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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】振動子及び振動装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20220615BHJP
   H03H 9/19 20060101ALI20220615BHJP
   H03H 9/215 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03H9/19 D
H03H9/19 J
H03H9/215
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2017253618
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019121839
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】崔 弘毅
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-081473(JP,A)
【文献】特開2016-149599(JP,A)
【文献】特開2016-112625(JP,A)
【文献】特開2012-107968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材の主面に支持される支持部と、前記支持部から延出しており、前記主面と隙間を有して対向する本体部とを有し、前記本体部の共振振動によって得られる所定の共振周波数を含む電気信号を出力する振動素子と、を備え、
前記振動素子の前記本体部は、第1領域に設けられている第1衝撃検出電極を含み、
前記第1領域と対向し、前記ベース部材に設けられている第2領域に、前記第1衝撃検出電極と所定の距離を有して設けられている第2衝撃検出電極を含み、
前記第1衝撃検出電極と前記第2衝撃検出電極との間の電気特性の変化を取りだすように設けられた、前記第1衝撃検出電極及び前記第2衝撃検出電極のそれぞれに電気的に接続されている衝撃出力配線と、
前記第1領域及び前記第2領域のいずれかに設けられている突起部と、をさらに備え
前記第1衝撃検出電極又は前記第2衝撃検出電極が前記突起部に設けられている
振動子。
【請求項2】
厚み方向の衝撃力の作用によって発生する前記本体部の変位に応じて前記所定の距離が小さくなる位置に、前記第1衝撃検出電極と前記第2衝撃検出電極とが配置されている、
請求項1に記載の振動子。
【請求項3】
前記衝撃力の作用によって発生する前記本体部の変位によって、前記第1衝撃検出電極が前記第2衝撃検出電極に最も先に接触する位置に、前記第1衝撃検出電極と前記第2衝撃検出電極とが配置されている、
請求項2に記載の振動子。
【請求項4】
前記所定の距離は、前記隙間の最も小さい距離以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の振動子。
【請求項5】
前記第1領域は、前記ベース部材の前記主面と対向する前記振動素子の前記本体部に設けられている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の振動子。
【請求項6】
厚み方向の衝撃力の作用によって発生する前記本体部の変位によって、前記突起部が前記第1領域及び前記第2領域のいずれかに最も先に接触する位置に、前記第1衝撃検出電極及び前記第2衝撃検出電極のいずれかと前記突起部とが配置されている、
請求項1、2、4、5のいずれか一項に記載の振動子。
【請求項7】
前記第1衝撃検出電極又は前記第2衝撃検出電極が前記突起部の表面に設けられている、
請求項6に記載の振動子。
【請求項8】
前記突起部の材料は、前記第1領域の材料及び前記第2領域の材料のいずれかよりもヤング率が小さい材料で構成される、
請求項6又は7に記載の振動子。
【請求項9】
前記ベース部材とともに、前記振動素子を収容する内部空間を形成する蓋部材をさらに備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載の振動子。
【請求項10】
前記振動素子は、基部と、前記基部から第1方向に延出する振動腕部と、を備える音叉型圧電振動素子である、
請求項6から8のいずれか一項に記載の振動子。
【請求項11】
前記音叉型圧電振動素子は、前記基部から前記第1方向に延出し、前記第1衝撃検出電極又は前記第2衝撃検出電極を含む緩衝腕部をさらに備える、
請求項10に記載の振動子。
【請求項12】
前記緩衝腕部に、前記突起部が形成されている、
請求項11に記載の振動子。
【請求項13】
前記振動腕部の先端は、前記第1衝撃検出電極又は前記第2衝撃検出電極が設けられている錘部を含む、
請求項10に記載の振動子。
【請求項14】
前記振動素子は、厚みすべり振動モードを主振動とする圧電振動素子である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の振動子。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の振動子と、
前記衝撃出力配線を介して前記第1衝撃検出電極と前記第2衝撃検出電極との導通の回
数を検出する検出回路と、を備える、
振動装置。
【請求項16】
厚み方向の衝撃力の作用によって発生する前記本体部の変位によって、前記第1衝撃検出電極が前記第2衝撃検出電極に前記本体部のなかで最も先に接触する位置に、前記第1衝撃検出電極と前記第2衝撃検出電極とが配置されている、
請求項15に記載の振動装置。
【請求項17】
請求項1から14のいずれか一項に記載の振動子と、
前記衝撃出力配線を介して前記第1衝撃検出電極と前記第2衝撃検出電極との間の静電容量の変化が上限しきい値を上回る回数及び下限しきい値を下回る回数の少なくとも一方を検出する検出回路と、を備える、
振動装置。
【請求項18】
前記導通の回数の積算数を記憶する記憶回路と、
前記積算数に基づいて、衝撃履歴状態に応じた信号を外部に出力する出力制御回路と、
をさらに備える、
請求項15または16のいずれか一項に記載の振動装置。
【請求項19】
前記静電容量の変化の回数の積算数を記憶する記憶回路と、
前記積算数に基づいて、衝撃履歴状態に応じた信号を外部に出力する出力制御回路と、
をさらに備える、
請求項17に記載の振動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子及び振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、振動子の一つとして音叉型水晶振動子が知られている。音叉型水晶振動子は、基材の基部から一組の振動腕を平行に延出させた音叉型水晶振動素子を備える。音叉型水晶振動素子では、一組の振動腕が水平方向に互いに接近又は離反する向きに振動する。
【0003】
引用文献1には、ベースに取り付けられる基部から延出している振動腕を含む振動子が開示されている。この振動子は、基部から延出している衝撃緩衝腕部をさらに含み、ベースの主面において衝撃緩衝腕に対向する領域に凸部を設けることで、振動腕に加わる衝撃を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-149599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1のように凸部を設けた場合であっても、振動素子の振動腕の一部には衝撃が加わるので、衝撃の影響によって振動素子の周波数特性が経時変化する課題があった。
【0006】
もし、振動素子に加わる衝撃を検出できれば、衝撃の影響による周波数特性の変動を予測して、周波数特性の変動を補償することもできる。あるいは余裕を見て早めに振動素子を交換し、又は、廃棄することができる。従来の振動素子では、振動素子とは別に衝撃検知素子を設ける必要があった。そのため、振動素子に加わった衝撃を直接検出できなかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、振動素子に加わった衝撃を直接検出でき、振動素子自身から衝撃検知を出力できる振動子及び振動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る振動子は、ベース部材と、ベース部材の主面に支持される支持部と、支持部から延出しており、主面と隙間を有して対向する本体部とを有し、本体部の共振振動によって得られる所定の共振周波数を含む電気信号を出力する振動素子と、を備え、振動素子の前記本体部は、第1領域に設けられている第1衝撃検出電極を含み、第1領域と対向する第2領域に、第1検出電極と所定の距離を有して設けられている第2衝撃検出電極を含み、第1衝撃検出電極と第2衝撃検出電極との間の電気特性の変化を取りだすように設けられた、第1衝撃検出電極及び第2衝撃検出電極のそれぞれに電気的に接続されている衝撃出力配線を、さらに備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、振動素子に直接加わった衝撃を、振動素子の出力で検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図2図2は、図1に示した水晶振動子のII-II線に沿った断面の構成を概略的に示す断面図である。
図3図3は、図1に示した水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
図4図4は、図3に示した水晶振動素子のIV-IV線に沿った断面の構成を概略的に示す断面図である。
図5図5は、図1に示した水晶振動子のV-V線に沿った断面の構成を概略的に示す断面図である。
図6図6は、水晶振動素子に衝撃が加わったときの緩衝腕部及び突起部を示す断面図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る水晶振動子の分解斜視図である。
図8図8は、図7に示した水晶振動子のVII-VII線に沿った断面の構成を概略的に示す断面図である。
図9図9は、本発明の第3実施形態に係る振動装置の構成を概略的に示す断面図である。
図10図10は、図9に示した回路基板の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0012】
また、以下の説明において、水晶振動素子(Quartz Crystal Resonator)を備えた水晶振動子(Quartz Crystal Resonator Unit)を圧電振動子(Piezoelectric Resonator Unit)の例に挙げて説明する。水晶振動素子は、印加電圧に応じて振動する圧電体として水晶片(Quartz Crystal Blank)を利用するものである。ただし、本発明の各実施形態に係る圧電振動子は、水晶振動子に限定されるものではなく、セラミック等の他の圧電体を備えた圧電振動素子を利用するものであってもよい。
【0013】
<第1実施形態>
まず、図1から図3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る水晶振動子1について説明する。図1は、第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す分解斜視図である。図2は、図1に示した水晶振動子のII-II線に沿った断面の構成を概略的に示す断面図である。図3は、図1に示した水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【0014】
なお、図1から図3において、水晶振動素子10に備えられる励振電極、接続電極、等の電極については図示を省略している。また、図中に示した第1方向D1、第2方向D2、及び第3方向D3は、例えばそれぞれ互いに直交する方向であるが、それぞれ互いに交差する方向であればこれに限定されるものではなく、互いに90°以外の角度で交差する方向であってもよい。また、第1方向D1、第2方向D2、及び第3方向D3は、図1に示す矢印の方向(正方向)に限定されず、矢印とは反対の方向(負方向)も含む。
【0015】
図1に示すように、水晶振動子1は、水晶振動素子10と、蓋部材20と、ベース部材30と、を備える。蓋部材20及びベース部材30は、水晶振動素子10を内部空間26に収容するための保持器(Enclosure)の構成の一部である。蓋部材20は、封止枠37及び接合部材40を介してベース部材30に接合されている。
【0016】
このように、蓋部材20及びベース部材30が、水晶振動素子10を収容するための内部空間26を形成する。これにより、蓋部材20及びベース部材30によって、水晶振動素子10を保護することができる。
【0017】
水晶振動素子10は、水晶片11を含む。水晶片11は、例えば、Z板水晶片である。Z板水晶片は、例えば、X軸、Y軸、及びZ軸からなる直交座標系において、Z軸を中心に時計回りに0度から5度の範囲で回転させて、X軸及びY軸によって特定される面と平行な面(以下、「XY面」と呼ぶ。他の軸又は他の方向によって特定される面についても同様である。)が主面となり、Z軸と平行な方向が厚さとなるように、人工水晶を切断及び研磨加工して得られるものを用いる。水晶片11のXY面に限定されるものではなく、XY面から数度傾いた面であってもよい。なお、X軸、Y軸、及びZ軸は、それぞれ人工水晶の結晶軸であり、X軸が電気軸、Y軸が機械軸、Z軸が光学軸に相当する。また、X軸は、正方向を持つ極性軸である。以下、Y軸と平行な方向をY軸方向と呼ぶ。他の軸方向についても同様とする。なお、水晶片は、Z板水晶片以外の異なるカットを適用してもよい。
【0018】
第1実施形態において、水晶振動素子10は、Y軸が第1方向D1と平行であり、X軸が第2方向D2と平行であり、Z軸が第3方向D3と平行となるように配置されている。極性軸であるX軸方向においては、+X軸方向を第2方向D2の正方向とし、-X軸方向を第2方向D2の負方向とする。但し、第1方向D1はY軸方向に沿っていればよく、例えばY軸方向から-5度~+5度の範囲で傾いていてもよい。同様に、第2方向D2もX軸方向に沿っていればよく、第3方向D3もZ軸方向に沿っていればよい。
【0019】
図1及び図3に示すように、Z板の水晶片11から構成される水晶振動素子10は、基部50と、一組の振動腕部60と、緩衝腕部70と、を備える音叉型の水晶振動素子(Tuning Fork Type Quartz Crystal Resonator)である。
【0020】
基部50は、水晶片11の第1方向D1負方向側の端部において、一組の振動腕部60を連結している。同様に、基部50は、緩衝腕部70も連結している。基部50は、蓋部材20と対向する側に第1主面(表面)50aを有し、ベース部材30と対向する側に第2主面(裏面)50bを有する。
【0021】
一組の振動腕部60は、基部50の第1方向D1の正方向側から延出し、第2方向D2に並ぶ第1振動腕部61及び第2振動腕部62を総称するものである。基部50と同様に、一組の振動腕部60は、蓋部材20と対向する側に第1主面(表面)60aを有し、ベース部材30と対向する側に第2主面(裏面)60bを有する。一組の振動腕部60の第1主面60a及び第2主面60bは、それぞれ、基部50の第1主面50a及び第2主面50bと連続している。
【0022】
第1振動腕部61及び第2振動腕部62は中心線C1を挟むように設けられ、第1振動腕部61が第2振動腕部62よりも第2方向D2の正方向側に位置している。第1振動腕部61及び第2振動腕部62は、それぞれ、第1主面60aに第1方向D1に沿った有底の第1溝63aが設けられ、第2主面60bに第1方向D1に沿った有底の第2溝63bが設けられている。第1溝63a及び第2溝63bは、第3方向D3において対向している。このように、第1溝63a及び第2溝63bを設けることで、第1振動腕部61及び第2振動腕部62の動きやすさが向上し、第1振動腕部61及び第2振動腕部62から基部50への振動漏れを抑制することができる。また、第1振動腕部61及び第2振動腕部62は、それぞれ、先端に錘部64を含んでいる。なお、振動腕部の数は2本に限定されるものではなく、3本以上であってもよい。
【0023】
緩衝腕部70は、基部50から第1方向D1の正方向に延出し、第2方向D2において一組の振動腕部60の間に設けられている。緩衝腕部70の第1方向D1における長さ(以下、単に「長さ」という)は、第1振動腕部61及び第2振動腕部62の長さよりも短い。図3に示すように、緩衝腕部70を平面視したときに、緩衝腕部70の先端は、第1振動腕部61及び第2振動腕部62の先端よりも、第1方向D1の負方向側に位置している。このように、緩衝腕部70の長さを第1振動腕部61及び第2振動腕部62の長さよりも短くすることにより、第1振動腕部61及び第2振動腕部62の長さよりも長くする構成と比較して、水晶振動子1の第1方向D1の寸法を小さくすることができ、水晶振動子1を小型化することができる。
【0024】
なお、緩衝腕部70の長さは、特に限定されるものではなく、第1振動腕部61及び第2振動腕部62の長さよりも長くてもよい。
【0025】
また、水晶振動素子10が1本の緩衝腕部70を備える例を示したが、これに限定されるものではない。水晶振動素子は、複数の緩衝腕部を備えていてもよい。また、緩衝腕部70は、一組の振動腕部60の間に設けられる例を示したが、これに限定されるものでない。緩衝腕部は、例えば、第2方向D2において一組の振動腕部60の外側に設けられていてもよい。
【0026】
蓋部材20は、凹形状、具体的にはベース部材30の第1主面32aに向けられた開口を含む箱形状を有し、内面24及び外面25を有する。蓋部材20は、ベース部材30の第1主面32aに対向する天面部21と、天面部21の外縁に接続されており、かつ天面部21の主面に対して法線方向に延在する側壁部22と、を含む。蓋部材20は、水晶振動素子10を収容することができればその形状は特に限定されるものではなく、例えば、天面部21の主面を平面視したときに矩形状を有している。蓋部材20は、例えば、第1方向D1に平行な長辺と、第2方向D2に平行な短辺と、第3方向D3に平行な高さと、を有する。また、蓋部材20は、凹形状の開口縁においてベース部材30の第1主面32aに対向する対向面23を有する。対向面23は、枠形状を有し、水晶振動素子10の周囲を囲むように延在している。
【0027】
蓋部材20は導電性を有する。蓋部材20は、例えば金属製の部材である。具体的には、蓋部材20は、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)を含む合金(例えば42アロイ)から構成される。蓋部材20の最内面(内面24を含む面)にめっきにより形成されたニッケル(Ni)層等が設けられてもよい。また、蓋部材20の最外面(外面25を含む面)に酸化防止等を目的とした金(Au)層等が設けられてもよい。但し、蓋部材20の材料は、特に限定されるものではない。
【0028】
ベース部材30は、水晶振動素子10を搭載している。具体的には、水晶振動素子10は、導電性保持部材36a,36bを介してベース部材30の第1主面32aに励振可能に保持されている。
【0029】
ベース部材30は平坦な板形状を有している。ベース部材30は、第1方向D1方向に平行な長辺と、第2方向D2に平行な短辺と、第3方向D3に平行な厚さと、を有する。
【0030】
ベース部材30は基体31を含んでいる。基体31は、互いに対向する第1主面32a(表面)及び第2主面32b(裏面)を有する。基体31は、例えば絶縁性セラミック(アルミナ)等の焼結材である。この場合、基体31は、複数の絶縁性セラミックシートを積層して焼結してもよい。あるいは、基体31は、ガラス材料(例えばケイ酸塩ガラス、又はケイ酸塩以外を主成分とする材料であって、昇温によりガラス転移現象を有する材料)、水晶材料(例えばATカット水晶)又はガラスエポキシ樹脂等で形成してもよい。基体31は耐熱性材料から構成されることが好ましい。基体31は、単層であっても複数層であってもよく、複数層である場合、第1主面32aの最表層に形成される絶縁層を含む。
【0031】
ベース部材30は、第1主面32aに設けられた電極パッド33a,33b,33cと、第2主面32bに設けられた外部電極35a,35b,35c,35d,35e,35fと、を含む。電極パッド33a,33b,33cは、水晶振動素子10と電気的に接続する。また、外部電極35a,35b,35c,35d,35e,35fは、図示しない回路基板と電気的に接続する。電極パッド33aは、第3方向D3に延在するビア電極34aを介して外部電極35aに電気的に接続され、電極パッド33bは、第3方向D3に延在するビア電極34bを介して外部電極35bに電気的に接続され、電極パッド33cは、第3方向D3に延在するビア電極34cを介して外部電極35eに電気的に接続されている。
【0032】
電極パッド33a,33b,33cは、第1主面32a上においてベース部材30の第1方向D1の負方向側の短辺付近に設けられている。図1に示す例では、電極パッド33a,33b,33cは、ベース部材30の短辺から離れてかつ当該短辺方向に沿って配列されている。
【0033】
外部電極35a,35b,35c,35dは、第2主面32bのそれぞれの角付近に設けられている。図1に示す例では、外部電極35a,35bは、電極パッド33a,33bの直下に配置されている。これにより、第3方向D3に延在するビア電極34a,34bによって、外部電極35a,35bを電極パッド33a,33bに電気的に接続することができる。
【0034】
外部電極35eは、電極パッド33cの直下に配置されている。これにより、第3方向D3に延在するビア電極34cによって、外部電極35eを電極パッド33cに電気的に接続することができる。また、外部電極35eは、後述する突起部75の直下に配置され、第3方向D3に延在するビア電極34dに電気的に接続されている。
【0035】
図1に示す例では、6つの外部電極35a,35b,35c,35d,35e,35fのうち、ベース部材30の第1方向D1の負方向側の短辺付近に配置された外部電極35a,35bは、水晶振動素子10の入出力信号が供給される入出力電極である。また、ベース部材30の第1方向D1の正方向側の短辺付近に配置された外部電極35c,35dは、水晶振動素子10の励振を指令する入力信号および共振周波数を取り出す出力信号とは別系統の衝撃検知出力を取り出す衝撃検出外部電極である。なお、外部電極35c,35dの一方は、蓋部材20に接地電位を供給して蓋部材20の電磁シールド機能を向上させる接地電極であってもよい。また、外部電極35c,35dは、省略されてもよい。さらに、残りの2つの外部電極35e,35fについては、後述する。
【0036】
ベース部材30の電極パッド33a,33b,33c、及び外部電極35a,35b,35c,35d,35e,35fは、いずれも金属膜から構成されている。例えば、電極パッド33a,33b,33c、及び外部電極35a,35b,35c,35d,35e,35fは、それぞれ、下層から上層にかけて、モリブデン(Mo)層、ニッケル(Ni)層及び金(Au)層が積層されて構成されている。また、ビア電極34a,34b,34c,34dは、例えば、基体31を第1主面32aから第2主面32bに貫通する図示しないビアホールに、モリブデン(Mo)等の金属材料を充填して形成されている。
【0037】
なお、電極パッドと外部電極との電気的な接続の態様は、ビア電極によるものに限定されない。例えば、第1主面32a又は第2主面32b上に引出電極を引き出すことによって、電極パッドと外部電極との電気的な接続を達成してもよい。あるいは、ベース部材30の基体31を複数層で形成し、ビア電極を中間層に至るまで延在させ、中間層において引出電極を引き出すことによって、電極パッド又は内部電極と外部電極との電気的な接続を図ってもよい。
【0038】
導電性保持部材36a,36b,36cは、ベース部材30の第1主面32aと、水晶振動素子10の基部50の第2主面50bとの間に設けられている。導電性保持部材36a,36b,36cは、ベース部材30の電極パッド33a,33b,33cに、水晶振動素子10を電気的に接続する。導電性保持部材36a,36b,36cは、例えば、熱硬化樹脂や紫外線硬化樹脂等を含む導電性接着剤によって形成されており、ベース部材と水晶振動素子との間隔を保つためのフィラー、導電性保持部材に導電性を与えるための導電性粒子、等の添加剤を含んでいる。
【0039】
ベース部材30の第1主面32aには、封止枠37が設けられている。封止枠37は、第1主面32aから平面視したときに矩形の枠形状を有している。電極パッド33a,33bは、それぞれ封止枠37の内側に配置されている。封止枠37は、水晶振動素子10を囲むように設けられている。封止枠37は、導電性を有する材料によって構成されている。例えば、封止枠37を電極パッド33a,33bと同じ材料で構成することで、電極パッド33a,33bを設ける工程で同時に封止枠37を設けることができる。
【0040】
接合部材40は、蓋部材20及びベース部材30のそれぞれの全周に亘って設けられている。具体的には、接合部材40は、ベース部材30の第1主面32aを平面視したときに矩形の枠形状を有し、封止枠37上に設けられている。封止枠37及び接合部材40は、蓋部材20の側壁部22の対向面23と、ベース部材30の第1主面32aと、の間に挟まれる。
【0041】
図2に示すように、蓋部材20及びベース部材30の両者が封止枠37及び接合部材40を介して接合されることによって、水晶振動素子10は、蓋部材20とベース部材30とによって囲まれた内部空間26に封止される。この場合、内部空間26の圧力は、大気圧力よりも低圧であることが好ましく、真空状態であることが更に好ましい。
【0042】
なお、封止枠37の平面視の形状は、連続した枠形状である場合に限定されず、不連続な枠形状であってもよい。同様に、接合部材40の平面視の形状も、連続した枠形状である場合に限定されず、不連続な枠形状であってもよい。
【0043】
ベース部材30の第1主面32aには、突起部75が設けられている。突起部75は、ベース部材30の第1主面32aから第3方向D3の正方向に突出している。突起部75は、ベース部材30の第1主面32aにおいて、水晶振動素子10に対向する領域、具体的には、水晶振動素子10の緩衝腕部70に対向する領域に設けられている。すなわち、ベース部材30の第1主面32aを平面視したときに、突起部75と緩衝腕部70とが重なるように、水晶振動素子10がベース部材30の第1主面32aに保持されている。
【0044】
突起部75は、ベース部材30の第1主面32aを平面視したときに、矩形状を有する。突起部75は、上面(天面)に設けられた第2衝撃検出電極76を含む。第2衝撃検出電極76は、第3方向D3に延在するビア電極34dを介して外部電極35fに電気的に接続されている。
【0045】
第2衝撃検出電極76は、金属膜から構成されている。例えば、第2衝撃検出電極76は、下層から上層にかけて、モリブデン(Mo)層、ニッケル(Ni)層及び金(Au)層が積層されて構成されている。但し、第2衝撃検出電極76は、導体であればよく、第2衝撃検出電極76の材料は、特に限定されるものではない。
【0046】
また、第2衝撃検出電極76は、突起部75の上面に形成される場合に限定されるものではない。第2衝撃検出電極76は、突起部75の表面の少なくとも一部に形成されていればよく、例えば、突起部75の側面を含む表面全体に形成されていてもよいし、上面の一部のみに形成されていてもよい。
【0047】
突起部75は、例えば、ベース部材30と一体に形成されている。そのため、突起部75は、ベース部材30の基体31と同一材料で構成されている。但し、突起部75は、ベース部材30と一体に形成されている構成に限定されるものではない。突起部75は、例えば、ベース部材30の第1主面32aに別体として設けられていてもよい。この場合、突起部75は、対向する水晶振動素子10よりもヤング率が小さい材料で構成することが好ましい。例えば、突起部75は、水晶片11から構成される水晶振動素子10よりもヤング率が小さい樹脂で構成される。また、突起部75の表面と別の箇所に第2衝撃検出電極76が形成されてもよい。衝撃が作用したとき、樹脂の突起部が最も先に接触して衝撃を吸収した後、さらに本体部がたわみ、別の箇所に設けられた第2衝撃検出電極76が水晶振動素子の第1衝撃検出電極71に近接または接触する位置に、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76とが配置されてもよい。本発明は、突起部を複数設けることを除外しない。
【0048】
本実施形態では、突起部75は、平面視において矩形状を有する例を示したが、これに限定されるものではなく、多角形、円形、楕円形等の他の形状を有していてもよい。なお、突起部75は、音叉型の水晶振動素子の振動腕部60の側面、あるいは当該側面に対向する基部50から延びる延長部に設けられてもよい。
【0049】
本実施形態に係る水晶振動素子10は、水晶片11の長辺方向の一方の端部(導電性保持部材36a,36b,36cが配置される側の端部)が固定端であり、その他方端が自由端となっている。但し、水晶振動素子10の固定端の位置は、特に限定されるものではない。
【0050】
次に、図4を参照しつつ、一組の振動腕部60のより詳細な構成、及び水晶振動素子10の動作について説明する。図4は、図3に示した水晶振動素子のIV-IV線に沿った断面の構成を概略的に示す断面図である。
【0051】
図4に示すように、第1振動腕部61及び第2振動腕部62の表面には、それぞれ、第1励振電極81及び第2励振電極82が設けられている。第1励振電極81は、第1振動腕部61及び第2振動腕部62の各両側面に設けられている。両側面とは、第1主面60aと第2主面60bとを繋ぐ一組の側面である。つまり、第1励振電極81は、第1振動腕部61及び第2振動腕部62のそれぞれを第2方向D2において挟むように対向している。第2励振電極82は、第1主面60a及び第2主面60bにおいて、第1溝63a及び第2溝63bのそれぞれの内部に設けられている。また、第2励振電極82は、第1溝63a及び第2溝63bの外側にも設けられている。
【0052】
第1励振電極81及び第2励振電極82は、例えば、ニッケル(Ni)やクロム(Cr)を下地層として、金(Au)を最表層とする多層構造の金属膜からなる電極である。クロムは水晶片との密着性が高いため、長期間の連続運転等による励振電極の剥離を抑制することができる。金は化学的安定が高いため、励振電極の酸化による振動特性の変動を抑制することができる。
【0053】
第1励振電極81及び第2励振電極82は、それぞれ、導電性保持部材36a及び導電性保持部材36bを通して、外部電極35a及び外部電極35bに電気的に接続される。第1励振電極81及び第2励振電極82を介して第1振動腕部61及び第2振動腕部62の内部に交番電界が印加されると、第1振動腕部61及び第2振動腕部62の各両側面が交番電界の電圧の大きさに基づいて伸縮する。特定の駆動電圧の交番電界を第1励振電極81と第2励振電極82との間に印加することで、第1振動腕部61及び第2振動腕部62が、図3において一組の振動腕部60の先端に図示した矢印の方向に、互いに接近又は離間するように共振周波数で振動する。これにより、振動腕部60の共振振動によって得られる所定の共振周波数を含む電気信号が、導電性保持部材36a及び導電性保持部材36、並びに外部電極35a及び外部電極35bにより出力される。
【0054】
次に、図5及び図6を参照しつつ、緩衝腕部70のより詳細な構成、及び緩衝腕部70及び突起部75の動作について説明する。図5は、図1に示した水晶振動素子のV-V線に沿った断面の構成を概略的に示す断面図である。図6は、水晶振動素子に衝撃が加わったときの緩衝腕部及び突起部を示す断面図である。
【0055】
図5に示すように、緩衝腕部70は、ベース部材30の第1主面32aと隙間を有して対向している。また、図示しない振動腕部60も同様に、ベース部材30の第1主面32aと隙間を有して対向している。なお、振動腕部60及び緩衝腕部70は、本発明の「本体部」の一例に相当する。
【0056】
緩衝腕部70は、蓋部材20と対向する側に第1主面(表面)70aを有し、ベース部材30と対向する側に第2主面(裏面)70bを有する。緩衝腕部70の第1主面70aは、基部50の第1主面50aと連続し、緩衝腕部70の第2主面70bは、基部50の第2主面50bと連続している。
【0057】
緩衝腕部70は、ベース部材30の第1主面32aに対向する第2主面70bの領域(以下、「第1領域」という)に、第1衝撃検出電極71を含む。図5に示す例では、第1衝撃検出電極71は、第2主面70bにおいて緩衝腕部70の先端側に設けられている。
【0058】
緩衝腕部70は、第2主面70bに接続電極72をさらに含む。接続電極72は、第2主面70bにおいて第1方向D1に延在している。接続電極72の一端(図5において右端)は第1衝撃検出電極71に電気的に接続されており、接続電極72の他端(図5において左端)は導電性保持部材36cに電気的に接続されている。これにより、第1衝撃検出電極71は、接続電極72、導電性保持部材36c、電極パッド33c、及びビア電極34cを介して、外部電極35eに電気的に接続される。
【0059】
なお、第1衝撃検出電極71に電気的に接続される接続電極72、導電性保持部材36c、電極パッド33c、ビア電極34c、及び、外部電極35eと、第2衝撃検出電極76に電気的に接続される前述のビア電極34d及び外部電極35fとは、本発明の「衝撃出力配線」を構成する一例に相当する。
【0060】
第1衝撃検出電極71及び接続電極72は、金属膜から構成されている。例えば、第1衝撃検出電極71及び接続電極72は、それぞれ、下層から上層にかけて、モリブデン(Mo)層、ニッケル(Ni)層及び金(Au)層が積層されて構成されている。但し、第1衝撃検出電極71及び接続電極72は、導体であればよく、第1衝撃検出電極71及び接続電極72の材料は、特に限定されるものではない。
【0061】
突起部75は、緩衝腕部70の第2主面70bに設けられた第1衝撃検出電極71に対向する領域(以下、「第2領域」という)に設けられている。突起部75と第1衝撃検出電極71との間には、所定の距離d1の空隙が設けられている。この距離d1は、ベース部材30の第1主面32aと振動腕部60の第2主面60b及び緩衝腕部70の第2主面70bとの間の隙間の最も小さい距離以下に設定されている。
【0062】
突起部75の断面形状は、図5に示す例では矩形である。但し、突起部75の断面形状は、これに限定されるものではなく、多角形、半円状、半楕円状等の他の形状であってもよい。
【0063】
ここで、外部から水晶振動子1に第3方向D3の成分を含む衝撃が加わる場合、図6に示すように、衝撃力の作用によって、振動腕部60及び緩衝腕部70が変位し、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の所定の距離d1が変化する。具体的には、水晶振動素子10の緩衝腕部70が第3方向D3の負方向に変形し、緩衝腕部70の第2主面70bが、ベース部材30の第1主面32aに接触する、あるいは、ベース部材30の第1主面32aに接近することがある。
【0064】
水晶振動子1は、水晶振動素子10の振動腕部60及び緩衝腕部70が、第1領域に設けられている第1衝撃検出電極71を含み、第1領域と対向する第2領域に、第1衝撃検出電極71と所定の距離d1を有して設けられている第2衝撃検出電極76を含み、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の電気特性の変化を取り出すように設けられた、第1衝撃検出電極71及び第2衝撃検出電極76のそれぞれに電気的に接続されている接続電極72、導電性保持部材36c、電極パッド33c、ビア電極34c,34d、及び、外部電極35e,35fを、さらに備える。前述したように、外部から水晶振動素子10に第3方向D3の成分を含む衝撃が加わる場合に、衝撃力の作用によって、第1衝撃検出電極71が設けられている振動腕部60及び緩衝腕部70が変位し、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の所定の距離d1が変化する。これにより、接続電極72、導電性保持部材36c、電極パッド33c、ビア電極34c,34d、及び、外部電極35e,35fが、所定の距離d1が変化することによって発生する、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の電気特性の変化を取り出すことができる。従って、水晶振動素子10に加わった衝撃を、水晶振動素子10の出力で検出することができる。
【0065】
また、水晶振動子1は、衝撃力の作用によって発生する振動腕部60及び緩衝腕部70の変位に応じて所定の距離d1が小さくなる位置に、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76とが配置されている。これにより、例えば、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との接触による導通、又は第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との接近による静電容量の変化を、検出することができる。
【0066】
また、水晶振動子1は、衝撃力の作用によって発生する振動腕部60及び緩衝腕部70の変位によって、第1衝撃検出電極71が第2衝撃検出電極76に最も先に接触する位置に配置されている。これにより、第1衝撃検出電極71以外の部分が第2衝撃検出電極76に接触するよりも前に、第1衝撃検出電極71が第2衝撃検出電極76に接触するので、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との接触による導通を最も先に検出することができる。
【0067】
また、水晶振動子1は、所定の距離d1が、振動腕部60の第2主面60b及び緩衝腕部70の第2主面70bとの間の隙間の最も小さい距離以下である。これにより、水晶振動素子10に加わった微小な衝撃を検出することができる。
【0068】
また、水晶振動子1は、第1領域が、ベース部材30の第1主面32aと対向する水晶振動素子10の振動腕部60及び緩衝腕部70に設けられている。これにより、第2領域をベース部材30の第1主面32aに設けることで、互いに対向する第1衝撃検出電極71及び第2衝撃検出電極76を容易に実現することができる。
【0069】
また、水晶振動子1は、第1領域及び第2領域の少なくとも一方に設けられている突起部75をさらに備え、衝撃力の作用によって発生する振動腕部60及び緩衝腕部70の変位によって、一方に設けられている突起部75が第1領域及び第2領域の他方に最も先に接触する位置に配置されている。これにより、突起部75以外の部分が第1領域及び第2領域の他方に接触するよりも前に、突起部75が第1領域及び第2領域の他方に接触して衝撃力を吸収するので、第1領域及び第2領域の他方以外に加わる衝撃力を低減することができる。
【0070】
また、水晶振動子1は、第1衝撃検出電極71又は第2衝撃検出電極76が突起部75の表面に設けられている。これにより、第1衝撃検出電極71以外の部分が第2衝撃検出電極76に接触するよりも前に、第1衝撃検出電極71が第2衝撃検出電極76に接触するので、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との接触による導通を最も先に検出することができる。
【0071】
さらに、水晶振動子1は、突起部75の材料は、第1領域の材料及び第2領域の材料の他方よりもヤング率が小さい材料で構成される。これにより、例えば第2領域に設けられた突起部75は対向する水晶振動素子10の第1領域よりも柔らかいので、衝撃力の作用によって第1領域及び第2領域の他方が突起部75に接触するときに、突起部75が変形することで第1領域及び第2領域の他方に加わる衝撃力を吸収することができる。
【0072】
本実施形態では、突起部75がベース部材30の第1主面32aに設けられる例を用いて説明したが、これに限定されるものではない。突起部は、例えば、緩衝腕部70の第2主面70bに設けられる構成であってもよい。この場合、第1衝撃検出電極71は、突起部の表面に設けられ、第2衝撃検出電極76は、ベース部材30の第1主面32aにおいて、第1衝撃検出電極71に対向する領域に設けられる。あるいは、突起部は、ベース部材30の第1主面32aと緩衝腕部70の第2主面70bとの両方に設けられる構成であってもよい。
【0073】
また、本実施形態では、第1衝撃検出電極71が緩衝腕部70に設けられ、第2衝撃検出電極76がベース部材30に設けられる例を用いて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1衝撃検出電極71又は第2衝撃検出電極76が、振動腕部60の錘部64に設けられていてもよい。具体的には、第1衝撃検出電極71及び第2衝撃検出電極76の一方が、錘部64における第2主面60bに設けられ、当該錘部64の第2主面60bと対向するベース部材30の第1主面32aに第1衝撃検出電極71及び第2衝撃検出電極76の他方が設けられる。
【0074】
さらに、本実施形態では、蓋部材20は開口を含む箱形状を有し、ベース部材30は平坦な板形状を有する例を用いて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、蓋部材が平坦な板形状を有し、ベース部材が蓋部材の主面に向けられた開口を含む箱形状を有し、蓋部材が平坦な板形状を有する構成であってもよい。あるいは、蓋部材及びベース部材の両方が、互いに対向する側に開口を含む箱形状を有する構成であってもよい。
【0075】
なお、本発明の各実施形態に係る振動子は、Siウェハにフォトリソグラフィー工程、ドライエッチング工程、Si層の育成工程を実施してベース部材、振動素子、蓋部材を形成する構成であってもよい。ベース部材と振動素子の支持部と蓋部材とが同じSi材料で一体に形成されてもよい。このとき、ベース部材に支持部が支持された振動素子の本体部が、静電電界のクーロン力によって共振振動させる構成であって、共振振動により得られる特定の共振周波数を含む電気信号を出力する振動子であってもよい。
【0076】
<第2実施形態>
次に、図7及び図8を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る水晶振動子について説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係る水晶振動子の分解斜視図である。図8は、図7に示した水晶振動子のVII-VII線に沿った断面の構成を概略的に示す断面図である。なお、第1実施形態と同一又は類似の構成について同一又は類似の符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0077】
本実施形態に係る水晶振動子2は、水晶振動素子10Aを備え、この水晶振動素子10Aの構成が第1実施形態と異なっている。具体的には、図7に示すように、水晶振動素子10Aは、ATカット型の水晶片11Aを含む。ATカット型の水晶片11Aは、人工水晶(Synthetic Quartz Crystal)の結晶軸(Crystallographic Axes)であるX軸、Y軸、Z軸のうち、Y軸及びZ軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に35度15分±1分30秒回転させた軸をそれぞれY’軸及びZ’軸とした場合、X軸及びZ’軸によって特定される面と平行な面(以下、「XZ’面」と呼ぶ。他の軸によって特定される面についても同様である。)を主面として切り出されたものである。水晶片11Aは、互いに対向するXZ’面である第1主面12a及び第2主面12bを有する。
【0078】
ATカット水晶片である水晶片11Aは、X軸方向に平行な長辺が延在する長辺方向と、Z’軸方向に平行な短辺が延在する短辺方向と、Y’軸方向に平行な厚さが延在する厚さ方向を有する。また、水晶片11Aは、XZ’面において矩形状を有する。
【0079】
ATカット水晶片を用いた水晶振動素子は、広い温度範囲で高い周波数安定性を有する。また、水晶結晶は結晶構造が安定しているため、経時変化特性に優れる振動素子を製造することが可能である。なお、ATカット水晶振動素子は、厚みすべり振動モード(Thickness Shear Vibration Mode)を主振動として用いる。
【0080】
本実施形態では、水晶片11Aは平坦な板形状を有している。水晶片11Aの第1主面12a及び第2主面12bは、それぞれ平坦面である。
【0081】
水晶振動素子10Aは、一組の電極を構成する第1励振電極14a及び第2励振電極14bを含む。第1励振電極14aは、第1主面12aに設けられている。また、第2励振電極14bは、第2主面12bに設けられている。第1励振電極14aと第2励振電極14bとは、各主面の中央を含む領域で水晶片11Aを挟んで互いに対向して設けられている。第1励振電極14aと第2励振電極14bは、XZ’面において略全体が重なり合うように配置されている。
【0082】
第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、それぞれ、X軸方向に平行な長辺と、Z’軸方向に平行な短辺と、Y’軸方向に平行な厚さとを有している。図7に示す例では、XZ’面において、第1励振電極14a及び第2励振電極14bの長辺は、それぞれ水晶片11Aの長辺と平行である。同様に、第1励振電極14a及び第2励振電極14bの短辺は、それぞれ水晶片11Aの短辺と平行である。また、第1励振電極14a及び第2励振電極14bの長辺は、それぞれ水晶片11Aの長辺から離れている。同様に、第1励振電極14a及び第2励振電極14bの短辺は、それぞれ水晶片11Aの短辺から離れている。
【0083】
水晶振動素子10Aは、引出電極15a,15bと、接続電極16a,16bと、を含む。接続電極16aは、引出電極15aを介して第1励振電極14aと電気的に接続されている。また、接続電極16bは、引出電極15bを介して第2励振電極14bと電気的に接続されている。接続電極16a及び接続電極16bは、それぞれベース部材30に電気的に接続するための端子である。接続電極16a及び接続電極16bは、それぞれ水晶片11Aの第2主面12bに設けられている。接続電極16a及び接続電極16bは、それぞれ水晶片11AのX軸負方向側の短辺付近において、当該短辺方向に沿って配列されている。
【0084】
引出電極15aは、第1励振電極14aと接続電極16aとを電気的に接続している。具体的には、引出電極15aは、第1主面12a上において第1励振電極14aからX軸負方向及びZ’軸正方向に向かって延在し、第1主面12aから水晶片11Aの各側面を通って第2主面12bに至るように延在し、第2主面12b上の接続電極16aと電気的に接続されている。また、引出電極15bは、第2励振電極14bと接続電極16bとを電気的に接続する。具体的には、引出電極15bは、第2主面12b上において第2励振電極14bからX軸負方向に向かって延在し、第2主面12b上の接続電極16bと電気的に接続されている。このように引出電極15a,15bを延在させることによって、第1主面12a及び第2主面12bの両主面に設けられた第1励振電極14a及び第2励振電極14bと電気的に接続された接続電極16a,16bを、片方の第2主面12b上に配置させることができる。
【0085】
接続電極16a,16bは、導電性保持部材36a,36bを介してベース部材30の電極に電気的に接続される。
【0086】
水晶振動素子10Aは、第1衝撃検出電極71と、接続電極72と、を含む。第1衝撃検出電極71及び接続電極72は、それぞれ水晶片11Aの第2主面12bに設けられている。第1衝撃検出電極71は、水晶片11AのX軸正方向側の短辺付近において、当該短辺方向に沿って配置されている。接続電極72は、第2励振電極14bを避けるように、第1衝撃検出電極71からZ’軸正方向及びX軸負方向に向かって延在し、さらに接続電極16a及び接続電極16bを避けるように、Z’軸負方向及びX軸負方向に向かって延在している。接続電極72は、導電性保持部材36cを介してベース部材30の電極に電気的に接続される。
【0087】
第1励振電極14a及び第2励振電極14b、引出電極15a,15b、接続電極16a,16b、第1衝撃検出電極71、並びに、接続電極72の各電極の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、下地としてクロム(Cr)層を有し、クロム層の表面にさらに金(Au)層を有していてもよい。
【0088】
本実施形態では、水晶振動素子10Aは、平坦な板形状の水晶片11Aを含む構成を説明したが、これに限定されるものではない。水晶片は、主面の中央を含む振動部が周縁部よりも厚いメサ型構造を採用してもよいし、振動部が周縁部よりも薄い逆メサ構造を採用してもよい。あるいは、水晶片は、振動部と周縁部の厚みの変化(段差)が連続的に変化するコンベックス形状又はべベル形状を適用してもよい。また、水晶片のカット角度は、ATカット以外の異なるカット、例えばBTカット等を適用してもよい。
【0089】
本実施形態に係る水晶振動素子10Aは、水晶片11Aの長辺方向の一方の端部(導電性保持部材36a,36bが配置される側の端部)が固定端であり、その他方端が自由端となっている。また、水晶振動素子10Aは、XZ’面において矩形状を有している。
【0090】
なお、水晶振動素子10Aの固定端の位置は、特に限定されるものではない。変形例として、水晶振動素子10Aは、水晶片11Aの長辺方向の両端においてベース部材30に固定されていてもよい。この場合、水晶振動素子10Aを水晶片11Aの長辺方向の両端において固定する態様で、水晶振動素子10及びベース部材30の各電極を形成すればよい。
【0091】
本実施形態に係る水晶振動子2においては、ベース部材30の外部電極35a,35bを介して、水晶振動素子10Aにおける一組の第1励振電極14a及び第2励振電極14bの間に交番電界を印加する。これにより、厚みすべり振動モードなどの所定の振動モードによって水晶片11Aの振動部が振動し、該振動に伴う共振特性が得られる。
【0092】
また、ベース部材30の外部電極35e,35fを介して、水晶振動素子10Aの第2主面12bに設けられた第1衝撃検出電極71と、ベース部材30の第1主面32aに設けられた突起部75の第2衝撃検出電極76との間の導通、又は、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の静電容量の変化を検出する。これにより、厚みすべり振動モードを主振動とする水晶振動素子10Aに加わった衝撃を、水晶振動素子10Aの出力で検出することができる。
【0093】
<第3実施形態>
次に、図9を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る振動装置について説明する。図9は、本発明の第3実施形態に係る振動装置の構成を概略的に示す断面図である。図9は、図5と同一断面視の図である。図10は、図9に示した回路基板の構成を示すブロック図である。なお、第1実施形態と同一の構成について同一の符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0094】
本実施形態に係る振動装置100は、前述した第1実施形態の水晶振動子1と、回路基板90と、を備える。図9に示すように、水晶振動子1は、回路基板90の上に設けられている。具体的には、ベース部材30の第2主面32bが回路基板90の上面に設置される。ベース部材30の第2主面32bに設けられた外部電極35a,35b,35c,35d,35e,35fは、それぞれ、回路基板90に電気的に接続されている。
【0095】
なお、振動装置100は、第1実施形態の水晶振動子1に代えて、第2実施形態の水晶振動子2を備える構成であってもよい。
【0096】
図10に示すように、回路基板90は、振動制御回路91と、検出回路92と、比較回路93と、カウンタ回路94と、記憶回路95と、出力制御回路96と、を備える。
【0097】
振動制御回路91は、外部電極35a及び外部電極35bのそれぞれに、電気的に接続されている。振動制御回路91は、水晶振動素子10の振動を制御するように構成されている。具体的には、振動制御回路91は、外部電極35a及び外部電極35bを介して、水晶振動素子10の第1励振電極81及び第2励振電極82の間に交番電界を印加し、水晶振動素子10の第1振動腕部61及び第2振動腕部62を振動させる。そして、振動制御回路91は、交番電界の電圧の大きさを制御することで、第1振動腕部61及び第2振動腕部62の共振振動を制御する。
【0098】
検出回路92は、外部電極35e及び外部電極35fのそれぞれに、電気的に接続されている。検出回路92は、衝撃が水晶振動子1に加わった回数を検出するように構成されている。一例では、検出回路92は、外部電極35e及び外部電極35fを介して、水晶振動素子10の第1衝撃検出電極71とベース部材30の第2衝撃検出電極76との間に、所定値の電圧を印加する。水晶振動素子10に加わる衝撃が所定の大きさ未満である場合、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間には、距離d1の空隙が設けられているので、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76とは接触しない。一方、水晶振動素子10に加わる衝撃が所定の大きさ以上であると、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76とが接触し、第1衝撃検出電極71及び第2衝撃検出電極76が導通する。このときに流れる電流の値又は所定時間にわたる電気量(電荷)は、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との接触面積、接触時間等に応じて変化し、これらは衝撃の大きさに比例又は略比例する。よって、検出回路92は、例えば第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との接触により流れる電流値を検出することで、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との導通の回数を検出することができる。
【0099】
このように、検出回路92が外部電極35e,35fを介して第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との導通の回数を検出することにより、導通の回数によって水晶振動素子10に加わった衝撃の回数を定量的に検出することができる。
【0100】
別の例では、検出回路92は、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の静電容量の変化の回数を検出する。具体的には、検出回路92は、外部電極35e及び外部電極35fを介して、水晶振動素子10の第1衝撃検出電極71とベース部材30の第2衝撃検出電極76との間に、所定値の電圧を印加する。このとき、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間には、距離d1の空隙が設けられ、絶縁されているので、第1衝撃検出電極71及び第2衝撃検出電極76には、静電容量に比例した電荷(静電エネルギー)が蓄えられる。ここで、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との電極間の距離が近づく、または遠ざかれば、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の静電容量が、それぞれ、増加または低減するように変化する。よって、検出回路92は、例えば第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の距離d1が変化するときに移動する電荷の量、つまり、電流値を検出することで、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の静電容量の変化が上限しきい値を上回る回数及び下限しきい値を下回る回数の少なくとも一方を検出することができる。
【0101】
このように、検出回路92が第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の静電容量の変化が上限しきい値を上回る回数及び下限しきい値を下回る回数の少なくとも一方を検出することにより、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との電極間の距離が、近づくように作用する衝撃と離れるように作用する衝撃との両方向の衝撃の回数を検出することができる。
【0102】
いずれの例の構成でも、検出回路92は、電流電圧変換回路を含み、検出した電流値に応じた電圧値に変換して出力する。
【0103】
比較回路93には、検出回路92が出力する電圧値が入力される。比較回路93は、この電圧値と所定のしきい値とを比較し、比較結果に基づく値(レベル)の電圧を出力する。比較回路93は、例えば比較器(コンパレータ)を含んで構成される。比較器の第1入力端子には検出回路92が出力する電圧値が入力され、第2入力端子には、所定のしきい値の定電圧が入力される。第1入力端子の電圧値が第2入力端子の所定のしきい値より大きい場合、比較回路93はハイレベル(以下、「Hレベル」という)の出力信号を出力する。一方、第1入力端子の電圧値が第2入力端子の所定のしきい値以下である場合、比較回路93はローレベル(以下、「Lレベル」という)の出力信号を出力する。このように、比較回路93によって、検出回路92から出力されるアナログ信号の電圧値がデジタル信号に変換される。
【0104】
カウンタ回路94には、比較回路93が出力する電圧信号が入力される。カウンタ回路94は、例えば、Hレベルの出力信号が入力されたときに計数し、Lレベルの出力信号が入力されたときには計数しない。これにより、水晶振動素子10に加わった衝撃の回数が積算される。カウンタ回路94は、この積算数を出力する。
【0105】
記憶回路95には、比較回路93が出力する電圧信号、つまり、導通の回数又は静電容量の変化の回数と、カウンタ回路94の積算数、つまり、導通の回数の積算数又は静電容量の変化の回数の積算数とが入力される。記憶回路95は、導通の回数又は静電容量の変化の回数と、導通の回数の積算数又は静電容量の変化の回数の積算数と、を記憶する。これにより、導通の回数の積算数又は静電容量の変化の回数の積算数が記憶されるので、衝撃が水晶振動素子10に作用した履歴を記憶することができる。
【0106】
出力制御回路96は、記憶回路95にアクセス可能に接続されている。出力制御回路96は、記憶回路95に記憶された積算数を読み出し、当該積算数に基づいて、衝撃履歴状態に応じた信号を外部に出力する。これにより、衝撃履歴状態に応じた信号が外部に出力されるので、衝撃による水晶振動素子10の劣化状態を外部装置に伝達することができる。従って、衝撃が加わることによる水晶振動素子10の寿命変動をより高い精度で予測することができ、使用環境に応じた水晶振動素子10の交換又は廃棄を適切に実施することができる。
【0107】
本実施形態では、水晶振動子1が回路基板90の上に設けられる例を用いて説明したが、これに限定されるものでない。例えば、水晶振動子の蓋部材が平坦な板形状を有し、水晶振動子のベース部材が開口を含む箱形状を有する場合に、回路基板90は、ベース部材の内底面に固定され、蓋部材及びベース部材の内部空間に収容される構成であってもよい。
【0108】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。水晶振動子1では、ベース部材30と、ベース部材30の第1主面32aに支持される基部50と、基部50から延出しており、第1主面32aと隙間を有して対向する振動腕部60及び緩衝腕部70とを有し、振動腕部60及び緩衝腕部70の共振振動によって得られる所定の共振周波数を含む電気信号を出力する水晶振動素子10と、を備え、水晶振動素子10の振動腕部60及び緩衝腕部70は、第1領域に設けられている第1衝撃検出電極71を含み、第1領域と対向する第2領域に、第1衝撃検出電極71と所定の距離d1を有して設けられている第2衝撃検出電極76を含み、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の電気特性の変化を取り出すように設けられた、第1衝撃検出電極71及び第2衝撃検出電極76のそれぞれに電気的に接続されている接続電極72、導電性保持部材36c、電極パッド33c、ビア電極34c,34d、及び、外部電極35e,35fを、さらに備える。ここで、外部から水晶振動素子10に第3方向D3の成分を含む衝撃が加わる場合に、衝撃力の作用によって、第1衝撃検出電極71が設けられている振動腕部60及び緩衝腕部70が変位し、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の所定の距離d1が変化する。これにより、接続電極72、導電性保持部材36c、電極パッド33c、ビア電極34c,34d、及び、外部電極35e,35fが、所定の距離が変化することによって発生する、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の電気特性の変化を取り出すことができる。従って、水晶振動素子10に加わった衝撃を、水晶振動素子10の出力で検出することができる。
【0109】
また、前述した水晶振動子1において、衝撃力の作用によって発生する振動腕部60及び緩衝腕部70の変位に応じて所定の距離d1が小さくなる位置に、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76とが配置されている。これにより、例えば、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との接触による導通、又は第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との接近による静電容量の変化を、検出することができる。
【0110】
また、前述した水晶振動子1において、衝撃力の作用によって発生する振動腕部60及び緩衝腕部70の変位によって、第1衝撃検出電極71が第2衝撃検出電極76に最も先に接触する位置に配置されている。これにより、第1衝撃検出電極71以外の部分が第2衝撃検出電極76に接触するよりも前に、第1衝撃検出電極71が第2衝撃検出電極76に接触するので、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との接触による導通を最も先に検出することができる。
【0111】
また、前述した水晶振動子1において、所定の距離d1は、振動腕部60の第2主面60b及び緩衝腕部70の第2主面70bとの間の隙間の最も小さい距離以下である。これにより、水晶振動素子10に加わった微小な衝撃を検出することができる。
【0112】
また、前述した水晶振動子1において、第1領域は、ベース部材30の第1主面32aと対向する水晶振動素子10の振動腕部60及び緩衝腕部70に設けられている。これにより、第2領域をベース部材30の第1主面32aに設けることで、互いに対向する第1衝撃検出電極71及び第2衝撃検出電極76を容易に実現することができる。
【0113】
また、前述した水晶振動子1において、第1領域及び第2領域の少なくとも一方に設けられている突起部75をさらに備え、衝撃力の作用によって発生する振動腕部60及び緩衝腕部70の変位によって、一方に設けられている突起部75が第1領域及び第2領域の他方に最も先に接触する位置に配置されている。これにより、突起部75以外の部分が第1領域及び第2領域の他方に接触するよりも前に、突起部75が第1領域及び第2領域の他方に接触して衝撃力を吸収するので、第1領域及び第2領域の他方以外に加わる衝撃力を低減することができる。
【0114】
また、前述した水晶振動子1において、第1衝撃検出電極71又は第2衝撃検出電極76が突起部75の表面に設けられている。これにより、第1衝撃検出電極71以外の部分が第2衝撃検出電極76に接触するよりも前に、第1衝撃検出電極71が第2衝撃検出電極76に接触するので、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との接触による導通を最も先に検出することができる。
【0115】
また、前述した水晶振動子1において、突起部75の材料は、第1領域の材料及び第2領域の材料の他方よりもヤング率が小さい材料で構成される。これにより、例えば第2領域に設けられた突起部75は対向する水晶振動素子10の第1領域よりも柔らかいので、衝撃力の作用によって第1領域及び第2領域の他方が突起部75に接触するときに、突起部75が変形することで第1領域及び第2領域の他方に加わる衝撃力を吸収することができる。
【0116】
また、前述した水晶振動子1において、ベース部材30とともに、水晶振動素子10を収容する内部空間26を形成する蓋部材20をさらに備える。これにより、蓋部材20及びベース部材30によって、水晶振動素子10を保護することができる。
【0117】
また、前述した水晶振動子1において、水晶振動素子10が、基部50と、基部50から第1方向D1に延出する一組の振動腕部60と、を備える音叉型水晶振動素子である。これにより、音叉型水晶振動素子に加わった衝撃を、音叉型水晶振動素子の出力で検出することができる。
【0118】
また、前述した水晶振動子1において、音叉型圧電振動素子が、基部50から第1方向D1に延出し、第1衝撃検出電極71又は第2衝撃検出電極76を含む緩衝腕部70をさらに備える。これにより、音叉型水晶振動素子に加わった衝撃を、第1衝撃検出電極71又は第2衝撃検出電極76を含む緩衝腕部70を用いて検出することができる。従って、一組の振動腕部60を用いて衝撃を検出する場合と比較して、音叉型水晶振動素子の周波数特性の変動を抑制することができる。
【0119】
また、前述した水晶振動子1において、緩衝腕部70に、突起部75が形成されている。これにより、突起部75以外の部分が第1領域及び第2領域の他方に接触するよりも前に、突起部75が第1領域及び第2領域の他方に接触して衝撃力を吸収するので、例えば基部50又は振動腕部60に加わる衝撃力を低減することができる。
【0120】
また、前述した水晶振動子1において、振動腕部60の先端は、第1衝撃検出電極71又は第2衝撃検出電極76が設けられている錘部64を含む。これにより、音叉型水晶振動素子に加わった衝撃を、第1衝撃検出電極71又は第2衝撃検出電極76が設けられている錘部64を用いて検出することができる。
【0121】
また、水晶振動子2では、水晶振動素子10Aが、厚みすべり振動モードを主振動とする水晶振動素子である。これにより、厚みすべり振動モードを主振動とする水晶振動素子10Aに加わった衝撃を、水晶振動素子10Aの出力で検出することができる。
【0122】
また、振動装置100では、前述のいずれかの水晶振動子1,2と、接続電極72、導電性保持部材36c、電極パッド33c、ビア電極34c,34d、及び、外部電極35e,35fを介して第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との導通の回数を検出する検出回路92と、を備える。これにより、導通の回数によって水晶振動素子10に加わった衝撃の回数を定量的に検出することができる。
【0123】
また、前述した水晶振動子1において、衝撃力の作用によって発生する振動腕部60及び緩衝腕部70の変位によって、第1衝撃検出電極71が第2衝撃検出電極76に振動腕部60及び緩衝腕部70のなかで最も先に接触する位置に配置されている。これにより、振動腕部60及び緩衝腕部70のなかで、第1衝撃検出電極71以外の部分が第2衝撃検出電極76に接触するよりも前に、第1衝撃検出電極71が第2衝撃検出電極76に接触するので、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との接触による導通の回数を最も先に検出することができる。
【0124】
また、振動装置100では、前述のいずれかの水晶振動子1,2と、接続電極72、導電性保持部材36c、電極パッド33c、ビア電極34c,34d、及び、外部電極35e,35fを介して第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の静電容量の変化が上限しきい値を上回る回数及び下限しきい値を下回る回数の少なくとも一方を検出する検出回路92と、を備える。ここで、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との電極間の距離が近づく、または遠ざかれば、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の静電容量が、それぞれ、増加または低減するように変化する。よって、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との間の静電容量の変化が上限しきい値を上回る回数及び下限しきい値を下回る回数の少なくとも一方を検出することにより、第1衝撃検出電極71と第2衝撃検出電極76との電極間の距離が、近づくように作用する衝撃と離れるように作用する衝撃との両方向の衝撃の回数を検出することができる。
【0125】
また、前述した振動装置100において、導通の回数の積算数を記憶する記憶回路95と、積算数に基づいて、衝撃履歴状態に応じた信号を外部に出力する出力制御回路96と、をさらに備える。これにより、導通の回数の積算数が記憶されるので、衝撃が水晶振動素子10に作用した履歴を記憶することができる。また、この衝撃履歴状態に応じた信号が外部に出力されるので、衝撃による水晶振動素子10の劣化状態を外部装置に伝達することができる。従って、衝撃が加わることによる水晶振動素子10の寿命変動をより高い精度で予測することができ、使用環境に応じた水晶振動素子10の交換又は廃棄を適切に実施することができる。
【0126】
また、前述した振動装置100において、静電容量の変化の回数の積算数を記憶する記憶回路95と、積算数に基づいて、衝撃履歴状態に応じた信号を外部に出力する出力制御回路96と、をさらに備える。これにより、静電容量の変化の回数の積算数が記憶されるので、衝撃が水晶振動素子10に作用した履歴を記憶することができる。また、この衝撃履歴状態に応じた信号が外部に出力されるので、衝撃による水晶振動素子10の劣化状態を外部装置に伝達することができる。従って、衝撃が加わることによる水晶振動素子10の寿命変動をより高い精度で予測することができ、使用環境に応じた水晶振動素子10の交換又は廃棄を適切に実施することができる。
【0127】
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0128】
1,2…水晶振動子、10,10A…水晶振動素子、11,11A…水晶片、12a…第1主面、12b…第2主面、14a…第1励振電極、14b…第2励振電極、15a…引出電極、15b…引出電極、16a…接続電極、16b…接続電極、20…蓋部材、21…天面部、22…側壁部、23…対向面、24…内面、25…外面、26…内部空間、30…ベース部材、31…基体、32a…第1主面、32b…第2主面、33a…電極パッド、33b…電極パッド、33c…電極パッド、34a,34b,34c,34d…ビア電極、35a,35b,35c,35d,35e,35f…外部電極、36a、36b、36c…導電性保持部材、37…封止枠、40…接合部材、50…基部、50a…第1主面、50b…第2主面、60…振動腕部、60a…第1主面、60b…第2主面、61…第1振動腕部、62…第2振動腕部、63a…第1溝、63b…第2溝、64…錘部、70…緩衝腕部、70a…第1主面、70b…第2主面、71…第1衝撃検出電極、72…接続電極、75…突起部、76…第2衝撃検出電極、81…第1励振電極、82…第2励振電極、90…回路基板、91…振動制御回路、92…検出回路、93…比較回路、94…カウンタ回路、95…記憶回路、96…出力制御回路、100…振動装置、d1,d1’…距離、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10