(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】鋼繊維投入装置
(51)【国際特許分類】
B28C 5/40 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
B28C5/40
(21)【出願番号】P 2022067195
(22)【出願日】2022-04-14
【審査請求日】2022-04-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208204
【氏名又は名称】大林道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】相本 正幸
(72)【発明者】
【氏名】川田 良秀
(72)【発明者】
【氏名】福井 真男
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-83388(JP,A)
【文献】特開平7-299816(JP,A)
【文献】特開平2-305606(JP,A)
【文献】実開昭58-5902(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第110193463(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高強度繊維補強コンクリートを混練りして形成する際に、箱詰め又は袋詰めされていた塊状に絡み合っている鋼繊維を、ばらした状態で混練り装置に投入できるようにする鋼繊維投入装置であって、
上端面及び下端面が開口面となっている中空箱体と、該中空箱体の内側に上下方向に間隔をおいて配置された、上段格子状網目材及び下段格子状網目材と、これらの上段格子状網目材及び下段格子状網目材を振動させる振動機とを含んで構成されており、
前記上段格子状網目材は、一辺が50~150mmの大きさの矩形状の網目を有していると共に、前記下段格子状網目材は、前記上段格子状網目材よりも小さな、一辺が15~50mmの大きさの矩形状の網目を有しており、且つ前記上段格子状網目材と前記下段格子状網目材とは、上下方向に100~600mmの間隔を保持した状態で配置されている鋼繊維投入装置。
【請求項2】
前記上段格子状網目材と前記下段格子状網目材との間の上下方向中間部分に、複数本の線状部材による並列状網目材が配置されている請求項1記載の鋼繊維投入装置。
【請求項3】
前記線状部材が、ワイヤ材、鋼線材、鋼棒、又は山形鋼からなる請求項2記載の鋼繊維投入装置。
【請求項4】
前記下段格子状網目材が、凹凸状の線材からなる請求項1~3のいずれか1項記載の鋼繊維投入装置。
【請求項5】
前記振動機は、前記中空箱体の内側面又は外側面に取り付けられている請求項1~3のいずれか1項記載の鋼繊維投入装置。
【請求項6】
前記振動機は、上段に配置された複数の振動機と下段に配置された複数の振動機とが、平面視した際にこれらの位置が重らないように、互い違いに配置されている請求項1~3のいずれか1項記載の鋼繊維投入装置。
【請求項7】
前記振動機は、これの天面部に接合された下側プレートと、該下側プレートとの間に前記上段格子状網目材又は前記下段格子状網目材を挟み込んだ状態で該下側プレートに重ね合わされる上側プレートとを、ボルト接合することによって、前記上段格子状網目材及び前記下段格子状網目材に各々取り付けられている請求項1~3のいずれか1項記載の鋼繊維投入装置。
【請求項8】
前記中空箱体は、上端部分に、斜め上方に向けて外側に張り出して環状に設けられた、ガイドホッパー部を備えている請求項1~3のいずれか1項記載の鋼繊維投入装置。
【請求項9】
前記中空箱体の下部開口面の開口周縁部から横方向に向けて外側に張り出して環状に設けられた、基盤プレートを備えており、該基盤プレートの下面には、これの周縁部分の少なくとも4か所に、防振材が取り付けられている請求項1~3のいずれか1項記載の鋼繊維投入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高強度繊維補強コンクリートを形成する際に、塊状に絡み合っている鋼繊維をばらした状態で混練り装置に投入できるようにする鋼繊維投入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼繊維・有機繊維により補強された圧縮強度が100N/mm2程度以上のセメント系複合材料である超高強度繊維補強コンクリート(UFCを含むUHPFRC)は、例えば非特許文献1に記載されるように、超高強度、高靭性、高流動性、高耐久性等を備える材料であり、その優れた性能を活用することで、好ましくは様々な橋梁構造物の構成材料として提案され、実用化されている。
【0003】
また、例えば土木学会のコンクリートライブラリー-113「超高強度繊維補強コンクリート設計・施工指針(案)」によれば、超高強度繊維補強コンクリート(UFC)は、好ましくは粒径2.5mm以下の骨材、セメント、ポゾラン材等から構成されており、水セメント比は例えば0.24以下となっている。また粒径の大きな骨材を使用しない点や、ポゾラン材の使用、水セメント比の上限値の設定などにより、超高強度繊維補強コンクリートは、緻密性を最大限に高めた材料となっている。超高強度繊維補強コンクリートには、例えば直径が例えば0.1~0.25mm程度、引張強度が2kN/mm2程度以上の高張力な短繊維(長さが例えば10~20mm程度)が、2vol%程度配合されており、緻密な材料とのマッチングによる付着性を確保していることで、優れた繊維補強効果が得られるようになっている。
【0004】
このような、超高強度繊維補強コンクリートの材料配合に起因する強度特性と耐久性は、従来のコンクリートに比べて格段に優れた性能を示しており、近年では、例えば歩道橋や道路橋、床版といった様々な用途に、超高強度繊維補強コンクリートが適用されるようになっている。また特に、道路橋等における、劣化したコンクリート床版の補修材料としても、好ましく用いられるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
そして、超高強度繊維補強コンクリートを用いて、例えば劣化したコンクリート床版を補修する工事では、好ましくは施工現場で超高強度繊維補強コンクリートを混練りして形成するミキサー等の混練り装置は、車上プラントとすることや、材料として、プレパックされたコンクリートのプレミックス材及び鋼繊維を用いることや、コンクリートのプレミックス材を水や減水剤等と共に練り混ぜた後に、箱詰め又は袋詰めされていた鋼繊維を混練り装置に投入して、さらに練り混ぜるといった、超高強度繊維補強コンクリートの製造工程が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】相浦 聡、他2名、“超高強度繊維補強コンクリート(UFC)による高性能・高耐久性橋梁の開発”、〔online〕、〔令和4年4月5日検索〕、インターネット<URL:http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00984/2010/2010-0043.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、例えば施工現場において、コンクリートのプレミックス材を減水剤等と共に練り混ぜている、ミキサー等の混練り装置に、箱詰め又は袋詰めされていた鋼繊維を投入する場合、箱詰め又は袋詰めされていた鋼繊維は、塊状にダマとなって絡み合っていることから、これをばらした状態として、混練り装置に投入できるようにすることが必要である。このため、箱詰め又は袋詰めされていた塊状に絡み合っている鋼繊維を、ばらした状態で混練り装置に投入できるようにする投入装置も開発されている(例えば
図8(a)、(b)参照)。
【0009】
図8(a)、(b)に示す従来の鋼繊維の投入装置50では、投入されて塊状にダマとなって絡み合っている状態の鋼繊維を保留する保留箱部51と、保留された鋼繊維をばらした状態として混練り装置54に送り込む送込み箱部52との間の境界部分に、横方向に前後に進退移動可能なフルイ53を設置したものとなっており、当該投入装置50を混練り装置54の上方に移動した状態で、フルイ53を前後に押し引きすることによって、保留箱部51に保留された鋼繊維を、フルイ53を介してばらした状態として、送込み箱部52から、混練り装置54に供給できるようにしている。
【0010】
しかしながら、上記従来の鋼繊維の投入装置では、鋼繊維をばらした状態として混練り装置54に送り込む際に、作業員による、両側からフルイ53を前後に繰り返し押し引きしながら動かす作業や、フルイ53をハンマーでたたいたりする作業が必要になることから、多くの時間と手間を要すると共に、人力での作業となるため、フルイ53を前後に細かく動かしながら、鋼繊維を効率良くばらした状態として混練り装置54に送り込めるようにするには、高度な熟練を要することになる。また、フルイ53の網目の大きさの選定にも、熟練を要することになると共に、作業員がフルイ53を押し引きする際に、フルイ53との隙間から鋼繊維が周囲に飛び散って、無駄になったり衣服に付着させたりする場合がある。
【0011】
本発明は、多くの時間と手間を要することなく、且つ高度な熟練を要することなく、絡み合った鋼繊維を効率良くばらした状態として、混練り装置に送り込むことを可能にすると共に、周囲に鋼繊維が飛び散るのを効果的に回避できる鋼繊維投入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、超高強度繊維補強コンクリートを混練りして形成する際に、箱詰め又は袋詰めされていた塊状に絡み合っている鋼繊維を、ばらした状態で混練り装置に投入できるようにする鋼繊維投入装置であって、上端面及び下端面が開口面となっている中空箱体と、該中空箱体の内側に上下方向に間隔をおいて配置された、上段格子状網目材及び下段格子状網目材と、これらの上段格子状網目材及び下段格子状網目材を振動させる振動機とを含んで構成されており、前記上段格子状網目材は、一辺が50~150mmの大きさの矩形状の網目を有していると共に、前記下段格子状網目材は、前記上段格子状網目材よりも小さな、一辺が15~50mmの大きさの矩形状の網目を有しており、且つ前記上段格子状網目材と前記下段格子状網目材とは、上下方向に100~600mmの間隔を保持した状態で配置されている鋼繊維投入装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0013】
そして、本発明の鋼繊維投入装置は、前記上段格子状網目材と前記下段格子状網目材との間の上下方向中間部分に、複数本の線状部材による並列状網目材が配置されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の鋼繊維投入装置は、前記線状部材が、ワイヤ材、鋼棒、鋼線材、又は山形鋼からなっていることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の鋼繊維投入装置は、前記下段格子状網目材が、凹凸状の線材からなっていることが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明の鋼繊維投入装置は、前記振動機が、前記中空箱体の内側面又は外側面に取り付けられていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の鋼繊維投入装置は、前記振動機が、上段に配置された複数の振動機と下段に配置された複数の振動機とが、平面視した際にこれらの位置が重らないように、互い違いに配置されていることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の鋼繊維投入装置は、前記振動機が、これの天面部に接合された下側プレートと、該下側プレートとの間に前記上段格子状網目材又は前記下段格子状網目材を挟み込んだ状態で該下側プレートに重ね合わされる上側プレートとを、ボルト接合することによって、前記上段格子状網目材及び前記下段格子状網目材に各々取り付けられていることが好ましい。
【0019】
さらにまた、本発明の鋼繊維投入装置は、前記中空箱体が、上端部分に、斜め上方に向けて外側に張り出して環状に設けられた、ガイドホッパー部を備えていることが好ましい。
【0020】
また、本発明の鋼繊維投入装置は、前記中空箱体の下部開口面の開口周縁部から横方向に向けて外側に環状に張り出して取り付けられた、基盤プレートが設けられており、該基盤プレートの下面には、これの周縁部分の少なくとも4か所に、防振材が取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の鋼繊維投入装置によれば、多くの時間と手間を要することなく、且つ高度な熟練を要することなく、絡み合った鋼繊維を効率良くばらした状態として、混練り装置に送り込むことを可能にすると共に、周囲に鋼繊維が飛び散るのを効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼繊維投入装置の斜視図である。
【
図2】
図1の鋼繊維投入装置の組立状況を説明する斜視図である。
【
図3】
図1の鋼繊維投入装置の組立状況を説明する斜視図である。
【
図7】振動装置の他の取付け状況を説明する略示斜視図である。
【
図8】(a)、(b)は、従来の鋼繊維の投入装置を説明する略示斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る鋼繊維投入装置10は、例えば道路橋において、道路を構成するコンクート床版が老朽化して劣化している場合に、劣化したコンクート床版を、好ましくは増厚工法によって補修する工事において用いられる。本実施形態の鋼繊維投入装置10は、車上プラントとして施工現場に設置した、ミキサー等の混練り装置54(
図8(b)参照)によって練り混ぜられているコンクリート中に、鋼繊維を、ばらした状態で投入可能として、例えば補修用の超高強度繊維補強コンクリートを、スムーズに効率良く形成できるようにする装置として用いられる。
【0024】
また、本実施形態では、鋼繊維は、箱詰め又は袋詰めされた状態で施工現場に搬入されるようになっており、箱詰め又は袋詰めされた状態から取り出された鋼繊維は、塊状に絡み合っているため、これをばらした状態で、混練り装置に送り出して投入する必要がある。本実施形態の鋼繊維投入装置10は、このような箱詰め又は袋詰めされた状態で施工現場に搬入された鋼繊維を、多くの時間と手間を要することなく、且つ高度な熟練を要することなく、絡み合った状態から効率良くばらした状態として、混練り装置54に送り込むことを可能にすると共に、周囲に鋼繊維が飛び散るのを効果的に回避できるようにする機能を備えている。
【0025】
そして、本実施形態の鋼繊維投入装置10は、超高強度繊維補強コンクリートを混練りして形成する際に、箱詰め又は袋詰めされていた塊状に絡み合っている鋼繊維を、ばらした状態で混練り装置54(
図8(b)参照)に投入できるようにする装置であって、
図1~
図6に示すように、上端面及び下端面が開口面となっている中空箱体11と、中空箱体11の内側に上下方向に間隔をおいて配置された、上段格子状網目材12及び下段格子状網目材13と、これらの上段格子状網目材12及び下段格子状網目材13を振動させる振動機15a,15bとを含んで構成されている。上段格子状網目材12は、一辺が50~150mmの大きさの矩形状(正方形状を含む)の網目を有していると共に、下段格子状網目材13は、上段格子状網目材12よりも小さな、一辺が15~50mmの大きさの矩形状(正方形状を含む)の網目を有しており、且つ上段格子状網目材12と下段格子状網目材13とは、上下方向に100~600mmの間隔を保持した状態で配置されている。
【0026】
また、本実施形態では、好ましくは上段格子状網目材12と下段格子状網目材13との間の上下方向中間部分に、例えばワイヤ材、鋼線材、鋼棒、山形鋼等からなる、複数本の線状部材14aによる並列状網目材14が配置されている。
【0027】
さらに、本実施形態では、好ましくは中空箱体11は、上端部分に、斜め上方に向けて外側に張り出して環状に設けられた、ガイドホッパー部16を備えている。
【0028】
さらにまた、本実施形態では、好ましくは鋼繊維投入装置10は、中空箱体11の下部開口面の開口周縁部から横方向に向けて外側に張り出して環状に設けられた、基盤プレート17を備えており、該基盤プレート17の下面には、これ周縁部分の少なくとも4か所に、防振材18が取り付けられている。
【0029】
本実施形態では、混練り装置54に投入される鋼繊維は、超高強度繊維補強コンクリートを形成するための鋼製の繊維材料として公知のものであり、例えば直径が0.1~0.25mm程度、長さが10~20mm程度、引張強度が2kN/mm
2程度以上の、高張力の短繊維となっている。鋼繊維は、コンクリート中に好ましくは2vol%程度配合されて、緻密なコンクリート材料とのマッチングによる相当の付着性が確保さるので、形成される超高強度繊維補強コンクリートに、優れた繊維補強効果を発揮させることが可能になる。鋼繊維は、箱詰め又は袋詰めされて、ダマとして塊状に絡み合っている状態で、施工現場に搬入され後に、箱や袋から、例えば作業員の手作業によって取り出しながら、鋼繊維投入装置10の中空箱体11に投入されるようになっている(
図8(a)参照)。
【0030】
鋼繊維投入装置10を構成する中空箱体11は、本実施形態では、例えば縦横500~1000程度の大きさの、矩形状(正方形状を含む)の平面形状を備える、上端面及び下端面が開口面となった好ましくは金属製の箱体となっており、全体として、例えば500~800mm程度の高さを備えるように形成されている。また、中空箱体11は、好ましくは下段箱体部11aと、中段箱体部11bと、ガイドホッパー部16との3体を積み重ねて、これらを接合一体化することによって、内側に上段格子状網目材12及び下段格子状網目材13と、好ましくは並列状網目材14とを備えるように形成されると共に、上端面及び下端面が開口面となるように形成されている。ここで、中空箱体11は、矩形状(正方形状を含む)の平面形状を備えている必要は必ずしもなく、例えば円形の平面形状を備える円筒状の中空箱体や、楕円形、多角形等のその他の種々の平面形状を備える筒状の中空箱体であっても良い。
【0031】
本実施形態では、中空箱体11を形成する下段箱体部11aは、
図2に示すように、例えば150mm程度の縦幅を有する金属プレートとして、好ましくは薄鋼板を、矩形枠形状となるように組み付けることによって、例えば一辺が550mm程度の大きさの、平面形状が正方形状の扁平な箱体として形成されている。下段箱体部11aの下端部の内側には、開口面となっている下端面に沿って、下段格子状網目材13が取り付けられていると共に、中空箱体11の下端面でもある下段箱体部11aの下端面の開口周縁部から横方向に向けて外側に張り出して、基盤プレート17が一体として環状に設けられている。下段箱体部11aの対向する一方の一対の側面部の外側面には、取手金物19aが各々取り付けられている。
【0032】
下段箱体部11aの下端部の内側に取り付けられた下段格子状網目材13は、好ましくは骨材の振い分け用のフルイに用いられている網目を形成する鋼棒と同様の、例えば4mm程度の径の太さを有すると共に波状の凹凸を有する、複数の凹凸鋼棒を凹凸状の線材として、縦横に格子状に交差させることにより形成されたものとなっており、上段格子状網目材12の網目よりも小さな、一辺が15~50mm程度、より好ましくは20~40mm程度、さらに好ましくは25~35mm程度の大きさ(本実施形態では26.5×26.5mmの大きさ)の矩形状の網目を備えている。
【0033】
また、下段箱体部11aの下端面の開口周縁部から横方向に環状に張り出して設けられた基盤プレート17は、金属プレートとして、好ましくは薄鋼板からなり、例えば120mm程度の張出し幅で外側に張り出した状態で、内側縁部を、矩形状の平面形状を有する下段箱体部11aの下部面の開口周縁部に、溶接等により一体として接合することによって、全周に亘って矩形環状に連続して、下段箱体部11aの下端部から外側に張り出した状態で取り付けられている。基盤プレート17には、これの上面に、下段箱体部11aの4か所の角部に各々近接して配置されて、4台の振動機15bが、ボルト部材等を用いて取り付けられている。また基盤プレート17の下面には、これ周縁部分の少なくとも4か所として、好ましくは4か所の角部分に、例えば硬質ゴムからなる防振材18が、ボルト部材等を用いて取り付けられている。
【0034】
中空箱体11を形成する中段箱体部11bは、
図3に示すように、例えば170mm程度の縦幅を有する金属プレートとして、好ましくは薄鋼板を、矩形枠形状となるように組み付けることによって、下段箱体部11aと同様に、例えば一辺が550mm程度の大きさの、平面形状が正方形状の扁平な箱体として形成されている。中段箱体部11bの下端部の内側には、開口面となっている下端面に沿って、並列状網目材14が取り付けられている。
【0035】
中段箱体部11bの内側に取り付けられた並列状網目材14は、線状部材14aとして、好ましくは山形鋼を、対向する一方の一対の側面部の内側面に両側の端部を各々接合すると共に、例えば50~150mm程度のピッチで複数本(本実施形態では4本)を、好ましくは他方の一対の側面部と平行に並べて取り付けることによって、中段箱体部11bの下端部に設けられている。
【0036】
中段箱体部11bの対向する一方の一対の側面部の外側面には、取手金物19aが取り付けられており、対向する他方の一対の側面部の外側面には、対角位置にある一方の角部側に片寄せて、各々1台の振動機15aが、ボルト部材等を用いて取り付けられている。並列状網目材14を構成する線状部材14aは、山形鋼の他、ワイヤ材、鋼線材、鋼棒等の、その他の種々の線状部材とすることもできる。
【0037】
下段箱体部11a及び中段箱体部11bは、例えばこれらの上端縁部又は下端縁部から外側に張り出して取り付けられた、接合片20を重ね合わせて、好ましくはボルト部材を用いてこれらを接合することによって、上下に重ね合わせた状態で、一体として組み付けることができる。下段箱体部11aの基盤プレート17及び中段箱体部11bの外側面に取り付けられる振動機15a,15bとしては、例えば型枠用のバイブレータとして公知の、商品名「EXEN MODEL EKMIS-2P」(エクセン社製)等を 好ましく用いることができる。
【0038】
中空箱体11を形成するガイドホッパー部16は、
図1及び
図4~
図6に示すように、金属プレートとして、好ましくは薄鋼板を、倒立させた切頭四角錐形状となるように組み付けることにより得られるようになっている。ガイドホッパー部16は、中段箱体部11bの上端面の矩形状の開口面と同様の大きさ及び形状の、開口面となっている下端面から、斜め上方に外側に向けて4方に張り出した4枚の台形状の側面傾斜プレート16aを、一体として環状に接合することによって、例えば一辺が745mm程度の大きさの矩形状の開口面となった上端面を備えると共に、例えば200mm程度の高さを備えるように形成されている。ガイドホッパー部16の対向する一方の一対の側面傾斜プレート16aの外側面には、取手金物19bが各々取り付けられている。4方の側面傾斜プレート16aの上端部中央部分には、例えば吊上げ用のワイヤを係止するための、吊り孔16bが各々開口形成されている。
【0039】
また、ガイドホッパー部16の下端部の内側には、開口面となっている下端面に沿って、上段格子状網目材12が取り付けられている。上段格子状網目材12は、例えばφ2mm程度の径の太さを有する複数の鋼線材を、縦横に格子状に交差させることにより形成されたものとなっており、下段格子状網目材13の網目よりも大きな、一辺が50~150mm程度、より好ましくは70~130mm程度、さらに好ましくは80~120mm程度の大きさ(本実施形態では100×100mmの大きさ)の矩形状の網目を備えている。
【0040】
ガイドホッパー部16は、中段箱体部11bに、例えばこれらの上端縁部又は下端縁部から外側に張り出して取り付けられた、接合片20を重ね合わせて、好ましくはボルト部材を用いてこれらを接合することによって、上下に重ね合わせた状態で、中段箱体部11bに接合された下段箱体部11aと共に、3段重ねで一体として組み付けられることになる。これによって、好ましくは上段格子状網目材12と下段格子状網目材13との間の中間部分に並列状網目材14が配置されていると共に、上端部分にガイドホッパー部16が設けられた、上端面及び下端面が開口面となっている中空箱体11と、上段格子状網目材12及び下段格子状網目材13と、これらの格子状網目材12,13を振動させる振動機15a,15bとを含んで構成されている、本実施形態の鋼繊維投入装置10が形成されることになる。
【0041】
上述のようにして形成された本実施形態の鋼繊維投入装置10は、ガイドホッパー部16を介して中空箱体11に、箱詰め又は袋詰めされた短繊維を取り出して投入(
図8(a)参照)した状態で、吊上げ装置を用いて混練り装置54の投入口の上方まで移動させることができる(
図8(b)参照)。また、短繊維が投入される前の鋼繊維投入装置10を、吊上げ装置を用いて混練り装置54の投入口の上方まで移動させた状態で、作業員が中空箱体11に、箱詰め又は袋詰めされた短繊維を、ガイドホッパー部16を介して中空箱体11に投入することもできる。
【0042】
しかる後に、本実施形態では、混練り装置54の投入口の上方まで移動させた、塊状にダマとなって絡み合っている短繊維が収容されている鋼繊維投入装置10の、上段格子状網目材12、下段格子状網目材13、及び並列状網目材14を、振動機15a,15bを駆動させることで振動させることによって、収容されている短繊維を、効率良くばらした状態として、混練り装置54に投入して供給することが可能になる。
【0043】
すなわち、本実施形態の鋼繊維投入装置10によれば、中空箱体11に投入されて、塊状にダマとなって上段格子状網目材12から落ちずに引っかかった状態となっている短繊維は、上段格子状網目材12が振動することによって、上段格子状網目材12の網目を通過可能な大きさの塊りに小分けされた状態で、下段格子状網目材13に向けて下方に落下することになる。また小分けされた短繊維は、下段格子状網目材13に引っかかっても、上段格子状網目材12が振動していることで、さらにばらされた状態となって、スムーズに混練り装置54に投入されることになる。
【0044】
また、本実施形態の鋼繊維投入装置10によれば、短繊維は、3段重ねで一体となったガイドホッパー部16、中段箱体部11b、及び下段箱体部11aによる、4方が密に仕切られた中空箱体11の内部空間を、上方から下方に向けて通過してゆくようになっていると共に、作業員がフルイを前後に押し引きする必要がないので、フルイとの隙間から鋼繊維が周囲に飛び散って、無駄になったり衣服に付着させたりすることになるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0045】
したがって、本実施形態の鋼繊維投入装置10によれば、多くの時間と手間を要することなく、且つ高度な熟練を要することなく、塊状に絡み合った鋼繊維を効率良くばらした状態として、混練り装置54に送り込むことが可能になると共に、周囲に鋼繊維が飛び散るのを、効果的に回避することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態によれば、好ましくは上段格子状網目材12と下段格子状網目材13との間の上下方向中間部分に、複数本の線状部材14aによる並列状網目材14が配置されているので、好ましくはこの並列状網目材14を振動させることによって、塊状に絡み合った鋼繊維を、さらに効率良くばらした状態として、混練り装置54に送り込むことが可能になる。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、中段箱体部11bの外側面に取り付けられて、上段に配置された2台の振動機15aと、下段箱体部11aの基盤プレート17に取り付けられて、下段に配置された4台の振動機15bとが、平面視した際にこれらの位置が重らないように、好ましくは互い違いに配置されているので、振動波形の重なりによって振動が少なくなるのを回避して、収容されている短繊維を、より効果的にばらした状態とすることが可能になる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば上段格子状網目材と下段格子状網目材との間の上下方向中間部分に、並列状網目材を配置する必要は必ずしもない。また、中空箱体が、上端部分にガイドホッパー部を備えている必要は必ずしもなく、中空箱体の下部開口面の開口周縁部から外側に張り出す、基盤プレートを備えている必要は必ずしもない。さらに、例えば
図7に示すように、振動機15は、これの天面部に接合された下側プレート22aと、下側プレート21aとの間に上段格子状網目材12又は下段格子状網目材13を挟み込んだ状態で、下側プレート21aに重ね合わされる上側プレート21bとを、ボルト接合することによって、上段格子状網目材12及び下段格子状網目材13に各々取り付けるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
10 鋼繊維投入装置
11 中空箱体
11a 下段箱体部
11b 中段箱体部
12 上段格子状網目材
13 下段格子状網目材
14 並列状網目材
14a 線状部材
15、15a,15b 振動機
16 ガイドホッパー部
16a 側面傾斜プレート
16b 吊り孔
17 基盤プレート
18 防振材
19a,19b 取手金物
20 接合片
21a 下側プレート
21b 上側プレート
54 混練り装置
【要約】
【課題】多くの手間や高度な熟練を要することなく、絡み合った鋼繊維を効率良くばらした状態として、混練り装置に送り込むことのできる鋼繊維投入装置を提供する。
【解決手段】超高強度繊維補強コンクリートを形成する際に、塊状に絡み合っている鋼繊維を、ばらした状態で混練り装置54に投入できるようにする鋼繊維投入装置10であって、上端面及び下端面が開口面となっている中空箱体11と、中空箱体11の内側に上下方向に100~600mmの間隔をおいて配置された、上段格子状網目材12及び下段格子状網目材13と、これらを振動させる振動機15a,15bとを含んで構成されている。上段格子状網目材12は、一辺が50~150mmの大きさの矩形状の網目を有していると共に、下段格子状網目材13は、一辺が15~50mmの大きさの矩形状の網目を有している。
【選択図】
図1