(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20220615BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/62 Z
(21)【出願番号】P 2018075487
(22)【出願日】2018-04-10
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】郭 裕之
(72)【発明者】
【氏名】沼尻 浩行
(72)【発明者】
【氏名】藤田 郷詩
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴子
(72)【発明者】
【氏名】古和 宗高
(72)【発明者】
【氏名】草野 惇至
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 吉一
(72)【発明者】
【氏名】東 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良祐
(72)【発明者】
【氏名】植竹 健斗
(72)【発明者】
【氏名】大塚 泰治
(72)【発明者】
【氏名】金田 悟
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0184634(US,A1)
【文献】特開2017-196383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/00-7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体と、
前記シート本体に設けられ、前記シート本体に座っている着座者の動作を検出するための測定値を取得するセンサと、
前記センサから前記測定値を取得可能に前記センサと接続された制御部とを備えるシートであって、
前記制御部は、
前記シート本体外の操作対象となる操作対象機器と通信可能に接続され、
前記測定値に基づいて、前記操作対象機器を操作するための操作信号を出力可能であり、
前記操作対象機器と通信可能な状態になっている場合に、前記操作対象機器以外の報知機器に前記操作対象機器を使用中であることを報知するための報知信号を出力するように構成されたことを特徴とするシート。
【請求項2】
前記シート本体は、乗物内に設けられ、
前記報知機器は、前記操作対象機器を使用中であることを前記乗物外に報知するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記報知機器は、前記乗物の外表面、または、前記乗物内における前記乗物の外部から認識可能な位置に配置された表示器であることを特徴とする請求項2に記載のシート。
【請求項4】
前記報知機器は、前記乗物の照明部品であり、
前記制御部は、前記報知信号として、前記照明部品を点灯または点滅させる信号を出力することを特徴とする請求項3に記載のシート。
【請求項5】
前記照明部品は、前記乗物のドアの上縁部に配置されたことを特徴とする請求項4に記載のシート。
【請求項6】
前記報知機器は、電光掲示板であることを特徴とする請求項3に記載のシート。
【請求項7】
前記報知機器は、前記乗物の屋根の上に設置された表示灯であることを特徴とする請求項3に記載のシート。
【請求項8】
前記報知機器は、ネットワークを介して複数のユーザの端末と接続されるとともに、受信した情報を前記複数のユーザ間で共有するために、複数の前記端末に送信する情報共有サーバであることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項9】
前記制御部は、
前記シート本体または前記操作対象機器から位置情報を取得可能であり、
前記情報共有サーバに、前記報知信号に前記位置情報を含めて出力することを特徴とする請求項8に記載のシート。
【請求項10】
前記報知機器は、前記シート本体に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシート。
【請求項11】
前記センサは、前記シート本体に着座する着座者に対向する座面の状態を検知可能に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のシート。
【請求項12】
前記センサは、前記シート本体に着座する着座者からの圧力値を取得可能であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者の動作を検出するためのセンサを有するシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者のシートに圧力センサ等を搭載して、着座者の着座姿勢を推定する装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の装置は、運転者の着座姿勢を評価して提示するだけであるので、あまり有効に利用できないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、シートの新たな価値を提案するべく、シート上の動作により操作対象機器を操作することができるとともに、この機能を使用中であることを他の人に知らせることが可能なシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決する本発明は、シート本体と、シート本体に設けられ、シート本体に座っている着座者の動作を検出するための測定値を取得するセンサと、センサから測定値を取得可能にセンサと接続された制御部とを備えるシートである。
制御部は、シート本体外の操作対象となる操作対象機器と通信可能に接続され、測定値に基づいて、操作対象機器を操作するための操作信号を出力可能であり、操作対象機器と通信可能な状態になっている場合に、操作対象機器以外の報知機器に操作対象機器を使用中であることを報知するための報知信号を出力するように構成される。
【0007】
このような構成によれば、制御部が、センサから取得された測定値を、操作対象機器を操作するための信号として操作対象機器に出力するので、シートに座った着座者は、シート本体上で、例えば、上体や脚を動かすなどの動作をすることで、操作対象機器を操作することができる。
このため、従来であれば、操作対象機器を操作する場合に、操作対象機器や、その操作対象機器のコントローラを手で操作しなければならなかったところを、シート上の動作によって行うことが可能となる。例えば、手を使いたくない場合や、手を使えない身障者などであっても、体の一部を動かしたり、一部の筋肉に力を入れたりするなどして操作対象機器を操作することも可能となる。
そして、報知機器に、操作対象機器を使用中であることを報知するための報知信号を出力することができるので、他の人に、操作対象機器を使用中であることを知らせることができる。
【0008】
前記したシートにおいて、シート本体は、乗物内に設けられていてもよい。そして、報知機器は、操作対象機器を使用中であることを乗物外に報知するように構成されていてもよい。
【0009】
このような構成によれば、着座者は、シートを使用していることを、乗物外の人と共有することができる。
【0010】
この場合において、報知機器は、乗物の外表面、または、乗物内における乗物の外部から認識可能な位置に配置された表示器であってもよい。
【0011】
報知機器は、乗物の照明部品であってもよい。この場合、制御部は、報知信号として、照明部品を点灯または点滅させる信号を出力することができる。
【0012】
また、照明部品は、乗物のドアの上縁部に配置されていてもよい。
【0013】
報知機器は、電光掲示板であってもよい。また、報知機器は、乗物の屋根の上に設置された表示灯であってもよい。
【0014】
電光掲示板または屋根の上の表示灯を使用することで、操作対象機器を使用中であることを分かりやすく外部に表示することができる。
【0015】
報知機器は、ネットワークを介して複数のユーザの端末と接続されるとともに、受信した情報を複数のユーザ間で共有するために、複数の端末に送信する情報共有サーバであってもよい。
【0016】
このような構成によれば、ネットワークを介して、複数の人と、操作対象機器を使用中であることを共有することができる。
【0017】
この場合に、制御部は、シート本体または操作対象機器から位置情報を取得可能であり、情報共有サーバに、報知信号に位置情報を含めて出力することができる。
【0018】
このような構成によれば、サーバが、操作対象機器を使用中であることを、位置情報を含めてユーザの端末に送信することで、ナビゲーションシステムや、地図アプリ上で着座者の位置を示すことができ、よりリアルタイムな情報を共有することができる。
【0019】
前記したシートにおいて、報知機器は、シート本体に設けられていてもよい。
【0020】
前記したシートにおいて、センサは、シート本体に着座する着座者に対向する座面の状態を検知可能に配置されていることが望ましい。また、センサは、シート本体に着座する着座者からの圧力値を取得可能であることが望ましい。
【0021】
この構成によれば、着座者が座面の状態を変えることで操作対象機器の操作が可能であるので、操作対象機器の操作が容易である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シートに座った着座者は、シート上の動作によって操作対象機器を操作することができる。そして、報知機器に、操作対象機器を使用中であることを報知するための報知信号を出力することができるので、他の人に、操作対象機器を使用中であることを知らせることができる。
【0023】
また、シート本体が、乗物内に設けられ、報知機器が、操作対象機器を使用中であることを乗物外に報知することで、着座者は、シートを使用していることを、乗物外の人と共有することができる。
【0024】
また、乗物外への報知に、電光掲示板または屋根の上の表示灯を使用することで、操作対象機器を使用中であることを分かりやすく外部に表示することができる。
【0025】
また、報知機器が情報共有サーバであることで、ネットワークを介して、複数の人と、操作対象機器を使用中であることを共有することができる。
【0026】
さらに、情報共有サーバに、報知信号に位置情報を含めて出力することで、より現実感のある情報を共有することができる。
【0027】
また、センサが、シート本体に着座する着座者に対向する座面の状態を検知可能に配置されていることで、着座者が座面の状態を変えることで操作対象機器の操作が可能であるので、操作対象機器の操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態に係る乗物用シートを使ったシステムの全体構成を説明する図である。
【
図2】報知機器が設けられた車両の側面図(a)と、車両後方から見た図(b)である。
【
図3】ドアトリムに設けたドア照明を車内側から見た図である。
【
図5】センサの配置を説明する図であり、(a)はシートバックを前から見た図、(b)はシートクッションを上から見た図である。
【
図6】センサの配置を説明する、シートの断面図である。
【
図7】乗物用シートおよびシステムの構成を説明するブロック図である。
【
図8】キャリブレーション時に取得した圧力の変化を示すグラフである。
【
図11】制御装置の処理の一例を示すフローチャートであり、ゲームの参加の処理部分である。
【
図12】制御装置の処理の一例を示すフローチャートであり、キャリブレーション処理部分である。
【
図13】制御装置の処理の一例を示すフローチャートであり、レース処理部分である。
【
図14】アプリの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】ゲーム進行処理のキャリブレーション処理部分である。
【
図19】100m走ゲームのスタート画面の一例である。
【
図21】100m走ゲームのゴール時の画面の一例である。
【
図22】100m走ゲームの結果画面の一例である。
【
図23】報知機器の他の例を示す、車両を後方から見た図である。
【
図24】報知機器の他の例を示す、車両を後方から見た図である。
【
図25】報知機器が情報共有サーバである場合のシステム構成を説明する図である。
【
図26】SNSのユーザのスマートフォンの画面の一例である。
【
図27】スタジアム、アリーナのシートに本発明を適用した場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の乗物用シートSは、シートの一例であり、例えば、車両CRに設置される車両用シートとして構成される。乗物用シートSは、シート本体S0と制御装置100とからなる。車両CRには、例えば、2つの前席と2つの後席の4つのシートに乗物用シートSが設けられている。そして、車両CRでは、この4つの乗物用シートSの間で情報を統合し、これらを連携して動作させるとともに、操作対象機器の一例であるスマートフォンSPと通信を行う制御部の一例としての制御装置100が設けられている。
このように車両CRには、制御装置100と、複数のシート本体S0と、スマートフォンSPとによって、乗物用シートSのシステムSYSが構成されている。なお、各着座者PのスマートフォンSPと、各シート本体S0とは、予め、制御装置100を介した通信により対応づけられているものとする。
【0030】
本実施形態の乗物用シートSは、操作対象機器であるスマートフォンSP上で、100m走のゲームを提供するものとする。スマートフォンSPはディスプレイDSP(
図4参照)を含み、制御装置100は、シート本体S0上で、左右の脚を交互に上下させることで、ディスプレイDSP上に表示されたゲーム内のキャラクタを走らせる操作をする信号を出力する。
【0031】
制御装置100は、スマートフォンSP以外の報知機器にスマートフォンSPを使用中であることを報知するための報知信号を出力することが可能に構成されている。車両CRには、報知機器の一例として、ドア照明11と、電光掲示板12とを備えている。ドア照明11および電光掲示板12は、制御装置100と有線または無線により接続されている。
【0032】
ドア照明11は、照明部品および表示器の一例であり、例えば、長細いLED(Light Emitting Diode)照明からなる。ドア照明11は、
図2(a)に示すように、各サイドドア21の、サイドウィンドウ22との境目に配置されている。ドア照明11は、
図3に示すように、サイドドア21の内装を構成するドアトリム21Aの上縁部に設けられている。すなわち、ドア照明11は、車両CRの外部から見ることができるとともに、車両CRの内部からも見ることができる。
電光掲示板12は、
図1および
図2(b)に示すように、車両CR内における後部座席の後ろで、リアウィンドウ23を通して車両CRの外部から認識可能な位置に配置されている。電光掲示板は、表示器の一例である。
【0033】
図4に示すように、シート本体S0は、シートクッションS1およびシートバックS2を有する。シートクッションS1とシートバックS2には、表皮の下に複数の圧力センサPS1~PS6が設けられている。圧力センサPS1~PS6は、シート本体S0に座っている着座者Pの動作を検出するための測定値を取得するセンサである。圧力センサPS1~PS6は、シート本体S0に着座する着座者Pに対向する座面の状態を検知可能に配置され、シート本体S0に座っている着座者Pからの圧力値を取得する。制御装置100は、各圧力センサPS1~PS6から、圧力値を取得可能に圧力センサPS1~PS6と接続されている。
【0034】
各圧力センサPS1~PS6は、乗物用シートSの左右の中心に対して左右対称に1対ずつ設けられている。
具体的には、
図5(b)にも示すようにシートクッションS1には、圧力センサPS1~PS3が設けられている。
【0035】
圧力センサPS1は、着座者Pの坐骨の最下部に対応する位置に設けられている。この位置では、着座者Pの荷重が最も大きくかかる。圧力センサPS1は、例えば、乗物用シートSの左右の中心Cから、左右に60~70mm、例えば、65mm離れた位置に配置することができる。
【0036】
圧力センサPS2は、圧力センサPS1の少し前に配置されており、例えば、圧力センサPS1よりも前方に50~60mm、例えば、55mm離れた位置で、中心Cから左右に65~75mm、例えば、70mm離れた位置に配置することができる。圧力センサPS1および圧力センサPS2は、シートクッションS1における着座者Pの臀部に対応する位置に配置された第1クッションセンサの一例である。第1クッションセンサは、少なくとも1つの右のクッションセンサ(圧力センサPS1,PS2)と、少なくとも1つの左のクッションセンサ(圧力センサPS1,PS2)とを含む。
【0037】
圧力センサPS1および圧力センサPS2は、いずれも、着座者Pの臀部からの圧力を測定するためのものであり、いずれか一方のみが設けられていてもよい。圧力センサPS1および圧力センサPS2を合わせて、第1クッションセンサSC1とする。
【0038】
圧力センサPS3は、圧力センサPS1および圧力センサPS2から前方に大きく離れて配置されている。圧力センサPS3は、シートクッションS1における第1クッションセンサSC1よりも前に位置する第2クッションセンサの一例である。圧力センサPS3を第2クッションセンサSC2とする。
【0039】
圧力センサPS3は、着座者Pの大腿の下に位置し、着座者Pの大腿からの圧力値を測定可能である。圧力センサPS3は、例えば、圧力センサPS2よりも110~130mm、例えば、120mm前(圧力センサPS1よりも175mm前)で、中心Cから左右に65~75mm、例えば、70mm離れた位置に配置することができる。
【0040】
図6に示すように、第2クッションセンサSC2は、シートバックS2の座面S21から、シートクッションS1の座面S11に沿って280mm前方の位置E1よりも前に位置することが望ましい。なお、第1クッションセンサSC1は、位置E1よりも後ろに位置する。ここでの位置E1は、シートクッションS1の座面S11に、L字形の曲尺M1の一方の定規M11を沿わせ、他方の定規M12をシートバックS2の座面S21に当てたときの、一方の定規M11の寸法で測定することとする。シートバックS2の形状(例えば、ランバーサポート)を調整できる場合には、いずれかの形状において、この要件を満たしていればよい。第2クッションセンサSC2をこのような位置に配置することで、第2クッションセンサSC2により、着座者Pの大腿の上下の動きを良好に検出することができる。
【0041】
図4および
図5(a)に示すように、シートバックS2には、圧力センサPS4~PS6が設けられている。圧力センサPS4は、着座者Pの腰の後ろに対応する位置に設けられている。圧力センサPS4は、例えば、乗物用シートSの左右の中心Cから、左右に45~55mm、例えば、50mm離れた位置に配置することができる。
【0042】
圧力センサPS5は、圧力センサPS4の少し上に配置されており、例えば、圧力センサPS4よりも上方に70~80mm、例えば、75mm離れた位置で、中心Cから左右に85~95mm、例えば、90mm離れた位置に配置することができる。圧力センサPS4および圧力センサPS5は、シートバックS2における下部に配置された第1バックセンサである。第1バックセンサは、少なくとも1つの右のバックセンサ(圧力センサPS4,PS5)と、少なくとも1つの左のバックセンサ(圧力センサPS4,PS5)とを含む。
【0043】
圧力センサPS4および圧力センサPS5は、いずれも、着座者Pの腰からの圧力を測定するためのものであり、いずれか一方のみが設けられていてもよい。圧力センサPS4および圧力センサPS5を合わせて、第1バックセンサSB1とする。
【0044】
圧力センサPS6は、圧力センサPS4および圧力センサPS5から上方に大きく離れて配置されている。圧力センサPS6は、シートバックS2における第1バックセンサSB1よりも上に配置された第2バックセンサである。圧力センサPS6を第2バックセンサSB2とする。
【0045】
圧力センサPS6は、着座者Pの背中の上部に対応して位置し、着座者Pの背中の上部からの圧力値を測定可能である。圧力センサPS6は、例えば、圧力センサPS5よりも190~210mm、例えば、200mm上(圧力センサPS1よりも275mm上)で、中心Cから左右に95~105mm、例えば、100mm離れた位置に配置することができる。
【0046】
図6に示すように、第2バックセンサSB2は、シートクッションS1の座面S11から、シートバックS2の座面S21に沿って300mm上方の位置E2よりも上に位置することが望ましい。なお、第1バックセンサSB1は、位置E2よりも下に位置する。ここでの位置E2は、シートバックS2の座面S21に、L字形の曲尺M2の一方の定規M21を沿わせ、他方の定規M22をシートクッションS1の座面S11に当てたときの、一方の定規M21の寸法で測定することとする。シートバックS2の形状(例えば、ランバーサポート)を調整できる場合には、いずれかの形状において、この要件を満たしていればよい。第2バックセンサSB2をこのような位置に配置することで、第2バックセンサSB2により、着座者Pの肩からの圧力を検出することができる。
【0047】
なお、以下の説明においては、圧力センサPS1~PS6で取得した圧力値を、それぞれP1~P6とし、右、左の圧力値を、それぞれ、P1R、P1Lのように、R,Lの添え字で示す。なお、圧力センサPS1~PS6は、例えば、外部からの圧力によって電気抵抗が変化する素子であり、圧力値が大きい程、検出信号の電圧が高くなる(もしくは低くなる)。そのため、圧力値の大小は、実際には、電圧値の大小によって比較するが、本明細書においては、理解の容易のため、圧力値の大小で判定する形で説明する。
【0048】
図7に示すように、制御装置100は、測定値取得部110と、処理部120と、通信部130と、記憶部190とを有している。また、スマートフォンSPは、ゲーム処理部210と記憶部290とを有している。制御装置100およびスマートフォンSPは、図示しないCPU、ROM、RAM、書換可能な不揮発性メモリ等を有し、予め記憶されたプログラムを実行することで各機能部が実現されている。
【0049】
制御装置100には、ブルートゥース(登録商標)またはWi-Fi(登録商標)などの近距離無線通信を可能にする近距離通信機3Aが接続されている。制御装置100は、通信部130および近距離通信機3Aを介してスマートフォンSPと通信可能であり、スマートフォンSPにインストールされたアプリと連携してスマートフォンSPに所定の画面や音声を提供するとともに、スマートフォンSPで入力されたデータを取得することができるようになっている。
【0050】
測定値取得部110は、各圧力センサPS1~PS6から、一定の制御サイクルごとに圧力の測定値を取得する機能を有する。測定値取得部110が取得した測定値は、記憶部190に記憶され、処理部120で利用される。なお、記憶部190は、計算、処理等に必要なデータを適宜記憶するために使用される。
【0051】
処理部120は、スマートフォンSPと通信し、スマートフォンSPで提供される100m走ゲームのアプリを操作するための操作信号を送信する処理を実行する。また、処理部120は、スマートフォンSPで100m走のアプリを使用中であることをドア照明11および電光掲示板12を通して外部に報知する機能を有する。処理部120は、Yes信号出力部121と、No信号出力部122と、キャリブレーション処理部124と、ステップ信号出力部125と、報知信号出力部126とを有する。
【0052】
処理部120は、圧力センサPS1~PS6の測定値に基づいて操作信号を出力する第1動作モードと、操作信号を出力しない第2動作モードとを有している。そして、スマートフォンSPを介して着座者Pに動作を促す通知をした後でのみ第1動作モードで動作することができる。具体的には、後述するように、スマートフォンSPから各種信号の受付信号を受けた後は、操作信号を出力する第1動作モードとなり、受付終了信号を受けた後は、操作信号を出力しない第2動作モードとなる。
【0053】
Yes信号出力部121およびNo信号出力部122は、処理部120が、スマートフォンSPから参加受付信号を受信した後に、着座者Pの動作に応じてYes信号またはNo信号をスマートフォンSPに出力する。
具体的には、Yes信号出力部121は、右の圧力センサPS6(第1圧力センサ)から得られた圧力値P6Rが所定のしきい値P6thを超えたことを条件として、Yes信号を出力する。また、No信号出力部122は、左の圧力センサPS6(第2圧力センサ)から得られた圧力値P6Lが所定のしきい値P6thを超えたことを条件として、No信号を出力する。
スマートフォンSPのゲーム処理部210においては、Yes信号に対してスマートフォンSPのゲームを開始する第1操作が割り当てられ、No信号に対してゲームを行わない選択をする第2操作が割り当てられている。
【0054】
キャリブレーション処理部124は、処理部120が、スマートフォンSPからキャリブレーション開始信号を受信した後、左右の圧力センサPS3の圧力値P3R,P3Lを取得する。そして、そのときに座っている着座者Pの平均的な圧力であるノーマル圧力P3nと、圧力値のピーク検出のためのしきい値P3thを決定するとともに、その着座者Pの平均的な脚を動かす周期であるノーマルステップ周期TSnを算出してスマートフォンSPに出力する。
【0055】
具体的には、着座者Pが脚を交互に上げた場合、圧力値P3
R,P3
Lは、例えば
図8のように変化する。
図8において、圧力が急に小さくなっている部分は、着座者Pが脚を上げたことにより、センサPS3の部分の圧力が小さくなっていることを示す。つまり、圧力が小さくなっていない140付近の圧力値が、脚を上げていないときの平均なノーマル圧力P3
nとなる。ノーマル圧力P3
nを算出するには、例えば、圧力値P3
R,P3
Lの前回値と今回値の差(今回値P3(n)から前回値P3(n-1)を引いた値とする。)の絶対値が所定値以下である場合(つまり、値の変化が小さいとき)の今回値を集計して平均すればよい。
【0056】
また、しきい値P3thは、脚を上げている最中であることを判定するためのしきい値であり、例えば、
図8の場合であれば、100~120程度の値を用いればよい。このため、しきい値P3thは、ノーマル圧力P3
nに所定値を乗じた値を用いることができる。例えば、ノーマル圧力P3
nに0.6~0.9程度の所定値を乗じた値をしきい値P3thとすることができる。
【0057】
ノーマルステップ周期TSnは、圧力値P3R,P3Lのピーク同士の時間間隔であるステップ周期TSの平均値である。
圧力値P3R,P3Lは、各圧力値P3R,P3Lが、しきい値P3thより小さい(上側から下側へ超えた)という条件下で、前回値と今回値の差が負から正に変化したときにピークに達したと判定することができ、このときの前回値P3(n-1)をピーク値Pmとすることができる。
【0058】
ステップ信号出力部125は、処理部120が、スマートフォンSPからレース開始信号を受信した後に、着座者Pの動作に応じて圧力値P3R,P3Lのピークを検出し、ピーク値Pmを算出する。ピークの検出およびピーク値Pmの算出は、キャリブレーション処理部124と同様に行うことができる。そして、脚を上げた大きさであるステップ強度F(FR,FL)を算出する。ステップ強度Fは、ピークの大きさ、つまり、ノーマル圧力P3から、ピーク値Pmを引いた値とすることができる。本実施形態においては、着座者Pの体格の大きさによる違いをなくすため、ノーマル圧力P3nで規格化した値とする。例えば、ステップ強度Fは、
F=(P3n-Pm)/P3n
とする。ステップ信号出力部125は、圧力値P3R,P3Lのピークを検出すると、ピーク値Pmおよびステップ強度FをスマートフォンSPに出力する。このように、ステップ信号出力部125は、圧力センサPS3から得られた圧力値P3の変化に基づいて信号を出力している。
【0059】
報知信号出力部126は、スマートフォンSPと通信可能な状態になっている場合に、報知機器であるドア照明11および電光掲示板12にスマートフォンSPを使用中であることを報知するための報知信号を出力するように構成される。
【0060】
具体的には、報知信号出力部126は、スマートフォンSPからレース開始信号を受信してからレース終了信号を受信するまで報知信号を出力する。なお、報知信号出力部126は、少なくとも1つの乗物用シートSが条件を満たした場合に、すべてのドア照明11に報知信号を出力してもよいし、1つの乗物用シートSが条件を満たした場合に、その乗物用シートSに対応するドア21のドア照明11のみに報知信号を出力してもよい。電光掲示板12に対しては、少なくとも1つの乗物用シートSが条件を満たした場合に報知信号を出力する。
【0061】
ドア照明11は、報知信号を受信すると、点灯または点滅するように構成されている。
電光掲示板12は、報知信号を受信すると、
図2(b)に示すように、「100m走プレイ中!」のように文字により100m走アプリを使用中であることを表示する。
【0062】
一方、スマートフォンSPのゲーム処理部210は、アプリが立ち上げられたときにゲームの進行処理を実行する。ゲーム処理部210は、参加受付処理部211と、キャリブレーション指示部212と、キャラクタ移動処理部213と、オノマトペ判定部214と、結果出力部219とを有している。ゲーム処理部210は、制御装置100から受信した信号を、その受信時刻とともに記憶部290に記憶する。なお、記憶部290は、計算、処理等に必要なデータを適宜記憶するために使用される。また、ゲーム処理部210は、算出した走行距離Lや、運動の結果などのデータを、適宜、制御装置100に送信して、他の乗物用シートSに対応したスマートフォンSPとデータを共有するように構成されている。制御装置100は、これらのデータを記憶部190に蓄積する。
【0063】
参加受付処理部211は、ディスプレイDSP上に参加を受け付ける開始画面を表示するとともに、参加受付信号を制御装置100に送信し、所定時間の間、制御装置100からのYes信号またはNo信号を受け付ける。開始画面は、例えば、
図17のような画面であり、着座者Pに動作を促す通知として、「参加しますか?肩でシートを押してください」の文字と、「No 左肩 右肩 Yes」の表示をディスプレイDSPに出力する。なお、Yes、Noの表示は、ディスプレイDSPにタッチしてそれぞれYes信号またはNo信号をスマートフォンSPに入力できるボタンの機能を持たせてもよい。参加受付処理部211は、Yes信号を受信した場合には、ゲーム進行処理に進む処理を行い、No信号を受信した場合には、ゲーム進行処理に進まずにアプリを終了させる。ゲーム処理部210は、Yes信号およびNo信号のいずれも受信せずに所定時間が経過した場合には、受付終了信号を制御装置100に送信してアプリを終了させる。
【0064】
キャリブレーション指示部212は、キャリブレーション画面を表示するとともに、キャリブレーション開始信号を制御装置100に送信し、所定時間の間、制御装置100からキャリブレーションに関する信号を受け付ける。所定時間が経過したら、キャリブレーション指示部212は、キャリブレーション終了信号を制御装置100に出力する。
【0065】
キャラクタ移動処理部213は、100m走のレース中に、ステップ強度Fを受信すると、ディスプレイDSP上のキャラクタをゴールへ向けて移動させる。このときの移動量は、ステップ強度Fの大きさに応じたものである。キャラクタ移動処理部213は、例えば、F[m]分だけゴールへ向けてキャラクタを移動させる。
【0066】
オノマトペ判定部214は、100m走のレース中に、着座者Pの走っている様子を表現するオノマトペ(「よちよち」などの擬態語)を判定し、ディスプレイDSP上に出力する。オノマトペの判定は、例えば、着座者Pが脚を動かしている周期であるステップ周期TSを
図9に示した判定条件と比較して行うことができる。なお、ステップ周期TSは、制御装置100から受信したステップ強度Fの周期であるが、ステップ強度Fを受信する間隔は一定ではないので、例えば、過去の20m分の平均の周期で算出することができる。
【0067】
本実施形態においては、着座者Pの個人差の影響を減らすため、ステップ周期TSをノーマルステップ周期TSnで割った値をしきい値と比較してオノマトペの表現を判定する。例えば、TS/TSnが1.5以上で周期が長い場合には、「ふらふら」とし、1.2以上、1.5未満の場合には「のっしのっし」、0.7以上、1.2未満の場合には「すたすた」、0.7未満の場合には「どたどた」などと決められている。
【0068】
結果出力部219は、着座者Pが100m走ゲームでゴールした後、運動の結果とアドバイスを決定してディスプレイDSP上に出力する。また、運動の結果は、制御装置100に送信する。
具体的には、結果出力部219は、運動の結果として、運動レベルと、運動量と、運動強度と、アドバイスを決定する。
【0069】
運動レベルは、100m走る間のステップ数に基づき、
図10の運動レベル判定テーブルを参照して判定する。例えば、運動レベル判定テーブルは、ステップ数が60以下の場合、「ゆっくりお散歩」、61~110の場合、「日常の歩き」、111~140の場合、「ウォーキング」、141~240の場合、「ジョギング」、240以上の場合、「ダッシュ」などと設定されている。
【0070】
運動量は、例えば、100m走る間のステップ強度Fの累積値で求めることができる。
【0071】
運動強度は、METs(Metabolic equivalents)で示す。運動強度の値は、例えば、100m走る間のステップ数に、所定の係数を掛けることで決めることができる。
【0072】
アドバイスは、記憶部290に予め記憶しておいたアドバイステーブルを参照して決めることができる。アドバイステーブルは、例えば、ステップ数、100mのゴールタイム、平均のステップ周期などのパラメータと、予め決めておいたアドバイスとを対応させたものとしておく。そして、100m走のゴール後に、これらのパラメータからアドバイスを検索して決定することができる。
【0073】
そして、結果出力部219は、運動レベルと、運動量と、運動強度と、アドバイスを決定した後、ディスプレイDSP上にこれらの結果を表示する。
【0074】
次に、ゲーム処理部210の他の処理も含めて、制御装置100およびアプリの処理の一例をフローチャートを参照して説明する。
【0075】
まず、制御装置100の処理について説明する。
図11~
図14の処理は、繰り返し行われる。
図11に示すように、処理部120は、まず、ゲーム参加に関するステップS11~17を実行する。具体的には、まず、参加受付信号を受信したか否かを判定する(S11)。
参加受付信号を受信した場合(S11,Yes)、処理部120は、圧力値P6
R,P6
Lを取得し(S12)、右の圧力値P6
Rがしきい値P6thより大きいか判定する(S13)。P6
RがP6thより大きい場合(S13,Yes)、Yes信号を送信して(S14)、ゲーム参加に関する処理を終了する。
P6
RがP6thより大きくなかった場合(S13,No)、処理部120は、左の圧力値P6
LがP6thより大きいか判定する(S15)。P6
LがP6thより大きい場合(S15,Yes)、No信号を送信して(S16)、ゲーム参加に関する処理を終了する。
【0076】
P6LがP6thより大きくなかった場合(S15,No)、処理部120は、受付終了信号を受信したか否か判定し(S17)、受信していない場合(S17,No)、ステップS12からの処理を繰り返し、受信した場合(S17,Yes)、ゲーム参加に関する処理を終了する。
【0077】
ゲーム参加に関する処理の後、処理部120のキャリブレーション処理部124は、
図12に示すように、キャリブレーション処理に関するステップS21~S26を実行する。
処理部120は、キャリブレーション開始信号を受信したか否か判定し(S21)、受信した場合(S21,Yes)、圧力値P3
R,P3
Lを取得し、記憶する(S22)。そして、キャリブレーション終了信号を受信したか否かを判定し、受信するまで(S23,No)ステップS22~S23を繰り返し、受信したら(S23,Yes)、ステップS24に進む。
【0078】
ステップS24において、キャリブレーション処理部124は、所定期間取得して記憶した圧力値P3
R,P3
Lに基づいてノーマル圧力P3
nを算出する。そして、ノーマル圧力P3
nからしきい値P3thを設定する(S25)。さらに、ノーマルステップ周期TS
nを算出し、スマートフォンSPに送信する(S26)。
ステップS21において、キャリブレーション開始信号を受信していない場合(No)、キャリブレーション処理部124は、キャリブレーション処理を行うことなくステップS30(
図13参照)へ進む。
【0079】
次に、処理部120は、ステップS30~S40のレースに関する処理を行う。
図13に示すように、まず、処理部120は、スマートフォンSPからレース開始信号を受信したか否か判定する(S30)。レース開始信号を受信していない場合(S30,No)、処理部120は処理を終了する。レース開始信号を受信した場合(S30,Yes)、報知信号出力部126は、報知信号の出力を開始する(S51)。次に、ステップ信号出力部125は、圧力値P3
R,P3
Lを取得し、記憶する(S31)。
【0080】
そして、右の圧力値P3Rがしきい値P3thより小さいか判定し(S32)、小さい場合(S32,Yes)、さらに、圧力値P3Rの前回値と今回値からピークを検出したか判定する(S33)。ピークを検出した場合(S33,Yes)、ステップ信号出力部125は、ノーマル圧力P3nと圧力値P3Rからステップ強度FRを算出する(S34)。そして、算出したステップ強度FRをスマートフォンSPに送信する(S35)。
一方、右の圧力値P3Rがしきい値P3thより小さくなかった場合(S32,No)、または、ピークを検出しなかった場合(S33,No)、ステップ信号出力部125は、ステップ強度FRの算出、送信をすることなくステップS36へ進む。
【0081】
ステップS36~S39において、ステップ信号出力部125は、左の圧力値P3Lについて、ピークの検出とステップ強度FLの算出、送信の処理を行う。これらの処理は、ステップS31~S35と同様であるので説明を省略する。
【0082】
ステップS40において、処理部120は、レース終了信号を受信したか否か判定し、受信していない場合(S40,No)、ステップS31からの処理を繰り返し、受信した場合(S40,Yes)、報知信号出力部126が報知信号の出力を終了した後(S52)、処理を終了する。
【0083】
次に、スマートフォンSPのアプリ(ゲーム処理部210)における処理を説明する。
スマートフォンSPは、アプリが立ち上げられると、アプリの処理を開始し、
図14に示すように、開始画面をディスプレイDSP上に表示する(S110)。開始画面は、例えば、
図17に示すような画面である。開始画面においては、「参加しますか?肩でシートを押してください」の文字とともに、左肩がNo、右肩がYesであることを教える説明が表示されている。また、参加することができる残り時間が表示される。
【0084】
そして、参加受付処理部211は、制御装置100に参加受付信号を送信する(S111)。参加受付処理部211は、Yes信号を受信したか否か判定し(S112)、受信した場合(S112,Yes)、受付終了信号を制御装置100に送信し(S118)、ゲーム進行処理(S200)の後、処理を終了する。ゲーム進行処理については後述する。
【0085】
参加受付処理部211は、Yes信号を受信していない場合(S112,No)、No信号を受信したか否か判定し(S113)、受信した場合(S113,Yes)、処理を終了する。
一方、No信号を受信していない場合(S113,No)、残り時間を示すカウントを表示し(S114)、カウントが0になったか判定する(S115)。カウントが0になっていない場合(S115,No)、ステップS112からの参加受付を継続し、カウントが0になった場合(S115,Yes)、受付終了信号を制御装置100に送信し(S116)、処理を終了する。
【0086】
図15に示すように、ゲーム進行処理(S200)においては、まず、キャリブレーション指示部212が、ディスプレイDSP上にキャリブレーション画面を表示する(S211)。キャリブレーション画面は、例えば、
図18に示すような、「ウォーミングUP 座ったまま脚を交互に上げてください」の文字による指示と、キャリブレーションを行う残り時間を表示している。ディスプレイDSP上には、シート等のキャラクタCH1が走っているアニメーションを表示すると、着座者Pが何をするべきかわかりやすい。
【0087】
そして、キャリブレーション指示部212は、制御装置100にキャリブレーション開始信号を送信する(S212)。そして、残り時間のカウントを更新してディスプレイDSP上に表示し(S213)、カウントが0になったか判定する(S214)。カウントが0になっていない場合(S214,No)、ステップS213のカウントダウンの表示を継続し、カウントが0になった場合(S214,Yes)、キャリブレーション終了信号を制御装置100に送信する(S215)。
【0088】
キャリブレーションが終了すると、ゲーム処理部210は、
図16に示すように、レース開始画面を表示する(S220)。レース開始画面は、例えば、
図19に示すような画面であり、「位置について!ヨーイ」の文字と、スタートまでのカウントダウンの数字が表示されている。また、レース画面には100mの競争レーンと、シートのキャラクタCH2,CH3が各レーンに表示されている。
例えば、レーンは複数表示されており、同時に参加する他の着座者Pがいる場合、プレイヤーを示す「あなた」の文字と、他のシートの参加者であることを示す「SEAT2」の文字が各レーンに表示される。
【0089】
レース開始画面において、カウントダウン後(フロー省略)、レースがスタートすると、ゲーム処理部210は、レース開始信号を制御装置100に送信する(S221)。そして、キャラクタ移動処理部213は、ステップ強度FR,FLを受信したか否か判定する(S222)。受信した場合(S222,Yes)、キャラクタ移動処理部213は、ステップ強度FR,FLの大きさに応じてキャラクタCH2を移動させる処理を行う(S223)。そして、走行距離Lを更新し、走行距離Lを制御装置100に送信する。また、キャラクタ移動処理部213は、ディスプレイDSP上に、残り距離を表示する(S224)。
【0090】
次に、オノマトペ判定部214は、ステップ周期TSおよびノーマルステップ周期TS
nから表示すべきオノマトペを決定し、ディスプレイDSP上に表示する(S225)。これにより、レース中は、
図20に示すように、キャラクタCH2,CH3が各レーンを走っているアニメーションと、残り距離と、「すたすた」などの擬態語が表示される。また、ゲーム処理部210はスタートからの時間も表示する。
キャラクタ移動処理部213は、ステップ強度F
R,F
Lを受信していない場合(S222,No)、ステップS223~S225を実行することなくステップS226へ進む。
【0091】
そして、ゲーム処理部210は、制御装置100から、他のシートの着座者PのキャラクタCH3の走行距離Lを取得し、必要に応じて他のシートのキャラクタCH3を移動させる(S226)。
【0092】
次に、キャラクタ移動処理部213は、走行距離Lが100以上か否か判定し(S227)、100未満であれば、ステップS222からのレースの処理を繰り返す。一方、走行距離Lが100以上になったら(S227,Yes)、レース終了信号を制御装置100に送信する(S228)。レース終了時は、例えば、
図21のような画面を表示する。この画面では残りの距離が0mになり、ゴール時のタイムが表示される。
【0093】
そして、結果出力部219は、運動の結果として、運動レベルと、運動量と、運動強度と、アドバイスを決定し、これらをディスプレイDSP上に出力する(S229)。結果画面は、例えば、
図22のような画面である。結果画面においては、今までの制御装置100に蓄積されたデータから、これまでの競技者の中での順位を表示するとよい。また、結果が良かった場合には、喜んだ顔のキャラクタCH5を表示し、良くなかった場合には、残念な顔をしたキャラクタを表示するとよい。
結果出力部219が運動の結果を表示すると、アプリの処理は終了する。
【0094】
以上のようにして、本実施形態の乗物用シートSによれば、次のような効果を奏することができる。
制御装置100は、圧力センサPS1~PS6から取得された圧力値を、スマートフォンSPのゲームアプリを操作するための操作信号としてスマートフォンSPに出力するので、乗物用シートSに座った着座者Pは、シート本体S0上で、脚や肩を動かすことによってスマートフォンSPの操作をすることができる。
このため、従来であれば、スマートフォンSPの操作を手で行わなければならなかったところ、シート本体S0上で体を動かすことにより操作することが可能となる。このため、乗り物内において疲れたときなどに適度に体を動かしてリフレッシュすることができる。
【0095】
そして、制御装置100が、スマートフォンSPからレース開始信号を受信してからレース終了信号を受信するまでの間、
図2(a)、(b)に示すように、ドア照明11が点灯または点滅し、電光掲示板12が、100m走アプリを使用中であることを表示する。このため、他の人に、100m走アプリを使用中であることを車両CRの外に報知することができる。すなわち、着座者Pは、100mアプリを使用中であることを、車両CRの外の人と共有することができる。特に、電光掲示板12によれば、100m走アプリを使用中であることを外部に分かりやすく表示することができる。
【0096】
また、これらの報知により、車両CRの外部から、これらの表示を見た者が、自分もゲームをやりたいと思う動機付けを得ることができるので、乗物用シートSの機能を積極的に使用させることができる。
【0097】
また、圧力センサPS1~PS6は、着座者Pに対向する座面S21,S22の状態を検知可能であることで、着座者Pが圧力センサPS1~PS6に対してアクセスし易い。すなわち、着座者が座面の状態を変えることで操作対象機器の操作が可能であるので、スマートフォンSPの操作を行いやすい。
【0098】
また、Yes信号やNo信号は、圧力値P6がしきい値P6thを超えたことを条件として出力され、ステップ強度Fも、圧力値P3がしきい値P3thを上から下へ超えたことを条件として出力されるので、着座者Pの意図に反して、誤ってスマートフォンSPを操作することを抑制することができる。
【0099】
また、右の圧力センサPS6の測定値に基づいてYes信号を出力し、左の圧力センサPS6の測定値に基づいてNo信号を出力するので、誤操作を抑制することができる。
【0100】
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0101】
例えば、前記実施形態においては、ゲームの一例として100m走のゲームの操作に本発明を適用したが、他のゲームの操作に適用することもできる。また、操作対象となる操作対象機器は、スマートフォンに限らず、パソコン、タブレットPC、ナビゲーションシステムなどであってもよい。また、これらのディスプレイがある機器に限らず、電話、オーディオなどであってもよい。なお、本発明において、操作対象機器は、乗物自体(乗物の運転操作を対象とすること)は含まない。しかし、乗物の運転以外の操作であれば、操作対象機器は乗物に固定的に備えられたものであってもよく、その操作は、エアコンや、窓ガラスの上下動の操作であってもよい。
このように、乗物用シート上の動作で操作対象機器を操作できるようにすることで、手を使いたくない場合や、手を使えない身体障害者などであっても、体の一部を動かしたり、一部の筋肉に力を入れたりするなどして操作対象機器を操作することも可能となる。
【0102】
また、前記実施形態においては、レース開始信号を受信してからレース終了信号を受信するまでの間に報知信号を出力することとしたが、それ以外の期間に報知信号を出力してもよい。例えば、スマートフォンSPの所定のアプリが立ち上げられ、制御装置100との間で通信が可能となっている間、ずっと報知信号を出力してもよい。
【0103】
前記実施形態においては、乗物の内部に報知機器が配置されていたが、報知機器は、乗物の外表面に設けられていてもよい。
例えば、
図23の車両CRのように、後部バンパー24に、走っている人の姿を表した形状で光る照明部品13を報知機器として設けることもできる。
もしくは、
図24の車両CRのように、報知機器は、車両CRの屋根25の上に設置された表示灯14であってもよい。表示灯14には、例えば、「RUNNING!」と文字が表示されている。
このような照明部品13を点灯または点滅させることによっても、効果的に車両CRの外部に操作対象機器を使用していることを報知することができる。特に、表示灯14を用いると、操作対象機器を使用中であることを分かりやすく外部に表示することができる。
また、図示は省略するが、報知機器は、乗物用シートSのシート本体S0自体に設けられた照明部品等であってもよい。シート本体S0などの車両CRの内部に報知機器が設けられていることで、同乗者に、操作対象機器の使用を知らせることができる。また、車両CRの内部にある照明部品が、車両CRの外部から認識可能な位置に配置されていれば、車両CRの外部の人に操作対象機器の使用を知らせることもできる。
【0104】
さらに、報知機器は、ネットワークを介して複数のユーザの端末と接続されるとともに、受信した情報を複数のユーザ間で共有するために、複数の端末に送信する情報共有サーバであってもよい。
【0105】
この形態のシステムを
図25、
図26を参照して説明する。
システムSYS2は、前記実施形態と同様の機能を有する乗物用シートSと、情報共有サーバ30とを有している。
【0106】
乗物用シートSおよび情報共有サーバ30は、ネットワークの一例としてのインターネットNを介して通信可能に接続されている。
乗物用シートSの制御装置100は、スマートフォンSPから位置情報を取得可能に構成されている。そして、制御装置100は、情報共有サーバ30に報知信号を出力する際に、報知信号に位置情報を含めて出力するように構成されている。
【0107】
情報共有サーバ30は、専用のSNS(Social Networking Service)アプリがインストールされた他の複数のスマートフォンSP2が接続可能に構成されている。そして、情報共有サーバ30が、SNSアプリの要求に応じて、または、所定の条件が満たされた場合に、スマートフォンSPから送信された情報(ここでは、特に、位置情報を含む報知情報)をスマートフォンSP2に送信することで、複数のユーザ間で情報を共有することが可能となっている。
【0108】
また、スマートフォンSP2のアプリは、
図26に示すように、報知情報を受信すると、地
図32をディスプレイDSP上に表示するとともに、地
図32上の、受信した報知情報に含まれる位置情報に対応する位置に、シートのキャラクタCH6を表示する処理を実行する。さらに、位置情報から都市名を決定し、「○○is RUNNING in Tokyo(都市名)」のように、操作対象機器を使用中であることを示す内容の情報をディスプレイDSP上に表示する処理を実行する。なお、位置情報から都市名を決定するには、位置情報の範囲と都市名の関係を記憶したデータベースを、情報共有サーバ30に予め記憶しておき、位置情報から都市名を検索するとよい。
【0109】
このようなシステムSYS2によれば、インターネットNを介して複数の人に操作対象機器を使用中であることを報知し、複数の人と、操作対象機器を使用中であることを現実感とともに共有することができる。
なお、この形態においては、表示される地図は、スマートフォンSP2のものではなく、ナビゲーションシステムで表示される地図であってもよい。また、位置情報は、スマートフォンSPから取得する場合に限られない。例えば、シート本体S0に位置情報を取得するGPS(Global Positioning System)を備えていてもよい。
【0110】
また、シートは、乗物に設置されるものには限られない。例えば、スタジアムやアリーナのシートに適用することもできる。この形態の一例について
図27を参照して説明する。
【0111】
シートSは、シート本体S0に、複数の圧力センサPSと、制御部100Aと、操作対象機器の一例としてのスピーカSPKと、報知機器の一例としての照明部材18とを備えている。圧力センサPSは、例えば、シートバックに左右に並んで2つ、シートクッションに左右に並んで2つ設けられている。圧力センサPSは、制御部100Aに接続されている。
【0112】
制御部100Aは、各圧力センサPSからの圧力値を取得し、各圧力センサPSの位置に応じた音色(例えば、ラッパ、太鼓などの楽器の種類)で、圧力センサPSから取得した圧力値の大きさに応じた音量の音で、スピーカSPKから音を出す処理を実行するように構成されている。また、制御部100Aは、スピーカSPKから音を出す処理をすると同時に、照明部材18に、照明部材18を発光させる電力(信号)を出力するように構成されている。すなわち、制御部100Aは、操作対象機器であるスピーカと通信可能な状態となっている場合に、報知機器である照明部材18に報知信号を出力する。照明部材18を発光するための電力は、圧力センサPSから取得した圧力値の大きさに応じた大きさであることが望ましい。
【0113】
このような構成のシートSによれば、例えば、スタジアムで野球の試合が開催されている場合、シートSに座った着座者は、シートSの圧力センサPSに圧力を加えることで、スピーカSPKから音を出して応援することができる。そして、1人がこのシートSを使って音を出すと、シートSのスピーカSPKが使用中であることが照明部材18で表示されて、他の観戦者も、自分もやってみようという気分になることができる。このため、音を出した応援をスタジアム内で徐々に広げることができ、応援を盛大に行うことができる。
【0114】
前記実施形態においては、センサとして圧力センサを例示したが、センサは、他の種類のセンサ、例えば、静電容量センサなどであってもよい。また、圧力を測定する場合、圧力分布センサを採用することもできる。
【0115】
前記実施形態においては、制御装置100とスマートフォンSPの一部が全体として制御部を構成していたが、制御装置100だけが制御部を構成してもよいし、スマートフォンだけが制御部を構成してもよい。また、いわゆるクラウドコンピュータのような、別の場所に設けられたコンピュータと通信を行い、当該クラウドコンピュータが制御部の一部または全部を構成することもできる。
【0116】
また、本発明でいう操作対象機器を操作するための操作信号は、モータなどを駆動する電力自体であってもよい。
【0117】
前記実施形態においては、無線通信により制御装置とスマートフォンを接続していたが、有線の通信により接続されていてもよい。
【0118】
前記実施形態においては、操作対象機器を操作するための動作として、脚の上げ下げと、肩をシートバックに押し付ける動作のみを例示したが、上体をひねる動作や、前後や左右または回すように揺らす動作、おしりを揺らす動作など他の動作で操作対象機器を操作するように構成してもよい。
【0119】
前記実施形態においては、乗物用シートとして自動車の車両に搭載されるシートを例示したが、乗物用シートは、自動車以外の鉄道などの車両のシートであってもよいし、車両以外の船舶、航空機、ロケットなどのシートであってもよい。
【0120】
また、本明細書に記載した各実施形態および各変形例で説明した各要素は、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0121】
11 ドア照明
12 電光掲示板
21 サイドドア
25 屋根
100 制御装置
120 処理部
CR 車両
P 着座者
PS1~PS6 圧力センサ
S 乗物用シート
S0 シート本体
SP スマートフォン
SYS システム