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特許7089117光反射特性を利用したセキュリティデバイス
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  • 特許-光反射特性を利用したセキュリティデバイス 図1
  • 特許-光反射特性を利用したセキュリティデバイス 図2a
  • 特許-光反射特性を利用したセキュリティデバイス 図2b
  • 特許-光反射特性を利用したセキュリティデバイス 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】光反射特性を利用したセキュリティデバイス
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/36 20140101AFI20220614BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20220614BHJP
   G02B 1/02 20060101ALI20220614BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B42D25/36
G02B5/00 Z
G02B1/02
B32B3/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021521310
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 KR2019010924
(87)【国際公開番号】W WO2020080668
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】10-2018-0123714
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521083061
【氏名又は名称】コリア ミンティング,セキュリティー プリンティング アイディー カード オペレーティング コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ギュン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ス・ドン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ホン・コン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ソ・キム
(72)【発明者】
【氏名】エ・デン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ジュン・チェ
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-273786(JP,A)
【文献】特開2010-036393(JP,A)
【文献】特開2008-126475(JP,A)
【文献】特開昭64-043826(JP,A)
【文献】特表2014-534088(JP,A)
【文献】国際公開第2010/119248(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/36
G02B 5/00
G02B 1/02
B32B 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面に溝部を含む基板、
前記溝部の少なくとも一部に含まれているコロイド結晶、及び、
前記基板のコロイド結晶が含まれている面の少なくとも一部を覆うエージングフィルム、を含み、
前記溝部と隣接した溝部との間隔が0.1μm乃至50mmであり、前記溝部の深さは、10乃至200μmであることを特徴とする光反射特性を利用したセキュリティデバイス。
【請求項2】
前記基板は、熱可塑性樹脂及び紫外線硬化性樹脂の中から選択される少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の光反射特性を利用したセキュリティデバイス。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、アセタール、フルオロカーボン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びポリビニルアルコールの中から選択される少なくとも一つ以上であることを特徴とする請求項2に記載の光反射特性を利用したセキュリティデバイス。
【請求項4】
前記紫外線硬化性樹脂は、二重結合を有している不飽和ポリエステル樹脂系、ポリエステルアクリレート樹脂系、ポリウレタンアクリレート樹脂系、及びエポキシアクリレート樹脂系の中から選択される少なくとも一つ以上であることを特徴とする請求項2に記載の光反射特性を利用したセキュリティデバイス。
【請求項5】
前記基板は、柔軟性基板であることを特徴とする請求項1に記載の光反射特性を利用したセキュリティデバイス。
【請求項6】
前記コロイド結晶は、シリカ、二酸化チタン、ポリスチレン、及びポリメタアクリレートの中から選択される少なくとも一つの組成を有する単分散度7%以内の球状粒子を含み、前記球状粒子の平均粒子大きさが50乃至300nmであることを特徴とする請求項1に記載の光反射特性を利用したセキュリティデバイス。
【請求項7】
前記エージングフィルムの厚さは、10乃至300μmであることを特徴とする請求項1に記載の光反射特性を利用したセキュリティデバイス。
【請求項8】
前記エージングフィルムは、隠しイメージを含むことを特徴とする請求項1に記載の光反射特性を利用したセキュリティデバイス。
【請求項9】
前記基板の上部に形成された溝部形状と下部の溝部形状が同じであることを特徴とする請求項1に記載の光反射特性を利用したセキュリティデバイス。
【請求項10】
前記基板の上部に形成された溝部形状と下部の溝部形状が異なる形状であることを特徴とする請求項1に記載の光反射特性を利用したセキュリティデバイス。
【請求項11】
前記エージングフィルムは、熱可塑性樹脂フィルム及びコロイド結晶と分離が容易な離型フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の光反射特性を利用したセキュリティデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の溝部にコロイド結晶が形成されており、コロイド結晶が形成された基板上部にエージングフィルムが位置するセキュリティデバイスに関し、視認性及びセキュリティに優れて複製が難しいセキュリティ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
コロイドとは、特定の溶媒に均一に分散されている粒子を意味し、コロイド結晶(colloidal crystal)とは、マトリックスと互いに異なる屈折率を有する単分散の粒子が自己組立てなどにより規則的に配列されて結晶格子をなし、単位粒子の幾何学的な特性によって独特の光学的特性を示す物質を意味する。
【0003】
コロイド結晶を作る方法は、沈殿を利用した重力沈殿方法、蒸発により2次元の結晶単層膜を作る2次元単層製造方法、コロイド条件を制御して粒子間の規則的な配列を作る3次元自己組立て法、静電気、磁力などの外力により粒子を移動配列させて3次元構造を作る誘導組立て法などがある。
【0004】
コロイド粒子の規則的な配列が反射色を見せることは、同じ原理により現れることであり、コロイド結晶の光バンドギャップに該当する色である。コロイド結晶の反射色は、コロイド及びマトリックス物質の屈折率、結晶構造、粒子の大きさ、粒子間の間隔などにより決定される。したがって、これを制御することによって所望の反射色を有するコロイド結晶を製造することができる。
【0005】
一方、コロイド結晶を薄く形成してフィルム形態で製造しようとする試みがあったが、コロイド結晶と基板との付着が難しかった。また、基板上にコロイド結晶を形成しようとする多様な試みがあったが、自己組立て時間が長くかかり、コロイド結晶が均一に形成されないなどの問題があった。
【0006】
誘導組立て法の場合、自己組立て法に比べてコロイド結晶化の時間を短縮することができる長所があるが、工程及び製造装置が複雑になる問題があって、コロイド粒子の素材に制約が多い問題があった。
【0007】
また、コロイド結晶の変形が難しい問題などにより、柔軟性を要する紙幣、セキュリティ文書などの製品に適用するには限界があった。
【0008】
したがって、製造工程が従来に比べて単純で、かつ繰り返し生産が容易な品質のコロイド結晶が含まれているフィルムの開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、製造工程及び構造が簡単で、かつ光反射特性に優れたコロイド結晶を利用したセキュリティデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記本発明の目的は、少なくとも一面に溝部を含む基板、前記溝部の少なくとも一部に含まれているコロイド結晶、及び前記基板のコロイド結晶が含まれている面の少なくとも一部を覆うエージングフィルムを含む光反射特性を利用したセキュリティデバイスにより達成される。
【0011】
前記基板は、熱可塑性樹脂及び紫外線硬化性樹脂の中から選択される少なくとも一つを含む。
【0012】
前記熱可塑性樹脂は、アセタール、フルオロカーボン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びポリビニルアルコールの中から選択される少なくとも一つである。
【0013】
前記紫外線硬化性樹脂は、二重結合を有している不飽和ポリエステル樹脂系、ポリエステルアクリレート樹脂系、ポリウレタンアクリレート樹脂系、及びエポキシアクリレート樹脂系の中から選択される少なくとも一つ以上である。
【0014】
前記基板は、柔軟性基板である。
【0015】
前記コロイド結晶は、シリカ、二酸化チタン、ポリスチレン、及びポリメタアクリレートの中から選択される少なくとも一つの組成を有する単分散度7%以内の球状粒子を含み、前記球状粒子の平均粒子大きさが100乃至300nmである。
【0016】
前記エージングフィルムの厚さは、10乃至300μmである。
【0017】
前記エージングフィルムは、隠しイメージを含む。
【0018】
前記溝部と隣接した溝部との間隔が0.1μm乃至50mmであり、前記溝部の深さは、10乃至200μmである。
【0019】
前記基板の上部に形成された溝部形状と下部の溝部形状が同じである。
【0020】
前記基板の上部に形成された溝部形状と下部の溝部形状が異なる形状である。
【0021】
前記エージングフィルムは、前記熱可塑性樹脂フィルム及びコロイド結晶と分離が容易な離型フィルムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明のセキュリティデバイスは、従来に比べて容易に均一な品質のコロイド結晶を形成することができ、柔軟性基板を利用する場合、カードや有価証券などのセキュリティ要素として活用できる。また、製造が容易で、かつ連続工程適用が可能であるため、製造コストを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施例に係るセキュリティデバイスの垂直断面図を示す。
図2A】本発明の他の実施例に係るセキュリティデバイスの垂直断面図を示す。
図2B】本発明の他の実施例に係るセキュリティデバイスの垂直断面図を示す。
図3】本発明の一実施例に係るセキュリティデバイス製造工程を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0025】
添付図面は、本発明の技術的思想をより具体的に説明するために示した一例に過ぎないため、本発明の思想が添付図面に限定されるものではない。同じ理由で、添付図面における一部構成要素は、誇張または省略または概略的に示された。
【0026】
図1は、本発明の一実施例に係るセキュリティデバイス10の垂直断面図を示す。セキュリティデバイス10は、基板100、コロイド結晶200、エージングフィルム300を含んで構成され、コロイド結晶200は、基板100に形成された溝部110に含まれる。エージングフィルム300は、コロイド結晶200の自己組立てが速くて安定的に均一に構成されるようにし、コロイド結晶200を保護する役割もする。したがって、コロイド結晶200は、外部と遮断されるように基板100とエージングフィルム300との間の空間である溝部110に位置することが好ましい。
【0027】
基板100は、熱可塑性樹脂及び紫外線硬化性樹脂の中から選択される少なくとも一つを含む。基板が熱可塑性樹脂である場合、モールドの熱加圧により、紫外線硬化性樹脂を含む場合、紫外線による硬化により容易に溝部110を形成することができる。
【0028】
熱可塑性樹脂は、アセタール、フルオロカーボン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びポリビニルアルコールの中から選択される一つ以上であることが好ましく、アクリル(メチルメタクリレート)(PMMA)、アクリロニトリルブタミン(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリ塩化ビニル(PVC)の中から選択される一つ以上であることがより好ましい。
【0029】
紫外線硬化性樹脂は、二重結合を有している不飽和ポリエステル樹脂系、ポリエステルアクリレート樹脂系、ポリウレタンアクリレート樹脂系、及びエポキシアクリレート樹脂系の中から少なくとも一つ以上であることが好ましい。より好ましくは、グリコール系アクリレートとして、ポリプロピレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、及びポリエチレングリコールジメタクリレートの中から選択される少なくとも一つ以上であることがよい。
【0030】
熱可塑性樹脂は、特にインプリンティングを介して微細なパターンを形成するのが容易であり、モールド形成後に安定的に形状を維持し、コロイド結晶の光反射特性が一定に維持されるようにするのに有利である。また、熱可塑性樹脂に柔軟性がある場合、連続工程が可能なようにするだけでなく、最終製品に柔軟性を付与し、有価証券、カードなど、柔軟性が必要な製品に適用が可能になる。また、外部の衝撃からコロイド結晶が形成されたパターンを保護して最終製品の耐久性向上に寄与する。
【0031】
紫外線硬化性樹脂は、コロイド結晶との接合力がよくなってコロイドの自己組立てを助けて熟成過程を容易にする。また、紫外線硬化性樹脂を熱可塑性樹脂上に塗布して使用する場合、微細パターンの形成が容易になり、工程収率が改善される。
【0032】
溝部110は、基板の少なくとも一部に形成され、蝕刻、掘り出し、及びインプリンティングなど、多様な形態で形成が可能であるが、連続工程のためには熱圧着を介したインプリンティング方法が好ましい。また、基板製造過程で既に形成された溝部110を含む基板が使われることもできる。ただし、基板100を熱可塑性樹脂にする場合、インプリンティングを介した連続工程を実行することができて有利である。
【0033】
溝部110と隣接した溝部との間隔が0.1μm乃至50mm範囲であり、溝部の深さは10乃至200μm範囲であることが好ましい。溝部と溝部との間隔が0.1μmより狭く形成される場合、間隔が狭くてモールドを介した溝部を成形しにくいし、溝部の形状が維持されにくくて後続工程に多くの問題が発生する。溝部間の間隔が50mmより大きい場合、視認性が落ちる現象が現れた。
【0034】
溝部の深さは、10μmより小さい場合、反射色を示すコロイド結晶層が小さくて反射される光が少なくため、反射色が明確に表現されない問題が発生したし、200μmより大きい場合、十分の反射色表現は可能であるが、溝部内にコロイド結晶が満たされる時間及び自己組立て時間がたくさん必要となってコロイド結晶形成に多くの時間が必要であった。
【0035】
溝部一個の大きさは、基板の上部で見た時、横及び縦の長さが共に10μm乃至20mmであることが好ましい。溝部の基板上部での形状は、三角形及び四角形などの多角形であってもよく、原形や楕円形の形状であってもよい。インプリンティング工程や視認性などを考慮する場合、四角形の形状が好ましい。溝部の基板での断面形状は、四角形や三角形が好ましく、基板表面での溝部の平面大きさが基板底面での溝部の平面大きさに比べて同じまたは大きいことが好ましい。
【0036】
また、本発明の一例に係るセキュリティデバイス10は、優れた柔軟性を確保する側面で適切な厚さ範囲を有することが好ましく、具体的な例を挙げると、セキュリティデバイス10は、厚さが30乃至500μmである。このような範囲でセキュリティデバイス10が高い反射率を有し、且つ優れた柔軟性を確保することができる。より好ましくは、セキュリティデバイス10の厚さは、30乃至150μmであり、さらに好ましくは、50乃至100μmである。
【0037】
図2a及び図2bに示すように、溝部110は、基板100の両側面のうち一側にのみ含まれ、または基板100の両側面に全て含まれることができる。溝部110が基板100の両側面に全て形成される場合、第1の面120に形成される溝部形状と第2の面130に形成される溝部の形状は同じであってもよく(図2a)、第1の面120に形成される溝部形状と第2の面130に形成される溝部の形成は異なってもよい(図2b)。これは応用される製品特性及びイメージ特性に合うように選択できる。
【0038】
コロイド結晶200は、図示してはいないが、コロイド粒子とマトリックス化合物からなることが一般的である。コロイド粒子は、規則的な配列を介してコロイド結晶を形成する。この時に使われるコロイド粒子は、規則的な配列のために単分散球状粒子であることが好ましい。コロイド粒子の平均大きさは、50乃至300nmであることが好ましい。コロイド粒子の平均大きさが50nmより小さい場合、可視光領域の反射色を表現するためには約10%のコロイドが必要であり、この場合、コロイド粒子間の間隔が広くて規則的な配列が難しかった。また、50nm以下の単分散粒子の製造も難しかった。粒子間の反発力が不均一で自己組立てによる規則的な配列が難しかったし、粒子の大きさが300nmより大きい場合の単分散粒子製造に難しさはないが、可視光領域の反射色を表現するためには50%以上のコロイドが必要となって粘度があまりにも高くて自己組立てが難しく、工程制御が難しい問題がある。
【0039】
コロイド結晶に使われる単分散球状粒子は、当業界において通常的に使われるものであれば、特別に限定せずに使用することができる。コロイド粒子は、マトリックスに分散されて結晶格子構造を形成する。具体的な例を挙げると、コロイド粒子は、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、有機ナノ粒子、及び炭素構造体ナノ粒子などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上である。より詳しくは、金属ナノ粒子は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、及びケイ素(Si)などから選択されるいずれか一つまたはこれらの混合物またはこれらの合金などであり、金属酸化物ナノ粒子は、前記金属ナノ粒子の酸化物である。有機ナノ粒子は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、及びポリカーボネートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の高分子ナノ粒子であり、炭素構造体ナノ粒子は、黒鉛などである。
【0040】
好ましくは、シリカ、二酸化チタン、ポリスチレン、及びポリメタアクリレートの中から選択される少なくとも一つの組成からなり、単分散の球状粒子形成が容易で、かつコロイド結晶形成が容易で、比較的耐久性も優れる。最も好ましくは、シリカ粒子であった。
【0041】
本発明でのマトリックス化合物として、多官能性化合物及び光開始剤などが含まれる。本発明の一例に係る分散液において、特別に限定しないが、多官能性化合物:コロイド粒子の体積分率は0.9:0.1乃至0.5:0.5である。このような範囲でコロイド粒子間の反発力が効果的に作用してコロイド粒子が結晶格子構造に配列されることができ、特定波長で高い反射率を有して視認性及び識別性に優れる。より効果的にコロイド粒子を結晶格子構造に配列するための側面で、より好ましくは、多官能性化合物:コロイド粒子の体積分率は0.8:0.2乃至0.6:0.4である。光開始剤は、多官能性化合物が十分に光重合されることができる場合であれば、特別に限定しないが、例えば、多官能性化合物に対して0.3乃至3重量%添加されることができ、より好ましくは、0.5乃至2重量%添加されることがセキュリティデバイス10の反射率を低下させなくてよい。
【0042】
一方、本発明の一例に係る二つ以上の光重合性官能基を含有する多官能性化合物は、光重合が可能であり、重合後コロイド粒子の自己組立てを助けながら高反射特性を維持することができ、優れた柔軟性を提供することができるものであれば、特別に限定せずに使用することができる。
【0043】
具体的な一例として、多官能性化合物は、二つ以上の光重合性官能基を含有する単量体または二つ以上の光重合性官能基を含有する予備重合体である。このとき、光重合性官能基は、光照射を介して重合されることができる重合性基であれば、特別に限定しないが、具体的な例を挙げると、ビニル基、アクリレート基またはメタクリレート基などのエチレン性不飽和基の中から選択される少なくとも一つ以上である。
【0044】
より具体的な一例として、多官能性化合物は、エトキシレートトリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA;Ethoxylated trimethylolpropane triacrylate)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラクリレート[Di(trimethylolpropane) tetracrylate]、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート(Glycerol propoxylate triacrylate)、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(Trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(Trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)、またはトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(Trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)などの光硬化性多官能性単量体、及びポリウレタン系予備重合体などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上である。
【0045】
より詳しくは、ポリウレタン系予備重合体は、本発明で目標とする物性、例えば、柔軟性、屈折率、及び反射率などの物性を破らない範囲でポリイソシアネート系化合物とポリオル系化合物などの重合反応を介して製造されたものである。
【0046】
本発明の一例において、ポリイソシアネート系化合物は、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、及び脂環族ポリイソシアネートなどから選択される一つまたは二つ以上であり、より具体的な例を挙げると、芳香族ポリイソシアネートは、1、3-フェニレンジイソシアネート、1、4-フェニレンジイソシアネート、2、4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2、6-トリレンジイソシアネート、4、4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2、4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4、4′-ジイソシアナトビフェニル、3、3′-ジメチル-4、4′-ジイソシアナトビフェニル、3、3′-ジメチル-4、4′-ジイソシアナトジフェニルメタン、1、5-ナフチレンジイソシアネート、4、4′、4″-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートまたはp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等であり、脂肪族ポリイソシアネートは、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1、6、11-ウンデカントリイソシアネート、2、2、4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、2、6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)プーマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネートまたは2-イソシアナトエチル-2、6-ジイソシアナトヘキサノエート等であり、脂環族ポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4、4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-ジクロヘキセン-1、2-ジカルボキシレート、2、5-ノルボルナンジイソシアネートまたは2、6-ノルボルナンジイソシアネート等であるが、これに特別に制限されるものではない。
【0047】
本発明の一例において、ポリオル系化合物は、ポリエステルポリオル、ポリエーテルポリオル、及びこれらの混合物などを使用することができ、より具体的な例を挙げると、ポリエステルポリオルは、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリ(1、6-ヘキサアジペート)、ポリジエチレンアジペートまたはポリ(e-カプロラクトン)などであり、ポリエーテルポリオルは、ポリエチレングリコール、ポリジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールまたはポリエチレンプロピレングリコールなどであるが、これに限定されるものではない。
【0048】
また、多官能性化合物は、熟成温度で液状であるものを使用すべきであり、好ましくは、熟成温度での粘度が1乃至1000cps、より好ましくは、5乃至500cpsであるものを使用することが好ましい。
【0049】
本発明の一例に係る光開始剤は、当業界において通常的に使われるものであれば、特別に限定せずに使用することができ、具体的な例を挙げると、1-ヒドロキシ-サイクロヘキシル-フェノール-ケトン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケトン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンゾフェノン、2、2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2、2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、4、4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2、4-ジメチルチオキサントン、及び2、4-ジエチルチオキサントン等から選択されるいずれか一つまたは二つ以上である。
【0050】
エージングフィルム300は、厚さが10乃至300μmであることが好ましい。エージングフィルム300の厚さが10μmより薄い場合、コロイド結晶の熟成ステップでコロイド結晶を保護するように平らに密着されなくて、外部の刺激でコロイド結晶フィルムを十分に保護することができないため、耐久性向上に寄与できなかった。エージングフィルム300の厚さが300μmより大きい場合、光透過性が落ちて、製造されたセキュリティデバイス10の視認性が悪くなり、最終製品に適用される場合、柔軟性が落ちる問題が発生した。
【0051】
エージングフィルム300は、光の透過性が高いほどよく、表面が有光または無光のどちらであってもよい。特に、エージングフィルム300の種類は、コロイド結晶の自己組立てを助けることができる特徴があれば、光硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂など、全て利用可能であった。そして、コロイド結晶の品質を維持することができるように光黄変が発生しない透明色の材質が適した。
【0052】
エージングフィルム300は、フィルム内に隠しイメージを含むことができる。隠しイメージは、フィルムを特定角度の視野角でのみ現れたり消えたりする特性、または視野角毎に異なる色相と見られるイメージ形態で具現でき、偏光特性を活用して、特定角度でのみコロイド結晶のイメージを確認するようにすることもできる。
【0053】
また、エージングフィルム300は、基板と同じ素材で構成されることができ、反射率90%以上の高分子フィルムであれば、基材に限定せずに使用が可能である。
【0054】
エージングフィルム300は、コロイド結晶200及び基板100と分離が容易な離型フィルムである。離型フィルムで形成すると、本発明のセキュリティデバイス10を有価証券やカードなどに適用する場合、エージングフィルム300を除去した後、有価証券やカードの透明フィルムなどに代替適用できるため、全体製品の厚さを減らすことができる。
【0055】
本発明のセキュリティデバイス10は、連続工程を介して製造可能であり、連続工程で製造されるセキュリティデバイスの一例を図3に示し、本発明のセキュリティデバイス10の製造方法は、下記のステップを含む:
【0056】
1)少なくても一面に多数の溝部110が形成された基板100を供給するステップ;
【0057】
2)基板の溝部110にコロイド分散液400が位置するようにコロイド分散液を注入するステップ;
【0058】
3)コロイド分散液400を注入するステップ以後に、エージングフィルム300を供給して前記溝部110が形成された少なくとも一面にエージングフィルム300を付着するステップ;
【0059】
4)コロイド分散液400を硬化させるステップ。
【0060】
基板100を供給するステップ以前に金型600を圧着して溝部110を形成するステップをさらに含むことができる。
【0061】
基板100とエージングフィルム300は、ロール形状で巻かれる状態で解けながら供給されることができる。
【0062】
供給される基板100は、溝部110を含むことができ、金型600を介して圧入して溝部110を形成することもできる。金型600で基板を圧入した後、基板の組成によって熱を加え、または冷却をさせ、または紫外線を照射する方式により硬化させて基板上に溝部110が形成されるようにする。溝部110にはコロイド分散液400を位置させる。基板の供給される方向と異なる方向でエージングフィルム300が供給され、溝部110のコロイド分散液400が位置した以後、コロイド分散液400が基板100とエージングフィルム300との間に位置するようにエージングフィルム300を基板上に付着する。
【0063】
コロイド分散液400を溝部に位置させた後、エージングフィルム300で覆ってコロイド分散液400の厚さを精巧に調節でき、このように非常に簡単な過程を介して分散液が均一な厚さを有するフィルム形状を有するようにすることができる。
【0064】
基板100及びエージングフィルム300から選択されるいずれか一つ以上は、光が透過されて多官能性化合物が効果的に光重合されることができることが好ましい。
【0065】
エージングフィルム300が付着された基板は、熟成ステップを経るようになる。コロイド分散液400は、溝部100に位置した以後30℃以上乃至100℃未満の温度で熟成させることによって、コロイド粒子が多官能性化合物マトリックス内部で速く自己組立てされるようにすることができ、自己組立て時にコロイド粒子がきわめて均一に結晶格子構造に配列されるに応じて製造されたセキュリティデバイス10の最大反射率が大きく増加できる。
【0066】
このとき、熟成は、塗布された分散液を同一条件の温度で一定時間放置することを意味することができ、本発明の一例に係る分散液は、溶媒を含んでいないため、溶媒を除去するために熱を加えるものではなく、30℃乃至100℃未満の温度で分散液を熟成させて多官能性化合物の粘度を適切に調節し、これによってコロイド粒子をきわめて精密で、かつ規則的な結晶格子構造に配列させるためである。このためには熟成温度が最も重要であり、より好ましくは40℃乃至70℃で熟成ステップを実行することがよい。このような範囲でコロイド粒子が高度に精密に規則的に配列された結晶格子構造を形成することができ、これによって製造されるセキュリティデバイス10がより優れた反射率を有して優れた視認性を示すことができる。それに対して、熟成温度が30℃未満にあまりにも低い時、コロイド粒子の結晶格子構造の精密性が多少低下されることができ、熟成温度が100℃を超過する場合、分散液が沸いて内部で気泡が発生する問題が発生でき、高分子レジンの黄変現象が発生する問題も発生した。また、このような問題によってコロイド粒子の結晶格子構造の規則性が低下されることができる。
【0067】
また、熟成ステップは、一定時間以上実行することがよいし、具体的な例を挙げると、熟成は、1分以上実行されることができる。1分未満で熟成を実行する時、コロイド粒子の結晶格子構造の精密性が多少低下されることができ、その状態で光を照射する時、製造されたセキュリティデバイス10の最大反射率が低くなることができる。好ましく、製造されるセキュリティデバイス10の最大反射率を大きく増加させるための側面で、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上熟成ステップを実行することが好ましいし、また、熟成時間は、熟成温度によって異なるように調節することがよい。このとき、熟成時間の上限は、特別に限定しないが、一定時間以上熟成しても最大反射率がそれ以上増加しないに応じて、それ以上熟成を実行することは、時間及びエネルギーの浪費であり、多官能性化合物が部分的に熱重合される可能性があってよくない。詳細に、熟成時間の上限は、24時間以下であるが、製造時間の短縮のための側面で120分以下に熟成ステップを実行することが好ましい。
【0068】
熟成ステップを経た基板100は、UVランプ700によりコロイド分散液400が硬化されてコロイド結晶が形成される。UVランプで照射される光は、200乃至500nmの波長領域を有する光であり、より好ましくは、254乃至400nmの波長領域を有する光であり、さらに好ましくは330乃至370nmの波長領域を有する光であるが、これに限定されるものではなく、多様な波長帯域の光が混合された光であり、または単一波長帯域の光である。
【0069】
本発明の一例において、光照射は、セキュリティデバイス10の大きさなどによってその条件を異なるように調節でき、多官能性化合物を含む分散液が十分に硬化される時まで光が照射されることができることはもちろんである。非限定的な一具体例として、光照射は、出力5乃至20mW/cmの光を3乃至30秒間照射することによって実行されることができ、より好ましくは、出力7乃至15mW/cmの光を5乃至10秒間照射することによって実行されることができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0070】
コロイド分散液を硬化させるステップ以後に、適用される製品によってエージングフィルム300は除去されることができる。
【0071】
このようにセキュリティデバイス10を連続工程に進行する場合、製造時間を大きく減少させることができ、効率的な生産が可能になる。特に、毛細管力を利用して二つの透明基材間に分散液を注入する過程に大した時間を必要とした既存方式とは違って、本発明は、単純に一つの基材上に分散液を塗布した後、その上に他の基材を載せる非常に簡素な方式でセキュリティデバイス10を製造することができることによって、フィルム製造時に必要となる時間が大きく減って製造効率を大きく向上させることができるという長所がある。
【0072】
コロイド結晶は、粒子の大きさ、マトリックス混合物の種類、及び工程条件などにより多様な光反射特性を示すため、複製が難しくて優れたセキュリティを有している。したがって、本発明のセキュリティデバイス10は、有価証券、クレジットカード、セキュリティカード、偽造防止用製品などに活用可能である。
【0073】
本発明は、一実施例を参考して説明されたが、これは例示に過ぎず、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解することができる。したがって、本発明の保護範囲は、添付された請求範囲によってのみ決まらなければならない。
【符号の説明】
【0074】
100 基板
110 溝部
120 第1の面
130 第2の面
200 コロイド結晶
300 エージングフィルム
400 コロイド分散液
600 金型
700 ランプ
図1
図2a
図2b
図3