましくは10m2/g以上であり、例えば1000m2/g以下、より好ましくは500m2/g以下である。
【0026】
(平均粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2))
平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、グラフェン、黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種の導電性カーボンが挙げられる。好ましくは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックからなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは、アセチレンブラック、ケッチェンブラックからなる群より選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはアセチレンブラックの1種以上である。アセチレンブラックの1種以上とは、平均一次粒子径、BET比表面積、pH、DBP吸油量等の物性のいずれか1つ以上が異なるアセチレンブラックの1種以上を指す。
ここで、平均一次粒子径は、導電性カーボン(B-2)を電子顕微鏡で観察し、100個の粒子について、それぞれ投影面積を求めてその面積に等しい円を仮定したときの直径を求め、100個の粒子の直径を単純平均して求めた一次粒子の平均径をいう。なお、顔料が凝集状態になっていた場合は、凝集粒子を構成している一次粒子で計算をする。
【0027】
導電性カーボン(B-2)のBET比表面積は、特に限定されない。粘度及び導電性の関係から、例えば1m2/g以上、好ましくは10m2/g以上であり、より好ましくは20m2/g以上であり、例えば500m2/g以下、好ましくは250m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下である。
導電性カーボン(B-2)のジブチルフタレート(DBP)吸油量は、特に限定されない。顔料分散性及び導電性の関係から、例えば60ml/100g以上、好ましくは150ml/100g以上であり、例えば1,000ml/100g以下、好ましくは800ml/100g以下である。
【0028】
導電性カーボン(B-2)は、導電性の観点から、一次粒子が鎖状構造(ストラクチャー)を形成している状態が好ましい。ストラクチャー指数は、例えば1.5以上、好ましくは1.7以上であり、例えば4.0以下、好ましくは3.2以下である。
ストラクチャー自体は電子顕微鏡で撮影した画像でも比較的容易に観察できるが、ストラクチャー指数はストラクチャーの度合いを定量化した数値である。ストラクチャー指数は、一般的にDBP吸油量(ml/100g)を比表面積(m2/g)で割った値で定義できる。ストラクチャー指数が1.5未満であると、ストラクチャーが発達していないために、十分な導電性が得ることができないおそれがある。ストラクチャー指数が4.0を超えると、DBP吸油量に対して粒子径が大きいために導電経路が減少し、十分な導電性を示さなくなるか、又はペーストの粘度が高くなるおそれがある。
【0029】
(その他の導電性顔料(B-3))
導電性顔料(B)は、その他の導電性顔料(B-3)を含有していてもよい。その他の導電性顔料(B-3)は、カーボンナノチューブ(B-1)以外の導電性顔料であり、平均粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)以外の導電性顔料である。
その他の導電性顔料(B-3)としては、例えば、金属粉末、金属繊維、金属化合物及び導電性セラミックス等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。ここで、金属粉末、金属繊維及び金属化合物等における金属は、銅、銀、金、ニッケル、アルミニウム、チタン等からなる群より選ばれる1種以上の金属元素が挙げられる。
具体的には、銅、銀、金、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属粉末;アンチモンドープ酸化錫、リンドープ酸化錫等の種々の元素がドープされている金属化合物;酸化錫及び/又はアンチモンで表面被覆された針状酸化チタン、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、インジウム錫オキシド、カーボン又はグラファイトのウィスカー表面に酸化錫等を被覆した顔料、フレーク状のマイカ表面に酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性金属酸化物を被覆した顔料等の被覆顔料;二酸化チタン粒子表面に酸化錫及びリンを含む導電性を有する顔料;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0030】
その他の導電性顔料(B-3)の形状は、特に限定されない。例えば、粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカー含む)状の各種形状である。
その他の導電性顔料(B-3)のアスペクト比としては、特に限定されない。例えば、板状、針状、繊維状、棒状などのアスペクト比が高い形状が好ましい。なかでも、一次粒子のアスペクト比は、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましく、5.0以上であることが特に好ましい。
ここで、アスペクト比とは、三次元体の最短寸法に対する最長寸法の比のことである。アスペクト比の測定方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した顔料粒子の画像100個を任意に選び出し、画像解析により長短比を計算して平均した値である。
その他の導電性顔料(B-3)の形状が繊維状である場合、粘度及び導電性の関係から、平均繊維径が例えば1nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上であり、例えば1000nm以下、好ましくは500nm以下より好ましくは250nm以下である。平均繊維長としては、粘度及び導電性の関係から、例えば0.1μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、例えば50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
その他の導電性顔料(B-3)の形状が繊維状以外の形状である場合、平均粒子径(D50)としては、粘度及び導電性の関係から、例えば20nm以上、好ましくは33nm以上であり、例えば100nm以下、好ましくは70nm以下である。ここで、平均粒子径(D50)は、マイクロトラック粒度分布測定装置(MT3300、日機装社製)を用いることにより測定した値である。
【0031】
(導電性顔料(B)の組成)
導電性顔料(B)の組成は、特に限定されず、
(i)カーボンナノチューブ(B-1)のみで構成されたもの、
(ii)導電性カーボン(B-2)のみで構成されたもの、
(iii)カーボンナノチューブ(B-1)及び導電性カーボン(B-2)から構成されたもの、
(iv)カーボンナノチューブ(B-1)及びその他の導電性顔料(B-3)から構成されたもの、
(v)導電性カーボン(B-2)及びその他の導電性顔料(B-3)から構成されたもの、
(vi)カーボンナノチューブ(B-1)、導電性カーボン(B-2)及びその他の導電性顔料(B-3)から構成されたもの、
いずれでもよい。
(iii)の場合、カーボンナノチューブ(B-1)及び導電性カーボン(B-2)の固形分比率としては、好ましくはカーボンナノチューブ(B-1)/導電性カーボン(B-2)が1/99~99/1の範囲内である。
(iv)の場合、カーボンナノチューブ(B-1)及びその他の導電性顔料(B-3)の固形分比率としては、好ましくはカーボンナノチューブ(B-1)/その他の導電性顔料(B-3)が1/99~99/1の範囲内である。
(v)の場合、導電性カーボン(B-2)及びその他の導電性顔料(B-3)の固形分比率としては、好ましくは導電性カーボン(B-2)/その他の導電性顔料(B-3)が1/99~99/1の範囲内である。
(vi)の場合、カーボンナノチューブ(B-1)、導電性カーボン(B-2)及びその他の導電性顔料(B-3)の固形分比率としては、好ましくはカーボンナノチューブ(B-1)/導電性カーボン(B-2)/その他の導電性顔料(B-3)が1/1/98~1/98/1~1/1/98の範囲内である。
【0032】
(導電性顔料(B)の含有量)
導電性顔料(B)の固形分含有量は、導電性と顔料分散性の観点から、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、例えば50.0質量%以上、好ましくは55.0質量%以上、より好ましくは65.0質量%以上であり、例えば99.0質量%以下、好ましくは98.0質量%以下、より好ましくは97.0質量%以下である。
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)を含む場合の導電性顔料(B)の固形分含有量は、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、例えば50.0質量%以上、好ましくは55.0質量%以上、より好ましくは65.0質量%以上であり、例えば95.0質量%以下、好ましくは90.0質量%以下、より好ましくは85.0質量%以下である。
導電性顔料(B)が導電性カーボン(B-2)を含む場合の導電性顔料(B)の固形分含有量は、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、例えば60.0質量%以上、好ましくは64.0質量%以上、より好ましくは68.0質量%以上であり、例えば99.0質量%以下、好ましくは98.0質量%以下、より好ましくは97.0質量%以下である。
【0033】
<有機溶媒(C)>
本発明の導電性顔料ペーストで用いられる有機溶媒(C)は、顔料分散樹脂(A)と相溶性を有し、導電性顔料(B)を分散し得るものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等の炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n-ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール等の等のアルコール系溶剤;エクアミド(商品名、出光興産社製、アミド系溶剤)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができ、なかでも、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0034】
本発明の導電性顔料ペーストで用いることができる溶媒(C)は、活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)の溶解性及び導電性顔料ペーストの貯蔵安定性の観点から、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、エーテル基等の極性官能基を持つ溶媒を含有することが好ましい。
また、導電性顔料ペーストの顔料分散性や樹脂成分を変質又は加水分解させない観点から、実質的に水を含まないことが好ましい。ここで「実質的に水を含まない」とは、導電性顔料ペーストの全量を基準として、水の含有量が、通常1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であることをいう。
本発明において、導電性顔料ペーストの水の分含有量は、カールフィッシャー電量滴定法にて測定できる。具体的には、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業社製、商品名:MKC-610)を用い、該装置に備えられた水分気化装置(京都電子社製、商品名ADP-611)の設定温度は130℃として測定できる。
【0035】
また、活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)の溶解性及び導電性顔料ペーストの貯蔵安定性の観点から、溶媒(C)の溶解性パラメーター(SP値)が、10.0(cal/cm3)1/2以上であることが好ましく、例えば10.4(cal/cm3)1/2以上、好ましくは10.5(cal/cm3)1/2以上であり、例えば15.0(cal/cm3)1/2以下、好ましくは13.0(cal/cm3)1/2以下である。
【0036】
溶媒の溶解性パラメーターは、J.Brandrup及びE.H.Immergut編“Polymer Handbook” VII Solubility Parament Values,pp519-559(John Wiley& Sons社、第3版1989年発行)に記載される方法に従って求めることができる。2種以上の溶媒を組合せて混合溶媒として用いる場合、その混合溶媒の溶解性パラメーターは、実験的に求めることができ、また、簡便な方法として、個々の液状溶媒のモル分率と溶解性パラメーターとの積の総和により求めることもできる。
本発明の「溶媒(C)の溶解性パラメーター」とは、導電性顔料ペーストに含まれる全ての溶媒(混合溶媒)の溶解性パラメーターのことである。
【0037】
有機溶媒(C)の含有量は、導電性顔料ペーストの総量を基準として、例えば40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、例えば95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
【0038】
<活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)>
本発明の導電性顔料ペーストで用いられる活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)は、活性水素基との反応性を有する基を1つ以上有する有機化合物であれば特に限定されない。
活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び有機溶媒(C)を用いて作製された導電ペーストは、分散性が良好であるが、経時粘度安定性が不十分である。特に、活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)における活性水素基の官能基濃度が高いほど、この傾向は顕著である。これは、活性水素基が顔料の分散に寄与する一方で、水素結合等によって顔料分散樹脂(A)同士がネットワークを形成するためと推測される。このため、活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)を導電ペーストに添加し、活性水素基との反応性を有する基と活性水素基を反応させることで、顔料分散樹脂(A)同士の相互作用が軽減され、経時粘度安定性が向上すると推測している。なお、本発明は、この推測に限定されるものではない。
【0039】
活性水素基との反応性を有する基としては、例えば、イソシアネート基、アルコキシシラン基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸アンヒドリド基、エポキシ基、アジリジニル基、オキザゾリン基、カルボジイミド基、アルデヒド基、エチレン性不飽和基(ビニル基、α,β不飽和カルボニル基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、不飽和カルボニル基等)、アリル基等)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)としては、例えば、イソシアネート化合物、アルコキシシラン化合物、活性水素基と反応してアシル基を形成する化合物、エポキシ化合物、及びエチレン性不飽和基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)の分子量は、特に限定されないが、例えば1000以下、好ましくは800以下、より好ましくは600以下であり、例えば10以上、好ましくは50以上、より好ましくは100以上である。
活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)は、その一部が活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)とペースト内で反応する。その後、導電性顔料ペースト又は塗工材を塗布し、加熱乾燥等により溶媒を除去した際に、有機化合物(D)の未反応物が導電性塗工膜又は導電性材料にできる限り残留しないものであることが好ましい。
【0041】
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物は、イソシアネート基を1つ以上有する化合物であれば、特に限定されない。例えば、モノイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0042】
モノイソシアネートとしては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、n-ブチルモノイソシアネート、n-ヘキシルモノイソシアネート、n-ヘキサデシルモノイソシアネート、n-オクタデシルモノイソシアネート、p-イソプロピルフェニルモノイソシアネート、p-ベンジルオキシフェニルモノイソシアネート、アディティブTI(住友バイエルウレタン株式会社製、商品名)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0043】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0044】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0045】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-もしくは1,4-キシリレ
ンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0046】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート、例えば、ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0047】
イソシアネートの誘導体としては、例えば、ポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0048】
本発明においては、イソシアネート化合物としては、反応制御等の観点から、モノイソシアネートであることが好ましい。
【0049】
(アルコキシシラン化合物)
アルコキシシラン化合物は、アルコキシ基を1つ以上有するシラン化合物であれば、特に限定されない。例えば、
式(I):RaSi(OR’)4-a(式中、Rは有機基を、R’は炭素数1~6のアルキル基、aは0、1、2又は3である。)
で表されるアルコキシシラン化合物、及び、
式(II):(R’O)3-bRbSi-R’’-SiRc(OR’)3-c(式中、Rは有機基を、R’は炭素数1~6のアルキル基、R’’は炭素数1~20の2価の有機基、bは0、1又は2である。)
で表されるビスアルコキシシラン化合物からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0050】
式(I)で表されるアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシランからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等からなる群より選ばれる1種以上のテトラアルコキシシラン;例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等からなる群より選ばれる1種以上のアルキルトリアルコキシシラン;例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等からなる群より選ばれる1種以上のジアルキルジアルコキシシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン等からなる群より選ばれる1種以上のトリアルキルアルコキシシラン;からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0051】
式(II)で表されるアルコキシシラン化合物としては、例えば、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン等からなる群より選ばれる1種以上のビス(アルコキシシリル)アルカン;1,4-ビス(アルコキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(アルコキシシリルアルキル)ベンゼン等からなる群より選ばれる1種以上の芳香族化合物;1,2-ビス(アルコキシシリル)エチレンオキシド、1,3-ビス(アルコキシシリル)プロピレンオキシド等からなる群より選ばれる1種以上のアルキレンオキサイド化合物;1,3-ビス(アルコキシシリル)シクロブタン、1,3-ビス(アルコキシシリルアルキル)シクロブタン、1,4-ビス(アルコキシシリル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アルコキシシリルアルキル)シクロヘキサン等からなる群より選ばれる1種以上の脂環式化合物等が挙げられる。
【0052】
(活性水素基と反応してアシル基を形成する化合物)
活性水素基と反応してアシル基を形成する化合物としては、有機化学分野においてアシル化剤として知られている化合物等が挙げられる。
例えば、カルボン酸ハライド化合物、カルボン酸アンヒドリド化合物、ケテン化合物からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
カルボン酸ハライド化合物又はカルボン酸アンヒドリド化合物を形成するカルボン酸としては、特に限定されない。例えば、炭素数1~20のカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、安息香酸、マレイン酸、フタル酸等)からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
ケテン化合物としては、ケテン、ジケテン、アルデヒドケテン及びケトケテンからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0053】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ基(グリシジル基)を1つ以上有する化合物であれば特に限定されない。
例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ビスフェノール系エポキシ樹脂などのエポキシ基含有化合物からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0054】
(エチレン性不飽和基含有化合物)
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、ビニル基、α,β不飽和カルボニル基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、不飽和カルボニル基等)、アリル基等のエチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。
【0055】
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、(o,m,p-)ヒドロキシスチレン、α-メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ジビニルベンゼン等のスチレン系化合物;酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピリジン、N-ビニルカプロラクタム、シクロヘキシルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、アセトキシエチルビニルエーテル、アセトキシブチルビニルエーテル、アセチルシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、アセチルジエチレングリコールモノビニルエーテル、グリシジロキシエチルビニルエーテル、グリシジロキシブチルビニルエーテル、グリシジルシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル及びグリシジルジエチレングリコールモノビニルエーテル等のビニル系化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等の(メタ)アクリレート系化合物;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物;アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシエチルマレイミド、N-ヒドロキシエチルシトラコイミド等の不飽和カルボン酸系化合物又はその変性物;アリルアルコール、ジアリルエーテル、ハロゲン化アリル、アリルスルホン酸等のアリル系化合物;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0056】
(カルボジイミド化合物、アジリジニル基含有化合物、オキサゾリン化合物)
活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)は、カルボジイミド化合物、アジリジニル基含有化合物、オキサゾリン化合物等からなる群より選ばれる1種以上であってもよい。
カルボジイミド化合物としては、例えば、ジシクロヘキシルカルポジイミド、ジイソプロピルカルポジイミド、ポリカルボジイミド化合物(日清紡ケミカル社製、商品名カルボジライト)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
アジリジニル基含有化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(2-アジリジニルプロピオネート)、1・1′-(4-メチル-m-フェニレン)-ビス-3・3-アジリジニル尿素、1・1′-(ヘキサメチレン)-ビス-3・3-アジリジニル尿素、エチレンビス(2-アジリジニルプロピオネート)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
オキサゾリン化合物としては、例えば、オキサゾリン、ビスオキサゾリン化合物、オキサゾリン基含有ポリマー(日本触媒社製、商品名エポクロス)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0057】
活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)の固形分含有量は、導電性と顔料分散性の観点から、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、例えば0.10質量%以上、好ましくは0.20質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上であり、例えば1.0質量%以下、好ましくは0.80質量%以下、より好ましくは0.60質量%以下である。
また、顔料分散樹脂(A)の活性水素基の合計モル数を基準として、有機化合物(D)の反応性官能基濃度は、例えば1モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、例えば50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0058】
<皮膜形成樹脂(E)>
本発明の導電性顔料ペーストは、重量平均分子量10万以上、かつ溶解性パラメーターδDが9.3未満である皮膜形成樹脂(E)をさらに含有していてもよい。皮膜形成樹脂(E)は、重量平均分子量及び溶解性パラメーターに係る要件を満たし、顔料分散樹脂(A)とは異なる樹脂であり、活性水素基を実質的に含有していない低極性の樹脂であれば特に限定されない。皮膜形成樹脂(E)の活性水素基濃度としては、例えば10mmol/g未満であり、好ましくは5mmol/g未満であり、より好ましくは1mmol/g未満である。
皮膜形成樹脂(E)としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びこれらの複合樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
本発明においては、フッ素系樹脂が好ましく、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。特に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の1種以上が好ましい。
皮膜形成樹脂(E)は、導電性顔料ペーストを用いて導電性塗工膜又は導電性材料を形成した際に、皮膜形成に寄与する成分である。
【0059】
皮膜形成樹脂(E)の重量平均分子量としては、特に限定されない。基材との密着性、塗膜物性の補強、及び耐溶剤性の観点から、例えば10万以上であり、好ましくは50万以上であり、より好ましくは65万以上であり、例えば300万以下であり、好ましくは200万以下である。
皮膜形成樹脂(E)の溶解性パラメーターとしては、10未満であることが好ましく、9.3未満であることがより好ましい。
【0060】
皮膜形成樹脂(E)の固形分含有量は、導電性と顔料分散性の観点から、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、例えば1質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、例えば60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0061】
<その他の成分(F)>
本発明の導電性顔料ペーストは、活性水素を有する顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)、皮膜形成樹脂(E)の他に、必要に応じて、その他の成分(F)を含有していてもよい。
その他の成分(F)としては、顔料分散樹脂(A)及び皮膜形成樹脂(E)以外の樹脂、pH調整剤、中和剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、導電性顔料(B)以外の顔料等を挙げることができる。
【0062】
導電性顔料(B)以外の顔料としては、例えば、チタン白、亜鉛華等の白色顔料;シアニンブルー、インダスレンブルー等の青色顔料;シアニングリーン、緑青等の緑色顔料;アゾ系やキナクリドン系等の有機赤色顔料、ベンガラ等の赤色顔料;ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系及びキノフタロン系等の有機黄色顔料、チタンイエロー、黄鉛等の黄色顔料等が挙げられる。これらの顔料は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの導電性顔料(B)以外の顔料は、導電性を大きく損なわない範囲内で色調整や膜の物性補強等の目的で使用することができ、顔料分散樹脂(A)と導電性顔料(B)と共に同時に分散してもよく、また、顔料分散樹脂(A)と導電性顔料(B)を分散してペーストを作成した後に顔料又は顔料ペーストとして混ぜても良い。
上記導電性顔料(B)及びカーボンナノチューブ(F)以外の顔料の含有量としては、導電性顔料ペースト中の全顔料を基準として、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
【0063】
<導電性顔料ペーストの特徴等>
(SP値差)
本発明の導電性顔料ペーストにおいて、顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと有機溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとの差の絶対値|δA-δC|は、例えば0.8を超え、好ましくは0.6を超えるものであり、例えば2.5未満、好ましくは2.0未満である。これにより、顔料分散樹脂(A)の有機溶媒に対する溶解性が良好となり、分散性及び貯蔵安定性を向上させることが可能となる。
また、本発明の導電性顔料ペーストが皮膜形成樹脂(E)を含む場合において、皮膜形成樹脂(E)の溶解性パラメーターδEと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとの差の絶対値|δE-δC|は、例えば3.0未満であり、好ましくは0以上、より好ましくは0.1以上であり、好ましくは2.8以下、より好ましくは2.5以下である。これにより、皮膜形成樹脂(E)の有機溶媒に対する溶解性が良好となり、分散性及び貯蔵安定性を向上させることが可能となる。
【0064】
(水酸基価変化率)
本発明の導電性顔料ペーストにおいて、顔料分散樹脂(A)及び有機化合物(D)は、下記方法で測定される水酸基価変化率が5%以上の要件を満たすことが好ましい。より好ましくは15%以上、さらに好ましくは25%以上であり、より好ましくは100%以下、さらに好ましくは95%以下である。
<水酸基価変化率測定方法>
有機溶媒(C)8.45gに、顔料分散樹脂(A)0.10g、有機化合物(D)を顔料分散樹脂(A)の活性水素基の合計モル数に対して2.7倍モル(270%)加えて、100℃で1時間加熱する。その後、未反応の有機化合物(D)を除去し、JIS K 0070-1992に基づいて水酸基価測定を行う。
ブランクとして有機化合物(D)を加えない場合についても同様の手順で測定を行い、以下の式(1)により水酸基価変化率を算出する。
水酸基価変化率=(OHV0-OHV*)×100/OHV0 ・・・(1)
OHV0:有機化合物(D)を加えない場合の水酸基価
OHV*:有機化合物(D)を加えた場合の水酸基価
【0065】
(粘度)
本発明の導電性顔料ペーストの粘度は、顔料分散性や貯蔵安定性などの観点から、せん断速度0.1s-1での粘度が、例えば5000mPa・s未満であり、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは50mPa・s以上、さらに好ましくは100mPa・s以上であり、好ましくは5000mPa・s未満、より好ましくは2500mPa・s未満、さらに好ましくは1000mPa・s未満である。
粘度の測定は、例えば、コーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名Mars2、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用いて測定する事ができる。
【0066】
[導電性顔料ペーストを製造する方法]
本発明の導電性顔料ペーストを製造する方法は、特に限定されない。活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)、カーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有する導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、並びに活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)、必要に応じて皮膜形成樹脂(E)及び必要に応じてその他の成分(F)を同時又は任意の順序で混合して、分散処理する工程を備えることが好ましい。
例えば、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)及び有機溶媒(C)を含有する成分を分散処理した後、有機化合物(D)を加えてさらに混合する方法が挙げられる。この場合、活性水素基量が多い状態で効率よく分散でき、さらに分散後に分散に寄与していない活性水素基が有機化合物(D)と反応することで樹脂間の相互作用が軽減されて経時粘度安定性が向上するため、特に好ましい。
例えば、活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)、カーボンナノチューブ(B-1)を含有する導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、並びに活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)を同時又は任意の順序で混合して、分散処理してカーボンナノチューブ分散液を形成する工程と、活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)、平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有する導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、並びに活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)を同時又は任意の順序で混合して、分散処理して導電性カーボン分散液を得る工程と、カーボンナノチューブ分散液と導電性カーボン分散液とを混合する工程とを備える方法が挙げられる。
【0067】
導電性顔料ペーストの製造に際しては、導電性顔料ペーストに含まれる各成分を、例えば、ディスパー、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、LMZミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、二軸混練機、薄膜旋回型高速ミキサー(商品名:クレアミックス、フィルミックス等)等の撹拌機又は分散機を用いて均一に混合又は分散させる工程を有することが好ましい。
【0068】
[塗工材・塗工材の製造方法]
<塗工材>
本発明の塗工材は、上記の導電性顔料ペーストを含有する。好ましくは、さらに少なくとも1種の金属元素を有する金属含有粒子を含有する。本発明の塗工材は、さらに必要に応じて、上記[導電性顔料ペースト]における<その他の成分(F)>で記載した成分を含有していてもよい。
【0069】
(金属含有粒子)
本発明の塗工材に含まれていてもよい金属含有粒子は、塗工材の製造工程で導電性顔料ペーストと混合するものであり、前述した導電性顔料ペーストに含有される導電性顔料(B)とは異なる。また、金属含有粒子は、導電性塗工膜の導電性や塗膜物性等の観点から、少なくとも1種の金属元素を有する金属含有粒子であることが好ましく、なかでも、Fe、Cu、Mn、Ni、Zr、Zn、Mo、Ag、Au、Pt、Ti、Cr、Moから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を有する金属含有粒子を含有することが好ましい。上記金属元素としては、金属単体の電気伝導率(20℃)が9×106S/m以上の金属元素を含有することが好ましく、12×106S/m以上がより好ましく、14×106S/m以上がさらに好ましい。
金属含有粒子としては、1種類の金属元素を有する金属でも複数の金属元素を有する複合金属でもよく、また、これらの窒化物、酸化物、硫化物、及び/又は水酸化物においても好適に用いることができる。
【0070】
金属含有粒子の平均粒子径としては、塗工材を溶媒で希釈し、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる平均粒子径(D50)において、例えば1,501nm以上が好ましく、例えば1,600nm以上、好ましくは2,000nm以上であり、例えば50,000nm以下、好ましくは30,000nm以下である。
塗工材中の金属含有粒子の含有量は、塗工材中の固形分総量を基準として、通常10質量%以上、かつ99質量%以下、好ましくは15質量%以上、かつ95質量%以下であることが、導電性や塗膜物性等の面から好適である。
塗工材中の顔料分散樹脂(A)の含有量は、特に限定されない。顔料分散時の粘度、顔料分散性、貯蔵安定性、生産効率、及び導電性等の観点から、塗工材中の固形分総量を基準として、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.08質量%以上であり、例えば80質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
導電性顔料(B)100質量部に対する顔料分散樹脂(A)の含有量としては、固形分総量を基準として、例えば0.01質量部以上、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、例えば400質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下、特に好ましくは4.5質量部以下である。
【0071】
<塗工材の製造方法>
本発明の塗工材の製造方法は、特に限定されない。例えば、導電性顔料ペーストをそのまま塗工材としてもよく、必要に応じて有機溶媒を除去又は加えてもよい。有機溶媒としては、特に制限はないが、[導電性顔料ペースト]の<有機溶媒(C)>に記載したものと同様の有機溶媒を用いることができる。
本発明の塗工材の製造方法は、導電性顔料ペーストに、少なくとも1種の金属元素を有する金属含有粒子を添加する工程を有することが好ましい。
【0072】
塗工材の製造に際しては、導電性顔料ペーストと、溶媒や金属含有粒子等を、例えば、ディスパー、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、LMZミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、二軸混練機、薄膜旋回型高速ミキサー等の従来公知の撹拌機又は分散機を用いて均一に混合又は分散させる工程を有することが好ましい。特に、実質的にメジアを用いずに分散する工程を有することがより好ましい。
【0073】
[導電性塗工膜・導電性材料]
本発明の導電性塗工膜は、前述の塗工材を被塗物に塗布(塗工)することで得ることができる。
本発明の導電性材料は、前述の塗工材を板状基材の両面に塗布(塗工)することで得ることができる
本発明において、導電性塗工膜とは、液状の塗工材を被塗物(基材)に塗布して加熱乾燥した固形状の膜のことであり、被塗物から剥がして導電性フィルムを得ることや、板状被塗物(基材)の両面に塗工して導電性材料を得ることもできる。
被塗物の形状等は特に限定されるものではなく、例えば、板状、棒状、フィルム状、球状等の任意の形状が挙げられる。
被塗物又は板状基材の材質は特に限定されるものではなく、例えば、金属材;各種プラスチック材;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。
被塗物又は板状基材は、必要に応じて、塗工面を脱脂処理、表面処理等してもよい。
【0074】
塗布方法としては、一定の膜厚範囲内で塗布できるものであれば特に限定されず、例えば、ローラー塗装、刷毛塗装、霧化塗装、ディッピング塗装、アプリケーター塗装、シャワーコート塗装、ロールコーター塗装、ダイコーター塗装等が挙げられる。
膜厚としては、乾燥膜厚で、例えば1μm以上、好ましくは2μm以上であり、例えば200μm以下、好ましくは150μm以下である。
乾燥温度としては、例えば60℃以上、好ましくは80℃以上であり、例えば300℃以下、好ましくは200℃以下である。
加熱乾燥することにより、塗工材に含まれる溶媒が80%以上消失することが好ましく、90%以上消失することがより好ましく、95%以上消失することが特に好ましい。
また、活性水素との反応性を有する有機化合物(D)は、反応や消失等により少なくとも一部が消失していることが好ましい。
【実施例】
【0075】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に記載がない場合、各例中の「部」は質量部、「%」は「質量%」を示す。
【0076】
[導電性顔料ペーストの製造]
<実施例1~44及び比較例1~6>
表1に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、有機化合物(D)、及び皮膜形成樹脂(E)を、それぞれ表1に記載される量(質量部)で混合した。続いて超高速ホモジナイザー(プライミクス(株)社製:商品名フィルミックス)にて分散処理を600パス行い、導電性顔料ペーストX-1~X-20を得た。
表2に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、有機化合物(D)、及び皮膜形成樹脂(E)を、それぞれ表2に記載される量(質量部)で混合し、続いてボールミルにて5時間分散し、導電性顔料ペーストX-21~X-40を得た。
表3に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、及び皮膜形成樹脂(E)を、それぞれ表3に記載される量(質量部)で混合した。続いて実施例35~39では超高速ホモジナイザー(プライミクス(株)社製:商品名フィルミックス)にて分散処理を600パス行い、実施例40~44ではボールミルにて5時間分散を行った。得られたペーストにそれぞれ表3に記載した種類及び量の有機化合物(D)を添加して混合し、導電性顔料ペーストX-41~X-50を得た。
【0077】
導電性顔料ペーストX-1~X-50について、顔料分散樹脂(A)と有機溶媒(C)との溶解性パラメーター差、水酸基価変化率及び評価(粘度、貯蔵安定性、及び導電性)を表1~表3にあわせて記載する。
なお、導電性顔料ペーストX-1~X-39の水分含有量を、カールフィッシャー電量滴定法にて測定したが、全て0.1質量%以下であった。
【0078】
本発明においては、評価試験における全項目の性能に優れていることが重要であり、いずれか1つに「C」の評価がある場合、その導電性顔料ペーストは不合格となる。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
[導電性樹脂ペーストの構成成分]
<顔料分散樹脂(A)>
A1:ポリビニルアルコール(けん化度97mol%、SP値:12.4、水酸基価:1202mgKOH/g、重量平均分子量:15,000)
A2:カルボン酸変性ポリビニルアルコール(けん化度90mol%、SP値:12.5、水酸基価:1078mgKOH/g、カルボキシル基濃度:2.1mmol/g、重量平均分子量:17,000)
A3:ポリビニルアルコール(けん化度70mol%、SP値:11.2、水酸基価:700mgKOH/g、重量平均分子量:19,000)
A4:ポリビニルアルコール(けん化度60mol%、SP値:10.8、水酸基価:553mgKOH/g、重量平均分子量:20,000)
A5:ポリビニルピロリドン(SP値:12.8、重量平均分子量:10,000)
A6:ポリメタクリル酸メチル(SP値:9.23、重量平均分子量:21,000)
【0083】
<導電性顔料(B)>
B1:カーボンブラック(アセチレンブラック、平均一次粒子径:20nm)
B2:カーボンナノチューブ(多層、平均外径:9nm、平均長さ:20μm)
【0084】
<有機溶媒(C)>
C1:N-メチル-2-ピロリドン(SP値:11.2)
C2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.4)
【0085】
<有機化合物(D)>
D1:n-ヘキシルモノイソシアネート(イソシアネート化合物、分子量127)
D2:メチルトリメトキシシラン(アルコキシシラン化合物、分子量136)
D3:塩化ベンゾイル(アシル化剤、分子量140.5)
D4:無水安息香酸(アシル化剤、分子量226)
D5:アクリルアミド(エチレン性不飽和基含有化合物、分子量71)
D6:酢酸(分子量60)
【0086】
<皮膜形成樹脂(E)>
PVDF:ポリフッ化ビニリデン(重量平均分子量:80万、溶解性パラメーターδD:9.1)
【0087】
[溶解性パラメーター差|δA-δC|]
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとの関係|δA-δC|は、顔料分散樹脂(A)のδAであるSP値から溶媒(C)のSP値を引いた値の絶対値であって、下記の式により算出した。
|δA-δC|=|顔料分散樹脂(A)のSP値-溶媒(C)のSP値|
【0088】
[水酸基価変化率]
有機溶媒(C)8.45gに、顔料分散樹脂(A)0.10g、有機化合物(D)を顔料分散樹脂(A)の活性水素基の合計モル数に対して2.7倍モル(270%)加えて、100℃で1時間加熱する。その後、未反応の有機化合物(D)を除去し、JIS K 0070-1992に基づいて水酸基価測定を行った。
ブランクとして有機化合物(D)を加えない場合についても同様の手順で測定を行い、以下の式(1)により水酸基価変化率を算出する。
(OHV0-OHV*)×100/OHV0 ・・・(1)
OHV0:有機化合物(D)を加えない場合の水酸基価
OHV*:有機化合物(D)を加えた場合の水酸基価
S:水酸基価変化率が25%以上である。
A:水酸基価変化率が15%以上25%未満である。
B:水酸基価変化率が5%以上15%未満である。
C:水酸基価変化率が5%未満である。
【0089】
[評価試験]
<粘度>
得られた導電性顔料ペーストについて、コーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名:Mars2、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用い、せん断速度1.0sec-1で粘度を測定し、下記基準により評価した。評価としては、S、A及びBが合格で、Cが不合格である。
S:粘度が、1.0Pa・s未満である。
A:粘度が、1.0Pa・s以上、かつ2.0Pa・s未満である。
B:粘度が、2.0Pa・s以上、かつ5.0Pa・s未満である。
C:粘度が、5.0Pa・s以上である。
【0090】
<貯蔵安定性>
得られた顔料分散ペーストを50℃の温度で1ヶ月貯蔵を行い、初期粘度と貯蔵後の粘度の比較を行なった。粘度は、コーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名:Mars2、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用い、せん断速度1.0s-1で測定した。下記の式(2)により求められた粘度上昇率に基づき貯蔵安定性を評価した。評価としては、S、A及びBが合格で、Cが不合格である。
粘度上昇率(%)=貯蔵後粘度/初期粘度×100-100 ・・・(2)
S:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、30%未満である。
A:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、30%以上、かつ100%未満である。
B:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、100%以上、かつ200%未満である。
C:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、200%以上である。
【0091】
<導電性>
ガラス板(2mm×100mm×150mm)へ塗工材をドクターブレード法にて塗工して、130℃で30分加熱乾燥した。得られた塗工膜について、膜厚を測定した後、四探針プローブ(三菱ケミカル社製、PSP)を用いて、ソースメータ(ケースレー社製、2400)により抵抗を測定した。塗工膜の膜厚と抵抗値を乗じて求められた体積抵抗率に基づき、導電性を評価した。評価としては、S、A及びBが合格で、Cが不合格である。
S:体積抵抗率が、10Ω・cm未満であり、導電性は非常に良好である。
A:体積抵抗率が、10Ω・cm以上15Ω・cm未満であり、導電性は良好である。
B:体積抵抗率が、15Ω・cm以上20Ω・cm未満であり、導電性は普通である。
C:体積抵抗率が、20Ω・cm以上であり、導電性は劣る、又は平滑性のある塗工膜が作成できなかった。
【0092】
[応用例]
<塗工材、導電性塗工膜及び導電性材料の製造>
実施例1~44で得られた導電性顔料ペースト100部に、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドンを50部、及び、少なくとも1種の金属元素を有する金属含有粒子として酸化亜鉛粒子(平均粒子径:1μm、亜鉛の電気伝導率:16.8×106S/m)を20部加え、ディスパーを用いて60分間混合攪拌し、応用例Y-1~Y-34となる塗工材Y-1~Y-44を得た。
続いて、リン酸亜鉛処理剤(日本パーカライジング社製、商品名パルボンド#3020)による化成処理を施した冷延鋼板(150mm(縦)×70mm(横)×0.8mm(厚))を被塗物として、上記塗工材Y-1~Y-34をアプリケーターで乾燥膜厚5μmになるように塗工し、150℃の温度で40分乾燥し、応用例Z-1~Z-44となる塗工膜Z-1~44を得た。
得られた塗工膜Z-1~Z-34は、いずれも残存溶媒量が1%未満であり、仕上がり性などが良好な塗工膜であった。
【要約】
【課題】高顔料濃度においても顔料分散性に優れ適切な粘度(低い粘度)を有し、貯蔵安定性に優れ、塗膜の導電性が優れる導電性顔料ペースト及び塗工材を提供すること。さらに、仕上がり性などに優れる導電性塗工膜を提供すること。
【解決手段】活性水素基を有する顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、有機溶媒(C)、並びに活性水素基との反応性を有する有機化合物(D)を含有し、導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有する導電性顔料ペースト。
【選択図】なし