(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】耐火性樹脂組成物、耐火材、及び建具
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20220614BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220614BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220614BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220614BHJP
C08K 3/016 20180101ALI20220614BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20220614BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20220614BHJP
C08L 11/00 20060101ALI20220614BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20220614BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/04
C08K3/22
C08K3/013
C08K3/016
C08L101/02
C08L9/06
C08L11/00
C09K21/02
E06B5/16
(21)【出願番号】P 2022039428
(22)【出願日】2022-03-14
(62)【分割の表示】P 2020095791の分割
【原出願日】2020-06-01
【審査請求日】2022-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智也
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-138180(JP,A)
【文献】特開2019-056120(JP,A)
【文献】特開2020-002367(JP,A)
【文献】特開2018-204016(JP,A)
【文献】特表2020-514497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0118909(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09K 21/00-21/14
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂と、熱膨張性黒鉛と、第一遷移元素の金属酸化物とを備え、
前記マトリックス樹脂が、エラストマー成分を含有し、
前記金属酸化物が、酸化鉄、酸化マンガン、及び酸化銅からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記金属酸化物の含有量が、組成物全量に対して3~50質量%である耐火性樹脂組成物
(但し、塩化ビニル樹脂又は塩素化ビニル樹脂を含有するものを除く。)。
【請求項2】
前記酸化鉄が、FeO、Fe
2O
3、及びFe
3O
4からなる群から選択される少なくとも1種である請求項
1に記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物が酸化鉄を含み、かつ耐火性樹脂組成物における、鉄原子数濃度に対するCHO原子数濃度の比が3~50である請求項
1又は2に記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに非リン系の無機充填剤を含有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項5】
前記非リン系の無機充填剤の含有量が、前記マトリックス樹脂100質量部に対して、10~100質量部である、請求項
4に記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱膨張性黒鉛の含有量が、マトリックス樹脂100質量部に対して、20~200質量部である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項7】
前記マトリックス樹脂が、ハロゲン原子、又はスチレン若しくはビニルアセテート由来の構成単位の少なくともいずれかを含有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項8】
前記エラストマー成分が、スチレン―ブタジエンゴム及びクロロプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~7のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物からなる耐火材。
【請求項10】
請求項
9に記載の耐火材を備えた建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性黒鉛を含有する耐火性樹脂組成物、耐火性樹脂組成物からなる耐火材、及び耐火材を備える建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱により膨張し延焼を防止するために、熱膨張性黒鉛と樹脂などのマトリックス樹脂を含む熱膨張性樹脂組成物を成形した耐火材が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。耐火材は、火災等の熱にさらされた場合に熱膨張性黒鉛を膨張させ膨張残渣を形成し、この膨張残渣を利用して火災の延焼、煙の拡散を防止することができる。熱膨張性樹脂組成物は、優れた耐火性を確保するために、加熱時の膨張倍率及び膨張後の残渣硬さの両方を高くすることが求められている。
【0003】
例えば、特許文献2では、熱膨張性黒鉛と熱可塑性オレフィン系樹脂とを含み、原料として使用する熱膨張性黒鉛の平均粒子径が110μm以上であり、かつ成形した熱膨張性樹脂組成物中に含まれる粒子径が100μm以上の熱膨張性黒鉛の粒子数が、1mm2当たり5個以上である、熱膨張性樹脂組成物が示されている。特許文献2では、平均粒子径が大きい熱膨張性黒鉛を使用しつつ、その粒子径を組成物においても維持することで、膨張倍率及び膨張後の残渣硬さを高くすることが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2016/031905号
【文献】特開2018-100402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の方法によれば樹脂組成物を得る際に混練条件などを制御する必要があり、実用的な方法で樹脂組成物を製造すると、加工方法によっては、混練等の加工の際に熱膨張性黒鉛が粉砕され膨張倍率などを大きくできない問題がある。
そこで、本発明は、実用的な方法で簡単に得ることができ、膨張倍率及び膨張後の残渣硬さが高い耐火性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、熱膨張性黒鉛を含む耐火性樹脂組成物に、所定量の第一遷移元素の金属酸化物を配合することで、膨張倍率及び膨張後の残渣硬さを高くできることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[11]を提供する。
[1]マトリックス樹脂と、熱膨張性黒鉛と、第一遷移元素の金属酸化物とを備え、前記金属酸化物の含有量が、組成物全量に対して3~50質量%である耐火性樹脂組成物。
[2]前記金属酸化物が、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マンガン、及び酸化銅からなる群から選択される少なくとも1種である上記[1]に記載の耐火性樹脂組成物。
[3]前記金属酸化物が、酸化鉄を含む上記[1]又は[2]に記載の耐火性樹脂組成物。
[4]前記酸化鉄が、FeO、Fe2O3、及びFe3O4からなる群から選択される少なくとも1種である上記[2]又は[3]に記載の耐火性樹脂組成物。
[5]耐火性樹脂組成物における、鉄原子数濃度に対するCHO原子数濃度の比が3~50である上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
[6]さらに非リン系の無機充填剤を含有する、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
[7]前記非リン系の無機充填剤の含有量が、前記マトリックス樹脂100質量部に対して、10~100質量部である、上記[6]に記載の耐火性樹脂組成物。
[8]前記熱膨張性黒鉛の含有量が、マトリックス樹脂100質量部に対して、20~200質量部である、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
[9]前記マトリックス樹脂が、ハロゲン原子、又はスチレン若しくはビニルアセテート由来の構成単位の少なくともいずれかを含有する、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
[10]上記[1]~[9]のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物からなる耐火材。
[11]上記[10]に記載の耐火材を備えた建具。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実用的な方法で簡単に得ることができ、膨張倍率及び膨張後の残渣硬さが高い耐火性樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明についてより詳細に説明する。本発明の耐火性樹脂組成物は、マトリックス樹脂と、熱膨張性黒鉛と、金属酸化物とを備える。以下、各成分の詳細について説明する。
【0009】
<マトリックス樹脂>
本発明で使用されるマトリックス樹脂は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂成分であってもよいし、エラストマー成分などであってもよい。これらは単独で使用してもよく、2種以上併用してもよく、例えば熱可塑性樹脂とエラストマー成分とを併用してもよい。
【0010】
(熱硬化性樹脂)
マトリックス樹脂として用いる熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して耐火材のマトリックス樹脂を形成し得る樹脂であれば特に制限なく用いることができる。熱硬化性樹脂は、2液型の熱硬化性樹脂でもよい。2液型の熱硬化性樹脂は、例えば、主剤と、硬化剤とからなる熱硬化性樹脂である。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。これら熱硬化性樹脂の中では、エポキシ樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂は、例えば、主剤であるエポキシ化合物と、硬化剤とからなる樹脂である。また、本発明に用いる熱硬化性樹脂としてのウレタン樹脂は、例えば、主剤であるポリオール化合物と、硬化剤であるポリイソシアネート化合物などの硬化剤とからなる樹脂である。
なお、本明細書では、特に断りの無い限り、熱硬化性樹脂の含有量とは、該熱硬化性樹脂を構成する成分の合計を意味する。例えば、2液型の熱硬化性樹脂であれば、主剤と硬化剤との合計量を「熱硬化性樹脂の含有量」とする。
【0011】
エポキシ樹脂は、芳香環を有するエポキシ樹脂でも、芳香環を有しないエポキシ樹脂でもよいが、不燃性を高める観点から、芳香環を有するエポキシ樹脂が好ましい。
上記した芳香環を有するエポキシ樹脂を得るために用いるエポキシ化合物は、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ化合物、ビスフェノールF型のエポキシ化合物、ビフェニル型のエポキシ化合物、ナフタレン型のエポキシ化合物、フェノールノボラック型のエポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型のエポキシ化合物、テトラフェノールエタン型のエポキシ化合物、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型のエポキシ化合物、アミノフェノール型のエポキシ化合物、アニリン型のエポキシ化合物、キシレンジアミン型のエポキシ化合物などが挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型のエポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物が好ましい。
【0012】
硬化剤としては、重付加型または触媒型のものが用いられる。重付加型の硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が例示される。また、触媒型の硬化剤としては、例えば、3級アミン、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が例示される。硬化剤の含有量は、特に限定されないが、上記エポキシ化合物100質量部に対して50~150質量部の範囲内であることが好ましい。50質量部以上であると、エポキシ化合物が硬化しやすくなり、150質量部以下であると、硬化剤の配合量に応じた効果が得られる。
熱硬化性樹脂の硬化方法は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができ、例えば上記エポキシ樹脂又はウレタン樹脂であれば、主剤と硬化剤とを混合し、必要に応じて加熱することで硬化できる。
【0013】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1-)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0014】
(エラストマー成分)
エラストマー成分としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等の各種ゴム成分が挙げられる。
また、エラストマー成分としては、熱可塑性エラストマーでもよい。熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPO)、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性エステル系エラストマー、熱可塑性アミド系エラストマー、熱可塑性塩化ビニル系エラストマー、これらの組み合わせ等が挙げられる。TPOはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンをハードセグメントとし、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム等のゴムをソフトセグメントとする熱可塑性エラストマーが挙げられる。
以上のマトリックス樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
マトリックス樹脂は、耐火材の難燃性や残渣硬さを高めて耐火性を向上させる観点から、ハロゲン原子、又はスチレン若しくはビニルアセテート由来の構成単位の少なくともいずれかを含有することが好ましい。そのような観点から、マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂が好ましい。なお、本明細書では、ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化物である塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂も、ポリ塩化ビニル系樹脂に含まれるものとする。
また、エラストマー成分として、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)が好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上が好ましい。
これら中では、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)がより好ましい。なお、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)及びクロロプレンゴム(CR)は、これらそれぞれを単独で使用してもよいが、スチレン-ブタジエンゴムとクロロプレンゴムを併用してもよい。
スチレン-ブタジエンゴム(SBR)及びクロロプレンゴム(CR)を併用する場合は、これらの含有量比(SBR/CR)は、質量比で10/90~90/10であることが好ましく、20/80~80/20であることがより好ましく、50/50~80/20であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明の耐火性樹脂組成物におけるマトリックス樹脂の含有量は、例えば20~80質量%である。耐火性樹脂組成物において、下限値以上のマトリックス樹脂を使用することで、耐火材の形状保持性が良好となる。また、上限値以下とすることで、熱膨張性黒鉛などを一定量以上配合することが可能になる。これら観点から、マトリックス樹脂の含有量は、30~70質量%が好ましく、35~65質量%がより好ましい。
【0017】
<熱膨張性黒鉛>
本発明の耐火性樹脂組成物に含有される熱膨張性黒鉛は、加熱時に膨張するものであり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、無機酸と、強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。無機酸としては、濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。また、強酸化剤としては、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。
また、上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等の中和剤で中和してもよい。脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。アルカリ金属化合物及び上記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0018】
熱膨張性黒鉛の粒度は、20~200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュかそれより小さいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層を得るのに十分であり、また粒度が20メッシュかそれより大きいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。なお、粒度は、JISZ8801-1に準拠した篩によって測定されたものである。また、粒径に関しては、50~200μmが好ましい。下限値以上とすると膨張性能が良好となり、また上限値以下とすると混練の際の加工性が良好となる。
熱膨張性黒鉛は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
耐火性樹脂組成物における熱膨張性黒鉛の含有量は、マトリックス樹脂100質量部に対して、20~200質量部の範囲であることが好ましい。熱膨張性黒鉛の含有量を上記範囲内とすることで、耐火材の膨張倍率、膨張後の残渣硬さ、及び膨張残渣の形状保持性を良好にして、耐火性を十分に発揮させることができる。
これら観点から、熱膨張性黒鉛の含有量は、マトリックス樹脂100質量部に対して、50質量部以上がより好ましく、60質量部以上がさらに好ましく、84質量部以上がよりさらに好ましく、また、150質量部以下がより好ましく、120質量部以下がさらに好ましく、100質量部以下がよりさらに好ましい。
【0020】
<金属酸化物>
本発明における耐火性樹脂組成物は、金属酸化物を含有する。金属酸化物は、第一遷移元素の金属の酸化物である。具体的な金属酸化物としては、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マンガン、及び酸化銅が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。耐火性樹脂組成物は、これら第一遷移元素の金属の酸化物を使用することで、膨張倍率及び膨張後の残渣硬さが高くなる耐火性樹脂組成物を、混練条件などを特段制御しなくても、実用的に簡単な方法で製造できる。また、膨張後の形状保持性や、酸素遮蔽性なども高くでき、そのため、複雑な形状をした建具内でも遮煙性、遮熱性を高くできる。
膨張倍率を高く維持しつつ、膨張後の残渣硬さなどを高くできる原理は、定かではないが、上記した金属酸化物は、加熱により膨張した熱膨張性黒鉛の炭素を焼結させ、それにより、高い膨張倍率を維持しつつ、膨張後の残渣硬さなどを高くできるためと推定される。
【0021】
本発明においては、耐火性樹脂組成物における第一遷移元素の金属酸化物の含有量は、3~50質量%である。上記金属酸化物の含有量が3質量%未満となると、金属酸化物による焼結が十分に進まず、膨張倍率を高く維持しつつ、膨張後の残渣硬さ、残渣の形状保持性、酸素遮蔽性を高くすることが難しくなる。また、50質量%より多くすると、熱膨張性黒鉛を多量に配合することが難しくなり、膨張倍率などを高くしにくくなる。これら観点から、第一遷移元素の金属酸化物の含有量は、5質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下である。
【0022】
また、耐火性樹脂組成物において、熱膨張性黒鉛に対する、第一遷移元素の金属酸化物の含有量比(金属酸化物/熱膨張性黒鉛)は、質量比で好ましくは0.05~0.55である。金属酸化物/熱膨張性黒鉛を上記範囲内とすることで、上記した金属酸化物による焼結を適切に進行させ、膨張倍率、膨張後の残渣硬さ及び膨張後の形状保持性のいずれをも優れたものしやすくなる。これら観点から、上記質量比(金属酸化物/熱膨張性黒鉛)は、0.08以上がより好ましく、0.12以上がさらに好ましく、また、より好ましくは0.45以下、さらに好ましく0.25以下である。
【0023】
金属酸化物としては、上記した中では、膨張倍率及び膨張硬さの両方をより優れたものとする観点から、酸化鉄、酸化銅が好ましく、酸化鉄がさらに好ましい。なお、酸化鉄としては、特に限定されないが、FeO、Fe2O3、及びFe3O4が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。これらの中では、Fe3O4が好ましい。
また、酸化銅としては、特に限定されないが、CuO、Cu2Oが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。これらの中では、好ましくはCuOである。
【0024】
なお、耐火性樹脂組成物は、酸化鉄を含有する場合、酸化鉄の含有量は、上記した金属酸化物の含有量と同様であり、耐火性樹脂組成物全量に対して、3~50質量%であるとよく、5質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下である。同様に、熱膨張性黒鉛に対する酸化鉄の含有量比(酸化鉄/熱膨張性黒鉛)は、特に限定されないが、質量比で好ましくは0.05~0.55であり、0.08以上がより好ましく、0.12以上がさらに好ましく、また、より好ましくは0.45以下、さらに好ましく0.25以下である。
【0025】
金属酸化物の形状は、特に限定されないが、いかなる形状の粒子であってもよく、針状、鱗片状、球状、多角形状、不定形状などのいずれでもよい。
【0026】
また、耐火性樹脂組成物は、上記したとおり、酸化鉄を含有することが好ましく、したがって、耐火性樹脂組成物は、鉄原子を含有することが好ましい。耐火性樹脂組成物における鉄原子数濃度に対するCHO原子数濃度比は、3~50であることが好ましい。原子数濃度比が上記範囲内であることで、熱膨張性黒鉛による耐火性を損なうことなく焼結が適切に進行して、膨張倍率、残渣硬さおよび膨張後の形状保持性を適切に向上させることができる。CHO原子数濃度比は、以上の観点から3~25であることがより好ましく、5~20であることがさらに好ましい。なお、鉄原子数濃度及びCHO原子数濃度は、蛍光X線分析により測定できる。また、CHO原子濃度とは、炭素原子、水素原子、及び酸素原子の原子数を合計した濃度を意味する。
【0027】
<非リン系の無機充填剤>
耐火性樹脂組成物は、さらに非リン系の無機充填剤を含有することが好ましい。無機充填剤は、骨材的な役割を果たして、膨張残渣の機械強度を向上させ、耐火材の残渣硬さ、膨張後の形状保持性を高めることができる。また、無機充填剤を非リン系とすることで、耐水性が向上する。したがって、水に長期間暴露した後でも、優れた膨張倍率、残渣硬さ、及び膨張後の形状保持性を確保できるようになる。なお、非リン系の無機充填剤とは、リン原子を有しない化合物により構成される無機充填剤を意味する。
【0028】
非リン系の無機充填剤としては、熱膨張性黒鉛及び金属酸化物以外のリンを含有しない無機物が挙げられる。具体的には、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウム等の金属硫酸塩、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、シリカ、珪藻土、ドーソナイト、タルク、カオリン、ドロマイト、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は、1種もしくは2種以上を使用することができる。
上記の中でも、耐火材の機械強度を向上させる観点から、無機金属塩が好ましく、金属水酸化物、及び金属炭酸塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、金属炭酸塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0029】
無機充填剤は、粒状であることが好ましい。無機充填剤の平均粒子径は、0.5~200μmの範囲が好ましく、1~50μmの範囲がより好ましい。平均粒子径は、例えば、空気透過法などにより求めるとよい。
【0030】
耐火性樹脂組成物におけるマトリックス樹脂100質量部に対する非リン系の無機充填剤の含有量は10~100質量部であることが好ましい。非リン系の無機充填剤の含有量を上記範囲内とすることで、膨張倍率を高く維持しつつ、残渣硬さ及び膨張残渣の形状保持性を高くしやすくなる。これら観点から、非リン系の無機充填剤の含有量は、15質量部以上がより好ましく、また、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0031】
<その他の成分>
耐火性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、滑剤、顔料、粘着付与樹脂、加硫剤、架橋剤、加工助剤等の上記した成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤が挙げられる。難燃剤としては、上記した熱膨張性黒鉛、金属酸化物、無機充填材以外の難燃剤が挙げられ、有機系難燃剤などが挙げられる。
【0032】
本発明の耐火性樹脂組成物は、リン成分を含有しないことが好ましい。リン成分を含有しないことで、耐火性樹脂組成物から形成される耐火シートの耐水性が向上する。ここで、リン成分とは、リン原子を含む化合物である。したがって、上記したマトリックス樹脂、熱膨張性黒鉛、金属酸化物、無機充填材のみならず、その他の成分にもリン原子を含む化合物を使用しないことが好ましい。
以上の観点から、耐火性樹脂組成物のリン原子数濃度は、耐火性樹脂組成物における全原子数に対して、1%以下であることが好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.1%以下がさらに好ましい。なお、リン原子数濃度は、蛍光X線分析により測定できる。
【0033】
耐火性樹脂組成物は、溶剤により希釈されてもよい。溶剤により希釈される場合、上記した耐火性樹脂組成物全量とは、固形分量であり、すなわち、溶剤を除去した耐火性樹脂組成物の量である。同様に、リン原子数濃度なども溶剤を除去した耐火性樹脂組成物において測定するとよい。
【0034】
<耐火材>
本発明の耐火材は、耐火性樹脂組成物よりなる。耐火材は、上記した耐火性樹脂組成物を適宜所望の形状に成形するなどして得ることができる。耐火材は、シート状、ブロック状など任意の形状を有するとよいが、シート状であることが好ましい。
耐火材の厚みは、特に限定されないが、耐火性及び取扱い性の観点から、0.2~10mmが好ましく、0.5~3.0mmがより好ましい。
【0035】
耐火材の膨張倍率は、28倍以上が好ましい。また、耐火材の膨張後の残渣硬さは、好ましくは0.25kgf/cm2以上である。耐火材は、膨張倍率及び残渣硬さがこれら下限値以上となることで、耐火性が良好となる。
膨張倍率は、耐火材を試験片として((加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ))により算出される。ここで、耐火材の膨張倍率及び残渣硬さは、600℃で30分間加熱した後の膨張倍率及び残渣硬さであるが、本明細書では、60℃の純水に1週間浸漬し、次いで、乾燥した後に測定した膨張倍率及び残渣硬さである。したがって、耐火材は、上記下限値以上の膨張倍率及び残渣硬さを有することで耐水性にも優れる。
なお、膨張倍率及び残渣硬さの測定方法は、詳細には実施例に記載する実施することができる。
【0036】
耐火材の膨張倍率は、耐火性及び耐水性の観点から、30倍以上がより好ましく、35倍以上がさらに好ましく、38倍以上がよりさらに好ましい。なお、膨張倍率の上限は、特に限定されないが、例えば80倍程度であればよく、実用的には50倍程度である。
また、耐火材の膨張後の残渣硬さは、耐火性及び耐水性の観点から、より好ましくは0.28kgf/cm2以上、さらに好ましくは0.30kgf/cm2以上、よりさらに好ましくは0.33kgf/cm2以上である。なお、膨張倍率の上限は、特に限定されないが、例えば0.6kgf/cm2であればよく、実用的には0.5kgf/cm2である。
【0037】
耐火材は、耐火材単体で使用されてもよいが、適宜他の部材が取り付けられて使用されてもよい。例えば、耐火材は、耐火材以外の部材が積層されていてもよく、耐火材の少なくとも一方の面に基材が設けられてもよい。基材は、可燃材料層であってもよいし、準不燃材料層又は不燃材料層であってもよい。基材の厚みは特に限定されないが、例えば5μm~1mmである。可燃材料層に使用される素材としては、例えば、布材、紙材、木材、樹脂フィルム等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。基材が準不燃材料層又は不燃材料層である場合、使用される素材としては、例えば、金属、無機材等を挙げることができ、より具体的には、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、グラファイト繊維からなる織布又は不織布などが挙げられる。また、これら繊維と金属の複合材料であってもよく、例えば、アルミガラスクロスが好ましい。また、耐火材には、粘着剤層が積層されてもよい。粘着剤層は、上記基材の上に設けられてもよいし、耐火材の表面に直接形成されてもよい。
【0038】
<耐火性樹脂組成物及び耐火材の製造方法>
本発明の耐火性樹脂組成物は、少なくともマトリックス樹脂、熱膨張性黒鉛、及び金属酸化物を混合して、耐火性樹脂組成物を調製するとよい。また、耐火性樹脂組成物に上記した非リン系の無機充填剤などの任意の成分を配合する場合には、マトリックス樹脂、熱膨張性黒鉛、及びリン化合物に加えて、任意の成分も合わせて配合して混合すればよい。
各成分の混合は適宜加熱して行ってもよいが、その場合、混合される熱膨張性黒鉛の温度が、膨張開始温度未満となるように制御されればよい。
【0039】
耐火性樹脂組成物の調製において、上記各成分の混合に使用される装置は、特に限定されないが、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機、攪拌翼を備える攪拌機等、公知の混練機を使用することができる。
なお、耐火性樹脂組成物は、上記の通り有機溶剤で希釈させてスラリーなどにしてもよいが、有機溶剤を除去する工程が不要なため、有機溶剤を使用しないことが好ましい。
【0040】
耐火性樹脂組成物は、シート状などの所望の形状に成形して、耐火材として使用するとよい。所望の形状に成形する方法は、特に限定されないが、型枠に流し込んでシート状などの形状にするとよい。また、混練機として、単軸押出機、二軸押出機などを使用する場合には、押出機から耐火性樹脂組成物をシート状に押し出すとよい。また、プレス機などを使用してプレス成形などにより成形してもよい。さらに、基材上、又は離型処理を施した離型フィルム上に耐火性樹脂組成物を所望の厚さとなるよう塗工し、シート状に成形する方法なども挙げられ、この場合も、適宜プレスなどしてもよい。
【0041】
ここで、マトリックス樹脂が、熱可塑性樹脂、及びエラストマー成分のいずれかである場合には、シート状などの所望の形状に成形することで、耐火材を得ることができる。
また、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である場合や、加硫剤、架橋剤などを含む場合には、所望の形状に成形した後に、耐火性樹脂組成物を加熱などして、耐火性樹脂組成物を架橋、硬化などさせるとよい。また、耐火性樹脂組成物が溶剤により希釈される場合などには適宜加熱して乾燥などするとよい。
耐火性樹脂組成物を所望の形状に成形した後に加熱する場合、加熱温度は、架橋剤の種類、溶剤の種類、熱硬化性樹脂の種類などによって適宜調整すればよいが、熱膨張黒鉛の熱膨張開始温度未満に調整する。熱膨張開始温度未満とすることで、耐火性樹脂組成物における膨張性黒鉛がほとんど膨張されずに、耐火性樹脂組成物に含有される膨張性黒鉛は、耐火材においても膨張していない膨張性黒鉛となる。
【0042】
<耐火材の使用方法>
本発明の耐火材は、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設等の各種の建築物、自動車、電車などの各種車両、船舶、航空機などの各種乗り物に使用できるが、これらの中では建築物に使用されることが好ましい。
耐火材は、上記建築物、車両、船舶、航空機などを構成する部材に取り付けられて使用される。例えば、建築物では、窓、障子、ドア、戸、ふすま等の建具、柱、鉄骨コンクリート等の壁、床、屋根等に取り付けられて、火災や煙の侵入を低減又は防止することができる。これらの中では、建具に使用することが好ましい。すなわち、好ましい態様において、建具は上記した本発明の耐火材を備える。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。本実施例における測定及び評価方法は以下の通りである。
【0044】
<膨張倍率>
得られた耐火材から切り出した試験片(長さ100mm、幅100mm、厚さ1.5mm)を500mLの純水に60℃で密閉容器にて1週間浸漬した後、サンプルを取り出した。該サンプルを60℃にて96時間、蒸発、乾燥させて作成した試験片をステンレス製のホルダー(101mm角、高さ80mm)の底面に設置し、600℃に加熱した電気炉に供給し、電気炉において600℃で30分間加熱した。その後、試験片の一番高い部分における、横幅、縦幅、厚さを測定し、((加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ))により、膨張倍率を算出した。
【0045】
<残渣硬さ>
膨張倍率を測定した加熱後の試験片を圧縮試験機(カトーテック社製、「フィンガーフイリングテスター」)に供給し、直径1mmの3点圧子で0.1cm/秒の速度で圧縮し、残渣上面からの10mm圧縮までの最大応力を測定し、燃焼後の試験片の圧縮強度を測定し、残渣硬さとした。
【0046】
<残渣の形状保持性>
残渣の形状保持性は、膨張倍率を測定した試験片の両端部を手で持って持ち上げて、その際の残渣の崩れやすさを目視して測定した。試験片が崩れることなく持ち上げられた場合をPASSと評価し、試験片が崩壊して持ち上げられない場合をFAILと評価した。
なお、上記残渣硬さは膨張後の残渣の硬さの指標になるが、測定が残渣の表面部分に限られ残渣全体の硬さの指標にならないことがあるが、形状保持性を評価することで、残渣全体の硬さが適切であることが確認できる。
【0047】
<原子数濃度>
耐火性樹脂組成物に含有される各原子の濃度を、蛍光X線分析により、原子数濃度として測定した。なお、蛍光X線分析は、以下の測定条件により測定した。
(蛍光X線分析)
使用装置:X線分析顕微鏡、「XGT―5200」(堀場製作所製)
測定原理:エネルギー分散型
測定元素範囲:Na~U
X線管:Rhターゲット
管電圧、電流:30kV、1.0mA
パルス処理時間:P2
X線照射径:100μm
測定時間:200s
雰囲気:大気
(なお、X線強度より検出された元素を100%とした場合の相対定量とする。)
【0048】
[実施例1~6、比較例1、2]
実施例1~6、比較例1,2それぞれにおいて、下記表1に示す配合に従って各成分をロールに投入して150℃で5分間混練して、耐火性樹脂組成物を得た。得られた耐火性樹脂組成物を、プレス成形して、厚さ1.5mmの耐火材を得た。得られた実施例1~6、比較例1,2の耐火材について、膨張倍率及び残渣硬さを測定し、さらに形状保持性を評価した。
なお、実施例1、5、6では得られた耐火材に対しては蛍光X線分析を行い、耐火性樹脂組成物に含有される各原子数濃度を求めた。その結果を表1に示す。また、各実施例における耐火性樹脂組成物は、リン成分を含有しておらず、耐火性樹脂組成物に含有される全原子に対する、リン原子の濃度は0.1%以下となる。
【0049】
【0050】
表1に記載の各原料は以下の通りである。
(マトリックス樹脂)
CR:東ソー株式会社製「Y-20E」、クロロプレンゴム
SBR:JSR株式会社製「JSR1500」、スチレン-ブタジエンゴム
(熱膨張性黒鉛)
熱膨張性黒鉛:エアウォーター社製「CA-60N」
(金属酸化物)
酸化鉄:チタン工業株式会社製「BL-100」、Fe3O4、球状
酸化亜鉛:東ソー株式会社製「ZnO」
酸化マンガン:東ソー株式会社製「CMO」
酸化銅:寺田薬泉工業株式会社製「CuO」、CuO
(無機充填材)
炭酸カルシウム:備北粉化工業株式会社製「ホワイトンBF-300」、平均粒子径8μm(空気透過法、カタログ値)
水酸化アルミニウム:林化成株式会社製「C-305」
【0051】
表1の記載から明らかなように、各実施例の耐火性樹脂組成物は、熱膨張性黒鉛に加えて、第一遷移元素の金属酸化物を所定量含有していたので、膨張倍率及び残渣硬さのいずれも高くなり、残渣の形状保持性も良好となった。それに対して、各比較例の耐火性樹脂組成物は、第一遷移元素の金属酸化物を含有しないので、残渣硬さが低くなり、さらに残渣の形状保持性も良好にできなかった。