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特許7089141新規なJAK1選択的阻害剤およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】新規なJAK1選択的阻害剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/147 20060101AFI20220615BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220615BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220615BHJP
【FI】
C07D491/147 CSP
A61K31/437
A61K31/4545
A61P19/02
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 111
C07B61/00 300
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019517991
(86)(22)【出願日】2017-09-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 US2017054668
(87)【国際公開番号】W WO2018067422
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】62/403,660
(32)【優先日】2016-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522168707
【氏名又は名称】ハンチョウ ハイライトゥル ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】リアング,コングシン
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535288(JP,A)
【文献】The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action ,2nd Edition,2004年,pp.29-34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩;またはその薬
学的に許容される塩;またはそれらの水和物もしくは溶媒和物:
【化1】

(式I中、
は、H、ハロ、またはC1-3アルキルであり、当該C1-3アルキルは、ハロ、OH、CN、OR、NHR、NRR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)(O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)R、およびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換され、;
は、H、ハロ、またはC1-3アルキルであり;
Cyは、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、フェニル、または5~6員ヘテロアリールであり、それぞれR、オキソ、ハロ、OH、CN、OR、NHR、NRR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)R、およびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換され、
ここで、Rはハロ、OH、CN、OR、NHR、NHR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)(O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)R、およびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されたC1-3アルキルであり;
R、R’はそれぞれ独立に、HまたはC1-3アルキルであり、当該C1-3アルキルは、ハロ、OH、およびCNからなる群から独立に選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換される)。
【請求項2】
式I中、CyがR、オキソ、ハロ、OH、CN、OR、NHR、NRR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)(O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)R、およびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2、または3個の置換基でそれぞれ任意に置換された、C5-7シクロアルキルまたは5~7員ヘテロシクリルであり、
ここで、Rがハロ、OH、CN、OR、NHR、NRR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)(O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)RおよびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換されたC1-3アルキルである、請求項1に記載の式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
が水素である、請求項1に記載の式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
以下からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩: trans-4-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]シクロヘキサンカルボニトリル
(1)、
trans-4-[2-(ヒドロキシメチル)フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]シクロヘキサンカルボニトリル (2)、
2-[trans-4-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル (3)、
2-[(2R,5S)-5-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (4)
3-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド (5)、
(R)-4-[2-(1-ヒドロキシエチル)-1H-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピペリジン-1-カルボキサミド (6)、
2-[(2R,5S)-5-[2-(ヒドロキシメチル)フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (7)、
2-[(2S,5S)-5-[2-(ヒドロキシメチル)フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (8)、
2-[(2R,5S)-5-[2-エチルフロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (9)、
2-[(2R,5S)-5-[2-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (10)、および
2-[(2R,5S)-5-[2-メチルフロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (11)、
または、薬学的に許容されるこれらの塩。
【請求項5】
2-[(2R,5S)-5-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (4)、またはその水和物もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
2-[(2R,5S)-5-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (4)の薬学的に許容可能な塩、またはその水和物もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
2-[(2R,5S)-5-[2-(ヒドロキシメチル)フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (7)、またはその水和物もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
2-[(2R,5S)-5-[2-(ヒドロキシメチル)フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (7)の薬学的に許容可能な塩、またはその水和物もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
2-[(2R,5S)-5-[2-メチルフロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]
ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (11)、またはその水和物もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
2-[(2R,5S)-5-[2-メチルフロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]
ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (11)の薬学的に許容可能な塩、またはその水和物もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩。
【請求項11】
薬剤の調製のための、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容可能なその塩の使用。
【請求項12】
疾患の処置に使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容可能なその塩を含有している組成物。
【請求項13】
前記薬剤は、自己免疫疾患または自己免疫障害、炎症性疾患または炎症性障害、および、癌または新生物の疾患または障害からなる群より選択される1つ以上の疾患の処置に使用される、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記疾患は、自己免疫疾患または自己免疫障害、炎症性疾患または炎症性障害、および、癌または新生物の疾患または障害からなる群より選択される1つ以上である、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記疾患は関節リウマチである、請求項12または14に記載の組成物。
【請求項16】
式A1-14の化合物。
【化2】
【請求項17】
(C1-6アルキル)オキソニウムテトラフルオロボレートの存在下、式Iの化合物を生成するのに十分な温度、および十分な時間において、式Vの化合物および式VIの化合物を接触させることを含む、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を調製するための製造方法:
【化3】

(式中、RはHであり、RおよびCyは請求項1に定義した通りである)。
【請求項18】
前記(C1-6アルキル)オキソニウムテトラフルオロボレート試薬が、トリエチルオキソニウムテトラフルオロボレートである、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
水素化触媒および水素ガスの存在下、式Vの化合物を生成するのに十分な温度、十分な圧力および十分な時間において、式VIIの化合物を還元することを含む製造方法によって式Vの化合物が調製される、請求項17に記載の製造方法:
【化4】

(式中、Cyは請求項1に定義した通りである)。
【請求項20】
前記水素化触媒がパラジウムカーボンである、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
塩基の存在下、式VIIの化合物を生成するのに十分な温度および十分な時間において、式A1-14の化合物と式VIIIの化合物とを接触させることを含む製造方法によって式VIIの化合物が調製される、請求項19に記載の製造方法:
【化5】

(式中、Cyは請求項1に定義した通りである)。
【請求項22】
前記塩基がN,N-ジイソプロピルエチルアミンである、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
Cyは請求項2に定義した通りである、請求項17~22のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項24】
前記式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩は、請求項4~10のいずれか1項に規定された通りである、請求項17~23のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は2016年10月3日に出願された米国仮出願第62/403,660号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔発明の技術分野〕
本発明は、新規な1H-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン誘導体、それらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物および選択的Jak1キナーゼ阻害剤としての多形体に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む組成物、ならびにJak1に関連する疾患および状態を処置する方法における前記組成物の使用を提供する。そして本発明は、Jak1活性に関連する障害(例えば、自己免疫疾患または障害、炎症性疾患または障害、および癌または新生物性疾患または障害)を処置する際に有用である。
【背景技術】
【0003】
プロテインキナーゼは、多種多様な細胞プロセスの調節および細胞機能の維持において中心的な役目を果たす、大きなタンパク質ファミリーである。これらのキナーゼの部分的で非限定的なリストには、Janusキナーゼファミリーなどの非受容体チロシンキナーゼ(Jak1、Jak2、Jak3およびTyk2);血小板由来増殖因子受容体キナーゼ(PDGFR)などの受容体チロシンキナーゼ;およびb-RAFなどのセリン/トレオニンキナーゼが含まれる。良性および悪性の増殖性障害、ならびに免疫系および神経系の不適切な活性化に起因する疾患を含む多くの疾患状態において、異常なキナーゼ活性が観察されている。本発明の化合物は、他の関連キナーゼではなく、1つ以上のプロテインキナーゼの活性を選択的に阻害する。したがって、本発明の化合物は、前記関連キナーゼの阻害に関連する望ましくない副作用を回避しつつも、選択的に阻害された前記キナーゼによって媒介される疾患の処置において有用であることが期待される。
【0004】
特に、Janusキナーゼファミリーは、4種類の既知のファミリーメンバーを含む:Jakl、2、3、およびチロシンキナーゼ2(Tyk2)。これらの細胞質チロシンキナーゼは、膜サイトカインレセプター(例えば、一般的なガンマ鎖レセプターおよび糖タンパク質130(gp130)膜貫通タンパク質)に関連する(Murray、JImmunol.178(5): 2623-2629, 2007)。およそ40種類のサイトカインレセプターが、(i)4種類の前記Jakファミリーメンバーと、(ii)その下流にある基質(7種類)と、の組み合わせを介して、シグナルを伝達している。これらが、転写(STAT)ファミリーメンバーのシグナル伝達アクチベーターである(Ghoreschi et al., Immunol Rev. 228(1):273-287, 2009)。この受容体に結合するサイトカインは、トランスリン酸化および自己リン酸化を介して、Jak活性化を開始する。すると今度は、Jakファミリーキナーゼがサイトカインレセプター残基をリン酸化し、肉腫ホモロジー2(SH2)含有蛋白質(例えばSTAT因子や他の調節因子)の結合部位を作り、その後Jakリン酸化によって活性化される。活性化されたSTATは、核内に移行し、生存因子、サイトカイン、ケモカイン、および白血球細胞輸送を促進する分子の発現を開始させる(Schindler et al., J. Biol. Chem. 282(28):20059-20063, 2007)。Jak活性化はまた、ホスホイノシチド3‐キナーゼ(PI3K)およびプロテインキナーゼB媒介経路を介して、細胞増殖をもたらす。
【0005】
Jak3およびJak1は共通γ鎖サイトカイン受容体複合体の構成要素であり、どちらを遮断しても、炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-2、4、7、9、15、および21によるシグナル伝達を阻害する:(Ghoreschi et al., Immunol. Rev. 228(1):273-287, 2009)。対照的に、他の病理学的に関連するサイトカイン(例えば、IL-6)は、Jak1に固有に依存する。従って、Jak1遮断は、多くの炎症誘発性サイトカインのシグナル伝達を阻害する(Guschin et al., EMBO J. 14(7):1421-1429, 1995)。IL-6受容体中和抗体であるトシリズマブにおいて、関節リウマチ(RA)における臨床的有効性が観察されている(Maini et al., Arthritis Rheum. 54(9):2817-2829, 2006)。
【0006】
Jak1およびJak2を欠損するヒトは、報告されていない。Jak1を欠損するマウスは、周産期に死亡する(Schindler et al., J. Biol Chem. 282(28):20059-20063, 2007)。マウスにおけるJak2欠損も致死的であり、Jak2-/-胚は、赤血球産生能の欠損のために、受精後12日から13日の間に死亡する(Neubauer et al., Cell 93(3):397-409, 1998)。Jak3欠損症はヒトでも報告されており、生後数ヵ月以内に重度の複合型免疫不全症として現れ、発育不全、重度および再発性の感染、発疹、下痢などの症状を伴う。Jak3欠損症の乳児では、循環T細胞およびNK細胞が欠損し、B細胞の機能が異常である。さらに、Tyk2欠損症がヒトにおいて報告されており、抗菌応答の障害、血清IgEの上昇、およびアトピー性皮膚炎を呈する(Minegishi et al., Immunity 25(5):745-755, 2006)。
【0007】
Jak1とJak2との間に高度の構造的類似性(Williams et al., J. Mal. Biol. 387(1):219-232, 2009)があるので、Jak1阻害剤の大多数がJak2もまた阻害することが文献により示唆されている(lncyte Corp. press release, 10 Nov. 2010; Changelian et al., Science 302(5646):875-878, 2003)。
【0008】
抗サイトカイン療法は、RAの治療において標準となっている。Jak1阻害が、ヒトにおけるRAの徴候および症状の治療に有効な療法であることを示唆するエビデンスが増えている。PfizerのJak1/3阻害剤・トファシチニブを投与する複数の臨床試験(Kremer et al., Arthritis Rheum. 60(7):1895-1905, 2009; Riese et al. Best Pract. Res. Clin. Rheumatol. 24(4):513-526, 2010)、Incyte/LillyのJak1/2阻害剤・INCB-28050/LY3009104(Incyte Corp. press release, 10 Nov 2010)、またはGalapagosのJak1阻害剤・GLP0634(Galapagos NV press release, 22 Nov 2011)は、この疾患における統計的に有意な有効性を実証した。
【0009】
Jak1およびJak3の阻害薬であるトファシチニブは、メトトレキサート(MTX)に対する反応が不十分または不耐容である中等度~重度の活動性RAの成人患者への適用が、米国および他の世界中の国家で承認されている。治療においては、単剤療法として、またはMTXもしくは他の非生物学的DMARDとの併用で使用されている。RA患者を対象とした、トファシチニブ投与とプラセボとを比較する、第2フェーズ試験および第3フェーズ試験の安全性データによると、最も一般的な重篤な副作用は、肺炎、蜂巣炎、帯状疱疹、および尿路感染症を含む感染症であることが示された(Fleischmann, Curr. Opin. Rheumatol. 24(3):335-341, 2012; Kremer et al., Arthritis Rheum. 64(4):970-981, 2012; Fleischmann et al., Arthritis Rheum. 64(3):617-629, 2012)。また、結核(播種性結核の症例を含む)、および日和見感染(他のマイコバクテリア感染症、クリプトコッカス、食道カンジダ症、ニューモシストーシス、多皮性帯状疱疹、サイトメガロウイルス、およびBKウイルスなど)が報告されている。トファシチニブで治療された患者においては、リンパ腫および他の悪性腫瘍が観察されている。トファシチニブおよび免疫抑制薬剤の併用で治療された腎移植患者においては、エプスタイン=バーウイルスに関連する移植後リンパ増殖性疾患が、より高い割合で観察されている。また、トファシチニブを投与された患者における、消化管穿孔も報告された。さらに、ヘモグロビンおよび好中球の絶対数の用量依存的な低下を含む、臨床検査値異常が報告されている。さらに、肝トランスアミナーゼ(アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST])および血清クレアチニンの小規模な増加、ならびにLDL、HDL、および総コレステロールレベルの上昇が報告されている。
【0010】
RA患者におけるVX-509(Jak3阻害剤)の第2フェーズ研究によると、感染のリスクの増加および脂質レベルの増加が示された(Fleischmann et al., Arthritis Rheum. 63:LB3, 2011)。
【0011】
活動性RA患者201例を対象とした、バリチニブ(経口投与される選択的Jak1およびJak2阻害薬)の、52週間にわたる非盲検的長期継続第2bフェーズ試験によると、日和見感染、結核の症例、リンパ腫は認められなかった。臨床的に有意な臨床検査値異常(各被験体に報告される、ALT上昇、貧血、クレアチンキナーゼ(CK)上昇、汎血球減少)は、稀にしか観察されなかった。1人の被験体は、臨床検査値異常(ALT上昇)のため中止した。1人が死亡し、おそらく心筋梗塞に起因すると考えられた(Keystone et al., Ann. Rheum. Dis. 71(Suppl 3):152, 2012; Genovese et al., Arthritis Rheum. 64 (Suppl 10):2487, 2012; Taylor et al., abstract OP0047, EULAR 2013, the Annual Congress of the European League Against Rheumatism. 2013 Jun 12-15; Madrid, Spain)。
【0012】
しかしながら、一見多数の治療選択肢があるにもかかわらず、多くのRA患者は、疾患活動の実質的な減少を経験することができない。以前の研究によると、Jak遮断が疾患の管理および寛解を達成するために有効である可能性が示されている。しかし、第一世代のJak阻害薬(トファシチニブおよびバリシチニブなど)は、潜在能力を完全には引き出せていない。これは、少なくとも部分的には、これらの阻害薬の忍容性および安全性が原因となって、用量が限られているためである。
【0013】
具体的には、第一世代のJak阻害剤であるトファシチニブおよびバリシチニブは、それぞれ、Jak1/Jak3およびJak1/Jak2阻害剤として特徴付けられている(Fridman et al., J. Immunol., 184:5298-5307, 2010; Meyer et al., J. lnflamm. (Lond.) 7:41, 2010; Taylor et al., Rheumatology 52:i44-i55, 2013)。当初の有望な結果にもかかわらず、これらの第一世代Jak阻害剤は、潜在能力を完全には引き出せていない。これらの阻害薬の忍容性および安全性が原因となって、用量が限られているためである。(Fleischmann et al., Curr. Opin. Rheumatol. 24:335-341, 2012; Riese et al., Best Pract. Res. Clin. Rheumatol. 24:513-526, 2010)。40を超える経路の調節において、JAKが役割を果たしていることが知られている(Murray, J. Immunol. 178:2623-2629, 2007)。しかし、前記2種類の化合物は、他のキナーゼファミリーの中でもJAKに対する選択性が高いにもかかわらず、これらの2つの化合物の高い選択性にもかかわらず、これらの阻害剤は、JAKファミリーに含まれるキナーゼに対して、最も選択的ではないかもしれない。例えば、RAにおけるトファスチニブの第2フェーズ開発中には、重度の貧血の発生が用量制限因子であると報告された(Pfizer, Investigators Brochure. In FDA Advisory Board (Bethesda MD), 2012; Riese et al., Best Pract. Res. Clin. Rheumatol. 24:513-526, 2010)。さらに、NK細胞数の低下に続発しうる、ヘルペスウイルス感染の増加が、トファシチニブの第3フェーズ試験において報告された(O'Shea et al., Ann. Rheum. Dis. 72(Suppl 2):ii111-115, 2013; Pfizer, Investigators Brochure. In FDA Advisory Board (Bethesda MD), 2012)。これらの効果は、それぞれ、Jak2およびJak3を介したEPOおよびIL-15シグナル伝達の阻害によって生じ得るということは、合理的に考えられる(Jost and Altfeld, Annu. Rev. Immunol. 31:163-194, 2013; Kennedy et al., J. Exp. Med. 191:771-780, 2000; and Richmond et al., Trends Cell Biol. 15:146-155, 2005)。実際、RAに伴う貧血を治療するための介入の失敗は、治療に対する反応が完全に成功する機会を制限する可能性がある。
【0014】
したがって、Jak阻害剤を使用する現在の治療選択肢によっては満たされない、医療上の必要性が存在する。Jak1選択的阻害剤を同定するための努力が続けられている(Zak et al. J. Med. Chem. 2013, 56, 4764-4785; Menet et al. Future Med. Chem. 2015, 7, 203-235; WO2013/007768)。開発中の顕著なJak1選択的化合物としては、GLP0634、ABT-494(WO2015/061665)、および、Incyteの最近の出願公報における化合物(WO2015/168246)が挙げられる。しかし、いずれもJak1選択的阻害剤として未承認である。
【0015】
ここで、新規な1H-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン誘導体を、Jak1選択的阻害剤として開示する。これらの化合物、および本発明の化合物を含む組成物は、Jak1活性に関連する障害(自己免疫疾患もしくは障害、または炎症性疾患もしくは障害、および癌もしくは新生物の疾患または障害など)を治療するのに有用である。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、新規な1H-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン誘導体、それらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物および多形体を、選択的Jak1キナーゼ阻害剤として開示する。本発明はまた、本発明の化合物を含む組成物、ならびにJak1に関連する疾患および状態を処置する方法におけるこのような組成物の使用、を提供する。
【0017】
本発明は、式Iの単離された化合物または薬学的に許容されるその塩;またはプロドラッグもしくはその薬学的に許容される塩;またはそれらの水和物、溶媒和物もしくは多形体を提供することによって、前記の問題を解決する:
【0018】
【化1】
【0019】
(式I中、Rは、H、ハロ、またはハロ、OH、CN、OR、NHR、NRR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)(O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)R、およびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換されたC1-3アルキルであり;
は、H、ハロ、またはC1-3アルキルであり;
CyはC3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、フェニル、または5~6員ヘテロアリールであり、それぞれR、オキソ、ハロ、OH、CN、OR、NHR、NRR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)R、およびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換され、
ここで、Rはハロ、OH、CN、OR、NHR、NRR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)(O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)R、およびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換されたC1-3アルキルであり;
R、R’はそれぞれ独立に、H、またはハロ、OH、およびCNからなる群から独立に選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換されたC1-3アルキルである)。
【0020】
本発明の化合物、およびそれらを含む組成物は、Jak1調節疾患、障害、またはその症状を治療するか、またはその重症度を軽減するのに有用である。
【0021】
別の態様では、本発明は、本明細書中の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物(またはそれらの組成物)の有効量を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体における疾患または疾患の症状の治療方法に関する。疾患または疾患の症状は、Jak1によって調節されるものいずれかであり得る。疾患または疾患の症状は、例えば、関節リウマチまたは炎症性疾患もしくは障害などの自己免疫疾患または障害、および癌または新生物増殖性の疾患もしくは障害(例えば、本明細書に記載したものを含む)であり得る。
【0022】
別の態様では、本発明は、式Iの化合物の製造工程に有用である、式A1-14の化合物に関する。
【0023】
【化2】
【0024】
別の態様では、本発明は、(C 1-6 アルキル) オキソニウムテトラフルオロボレートの存在下、式Iの化合物を生成するのに十分な温度、および十分な時間において、式Vの化合物および式VIの化合物を接触させることを含む、式Iの化合物を調製する製造方法に関する:
【0025】
【化3】
【0026】
式中、RはHであり、RおよびCyは前記で定義した通りである。前記(C 1-6 アルキル) オキソニウムテトラフルオロボレートは、トリエチルオキソニウムテトラフルオロボレートであり得る。
【0027】
別の態様では、本発明は、水素化触媒および水素ガスの存在下、式Vの化合物を製造するのに十分な温度、十分な圧力および十分な時間において、式VIIの化合物を還元することを含む、式Vの化合物を調製する製造方法に関する:
【0028】
【化4】
【0029】
式中、Cyは前記で定義した通りである。前記水素化触媒は、パラジウムカーボンであり得る。
【0030】
別の態様では、本発明は、塩基の存在下、式VIIの化合物を製造するのに十分な温度、および十分な時間において、式A1-14の化合物および式VIIIの化合物を接触させることを含む、式VIIの化合物を調製する製造方法に関する:
【0031】
【化5】
【0032】
式中、Cyは前記で定義した通りである。前記塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミンであり得る。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔定義〕
用語「改善する」および「治療する」は互換的に使用され、そして両方とも、疾患(例えば、本明細書中で描写される疾患または障害)の発症または進行を、減少、抑制、弱め、減退、停止、または安定化させることを意味する。
【0034】
「疾患」とは、細胞、組織、または臓器の正常な機能を損傷または妨害する、任意の状態または障害を意味する。
【0035】
「マーカー」とは、疾患または障害に関連する、任意の変化を意味する。例えば、疾病または障害に関連して発現レベルまたは活性が変化している、任意の蛋白質またはポリヌクレオチドがこれに当たる。
【0036】
本明細書において、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有している(containing)」、および「有する(having)」などの語は、米国特許法においてそれらに帰される意味を有することができる。また、これらの語は、「包含する(includes)」、「包含している(including)」などを意味することもできる。「本質的に構成している(consisting essentially of)」または「本質的に構成する(consists essentially)」も同様に、米国特許法においてそれらに帰される意味を有している。該用語はオープンエンドであり、列挙されるものよりも多くの存在を許容する(ただし、当該列挙されるものよりも多くの存在によって、列挙されるものの基本的または新規な特性が変更されない限りにおいて。また、先行技術の実施形態は除外する)。
【0037】
本明細書で使用される用語「化合物」はまた、本明細書の式の化合物の、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、およびプロドラッグ塩を含むことが意図される。該用語はまた、前述のいずれかの、任意の溶媒和物、水和物、および多形体を含む。本願で説明されている本発明の特定の態様における、「プロドラッグ」、「プロドラッグ塩」、「溶媒和物」、「水和物」、または「多形体」という具体的な記載は、上述の他の形態の記載を伴わずに「化合物」という用語が用いられる場合には、本発明の他の態様において上述の形態の意図的に省略しているものと解釈するべきではない。
【0038】
本発明の化合物の塩は、酸と化合物の塩基性基(アミノ官能基など)との間に形成されるか、または、塩基と化合物の酸性基(カルボキシル官能基など)との間に形成される。別の好ましい実施形態によれば、化合物は薬学的に許容される酸付加塩である。
【0039】
本明細書で用いる用語「プロドラッグ」とは、特に断らない限り、生物学的条件下(in vitroまたはin vivo)において、加水分解、酸化、または反応して本発明の化合物を提供し得る、当該化合物の誘導体を意味する。プロドラッグは、生物学的条件下における上述のような反応を経過した後にのみ活性化されてもよいし、未反応形態において活性を有していてもよい。本発明において予期されるプロドラッグの例には、生体加水分解性部分(アミド、エステル、カルバメート、カーボネート、およびリン酸アナログなど)を含む、本明細書に開示される式のいずれか1つの化合物のアナログまたは誘導体が含まれるが、これらに限定されない。プロドラッグは、典型的には[Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery (1995) 172-178, 949-982 (Manfred E. Wolff ed., 5th ed)]に記載されているような周知の方法を用いて調製することができる。また、[Goodman and Gilman’s, The Pharmacological basis of Therapeutics, 8th ed., McGraw-Hill, Int. Ed. 1992, "Biotransformation of Drugs"]も参照のこと。
【0040】
本明細書中で使用される場合、他に示されない限り、用語「生体加水分解性部分」とは、(i)化合物の生物学的活性を破壊せず、かつ、in vivoにおいて当該化合物に有利な特性(例えば、取り込み、作用の持続時間、または作用の開始)を付与する官能基、または、(ii)それ自体は生物学的に不活性であるが、in vivoにおいて生物学的に活性な化合物に変換される官能基を意味する。このような官能基の例としては、アミド、エステル、カルバメート、カーボネート、またはリン酸アナログが挙げられる。
【0041】
プロドラッグ塩とは、酸とプロドラッグの塩基性基(アミノ官能基など)との間で形成される化合物、または、塩基とプロドラッグの酸性基(カルボキシル官能基など)との間で形成される化合物である。一実施形態では、プロドラッグ塩は薬学的に許容される塩である。
【0042】
特に好ましいプロドラッグおよびプロドラッグ塩は、化合物を哺乳類に投与する場合に、本発明の化合物の生物学的利用能を高めるものである(例えば、より迅速に血液に吸収されるように、経口投与される化合物とすることによって)。あるいは、その母型化合物に比べて、生体の部分(例えば、脳または中枢神経系)への母型化合物の送達を促進するものである。好ましいプロドラッグには、本明細書に記載される式の構造に、水溶性を向上させるまたは腸膜を通過する能動輸送を促進するような基を付加した誘導体が含まれる。例えば、[Alexander, J. et al. Journal of Medicinal Chemistry 1988, 31, 318-322; Bundgaard, H. Design of Prodrugs; Elsevier: Amsterdam, 1985; pp 1-92; Bundgaard, H.; Nielsen, N. M. Journal of Medicinal Chemistry 1987, 30, 451-454; Bundgaard, H. A Textbook of Drug Design and Development; Harwood Academic Publ.: Switzerland, 1991; pp 113-191; Digenis, G. A. et al. Handbook of Experimental Pharmacology 1975, 28, 86-112; Friis, G. J.; Bundgaard, H. A Textbook of Drug Design and Development; 2 ed.; Overseas Publ.: Amsterdam, 1996; pp 351-385; Pitman, I. H. Medicinal Research Reviews 1981, 1, 189-214]を参照のこと。
【0043】
本明細書中で使用される用語「薬学的に許容される」とは、正常な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴うことなく、ヒトおよび他の哺乳動物の組織と接触して使用することに適している成分を指す。この成分は、合理的な便益/リスク比に相応している。「薬学的に許容される塩」は、レシピエントへの投与の際に、本発明の化合物または化合物のプロドラッグを直接または間接に提供することができる、任意の非毒性塩を意味する。
【0044】
薬学的に許容される塩を形成するために一般に使用される酸には、無機酸(例えば重硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸)、ならびに有機酸(例えばパラトルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、二酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸)、ならびに関連する無機酸および有機酸が含まれる。したがって、このような薬学的に許容される塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、モノ水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリレート、ギ酸塩、イソブチレート、カプラート、ヘプタン酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオレート、ベンゾエート、クロロベンゾエート、メチルベンゾエート、ジニトロベンゾエート、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニルブチレート、クエン酸塩、乳酸塩、ヒドロキシブチレート、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデレートなどの塩を含む。好ましい薬学的に許容される酸付加塩としては、無機酸(塩酸および臭化水素酸など)と共に形成されるもの、そしてとりわけ、有機酸(マレイン酸など)と共に形成されるもの、が挙げられる。
【0045】
本発明のプロドラッグの酸性官能基と薬学的に許容される塩を形成するための、適切な塩基としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、およびリチウムなど)の水酸化物;アルカリ土類金属(カルシウムおよびマグネシウムなど)の水酸化物;他の金属(アルミニウムおよび亜鉛など)の水酸化物;アンモニア;ならびに、有機アミン(非置換またはヒドロキシ置換された、モノ-、ジ-、またはトリアルキルアミンなど);ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N-メチルアミンまたはN-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ-、ビス-、またはトリス-(2-ヒドロキシ低級アルキルアミン)(例えば、モノ-、ビス-、またはトリス-(2-ヒドロキシエチルアミン)、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン、または、トリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミンなど);N,N-ジ低級アルキル-N-(ヒドロキシ低級アルキル)-アミン(例えば、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン、または、トリ-(2-ヒドロキシエチル)アミンなど);N-メチル-D-グルカミン;ならびに、アミノ酸(アルギニン、リジンなど)、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「水和物」とは、化学量論的または非化学量論的な量の水をさらに含む化合物を意味する。この水は、非共有結合性の分子間力によって結合している。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「溶媒和物」とは、化学量論的または非化学量論的な量の溶媒(水、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、2-プロパノールなど)をさらに含む化合物を意味する。この溶媒は、非共有結合性の分子間力によって結合している。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「多形体」とは、例えば、X線粉末回折パターンまたは赤外分光法などの物理的手段によって特徴付けられ得る、化合物またはその錯体の固形結晶形態を意味する。同じ化合物の異なる多形体は、異なる物理的、化学的および/または分光学的性質を示すことがある。このような異なる物理的特性には、安定性(例えば、熱、光または水分に対する)、圧縮性および密度(製剤および製品の製造において重要である)、吸湿性、溶解性、および溶解速度(これらは生物学的利用能に影響を及ぼし得る)が含まれるが、これらに限定されない。安定性の差異は、化学反応における変化原因である場合もあるし(酸化の仕方が異なるなど。例えば、ある多形体から構成される方が、別の多形体から構成されるよりも、投与形態がより急速に変色する)、機械的特性が原因である場合もあるし(例えば、薬物動態的に好ましい多形体が、熱力学的により安定な多形体に転換することによって、錠剤が貯蔵時に崩壊する)、その両方が原因である場合もある(例えば、ある多形体からなる錠剤は、高湿度でより分解しやすい)。多形体の異なる物理特性が、それらの加工に影響を及ぼす可能性がある。例えば、ある多形体は溶媒和物を形成する可能性が高いか、または不純物を濾過または洗浄することが他の多形よりも困難である可能性がある。その理由は、例えば、その粒子の形状または粒度分布にある。
【0049】
本明細書で使用される用語「他の立体異性体を実質的に含まない」とは、25%未満の他の立体異性体、好ましくは10%未満の他の立体異性体、より好ましくは5%未満の他の立体異性体、最も好ましくは2%未満の他の立体異性体、または「X」未満の他の立体異性体が存在することを意味する(ここで、Xは0から100までの間の数(端点を含む)である)。ジアステレオマーを得るかまたは合成する方法は、当該技術分野において周知である。これらの方法は実用的であり、最終化合物、出発材料または中間体に適用されてもよい。他の実施形態は、化合物が単離された化合物であるものである。本明細書で使用される用語「少なくともX%のエナンチオマーに富む」は、化合物の少なくともX%が単一のエナンチオマー形態であることを意味する(ここで、Xは0と100との間の数である(端点を含む))。
【0050】
本明細書で使用する用語「安定な化合物」とは、製造を可能にするのに十分な安定性を有している化合物を指す。また、この化合物は、十分な期間にわたって、本明細書で詳述する目的(例えば、(i)治療用製品、治療用化合物の製造に使用するための中間体、単離可能または保存可能な中間化合物への製剤、(ii)治療剤に応答する疾患または状態の治療など)にとって有用である、化合物の完全性を維持している化合物を指す。
【0051】
「立体異性体」とは、エナンチオマーおよびジアステレオマーの両方を指す。
【0052】
本明細書で使用するとき、用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の、任意のラジカルを指す。
【0053】
用語「アルク(alk)」または「アルキル」とは、1~12個の炭素原子(好ましくは1~8個の炭素原子)を有する、直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。「低級アルキル」という表現は、1~4個の炭素原子(端点を含む)のアルキル基を指す。
【0054】
用語「アリールアルキル」とは、アルキルの水素原子がアリール基によって置換されている部分を指す。
【0055】
用語「アルケニル」は、少なくとも1個の二重結合を有し、2~10個(好ましくは2~4個)の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。アルケニル基が窒素原子に結合する場合、二重結合を有する炭素を介して直接結合していないことが好ましい。
【0056】
用語「アルコキシ」とは、-O-アルキル基を指す。用語「アルキレンジオキソ」とは、-O-R-O-の構造を有する二価の化学種を指す(ここで、Rはアルキレンを表す)。
【0057】
用語「アルキニル」とは、少なくとも1個の三重結合を有し、2~10個(好ましくは2~4個)の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。アルキニル基が窒素原子に結合している場合、三重結合を有する炭素を介して直接結合していないことが好ましい。
【0058】
用語「アルキレン」とは、単結合(例えば、-(CH-。ここで、xは1~5である)によって連結された、1~5個の炭素原子を有する二価の直鎖架橋を指す。アルキレンは、1~3個の低級アルキル基で置換されていてもよい。
【0059】
用語「アルケニレン」は、単結合によって連結されている1個または2個の二重結合を有し、2~5個の炭素原子を有する、直鎖架橋を指す(1~3個の低級アルキル基で置換されていてもよい)。例示的なアルケニレン基は、-CH=CH-CH=CH-、-CH-CH=CH-、-CH-CH=CH-CH-、-C(CHCH=CHおよび-CH(C)-CH=CH-である。
【0060】
用語「アルキニレン」とは、単結合によって連結されている三重結合を有し、2~5個の炭素原子を有する、直鎖架橋を指す(1~3個の低級アルキル基で置換されていてもよい)。例示的なアルキニレン基には、以下がある。
【0061】
【化6】
【0062】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」および「シクロアルケニル」には、それぞれ、3~12個の炭素(好ましくは3~8個の炭素、より好ましくは3~6個の炭素)を有する、飽和および部分不飽和の環状炭化水素基が含まれる。
【0063】
用語「Ar」または「アリール」は、6~14個の炭素原子を含む芳香族環状基を指す(例えば、6員の単環系、10員の二環系または14員の三環系)。例示的なアリール基には、フェニル、ナフチル、ビフェニルおよびアントラセンが含まれる。
【0064】
「ヘテロアリール」とは、5~12個の環原子を有しており、当該環内にN、OまたはSから選択される1個、2個、3個または4個の環ヘテロ原子を含む、単環または縮合環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)基を指す。ヘテロアリールにおいて、残りの環原子は、Cである。ヘテロアリールは、完全に共役したπ電子系を有していてもよい。ヘテロアリールにおいて、各環の0、1、2、3または4個の原子は、置換基によって置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例としては、限定されるものではないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、キナゾリン、イソキノリン、プリンおよびカルバゾールが挙げられる。
【0065】
用語「複素環」、「複素環の(heterocyclic)」または「複素環の(heterocyclo)」とは、少なくとも1つの環に少なくとも1つのヘテロ原子を有している、完全に飽和または部分的に不飽和の環基を指す(例えば、3~7員の単環系、7~12員の二環系、または10~15員の三環系)。複素環においては、それぞれの環の0、1、2または3個の原子が、置換基によって置換されていてもよい。ヘテロ原子を含む複素環基の各環は、窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子から選択される1、2、3または4個のヘテロ原子を有していてもよい。この窒素および硫黄ヘテロ原子は、任意に、酸化されていてもよい。また、この窒素ヘテロ原子は、任意に、四級化されていてもよい。複素環基は、環内または環系内の任意のヘテロ原子または炭素原子に結合していてもよい。
【0066】
用語「ヘテロシクリル」とは、少なくとも1つの環に少なくとも1つのヘテロ原子を有している、完全飽和または部分不飽和環状基を指す(例えば、3~7員の単環系、7~12員の二環系、または10~15員の三環系)。ヘテロシクリルにおいては、それぞれの環の0、1、2または3個の原子が、置換基によって置換されていてもよい。ヘテロ原子を含むヘテロシクリル基の各環は、窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子から選択される1、2、3または4個のヘテロ原子を有していてもよい。この窒素および硫黄ヘテロ原子は、任意に、酸化されていてもよい。また、この窒素ヘテロ原子は、任意に、四級化されていてもよい。ヘテロシクリル基は、環内または環系内の任意のヘテロ原子または炭素原子に結合していてもよい。
【0067】
用語「置換基」とは、本明細書中に記載される任意の官能基について(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリール基)、その基の任意の原子を「置換した」基を指す。適した置換基としては、限定されないが、ハロゲン、CN、NO、OR15、SR15、S(O)OR15、NR1516、C-Cパーフルオロアルキル、C-Cパーフルオロアルコキシ、1,2-メチレンジオキシ、C(O)OR15、C(O)NR1516、OC(O)NR1516、NR15C(O)NR1516、C(NR16)NR1516、NR15C(NR16)NR1516、S(O)NR1516、R17、C(O)R17、NR15C(O)R17、S(O)R17、S(O)17、R16、オキソ、C(O)R16、C(O)(CHOH、(CHOR15、(CHC(O)NR1516、NR15S(O)17(ここで、nは、独立して、0~6(端点を含む)である)が挙げられる。各R15は、独立して、水素、C-CアルキルまたはC-Cシクロアルキルである。各R16は、独立して、水素、アルケニル、アルキニル、C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C-CアルキルまたはC-C6シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールで置換されたC-Cアルキルである。各R17は、独立して、C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C-CアルキルまたはC-C6シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールで置換されたC-Cアルキルである。各R15、R16およびR17中に含まれる、各C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリールおよびC-Cアルキルは、ハロゲン、CN、C-C4アルキル、OH、C1-C4アルコキシ、NH、C1-C4アルキルアミノ、C1-C4ジアルキルアミノ、C1-C2パーフルオロアルキル、C1-C2パーフルオロアルコキシ、または1,2-メチレンジオキシで、任意に置換することができる。
【0068】
用語「オキソ」とは、炭素に結合したときにカルボニルを形成し、窒素に結合したときにN-オキシドを形成し、硫黄に結合したときにスルホキシドまたはスルホンを形成する、酸素原子を指す。
【0069】
用語「アシル」とは、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、またはヘテロアリールカルボニル置換基を指す。これらのいずれもが、置換基によってさらに置換されていてもよい。
【0070】
本明細書において、可変範囲を含む任意の定義における化学基の列挙には、列挙された基の任意の単一または組み合わせが、当該可変範囲となっている定義が含まれる。本明細書において、可変範囲を含む実施形態の列挙には、任意の単一の実施形態、または任意の他の実施形態もしくはそれらの部分との組合せ他実施形態が含まれる。
【0071】
本発明の化合物は、1つ以上の不斉中心を含んでいてもよい。したがって、前記化合物は、ラセミ体およびラセミ混合物、単一エナンチオマー、個々のジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物、ならびにシスおよびトランス幾何異性体として存在しうる。これらの化合物の全てのこのような異性体形態が、明らかに本発明に含まれる。本発明の化合物はまた、多重互変異性体で表されてもよい。そのような場合、本発明には、本明細書に記載される化合物の全ての互変異性体が明示的に包含される。前記化合物の全てのこのような異性体形態が、本発明に明示的に包含される。本明細書に記載される化合物の全ての結晶形態が、本発明に明示的に包含される。
【0072】
〔本発明の化合物〕
一態様において、本発明は、式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩;またはプロドラッグもしくはその薬学的に許容される塩;またはそれらの水和物、溶媒和物もしくは多形体を提供する:
【0073】
【化7】
【0074】
式I中、Rは、H、ハロ、またはハロ、OH、CN、OR、NHR、NRR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)(O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)R、およびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換されたC1-3アルキルであり;
は、H、ハロ、またはC1-3アルキルであり;
Cyは、C3-7シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、フェニル、または5~6員ヘテロアリールであり、それぞれR、オキソ、ハロ、OH、CN、OR、NHR、NRR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)R、およびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換され;
は、ハロ、OH、CN、OR、NHR、NRR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)(O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)RおよびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換されたC1-3アルキルであり;
R、R’は、それぞれ独立に、H、またはハロ、OHおよびCNからなる群から独立に選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換されたC1-3アルキルである。
【0075】
別の態様において、Cyは、それぞれ、R、オキソ、ハロ、OH、CN、OR、NHR、NRR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)(O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)R、およびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換された、C5-7シクロアルキルまたは5~7員ヘテロシクロシクリルであり得る(ここで、Rは、ハロ、OH、CN、OR、NHR、NRR’、N(R)C(=O)R’、N(R)C(=O)(O)R’、OC(=O)NRR’、C(=O)R、C(=O)NRR’、N(R)S(O)R’、S(O)R、およびS(O)NRR’からなる群から独立して選択される1、2、または3個の置換基で任意に置換された、C1-3アルキルである)。
【0076】
別の態様において、Rは水素であってもよい。
【0077】
本発明の代表的な化合物を表1に示す。これらの例において、キラル炭素原子における立体化学は、特定されない限り、独立して、RS、RまたはSのいずれかである。化合物4、7~11については、立体化学はトランスまたはシス異性体の一方のみを示し、それぞれの異性体の構造を示さない。本明細書中に示される構造(表1に記載の構造を含む)は、対応する水素原子が明らかに存在しない場合には、特定の-NH-、-NH(アミノ)および-OH(ヒドロキシル)基を含んでいてもよい。しかし場合によっては、それらを、-NH-、-NHまたは-OHとして読み取るべきである。特定の構造では、スティック結合が描かれ、このスティック結合はメチル基を表している。
【0078】
【化8】
【0079】
本発明の代表的な化合物を以下に列挙する:
trans-4-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]シクロヘキサンカルボニトリル (1);
trans-4-[2-(ヒドロキシメチル)フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]シクロヘキサンカルボニトリル (2);
2-[trans-4-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル (3);
2-[(2R,5S)-5-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (4);
3-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド (5);
(R)-4-[2-(1-ヒドロキシエチル)-1H-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピペリジン-1-カルボキサミド (6);
2-[(2R,5S)-5-[2-(ヒドロキシメチル)フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (7);
2-[(2S,5S)-5-[2-ヒドロキシメチル]フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (8)、
2-[(2R,5S)-5-[2-エチルフロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (9)、
2-[(2R,5S)-5-[2-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (10)、
2-[2R,5S)-5-[2-メチルフロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (11)。
【0080】
本明細書中の式の化合物の合成は、当業者である合成化学者によって容易に行うことができる。関連する手順および中間体は、例えば、本明細書に開示される。本明細書中で言及される特許、出願公開および刊行物の各々は、伝統的な論文誌であろうと、またはインターネットを通じてのみ入手可能であろうと、参照によりその全体が援用される。
【0081】
本明細書中の式の化合物を合成するための他のアプローチは、本明細書中に引用される参考文献から容易に応用され得る。これらの手順の変形およびそれらの最適化は、当業者の技術の範囲内である。
【0082】
前記で示されている具体的なアプローチおよび化合物は、限定を意図していない。本明細書中のスキームにおける化学構造は、可変である構造である。この構造は、同じ可変的名称(例えば、R、R、R’、Xなど)によって特定されるかどうかにかかわらず、本明細書中の化合物の式中において対応する位置の化学基の定義(部分、原子など)と相応して定義される。別の化合物の構造の合成に使用するために、化合物の構造中の化学基は何が適しているか、当業者の知識の範囲内である。本明細書中の式の化合物およびそれらの合成前駆体(本明細書中のスキームに明示的に示されていない経路内のものを含む)を合成するさらなる方法は、当業者の化学手段の範囲内である。反応条件を最適化するための方法(必要ならば、競合する副産物を最少化するための方法)は、当該分野で公知である。本明細書に記載される方法はまた、本明細書に特に記載されるステップの前後に、好適な保護基を付加または除去して、最終的に本明細書の化合物を合成することを可能にするステップをさらに含んでもよい。さらに、種々の合成ステップを、所望の化合物を得るために、入れ替えた順序または手順で行ってもよい。応用可能な化合物の合成に有用な合成化学変換および保護基方法論(保護および脱保護)は当該技術分野で公知である。その例としては、[R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994); and L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)]およびこれらの文献の後の版に記載されているものが挙げられる。
【0083】
本明細書に記載される方法は、ある式の化合物を別の式の化合物に変換することを意図する。変換の工程は、1つ以上の化学変換を指し、in situで、または中間体化合物の単離を伴って実施することができる。この転換には、当該技術分野において知られている技術およびプロトコール(例えば本明細書に引用されている参考文献に記載されている技術およびプロトコール)を用いて、出発化合物または中間体と追加の試薬とを反応させることを含み得る。中間体は、精製して使用してもよいし(例えば、濾過、蒸留、昇華、結晶化、粉砕、固相抽出、およびクロマトグラフィー)、精製せずに使用してもよい。
【0084】
本発明によって想定される置換基および変異体の組み合わせは、結果として安定な化合物の形成を生じるものに限られる。
【0085】
また、本発明は、(i)有効量の、本明細書中のいずれかの式の化合物(または適用可能であれば、該化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、多形体またはプロドラッグ)と、(ii)許容される担体と、を含む組成物を提供する。好ましくは、本発明の組成物が薬学用途(薬学的組成物)のために製剤される。ここで、前記担体は、薬学的に許容される担体である。担体は、製剤の他の成分と共存可能であるという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体の場合、薬剤に典型的に使用される量において、そのレシピエントとって有害であってはならない。
【0086】
本発明の薬学的組成物において使用され得る、薬学的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルには、イオン交換体;アルミナ;ステアリン酸アルミニウム;レシチン;血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど);緩衝物質(リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなど);飽和植物脂肪酸、水、塩または電解質の部分グリセリド混合物(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、およびウール脂肪);が含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
本発明の薬学的組成物には、経口投与、直腸投与、鼻内投与、局所投与(口腔投与および舌下投与を含む)、膣内投与または非経口投与(皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与および皮内投与を含む)投与に適したものが含まれる。特定の実施形態において、本明細書中の式の化合物は、経皮投与される(例えば、経皮パッチを使用して)。他の製剤は、単回投与形態で提供されることに便利でありうる(例えば、錠剤および徐放性カプセル、ならびにリポソーム)。このような製剤は、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。例えば、[Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA (17th ed. 1985)]を参照のこと。
【0088】
このような調製方法は、前記分子と、投与される成分(例えば、1つ以上の補助成分を構成する担体)と、を会合させるステップを含む。一般に、組成物は、(i)有効成分と、液状担体、リポソームもしくは微細に分割した固形担体、またはその両方とを、均一かつ密接に会合させ、次に、(ii)必要に応じて、生成物を成形する、ことによって調製される。
【0089】
特定の好ましい実施形態において、化合物は経口投与される。経口投与に適した本発明の組成物は、各々が所定量の有効成分を含む個別の単位として(カプセル、サシェット(sachet)もしくは錠剤など);粉末もしくは顆粒として;水性液体もしくは非水性液体中の、溶液もしくは懸濁液として;または、水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型液体エマルジョンもしくはリポソームに格納されて;および、ボーラスなどとして提供され得る。軟質ゼラチンカプセルは、このような懸濁液を含めるために有用でありうる。軟質ゼラチンカプセルによって、化合物の吸収速度を効果的に高めてもよい。
【0090】
錠剤は、圧縮または成形によって作製されてもよく、任意で1つ以上の補助成分を含んでもよい。圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの自由流動性形態の有効成分を適当な機械で圧縮し、任意で結合剤、潤滑剤、不活性稀釈剤、保存剤、界面活性剤または分散剤と混合することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性な液体稀釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を、適当な機械で成形することによって作ることができる。錠剤は、任意で、被覆されていてもよいし、溝が刻まれていてもよい。あるいは、錠剤は、当該錠剤中に含まれる有効成分を持続的にまたは制御下で放出させるように製剤化されてもよい。このように、薬学的有効成分(例えば、本明細書における成分および当該分野で公知の他の化合物)を徐放的または制御放出的に放出させる組成物を製剤する方法は、当該分野で公知である。このような方法は、刊行された複数の米国特許に記載され、その中には、限定されないが、米国特許第4,369,172号;および同第4,842,866号、および当該文献に引用されている参考文献が含まれる。コーティングを、化合物を腸に送達するために使用してもよい(例えば、米国特許第6,638,534号、同第5,217,720号、および同第6,569,457号、同第6,461,631号、同第6,528,080号、同第6,800,663号、ならびに当該文献中で引用されている参考文献を参照のこと)。本発明の化合物の有用な製剤は、腸溶性層がヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートコハク酸塩を含む、腸溶性ペレットの形態である。
【0091】
経口使用のための錠剤の場合において、一般に用いられる担体には、ラクトースおよびコーンスターチが含まれる。ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤もまた、典型的に添加される。カプセル形態での経口投与に有効な稀釈剤には、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが含まれる。水性懸濁液を経口投与する場合、有効成分を乳化剤および懸濁剤組み合わせる。所望ならば、ある種の甘味剤および/または芳香剤および/または着色剤を添加していもよい。
【0092】
局所投与に適した組成物には、(i)矯味性基剤(一般的には、スクロース)中の有効成分と、アカシアまたはトラガカントと、を含むロゼンジ剤や、(ii)不活性な基剤(ゼラチンおよびグリセリンなど)中、またはアカシアおよびトラガカント中に有効成分を含むパステル剤が挙げられる。
【0093】
非経口投与に適した組成物には、(i)意図するレシピエントの血液と等張に製剤された、水性および非水性の滅菌注射溶液(抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および溶質を含んでいてもよい)や、(ii)水性および非水性の滅菌懸濁液(懸濁剤および増粘剤を含んでいてもよい)が含まれる。製剤は、例えば、単位用量または複数用量容器(密封アンプルおよびバイアルなど)で提供されてもよい。また、使用直前まで、滅菌液(注射用水など)の追加だけを必要とする凍結乾燥状態で保存されていてもよい。即時調合される注射溶液および懸濁液を、無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製してもよい。
【0094】
そのような注射溶液は、例えば、滅菌されており注射可能な、水性または油性懸濁液の形態であり得る。適当な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween80など)および懸濁剤を使用する当技術分野において公知の技術に従って、この懸濁液を製剤することができる。無菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に許容し得る稀釈剤または溶剤中の、無菌注射用溶液または懸濁液であってもよい(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液)。使用し得る許容可能なビヒクルまたは溶媒の中には、マンニトール、水、リンゲル液および等張食塩水がある。さらに、無菌の不揮発性油を、溶媒または懸濁媒体として常用できる。この目的には、任意の無刺激性の不揮発性油を使用できる(合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む)。脂肪酸(オレイン酸など)およびそのグリセリド誘導体は、注射可能な製剤に有用である。天然の薬学的に許容される油(オリーブ油またはヒマシ油など)、特にそれらのポリオキシエチレン付加物も、同様に有用である。これらの油の溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール稀釈剤または分散剤を含有してもよい。
【0095】
本発明の薬学的組成物は、直腸投与用坐剤の形態で投与されてもよい。これらの組成物は、(i)本発明の化合物と、(ii)室温では固体であるが直腸温度では液体となり、その結果直腸内で溶融して有効成分を放出する、適当な非刺激性賦形剤と、を混合して製造することができる。このような材料には、カカオバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
本発明の薬学的組成物は、鼻エアロゾルまたは鼻吸入により、投与されてもよい。このような組成物は、医薬製剤の技術分野において周知の技術に従って調製される。また、前記組成物は、ベンジルアルコールもしくは他の適当な保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フッ化炭素、および/または、当該技術分野において知られている可溶化剤または分散剤を用いた、生理食塩水中の溶液として調製されてもよい。
【0097】
所望の治療が、局所的な適用により容易にアクセスできる領域または器官を包含する場合には、本発明の薬学的組成物の局所投与が特に有用である。皮膚への局所適用の場合、薬学的組成物は、担体中に懸濁または溶解させた有効成分を含む、適当な軟膏として製剤すべきである。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、鉱油、液状石油、白石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、前記薬学的組成物は、担体に懸濁または溶解させた有効成分を含む、適切なローションまたはクリームとして製剤できる。適切な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水を含むが、これらに限定されない。また、本発明の薬学的組成物は、直腸坐剤または適当な浣腸製剤として、下部腸管に局所適用されてもよい。また、局所用経皮パッチおよびイオン導入投与も、本発明に包含される。
【0098】
特に好ましい誘導体およびプロドラッグは、化合物を哺乳類に投与する場合に、本発明の化合物の生物学的利用能を高めるものである(例えば、より迅速に血液に吸収されるように、経口投与される化合物とすることによって)。あるいは、その母型化合物に比べて、生体の部分(例えば、脳または中枢神経系)への母型化合物の送達を促進するものである。好ましいプロドラッグには、本明細書に記載される式の構造に、水溶性を向上させるまたは腸膜を通過する能動輸送を促進するような基を付加した誘導体が含まれる。例えば、[Alexander, J. et al. Journal of Medicinal Chemistry 1988, 31, 318-322; Bundgaard, H. Design of Prodrugs; Elsevier: Amsterdam, 1985; pp 1-92; Bundgaard, H.; Nielsen, N. M. Journal of Medicinal Chemistry 1987, 30, 451-454; Bundgaard, H. A Textbook of Drug Design and Development; Harwood Academic Publ.: Switzerland, 1991; pp 113-191; Digenis, G. A. et al. Handbook of Experimental Pharmacology 1975, 28, 86-112; Friis, G. J.; Bundgaard, H. A Textbook of Drug Design and Development; 2 ed.; Overseas Publ.: Amsterdam, 1996; pp 351-385; Pitman, I. H. Medicinal Research Reviews 1981, 1, 189-214]を参照のこと。
【0099】
対象とする治療の適用は、所定の部位で投与されるように局所的であってもよい。所定の部位に対象組成物を提供するために、様々な技術を使用することができる(注射、カテーテル、トロカール、発射体、プルロニックゲル、ステント、徐放性薬物放出ポリマー、または体内アクセスを提供する他の装置など)。
【0100】
別の実施形態によれば、本発明は、埋入可能な薬物放出装置を埋入する方法を提供する。該方法は、前記薬物放出装置を、本発明の化合物または組成物と接触させるステップを含む。埋入可能な薬物放出装置としては、生分解性ポリマーカプセルまたはバレット、非分解性-拡散性ポリマーカプセル、および生分解性ポリマーウェハが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物が治療活性を有するように当該化合物を含む化合物または組成物でコーティングされた、埋入可能な医用装置を提供する。
【0102】
別の実施形態では、本発明の組成物は、第2の治療剤をさらに含む。第2の治療剤は、単独で投与された場合に(または本明細書のいずれかの式の化合物と共に投与された場合に)、有益な特性を有することが知られている(または当該特性を示す)、任意の化合物または治療剤を含む。これらの化合物と有用に組み合わせることができる薬物には、上述の疾患および障害の処置のための、他のキナーゼ阻害剤および/または他の治療剤が含まれる。
【0103】
このような薬剤は、当該分野で詳細に説明されている。好ましくは、第2の治療剤は、癌性および腫瘍性の疾患もしくは障害、または、自己免疫性および炎症性の疾患もしくは障害から選択される、疾患または状態の治療または予防に有用な薬剤である。
【0104】
別の実施形態において、本発明は、本発明の化合物および第2の治療剤の、互いに協働する別々の投与形態を提供する。本明細書で使用される用語「互いに協働する」とは、別々の投与形態が、(i)一緒に包装されるか、あるいは、(ii)組み合わせて販売および投与(投与が互いに24時間未満である。連続でも同時でもよい)されていることが明白となるように、互いに組み合わされることを意味する。
【0105】
本発明の薬学的組成物中において、本発明の化合物は、有効量が存在している。本明細書中で使用される場合、用語「有効量」とは、適切な投薬計画で投与される場合に、(i)処置される障害の重症度、持続期間または進行を低減または改善するか、(ii)処置される障害の進行を妨げるか、(iii)処置される障害の退行を引き起こすか、または、(iv)他の治療の予防効果または治療効果を増強または改善するために、十分な量を指す。
【0106】
動物への投与量と、ヒトへの投与量との相互関係(mg/体表面mに基づく)は、[Freireich et al., (1966) Cancer Chemother Rep 50: 219]に記載されている。体表面積は、患者の身長および体重からほとんど決定できる。例えば、[Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardley, N.Y., 1970, 537]を参照のこと。本発明の化合物の有効量は、約0.001mg/kg~約500mg/kg、より好ましくは0.01mg/kg~約50mg/kg、より好ましくは0.1mg/kg~約2.5mg/kgの範囲であり得る。また、当業者に認識されるように、有効な投与量は、治療される疾患、疾患の重症度、投与経路、患者の性別、年齢および一般的な健康状態、賦形剤の使用、他の治療との同時使用の可能性(他の薬剤の使用など)、ならびに治療にあたる医師の判断によって変更される。
【0107】
第2の治療剤を含む薬学的組成物に関して、第2の治療剤の有効量は、その薬剤のみを使用する単独療法計画において通常利用される投薬量の、約20%~100%である。好ましくは、有効量は、通常の単独投与量の約70%~100%である。これらの第2の治療剤の通常の単独投与量は、当該技術分野において周知である。例えば、[Wells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000); PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)]を参照のこと。各参考文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
前記で言及した第2の治療剤のいくつかは、本発明の化合物と相乗的に作用すると予想される。これが起こると、第2の治療剤および/または本発明の化合物の有効投薬量を、単独療法で必要とされる投与量から減らすことができる。これは、(i)本発明の化合物の第2の治療剤の毒性副作用を最小限に抑える点において、(ii)効能の相乗的に増進させる点において、(iii)投与または使用の容易さを改善する点において、および/または、(iv)化合物の調製または製剤の全体的費用を低減する点において有利である。
【0109】
〔治療方法〕
別の実施形態によれば、本発明は、疾患または障害またはその症状に罹患しているか、または罹患しやすい被験体(例えば、本明細書中で描写される被験体)を治療する方法を提供する。該方法は、本発明の化合物または組成物の効果的な量を前記被験体に投与するステップを含む。このような疾患は当該分野で周知であり、そしてまた、本明細書中に開示されている。
【0110】
一態様において、前記治療方法には、Jak1プロテインキナーゼによって媒介される障害の治療が含まれる。
【0111】
別の一態様においては、本明細書中のいずれかの式の化合物を被験体に投与することを含む、被験体における疾患の治療方法を提供する。
【0112】
別の一態様において、本発明は、本明細書中のいずれかの式の化合物を含む組成物を被験体に投与することを含む、被験体における疾患の治療方法を提供する。
【0113】
特定の実施形態において、前記疾患は、Jak1キナーゼによって媒介される。例えば、状態は、炎症性疾患/障害;自己免疫疾患/障害(例えば、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎、変形性関節症、多発性硬化症、アレルギー性喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、実験アレルギー性脳脊髄炎、クローン病、血管炎、心筋症、強直性脊髄炎(AS)、糸球体腎炎、インスリン依存性糖尿病、乾癬性関節炎、乾癬、プラーク性乾癬、潰瘍性結腸炎、胆汁性黄色素性黄色ブドウ球体炎(SLE)、糖尿病性腎症、末梢神経障害、ブドウ膜炎、線維化性肺胞炎、一型糖尿病、若年性糖尿病、キャッスルマン病、好中球減少、子宮内膜症、自己免疫性甲状腺炎、精子および精巣自己免疫、強皮症、軸索および神経細胞の神経障害、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、溶血性貧血、グレーブス病、ハシモト甲状腺炎、IgA腎症、アミロイド症、ベーチェット病、サルコイドーシス、水疱性皮膚病、筋炎、乾性眼症候群、原発性胆汁性肝硬変、リウマチ性多発筋痛、ライター症候群、自己免疫不全、免疫不全、シャーガス病、川崎病、セリアック病、重量筋無力症、シェーグレン症候群、円形脱毛症、白斑、アトピー性皮膚炎、POEMS症候群、ループス、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、外陰天疱瘡、水疱性天疱瘡、慢性疲労症候群、臓器移植拒絶反応(例えば、同種移植片拒絶反応および移植片対宿主病);ウイルス病(エプスタインバーウイルス、C型肝炎、HIV、HTLV1、水痘-ゾスターウイルス、およびヒト乳頭腫ウイルスなど);痛風性関節炎;伝染性または感染性関節炎;反射性関節症候群;反射性交換神経性ジストロフィ;アルゴジストロフィ;ティーツェ症候群;肋骨関節症(costal athropathy);ムセレニ病(Mseleni disease);ハンディゴデュ病(Handigodu disease);線維筋肉痛;強皮症;先天性軟骨奇形;および肺動脈高血圧症であり得るが、これに限定されるものではない。
【0114】
さらに、JAK関連疾患には、炎症および炎症性疾患または障害が含まれる。その例としては、サルコイドーシス、眼の炎症性疾患(例えば、虹彩炎、ブドウ膜炎、強膜炎、結膜炎、眼瞼炎、または関連疾患)、気道の炎症性疾患(例えば、鼻炎または副鼻腔炎などの鼻および副鼻腔を含む上気道の炎症性疾患、または、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患などを含む下気道の炎症性疾患)、炎症性心筋症(心筋炎および他の炎症性疾患など)が挙げられる。
【0115】
別の一実施形態において、前記疾患は、癌、増殖性疾患または他の腫瘍性疾患である。その例としては、乳癌、キャッスルマン病、結腸および結腸直腸癌、胃癌、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍、神経膠芽腫、頭頸部癌、カポジ肉腫、肝癌、肺癌、黒色腫、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、直腸癌、小腸癌、甲状腺癌、子宮平滑筋肉腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫、骨髄異型症候群(MDS))、骨髄増殖症候群(MPD;例えば、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)、骨髄性化生骨髄線維症(MMM)、原発性骨髄線維症(PMF)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、好酸球増加症候群(HES)、漸新世肥満細胞症(SMCD))が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、骨髄増殖性障害は、本態性血小板血症後の骨髄線維症(ET後MF)、または、真性赤血球増加症後の骨髄線維症(PV後MF)である。
【0116】
さらに、JAK関連疾患には、虚血再潅流傷害または炎症性虚血事象に関連する疾患もしくは状態(脳卒中または心停止など)、エンドトキシン誘発性疾患状態(例えば、慢性心不全に寄与する慢性エンドトキシン状態のバイパス手術後の合併症)、食欲不振、硬化皮症、線維症、低酸素症またはアストログリオーシスに関連する状態(糖尿病性網膜症、癌、または神経変性など)、ならびに、他の炎症性疾患(全身性炎症性ショック症候群および敗血症性ショックなど)が含まれる。
【0117】
他のJAK関連疾患としては、痛風、、前立腺サイズの増加(例えば、良性前立腺肥大または良性前立腺過形成による)、骨吸収疾患(骨粗鬆症または骨関節炎など)、および以下と関連する骨吸収疾患が挙げられる:ホルモン不均衡および/またはホルモン療法、自己免疫疾患(例えば、骨サルコイドーシス)。
【0118】
JAK関連疾患または状態の他の例としては、他の医薬により引き起こされる皮膚科学的副作用を、本発明の化合物の投与により改善することが挙げられる。例えば、多くの薬剤は、望ましくないアレルギー反応をもたらす(このアレルギー反応は、座瘡様皮疹または関連する皮膚炎として現れ得る)。このような望ましくない副作用を有する医薬品の例としては、ゲフィチニブ、セツキシマブ、エルロチニブなどの抗癌剤が挙げられる。本発明の化合物は、望ましくない皮膚科学的副作用を有する薬剤と併用して、全身的または局所的に(例えば、皮膚炎の近傍に局在して)投与されてもよい。したがって、本発明の組成物には、(i)本発明の化合物と、(ii)皮膚炎、皮膚障害、または関連する副作用を引き起こし得るさらなる薬剤と、を含む局所製剤が包含される。
【0119】
一実施形態において、本発明の方法は、疾患または状態に罹患しているか、または罹患しやすい被験体を治療するために使用される。そのような疾患、障害または症状には、例えば、Jak1プロテインキナーゼによって調節されるものが含まれる。疾患または疾患の症状は、例えば、関節リウマチ、癌、または増殖性の疾患もしくは障害であり得る。本明細書中で説明されている方法には、ある規定の治療を必要とする被験体として、当該被検体が特定される方法が含まれる。そのような治療を必要とする被検体は、被験体または医療専門家の判断によって特定できる。この特定は、主観的であってもよいし(例えば、意見)、客観的であってもよい(例えば、検査または診断方法によって測定可能)。
【0120】
さらに別の実施形態においては、他の治療剤で処置され、当該他の治療剤に対する耐性が発達した疾病または障害を有する被験体を治療するために、本明細書中の式の化合物(およびその組成物)を使用してもよい。一態様において、本明細書中の方法には、被験体がメトトレキサートまたは抗TNFα療法による治療に対して抵抗性を有している方法が含まれる。
【0121】
別の一実施形態において、本発明は、細胞におけるJak1プロテインキナーゼの活性を調節する方法を提供する。該方法は、細胞を本明細書中のいずれかの式の1つ以上の化合物と接触させることを含む。
【0122】
別の一実施形態において、前記治療方法は、1つ以上の第2の治療剤を併用して前記患者に投与する、さらなるステップを含む。第2の治療剤は、本明細書中において有用であることが知られると例示した、任意の治療剤から選択してもよい。1つ以上の追加治療薬には、化学療法剤、抗炎症剤、ステロイド、免疫抑制剤、ならびにPI3Kδ、mTOR、BCR-ABl、FLT-3、RAFおよびFAKキナーゼ阻害剤などが含まれてもよい。追加の治療剤には、例えば、下記(1)および(2)を含む、疾患、障害および症状の治療のための薬剤を含むが、これに限定されるものではない。
【0123】
(1)ヒト免疫系を調節する薬剤、またはアスピリン、アセトアミノフェン、アミノサリチル酸塩、抗胸腺細胞グロブリン、シプロフロキサシン、コルチコステロイド、シクロスポリン、デオキシスペルギュアリン、ダクリズマ、メトロニダゾール、プロバイオティック、タクロリムス、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、プレドニソロン、デキサメタゾン、抗炎症ステロイド、メトトレキサート、クロロキン、アザチオプリン、ヒドロキシクロロキン、ミコフェノール酸、ムロモナブ-CD3、ペニシラミン、スルファサラジン、レフルノミド、タクロリムス、トシルズマブ、アナキンラ、アバタセプト、セルトィズマブ ペゴール、ゴリムマブ、ラパマイシン、ベドリズマブ、ナタリズマブ、ウステキヌマブ、リツキシマブ、エファリズマブ、ベリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、CD4+CD25+制御T細胞における抗体活性調節因子(例えば、活性化因子)、NSAID、鎮痛剤、他の非生物疾患改変抗リウマチ剤(DMARD)および/またはそれらの抗TNF-α生物剤(キメラ、ヒト化またはヒトTNF抗体のようなTNAアンタゴニストなど)との組み合わせ、アダリムマブ、インフリキシマブ、ゴリムマブ、CDP571および可溶性p55または175TNA受容体、それらの誘導体、エタネルセプト、またはレネルセプトからなる群から選択されるが、これに限定されるものではない、抗炎症剤。
【0124】
(2)抗癌剤および抗腫瘍剤、抗増殖剤、抗腫瘍剤、抗癌剤、抗代謝産物型/チミジレートシンターゼ阻害抗腫瘍剤、アルキル化型抗腫瘍剤、抗生物質型抗腫瘍剤、または癌治療プロトコール(例えば、嘔吐抑制、貧血抑制など)において、初期の薬剤もしくは補助的な薬剤として典型的に投与される任意の他の薬剤(例えば、硫酸ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンエストラミド、ビノレルビン、ビントリプトル、ビンゾリジン、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、酢酸メゲストロール、アナストロゾール、レトラゾール、ボラゾール、エキセムスタン、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン、酢酸ゴセレリン、リュープロリド、フィナステリド、ハーセプチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン-C、ダクチノマイシン、ミトラマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、チオテファン、ビンクリスチン、タキソール、タキソテール、エトポシド、テニポシド、アムサクリン、イリノテカン、トポテカン、エポチロン、イレッサ、アバスチン、OSI-774、血管新生阻害剤、EGFR阻害剤、MEK阻害剤、VEGFR阻害剤、CDK阻害剤、Her1およびHer2阻害剤、モノクローナル抗体、プロテオソーム阻害剤(ボルテゾミブ、サリドマイドおよびレビルイミドなど);アポトーシス誘導薬(ABT-737など)を含む)。核酸治療(アンチセンスまたはRNAiなど);核受容体リガンド(例えば、アゴニストおよび/またはアンタゴニスト、オールトランスレチノイン酸またはボキサロテン);ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタット)のような後生的標的化剤、低メチル化剤(例えば、デシタビン)、タンパク質安定性の調節剤(HSP90阻害剤、ユビキチンおよび/または分子と結合しているか、または脱結合しているユビキチンなど)。
【0125】
いくつかの実施形態において、追加の薬剤は、IMiD、抗IL-6剤、抗TNF-α剤、低メチル化剤、および生物学的反応調節剤(RBM)から選択される。RBMとは、一般に、生きている生物から作られる、疾患を治療するための物質である。RBMの例としては、IL-2、GM-CSF、CSF、モノクローナル抗体(アブシキシマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、リツキシマブ、トラスツズマブなど)、および高用量アスコルビン酸が挙げられる。低メチル化剤とは、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(5アザシチジンおよびデシタビンなど)である。IMiDの例としては、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド、CC-11006、およびCC-10015が挙げられる。
【0126】
いくつかの実施形態において、追加の薬剤には、抗胸腺細胞グロブリン、組換え型ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-単球CSF(GM-CSF)、赤血球生成刺激剤(ESA)、およびシクロスポリンが含まれる。
【0127】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、追加のJAK阻害剤である。いくつかのの実施形態において、追加のJAK阻害剤は、トファシチニブ、ルキソリチニブまたはバリチニブである。
【0128】
いくつかの実施形態においては、多発性骨髄腫などの癌の治療において、1つ以上の他の癌治療剤と併用して、1つ以上のJAK阻害剤を使用することができる。前記1つ以上のJAK阻害剤は、その毒性効果を悪化させることなく、当該他の癌治療剤が示す効果と比較して、治療効果を向上させうる。多発性骨髄腫の治療に使用される追加の薬剤の例としては、メルファラン、メルファラン+プレドニゾン(MP)、ドキソルビシン、デキサメタゾン、およびボルテゾミブが挙げられるが、これらに限定されない。多発性骨髄腫の治療に使用される追加の薬剤には、BRC-ABL、FLT-3、RAF、MEK、PI3K、mTOR阻害剤が含まれる。本発明のJAK阻害剤を追加の薬剤と組み合わせることで、追加または相乗効果という望ましい結果が得られる。さらに、本発明のJAK阻害剤での治療においては、デキサメタゾンまたは他の薬剤などの薬剤に対する多発性骨髄腫細胞の耐性を、打ち消すことができる。薬剤は、単一または継続的な投与形態で本発明の化合物と組み合わせ得る。あるいは、薬剤は、別々の投与形態として、同時にまたは連続的に投与され得る。
【0129】
いくつかの実施形態においては、コルチコステロイド(デキサメタゾンなど)を、少なくとも1つの本発明のJAK阻害剤と併用して投与する。このとき、デキサメタゾンは、連続的ではなく断続的に投与される。
【0130】
いくつかの実施形態においては、1つ以上の本発明のJAK阻害剤と他の治療剤との組み合わせを、骨髄移植または幹細胞移植の術前、術中および/または術後に、被験体に投与してもよい。
【0131】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、フルオシノロンアセトニドまたはレメキソロンである。
【0132】
いくつかの実施形態において、追加の治療は、コルチコステロイド(トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロン、またはフルメトロンなど)である。
【0133】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤には、デヒドレックス、シバミド、ヒアルロン酸ナトリウム、シクロスポリン、ARG101、AGR1012、エカベットナトリウム、ゲファルナート、15-(s)-ヒドロキシエイコサテトラエン酸、セビレミンドキシサイクリン、ミノサイクリン、iDestrin、シクロスポリンA、オキシテトラサイクリン、ボクロスポリン、ARG103、RX-10045、DYN15、リボグリタゾン、TB4、OPH-01、PCS101、REV1-31、ラクリチン、レバミピド、OT-551、PAI-2、ピロカルピン、タクロリムス、ピメルクロリムス、ロテプレドノルエタボネート、リツキシマン、ジクアフォソルテトラナトリウム、KLS-0611、デヒドロエピアンドロステロン、アナキンラ、エファリズマ、マイコフェノラートナトリウム、エタネルセプト、ヒドロキシクロロキン、NGX267、アクテムラ、またはL-アスパラギナーゼが含まれる。
【0134】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、抗血管新生剤、コリン作用剤、TRP-1受容体調節剤、カルシウムチャネルブロッカー、ムチン分泌促進剤、MUC1刺激剤、カルシニューリン阻害剤、P2Y2受容体アゴニスト、ムスカリン受容体アゴニスト、およびテトラサイクリン誘導体である。
【0135】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤には、粘滑性点眼剤が含まれる。この粘滑性点眼剤には、ポリビニルアルコール、ヒロキシプロピルメチルセルロース、グリセリン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、またはカルボキシメチルセルロースを含む組成物が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、粘性タンパク質と相互作用し、涙液膜の粘度を低下させることができる粘液溶解薬(N-アセチル-システインなど)である。
【0136】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、麻酔剤、ステロイドおよび非ステロイド抗炎症剤を含む抗炎症剤を含む抗炎症剤、および抗アレルギー剤を含む。適当な薬剤の例としては、アミノグリコシド(アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ストレプトマイシン、ネチルマイシン、およびカナマイシンなど);フルオロキノロン(シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、ロメフロキサシン、レボフロキサシン、およびエノキサシンなど);ナフチリジン;スルホンアミド;ポリミキシン;クロラムフェニコール;ネオマイシン;パラモマイシン;コリスチンメタート(colistimethate);バシトラシン;バノコマイシン;テトラサイクリン;リファンピンおよびその誘導体;シクロセリン;β-ラクタミン;セファロスポリン;エンフォテリシン;フルコナゾール;フルシトシン;ナタマイシン;ミコナゾール;ケトコナゾール;コルチコステロイド;ジクロフェナク;フルルビプロフェン;ケトロラク;スプロフェン;クロモリン;ヨードキサミド;レボカバスチン;ナファゾリン;アンタゾリン;フェニラミン;またはアザリド抗生物質が挙げられる。
【0137】
本明細書で用いられる用語「同時投与」とは、第2の治療剤を本発明の化合物と一緒に投与してもよいことを意味する。この投与は、単一投与形態の部分としてであってもよいし(例えば、上述のように、本発明の化合物および第2の治療剤を含む、本発明の組成物)、または別個の多重投与形態としてであってもよい。あるいは、追加の薬剤は、本発明の化合物の投与前、投与と連続して、または投与後に投与されてもよい。このような併用治療では、本発明の化合物と、(1または複数の)第2の治療薬との両方が、従来法によって投与される。本発明の化合物および第2の治療剤の両方を含む本発明の組成物の被験体への投与は、治療過程の間の別の時間における、同じ治療剤、任意の他の第2の治療剤または任意の本発明の化合物の前記被験体への別々の投与を排除しない。
【0138】
これらの第2の治療剤の有効量は当業者に周知であり、投薬の手引きは、本明細書で参照される特許および出願公開、ならびに[Wells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000); PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)]および他の医学文献において見出され得る。しかし、第2の治療剤の最適有効量範囲を決定することは、十分に当業者の知識の範囲内である。
【0139】
第2の治療剤が被検体に投与される本発明の一実施形態において、本発明の化合物の有効量は、第2の治療剤が投与されない場合の有効量よりも少ない。別の一実施形態において、第2の治療剤の有効量は、本化合物が投与されない場合の有効量よりも少ない。このようにして、いずれかの薬剤の高用量に関連する望ましくない副作用を、最小限に抑えることができる。他の潜在的な利点も、当業者にとって明らかである(投薬計画の改善および/または薬物コストの減少を含むが、これらに限定されない)。
【0140】
さらに別の一態様において、本発明は、前記の疾患、障害または症状の対象における治療または予防のための、単一の組成物または別個の投薬形態のいずれかとしての薬剤の製造における、本明細書中の任意の式の化合物の、単独または1つ以上の前記第2の治療薬と一緒の使用を提供する。本発明の別の一態様は、本明細書に記載されている疾患、障害または症状の被験体における治療または予防における使用のための、本明細書中の式の化合物である。
【0141】
他の態様において、本明細書中の方法は、治療の投与に対する被検体の反応を監視することをさらに含む。このような監視は、治療計画のマーカーまたはインジケーターとして、被験体の組織、流体、標本、細胞、タンパク質、化学マーカー、遺伝物質などを定期的にサンプリングすることを含み得る。他の方法においては、治療への適性を示す関連マーカーまたは指標について評価することにより、「当該治療の必要性がある」と被験体を事前にスクリーニングする(または特定する)。
【0142】
一実施形態においては、治療の工程を監視する方法を提供する。該方法は、本明細書に記載される障害またはその症状に罹患しているか、または罹患しやすい被験体において、(i)診断マーカー(マーカー;例えば、本明細書中の化合物によって調節される、本明細書中に記載の任意の標的または細胞型)のレベルを決定するステップを含むか、または(ii)診断上の測定(例えば、スクリーニング、アッセイ)を行うステップを含む。このとき被験体は、本明細書に記載される化合物を、疾患またはその症状を治療するのに十分な治療量だけ、既に投与されている。該方法で測定されるマーカーのレベルは、対象の疾患の状態を確認するために、健康で正常な対照におけるマーカーのレベルと比較してもよいし、他の疾患の被験体における既知のマーカーのレベルと比較してもよい。好ましい実施形態において、被験体におけるマーカーの第2のレベルは、第1のレベルの決定より後の時点で決定される。これら2つのレベルは、疾患の経過または治療の有効性を監視するために比較される。特定の好ましい実施形態において、被験体におけるマーカーの治療前レベルは、本発明に係る治療の開始前に決定される。その後、マーカーの治療前レベルと、治療の開始後の被験体におけるマーカーのレベルとを比較して、治療の有効性を決定することができる。
【0143】
特定の方法の実施形態において、被験体におけるマーカーまたはマーカー活性のレベルは、少なくとも1回決定される。例えば、あるマーカーレベルと、同じ患者、別の患者または正常な被験体から、事前または事後に得た別のマーカーレベルと、を比較することは、本発明に係る治療が所望の効果を有しているかどうかを決定するために有用でありうる。そしてまた、前記の比較は、必要に応じた投与量レベルの調整ができるようにするために有用でありうる。マーカーレベルの決定は、当該技術分野において知られている(または本明細書に記載されている)、任意の適当なサンプリング/発現アッセイ法を用いて行うことができる。好ましくは、まず、組織または流体試料を被験体から取得する。適当な試料の例としては、血、尿、組織、口腔または頬の細胞、および毛根を含む毛髪試料が含まれる。他の適当な試料は、当業者に知られているものである。試料中のタンパク質レベルおよび/またはmRNAレベル(例えば、マーカーレベル)の決定は、当該技術分野において知られている任意の適当な技術を用いて行うことができる(例えば、限定されないが、酵素免疫アッセイ、ELISA、放射性標識/アッセイ技術、ブロッティング/ケミルミネッセンス法、リアルタイムPCRなど)。
【0144】
本発明はまた、疾患、障害、または症状(本明細書中に記載されるものを含む)を治療するための、使用のためのキットを提供する。これらのキットは、以下の(a)および(b)を含む:
(a)本明細書中のいずれかの式の化合物またはその薬学的に許容される塩;またはプロドラッグまたはその薬学的に許容される塩;またはその水和物、溶媒和物、もしくは多形体を含む、薬学的組成物(ここで、前記薬学的組成物は容器内にある);および、
(b)疾患、障害、または症状(本願明細書に記載されるものを含む)を治療するために、前記薬学的組成物を使用する方法を記載した指示。
【0145】
容器は、前記医薬組成物を保持することができる任意の容器、または他の密封機器もしくは密封可能な機器であってよい。例としては、ボトル、分割されたまたはマルチチャンバーホルダーボトルが挙げられる。ここで、各部分またはチャンバーは、単一用量の前記組成物、分割されたホイルパケット(各部分は、単一用量の前記組成物を含む)、または単一用量の前記組成物を分配するディスペンサーを含む。容器は、当該技術分野で公知の任意の従来の形状または形態であり得る。この容器は、薬学的に許容される物質から作製される(例えば、紙もしくは段ボール箱、ガラスもしくはプラスチックのボトルもしくは瓶、再密封可能な袋(例えば、別の容器に入れるための錠剤の「詰め替え」が保持されている)、または治療計画に係るパックから押し出すための個々の用量を有するブリスターパック。使用される容器は、含まれる正確な投薬形態に応じて決まる。例えば、通常の段ボール箱は、一般的に懸濁液を保持するために使用されない。単一の投与量形態を市販するために、複数の容器を単一の包装にまとめることが可能である。例えば、錠剤はボトルに収容されてもよく、次にボトルは箱内に収容される。好ましくは、容器はブリスターパックである。
【0146】
キットは、医師、薬剤師または被験体のための情報および/または指示をさらに含んでもよい。そのような補助的な記録としては、特定の錠剤またはカプセルを摂取すべき計画の日に対応する投与量を含む、(i)各チャンバーもしくは各部分に印字された数字、または(ii)各チャンバーもしくは各部分に印字された曜日、または(iii)同様の情報を含むカード、が挙げられる。
【0147】
本技術分野で公知のプロトコルを使用して、本明細書で説明されている化合物の生物学的活性を評価することができる(例えば、本明細書で説明されているものを含む)。本明細書中の特定の化合物は、予想外に優れた特性(例えば、P450の阻害、代謝安定性、薬物動態特性など)を示し、潜在的な治療薬としての優れた候補である。
【0148】
本明細書で引用される全ての参考文献は、印刷媒体、電子媒体、コンピュータ可読記憶媒体、または他の形態のいずれであっても、それらの全体が参照により明確に組み込まれる。該参考文献は、要約、記事、雑誌、刊行物、テキスト、論文、技術データシート、インターネットウェブサイト、データベース、特許、出願公開、および特許刊行物を含むが、これらに限定されない。
【実施例
【0149】
[実施例1:trans-4-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]シクロヘキサンカルボニトリル (1)の合成]
【0150】
【化9】
【0151】
【化10】
【0152】
ステップ1.
THF(1500mL)中のtrans-4-(Boc-アミノ)シクロヘキサンカルボン酸(A1-1)(62g、0.256mol、1.0当量)の溶液を、窒素雰囲気下にて、NMM(64.6g、0.64mol、2.5当量)で処理した。混合物を-78℃に冷却し、クロロギ酸イソブチル(33.6g、0.33mol、1.3当量)を滴下した。-78℃で1時間撹拌後、混合物中にNH(気体)を約20分間バブリングした。その後、反応温度を-30℃に上昇させ、-30℃で1時間撹拌した。得られたスラリーを濾過し、水洗し(3×200mL)、オーブン乾燥させて、化合物A1-2を白色粉末として得た(58g、収率93.5%)。
MS-ESI:[M+1]+: 243.1
1H NMR(300MHz, d6-DMSO): 7.192(s,1H),6.688-6.728(m,2H),3.122-3.147(m,1H), 1.92-1.959(m,1H),1.696-1.787(m,4H),1.382(s,9H),1.086-1.358(m,4H)。
【0153】
ステップ2.
DCM(1000mL)中の化合物A1-2(74g、0.306mol、1.0当量)の溶液を、トリエチルアミン(77.2g、0.64mol、2.5当量)で処理した。混合物を氷浴中で0℃に冷却し、TFAA(80.9g、0.383mol、1.25当量)を滴下した。滴下後、氷浴を外し、反応温度を20℃に上げ、20℃で2時間撹拌した。水(300mL)を加えた後、水相をDCMで2回抽出した。合わせた抽出物を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物A1-3を白色粉末として得た(46g、収率67.1%)。
ESI:[M+1]+: 225.1
1H NMR(300MHz, CDCl3): 4.397(m, 1H), 3.467(m, 1H), 2.381-2.418(m, 1H), 2.079-2.147 (m, 4H), 1.613-1.757(m, 2H), 1.454(s, 9H), 1.114-1.232(m, 2H)。
【0154】
ステップ3.
DCM(50mL)中の化合物A1-3(10g、44.6mmol、1.0当量)の溶液に、TFA(20g)を加えた。TLCにより反応が完了したことを確認するまで、反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで真空下で濃縮した。氷水(30mL)を加え、溶液を水酸化ナトリウム水溶液(4mol/L)でpH10に処理した。次いで、水相をDCM/メタノール(10/1)で6回抽出した。合わせた抽出物を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物A1-4をオフホワイトの固体として得た(5.1g、収率91.9%)。
MS-ESI:[M+1]+: 125.1
1H NMR(300MHz, CDCl3): 2.738-2.772(m, 1H), 2.370-2.421(m, 1H), 2.115-2.170(m, 2H), 1.923-1.977(m, 2H), 1.580-1.694(m, 2H), 1.075-1.197(m, 2H)。
【0155】
ステップ4.
窒素雰囲気下にて、1,4-ジオキサン(2500mL)中の2-ブロモ-3-ヒドロキシピリジン(A1-5)(225g、1.293mol、1.0当量)およびトリメチルシリルアセチレン(153.3g、1.592mol、1.23当量)の溶液に、CuI(25g)およびPd(PPh3)Cl(45g)を加えた。反応混合物を25℃で30分間撹拌し、次に10℃に冷却し、トリエチルアミン(363g、3.594mol、2.78当量)を滴下した。60℃で4時間撹拌した後、水溶液を冷却し、真空下で濃縮した。残渣に水(2000mL)およびMTBE(200mL)を加え、撹拌し、濾過した。濾液をMTBE(1000mL×2)で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物A1-6を淡褐色液体として得た(150g、収率60.7%)。
GC-MS: 191 (EI)。
【0156】
ステップ5.
DCM(1000mL)中の化合物A1-6(105g、0.55mol、1.0当量)の溶液に、m-クロロペルオキシ安息香酸(85%、230g、1.13mol、12.06当量)を、25℃未満で分割して加えた。室温で一晩撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を氷浴中で加え、pH7~8とした。得られた混合物を濾過し、濾液を分離し、DCMで2回抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液および食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物A1-7を褐色液体として得た(115g、収率100%)。
【0157】
ステップ6.
トルエン(400mL)中の化合物A1-7(115g、0.55mol、1.0当量)の溶液を、30℃以下の氷浴中のオキシ塩化リン(400mL)に加えた。反応混合物を90℃で2時間撹拌し、室温に冷却し、濃縮した。残渣に飽和炭酸水素ナトリウム溶液を20℃未満でゆっくりと加えてpH7~8とし、混合物をMTBEで2回抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物A1-8を黄色液体として得た(73g、収率58.7%)。
GC-MS: 225 (EI)。
【0158】
ステップ7.
THF(400mL)中の化合物A1-8(73g、0.323mol、1.0当量)の溶液に、水酸化ナトリウム水溶液(300mL、4mol/L)を加えた。50℃で1時間撹拌した後、反応混合物を室温に冷却し、水1000mLを加えた。混合物をMTBEで2回抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、酢酸エチルおよび石油エーテル中で再結晶させて、化合物A1-9をオフホワイトの粉末として得た(30g、収率60.5%)。
GC-MS: 153 (EI)
1H NMR(300MHz, CDCl3):8.485(d, 1H),7.945(d, 1H),7.312(d, 1H),7.079(d, 1H)。
【0159】
ステップ8.
化合物A1-9(9.21g、60mmol、1.0当量)をメタノール(150mL)に溶解させ、次いで水(150mL)および水酸化ナトリウム(24g、10当量)を加えた。50℃で1時間撹拌した後、反応混合物を20℃に冷却し、濃縮した。残渣をDCMで3回抽出し、次いで、合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物A1-10を黄色液体として得た(5.5g、収率61.5%)。
MS-ESI:[M+1]+: 150。
【0160】
ステップ9.
化合物A1-10(5.5g、37mmol、1.0当量)を、40%HBr水溶液(150mL)に加えた。反応混合物を18時間加熱還流し、冷却し、濃縮した。残渣を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100mL)で処理して、pH7~8とした。20分間撹拌した後、沈殿を濾過し、水で洗浄し、オーブン乾燥させて、化合物A1-11をオフホワイトの粉末として得た(3.1g、収率62%)。
MS-ESI:[M+1]+: 136。
【0161】
ステップ10.
窒素雰囲気下にて、120mLのDCM中の化合物A1-11(1.68g、12.4mmol、1.0当量)の混合物を-5℃に冷却し、DCM(30mL)中の硝酸テトラブチルアンモニウム(5.17g、17mmol、1.36当量)を0℃未満で滴下し、次いでTFAA(5.17g、20mmol、1.6当量)を全て一度に加えた。加えた後、反応混合物を-5℃で1時間撹拌し、次に25℃まで温め、15時間撹拌した。溶媒を濃縮し、エーテル(200mL)を残渣に加え、撹拌し、濾過した。集めた濾過残渣および飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100mL)を加えた。混合物を酢酸エチルで2回抽出し、次いで、合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物A1-12を黄色粉末として得た(1.37g、収率61.4%)。
MS-ESI:[M+1]+: 181。
【0162】
ステップ11.
化合物A1-12(1.37g、7.61mmol、1.0当量)およびプロピオン酸(50mL)の混合物を110℃に加熱し、110~120℃の発煙硝酸(0.65mL)を滴下した。125℃で30分間撹拌し、室温に冷却した後、エーテル(100mL)を加え、固体を濾過し、エーテルで洗浄し、真空下で乾燥させて、化合物A1-13を黄色粉末として得た(1.2g、収率87.6%)。
MS-ESI:[M+1]+: 181
1H NMR(300MHz, d6-DMSO): 13.149(s, 1H),9.024(s, 1H), 8.234(d, 1H), 6.966(d, 1H)。
【0163】
ステップ12.
1,2-ジクロロエタン(50mL)中の化合物A1-13(1.2g、6.67mmol、1.0当量)の溶液に、20℃未満のオキシ塩化リン(15mL)を加え、次いで窒素雰囲気下にて95℃で2時間撹拌し、25℃に冷却し、濃縮した。残渣に飽和炭酸水素ナトリウム溶液を20℃未満でゆっくり加えてpH7~8とし、混合物をMTBEで2回抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物A1-14を淡黄色粉末として得た(0.8g、収率60.4%)。
1H NMR(300MHz, CDCl3): 9.250(s, 1H),8.189(d, 1H),7.191(d, 1H)。
【0164】
ステップ13.
n-ブタノール(20mL)中のA1-14(280mg、1.41mmol、1.0当量)の溶液に、化合物A1-4(290mg、2.34mmol、1.66当量)およびDIPEA(403mg、3.12mmol、2.21当量)を加えた。反応混合物を135℃で1時間撹拌し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、A1-15を黄色粉末として得た(320mg、収率79.4%)。
MS-ESI:[M+1]+: 287.1
1H NMR(300MHz, CDCl3):9.268(s, 1H), 8.653(d, 1H), 7.952(d, 1H), 7.034(d, 1H),4.423-4.511(m, 1H), 2.629-2.723(m, 1H), 2.241-2.355(m, 4H), 1.864-1.902(m, 2H),1.539-1.578(m, 2H)。
【0165】
ステップ14.
メタノール(15mL)中のA1-15(320mg、1.12mmol、1.0当量)の水溶液に、10%Pd/C(0.3g、50%湿潤)を加えた。水素取り込みが停止するまで、大気圧下にて室温で水素化を行った。触媒を濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を真空下で濃縮し、A1-16を黄色油状物として得た(286mg、収率100%)。
MS-ESI: [M+1]+: 257.1。
【0166】
ステップ15.
窒素雰囲気下にて、THF(10mL)中の(R)-(+)-ラクタミド(259mg、2.8mmol、5.0当量)およびEt3O-BF4(543mg、2.8mmol、5.0当量)の溶液を、室温で30分間撹拌した。次いで、前記溶液を、エタノール(10mL)中のA1-16(143mg、0.56mmol、1.0当量)の混合物に加えた。85℃で2時間撹拌した後、混合物を濃縮し、水を加え、酢酸エチルで4回抽出した。有機相を廃棄し、水相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100mL)で処理してpH8にし、酢酸エチルで2回抽出した。第2の有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、標記の化合物を淡黄色粉末として得た(80mg、収率46%)。
MS-ESI: [M+1]+: 311.4
1H NMR(300MHz, CDCl3): 9.005(s, 1H), 7.949(s, 1H),7.256(s, 1H),5.227-5.290(m, 1H), 4.766-4.843(m, 1H), 2.783-2.864(m, 1H), 2.438-2.527(m, 4H), 2.068-2.192(m, 2H), 1.913-2.003(m, 2H), 1.767-1.846(d, 3H)。
【0167】
[実施例2:trans-4-[2-(ヒドロキシメチル)フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]シクロヘキサンカルボニトリル (2)の合成]
【0168】
【化11】
【0169】
【化12】
【0170】
実施例2は、ステップ15において、(R)-(+)-ラクタミドを、2-ヒドロキシアセトアミドで置き換えた以外は実施実施例1と同じ手順を用いて行った(標記の化合物40mg、淡黄色粉末)。
MS-ESI: [M+1]+: 297.4
1H NMR(300MHz, CDCl3): 9.048(s, 1H), 7.965(s, 1H), 7.286(s, 1H), 5.049(s, 2H), 4.702-4.813(m, 1H), 2.753-2.873(m, 1H), 2.376-2.527(m, 4H), 2.087-2.226(m, 2H), 1.872-2.053(m, 2H)。
【0171】
[実施例3:2-[trans-4-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]シクロヘキシル]アセトニトリル (3)の合成]
【0172】
【化13】
【0173】
【化14】
【0174】
ステップ1.
窒素雰囲気下にて、t-ブチルアルコール(1000mL)中のtrans-1,4-シクロヘキサン-ジカルボン酸モノメチルエステル(A3-1)(100g、0.538mol、1.0当量)およびトリエチルアミン(57.4g、0.568mol、1.055当量)の溶液に、ジフェニルホスホリルアジド(155g、0.563mol、1.047当量)を室温で滴下した。混合物を16時間還流した。TLCにより完了を確認した後、混合物を冷却し、濃縮した。水(1000mL)を加え、混合物をMTBEで3回抽出した。次いで、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液および食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物A3-2をオフホワイトの粉末として得た(53g、収率39.2%)。
MS-ESI:[M+1]+: 257.1。
【0175】
ステップ2.
THF(500mL)中のLiAlH(9.0g、0.236mol、1.12当量)の懸濁液を、氷浴中で0℃に冷却し、次いで、10℃未満の温度を維持しながら、THF(200mL)中の化合物A3-2(54.3g、0.211mol、1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いで、15~25℃にて硫酸ナトリウム十水和物(27g)でクエンチし、濾過し、濾液を濃縮して化合物A3-3を白色粉末として得た(43g、収率89%)。
MS-ESI:[M+1]+: 229.1。
【0176】
ステップ3.
DCM(200mL)中の化合物A3-3(11.5g、0.05mol、1.0当量)およびトリエチルアミン(7.6g、0.075mol、1.5当量)の混合物に、10℃未満にて、塩化メチルスフォニル(6.9g、0.06mol、1.2当量)を滴下した。室温で2時間撹拌した後、水(300mL)を加えた。混合物を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた抽出物を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物A3-4を黄色液体として得た(16.0g、収率100%)。
MS-ESI:[M+1]+: 307.1。
【0177】
ステップ4.
DMSO(150mL)中の化合物A3-4(16.0g、0.05mol、1.0当量)の溶液に、20℃未満にて、シアン化ナトリウム(7.0g、0.143mol、2.86当量)を分割して加えた。85℃で5時間撹拌後、混合物を室温に冷却し、氷水(500mL)を加えた。混合物をMTBEで2回抽出した。合わせた抽出物を食塩水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物A3-5を白色粉末として得た(9.3g、収率78%)。
MS-ESI:[M+1]+: 238.1
1H NMR(300MHz, CDCl3): 4.408(m, 1H), 3.405(m, 1H), 2.263-2.285(d, 2H), 2.064-2.096(m, 2H), 1.457(s, 9H), 1.122-1.281(m, 4H)。
【0178】
ステップ5.
DCM(10mL)中の化合物A3-5(1.1g、4.6mmol、1.0当量)の溶液に、TFA(6g)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで真空下で濃縮した。氷水(15mL)を加え、溶液を水酸化ナトリウム水溶液(4mol/L)で処理し、pH10とした。次いで、水相をDCM/メタノール(10/1)で5回抽出した。合わせた抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物A3-6を黄色油状物として得た(0.55g、収率87.7%)。
MS-ESI:[M+1]+: 138.1。
【0179】
ステップ6~ステップ8は、アミンA1-4がA3-6で置換されて標記の化合物となることを除き、実施例1のステップ13~ステップ15と同じである(淡黄色粉末70mg、収率:0.565%)。
MS-ESI: [M+1]+: 325.5
1H NMR(300MHz, CDCl3): 9.003(s, 1H), 7.965(s, 1H), 7.270(s, 1H), 5.255-5.298(m, 1H), 4.713-4.795(m, 1H), 2.439-2.611(m, 4H), 2.068-2.512(m, 5H), 1.808-1.829(d, 3H), 1.452-1.576(d, 2H)。
【0180】
[実施例4:2-[(2R,5S)-5-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (4)の合成]
【0181】
【化15】
【0182】
【化16】
【0183】
ステップ1.
丸底フラスコ中で、トリエチルアミン(188g、1.86mol、1.0当量)を、水(500mL)および1,4-ジオキサン(500mL)中のジ-tert-ブチルジカーボネート(162g、0.744mol、1.2当量)および化合物A4-1(100g、0.62mol、1.0当量)の撹拌溶液に滴下した。室温で18時間撹拌した後、水溶液をMTBE(500mL×2)で抽出し、水相を氷上で冷却し、10%クエン酸水溶液をゆっくりと加え、注意深く酸性化してpH3とした。次いで、ウレタンを酢酸エチルで2回抽出し、合わせた抽出物を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物A4-2を透明な粘性油状物として得た(180g、収率100%)。
MS-ESI:[M+1]+: 262.1。
【0184】
ステップ2.
THF(600mL)中の化合物A4-2(40g、0.153mmol、1.0当量)の溶液を、室温で、4-メチルモルホリン(17g、0.168、1.1当量)で処理した。得られた混合物を0℃に冷却した後、クロロギ酸イソブチル(22.7g、0.166mmol、1.08当量)で滴下処理した。得られた反応混合物を、0℃でさらに20分間撹拌した後、濾過し、THFで洗浄した。次に、透明な濾液を0℃に冷却し、水(100mL)中のNaBH(11.2g、0.295mol、1.93当量)で処理した。得られた混合物を室温で一晩撹拌し、次いでHCl水溶液(1.0mol/L、200mL)を滴下してクエンチした。混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた抽出物を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物A4-3を黄色油状物として得た(25g、収率66%)。
MS-ESI:[M+1]+: 248.1。
【0185】
ステップ3.
トルエン(300mL)および酢酸(150mL)中の化合物A4-3(25g、0.1mol、1.0当量)の溶液を5時間加熱還流し、次いで冷却し、真空下で濃縮した。残渣に、氷浴中で飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、pH7~8とした。次いで、混合物を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出物を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、酢酸エチルおよびPE中にて再結晶させて、化合物A4-4を白色粉末として得た(8.0g、収率37.2%)。
GC-MS: 215。
【0186】
ステップ4.
ニトロメタン(500mL)中のトリブチルホスフィン(72.9g、0.36mol、1.0当量)の溶液に、窒素雰囲気下にて、クロロアセトニトリル(27.2g、0.36mol、1.0当量)を滴下した。得られた反応混合物を室温で16時間撹拌し、次いで濃縮した。少量の酢酸エチルを加えると、残留油が固化した。固形物を酢酸エチルおよびDCM中にて再結晶させてて、化合物A4-5を白色粉末として得た(95g、収率95%)。
【0187】
ステップ5.
窒素雰囲気下、0℃にて、N,N-ジメチルアセトアミド(30mL)中の乾燥化合物A4-5(8.3g、30mmol、3.0当量)の溶液に、固形カリウムtert-ブトキシド(3.1g、28mmol、2.8当量)を分割して加えた。得られた混合物を徐々に30℃まで温め、2時間撹拌した。次に、得られたイリド水溶液を、化合物A4-4(2.15g、10mmol、1.0当量)で処理し、70℃で一晩撹拌した。室温まで冷却した後、得られたスラリーを氷水(100mL)および飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100mL)の混合物に注いだ。混合物を酢酸エチルで2回抽出し、合わせた抽出物を食塩水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物A4-6を精製せずに黄色油状物として得た(7.5g、収率100%)。
MS-ESI:[M+1]+: 239.1。
【0188】
ステップ6.
メタノール(200mL)中の化合物A4-6(7.5g、10mmol、1.0当量)の溶液に、10%Pd/C(0.5g、50%湿潤)を加えた。水素取り込みが停止するまで、大気圧下にて、室温で水素化を行った。触媒を濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を真空下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物A4-7をオフホワイトの粉末として得た(1.6g、収率66.7%)。
MS-ESI:[M+1]+: 241.1。
【0189】
ステップ7.
DCM(20mL)中の化合物A4-7(1.6g、6.67mmol、1.0当量)の溶液に、TFA(10g、88.5mmol、13.2当量)を加えた。TLCにより反応の完了を確認するまで、反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで真空下で濃縮した。水(20mL)を加え、溶液を水酸化ナトリウム水溶液(4mol/L)で処理し、pH10とした。次いで、水相をDCM/メタノール(10/1)で6回抽出した。合わせた抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物A4-8を淡褐色油状物(950mg、収率100%)として得た。
MS-ESI:[M+1]+: 141.1。
【0190】
ステップ8.
n-ブタノール(15mL)中の化合物A1-14(実施例1のステップ4~12で調製された)(600mg、3.0mmol、1.0当量)の溶液に、化合物A4-8(950mg、6.7mmol、2.26当量)およびDIPEA(1.36g、10.5mmol、3.5当量)を加えた。反応混合物を135℃で1時間撹拌し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物A4-9(2R,5S)を淡黄色粉末として得た(254mg、収率28.0%)。
MS-ESI: [M+1]+: 303.1
1H NMR(300MHz, d6-DMSO): 9.063(s, 1H), 8.503(d, 1H), 9.326(d, 1H), 7.176(d, 1H), 4.431-4.513(m, 1H), 4.128-4.156(m, 1H), 3.633-3.659(m, 1H), 3.448-3.518(m, 1H), 2.775-2.841(m,2H),2.205-2.312(m, 1H), 1.829-1.859(m, 2H), 1.501-1.521(m, 1H)。
【0191】
ステップ9.
メタノール(20mL)中の化合物A4-9(254g、0.84mmol、1.0当量)の溶液に、10%Pd/C(0.15g、50%湿潤)を加えた。水素取り込みが停止するまで、大気圧下にて、室温で水素化を行った。触媒を濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を真空下で濃縮し、化合物A4-10を黄色油状物として得た(230mg、収率100%)。
MS-ESI:[M+1]+: 273.1。
【0192】
ステップ10.
THF(10mL)中のD-ラクタミド(388mg、4.2mmol、5.0当量)およびEtO-BF(1.3g、6.72mmol、8.0当量)の溶液を、窒素雰囲気下にて、室温で30分間撹拌した。次いで、前記溶液を、エタノール(10mL)中の化合物A4-10(230mg、0.84mmol、1.0当量)の混合物に加えた。HPLCによって反応の完了を確認するまで、85℃で3時間撹拌した後、混合物を濃縮し、水を加え、酢酸エチルで4回抽出した。有機相を廃棄し、水相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で処理しpH8とし、酢酸エチルで2回抽出した。第2の有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標記の化合物を淡黄色粉末として得た(120mg、収率43.8%)。
MS-ESI: [M+1]+: 327.6
1H NMR(300MHz, CDCl3): 9.039(s, 1H), 7.939(d, 1H), 7.196(d, 1H), 5.235-5.336(m, 1H), 4.806-4.973(m, 1H), 4.403-4.483(t, 1H), 4.096-6.116(m, 2H), 2.700-2.807(m, 4H), 2.105-2.312(m, 2H), 1.830-1.852(d, 3H)。
【0193】
[実施例5:3-[2-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド (5)の合成]
【0194】
【化17】
【0195】
【化18】
【0196】
ステップ1.
n-ブタノール(15mL)中の化合物A1-14(実施例1のステップ4~12で調製された)(820mg、4.13mmol、1.0当量)の溶液に、化合物A5-3(1.0g、5.37mmol、1.3当量)およびDIPEA(1.6g、12.4mmol、3.0当量)を加えた。反応混合物を135℃で1時間撹拌し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物A5-4を黄色粉末として得た(1.32g、収率91.8%)。
MS-ESI:[M+1]+: 349.1。
【0197】
ステップ2.
DCM(15mL)中の化合物A5-4(1.32g、3.8mmol、1.0当量)の溶液に、HClのエタノール溶液(30%w/w)(15mL)を加えた。TLCによって反応の完了を確認するまで、反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで真空下で濃縮した。氷水(20mL)を加え、溶液を水酸化ナトリウム水溶液(4mol/L)で処理し、pH10とした。次いで、水相をDCMで3回抽出した。合わせた抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して化合物A5-5を黄色粉末として得た(950mg、収率100%)。
MS-ESI:[M+1]+: 249.1。
【0198】
ステップ3.
DCM(50mL)中の2,2,2-トリフルオロエチルアミン(A5-1)(1.21g、12.2mmol、1.0当量)およびピリジン(2.4g、30.5mmol、2.5当量)の混合物を0℃に冷却し、5℃未満にて、DCM(50mL)中のトリホスゲン(1.34g、4.52mmol、0.37当量)で滴下処理した。滴下後、反応混合物を35℃で1時間、次いで25℃で2時間撹拌した。このイソシアネート(A5-2)溶液を、精製せずに次のステップに使用した。
【0199】
ステップ4.
DCM(60mL)中の化合物A5-5(0.95g、3.8mmol、1.0当量)およびピリジン(0.45g、5.7mmol、1.5当量)の混合物を10℃に冷却し、イソシアネート(A5-2)溶液(12.2mmol、3.2当量)で滴下処理した。反応混合物を3時間加熱還流し、次いで冷却した。飽和炭酸水素ナトリウム溶液(200mL)を加え、混合物をDCMで2回抽出した。合わせた抽出物を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物A5-6を黄色粉末として得た(850mg、収率60%)。
MS-ESI:[M+1]+: 374.3
1H NMR(300MHz, d6-DMSO): 9.282(s, 1H), 8.718(d, 1H), 7.962(d, 1H),7.024(d, 1H), 5.165-5.186(m, 1H), 4.642(m, 1H), 3.926-4.008(m, 3H), 3.517-3.675(m, 3H), 2.502-2.568(m, 1H), 2.206-2.267(m, 2H)。
【0200】
ステップ5.
メタノール(80mL)中の化合物A5-6(850mg、2.28mmol、1.0当量)の溶液に、10%Pd/C(0.45g、50%湿潤)を加えた。水素取り込みが停止するまで、大気圧下にて、室温で水素化を行った。触媒を濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を真空下で濃縮し、化合物A5-7を褐色油状物として得た(800mg、収率100%)。
MS-ESI:[M+1]+: 344.3。
【0201】
ステップ6.
THF(20mL)中のD-ラクタミド(1.27g、13.68mmol、6.0当量)およびEtO-BF(3.53g、18.24mmol、8.0当量)の溶液を、窒素雰囲気下にて、室温で30分間撹拌した。次いで、前記溶液を、エタノール(20mL)中の化合物A5-7(800mg、2.28mmol、1.0当量)の混合物に加えた。HPLCによって反応の完了を確認するまで、85℃で5時間撹拌した後、混合物を濃縮し、HCl(1mol/L、30mL)を加え、酢酸エチルで4回抽出した。有機相を廃棄し、水相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で処理し、pH8とし、酢酸エチルで3回抽出した。第2の有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標記の化合物を淡黄色粉末として得た(530mg、収率58.5%)。
MS-ESI:[M-1]-: 396.5
1H NMR(300MHz, d6-DMSO): 8.931(s, 1H), 8.338(d, 1H), 7.276(d, 1H), 7.007(m, 1H),5.889-5.910(m, 1H), 5.661-5.683(m, 1H), 5.251-5.273(m, 2H), 3.652-3.970(m, 5H), 3.435-3.505(m, 1H), 2.455-2.712(m, 2H), 1.672(d, 3H)。
【0202】
[実施例6:(R)-4-[2-(1-ヒドロキシエチル)-1H-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピペリジン-1-カルボキサミド (6)の合成]
【0203】
【化19】
【0204】
【化20】
【0205】
手順は、実施例5のものと同様であり、標記の化合物をオフホワイトの粉末として生成する(21mg、収率:6.7%)。
MS-ESI:[M-1]-:410.6
1H NMR(300MHz, CD3OD): 8.862(s, 1H), 8.046(d, 1H),7.150(d, 1H), 5.152-5.383(m, 2H), 4.325-4.386(m, 2H), 3.990-4.022(m, 2H), 3.110-3.192(m, 2H), 2.423-2.653(m, 2H), 1.984-2.117(m, 2H), 1.793-1.915(d, 3H)。
【0206】
[実施例7:2-[(2R,5S)-5-[2-(ヒドロキシメチル)フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (7)の合成]
【0207】
【化21】
【0208】
ステップ1.
窒素雰囲気下にて、ブチルアルコール(8mL)中の化合物A1-14(500mg、2.0mmol、1.0当量)の溶液に、化合物A4-8(350mg、2.5mmol、1.0当量)およびDIPEA(403mg、8.25mmol、3.3当量)を加えた。反応混合物を135℃で2時間撹拌し、次いで濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物A4-9を黄色固体として得た(194mg、収率25.6%)。
MS-ESI:[M+1]+: 302.3。
【0209】
ステップ2.
メタノール(15mL)中の化合物A4-9(97mg、1.0mmol)の溶液に、10%Pd/C(50mg、50%湿潤)を加えた。水素取り込みが停止するまで、大気圧下にて、室温で水素化を行った。触媒を濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を濃縮して、化合物A4-10を黄色油状物として得た(535mg、収率:100%)。
MS-ESI: [M+1]+: 272.5。
【0210】
ステップ3.
THF(10mL)中のグリコールアミド(126mg、1.6mmol、5.0当量)およびEtO-BF(310mg、1.6mmol、5.0当量)の溶液を、窒素雰囲気下にて、室温で30分間撹拌した。次いで、前記溶液を、エタノール(10mL)中の化合物A4-10(88mg、0.32mmol、1.0当量)の混合物に加えた。85℃で12時間撹拌した後、混合物を濃縮し、水を加え、酢酸エチルで3回抽出した。有機相を廃棄し、水相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100mL)で処理し、pH8とした。次に混合物を酢酸エチルで2回抽出した。第2の有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標記の化合物をオフホワイトの粉末として得た(70mg、収率:70%)。
MS-ESI: [M+1]+: 313.5
1H NMR(300MHz, CDCl3): 9.00(s, 1H), 7.95(d, 1H),7.26(d, 1H),5.27-5.29(m, 1H), 4.76-4.84(m, 1H), 2.78-2.86(m, 1H), 2.43-2.52(m, 4H), 2.06-2.19(m, 2H), 1.91-2.00(m, 2H), 1.76-1.84(d, 3H)。
【0211】
[実施例8:2-[(2S,5S)-5-[2-(ヒドロキシメチル)フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (8)の合成]
【0212】
【化22】
【0213】
ステップ1.
窒素雰囲気下にて、ブチルアルコール(8mL)中の化合物A1-14(500mg、2.0mmol、1.0当量)の溶液に、化合物A4-8(350mg、2.5mmol、1.0当量)およびDIPEA(403mg、8.25mmol、3.3当量)を加えた。反応混合物を135℃で2時間撹拌し、次いで濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物A8-1を黄色固体として得た(67mg、収率8.84%)。
MS-ESI:[M+1]+: 302.3。
【0214】
ステップ2.
メタノール(10mL)中の化合物A8-1(67mg、1.0mmol)の溶液に、10%Pd/C(30mg、50%湿潤)を加えた。水素取り込みが停止するまで、大気圧下にて、室温で水素化を行った。触媒を濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を濃縮して、化合物A8-2を黄色油状物として得た(60mg、収率:100%)。
MS-ESI: [M+1]+: 272.5。
【0215】
ステップ3.
THF(10mL)中のグリコールアミド(105mg、1.33mmol、6.0当量)およびEtO-BF(258mg、1.33mmol、6.0当量)の溶液を、窒素雰囲気下にて、室温で30分間撹拌した。次いで、前記溶液を、エタノール(10mL)中の化合物A8-2(60mg、0.221mmol、1.0当量)の混合物に加えた。85℃で12時間撹拌した後、混合物を濃縮し、水を加え、酢酸エチルで3回抽出した。有機相を廃棄し、水相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100mL)で処理し、pH8とした。次に混合物を酢酸エチルで2回抽出した。第2の有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標記の化合物をオフホワイトの粉末として得た(21mg、収率:30.5%)。
MS-ESI: [M+1]+: 313.5
1H NMR(300MHz, CD3OD): 8.85(s, 1H), 8.29(d, 1H), 7.18(d, 1H), 4.98 (d, 3H), 4.35-4.42 (m, 2H), 3.95-3.99 (m, 1H), 3.48-3.65 (m, 1H), 3.04-3.11 (m, 1H), 2.67-2.76 (m, 1H), 1.97-2.31 (m, 3H)。
【0216】
[実施例9:2-[(2R,5S)-5-[2-エチルフロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (9)の合成]
【0217】
【化23】
【0218】
窒素雰囲気下にて、1,2-ジクロロエタン(50mL)中の化合物A4-10(1.1g、4.04mmol、1.0当量)およびトリメチルオルトプロピオネート(2.2mL)の水溶液を加熱還流し、次いでピリジン塩酸塩(200mg)を加えた。反応混合物を80℃で2時間撹拌し、濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で処理し、pH8とした。混合物を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで濃縮および精製して、標記の化合物を黄色固体として得た(800mg、収率:63.8%)。
MS-ESI: [M+1]+: 311.0
1H NMR(300MHz, CDCl3): 9.01(s, 1H), 7.91(d, 1H), 7.17(d, 1H), 4.54-4.59(m, 1H), 4.33-4.38(t, 1H), 4.05-4.09(m, 2H), 3.01-3.06(m, 2H), 2.70-2.83(m, 3H), 2.15-2.19(m, 2H), 1.85-1.92(m, 1H), 1.49-1.54(t, 3H)。
【0219】
[実施例10:2-[(2R,5S)-5-[2-フロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (10)の合成]
【0220】
【化24】
【0221】
窒素雰囲気下で、オルトギ酸トリメチル(5.0mL)中の化合物A4-10(136mg、0.5mmol、1.0当量)の溶液に、ギ酸(1.0mL)を加えた。反応混合物を80℃で1時間撹拌し、濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100mL)で処理し、pH8とした。混合物を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで濃縮および精製して、標記の化合物を黄色固体として得た(400mg、収率:28.4%)。
MS-ESI: [M+1]+: 282.9
1H NMR(300MHz, CDCl3): 9.10(s, 1H), 7.94(s, 1H), 7.92(d, 1H), 7.19(d, 1H), 4.76-4.79(m, 1H), 4.32-4.37(m, 1H), 3.92-4.03(m, 2H), 2.71-2.73(d, 2H), 2.46-2.51(m, 2H), 2.17-2.21(m, 1H), 1.89-1.91(m, 1H)。
【0222】
[実施例11:2-[(2R,5S)-5-[2-メチルフロ[3,2-b]イミダゾ[4,5-d]ピリジン-1-イル]テトラヒドロピラン-2-イル]アセトニトリル (11)の合成]
【0223】
【化25】
【0224】
窒素雰囲気下にて、1,2-ジクロロエタン(30mL)中の化合物A4-10(1.0g、3.67mmol、1.0当量)およびトリメチルオルトアセテート(2.0mL)の溶液を加熱還流し、次いでピリジン塩酸塩(200mg)を加えた。反応混合物を80℃で2時間撹拌し、濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で処理し、pH8とした。混合物を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで濃縮および精製して、標記の化合物を黄色固体として得た(500mg、収率:46.0%)。
MS-ESI: [M+1]+: 296.9
1H NMR(300MHz, CDCl3): 8.98(s, 1H), 7.91(d, 1H), 7.16(d, 1H), 4.54-4.59(m, 1H), 4.31-4.38(t, 1H), 4.02-4.09(m, 2H), 2.71-2.82(m, 6H), 2.15-2.22(m, 2H), 1.85-1.92(m, 1H)。
【0225】
〔生物学的試験〕
[実施例B1:Jak1、Jak2、Jak3、Tyk2生化学的アッセイ]
アッセイは、Reaction Biology Corp, Malvern, PAによって行った。以下、この手順について簡単に説明する。
【0226】
<試薬>
塩基反応緩衝液;20mM Hepes(pH7.5)、10mM MgCl、1mM EGTA、0.02% Brij35、0.02mg/ml BSA、0.1mM Na VO、2mM DTT、1% DMSO。各キナーゼ反応に、必要な補因子を個々に加える。
【0227】
<反応手順>
1.新規に調製した塩基反応緩衝液中において、指示された基質を準備する。
2.前記基質溶液に、必要な補因子を送達する。
3.基質溶液中に指示されたキナーゼを送達し、穏やかに混合する。
4.音波技術(Echo550;ナノリットル範囲)により、DMSO中の化合物をキナーゼ反応液中に送達する。その後、室温で20分間インキュベートする。
5.33P-ATP(比活性10μCi/μl)を反応混合液に送達し、反応を開始させる。
6.キナーゼ反応物を、室温で2時間インキュベートする。
7.反応物を、P81イオン交換紙上にスポットする。
8.フィルター結合方法により、キナーゼ活性を検出する。
【0228】
IC50の範囲に基づく化合物の活性を、以下に要約する:
+:1μM超
++:0.1~1μM
+++:10~100nM
++++:10nM未満
NT:試験していない。
【0229】
実施例3、6、7は、強力かつ選択的なJak1阻害剤である。
【0230】
【表1】
【0231】
[実施例B2: ヒト全血p-STAT3アッセイ]
<材料および試薬>
1.ヒトドナー由来の全血試料
2.IL-6(R&D systems;カタログ番号206-IL)
3.トロンボポイエチン(TPO;R&D systems;カタログ番号288-TP)
4.赤色血球溶解緩衝液(Qiagen;カタログ番号79217)
5.pSTAT3用ELISAキット(Invitrogen;カタログ番号KHO0481)。
【0232】
<機器>
1.遠心分離機
2.Envision;450nmでの吸光度。
【0233】
<手順>
1.1つのチューブあたり、150μLのヘパリン化血液試料。
2.種々の濃度の化合物を血液に添加し、室温で10分間インキュベートする(10用量、各化合物に対して2つのチューブ)。
3.IL-6(最終濃度:100ng/ml)またはTPO(最終濃度:50ng/ml)を、15分後に血液に加える。
4.刺激後、0.6mLのRBC溶解緩衝液(Qiagen 79217)を添加し、室温で1~2分間混合し、振盪した。その後、遠心分離して溶解したRBCを除去する。このステップは、RBCが完全に溶解していない場合には、もう1回繰り返してもよい。白血球(WBC)を採取する。
5.200μLの細胞溶解緩衝液を加え、30分間氷冷する。
6.16,000g、10分、4℃で遠心分離する。
7.上清を、細胞溶解物として新しいチューブに移す。
8.ELISAキットの製品取扱説明書に従った手順で、ELISAを操作する。
【0234】
IC50の範囲に基づくと、これらのアッセイにおいて、実施例3、4および7は、IL-6誘導STAT3リン酸化における選択的抑制を示した(下記)。しかし、TPO誘導STAT3リン酸化における選択的制御は示さなかった(下記)。
+:>100μM;
++:20~100μM;
+++:5~20μM;
++++:<5μM。
【0235】
実施例11はまた、TPO誘導STAT3リン酸化アッセイにおいていくらかの活性を示した。
【0236】
【表2】