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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】痩身用外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20220615BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 31/221 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 36/287 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 36/31 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61Q 19/06 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/44
A61K31/221
A61K36/287
A61K36/31
A61K45/00
A61P3/04
A61P17/00
A61P43/00 121
A61Q19/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017190141
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019064946
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118382
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 央子
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(72)【発明者】
【氏名】北岡 侑
(72)【発明者】
【氏名】津田 智博
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 賢
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-064147(JP,A)
【文献】特開2000-016916(JP,A)
【文献】特表2006-522074(JP,A)
【文献】特開2007-204447(JP,A)
【文献】特開2004-359674(JP,A)
【文献】特開2004-269453(JP,A)
【文献】特開2007-230987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/9789
A61K 8/44
A61K 31/221
A61K 36/287
A61K 36/31
A61K 45/00
A61P 3/04
A61P 17/00
A61P 43/00
A61Q 19/06
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)クリサンテルムインジクム抽出物、(B)L-カルニチン及び/又はその塩並びに(C)レピジウムメイエニ抽出物を含有し、痩身のために用いられる外用組成物。
【請求項2】
体脂肪を減少させることにより、及び/又は体脂肪の蓄積を抑制することにより痩身する、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
脂肪細胞における脂肪滴を縮小すること、及び/又は脂肪細胞の数を減少することにより痩身する、請求項1又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
脂肪細胞が白色脂肪細胞である請求項3に記載の外用組成物。
【請求項5】
(A)クリサンテルムインジクム抽出物、(B)L-カルニチン及び/又はその塩並びに(C) レピジウムメイエニ抽出物を含有し、セルライトの改善のために用いられる外用組成物。
【請求項6】
(A)クリサンテルムインジクム抽出物、(B)L-カルニチン及び/又はその塩並びに(C) レピジウムメイエニ抽出物を含有する組成物を皮膚に適用する工程を含む痩身方法。
【請求項7】
体脂肪を減少させることにより、及び/又は体脂肪の蓄積を抑制することにより痩身する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
脂肪細胞における脂肪滴を縮小すること、及び/又は脂肪細胞の数を減少することにより痩身する、請求項又はに記載の方法。
【請求項9】
脂肪細胞が白色脂肪細胞である請求項に記載の方法。
【請求項10】
(A)クリサンテルムインジクム抽出物、(B)L-カルニチン及び/又はその塩並びに(C) レピジウムメイエニ抽出物を含有する組成物を皮膚に適用する工程を含むセルライトの改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、痩身又はセルライト改善のために用いる外用組成物、及び痩身又はセルライト改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、生活習慣病をはじめとする各種疾患のリスクファクターとなっているだけではなく、国の医療費の増大など経済的にも損失をもたらすことが知られている。肥満の大きな要因として、食事の欧米化によるエネルギーの過剰摂取や、運動不足などによるエネルギー消費の低下が挙げられる。肥満を予防するためには、有酸素運動や食事制限など現在の生活習慣を大きく変える必要がある。しかし、根付いた生活習慣を変えることは難しいため、肥満改善をサポートするために、特定保健用食品、機能性表示食品、サプリメント、化粧料などの開発が期待されている。
【0003】
肥満は、前駆細胞からの分化促進により脂肪細胞の数が増えることや、脂肪細胞が肥大することにより引き起こされる。脂肪細胞には、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞がある。褐色脂肪細胞は、身体の一部に限局して存在し、その数も少ない。褐色脂肪細胞は、小さな脂肪滴の形で中性脂肪、即ちトリグリセリドを蓄積していると共に、白色脂肪細胞から放出された脂肪酸を燃焼してエネルギーに変える働きがある。一方、白色脂肪細胞は、全身に分布してその数が多く、さらに中性脂肪を大きな脂肪滴の形で大量に蓄積している。従って、特に、白色脂肪細胞の増加や、脂肪滴の増大による細胞の肥大化を抑制することが、肥満の予防又は改善に繋がる。
【0004】
従来、化粧料による痩身方法として、血流改善やリンパの機能活性化によるむくみの改善、中性脂肪の分解促進、脂肪細胞への分化抑制など、様々なアプローチが試みられているが、何れも、満足できる痩身効果は得られていない。
【0005】
例えば、特許文献1は、クリサンテルムインジクム抽出物とマロニエ抽出物を配合した外用組成物が、in vitroで正常ヒト白色脂肪細胞に作用して、中性脂肪から脂肪酸を遊離させることを教えている。特許文献1は、クリサンテルムインジクム抽出物とマロニエ抽出物を組み合わせることにより、脂肪酸の遊離が相乗的に増大したことを開示しているが、実際に、白色脂肪細胞における中性脂肪の蓄積量を低下させたり、白色脂肪細胞の数を減少させたりできるかは不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4585227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、脂肪細胞における脂肪蓄積量を減少させることにより、実際に痩身効果を奏する、痩身用外用組成物を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ね、以下の知見を得た。
(i) (A)トリグリセリドの分解を促進する作用を有する成分、(B)トリグリセリドの分解により生成した脂肪酸を、ミトコンドリア内に運搬する作用ないしはミトコンドリア膜を透過させる作用を有する成分、及び(C)ミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進する作用を有する成分は、それぞれ単独では、脂肪細胞における脂肪の蓄積量に影響を与えないが、これら3成分を組み合わせることにより、脂肪細胞における脂肪の蓄積量を減少させる。
(ii) (B)成分、及び(C)成分は、トリグリセリドの分解活性を抑制する傾向にあるが、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を組み合わせることにより、上記の通り、脂肪細胞における脂肪の蓄積量を減少させる。
(iii) (A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む組成物を、ヒトの体脂肪が多い部位の皮膚に塗布することにより、これらの部位のサイズを低減し、痩身効果が得られる。
(iv) (A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む組成物を、被験者のセルライト症状を呈する皮膚に塗布することにより、皮膚表面の凹凸が低減し、セルライト症状が改善する。
【0009】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の痩身用外用組成物、セルライト改善用外用組成物、痩身方法、及びセルライト改善方法を提供する。
〔1〕 (A)トリグリセリドの分解を促進する作用を有する成分、(B)トリグリセリドの分解により生成した脂肪酸を、ミトコンドリア内に運搬する作用ないしはミトコンドリア膜を透過させる作用を有する成分、及び(C)ミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進する作用を有する成分を含有し、痩身のために用いられる外用組成物。
〔2〕 体脂肪を減少させることにより、及び/又は体脂肪の蓄積を抑制することにより痩身する、〔1〕に記載の外用組成物。
〔3〕 脂肪細胞における脂肪滴を縮小すること、及び/又は脂肪細胞の数を減少することにより痩身する、〔1〕又は〔2〕に記載の外用組成物。
〔4〕 脂肪細胞が白色脂肪細胞である〔3〕に記載の外用組成物。
〔5〕 (A)トリグリセリドの分解を促進する作用を有する成分、(B)トリグリセリドの分解により生成した脂肪酸を、ミトコンドリア内に運搬する作用ないしはミトコンドリア膜を透過させる作用を有する成分、及び(C)ミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進する作用を有する成分を含有し、セルライトの改善のために用いられる外用組成物。
〔6〕 (A)トリグリセリドの分解を促進する作用を有する成分がクリサンテルムインジクム抽出物である、〔1〕~〔5〕の何れかに記載の外用組成物
〔7〕 (B)トリグリセリドの分解により生成した脂肪酸を、ミトコンドリア内に運搬する作用ないしはミトコンドリア膜を透過させる作用を有する成分がL-カルニチン、その塩、又はその誘導体である、〔1〕~〔6〕の何れかに記載の外用組成物
〔8〕 (C)ミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進する作用を有する成分がレピジウムメイエニ抽出物である、〔1〕~〔7〕の何れかに記載の外用組成物
〔9〕 (A)トリグリセリドの分解を促進する作用を有する成分、(B)トリグリセリドの分解により生成した脂肪酸を、ミトコンドリア内に運搬する作用ないしはミトコンドリア膜を透過させる作用を有する成分、及び(C)ミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進する作用を有する成分を含有する組成物を皮膚に適用する工程を含む痩身方法。
〔10〕 体脂肪を減少させることにより、及び/又は体脂肪の蓄積を抑制することにより痩身する、〔9〕に記載の方法。
〔11〕 脂肪細胞における脂肪滴を縮小すること、及び/又は脂肪細胞の数を減少することにより痩身する、〔9〕又は〔10〕に記載の方法。
〔12〕 脂肪細胞が白色脂肪細胞である〔11〕に記載の方法。
〔13〕 (A)トリグリセリドの分解を促進する作用を有する成分、(B)トリグリセリドの分解により生成した脂肪酸を、ミトコンドリア内に運搬する作用ないしはミトコンドリア膜を透過させる作用を有する成分、及び(C)ミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進する作用を有する成分を含有する組成物を皮膚に適用する工程を含むセルライトの改善方法。
〔14〕 (A)トリグリセリドの分解を促進する作用を有する成分がクリサンテルムインジクム抽出物である、〔9〕~〔13〕の何れかに記載の方法。
〔15〕 (B)トリグリセリドの分解により生成した脂肪酸を、ミトコンドリア内に運搬する作用ないしはミトコンドリア膜を透過させる作用を有する成分がL-カルニチン、その塩、又はその誘導体である、〔9〕~〔14〕の何れかに記載の方法。
〔16〕 (C)ミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進する作用を有する成分がレピジウムメイエニ抽出物である、〔9〕~〔15〕の何れかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
従来、脂肪を分解するだけでは、十分に脂肪組織における中性脂肪の蓄積を低減させることができず、満足できる痩身効果が得られなかった。この点、本発明の外用組成物は、単に脂肪を分解するだけでなく、脂肪細胞における脂肪滴の大きさを縮小して脂肪細胞の肥大化を抑制し、また、脂肪細胞の数を減少させることにより、脂肪細胞における脂肪の蓄積量を減少させる。このため、ヒトにおいて実際に、体脂肪を減少させたり、体脂肪の蓄積を抑制したりすることにより、痩身効果を奏する。本発明の外用組成物は、皮膚に適用するだけの簡便な方法で痩身効果が得られる有用なものである。
【0011】
また、セルライトは、太もも背面、臀部、腰などの皮膚に凹凸が生じる症状であり、しばしば肥満に伴って生じる。セルライトの形成機序については、脂肪細胞の肥大化や、血液やリンパ液の滞留などの種々の説があるが、その形成機序は解明されていない。この点、本発明の外用組成物は、皮膚に適用することにより、皮膚表面の凹凸を低減させ、セルライトを改善する。
また、本発明の外用組成物を皮膚に適用することにより、むくみが改善する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ラナクリス、及びフィトソニックが、白色脂肪細胞において脂肪分解活性を促進することを示すグラフである。
図2】ラナクリス、及びフィトソニックが、白色脂肪細胞の生存に影響を及ぼさないことを示すグラフである。
図3】本発明の外用組成物が、白色脂肪細胞において脂肪分解活性を促進することを示すグラフである。
図4】本発明の外用組成物が、白色脂肪細胞における脂肪蓄積量を低減することを示すグラフである。
図5】本発明の外用組成物を被験者の太ももに4週間にわたり塗布した前後の凹凸(セルライト)の改善を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)外用組成物
本発明の外用組成物は、(A)トリグリセリドの分解を促進する作用を有する成分、(B)トリグリセリドの分解により生成した脂肪酸を、ミトコンドリア内に運搬する作用ないしはミトコンドリア膜を透過させる作用を有する成分、及び(C)ミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進する作用を有する成分を含有し、痩身のために用いられる外用組成物である。
【0014】
(A)成分
脂肪細胞に脂肪滴として蓄積されている脂肪は、中性脂肪、即ち、トリグリセリドである。ヒトを含む動物の中性脂肪は、様々な脂肪酸組成のトリグセリドの混合物である。
脂肪細胞において、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのカテコールアミン系ホルモンが細胞表面の受容体に結合すると、ホルモン感受性リパーゼとペリリピンがリン酸化により活性化される。リパーゼは、トリグリセリドをグリセロールと脂肪酸に分解する酵素である。また、ペリリピンは、脂肪滴表面に結合しているタンパク質であり、平常時にはホルモン感受性リパーゼが脂肪滴に作用するのを防ぐが、カテコールアミン系ホルモン刺激によりリン酸化されると、ホルモン感受性リパーゼの作用を促進する。また、脂肪滴表面には、CGI-58と称されるタンパク質がペリリピンと相互作用して存在しているが、カテコールアミン系ホルモン刺激によりペリリピンがリン酸化されると、CGI-58が脂肪滴から遊離し、脂肪細胞特異的トリグリセリドリパーゼを活性化する。脂肪細胞特異的トリグリセリドリパーゼはホルモン感受性リパーゼよりトリグリセリドに対して特に強く作用する。さらに、トリグリセリドが完全に3つの脂肪酸とグリセロールにまで分解されるには、モノアシルグリセロールリパーゼが段階的に作用することが必要である。
【0015】
トリグリセリドの分解を促進する作用を有する成分は、トリグリセリドが3つの脂肪酸とグリセロールにまで分解されるまでの何れの段階を促進するものであってもよい。
このような成分として、クリサンテルムインジクム抽出物、ニーム葉抽出物、レモングラス抽出物、アシタバ抽出物、褐藻抽出物(コンブ抽出物、ヒジキ抽出物、ヒバマタ抽出物、ワカメ抽出物など)、緑藻抽出物(アオサ抽出物、アオノリ抽出物など)、紅藻抽出物(テングサ抽出物、アサクサノリ抽出物、スサビノリ抽出物など)、ナツメ(大棗)果実抽出物、トチュウ(杜仲)抽出物、クロレラ抽出物、ユーグレナグラシリス抽出物、ツノゲシ葉抽出物、グロブラリアコルジホリアカルス培養抽出物、ハナショウガ抽出物、ミシマサイコ根抽出物、コエンチームA、カフェインなどが挙げられる。
また、上記作用を有する成分の混合物としては、ユーグレナグラシリスエキス、カフェイン、及びツノゲシ葉抽出物の混合物(フィトソニック(商品名);セダーマ社)、グロブラリアコルジホリアカルス培養抽出物、カフェイン、及びハナショウガ抽出物の混合物(インテスリム(商品名);セダーマ社)、ミシマサイコ根抽出物、カフェイン、及びコエンチームAの混合物(リポケア(商品名);セダーマ社)などが挙げられる。
中でも、トリグリセリドの分解促進作用が強い点で、クリサンテルムインジクム抽出物、ユーグレナグラシリスエキスとカフェインとツノゲシ葉抽出物の混合物(例えば、フィトソニック(セダーマ社))が好ましく、クリサンテルムインジクム抽出物がより好ましい。クリサンテルムインジクム抽出物を含有する製品として、ラナクリス(ルーカスマイヤー社)が挙げられる。
トリグリセリドの分解を促進する作用を有する成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
本発明の組成物中の(A)成分の含有量は、乾燥重量に換算して、組成物の全量に対して、0.000005重量%以上が好ましく、0.00001重量%以上がより好ましく、0.00005重量%以上がさらにより好ましい。また、1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましく、0.1重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、皮膚への適用により、十分に痩身効果、及びセルライト改善効果が得られる。
【0017】
(B)脂肪酸をミトコンドリア内に運搬又はミトコンドリア膜を透過させる作用を有する成分
トリグリセリドの分解により生じた脂肪酸は、アルブミンと結合して血中を運ばれ、身体の各組織の細胞内に取り込まれる。細胞内に取り込まれた脂肪酸は、ミトコンドリア内で酸化及び分解されてエネルギーが取り出される。脂肪酸の中でも中鎖脂肪酸は他成分を介さずミトコンドリア膜を透過することができるが、長鎖脂肪酸は単独ではミトコンドリア膜を透過できない。
【0018】
脂肪酸をミトコンドリア内に運搬させる作用又はミトコンドリア膜を透過させる作用を有する成分としては、L-カルニチン、その塩(酒石酸塩、フマル酸塩、塩酸塩など)、又はその誘導体(酢酸、パルミチン酸のような脂肪酸とのエステルなど)が挙げられる。中でも、L-カルニチンが好ましい。
脂肪酸をミトコンドリア内に運搬又はミトコンドリア膜を透過させる作用を有する成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
本発明の組成物中の(B)成分の含有量は、組成物の全量に対して、0.0001重量%以上が好ましく、0.001重量%以上がより好ましく、0.005重量%以上がさらにより好ましい。また、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、皮膚への適用により、十分に痩身効果、及びセルライト改善効果が得られる。
【0020】
(C)ミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進する作用を有する成分
上記の通り、細胞内に取り込まれた脂肪酸は、ミトコンドリア内でβ-酸化を受けてアセチルCoAとなり、さらにクエン酸回路で二酸化炭素にまで分解され、電子伝達系を経てエネルギーが取り出される。本発明において、ミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進する成分は、脂肪酸のβ-酸化、クエン酸回路、電子伝達系の何れの段階の反応を促進するものであってもよい。
このような成分として、レピジウムメイエニ(マカ)抽出物(特に、レピジウムメイエニの根又は葉の抽出物)、茶葉抽出物、高麗人参抽出物、アシタバ抽出物、リンゴ酸、ケトオクタデカジエン酸などが挙げられる。中でも、レピジウムメイエニ(マカ)抽出物が好ましい。
レピジウムメイエニ(マカ)抽出物を含有する製品として、マカライン(エクスパンサイエンス社)が挙げられる。
ミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進する成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0021】
本発明の組成物中の(C)成分の含有量は、乾燥重量に換算して、組成物の全量に対して、0.00001重量%以上が好ましく、0.0001重量%以上がより好ましく、0.0005重量%以上がさらにより好ましい。また、10重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましく、0.1重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、皮膚への適用により、十分に痩身効果、及びセルライト改善効果が得られる。
【0022】
(D)成分
本発明の組成物は、さらに、クダモノトケイソウ抽出物(特に、クダモノトケイソウ果実抽出物)を含むことができ、これにより、痩身効果、及び/又はセルライトの軽減効果が一層向上する。
クダモノトケイソウ抽出物の含有量は、乾燥重量に換算して、組成物の全量に対して、0.000001重量%以上が好ましく、0.00001重量%以上がより好ましく、0.00005重量%以上がさらにより好ましい。また、1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましく、0.1重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、皮膚への適用により、十分に痩身効果、及びセルライト改善効果が得られる。
【0023】
本発明において、クリサンテルムインジクムなどの植物の抽出物は、葉、茎、花、根、根茎などの何れの抽出物であっても良く、全草の抽出物であってもよい。
【0024】
抽出に用いる溶媒としては、水;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、炭酸アンモニウムのような無機塩の水溶液;リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス-塩酸緩衝液、炭酸緩衝液、ホウ酸緩衝液のような緩衝液;塩酸、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸のような無機酸の水溶液;酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、アスコルビン酸、フマル酸、リンゴ酸のような有機酸の水溶液;サポニン、レシチンのような界面活性剤の水溶液;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールのような低級アルコール;アセトン、エチルメチルケトンのようなケトン類などの親水性溶媒ないしは極性溶媒が挙げられる。
また、プロパン、ブタン、ヘキサン、シクロヘキサンのような炭化水素;グリセリン;ジエチルエーテルのようなエーテル;プロピレングリコールのようなグリコール;ジクロロメタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2-トリクロロエテンのようなハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸メチルのような酢酸エステルなどの疎水性溶媒も挙げられる。
溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
抽出温度は、適宜設定できるが、例えば4~130℃、中でも20~100℃とすることができる。また、室温で行うこともできる。
抽出物は、液状(流動状、粘液状などを含む)の状態で用いることもでき、或いは、乾燥して、固形状(半固形状、ゲル状などを含む)、例えば粉状にしたものを用いることもできる。
【0026】
その他の成分
本発明の組成物は、上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む成分を、化粧品、医薬部外品、又は医薬品に使用される基剤又は担体、及び必要に応じて添加剤や、その他の生理活性又は薬理活性成分と混合して、化粧品、医薬部外品、又は医薬品の外用組成物とすることができる。特に、化粧品であり得る。
【0027】
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、界面活性剤、分散剤、乳化剤、増粘剤、保存剤又は防腐剤、pH調整剤、安定化剤、キレート剤、紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤、刺激軽減剤、着色剤、香料などが挙げられる。
添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0028】
その他の生理活性又は薬理活性成分としては、例えば、抗酸化成分、老化防止成分、細胞賦活化成分、抗炎症成分、美白成分、角質柔軟成分、細胞賦活化成分、ビタミン類、血行促進成分、保湿成分、DNAの損傷の予防及び/又は修復作用を有する成分、洗浄成分、収斂成分などが挙げられる。
その他の生理活性又は薬理活性成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、その他の生理活性又は薬理活性成分は、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0029】
基剤又は担体
基剤又は担体としては、油性基剤、水性基剤が挙げられる。
油性基剤としては、流動パラフィン、ワセリン、ゲル化炭化水素(プラスチベースなど)、オゾケライト、α-オレフィンオリゴマー、及び軽質流動パラフィンのような炭化水素;メチルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、架橋型アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性分岐シリコーン、ポリグリセリン変性分岐シリコーン、アクリルシリコン、フェニル変性シリコーン、及びシリコーンレジンのようなシリコーン油;セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、及びベヘニルアルコールのような高級アルコール;コレステロール、フィトステロール、及びヒドロキシステアリン酸フィトステリルのようなステロール類;シアバター、カルバナロウ、及びキャンデリラロウのような植物脂;ラノリン、オレンジラフィー油、スクワラン、馬油、鯨ロウ、及びミツロウのような動物油脂;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化グアガム、及びアセチル化ヒアルロン酸のような天然高分子誘導体;ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、及びアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体のような合成高分子;カラギーナン、アルギン酸、セルロース、グアーガム、クインスシード、デキストラン、ジェランガム、及びヒアルロン酸のような天然高分子;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルのようなエステル類;デキストリン、及びマルトデキストリンのような多糖類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノプロピルエーテルのようなグリコールエーテルなどが挙げられる。
また、水性基剤としては、水、緩衝液の他に、エタノール、及びイソプロパノールのような低級アルコール;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、ジグリセリン、及びジプロピレングリコールのような多価アルコールなどが挙げられる。
基材又は担体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
本発明の組成物の製剤形態は特に限定されず、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、パウダー剤、パップ剤、不織布等のシートに薬液を含浸させたシート剤などが挙げられる。中でも、皮膚に塗り伸ばし易い点で、乳剤、クリーム剤、ゲル剤が好ましい。
乳剤、クリーム剤、乳剤性軟膏剤などの乳化状態の剤型である場合は、水中油型又は油中水型の何れでも良いが、使用感が良い点で、水中油型が好ましい。
【0031】
用途
本発明の外用組成物は、痩身のために使用することができる。
また、本発明の外用組成物は、体脂肪を減少するため、体脂肪の蓄積を予防、抑制、若しくは低減するため、脂肪細胞における脂肪の蓄積を予防、抑制、若しくは低減するため、脂肪細胞の肥大化を予防、若しくは抑制するため、脂肪細胞を小さくするため、脂肪細胞の数を減少するため、又は脂肪細胞中の脂肪滴を縮小するために使用することができる。
また、本発明の外用組成物は、セルライトを改善、緩和、若しくは低減するためや、セルライトの生成を予防するために使用することができる。
また、本発明の外用組成物を用いれば、例えば、体脂肪を減少すること、体脂肪の蓄積を予防、抑制、若しくは低減すること、脂肪細胞における脂肪の蓄積を予防、抑制、若しくは低減すること、脂肪細胞の肥大化を予防、若しくは抑制すること、脂肪細胞を小さくすること、脂肪細胞の数を減少すること、脂肪細胞中の脂肪滴を縮小すること、セルライトを改善、緩和、若しくは低減すること、又はセルライトの生成を抑制することにより、痩身することができる。
ここでの脂肪細胞は、特に白色脂肪細胞とすることができる。
【0032】
使用方法
本発明の外用組成物は、例えば、1回0.1~20gを、1日1~3回、皮膚に適用することができる。適用期間は、効果が表れるまでとすればよいが、例えば、1~24週とすることができる。
適用方法は、剤型により異なり、塗布、噴霧、貼付などとすることができる。
本発明の外用組成物は、特に、腹部、太もも、ふくらはぎ、足首、二の腕、顔、首などの、体脂肪がつき易い部位や体脂肪が多い部位の皮膚に適用することができる。
【0033】
痩身方法・セルライトの改善方法
本発明は、(A)トリグリセリドの分解を促進する作用を有する成分、(B)トリグリセリドの分解により生成した脂肪酸を、ミトコンドリア内に運搬する作用ないしはミトコンドリア膜を透過させる作用を有する成分、及び(C)ミトコンドリア内での脂肪酸の燃焼を促進する作用を有する成分を含有する組成物(本発明の外用組成物)を皮膚に適用する工程を含む痩身方法を包含する。
この痩身方法は、例えば、体脂肪を減少すること、体脂肪の蓄積を予防、抑制、若しくは低減すること、脂肪細胞における脂肪の蓄積を予防、抑制、若しくは低減すること、脂肪細胞の肥大化を予防、若しくは抑制すること、脂肪細胞を小さくすること、脂肪細胞の数を減少すること、脂肪細胞中の脂肪滴を縮小すること、セルライトを改善、緩和、若しくは低減すること、又はセルライトの生成を抑制することにより、痩身する方法であり得る。
また、本発明は、本発明の外用組成物を皮膚に適用する工程を含む、体脂肪減少方法、体脂肪の蓄積の予防、抑制、若しくは低減方法、脂肪細胞における脂肪の蓄積の予防、抑制、若しくは低減方法、脂肪細胞の肥大化の予防、若しくは抑制方法、脂肪細胞の縮小方法、脂肪細胞数の減少方法、又は脂肪細胞中の脂肪滴の縮小方法を包含する。
また、本発明は、本発明の外用組成物を皮膚に適用する工程を含む、セルライトの改善、緩和、若しくは低減方法や、セルライトの生成の予防方法を包含する。
【0034】
本発明の各方法は、治療方法、及び医療方法としての予防方法を含まない。特に、肥満症の治療方法、及び医療方法としての肥満症の予防方法を含まない。
本発明方法において、脂肪細胞は、特に白色脂肪細胞とすることができる。
本発明方法における用量、用法、適用箇所などは、本発明の外用組成物について説明した通りである。
【実施例
【0035】
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
各実施例で使用した脂肪細胞様細胞は白色脂肪細胞の形態及び機能を有することから、各実施例の結果は白色脂肪細胞に対する効果を示す。
【0036】
(1)脂肪分解活性の評価(No.1)
マウス胎児線維芽細胞株 3T3-L1(DSファーマバイオメディカル社)を10%ウシ胎仔血清(FBS)含有DMEM培地でコンフルエントになるまで培養し、Adipolysis Assay Kit(Cayman Chemical社)に付属するイソブチルメチルキサンチン、インスリン、デキサメタゾンをメーカー既定の濃度で添加し、脂肪細胞様細胞へと分化誘導した。3日間誘導後、インスリンのみ添加した培地に換え、さらに1週間培養し、8割以上の細胞が脂肪滴を蓄えていることを確認した。その後、被験薬剤を添加した培地を加えて3日間培養し、培養上清中の遊離グリセロール濃度をAdipolysis Assay Kitを用いてメーカー既定の方法に従い測定した。
【0037】
被験薬剤としては、クリサンテルムインジクム抽出物を含有する混合物として、最終濃度0.01 v/v%、0.1v/v%、及び1.0v/v%のラナクリス、ユーグレナグラシリス抽出物、カフェイン、及びツノゲシ葉抽出物の混合物として、最終濃度0.01 v/v%、0.1v/v%、及び1.0v/v%のフィトソニックを用いた。また、ポジティブコントロールとして、Adipolysis Assay Kitに付属するイソプロテレノールをメーカー既定の濃度で用いた。また、薬剤を添加しない10%FBS含有DMEM培地を用いたものをコントロールとした。各群3例ずつ行った(n=3)。
【0038】
培養上清中のグリセロール濃度を脂肪分解活性と見なし、コントロール群の平均グリセロール濃度を1とした場合の各薬剤群の平均グリセロール濃度の比率(脂肪分解活性の比率)を求めた。
結果を図1に示す。ラナクリス、及びフィトソニックは、脂肪細胞様細胞のトリグリセリドの分解活性を促進する作用を示し、その作用は用量依存的であった。
【0039】
また、各薬剤を含む10%FBS含有DMEM培地で3日間培養した後の脂肪細胞様細胞へと分化させた3T3-L1細胞の生細胞数を、Cell Counting Kit-8(DOJINDO社)を用いて測定した。さらに、コントロールの生細胞数を1としたときの、各薬剤を添加した場合の生細胞数の比率を求めた。
結果を図2に示す。ラナクリス、及びフィトソニックは、実質的に生細胞数を減少させなかった。従って、ラナクリス、又はフィトソニックの添加による遊離脂肪酸量は、細胞の死滅により上清中に遊離された脂肪酸を定量したものではなく、生存している細胞中の脂肪の分解により生じた遊離脂肪酸を定量したものであることが分かる。
【0040】
(2)脂肪分解活性の評価(No.2)
「(1)脂肪分解活性の評価No.1」と同様に、マウス胎児線維芽細胞株 3T3-L1を10%FBS含有DMEM培地でコンフルエントになるまで培養し、Adipolysis Assay Kitに付属するイソブチルメチルキサンチン、インスリン、デキサメタゾンをメーカー既定の濃度で添加し、脂肪細胞様細胞へと分化誘導した。3日間誘導後、インスリンのみ添加した培地に換え、さらに1週間培養し、8割以上の細胞が脂肪滴を蓄えていることを確認した。その後、表1に示す最終濃度となるように各薬剤を添加した10%FBS含有DMEM培地を添加して3日間培養し、培養上清中の遊離グリセロール濃度をAdipolysis Assay Kitを用いてメーカー既定の方法に従い測定した。
ポジティブコントロールとして、Adipolysis Assay Kitに付属するイソプロテレノールをメーカー既定の濃度で用いた。また、薬剤を添加しない10%FBS含有DMEM培地を用いたものをコントロールとした。各群3例ずつ行った(n=3)。
【0041】
【表1】
【0042】
各組成物添加時の脂肪分解活性の比率を求めた。
結果を図3に示す。ラナクリスは、白色脂肪細胞による脂肪分解活性を促進した。一方、マカライン、及びL-カルニチンは、脂肪分解活性を抑制する傾向にあったが、ラナクリスと組み合わせることにより、コントロールよりも白色脂肪細胞における脂肪分解活性が向上した。
【0043】
(3)脂肪蓄積量の評価
「(1)脂肪分解活性の評価No.1」と同様に、マウス胎児線維芽細胞株 3T3-L1を10%FBS含有DMEM培地でコンフルエントになるまで培養し、Adipolysis Assay Kitに付属するイソブチルメチルキサンチン、インスリン、デキサメタゾンをメーカー既定の濃度で添加し、脂肪細胞様細胞へと分化誘導した。3日間誘導後、インスリンのみ添加した培地に換え、さらに1週間培養し、8割以上の細胞が脂肪滴を蓄えていることを確認した。その後、表1に示す最終濃度となるように各薬剤を添加した10%FBS含有DMEM培地を添加して3日間培養した。ポジティブコントロールとして、Adipolysis Assay Kitに付属するイソプロテレノールをメーカー既定の濃度で用いた。また、薬剤を添加しない10%FBS含有DMEM培地を用いたものをコントロールとした。各群3例ずつ行った(n=3)。
3日間薬剤処理した細胞を4%パラホルムアルデヒド液にて固定し、脂肪滴をオイルレッドOで染色、十分水洗した後、イソプロパノールにて色素を抽出した。この抽出液の吸光度(λ=510 nm)を測定し、脂肪蓄積量を示す値とした。さらに、コントロールの平均脂肪蓄積量を1としたときの、各薬剤を添加した場合の平均脂肪蓄積量の比率(脂肪蓄積量の比率)を求めた。
【0044】
結果を図4に示す。ラナクリス、L-カルニチン、及びマカラインは、それぞれ単独では、白色脂肪細胞中の脂肪蓄積量を減少させなかった。これに対して、ラナクリス、L-カルニチン、及びマカラインを組み合わせた場合、白色脂肪細胞中の脂肪蓄積量を有意に減少させた。
【0045】
(4)痩身効果の評価
体脂肪の蓄積及びセルライトが見られる13名の女性の被験者が、クリサンテルムインジクム抽出物、L-カルニチン、及びレピジウムメイエニ抽出物を含有するクリームを、身体の1か所につき3.0g、1日1回、4週間塗布した。塗布した部位は、腹部、太もも、ふくらはぎ、及び足首である。
塗布前及び4週間塗布後に、腹部、太もも、ふくらはぎ、及び足首の周囲サイズを測定した。周囲サイズの減少が見られた場合を「改善」とし、改善した被験者の人数の比率を改善率とした。また、塗布前及び4週間塗布後に、体組成計(BC-118D、タニタ社)を用いて、体幹及び両足の体脂肪率を測定した。また、塗布前及び4週間塗布後に、体重を測定した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
クリームの塗布により、体脂肪が明らかに減少し、その結果、塗布部位がサイズダウンした。また、被験者のほとんどにこのような痩身効果が表れた。
【0047】
また、クリーム塗布部分のボディサイズ、ボディライン、セルライト、たるみ、むくみ、皮膚の乾燥が改善したか否かについて、各被験者からアンケートを取った。その結果、ボディサイズが改善したと答えた被験者は82%、ボディラインが改善したと答えた被験者は92%、セルライトが改善したと答えた被験者は80%、たるみが改善したと答えた被験者は83%、むくみが改善したと答えた被験者は100%、皮膚の乾燥が改善したと答えた被験者は92%であった。
【0048】
クリーム塗布前及び4週間塗布後に、3名の被験者(被験者No.3、No.7、No.12)の太ももをANTERA3D(ミラベックス社)を用いて撮影し、凹部分又は凸部分が濃色に着色するように、ANTERA3D解析ソフトを用いて画像処理した。処理画像を図5に示す。クリームを4週間塗布することにより濃緑色の凹部分又は凸部分が明らかに減少した。
【0049】
また、撮影した画像の算術平均粗さRaをANTERA3D解析ソフトを用いて求めたところ、クリームを4週間塗布することにより、被験者No.3は9.86%から7.22%に減少し、被験者No.7は15.806%から8.625%に減少し、被験者No.12は11.484%から10.769%に減少した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の外用組成物は、脂肪分解作用を有するだけでなく、脂肪細胞における脂肪の蓄積量を低減する。このため、皮膚に塗布することにより、実際に痩身効果が得られる。従って、本発明の外用組成物は、実用的な商品価値が高い。

図1
図2
図3
図4
図5