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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】電子通貨管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/06 20120101AFI20220615BHJP
【FI】
G06Q20/06 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021136647
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2021072732
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522147665
【氏名又は名称】株式会社ディーカレットDCP
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 健一
(72)【発明者】
【氏名】辻 和幸
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-012460(JP,A)
【文献】特開2017-097812(JP,A)
【文献】特開2019-212256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子通貨管理システムであって、
現金通貨に対応付けられたコインを運用する共通領域ブロックチェーンネットワークと、
前記コインに対応付けられた第1のトークンを運用する第1の付加領域ブロックチェーンネットワークと、
前記共通領域ブロックチェーンネットワークに、前記コインを発行する第1の発行手段と、
前記第1の発行手段で発行した前記コインを前記第1の付加領域ブロックチェーンネットワークに対応付ける付与手段と、
前記付与手段によって対応付けられた前記コインの量に基づいて前記第1の付加領域ブロックチェーンネットワークに前記第1のトークンを発行する第2の発行手段と、
を備えることを特徴とする電子通貨管理システム。
【請求項2】
前記第1の付加領域ブロックチェーンネットワーク内での前記第1のトークンの移転に応じて前記共通領域ブロックチェーンネットワーク内で前記第1のトークンに対応付けられた前記コインを移転する移転手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の電子通貨管理システム。
【請求項3】
前記コインに対応付けられた第2のトークンを運用する第2の付加領域ブロックチェーンネットワークをさらに有し、
前記移転手段は、前記第1の付加領域ブロックチェーンネットワークから前記第2の付加領域ブロックチェーンネットワークへの価値の移転指示を受け付けた場合に、
前記第1のトークンを前記移転指示に基づいて減らし、
前記第1の付加領域ブロックチェーンネットワークに対応付けられた前記コインを前記第2の付加領域ブロックチェーンネットワークに対応付け、
前記第2のトークンを前記移転指示に基づいて増やす、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子通貨管理システム。
【請求項4】
前記移転手段は、付加領域ブロックチェーンネットワーク内での取引を監視し、
検出した前記取引において前記共通領域ブロックチェーンネットワークに前記コインの操作指示を送信することを特徴とする請求項2または3に記載の電子通貨管理システム。
【請求項5】
前記移転手段は、前記共通領域ブロックチェーンネットワーク内でトークンに対応付けられていないコインの移転を行うことを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の電子通貨管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子通貨管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、複数の事業者によって、複数の電子通貨や仮想通貨などの電子決済システムが運営されている。例えば、特許文献1には、仮想通貨の移転(トランザクション)を有効化するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6521421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の問題に鑑みて成されたものであり、電子通貨の発行を希望する事業者が簡便に電子通貨を管理することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば電子通貨管理システムは、
現金通貨に対応付けられたコインを運用する共通領域ブロックチェーンネットワークと、
前記コインに対応付けられた第1のトークンを運用する第1の付加領域ブロックチェーンネットワークと、
前記共通領域ブロックチェーンネットワークに、前記コインを発行する第1の発行手段と、
前記第1の発行手段で発行した前記コインを前記第1の付加領域ブロックチェーンネットワークに対応付ける付与手段と、
前記付与手段によって対応付けられた前記コインの量に基づいて前記第1の付加領域ブロックチェーンネットワークに前記第1のトークンを発行する第2の発行手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電子通貨の発行を希望する事業者が簡便に電子通貨を管理することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る電子通貨管理システムを示す図。
図2図1の発行者装置、運用事業者装置、利用者装置、リレー装置のハードウェア構成を示す図。
図3】トークンの発行処理を示す図。
図4】二層構造電子通貨の概念図。
図5】付加領域ネットワーク間の価値の移転の一例を示す図。
図6】付加領域ネットワーク間の価値の移転の一例を示す図。
図7】付加領域ネットワークのアプリケーション例を示す図。
図8】銀行間の決済の一例を示す図。
図9】電子通貨管理システムを示す図。
図10】発行者装置、運用事業者装置、利用者装置を登録する処理を示す図。
図11】供託処理を示す図。
図12】コインの発行処理を示す図。
図13】コイン発行後の電子通貨管理システムを示す図。
図14】トークンの登録処理を示す図。
図15】トークンの発行処理を示す図。
図16】トークン発行後の電子通貨管理システムを示す図。
図17】トークンの購入処理を示す図。
図18】トークン購入後の電子通貨管理システムを示す図。
図19】トークンの移転例を示す図。
図20】トークンの移転例を示す図。
図21図13の管理サーバのハードウェア構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
以下、本実施形態に係る電子通貨管理システムについて説明する。本実施形態に係る電子通貨管理システム1は、共通領域ネットワーク10、発行体装置11A、11B、11C(以下、区別せず発行体装置11と呼ぶ場合がある)、リレー装置21A、21B、21C(以下、区別せずリレー装置21と呼ぶ場合がある)、付加領域ネットワーク30A、30B、30C(以下、区別せず付加領域ネットワーク30と呼ぶ場合がある)、運用事業者装置31A、31B、31C(以下、区別せず運用事業者装置31と呼ぶ場合がある)、並びに利用者装置41A、41B、41C(以下、区別せず利用者装置41と呼ぶ場合がある)および42A、42B、42C(以下、区別せず利用者装置42と呼ぶ場合がある)を含む。
【0010】
共通領域ネットワーク10は、例えばブロックチェーンなどの分散台帳ネットワークであり、発行体装置11を含む分散台帳システムを運用するノードで構成される。共通領域ネットワーク10は、発行体装置11が運用する通貨に紐づく電子通貨(コイン)101~104の移転などの操作を実行するために利用される。
【0011】
発行体装置11は銀行などの電子通貨の発行免許を有する企業が利用する装置である。
【0012】
付加領域ネットワーク30は、例えばブロックチェーンなどの分散台帳ネットワークであり、運用事業者装置31および利用者装置41、42を含む分散台帳システムを運用するノードで構成される。付加領域ネットワーク30は、運用事業者装置31が運用するトークンの移転などの操作を提供するために利用される。本実施形態では、コインまたはトークンの操作とは、発行、移転、償却、交換を含む。付加領域ネットワーク30は企業などのビジネスニーズに応じて個別のユースケース毎に作られる。
【0013】
リレー装置21は、共通領域ネットワーク10および付加領域ネットワーク30を監視し、付加領域ネットワーク30でのトークンの操作に応じて共通領域ネットワーク10のコインの操作を行う。また共通領域ネットワーク10でのコインの操作に応じて付加領域ネットワーク30のトークンの操作を行う。運用事業者装置31は付加領域ネットワーク30でのトークンの運用を行う事業体の装置である。利用者装置41および42は、トークンを利用した付加領域におけるサービスの提供を受ける利用者の装置である。
【0014】
例えば、銀行である発行体装置11Aは、10億円分の電子通貨を発行したい、という顧客である運用事業者31Aの依頼に基づいて、顧客の銀行口座から既存の銀行預金10億円を引き落とし、どこの付加領域で使うか指定のない状態のホワイトコイン101を10億円分発行する。
【0015】
この後、運用事業者は、共通領域ネットワーク10が提供するアプリケーションを利用して10億発行されたホワイトコイン101のうち、2億円分のホワイトコインを付加領域に対応付けられたコイン102に割り当てるとともに、付加領域ネットワーク30Aにコイン102に対応するトークン(例えば電力トークン)を発行するよう発行指示を出す。このタイミングで10億のホワイトコインうち2億は付加領域ネットワーク30A(例えば電力取引の付加領域)でしか使えなくなる。
【0016】
同様に他の付加領域においてもそれぞれ発行を希望するトークンの数量を指定し、共通領域ネットワーク10においてコイン103、104に示すように付加領域ネットワーク30ごとに割り当てる(ロックをかける)ことでその付加領域分の価値を担保することができる。また、指定を行った瞬間に付加領域ネットワーク30にはあたかも通貨が発行されたようなイメージのトークンが発行される。これは電子通貨の実体そのものではなく、それを動かすための指図をする指図証明のようなものであり、運用事業者から見たときにはあたかも付加領域で電子通貨が発行されたように見える。
【0017】
付加領域ネットワーク30Aで取引をする際、付加領域ネットワーク30Aで発行された、実態は「電子通貨のシャドウ」のようなトークンを付加領域ネットワーク30Aで動かすことで価値を転々流通させる。付加領域ネットワーク30Aで転々流通をさせるその内容は付加領域ネットワーク30Aと共通領域ネットワーク10とでコイン102およびトークンの操作を非同期で連携させる。すなわち、付加領域ネットワーク30Aでトークンが転々流通をしたことと同期させて共通領域ネットワーク10で実体の電子通貨(コイン)102~104で価値を移転させる。
【0018】
共通領域で発行される電子通貨は法的には預金そのものとして整理することにより、通常の供託が必要な資産、ではなく、預金債権そのものを表象する。銀行は為替業務として実際の電子通貨の移転を行う。
【0019】
最初に銀行からどこの付加領域で使うか指定しないホワイトコインを発行し、これを付加領域1で使うよう指定する。
【0020】
これをホワイトコインに戻す機能を用意し、付加領域指定解除の操作をし、ホワイトコインに戻して、今度は別の付加領域で使う、という指定をすることで、例えば電力売買で指定された電子通貨を解除、小売電子通貨で使う、という指定をして通貨をわざわざ銀行預金に戻すことなく移転できるようにする。
【0021】
次に、図2を参照して、発行体装置11、リレー装置21、運用事業者装置31、並びに利用者装置41および42の構成について説明する。発行体装置11は、プロセッサ201、メモリ202、ストレージ203、ネットワークインタフェース(I/F)204、および入出力I/F205を備える。
【0022】
プロセッサ201は、発行体装置11の全体を制御する制御部である。プロセッサ201は、ストレージ203に格納されたプログラムまたはオペレーティングシステム(OS)を実行するCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、およびマイクロコントローラの少なくとも何れかを含む。メモリ202は、プロセッサ201のワークメモリとして用いられるDRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などで構成される。
【0023】
ストレージ203は、プロセッサ201が実行するプログラム、OS、並びにプログラムによって使用されるデータテーブルおよび設定値の少なくとも何れかを格納するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)を含む。入出力I/F205は、ユーザ操作を受け付けるためのキーボード、タッチパネル、およびマイクの少なくともいずれかを含む入力機器、ならびにディスプレイ、スピーカー、およびLEDの少なくともいずれかを含む出力機器を含むユーザインタフェースである。なお、本明細書ではリレー装置21、運用事業者装置31、並びに利用者装置41および42も発行体装置11と同様のハードウェア構成であるものとして説明を行う。なお、一例では、発行体装置11、リレー装置21、運用事業者装置31、並びに利用者装置41および42の少なくともいずれかは入出力I/F205を有していなくてもよく、この場合、入出力I/F205を有していない発行体装置11、リレー装置21、運用事業者装置31、並びに利用者装置41および42の少なくともいずれかは、ネットワークI/F204を介して操作指示を受け付けたり、操作結果の出力を行ってもよい。
【0024】
続いて、図3を参照して本実施形態に係る電子通貨管理システム1の処理の流れについて説明する。
【0025】
まず運用事業者は発行体にトークンの運用に係る担保金301を発行体の銀行口座などに送金することで担保を納付する。
【0026】
続いて発行体装置11は、担保に相当する電子通貨(コイン)302を共通領域ネットワーク10で発行する。ここで発行するコイン302は、発行者が発行体装置11であることを示すが、トークンには対応付けられていないホワイトコインである。また、ホワイトコインの移転指示は運用事業者装置31では行えず、発行体装置11によってのみ行うことができる。
【0027】
次に、付加領域ネットワークのユーザは、例えば銀行のアプリケーションシステム等を通して発行すべきトークンの種類、数量、運用事業者の識別子等を電子通貨の発行体である銀行へ通知する。
【0028】
トークンの発行通知を受けた銀行が発行体装置11へ特定の付加領域に対するトークンの発行を指示することにより、発行体装置11はホワイトコイン302をトークン303に紐づいた(色付けされた)コイン304として移転することができるようになる。
【0029】
リレー装置21は共通領域10を監視し、付加領域での移転を検出することによりトークン303に紐づいたトークン304を移転することができる。
【0030】
トークンの移転を検出したリレー装置21は、共通領域ネットワーク10にコインの移転を指示する。リレー装置21は、トークンに紐づけられたコインの所有者を移転元から移転先に変更するよう共通領域ネットワーク10に指示する。
【0031】
図4に示すように、共通領域ネットワーク10に発行された電子通貨はユーザが利用する付加領域ネットワーク30の識別子を指定することでロックされ、特定された付加領域ネットワーク30を送付元または送付先とする取引のみ移転が可能、かつ付加領域ネットワーク30内の装置からの指図を受けないと移転が行われない。
【0032】
すなわち、電子通貨の実態は共通領域ネットワーク10に存在する。そして、付加領域ネットワーク30は電子通貨の実態を化体するトークンを保有する。
【0033】
共通領域に発行される電子通貨は預金として整理する。付加領域では共通領域上の(実体としての)電子通貨を移転する為替取引を表象する証書としてトークンを発行する。電子通貨そのものを預金とするため、電子通貨を運用・消費することが可能となる。
【0034】
既存の法定通貨の仕組みに裏打ちされた信頼性の高い電子通貨を、旧来のレガシーシステムに極力頼ることなく、完結できる新しい決済プラットフォームを提供でき、プログラマビリティ等による商流とのインターオペラビリティの実現により、利便性の高いサービスを実現することができる。
【0035】
また、図5に示すように、付加領域を跨いだデジタル通貨移転を以下のように発行・償還を行うことなく実現することができる。
(1)付加領域ネットワーク30Aで受け取ったトークンの指定を解除し、共通領域ネットワーク10において付加領域30Aに関連付けられたコインをホワイトコイン化する。これに伴い、付加領域ネットワーク30Aのトークンを移転量だけ減らす。
(2)ホワイトコイン化された電子通貨を付加領域ネットワーク30Bに関連付けるとともに、付加領域ネットワーク30Bのトークンを移転量だけ増やす。
【0036】
これによって、付加領域ネットワーク間の電子通貨の移転が完了する。
【0037】
なお、図5の例では、同一の利用者に対応付けられた利用者装置41Aおよび利用者装置41Bを送金元および送金先とする、異なる付加領域間の価値移転の処理を示す。この場合、共通領域では、当該利用者に対応付けられたコインは、属する付加領域ネットワークが変化するのみで、価値の総量は変化しない。このため、銀行預金の移動は行われない。
【0038】
また、図6に示すように、以下の手順で異なる利用者間で付加領域を跨いだ電子通貨移転を発行・償還を行うことなく実現する。
(1)付加領域ネットワーク30AのユーザAに対応する利用者装置41Aは付加領域ネットワーク30A上のトークンに関連付けられた電子通貨の指定を解除し、ホワイトコイン化する。
(2)リレー装置21Aは、(1)においてホワイトコイン化された電子通貨をユーザAからユーザBに送金するよう共通領域ネットワーク10に指示を出す。
(3)ホワイトコインがユーザBに関連付けられ、リレー装置21BはユーザBに対応する利用者装置41Bに付加領域ネットワーク30Bのトークンを付与する。
【0039】
なお、図6の例では、付加領域ネットワーク30Aに属する利用者装置41Aから付加領域ネットワーク30Bに属する利用者装置41Bへの価値の移転が行われるため、共通領域ネットワーク10においても、コインの移転が行われる。
【0040】
また、図7に示すように、付加領域として電力売買プラットフォーム(PF)、小売りプラットフォーム、電子通貨など、異なる付加領域ネットワークを1つの共通領域ネットワークでサポートすることができる。
【0041】
これによって、付加領域ネットワークを用いたアプリケーションを容易に立ち上げることができ、運用事業者の利便性が向上する。また、発行体は、複数の発行体で共通領域の運営を分担することができ、電子通貨を用いて銀行間の送金を行うことができる。また付加領域ネットワーク間の相互運用性を向上することができる。
【0042】
銀行間を跨って電子通貨の移転(振替)を行う場合、通常の送金と同様に銀行間での決済の考慮が必要となる。通常の銀行間送金と同様に、決済尻を日銀当座預金の振替で行う場合があるが、顧客送金時に全銀システムを通す必要がある。このため、本実施形態に係る電子通貨管理システムでは、電子通貨プラットフォーム上で極力決済まで完結できるよう銀行間決済用の電子通貨を発行する。これによって、顧客送金時に全銀システムを通す必要がなくなる。さらには将来的に中央銀行デジタル通貨(CBDC)が発行され、銀行間決済用のホールセール型CBDCが導入された場合でもスムーズな移行が可能となる。
【0043】
例えば図8に示すように、利用者811Aが発行体801Aの預金口座を持ち、利用者811Bが発行体801Bの預金口座を持っている場合、利用者811Aが利用者811Bへ送金すると、発行体801Aおよび801Bの銀行間をまたがって振替をすることになる。
【0044】
発行体801Aは利用者811Aの預金を減らし、発行体801Bが利用者811Bの預金を増やすことによって利用者811Aと811Bとの間の決済が行われる。つまり、発行体801Aは、預金者から銀行をまたがった預金の振替を指示された場合、発行体811Bとの間で銀行間の決済を行う。この際、銀行間決済は金額が大きいため、銀行がよその銀行と決済を現金で行うことはほとんどせず、通常は預金(多くの場合、銀行が中央銀行当座預金)の振替で行うことによって銀行間決済を行っている。
【0045】
二層構造電子通貨プラットフォームの共通領域では上述のような銀行間決済処理を中央銀行当座預金を使うことなくPF上で完結させるため、ホールセール型電子通貨を発行して上記のような銀行間決済を行い、銀行間の決済処理のネッティングにより、電子通貨の移転に伴う決済のファイナリティーを担保する。
【0046】
具体的には、電子通貨発行分を利用者811Aの預金から引き落し、発行体801Aの口座に振替を行い、利用者811Aに電子通貨を発行する。続いて、利用者811Aから811Bへ電子通貨移転を行う。この時点では発行体801Bには発行体801Aの負債だけが移転された状態である。
【0047】
また、発行体801Aと801Bとの間の資産、負債のバランスをとるための清算が必要となる。通常の送金は日銀当座預金の振替で行われる。発行体801Bの資産、発行体801Aの負債となる銀行間決済用の電子通貨(ホールセール型電子通貨)を、発行体801A、801Bの与信に基づき発行し、これによって発行体801Aと801Bとの間の決済処理をネッティングすることが可能である。
【0048】
続いて、図9図21を参照して本実施形態に係る電子通貨管理システムについて説明する。
【0049】
以下、図9を参照して電子通貨管理システムについて説明する。本実施形態に係る電子通貨管理システム1は、共通領域ネットワーク10、発行体装置11A、11B、11C(以下、区別せず発行体装置11と呼ぶ場合がある)、リレー装置21A、21B、21C(以下、区別せずリレー装置21と呼ぶ場合がある)、付加領域ネットワーク30A、30B、30C(以下、区別せず付加領域ネットワーク30と呼ぶ場合がある)、運用事業者装置31A、31B、31C(以下、区別せず運用事業者装置31と呼ぶ場合がある)、利用者装置41A、41B、41C(以下、区別せず利用者装置41と呼ぶ場合がある)および42A、42B、42C(以下、区別せず利用者装置42と呼ぶ場合がある)、並びに管理サーバ50を含む。共通領域ネットワーク10、発行体装置11、リレー装置21、付加領域ネットワーク30、運用事業者装置31、並びに利用者装置41および42については図1を参照して説明したため説明を省略する。
【0050】
なお、図1および図9では、発行された電子通貨の管理主体が明確になるよう、各発行体装置11内に電子通貨が存在するものとして図示されている。しかしながら、共通領域ネットワーク10がブロックチェーンネットワークである場合に、複数の発行体装置11によって管理される分散型台帳で電子通貨を管理することがある。また、電子通貨のデータ自体は管理サーバ50に格納され、発行体装置11が電子通貨の属性の設定などの操作権限のみを有する場合もある。すなわち、図1および図9において、電子通貨は、電子通貨を管理する発行体装置との対応付けを示すために図示されているのみであって、電子通貨の電子データを保存する装置を限定するものではない。
【0051】
管理サーバ50は、共通領域ネットワーク10および付加領域ネットワーク30において、発行体装置11、運用事業者装置31、および利用者装置41の登録を行う。また、新たに付加領域ネットワーク30を作成するに伴い、リレー装置21の登録を行う。
【0052】
次に、図21を参照して、管理サーバ50の構成について説明する。管理サーバ50は発行体装置11、運用事業者装置31、および利用者装置41と同様、プロセッサ201、メモリ202、ストレージ203、ネットワークインタフェース(I/F)204、および入出力I/F205を備える。プロセッサ201、メモリ202、ストレージ203、ネットワークインタフェース(I/F)204、および入出力I/F205は図2と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0053】
以下、図10図20を参照して、電子通貨管理システム1が実行する処理について説明する。
【0054】
(発行体装置11の登録処理)
図10(A)を参照して、共通領域ネットワーク10に発行体装置11が参加する処理について説明する。
【0055】
まず、発行体は、管理サーバ50の管理事業者とプラットフォームの利用契約を行う。これによって、管理サーバ50の管理事業者は、管理サーバ50に、電子通貨管理システムを利用するための管理用アカウント情報を登録する(S1001)。
【0056】
続いて、管理サーバ50は、発行体装置11に利用者アカウントのIDを含む、管理用アカウント通知を行う(S1002)。発行体装置11は、管理サーバ50に、コインの発行権限を有する発行体アカウントの作成指示を行う(S1003)。管理サーバ50は、発行体データベースにアカウント情報を登録して発行者アカウントを作成し(S1004)、発行体IDを発行者装置11に送信する(S1005)。
【0057】
(運用事業者装置31の登録処理)
続いて、図10(B)を参照して、付加領域ネットワーク30に運用事業者装置31が参加する処理について説明する。
【0058】
まず、運用事業者は、管理サーバ50の管理事業者とプラットフォームの利用契約を行う。これによって、管理サーバ50の管理事業者は、管理サーバ50に、運用事業者に対応する管理用のアカウント情報を登録する(S1021)。
【0059】
続いて、管理サーバ50は、運用事業者装置31に利用アカウントを通知する(S1022)。運用事業者装置31は、管理サーバ50に、トークンの発行権限を有する運用事業者アカウントの作成指示を行う(S1023)。管理サーバ50は、運用事業者のアカウントに対応する運用事業者IDを運用事業者装置31に送信する(S1024)。
【0060】
(利用者装置41、42の登録処理)
続いて、図10(C)を参照して、付加領域ネットワーク30に利用者装置41、42が参加する処理について説明する。
【0061】
まず、利用者は、管理サーバ50の管理事業者とプラットフォームの利用契約を行う。これによって、管理サーバ50の管理事業者は、管理サーバ50に、利用者に対応する管理用のアカウント情報を登録する(S1041)。
【0062】
続いて、管理サーバ50は、利用者装置41、42に利用アカウントを通知する(S1042)。利用者装置31は、管理サーバ50に、トークンの購入、送金、受取権限を有する利用者アカウントの作成指示を行う(S1043)。管理サーバ50は、利用者のアカウントに対応する利用者IDを利用者装置41、42に送信する(S1044)。
【0063】
(供託処理)
続いて、図11(A)を参照して、発行体装置11がコインを発行するために必要な供託を行うための処理について説明する。なお、運用事業者は発行体にトークンの運用に係る担保金を発行体の銀行口座などに送金することで担保を納付しているものとする。
【0064】
発行体装置11は、供託情報を管理サーバ50に登録する(S1101)。ここで、登録される供託情報には、発行体IDと担保金額とを含む。別の例では、発行体IDに紐づくコインのIDを供託情報として登録してもよい。続いて、管理サーバ50は、供託情報データベースに供託情報を登録する(S1102)。そして、登録が完了した供託に対応する供託情報データベースにおける識別子(供託情報ID)を発行体装置11に送信する(S1103)。
【0065】
なお、供託情報データベースは、上述した供託情報に加え、供託の残量を管理してもよい。これによって、所定の金額の供託が行われた後に、1度供託によって発行可能な数量より少ない数量のコインを発行した場合であっても、発行したコインの数量に対応する金額分、供託の残量を減らすことで、残りの発行可能なコイン数を管理することができる。
【0066】
なお、一度登録した供託情報を、追加で供託するなどによって更新する場合にも、図11(B)に示すように、供託情報IDとともに更新すべき供託情報を管理サーバ50に送信し(S1121)、管理サーバ50が供託情報データベースのデータを更新する(S1122)ことができる。管理サーバ50は供託を確認すると、応答を発行体装置11に送信する(S1123)。
【0067】
なお、発行体装置11が銀行業者によって運用される場合には、図11(A)に示す供託処理は不要であってもよい。一方、発行体装置11が資金移動業者など、銀行業者とは異なる業者によって運用される場合には、図11(A)に示す供託処理が必要となってもよい。すなわち、発行体装置11が供託処理を行うか否かは、発行体装置11の運用主体など、発行体が準拠する規制に応じて決定されてもよい。
【0068】
(コインの発行処理)
続いて、図12を参照して、発行体装置11が現金通貨に紐づくコインを発行するまでの処理について説明する。
【0069】
まず、S1201で、発行体装置11は管理サーバ50にコインの発行要求を送信する。コインの発行要求には、発行者ID、コインID、および発行数量を含む。
【0070】
管理サーバ50は、コインの発行要求に含まれる発行者IDを使用して、供託情報データベースに登録された供託情報から発行者IDが一致する供託情報を取得する(S1202)。続いて、供託情報から担保金額を特定し、発行可能なコインの数量を判定する(S1203)。上述したように、供託情報が供託の残量を含む場合には、供託の残量に基づいて発行可能なコインの数量を判定してもよい。
【0071】
判定の結果、発行要求含まれる発行数量分のコインを発行可能であると判定した結果、管理サーバ50は発行体装置11の共通領域ネットワーク10上の発行体のウォレットにコインを発行する(S1204)。続いて、発行体装置11に発行量を通知する(S1205)。
【0072】
ここで、図13を参照して、コイン発行後のウォレットの状態について説明する。なお、図13の例では、説明を容易にするために、発行体装置11Aがコインの発行を行い、それ以外にコインの発行は行われていないものとして説明する。また、図13では2つの付加領域ネットワークがあるものとして説明を行う。
【0073】
コインを発行した時点では、コインはいずれの付加領域ネットワーク30にも対応付けられていない。言い換えると、図12のS1204で発行されるコインはホワイトコイン101である。ホワイトコイン101は、所有者が発行した発行体装置11Aに設定され、移転などの処理は発行体装置11Aのみによって行うことができる。
【0074】
(トークンの登録処理)
続いて、図14を参照して、付加領域ネットワーク30上で流通させるトークンを新たに登録する処理について説明する。発行体と運用事業者とは、付加領域ネットワーク30上で流通させるトークンの運用について契約を行い、運用事業者装置31は発行体装置11の発行体IDを取得しているものとする。
【0075】
運用事業者装置31は、トークンの登録要求を管理サーバ50に送信する(S1401)。トークンの登録要求には、運用事業者ID、トークン名、トークンシンボル、およびトークンの価値を裏付けるコイン(裏付けコイン)を示す情報を含む。管理サーバ50は、トークンの登録要求に含まれる運用事業者IDに基づいて、トークンデータベースに、トークンの登録要求に含まれる運用事業者ID、トークン名、トークンシンボル、及び裏付けコインを、トークンIDと関連付けて登録する(S1402)。そして、登録したトークンIDを、登録要求に対する応答として運用事業者装置31に送信する(S1403)。これによって、運用事業者はトークンIDに対応するトークンを発行、償却、移転などの処理を行うことができる。
【0076】
(トークンの発行処理)
続いて、図15を参照して、付加領域ネットワーク30上で流通させるトークンを新たに発行する処理について説明する。
【0077】
なお、運用事業者は、銀行である発行体の管理下にある運用事業者に対応する口座を有しているものとして説明を行う。
【0078】
まず、運用事業者装置31は、リレー装置21へトークンの発行要求を送信し、リレー装置21が発行体装置11にトークンの発行要求を送信することで発行体装置11がトークンの発行要求を取得する(S1501)。なお、運用事業者装置31が発行体装置11に直接トークンの発行要求を送信可能に構成されている場合には、運用事業者装置31はリレー装置21を介さずに発行体装置11へトークンの発行要求を送信してもよい。トークンの発行要求には、トークンID、トークン数量を含む。発行体装置11は、発行要求を受信すると、発行者ID、トークンID、トークン数量を含むトークン発行指示を管理サーバ50に送信する(S1502)。管理サーバ50は、発行者IDに基づいて供託情報データベースから供託情報を取得し(S1503)、トークン発行指示に含まれるトークン数量分のトークンを発行可能であるか否かを判定する(S1504)。トークン数量分のトークンを発行可能であるか否かの判定では、発行体装置11が発行体装置11のウォレットにトークン数量に対応するホワイトコインを保有しているか否かの判定を含んでもよい。あるいは、発行体が運用事業者の口座に発行するトークン数量に対応する金融資産を保有しているか否かの判断を含んでもよい。
【0079】
管理サーバ50が、トークン発行指示に含まれるトークンを発行可能であると判定した場合、管理サーバ50は発行体装置11に発行通知を送信し(S1505)、トークンIDに対応する付加領域ネットワーク30の運用事業者31のウォレットにトークンを発行する(S1506)。
【0080】
発行体装置11は、発行通知を受信すると、発行体装置11のウォレットに保有するホワイトコインを、付加領域ネットワーク30に紐づける(S1507)。これは、コインに属性タグを付与できる場合には、発行時には設定されていない属性タグを運用事業者のIDなどに設定することで、コインを付加領域ネットワーク30に対応付けられた色付き(カラード)コインに変換することができる。本実施形態では、コインの属性タグを付加領域ネットワーク30に対応付けることで例えば、運用事業者装置31が共通領域ネットワーク10にウォレットを有する場合には、発行体装置11のウォレットから運用事業者装置31のウォレットに、運用事業者装置31が有するトークンの数量に対応するコインを移転することでコインを付加領域ネットワーク30に対応付けてもよい。
【0081】
また、S1507では、コインの所有者は運用事業者装置31に設定されている。また、色付けされたコインは、所有者の変更は可能なものの、移転や償却を行うためには、一度ホワイトコインに変換する必要がある。
【0082】
発行を希望するトークンの数量を指定し、共通領域ネットワーク10においてコイン103、104に示すように付加領域ネットワーク30ごとに割り当てる(ロックをかける)ことでその付加領域分の価値を担保することができる。また、指定を行った瞬間に付加領域ネットワーク30にはあたかも通貨が発行されたようなイメージのトークンが発行される。これは電子通貨の実体そのものではなく、それを動かすための指図をする指図証明のようなものであり、運用事業者から見たときにはあたかも付加領域ネットワークで電子通貨が発行されたように見える。共通領域ネットワーク10に発行されたコインはユーザが利用する付加領域ネットワーク30の識別子を指定することでロックされ、特定された付加領域ネットワーク30を送付元または送付先とする取引のみ移転が可能、かつ付加領域ネットワーク30内の装置からの指図を受けないと移転が行われない。
【0083】
続いて、図16を参照して、トークンの発行後の電子通貨管理システム1について説明する。図16は、図13の後、付加領域ネットワーク30Aが発行体11Aを発行体としてトークンを発行した場合の図である。
【0084】
発行体11Aは、共通領域ネットワーク10上に発行体11Aのウォレットを有し、ホワイトコイン1301を保有している。また、付加領域ネットワーク30Aに対応する色付きコイン1601を保有しており、コイン1601は付加領域ネットワーク30Aを送金元または送金先とするトークンのやり取りにしか使えなくなる。また、運用事業者装置31Aは、発行したトークン1611を有している。
【0085】
(トークンの購入処理)
次に、図17を参照してユーザが運用事業者に通貨の支払いを行い、付加領域ネットワーク30Aで流通するトークンを取得する例について説明する。
【0086】
利用者装置41Aは、リレー装置21AへトークンのユーザIDと、購入するトークンの種別、およびトークンの数量、および支払方法を指定する支払い情報を含むトークンの購入要求を送信し、リレー装置21Aは運用事業者装置31Aにトークンの購入要求を転送する(S1701)。支払い情報は、口座引き落としなどの支払い方法や、支払いが現金通貨によるものか、電子通貨によるものかなどの支払い種別を含んでもよい。なお、利用者装置41A1が運用事業者装置31Aに直接トークンの購入要求を送信可能に構成されている場合には、利用者装置41Aはリレー装置21Aを介さずに運用事業者装置31Aへトークンの購入要求を送信してもよい。
【0087】
運用事業者装置31Aは、支払い情報に基づいて、トークンの種類と数量とから、購入要求に従ってトークンの移転を行うか否かを判定する(S1702)。運用事業者装置31Aは、購入要求に含まれるトークンが、支払い情報に含まれる支払いによって購入可能であると判定した場合は、運用事業者装置31Aのウォレットから、指定されたトークンを指定された数量だけ利用者装置41Aのウォレットに移転する移転指示を付加領域ネットワーク30Aに送信する。トークンの移転指示を発行体装置11Aに送信する(S1703)。トークンの移転指示には、移転元、移転先、トークン種別、トークン数量が含まれる。
【0088】
移転指示が付加領域ネットワーク30A上に送信されると、リレー装置21Aは、移転指示を検出し(S1704)、トークンの移転元と移転先とを特定する(S1705)。特定すると、リレー装置21Aは、付加領域ネットワーク30Aに対応する発行体装置11Aに、トークンの移転指示に対応するコインの移転指示を送信する(S1706)。例えば、トークンを現金通貨に換算した価値および数量と、コインを現金通貨に換算した価値とから、移転するトークンを現金通貨に換算した価値分、コインを移転するよう発行体装置11Aに指示する。
【0089】
リレー装置21Aから移転指示を受け取った発行体装置11Aは、付加領域1に対応する色付きコイン102のうち、移転元の運用事業者装置31が所有しているコインの所有者を、移転先の利用者装置41Aに設定する(S1707)。共通領域ネットワーク10がブロックチェーンネットワークである場合には、移転元から移転先へのコインの移転指示を送信する。これによって、価値を担保する共通領域ネットワーク10上でも価値の移転を行うことができる。
【0090】
なお、図17には図示されていないものの、利用者装置41Aから運用事業者装置31Aへの支払い処理が別途行われる。これは、トークンの購入前に行われてもよいし、トークンの移転が完了した後に行われてもよい。
【0091】
続いて、図18を参照して、トークンの購入後の状態について説明する。図18は、図16の後、利用者装置41Aが運用事業者装置31Aからトークンを購入した状況を示す図である。
【0092】
発行体11Aは、共通領域ネットワーク10上に発行体11Aのウォレットを有し、ホワイトコイン1301を保有している。また、付加領域ネットワーク30Aに対応する色付きコイン1601、1802を保有している。色付きコイン1601は、所有者が運用事業者装置31Aに設定されており、色付きコイン1802は、所有者が利用者装置41Aに設定されている。また、色付きコイン1601、1802に対応して、付加領域ネットワーク30Aの運用事業者装置31A、利用者装置41Aのウォレットにはトークン1611、1812が保有されている。
【0093】
(トークンの移転処理例1)
トークンの移転指示においても、上述したトークンの購入処理と同様に、共通領域ネットワーク10と付加領域ネットワーク30とを連動させて価値の移転を行うことができる。
【0094】
図19を参照して同一の付加領域ネットワーク30A内のユーザ間でトークンを移転する例について説明する。
【0095】
利用者装置41Aは、利用者装置42Aを移転先とする移転指示を送信する(S1901)。本実施形態では、移転指示はブロックチェーンネットワークである付加領域ネットワーク30Aへの取引の注文であるものとして説明を行うが、運用事業者装置31Aが付加領域ネットワーク30Aを管理する場合には、移転指示は運用事業者装置31Aに送信されてもよい。トークンの移転指示は移転元、移転先、トークン種別、トークン数量を含む。
【0096】
付加領域ネットワーク30A上に移転指示が送信されると、リレー装置21Aは送信された移転指示を検出し(S1902)、移転元、移転先、トークン種別、トークン数量から、図17を参照して説明したものと同様に、発行体装置11Aに移転指示を送信する(S1903)。
【0097】
発行体装置11Aは、移転指示に基づいて、付加領域ネットワーク30Aに紐づけられた色付きコイン1802のうち、移転元の利用者装置41Aが色付きコインの所有者を利用者装置42Aに設定する。
【0098】
これによって、トークンの移転に伴い現金通貨に対応するコインを移転させることができ、価値の担保を行うことができる。
【0099】
(トークンの移転処理例2)
次に、図20を参照して付加領域ネットワーク30Aの利用者装置42Aから、付加領域ネットワーク30Bの利用者装置42Bへトークンを移転する例について説明する。図20の例では、異なる利用者の利用者装置間でトークンを移転するものとして説明を行うが、同一の利用者の利用者装置が異なる付加領域ネットワーク30上でトークンの交換を行う両替においても同様である。
【0100】
利用者装置42Aは、付加領域ネットワーク30Aの利用者装置42Aから、付加領域ネットワーク30Bの利用者装置42Bへのトークンの移転を付加領域ネットワーク30Aに指示する(S2001)。リレー装置21Aは、利用者装置42Aからの移転指示を検出(S2002)すると、発行体装置11Aに、付加領域ネットワーク30Aから付加領域ネットワーク30Bへのコインの移転を指示する(S2003)。
【0101】
発行体装置11Aは、付加領域ネットワーク30Aに紐づけられた色付きコイン102のうち、移転数量分のトークンに対応するコインをホワイトコインに変換し(S2004)、変換したホワイトコインを発行体装置11Bに移転する(S2005)。また、発行体装置11Aは、発行体装置11Bに、移転数量分のトークンに対応するコインの所有者を利用者装置41Bに設定し、付加領域30Bに対応付けるように指示する。発行体装置11Bは、移転されたホワイトコインを付加領域ネットワーク30Bに対応付けるとともに、所有者を利用者装置41Bに設定する(S2006)。続いて、発行体装置11Aから発行体装置11Bへの指示を検出したリレー装置21Bは、付加領域ネットワーク30B上に、利用者装置42Aから42Bへの付加領域ネットワーク30Bに対応するトークンの移転を送信する。これによって、利用者装置42Bのウォレットにトークンを移転することができる。
【0102】
このように、リレー装置21は、共通領域ネットワーク10における移転を検出し、検出した移転に応じて付加領域ネットワーク30上でのトークンを移転させる。これによって、共通領域ネットワーク10上でのコインの移転を行うことで付加領域ネットワーク間でのトークンの移転が可能になる。
【0103】
なお、図20の例では、共通領域10では付加領域ネットワーク30A、30Bは異なる発行体装置11A、11Bに対応付けられているものとして説明した。しかしながら、付加領域ネットワーク30A、30Bは同一の発行体装置11Aに対応付けられてもよい。この場合には、発行体装置11Aは、付加領域ネットワーク30Aに対応付けられ、所有者が発行体装置11Aの色付きコインをホワイトコインに変換した後、変換したホワイトコインを付加領域ネットワーク30Bに対応付けることで、付加領域ネットワーク間のトークンの移転を行うことができる。
【0104】
本実施形態では、共通領域ネットワーク10と付加領域ネットワーク30とは、付加領域ネットワーク30Aで転々流通をさせ、その内容は付加領域ネットワーク30Aと共通領域ネットワーク10とでコイン102およびトークンの操作を同期もしくは非同期で連携させる。
【0105】
また、本実施形態によれば、共通領域ネットワークに発行される電子通貨は預金として整理する。付加領域では共通領域上の(実体としての)電子通貨を移転する為替取引を表象する証書としてトークンを発行する。電子通貨そのものを預金とするため、電子通貨を運用・消費することが可能となる。
【0106】
既存の法定通貨の仕組みに裏打ちされた信頼性の高い電子通貨を、旧来のレガシーシステムに極力頼ることなく、完結できる新しい決済プラットフォームを提供でき、プログラマビリティ等による商流とのインターオペラビリティの実現により、利便性の高いサービスを実現することができる。
【0107】
<その他の実施形態>
本実施形態では、トークンは、電子通貨によって価値が担保された電子通貨の一例である。しかしながら、トークンは、利用者からすると特定のサービスのために使われるポイントのように、インセンティブ付与を目的として扱われてもよい。
【0108】
また、上述の各実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。
【符号の説明】
【0109】
1:電子通貨管理システム、10:共通領域ネットワーク、30:付加領域ネットワーク、11:発行体装置、21:リレー装置、31:運用事業者装置、41:利用者装置、50:管理サーバ
【要約】      (修正有)
【課題】電子通貨の発行を希望する事業者が簡便に電子通貨を管理することができる電子通貨管理システムを提供する。
【解決手段】電子通貨管理システムは、共通領域ネットワーク10、発行体装置11A、11B、11C、リレー装置21A、21B、21C、付加領域ネットワーク30A、30B、30C、運用事業者装置31A、31B、31C、利用者装置41A、41B、41Cおよび42A、42B、42C及びに管理サーバ50と、を備える。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21