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特許7089134工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法
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  • 特許-工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20220615BHJP
   B23P 15/34 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
G06F30/20
B23P15/34
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021504215
(86)(22)【出願日】2020-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 CN2020071727
(87)【国際公開番号】W WO2021088249
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】201911085911.8
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520154254
【氏名又は名称】江蘇科技大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.2 Mengxi Road,Zhenjiang,Jiangsu 212003,China
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】李 国超
(72)【発明者】
【氏名】周 宏根
(72)【発明者】
【氏名】田 桂中
(72)【発明者】
【氏名】劉 云龍
(72)【発明者】
【氏名】趙 東豪
(72)【発明者】
【氏名】艾 杼樺
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-309614(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106991241(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109189001(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109976254(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107169186(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106826417(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103777568(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104625193(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
B23P 15/28 -15/52
G05B 19/18 -19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法であって、
砥石の型番、サイズ及び目的工具径DTを決定するステップ(1)と、
チップポケット数学モデルrsiを確立するステップ(2)と、
砥石半径拘束方程式fcon1を確立するステップ(3)と、
時刻tにおける砥石の位置・姿勢の求解目的関数を確立するステップ(4)と、
ステップ(4)の目的関数、ステップ(3)の砥石半径拘束方程式fcon1から、時刻tにおける砥石の位置・姿勢を解くステップ(5)と、
時刻tの値を変えてステップ(3)~ステップ(5)を繰り返し、複雑なチップポケットの砥石軌跡を解くステップ(6)と、を含むことを特徴とする、
工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【請求項2】
前記ステップ(2)において、
si=[xsi,ysi,zsi]=[xsi(θ),ysi(θ),zsi(θ)]
i=1、2、3、4は、それぞれ、複雑なチップポケットを表現するためのエッジ曲線、すくい角線、コア径線、背面線を示し、xsi、ysi、zsiは、それぞれ、エッジ曲線、すくい角線、コア径線、背面線の工具座標系における座標値であり、θは、エッジ曲線、すくい角線、コア径線、背面線のパラメータ方程式を表現する変数、であることを特徴とする、
請求項1に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【請求項3】
前記ステップ(2)におけるrs2とrs1との距離は、0.05DT未満であり、rs3から工具軸線までの距離は、rs1、rs2又はrs4から工具軸線までの距離よりも小さいことを特徴とする、
請求項2に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【請求項4】
前記ステップ(3)で砥石半径拘束方程式fcon1を確立するステップは、
(a)任意の時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の円心座標rowを解く、
ow=[xow,yow,zow]=[xow(θ1_t,θ,θ),yow(θ1_t,θ,θ),zow(θ1_t,θ,θ)]
ow、yow、zowは、それぞれ、時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の円心の工具座標系における座標値であり、θ1_tは、時刻tにおける研磨加工砥石のエッジ曲線上の一点のパラメータ値であり、θ、θは、それぞれ、すくい角線、コア径線パラメータ方程式の変数、
(b)任意の時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の半径を解く、
wc=Rwc(θ1_t,θ,θ
wcは、時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の半径、
(c)任意の時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の軸線ベクトルnを解く、
=[xnw,ynw,znw]=[xnw(θ1_t,θ,θ),ynw(θ1_t,θ,θ),znw(θ1_t,θ,θ)]
nw、ynw、znwは、それぞれ、時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の軸線ベクトルの工具座標系における座標値、
(d)砥石大端円半径拘束方程式を確立する、
con1=Rcw(θ1_t,θ,θ)-R=0
は、砥石大端円半径、であることを特徴とする、
請求項1に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【請求項5】
前記ステップ(3)でR≧15DTであることを特徴とする、
請求項4に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【請求項6】
前記ステップ(4)で時刻tにおける砥石の位置・姿勢の求解目的関数を確立するステップは、
(a)背面線と砥石軸線との間の距離方程式を確立する、
axis=daxis(θ1_t,θ,θ,θ
(b)背面線と砥石底面との間の距離方程式を確立する、
plane=dplane(θ1_t,θ,θ,θ
(c)背面線と砥石回転面との間の距離方程式を確立する、
GW=daxis-dplane/tan(θ
θwは、砥石円錐角、
(d)砥石の位置・姿勢の求解目的関数を確立する、
obj=min(dGW(θ1_t,θ,θ,θ))
【数1】
であることを特徴とする、
請求項1に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【請求項7】
前記ステップ(4)でπ/2≧θ>π/6であることを特徴とする、
請求項6に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【請求項8】
前記ステップ(5)で時刻tにおける砥石の位置・姿勢を解くステップは、
ステップ(3)の方程式fcon1とステップ(4)の砥石の位置・姿勢の求解目的関数から、時刻tに対応するエッジ曲線、すくい角線、コア径線及び背面線パラメータθ1_t、θ2_t、θ3_t、θ4_tを解き、θ1_t、θ2_t、θ3_tをステップ(3)の砥石半径方程式fcon1に代入して時刻tにおける砥石の位置・姿勢を解くことを特徴とする、
請求項6に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【請求項9】
前記ステップ(5)で時刻tに対応するθ1_t、θ2_t、θ3_t、θ4_tのパラメータ値は、直前時刻に対応するパラメータ値以上であることを特徴とする、
請求項8に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【請求項10】
前記ステップ(1)で砥石に1A1又は1V1型のダイヤモンド砥石を採用し、砥石の径は、100mm~200mmであることを特徴とする、
請求項1に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石軌跡の決定方法に関し、より具体的には、工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工具の複雑なチップポケットは、すくい角、コア径、溝幅、螺旋角などの構造パラメータが工具軸線に沿って変化することで、工具の剛性、強度、切削性能を効果的に向上させることができ、高性能超硬エンドミルに広く応用されている。しかし、複雑なチップポケット研磨は、いくつかの難点に直面している。第1に、複雑なチップポケットの幾何構造は、砥石形状及び運動軌跡の両方で決められ、工程の求解に係る変数及び拘束条件が多く、「チップポケット構造パラメータ」と「砥石形状+運動軌跡」との関数関係を直接確立することができない。第2に、従来のチップポケット幾何成形の理論基礎である空間単一パラメータ曲面族包絡理論は、接触線を橋掛けとして砥石と溝の形状との間の関係を確立し、研磨中に接触線が一定である。しかし、接触線が変化し続ける複雑なチップポケット研磨に適用できず、複雑なチップポケット研磨成形の理論基礎に欠ける。従って、従来の包絡理論又は試行錯誤方法に基づいてチップポケット研磨における砥石運動軌跡を求める方法は、複雑な形状のチップポケットに適用できず、複雑なチップポケット製造過程では、砥石軌跡の求解が難しいというネックに直面している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、工具の複雑なチップポケット研磨工程に適用可能であり、且つ高精度及び信頼性を有する工具を用いた複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法を提供し、砥石の型番、サイズ及び目的工具径DTを決定するステップ(1)と、チップポケット数学モデルrsiを確立するステップ(2)と、砥石半径拘束方程式fcon1を確立するステップ(3)と、時刻tにおける砥石の位置・姿勢の求解目的関数を確立するステップ(4)と、ステップ(4)の目的関数、ステップ(3)の砥石半径拘束方程式fcon1から、時刻tにおける砥石の位置・姿勢を解くステップ(5)と、時刻tの値を変えてステップ(3)~ステップ(5)を繰り返し、複雑なチップポケットの砥石軌跡を解くステップ(6)とを含む。
【0005】
ステップ(2)において、
si=[xsi,ysi,zsi]=[xsi(θ),ysi(θ),zsi(θ)]
i=1、2、3、4は、それぞれ、複雑なチップポケットを表現するためのエッジ曲線、すくい角線、コア径線、背面線を示し、xsi、ysi、zsiは、それぞれ、エッジ曲線、すくい角線、コア径線、背面線の工具座標系における座標値であり、θは、エッジ曲線、すくい角線、コア径線、背面線のパラメータ方程式を表現する変数である。rs2とrs1との距離は、0.05DT未満であり、rs3から工具軸線までの距離は、rs1、rs2又はrs4から工具軸線までの距離よりも小さい。
【0006】
ステップ(3)で砥石半径拘束方程式fcon1を確立するステップは、
(a)任意の時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の円心座標rowを解く。
ow=[xow,yow,zow]=[xow(θ1_t,θ,θ),yow(θ1_t,θ,θ),zow(θ1_t,θ,θ)]
ow、yow、zowは、それぞれ、時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の円心の工具座標系における座標値であり、θ1_tは、時刻tにおける研磨加工砥石のエッジ曲線上の一点のパラメータ値であり、θ,θは、それぞれ、すくい角線、コア径線パラメータ方程式の変数。
(b)任意の時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の半径を解く。
wc=Rwc(θ1_t,θ,θ
wcは、時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の半径。
(c)任意の時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の軸線ベクトルnを解く。
=[xnw,ynw,znw]=[xnw(θ1_t,θ,θ),ynw(θ1_t,θ,θ),znw(θ1_t,θ,θ)]
nw、ynw、znwは、それぞれ、時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の軸線ベクトルの工具座標系における座標値。
(d)砥石大端円半径拘束方程式を確立する。
con1=Rcw(θ1_t,θ,θ)-R=0
は、砥石大端円半径であり、R≧15DT、である。
【0007】
ステップ(4)で時刻tにおける砥石の位置・姿勢の求解目的関数を確立するステップは、
(a)背面線と砥石軸線との間の距離方程式を確立する。
axis=daxis(θ1_t,θ,θ,θ
(b)背面線と砥石底面との間の距離方程式を確立する。
plane=dplane(θ1_t,θ,θ,θ
(c)背面線と砥石回転面との間の距離方程式を確立する。
GW=daxis-dplane/tan(θ
θは、砥石円錐角である。π/2≧θ>π/6である。
(d)砥石の位置・姿勢の求解目的関数を確立する。
obj=min(dGW(θ1_t,θ,θ,θ))
【数1】
である。
【0008】
ステップ(5)で時刻tにおける砥石の位置・姿勢を解くステップとして、ステップ(3)の方程式fcon1とステップ(4)の砥石の位置・姿勢の求解目的関数から、時刻tに対応するエッジ曲線、すくい角線、コア径線及び背面線パラメータθ1_t、θ2_t、θ3_t、θ4_tを解き、θ1_t、θ2_t、θ3_tをステップ(3)の砥石半径方程式fcon1に代入して時刻tにおける砥石の位置・姿勢を解く。時刻tに対応するθ1_t、θ2_t、θ3_t、θ4_tなどのパラメータ値は、直前時刻に対応するパラメータ値以上である。
【0009】
ここで、砥石に1A1又は1V1型のダイヤモンド砥石を採用し、砥石の径は、100mm~200mmである。
【発明の効果】
【0010】
1.工具の複雑なチップポケット研磨工程に適用可能であり、工具の複雑なチップポケット研磨工程の決定技術及び方法の面からサポートする。2.精度が高い。3.信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本方法のフローチャートである。
図2】砥石の形状を示す図である。
図3】砥石の姿勢を示す図である。
図4】コア径が徐々に変化し、等しいすくい角、等しい溝幅、等しい螺旋角の複雑なチップポケット研磨結果の三次元図である。
図5】コア径が徐々に変化し、等しいすくい角、等しい溝幅、等しい螺旋角の複雑なチップポケット研磨結果のXT-YT座標平面における投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
砥石運動軌跡の全体的な求解フローは、図1に示すように、以下のステップを含む。
(1)1V1型の標準砥石を採用し、図2に示すように、砥石の厚さBは、12mmであり、砥石円錐角θ=1.2217radであり、砥石大端円径D=116mmであり、フライスリードPT=60mmであり、フライス径DT=20mmである。
【0013】
(2)チップポケット数学モデルrsiを確立する。
【表1】
【0014】
(3)砥石半径拘束方程式fcon1を確立するステップは、具体的に以下を含む。
(a)任意の時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の円心座標rowを解く。
ow=[xow,yow,zow]=[xow(θ1_t,θ,θ),yow(θ1_t,θ,θ),zow(θ1_t,θ,θ)]
ここで、xow、yow、zowは、それぞれ、時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の円心の工具座標系における座標値であり、θ1_tは、時刻tにおける研磨加工砥石のエッジ曲線上の一点のパラメータ値である。
(b)任意の時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の半径を解く。
wc=Rwc(θ1_t,θ,θ
ここで、Rwcは、時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の半径である。
(c)任意の時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の軸線ベクトルnを解く。
=[xnw,ynw,znw]=[xnw(θ1_t,θ,θ),ynw(θ1_t,θ,θ),znw(θ1_t,θ,θ)]
ここで、xnw、ynw、znwは、それぞれ、時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の軸線ベクトルの工具座標系における座標値である。
(d)砥石大端円半径拘束方程式を確立する。
con1=Rcw(θ1_t,θ,θ)-R=0
ここで、Rは、砥石大端円半径である。
【0015】
(4)時刻tにおける砥石の位置・姿勢の求解目的関数を確立する。
(a)背面線と砥石軸線との間の距離方程式を確立する。
axis=daxis(θ1_t,θ,θ,θ
(b)背面線と砥石底面との間の距離方程式を確立する。
plane=dplane(θ1_t,θ,θ,θ
(c)背面線と砥石回転面との間の距離方程式を確立する。
GW=daxis-dplane/tan(θ
ここで、θは、砥石円錐角である。
(d)砥石の位置・姿勢の求解目的関数を確立する。
obj=min(dGW(θ1_t,θ,θ,θ))
【数2】
【0016】
(5)ステップ(3)の方程式fcon1とステップ(4)の方程式fobj、fcon2、fcon3、fcon4から、時刻tに対応するパラメータθ1_t、θ2_t、θ3_t、θ4_tを解き、θ1_t、θ2_t、θ3_tをステップ(3)の式rowとnに代入して、図3に示す時刻tにおける砥石の位置・姿勢を解く。
【0017】
(6)時刻tの値を変えてステップ(3)~ステップ(5)を繰り返し、複雑なチップポケットの砥石運動軌跡を解く。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0018】
上記の解いた軌跡を採用し、複雑なチップポケット研磨結果が得られる。図4に示すように、rs1、rs2、rs3、rs4は、それぞれ工具のエッジ、すくい角、コア径、溝幅を制御する曲線である。図4図5によると、刃先から5mm、10mm、15mmの3か所で、工具軸線に垂直な平面でチップポケット形状を切り出し、工具軸線に沿ってすくい角及び溝幅が一定であり、コア径が変化し続けるチップポケットを得る。
【0019】
(付記)
(付記1)
工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法であって、
砥石の型番、サイズ及び目的工具径DTを決定するステップ(1)と、
チップポケット数学モデルrsiを確立するステップ(2)と、
砥石半径拘束方程式fcon1を確立するステップ(3)と、
時刻tにおける砥石の位置・姿勢の求解目的関数を確立するステップ(4)と、
ステップ(4)の目的関数、ステップ(3)の砥石半径拘束方程式fcon1から、時刻tにおける砥石の位置・姿勢を解くステップ(5)と、
時刻tの値を変えてステップ(3)~ステップ(5)を繰り返し、複雑なチップポケットの砥石軌跡を解くステップ(6)と、を含むことを特徴とする、
工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【0020】
(付記2)
前記ステップ(2)において、
si=[xsi,ysi,zsi]=[xsi(θ),ysi(θ),zsi(θ)]
i=1、2、3、4は、それぞれ、複雑なチップポケットを表現するためのエッジ曲線、すくい角線、コア径線、背面線を示し、xsi、ysi、zsiは、それぞれ、エッジ曲線、すくい角線、コア径線、背面線の工具座標系における座標値であり、θは、エッジ曲線、すくい角線、コア径線、背面線のパラメータ方程式を表現する変数、であることを特徴とする、
付記1に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【0021】
(付記3)
前記ステップ(2)におけるrs2とrs1との距離は、0.05DT未満であり、rs3から工具軸線までの距離は、rs1、rs2又はrs4から工具軸線までの距離よりも小さいことを特徴とする、
付記2に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【0022】
(付記4)
前記ステップ(3)で砥石半径拘束方程式fcon1を確立するステップは、
(a)任意の時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の円心座標rowを解く、
ow=[xow,yow,zow]=[xow(θ1_t,θ,θ),yow(θ1_t,θ,θ),zow(θ1_t,θ,θ)]
ow、yow、zowは、それぞれ、時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の円心の工具座標系における座標値であり、θ1_tは、時刻tにおける研磨加工砥石のエッジ曲線上の一点のパラメータ値であり、θ、θは、それぞれ、すくい角線、コア径線パラメータ方程式の変数、
(b)任意の時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の半径を解く、
wc=Rwc(θ1_t,θ,θ
wcは、時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の半径、
(c)任意の時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の軸線ベクトルnを解く、
=[xnw,ynw,znw]=[xnw(θ1_t,θ,θ),ynw(θ1_t,θ,θ),znw(θ1_t,θ,θ)]
nw、ynw、znwは、それぞれ、時刻tでエッジ曲線、すくい角線、コア径線と同時に交わる円の軸線ベクトルの工具座標系における座標値、
(d)砥石大端円半径拘束方程式を確立する、
con1=Rcw(θ1_t,θ,θ)-R=0
は、砥石大端円半径、であることを特徴とする、
付記1に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【0023】
(付記5)
前記ステップ(3)でR≧15DTであることを特徴とする、
付記4に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【0024】
(付記6)
前記ステップ(4)で時刻tにおける砥石の位置・姿勢の求解目的関数を確立するステップは、
(a)背面線と砥石軸線との間の距離方程式を確立する、
axis=daxis(θ1_t,θ,θ,θ
(b)背面線と砥石底面との間の距離方程式を確立する、
plane=dplane(θ1_t,θ,θ,θ
(c)背面線と砥石回転面との間の距離方程式を確立する、
GW=daxis-dplane/tan(θ
θwは、砥石円錐角、
(d)砥石の位置・姿勢の求解目的関数を確立する、
obj=min(dGW(θ1_t,θ,θ,θ))
【数3】
であることを特徴とする、
付記1に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【0025】
(付記7)
前記ステップ(4)でπ/2≧θ>π/6であることを特徴とする、
付記6に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【0026】
(付記8)
前記ステップ(5)で時刻tにおける砥石の位置・姿勢を解くステップは、
ステップ(3)の方程式fcon1とステップ(4)の砥石の位置・姿勢の求解目的関数から、時刻tに対応するエッジ曲線、すくい角線、コア径線及び背面線パラメータθ1_t、θ2_t、θ3_t、θ4_tを解き、θ1_t、θ2_t、θ3_tをステップ(3)の砥石半径方程式fcon1に代入して時刻tにおける砥石の位置・姿勢を解くことを特徴とする、
付記6に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【0027】
(付記9)
前記ステップ(5)で時刻tに対応するθ1_t、θ2_t、θ3_t、θ4_tのパラメータ値は、直前時刻に対応するパラメータ値以上であることを特徴とする、
付記8に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
【0028】
(付記10)
前記ステップ(1)で砥石に1A1又は1V1型のダイヤモンド砥石を採用し、砥石の径は、100mm~200mmであることを特徴とする、
付記1に記載の工具の複雑なチップポケット研磨による砥石軌跡の決定方法。
図1
図2
図3
図4
図5