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特許7089102事故分析装置、事故分析方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】事故分析装置、事故分析方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20220614BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20220614BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220614BHJP
   H04N 5/77 20060101ALI20220614BHJP
   H04N 5/76 20060101ALI20220614BHJP
   G06F 16/9032 20190101ALI20220614BHJP
   G06F 16/907 20190101ALI20220614BHJP
   G06Q 40/08 20120101ALI20220614BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20220614BHJP
   G16Y 10/50 20200101ALI20220614BHJP
   G16Y 20/10 20200101ALI20220614BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20220614BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20220614BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G07C5/00 Z
H04N5/232 290
H04N5/77
H04N5/76
G06F16/9032
G06F16/907
G06Q40/08
G16Y10/40
G16Y10/50
G16Y20/10
G16Y20/20
G16Y40/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021174919
(22)【出願日】2021-10-26
【審査請求日】2021-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595140170
【氏名又は名称】東京海上日動火災保険株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】100209794
【弁理士】
【氏名又は名称】三瓶 真弘
(72)【発明者】
【氏名】村田 展章
(72)【発明者】
【氏名】那須 正教
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大樹
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特許第6679152(JP,B1)
【文献】特開2019-061498(JP,A)
【文献】国際公開第2003/065261(WO,A1)
【文献】特開2017-220074(JP,A)
【文献】特開2002-042288(JP,A)
【文献】特開2017-010341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 ~ 1/16
G07C 5/00
H04N 5/232
H04N 5/76 ~ 5/77
G06F 16/90 ~ 16/909
G06Q 40/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事故事例を示す事故事例データと、前記事故事例データが示す事故事例と第1タグとを対応付けた第1事例マスタと、前記事故事例データが示す事故事例と第2タグとを対応付けた第2事例マスタとを保存する記憶手段と、
事故車両が備えるセンサにより計測される車両データと、前記事故車両が備えるカメラで撮影された映像データとを取得する取得手段と、
取得された前記車両データと前記映像データとに基づいて、前記事故車両が起こした事故の状況を分析する分析手段と、
前記分析手段により分析された前記事故の状況に基づいて、前記事故の状況に対応する前記第1タグと前記第2タグとを推定するタグ推定手段と、
推定された前記第1タグを前記第2タグに変換するタグ変換手段と、
前記第1事例マスタと前記第2事例マスタとを参照して、推定された前記第1タグと前記第2タグとに基づいて前記事故事例データを検索する検索手段と、
を備え
前記タグ推定手段は、推定された前記第1タグを前記タグ変換手段により前記第2タグに変換することにより前記第2タグを推定する、
ことを特徴とする事故分析装置。
【請求項2】
事故事例を示す事故事例データと、前記事故事例データが示す事故事例と第1タグとを対応付けた第1事例マスタと、前記事故事例データが示す事故事例と第2タグとを対応付けた第2事例マスタとを保存する記憶手段と、
事故車両が備えるセンサにより計測される車両データと、前記事故車両が備えるカメラで撮影された映像データとを取得する取得手段と、
取得された前記車両データと前記映像データとに基づいて、前記事故車両が起こした事故の状況を分析する分析手段と、
前記分析手段により分析された前記事故の状況に基づいて、前記事故の状況に対応する前記第1タグと前記第2タグとを推定するタグ推定手段と、
前記第1事例マスタと前記第2事例マスタとを参照して、推定された前記第1タグと前記第2タグとに基づいて前記事故事例データを検索する検索手段と、
を備え、
前記検索手段は、推定された前記第1タグに基づいて前記第1事例マスタが示す各事故事例を順位付けし、推定された前記第2タグに基づいて前記第2事例マスタが示す各事故事例を順位付けし、前記第1事例マスタにおいて順位付けされた各事故事例と前記第2事例マスタにおいて順位付けされた各事故事例とを統合した検索結果を得る、
ことを特徴とする事故分析装置。
【請求項3】
コンピュータが実行する事故分析方法であって、
事故車両が備えるセンサにより計測される車両データと、前記事故車両が備えるカメラで撮影された映像データとを取得する取得ステップと、
取得された前記車両データと前記映像データとに基づいて、前記事故車両が起こした事故の状況を分析する分析ステップと、
分析された前記事故の状況に基づいて、前記事故の状況に対応する第1タグと第2タグとを推定するタグ推定ステップと、
事故事例を示す事故事例データを検索する検索ステップであって、前記事故事例データが示す事故事例と前記第1タグとを対応付けた第1事例マスタと前記事故事例データが示す事故事例と前記第2タグとを対応付けた第2事例マスタとを参照して、推定された前記第1タグと前記第2タグとに基づいて前記事故事例データを検索する検索ステップと、
を備え
前記タグ推定ステップでは、推定された前記第1タグを前記第2タグに変換することにより前記第2タグを推定する、
ことを特徴とする事故分析方法。
【請求項4】
コンピュータが実行する事故分析方法であって、
事故車両が備えるセンサにより計測される車両データと、前記事故車両が備えるカメラで撮影された映像データとを取得する取得ステップと、
取得された前記車両データと前記映像データとに基づいて、前記事故車両が起こした事故の状況を分析する分析ステップと、
分析された前記事故の状況に基づいて、前記事故の状況に対応する第1タグと第2タグとを推定するタグ推定ステップと、
事故事例を示す事故事例データを検索する検索ステップであって、前記事故事例データが示す事故事例と前記第1タグとを対応付けた第1事例マスタと前記事故事例データが示す事故事例と前記第2タグとを対応付けた第2事例マスタとを参照して、推定された前記第1タグと前記第2タグとに基づいて前記事故事例データを検索する検索ステップと、
を備え、
前記検索ステップでは、推定された前記第1タグに基づいて前記第1事例マスタが示す各事故事例を順位付けし、推定された前記第2タグに基づいて前記第2事例マスタが示す各事故事例を順位付けし、前記第1事例マスタにおいて順位付けされた各事故事例と前記第2事例マスタにおいて順位付けされた各事故事例とを統合した検索結果を得る、
ことを特徴とする事故分析方法。
【請求項5】
コンピュータに、
事故車両が備えるセンサにより計測される車両データと、前記事故車両が備えるカメラで撮影された映像データとを取得する取得ステップと、
取得された前記車両データと前記映像データとに基づいて、前記事故車両が起こした事故の状況を分析する分析ステップと、
分析された前記事故の状況に基づいて、前記事故の状況に対応する第1タグと第2タグとを推定するタグ推定ステップと、
事故事例を示す事故事例データを検索する検索ステップであって、前記事故事例データが示す事故事例と前記第1タグとを対応付けた第1事例マスタと前記事故事例データが示す事故事例と前記第2タグとを対応付けた第2事例マスタとを参照して、推定された前記第1タグと前記第2タグとに基づいて前記事故事例データを検索する検索ステップと、
を実行させ
前記タグ推定ステップでは、推定された前記第1タグを前記第2タグに変換することにより前記第2タグを推定する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
事故車両が備えるセンサにより計測される車両データと、前記事故車両が備えるカメラで撮影された映像データとを取得する取得ステップと、
取得された前記車両データと前記映像データとに基づいて、前記事故車両が起こした事故の状況を分析する分析ステップと、
分析された前記事故の状況に基づいて、前記事故の状況に対応する第1タグと第2タグとを推定するタグ推定ステップと、
事故事例を示す事故事例データを検索する検索ステップであって、前記事故事例データが示す事故事例と前記第1タグとを対応付けた第1事例マスタと前記事故事例データが示す事故事例と前記第2タグとを対応付けた第2事例マスタとを参照して、推定された前記第1タグと前記第2タグとに基づいて前記事故事例データを検索する検索ステップと、
を実行させ、
前記検索ステップでは、推定された前記第1タグに基づいて前記第1事例マスタが示す各事故事例を順位付けし、推定された前記第2タグに基づいて前記第2事例マスタが示す各事故事例を順位付けし、前記第1事例マスタにおいて順位付けされた各事故事例と前記第2事例マスタにおいて順位付けされた各事故事例とを統合した検索結果を得る、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故分析装置、事故分析方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故が発生した場合、保険会社では、事故状況に応じて過失割合を算出する。このような過失割合を算出して事故を分析するための事故分析装置として、例えば、特許文献1には、事故状況と過去の事故事例との突合を迅速に行う事故分析装置が開示されている。保険会社のオペレータは、突合した過去の事故事例の内容(当該過去事例の事故状況、過失割合など)に基づいて過失割合を算出する。
【0003】
特許文献1に記載の事故分析装置は、以下のようにして事故状況と過去の事故事例とを突合する。特許文献1に記載の事故分析装置は、過去の事故事例の各事例に各事例の状況を示す項目(タグ)が設定された事故事例DB(データベース)を含む。特許文献1に記載の事故分析装置は、事故状況を分析して事故状況を示すタグを特定し、特定したタグと各事故事例に設定されたタグとを突合することにより、事故状況と過去の事故事例とを突合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-194263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような事故分析装置において、各事故事例にタグを設定する方法として、例えば事故事例を示すID(識別子)とタグとを対応付けた事例マスタを、事故事例DBとは別に用意することが考えられる。
【0006】
事例マスタの各事故事例にどのようなタグを設定するかについて、複数の手法が考えられる。例えば、設定するタグの粒度を荒くすることにより、事故事例を細かく検索することは難しくなるものの、各事故事例にタグを設定する際の負担は小さくなる。逆に、設定するタグの粒度を細かくすることにより、事故事例を細かく検索することが可能となるものの、タグの設定の負担は大きくなる。
【0007】
そのため、事故分析装置において、異なる手法によりタグが設定された複数の事例マスタを好適に取り扱えるようになると、ユーザにとっては便利である。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、複数の事例マスタを好適に扱える事故分析装置、事故分析方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る事故分析装置は、
事故事例を示す事故事例データと、前記事故事例データが示す事故事例と第1タグとを対応付けた第1事例マスタと、前記事故事例データが示す事故事例と第2タグとを対応付けた第2事例マスタとを保存する記憶手段と、
事故車両が備えるセンサにより計測される車両データと、前記事故車両が備えるカメラで撮影された映像データとを取得する取得手段と、
取得された前記車両データと前記映像データとに基づいて、前記事故車両が起こした事故の状況を分析する分析手段と、
前記分析手段により分析された前記事故の状況に基づいて、前記事故の状況に対応する前記第1タグと前記第2タグとを推定するタグ推定手段と、
前記第1事例マスタと前記第2事例マスタとを参照して、推定された前記第1タグと前記第2タグとに基づいて前記事故事例データを検索する検索手段と、
を備える。
【0010】
推定された前記第1タグを前記第2タグに変換するタグ変換手段をさらに備え、
前記タグ推定手段は、推定された前記第1タグを前記タグ変換手段により前記第2タグに変換することにより前記第2タグを推定する、
ようにしてもよい。
【0011】
前記検索手段は、推定された前記第1タグに基づいて前記第1事例マスタが示す各事故事例を順位付けし、推定された前記第2タグに基づいて前記第2事例マスタが示す各事故事例を順位付けする、
ようにしてもよい。
【0012】
前記検索手段は、前記第1事例マスタにおいて順位付けされた各事故事例と前記第2事例マスタにおいて順位付けされた各事故事例とを統合した検索結果を得る、
ようにしてもよい。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る事故分析方法は、
事故車両が備えるセンサにより計測される車両データと、前記事故車両が備えるカメラで撮影された映像データとを取得する取得ステップと、
取得された前記車両データと前記映像データとに基づいて、前記事故車両が起こした事故の状況を分析する分析ステップと、
分析された前記事故の状況に基づいて、前記事故の状況に対応する第1タグと第2タグとを推定するタグ推定ステップと、
事故事例を示す事故事例データを検索する検索ステップであって、前記事故事例データが示す事故事例と前記第1タグとを対応付けた第1事例マスタと前記事故事例データが示す事故事例と前記第2タグとを対応付けた第2事例マスタとを参照して、推定された前記第1タグと前記第2タグとに基づいて前記事故事例データを検索する検索ステップと、
を備える。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータに、
事故車両が備えるセンサにより計測される車両データと、前記事故車両が備えるカメラで撮影された映像データとを取得する取得ステップと、
取得された前記車両データと前記映像データとに基づいて、前記事故車両が起こした事故の状況を分析する分析ステップと、
分析された前記事故の状況に基づいて、前記事故の状況に対応する第1タグと第2タグとを推定するタグ推定ステップと、
事故事例を示す事故事例データを検索する検索ステップであって、前記事故事例データが示す事故事例と前記第1タグとを対応付けた第1事例マスタと前記事故事例データが示す事故事例と前記第2タグとを対応付けた第2事例マスタとを参照して、推定された前記第1タグと前記第2タグとに基づいて前記事故事例データを検索する検索ステップと、
を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の事例マスタを好適に扱える事故分析装置、事故分析方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態に係る事故分析システムの一例を示す図である。
図2】本実施の形態において車両内部から前方に向いた状態を示す模式図である。
図3】本実施の形態に係るドライブレコーダーの機能ブロック図である。
図4】本実施の形態に係る処理フローを示す図である。
図5】本実施の形態に係る事故分析装置のハードウェア構成例を示す図である。
図6】本実施の形態に係る事故分析装置の機能ブロック図である。
図7】本実施の形態に係る事故分析装置における事故事例DBの一例を示すテーブルである。
図8】本実施の形態に係る事故分析装置における事故事例DBと第1事例マスタ及び第2事例マスタとの関係を示す図である。
図9】本実施の形態に係る事故分析装置における第1事例マスタの一例を示すテーブルである。
図10】本実施の形態に係る事故分析装置における第2事例マスタの一例を示すテーブルである。
図11】本実施の形態に係る事故分析装置のタグ変換部による第1タグから第2タグへの変換の一例を示す図である。
図12】本実施の形態に係る事故分析装置の検索部による事故事例の順位付けの一例を示す図である。
図13】本実施の形態に係る端末に表示される画面の一例を示す図である。
図14】本実施の形態に係る事故分析装置が事故の状況を分析し事故事例を検索する際の処理手順の概要を示すフローチャートである。
図15】本実施の形態に係る事故分析装置における、オペレータによるタグ指定があった場合におけるタグ修正及びタグ修正後の再検索の処理手順の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中同一または対応する部分には同一符号を付す。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る事故分析システムの一例を示す図である。本実施の形態に係る事故分析システム1では、ドライブレコーダー1100(図2参照)が保険契約者の車両1000に搭載されており、当該ドライブレコーダー1100は、無線通信にてネットワーク(公衆回線網などを含む)を介して、クラウドのストレージサーバ(図示省略)に接続する。なお、本実施の形態では、ドライブレコーダー1100が無線通信にてネットワーク(公衆回線網などを含む)を介して、クラウドのストレージサーバ(図示省略)に接続する例を示しているが、例えば、同様の機能を有するミラー型の専用端末装置を用意して、ミラー1300の代わりに設置するようにしても良い。
【0019】
クラウドのストレージサーバには、本システム用のデータ格納領域が確保される。より具体的には、車両1000に搭載されているドライブレコーダー1100毎に、事故分析装置10によってアクセス可能なデータ格納領域が確保される。
【0020】
事故分析装置10は、事故車両である車両1000(以下の説明において、便宜上「自車」と呼ぶことがある)が備えるセンサにより計測される車両データと、車両1000のドライブレコーダー1100が備えるカメラで撮影された映像データとを、クラウドのストレージサーバからネットワークを介して取得し、取得した車両データと映像データとに基づいて、車両1000が起こした事故の状況を分析する機能を有する。また、事故分析装置10は、分析により得られた事故の状況と、過去に生じた事故の状況と過去の事故事例に関する情報(以下、「事故事例」という)とを対応づけた事故事例データベースとを比較することで、車両1000が起こした事故の状況と事故事例とを突合する機能を有する。
【0021】
なお、「車両1000が備えるセンサ」は、以下の説明では車両1000に直接内蔵されるものではなく、車両1000に搭載されるドライブレコーダー1100が備えるセンサである。後述するように、ドライブレコーダー1100は例えば、車両1000の絶対位置を取得する測位センサ、車両1000の加速度を測定する加速度センサなどのセンサを備える。ドライブレコーダー1100は車両1000に搭載されるので、ドライブレコーダー1100が備える各種センサも「車両1000が備えるセンサ」である。
【0022】
端末20は、例えば保険会社のオペレータが操作する端末であり、事故分析装置10が分析した事故の状況、事故の状態に対応する事故事例、及び事故分析装置10が生成した画像を表示する。端末20は、PC、ノートPC、タブレット端末、スマートフォンなど、ディスプレイを備えた情報処理装置であればあらゆる情報処理装置を用いることができる。端末20は、ネットワークを介して事故分析装置と通信可能に接続されている。保険会社のオペレータは、例えば車両1000を運転する保険契約者から事故の通報を受けたときに、端末20を操作して事故の状況、事故事例等を把握し、事故の状況と事故事例とを突合した結果に基づいて過失割合を算出する。
【0023】
図2に、車両1000内において車両1000の前方向を見た状態を示す。ドライブレコーダー1100にはカメラが含まれており、図示するように、少なくとも車両1000の進行方向の映像を撮影することができるよう、車両1000のフロント部分又はフロントガラスに取り付けられている。カメラは、車両1000の側面方向及び後方を撮影可能なものであってもよい。なお、図2に示すように、車両1000の内部には、周知の自動診断システム1400(例えば、OBD(On-Board Diagnostic system -II))が搭載されており、当該自動診断システム1400は、ドライブレコーダー1100と接続するものとする。
【0024】
図3に、本実施の形態に係るドライブレコーダー1100の機能ブロック図を示す。車両1000に搭載されるドライブレコーダー1100は、通信部1120と、測位部1130と、録画部1140と、録音部1150と、加速度測定部1160と、自動診断データ取得部1170と、制御部1180と、データ格納部1200とを有する。
【0025】
制御部1180は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical processing unit)等のプロセッサから構成され、本顧客サービスに関連する処理を、各構成要素に対して実行させる。
【0026】
通信部1120は、例えば公衆回線網を利用した無線通信によるパケット通信にてデータをクラウドのストレージサーバに送信する機能を有する。
【0027】
測位部1130は、制御部1180によって指示されると例えばGPS(Global Positioning System)などによって車両1000の絶対位置(例えば緯度経度)を取得し、データ格納部1200に格納する。
【0028】
録画部1140は、例えばドライブレコーダー1100に搭載されているカメラより撮影される動画像のデータ(映像データ)をデータ格納部1200に格納する。録音部1150は、マイクから入力される音のデータをデータ格納部1200に格納する。録音部1150は、録画部1140と一体化されている場合もある。また、録画部1140は、例えば制御部1180によって作動を指示されると継続的に録画を行い、データ格納部1200に格納するものとする。制御部1180は、特定の時刻より前一定時間の映像データと当該特定の時刻以降一定時間の映像データとを併せて抽出できるものとする。録音部1150についても同様である。録画部1140は、車両1000外部の動画像と車両1000内部の動画像とを撮影可能である。
【0029】
加速度測定部1160は、例えば加速度センサにより加速度の値を測定し、制御部1180に出力する。自動診断データ取得部1170は、制御部1180によって指示されると、車両1000内部に搭載されている自動診断システム1400から自動診断データを取得する。
【0030】
データ格納部1200は、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置から構成され、予め機器データとして、企業名、組織名、車両登録番号、ドライバ識別子(ID)、電話番号等を格納しており、制御部1180による指示に応じて各構成要素が取得するデータも格納する。
【0031】
次に、図4を用いて、図1に示した事故分析システムにおいて、事故が発生してから事故に関するデータがクラウドのストレージサーバに送信されるまでの処理内容について説明する。
【0032】
車両1000に搭載されるドライブレコーダー1100の制御部1180は、継続的に加速度測定部1160に加速度の計測を行わせて、計測された加速度が、予め定められた閾値以上であるか否かを判断する。ここで、制御部1180は、閾値以上の加速度が検出されたものとする(図4:ステップS100)。
【0033】
閾値以上の加速度が検出されると、制御部1180は、データ格納部1200から機器データを読み出すと共に、衝撃事象データを含む車両データと、映像データ等を抽出する(ステップS101)。衝撃事象データは、時計から取得された日時と、測位部1130が取得した位置データと、検出した加速度と、自動診断データ取得部1170により取得された自動診断データとを含む。映像データは、録画部1140によって撮影された映像データと、録音部1150によって録音された音データとを含む。上でも述べたように、映像データ等は、閾値以上の加速度が検出される時点より前一定時間の映像データ等と、その時点以降一定時間の映像データ等とを含む。自動診断データは、エンジン、バッテリ、燃料系などの各々について損傷の有無を表すデータを含む。なお、機器データと衝撃事象データとを車両データと言う。
【0034】
そして、制御部1180は、通信部1120に、抽出データ(車両データ(機器データ、衝撃事象データ)及び映像データなど)をクラウドのストレージサーバに送信する(ステップS102)。その後、制御部1180は、以降の処理を終了する(ステップS103)。
【0035】
クラウドのストレージサーバは、ドライブレコーダー1100から抽出データを受信すると、例えば機器データに含まれる車両登録番号や電話番号等から特定されるデータ格納領域に格納する(ステップS103)。
【0036】
続いて図5から図14を用いて、図1に示した事故分析システムにおける事故分析装置10による事故の状況の分析及び事故状況と事故事例との突合について説明する。
【0037】
上述したように、事故分析装置10は、車両データと映像データとを、クラウドのストレージサーバからネットワークを介して取得し、取得した車両データと映像データとに基づいて、車両1000が起こした事故の状況を分析し、車両1000が起こした事故の状況と事故事例とを突合する機能を有する。また、事故分析装置10は、事故の状況を分析することで得られた車両1000の位置と他車の位置とを地図データ上にマッピングすることで、車両1000が起こした事故の状況を示す画像を生成する機能を有する。車両1000が起こした事故の状況を示す画像はどのようなものであってもよいが、例えば俯瞰図であってもよいし、動画であってもよい。
【0038】
事故分析装置10は、メインフレームやワークステーション、あるいはパーソナルコンピュータ(PC)などの1又は複数の物理的な情報処理装置等から構成されていてもよいし、ハイパーバイザー(hypervisor)上で動作する仮想的な情報処理装置を用いて構成されていてもよいし、クラウドサーバを用いて構成されていてもよい。
【0039】
図5は、事故分析装置10のハードウェア構成例を示す図である。事故分析装置10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical processing unit)等のプロセッサ11、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置12、有線又は無線通信を行う通信IF(Interface)13、入力操作を受け付ける入力デバイス14、及び情報の出力を行う出力デバイス15を有する。入力デバイス14は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力デバイス15は、例えば、ディスプレイ及び/又はスピーカ等である。
【0040】
図6は、本実施の形態に係る事故分析装置10の機能ブロック図である。事故分析装置10は、記憶部100と、取得部101と、分析部102と、生成部103と、タグ推定部104と、タグ変換部105と、検索部106と、出力部107とを含む。記憶部100は、事故分析装置10が備える記憶装置12を用いて実現することができる。また、取得部101と、分析部102と、生成部103と、タグ推定部104と、タグ変換部105と、検索部106と、出力部107とは、事故分析装置10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0041】
記憶部100は、事故事例DBと、第1事例マスタと、第2事例マスタと、地図データDBとを記憶する。記憶部100は、記憶手段に対応する。
【0042】
事故事例DBは、過去の事故事例を示すデータベースである。事故事例DBは、例えば自動車事故の裁判例のデータベースである。事故事例DBは、例えば図7に示すように、事故事例を個別に識別する事例IDと、事故事例の内容と、事故事例における過失割合と、修正要素とを含む。ここで、過失割合は基本的な過失割合であり、修正要素に応じて修正されうる。修正要素とは、事故の状況に応じて過失割合を修正する要素であり、例えば事故が発生した時間が夜であったり、事故車の整備状態が劣悪であったり、歩行者が老人であったりすると、過失割合が修正されうる。事故事例DBは、事故事例データに対応する。
【0043】
詳細は以下に説明するが、事故事例DBと第1事例マスタ及び第2事例マスタとの関係は、図8に示すものとなる。
【0044】
第1事例マスタは、事故事例DBが示す事故事例と、事故事例の内容に応じた第1タグとを対応付けるマスタである。第1タグは、後述の第2タグよりも粒度の細かいタグとなる。そのため、各事故事例にタグを設定する際の負担が第2タグよりも大きい。
【0045】
第2事例マスタは、事故事例DBが示す事故事例と、事故事例の内容に応じた第2タグとを対応付けるマスタである。第2タグは、第1タグよりも粒度の荒いタグとなる。そのため、各事故事例にタグを設定する際の負担が第1タグよりも小さい。
【0046】
第1事例マスタは、例えば図9に示すものとなり、第2事例マスタは、例えば図10に示すものとなる。図9及び図10に示す例においては、第1事例マスタ、第2事例マスタのいずれについても、図7に示す事故事例DBの事例IDを用いて、事故事例DBに含まれる事故事例を参照する。図9に示す第1事例マスタと図10に示す第2事例マスタとでは、道路に関するタグの粒度が第1事例マスタのほうが細かい。また、図9に示す第1事例マスタと図10に示す第2事例マスタとでは、第2事例マスタのほうが第1事例マスタよりもタグが設定されている事故事例の数が多い。これは、タグの粒度が細かい第1事例マスタのほうがタグ設定の負担が大きいため、第2事例マスタと比べてタグ設定の進捗度が低くなることを想定したものである。
【0047】
図9に示すもののほか、第1事例マスタが含む第1タグの例として、道路間の優先関係、右折車が中央に寄れないか否か、左折車が左端に寄れないか否か、自車及び対象の進入時の信号の色、自車及び対象の進入時の速度、もらい事故の有無、怪我の有無などを示すタグが挙げられる。一方、図10に示すもののほか、第2事例マスタが含む第2タグの例として、自車の動き、衝突時の車速、自車及び対象の進入時の信号の色などが挙げられる。
【0048】
事故事例DB、第1事例マスタ及び第2事例マスタは、例えば事故分析装置10の管理者が手入力によるデータ登録を行うことにより記憶部100に保存される。あるいは、事故事例を取り扱う第三者業者が配布する事故事例データを事故事例DBとして記憶部100に保存し、第1事例マスタ及び第2事例マスタのみ管理者が手入力するものであってもよい。あるいは、第三者業者が事故事例DBと第2事例マスタとを配布し、第1事例マスタのみ管理者が手入力するものであってもよい。
【0049】
第1事例マスタと第2事例マスタとでは設定されるタグの粒度、内容などが異なるため、第1事例マスタと第2事例マスタとでは、異なる観点によりタグが設定されることとなる。
【0050】
再び図6を参照する。地図データDBは、道路データ、道路幅、進行方向、道路種別、交通標識(一時停止、進入禁止等)、制限速度、信号機の位置、交差点における交差道路数等の各種データを含む。
【0051】
なお、上述のとおり、図6においては、記憶部100は事故分析装置10が備える記憶装置12を用いて実現されるものであるが、記憶部100は、事故分析装置10と通信可能な外部のサーバで実現されることとしてもよい。
【0052】
取得部101は、車両1000(事故車両)により計測、撮影される車両データと映像データとを、クラウドのストレージサーバから取得する機能を有する。また、取得部101は、オペレータによる端末20の操作に関する情報(以下「操作情報」という)を取得する機能を有する。取得部101は、取得手段に対応する。
【0053】
分析部102は、取得部101が取得した車両データと映像データとに基づいて、車両1000が起こした事故の状況を分析する機能を有する。分析部102は、分析手段に対応する。なお、分析部102が分析する事故の状況には、少なくとも、車両1000が起こした事故の道路状況(道路が一般道路か高速道路か、道路が単路か交差点かなど)、車両1000が交差点を通過する場合における信号の色、交差点を通過する際の優先関係、及び、車両1000の車速が制限速度を超えているか否かを含んでいてもよい。
【0054】
また、車両1000の車両データには、少なくとも測位部1130のGPSにより測定された車両1000の絶対位置を示す情報が含まれており、分析部102は、車両1000の絶対位置を示す情報(測位部1130が取得した位置データ)と、映像データに写っている他車の映像を解析することで得られる、車両1000と当該他車との相対的な位置関係を示す情報とに基づいて当該他車の絶対位置を推定するようにしてもよい。また、分析部102は、車両1000及び他車の絶対位置を時系列で推定するようにしてもよい。また、分析部102は、SfM(Structure from Motion)技術により、GPSにより測定された絶対位置を示す情報と映像データの各フレームのデータとに基づいて、自車の絶対位置をより精密に推定してもよい。
【0055】
また、分析部102は、映像データのうち他車が写っている箇所の画像サイズと、画像サイズと距離との対応関係を示すデータとを比較し、車両1000と他車との相対的な位置関係を示す情報の一つである、車両1000と当該他車との間の距離を推定することで、事故の状況を分析するようにしてもよい。
【0056】
また、分析部102は、映像データのうち他車が写っている箇所の座標と映像データの中心座標との差分と、座標と角度との対応関係を示すデータとを比較し、車両1000と他車との相対的な位置関係を示す情報の一つである、車両1000の進行方向と他車が存在する方向との角度差を推定することで、事故の状況を分析するようにしてもよい。
【0057】
生成部103は、記憶部100の地図データDBを参照し、分析部102による分析結果に基づいて車両1000の絶対位置と他車の絶対位置とを地図データにマッピングすることで、車両1000が起こした事故の状況を示す画像を生成する機能を有する。当該画像には、俯瞰図や動画を含んでいてもよい。例えば、生成部103は、事故の状況を示す画像を時系列順に並べた動画を生成するようにしてもよい。
【0058】
タグ推定部104は、分析部102により分析された事故状況を表す第1タグ及び第2タグを推定する。例えば、タグ推定部104は、分析部102により分析された道路状況に基づいて、第1タグ及び第2タグのうち道路状況に関するタグを推定する。後述するように、第2タグの一部又は全部は、推定された第1タグをタグ変換部105により変換することにより推定されるものであってもよい。タグ推定部104は、タグ推定手段に対応する。
【0059】
タグ変換部105は、タグ推定部104により推定された第1タグを第2タグに変換する。例えば、図11に示すように、タグ推定部104が推定した第1タグが「道路種別:一般道路」と「道路形状:交差点」であったとき、タグ変換部105は、これら2つの第1タグを1つの第2タグ「道路形態:交差点」に変換する。タグ変換部105は、タグ変換手段に対応する。
【0060】
上記のほか、例えば推定された第1タグが「道路種別:交差点」と「相対位置:自車左方・対象右方」であったとき、タグ変換部105は、これら2つの第1タグを1つの第2タグ「事故形態:出会い頭・側突・接触」とすることが考えられる。この場合において、第1タグ「道路種別:交差点」は、第2タグ「道路形態:交差点」への変換に使用され、かつ第2タグ「事故形態:出会い頭・側突・接触」への変換にも使用されることとなる。つまり、1つの第1タグが2以上の第2タグの変換に使用されうる。
【0061】
検索部106は、記憶部100の第1事例マスタ及び第2事例マスタを参照し、タグ推定部104により推定された第1タグ及び第2タグに基づいて事故事例を検索する。タグ推定部104により推定されたタグは事故状況を表すタグであるため、検索部106によれば、事故状況と事故事例とを突合できる。検索部106は、検索手段に対応する。
【0062】
また、検索部106は、単に事故事例を検索するのみではなく、推定されたタグ(第1タグ又は第2タグ)と、事例マスタ(第1事例マスタ又は第2事例マスタ)の各事故事例に設定されたタグとの一致度に応じて事例マスタの各事故事例を順位付けし、順位付けをして得られた結果を検索結果としてもよい。あるいは、それぞれの各事故事例を順位付けして得られた結果を統合したものを検索結果としてもよい。以下、図12を参照しながら説明する。
【0063】
まず、検索部106は、第1事例マスタ、第2事例マスタのそれぞれについて、推定されたタグと事例マスタの各事故事例に設定されたタグとの一致度に基づいて、図12の上段に示すように各事故事例を順位付けする。ここで、図12に示す第2事例マスタの事例IDのうち網掛けされているものは、第1事例マスタにも存在する事故事例を示す。なお、推定されたタグとの一致度がゼロとなった事故事例については、順位付けの対象外とする。
【0064】
なお、「一致度」として、例えばsimple matching coefficientを用いてもよいし、その他の指標を用いてもよい。例えばタグごとに異なる点数を予め定めておき、一致したタグの合計点数を「一致度」としてもよい。
【0065】
次に検索部106は、第1事例マスタ、第2事例マスタのそれぞれについての順位付けの結果を統合する。具体的には、例えば第2事例マスタの順位付け結果をもとに、第2事例マスタの各事故事例のうち第1事例マスタにも存在する事故事例については、第1事例マスタにおける順位を適用することにより順位付けの結果を統合する。例えば図12に示す場合において、第1事例マスタについては事例ID002、017、008、010の順位はそれぞれ1位から4位の順となる一方、第2事例マスタについては事例ID002、017、008、010の順位はそれぞれ2位、1位、3位、5位となる。この場合、第1事例マスタについての順位の大小関係が統合時に優先され、統合時における事例ID002、017、008、010の順位はそれぞれ1位、2位、3位、5位となる。
【0066】
なお、統合の際に第1事例マスタにおける順位を適用するのは、第1事例マスタのほうがタグの粒度が細かいため順位がより適切となっている可能性が高いからである。
【0067】
また、詳細は後述するが、検索部106は、オペレータが端末20を操作してタグを修正したときに、取得部101が取得した操作情報に基づいて再検索を行う機能も有する。
【0068】
出力部107は、分析部102が分析した事故の状況を示す情報、タグ推定部104が推定したタグを示す情報、検索部106による検索結果を示す情報、生成部103が生成した事故の状況を示す画像を端末20に出力する機能を有する。なお、検索部106により得られる検索結果は事例IDと順位のみを含むため、出力部107は、事故事例DBを参照し、事例IDに基づいて事故事例の詳細情報(図7に示す「内容」、「過失割合」、「修正要素」など)を取得し、検索結果を示す情報に当該詳細情報を含める。
【0069】
出力部107の出力により、端末20には例えば図13に示すような画面が表示される。図13に示す画面は、少なくとも分析部102により分析された事故状況を示す画像及び情報と(画像は生成部103により生成)、タグ推定部104により推定された第1タグ及び第2タグと、検索部106による検索結果とを含む。また、出力部107は、取得部101が取得した操作情報に基づいて以下に説明する画面を表示することができる。
【0070】
端末20を操作するオペレータは、画面上の「事故発生時の動画を見る」のボタンを選択することにより、車両1000のドライブレコーダー1100により録画された事故発生時の動画を確認することができる。これは、「事故発生時の動画を見る」を選択したことを示す操作情報に基づいて、出力部107が動画を表示することにより実現される。
【0071】
また、端末20を操作するオペレータは、検索結果の「詳細を見る」を選択することにより、検索結果に列挙された各事故事例の詳細内容、過失割合の修正要素などを確認することができる。オペレータは、事故状況と事故事例の詳細とを比較し、事故事例に基づいて過失割合を算出する。これは、「詳細を見る」を選択したことを示す操作情報に基づいて、出力部107が事故事例の詳細内容等を表示することにより実現される。
【0072】
また、端末20を操作するオペレータは、画面上の「タグを修正する」のボタンを選択してタグを修正することができる。なお、「タグの修正」は、推定されたタグを修正すること、推定されたタグの一部を削除すること、新たなタグを追加することなどを含む。端末20は、タグが修正されたとき、修正されたタグにより再度検索した結果を表示する。例えばタグ推定部104がタグを推定できなかったとき、あるいはタグ推定部104が推定したタグが適切でなかったとき、オペレータは動画を確認した上で適切なタグを修正して再度検索をすることができる。これは、「タグを修正する」を選択しその後にタグを修正したことを示す操作情報に基づいて、検索部106が修正されたタグに基づいて検索し、出力部107がタグ修正後の検索結果を表示することにより実現される。
【0073】
なお、事故分析装置10の機能については端末20と連携して実現する場合もあるので、端末20側に設けられる機能が存在する場合もある。また、事故分析装置10と端末20とが一体となった一の情報処理装置であってもよい。
【0074】
続いて、事故分析装置10による事故状況の分析及び事故事例の検索の処理手順を、図14を参照して説明する。図14は、事故分析装置10が事故の状況を分析し事故事例を検索する際の処理手順の概要を示すフローチャートである。なお、以下の説明において、車両データ及び映像データには、それぞれ時刻情報又は同期情報が含まれているものとする。すなわち、本実施の形態では、ある時点における映像データを分析する際、当該時点に対応する車両データを用いて分析を行うことが可能である、逆に、ある時点における車両データを分析する際、当該時点に対応する映像データを用いて分析を行うことが可能である。
【0075】
まず、事故分析装置10の取得部101は、事故を起こした車両1000の車両データと事故時の映像データとを取得する(ステップS10、ステップS11)。具体的に、事故分析装置10は、当該車両データ及び映像データを、クラウドのストレージサーバからネットワークを介して取得する。その他にも、例えば、SDカードやUSBメモリ等の非一時的な記憶媒体に記録されており、当該記録媒体を事故分析装置10に接続することで車両データ及び映像データを事故分析装置10に取り込むようにしてもよい。ステップS10およびステップS11の処理は、取得ステップに対応する。
【0076】
次に、事故分析装置10の分析部102は、ステップS10にて取得した車両データとS11にて取得した映像データとに基づいて、車両1000が起こした事故の状況を分析する(ステップS12)。ステップS12の処理は、分析ステップに対応する。
【0077】
次に、事故分析装置10のタグ推定部104は、ステップS12での分析結果に基づいて、事故状況を示す第1タグ及び第2タグを推定する(ステップS13)。前述のとおり、一部又は全部の第2タグの推定において、推定した第1タグをタグ変換部105にて第2タグに変換することにより第2タグを推定してもよい。ステップS13の処理は、タグ推定ステップに対応する。
【0078】
次に、事故分析装置10の検索部106は、第1事例マスタを参照し、ステップS13で推定した第1タグに基づいて事故事例を順位付けする(ステップS14)。同様に、検索部106は、第2事例マスタを参照し、ステップS13で推定した第2タグに基づいて事故事例を順位付けする(ステップS15)。検索部106は、ステップS14及びステップS15における順位付けの結果を統合して検索結果とする(ステップS16)。ステップS14からステップS16までの処理は、検索ステップに対応する。
【0079】
次に、事故分析装置10の生成部103は、ステップS12にて得られた分析結果に基づいて、事故の状況を示す画像を生成する(ステップS17)。なお、ステップS17の処理は、ステップS12からステップS16の各処理の間に行われてもよいし、これらの処理と並行して行われてもよい。
【0080】
そして事故分析装置10の出力部107は、ステップS12にて得られた分析結果(事故の状況)を示す情報、ステップS13にて推定したタグを示す情報、ステップS14からS16により得られた検索結果を示す情報、ステップS17にて生成した事故の状況を示す画像を端末20に出力し(ステップS18)、事故分析装置10は分析及び検索の処理を終了する。
【0081】
なお、これらの処理は、処理に矛盾が生じない限り任意の順番で行われてもよい。
【0082】
続いて、オペレータによるタグ修正があった場合における事故分析装置10による再検索の処理手順を、図15を参照して説明する。図15に示す手順は再検索であるため、図14に示す手順が行われ検索結果が表示された後に、オペレータが端末20を操作してタグを修正したタイミングで実行される。
【0083】
まず、事故分析装置10の取得部101は、オペレータが端末20を操作してタグを修正したことを示す操作情報を取得する(ステップS20)。
【0084】
次に、事故分析装置10の検索部106は、操作情報に基づいて修正されたタグを特定する(ステップS21)。
【0085】
次に、検索部106は、検索結果のうちステップS21にて特定したタグを含む事故事例を、順位付けによる順序を維持したまま再検索する(ステップS22)。例えば、当初の検索結果が図12の統合後のものであった場合を考える。この場合において、修正されたタグを含む事故事例が、事例IDがそれぞれ017、032、010となる3つの事故事例であったとする。これらの3つの事故事例のタグ修正前の順位はそれぞれ2位、4位、5位である。この場合、検索部106は、事例ID017、032、010の事故事例をそれぞれ1位、2位、3位とする。タグ修正前の順位が順に2位、4位、5位の順序であったため、タグ修正後の順位はそれぞれ1位、2位、3位となる。
【0086】
そして事故分析装置10の出力部107は、ステップS22にて得られたタグ修正後の再検索結果を示す情報を端末20に出力し(ステップS23)、事故分析装置10は再検索の処理を終了する。
【0087】
以上説明した実施の形態によれば、事故分析装置10は、第1タグと第2タグとの2種類のタグを事故状況から推定し、これらのタグに基づいて過去の事故事例を第1事例マスタと第2事例マスタとの2つの事例マスタから検索する。そのため、事故分析装置10によれば、複数の事例マスタを好適に扱える。
【0088】
(変形例)
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。例えば、車両1000、ドライブレコーダー1100、クラウドのストレージサーバ、事故分析装置10および端末20は、上記実施の形態で示した全ての技術的特徴を備えるものでなくてもよく、従来技術における少なくとも1つの課題を解決できるように、上記実施の形態で説明した一部の構成を備えたものであってもよい。また、下記の変形例それぞれについて、少なくとも一部を組み合わせてもよい。
【0089】
上記実施の形態では、検索部106は第1タグに基づく順位付けの結果と第2タグに基づく順位付けの結果とを統合して検索結果を得たが、それぞれの順位付けの結果をそのまま検索結果としてもよい。この場合、図13に示す検索結果には、第1タグ、第2タグそれぞれに基づく2種類の検索結果が表示される。
【0090】
上記実施の形態では、第1事例マスタをタグの粒度が細かいものとし、第2事例マスタをタグの粒度が粗いものとした。このほか、例えば第1事例マスタを特定の種別の事故事例に特化したタグが設定されたものとし、第2事例マスタを一般的な事故事例に関するタグが設定されたものとしてもよい。例えば第1事例マスタを四輪車対四輪車に特化したタグが設定されたものとすることにより、四輪車対四輪車の事故事例を精度よく検索することができる一方で、一般的な事故事例も検索することができるようになる。
【0091】
上記実施の形態では、第1事例マスタと第2事例マスタとの2つの事例マスタを取り扱ったが、3つ以上の事例マスタについても同様に取り扱うことができる。
【0092】
上記実施の形態では、ドライブレコーダー1100が保険契約者の車両1000に搭載されている例を示したが、これは一例である。ドライブレコーダー1100ではなく、保険契約者の所有するスマートフォンであってもよい。当該スマートフォンの背面と前面に搭載されたカメラにより、外部映像データと内部映像データとを撮影すればよい。
【0093】
なお、上記実施の形態では、ドライブレコーダー1100が各種センサを備えるものとしたが、ドライブレコーダー1100でなく車両1000が各種センサを内蔵するものであってもよい。この場合、車両1000が上記実施の形態における通信部1120、測位部1130、自動診断データ取得部1170、制御部1180、加速度測定部1160及びデータ格納部1200と同様の構成を備えることとなる。そして事故分析装置10は、ドライブレコーダー1100から映像データを取得し、車両1000から車両データを取得することとなる。
【0094】
事故分析システム1は、専用の装置によらず、通常のコンピュータを用いて実現可能である。例えば、コンピュータに上述のいずれかを実行するためのプログラムを格納した記録媒体から該プログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理を実行する事故分析システム1を構成してもよい。また、複数のコンピュータが協同して動作することによって、1つの事故分析システム1を構成しても良い。
【0095】
また、コンピュータにプログラムを供給するための手法は、任意である。例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システム等を介して供給しても良い。
【0096】
また、上述の機能の一部をOS(Operation System)が提供する場合には、OSが提供する機能以外の部分をプログラムで提供すれば良い。
【0097】
以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0098】
1…事故分析システム、10…事故分析装置、11…プロセッサ、12…記憶装置、13…通信インターフェース、14…入力デバイス、15…出力デバイス、20…端末、100…記憶部、101…取得部、102…分析部、103…生成部、104…タグ推定部、105…タグ変換部、106…検索部、107…出力部、1000…車両、1100…ドライブレコーダー、1120…通信部、1130…測位部、1140…録画部、1150…録音部、1160…加速度測定部、1170…自動診断データ取得部、1180…制御部、1200…データ格納部、1300…ミラー、1400…自動診断システム。
【要約】
【課題】複数の事例マスタを好適に扱える事故分析装置等を提供する。
【解決手段】事故分析装置10は、事故事例DBと、事故事例DBが示す事故事例と第1タグとを対応付けた第1事例マスタと、事故事例DBが示す事故事例と第2タグとを対応付けた第2事例マスタとを保存する記憶部100と、事故車両が備えるセンサにより計測される車両データと、事故車両が備えるカメラで撮影された映像データとを取得する取得部と、取得された車両データと映像データとに基づいて、事故車両が起こした事故の状況を分析する分析部102と、分析部102により分析された事故の状況に基づいて、事故の状況に対応する第1タグと第2タグとを推定するタグ推定部104と、第1事例マスタと第2事例マスタとを参照して、推定された第1タグと第2タグとに基づいて事故事例DBを検索する検索部106と、を備える。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15